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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】電気光学装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20240723BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G09F9/30 338
G09F9/30 349C
G02F1/1368
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020202477
(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公開番号】P2022090230
(43)【公開日】2022-06-17
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】井澤 彰太郎
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-094880(JP,A)
【文献】特開2004-334064(JP,A)
【文献】特開2020-160113(JP,A)
【文献】特開2019-219531(JP,A)
【文献】特開2011-060825(JP,A)
【文献】特開2004-325627(JP,A)
【文献】特開2005-115104(JP,A)
【文献】特開2017-083679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0351000(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00-9/46
G02F 1/13-1/141
1/15-1/19
H05B 33/00-33/28
44/00
45/60
H10K 50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
画素電極と、
前記基板と前記画素電極との間の層に配置されるトランジスターと、
前記基板と前記トランジスターとの間の層に配置される第1遮光膜と、
前記基板と前記トランジスターとの間の層に配置される第2遮光膜と、を備え、
前記第1遮光膜は、前記基板の平面視で前記トランジスターのゲート電極と重なるとともに、前記トランジスターの低濃度ドレイン領域と重ならないように配置され、
前記第2遮光膜は、前記平面視で前記トランジスターのチャネル領域以外と重なり、固定電位が印加されていることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記第1遮光膜は、前記ゲート電極に電気的に接続される請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記第2遮光膜は、前記トランジスターのソース領域およびドレイン領域と重なる請求項1または2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記基板は、凹部を有し、
前記凹部は、第1深さである第1部分と、前記第1深さよりも浅い第2深さである第2部分と、を有し、
前記第2遮光膜は、前記第1部分および前記第2部分に配置され、
前記第1遮光膜は、前記第1部分に配置され、かつ前記第2遮光膜と前記ゲート電極との間に位置する請求項1からのいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記第1遮光膜と前記第2遮光膜との間に配置される絶縁層をさらに備える請求項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記絶縁層と前記第1遮光膜との間に配置され、前記絶縁層と前記第1遮光膜とを接着する第1接着層と、
前記基板と前記第2遮光膜と間に配置され、前記基板と前記第2遮光膜とを接着する第2接着層と、をさらに備える請求項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記トランジスターの半導体層と前記第1遮光膜との間の距離は、500Å以上3000Å以下であり、
前記トランジスターの半導体層と前記第2遮光膜との間の距離は、500Å以上3000Å以下である請求項1からのいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
基板と、
画素電極と、
前記基板と前記画素電極との間の層に配置されるトランジスターと、
前記基板と前記トランジスターとの間の層に配置される第1遮光膜と、
前記基板と前記トランジスターとの間の層に配置され、固定電位が印加される第2遮光膜と、
前記固定電位が印加される定電位線と、
前記定電位線と前記第2遮光膜とを電気的に接続するコンタクト部と、を備え、
前記第1遮光膜は、前記基板の平面視で前記トランジスターのゲート電極と重なり、
前記第2遮光膜は、前記平面視で前記トランジスターのチャネル領域以外と重なり、
前記コンタクト部は、前記平面視で前記トランジスターの低濃度ドレイン領域と重なり、かつ、前記低濃度ドレイン領域を挟むように配置されている電気光学装置。
【請求項9】
前記基板から前記画素電極に向かって光が入射する請求項1からのいずれか1項に記載の電気光学装置。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1項に記載の電気光学装置と、
前記電気光学装置の動作を制御する制御部と、を有することを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクター等の電子機器には、画素ごとに光学的特性を変更可能な液晶表示装置等の電気光学装置が用いられる。
【0003】
特許文献1に記載の電気光学装置は、基板と、画素ごとに設けられた画素電極と、画素電極のスイッチング素子としてのLDD(Lightly Doped Drain)構造を有するトランジスターと、基板とトランジスターとの間に配置される遮光膜と、を備える。トランジスターは、チャネル領域、ソース領域、ドレイン領域、低濃度ソース領域および低濃度ドレイン領域を有する半導体層と、平面視でチャネル領域に重なるゲート電極と、を有する。遮光膜は、平面視で画素電極を囲む格子状に配置されており、平面視でトランジスターと重なる。また、遮光膜は、ゲート電極にゲート電位を供給する走査線として利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-225034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トランジスターが有する半導体層に遮光膜を近づけるほど遮光性が向上することが知られている。しかし、特許文献1に記載の走査線として機能し得る遮光膜は平面視でトランジスターの全域に重なっているため、遮光膜がトランジスターのチャネル領域以外に近づくとオフリーク電流が増加するおそれがある。この結果、黒点の発生等により表示品位が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気光学装置の一態様は、基板と、画素電極と、前記基板と前記画素電極との間の層に配置されるトランジスターと、前記基板と前記トランジスターとの間の層に配置される第1遮光膜と、前記基板と前記トランジスターとの間の層に配置される第2遮光膜と、を備え、前記第1遮光膜は、前記基板の平面視で前記トランジスターのゲート電極と重なるとともに、前記トランジスターの低濃度ドレイン領域と重ならないように配置され、前記第2遮光膜は、前記平面視で前記トランジスターのチャネル領域以外と重なり、固定電位が印加されている。
【0007】
本発明の電子機器の一態様は、前述の電気光学装置と、前記電気光学装置の動作を制御する制御部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る電気光学装置の平面図である。
図2図1に示す電気光学装置のA-A線における断面図である。
図3図1の素子基板の電気的な構成を示す等価回路図である。
図4図2の素子基板の一部を示す図である。
図5図2の素子基板の一部を示す図である。
図6図4に示す素子基板の一部を示す図である。
図7図4に示す素子基板の一部を示す図である。
図8図4に示す第1遮光膜、第2遮光膜および半導体層の平面的な配置を示す図である。
図9図4に示すコンタクト部を示す断面図である。
図10図6中のB-B線断面である。
図11】電気光学装置が有する素子基板の一部の製造方法の流れを示す図である。
図12】凹部形成工程を説明するための断面図である。
図13】第1および第2遮光膜形成工程を説明するための断面図である。
図14】第1および第2遮光膜形成工程を説明するための断面図である。
図15】トランジスター形成工程を説明するための断面図である。
図16】ストッパー部形成工程を説明するための断面図である。
図17】ストッパー部形成工程を説明するための平面図である。
図18】走査線形成工程を説明するための断面図である。
図19】走査線形成工程を説明するための断面図である。
図20】走査線形成工程を説明するための平面図である。
図21】走査線形成工程を説明するための断面図である。
図22】第1定電位線形成工程を説明するための断面図である。
図23】第1定電位線形成工程を説明するための断面図である。
図24】第1定電位線形成工程を説明するための平面図である。
図25】第1定電位線形成工程を説明するための断面図である。
図26】変形例の第1遮光膜および第2遮光膜を示す断面図である。
図27】電子機器の一例であるパーソナルコンピューターを示す斜視図である。
図28】電子機器の一例であるスマートフォンを示す平面図である。
図29】電子機器の一例であるプロジェクターを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法または縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示す部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0010】
1.電気光学装置
1A.基本構成
図1は、第1実施形態に係る電気光学装置100の平面図である。図2は、図1に示す電気光学装置100のA-A線における断面図である。なお、図1では、対向基板3の図示を省略する。また、以下では、説明の便宜上、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を適宜用いて説明する。また、X軸に沿う一方向をX1方向と表記し、X1方向とは反対の方向をX2方向と表記する。同様に、Y軸に沿う一方向をY1方向と表記し、Y1方向とは反対の方向をY2方向と表記する。Z軸に沿う一方向をZ1方向と表記し、Z1方向とは反対の方向をZ2方向と表記する。また、以下では、Z1方向またはZ2方向に見ることを「平面視」とし、Z軸を含む断面に対して垂直方向から見ることを「断面視」とする。
【0011】
図1および図2に示す電気光学装置100は、アクティブマトリクス駆動方式の透過型の液晶装置である。図2に示すように、電気光学装置100は、透光性を有する素子基板2と、透光性を有する対向基板3と、枠状のシール部材4と、液晶層5とを有する。なお、「透光性」とは、可視光に対する透過性を意味し、好ましくは可視光の透過率が50%以上であることをいう。また、素子基板2、液晶層5および対向基板3は、この順にZ1方向に並ぶ。なお、図1に示す電気光学装置100の平面視での形状は四角形であるが、例えば円形であってもよい。
【0012】
図2に示すように、素子基板2は、後述の複数のTFT(Thin Film Transistor)を有する基板である。素子基板2は、第1基板21と積層体22と複数の画素電極25と第1配向膜29とを有する。第1基板21は「基板」の例示である。第1基板21、積層体22、複数の画素電極25および第1配向膜29は、この順にZ1方向に並ぶ。また、図示はしないが、素子基板2は、複数の画素電極25を平面視で囲む複数のダミー画素電極を有する。
【0013】
第1基板21は、透光性および絶縁性を有する平板である。第1基板21は、例えばガラス基板または石英基板を含む。積層体22については後述する。また、各画素電極25は、透光性を有する。各画素電極25は、例えばITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)およびFTO(Fluorine-doped tin oxide)等の透明導電材料を含む。画素電極25は、液晶層5に電界を印加する。第1配向膜29は、透光性および絶縁性を有する。第1配向膜29は、液晶層5の液晶分子を配向させる。第1配向膜29の材料としては、例えば酸化ケイ素またはポリイミドが挙げられる。
【0014】
対向基板3は、素子基板2に対向して配置される基板である。対向基板3は、第2基板31と絶縁膜32と共通電極33と第2配向膜34とを有する。第2基板31、絶縁膜32、共通電極33および第2配向膜34は、この順にZ2方向に並ぶ。また、図示はしないが、対向基板3は、平面視で複数の画素電極25を囲む遮光性の見切りを有する。「遮光性」とは、可視光に対する遮光性を意味し、好ましくは、可視光の透過率が50%未満であることをいい、より好ましくは、10%以下であることをいう。
【0015】
第2基板31は、透光性および絶縁性を有する平板である。第2基板31は、例えばガラス基板または石英基板を含む。絶縁膜32は、透光性および絶縁性を有する。絶縁膜32の材料は、例えば酸化ケイ素等の無機材料である。共通電極33は、複数の画素電極25に対して液晶層5を介して配置される対向電極である。共通電極33は、例えばITO、IZOおよびFTO等の透明導電材料を含む。共通電極33は、液晶層5に電界を印加する。第2配向膜34は、透光性および絶縁性を有する。第2配向膜34は、液晶層5の液晶分子を配向させる。第2配向膜34の材料としては、例えば酸化ケイ素またはポリイミドが挙げられる。
【0016】
シール部材4は、素子基板2と対向基板3との間に配置される。シール部材4は、例えばエポキシ樹脂等の各種硬化性樹脂を含む接着剤等を用いて形成される。シール部材4は、ガラス等の無機材料で構成されるギャップ材を含んでもよい。シール部材4は、素子基板2および対向基板3のそれぞれに対して固着される。
【0017】
液晶層5は、素子基板2、対向基板3およびシール部材4によって囲まれる領域内に配置される。液晶層5は、電界に応じて光学的特性が変化する電気光学層である。液晶層5は、正または負の誘電異方性を有する液晶分子を含む。液晶分子の配向は、液晶層5に印加される電圧に応じて変化する。
【0018】
図1に示すように、素子基板2には、複数の走査線駆動回路11と信号線駆動回路12と複数の外部端子13とが配置される。複数の外部端子13の一部は、図示しないが、走査線駆動回路11または信号線駆動回路12から引き回される配線に接続される。また、複数の外部端子13は、図示しない配線および導通材を介して共通電極33に電極的に接続される端子を含む。
【0019】
かかる電気光学装置100は、画像を表示する表示領域A10と、平面視で表示領域A10の外側に位置する周辺領域A20とを有する。表示領域A10には、行列状に配列される複数の画素Pが設けられる。複数の画素Pに対して複数の画素電極25が1対1で配置される。前述の共通電極33は、複数の画素Pで共通に設けられる。また、周辺領域A20は、平面視で表示領域A10を囲む。周辺領域A20には、走査線駆動回路11および信号線駆動回路12が配置される。
【0020】
本実施形態では、電気光学装置100は透過型であり、素子基板2に入射した光が対向基板3から出射される間に変調されることにより、画像が表示される。なお、対向基板3に入射した光が素子基板2から出射される間に変調されることにより、画像が表示されてもよい。また、電気光学装置100は、反射型であってもよい。この場合、例えば、共通電極33が透光性を有し、かつ画素電極25が反射性を有する。反射型の場合、対向基板3に入射した光が画素電極25で反射し、再び対向基板3から出射される間で変調されることにより、画像が表示される。
【0021】
また、電気光学装置100は、例えば、後述するパーソナルコンピューターおよびスマートフォン等のカラー表示を行う表示装置に適用される。当該表示装置に適用される場合、電気光学装置100に対してカラーフィルターが適宜用いられる。また、電気光学装置100は、例えば、後述する投射型のプロジェクターに適用される。この場合、電気光学装置100は、ライトバルブとして機能する。なお、この場合、電気光学装置100に対してカラーフィルターが省略される。
【0022】
1B.素子基板2の電気的な構成
図3は、図1の素子基板2の電気的な構成を示す等価回路図である。図3に示すように、素子基板2は、複数のトランジスター23とn本の走査線241とm本の信号線242とn本の第1定電位線243とを有する。第1定電位線243は「定電位線」の例示である。また、後で詳述するが、トランジスター23、走査線241、信号線242および第1定電位線243は、第1基板21と画素電極25との間の層に配置される。nおよびmはそれぞれ2以上の整数である。n本の走査線241とm本の信号線242との各交差に対応してトランジスター23が配置される。各トランジスター23は、例えばスイッチング素子として機能するTFTである。各トランジスター23は、ゲート、ソースおよびドレインを含む。公
【0023】
n本の走査線241のそれぞれはX1方向に延在し、n本の走査線241はY2方向に等間隔で並ぶ。n本の走査線241のそれぞれは、対応する複数のトランジスター23のゲートに電気的に接続される。n本の走査線241は、図1に示す走査線駆動回路11に電気的に接続される。1~n本の走査線241には、走査線駆動回路11から走査信号G1、G2、…、およびGnが線順次で供給される。
【0024】
図3に示すm本の信号線242のそれぞれはY2方向に延在し、m本の信号線242はX1方向に等間隔で並ぶ。m本の信号線242のそれぞれは、対応する複数のトランジスター23のソースに電気的に接続される。m本の信号線242は、図1に示す信号線駆動回路12に電気的に接続される。1~m本の信号線242には、信号線駆動回路12から画像信号S1、S2、…、およびSmが並行に供給される。
【0025】
図3に示すn本の走査線241とm本の信号線242とは、互いに電気的に絶縁されており、平面視で格子状に配置される。隣り合う2つの走査線241と隣り合う2つの信号線242とで囲まれる領域が画素Pに対応する。各画素電極25は、対応するトランジスター23のドレインに電気的に接続される。
【0026】
n本の第1定電位線243のそれぞれはX1方向に延在し、n本の第1定電位線243はY2方向に等間隔で並ぶ。また、n本の第1定電位線243は、m本の信号線242およびn本の走査線241に対して電気的に絶縁されており、これらに対して間隔をもって配置される。各第1定電位線243には、対向基板と同電位の固定電位が印加される。n本の第1定電位線243のそれぞれは、対応する複数の容量素子240に電気的に接続される。各容量素子240は、画素電極25の電位を保持するための保持容量である。なお、複数の容量素子240は、複数の画素電極25に1対1で電気的に接続される。複数の容量素子240は、複数のトランジスター23のドレインに1対1で電気的に接続される。
【0027】
走査信号G1、G2、…、およびGnが順次アクティブとなり、n本の走査線241が順次選択されると、選択される走査線241に接続されるトランジスター23がオン状態となる。すると、m本の信号線242を介して表示すべき階調に応じた大きさの画像信号S1、S2、…、およびSmが、選択される走査線241に対応する画素Pに取り込まれ、画素電極25に印加される。これにより、画素電極25と図2に共通電極33との間に形成される液晶容量に、表示すべき階調に応じた電圧が印加され、印加される電圧に応じて液晶分子の配向が変化する。また、容量素子240によって、印加される電圧が保持される。このような液晶分子の配向の変化によって光が変調され階調表示が可能となる。
【0028】
1C.素子基板2の構成
図4および図5のそれぞれは、図2の素子基板2の一部を示す図である。なお、図4および図5は、1つの画素Pに着目した図である。
【0029】
図4および図5に示すように、「基板」としての第1基板21は、凹部210を有する。凹部210には、第1遮光膜61および第2遮光膜62が配置される。凹部210、第1遮光膜61および第2遮光膜62については後で詳述する。
【0030】
第1基板21上には積層体22が配置される。積層体22は、透光性および絶縁性を有する。積層体22は、第1基板21から複数の画素電極25に向けて順に積層される複数の絶縁層221、222、223、224、225、226、227、228、229および220を有する。積層体22の各層の材料は、例えば、酸窒化ケイ素および酸化ケイ素等の無機材料である。
【0031】
積層体22の層間には、複数のトランジスター23および配線等が配置される。具体的には、積層体22には、図4に示すように、トランジスター23、走査線241、信号線242、第1定電位線243、第2定電位線244、容量素子240、ドレイン中継電極247およびソース中継電極248が配置される。また、積層体22には、図5に示すように、中継電極249が配置される。また、トランジスター23は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有する半導体層231と、ゲート電極232と、ゲート絶縁膜233とを有する。容量素子240は、第1容量245と第2容量246とを有する。また、図4に示すように、積層体22の層間には、素子基板2の製造時においてエッチングストッパーとして機能するストッパー部282が配置される。
【0032】
具体的には、絶縁層221と絶縁層222との間には、トランジスター23が有する半導体層231が配置される。絶縁層222と絶縁層223との間には、トランジスター23が有するゲート電極232が配置される。絶縁層223と絶縁層224との間には、ストッパー部282が配置される。絶縁層224と絶縁層225との間には、走査線241、ドレイン中継電極247およびソース中継電極248が配置される。絶縁層225と絶縁層226との間には、第1定電位線243が配置される。絶縁層226と絶縁層227との間には、容量素子240が有する第1容量245が配置される。絶縁層227と絶縁層228との間には、容量素子240が有する第2容量246が配置される。絶縁層228と絶縁層229との間には、信号線242および中継電極249が配置される。絶縁層229と絶縁層220との間には、第2定電位線244が配置される。
【0033】
トランジスター23が有する半導体層231は、チャネル領域231a、ドレイン領域231b、ソース領域231c、低濃度ドレイン領域231dおよび低濃度ソース領域231eを有する。チャネル領域231aは、ドレイン領域231bとソース領域231cとの間に位置する。低濃度ドレイン領域231dは、チャネル領域231aとドレイン領域231bとの間に位置する。低濃度ソース領域231eは、チャネル領域231aとソース領域231cとの間に位置する。半導体層231は、例えば、ポリシリコンを成膜して形成され、チャネル領域231aを除く領域には、導電性を高める不純物がドープされる。低濃度ドレイン領域231dおよび低濃度ソース領域231e中の不純物濃度は、ドレイン領域231bおよびソース領域231c中の不純物濃度よりも低い。なお、低濃度ソース領域231eは、省略してもよい。
【0034】
平面図は省略するが、ゲート電極232は、平面視で半導体層231のチャネル領域231aに重なる。ゲート電極232は、例えば、ポリシリコンに導電性を高める不純物がドープされることにより形成される。なお、ゲート電極232は、金属、金属シリサイドおよび金属化合物の導電性を有する材料を用いて形成されてもよい。また、ゲート電極232とチャネル領域231aとの間には、ゲート絶縁膜233が介在する。ゲート絶縁膜233は、例えば、熱酸化またはCVD(chemical vapor deposition)法等で成膜される酸化ケイ素で構成される。
【0035】
第1容量245は、一対の電極2451および2452と、電極2451および電極2452との間に配置される誘電体層2253とを有する。第2容量246は、一対の電極2461および2462と、電極2461および電極2462との間に配置される誘電体層2263とを有する。
【0036】
また、積層体22内には、2つの配線または電極を電気的に接続するコンタクトとしての導電部271、272、273、274、275、276、277、278、279および280が配置される。また、積層体22内には、コンタクト部281が配置される。導電部271~280およびコンタクト部281のそれぞれは、導電性を有する貫通電極であり、例えばほぼ柱状のプラグで構成される。
【0037】
具体的には、図4および図5に示すように、導電部271は、絶縁層223および224を貫通し、ゲート電極232と走査線241と第1遮光膜61とを接続する。図4に示すように、導電部272は、絶縁層222~224を貫通し、半導体層231のドレイン領域231bとドレイン中継電極247とを接続する。なお、導電部272とドレイン中継電極247とは、例えば一体的に形成される。導電部273は、絶縁層222~224を貫通し、半導体層231のソース領域231cとソース中継電極248とを接続する。なお、導電部273とソース中継電極248とは、例えば一体的に形成される。
また、後述の図9を参照しつつ説明するが、コンタクト部281は、絶縁層221~225を貫通し、第1定電位線243と第2遮光膜62とを接続する。
【0038】
図4に示すように、導電部274は、絶縁層225~227を貫通し、ドレイン中継電極247と第2容量246の電極2461とを接続する。導電部275は、絶縁層225~228を貫通し、ソース中継電極248と信号線242とを接続する。導電部276は、絶縁層226を貫通し、第1定電位線243と第1容量245の電極2451とを接続する。導電部277は、絶縁層227を貫通し、第1容量245の電極2452と第2容量246の電極2461とを接続する。図5に示すように、導電部278は、絶縁層226および227を貫通し、第1定電位線243と第2容量246の電極2462とを接続する。導電部279は、絶縁層227および228を貫通し、第1容量245の電極2452と中継電極249とを接続する。導電部280は、絶縁層229および220を貫通し、中継電極249と画素電極25を接続する。
【0039】
積層体22に配置される走査線241等の配線等の各材料としては、例えば、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)およびアルミニウム(Al)等の金属、金属窒化物ならびに金属酸化物等の金属材料が挙げられる。具体的には例えば、当該配線等は、アルミニウム膜と窒化チタン膜とを含む。アルミニウム膜を含むことで、窒化チタン膜のみで構成される場合に比べて低抵抗化を図ることができる。また、導電部271~280およびコンタクト部281の各材料としては、例えば、タングステン、コバルト(Co)、銅(Cu)等の金属、チタンナイトライド等の金属窒化物、ならびにタングステンシリサイド等の金属酸化物等の金属材料が挙げられる。
【0040】
なお、図4および図5に示す配線等の配置は、一例であり、配線等の配置は図4および図5に示す例に限定されない。
【0041】
1D.第1遮光膜61、第2遮光膜62およびその近傍の構成
図6および図7は、図4に示す素子基板2の一部を示す図である。図8は、図4に示す第1遮光膜61、第2遮光膜62および半導体層231の平面的な配置を示す図である。図9は、図4に示すコンタクト部281を示す断面図である。図10は、図6中のB-B線断面である。なお、図7は、図10中のC-C線断面に相当する。図9は、図10中のD-D線断面に相当する。
【0042】
図6および図7に示すように、第1遮光膜61および第2遮光膜62のそれぞれは、第1基板21とトランジスター23との間に配置される。第1基板21の凹部210内には、第1遮光膜61および第2遮光膜62が配置される。また、凹部210内には、第1接着層610、第2接着層620および絶縁層63が配置される。
【0043】
凹部210は、第1深さである第1部分211と、第1深さよりも浅い第2深さである第2部分212と、を有する。別の見方をすると、凹部210は、第1凹部と、当該第1凹部の底面に形成された第2凹部とを有する。よって、凹部210の底面は、段差を有する。
【0044】
図8に示すように、第1部分211は、平面視で第2部分212の内側に配置される。第1部分211は、平面視でゲート電極232と半導体層231のチャネル領域231aとに重なる。特に、本実施形態では、第1部分211は、平面視で半導体層231のチャネル領域231a以外の部分とは重ならない。
【0045】
第2部分212は、平面視で半導体層231と重なる。加えて、第2部分212の平面視での面積は、半導体層231の平面視での面積よりも大きい。また、第2部分212は、X1方向での幅が大きい幅広部212aと、幅広部212aよりもX1方向での幅が狭い幅狭部212bとを有する。幅広部212aは、平面視で、半導体層231のチャネル領域231aおよび低濃度ドレイン領域231dと重なる。幅狭部212bは、平面視で、低濃度ソース領域231e、ドレイン領域231bおよびソース領域231cと重なる。
【0046】
図6および図7に示すように、第2接着層620、第2遮光膜62、絶縁層63、第1接着層610および第1遮光膜61は、凹部210の底部からこの順に積層される。第1遮光膜61、第1接着層610および絶縁層63は、凹部210の第1部分211に配置される。第2遮光膜62および第2接着層620は、凹部210の第1部分211および第2部分212に配置される。
【0047】
第1遮光膜61および第2遮光膜62は、遮光性および導電性を有する。第1遮光膜61および第2遮光膜62は、トランジスター23への光の入射を遮るために設けられる。絶縁層63は、絶縁性を有する。絶縁層63は、第1遮光膜61と第2遮光膜62との間に配置され、これらを絶縁する。第1接着層610は、絶縁層63と第1遮光膜61との間に配置され、絶縁層63と第1遮光膜61とを接着する。第2接着層620は、第1基板21と第2遮光膜62との間に配置され、第1基板21と第2遮光膜62を接着する。
【0048】
第2接着層620および第2遮光膜62は、段差を有する凹部210の底面に沿って配置される。よって、第2接着層620および第2遮光膜62は、凹部210の底面に倣った段差を有する。また、第1基板21、第2接着層620、第2遮光膜62、絶縁層63、第1接着層610および第1遮光膜61の各上面によって、段差のない連続的な面が構成される。すなわち、第1基板21、第2接着層620、第2遮光膜62、絶縁層63、第1接着層610および第1遮光膜61の各上面によって、ほぼ平坦な面が形成される。
【0049】
図8に示すように、第1遮光膜61は、平面視でゲート電極232および半導体層231のチャネル領域231aと重なる。特に、本実施形態では、第1遮光膜61は、平面視で半導体層231のチャネル領域231a以外の部分とは重ならない。
【0050】
第2遮光膜62は、平面視で半導体層231に沿って形成され、平面視で半導体層231と重なる。加えて、第2遮光膜62の平面視での面積は、半導体層231の平面視での面積よりも大きい。よって、第2遮光膜62は、平面視でチャネル領域231aと、半導体層231のチャネル領域231a以下の領域との両方に重なっている。また、第2遮光膜62は、平面視でゲート電極232と重なる。また、図10に示すように、平面視で半導体層231と走査線241とは交差しているので、第2遮光膜62は、平面視で走査線241と交差している。
【0051】
第1遮光膜61および第2遮光膜62の各材料は、例えば、タングステン、チタンおよびクロム等を含む金属材料である。また、第1接着層610および第2接着層620の各材料は、例えば、チタンナイトライド(TiN)、タンタルナイトライド(TaN)またはタングステンナイトライド(WN)等の金属窒化物、およびタングステンシリサイド(WSi)等の金属シリサイド等金属酸化物である。絶縁層63の材料は、例えば、酸化ケイ素および酸窒化ケイ素等のケイ素を含む無機材料である。なお、第1遮光膜61、第2遮光膜62、絶縁層63、第1接着層610および第2接着層620のそれぞれは、単層でも複数層でもよい。
【0052】
図7に示すように、第1遮光膜61は、導電部271を介して走査線241に接続される。導電部271は、第1遮光膜61、走査線241およびゲート電極232のそれぞれに接触し、これらを電気的に接続する。よって、第1遮光膜61は、トランジスター23への光の入射を防ぐ機能に加え、バックゲートとしても機能する。導電部271は、Y1方向に見た断面視でトランジスター23を挟むように配置される。よって、導電部271は、Y1方向にみた断面視でゲート電極232および半導体層231を挟むように配置される。加えて、図10に示すように、導電部271は、平面視でゲート電極232およびチャネル領域231aと重なる。よって、導電部271によって、チャネル領域231aへの光の入射を特に抑制することができる。
【0053】
図9に示すように、第2遮光膜62は、コンタクト部281を介して第1定電位線243に接続される。第1定電位線243には固定電位が印加されているので、コンタクト部281を介して第2遮光膜62には固定電位が印加される。また、コンタクト部281は、第2遮光膜62、ストッパー部282および第2定電位線244のそれぞれに接触する。コンタクト部281は、Y1方向に見た断面視でストッパー部282および半導体層231を挟むように配置される。また、図10に示すように、コンタクト部281は、平面視で低濃度ドレイン領域231dと重なる。よって、コンタクト部281によって、低濃度ドレイン領域231dへの光の入射を特に抑制することができる。
【0054】
前述した第1遮光膜61は、第1基板21の平面視でゲート電極232および半導体層231のチャネル領域231aと重なる。一方、前述のように、第2遮光膜62は平面視でチャネル領域231a以外と重なり、第2遮光膜62には固定電位が印加される。このため、第2遮光膜62がチャネル領域231a以外に近づいても、第2遮光膜62の電位の影響によりオフリーク電流が増加するおそれを抑制することができる。よって、トランジスター23がオフ状態でのソースとドレインと間のオフリーク電流の増加を抑制しつつ、第1遮光膜61および第2遮光膜62をトランジスター23に近づけることができる。特に、第2遮光膜62が低濃度ドレイン領域231dと平面視で重なることで、オフリーク電流が増加を抑制しつつトランジスター23への遮光性の向上を図ることができる。したがって、オフリーク電流の増加の抑制の背反なく、遮光性を向上させることができる。よって、黒点等の発生や焼き付き等による表示品位の低下を抑制することができる。また、トランジスター23がLDD構造を有することで、LDD構造を有さない場合に比べ、オフリーク電流の増加を抑制することができる。
【0055】
前述のように、第1遮光膜61は、ゲート電極232に電気的に接続される。よって、第1遮光膜61には、ゲート電位が印加される。したがって、第1遮光膜61および第2遮光膜62には、互いに異なる電位が印加される。第1遮光膜61がゲート電極232に電気的に接続されることで、オン電流の低下を抑制することができる。
【0056】
また、第1遮光膜61は、ゲート電極232に重なっているため、半導体層231のチャネル領域231a以外の領域とは重なってない。第1遮光膜61は、本実施形態のように、平面視でチャネル領域231a以外の領域、特に低濃度ドレイン領域231dと重ならないことが好ましい。これにより、第1遮光膜61をチャネル領域231aに近づけても、第1遮光膜61の影響によりオフリーク電流が増加するおそれを特に効果的に抑制することができる。
【0057】
図6に示すように、第1遮光膜61および第2遮光膜62を用いることで、半導体層231と第1遮光膜61との間の距離D1と、半導体層231と第2遮光膜62との間の距離D2とを従来よりも短くすることができる。具体的には例えば、半導体層231と第1遮光膜61との間の距離D1、および半導体層231と第2遮光膜62との間の距離D2のそれぞれは、好ましくは500Å以上3000Å以下である。かかる範囲であることで、絶縁層221の成膜不良の発生を抑制しつつ、遮光性を充分に向上させすることができる。
【0058】
また、前述のように、コンタクト部281は、平面視で低濃度ドレイン領域231dと重なる。さらに、図9に示すように、コンタクト部281は、低濃度ドレイン領域231dを挟むように配置される。このため、コンタクト部281および第2遮光膜62によって、低濃度ドレイン領域231dの周囲がほぼ囲まれている。したがって、コンタクト部281が低濃度ドレイン領域231dを挟むように配置されていない場合に比べ、低濃度ドレイン領域231dに入射する光に対する遮光性を特に高めることができる。なお、コンタクト部281は、低濃度ドレイン領域231dを挟むように配置されていなくてもよい。
【0059】
また、第2遮光膜62は、平面視で、低濃度ドレイン領域231d、ソース領域231cおよびドレイン領域231bに重なる。本実施形態では、第2遮光膜62は、平面視で、半導体層231のうちのチャネル領域231a以下の領域全てに重なる。このため、これらに重なっていない場合に比べ、半導体層321に対する遮光性を高めることができる。特に、本実施形態では、半導体層231の全てと第2遮光膜62は重なる。よって、遮光性を最も高めることができる。なお、第2遮光膜62は、平面視で少なくとも半導体層231のうちのチャネル領域231a以下の一部に重なっていてもよい。
【0060】
また、前述のように、第2遮光膜62は、凹部210の第1部分211および第2部分212に配置される。一方、第1遮光膜61は、第1部分211に配置され、かつ第2遮光膜62とゲート電極232との間に位置する。第1遮光膜61および第2遮光膜62が凹部210内に配置されることで、これらが例えば平坦面上に配置される場合に比べ、第1遮光膜61および第2遮光膜62の第1基板21からの剥離が抑制される。よって、剥離による遮光性の低下が抑制される。また、第1遮光膜61がゲート電極232と第2遮光膜62との間に介在していることで、第1遮光膜61および第2遮光膜62による遮光性を確保しつつ、オフリーク電流の増加を抑制できる構成を簡単に実現することができる。
【0061】
さらに、第1遮光膜61と第2遮光膜62との間には絶縁層63が配置される。このため、第1遮光膜61と第2遮光膜62とを電気的に絶縁することができる。よって、第1遮光膜61と第2遮光膜62とが平面視で重なって配置された状態で、オフリーク電流の増加の抑制およびオン電流の低下の抑制の背反なく、第1遮光膜61および第2遮光膜62をトランジスター23に近づけることができる。
【0062】
また、前述のように、絶縁層63と第1遮光膜61との間には、これらを接着する第1接着層610が配置される。第1接着層610が設けられることで、第1接着層610が設けられていない場合に比べ、絶縁層63と第1遮光膜61との密着性を高めることができる。同様に、第1基板21と第2遮光膜62と間には、これらを接着する第2接着層620が配置される。第2接着層620が設けられることで、第2接着層620が設けられていない場合に比べ、第1基板21と第2遮光膜62との密着性を高めることができる。よって、第1遮光膜61および第2遮光膜62の剥離を抑制することができる。なお、第1接着層610および第2接着層620のそれぞれは省略してもよい。
【0063】
また、第1遮光膜61および第2遮光膜62を有する電気光学装置100は、第1遮光膜61および第2遮光膜62によって第1基板21から半導体層231に向かう光の入射を効果的に抑制することができる。よって、第1基板21から画素電極25に向かって光が入射する電気光学装置100において、遮光性の効果を特に発揮し得る。
【0064】
1E.電気光学装置100の製造方法
図11は、電気光学装置100が有する素子基板2の一部の製造方法の流れを示す図である。素子基板2の製造方法は、凹部形成工程S11と、第1および第2遮光膜形成工程S12と、トランジスター形成工程S13、ストッパー部形成工程S14と、走査線形成工程S15と、第1定電位線形成工程S16とを有する。
【0065】
図12は、凹部形成工程S11を説明するための断面図である。図12に示すように、例えば、ガラス板または石英板等で構成された第1基板21をエッチングすることにより、第1部分211および第2部分212を有する凹部210が形成される。具体的には、凹部210は、第1凹部を形成した後、当該第1凹部の底面をさらにエッチングすることにより第2凹部を形成する。つまり、所謂デュアルダマシンに変更法により凹部210が形成される。
【0066】
図13および図14のそれぞれは、第1および第2遮光膜形成工程S12を説明するための断面図である。図13に示すように、凹部210内に、第2接着層620x、第2遮光膜62x、絶縁層63x、第1接着層610xおよび第1遮光膜61xをこの順に積層する。各層は、例えば、CVD法またはPVD(physical vapor deposition)法等の蒸着法により成膜される。次いで、第2接着層620x、第2遮光膜62x、絶縁層63x、第1接着層610xおよび第1遮光膜61xに対してCMP法等の研磨処理を施すことにより、図14に示すように、第2接着層620、第2遮光膜62、絶縁層63、第1接着層610および第1遮光膜61が形成される。研磨処理により、第2接着層620、第2遮光膜62、絶縁層63、第1接着層610および第1遮光膜61の各上面は平坦化される。
【0067】
デュアルダマシン法により、凹部210を形成した後に、第2接着層620x、第2遮光膜62x、絶縁層63x、第1接着層610xおよび第1遮光膜61xをこの順に積層することで、第2接着層620、第2遮光膜62、絶縁層63、第1接着層610および第1遮光膜61を簡単かつ確実に形成することができる。よって、例えば第1遮光膜61および第2遮光膜62を互いに異なる凹部に形成する場合に比べ、工程数を大幅に削減することができる。このため、生産性を高めることができる。
【0068】
図15は、トランジスター形成工程S13を説明するための断面図である。図15に示すように、まず、第1遮光膜61および第2遮光膜62上に、例えば熱酸化またはCVD法により絶縁層221が形成される。なお、絶縁層221には適宜CMP法により平坦化が行われる。第1遮光膜61および第2遮光膜62が存在するため、絶縁層221は、例えば500Å以上3000Å以下の範囲内の厚さで形成される。
【0069】
次いで、絶縁層221上に、半導体層231、ゲート絶縁膜233およびゲート電極232が形成される。前述のように、半導体層231は、例えば、ポリシリコンを成膜して形成され、チャネル領域231aを除く領域には、導電性を高める不純物がドープされる。ゲート絶縁膜233は、例えば、熱酸化またはCVD法等で成膜される。ゲート電極232は、例えば、ポリシリコンに導電性を高める不純物がドープされることにより形成される。
【0070】
図16は、ストッパー部形成工程S14を説明するための断面図である。図17は、ストッパー部形成工程S14を説明するための平面図である。
【0071】
図16に示すように、まず、ゲート電極232上に、例えばCVD法により絶縁層223が形成される。なお、絶縁層223には適宜CMP法により平坦化が行われる。次いで、絶縁層223上に、ストッパー部282が形成される。ストッパー部282は、例えば、タングステン、チタンおよびアルミニウム等の金属、金属窒化物ならびに金属シリサイド等の金属材料を用いて形成される。ストッパー部282は、例えば、CVD法またはPVD法により形成された金属材料膜をエッチングによりパターニングすることにより形成される。なお、ストッパー部282は、窒化ケイ素等であってもよい。
【0072】
図17に示すように、ストッパー部282は、半導体層231の低濃度ドレイン領域231dに重なるよう形成される。ストッパー部282は、第1定電位線形成工程S16において形成するコンタクト部281が配置されるコンタクトホールH4の形成において用いられる。
【0073】
図18図19および図21のそれぞれは、走査線形成工程S15を説明するための断面図である。図20は、走査線形成工程S15を説明するための平面図である。
【0074】
ストッパー部282上に、例えばCVD法により絶縁層224が形成される。なお、絶縁層224には適宜CMP法により平坦化が行われる。次いで、図18および図19に示すように、絶縁層224に3つのコンタクトホールH1、H2およびH3が形成される。コンタクトホールH1、H2およびH3は、例えば、フッ素系のエッチング剤を用いたエッチングにより同一処理で形成される。また、図20に示すように、コンタクトホールH1は、ゲート電極232に重なるよう形成される。コンタクトホールH2は、ドレイン領域231bに重なるよう形成される。コンタクトホールH3は、ソース領域231cに重なるよう形成される。
【0075】
図18および図19に示すように、コンタクトホールH1の形成の際、ゲート電極232および第1遮光膜61がエッチングストッパーとして機能する。コンタクトホールH1が形成されることで、ゲート電極232および第1遮光膜61の各一部が露出する。また、コンタクトホールH1は、2つの深さを有する。具体的には、図19に示すように、コンタクトホールH1は、絶縁層224の上面からゲート電極232までの深さと、絶縁層224の上面から第1遮光膜61までの深さと、を有する。また、図18に示すように、コンタクトホールH2およびH3の形成の際、半導体層231がエッチングストッパーとして機能する。よって、コンタクトホールH2およびH3が形成されることで、半導体層231のドレイン領域231bおよびソース領域231cの各一部が露出する。
【0076】
次に、コンタクトホールH1、H2およびH3内を埋め、かつ絶縁層224上に導電膜を形成した後、当該導電膜をエッチングによりパターニングする。これにより、図21に示すように、コンタクトホールH1を埋める導電部271と、コンタクトホールH2を埋める導電部272と、コンタクトホールH3を埋める導電部273とが形成される。加えて、導電部271と走査線241とが一体的に形成され、導電部272とドレイン中継電極247とが一体的に形成され、導電部273とソース中継電極248とが一体的に形成される。
【0077】
図22図23および図25のそれぞれは、第1定電位線形成工程S16を説明するための断面図である。図24は、第1定電位線形成工程S16を説明するための平面図である。
【0078】
走査線241上に、例えばCVD法により絶縁層225が形成される。なお、絶縁層225には適宜CMP法により平坦化が行われる。次いで、図22および図23に示すように、絶縁層225にコンタクトホールH4が形成される。コンタクトホールH4は、例えば、フッ素系のエッチング剤を用いたエッチングにより形成される。また、図24に示すように、コンタクトホールH4は、ストッパー部282に重なるよう形成される。
【0079】
図22および図23に示すように、コンタクトホールH4の形成の際、ストッパー部282および第2遮光膜62がエッチングストッパーとして機能する。コンタクトホールH4が形成されることで、ストッパー部282および第2遮光膜62の各一部が露出する。また、図23に示すように、コンタクトホールH4は、2つの深さを有する。具体的には、コンタクトホールH4は、絶縁層225の上面からストッパー部282までの深さと、絶縁層225の上面から第2遮光膜62までの深さと、を有する。
【0080】
次に、コンタクトホールH4内を埋め、かつ絶縁層225上に導電膜を形成した後、当該導電膜をエッチングによりパターニングする。これにより、図25に示すように、コンタクトホールH4を埋めるコンタクト部281が形成される。
【0081】
以上のようにして、素子基板2の第1定電位線243までの層が形成される。なお、素子基板2のその他の構成は、例えば公知の方法を用いて形成される。
2.変形例
以上に例示した実施形態は多様に変形され得る。前述の実施形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0082】
前述の実施形態では、第1基板21は凹部210を有するが、凹部210を有さなくてもよい。その場合、第1基板21の平坦な上面に第1遮光膜61および第2遮光膜62が配置されてもよい。
【0083】
前述の実施形態では、第1遮光膜61は、平面視で第2遮光膜62に重なるが、重なっていなくてもよい。
【0084】
図26は、変形例の第1遮光膜61Aおよび第2遮光膜62Bを示す断面図である。図26に示す第1遮光膜61Aは、第1基板21が有する凹部215に配置される。一方、第2遮光膜62Bは、第1基板21が有する凹部216に配置される。したがって、第1遮光膜61Aは、平面視で第2遮光膜62Aに重なっていない。ただし、前述の実施形態のように、段差を有する1つの凹部210を形成し、凹部210内に第1遮光膜61および第2遮光膜62を形成することで、2つの凹部215および216を形成し、第1遮光膜61Aおよび第2遮光膜62Aを形成する場合に比べ、製造の工程数を大幅に削減することができる。加えて、第1基板21から見て第1遮光膜61Aおよび第2遮光膜62Aを隙間なく半導体層231の下に配置することができるため、トランジスター23の遮光性能が向上する。
【0085】
前述の実施形態では、半導体層231は、平面視で走査線241と交差しているが、平面視で走査線241に沿って配置されてもよい。したがって、前述の実施形態では、半導体層231は、Y2方向に沿って延在するが、走査線241が延在するX1方向に沿って延在してもよい。また、前述の実施形態では、第2遮光膜62は、平面視で走査線241と交差しているが、平面視で走査線241に沿って配置されてもよい。したがって、前述の実施形態では、第2遮光膜62は、Y2方向に沿って延在するが、走査線241が延在するX1方向に沿って延在してもよい。
【0086】
前述の実施形態では、アクティブマトリクス方式の電気光学装置100が例示されるが、これに限定されず、電気光学装置100の駆動方式は、例えば、パッシブマトリクス方式等でもよい。
【0087】
「電気光学装置」の駆動方式は、縦電界方式に限定されず、横電界方式でもよい。第1実施形態では、素子基板2に画素電極25が設けられ、対向基板3に共通電極33が設けられているが、素子基板2または対向基板3のいずれか一方のみに、液晶層5に電界を印加するための電極が設けられてもよい。なお、横電界方式としては、例えばIPS(In Plane Switching)モードが挙げられる。また、縦電界方式としては、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Virtical Alignment)、PVAモードおよびOCB(Optically Compensated Bend)モードが挙げられる。
【0088】
3.電子機器
電気光学装置100は、各種電子機器に用いることができる。
【0089】
図27は、電子機器の一例であるパーソナルコンピューター2000を示す斜視図である。パーソナルコンピューター2000は、各種の画像を表示する電気光学装置100と、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設置される本体部2010と、制御部2003と、を有する。制御部2003は、例えばプロセッサーおよびメモリーを含み、電気光学装置100の動作を制御する。
【0090】
図28は、電子機器の一例であるスマートフォン3000を示す平面図である。スマートフォン3000は、操作ボタン3001と、各種の画像を表示する電気光学装置100と、制御部3002と、を有する。操作ボタン3001の操作に応じて電気光学装置100に表示される画面内容が変更される。制御部3002は、例えばプロセッサーおよびメモリーを含み、電気光学装置100の動作を制御する。
【0091】
図29は、電子機器の一例であるプロジェクターを示す模式図である。投射型表示装置4000は、例えば、3板式のプロジェクターである。電気光学装置1rは、赤色の表示色に対応する電気光学装置100であり、電気光学装置1gは、緑の表示色に対応する電気光学装置100であり、電気光学装置1bは、青色の表示色に対応する電気光学装置100である。すなわち、投射型表示装置4000は、赤、緑および青の表示色に各々対応する3個の電気光学装置1r、1g、1bを有する。制御部4005は、例えばプロセッサーおよびメモリーを含み、電気光学装置100の動作を制御する。
【0092】
照明光学系4001は、光源である照明装置4002からの出射光のうち赤色成分rを電気光学装置1rに供給し、緑色成分gを電気光学装置1gに供給し、青色成分bを電気光学装置1bに供給する。各電気光学装置1r、1g、1bは、照明光学系4001から供給される各単色光を表示画像に応じて変調するライトバルブ等の光変調器として機能する。投射光学系4003は、各電気光学装置1r、1g、1bからの出射光を合成して投射面4004に投射する。
【0093】
以上の電子機器は、前述の電気光学装置100と、制御部2003、3002または4005と、を備える。遮光性に優れるとともにオフリーク電流の増加が抑制された電気光学装置100を備えることで、パーソナルコンピューター2000、スマートフォン3000または投射型表示装置4000の表示品位の向上を図ることができる。
【0094】
なお、本発明の電気光学装置が適用される電子機器としては、例示した機器に限定されず、例えば、PDA(Personal Digital Assistants)、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、車載用の表示器、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、およびPOS(Point of sale)端末等が挙げられる。さらに、本発明が適用される電子機器としては、プリンター、スキャナー、複写機、ビデオプレーヤー、またはタッチパネルを備えた機器等が挙げられる。
【0095】
以上、好適な実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は前述の実施形態に限定されない。また、本発明の各部の構成は、前述の実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成に置換でき、また、任意の構成を付加できる。
【0096】
また、前述した説明では、本発明の電気光学装置の一例として液晶装置について説明したが、本発明の電気光学装置はこれに限定されない。例えば、本発明の電気光学装置は、イメージセンサー等にも適用することができる。また、例えば、有機EL(electro luminescence)、無機ELまたは発光ポリマー等の発光素子を用いた表示パネルに対しても前述の実施形態と同様に本発明が適用され得る。また、着色された液体と当該液体に分散された白色の粒子とを含むマイクロカプセルを用いた電気泳動表示パネルに対しても前述の実施形態と同様に本発明が適用され得る。また、多数の可動式の微小鏡面(マイクロミラー)を用いた表示パネル(DMD(Digital Mirror Device))に対しても前述の実施形態と同様に本発明が適用され得る。
【符号の説明】
【0097】
2…素子基板、3…対向基板、4…シール部材、5…液晶層、11…走査線駆動回路、12…信号線駆動回路、13…外部端子、21…第1基板、22…積層体、23…トランジスター、25…画素電極、29…第1配向膜、31…第2基板、32…絶縁膜、33…共通電極、34…第2配向膜、61…第1遮光膜、62…第2遮光膜、63…絶縁層、100…電気光学装置、210…凹部、211…第1部分、212…第2部分、212a…幅広部、212b…幅狭部、220~229…絶縁層、231…半導体層、231a…チャネル領域、231b…ドレイン領域、231c…ソース領域、231d…低濃度ドレイン領域、231e…低濃度ソース領域、232…ゲート電極、233…ゲート絶縁膜、240…容量素子、241…走査線、242…信号線、243…第1定電位線、244…第2定電位線、245…第1容量、246…第2容量、247…ドレイン中継電極、248…ソース中継電極、249…中継電極、271~180…導電部、281…コンタクト部、282…ストッパー部、610…第1接着層、610x…第1接着層、620…第2接着層、620x…第2接着層、2253…誘電体層、2263…誘電体層、2451…電極、2452…電極、2461…電極、2462…電極、A10…表示領域、A20…周辺領域、D1…距離、D2…距離、H1…コンタクトホール、H2…コンタクトホール、H3…コンタクトホール、H4…コンタクトホール、P…画素、b…青色成分、g…緑色成分、r…赤色成分。
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