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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】変速機及び遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F16H 13/04 20060101AFI20240723BHJP
   F16H 57/021 20120101ALI20240723BHJP
   F16C 35/06 20060101ALI20240723BHJP
   F16C 23/00 20060101ALI20240723BHJP
   F04D 29/053 20060101ALI20240723BHJP
   F04D 25/06 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F16H13/04 F
F16H57/021
F16C35/06 Z
F16C23/00
F04D29/053 A
F04D25/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020202716
(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公開番号】P2022090357
(43)【公開日】2022-06-17
【審査請求日】2023-03-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福山 了介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 花帆
(72)【発明者】
【氏名】中根 芳之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】光田 聡
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正悟
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 陽平
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大祐
(72)【発明者】
【氏名】楳山 亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 希幸
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-180791(JP,A)
【文献】特開2018-173027(JP,A)
【文献】特開2008-32189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 13/04
F16H 57/021
F16C 35/06
F16C 23/00
F04D 29/053
F04D 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機ハウジングと、
前記変速機ハウジング内に設けられ、低速シャフトの回転に伴って回転する環状のリング部と、
前記リング部の内側に配置された高速シャフトと、
前記リング部と前記高速シャフトとの間に設けられ、前記リング部の内周面及び前記高速シャフトの外周面の双方と当接している3つ以上のローラと、
前記ローラを回転可能な状態で前記変速機ハウジングに支持するのに用いられるラジアル軸受と、を備え、
前記ローラは、
前記リング部の回転に応じて、前記リング部の回転方向に移動する可動ローラと、
前記リング部の回転方向に移動しないように固定された固定ローラと、
を含み、
前記ラジアル軸受は、前記可動ローラを回転可能に支持する可動軸受を含み、
前記変速機ハウジングは、
前記可動軸受と当接することにより前記可動ローラを第1位置に規制する第1支持面と、
前記第1支持面よりも前記回転方向に離れた位置に設けられ、前記可動軸受と当接することにより前記可動ローラを第2位置に規制する第2支持面と、を備え、
前記可動ローラの移動は、前記第1位置から前記第2位置までの移動区間で行われ、
前記移動区間は、前記高速シャフトの径方向における前記可動ローラの支持が、前記変速機ハウジングに対して前記可動軸受を介してなされることなく、前記リング部と前記高速シャフトとの挟持によりなされる特定区間を含み、
前記変速機ハウジングは、プレート部を備え、
前記プレート部は、前記可動軸受を収容する可動軸受収容室を区画する面として、底面と、当該底面から前記高速シャフトの軸方向に起立し且つ前記第1支持面及び前記第2支持面を有する収容側面と、を有し、
前記収容側面は、前記可動軸受の外周面に対して離間した位置に設けられた離間面を含み、
前記特定区間では、前記可動軸受の位置に関わらず、前記離間面と前記可動軸受の外周面との間に可動軸受隙間が形成され、
前記第1支持面及び前記第2支持面は、前記可動軸受の外周面の曲率よりも小さい曲率の湾曲面であり、
前記第1支持面と前記第2支持面とは互いに対向しており、
前記離間面は、前記両支持面の対向方向に延びて前記第1支持面の端部と前記第2支持面の端部とを繋いでおり、
前記プレート部には、前記高速シャフトが挿通されるプレート貫通孔が形成されており、
前記収容側面には、前記高速シャフトの径方向内側に向けて開口した内側開口部が形成されており、
前記可動軸受収容室と前記プレート貫通孔とは、前記内側開口部を介して連通しており、
前記可動軸受の一部は、前記プレート貫通孔内に入り込んでおり、
前記プレート部は、前記固定ローラを回転可能に支持する固定軸受を収容する固定軸受収容室を区画する面として、第1底面と、当該第1底面から前記高速シャフトの軸方向に起立するとともに前記固定軸受の外周面との間に固定軸受隙間を形成する第1収容側面と、を有し、
前記可動軸受隙間は、前記固定軸受隙間よりも大きく形成されており、
前記第1収容側面は、前記プレート貫通孔に向けて開口しており、
前記固定軸受収容室と前記プレート貫通孔とは連通しており、
前記内側開口部は、前記第1収容側面よりも大きく開口していることを特徴とする変速機。
【請求項2】
前記離間面は、前記両支持面よりも前記高速シャフトの径方向外側に凹んでいる請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
前記可動軸受は、外輪と、前記可動ローラの回転に伴って前記外輪に対して相対回転する内輪と、を有する転がり軸受であり、
前記底面は、前記外輪が当接し且つ前記内輪が当接しないように形成された当接部を含む請求項1又は請求項2に記載の変速機。
【請求項4】
前記底面は、
前記収容側面に沿って延びた外側底部と、
前記外側底部の内側に配置され、前記外側底部よりも凹んだ内側底部と、
を有する段差状であり、
前記当接部は前記外側底部である請求項3に記載の変速機。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか一項に記載の変速機と、
前記低速シャフトを回転させる電動モータと、
前記高速シャフトに取り付けられたインペラと、
を備えていることを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項6】
前記遠心圧縮機は、前記プレート部と協働して、前記インペラが収容されるインペラ室を区画するコンプレッサハウジングを備え、
前記プレート部は、前記変速機ハウジングの内部空間である変速機室と、前記インペラ室とを仕切る壁部である請求項5に記載の遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機及びその変速機を備えた遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、低速シャフトと高速シャフトとの間で動力を伝達する変速機が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の変速機は、変速機ハウジングと、低速シャフトの回転に伴って回転する環状のリング部と、リング部の内側に配置された高速シャフトと、リング部と高速シャフトとの間に設けられ、リング部の内周面及び高速シャフトの外周面の双方と当接する外周面を有する複数のローラと、を備えている。また、特許文献1には、複数のローラの少なくとも1つが可動ローラである点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-308757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、変速機は、可動ローラを回転可能に支持する可動軸受を備える場合がある。この場合、可動軸受は可動ローラが移動可能な状態で可動ローラを支持する必要があるため、可動軸受は移動することが考えられる。
【0005】
かかる構成においては、位置ずれや寸法誤差などによって可動軸受が変速機ハウジングに対して引っ掛かると、可動ローラの移動が可動軸受によって阻害されるおそれがある。また、可動軸受が変速機ハウジングと摺動すると、摩耗が懸念される。
【0006】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は可動軸受が円滑に移動することができる変速機及びその変速機を備えた遠心圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する変速機は、変速機ハウジングと、前記変速機ハウジング内に設けられ、低速シャフトの回転に伴って回転する環状のリング部と、前記リング部の内側に配置された高速シャフトと、前記リング部と前記高速シャフトとの間に設けられ、前記リング部の内周面及び前記高速シャフトの外周面の双方と当接している3つ以上のローラと、前記ローラを回転可能な状態で前記変速機ハウジングに支持するのに用いられるラジアル軸受と、を備え、前記ローラは、前記リング部の回転に応じて、前記リング部の回転方向に移動する可動ローラと、前記リング部の回転方向に移動しないように固定された固定ローラと、を含み、前記ラジアル軸受は、前記可動ローラを回転可能に支持する可動軸受を含み、前記変速機ハウジングは、前記可動軸受と当接することにより前記可動ローラを第1位置に規制する第1支持面と、前記第1支持面よりも前記回転方向に離れた位置に設けられ、前記可動軸受と当接することにより前記可動ローラを第2位置に規制する第2支持面と、を備え、前記可動ローラの移動は、前記第1位置から前記第2位置までの移動区間で行われ、前記移動区間は、前記高速シャフトの径方向における前記可動ローラの支持が、前記変速機ハウジングに対して前記可動軸受を介してなされることなく、前記リング部と前記高速シャフトとの挟持によりなされる特定区間を含むことを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、第1位置から前記第2位置までの移動区間に特定区間が含まれているため、可動ローラが第1位置から第2位置に移動する場合に、可動軸受と変速機ハウジングとが摺動しにくくなっている。これにより、可動軸受が円滑に移動することができるため、可動ローラの回転方向の移動が可動軸受によって阻害されるという事態を抑制できるとともに、可動軸受と変速機ハウジングとが摺動することに起因する摩耗を抑制することができる。
【0009】
また、特定区間では、高速シャフトの径方向における可動ローラの支持がリング部と高速シャフトとの挟持によりなされるため、可動ローラは径方向に位置ずれしにくい。よって、特定区間に起因する高速シャフトの位置ずれは生じにくいため、高速シャフトの位置ずれを抑制しつつ上述した効果を得ることができる。
【0010】
上記変速機について、前記変速機ハウジングは、前記可動軸受を収容する可動軸受収容室を区画する面として、底面と、当該底面から前記高速シャフトの軸方向に起立し且つ前記第1支持面及び前記第2支持面を有する収容側面と、を備え、前記収容側面は、前記可動軸受の外周面に対して離間した位置に設けられた離間面を含み、前記特定区間では、前記離間面と前記可動軸受の外周面との間に隙間が形成されているとよい。
【0011】
かかる構成によれば、離間面と可動軸受の外周面との間に隙間が形成されていることによって、離間面と可動軸受とが摺動することを抑制できる。これにより、上述した効果を得ることができる。
【0012】
上記変速機について、前記第1支持面及び前記第2支持面は、前記可動軸受の外周面の曲率よりも小さい曲率の湾曲面であり、前記第1支持面と前記第2支持面とは互いに対向しており、前記離間面は、前記両支持面の対向方向に延びて前記第1支持面の端部と前記第2支持面の端部とを繋いでいるとよい。
【0013】
かかる構成によれば、第1支持面及び第2支持面が可動軸受の外周面の曲率よりも小さい曲率で湾曲しているため、両支持面と可動軸受との間に遊びが生じる。これにより、回転方向への移動の際に可動軸受が多少位置ずれした場合であっても、両支持面は可動軸受を支持することができる。
【0014】
また、第1支持面及び第2支持面の曲率を可動軸受の外周面の曲率よりも小さくすることによって、両支持面の端部と可動軸受とを離間させることができる。これにより、両支持面の端部をつなぐ離間面は可動軸受から離れることとなり隙間が形成される。よって、両支持面による可動軸受の支持を好適に行いつつ隙間を形成することができる。
【0015】
上記変速機について、前記離間面は、前記両支持面よりも前記高速シャフトの径方向外側に凹んでいるとよい。
かかる構成によれば、隙間をより広くすることができるため、離間面が可動軸受の移動を阻害する事態をより抑制できる。
【0016】
上記変速機について、前記変速機ハウジングは、プレート部を備え、前記プレート部は、前記可動軸受を収容する可動軸受収容室を区画する面として、底面と、当該底面から前記高速シャフトの軸方向に起立し且つ前記第1支持面及び前記第2支持面を有する収容側面と、を有し、前記プレート部には、前記高速シャフトが挿通されるプレート貫通孔が形成されており、前記収容側面には、前記高速シャフトの径方向内側に向けて開口した内側開口部が形成されており、前記可動軸受収容室と前記プレート貫通孔とは、前記内側開口部を介して連通しており、前記可動軸受の一部は、前記プレート貫通孔内に入り込んでいるとよい。
【0017】
かかる構成によれば、可動軸受の一部がプレート貫通孔内に入り込んでいることにより、可動軸受と高速シャフトとを互いに近づけることができ、高速シャフトの径方向における変速機の小型化を図ることができる。また、可動軸受におけるプレート貫通孔内に入り込んでいる部分は、収容側面と摺動することはない。したがって、可動軸受と収容側面との摺動を抑制でき、可動軸受の移動をより円滑にすることができる。
【0018】
上記変速機について、前記変速機ハウジングは、前記可動軸受を収容する可動軸受収容室を区画する面として、底面と、当該底面から前記高速シャフトの軸方向に起立し且つ前記第1支持面及び前記第2支持面を有する収容側面と、を有し、前記可動軸受は、外輪と、前記可動ローラの回転に伴って前記外輪に対して相対回転する内輪と、を有する転がり軸受であり、前記底面は、前記外輪が当接し且つ前記内輪が当接しないように形成された当接部を含むとよい。
【0019】
かかる構成によれば、当接部が外輪と当接することにより、可動軸受を支持することができる。外輪は、内輪よりも、可動ローラの回転に伴って回転しにくいため、外輪と当接部との間で摺動が生じにくい。また、内輪と当接部とは当接しないため、摺動が生じにくい。これにより、摺動に起因する摩耗を抑制しつつ可動軸受を支持できる。
【0020】
上記変速機について、前記底面は、前記収容側面に沿って延びた外側底部と、前記外側底部の内側に配置され、前記外側底部よりも凹んだ内側底部と、を有する段差状であり、前記当接部は前記外側底部であるとよい。
【0021】
かかる構成によれば、外側底部が収容側面に沿って延びていることにより、可動軸受が移動した場合であっても外側底部と可動軸受とが当接する。これにより、移動する可動軸受を支持することができる。また、内側底部は外側底部よりも凹んでいるため、内側底部が可動軸受と当接しにくい。これにより、内側底部と可動軸受との摺動を抑制できる。
【0022】
上記目的を達成する遠心圧縮機は、上述した変速機と、前記低速シャフトを回転させる電動モータと、前記高速シャフトに取り付けられたインペラと、を備えていることを特徴とする。かかる構成によれば、遠心圧縮機において上述した効果を得ることができる。
【0023】
上記遠心圧縮機について、前記変速機ハウジングは、プレート部を備え、前記プレート部は、前記可動軸受を収容する可動軸受収容室を区画する面として、底面と、当該底面から前記高速シャフトの軸方向に起立し且つ前記第1支持面及び前記第2支持面を有する収容側面と、を有し、前記遠心圧縮機は、前記プレート部と協働して、前記インペラが収容されるインペラ室を区画するコンプレッサハウジングを備え、前記プレート部は、前記変速機ハウジングの内部空間である変速機室と、前記インペラ室とを仕切る壁部であるとよい。
【0024】
かかる構成によれば、プレート部がインペラ室を区画するものとして兼用されるため、構成の簡素化を図ることができる。かかる構成においては、インペラにて発生した熱がプレート部に伝達され、プレート部が熱膨張するおそれがある。すると、収容側面が若干ずれてしまい、可動軸受収容室内に収容される可動軸受の移動に支障が生じる不都合が懸念される。
【0025】
この点、本構成によれば、特定区間が設けられているため、仮にプレート部の熱膨張が発生した場合であっても、可動軸受の移動に支障が生じにくい。これにより、上記不都合を抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、可動軸受が円滑に移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】遠心圧縮機の一例を模式的に示す断面図。
図2図1の2-2線断面図。
図3】ローラ、ローラ軸受、及び第2パーツを模式的に示す分解斜視図。
図4】プレート部及び各プレート軸受を模式的に示す正面図。
図5図4の5-5線断面図。
図6】第3ローラが第1位置にある場合の第3プレート軸受の部分拡大図。
図7図6の7-7線断面図。
図8】第3ローラが第1位置と第2位置との中間位置にある場合の第3プレート軸受の正面図。
図9】第3ローラが第2位置にある場合の第3プレート軸受の正面図。
図10】別例の第3プレート軸受収容室を示す正面図。
図11図10の11-11線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、変速機及びその変速機を備えた遠心圧縮機の一実施形態について説明する。なお、以下の記載は、一例を示すものであり、変速機及び遠心圧縮機が本実施形態の内容に限定されるものではない。
【0029】
本実施形態では、遠心圧縮機は、燃料電池が搭載された燃料電池車両(FCV)に搭載されており、当該燃料電池に対して空気を送るのに用いられる。
図1に示すように、遠心圧縮機10は、低速シャフト11と、低速シャフト11を回転させる電動モータ13と、高速シャフト12及び変速機ハウジング22を有する変速機14と、高速シャフト12の回転によって流体(本実施形態では空気)を圧縮する圧縮部15とを備えている。両シャフト11,12は、例えば金属で構成されており、詳細には鉄又は鉄の合金で構成されている。
【0030】
遠心圧縮機10は、電動モータ13が収容されたモータハウジング21と、流体が吸入される吸入口23aが形成されたコンプレッサハウジング23と、を備えている。モータハウジング21、コンプレッサハウジング23、及び変速機ハウジング22は互いに取り付けられている。詳細には、変速機ハウジング22の第1方向からモータハウジング21が取り付けられ、変速機ハウジング22における第1方向とは反対方向からコンプレッサハウジング23が取り付けられている。モータハウジング21、コンプレッサハウジング23及び変速機ハウジング22が協働して、遠心圧縮機10の外郭を構成している。以下、説明の便宜上、モータハウジング21、コンプレッサハウジング23及び変速機ハウジング22を合わせて単にハウジング20という。
【0031】
ハウジング20は、例えば全体として略筒状(詳細には円筒状)である。ハウジング20内に、両シャフト11,12、電動モータ13、及び圧縮部15が収容されている。ハウジング20は、例えばアルミニウムによって構成されている。ただし、これに限られず、ハウジング20を構成する材料は任意である。吸入口23aは、ハウジング20の軸線方向の一端面20aに設けられている。
【0032】
モータハウジング21は、全体として底部21aを有する筒状(詳細には円筒状)である。モータハウジング21の底部21aの外面が、ハウジング20の軸線方向の両端面20a,20bのうち、吸入口23aがある一端面20aとは反対側の他端面20bを構成している。
【0033】
変速機14の一部である変速機ハウジング22は、ハウジング20の軸線方向から互いに組み付けられた第1パーツ24及び第2パーツ25を有している。両パーツ24,25によって変速機14の各種部品が収容された変速機室S2が形成されている。変速機室S2は、第2パーツ25の内面と第1パーツ24の内面とによって区画された変速機ハウジング22の内部空間とも言える。
【0034】
第1パーツ24は、全体として底部24aを有する筒状(詳細には円筒状)である。モータハウジング21と第1パーツ24とは、モータハウジング21の開口端が第1パーツ24の底部24aに突き合わさった状態で連結されている。モータハウジング21の内面と、第1パーツ24の底部24aにおけるモータハウジング21側の面とによって、電動モータ13が収容されたモータ収容室S1が形成されている。当該モータ収容室S1には、低速シャフト11の回転軸線方向とハウジング20の軸線方向とが一致する状態で、低速シャフト11が収容されている。
【0035】
低速シャフト11は、回転可能な状態でハウジング20に支持されている。詳細には、モータハウジング21の底部21aには、低速シャフト11の第1端部11aを回転可能に支持する第1シャフト軸受31が設けられている。また、第1パーツ24の底部24aには、低速シャフト11の第1端部11aとは反対側の第2端部11bが挿通される貫通孔24bが形成されており、当該貫通孔24bの内面には、第2端部11bを回転可能に支持する第2シャフト軸受32が設けられている。
【0036】
ちなみに、図1に示すように、低速シャフト11の第2端部11bは、第1パーツ24の貫通孔24bに挿通されており、低速シャフト11の一部は、変速機ハウジング22(換言すれば変速機室S2)内に配置されている。また、第1パーツ24の貫通孔24bの内面と低速シャフト11の第2端部11bとの間には、第1パーツ24内に存在するオイルがモータ収容室S1に流れるのを規制するシール部材33が設けられている。
【0037】
モータ収容室S1内に収容されている電動モータ13は、低速シャフト11に固定されたロータ41と、ロータ41の外側に配置されるものであってモータハウジング21の内面に固定されたステータ42とを備えている。ロータ41の回転軸線とステータ42の中心軸線とは、低速シャフト11の回転軸線と同一軸線上に配置されている。ロータ41とステータ42とは低速シャフト11の径方向に対向している。
【0038】
ステータ42は、円筒形状のステータコア43と、ステータコア43に捲回されたコイル44とを備えている。コイル44に電流が流れることによって、ロータ41と低速シャフト11とが一体的に回転する。
【0039】
第2パーツ25は、例えば、底部を構成するプレート部26を有する筒状(詳細には円筒状)であり、第1パーツ24に向けて開口している。第2パーツ25と、軸線方向の一方が開口した有底筒状の第1パーツ24とは、当該開口端同士が突き合わさった状態で組み付けられている。
【0040】
プレート部26は、変速機室S2を区画している第1板面26aと、第1板面26aとは反対側の第2板面26bと、を有している。両板面26a,26bは、高速シャフト12の回転軸線方向Zに対して交差しており、一例としては直交している。なお、説明の便宜上、高速シャフト12の回転軸線方向Zを単に回転軸線方向Zともいう。回転軸線方向Zは、高速シャフト12の軸方向である。
【0041】
図1に示すように、第2パーツ25のプレート部26には、変速機14の一部を構成する高速シャフト12が挿通可能なプレート貫通孔26cが形成されている。高速シャフト12の一部は、プレート貫通孔26cを介してコンプレッサハウジング23内に配置されている。
【0042】
プレート貫通孔26cの内面と高速シャフト12との間には、変速機ハウジング22内のオイルがコンプレッサハウジング23内に流出するのを規制するシール部材50aが設けられている。シール部材50aは、当該シール部材50aとプレート貫通孔26cの内面との間にオイルが入り込む隙間が形成されないように、プレート貫通孔26cの内面に嵌合している。
【0043】
高速シャフト12には、シール部材50aと当接するストッパ部50bが形成されている。ストッパ部50bは、高速シャフト12から当該高速シャフト12の径方向Rに突出したフランジ状に形成されている。ストッパ部50bは、プレート貫通孔26c内に配置されている。シール部材50aはストッパ部50bを押圧した状態でプレート貫通孔26c内に設けられている。
【0044】
ここで、説明の便宜上、以降の説明において、高速シャフト12の径方向Rを単に径方向Rという。径方向Rは低速シャフト11の径方向と一致している。
図1に示すように、本実施形態では、ストッパ部50bとプレート貫通孔26cの内面とは径方向Rに離間しており、両者の間には隙間が形成されている。例えば、ストッパ部50bと高速シャフト12とは例えば一体形成されている。ただし、これに限られず、ストッパ部50bと高速シャフト12とは別体に設けられていてもよい。
【0045】
コンプレッサハウジング23は、軸線方向に貫通したコンプ貫通孔51を有する略筒状である。コンプレッサハウジング23の軸線方向の一端面23bがハウジング20の軸線方向の一端面20aを構成しており、コンプ貫通孔51における上記一端面23b側にある開口が吸入口23aとして機能する。
【0046】
コンプレッサハウジング23と第2パーツ25とは、コンプレッサハウジング23の軸線方向の一端面23bとは反対側の他端面23cと、プレート部26における第1板面26aとは反対側の第2板面26bとが突き合わさった状態で、組み付けられている。この場合、コンプ貫通孔51の内面とプレート部26の第2板面26bとによって、圧縮部15としてのインペラ52が収容されたインペラ室S3が形成されている。つまり、コンプ貫通孔51は、吸入口23aとして機能するとともに、インペラ室S3を区画するものとして機能する。吸入口23aとインペラ室S3とは連通している。
【0047】
すなわち、コンプレッサハウジング23は、プレート部26と協働してインペラ室S3を区画するものともいえるし、プレート部26は、変速機室S2とインペラ室S3とを仕切る壁部ともいえる。
【0048】
ここで、コンプ貫通孔51は、吸入口23aから軸線方向の途中位置までは一定の径であり、上記途中位置からプレート部26の第2板面26bに向かうに従って徐々に拡径した略円錐台形状となっている。このため、コンプ貫通孔51の内面によって区画されるインペラ室S3は、略円錐台形状となっている。
【0049】
インペラ52は、基端面52aから先端面52bに向かうに従って徐々に縮径した筒状である。インペラ52は、インペラ52の回転軸線方向に延び、且つ、高速シャフト12が挿通可能な挿通孔52cを有している。インペラ52は、高速シャフト12におけるコンプ貫通孔51内に突出している部分が挿通孔52cに挿通された状態で、高速シャフト12と一体回転するように高速シャフト12に取り付けられている。これにより、高速シャフト12が回転することによってインペラ52が回転して、吸入口23aから吸入された流体が圧縮される。
【0050】
また、遠心圧縮機10は、インペラ52によって圧縮された流体が流入するディフューザ流路53と、ディフューザ流路53を通った流体が流入する吐出室54とを備えている。ディフューザ流路53は、コンプレッサハウジング23におけるコンプ貫通孔51の第2板面26b側の開口端と連続し且つ当該第2板面26bと対向する面と、プレート部26の第2板面26bとによって区画された流路である。ディフューザ流路53は、インペラ室S3よりも径方向R外側に配置されており、インペラ52(及びインペラ室S3)を囲むように環状(詳細には円環状)に形成されている。吐出室54は、ディフューザ流路53よりも径方向R外側に配置された環状である。インペラ室S3と吐出室54とはディフューザ流路53を介して連通している。インペラ52によって圧縮された流体は、ディフューザ流路53を通ることによって、更に圧縮されて吐出室54に流れ、当該吐出室54から吐出される。
【0051】
次に、変速機14について説明する。
本実施形態の変速機14は、高速シャフト12を有し、低速シャフト11の回転を増速させて高速シャフト12に伝達する増速機である。変速機14は、例えば所謂トラクションドライブ式(摩擦ローラ式)である。
【0052】
図1に示すように、変速機14は、低速シャフト11の第2端部11bに連結された板状のベース部61と、当該ベース部61の両端部に取り付けられたリング部62と、を備えている。ベース部61及びリング部62は、変速機ハウジング22(換言すれば変速機室S2)内に収容されている。ベース部61及びリング部62は、低速シャフト11の回転に伴って回転する。
【0053】
リング部62は、例えば金属で構成されている。リング部62は、回転軸線方向Zを軸線方向として、ベース部61からプレート部26に向けて延びている。リング部62は、当該リング部62の回転軸線方向から見て環状(詳細には円環状)に形成されており、内周面63及び外周面64を有している。本実施形態では、リング部62の内周面63の径は、リング部62の回転軸線方向に関わらず一定であり、当該径は、低速シャフト11の第2端部11bの径よりも長く設定されている。
【0054】
本実施形態では、リング部材60は、ベース部61の回転軸線(リング部材60の回転軸線)と低速シャフト11の回転軸線とが一致するように低速シャフト11に連結されている。この場合、リング部62の回転軸線も低速シャフト11の回転軸線と一致している。なお、リング部62の内径及び外径とは、低速シャフト11の回転軸線を中心とする径である。
【0055】
低速シャフト11の回転軸線方向と、高速シャフト12の回転軸線方向Zと、リング部62の回転軸線方向とは一致している。このため、高速シャフト12の回転軸線方向Zは、リング部62の回転軸線方向、又は低速シャフト11の回転軸線方向と言い換えることもできる。また、説明の便宜上、リング部62の回転方向を単に回転方向Mという。
【0056】
高速シャフト12の一部は、リング部62の内側に配置されている。そして、図2に示すように、変速機14は、高速シャフト12とリング部62との間に設けられ、リング部62の内周面63及び高速シャフト12の外周面12aの双方と当接している複数のローラ71~73を備えている。各ローラ71~73は、変速機ハウジング22(換言すれば変速機室S2)内に収容されている。
【0057】
各ローラ71~73は例えば金属で構成されている。詳細には、各ローラ71~73は、高速シャフト12及びリング部材60(リング部62)と同一金属、例えば鉄又は鉄の合金で構成されている。高速シャフト12、リング部62及び各ローラ71~73にはオイルが供給される。
【0058】
各ローラ71~73は円柱状である。各ローラ71~73の回転軸線方向は、高速シャフト12の回転軸線方向Zと一致している。このため、回転軸線方向Zは、各ローラ71~73の回転軸線方向と言い換えることもできる。複数のローラ71~73は、高速シャフト12を囲むように高速シャフト12の周方向に並んで配置されている。
【0059】
ここで、本実施形態の各ローラ71~73のうち第1ローラ71及び第2ローラ72は、回転可能な状態で変速機ハウジング22に固定された固定ローラである。第1ローラ71及び第2ローラ72は、リング部62(換言すれば低速シャフト11)の回転に関わらず、回転方向Mに移動しないように変速機ハウジング22に固定されている。一方、第3ローラ73は、リング部62(換言すれば低速シャフト11)の回転に応じて、リング部62の回転方向Mに移動する可動ローラである。
【0060】
図1及び図2に示すように、変速機14は、変速機ハウジング22(詳細には第2パーツ25)と協働して各ローラ71~73を回転可能に支持する支持部材80を備えている。支持部材80はリング部62内に配置されている。
【0061】
支持部材80は、リング部62よりも一回り小さく形成された円板状の支持ベース部81と、当該支持ベース部81から起立した柱状の3つの支持部82~84と、を備えている。
【0062】
支持ベース部81は、リング部材60のベース部61と板面同士が対向する位置に配置されている。支持ベース部81は、プレート部26に対して回転軸線方向Zに対向配置されている。支持ベース部81は、プレート部26の第1板面26aと対向する対向板面81aを備えている。
【0063】
3つの支持部82~84は、対向板面81aからプレート部26に向けて起立しており、リング部62の内周面63と、隣り合う2つのローラの外周面とによって区画された3つの空間を埋めるように形成されている。
【0064】
図1及び図2に示すように、各支持部82~84には、固定具としてのボルト91が螺合可能なネジ孔92が形成されている。ネジ孔92に対応させて、プレート部26の第1板面26aには、ネジ孔92と連通するネジ穴93が形成されている。各支持部82~84は、ネジ孔92とネジ穴93とが連通し、且つ、当該各支持部82~84の先端面が第1板面26aに突き合わさった位置に配置されており、その状態でネジ孔92とネジ穴93とに跨るようにボルト91が螺合されることによってプレート部26に固定される。
【0065】
第1ローラ71、第2ローラ72及び第3ローラ73は、プレート部26と支持ベース部81との間に配置されている。各支持部82~84は、第1ローラ71及び第2ローラ72がリング部62の移動に伴ってリング部62の周方向に移動しないように構成されている一方、第3ローラ73が回転方向Mに移動できるように構成されている。
【0066】
詳細には、図2に示すように、第1支持部82は、第1ローラ71の外周面71aに対して第1隙間Cr1を介して対向する第1湾曲面82aと、第2ローラ72の外周面72aに対して第1隙間Cr1を介して対向する第2湾曲面82bと、を有している。第1湾曲面82aは、第1ローラ71の外周面71aに沿うように延びている。第2湾曲面82bは、第2ローラ72の外周面72aに沿うように延びている。
【0067】
第2支持部83は、第2ローラ72の外周面72aに対して第1隙間Cr1を介して対向する第3湾曲面83aと、第3ローラ73の外周面73aに対して第1隙間Cr1よりも大きい第2隙間Cr2を介して対向する第4湾曲面83bと、を有している。第3湾曲面83aは、第2ローラ72の外周面72aに沿うように延びている。第4湾曲面83bは、第3ローラ73の外周面73aに沿うように延びている。
【0068】
第3支持部84は、第3ローラ73の外周面73aに対して第1隙間Cr1を介して対向する第5湾曲面84aと、第1ローラ71の外周面71aに対して第1隙間Cr1を介して対向する第6湾曲面84bと、を有している。第5湾曲面84aは、第3ローラ73の外周面73aに沿うように延びている。第6湾曲面84bは、第1ローラ71の外周面71aに沿うように延びている。
【0069】
かかる構成によれば、第3ローラ73の外周面73aと第4湾曲面83bとの間には第1隙間Cr1よりも大きい第2隙間Cr2が形成されているため、第3ローラ73は、回転方向Mに移動することができる。詳細には、第3ローラ73は、第1位置と、第1位置よりも回転方向Mに離れた第2位置との間を移動することができる。本実施形態では、第1位置は、第3ローラ73の外周面73aと第5湾曲面84aとが第1隙間Cr1を介して対向している位置であり、第2位置は、第3ローラ73の外周面73aと第4湾曲面83bとが第1隙間Cr1を介して対向している位置である。
【0070】
一方、第1ローラ71及び第2ローラ72と各支持部82~84との間には第2隙間Cr2よりも小さい第1隙間Cr1が形成されている。当該第1隙間Cr1は、両ローラ71,72と各支持部82~84との摺動を回避するための隙間である。
【0071】
ちなみに、図2に示すように、各ローラ71~73は、リング部62と高速シャフト12とによって径方向Rから挟持されており、リング部62によって径方向R内側に向けて押圧されている。これにより、第3ローラ73を含めて、各ローラ71~73は、径方向Rへの移動が規制されている。
【0072】
ここで、各ローラ71~73の径(各ローラ71~73における回転軸線方向Zと交わる方向の長さ)は高速シャフト12の径よりも長く設定されている。各ローラ71~73の径は、リング部62内に各ローラ71~73が配置可能となるように、リング部62の内周面63の半径より短く設定されている。
【0073】
図2に示すように、第2ローラ72の径と、第1ローラ71及び第3ローラ73の径とは異なっており、詳細には第2ローラ72の径が、第1ローラ71及び第3ローラ73の径よりも長く設定されている。このため、各ローラ71~73によって押し付けられて支持された高速シャフト12と、リング部62(換言すれば低速シャフト11)とは偏心している。詳細には、高速シャフト12の回転軸線とリング部62の回転軸線とは、ずれている。
【0074】
図1に示すように、高速シャフト12の外周面12aには、当該外周面12aから径方向R外側に突出した一対のフランジ部96が設けられている。一対のフランジ部96は、回転軸線方向Zに離間して対向配置されている。複数のローラ71~73は、一対のフランジ部96によって回転軸線方向Zから挟まれている。これにより、回転軸線方向Zにおける高速シャフト12と複数のローラ71~73との位置ずれが抑制されている。例えばインペラ52の回転によって回転軸線方向Zのスラスト力が発生した場合、第1ローラ71における回転軸線方向Zのインペラ52側の端面と、一対のフランジ部96のうちインペラ52側に配置されているフランジ部96とが当接し、それ以上の移動が規制される。
【0075】
一対のフランジ部96の回転軸線方向Zの離間距離は、各ローラ71~73の回転軸線方向Zの長さよりも若干広く設定されている。このため、フランジ部96とローラ71~73の回転軸線方向Zの端面との間には、オイルが入り込み可能な隙間が形成されている。
【0076】
支持ベース部81の中央部には、フランジ部96よりも一回り大きい貫通孔81bが形成されており、当該貫通孔81b内に、ベース部61側にあるフランジ部96が配置されている。
【0077】
また、インペラ52側に配置されているフランジ部96は、ストッパ部50bに対してシール部材50aとは反対側に設けられている。本実施形態では、フランジ部96は、ストッパ部50bよりも径方向Rに短く形成されている。
【0078】
図1及び図3に示すように、遠心圧縮機10(詳細には変速機14)は、複数のローラ71~73を回転可能な状態で変速機ハウジング22に支持するのに用いられる複数のローラ軸受101~106を備えている。複数のローラ軸受101~106はそれぞれラジアル軸受である。本実施形態では、ローラ軸受101~106が「ラジアル軸受」に対応する。
【0079】
ローラ軸受101~106は、プレート部26に取り付けられるプレート軸受101~103と、支持部材(詳細には支持ベース部81)に取り付けられる支持軸受104~106と、を含む。既に説明したとおり、支持ベース部81を有する支持部材80は、変速機ハウジング22の一部であるプレート部26に固定されているため、支持ベース部81に取り付けられる支持軸受104~106は、支持部材80を介して変速機ハウジング22に取り付けられていると言える。
【0080】
複数のプレート軸受101~103は、例えば円環状に形成されている。複数のプレート軸受101~103は、例えば内輪101a~103aと、外輪101b~103bと、内輪101a~103a及び外輪101b~103bの間に設けられた転動体101c~103cと、を有する転がり軸受である。内輪101a~103aは、ローラ71~73の回転に伴って、外輪101b~103bに対して相対回転する。つまり、外輪101b~103bは、内輪101a~103aよりも、ローラ71~73の回転に伴って回転しにくい。
【0081】
プレート軸受101~103は、外周面101d~103dを有している。プレート軸受101~103の外周面101d~103dは、外輪101b~103bの外周面であり、プレート軸受101~103の外径は、外輪101b~103bの外径である。また、複数のプレート軸受101~103の内径は内輪101a~103aの内径である。なお、支持軸受104~106の構成は、プレート軸受101~103と同一であるため、説明を省略する。
【0082】
図1,3,4に示すように、各ローラ71~73における回転軸線方向Zの両端面には、該両端面から突出した突起111~116が形成されている。突起111~116は、例えば上記両端面の中央に設けられた円柱状である。突起111~116は、プレート部26側にあるプレート突起111~113と、支持ベース部81側にある支持突起114~116と、によって構成されている。なお、説明の便宜上、図4においてはプレート突起111~113をハッチングにて図示している。
【0083】
変速機ハウジング22の一部であるプレート部26には、プレート軸受101~103を収容するプレート軸受収容室S11~S13が形成されている。プレート軸受101~103は、プレート突起111~113を回転可能に支持した状態でプレート軸受収容室S11~S13内に配置されている。プレート突起111~113は、プレート軸受101~103の内輪101a~103aに嵌っている。
【0084】
同様に、支持部材80の支持ベース部81には、支持軸受104~106を収容する3つの支持軸受収容室が形成されている。支持軸受104~106はそれぞれ、支持突起114~116を回転可能に支持した状態で支持軸受収容室内に配置されている。これにより、支持突起114~116は、支持軸受104~106によって支持ベース部81に支持されている。
【0085】
以上のことから、各ローラ71~73は、ローラ軸受101~106によって回転可能に変速機ハウジング22に支持されている。本実施形態では、第3プレート軸受103が「可動軸受」に対応し、第3プレート軸受収容室S13が「可動軸受収容室」に対応する。
【0086】
次に、ローラ軸受101~106及びローラ軸受101~106を収容する室について説明する。ここで、支持軸受104~106及び支持軸受収容室の構成は、プレート軸受101~103及びプレート軸受収容室S11~S13と同一である。このため、以下では、プレート軸受101~103及びプレート軸受収容室S11~S13について詳細に説明し、支持軸受104~106及び支持軸受収容室の詳細な説明については省略する。
【0087】
プレート軸受収容室S11~S13は、高速シャフト12に対して当該高速シャフト12の径方向R外側に配置されている。詳細には、既に説明したとおり、プレート部26には、高速シャフト12が挿通されるプレート貫通孔26cが形成されており、プレート軸受収容室S11~S13は、プレート貫通孔26cの周囲に形成されている。例えば、プレート軸受収容室S11~S13は、プレート貫通孔26cの周囲において等間隔(120°)に配置されている。
【0088】
図4などに示すように、プレート軸受収容室S11~S13はプレート貫通孔26cと連通しており、プレート軸受収容室S11~S13に収容されるプレート軸受101~103の一部は、プレート貫通孔26c内に入り込んでいる。この場合、図5に示すように、プレート貫通孔26c内におけるプレート軸受収容室S11~S13の径方向R内側には、フランジ部96及びストッパ部50bが配置されている。
【0089】
また、既に説明したとおり、径方向Rにおけるストッパ部50bとプレート貫通孔26cの内面との間には隙間が形成されており、フランジ部96はストッパ部50bよりも径方向Rに短い。このため、プレート軸受101~103と、ストッパ部50b及びフランジ部96との間には隙間が形成されており、プレート軸受101~103と、ストッパ部50b及びフランジ部96とが干渉しないようになっている。
【0090】
回転軸線方向Zから見て、プレート軸受101~103におけるプレート貫通孔26c内に入り込んでいる部分は、シール部材50aと重なっている。すなわち、本実施形態では、プレート軸受101~103とシール部材50aとは、回転軸線方向Zにずれて配置されているとともに、更にプレート軸受101~103は回転軸線方向Zから見てプレート軸受101~103の一部がシール部材50aと重なるように高速シャフト12に近づけて配置されている。これにより、径方向Rにおける変速機14の小型化を図ることができる。そして、プレート軸受101~103と高速シャフト12との間にストッパ部50b及びフランジ部96の少なくとも一方(本実施形態では双方)を配置することにより、プレート軸受101~103の径方向R内側のデッドスペースを有効活用することができ、変速機14の回転軸線方向Zの小型化を図ることができる。
【0091】
プレート軸受収容室S11~S13について詳細に説明する。
図3及び図4に示すように、プレート部26は、第1板面26aから凹んだプレート凹部121~123と、第1板面26aから起立したプレート起立部131~133とを有している。プレート軸受収容室S11~S13は、プレート凹部121~123とプレート起立部131~133とによって区画されている。
【0092】
図4及び図5を用いて第1プレート軸受収容室S11を区画する第1プレート凹部121及び第1プレート起立部131について説明する。
図4に示すように、第1プレート凹部121は、第1プレート軸受101の外形と同様に形成されている。詳細には、第1プレート軸受101が円板状に形成されていることに対応させて、第1プレート凹部121は、回転軸線方向Zから見て円形状である。第1プレート凹部121の径は、第1プレート軸受101の外径よりも若干大きい。第1プレート凹部121は、プレート貫通孔26cに向けて開口している。このため、第1プレート凹部121とプレート貫通孔26cとは連通している。
【0093】
図4及び図5に示すように、第1プレート凹部121は、第1底面141と、第1凹部側壁面142と、を有している。
第1底面141は、全体として円形状である。第1プレート凹部121の径とは、第1底面141の径ともいえる。
【0094】
本実施形態では、第1底面141は、段差状に形成されている。詳細には、第1凹部側壁面142に沿うように形成された第1外側底部141aと、第1外側底部141aの内側に形成され、第1外側底部141aよりも凹んだ第1内側底部141bと、を有している。
【0095】
第1外側底部141aは、所定の第1幅W1を有したリング状(詳細には円環状)に形成されており、第1凹部側壁面142に沿って周方向に延びている。換言すれば、第1外側底部141aは、第1凹部側壁面142から第1底面141の中心に向けて第1幅W1だけ延びている。本実施形態では、第1外側底部141aは、プレート貫通孔26cに向けて開口したC字状に形成されている。
【0096】
第1内側底部141bは、第1外側底部141aに囲まれている。第1内側底部141bは、回転軸線方向Zからみて略円形状に形成されている。
図5に示すように、本実施形態では、第1プレート軸受101の外輪101bは、第1外側底部141aと当接することによって支持されている。一方、第1プレート軸受101の内輪101aは、第1外側底部141aに当接しない。詳細には、第1プレート軸受101の内輪101aと第1内側底部141bとが対向しており、両者の間には隙間が形成されている。すなわち、本実施形態の第1外側底部141aは、外輪101bが当接し且つ内輪101aが当接しないように形成された当接部である。
【0097】
詳細には、第1幅W1は、第1プレート軸受101の外輪101bの厚さよりも広い。なお、外輪101bの厚さとは、外輪101bの径方向の長さともいえる。一方、第1幅W1は、第1外側底部141aの内周端が内輪101aの外周面よりも外側に位置に配置されるように、第1プレート軸受101全体の厚さよりは短く設定されている。
【0098】
第1凹部側壁面142は、第1底面141(詳細には第1外側底部141a)から起立しており、プレート貫通孔26cに向けて開口したC字状に形成されている。第1プレート凹部121の径は、第1凹部側壁面142の径ともいえる。
【0099】
第1プレート起立部131は、第1プレート凹部121の周縁部に形成されている。第1プレート起立部131は、第1凹部側壁面142と連続する第1起立側壁面143を有している。第1凹部側壁面142及び第1起立側壁面143は面一となっている。
【0100】
本実施形態の第1プレート軸受収容室S11は、第1底面141と第1収容側面144とによって区画されている。つまり、変速機ハウジング22は、第1プレート軸受収容室S11を区画する面として、第1底面141と第1収容側面144とを有する。
【0101】
本実施形態では、第1収容側面144は、両側壁面142,143によって構成されている。第1収容側面144は、第1底面141から回転軸線方向Zに起立している。第1収容側面144は、プレート貫通孔26cに向けて開口したC字状となっている。第1外側底部141aは、第1収容側面144に沿って延びている。
【0102】
図4及び図5に示すように、第1収容側面144は、回転軸線方向Zから見て、第1プレート軸受101の外周面101dよりも若干大きく形成されている。第1プレート軸受101は、第1収容側面144との間に軸受隙間Cr11が形成された状態で第1プレート軸受収容室S11内に収容されている。ここで、軸受隙間Cr11は、寸法誤差などによる位置ずれを許容するための「遊び」であり、第1隙間Cr1よりも小さい。このため、第1プレート軸受101は、第1収容側面144との当接によって回転方向Mへの移動が規制されている。換言すれば、第1収容側面144は、第1プレート軸受101が移動しないように第1プレート軸受101を囲んでいるといえる。すなわち、本実施形態の第1プレート軸受収容室S11は、第1プレート軸受101の回転方向Mへの移動が規制された状態で第1プレート軸受101を収容しているともいえる。
【0103】
第2プレート軸受収容室S12を区画する第2プレート凹部122及び第2プレート起立部132については、第1プレート凹部121及び第1プレート起立部131と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0104】
本実施形態では、第1プレート軸受101及び第2プレート軸受102が「固定軸受」に対応し、第1プレート軸受収容室S11及び第2プレート軸受収容室S12が「固定軸受収容室」に対応する。また、第1底面141が「固定収容底面」に対応し、第1収容側面144が「固定収容側面」に対応する。
【0105】
次に図6図9を用いて第3プレート軸受収容室S13を区画する第3プレート凹部123及び第3プレート起立部133について説明する。図6は、第3ローラ73が第1位置にある場合の第3プレート軸受103を模式的に示す正面図であり、図7図6の7-7線断面図である。図8は、第3ローラ73が第1位置と第2位置との中間位置にある場合の第3プレート軸受103の正面図である。図9は、第3ローラ73が第2位置にある場合の第3プレート軸受103を模式的に示す正面図である。
【0106】
図6及び図7に示すように、第3プレート凹部123は、第3プレート軸受103が回転方向Mに移動可能な状態で収容されるように形成されている。例えば、第3プレート凹部123は、回転方向M(換言すれば回転方向Mの接線方向)を長手方向とするオーバル形状に形成されている。第3プレート凹部123は、プレート貫通孔26cに向けて開口しており、第3プレート凹部123とプレート貫通孔26cとは連通している。
【0107】
第3プレート凹部123は、第3底面151と、第3底面151から起立した第3凹部側壁面152と、を有している。
第3底面151は、例えば回転方向Mを長手方向とするオーバル形状である。第3凹部側壁面152は、第3底面151と同様に、回転軸線方向Zから見て回転方向Mを長手方向とするオーバル形状に形成されている。第3凹部側壁面152は、完全に閉じた環状となっておらず、プレート貫通孔26cに向けて開口している。
【0108】
第3プレート起立部133は、第3プレート凹部123の周縁部に形成されている。第3プレート起立部133は、第3凹部側壁面152と連続する第3起立側壁面153を有している。第3凹部側壁面152及び第3起立側壁面153は面一となっている。
【0109】
本実施形態の第3プレート軸受収容室S13は、第3底面151と第3収容側面154とによって区画されている。つまり、変速機ハウジング22は、第3プレート軸受収容室S13を区画する面として、第3底面151と第3収容側面154とを有する。
【0110】
本実施形態では、第3収容側面154は、第3底面151から回転軸線方向Zに起立した面であり、第3凹部側壁面152及び第3起立側壁面153によって構成されている。本実施形態では、第3底面151が「可動軸受収容室を区画する」「底面」に対応し、第3収容側面154が「可動軸受収容室を区画する」「収容側面」に対応する。
【0111】
第3収容側面154には、プレート貫通孔26cに向けて開口した内側開口部155が形成されている。このため、第3収容側面154は、完全に閉じた環状ではなく、径方向R内側に開いた環状となっている。内側開口部155は径方向R内側に向けて開口している。第3プレート軸受収容室S13とプレート貫通孔26cとは、内側開口部155を介して連通している。
【0112】
第3プレート軸受103は、回転方向Mへの移動が可能な状態で第3プレート軸受収容室S13に収容されている。
詳細には、図6及び図9に示すように、第3収容側面154は、第3ローラ73が第1位置にある場合に第3プレート軸受103を支持する第1支持面161と、第3ローラ73が第2位置にある場合に第3プレート軸受103を支持する第2支持面162と、を備えている。
【0113】
第1支持面161は、第3ローラ73が第1位置にある場合に第3プレート軸受103と当接することにより第3プレート軸受103を支持している。第1支持面161は、例えば第3プレート軸受103の外周面103dの曲率よりも小さい曲率の湾曲面であり、回転方向Mとは反対方向に向けて凸となっている。第1支持面161は、第3ローラ73が第1位置にある場合に、第3プレート軸受103を回転方向Mから当接している。これにより、第3ローラ73が第1位置よりも回転方向Mとは反対方向に移動することが規制されている。換言すれば、第1支持面161は、第3プレート軸受103と当接することにより第3ローラ73を第1位置に規制するものである。
【0114】
本実施形態では、第1支持面161は例えば円弧面である。内側開口部155が形成されている関係上、第1支持面161の中心角度は180°よりも若干小さい。ただし、第1支持面161の中心角度は任意であり、180°よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0115】
第1支持面161は、プレート貫通孔26cの内面と繋がっている第1内側端部161aと、第1内側端部161aよりもプレート貫通孔26c(換言すれば高速シャフト12)から離れた第1外側端部161bと、を備えている。第1外側端部161bは、第3ローラ73が第1位置に配置されている状況において第3プレート軸受103に対して径方向R外側の離間した位置に配置されている。
【0116】
第2支持面162は、第1支持面161に対して回転方向Mに離れた位置に設けられている。第2支持面162は、第3ローラ73が第2位置にある場合に第3プレート軸受103と当接することにより第3プレート軸受103を支持している。第2支持面162は、例えば第3プレート軸受103の外周面103dの曲率よりも小さい曲率の湾曲面であり、回転方向Mに向けて凸となっている。第2支持面162は、第3ローラ73が第2位置にある場合に、第3プレート軸受103を回転方向Mとは反対方向から当接している。これにより、第3ローラ73が第1位置よりも回転方向Mに移動することが規制されている。換言すれば、第2支持面162は、第3プレート軸受103と当接することにより第3ローラ73を第2位置に規制するものである。
【0117】
すなわち、本実施形態では、第1支持面161と第2支持面162とは互いに対向しており、両支持面161,162は、互いに離れる方向に向けて凸となった湾曲面である。第3ローラ73の移動は、第1位置から第2位置までの移動区間で行われる。
【0118】
本実施形態では、第2支持面162は例えば円弧面である。内側開口部155が形成されている関係上、第2支持面162の中心角度は180°よりも小さい。ただし、第2支持面162の中心角度は任意であり、180°よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0119】
第2支持面162は、プレート貫通孔26cの内面と繋がっている第2内側端部162aと、第2内側端部162aよりもプレート貫通孔26c(換言すれば高速シャフト12)から離れた第2外側端部162bと、を備えている。第2外側端部162bは、第3ローラ73が第2位置に配置されている状況において第3プレート軸受103に対して径方向R外側の離間した位置に配置されている。
【0120】
第1支持面161と第3プレート軸受103の外周面103dとの曲率の違いに起因して、第1支持面161と第3プレート軸受103との間には径方向Rに隙間が生じている。同様に、第2支持面162と第3プレート軸受103との間には径方向Rに隙間が生じている。
【0121】
ここで、図6図9に示すように、変速機ハウジング22には、第3ローラ73が第1位置から第2位置に移動する場合の第3プレート軸受103に対して径方向R外側に配置された特定空間Cr12が形成されている。本実施形態では、特定空間Cr12は、第3プレート軸受収容室S13内に設けられている。
【0122】
本実施形態では、第3収容側面154は、第3プレート軸受103(詳細には第3プレート軸受103の外周面103d)に対して離間して設けられた離間面163を含む。離間面163は、第3プレート軸受103に対して径方向R外側の離間した位置に設けられている。詳細には、離間面163は、第3ローラ73が第1位置から第2位置に移動する場合における第3プレート軸受103の移動軌跡よりも径方向R外側に離間して配置されている。特定空間Cr12は、第3プレート軸受103の位置に関わらず、離間面163と第3プレート軸受103との間に形成されている隙間である。本実施形態では、特定空間Cr12が、「前記離間面と前記可動軸受の外周面との間に」形成される「隙間」に対応する。
【0123】
本実施形態では、特定空間Cr12は、例えば軸受隙間Cr11よりも大きく形成されている。詳細には、特定空間Cr12の幅W12は、軸受隙間Cr11の幅W11よりも大きい。
【0124】
ちなみに、軸受隙間Cr11の幅W11は、第1プレート軸受101の位置ずれに応じて変動し得る。また、特定空間Cr12の幅W12は、第3プレート軸受103の位置に応じて変動し得る。この場合、例えば、特定空間Cr12の幅W12の最小値(換言すれば離間面163と第3プレート軸受103との最短距離)が、軸受隙間Cr11の幅W11の最大値(第1プレート軸受101と第1収容側面144の最大距離)よりも大きいとよい。ただし、これに限られず、特定空間Cr12の幅W12の最小値が軸受隙間Cr11の幅W11の最小値よりも大きい場合であってもよいし、特定空間Cr12の幅W12の最大値が軸受隙間Cr11の幅W11の最大値よりも大きい場合であってもよい。
【0125】
本実施形態では、離間面163は、第3収容側面154の内側開口部155に対して第3プレート軸受103を介した径方向R外側に配置されている。離間面163は、両支持面161,162の対向方向(換言すれば回転方向Mに沿う方向)に延びて両支持面161,162の外側端部161b,162bを繋いでいる。
【0126】
なお、既に説明したとおり、第3ローラ73は、リング部62と高速シャフト12とによって挟持されており、リング部62によって高速シャフト12に向けて押圧されている。このため、第3ローラ73が径方向R外側に向けて移動する事態は生じにくい。そして、第3ローラ73と第3プレート軸受103とは一体的に動くものである。したがって、特定空間Cr12が形成されている場合であっても、第3プレート軸受103が離間面163に向けて移動する事態は生じにくい。
【0127】
また、図6などに示すように、第3プレート軸受103における径方向R内側の部分が内側開口部155を介してプレート貫通孔26c内に入り込んでいる。そして、第3プレート軸受103におけるプレート貫通孔26c内に入り込んでいる部分は、高速シャフト12、ストッパ部50b及びフランジ部96に対して離間している。これにより、第3プレート軸受103の径方向R内側部分が摺動することを抑制できる。
【0128】
すなわち、本実施形態では、第3ローラ73の第1位置から第2位置までの移動区間は、径方向Rにおける第3プレート軸受103の支持が、変速機ハウジング22に対して第3プレート軸受103を介してなされることなく、リング部62と高速シャフト12との挟持によってなされている特定区間を含む。
【0129】
特定区間では、離間面163と第3プレート軸受103(詳細には第3プレート軸受103の外周面103d)との間に隙間としての特定空間Cr12が形成されており、第3プレート軸受103は、離間面163と接触しにくい。換言すれば、本実施形態の特定区間は、離間面163と第3プレート軸受103との間に特定空間Cr12が形成されている区間ともいえる。
【0130】
図7に示すように、本実施形態では、第3底面151は、段差状に形成されており、第3収容側面154(詳細には第3凹部側壁面152)に沿うように形成された第3外側底部151aと、第3外側底部151aの内側に形成され、第3外側底部151aよりも凹んだ第3内側底部151bと、を有している。
【0131】
第3外側底部151aは、所定の第3幅W3を有したリング状に形成されており、第3収容側面154に沿って周方向に延びている。換言すれば、第3外側底部151aは、第3収容側面154から第3底面151の中心に向けて第3幅W3だけ延びている。本実施形態では、第3外側底部151aは、回転方向Mを長手方向とする楕円リング形状である。第3外側底部151aは、プレート貫通孔26cに向けて開口している。
【0132】
本実施形態では、第3プレート軸受103の外輪103bは、第3外側底部151aによって支持されている。一方、第3プレート軸受103の内輪103aは、第3外側底部151aによって支持されていない。
【0133】
詳細には、第3幅W3は、第3プレート軸受103の外輪103bの厚さよりも広い。また、第3幅W3は、第3外側底部151aの内周端が内輪103aの外周面よりも外側に位置に配置されるように、第3プレート軸受103全体の厚さよりは短く設定されている。これにより、第3プレート軸受103の内輪103aと第3内側底部151bとが対向しており、両者の間には隙間が形成されている。
【0134】
ちなみに、本実施形態では、第3幅W3は、特定空間Cr12に対応させて設定されており、詳細には外輪103bの厚さと特定空間Cr12の幅W12とを合わせた寸法よりも広く設定されている。換言すれば、第3外側底部151aは、外輪103bと当接するように離間面163から特定空間Cr12の幅W12よりも長く径方向R内側に延びている。
【0135】
第3内側底部151bは、第3外側底部151aよりも第3プレート軸受103から離れる方向に凹んでいる。第3内側底部151bは、第3外側底部151aに囲まれている。第3内側底部151bは、回転軸線方向Zからみてオーバル形状に形成されている。第3内側底部151bは、プレート貫通孔26cの内面に連続している。本実施形態では、第3外側底部151aが「当接部」及び「外側底部」に対応し、第3内側底部151bが「内側底部」に対応する。
【0136】
なお、図示は省略するが、プレート貫通孔26c内にはオイルが供給される。すなわち、本実施形態の変速機14は、プレート貫通孔26c内にオイルを供給する供給機構を備えている。これにより、シール部材50aにはオイルが供給されることとなる。供給機構の具体的な構成は任意である。
【0137】
また、既に説明したとおり、プレート貫通孔26cと各プレート軸受収容室S11~S13とは連通しているため、プレート貫通孔26c内に供給されたオイルは、各プレート軸受収容室S11~S13内にも供給される。これにより、各プレート軸受101~103にはオイルが供給される。
【0138】
次に本実施形態の作用について説明する。
各ローラ71~73が回転していない場合、第3プレート軸受103と第1支持面161とが当接している。これにより、第3ローラ73は第1位置に位置決めされる。換言すれば、第1支持面161は、第3ローラ73を第1位置に位置決めするものともいえ、第1位置は初期位置ともいえる。
【0139】
一方、低速シャフト11の回転に伴ってリング部62が回転すると、各ローラ71~73が回転する。この場合、第3ローラ73は、第1位置から第2位置に向けて回転方向Mに移動し、それに伴って第3プレート軸受103が第3プレート軸受収容室S13内を移動する場合がある。第3ローラ73の移動距離はトルクに応じて変化する。第3ローラ73が回転方向Mに移動していくと、第3プレート軸受103が第2支持面162に当接することにより、第3ローラ73が第2位置に位置決めされる。換言すれば、第2支持面162は、第3ローラ73を第2位置に位置決めするものともいえる。各ローラ71~73の回転が停止すると、第3ローラ73は第1位置に戻る。
【0140】
ここで、図6図9に示すように、第1位置から第2位置への第3ローラ73の移動区間は、径方向Rにおける第3ローラ73の支持が、第3プレート軸受103を介した変速機ハウジング22による支持ではなく、リング部62と高速シャフト12との挟持によってなされる特定区間を含む。この特定区間では、第3プレート軸受103と変速機ハウジング22との摺動が生じにくい。
【0141】
詳細には、第3ローラ73の移動に伴って第3プレート軸受103が移動する際、特定空間Cr12が形成されているため、第3プレート軸受103と第3収容側面154(例えば離間面163)とが摺動しにくくなっている。換言すれば、特定空間Cr12によって、第3ローラ73が第1位置から第2位置に移動する際の第3プレート軸受103と第3収容側面154と摺動面積が小さく又は「0」となっている。つまり、特定空間Cr12は、第3プレート軸受103と第3収容側面154との接触を回避又は抑制するのに用いられている。
【0142】
以上詳述した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1)変速機14は、変速機ハウジング22と、環状のリング部62と、高速シャフト12と、3つのローラ71~73と、ラジアル軸受としてのローラ軸受101~106と、を備えている。リング部62は、変速機ハウジング22内に設けられ、低速シャフト11の回転に伴って回転するものである。高速シャフト12は、リング部62の内側に配置されている。各ローラ71~73は、リング部62と高速シャフト12との間に設けられている。各ローラ71~73は、リング部62の内周面63と高速シャフト12の外周面12aとの双方に当接している。
【0143】
各ローラ71~73のうち第3ローラ73は、リング部62の回転に応じて、リング部62の回転方向Mに移動する可動ローラである。各ローラ71~73のうち第1ローラ71及び第2ローラ72は、リング部62の回転方向Mに移動しないように固定された固定ローラである。
【0144】
複数のローラ軸受101~106は、可動ローラとしての第3ローラ73を回転可能に支持する可動軸受としての第3プレート軸受103を含む。変速機ハウジング22は、第1支持面161と、第1支持面161よりも回転方向Mに離れた位置に設けられた第2支持面162と、を備えている。第1支持面161は、第3プレート軸受103と当接することにより第3ローラ73を第1位置に規制する。第2支持面162は、第3プレート軸受103と当接することにより第3ローラ73を第2位置に規制する。第3ローラ73の移動は、第1位置から第2位置までの移動区間で行われる。
【0145】
かかる構成において、移動区間は、高速シャフト12の径方向Rにおける第3ローラ73の支持が、変速機ハウジング22に対して第3プレート軸受103を介してなされることなく、リング部62と高速シャフト12との挟持によりなされる特定区間を含む。
【0146】
かかる構成によれば、第1位置から第2位置までの移動区間に特定区間が含まれているため、第3ローラ73が第1位置から第2位置に移動する場合に、第3プレート軸受103と変速機ハウジング22とが摺動しにくくなっている。これにより、第3プレート軸受103が円滑に移動することができるため、第3ローラ73の回転方向Mの移動が第3プレート軸受103によって阻害されるという事態を抑制できるとともに、第3プレート軸受103と変速機ハウジング22とが摺動することに起因する摩耗を抑制することができる。
【0147】
また、特定区間では、高速シャフト12の径方向Rにおける第3ローラ73の支持がリング部62と高速シャフト12との挟持によりなされるため、第3ローラ73は径方向Rに位置ずれしにくい。したがって、特定区間に起因する第3ローラ73の径方向Rの位置ずれは生じにくい。よって、特定区間に起因する高速シャフト12の位置ずれは生じにくい。
【0148】
(2)変速機ハウジング22は、第3プレート軸受103を収容する第3プレート軸受収容室S13を区画する面として、第3底面151と、第3底面151から高速シャフト12の軸方向である回転軸線方向Zに起立し且つ両支持面161,162を有する第3収容側面154と、を備えている。
【0149】
第3収容側面154は、第3プレート軸受103の外周面103dに対して離間した位置に設けられた離間面163を含む。特定区間では、離間面163と第3プレート軸受103の外周面103dとの間に隙間(詳細には特定空間Cr12)が形成されている。
【0150】
かかる構成によれば、離間面163と第3プレート軸受103の外周面103dとの間に隙間としての特定空間Cr12が形成されていることによって、離間面163と第3プレート軸受103とが摺動することを抑制できる。これにより、上述した効果を得ることができる。
【0151】
(3)第1支持面161及び第2支持面162は、第3プレート軸受103の外周面103dの曲率よりも小さい曲率の湾曲面である。両支持面161,162は互いに対向している。離間面163は、両支持面161,162の対向方向に延びて第1支持面161の端部である第1外側端部161bと第2支持面162の端部である第2外側端部162bとを繋いでいる。
【0152】
かかる構成によれば、第1支持面161及び第2支持面162が第3プレート軸受103の外周面103dの曲率よりも小さい曲率で湾曲しているため、両支持面161,162と第3プレート軸受103との間に径方向Rの隙間が生じる。これにより、第3プレート軸受103が移動する際に第3プレート軸受103が多少位置ずれした場合であっても、両支持面161,162は第3プレート軸受103を支持することができる。
【0153】
また、第1支持面161及び第2支持面162の曲率を第3プレート軸受103の外周面103dの曲率よりも小さくすることによって、両外側端部161b,162bと第3プレート軸受103とを離間させることができる。これにより、両外側端部161b,162bをつなぐ離間面163は第3プレート軸受103から離れることとなり、特定空間Cr12が形成される。よって、両支持面161,162による第3プレート軸受103の支持を好適に行いつつ特定空間Cr12を形成することができる。
【0154】
(4)変速機ハウジング22は、第3底面151と第3収容側面154とを有するプレート部26を備えている。プレート部26には、高速シャフト12が挿通されるプレート貫通孔26cが形成されている。第3収容側面154には、径方向R内側に向けて開口した内側開口部155が形成されている。第3プレート軸受収容室S13とプレート貫通孔26cとは、内側開口部155を介して連通しており、第3プレート軸受103の一部はプレート貫通孔26c内に入り込んでいる。
【0155】
かかる構成によれば、第3プレート軸受103の一部がプレート貫通孔26c内に入り込んでいることにより、第3プレート軸受103と高速シャフト12とを互いに近づけることができ、径方向Rにおける変速機14の小型化を図ることができる。また、第3プレート軸受103におけるプレート貫通孔26c内に入り込んでいる部分は、第3収容側面154と摺動することはない。したがって、第3プレート軸受103と第3収容側面154との摺動を抑制できる。
【0156】
なお、第3プレート軸受収容室S13とプレート貫通孔26cとが内側開口部155を介して連通しているため、両者の間でオイルが流れることができる。したがって、仮にプレート貫通孔26c内にオイルが供給される場合には、その一部が第3プレート軸受103にも供給される。よって、第3プレート軸受103の移動をより円滑にすることができる。
【0157】
(5)複数のローラ軸受101~106は、固定ローラとしての第1ローラ71を回転可能に支持する固定軸受としての第1プレート軸受101を含む。変速機ハウジング22には、第1プレート軸受101を収容する固定軸受収容室としての第1プレート軸受収容室S11が形成されている。変速機ハウジング22は、第1プレート軸受収容室S11を区画する面として、第1底面141及び第1底面141から回転軸線方向Zに起立した第1収容側面144と、を有している。第1プレート軸受101は、第1収容側面144との間に軸受隙間Cr11が形成された状態で第1プレート軸受収容室S11内に収容されている。かかる構成において、特定空間Cr12は、軸受隙間Cr11よりも大きく形成されている。
【0158】
かかる構成によれば、第1隙間Cr1が形成されているため、仮に第1プレート軸受101の位置ずれが生じた場合であっても、第1プレート軸受101を第1プレート軸受収容室S11に収容することができる。この場合、位置ずれ態様によっては第1プレート軸受101の一部が第1収容側面144に当接する場合があり得る。
【0159】
この点、本実施形態では、特定空間Cr12は第1隙間Cr1よりも広く形成されているため、仮に第3プレート軸受103の位置ずれが発生した場合であっても、第3プレート軸受103が第3収容側面154と接触する事態は生じにくい。これにより、第3プレート軸受103と第3収容側面154との摺動を好適に抑制できる。
【0160】
(6)第3プレート軸受103は、内輪103a及び外輪103bを有する転がり軸受である。内輪103aは、第3ローラ73の回転に伴って、外輪103bに対して相対回転する。第3底面151は、第3プレート軸受103の外輪103bが当接し且つ第3プレート軸受103の内輪103aが当接しないように形成された当接部としての第3外側底部151aを有している。
【0161】
かかる構成によれば、第3外側底部151aが第3プレート軸受103の外輪103bと当接することにより、第3プレート軸受103を支持することができる。第3プレート軸受103の外輪103bは、内輪103aよりも、第3ローラ73の回転に伴って回転しにくいため、第3プレート軸受103の外輪103bと第3外側底部151aとの間で摺動が生じにくい。また、第3プレート軸受103の内輪103aと、第3外側底部151aとは当接しないため、摺動が生じにくい。これにより、摺動に起因する摩耗を抑制しつつ第3プレート軸受103を支持できる。
【0162】
(7)第3底面151は、第3収容側面154に沿って延びた第3外側底部151aと、第3外側底部151aの内側に配置され、第3外側底部151aよりも凹んだ第3内側底部151bと、を有する段差状である。
【0163】
かかる構成によれば、第3外側底部151aが第3収容側面154に沿って延びていることにより、第3プレート軸受103が移動しても第3プレート軸受103と第3外側底部151aとが当接する。これにより、移動する第3プレート軸受103を支持することができる。また、第3内側底部151bは第3外側底部151aよりも凹んでいるため、第3内側底部151bが第3プレート軸受103と当接しにくい。これにより、第3内側底部151bと第3プレート軸受103との摺動を抑制できる。
【0164】
(8)遠心圧縮機10は、変速機14と、低速シャフト11を回転させる電動モータ13と、高速シャフト12に取り付けられたインペラ52と、を備えている。これにより、遠心圧縮機10において上述した効果を得ることができる。
【0165】
(9)遠心圧縮機10は、インペラ52が収容されたインペラ室S3を備えている。変速機ハウジング22のプレート部26は、インペラ室S3を区画するのに用いられている。例えば、遠心圧縮機10は、プレート部26と協働してインペラ室S3を区画するコンプレッサハウジング23を備えており、プレート部26は、変速機ハウジング22の内部空間である変速機室S2とインペラ室S3とを仕切る壁部である。
【0166】
かかる構成によれば、プレート部26がインペラ室S3を区画するものとして兼用されるため、構成の簡素化を図ることができる。
かかる構成においては、インペラ52にて発生した熱がプレート部26に伝達され、プレート部26が熱膨張するおそれがある。すると、第3収容側面154が若干ずれてしまい、第3プレート軸受収容室S13に収容される第3プレート軸受103の移動に支障が生じる不都合が懸念される。
【0167】
この点、本構成によれば、移動区間に特定区間が含まれるため、仮にプレート部26の熱膨張が発生した場合であっても、第3プレート軸受103の移動に支障が生じにくい。これにより、上記不都合を抑制できる。
【0168】
(10)第3プレート軸受収容室S13は、高速シャフト12に対して径方向R外側に配置されている。離間面163は、第3プレート軸受103に対して径方向R外側の離間した位置に設けられている。特定空間Cr12は、第3プレート軸受103の位置に関わらず、離間面163と第3プレート軸受103との間に形成された隙間である。これにより、(1)などの効果を奏する。
【0169】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。また、技術的に矛盾が生じない範囲内で上記実施形態と下記各別例とを適宜組み合わせてもよいし、各別例同士を組み合わせてもよい。
【0170】
図10及び図11に示すように、第3プレート起立部133における一部が切り欠かれていてもよい。例えば、第3プレート起立部133における径方向R外側の部分に外側開口部201が形成されていてもよい。外側開口部201は、離間面163に対応する箇所に形成されている。このため、本別例の第3収容側面154の離間面163は、第3凹部側壁面152のみによって構成されている。
【0171】
また、本別例の離間面163は、両支持面161,162よりも径方向R外側に凹んでいてもよい。この場合、第3収容側面154は、両支持面161,162と離間面163との間で段差状となっている。
【0172】
かかる構成によれば、特定空間Cr12は、径方向Rに広くなっている。これにより、第3収容側面154が第3プレート軸受103の移動を阻害する事態をより確実に回避できる。
【0173】
○ 第3プレート凹部123を省略してもよい。この場合、第3プレート軸受収容室S13は、第1板面26a及び第3プレート起立部133の第3起立側壁面153によって区画されるとよい。かかる構成では、第3起立側壁面153が、両支持面161,162及び離間面163を構成する。
【0174】
また、上記構成において、第3起立側壁面153の離間面163に対応する部分に開口部を設けてもよい。この場合、離間面163が存在せず、開口部の内部空間が特定空間Cr12に対応する。これによっても、第3プレート軸受103と第3収容側面154との摺動を抑制できる。第1プレート凹部121及び第2プレート凹部122についても同様である。
【0175】
○ 第3プレート起立部133を省略してもよい。この場合、第3凹部側壁面152が、両支持面161,162及び離間面163を構成する。第1プレート起立部131及び第2プレート起立部132についても同様である。
【0176】
○ ローラの数は、3つ以上であれば任意である。また、可動ローラの数及び固定ローラの数も任意である。
○ 両支持面161,162の曲率は任意であり、例えば第3プレート軸受103の外周面103dの曲率と同一でもよい。
【0177】
○ 第3底面151における第3内側底部151bに対応する箇所に開口部が形成されていてもよい。つまり、第3底面151は、第3外側底部151aのみによって構成されていてもよい。第1底面141についても同様である。
【0178】
○ 第3底面151は段差状に形成されていなくてもよい。つまり、第3プレート軸受103の内輪103a及び外輪103bの双方が第3底面151と当接する構成でもよい。第1底面141についても同様である。
【0179】
○ 第3プレート軸受収容室S13は、プレート貫通孔26cと連通していなくてもよい。この場合、第3収容側面154は、第3プレート軸受103に対して径方向R内側の離れた位置に面を有しているとよい。第1プレート軸受収容室S11についても同様である。
【0180】
○ 第3外側底部151aは、第3収容側面154の全周に沿って形成されていたが、これに限られず、一部に形成されていてもよいし、間欠的に形成されていてもよい。
○ ベース部61と低速シャフト11とが一体形成されていてもよいし、ベース部61とリング部62とが一体形成されていてもよい。
【0181】
○ 圧縮部15の具体的な構成は、インペラ52を有する構成に限られず任意であり、例えばベーン式やスクロール式などであってもよい。
○ 変速機14の搭載対象は、遠心圧縮機10に限られず、任意である。例えば、ポンプなど流体の圧縮を行わない流体機械に搭載されてもよい。
【0182】
○ 変速機14及び遠心圧縮機10の搭載対象は、車両に限られず任意である。
○ 遠心圧縮機10の適用対象及び圧縮対象の流体は任意である。例えば、遠心圧縮機10は空調装置に用いられていてもよく、圧縮対象の流体は冷媒であってもよい。
【0183】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる好適な一例について以下に記載する。
(イ)変速機ハウジングと、前記変速機ハウジング内に設けられ、低速シャフトの回転に伴って回転する環状のリング部と、前記リング部の内側に配置された高速シャフトと、前記リング部と前記高速シャフトとの間に設けられ、前記リング部の内周面及び前記高速シャフトの外周面の双方と当接している3つ以上のローラと、前記3つ以上のローラを回転可能な状態で前記変速機ハウジングに支持するのに用いられる複数のローラ軸受と、を備え、前記3つ以上のローラは、前記リング部の回転に応じて、第1位置と、前記第1位置から前記リング部の回転方向に離れた第2位置との間を移動する1つ以上の可動ローラと、前記リング部の回転方向に移動しないように固定された2つ以上の固定ローラと、を含み、前記複数のローラ軸受は、前記可動ローラを回転可能に支持する可動軸受を含み、前記変速機ハウジングは、前記可動軸受を収容する可動軸受収容室を区画する面として、底面と、当該底面から起立し且つ前記第1支持面及び前記第2支持面を有する収容側面と、を有し、前記可動軸受収容室は、前記高速シャフトに対して当該高速シャフトの径方向外側に配置されており、前記収容側面は、前記可動ローラが前記第1位置にある場合に前記可動軸受と当接することにより前記可動軸受を支持する第1支持面と、前記第1支持面よりも前記回転方向に離れた位置に設けられ、前記可動ローラが前記第2位置にある場合に前記可動軸受と当接することにより前記可動軸受を支持する第2支持面と、を備え、前記収容側面は、前記可動軸受に対して前記高速シャフトの径方向外側の離間した位置に設けられた離間面を含み、前記可動軸受の位置に関わらず、前記離間面と前記可動軸受との間には隙間が形成されている変速機。
【0184】
かかる構成によれば、可動軸受の位置に関わらず、離間面と可動軸受との間に隙間(特定空間)が形成されているため、可動ローラが第1位置から第2位置に移動する場合に、可動軸受と収容側面とが摺動しにくくなっている。これにより、可動軸受収容室内において可動軸受が円滑に移動することができるため、可動ローラの回転方向の移動が可動軸受によって阻害されるという事態を抑制できるとともに、可動軸受と収容側面とが摺動することに起因する摩耗を抑制することができる。
【0185】
また、可動ローラは、リング部の内周面と高速シャフトの外周面との双方に当接しているため、高速シャフトの径方向における可動ローラの位置は固定されている。このため、仮に可動軸受に対して高速シャフトの径方向外側に上記隙間が形成されている場合であっても、可動ローラは径方向外側に位置ずれしにくい。また、高速シャフトは、回転方向に移動しないように固定された2つの固定ローラによって位置決めされる。よって、上記隙間に起因する高速シャフトの位置ずれは生じにくいため、高速シャフトの位置ずれを抑制しつつ上述した効果を得ることができる。
【0186】
(ロ)離間面は、可動ローラが第1位置から第2位置に移動する場合における可動軸受の移動軌跡よりも高速シャフトの径方向外側に離間して配置されているとよい。
(ハ)ローラ軸受は、固定ローラを回転可能に支持する固定軸受を含み、変速機ハウジングは、固定軸受を収容する固定軸受収容室を区画する面として、固定収容底面及び当該固定収容底面から起立した固定収容側面と、を有し、固定軸受は、固定収容側面との間に軸受隙間が形成された状態で固定軸受収容室内に収容されており、離間面と可動軸受との間に形成される隙間は軸受隙間よりも大きく形成されているとよい。
【符号の説明】
【0187】
10…遠心圧縮機、11…低速シャフト、12…高速シャフト、12a…高速シャフトの外周面、13…電動モータ、14…変速機、15…圧縮部、22…変速機ハウジング、23…コンプレッサハウジング、26…プレート部、26a…第1板面、26c…プレート貫通孔、50a…シール部材、50b…ストッパ部、52…インペラ、62…リング部、63…リング部の内周面、71…第1ローラ(固定ローラ)、72…第2ローラ(固定ローラ)、73…第3ローラ(可動ローラ)、101~106…ローラ軸受、103…第3プレート軸受(可動軸受)、103a…第3プレート軸受の内輪、103b…第3プレート軸受の外輪、103d…第3プレート軸受の外周面、151…第3底面(底面)、151a…第3外側底部(外側底部)、151b…第3内側底部(内側底部)、154…第3収容側面(収容側面)、155…内側開口部、161…第1支持面、161b…第1外側端部、162…第2支持面、162b…第2外側端部、163…離間面、S2…変速機室、S3…インペラ室、S11…第1プレート軸受収容室、S13…第3プレート軸受収容室(可動軸受収容室)、Cr11…第1軸受隙間、Cr12…特定空間(隙間)、R…高速シャフトの径方向、M…リング部の回転方向。
図1
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図11