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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】編組部材、及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/12 20060101AFI20240723BHJP
   H01B 5/02 20060101ALI20240723BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20240723BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01B5/12
H01B5/02 A
H01B7/18 D
H01B7/00 301
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020206012
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092980
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】清水 武史
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】金 知聖
【審査官】岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-115296(JP,U)
【文献】国際公開第2019/239220(WO,A1)
【文献】特開昭61-187297(JP,A)
【文献】中国実用新案第210080608(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/12
H01B 5/02
H01B 7/18
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに編まれた導電性を有する複数の素線を備えた編組部材であって、
前記素線同士が交差する交差部を備え、
前記交差部は、互いに交差する前記素線同士が一回のみ二つ編みされた編み込み部を有しており、
前記素線によって形成される編み目の内角のうち、前記交差部から分岐して延びる異なる2本の前記素線のなす分岐角度は、前記素線の各々における前記交差部の両側に延びる部分のなす曲げ角度よりも小さい編組部材。
【請求項2】
互いに編まれた導電性を有する複数の素線を備えた編組部材であって、
前記素線同士が交差する交差部を備え、
前記交差部は、互いに交差する前記素線同士が複数回二つ編みされた編み込み部を有しており、
前記素線によって形成される編み目の内角のうち、前記交差部から分岐して延びる異なる2本の前記素線のなす分岐角度は、前記素線の各々における前記交差部の両側に延びる部分のなす曲げ角度よりも小さい編組部材。
【請求項3】
前記素線は、金属線と、前記金属線の外周を被覆する被覆膜とを有する請求項1または請求項に記載の編組部材。
【請求項4】
少なくとも1本の電線と、互いに編まれた導電性を有する複数の素線を有し前記電線の外周を囲む編組部材とを備え、
前記編組部材は、前記素線同士が交差する交差部を備え、
前記交差部は、互いに交差する前記素線同士が一回のみ二つ編みされた編み込み部を有しており、
前記素線によって形成される編み目の内角のうち、前記交差部から分岐して延びる異なる2本の前記素線のなす分岐角度は、前記素線の各々における前記交差部の両側に延びる部分のなす曲げ角度よりも小さいワイヤハーネス。
【請求項5】
少なくとも1本の電線と、互いに編まれた導電性を有する複数の素線を有し前記電線の外周を囲む編組部材とを備え、
前記編組部材は、前記素線同士が交差する交差部を備え、
前記交差部は、互いに交差する前記素線同士が複数回二つ編みされた編み込み部を有しており、
前記素線によって形成される編み目の内角のうち、前記交差部から分岐して延びる異なる2本の前記素線のなす分岐角度は、前記素線の各々における前記交差部の両側に延びる部分のなす曲げ角度よりも小さいワイヤハーネス。
【請求項6】
前記編組部材は、シート状をなし、前記電線の外周に複数周巻き付けられている請求項4または請求項5に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、編組部材、及びワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車等の車両に搭載されるワイヤハーネスには、電線と、電線の外周を囲む編組部材とを備えたものがある。編組部材には、例えば特許文献1に記載されているように、導電性を有する複数の素線を備えたものがある。複数の素線は、順次交差されながら網状に編まれている。素線同士が交差する部分では、交差する素線は、互いに重ね合わされることにより交差している。そして、当該編組部材を備えたワイヤハーネスにおいては、各素線は、電線の外周でらせん状に延びる。このような編組部材は、例えば、電磁シールド機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-71974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワイヤハーネスは、配索される際、作業者によって触れられたり、屈曲されたりする。すると、編組部材において素線同士が相対移動して素線同士の間隔が変化する可能性がある。素線同士の間隔が変化すると、編組部材において素線が偏る。編組部材において素線が偏ると、素線によって形成される編み目が大きい部分ができる。編組部材において、素線によって形成される編み目が大きい部分は、素線によって形成される編み目が小さい部分に比べて電磁シールド性能が低くなるおそれがある。即ち、編組部材において電磁シールド性能が低下する部位が生じるおそれがあった。
【0005】
本開示の目的は、電磁シールド性能が低下する部位が生じることを抑制できる編組部材、及びワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の編組部材は、互いに編まれた導電性を有する複数の素線を備えた編組部材であって、前記素線同士が交差する交差部を備え、前記交差部は、互いに交差する前記素線同士が二つ編みされた編み込み部を有する編組部材である。
【0007】
本開示のワイヤハーネスは、少なくとも1本の電線と、互いに編まれた導電性を有する複数の素線を有し前記電線の外周を囲む編組部材とを備え、前記編組部材は、前記素線同士が交差する交差部を備え、前記交差部は、互いに交差する前記素線同士が二つ編みされた編み込み部を有するワイヤハーネスである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の編組部材、及びワイヤハーネスによれば、電磁シールド性能が低下する部位が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態における車両に搭載されたワイヤハーネスを示す模式図である。
図2図2は、一実施形態におけるワイヤハーネスの一部を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、一実施形態における編組部材の部分拡大図である。
図4図4は、一実施形態における編組部材の部分拡大図である。
図5図5は、一実施形態におけるワイヤハーネスの端部領域を模式的に示す断面図である。
図6図6は、変形例におけるワイヤハーネスを模式的に示す断面図である。
図7図7は、変形例における編組部材の部分拡大図である。
図8図8は、変形例における編組部材の部分拡大図である。
図9図9は、変形例における編組部材の部分拡大図である。
図10図10は、変形例における編組部材の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の編組部材は、
[1]互いに編まれた導電性を有する複数の素線を備えた編組部材であって、前記素線同士が交差する交差部を備え、前記交差部は、互いに交差する前記素線同士が二つ編みされた編み込み部を有する編組部材である。
【0011】
この構成によれば、素線同士が二つ編みされた編み込み部を有する交差部では、編み込み部によって素線同士の相対移動が制限される。従って、素線によって形成される編み目の大きさが部分的に大きくなることを抑制しやすくなる。その結果、当該編組部材で覆われた部品において、電磁シールド性能が低下する部位が生じることを抑制できる。
【0012】
[2]各前記交差部は、互いに交差する前記素線同士が1回のみ二つ編みされた前記編み込み部を有することが好ましい。
この構成によれば、素線によって形成される編み目の形状が菱形の編組部材を形成できる。また、互いに交差する素線同士を1回のみ二つ編みすることにより編み込み部を形成できる。従って、互いに交差する素線同士が複数回二つ編みされた編み込み部を形成する場合に比べて、編み込み部を容易に形成できる。その結果、互いに交差する素線同士が複数回二つ編みされた編み込み部を有する編組部材を製造する場合に比べて、編組部材の製造が容易になる。
【0013】
[3]各前記交差部は、互いに交差する前記素線同士が複数回二つ編みされた前記編み込み部を有することが好ましい。
この構成によれば、素線によって形成される編み目の形状が六角形の編組部材を形成できる。また、互いに交差する素線同士が複数回二つ編みされた編み込み部は、互いに交差する素線同士が1回のみ二つ編みされた編み込み部に比べて、素線同士の相対移動をより制限しやすい。従って、素線によって形成される編み目の大きさが部分的に大きくなることをより抑制しやすくなる。その結果、電磁シールド性能が低下する部位が生じることをより抑制できる。また、編み込み部によって素線がばらけることがより抑制されるため、編組部材の取り扱いが容易になる。
【0014】
[4]前記素線によって形成される編み目の内角のうち、前記交差部から分岐して延びる異なる2本の前記素線のなす分岐角度と、各前記素線における前記交差部の両側に延びる部分のなす曲げ角度とは、同じ大きさ、もしくは前記分岐角度よりも前記曲げ角度の方が大きいことが好ましい。
【0015】
この構成によれば、分岐角度が曲げ角度より大きい場合に比べて、各素線が交差部において屈曲される角度を緩やかにできる。従って、編組部材を容易に製造できる。
[5]前記素線によって形成される編み目の内角のうち、前記交差部から分岐して延びる異なる2本の前記素線のなす第1分岐角度と、前記交差部から延びる前記素線と当該交差部とのなす第2分岐角度とは、同じ大きさ、もしくは前記第1分岐角度よりも前記第2分岐角度の方が大きいことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、第1分岐角度が第2分岐角度より大きい場合に比べて、交差部と、当該交差部から延びる素線とのなす角度を緩やかにできる。従って、編組部材を容易に製造できる。
【0017】
[6]前記素線は、金属線と、前記金属線の外周を被覆する被覆膜とを有することが好ましい。
この構成によれば、被覆膜によって金属線が保護される。従って、各素線が交差部において断線することを抑制できる。
【0018】
本開示のワイヤハーネスは、
[7]少なくとも1本の電線と、互いに編まれた導電性を有する複数の素線を有し前記電線の外周を囲む編組部材とを備え、前記編組部材は、前記素線同士が交差する交差部を備え、前記交差部は、互いに交差する前記素線同士が二つ編みされた編み込み部を有するワイヤハーネスである。
【0019】
この構成によれば、素線同士が二つ編みされた編み込み部を有する交差部では、編み込み部によって素線同士の相対移動が制限される。従って、ワイヤハーネスが配索される際、当該ワイヤハーネスが作業者によって触れられたり屈曲されたりしても、素線によって形成される編み目の大きさが部分的に大きくなることが抑制される。その結果、ワイヤハーネスにおいて電磁シールド性能が低下する部位が生じることを抑制できる。
【0020】
[8]前記編組部材は、シート状をなし、前記電線の外周に複数周巻き付けられていることが好ましい。
この構成によれば、簡単な構成で編組部材による電磁シールド性能を向上できる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の編組部材及びワイヤハーネスの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、添付図面は、理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。添付図面において、構成要素の寸法比率は、実際のものと、または別の図中のものと異なる場合がある。
【0022】
以下、編組部材、及び当該編組部材を有するワイヤハーネスの一実施形態について説明する。
図1に示すワイヤハーネス20は、2個又は3個以上の電気機器を電気的に接続する。ワイヤハーネス20は、例えば、自動車等の車両10に搭載される。ワイヤハーネス20は、車両10に搭載された電気機器11同士を電気的に接続する。図1には、車両10に搭載される複数の電気機器11のうち2つの電気機器11のみを図示している。ワイヤハーネス20を介して電気的に接続される電気機器11は、例えば、インバータ12と、インバータ12よりも車両10の後方に設置されたバッテリ13である。バッテリ13は、例えば、百数十から数百ボルトといった電圧を供給可能なバッテリである。また、インバータ12は、バッテリ13の直流電力から交流電力を生成し、生成した交流電力を図示しないモータに供給する。当該モータは、車両走行の動力源となる車輪駆動用のモータである。ワイヤハーネス20は、同ワイヤハーネス20を配索するためのスペースの形状に応じて、例えば屈曲されながら配索される。
【0023】
(ワイヤハーネス20の構成)
図2に示すように、ワイヤハーネス20は、少なくとも1本の電線21と、電線21の外周を囲む編組部材31とを備えている。ワイヤハーネス20は、例えば1本の電線21を有する。
【0024】
(電線21の構成)
電線21は、例えば、導体よりなる芯線22と、芯線22の外周を被覆する絶縁被覆23とを有する被覆電線である。電線21の両端部には、電線21を電気機器11に電気的に接続するための図示しないコネクタが接続されている。
【0025】
電線21の横断面の形状は、例えば円形状をなしている。なお、電線21の横断面の形状は、円形状に限らず、任意の形状にすることができる。電線21の横断面の形状は、例えば多角形状、楕円状、円の一部が欠けた形状のうちのいずれかの形状であってもよい。
【0026】
(編組部材31の構成)
図3に示すように、編組部材31は、互いに編まれた導電性を有する複数の素線32を備えている。素線32は、例えば、金属線である。素線32の材料としては、例えば、アルミニウムもしくはアルミニウム合金が用いられる。なお、素線32の材料は、導電性を有する材料であれば、アルミニウムもしくはアルミニウム合金に限らない。素線32の材料として、例えば銅もしくは銅合金を用いることもできる。
【0027】
複数の素線32は、例えば、シート状に編まれている。編組部材31は、素線32同士が交差する交差部33を備えている。少なくとも1つの交差部33は、互いに交差する素線32同士が二つ編みされた編み込み部34を有する。例えば、各交差部33は、編み込み部34を有する。
【0028】
図3及び図4に示すように、各交差部33は、例えば、各交差部33において互いに交差する素線32同士が1回のみ二つ編みされた編み込み部34を有する。なお、「二つ編み」は、「ロープ編み」と呼ばれることもある。図4は、図3において一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。
【0029】
各交差部33において互いに交差する2本の素線32を素線32A,32Bとする。素線32Aと素線32Bとは、交差部33において、互いに交差して重なった部分の上下が入れ替わるように1回ねじられることにより1回二つ編みされている。このように素線32A,32Bが二つ編みされた部分が編み込み部34である。
【0030】
素線32Aと素線32Bとが1回二つ編みされた編み込み部34においては、素線32Aは1つの山部35aを有するとともに、素線32Bは1つの山部35bを有する。また、素線32Aは、山部35aを有することにより当該山部35aの裏に谷部36aを有する。同様に、素線32Bは、山部35bを有することにより当該山部35bの裏に谷部36bを有する。編み込み部34においては、素線32Aの谷部36aと素線32Bの谷部36bとが嵌まり合っている。
【0031】
各素線32は、交差部33において互いに交差する素線32と1回ずつ二つ編みされることにより、例えばZ字が連続するようなジグザグ形状をなしている。なお、各素線32は、交差部33において互いに交差する素線32と1回ずつ二つ編みされることにより、例えばV字もしくはU字が連続するようなジグザグ形状をなしていてもよい。各素線32は、交差部33ごとに折り返されている。
【0032】
交差部33の各々が1回二つ編みされた編み込み部34を有することにより、編組部材31は、例えば菱形金網状をなしている。従って、編組部材31においては、素線32によって形成される編み目の形状は菱形状をなしている。
【0033】
各素線32において、交差部33から次の交差部33まで延びる部分、即ち当該2つの交差部33を連結する部分を連結部37とする。各連結部37は直線状に延びている。
素線32によって形成される編み目の内角のうち、交差部33から分岐して延びる異なる2本の素線32のなす分岐角度θ1は、各素線32における交差部33の両側に延びる部分のなす曲げ角度θ2より大きくてもよい。ここで、交差部33において互いに交差する素線32A,32Bのうち一方の素線32Aが有する連結部37を連結部37aとする。また、交差部33において互いに交差する素線32A,32Bのうち他方の素線32Bが有する連結部37を連結部37bとする。分岐角度θ1は、素線32によって形成される例えば四角形をなす編み目の内角であって、例えば交差部33から分岐する連結部37aと連結部37bとのなす角度である。連結部37aと連結部37bとのなす角度は、連結部37aの中心軸と連結部37bの中心軸とのなす角度である。また、曲げ角度θ2は、素線32によって形成される編み目の内角であって、例えば、素線32Aにおいて、交差部33の両側に延びる2つの連結部37aのなす角度である。2つの連結部37aのなす角度は、2つの連結部37aの中心軸のなす角度である。更に、曲げ角度θ2は、素線32によって形成される編み目の内角であって、例えば、素線32Bにおいて、交差部33の両側に延びる2つの連結部37bのなす角度である。2つの連結部37bのなす角度は、2つの連結部37bの中心軸のなす角度である。例えば、分岐角度θ1は鈍角であるとともに、曲げ角度θ2は鋭角である。
【0034】
図2に示すように、シート状の編組部材31は、電線21の外周に巻き付けられている。編組部材31は、例えば、電線21の外周に1周巻き付けられている。ワイヤハーネス20は、電線21の外周に巻き付けられた編組部材31を固定する固定部材41を有していてもよい。固定部材41は、例えば、粘着テープ、結束バンドなどである。固定部材41は、電線21の外周に巻き付けられた編組部材31の外周から編組部材31に巻き付けられている。固定部材41が巻き付けられることにより、編組部材31は筒状に維持される。
【0035】
(編組部材31の端末処理)
図5に示すように、筒状の編組部材31の端部は、シールドシェル51に電気的に接続される。シールドシェル51は、例えば筒状をなしている。シールドシェル51は、例えば、電気機器11の図示しないケースにボルト締めにより固定される。電線21の端部に設けられたコネクタは、シールドシェル51の内部もしくは電気機器11のケースの内部で電気機器11に電気的に接続される。編組部材31の端部領域は、シールドシェル51の外周を覆うように同シールドシェル51に被せられる。シールドシェル51には、編組部材31の外周からかしめリング52が嵌合される。これにより、編組部材31の端部領域は、シールドシェル51とかしめリング52との間に挟み込まれる。編組部材31は、編組部材31の端部領域がシールドシェル51とかしめリング52との間に挟み込まれることにより、シールドシェル51に電気的に接続される。
【0036】
(作用)
本実施形態の作用について説明する。
素線32と素線32とが交差する交差部33は、交差する素線32同士が二つ編みされた編み込み部34を有する。そのため、編み込み部34を有する各交差部33においては、交差する素線32は、互いの相対移動を抑制するように互いに拘束しあう。従って、各素線32において、他の素線32と交差する位置が素線32の延びる方向に変化することが抑制される。その結果、素線32によって形成される編み目の大きさは、どの編み目においても、最大限に開く大きさが同等になる。従って、素線32によって形成される編み目の大きさが部分的に極端に大きくなる部分が生じることが抑制される。
【0037】
本実施形態の効果について説明する。
(1)編組部材31は、互いに編まれた導電性を有する複数の素線32を備えている。編組部材31は、素線32同士が交差する交差部33を備えている。交差部33は、互いに交差する素線32同士が二つ編みされた編み込み部34を有する。
【0038】
この構成によれば、素線32同士が二つ編みされた編み込み部34を有する交差部33では、編み込み部34によって素線32同士の相対移動が制限される。従って、素線32によって形成される編み目の大きさが部分的に大きくなることを抑制しやすくなる。その結果、当該編組部材31で覆われた部品において、電磁シールド性能が低下する部位が生じることを抑制できる。
【0039】
(2)各交差部33は、互いに交差する素線32同士が1回のみ二つ編みされた編み込み部34を有する。
この構成によれば、素線32によって形成される編み目の形状が菱形の編組部材31を形成できる。また、互いに交差する素線32同士を1回のみ二つ編みすることにより編み込み部34を形成できる。従って、互いに交差する素線同士が複数回二つ編みされた編み込み部を形成する場合に比べて、編み込み部34を容易に形成できる。その結果、互いに交差する素線同士が複数回二つ編みされた編み込み部を有する編組部材を製造する場合に比べて、編組部材31の製造が容易になる。
【0040】
(3)ワイヤハーネス20は、少なくとも1本の電線21と、互いに編まれた導電性を有する複数の素線32を有し電線21の外周を囲む編組部材31とを備えている。編組部材31は、素線32同士が交差する交差部33を備えている。交差部33は、互いに交差する素線32同士が二つ編みされた編み込み部34を有する。
【0041】
この構成によれば、素線32同士が二つ編みされた編み込み部34を有する交差部33では、編み込み部34によって素線32同士の相対移動が制限される。従って、ワイヤハーネス20が配索される際、当該ワイヤハーネス20が作業者によって触れられたり屈曲されたりしても、素線32によって形成される編み目の大きさが部分的に大きくなることが抑制される。その結果、ワイヤハーネス20において電磁シールド性能が低下する部位が生じることを抑制できる。
【0042】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図6に示すように、編組部材31は、シート状をなし、電線21の外周に複数周巻き付けられてもよい。例えば、図6に示す例では、編組部材31は、例えば、電線21の外周に2周巻き付けられている。このようにすると、簡単な構成で編組部材31による電磁シールド性能を向上できる。
【0043】
・上記実施形態では、ワイヤハーネス20は、電線21を1本のみ備えている。しかしながら、ワイヤハーネス20は、複数の電線21を有していてもよい。なお、ワイヤハーネス20が複数の電線21を備える場合、編組部材31は、複数の電線21の外周を一括して覆ってもよい。また、同場合、ワイヤハーネス20は、編組部材31を複数備えてもよい。そして、各編組部材31は、各電線21の外周を個別に被覆してもよい。
【0044】
・ワイヤハーネス20は、編組部材31の外周を覆う外装部材を更に備えてもよい。外装部材としては、例えばコルゲートチューブが挙げられる。
図7に示すように、編組部材31は、素線32に変えて素線61を備えてもよい。素線61は、金属線62と、金属線62の外周を被覆する被覆膜63とを有する。金属線62の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金などが挙げられる。また、被覆膜63は、金属線62の外周を覆うことにより同金属線62を保護するものであればよい。このようにすると、被覆膜63によって金属線62が保護される。従って、各素線61が、交差部33において断線することを抑制できる。
【0045】
図8に示すように、分岐角度θ1と曲げ角度θ2とは、同じ大きさ、もしくは分岐角度θ1よりも曲げ角度θ2の方が大きくてもよい。図8に例示した編組部材71においては、分岐角度θ1は、例えば曲げ角度θ2より小さい。このようにすると、分岐角度θ1が、曲げ角度θ2より大きい場合に比べて、各素線32が交差部33において屈曲される角度を緩やかにできる。従って、編組部材31を容易に製造できる。また、各素線32が交差部33において断線することを抑制できる。
【0046】
図9及び図10に示す編組部材81のように、上記実施形態の交差部33に代えて交差部83を備えてもよい。図10は、図9において一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。なお、図9及び図10に示す例では、上記実施形態と同一の構成または対応する構成に同じ符号を付している。各交差部83は、互いに交差する素線32同士が複数回二つ編みされた編み込み部84を備えている。編み込み部84においては、互いに交差する素線32同士は、例えば、3以上の奇数回二つ編みされている。交差部83の各々が複数回二つ編みされた編み込み部84を有することにより、編組部材81は、例えば亀甲金網状をなしている。従って、編組部材81においては、素線32によって形成される編み目の形状は六角形状をなしている。具体的には、各編み目は、4つの連結部37と2つの交差部83とによって構成される六角形状をなしている。
【0047】
各交差部83において互いに交差する2本の素線32を素線32A,32Bとする。素線32Aと素線32Bとは、交差部83において、互いに交差して重なった部分の上下が入れ替わるように例えば3回ねじられることにより3回二つ編みされている。このように素線32A,32Bが複数回二つ編みされた部分が編み込み部84である。編み込み部84を備えた交差部83は、例えば棒状をなす。
【0048】
素線32Aと素線32Bとが3回二つ編みされた編み込み部84においては、素線32Aは編み込み部84に3つの山部35aを有するとともに、素線32Bは編み込み部84に3つの山部35bを有する。また、素線32Aは、各山部35aの裏に谷部36aを有する。同様に、素線32Bは、各山部35bの裏に谷部36bを有する。編み込み部84においては、素線32Aの谷部36aと素線32Bの谷部36bとが嵌まり合っている。各素線32は、交差部83において互いに交差する素線32と3回ずつ二つ編みされながら折り返されることにより、ジグザグ形状をなしている。
【0049】
このようにすると、素線32によって形成される編み目の形状が六角形の編組部材81を形成できる。また、互いに交差する素線32同士が複数回二つ編みされた編み込み部84は、互いに交差する素線32同士が1回のみ二つ編みされた編み込み部34に比べて、素線32同士の相対移動をより制限しやすい。従って、素線32によって形成される編み目の大きさが部分的に大きくなることをより抑制しやすくなる。その結果、電磁シールド性能が低下する部位が生じることをより抑制できる。また、編み込み部84によって素線32がばらけることがより抑制されるため、編組部材81の取り扱いが容易になる。
【0050】
なお、本例において、素線32によって形成される編み目の内角のうち、交差部83から分岐して延びる異なる2本の素線32のなす第1分岐角度θ11と、交差部83から延びる素線32と当該交差部83とのなす第2分岐角度θ12とは、同じ大きさ、もしくは第1分岐角度θ11よりも第2分岐角度θ12の方が大きくてもよい。第1分岐角度θ11は、各交差部83から分岐する異なる2本の素線32のうち一方の素線32の連結部37と他方の素線32の連結部37とのなす角度である。なお、一方の素線32の連結部37と他方の素線32の連結部37とのなす角度は、当該2つの連結部37の中心軸のなす角度である。第2分岐角度θ12は、交差部83と当該交差部83から延びる連結部37とのなす角度であって、当該交差部83と当該連結部37とを含んで形成される編み目の内側に形成される角度である。そして、交差部83と連結部37とのなす角度は、交差部83の中心軸と連結部37の中心軸とのなす角度である。
【0051】
このようにすると、第1分岐角度θ11が第2分岐角度θ12より大きい場合に比べて、交差部83と、当該交差部83から延びる素線32とのなす角度を緩やかにできる。従って、編組部材81を容易に製造できる。また、各素線32が交差部83において断線することを抑制できる。
【0052】
・編組部材31は、互いに交差する素線32同士が1回のみ二つ編みされた編み込み部34を有する交差部33と、互いに交差する素線32同士が複数回二つ編みされた編み込み部84を有する交差部83との両方の交差部を備えてもよい。また、編組部材31は、少なくとも1つの交差部33に編み込み部34を備えていれば、必ずしもすべての交差部33に編み込み部34を備えなくてもよい。なお、編組部材31は、複数の交差部33に編み込み部34を備えていることが好ましい。
【0053】
・上記実施形態では、編組部材31はシート状をなしている。しかしながら、編組部材31は、複数の素線32が筒状に編まれたものであってもよい。
・上記実施形態では、ワイヤハーネス20によって接続される電気機器としてインバータ12及びバッテリ13を例に挙げた。しかしながら、ワイヤハーネス20によって接続される電気機器11はこれに限らず、車両10に搭載される電気機器11であればよい。なお、電気機器11には、制御装置等も含まれる。また、ワイヤハーネス20は、車両10以外の装置に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 車両
11 電気機器
12 インバータ
13 バッテリ
20 ワイヤハーネス
21 電線
22 芯線
23 絶縁被覆
31 編組部材
32,32A,32B 素線
33 交差部
34 編み込み部
35a,35b 山部
36a,36b 谷部
37,37a,37b 連結部
41 固定部材
51 シールドシェル
52 かしめリング
61 素線
62 金属線
63 被覆膜
71 編組部材
81 編組部材
83 交差部
84 編み込み部
θ1 分岐角度
θ2 曲げ角度
θ11 第1分岐角度
θ12 第2分岐角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10