IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 豊田合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-着用エアバッグ装置 図1
  • 特許-着用エアバッグ装置 図2
  • 特許-着用エアバッグ装置 図3
  • 特許-着用エアバッグ装置 図4
  • 特許-着用エアバッグ装置 図5
  • 特許-着用エアバッグ装置 図6
  • 特許-着用エアバッグ装置 図7
  • 特許-着用エアバッグ装置 図8
  • 特許-着用エアバッグ装置 図9
  • 特許-着用エアバッグ装置 図10
  • 特許-着用エアバッグ装置 図11
  • 特許-着用エアバッグ装置 図12
  • 特許-着用エアバッグ装置 図13
  • 特許-着用エアバッグ装置 図14
  • 特許-着用エアバッグ装置 図15
  • 特許-着用エアバッグ装置 図16
  • 特許-着用エアバッグ装置 図17
  • 特許-着用エアバッグ装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】着用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/018 20060101AFI20240723BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A41D13/018
A41D13/05 125
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020208660
(22)【出願日】2020-12-16
(65)【公開番号】P2022095373
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐亮
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第91/01658(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0067816(US,A1)
【文献】特開2017-132325(JP,A)
【文献】特開2019-163574(JP,A)
【文献】特開2019-84837(JP,A)
【文献】実開昭63-180057(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第3434123(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第109998200(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-0842427(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/015-13/018
A62B99/00
B60R21/26-21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の腰部を転倒時の転倒先部位から保護可能に、構成される着用エアバッグ装置であって、
骨盤周囲において前記装着者に装着される構成とされて、内部に膨張用ガスを流入させて、前記装着者の左右の大腿骨転子部からなる保護対象部位の外側を覆うように、膨張可能とされるエアバッグを、備え、
該エアバッグが、膨張完了時に前記保護対象部位の外側をそれぞれ覆う2つのカバー部を、有するとともに、前記装着者の転倒時における前記転倒先部位との接触時の内圧上昇を抑制可能な内圧調整手段を、備える構成とされ、
前記エアバッグが、
前記各カバー部と、前記カバー部の上端側を相互に連通させるように構成されて膨張完了時に前記骨盤の側方に配置される連通路部と、を備える一次膨張部と、
前記各カバー部と連通される連通孔を経て、前記カバー部内に流入した膨張用ガスを内部に流入させて、前記カバー部より遅れて膨張する二次膨張部と、
を備える構成とされ、
該二次膨張部は、前記内圧調整手段を構成するもので、前記カバー部の外側壁部側を覆い可能として、前記装着者の転倒時に、転倒側の前記カバー部と前記転倒先部位との間に配置可能に構成されるとともに、前記カバー部側に、余剰の膨張用ガスを大気側へ排出可能な排出孔を、配設させる構成とされていることを特徴とする着用エアバッグ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者の腰部を転倒時の転倒先部位から保護可能に、構成される着用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、転倒時等において、装着者(例えば高齢者)の腰部を保護可能に構成される着用エアバッグ装置としては、腰に巻き付けるように装着して、作動時に、下方に向かって突出するように膨張したエアバッグにより腰部を覆って、転倒先部位から保護する構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/207474号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の着用エアバッグ装置では、装着者の転倒時に、腰部を覆うように膨張したエアバッグが、地面や床等の転倒先部位と、腰部と、の間に介在されて、腰部を保護する構成である。このような構成の着用エアバッグ装置において、腰部を的確に保護するためには、エアバッグの内圧を適切に保持することが好ましく、膨張完了時のエアバッグの内圧を制御する点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、適切な内圧で膨張させたエアバッグにより、装着者の腰部を安定して保護可能な着用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る着用エアバッグ装置は、装着者の腰部を転倒時の転倒先部位から保護可能に、構成される着用エアバッグ装置であって、
骨盤周囲において装着者に装着される構成とされて、内部に膨張用ガスを流入させて、装着者の左右の大腿骨転子部からなる保護対象部位の外側を覆うように、膨張可能とされるエアバッグを、備え、
エアバッグが、膨張完了時に保護対象部位の外側をそれぞれ覆う2つのカバー部を、有するとともに、装着者の転倒時における転倒先部位との接触時の内圧上昇を抑制可能な内圧調整手段を、備える構成とされていることを特徴とする。
【0007】
本発明の着用エアバッグ装置では、エアバッグが、内圧調整手段を備えて、装着者の転倒時における転倒先部位との接触時の内圧上昇を抑制されることから、すなわち、ある程度の内圧で膨張を完了したエアバッグが、転倒先部位との接触時に反発するような急激な内圧上昇を抑制できることから、膨張完了時において、転倒先部位と転倒側の保護対象部位の外側を覆うように膨張している転倒側のカバー部が、内圧を適宜、好適に、調整されることとなって、保護対象部位を適切に保護することができる。
【0008】
したがって、本発明の着用エアバッグ装置では、適切な内圧で膨張させたエアバッグにより、装着者の腰部を安定して保護することができる。
【0009】
具体的には、本発明の着用エアバッグ装置において、内圧調整機構として、各カバー部に、それぞれ、内圧上昇時に膨張用ガスを排気可能な排気手段を、配設させる構成とすれば、各排気手段から、適宜、膨張用ガスを排気させることにより、各カバー部の内圧を調整することができる。
【0010】
また、上記構成の着用エアバッグ装置において、エアバッグを、各カバー部と、カバー部の上端相互を連通するように構成されて膨張完了時に骨盤の側方に配置される連通路部と、を備える構成とし、
排気手段を、各カバー部における膨張完了時に装着者から離隔した側となる外側壁部において、内部に流入した膨張用ガスを排気可能に開口して形成される排気穴部から、構成し、
排気穴部を、装着者の転倒時に転倒先部位によって塞がれるような位置に、形成する構成とすることが、好ましい。
【0011】
このような構成の着用エアバッグ装置では、エアバッグを膨張させた状態で、装着者が転倒すると、転倒側の保護対象部位を覆うように配置される転倒側のカバー部は、排気穴部を、転倒先部位によって塞がれることにより、膨張用ガスの排気を抑制された状態で、保護対象部位と転倒先部位との間に介在されることとなる。このとき、他方のカバー部に形成される排気穴部は、膨張用ガスを排気可能に開口した状態で配置されることから、この他方のカバー部側の排気穴部から膨張用ガスを排気させることにより、エアバッグ全体の過度の内圧上昇を抑制することができる。そのため、適切な内圧を保持された状態の転倒側のカバー部によって、保護対象部位を的確に保護することができる。
【0012】
さらに、このような構成の着用エアバッグ装置において、排気穴部に、カバー部の内圧上昇時に膨張用ガスを排気可能とする排気弁機構を、配設させる構成とすれば、開口された排気穴部から、必要以上の膨張用ガスが排気されることを抑制でき、転倒側のカバー部によって、保護対象部位を一層的確に保護することができて、好ましい。
【0013】
また、着用エアバッグ装置としては、エアバッグを、
各カバー部と、カバー部の上端側を相互に連通させるように構成されて膨張完了時に骨盤の側方に配置される連通路部と、を備える一次膨張部と、
各カバー部と連通される連通孔を経て、カバー部内に流入した膨張用ガスを内部に流入させて、カバー部より遅れて膨張する二次膨張部と、
を備える構成とし、
二次膨張部を、内圧調整手段として、カバー部の外側壁部側を覆い可能に構成するとともに、カバー部側に、余剰の膨張用ガスを大気側へ排出可能な排出孔を配設させる構成とすることが、好ましい。
【0014】
このような構成の着用エアバッグ装置では、エアバッグが、各カバー部の外側壁部側を覆うように、内圧調整手段としての二次膨張部を備える構成であり、この二次膨張部は、連通孔を経てカバー部と連通されるとともに、一次膨張部としてのカバー部よりも遅れて膨張する構成であることから、装着者が転倒すると、転倒側の保護対象部位(腰部)を覆うように配置される転倒側のカバー部と、転倒先部位と、の間に、二次膨張部が、ある程度膨張した状態で、配置されることとなる。そのため、転倒側のカバー部が、転倒先部位によって押圧されると、連通孔を経て、転倒側のカバー部から二次膨張部内に膨張用ガスが流出されることとなって、カバー部の内圧上昇を抑制することができる。二次膨張部には、余剰の膨張用ガスを大気側へ排出可能な排出孔が、配設されており、この排出孔は、カバー部側に配設されていることから、転倒時にも転倒先部位によって塞がれることなく、膨張用ガスを排出させることができる。そのため、膨張した二次膨張部からは、余剰の膨張用ガスを、排出孔を経て排出させることができる。その結果、上記構成の着用エアバッグ装置では、装着者の腰部の転倒側を、過度の内圧上昇を抑制された状態のカバー部と、膨張した二次膨張部と、によって、すなわち、適切な内圧を保持されて、かつ、厚く膨張している部位によって、覆うことができて、保護対象部位を的確に保護することができる。また、上記構成の着用エアバッグ装置では、カバー部の内圧上昇を抑制しつつ、カバー部から排出される膨張用ガスは、二次膨張部側に流れて、直ちに大気に排出されずに、二次膨張部を膨らませることから、装着者の転倒先部位との干渉を抑制できる作用も奏することができ、膨張用ガスを有効的に利用することが可能となって、小型のガス発生器を使用することもできる。
【0015】
さらに、着用エアバッグ装置としては、各カバー部を、装着者側に配置される内側壁部と、外側に配置される外側壁部と、を有する構成とし、
膨張完了時に保護対象部位を覆い可能に構成される保護本体部と、
保護本体部の周囲に配置されて、内側壁部と外側壁部とを部分的に結合させるとともに、前記保護本体部の内圧上昇時に結合状態を解除可能な仮結合部位と、を備えて、
仮結合部位により、内圧調整手段を構成することが、好ましい。
【0016】
着用エアバッグ装置を上記構成とすれば、エアバッグを膨張させた状態で、装着者が転倒すると、転倒側の保護対象部位(腰部)を覆うように配置される転倒側のカバー部(保護本体部)が、転倒先部位と腰部との間に挟まれて内圧を上昇させることとなるが、この内圧上昇時に、保護本体部の周囲において、内側壁部と外側壁部とを部分的に結合させるように配置されている仮結合部位が、内側壁部と外側壁部との結合状態を解除されることとなり、この仮結合部位の配置部位に、内側壁部と外側壁部とを離隔させるように膨張用ガスを流入させることができる。すなわち、カバー部の実質的な容積を、仮結合部位の結合解除により、増大させることができて、保護本体部の内圧のさらなる上昇を抑制することができる。その結果、適切な内圧を保持された状態のカバー部(保護本体部)によって、保護対象部位を的確に保護することができる。
【0017】
また、装着者の腰部を保護可能に構成される着用エアバッグ装置は、下記構成としてもよい。
【0018】
骨盤周囲において装着者に装着される構成とされて、内部に膨張用ガスを流入させて、装着者の左右の大腿骨転子部からなる保護対象部位の外側を覆うように、膨張可能とされるエアバッグを、備え、
エアバッグが、膨張完了時に保護対象部位の外側をそれぞれ覆う2つのカバー部と、カバー部の上端側を相互に連通させるように構成されて膨張完了時に骨盤の側方に配置される連通路部と、を、有するとともに、一方のカバー部内に流入した膨張用ガスの他方のカバー部側への流出を規制する流出抑制手段を、備える構成とされていることを特徴とする。
【0019】
このような構成の着用エアバッグ装置では、エアバッグが、膨張完了後に、流出抑制手段により、カバー部間の膨張用ガスの移動を規制されることから、エアバッグを膨張させた状態で、装着者が転倒した際に、転倒側の保護対象部位(腰部)を覆うように配置される転倒側のカバー部が、転倒先部位と腰部との間に挟まれることとなるが、この転倒側のカバー部から、他方のカバー部側に膨張用ガスが移動することを、抑制できる。すなわち、転倒先部位と接触するカバー部が、その内部の膨張用ガスを、他方のカバー部側に流出させて、内圧を低下させる挙動を、防止できる。そのため、例えば、エアバッグに膨張用ガスを供給するガス発生器として、小型のものを使用する場合にも、転倒先部位と接触するカバー部の内圧を保持させることができ、ある程度の内圧を保持された状態の転倒先部位と接触するカバー部によって、保護対象部位を的確に保護することができる。
【0020】
具体的には、流出抑制手段としては、連通路部内における各カバー部近傍に、他方のカバー部側への膨張用ガスの流出を規制可能な逆止弁機構を配設させる構成としてもよい。
【0021】
また、エアバッグを、少なくともカバー部の部位を、上下方向の幅寸法を縮めるように折り畳んで、骨盤周囲の収納部位に、収納させる構成とする場合、流出抑制手段を、可撓性を有した長尺体から構成して、両端側を、それぞれ、各カバー部における膨張完了時の下端側に連結させ、中間部位を、連通路部の外周側に巻き掛けるように配置される規制部材から、構成し、規制部材の長さ寸法を、エアバッグの膨張完了時に、中間部位の緊締力によって、連通路部を閉塞可能な寸法に、設定する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態である着用エアバッグ装置を、装着者に装着させた状態の概略図である。
図2】第1実施形態の着用エアバッグ装置と、エアバッグとを、並べて平らに展開した状態の平面図である。
図3】第1実施形態の着用エアバッグ装置を装着した状態の装着者が転倒する状態を説明する概略図である。
図4】第1実施形態の着用エアバッグ装置において、エアバッグを膨張させた状態で、装着者が転倒している状態を示す概略断面図である。
図5】本発明の他の実施形態であるエアバッグを示す部分拡大平面図である。
図6図5のエアバッグにおける排気穴部の開閉を説明する概略図である。
図7】本発明のさらに他の実施形態であるエアバッグを示す部分拡大平面図である。
図8図7のエアバッグの概略縦断面図であり、図7のVIII-VIII部位に対応する。
図9図7のエアバッグを膨張させた状態で、装着者が転倒している状態を示す概略断面図である。
図10】本発明のさらに他の実施形態であるエアバッグを示す部分拡大平面図である。
図11図10のエアバッグの概略横断面図であり、図10のXI-XI部位に対応する。
図12図10のエアバッグを膨張させた状態で、装着者が転倒している状態を示す概略断面図である。
図13】本発明の第2実施形態である着用エアバッグ装置を、装着者に装着させた状態の概略図である。
図14】第2実施形態の着用エアバッグ装置において使用されるエアバッグの平面図である。
図15】第2実施形態の着用エアバッグ装置において、エアバッグを膨張させた状態を示す装着状態での概略断面図である。
図16】第2実施形態の着用エアバッグ装置において、エアバッグを膨張させた状態を示す装着状態での概略斜視図である。
図17図14のエアバッグにおいて、規制部材による膨張用ガスの流れの規制前と後の状態とを示す概略断面図である。
図18】本発明のさらに他の実施形態であるエアバッグを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。まず、第1実施形態の着用エアバッグ装置S1について、説明をする。実施形態では、図1に示すように、装着者Mの腰部MWの周囲(詳細には、骨盤MPの周囲)に巻き付けるように装着するタイプの着用エアバッグ装置S1を例に採り、説明をする。実施形態では、上下,前後,左右の方向は、特に断らない限り、装着者Mに装着させた状態での装着者Mの上下,前後,左右の方向と一致するものである。
【0024】
着用エアバッグ装置S1は、図1,2に示すように、エアバッグ10と、エアバッグ10に膨張用ガスを供給するガス発生器5と、装着者Mの転倒を検知するセンサ部2を備えてガス発生器5を作動させる作動制御装置1と、エアバッグ10の外周側を覆うアウタカバー部20と、を備える構成とされている。実施形態の着用エアバッグ装置S1では、エアバッグ10は、図2に示すように、平らに展開された状態で、アウタカバー部20内に配置されている。
【0025】
作動制御装置1は、上下前後左右の3軸回りの角速度を検知可能な角速度センサと、3軸方向の加速度を検知可能な加速度センサと、を有するセンサ部2を、備えるとともに、センサ部2からの信号によって、装着者Mの通常動作と異なる転倒動作を検知すると、ガス発生器5を作動させるように、構成されている。具体的には、装着者Mが通常動作と異なった転倒動作を開始していると、作動制御装置1は、種々の閾値から判定可能な判定手段を備えていることから、その判定手段の判定に基づいて装着者Mの転倒を検出し、ガス発生器5を作動させることとなる。この作動制御装置1には、センサ部2の作動用やガス発生器5の作動用信号の出力のために、図示しない電池等からなる電源が、内蔵されている。
【0026】
エアバッグ10は、可撓性を有したシート体から形成されるもので、実施形態の場合、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から形成されている。このエアバッグ10は、アウタカバー部20における後述するベルト状部22を利用して、骨盤MPの周囲に巻き付けられるようにして、装着者Mに装着される構成である。実施形態の場合、エアバッグ10は、装着状態において、装着者Mの腰部MWの左右の側方を覆うように、配置される(図1参照)。エアバッグ10は、図2に示すように、外形形状を略同一として、装着時に装着者M側(内側)に配置される内側壁部10aと、外側に配置される外側壁部10bと、を有し、内側壁部10aと外側壁部10bとの周縁相互を、縫着(結合)させることにより、膨張完了形状を略板状とした袋状とされている。実施形態の場合、エアバッグ10は、図2に示すように、膨張完了時に装着者Mの腰部MWの左右の側方を覆う2つのカバー部13(13L,13R)と、カバー部13(13L,13R)の上端13a相互を連通するように構成される連通路部12と、を備えている。エアバッグ10は、平らに展開した状態で、左右対称形とされている。
【0027】
連通路部12は、膨張完了形状を、左右方向に略沿った棒状として構成されている。この連通路部12は、詳細な図示は省略するが、エアバッグ10の膨張完了時に、装着者Mの骨盤MPの側方(実施形態の場合、後方)となる位置に、配置されることとなる。実施形態では、この連通路部12の部位に、ガス発生器5が、エアバッグ10の内部に膨張用ガスGを供給可能に連結されている(図2参照)。ガス発生器5は、詳細な図示を省略するが、連通路部12の長手方向の中央付近に配置されるもので、内部に圧縮ガスを封入させて構成されて、作動時に、封入状態を解除されて、エアバッグ10内にコールドガスを噴出可能な構成とされている。このガス発生器5は、上述した作動制御装置1と電気的に接続されており、装着者Mの転倒を検知した作動制御装置1からの作動信号を入力させて、作動される構成である。
【0028】
カバー部13(13L,13R)は、エアバッグ10を平らに展開した状態において、上端13aを連通路部12の上縁よりも僅かに下方に位置させるように、連通路部12に対して段差を設けられるようにして、配置されるもので、連通路部12から左右の外方に延びつつ下方に延びるように形成されている。各カバー部13(13L,13R)は、装着時に、保護対象部位としての大腿骨転子部TPの周囲を外側を含めて広く覆い可能に、平らに展開した状態の外形形状を、装着状態における前後方向側で幅広とし、かつ、下端13b側にかけてやや狭幅に構成される略台形状とされている。具体的には、各カバー部13は、エアバッグ10の膨張完了時に、装着者Mの骨盤MPの側方から大腿骨転子部TPの下方(転子下)にかけての領域を、広く覆うように、構成されている。そして、各カバー部13は、装着者Mの転倒時に、腰部MW(大腿骨転子部TP)を、転倒時の転倒先部位F(地面や床面等)から保護することとなる。
【0029】
各カバー部13(13L,13R)において、膨張完了時に装着者Mから離隔した側となる外側壁部10bには、エアバッグ10の内部に流入した膨張用ガスGを排気可能な排気穴部15(排気手段)が、外側壁部10bを切り抜くように、円形に開口して、形成されている。実施形態では、この排気手段としての排気穴部15が、装着者Mの転倒時における転倒先部位Fとの接触時のエアバッグ10の内圧上昇を抑制可能な内圧抑制手段を、構成している。実施形態の場合、排気穴部15は、装着者Mの転倒時に転倒先部位Fによって塞がれるような位置に、形成されるもので(図4参照)、詳細には、各カバー部13の幅方向の略中央であって、上下の中央よりもやや下方となる位置に、形成されている(図2参照)。また、この排気穴部15は、開口径を、エアバッグ10の膨張完了前の状態での膨張用ガスの多量の排出を抑制可能な寸法に、設定されている。
【0030】
アウタカバー部20は、エアバッグ10を構成する基布よりも触感の良好な可撓性を有した織布から形成されるもので、エアバッグ10の外周面を全周にわたって覆う構成とされている。詳細には、アウタカバー部20を構成する織布は、エアバッグ10から排出される膨張用ガスGをアウタカバー部20の内部に貯留させないように、膨張用ガスGを透過可能な素材から、構成されている。アウタカバー部20は、装着時に内側(装着者M側)に配置される内側壁部20aと、装着時に外側に配置される外側壁部20bと、を有し、内側壁部20aと外側壁部20bとの外周縁相互を結合(縫着)させることにより、袋状とされるもので、内部でエアバッグ10を円滑に膨張可能なように、平らに展開した状態の外形形状を、平らに展開した状態でのエアバッグ10よりも大きく設定されている(図2参照)。また、アウタカバー部20は、図2に示すように、上縁側に、左右の外方にそれぞれ突出するベルト状部22,22を、有している。このベルト状部22は、先端22a側に、装着手段を有する構成とされている。装着手段としては、実施形態では、装着者Mの腰回りの寸法に応じて容易に微調整可能で、かつ、着脱を容易とするように、それぞれ、ベルト状部22の先端22a側に配置される鉤状側部23aとループ側部23bとを有して、ベルト状部22の先端22a相互を連結可能な一対の面状ファスナー23が、用いられている。
【0031】
第1実施形態の着用エアバッグ装置S1は、アウタカバー部20のベルト状部22の先端22a相互を、装着手段としての面状ファスナー23を利用して連結させることにより、装着者Mの腰部MW(骨盤MP)の周囲に巻き付けられるようにして、装着者Mに装着されることとなる(図1参照)。実施形態の着用エアバッグ装置S1では、装着者Mに装着させた状態で、センサ部2が、図3に示すような装着者Mの転倒を検知すれば、作動制御装置1からガス発生器5に作動信号が出力されて、エアバッグ10の内部に膨張用ガスが流入することとなり、エアバッグ10が、図4に示すように膨張を完了させることとなる。そして、実施形態の着用エアバッグ装置S1では、エアバッグ10を膨張させた状態で、装着者Mが、腰部MWの側面を地面や床面等の転倒先部位Fと接触させるように転倒すると、転倒先部位F側となる一方のカバー部13(図4における左側のカバー部13L)が、腰部MWと転倒先部位Fとの間に介在されることとなり、このカバー部13Lによって、大腿骨転子部TPからなる保護対象部位を保護することができる。
【0032】
そして、第1実施形態の着用エアバッグ装置S1では、エアバッグ10が、内圧調整手段としての排気穴部15を備えて、装着者Mの転倒時における転倒先部位Fとの接触時の内圧上昇を抑制されることから、すなわち、ある程度の内圧で膨張を完了したエアバッグ10が、転倒先部位Fとの接触時に反発するような急激な内圧上昇を抑制できることから、膨張完了時において、転倒先部位Fと転倒側の保護対象部位(大腿骨転子部TP)の外側を覆うように膨張している転倒側のカバー部13Lが、内圧を適宜、好適に、調整されることとなって、保護対象部位(大腿骨転子部TP)を適切に保護することができる。
【0033】
したがって、第1実施形態の着用エアバッグ装置S1では、適切な内圧で膨張させたエアバッグ10により、装着者Mの腰部MWを安定して保護することができる。
【0034】
具体的には、第1実施形態の着用エアバッグ装置S1では、内圧調整機構として、各カバー部13L,13Rに、それぞれ、内圧上昇時に膨張用ガスを排気可能な排気手段としての排気穴部15を、配設させる構成であることから、各排気穴部15から、適宜、膨張用ガスを排気させることにより、各カバー部13L,13Rの内圧を調整することができる。
【0035】
さらに詳細には、第1実施形態の着用エアバッグ装置S1では、エアバッグ10が、各カバー部13L,13Rの上端13a相互を、連通路部12によって連通させる構成とされるとともに、排気手段としての排気穴部15が、各カバー部13L,13Rにおいて、膨張完了時に装着者Mから離隔した側となる外側壁部10bに形成される構成とされている。そして、この排気穴部15は、装着者Mの転倒時に転倒先部位Fによって塞がれるような位置に、形成されている。そのため、第1実施形態の着用エアバッグ装置S1では、エアバッグ10を膨張させた状態で、装着者Mが転倒すると、転倒側の保護対象部位としての大腿骨転子部TPを含めた腰部MWを覆うように配置される転倒側のカバー部13Lは、排気穴部15を、転倒先部位Fによって塞がれることにより、膨張用ガスの排気を抑制された状態で、腰部MW(保護対象部位(大腿骨転子部TP))と転倒先部位Fとの間に介在されることとなる。このとき、他方のカバー部13Rに形成される排気穴部15が、膨張用ガスGを排気可能に開口した状態で配置されることから、この他方のカバー部13R側の排気穴部15から膨張用ガスGを排気させることにより、エアバッグ10全体の過度の内圧上昇を抑制することができる(図4参照)。そのため、適切な内圧を保持された状態の転倒側のカバー部13Lによって、保護対象部位としての大腿骨転子部TPを的確に保護することができる。
【0036】
また、エアバッグ10Aとしては、図5,6に示すごとく、排気弁機構を備える構成の排気穴部25を有する構成のものを使用してもよい。図5に示すエアバッグ10Aでは、排気穴部25は、各カバー部13Aの外側壁部10bに開口して形成される穴本体26と、穴本体26を開閉させる排気弁機構と、を備える構成とされている。この排気弁機構は、エアバッグ10Aの膨張完了後におけるカバー部13Aの内圧上昇時に、膨張用ガスを排気可能に、穴本体26を開口させる構成とされるもので、具体的には、穴本体26の内周面側に配置されるとともに穴本体26を閉塞可能な大きさに設定されてるフラップ材27から、構成されている。フラップ材27は、1つの端縁(開口側端縁27a)を、穴本体26の周縁26a近傍に位置させ、この開口側端縁27aから連なっている対向する2つの縁部27b,27cを、穴本体26の周縁において外側壁部10bに結合させるようにして、穴本体26を覆う構成とされている。フラップ材27は、外側壁部10bとの結合部位28,28間の離隔距離を、平らに展開した状態の外側壁部10bにおける結合部位28,28間の離隔距離よりもわずかに大きく設定されて、エアバッグ10Aを平らに展開した状態で、外側壁部10bに対して僅かにたるむように、構成されている(図5参照)。この排気穴部25では、フラップ材27は、エアバッグ10Aの膨張完了時には、図6のAに示すように、穴本体26を閉塞した状態で配置されることとなる。そして、エアバッグ10Aの膨張完了後における図示しない装着者の転倒時において、転倒側の図示しないカバー部が転倒先部位と装着者の腰部との間で圧迫されて、エアバッグ10A全体の内圧が上昇すると(内圧値が所定以上に上昇すると)、エアバッグ10Aの反発力を高めすぎないように、図6のBに示すように、転倒側から離隔したカバー部13Aに形成されている排気穴部25において、フラップ材27が、開口側端縁27aを穴本体26から部分的に突出させるようにして、穴本体26が開口し、膨張用ガスGを排気させることとなる。
【0037】
このような構成のエアバッグ10Aでは、前述のエアバッグ10と比較して、排気穴部25から、必要以上の膨張用ガスが排気されることを抑制でき、転倒側のカバー部13Aによって、保護対象部位を一層的確に保護することが可能となる。
【0038】
また、エアバッグ30として、図7~9に示す構成のものを使用してもよい。エアバッグ30は、ガス発生器(図示省略)からの膨張用ガスを流入させて膨張する一次膨張部31と、一次膨張部31を経て内部に膨張用ガスを流入させる二次膨張部35と、を備える構成とされている。エアバッグ30は、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から形成されるもので、上述したエアバッグ10と同様に、図示しないアウタカバー部のベルト状部を利用して、骨盤MPの周囲に巻き付けられるようにして、装着者Mに装着される構成である。エアバッグ30は、詳細な図示は省略するが、上述のエアバッグ10と同様に、平らに展開した状態で、左右対称形とされている。
【0039】
一次膨張部31は、外形形状を略同一として、装着時に装着者M側(内側)に配置される内側壁部31aと、外側に配置される外側壁部31bと、を有し、内側壁部31aと外側壁部31bとの周縁相互を、縫着(結合)させることにより、膨張完了形状を略板状とした袋状とされている。そして、一次膨張部31は、詳細な図示は省略するが、上述したエアバッグ10と同様に、膨張完了時に装着者Mの腰部MWの左右の側方を覆う2つのカバー部33と、カバー部33の上端33a相互を連通するように構成される連通路部32と、を備えている。カバー部33と連通路部32とは、上述のエアバッグ10におけるカバー部13及び連通路部12と、略同一の構成とされている。
【0040】
二次膨張部35は、内圧調整手段を構成するもので、各カバー部33の外側壁部31b側を、それぞれ、覆い可能に、2つ配設されている。二次膨張部35は、平らに展開した状態の外形形状を、カバー部33よりも一回り小さく設定される略台形状とされるもので、外形形状を略同一として、装着時に装着者M側(内側)に配置される内側壁部35aと、外側に配置される外側壁部35bと、を有し、内側壁部35aと外側壁部35bとの周縁相互を、縫着(結合)させることにより、膨張完了形状を略板状とした袋状とされている。すなわち、二次膨張部35は、装着者の転倒時に、カバー部33の外側壁部31b側を覆って、転倒側のカバー部33と転倒先部位Fとの間に、配置されるような構成とされている、また、各二次膨張部35は、連通孔37を介して、各カバー部33と連通されるもので、各カバー部33内に流入した膨張用ガスGを流入させて、膨張する構成とされている。連通孔37は、実施形態の場合、各カバー部33及び各二次膨張部35の上下前後の略中央となる位置において、上下方向側で離れた2箇所に、形成されており、二次膨張部35とカバー部33とは、連通孔37の周囲となる位置で、外側壁部31bと内側壁部35aとを縫合糸を用いて縫着させるように形成される結合部位38によって、相互に連結されている。この連通孔37は、開口面積を、二次膨張部35をカバー部33よりも遅れて膨張させるような大きさに、設定されている。この二次膨張部35は、図示しない止め片等により、カバー部33に対してずれを防止されて配置されている。

【0041】
また、各二次膨張部35には、内部に流入した余剰の膨張用ガスGを大気側へ排出可能な排出孔39が、形成されている。排出孔39は、カバー部33側となる内側壁部35aにおいて、実施形態の場合、連通孔37の直下となる下縁近傍の箇所に、形成されている。この排出孔39は、開口面積を、連通孔37の開口面積よりも小さく設定されている。
【0042】
このような構成のエアバッグ30では、図示しないガス発生器の作動時に、まず、一次膨張部31が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、一次膨張部31の膨張完了後に、各カバー部33に形成される連通孔37を経て、各二次膨張部35が、内部に膨張用ガスを流入させることとなる。すなわち、上記構成のエアバッグ30では、各カバー部33の外側壁部31b側を覆うように、内圧調整手段としての二次膨張部35を備える構成であり、この二次膨張部35は、連通孔37を経てカバー部33と連通されるとともに、一次膨張部31としてのカバー部33よりも遅れて膨張する構成であることから、装着者Mが転倒すると、転倒側の保護対象部位(腰部MW)を覆うように配置される転倒側のカバー部33と、転倒先部位Fと、の間に、二次膨張部35が、ある程度膨張した状態で、配置されることとなる(図9のA参照)。そのため、転倒側のカバー部33が、転倒先部位Fによって押圧されると、連通孔37を経て、転倒側のカバー部33から二次膨張部35内に膨張用ガスが流出されることとなって(図9のB参照)、カバー部33の内圧上昇を抑制することができる。二次膨張部35には、余剰の膨張用ガスを大気側へ排出可能な排出孔39が、配設されており、この排出孔39は、カバー部33側に配設されていることから、転倒時にも転倒先部位Fによって塞がれることなく、膨張用ガスGを大気側へ排出させることができる。そのため、膨張した二次膨張部35からは、余剰の膨張用ガスGを、排出孔39を経て排出させることができる。その結果、このような構成のエアバッグ30を使用する場合、装着者Mの腰部MWの転倒側を、過度の内圧上昇を抑制された状態のカバー部33と、膨張した二次膨張部35と、によって、すなわち、適切な内圧を保持されて、かつ、厚く膨張している部位によって、覆うことができ、保護対象部位を的確に保護することができる。また、このエアバッグ30を使用する場合、カバー部33の内圧上昇を抑制しつつ、カバー部33から排出される膨張用ガスGは、二次膨張部35側に流れて、直ちに大気に排出されずに、二次膨張部35を膨らませることから、装着者Mの転倒先部位Fとの干渉を抑制できる作用も奏することができ、膨張用ガスGを有効的に利用することが可能となって、小型のガス発生器を使用することもできる。
【0043】
また、エアバッグ40として、図10~12に示す構成のものを使用してもよい。エアバッグ40は、詳細な図示は省略するが、上述したエアバッグ10と同様に、膨張完了時に装着者Mの腰部MWの左右の側方を覆う2つのカバー部43と、カバー部43の上端43a相互を連通するように構成される連通路部42と、を備えている。また、エアバッグ40は、外形形状を略同一として、装着時に装着者M側(内側)に配置される内側壁部40aと、外側に配置される外側壁部40bと、を有して、内側壁部40aと外側壁部40bとの周縁相互を、縫着(結合)させることにより、袋状とされている。このエアバッグ40も、詳細な図示は省略するが、上述のエアバッグ10と同様に、平らに展開した状態で、左右対称形とされている。
【0044】
各カバー部43は、平らに展開した状態での外形形状を、上述のエアバッグ10におけるカバー部13と略同一として、装着時に、保護対象部位としての大腿骨転子部TPの周囲を外側を含めて広く覆い可能に、構成されている。そして、各カバー部43において、上縁側の領域と、この上縁側の領域から下方に連なるような前後の中央付近の領域と、が、膨張完了時に、保護対象部位としての大腿骨転子部TPを覆う保護本体部45を、構成している。また、各カバー部43において、保護本体部45の周囲を構成する周縁部位46の領域には、内側壁部40aと外側壁部40bとを部分的に結合させて構成される仮結合部位48が、配設されている。仮結合部位48は、エアバッグ40の膨張完了時における保護本体部45の内圧上昇時に結合状態を解除可能に構成されるもので、実施形態の場合、内側壁部40aと外側壁部40bとを、縫合糸を用いて部分的に縫着(結合)させることにより、構成されている。詳細には、仮結合部位48は、保護本体部45の前下側と後下側とにおいて、それぞれ、2重線上状として、計4箇所に、形成されている(図10参照)。各仮結合部位48は、保護本体部45の内圧上昇時に、所定箇所の結合状態を解除可能とされている。この仮結合部位48の結合解除は、縫合糸の糸抜けや破断によって生じることとなる。
【0045】
このような構成のエアバッグ40では、膨張完了状態で、装着者Mが転倒すると、転倒側の保護対象部位(腰部MW)を覆うように配置される転倒側のカバー部43(保護本体部45)が、転倒先部位Fと腰部MWとの間に挟まれて内圧を上昇させることとなるが、この内圧上昇時に、保護本体部45の周囲において、内側壁部40aと外側壁部40bとを部分的に結合させるように配置されている仮結合部位48が、内側壁部40aと外側壁部40bとの結合状態を解除されることとなり、この仮結合部位48の配置部位に、内側壁部40aと外側壁部40bとを離隔させるように膨張用ガスを流入させることができる(図12参照)。すなわち、カバー部43(保護本体部45)の実質的な容積を、仮結合部位48の結合解除により、増大させることができて、保護本体部45の内圧のさらなる上昇を抑制することができる。その結果、適切な内圧を保持された状態のカバー部43(保護本体部45)によって、保護対象部位を的確に保護することができる。
【0046】
次に、本発明の第2実施形態である着用エアバッグ装置S2について、説明をする。第2実施形態の着用エアバッグ装置S2も、図13に示すように、装着者Mの腰部MW(骨盤MP)の周囲に巻き付けるように装着するタイプのものである。着用エアバッグ装置S2は、図13,14に示すように、エアバッグ50と、エアバッグ50に膨張用ガスを供給するガス発生器5Bと、図示しない作動制御装置と、エアバッグ50の外周側を覆うアウタカバー部20Bと、を備えている。また、第2実施形態の着用エアバッグ装置S2では、エアバッグ50は、折り畳まれた状態で、周囲をアウタカバー部20Bによって覆われて装着者Mの腰部MWの周囲に巻き付けられる構成である。アウタカバー部20Bは、エアバッグ50を収納させる収納部位を構成するもので、詳細な図示は省略するが、下縁側を膨張するエアバッグ50によって開口可能として、下縁側から、膨張するエアバッグ50を突出可能に構成されている(図15参照)。アウタカバー部20Bは、下縁側からエアバッグ50を突出可能に構成される以外は、前述の着用エアバッグ装置S1のアウタカバー部20と同様の構成とされており、長手方向の両端側に、装着手段としての面状ファスナー23Bを配設させている。
【0047】
ガス発生器5Bは、前述の着用エアバッグ装置S1において使用されるガス発生器5よりも小型として出力を小さく設定される以外は、前述のガス発生器5と同様の構成である。ガス発生器5Bは、実施形態の場合、図14の二点鎖線に示すように、連通路部52の長手方向の略中央よりもやや左方となる位置に、連結されている。
【0048】
エアバッグ50は、図14に示すように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するバッグ本体51と、後述する流出抑制手段としての規制部材57と、を備えている。
【0049】
バッグ本体51は、上述したエアバッグ10と同様に、膨張完了時に装着者Mの腰部MWの左右の側方を覆う2つのカバー部55(55L,55R)と、カバー部55の上端55a相互を連通するように構成される連通路部52と、を備えている。また、バッグ本体51は、外形形状を略同一として、装着時に装着者M側(内側)に配置される内側壁部51aと、外側に配置される外側壁部51bと、を有して、内側壁部51aと外側壁部51bとの周縁相互を、縫着(結合)させることにより、袋状とされている。カバー部55及び連通路部52は、カバー部に排気穴部を配設させない構成である以外は、前述したエアバッグ10におけるカバー部13及び連通路部12と、外形形状を略同一として、構成されている。このエアバッグ50(バッグ本体51)も、平らに展開した状態で、左右対称形とされている。
【0050】
連通路部52は、上述したごとく、長手方向の略中央(平らに展開した状態での左右方向の略中央)よりもやや左方となる位置において、ガス発生器5Bを連結させている構成である。このガス発生器5Bの配置領域からずれた位置であって、連通路部52における長手方向の略中央(平らに展開した状態での左右方向の略中央)の上縁52a側と下縁52b側とには、規制部材57を挿通可能な挿通孔53,53が、形成されている。
【0051】
規制部材57は、可撓性を有した帯状体(長尺体)から構成されるもので、実施形態の場合、中間部位57cを、連通路部52の上下に形成される挿通孔53,53に挿通させて連通路部52の外周側に巻き掛けた状態で(図17参照)、端部57a,57bを、それぞれ、各カバー部55(55L,55R)における内下端55b側(装着時における後下端側)に、結合させることにより、バッグ本体51に連結される構成である。この規制部材57は、長さ寸法を、エアバッグ50の膨張完了前には連通路部52を閉塞しないものの、エアバッグ50の膨張完了時には、エアバッグ50における各カバー部55の内下端55b側の下方への突出による端部57a,57bの引張により、挿通孔53に挿通されて周囲に巻き掛けられた状態の中間部位57cの緊締力によって、連通路部52を閉塞可能とするような寸法に、設定されている(図16,17参照)。そして、この規制部材57が、エアバッグ50の膨張完了時に、一方のカバー部55L内に流入した膨張用ガスの他方のカバー部55R側への流出を規制する流出抑制手段を、構成している。
【0052】
エアバッグ50(バッグ本体51)は、詳細な図示は省略するが、内側壁部51aと外側壁部51bとを重ねるように平らに展開した状態から、上下方向側の幅寸法を縮められるように折り畳まれた折り完了体の状態で、骨盤MP周囲の収納部位に、収納される構成である。実施形態の場合、エアバッグ50(バッグ本体51)を折り畳んで形成される折り完了体は、外周側をアウタカバー部20Bによって覆われた状態で、装着者Mの骨盤MP周囲に巻き付けられて装着される構成である。このとき、規制部材57も、折り完了体とともに、外周側をアウタカバー部20Bによって覆われることとなる。
【0053】
第2実施形態の着用エアバッグ装置S2においても、装着者Mに装着させた状態で、センサ部2が装着者Mの転倒を検知すれば、作動制御装置1からガス発生器5Bに作動信号が出力されて、エアバッグ50の内部に膨張用ガスが流入することとなり、エアバッグ50が、アウタカバー部20Bから下方に突出しつつ、図15に示すように膨張を完了させることとなる。
【0054】
そして、第2実施形態の着用エアバッグ装置S2では、エアバッグ50が、膨張完了後に、流出抑制手段としての規制部材57により、カバー部55L,55R間の膨張用ガスの移動を規制されることから、エアバッグ50を膨張させた状態で、装着者Mが転倒した際に、転倒側の保護対象部位(腰部MW)を覆うように配置される転倒側のカバー部55Lが、詳細な図示は省略するが、転倒先部位と腰部MWとの間に挟まれることとなるが、この転倒側のカバー部55Lから、他方のカバー部55R側に膨張用ガスが移動することを、抑制できる。すなわち、転倒先部位Fと接触するカバー部55Lが、その内部の膨張用ガスを、他方のカバー部55R側に流出させて、内圧を低下させる挙動を、防止できる。そのため、例えば、エアバッグ50に膨張用ガスを供給するガス発生器5Bとして、前述の着用エアバッグ装置S1に使用されるガス発生器5と比較して小型のものを使用する場合にも、転倒先部位Fと接触するカバー部55Lの内圧を保持させることができ、ある程度の内圧を保持された状態の転倒先部位Fと接触するカバー部55Lによって、保護対象部位(大腿骨転子部TP)を的確に保護することができる。
【0055】
したがって、第2実施形態の着用エアバッグ装置S2においても、適切な内圧で膨張させたエアバッグ50により、装着者Mの腰部MWを安定して保護することができる。
【0056】
この第2実施形態の着用エアバッグ装置S2では、エアバッグ50の展開膨張時には、連通路部52を経て、各カバー部55L,55R内に円滑に膨張用ガスを流入させて各カバー部55L,55Rを、下方に突出させつつ膨張させることができ、エアバッグ50が膨張を完了させれば、連通路部52の外周側に巻き掛けられている規制部材57の中間部位57cが、連通路部52を、外周側から縮径させるように絞ることとなり、この中間部位57cの緊締力によって、連通路部52が閉塞されることとなる(図16,17参照)。第2実施形態の着用エアバッグ装置S2では、流出抑制手段を構成する規制部材57を、バッグ本体51と別体の長尺体から構成して、この規制部材57を、中間部位57cをバッグ本体51における連通路部52の周囲に巻き掛けつつ、端部57a,57bをバッグ本体51側に連結させる構成であることから、エアバッグ50(バッグ本体51)の仕様を大きく変更しなくとも、容易に、対応することができ、また、規制部材57の長さ寸法を設定するだけで、膨張用ガスの流出を制御できることから、構成が簡便である。
【0057】
また、エアバッグ60としては、図18に示すように、連通路部62内における各カバー部63近傍(端部62a側)に、流出抑制手段としての逆止弁機構65を、配設させる構成のものを使用してもよい。逆止弁機構65は、エアバッグ60の膨張時には、開弁されて、連通路部62から、各カバー部63内へ膨張用ガスを流入可能に構成され、エアバッグ60の膨張完了後には、閉弁されて、各カバー部63内に流入した膨張用ガスの連通路部62側への流出を抑制する構成とされている。
【0058】
実施形態の着用エアバッグ装置S1,S2では、エアバッグ10,10A,30,40,50,60の2つのカバー部13,13A,33,43,55,63によって、装着者Mの大腿骨TBの付け根付近(大腿骨転子部TP)を安定して保護することができることから、装着者Mが、転倒によって、治療が長引く大腿骨TBを骨折することを抑制でき、高齢者に好適に使用することができる。
【0059】
また、実施形態の着用エアバッグ装置S1,S2では、エアバッグ10,10A,30,40,50,60として、連通路部12,32,42,52,62によって連結される2つのカバー部13,13A,33,43,55,63を有し、各カバー部13,13A,33,43,55,63により左右の保護対象部位(大腿骨転子部TP)を保護する構成のものを使用しているが、エアバッグの構成は実施形態に限られるものではない。二次膨張部35や仮結合部位48を内圧調整手段とするタイプのエアバッグ30,40は、連通路部を備えず、左右の保護対象部位をそれぞれ保護可能に、別体のエアバッグと、各エアバッグにそれぞれ膨張用ガスを供給可能な別体のガス発生器と、を配置させるように、構成してもよい。
【0060】
なお、実施形態では、着用エアバッグ装置S1,S2として、ベルト状の部位を有して、腰部の周囲に巻き付けるようにして装着させるタイプのものを例に採り説明しているが本発明を適用可能な着用エアバッグ装置は、実施形態に限定されるものではなく、例えば、ベストやジャケット等、装着者の胴部に着用させ、着用状態での下端側からエアバッグを突出させるように膨張させるタイプの着用エアバッグ装置に、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10,10A…エアバッグ、10a…内側壁部、10b…外側壁部、12…連通路部、13(13L,13R),13A…カバー部、13a…上端、15…排気穴部(内圧調整手段、排気手段)、25…排気穴部(内圧調整手段、排気手段)、27…フラップ材(排気弁機構)、30…エアバッグ、31…一次膨張部、31a…内側壁部、31b…外側壁部、32…連通路部、33…カバー部、33a…上端、35…二次膨張部(内圧調整手段)、35a…内側壁部、35b…外側壁部、37…連通孔、39…排出孔、40…エアバッグ、40a…内側壁部、40b…外側壁部、42…連通路部、43…カバー部、43a…上端、45…保護本体部、46…周縁部位、48…仮結合部位(内圧調整手段)、50…エアバッグ、51…バッグ本体、51a…内側壁部、51b…外側壁部、52…連通路部、55(55L,55R)…カバー部、55a…上端、55b…内下端、57…規制部材(流出抑制手段)、57a,57b…端部、57c…中間部位、60…エアバッグ、62…連通路部、63…カバー部、65…逆止弁機構(流出抑制手段)、F…転倒先部位、M…装着者、MW…腰部、TB…大腿骨、TP…大腿骨転子部(保護対象部位)、S1,S2…着用エアバッグ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18