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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】クローラ式車両のクローラユニット
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/088 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
B62D55/088
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020210514
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022027404
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2020129204
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136250
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 博臣
(74)【代理人】
【識別番号】100198719
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 良裕
(72)【発明者】
【氏名】林 亮介
(72)【発明者】
【氏名】入枝 克哉
(72)【発明者】
【氏名】岡村 経信
(72)【発明者】
【氏名】石濱 大義
(72)【発明者】
【氏名】谷口 薫
(72)【発明者】
【氏名】松尾 洋平
(72)【発明者】
【氏名】山下 純平
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-182652(JP,A)
【文献】特開2015-067208(JP,A)
【文献】特開2004-217154(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0275287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/088
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラ式車両のクローラユニットであって、
クローラフレームと、
地面に沿って周回移動可能となるように設けられる無端状の履帯と、
前記クローラフレームの前後方向一端側に設けられる走行モータと、
前記走行モータを覆うモータケースと、
前記履帯に噛合して前記走行モータの駆動力を前記履帯に伝達するスプロケットと、
を備え、
前記モータケースには、仕切部材が設けられ、
前記仕切部材は、前記モータケースと前記履帯との間に形成される空隙を仕切るように前記モータケースの側から前記履帯の側に向けて延在する仕切板を有し、
前記仕切板の面内方向は、前記履帯の移動方向に対して傾斜し
前記仕切部材は、
第1位置に設けられ、前記モータケースの側から前記履帯の側に向けて延在する第1仕切板を含む第1仕切部材と、
前記第1位置とは異なる第2位置に設けられ、前記モータケースの側から前記履帯の側に向けて延在する第2仕切板を含む第2仕切部材と、
を有し、
前記第1位置は、前記履帯と前記スプロケットとが噛み合う噛合領域のうち上端側の位置であり、
前記第2位置は、前記噛合領域のうち前記第1位置よりも下側の位置であり、
前記第1仕切板の延在方向の長さは、前記第2仕切板の延在方向の長さよりも長いことを特徴とするクローラ式車両のクローラユニット。
【請求項2】
前記仕切板は、土砂を受け止める面が凹となるR形状を有することを特徴とする請求項1に記載のクローラ式車両のクローラユニット。
【請求項3】
クローラ式車両のクローラユニットであって、
クローラフレームと、
地面に沿って周回移動可能となるように設けられる無端状の履帯と、
前記クローラフレームの前後方向一端側に設けられる走行モータと、
前記走行モータを覆うモータケースと、
前記履帯に噛合して前記走行モータの駆動力を前記履帯に伝達するスプロケットと、
前記クローラフレームの前後方向一端と前記モータケースとの間において上下方向に延在する縦板と、
を備え、
前記モータケースには、仕切部材が設けられ、
前記仕切部材は、前記モータケースと前記履帯との間に形成される空隙を仕切るように前記モータケースの側から前記履帯の側に向けて延在する仕切板を有し、
前記仕切板の面内方向は、前記履帯の移動方向に対して傾斜し、
前記仕切部材は、前記履帯と前記スプロケットとが噛み合う噛合領域のうち上端側の位置に設けられ、
前記仕切部材は、前記仕切板のうち前記履帯側の端部から前記縦板に向けて延在して前記仕切板と前記縦板との間の空隙を上側から覆う蓋板を更に有し、
前記蓋板は、前記仕切板のうち前記履帯側の端部から前記縦板とは反対側に延出する延出部を有することを特徴とするクローラ式車両のクローラユニット。
【請求項4】
前記仕切部材は、前記仕切板と前記蓋板と側板とによって構成される箱状部材であって前記仕切板と前記縦板との間の空隙に配置される箱状部材を有することを特徴とする請求項3に記載のクローラ式車両のクローラユニット。
【請求項5】
前記延出部は、前記履帯の内側の形状に沿ってR形状を有することを特徴とする請求項3に記載のクローラ式車両のクローラユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラ式車両のクローラユニットに関し、より詳細には、履帯の内側に付着した土砂を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設機械の分野においてトラックフレームの泥堆積防止装置が提案されている(例えば、特許文献1。)。特許文献1では、泥落とし板(34)がトラックフレーム(4)の上部から上方に延びるように固定されている(特許文献1の図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平7-35271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、走行時において履帯(10)がバタつき易い位置(詳細には、履帯(10)がスプロケット(6)、アイドラホイール(8)、アッパーローラ(12)及びロアローラ(14)に接触していない位置)に泥落とし板(34)が設けられている。そのため、走行時にバタついた履帯(10)が泥落とし板(34)に接触し、泥落とし板(34)が破損するおそれがある。ここで、履帯(10)のバタつきを考慮して履帯(10)と泥落とし板(34)とが接触しない程度の間隔を設けることも考えられるが、走行時に履帯(10)の内側に付着して巻き上げられる土砂を十分に除去できない可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、走行時に履帯の内側に付着して巻き上げられる土砂をより確実に除去することが可能なクローラ式車両のクローラユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、クローラ式車両のクローラユニットであって、クローラフレームと、地面に沿って周回移動可能となるように設けられる無端状の履帯と、前記クローラフレームの前後方向一端側に設けられる走行モータと、前記走行モータを覆うモータケースと、を備え、前記モータケースには、仕切部材が設けられ、前記仕切部材は、前記モータケースと前記履帯との間に形成される空隙を仕切るように前記モータケースの側から前記履帯の側に向けて延在する仕切板を有し、前記仕切板の面内方向は、前記履帯の移動方向に対して傾斜していることを特徴とするクローラ式車両のクローラユニットを提供している。
【0007】
ここで、前記履帯に噛合して前記走行モータの駆動力を前記履帯に伝達するスプロケットを更に備え、前記仕切部材は、第1位置に設けられ、前記モータケースの側から前記履帯の側に向けて延在する第1仕切板を含む第1仕切部材と、前記第1位置とは異なる第2位置に設けられ、前記モータケースの側から前記履帯の側に向けて延在する第2仕切板を含む第2仕切部材と、を有し、前記第1位置は、前記履帯と前記スプロケットとが噛み合う噛合領域のうち上端側の位置であり、前記第2位置は、前記嵌合領域のうち前記第1位置よりも下側の位置であり、前記第1仕切板の延在方向の長さは、前記第2仕切板の延在方向の長さよりも長いのが好ましい。
【0008】
更に、前記仕切板は、土砂を受け止める面が凹となるR形状を有するのが好ましい。
【0009】
また、前記履帯に噛合して前記走行モータの駆動力を前記履帯に伝達するスプロケットと、前記クローラフレームの前後方向一端と前記モータケースとの間において上下方向に延在する縦板と、を更に備え、前記仕切部材は、前記履帯と前記スプロケットとが噛み合う噛合領域のうち上端側の位置に設けられ、前記仕切部材は、前記仕切板のうち前記履帯側の端部から前記縦板に向けて延在して前記仕切板と前記縦板との間の空隙を上側から覆う蓋板を更に有するのが好ましい。
【0010】
更に、前記仕切部材は、前記仕切板と前記蓋板と側板とによって構成される箱状部材であって前記仕切板と前記縦板との間の空隙に配置される箱状部材を有するのが好ましい。
【0011】
また、前記蓋板は、前記仕切板のうち前記履帯側の端部から前記縦板とは反対側に延出する延出部を有するのが好ましい。
【0012】
更に、前記延出部は、前記履帯の内側の形状に沿ってR形状を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、仕切部材がモータケースに設けられるため、走行時において履帯がバタつき難い位置に仕切板が配置される。その結果、履帯と仕切板との間隔を狭くすることができ、走行時に履帯の内側に付着して巻き上げられる土砂を確実に除去することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態による油圧ショベル(クローラ式車両の一例)を示す斜視図。
図2】右側のクローラユニットを機械中心側から見た側面図。
図3】右側のクローラユニットの後側一部を機械中心側の上方から見た斜視図。
図4図3のIV矢視図。
図5】仕切部材の取り付け位置を説明するための概念図。
図6】第2実施形態による右側のクローラユニットの後側一部を機械中心側の上方から見た斜視図。
図7図6のVII矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<1.第1実施形態>
本発明の第1実施形態によるクローラ式車両のクローラユニットについて、図1から図5を参照しながら説明する。以下では、クローラ式車両の一例として、図1に示す油圧ショベル1を例示する。また、クローラユニットの一例として、図1及び図2に示すクローラユニット20を例示する。
【0016】
図1に示すように、油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とを備えて構成される。
【0017】
下部走行体2は、カーボディの左右両側に取り付けられる一対のクローラユニット20(20L,20R)を備えている。なお、クローラユニット20L,20Rは、同様の構成を備えている。そのため、以下では、右側のクローラユニット20Rについて説明を行い、左側のクローラユニット20Lについては説明を省略する。
【0018】
図2に示すように、クローラユニット20(20R)は、クローラフレーム4と、走行モータ5と、走行モータケース51と、アイドラ52と、無端状の履帯(クローラシュー)6と、スプロケット9(図4参照)とを備えて構成される。
【0019】
走行モータ5は、履帯6を駆動するための油圧モータであり、クローラフレーム4の後端部(前後方向の一端側)に設けられている。
【0020】
走行モータケース51は、走行モータ5を覆って保護するためのケースである。図3に示すように、走行モータケース51は、鉛直方向に延在する側面511と、履帯6の内側に対向するように円弧状に延在し且つ側面511に直交する対向面512とを備えて構成される。
【0021】
再度図2を参照する。アイドラ52は、クローラフレーム4の前端部(前後方向の他端側)に設けられる遊動輪であり、履帯6が巻き掛けられている。アイドラ52は、履帯6の回転に追従して回転する。
【0022】
履帯6は、無端状の履帯(無限軌道)であり、次述のスプロケット9(駆動輪)とアイドラ52(遊動輪)とを囲むように一帯に接続された履板の環として構成されている。
【0023】
図5に示すように、スプロケット9は、履帯6に噛み合った状態で回転することで走行モータ5のモータ回転力(駆動力)を履帯6に伝達する歯車である。図5では、太線で示した部分において、履帯6とスプロケット9とが噛み合っている。以下では、履帯6とスプロケット9とが噛み合っている領域を噛合領域ARとも称する。
【0024】
なお、図示は省略するが、走行モータ5には、走行モータ5の回転力を減速するための走行減速機も接続されている。
【0025】
図3及び図4に示すように、走行モータケース51には、仕切部材7と仕切部材8とがそれぞれ異なる位置に設けられている。
【0026】
仕切部材7は、取付板71と、取付板71に対して略直交する対向板72と、対向板72に立設する仕切板73とを備えて構成される。なお、仕切部材7は、本発明に係る第1仕切部材の一例である。
【0027】
取付板71は、走行モータケース51の側面511に対してボルトで固定される板状部材である。
【0028】
対向板72は、走行モータケース51の対向面512に面接触する板状部材である。対向板72は、履帯6の内側の面に対向する位置に配置される。
【0029】
仕切板73は、対向板72のうち履帯6を向く面に略垂直に立設する板状部材である。仕切板73は、走行モータケース51と履帯6との間に形成される空隙を仕切るように走行モータケース51の側から履帯6の側に向けて延在する。
【0030】
図3に示すように、仕切板73は、その面内方向が履帯6の移動方向(クローラユニット20の前後方向)に対して傾斜するように設けられている。詳細には、仕切板73は、クローラユニット20の前後方向に関し、後端から前端に向かうにつれてクローラユニット20の内側から外側に向けて傾斜している。また、仕切板73は、土砂を受け止める面73Aが凹となるR形状を有している。
【0031】
同様に、仕切部材8は、取付板81と、取付板81に対して略直交する対向板82と、対向板82に立設する仕切板83とを備えて構成される。なお、仕切部材8は、本発明に係る第2仕切部材の一例である。
【0032】
取付板81は、走行モータケース51の側面511に対してボルトで固定される板状部材である。
【0033】
対向板82は、走行モータケース51の対向面512に面接触する板状部材である。対向板82は、履帯6の内側の面に対向する位置に配置される。
【0034】
仕切板83は、対向板82のうち履帯6を向く面に略垂直に立設する板状部材である。仕切板83は、走行モータケース51と履帯6との間に形成される空隙を仕切るように走行モータケース51の側から履帯6の側に向けて延在する。
【0035】
図3及び図4に示すように、仕切板83は、その面内方向が履帯6の移動方向に対して傾斜するように設けられている。詳細には、仕切板83は、クローラユニット20の前後方向に関し、後端から前端に向かうにつれてクローラユニット20の内側から外側に向けて傾斜している。また、仕切板83は、土砂を受け止める面83Aが凹となるR形状を有している。
【0036】
上述した仕切部材7及び仕切部材8は、ほぼ同様の構成を有している。ただし、仕切板83の延在方向の長さは、仕切板73の延在方向の長さよりも短く構成されている。逆に言えば、仕切板73の延在方向の長さは、仕切板83の延在方向の長さよりも長く構成されている。
【0037】
次に、図5を参照しながら、上述した仕切部材7及び仕切部材8が走行モータケース51に取り付けられる取り付け位置について説明する。
【0038】
上述したように、クローラユニット20では、履帯6とスプロケット9とが噛み合う噛合領域ARが存在する。
【0039】
仕切部材7は、噛合領域ARのうち最も上端側の位置である位置PS1(図5参照)に設けられている。
【0040】
仕切部材8は、噛合領域ARのうち位置PS1よりも下側の位置である位置PS2(図5参照)に設けられている。なお、ここでは、位置PS2は、位置PS1とスプロケット9の回転軸AXと位置PS2とを結んでなす角が鈍角となる位置となっている。
【0041】
上述した第1実施形態によれば、仕切部材7及び仕切部材8が共に走行モータケース51に設けられるため、走行時において履帯6がバタつき難い位置に仕切板73及び仕切板83が配置される。その結果、履帯6と仕切板73との間隔及び履帯6と仕切板83との間隔を共に狭くすることができ、走行時に履帯6の内側に付着して巻き上げられる土砂を確実に除去することが可能である。つまり、履帯6の内側に付着して巻き上げられる土砂が仕切板73及び仕切板83によって機械外側に掃き出されるため、土砂が走行モータケース51やクローラフレーム4に堆積しない。
【0042】
特に、上述した第1実施形態によれば、仕切板73の面内方向が履帯6の移動方向(前後方向)に対して傾斜している。また、仕切板83の面内方向も履帯6の移動方向(前後方向)に対して傾斜している。そのため、クローラユニット20の外側に土砂を効率よく掃き出すと共に、仕切板73,83にかかる荷重を低減することが可能である。
【0043】
また、上述した第1実施形態によれば、仕切部材7が位置PS1に設けられ、仕切部材8が位置PS2に設けられている。そして、仕切板73の延在方向の長さが、仕切板83の延在方向の長さよりも長くなっている。つまり、仕切板73と履帯6の内側との隙間は、仕切板83と履帯6の内側との隙間は狭くなっている。
【0044】
そのため、土砂の塊が地面の側に近い仕切板83によってほぐされた後、残りの土砂が地面から離れた仕切板73によって除去される。換言すれば、仕切板83によってほぐされて小さくなった土砂を仕切板73によって逃すことなく確実に除去することができる。そのため、仕切板73と仕切板83とを同じ長さで構成する場合に比べて、より確実に土砂を除去することが可能である。
【0045】
また、上述した第1実施形態では、位置PS1とスプロケット9の回転軸AXと位置PS2とを結んでなす角が鈍角になっている。すなわち、仕切部材7と仕切部材8とが比較的離れた位置に設けられている。そのため、仕切部材7と仕切部材8との間に仕切板73を通過した土砂が堆積しにくい。
【0046】
また、上述した第1実施形態では、仕切板73は、土砂を受け止める面73Aが凹となるR形状を有している。同様に、仕切板83は、土砂を受け止める面83Aが凹となるR形状を有している。よって、仕切板73及び仕切板83を介してクローラユニット20の外側に掃き出される土砂の流れを更にスムーズにすることが可能である。
【0047】
<2.第2実施形態>
続いて、第2実施形態によるクローラ式車両のクローラユニットについて、図6及び図7を参照しながら説明する。
【0048】
上述した第1実施形態では、図3に示す2つの仕切部材7及び仕切部材8によって土砂を除去する場合を例示した。一方、この第2実施形態では、図6に示す1つの仕切部材70によって土砂を除去する場合を例示する。
【0049】
なお、第2実施形態は、第1実施形態の変形例である。そこで、以下では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明を行い、第1実施形態と同じ構成に関しては同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0050】
図6及び図7に示すように、仕切部材70は、走行モータケース51と履帯6との間に形成される空隙に配置される。詳細には、仕切部材70は、第1実施形態の仕切部材7(図3参照)と同じ位置、すなわち、噛合領域ARのうち最も上端側の位置である位置PS1に配置される。
【0051】
仕切部材70は、取付板71と、取付板71に対して略直交する対向板72と、対向板72に設けられる箱部材74とを備えて構成される。
【0052】
箱部材74は、対向板72から履帯6に向けて延在する仕切板75と、同じく対向板72から履帯6に向けて延在する側板76と、仕切板75及び側板76を上から覆う蓋板77とを備えて構成される。
【0053】
仕切板75は、上述した第1実施形態の仕切板73と同様の機能を有する板状の部材である。すなわち、仕切板75は、走行モータケース51と履帯6との間に形成される空隙を仕切るように走行モータケース51から履帯6の側に向けて延在する板状の部材である。
【0054】
仕切板75は、その面内方向が履帯6の移動方向に対して傾斜するように設けられている。詳細には、仕切板75は、クローラユニット20の前後方向に関し、後端から前端に向かうにつれてクローラユニット20の内側から外側に向けて傾斜すると共に、土砂を受け止める面が凹となるR形状を有している。
【0055】
側板76は、上述した仕切板75と共に箱部材74の側壁として構成する板状の部材である。側板76は、クローラユニット20の外側を向く面と、クローラユニット20の前側を向く面と、クローラユニット20の内側を向く面(外側を向く面と対向する面)とによって構成される。
【0056】
蓋板77は、対向板72と仕切板75と側板76とで形成される空間を上側から覆って密閉する板状の部材である。
【0057】
クローラフレーム4の後端と走行モータケース51との間には、上下方向に延在する縦板40が設けられている。図7に示すように、蓋板77の前端77Fは、縦板40の上端まで延在している。つまり、蓋板77は、仕切板75の上端(詳細には仕切板75のうち履帯6の側の端部)から縦板40の上側まで延在し、仕切板75と縦板40との間の空隙を上側から覆っている。
【0058】
また、蓋板77は、仕切板75の上端から縦板40とは反対側に延出する延出部771を備えて構成される。延出部771は、履帯6の内側の形状に沿ってR形状を有している。
【0059】
上述した第2実施形態によれば、仕切板75と縦板40との間の空隙が蓋板77によって覆われているため、蓋板77が存在しない態様に比べて、仕切板75と縦板40との間に土砂が堆積し難い。
【0060】
また、上述した第2実施形態によれば、仕切部材70が仕切板75と蓋板77とを含む箱部材74として構成されている。そのため、単に蓋板77を設けた態様に比べると、仕切板75と縦板40との間に土砂がより堆積し難い。
【0061】
また、上述した第2実施形態によれば、蓋板77が延出部771を更に備えており、延出部771を有しないものに比べて、土砂のかき出し性能が高い。
【0062】
特に、上述した第2実施形態によれば、延出部771が履帯6の内側の形状に沿ってR形状を有している。そのため、延出部771と履帯6の内側との接触を回避しつつ、かき出し性の向上に必要な十分な長さを確保することが可能である。
【0063】
<3.変形例>
本発明によるクローラ式車両のクローラユニットは上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0064】
例えば、上述した第1実施形態では、仕切部材7と仕切部材8との2つの仕切部材が走行モータケース51に設けられる場合を例示したが、これに限定されず、いずれか一方のみ(仕切部材7のみ或いは仕切部材8のみ)が走行モータケース51に設けられるようにしてもよい。
【0065】
また、上述した第1実施形態では、位置PS1とスプロケット9の回転軸AXと位置PS2とを結んでなす角が鈍角になっている場合を例示したが、これに限定されない。仕切部材7と仕切部材8とが極端に接近しなければ、位置PS1とスプロケット9の回転軸AXと位置PS2とを結んでなす角が直角或いは鋭角であってもよい。
【0066】
また、上述した第1実施形態では、仕切板73及び仕切板83が共にR形状を有している場合を例示したが、これに限定されず、仕切板73及び仕切板83の一方又は双方が平面形状で構成されるようにしてもよい。
【0067】
また、上述した第1実施形態では、仕切板73の先端と履帯6の内側との間に隙間が形成される場合を例示したが、これに限定されない。例えば、クローラシューの内側の形状に沿って変形可能な弾性材(ブラシや樹脂材)を泥落とし体として仕切板73の先端に設けることで、隙間を埋めるようにしてもよい。なお、泥落とし体は、クローラシューの移動と共に回転する回転式のブラシや樹脂材を用いるようにしてもよい。かかる変形例によれば、泥落とし体によってクローラシューの内側に付着した土砂が掻き落とされるため、より確実に泥を除去することが可能である。
【0068】
また、上述した第1実施形態では、図5に示すように、位置PS1が噛合領域ARのうち最も上端側の位置である場合を例示したが、これに限定されない。位置PS1が噛合領域ARから若干外れた位置(例えば、噛合領域ARのうち最も上端側の位置よりも若干前側の位置)であってもよい。
【0069】
また、上述した第2実施形態では、仕切部材70が箱部材74によって構成される場合を例示したが、これに限定されない。図7に示す側板76を無くし、仕切部材70が仕切板75及び蓋板77のみで構成されるようにしてもよい。
【0070】
また、上述した第2実施形態では、蓋板77の延出部771がR形状を有する場合を例示したが、これに限定されず、履帯6の内側に接触しない程度の長さで直線状に構成されるようにしてもよい。
【0071】
また、上述した第2実施形態では、蓋板77の延出部771を有する場合を例示したが、これに限定されず、かき出し性能は若干低下するものの、延出部771を無くしてもよい。
【0072】
また、上述した第2実施形態では、蓋板77が仕切板75の上端から縦板40の上側まで延在する場合を例示したが、これに限定されず、縦板40の上側を超えて更に前方まで延在するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上のように本発明に係るクローラ式車両のクローラユニットは、履帯の内側に付着して巻き上げられる土砂を除去するのに適している。
【符号の説明】
【0074】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 クローラフレーム
5 走行モータ
6 履帯
7 仕切部材
8 仕切部材
9 スプロケット
20L,20R クローラユニット
51 走行モータケース
52 アイドラ
70 仕切部材
71 取付板
72 対向板
73 仕切板
74 箱部材
75 仕切板
76 側板
77 蓋板
81 取付板
82 対向板
83 仕切板
511 側面
512 対向面
771 延出部
AR 噛合領域
AX 回転軸
PS1 位置
PS2 位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7