(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】量子ドットの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 11/08 20060101AFI20240723BHJP
C09K 11/88 20060101ALI20240723BHJP
C09K 11/62 20060101ALI20240723BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20240723BHJP
【FI】
C09K11/08 ZNM
C09K11/88
C09K11/62
C09K11/08 G
C09K11/08 A
B82Y40/00
(21)【出願番号】P 2020568360
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2020029529
(87)【国際公開番号】W WO2021039290
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2019153204
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荷方 惣一朗
(72)【発明者】
【氏名】道脇 曜子
(72)【発明者】
【氏名】稗田 智明
(72)【発明者】
【氏名】小椋 佑子
(72)【発明者】
【氏名】三島 章雄
(72)【発明者】
【氏名】カロセク ヴィート
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/160093(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/160094(WO,A1)
【文献】特開2018-141141(JP,A)
【文献】特開2018-44142(JP,A)
【文献】特開2019-85575(JP,A)
【文献】特許第6931435(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00
B82Y 40/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AgIn
xGa
1-xS
ySe
1-y系、或いは、ZnAgIn
xGa
1-xS
ySe
1-y系(0≦x<1、0≦y≦1)からなり、
少なくとも、Agと、Gaと、S、又はAgと、Gaと、Seを含み、Cdを含まず、
反応初期粒子を形成した後、所定元素を後添加して合成し、反応初期には、Inを含まず、
緑色波長域から赤色波長域にて、蛍光半値幅が45nm以下で、蛍光量子収率が35%以上の蛍光特性を示す量子ドットを合成
することを特徴とする量子ドットの製造方法。
【請求項2】
Znを、反応初期に加えずに後添加することを特徴とする請求項
1に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項3】
S源として、チウラム、ジスルフィド、Sをオクタデセンに溶解させたS-ODE、或いは、Sをオレイルアミン及びドデカンチオールに溶解させたS-OLAm/DDTを用いることを特徴とする請求項
1又は請求項
2に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項4】
Se源として、Sをオレイルアミン及びドデカンチオールに溶解させたS-OLAm/DDTを用いることを特徴とする請求項
1から請求項
3のいずれかに記載の量子ドットの製造方法。
【請求項5】
Ga源として、ガリウムアセチルアセトナート(Ga(acac)
3)、或いは、塩化ガリウム(GaCl
3)を用いることを特徴とする請求項
1から請求項
4のいずれかに記載の量子ドットの製造方法。
【請求項6】
Ag源、Ga源及びS源又はAg源、Ga源及びSe源を混合して得られた反応溶液に対し、TOP添加又はTOPにより分散処理を行うことを特徴とする請求項
1から請求項
5のいずれかに記載の量子ドットの製造方法。
【請求項7】
Ag源、Ga源及びS源又はAg源、Ga源及びSe源を混合して合成した反応溶液を、遠心分離することを特徴とする請求項
1から請求項
6のいずれかに記載の量子ドットの製造方法。
【請求項8】
Ag源、Ga源及びS源又はAg源、Ga源及びSe源を混合して合成した反応溶液に、トルエン、メタノール、エタノール、アセトン等の溶媒を加えて遠心分離することを特徴とする請求項
7に記載の量子ドットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カドミウムを含有しない量子ドット及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドットは、数千~数万個程度の原子から構成された、粒径が数nm~十数nm程度の無機ナノ粒子である。量子ドットは、蛍光を発し、そのサイズがナノオーダーのサイズであることから蛍光ナノ粒子、その組成が半導体材料由来であることから半導体ナノ粒子、またはその構造が特定の結晶構造を有することからナノクリスタル(Nanocrystal)とも呼ばれる。
【0003】
量子ドットは、正の電荷を有する金属原子と負の電荷を有する非金属または半金属原子から構成され、金属原子と半金属原子は、イオン結合または共有結合で結合している。結合のイオン結合性は、金属原子と半金属原子とのそれぞれの性質の組み合わせに依存している。
【0004】
量子ドットは、粒子の粒径やその組成によって、発光波長を種々変更することができる。量子ドットの性能を表すものとして、蛍光量子収率(Quantum Yield:QY)や蛍光半値幅(Full Width at Half Maximum:FWHM)が挙げられる。
【0005】
量子ドットの有する性能の一つとして、フォトルミネッセンス(photoluminescence)が挙げられる。量子ドットは、特定の波長領域の波長を吸収し、特定領域の波長に変換して発光することができる。また、この吸収波長及び発光波長は、量子ドットの構造、組成、サイズによって制御することが可能であり、その特徴を活かして様々な用途に使い分けることができる。
【0006】
例えば、量子ドットを可視光領域の波長変換材料として用いる場合、その特徴の一つとして、表現可能な色の範囲が広いこと、すなわち高色域化が挙げられる。この量子ドットを用いた可視光領域での波長変換部材による高色域化の実現において、重要な光学特性は、蛍光量子収率と蛍光半値幅である。
【0007】
従来、用いられてきた高効率な量子ドットは、主としてカドミウム(Cd)を含有するものであった。Cdを含む量子ドットは、蛍光量子収率が高く、蛍光半値幅が狭いという利点がある。その一方、Cdの毒性から各国でその使用に規制があり、このことが実用化の大きな障壁となっていた。
【0008】
これに対し、Cdを含有しない量子ドットの開発も数多く検討されている。例えば、下記の特許文献では、Agと、Inと、S、又はAgと、Inと、Gaと、S、或いはAgと、Inと、Se、又はAgと、Inと、Gaと、Se、を含むAIS又はAIGS系の量子ドット或いはAISe又はAIGSe系の量子ドットに関する記載がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-025201号公報
【文献】特開2018-039971号公報
【文献】特開2018-044142号公報
【文献】特開2018-141141号公報
【文献】WO2018/159699号
【非特許文献】
【0010】
【文献】NPG Asia Materials volume10. 2018, pp713-726
【文献】ACS Publications 2018,10,49,41844-41855
【文献】ACS Publications NanoMater. 2020, 3, 3275-3287
【文献】The Journal of PhysicalChemistry Letters; Ligand-InducedLuminescence Transformation in AgInS2 Nanoparticles: From Defect Emission toBand-Edge Emission
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、Cdを含有しないカルコパイライト系の量子ドットの研究開発は進んでいるものの、いずれの量子ドットも、蛍光半値幅及び蛍光量子収率の観点からCd系量子ドットの代替となるべき性能には到達していない。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、蛍光半値幅が狭く、且つ蛍光量子収率が高い、Cdを含有しないカルコパイライト系の量子ドットを提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、上記の量子ドットを量産可能に合成する量子ドットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の量子ドットは、AgInxGa1-xSySe1-y系、或いは、ZnAgInxGa1-xSySe1-y系(0≦x<1、0≦y≦1)からなる量子ドットであって、緑色波長域から赤色波長域にて、蛍光半値幅が45nm以下で、蛍光量子収率が35%以上の蛍光特性を示すことを特徴とする。
【0015】
本発明の量子ドットの製造方法は、AgInxGa1-xSySe1-y系、或いは、ZnAgInxGa1-xSySe1-y系(0≦x<1、0≦y≦1)からなり、緑色波長域から赤色波長域にて、蛍光半値幅が45nm以下で、蛍光量子収率が35%以上の蛍光特性を示す量子ドットを合成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の量子ドットによれば、組成及び粒子形状やサイズの揃った量子ドットを合成できるため、蛍光半値幅を狭くできるとともに、蛍光量子収率を高くすることができる。
【0017】
また、本発明の量子ドットによれば、用途に応じて目的とする発光波長を有する量子ドットを合成できる。
【0018】
また、本発明の量子ドットによれば、半値幅の狭い量子ドットを目的に応じた発光波長で合成できるため、波長変換材料として用いる場合、高色域化の向上を図ることができる。
【0019】
また、本発明の量子ドットの製造方法によれば、蛍光半値幅が狭く、Cdを含まない量子ドットを量産可能な方法で合成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態における量子ドットの模式図である。
【
図2】本発明の実施形態の量子ドットを用いたLED装置の模式図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるLED装置を用いた表示装置の縦断面図である。
【
図4】実施例1におけるAgInGaSの蛍光(Photoluminescence:PL)スペクトルである。
【
図5】実施例2におけるAgInGaSのPLスペクトルである。
【
図6】実施例3におけるAgInGaSのPLスペクトルである。
【
図7】実施例4におけるAgInGaSのPLスペクトルである。
【
図8】実施例5におけるAgInGaSのPLスペクトルである。
【
図9】実施例6におけるAgInGaSのPLスペクトルである。
【
図10】実施例7におけるAgInGaSのPLスペクトルである。
【
図11】実施例11におけるAgInGaSのPLスペクトルである。
【
図12】実施例12におけるAgInGaSのPLスペクトルである。
【
図13】実施例13におけるAgInGaSのPLスペクトルである。
【
図14】実施例14におけるZnAgInGaSのPLスペクトルである。
【
図15】実施例15におけるZnAgGaSeSのPLスペクトルである。
【
図16】実施例17におけるZnAgGaSeSのPLスペクトルである。
【
図17】実施例18におけるZnAgGaSeSのPLスペクトルである。
【
図18】実施例19におけるZnAgInGaSeSのPLスペクトルである。
【
図19】実施例20におけるZnAgGaSeSのPLスペクトルである。
【
図20】比較例1におけるZnAgInGaSのPLスペクトルである。
【
図21】実施例7におけるAgInGaSの走査線電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)写真である。
【
図22】実施例15におけるTEM-EDXの分析結果の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態(以下、「実施形態」と略記する。)について、詳細に説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、本明細書において、「~」の表記は、その下限値及び上限値を含む意味である。
【0022】
図1は、本実施形態における量子ドットの模式図である。
図1Aに示す量子ドット5は、Cdを含有しないナノクリスタルである。
【0023】
本実施形態では、量子ドット5は、AgInxGa1-xSySe1-y系、或いは、ZnAgInxGa1-xSySe1-y系(0≦x<1、0≦y≦1)からなる量子ドットである。本実施形態における量子ドット5は、少なくとも、銀(Ag)と、ガリウム(Ga)と、硫黄(S)、又は、銀(Ag)と、ガリウム(Ga)と、セレン(Se)と、を含有し、カドミウム(Cd)を含まないナノクリスタルであることが好ましい。また、量子ドット5は、Agと、Gaと、S、又はAgと、Gaと、Seと、更にインジウム(In)又は亜鉛(Zn)を含むこともできる。
【0024】
ここで「ナノクリスタル」とは、数nm~数十nm程度の粒径を有するナノ粒子を指す。本実施の形態では、多数の量子ドット5を、略均一の粒径にて生成することができる。
【0025】
量子ドット5に含まれる、AgとGaとの比率は、Ag/Ga=0.05以上10以下の範囲であることが好ましい。また、前記比率Ag/Gaは、0.05以上5以下の範囲であることがより好ましく、0.1以上3以下の範囲であることが、更により好ましい。
【0026】
量子ドット5に含むことができる、ZnとGaの比率は、Zn/Ga=0.1以上10以下の範囲であることが好ましい。前記比率Zn/Gaは、0.1以上5以下の範囲であることが更に好ましい。この比率を制御することによって、発光波長を調節することが可能となる。
【0027】
本実施形態では、蛍光波長を、緑色波長域から赤色波長域にて調節することができる。特に、本実施形態では、蛍光波長を、400nm以上700nm以下の範囲内で適切に調節することが可能である。本実施形態では、蛍光波長を、500nm以上650nm以下の範囲内で調節することも可能である。
【0028】
図1Aに示すように、量子ドット5の表面には多数の有機配位子(リガンド)11が配位していることが好ましい。これにより、量子ドット5同士の凝集を抑制でき、目的とする光学特性を発現させることができる。反応に用いることのできる配位子は、特に限定はされないが、例えば、以下の配位子が、代表的なものとして挙げられる。
【0029】
(1) 脂肪族1級アミン系
オレイルアミン:C18H35NH2、ステアリル(オクタデシル)アミン:C18H37NH2、ドデシル(ラウリル)アミン:C12H25NH2、デシルアミン:C10H21NH2、オクチルアミン:C8H17NH2
(2) 脂肪酸系
オレイン酸:C17H33COOH、ステアリン酸:C17H35COOH、パルミチン酸:C15H31COOH、ミリスチン酸:C13H27COOH、ラウリル酸:C11H23COOH、デカン酸:C9H19COOH、オクタン酸:C7H15COOH
(3) チオール系
オクタデカンチオール:C18H37SH、ヘキサンデカンチオール:C16H33SH、テトラデカンチオール:C14H29SH、ドデカンチオール:C12H25SH、デカンチオール:C10H21SH、オクタンチオール:C8H17SH
(4) ホスフィン系
トリオクチルホスフィン:(C8H17)3P、トリフェニルホスフィン:(C6H5)3P、トリブチルホスフィン:(C4H9)3P
(5)ホスフィンオキシド系
トリオクチルホスフィンオキシド:(C8H17)3P=O、トリフェニルホスフィンオキシド:(C6H5)3P=O、トリブチルホスフィンオキシド:(C4H9)3P=O
【0030】
本実施形態の量子ドット5の特徴的部分について説明する。本実施形態の量子ドット5は、緑色波長域から赤色波長域にて、蛍光半値幅が、45nm以下で、蛍光量子収率(Quantum Yield)が、35%以上の蛍光特性を示す。
【0031】
ここで、「蛍光半値幅」とは、蛍光スペクトルにおける蛍光強度のピーク値の半分の強度での蛍光波長の広がりを示す半値全幅(Full Width at Half Maximum)を指す。また、蛍光半値幅は、35nm以下であることが好ましい。また、蛍光半値幅は、30nm以下であることがより好ましい。また、蛍光半値幅は、25nm以下であることが更に好ましい。このように、蛍光半値幅を狭くすることができるため、高色域化の向上を図ることができる。
【0032】
本実施形態の量子ドット5の蛍光量子収率は、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましく、70%以上であることが更により好ましく、80%以上であることが最も好ましい。このように、本実施形態では、量子ドットの蛍光量子収率を高めることができる。
【0033】
このように、本実施形態では、AgInxGa1-xSySe1-y系、或いはZnAgInxGa1-xSySe1-y系(0≦x<1、0≦y≦1)の量子ドットにおいて、緑色波長域から赤色波長域での、蛍光半値幅を狭くできるとともに、蛍光量子収率を高くすることができる。
【0034】
本実施形態では、蛍光波長を、400nm以上700nm以下程度にまで自由に制御することができる。本実施形態における量子ドット5は、カチオン原料にAg、Ga、In、Zn、アニオン原料にSe、Sをベースとする固溶体である。本実施形態では、量子ドット5の粒径及び、量子ドット5の組成を適宜調整することによって、蛍光波長を、青色~緑色~赤色まで制御することが可能である。このため、蛍光波長は、青色発光としては、400nm以上かつ480nm以下が好ましく、410nm以上かつ470nm以下であることがより好ましく、420nm以上かつ460nm以下であることが更に好ましい。緑色発光としては、500nm以上かつ560nm以下が好ましく、510nm以上かつ550nm以下であることがより好ましく、520nm以上かつ540nm以下であることが更に好ましい。また赤色発光としては、600nm以上かつ660nm以下であることが好ましく、610nm以上かつ650nm以下であることがより好ましく、620nm以上かつ640nm以下であることが更に好ましい。
【0035】
なお、本実施形態では、上述したように、蛍光波長を、400nm以上700nm以下まで制御することが可能であるが、可視光領域の波長変換材料としては緑色、または赤色発光が好ましい。
【0036】
ここで、カルコパイライトは、一般的には、蛍光半値幅が、45~80nmの欠陥発光する材料であった。これに対し、本実施形態の量子ドット5は、蛍光半値幅が狭く、また、蛍光量子収率も高く、蛍光寿命も欠陥発光よりも非常に短くすることができる。このような特徴から、本実施形態の量子ドット5は、バンド端発光になっているものと推測される。
【0037】
特に、本実施形態の量子ドット5は、蛍光半値幅が、30μm以下であり、蛍光量子収率が80%以上であり、蛍光波長が、510nm以上650nm以下の範囲である量子ドット5を合成することが可能である。このように、緑色の蛍光波長(510~540nm付近)だけでなく、赤色の蛍光波長(610~650nm付近)でも、蛍光半値幅が狭く、且つ、蛍光量子収率が高い特性を実現することが可能である。
【0038】
図1Bに示す量子ドット5は、コア5aと、コア5aの表面に被覆されたシェル5bを有するコアシェル構造である。
図1Bに示すように、量子ドット5の表面には多数の有機配位子11が配位していることが好ましい。また、
図1Bに示す量子ドット5の蛍光半値幅は、45nm以下であり、蛍光量子収率は、35%以上である。
【0039】
図1Bに示す量子ドット5のコア5aは、
図1Aに示すナノクリスタルである。したがって、コア5aは、Ag、Ga、S、又は、Ag、Ga、Seと、を含有し、Cdを含まないナノクリスタルで形成されることが好ましい。シェル5bは、コア5aと同様に、カドミウム(Cd)を含まない。シェル5bは、特に材質を問うものではないが、例えば、硫化インジウム、硫化ガリウム、硫化アルミニウム、硫化亜鉛、セレン化インジウム、セレン化ガリウム、セレン化アルミニウム、セレン化亜鉛を例示することができる。このとき、Ga源としては、塩化ガリウム、臭化ガリウム、ヨウ化ガリウムを用いることが好ましい。
【0040】
なお、シェル5bは、コア5aの表面に固溶化した状態であってもよい。
図1Bでは、コア5aとシェル5bとの境界を点線で示したが、これは、コア5aとシェル5bとの境界を分析により確認できても、できなくても、どちらでもよいことを指す。上記に挙げたZnAgIn
xGa
1-xS
ySe
1-y系(0≦x<1、0≦y≦1)の量子ドットでは、コアシェル構造が確認できなくても、Znを含むことで、コア5aをシェル5bで被覆した形態であると推測できる。
【0041】
図1Bに示す量子ドット5も、
図1Aと同様に、蛍光波長を、400nm以上で700nm以下程度、或いは、500nm以上650nm以下程度にまで自由に制御することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、AgGaS、AgGaSe、AgGaInS或いはAgGaInSeからなるコアのみでも蛍光を発するため、必ずしもシェル被覆は必要ではない。ただし、コアシェル構造とすることで、蛍光半値幅が狭いまま、蛍光量子収率の更なる上昇を期待することができる。また、Inに関しては、含んでいても含んでいなくても蛍光がみられる。例えば、緑色蛍光の量子ドットでは、Inを含むことで良好な発光特性を備えるが、Inを含まなくても、蛍光半値幅が多少大きくなる傾向があるものの発光する。具体的には、AgGaSでの発光を確認できている。
【0043】
また、一般的に、Znを使用すると価数の違い(Zn2価、Ag1価、Ga又Inは3価)から欠陥発光となり、蛍光半値幅が広がる傾向があったが、本実施形態では、後述する実験で示すように、Znを後添加しても、蛍光半値幅が狭いまま、蛍光量子収率を大きくでき、すなわち、Znの使用により、発光特性を向上させることが可能になる。
続いて、本実施形態の量子ドット5の製造方法について説明する。
【0044】
本実施形態の量子ドットの製造方法は、AgInxGa1-xSySe1-y系、或いは、ZnAgInxGa1-xSySe1-y系(0≦x<1、0≦y≦1)からなり、緑色波長域から赤色波長域にて、蛍光半値幅が45nm以下で、蛍光量子収率が35%以上の蛍光特性を示す量子ドットを合成することを特徴とする。
【0045】
まず、本実施形態では、有機銀化合物と、有機ガリウム化合物と、硫黄又はセレンから、或いは有機銀化合物と、有機インジウム化合物と、有機ガリウム化合物と、硫黄又はセレンからワンポットで加熱合成する。
【0046】
このとき、反応温度を100℃以上で320℃以下の範囲に設定し、AgGaS、AgGaSe、AgGaInS或いはAgGaInSeを合成する。なお、反応温度は、より低温の280℃以下であることが好ましい。
【0047】
また、本実施形態では、Agの原料として有機銀化合物、或いは無機銀化合物を用いる。特に限定するものでないが、例えば、酢酸銀:AgOAc、硝酸銀:AgNO3、ハロゲン化物として、塩化銀:AgCl、臭化銀:AgBr、ヨウ化銀:AgI、カルバミン酸塩としてジエチルジチオカルバミン酸銀:Ag(SC(=S)N(C2H5)2)、ジメチルジチオカルバミン酸銀:Ag(SC(=S)N(CH3)2)、等を用いることができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記したAg原料を、反応溶液に直接添加してもよいが、前もって有機溶媒に溶解させて、一定濃度とした溶液をAg原料溶液として用いてもよい。
【0049】
また、本実施形態では、Inの原料として有機インジウム化合物、或いは無機インジウム化合物を用いる。特に限定するものでないが、例えば、酢酸インジウム:In(OAc)3、硝酸インジウム:InNO3、インジウムアセチルアセトナート:In(acac)3、ハロゲン化物として、塩化インジウム:InCl3、臭化銀:InBr3、ヨウ化インジウム:InI3、カルバミン酸塩としてジエチルジチオカルバミン酸インジウム:In[(SC(=S)N(C2H5)2]3、ジメチルジチオカルバミン酸インジウム:In[(SC(=S)N(CH3)2)]3、等を用いることができる。
【0050】
また、本実施形態では、Gaの原料として有機インジウム化合物、或いは無機インジウム化合物を用いる。特に限定するものでないが、例えば、酢酸ガリウム:Ga(OAc)3、硝酸ガリウム:GaNO3、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3、ハロゲン化物として、塩化ガリウム:GaCl3、臭化ガリウム:GaBr3、ヨウ化ガリウム:Ga2I3、カルバミン酸塩としてジエチルジチオカルバミン酸ガリウム:Ga[(SC(=S)N(C2H5)2]3、等を用いることができる。
【0051】
また、本実施形態では、前記In原料又はGa原料は反応溶液に直接添加してもよいが、前もって有機溶媒に溶解させて、一定濃度の溶液としてから、これをIn原料溶液又はGa原料溶液として用いてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、Sの原料としてチオール等の有機硫黄化合物を用いることができる。例えば、オクタデカンチオール:C18H37SH、ヘキサンデカンチオール:C16H33SH、テトラデカンチオール:C14H29SH、ドデカンチオール:C12H25SH、デカンチオール:C10H21SH、オクタンチオール:C8H17SH、等である。
【0053】
特に、AgGaS或いはAgInGaSを合成する際は、硫黄原料種が蛍光特性に大きく寄与している。本実施形態では、硫黄をオクタデセン:ODEに溶解させたS-ODE原料や、ジスルフィド系、チウラム系のS原料、Sをオレイルアミン及びドデカンチオールに溶解させたS-OLAm/DDTを用いることが好ましい。このうち、S-ODE原料では、40nm以下の蛍光半値幅、40%以上の蛍光量子収率を得ることができるが、ジスルフィド(disulfide)を用いると更に良好な特性を得ることができる。例えば、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、イソプロピルキサントゲンジスルフィド、4,4’-ジチオジモルホリンである。また、チウラム系の原料を用いることで、更に良好な蛍光特性を得ることができる。例えば、チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等である。他にもS原料は硫黄が複数連なっている構造(―S―)nをもつ原料もしくは硫黄に窒素(N-S-)、炭素(C-S-)等が付与している構造をもつ原料であってもよい。
【0054】
また、本実施形態では、Seの原料として有機セレン化合物(有機カルコゲン化合物)を原料として用いることができる。例えば、トリオクチルホスフィンにセレンを溶解させたトリオクチルホスフィンセレニド:(C8H17)3P=Se、或いは、トリブチルホスフィンにセレンを溶解させたトリブチルホスフィンセレニド:(C4H9)3P=Se、又は、オクタデセンのような長鎖の炭化水素である高沸点溶媒に、セレンを溶解させた溶液を用いることができる。
【0055】
AgGaSe或いはAgInGaSeを合成する際は、セレン原料種が蛍光特性に大きく寄与している。特に、Seをオレイルアミンとドデカンチオールの混合物に溶解させた溶液(Se-OLAm/DDT)は、良好な発光特性を示す。通常のカルコパイライト系の量子ドットは発光初期ではバンド端発光と考えられるPLスペクトルと欠陥発光と考えられるPLスペクトルの2種類の発光が確認でき、その発光強度比率は、バンド端発光/欠陥発光が10以下の場合がほとんどである。その後、更に反応経過することで徐々に欠陥発光の強度が低減し、それに伴ってバンド端発光の強度も増大することが多い。しかし、本実施形態のように、Se源として、Se-DDT/OLAmを用いた場合、発光初期からシングルピークであり、バンド端発光/欠陥発光が10以上であり、欠陥発光と考えられるピークがほとんど確認できない。また蛍光寿命も1/eになるまでに20ns以下と短く、欠陥発光ではないピークのみを発光初期で確認することができる。
【0056】
また、本実施形態では、Znの原料として、有機亜鉛化合物や無機亜鉛化合物を用いる。有機亜鉛化合物や無機亜鉛化合物は、空気中でも安定で取り扱い容易な原料である。有機亜鉛化合物や無機亜鉛化合物の構造を特に限定するものではないが、例えば、以下に示す有機亜鉛化合物及び無機亜鉛化合物を用いることができる。酢酸塩として酢酸亜鉛:Zn(OAc)2、硝酸亜鉛:Zn(NO3)2、脂肪酸塩として、ステアリン酸亜鉛:Zn(OC(=O)C17H35)2、オレイン酸亜鉛:Zn(OC(=O)C17H33)2、パルミチン酸亜鉛:Zn(OC(=O)C15H31)2、ミリスチン酸亜鉛:Zn(OC(=O)C13H27)2、ドデカン酸亜鉛:Zn(OC(=O)C11H23)2、亜鉛アセチルアセトネート:Zn(acac)2、ハロゲン化物として、塩化亜鉛:ZnCl2、臭化亜鉛:ZnBr2、ヨウ化亜鉛:ZnI2、カルバミン酸亜鉛としてジエチルジチオカルバミン酸亜鉛:Zn(SC(=S)N(C2H5)2)2、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛:Zn(SC(=S)N(CH3)2)2、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛:Zn(SC(=S)N(C4H9)2)2等を用いることができる。
【0057】
また、本実施形態では、前駆体を単離・精製することなく、ワンポットで、量子ドットを得ることが可能である。
【0058】
また、本実施形態では、合成した量子ドットは、洗浄、単離精製、被覆処理やリガンド交換などの各種処理を行わずとも蛍光特性を発現する。
【0059】
ただし、
図1Bに示すように、ナノクリスタルからなるコア5aをシェル5bで被覆することによって、蛍光量子収率を更に増大させることができる。
【0060】
また、コアシェル構造を有した後に、特定の溶媒で精製することで、蛍光量子収率を更に増大させることができる。例えば、トリオクチルホスフィン(TOP)等である。
【0061】
また、本実施形態では、合成した反応溶液を遠心分離することで、より発光特性が優れた量子ドットを得ることができる。
【0062】
また、本実施形態では、合成した反応溶液にトルエン、メタノール、エタノール、アセトン等を混合して、凝集物を遠心分離して除去することで、より発光特性が優れた量子ドットを得ることができる。
【0063】
本実施形態の量子ドットの製造方法では、反応初期粒子を形成した後、所定元素を後添加して合成し、このとき、反応初期には、Inを含まないことが好ましい。具体的には、反応初期に形成する粒子は、Inを含まないAgGaS、又はAgGaSeが最も良い発光特性になる。
【0064】
一般的には、反応初期からInを含み、In/Ga比率を調整などするが、本実施形態における量子ドットは、組成のばらつきも抑制し、可能な限り少ない組成で合成することを目的としている。そのため、初期反応にはInを含んでいないことが好ましい。その結果、蛍光半値幅の狭い発光特性を得ることができると推察される。
【0065】
なお、緑色蛍光の量子ドットでは、最終的にはInを含む量子ドットであることが好ましく、反応過程でInを含めることができる。ただし、緑色蛍光の量子ドットにおいて、Inを含むことは必須ではなく、例えば、蛍光半値幅は多少広がるものの、Inを含まずにAgGaSで発光を確認している。
【0066】
また、本実施形態では、量子ドットにZnを含める際、以下の点に注意してZnを添加することが好ましい。まず第一に、初期反応時にZnは加えずに最終工程で加える。これは、粒子内部にZnが含まれると、欠陥発光が優勢、或いは、欠陥発光のみしか確認できない恐れがあるためである。したがって、最終工程で、Znを加えることで、粒子表面のみ反応させることを目的としている。第2は、Znを低温で加えることである。ここで、低温とは、150~200℃程度を意味する。Znを添加する際の温度が高温の場合、Znが粒子内部まで反応するため、欠陥発光になりやすい。そのため、粒子表面までの反応で留めるために、低温で粒子表面のみ反応させることが好ましい。
【0067】
また、本実施形態では、AgGaSeを合成する際に、Se原料は、Se-OLAm/DDTであることが好ましい。これにより、欠陥発光を効果的に抑制することができる。
【0068】
また、AgGaSを合成する際も、一般的に用いられる硫黄粉末を溶解させるものではなく、チウラム系、特にテトラエチルチウラムジスルフィドが、良好な発光特性を得ることができ好ましい。
【0069】
また、遠心分離工程は、粒子の大きいものと小さいものを分離する工程であるが、トルエンやエタノールを加えて遠心分離する工程は、粒子サイズが揃っていてもトルエンやエタノールの比率を制御することで、量子ドットの表面リガンドの違いによって凝集具合を変化させることができる。その際、量子ドット:トルエン:エタノール=1:0.5~2:0.5~2の比率で制御することができる。なお、エタノールの代わりにメタノールを使用しても良い。その結果、蛍光量子収率が高い量子ドットと、蛍光量子収率が低い量子ドットとに分離することができる。その後、その分離した量子ドットに、TOPを加えることで、更に蛍光量子収率を向上させることが可能である。
【0070】
以上のように、本実施形態の量子ドットの製造方法によれば、蛍光半値幅が狭く、且つ蛍光量子収率が高い、Cdを含まない量子ドットを量産可能な方法で合成することが可能である。
【0071】
図1に示す量子ドット5の用途を、特に限定するものでないが、以下に具体例をいくつか挙げる。
【0072】
図2は、本実施形態の量子ドットを用いたLED装置の模式図である。本実施形態のLED装置1は、
図2に示すように、底面2aと底面2aの周囲を囲む側壁2bを有する収納ケース2と、収納ケース2の底面2aに配置されたLEDチップ(発光素子)3と、収納ケース2内に充填され、LEDチップ3の上面側を封止する蛍光層4を有して構成される。ここで上面側とは、収納ケース2からLEDチップ3の発した光が放出される方向であって、LEDチップ3に対して、底面2aの反対の方向を示す。
【0073】
LEDチップ3は、図示しないベース配線基板上に配置され、ベース配線基板は、収納ケース2の底面部を構成していてもよい。ベース基板としては、例えば、ガラスエポキシ樹脂等の基材に配線パターンが形成された構成を提示できる。
【0074】
LEDチップ3は、順方向に電圧を加えた際に発光する半導体素子であり、P型半導体層とN型半導体層とがPN接合された基本構成を備える。
【0075】
図2に示すように、蛍光層4は、多数の量子ドット5が分散された樹脂6により形成されている。
【0076】
また本実施の形態における量子ドット5を分散した樹脂組成物には、量子ドット5と量子ドット5とは別の蛍光物質を含んでいてもよい。蛍光物質としては、サイアロン系やKSF(K2SiF6:Mn4+)赤色蛍光体などがあるが材質を特に限定するものでない。
【0077】
蛍光層4を構成する樹脂6は、特に限定するものでないが、ポリプロピレン(Polypropylene:PP)、ポリスチレン(Polystyrene:PS)、アクリル樹脂(Acrylic resin)、メタクリル樹脂(Methacrylate)、MS樹脂、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl chloride:PVC)、ポリカーボネート(Polycarbonate:PC)、ポリエチレンテレテレフタレート(Polyethylene terephthalate:PET)、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene naphthalate:PEN)、ポリメチルペンテン(Polymethylpentene)、液晶ポリマー、エポキシ樹脂(Epoxy resin)、シリコーン樹脂(Silicone resin)、又は、これらの混合物等を使用することができる。
【0078】
本実施形態の量子ドットを用いたLED装置は、表示装置に適用することができる。
図3は、
図2に示すLED装置を用いた表示装置の縦断面図である。
図3に示すように、表示装置50は、複数のLED装置20と、各LED装置20に対向する液晶ディスプレイ等の表示部54を有して構成される。各LED装置20は、表示部54の裏面側に配置される。各LED装置20は、
図2に示すLED装置1と同様に多数の量子ドット5を拡散した樹脂によりLEDチップが封止された構造を備える。
【0079】
図3に示すように、複数のLED装置20は、支持体52に支持されている。各LED装置20は、所定の間隔を空けて配列されている。各LED装置20と支持体52とで表示部54に対するバックライト55を構成している。支持体52はシート状や板状、あるいはケース状である等、特に形状や材質を限定するものでない。
図3に示すように、バックライト55と表示部54との間には、光拡散板53等が介在していてもよい。
【0080】
本実施の形態における蛍光半値幅の狭い量子ドット5を、
図2に示すLED装置や、
図3に示す表示装置等に適用することで、装置の発光特性を効果的に向上させることが可能となる。
【0081】
また、本実施形態の量子ドット5を樹脂中に分散させた樹脂組成物を、シート状、フィルム状に形成することもできる。このようなシートやフィルムを、例えば、バックライト装置に組み込むことができる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明の実施例及び比較例により本発明の効果を説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0083】
<原料>
実験では、AgInxGa1-xSySe1-y系或いはZnAgInxGa1-xSySe1-y系(0≦X<1、0≦Y≦1)の量子ドットを合成するにあたり以下の原料を用いた。
(溶媒)
オクタデセン:Aldrich株式会社製
オレイルアミン:花王株式会社製
ドデカンチオール:花王株式会社製
オレイン酸:花王株式会社製 ルナックO-V
トリオクチルホスフィン:北興化学株式会社製
(銀原料)
酢酸銀:Aldrich株式会社製
(インジウム原料)
酢酸インジウム:新興化学工業株式会社製
ジエチルジチオカルバミン酸インジウム:発明者らによる合成原料
(ガリウム原料)
塩化ガリウム:新興化学工業株式会社製
ガリウムアセチルアセトナート:東京化成工業株式会社製
(硫黄原料)
硫黄:キシダ化学株式会社製
テトラエチルチウラムジスルフィド:三新化学工業株式会社製
ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド:三新化学工業株式会社製
イソプロピルキサントゲンジスルフィド:三新化学工業株式会社製
テトラメチルチウラムジスルフィド:三新化学工業株式会社製
<測定機器>
蛍光分光計:日本分光株式会社製 F-2700
紫外-可視光分光光度計:日立株式会社製 V-770
量子収率測定装置:大塚電子株式会社製 QE-1100
走査線電子顕微鏡(SEM):日立株式会社製 SU9000
【0084】
[実施例1]
300mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を1.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 165mgと、オレイルアミン:OLAm 28.5mLと、ドデカンチオール:DDT 1.5mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0085】
この溶液を120℃で5分間溶解させ、その上に、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETDS)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.4Mの溶液を1.5ml添加した。その後、120℃から200℃に昇温し、合計20分間、攪拌した。その後、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0086】
得られた反応溶液に、カルバミン酸塩としてジエチルジチオカルバミン酸インジウム:In[SC(=S)N(C2H5)2]3 125.7mgを加えて、再び270℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。
【0087】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とミリスチン酸:MAをモル比率がGa:MA=1:3になるようにオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.1Mの溶液9mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液4.5mlを混合した溶液13.5mlを、270℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に50分間かけて滴下した。滴下完了後70分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0088】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が539nm、蛍光半値幅が35nm、蛍光量子収率が49%である光学特性が得られた。
【0089】
その後、トルエン、エタノールを用いて洗浄し、TOPで再分散させる操作を2回繰り返したQD分散溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、
図4に示すように、蛍光波長が539nm、蛍光半値幅が35.4nm、量子収率75%である光学特性が得られた。
【0090】
[実施例2]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 55mgと、オレイルアミン:OLAm 9.5mLと、ドデカンチオール:DDT 0.5mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0091】
この溶液を120℃で5分間溶解させ、その上に、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.4Mの溶液を、0.5ml添加した。その後、120℃から200℃に昇温し、合計20分間、攪拌した。その後、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0092】
得られた反応溶液に、カルバミン酸塩としてジエチルジチオカルバミン酸インジウム:In[SC(=S)N(C2H5)2]3 41.9mgを加えて、再び270℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。
【0093】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とミリスチン酸:MAをモル比率がGa:MA=1:3になるようにオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1.5mlを混合した溶液4.5mlを、270℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に50分間かけて滴下した。滴下完了後70分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0094】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が526nm、蛍光半値幅が35.5nm、量子収率が34%である光学特性が得られた。
【0095】
その後、トルエン、エタノールを用いて洗浄し、TOPで再分散させる操作を2回繰り返したQD分散溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、
図5に示すように、蛍光波長が526.5nm、蛍光半値幅が34.8nm、量子収率が54%である光学特性が得られた。
【0096】
[実施例3]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 55mgと、オレイルアミン:OLAm 9.5mLと、ドデカンチオール:DDT 0.5mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0097】
この溶液を120℃で5分間溶解させ、その上に、4,4'-ジチオジモルホリン(DTDM)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.4Mの溶液を0.5ml添加した。その後、120℃から200℃に昇温し、合計20分間、攪拌した。その後、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0098】
得られた反応溶液に、カルバミン酸塩としてジエチルジチオカルバミン酸インジウム:In[SC(=S)N(C2H5)2]3 41.9mgを加えて、再び270℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。
【0099】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とミリスチン酸:MAをモル比率がGa:MA=1:3になるようにオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1.5mlを混合した溶液4.5mlを、270℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に50分間かけて滴下した。滴下完了後70分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0100】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が526nm、蛍光半値幅が37.5nm、量子収率が41%である光学特性が得られた。
【0101】
その後、トルエン、エタノールを用いて洗浄し、TOPで再分散させる操作を2回繰り返したQD分散溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、
図6に示すように、蛍光波長が527.5nm、蛍光半値幅が36.9nm、量子収率が56%である光学特性が得られた。
【0102】
[実施例4]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 55mgと、オレイルアミン:OLAm 9.5mLと、ドデカンチオール:DDT 0.5mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0103】
この溶液を120℃で5分間溶解させ、その上に、イソプロピルキサントゲンジスルフィドをオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.4Mの溶液を、0.5ml添加した。その後、120℃から200℃に昇温し、合計20分間、攪拌した。その後、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0104】
得られた反応溶液に、カルバミン酸塩としてジエチルジチオカルバミン酸インジウム:In[SC(=S)N(C2H5)2]3 41.9mgを加えて、再び270℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。
【0105】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とミリスチン酸:MAをモル比率がGa:MA=1:3になるようにオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1.5mlを混合した溶液4.5mlを、270℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に50分間かけて滴下した。滴下完了後70分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0106】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が530nm、蛍光半値幅が37nm、量子収率が40%である光学特性が得られた。
【0107】
その後、トルエン、エタノールを用いて洗浄し、TOPで再分散させる操作を2回繰り返したQD分散溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、
図7に示すように、蛍光波長が532nm、蛍光半値幅が36.9nm、量子収率が65%である光学特性が得られた。
【0108】
[実施例5]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 55mgと、オレイルアミン:OLAm 9.5mLと、ドデカンチオール:DDT 0.5mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0109】
この溶液を120℃で5分間溶解させ、その上にテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTDS)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.4Mの溶液を、0.5ml添加した。その後、120℃から200℃に昇温し、合計20分間、攪拌した。その後、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0110】
得られた反応溶液に、カルバミン酸塩としてジエチルジチオカルバミン酸インジウム:In[SC(=S)N(C2H5)2]3 41.9mgを加えて、再び270℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。
【0111】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とミリスチン酸:MAをモル比率がGa:MA=1:3になるようにオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1.5mlを混合した溶液4.5mlを、270℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に50分間かけて滴下した。滴下完了後70分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0112】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が542nm、蛍光半値幅が36.5nm、量子収率が54%である光学特性が得られた。
【0113】
その後、トルエン、エタノールを用いて洗浄し、TOPで再分散させる操作を2回繰り返したQD分散溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、
図8に示すように、蛍光波長が542nm、蛍光半値幅が36.5nm、量子収率が71%である光学特性が得られた。
【0114】
[実施例6]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 55mgと、オレイルアミン:OLAm 9.5mLと、ドデカンチオール:DDT 0.5mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0115】
この溶液を120℃で5分間溶解させ、その上にテトラエチルチウラムジスルフィド(TETDS)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.4Mの溶液を0.5ml添加した。その後、120℃から200℃に昇温し、合計20分間、攪拌した。その後、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0116】
得られた反応溶液に、カルバミン酸塩としてジエチルジチオカルバミン酸インジウム:In[SC(=S)N(C2H5)2]3 41.9mgを加えて、再び270℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。
【0117】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とオレイン酸:OLAcをモル比率がGa:MA=1:3になるようにオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1.5mlを混合した溶液4.5mlを、270℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に50分間かけて滴下した。滴下完了後70分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0118】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が546nm、蛍光半値幅が29.3nm、量子収率が39%である光学特性が得られた。
【0119】
その後、トルエン、エタノールを用いて洗浄し、TOPで再分散させる操作を2回繰り返したQD分散溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、
図9に示すように、蛍光波長が548.5nm、蛍光半値幅が30.5nm、量子収率が59%である光学特性が得られた。
【0120】
[実施例7]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 55mgと、オレイルアミン:OLAm 9.5mLと、ドデカンチオール:DDT 0.5mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0121】
この溶液を120℃で5分間溶解させ、その上に、テトラエチルチウラムジスルフィドをオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.4Mの溶液を、0.5ml添加した。その後、120℃から200℃に昇温し、合計20分間、攪拌した。その後、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0122】
得られた反応溶液に、酢酸インジウム:In(OAc)3 21.8mg、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液0.75mlを加え、270℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。
【0123】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とミリスチン酸:MAをモル比率がGa:MA=1:3になるようにオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1.5mlを混合した溶液4.5mlを、270℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に50分間かけて滴下した。滴下完了後70分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0124】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が546nm、蛍光半値幅が36.5nm、量子収率が55%である光学特性が得られた。
【0125】
その後、トルエン、エタノールを用いて洗浄し、TOPで再分散させる操作を2回繰り返したQD分散溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、
図10に示すように、蛍光波長が546.5nm、蛍光半値幅が36.2nm、量子収率が81%である光学特性が得られた。
【0126】
[実施例8]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 55mgと、オレイルアミン:OLAm 9.5mLと、ドデカンチオール:DDT 0.5mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0127】
この溶液を120℃で5分間溶解させ、その上に硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液(S-ODE)を1ml添加した。その後、120℃から200℃に昇温し、合計20分間、攪拌した。その後、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0128】
得られた反応溶液に、酢酸インジウム:In(OAc)3 21.8mg、0.2M S-ODE 2.25mlを加えて、再び270℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。
【0129】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とミリスチン酸:MAをモル比率がGa:MA=1:3になるようにオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1.5mlを混合した溶液4.5mlを、270℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に50分間かけて滴下した。滴下完了後70分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0130】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が523nm、蛍光半値幅が36.5nm、量子収率が25%である光学特性が得られた。
【0131】
その後、トルエン、エタノールを用いて洗浄し、TOPで再分散させる操作を2回繰り返したQD分散溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が522nm、蛍光半値幅が38nm、量子収率が46%である光学特性が得られた。
【0132】
[実施例9]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 55mgと、オレイルアミン:OLAm 9.5mLと、ドデカンチオール:DDT 0.5mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0133】
この溶液を120℃で5分間溶解させ、その上に硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液(S-ODE)を1ml添加した。その後、120℃から200℃に昇温し、合計20分間、攪拌した。その後、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0134】
得られた反応溶液に、カルバミン酸塩としてジエチルジチオカルバミン酸インジウム:In[SC(=S)N(C2H5)2]3 41.9mgを加えて、再び270℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。
【0135】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とミリスチン酸:MAをモル比率がGa:MA=1:3になるようにオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1.5mlを混合した溶液4.5mlを、270℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に50分間かけて滴下した。滴下完了後70分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0136】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が534nm、蛍光半値幅が36nm、量子収率33%である光学特性が得られた。
【0137】
その後、トルエン、エタノールを用いて洗浄し、TOPで再分散させる操作を2回繰り返したQD分散溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が534nm、蛍光半値幅が40nm、量子収率が45%である光学特性が得られた。
【0138】
[実施例10]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 73.4mgと、オレイルアミン:OLAm 9.5mLと、ドデカンチオール:DDT 0.3mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0139】
この溶液を120℃で5分間溶解させ、その上にテトラエチルチウラムジスルフィド(TETDS)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.4Mの溶液を0.5ml添加した。その後、120℃から200℃に昇温し、合計20分間、攪拌した。その後、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0140】
得られた反応溶液に、酢酸インジウム:In(OAc)3をオレイルアミン:OLAmおよびオレイン酸:OLAcで溶解して得られた0.2Mの溶液0.375mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1.225mlを加えて、再び270℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。
【0141】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とオレイン酸:OLAcをモル比率がGa:OLAc=1:1.5になるようにオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1.5mlを混合した溶液4.5mlを、270℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に50分間かけて滴下した。滴下完了後70分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0142】
その後、TOP3mlを添加し、200℃で10分間加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。その後、トルエン、エタノールを用いて洗浄し、トルエンで再分散させたQD分散溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が536.5nm、蛍光半値幅が29.4nm、量子収率が71%である光学特性が得られた。
【0143】
[実施例11]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 91.8mgと、オレイルアミン:OLAm 9.5mLと、ドデカンチオール:DDT 0.5mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0144】
この溶液を200℃で5分間溶解させ、その上にテトラエチルチウラムジスルフィド(TETDS)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.4Mの溶液を1ml添加し、40分間攪拌しつつ加熱した。そして、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0145】
得られた反応溶液に、酢酸インジウム:In(OAc)3をオレイルアミン:OLAmおよびオレイン酸:OLAcで溶解して得られた0.2Mの溶液0.375mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液0.375mlを加えて、再び270℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。
【0146】
得られた反応溶液に、トルエン3ml、エタノール30mlを用いて洗浄し、OLAm 10mlで再分散を行った。
【0147】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とオレイン酸:OLAcをモル比率がGa:OLAc=1:1.5になるようにオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1.5mlを混合した溶液4.5mlを、270℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に50分間かけて滴下した。滴下完了後70分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0148】
その後、TOP3mlを添加し、200℃で10分間加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。その後、トルエン、エタノールを用いて洗浄し、TOPで再分散させたQD分散溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、
図11に示すように、蛍光波長が530.5nm、蛍光半値幅が38nm、量子収率が86%である光学特性が得られた。
【0149】
[実施例12]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 55mgと、オレイルアミン:OLAm 9.5mLと、ドデカンチオール:DDT 0.5mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0150】
この溶液を200℃で5分間溶解させ、その上にテトラエチルチウラムジスルフィド(TETDS)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.4Mの溶液を0.5ml添加した。その後、200℃で40分間、攪拌しつつ加熱した。その後、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0151】
得られた反応溶液に、酢酸インジウム:In(OAc)3をオクタデセン:ODEおよびオレイン酸:OLAcで溶解して得られた0.2Mの溶液0.375mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1.125mlを加えて、再び300℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。
【0152】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とオレイン酸:OLAcをモル比率がGa:OLAc=1:3になるようにオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1.5mlと、オレイルアミン:OLAm 0.141mLを混合した溶液を、300℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に50分間かけて滴下した。滴下完了後20分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0153】
その後、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1.5mlを加えて、200℃で30分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0154】
その後、反応溶液を遠心分離機にて5500rpmで3分間遠心分離し、上澄み液を回収した。回収した上澄み液に、TOP3mlを添加し、200℃で10分間加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0155】
その後、反応溶液1mlに対して、トルエン1ml、エタノール1.5mlを加えて遠心分離し、上澄み液にエタノール2mlを加えて5500rpmで3分間遠心分離し(洗浄分離)、トルエンで再分散させたQD分散溶液を蛍光分光計で測定した。なお、洗浄分離は、トルエン、エタノールの比率によって、量子ドットに配位するリガンド差による凝集具合を制御して、分離する工程を示す。遠心分離及び洗浄分離を経ることで、バランスよくリガンドが配位した量子ドットのみを回収でき、良好な発光特性(量子収率が高い)を得ることができる。その結果、
図12に示すように、蛍光波長が537.5nm、蛍光半値幅が25nm、量子収率が63%である光学特性が得られた。
【0156】
[実施例13]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 73.4mgと、オレイルアミン:OLAm 9.5mLと、ドデカンチオール:DDT 0.5mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0157】
この溶液を200℃で5分間溶解させ、その上にテトラエチルチウラムジスルフィド(TETDS)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.4Mの溶液を0.5ml添加した。その後、200℃で40分間、攪拌しつつ加熱した。その後、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0158】
得られた反応溶液に、酢酸インジウム:In(OAc)3をオクタデセン:ODEおよびオレイン酸:OLAcで溶解して得られた0.2Mの溶液0.6mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1.8mlを加えて、再び290℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。
【0159】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とオレイン酸:OLAcをモル比率がGa:OLAc=1:3になるようにオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.1Mの溶液3.6mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1.8mlと、オレイルアミン:OLAm 2.7mLを混合した溶液を、290℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に80分間かけて滴下した。滴下完了後10分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0160】
その後、反応溶液を遠心分離機にて5500rpmで3分間遠心分離し、上澄み液を回収した。回収した上澄み液に、TOP3mlを添加し、180℃で10分間加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0161】
その後、反応溶液1mlに対して、トルエン1ml、エタノール1.5mlを加えて遠心分離し、上澄み液にエタノール2mlを加えて5500rpmで3分間遠心分離し、トルエンで再分散させたQD分散溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、
図13に示すように、蛍光波長が531.0nm、蛍光半値幅が29.3nm、量子収率が85%である光学特性が得られた。
【0162】
[実施例14]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 73.4mgと、オレイルアミン:OLAm 9.5mLと、ドデカンチオール:DDT 0.5mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0163】
この溶液を200℃で5分間溶解させ、その上にテトラエチルチウラムジスルフィド(TETDS)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.4Mの溶液を0.5ml添加した。その後、200℃で40分間、攪拌しつつ加熱した。その後、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0164】
得られた反応溶液に、酢酸インジウム:In(OAc)3をオクタデセン:ODEおよびオレイン酸:OLAcで溶解して得られた0.2Mの溶液0.5mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1.5mlを加えて、再び290℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。
【0165】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とオレイン酸:OLAcをモル比率がGa:OLAc=1:3になるようにオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETDS)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.4Mの溶液0.5mlとオレイルアミン:OLAm 3mlを、290℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に80分間かけて滴下した。滴下完了後10分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0166】
その後、反応溶液を遠心分離機にて5500rpmで3分間遠心分離し、上澄み液を回収した。回収した上澄み液に、TOP3mlを添加し、180℃で10分間加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0167】
得られた反応溶液1mlに対して、トルエン1ml、エタノール1.5mlを加えて5500rpmで3分間遠心分離した。その後、上澄み液にエタノール2mlを加えて5500rpmで3分間遠心分離し、トルエンで再分散させたQD分散溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が529.5nm、蛍光半値幅が30.8nm、量子収率が71%である光学特性が得られた。
【0168】
その後、得られた反応溶液を200℃で5分間加熱し、その上に酢酸亜鉛:Zn(OAc)2をオレイン酸:OLAcおよびトリオクチルホスフィン:TOPに溶解させた0.8Mの溶液を0.075mlと、硫黄:Sをトリオクチルホスフィン:TOPに溶解させて得られた0.2Mの溶液0.6mlと、オレイルアミン:OLAm 1.325mlを混合した溶液2mlを、200℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に120分間かけて滴下し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0169】
得られた反応溶液1mlに対して、トルエン1ml、エタノール1.6mlを加えて5500rpmで3分間遠心分離した。その後、上澄み液にエタノール2mlを加えて5500rpmで3分間遠心分離し、トルエンで再分散させたQD分散溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、
図14に示すように蛍光波長が528nm、蛍光半値幅が31nm、量子収率が84%である光学特性が得られた。
【0170】
[実施例15]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 55.5mgと、オレイルアミン:OLAm 20mLと、ドデカンチオール:DDT3mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0171】
この溶液を150℃で5分間溶解させ、その上にセレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液を0.36ml添加した。その後、10分間攪拌した。得られた反応溶液を、室温まで冷却した後、320℃で20分間攪拌しながら加熱した。その後、室温まで冷却した。
【0172】
得られた反応溶液を遠心分離機にて5500rpmで3分間遠心分離し、量子ドットを沈殿させた。沈殿した量子ドットをトルエンで再分散させ、メタノールおよびエタノールを加えた後、遠心分離機にて5500rpmで3分間遠心分離し、再びQDを沈殿させた。その後、沈殿したQDにOLAm 9.5mlを加え、再分散を行った。
【0173】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とオレイン酸:OLAcをモル比率がGa:OLAc=1:1.5になるようにオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、セレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液0.64mlを混合した溶液3.64mlを、290℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に20分間かけて滴下した。滴下完了後100分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。また、このときに得られた溶液を蛍光分光計で測定した結果、蛍光波長が639nm、蛍光半値幅28.5nmである光学特性が得られた。
【0174】
その後、TOP8mlを添加し、200℃で5分間加熱した。その上に酢酸亜鉛:Zn(OAc)2をオレイン酸:OLAcおよびトリオクチルホスフィン:TOPに溶解させた0.8Mの溶液を1mlと、硫黄:Sをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.8Mの溶液1mlを混合した溶液2mlを、200℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に20分間かけて滴下した。滴下完了後130分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0175】
得られた反応溶液2mlに、トリオクチルホスフィン:TOPを2ml添加した。その後遠心分離を行って、沈殿物を除去した。得られた溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、
図15に示すように、蛍光波長が642nm、蛍光半値幅が33nm、量子収率が76%である光学特性が得られた。
【0176】
[実施例16]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 55.5mgと、オレイルアミン:OLAm 20mLと、ドデカンチオール:DDT3mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0177】
この溶液を150℃で5分間溶解させ、その上にセレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液を0.36ml添加した。その後、10分間攪拌した。得られた反応溶液を、室温まで冷却した後、320℃で20分間攪拌しながら加熱した。その後、室温まで冷却した。
【0178】
得られた反応溶液を遠心分離機にて5500rpmで3分間遠心分離し、量子ドットを沈殿させた。沈殿した量子ドットをトルエンで再分散させ、メタノールおよびエタノールを加えた後、遠心分離機にて5500rpmで3分間遠心分離し、再びQDを沈殿させた。その後、沈殿したQDにOLAm 9.5mlを加え、再分散を行った。
【0179】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とオレイン酸:OLAcをモル比率がGa:OLAc=1:1.5になるようにオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、セレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液0.64mlを混合した溶液3.64mlを、290℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に30分間かけて滴下した。滴下完了後90分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0180】
その後、TOP8mlを添加し、150℃で5分間加熱した。その上にセレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液0.34mlを添加し150℃で40分間加熱した。その上にセレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液0.17mlと、硫黄:Sをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.8Mの溶液0.15mlを添加し150℃で40分間加熱した。その後、室温まで冷却した。
【0181】
得られた反応溶液2mlに、トリオクチルホスフィン:TOPを0.4ml添加した。その後遠心分離を行って、沈殿物を除去した。得られた溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、蛍光波長が639nm、蛍光半値幅が30.5nm、量子収率が56%である光学特性が得られた。
【0182】
[実施例17]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 55.5mgと、オレイルアミン:OLAm 20mLと、ドデカンチオール:DDT3mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0183】
この溶液を150℃で5分間溶解させ、その上にセレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液を0.36ml添加した。その後、10分間攪拌した。得られた反応溶液を、室温まで冷却した後、320℃で20分間攪拌しながら加熱した。その後、室温まで冷却した。
【0184】
得られた反応溶液を遠心分離機にて5500rpmで3分間遠心分離し、量子ドットを沈殿させた。沈殿した量子ドットをトルエンで再分散させ、メタノールおよびエタノールを加えた後、遠心分離機にて5500rpmで3分間遠心分離し、再びQDを沈殿させた。その後、沈殿したQDにOLAm 9.5mlを加え、再分散を行った。
【0185】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とオレイン酸:OLAcをモル比率がGa:OLAc=1:1.5になるようにオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、セレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液0.64mlを混合した溶液3.64mlを、290℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に30分間かけて滴下した。滴下完了後90分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0186】
その後、TOP8mlを添加し、150℃で5分間加熱した。その上にセレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液0.34mlを添加し150℃で20分間加熱した後、酢酸亜鉛:Zn(OAc)2をオレイン酸:OLAcおよびトリオクチルホスフィン:TOPに溶解させた0.8Mの溶液を0.3ml添加し150℃で20分間加熱した。その上にセレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液0.17mlと、硫黄:Sをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.8Mの溶液0.15mlを添加し150℃で20分間加熱した後、酢酸亜鉛:Zn(OAc)2をオレイン酸:OLAcおよびトリオクチルホスフィン:TOPに溶解させた0.8Mの溶液を0.3ml添加し150℃で20分間加熱した。その後、室温まで冷却した。
【0187】
得られた反応溶液2mlに、トリオクチルホスフィン:TOPを0.4ml添加した。その後遠心分離を行って、沈殿物を除去した。得られた溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、
図16に示すように、蛍光波長が633nm、蛍光半値幅が27nm、量子収率が81%である光学特性が得られた。
【0188】
[実施例18]
100mL反応容器に、酢酸銀:AgOAcをオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 55.5mgと、オレイルアミン:OLAm 20mLと、ドデカンチオール:DDT3mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0189】
この溶液を150℃で5分間溶解させ、その上にセレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液を0.36ml添加した。その後、10分間攪拌した。得られた反応溶液を、室温まで冷却した後、320℃で20分間攪拌しながら加熱した。その後、室温まで冷却した。
【0190】
得られた反応溶液を遠心分離機にかけ、量子ドットを沈殿させた。沈殿した量子ドットをトルエンで再分散させ、メタノールおよびエタノールを用いて洗浄した。その後、OLAm 9.5mlを加え、再分散を行った。
【0191】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とオレイン酸:OLAcをモル比率がGa:OLAc=1:1.5になるようにオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、セレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液0.64mlを混合した溶液3.64mlを、290℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に20分間かけて滴下した。滴下完了後100分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0192】
その後、TOP8mlを添加し、150℃で5分間加熱した。その上にセレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液0.34mlを添加し150℃で20分間加熱した後、酢酸亜鉛:Zn(OAc)2をオレイン酸:OLAcおよびオレイルアミン:OLAmに溶解させた0.4Mの溶液を0.6ml添加し150℃で20分間加熱した。その上にセレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液0.17mlと、硫黄:Sをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.8Mの溶液0.15mlを添加し150℃で20分間加熱した後、酢酸亜鉛:Zn(OAc)2をオレイン酸:OLAcおよびオレイルアミン:OLAmに溶解させた0.4Mの溶液を0.6ml添加し150℃で20分間加熱した。その後、室温まで冷却した。
【0193】
得られた反応溶液2mlに、トリオクチルホスフィン:TOPを0.4ml添加した。その後遠心分離を行って、沈殿物を除去した。得られた溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、
図17に示すように、蛍光波長が630.5nm、蛍光半値幅が24.5nm、量子収率が70%である光学特性が得られた。
【0194】
[実施例19]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 53.3mgと、インジウムアセチルアセトナート:In(acac)3をオレイルアミン:OLAmおよびオレイン酸:OLAcに溶解させて得られた0.02Mの溶液を0.25mlと、オレイルアミン:OLAm 9.5mLと、ドデカンチオール:DDT2.5mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0195】
この溶液を150℃で5分間溶解させ、その上にセレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液を0.36ml添加した。その後、10分間攪拌した。得られた反応溶液を、室温まで冷却した後、320℃で60分間攪拌しながら加熱した。その後、室温まで冷却した。
【0196】
得られた反応溶液を遠心分離機にかけ、量子ドットを沈殿させた。沈殿した量子ドットをトルエンで再分散させ、メタノールおよびエタノールを用いて洗浄した。その後、OLAm 9.5mlを加え、再分散を行った。
【0197】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とオレイン酸:OLAcをモル比率がGa:OLAc=1:1.5になるようにオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、硫黄:Sをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.8Mの溶液0.57mlを混合した溶液3.57mlを、260℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に30分間かけて滴下した。滴下完了後150分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0198】
その後、酢酸亜鉛:Zn(OAc)2をオレイン酸:OLAcおよびトリオクチルホスフィン:TOPに溶解させた0.8Mの溶液を0.15mlと、硫黄:Sをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.8Mの溶液0.15mlを添加し150℃で20分間加熱した。その後、トリオクチルホスフィン:TOPを3ml添加し、150℃で10分間加熱した。酢酸亜鉛:Zn(OAc)2をオレイン酸:OLAcおよびトリオクチルホスフィン:TOPに溶解させた0.8Mの溶液を0.15mlと、硫黄:Sをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.8Mの溶液0.15mlを添加し150℃で20分間加熱した。
【0199】
得られた反応溶液2mlに、トリオクチルホスフィン:TOPを0.4ml添加した。その後遠心分離を行って、沈殿物を除去した。得られた溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、
図18に示すように、蛍光波長が631nm、蛍光半値幅が25nm、量子収率が67%である光学特性が得られた。
【0200】
[実施例20]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、ガリウムアセチルアセトナート:Ga(acac)3 55.5mgと、オレイルアミン:OLAm 20mLと、ドデカンチオール:DDT3mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0201】
この溶液を150℃で5分間溶解させ、その上にセレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液を0.36ml添加した。その後、10分間攪拌した。得られた反応溶液を、室温まで冷却した後、320℃で20分間攪拌しながら加熱した。その後、室温まで冷却した。
【0202】
得られた反応溶液を遠心分離機にかけ、量子ドットを沈殿させた。沈殿した量子ドットをトルエンで再分散させ、メタノールおよびエタノールを用いて洗浄した。その後、OLAm 9.5mlを加え、再分散を行った。
【0203】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とオレイン酸:OLAcをモル比率がGa:OLAc=1:1.5になるようにオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.1Mの溶液3mlと、硫黄:Sをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.8Mの溶液0.5mlを混合した溶液3.5mlを、290℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に10分間かけて滴下した。滴下完了後110分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0204】
その後、TOP8mlを添加し、150℃で5分間加熱した。その上にセレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液0.34mlを添加し150℃で20分間加熱した後、酢酸亜鉛:Zn(OAc)2をオレイン酸:OLAcおよびトリオクチルホスフィン:TOPに溶解させた0.8Mの溶液を0.3ml添加し150℃で20分間加熱した。その上にセレン:Seをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.7Mの溶液0.17mlと、硫黄:Sをオレイルアミン:OLAmおよびドデカンチオール:DDTに溶解させて得られた0.8Mの溶液0.15mlを添加し150℃で20分間加熱した後、酢酸亜鉛:Zn(OAc)2をオレイン酸:OLAcおよびトリオクチルホスフィン:TOPに溶解させた0.8Mの溶液を0.3ml添加し150℃で20分間加熱した。その後、室温まで冷却した。
【0205】
得られた反応溶液2mlに、トリオクチルホスフィン:TOPを0.4ml添加した。その後遠心分離を行って、沈殿物を除去した。得られた溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、
図19に示すように、蛍光波長が633nm、蛍光半値幅が23.9nm、量子収率が75%である光学特性が得られた。
【0206】
[比較例1]
100mL反応容器に、酢酸銀:Ag(OAc)をオレイルアミン:OLAmに溶解させて得られた0.2Mの溶液を0.5mlと、酢酸インジウム:In(OAc)3 29mgと、オレイルアミン:OLAm 9.5mLと、ドデカンチオール:DDT 0.5mlを入れた。そして、不活性ガス(N2)雰囲気下で攪拌しながら加熱し、原料を溶解させた。
【0207】
この溶液を120℃で5分間溶解させ、その上に硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液(S-ODE)を1ml添加した。その後、120℃から200℃に昇温しつつ、合計20分間、攪拌しつつ加熱した。得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0208】
得られた反応溶液に、カルバミン酸塩としてジエチルジチオカルバミン酸インジウム:In[SC(=S)N(C2H5)2]3 27.9mgを加えて、再び260℃で10分間、攪拌しつつ加熱した。
【0209】
その後、塩化ガリウム:GaCl3とミリスチン酸:MAをモル比率がGa:MA=1:3になるようにオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.1Mの溶液2mlと、硫黄:Sをオクタデセン:ODEに溶解させて得られた0.2Mの溶液1,5mlを混合した溶液3.5mlを、260℃で攪拌しつつ加熱している溶液上に50分間かけて滴下した。滴下完了後70分間、攪拌しつつ加熱し、得られた反応溶液を、室温まで冷却した。
【0210】
得られた反応溶液を蛍光分光計で測定した。その結果、
図20に示すように、蛍光波長が約641nm、蛍光半値幅が約33.8nmである光学特性が得られた。なお、蛍光量子収率は、測定できないほど低い値であった。
【0211】
以下の表1に示すように、各実施例における初期粒子組成、後添加元素、蛍光波長、蛍光半値幅、及び蛍光量子収率(PLQY)をまとめた。また、表2は、実施例1(緑QD)及び15(赤QD)を基準に主な相違点をまとめたものである。
【0212】
【0213】
【0214】
表1に示すように、実施例1~18、20では、初期粒子組成にInは含んでおらず、いずれも良好な特性が得られた。一方、比較例1では、初期粒子組成にInを含んでおり、特に、蛍光量子収率が観測不能なほど低い数値になった。
【0215】
「後添加元素」では、コア表面を被覆するシェルの組成を含むが、TEM-EDXでの分析の結果、明確なコアシェル構造を確認できず、添加した原料が全て混晶化していることがわかった。ただし、上記のように、初期で反応して合成できる粒子にInを含まないことで、いずれも良好な特性を得られており、このため、「初期粒子組成」と「後添加元素」とを分けて記載した。
【0216】
また、実施例16ではZnを含んでおらず、実施例17はZnを含んでいるが、実施例17のほうが実施例16に比べて、良好な特性結果が得られた。
【0217】
表1に示すように、実施例では、いずれも蛍光半値幅が、45nm以下、好ましくは、30nm以下にできることがわかった。また、蛍光量子収率を、35%以上、好ましくは70%以上にできることがわかった。
【0218】
また、表1に示すように、蛍光波長を、400nm~700nmの範囲内で調整することが可能であり、実施例1~実施例14によって緑色発光、実施例15~20によって赤色発光の量子ドットを合成可能であるとわかった。
【0219】
これに対して、特許文献に記載のAIS系量子ドットでは、緑色波長域から赤色波長域にて、蛍光半値幅が45nm以上となるか、蛍光量子収率が35%以下となり、本実施例のように、蛍光半値幅が狭く、且つ蛍光量子収率が高いAgInxGa1-xSySe1-y系、或いは、ZnAgInxGa1-xSySe1-y系(0≦x<1、0≦y≦1)の量子ドットを得ることができなかった。
【0220】
また、実施例7のAgInGaS粒子の分散溶液を、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)を用いて測定した。
図21が、走査型電子顕微鏡(SEM)の測定結果である。
【0221】
図21に示すように、多数の量子ドットを、略均一の粒径に大量生産できることがわかった。
【0222】
また、実施例15の量子ドットをTEM-EDXにて分析した結果(観察像)を
図22に示す。
図23は、
図22に示す示す観察像の部分模式図である。
図22、
図23に示すように、Znの検出が多いほど色が濃く検出され、Znは主に量子ドット表面に存在していることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0223】
本発明によれば、例えば、高輝度の緑色蛍光或いは赤色蛍光を示す量子ドットを安定して得ることができる。そして本発明の量子ドットを、LEDやバックライト装置、表示装置等に適用することで、各装置において優れた発光特性を得ることができる。
【0224】
本出願は、2019年8月23日出願の特願2019-153204に基づく。この内容は、全てここに含めておく。