(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】空調衣服
(51)【国際特許分類】
F04D 25/08 20060101AFI20240723BHJP
F04D 29/62 20060101ALI20240723BHJP
F04D 29/58 20060101ALI20240723BHJP
A41D 13/002 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F04D25/08 301Z
F04D29/62 E
F04D29/58 M
A41D13/002 105
(21)【出願番号】P 2020570995
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2020016113
(87)【国際公開番号】W WO2020246139
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019103689
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】勝田 大士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴大
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 秀和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英俊
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和哉
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-513932(JP,A)
【文献】特開2014-058915(JP,A)
【文献】特開2018-031101(JP,A)
【文献】登録実用新案第3173011(JP,U)
【文献】登録実用新案第3216594(JP,U)
【文献】登録実用新案第3220232(JP,U)
【文献】特開2016-023378(JP,A)
【文献】登録実用新案第3173198(JP,U)
【文献】特開2006-307817(JP,A)
【文献】特開平11-182487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16、
17/00-19/02、
21/00-25/16、
29/00-35/00、
A41D 13/002
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服と身体の間に外気を取り込むための送風ユニットを備え、該送風ユニットを収納する収納部を1乃至は複数個有しており、該収納部は該送風ユニットのケースの吸気口と送風口に接する両部分に外気を取り込むための開口部を設けている空調衣服であって、前記の送風ユニットは、外気を衣服内に送り込むためのファンと、ファンを回転させるためのモーターと、モーターに電力を供給するためのバッテリーと、バッテリーを充電するための充電用端子と、該送風ユニットを稼働および停止させるための電源スイッチとから少なくとも構成されており、上記ファンとモーターとバッテリーとがケースに収納されており、該ケースが外気を取り込むための吸気口と、取り込んだ外気を衣服内へ送り込むための送風口とを有しており、上記充電用端子および電源スイッチは該ケースの外装に配されており、該ケースの厚みはファンの軸方向に5~30mmであり、かつ、衣服内側には前記送風ユニットから衣服内に送風される風を規制する流路形成部を具備し
、該流路形成部は、凸状体の下端が送風ユニット上端と一致するように、かつ、送風ユニットの送風口幅と同程度の間隔に配置され、かつ略送風方向に延在する凸状体で構成されていることを特徴とする空調衣服。
【請求項2】
前記送風ユニットのケースが略直方体形状であって、最も長い辺の長さが200mm以下であることを特徴とする、請求項1記載の空調衣
服。
【請求項3】
前記送風ユニットのファンがファン軸に対して略垂直方向に送風する遠心ファンもしくは横断流ファンであることを特徴とする、請求項1または2記載の空調衣
服。
【請求項4】
前記送風ユニットが、該送風ユニット内に取り込んだ外気を冷却もしくは加熱するためのペルチェ素子を組み込んでいることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の空調衣
服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暑熱感が抑制されるため衣服内環境を快適に保つことができ、かつオフィスや家庭などの着用シーンにおいても着用快適性や意匠性に優れる空調衣服用送風ユニットおよび該ユニットを有した空調衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策として、夏場にエアコンの設定温度を高くすることや冬場にエアコンの設定温度を低くすることは、二酸化炭素排出量の削減に有効な手段の一つである。しかしながら、エアコンの温度を変更した場合、オフィスや住居などの室内空間における快適性が低下し、特に夏場においては発汗によるべたつきによって不快を感じることが問題となる。そこで、ファンを用いることにより衣服内に外気を送り込み、快適性を維持するための衣服が提案されている。
【0003】
例えば、ファンを含む送風ユニットにより衣服内に外気を送風することで衣服内温度調節を可能とした衣服が提案されている(特許文献1参照)。該技術によれば、作業具を装着していたとしても、使い勝手良く合理的に衣服内に外気を送風することができる。
【0004】
また、ポケットなどの保持部に保持された送風装置より衣服内部空間に送風し、該衣服内部空間を経由して所望の領域に外気を誘導する衣服も提案されている(特許文献2参照)。該技術によれば、内部空間を経由して個別部位へと外気が供給可能となるため、着衣者が冷却を必要としない領域への冷却を制限することが可能となる。
【0005】
さらに、吸気流を肌の近傍に流すことで汗の蒸発を促進させる衣服内換気用送風機が提案されている(特許文献3参照)。該技術によれば、使用者が熱気を感じる身体の部位を任意に換気することができ、衣服内気候を快適にすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-21289号公報
【文献】特開2017-36535号公報
【文献】特開2018-59493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で開示されている技術によると、係合部を有する衣服に取り付けられた収納部に送風ユニットを収納させることで、作業具の機能を損ねることなく作業者に外気を供給することが可能である。しかしながら、オフィスや家庭などの日常的な着用シーンにおいては、送風ユニットを通じて作業着内に取り込まれた外気によって衣服が膨らむことにより意匠性を損ねるだけでなく、送風ユニットに電力を供給するための電源ケーブルの存在や送風ユニットの大きさゆえに着用時の違和感が強いこと、さらに作業時に身体から発せられる汗を効率的に蒸発させるために送風ファンの回転数を高くする必要があり、その結果、ファンから発せられる騒音が大きくなってしまうことが課題であった。
【0008】
また、特許文献2で開示されている技術によると、着衣者が所望する個別部位に送風することができ、合理的に着衣者の身体を冷却することが可能となる。しかしながら、オフィスや家庭などの日常的な着用シーンにおいては、送風装置から送風された外気が衣服内部空間を経由する際に衣服が膨らむことにより意匠性を損ねるだけでなく、送風装置に電力を供給するための電源ケーブルが存在するため着用時の違和感が強いこと、さらに衣服内空間を作り出すために生地を二重とすることが必須となるため、ファン停止時の暑熱感が高くなってしまうことが課題であった。
【0009】
さらに、特許文献3で開示されている技術によると、吸気流を肌の近くに流すことで汗の蒸発を促進させるとともに吹き出し流も換気に利用することで、衣服内気候を快適にすることが可能となる。しかしながら、本提案の衣服内換気用送風機は外気の取り込みを考慮しておらず、基本的には衣服内空気の循環のみとなるため、換気効率が低いという課題があった。
【0010】
本発明の課題は、上記の技術的課題を解決し、暑熱感が抑制されるため衣服内環境を快適に保つことができ、かつオフィスや家庭などの着用シーンにおいても着用快適性や意匠性に優れる空調衣服用送風ユニットおよび該ユニットを有した空調衣服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが検討を進めたところ、皮膚水分量が多く動きが複雑でない背中部や、発汗量の多い腋下部へ局所的に送風した場合、比較的少ない風量であっても効率的に身体を冷却することが可能であるという知見を得た。また、オフィスや家庭での着用を想定した薄手のシャツに公知の送風ユニットを取付けたところ、バッテリーと送風ユニットをつなぐ電源ケーブルの存在や送風ユニットそのものが厚いことによって着用時に違和感が生じ、着用時の快適性が大きく低下することが判明した。
【0012】
そこで、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、身体の特定部位を局所冷却することでファンの回転数や送風能力が低減可能となり衣服の膨らみを抑制できるため意匠性を損なうことがなく、さらに送風ユニットにバッテリーを搭載した上で一定厚み以下にすることによって、オフィスや家庭などの着用シーンにおいても着用快適性や意匠性に優れる空調衣服用送風ユニットおよび該ユニットを有した空調衣服となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は前記の課題を解決せんとするものであり、本発明の空調衣服用送風ユニットは、衣服と身体の間に外気を取り込むための送風ユニットであって、該送風ユニットが外気を衣服内に送り込むためのファンと、ファンを回転させるためのモーターと、モーターに電力を供給するためのバッテリーと、バッテリーを充電するための充電用端子と、該送風ユニットを稼働および停止させるための電源スイッチから少なくとも構成されており、上記ファンとモーターとバッテリーがケースに収納されており、該ケースが外気を取り込むための吸気口と、取り込んだ外気を衣服内へ送り込むための送風口を有しており、上記の充電用端子および電源スイッチの操作部が該ケースの外装に配されており、該ケースの厚みはファンの軸方向に5~30mmである。
【0014】
本発明の空調衣服用送風ユニットの好ましい態様によれば、上記送風ユニットのケースが略直方体形状であって、最も長い辺の長さが200mm以下である。
【0015】
本発明の空調衣服用送風ユニットの好ましい態様によれば、上記ファンがファン軸方向の略垂直方向に送風する遠心ファンもしくは横断流ファンである。
【0016】
本発明の空調衣服用送風ユニットの好ましい態様によれば、上記送風ユニットに、送風ユニット内に取り込んだ外気を冷却もしくは加温するためのペルチェ素子が組み込まれている。
【0017】
本発明の空調衣服は、前記いずれかの空調衣服用送風ユニットを収納する収納部を1乃至は複数個有しており、収納部は該送風ユニットのケースの吸気口と送風口に接する両部分に外気を取り込むための開口部を設けている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、暑熱感が抑制されるため衣服内環境を快適に保つことができ、着用快適性や意匠性に優れる空調衣服用送風ユニットおよび該ユニットを有した空調衣服となる。特に、本発明の空調衣服用送風ユニット及び該送風ユニットを有した空調衣服は、オフィスや家庭などの着用シーンにおいて好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[空調衣服用送風ユニット]
本発明の空調衣服用送風ユニットは、衣服と身体の間に外気を取り込むための送風ユニットであって、該送風ユニットが外気を衣服内に送り込むためのファンと、ファンを回転させるためのモーターと、モーターに電力を供給するためのバッテリーと、バッテリーを充電するための充電用端子と、該送風ユニットを稼働および停止させるための電源スイッチから少なくとも構成されており、上記ファンとモーターとバッテリーがケースに収納されており、該ケースが外気を取り込むための吸気口と、取り込んだ外気を衣服内へ送り込むための送風口を有しており、上記の充電用端子および電源スイッチの操作部が該ケースの外装に配されており、該ケースの厚みはファンの軸方向に5~30mmである。以下に、本発明の詳細について説明する。
【0020】
本発明の空調衣服用送風ユニットは、衣服と身体の間に外気を取り込む構造となっていることが重要である。衣服と身体の間に外気を取り込むことにより、衣服内に滞った空気を襟や袖などの開口部から排出することができるため、衣服内部で空気を循環させた場合に比べ換気効率を飛躍的に高めることができる。
【0021】
本発明の空調衣服用送風ユニットは、外気を衣服内に送り込むためのファンを有していることが重要である。送風ユニットにファンを用いることにより、強制的に空気の流れを生じさせることができ、外気を効率的に衣服内に取り込むことが可能となる。
【0022】
本発明の空調衣服用送風ユニットに用いるファンは、ファン軸方向の略垂直方向に送風する遠心ファンもしくは横断流ファンであるであることが好ましい。遠心ファンもしくは横断流ファンを用いることにより、身体に対して略平行方向に指向性を有した外気を送風することが容易となり、局所的な冷却が可能となる。さらに、身体に対して略平行方向に送風することにより、身体に対して略垂直方向に送風した場合と比較して衣服が膨らみにくくなるため、意匠性に優れた空調衣服となる。
【0023】
本発明の空調衣服用送風ユニットに用いるファンは、ファン軸垂直方向の直径が10~60mmであることが好ましい。ファン軸垂直方向の直径を好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上、さらに好ましくは20mm以上とすることにより、外気を衣服内に送り込むのに十分な風量を得ることができる。また、ファン軸垂直方向の直径を好ましくは60mm以下、より好ましくは55mm以下、さらに好ましくは50mm以下とすることにより、ファン駆動時の騒音が小さくなるとともに、送風ユニット本体を小さくすることができるため着用時に違和感の小さい空調衣服用送風ユニットとなる。
【0024】
本発明の空調衣服用送風ユニットに用いるファンは、ファン軸方向の厚みが3~18mmであることが好ましい。ファン軸方向の厚みを好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上、さらに好ましくは5mm以上とすることにより、外気を衣服内に送り込むのに十分な風量を得ることができる。また、ファン軸方向の厚みを好ましくは18mm以下、より好ましくは16mm以下、さらに好ましくは14mm以下とすることにより、送風ユニット本体を薄くすることができるため着用時に違和感の小さい空調衣服用送風ユニットとなる。
【0025】
本発明の空調衣服用送風ユニットに用いるファンは、複数枚であっても良い。ファンを複数枚用いる場合、例えば回転方向の異なるファンを積層させた二重反転ファンであっても良く、遠心ファンと軸流ファンを組み合わせて使用しても良い。
【0026】
本発明の空調衣服用送風ユニットは、ファンを回転させるためのモーターを有していることが重要である。モーターを送風ユニットに内蔵させることにより、送風ユニットのみでの送風機能発現が可能となる。
【0027】
本発明の空調衣服用送風ユニットに用いるモーターは、DC(直流)モーターであることが好ましい。モーターをDCモーターとすることにより、低電圧であっても安定した動作が可能となる。
【0028】
本発明の空調衣服用送風ユニットは、モーターに電力を供給するためのバッテリーを有していることが重要である。バッテリーを送風ユニットに内蔵させることにより、送風ユニットとバッテリーを接続する電源ケーブルが露出することがないため、着用時の快適性に優れた空調衣服となる。
【0029】
本発明の空調衣服用送風ユニットに用いるバッテリーは、繰り返し充放電が可能な二次電池である。このようなバッテリーの例としては、鉛蓄電池、アルカリ蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、小型化かつ大容量化が可能である点から、リチウムイオン電池を用いることが好ましい。
【0030】
なお、バッテリーは二次電池を用いることが望ましいが、電池交換の手間を要するが一次電池を用いることもできる。この場合、充電用の端子を備えないことも可能である。
【0031】
本発明の空調衣服用送風ユニットは、バッテリーを充電するための充電用端子を有しており、かつ充電用端子の電源ケーブル接続部がケース外装に配されていることが重要である。充電用端子を送風ユニットに具備させることにより、送風ユニットからバッテリーを取り外すことなく充電が可能となるため、送風ユニットの実用性が大きく向上する。
【0032】
本発明の空調衣服用送風ユニットは、送風ユニットを稼働および停止させるための電源スイッチを有しており、かつ電源スイッチの操作部がケース外装に配されていることが重要である。電源スイッチを送風ユニットに具備させることにより、任意のタイミングで送風ユニットを稼働もしくは停止することができる。なお、定常使用時の電源の入切は、上記電源スイッチ以外のスイッチ、例えば外部装置からの無線信号などにより実施しても良い。
【0033】
本発明の空調衣服用送風ユニットは、ファンの回転数を段階的に変更するための可変装置を具備していることが好ましい。可変装置としては、切り替えスイッチを有したDC/DCコンバーターなどが挙げられるが、これに限定されない。なお、ファンの回転数の変更は、外部装置からの無線信号などにより実施しても良い。
【0034】
本発明の空調衣服用送風ユニットは、ファンや、モーター、バッテリー、充電用端子、電源スイッチなどのデバイスが、一つのケースに収納されていることが重要である。上記デバイスが一つのケースに収納されていることにより、空調衣服への取付けや取外しが容易となるだけでなく、使用時に配線ケーブルがケース外に露出することがないため、着用時の快適性に優れた空調衣服となる。
【0035】
本発明の空調衣服用送風ユニットに用いるケースは、外気を取り込むための吸気口と、取り込んだ外気を衣服内へ送り込むための送風口を有していることが重要である。吸気口を有することによって効率よく外気を取り込むことが可能となり、送風口を有することによって任意の場所に送風することが可能となる。なお、吸気口および送風口の数は特に制限されないが、衣服の縫製が容易になることから、それぞれ4個以下が好ましく、それぞれ2個以下がより好ましい。
【0036】
本発明の空調衣服用送風ユニットに用いるケースは、吸気口(吸気口を複数有する場合は最も面積の大きな吸気口)と送風口(送風口を複数有する場合は最も面積の大きな送風口)が異なる面に開口しており、かつケース外装面の垂直方向から見て吸気口と送風口が同一直線上に重ならないことが好ましい。吸気口と送風口が好ましくは異なる面に開口していること、より好ましくは吸気口を有する面と向かい合う面に送風口を有することにより、吸気気流と送風気流が干渉することなく、効率よく外気を取り込むことができるとともに、身体の特定部位に局所的に送風することが容易となる。また、例えば、
図1や
図3のように正面図において吸気口6と送風口7が同一直線上に重ならないように配置することにより、後述する空調衣服の生地に設けられた開口部が生地垂直方向に重ならなくなるため、送風ユニットを取り外した場合であっても空調衣服内側の素肌や肌着が露出しにくくなるため、意匠性を損なうことがない。
【0037】
本発明の空調衣服用送風ユニットに用いるケースの厚みは、ケース内のファンの軸方向に5~30mmであることが重要である。ケースの厚みを5mm以上、好ましくは6mm以上、より好ましくは7mm以上とすることにより、ケースの強度を高め破損を防止することができるとともに、風量の大きいファンの搭載が可能となる。また、ケースの厚みを30mm以下、好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下とすることにより、着座時に邪魔になることがなく、着用時の快適性に優れた空調衣服となる。
【0038】
本発明の空調衣服用送風ユニットに用いるケースは、略直方体形状であることが好ましい。ケースが略直方体形状であることにより、空調衣服の収納部に取付ける際の固定が容易となり、空調衣服用送風ユニットの吸気口および送風口と空調衣服の開口部がずれにくくなる。また、ケースにおける角や辺はR加工、言い換えると曲面加工、されていることが、衣服や身体に空調衣服用送風ユニットが引っ掛かることを防止する点から好ましい。
【0039】
本発明の空調衣服用送風ユニットに用いるケースは、最も長い辺の長さが200mm以下であることが好ましい。最も長い辺の長さを好ましくは200mm以下、より好ましくは180mm以下、さらに好ましくは150mm以下とすることにより、送風ユニット自体がコンパクトとなるため、着用時の快適性に優れた空調衣服となる。また、最も長い辺の長さの下限は特に制限されないが、本発明で達しえる下限は50mm程度である。
【0040】
本発明の空調衣服用送風ユニットに用いるケースは、ケース内部に収納されたデバイスを外部衝撃などから守る役割を有する。ケースの材質としては、アルミ合金やステンレスなどの金属系材料や、ポリオレフィンやポリカーボネート、ABS樹脂などの樹脂系材料、ガラス繊維強化樹脂や炭素繊維強化樹脂などのFRP材料などが挙げられるが、これらに限定されない。中でも、軽量かつ耐衝撃性の高いABS樹脂を用いることが好ましい。
【0041】
本発明の空調衣服用送風ユニットは、取り込んだ外気を冷却もしくは加熱するためのペルチェ素子を組み込むことが好ましい。送風ユニットにペルチェ素子を組み込むことにより、取り込んだ外気の温度を変化させることが可能となる。例えば、
図5のようにペルチェ素子16の冷却面をファン6から送風口7までの流路8に配置した場合、送風口7から排出される空気の温度を低下させることができ、空調衣服の冷却機能が向上する。また、ペルチェ素子の加熱面をファンから送風口までの流路に配置した場合、送風口から排出される空気の温度を上昇させることができる。
【0042】
本発明の空調衣服用送風ユニットに用いられるペルチェ素子は、冷却面および加熱面の一辺の長さが10~70mmであることが好ましい。一辺の長さを好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上、さらに好ましくは20mm以上とすることにより、送風口から排出される空気の温度を変化させるのに十分な表面積となる。また、一辺の長さを好ましくは70mm以下、より好ましくは60mm以下、さらに好ましくは50mm以下とすることにより、送風ユニット自体がコンパクトとなるため、着用時の快適性に優れた空調衣服となる。
【0043】
[空調衣服]
本発明の空調衣服は、上記空調衣服用送風ユニットを収納するための収納部を1乃至は複数個有しており、該送風ユニットを収納した際に吸気口と接する部分の生地に外気を取り込むための開口部が設けられており、かつ送風口と接する部分の生地にも開口部が設けられている。以下に、本発明の詳細について説明する。
【0044】
本発明の空調衣服は、上記空調衣服用送風ユニットを収納する収納部を1乃至は複数個有していることが重要である。空調衣服が送風ユニット用の収納部を有していることにより、取付け具を使用することなく送風ユニットを衣服に固定することが可能となる。また、収納部の数は特に制限されないが、衣服の縫製が容易になることから、5個以下が好ましい。
【0045】
本発明の空調衣服は、上記収納部に送風ユニットのケースの吸気口と送風口に接する両部分に外気を取り込むための開口部を設けていることが重要である。送風ユニットのケースの吸気口と接する部分の生地に外気を取り込むための開口部を設けることにより、効率よく外気を取り込むことが可能となる。また、送風ユニットのケースの送風口と接する部分の生地に開口部を設けることにより、取り込んだ外気を効率よく衣服内に送り込むことが可能となる。
【0046】
本発明の空調衣服は、収納部を構成する素材の少なくとも一部が、伸縮性のある素材で構成されていることが好ましい。伸縮性素材としては、スパンデックスや捲縮繊維からなる織編物や、ゴム素材が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、スパンデックスや捲縮繊維からなる織物が、耐久性や保持性に優れるため好ましい。
【0047】
本発明の空調衣服に収納される上記空調衣服用送風ユニットの数は特に制限されないが、空調衣服の軽量化や着用時の違和感を低減するために、5個以下が好ましい。
【0048】
本発明の空調衣服に設けた開口部は、上記送風ユニットのケースの吸気口と送風口の位置によって場所が決定されるが、生地面の垂直方向から見て吸気口に対応する開口部と送風口に対応する開口部が同一直線上に重ならないことが好ましい。例えば、
図2や
図4のように吸気口に対応する開口部12と送風口に対応する開口部13が同一直線上に重ならないように配置することにより、送風ユニットを取り外した場合であっても空調衣服内側の素肌や肌着が露出しにくくなるため、意匠性を損なうことがない。
【0049】
本発明の空調衣服は、流路形成部を衣服内側に具備してなることが好ましい。この流路形成部は、衣服内の風に指向性を付与する作用をもつことができ、上記空調衣服用送風ユニットから衣服内に送風された風を規制して通風流路を形成することができる。流路形成部を空調衣服内部に設け積極的に通風流路を形成することにより、冷却すべき身体の部位に風を誘導することが可能となり、着用快適性が向上するため好ましい。
【0050】
流路形成部の例としては、送風ユニットの送風口幅と同程度の間隔に配置され、かつ略送風方向に延在する凸状の流路形成部などが挙げられる。流路形成部の長さは30~500mmであることが好ましい。流路形成部の長さを好ましくは30mm以上、より好ましくは50mm以上、さらに好ましくは70mm以上とすることにより、衣服内の空気や湿気を効率よく衣服外側に排出することができ、蒸れ感や暑熱感が抑制された衣服となる。また、流路形成部の長さを好ましくは500mm以下、より好ましくは450mm以下、さらに好ましくは400mmとすることにより、身体と凸状部の接触による違和感が少なく着用快適性に優れた衣服となる。
【0051】
本発明の空調衣服は、排気口を有していてもよい。ここで排気口とは、通常の衣服が有する襟、袖、裾などの開口部ではなく、衣服内の空気を衣服外側へと排出するために別途設けられる、衣服の基本的な部位よりも通気度が高い部位のことである。このような排気口を有していれば、衣服内の換気を促進することができるため、暑熱感や蒸れ感を抑制することができ、着用快適性に優れた衣服となる。本発明の衣服において、排気口の数ならびに排気口の位置には特に制限はないが、送風ユニットの送風方向の延長線上に配置されていることが効率よく衣服内の空気を換気できるため好ましい。
【0052】
排気口は、衣服の生地よりも通気度の高い素材で構成されていることが好ましい。排気口の通気度を衣服本体の生地よりも高くすることにより、衣服内の空気を効率的に衣服外側へと排出することが可能となる。なお、排気口の通気度は特に制限されないが、400cm3/cm2・s以上であることが好ましい。
【0053】
本発明の空調衣服に用いられる繊維の素材としては、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、レーヨン系繊維、アセテート系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維、綿、麻、絹、ウールなどが挙げられるが、これらに限定されない。中でも、ポリエステル系繊維やポリアミド系繊維は、機械的特性や耐久性に優れるため好ましい。
【0054】
本発明の空調衣服に用いられる繊維は、吸湿率差(△MR)が2.0~10.0%であることが好ましい。△MRとは、軽い運動後の衣服内温湿度を想定した温度30℃、湿度90%RHにおける吸湿率と、外気温湿度として温度20℃、湿度65%RHにおける吸湿率の差である。すなわち、△MRは吸湿性の指標であり、△MRの値が高いほど、発汗時の蒸れ感、べたつき感が軽減され、衣服の着用快適性が向上する。繊維の△MRを好ましくは2.0%以上、より好ましくは3.0%以上、さらに好ましくは4.0%以上とすることにより、発汗時の衣服内の蒸れ感やべたつき感が少なく、着用時の快適性が向上する。また、繊維の△MRを好ましくは10.0%以下、より好ましくは9.0%以下、さらに好ましくは8.0%以下とすることにより、生地や衣服を製造時の工程通過性や取り扱い性が良好であり、着用時の耐久性にも優れた空調衣服となる。
【0055】
本発明の空調衣服に用いられる繊維は、形態に関して特に制限がなく、モノフィラメント、マルチフィラメント、ステープル、紡績糸などのいずれであってもよく、仮撚や撚糸などの加工が施されていてもよい。
【0056】
本発明の空調衣服に用いられる繊維は、マルチフィラメントとしての総繊度に特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、10~500dtexであることが好ましい。総繊度を好ましくは10dtex以上、より好ましくは30dtex以上、さらに好ましくは50dtex以上とすることにより、糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れる空調衣服となる。また、総繊度を好ましくは500dtex以下、より好ましくは400dtex以下、さらに好ましくは300dtex以下とすることにより、衣服の柔軟性を損なうことがなく、着用時の快適性に優れる空調衣服となる。
【0057】
本発明の空調衣服に用いられる繊維は、単繊維繊度に特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、0.5~4.0dtexであることが好ましい。本発明における単繊維繊度とは、総繊度を単繊維数で除した値を指す。単繊維繊度を好ましくは0.5dtex以上、より好ましくは0.6dtex以上、さらに好ましくは0.8dtex以上とすることにより、糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れる空調衣服となる。また、単繊維繊度を好ましくは4.0dtex以下、より好ましくは2.0dtex以下、さらに好ましくは1.5dtex以下とすることにより、衣服の柔軟性を損なうことがなく、着用時の快適性に優れる空調衣服となる。
【0058】
本発明の空調衣服に用いられる繊維は、繊維の破断強度に特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、機械的特性の観点から2.0~5.0cN/dtexであることが好ましい。破断強度を好ましくは2.0cN/dtex以上、より好ましくは3.0cN/dtex以上とすることにより、使用時に毛羽の発生が少なく、また耐久性に優れる空調衣服となる。また、破断強度を好ましくは5.0cN/dtex以下とすることにより、衣服の柔軟性を損なうことがなく、着用時の快適性に優れる調衣服となる。
【0059】
本発明の空調衣服に用いられる繊維は、繊維の破断伸度に特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、耐久性の観点から10~60%であることが好ましい。破断伸度を好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上とすることにより、衣服の耐摩耗性が良好となり、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れる空調衣服となる。また、破断伸度を好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下、さらに好ましくは50%以下とすることにより、衣服の寸法安定性が良好となるため、耐久性に優れる空調衣服となる。
【0060】
本発明の空調衣服に用いられる繊維は、繊維の断面形状に関して特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができ、真円状の円形断面であってもよく、非円形断面であってもよい。非円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
本発明の空調衣服に用いられる生地は、通気度が50~500cm3/cm2・sであることが好ましい。生地の通気度を好ましくは50cm3/cm2・s以上、より好ましくは70cm3/cm2・s以上、さらに好ましくは90cm3/cm2・s以上とすることにより、汗の蒸散性に優れ、本発明の生地を衣服として用いた場合に、発汗時の蒸れ感、べたつき感、暑熱感を軽減できる。また、生地の通気度を好ましくは500cm3/cm2・s以下、より好ましくは400cm3/cm2・s以下、さらに好ましくは350cm3/cm2・s以下とすることにより、生地の機械的特性が良好となり、生地や衣服を製造時の工程通過性や取り扱い性が向上するだけでなく、使用時の耐久性にも優れる空調衣服となる。また、生地が薄地となり過ぎず、違和感なく着用することが可能となる。
【0062】
本発明の空調衣服に用いられる生地は、生地形態に関して特に制限がなく、公知の方法に従い、織物、編物、パイル布帛、不織布などにすることができる。また、本発明の生地は、いかなる織組織または編組織であってもよく、平織、綾織、朱子織、二重織あるいはこれらの変化織や、経編、緯編、丸編、レース編あるいはこれらの変化編などが好適に採用できる。
【0063】
本発明の空調服に用いられる生地は、必要に応じて染色してもよい。染色方法は特に制限がなく、公知の方法に従い、チーズ染色機、液流染色機、ドラム染色機、ビーム染色機、ジッガー、高圧ジッガーなどを好適に採用することができる。また、本発明では、染料濃度や染色温度に関して特に制限がなく、公知の方法を好適に採用できる。
【0064】
本発明の空調衣服の形態は、特に制限がなく、上衣、下衣のいずれであってもよく、上衣は長袖、短袖のいずれであってもよく、下衣は長裾、短裾のいずれであってもよい。本発明において、上衣とは上半身に着用する衣服であり、下衣とは下半身に着用する衣服を意味する。本発明における上衣の具体例として、インナーシャツ、タンクトップ、キャミソールなどの下着や、Tシャツ、ポロシャツ、カットソー、パジャマ、ブラウス、ブルゾン、作業着などの一般衣料、スポーツ用インナーシャツ、スポーツ用シャツなどのスポーツ衣料などが挙げられるが、これらに限定されない。また、本発明における下衣の具体例として、インナーパンツのような下着や、スラックス、パンツ、スカート、パジャマ、作業着などの一般衣料、スポーツ用パンツなどのスポーツ衣料などが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は、以下の方法で求めた。
【0066】
A.暑熱感
暑熱感の着用試験のため、被験者20名に対し、実施例によって作製した空調衣服を着用させた。続いて、冷房の効いていない夏の屋内環境を想定した温度30℃、湿度60%RHの室内において、椅子に1時間座って安静に過ごした後の衣服内部の状況について、「暑熱感を全く感じない」を5点、「暑熱感をほとんど感じない」を4点、「暑熱感をわずかに感じる」を3点、「暑熱感を感じる」を2点、「暑熱感を強く感じる」を1点とし、被験者20名が各々付けた点数の平均点を算出し、平均点が3.0点以上を合格とした。
【0067】
B.着用感
着用感については、被験者20名に対し、実施例によって作製した衣服を着用させ、「重量感、着用による違和感、ファンの音による不快感のいずれも全く無い」を5点、「重量感、着用による違和感、ファンの音による不快感のいずれもほぼ無い」を4点、「重量感、着用による違和感、ファンの音による不快感のいずれかがわずかにある」を3点、「重量感、着用による違和感、ファンの音による不快感のいずれかがある」を2点、「重量感、着用による違和感、ファンの音による不快感のいずれかが強くある」を1点とし、被験者20名が各々付けた点数の平均点を算出し、平均点が3.0点以上を合格とした。
【0068】
C.意匠性
意匠性については、マネキンに実施例によって作製した空調衣服を着用させ、被験者20名が外観について評価した。「送風ユニットが目立たずオフィスで問題なく着用可能」を5点、「送風ユニットがほとんど気にならずオフィスでの着用に抵抗がない」を4点、「送風ユニットが気になるがオフィスでの着用は可能」を3点、「送風ユニットが目立つためオフィスでの着用に抵抗がある」を2点、「送風ユニットが目立つためオフィスでの着用に強い抵抗がある」を1点とし、被験者20名が各々付けた点数の平均点を算出し、平均点が3.0点以上を合格とした。
【0069】
〔実施例1〕
図1は、実施例1の空調衣服用送風ユニットの概略説明図である。実施例1においては、厚さ5mm、直径30mmの遠心ファンを1つ用い、ファンに取り付けられたモーター、バッテリーとしてリチウムイオン電池、充電用端子、電源スイッチを、厚さ15mm、最も長い辺の長さが100mmのケースに収納し、充電用端子および電源スイッチをケース外装に配した送風ユニットを作製した。なお、1つの吸気口を設けた面の裏面に、吸気口と同一直線上に重ならないよう1つの送風口を設けた。
【0070】
図2は、実施例1の空調衣服における送風ユニットの収納部の概略説明図である。ΔMRが3.9%である吸湿性ナイロン繊維の66dtex‐72fの仮撚糸を用い、通気度が150cm
3/cm・sとなるよう作製した編地からなるシャツを準備した。シャツの背面下部の衣服外側にナイロン製捲縮繊維の編地からなるポケット状の収納部を1つ設け、作製した送風ユニットを充電した後、送風ユニットのケースの吸気口が衣服外側に向くようポケットに収納した。その後、送風ユニットより流量0.03m
3/min・個にて衣服内に送風を開始し、着用試験を実施した。得られた評価結果を表1に示す。
【0071】
〔実施例2〕
図3は、実施例2の空調衣服用送風ユニットの概略説明図である。実施例2においては、厚さ5mm、直径30mmの遠心ファンを1つ用い、ファンに取り付けられたモーター、バッテリーとしてリチウムイオン電池、充電用端子、電源スイッチを、厚さ15mm、最も長い辺の長さが100mmのケースに収納し、充電用端子および電源スイッチの操作部をケース外装に配した送風ユニットを作製した。なお、1つの吸気口を設けた面と垂直となる面に1つの送風口を設けた。
【0072】
図4は、実施例2の空調衣服における送風ユニット収納部の概略説明図である。シャツの背面下部の衣服内側に捲縮繊維の編地からなるポケット状の収納部を1つ設けた以外は実施例1と同様の方法で空調衣服を作製した後、着用試験を実施した。得られた評価結果を表1に示す。
【0073】
〔実施例3〕
図5は、実施例3の空調衣服用送風ユニットの概略説明図である。実施例3においては、ファンと送風口の間の流路に、1辺の長さが30mmである正方形のペルチェ素子の冷却面を配した以外は実施例1と同様の方法で空調衣服を作製した後、着用試験を実施した。得られた評価結果を表1に示す。
【0074】
〔実施例4〕
実施例4においては、厚さ5mm、直径30mmの横断流ファンを用いた以外は実施例1と同様方法で空調衣服を作製した後、着用試験を実施した。得られた評価結果を表1に示す。
【0075】
〔実施例5〕
実施例5においては、流路形成部として表面組織および裏面組織がポリエステル繊維の167dtex-48fの仮撚糸から編成され、中層の接結組織がポリエステル系エラストマー繊維の440dtexモノフィラメントから編成された、厚さ10mm、長さ300mm、幅15mmのダブルラッシェル生地を用いて空調衣服内部に凸状体を形成した以外は実施例1と同じ方法で空調衣服を作製した後、着用試験を実施した。なお、取り付け位置は凸状体の下端が送風ユニット上端と一致するように配置し、送風ユニットの左右中心線で対称となるよう、幅方向に40mmの間隔で2本の凸状体を平行に取り付けた。得られた評価結果を表1に示す。
【0076】
〔比較例1〕
厚さ5mm、直径30mmの遠心ファンを用い、モーター、電源スイッチを、厚さ15mm、最も長い辺の長さが100mmのケースに収納し、バッテリーを別ケースに収納して電源ケーブルで接続した以外は実施例1と同様の方法で空調衣服を作製した後、着用試験を実施した。得られた評価結果を表1に示す。
【0077】
〔比較例2〕
厚さ10mm、直径50mmの軸流ファンを用い、ケースではなく複数の通気口を有したファンカバーにファンを収納し、バッテリー、充電用端子、電源スイッチを別ケースに収納して電源ケーブルで接続して送風ユニットを作製した。バッテリーを充電した後、背面下部の衣服外側に開口部を有した通気度が150cm3/cm2・sのナイロン製編地からなるシャツの開口部に送風ユニットのファン部を取付け、実施例1と同じ条件で送風を開始し、着用試験を実施した。得られた評価結果を表1に示す。
【0078】
【0079】
実施例1~5で得られた空調衣服は、暑熱感、着用感、意匠性のいずれの評価においても良好な結果を有していることから、オフィスや家庭などの着用シーンにおいて着用快適性や意匠性に優れる空調衣服となった。
【0080】
一方、比較例1で得られた空調衣服は、暑熱感および意匠性の評価は良好であったものの、電源ケーブルが存在することによる違和感から、着用感に劣る空調衣服となった。また、比較例2で得られた空調衣服は、暑熱感の評価は良好であったものの、電源ケーブルの存在による着用感の低下に加え、送風ユニットが目立つために意匠性に劣る空調衣服となった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の空調衣服は、暑熱感が抑制されるため衣服内環境を快適に保つことができ、着用快適性や意匠性に優れる空調衣服用送風ユニットおよび該ユニットを有した空調衣服となる。特に、本発明の空調衣服用送風ユニット及び該送風ユニットを有した空調衣服は、オフィスや家庭などの着用シーンにおいて公的に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】本発明の実施例1の空調衣服用送風ユニットの概略説明図である。
【
図2】本発明の実施例1の空調衣服における送風ユニット収納部の概略説明図である。
【
図3】本発明の実施例2の空調衣服用送風ユニットの概略説明図である。
【
図4】本発明の実施例2の空調衣服における送風ユニット収納部の概略説明図である。
【
図5】本発明の実施例3の空調衣服用送風ユニットの概略説明図である。
【符号の説明】
【0083】
1:モーター付ファン
2:バッテリー
3:充電用端子
4:電源スイッチ
5:ケース
6:吸気口
7:送風口
8:流路
9:送風ユニット
10:空調衣服生地
11:収納部(ポケット状)
12:開口部(吸気口)
13:開口部(送風口)
14:開口部(送風ユニット挿入口)
15:フラップ
16:ペルチェ素子