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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】建材の製造装置及び建材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/14 20060101AFI20240723BHJP
   C04B 35/84 20060101ALI20240723BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20240723BHJP
   B32B 18/00 20060101ALI20240723BHJP
   B32B 37/12 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
E04F13/14 103A
C04B35/84
B32B17/10
B32B18/00 B
B32B37/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021007098
(22)【出願日】2021-01-20
(65)【公開番号】P2022111577
(43)【公開日】2022-08-01
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】一澤 勝弘
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03441221(EP,A1)
【文献】特開2002-103491(JP,A)
【文献】特開平11-100917(JP,A)
【文献】特開平10-037441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/14
C04B 35/84
B32B 17/10
B32B 18/00
B32B 37/12
E04F 13/08
E04F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維マット材が上面に載置された陶板を搬送する搬送装置と、
搬送される上記陶板上の上記ガラス繊維マット材の上面に液状の合成樹脂材を部分的に配置する樹脂配置装置と、
搬送される上記陶板の上方に位置しており、上記ガラス繊維マット材上の上記合成樹脂材を当該ガラス繊維マット材に展開する押圧ローラと、を備えており、
上記押圧ローラは、
上記搬送装置の搬送方向と交差する軸線周りに回転する軸部材と、
上記軸部材の表面に積層されたシート材と、を有しており、
上記シート材は、径方向外向きへ突出する複数の凸部を有しており、
上記複数の凸部の突出端は、軸線方向及び周方向において相互に離間している、建材の製造装置。
【請求項2】
上記複数の凸部の突出端は、軸線方向及び周方向においてそれぞれ列をなして並んでおり、
軸線方向に並ぶ第1の列において隣り合う上記突出端の間となる軸線方向の位置に、周方向において当該第1の列に隣り合う第2の列の上記突出端が位置する請求項1に記載の建材の製造装置。
【請求項3】
上記押圧ローラは、径方向に弾性変形可能である請求項1又は2に記載の建材の製造装置。
【請求項4】
上記樹脂配置装置は、合成樹脂材を吐出する複数のノズルを有しており、
上記複数のノズルは、上記軸線方向に並んでいる請求項1から3のいずれかに記載の建材の製造装置。
【請求項5】
上記突出端は、矩形である、請求項1から4のいずれかに記載の建材の製造装置。
【請求項6】
上記凸部の高さは、2mm以上4mm以下である、請求項1から5のいずれかに記載の建材の製造装置。
【請求項7】
上記突出端の一辺は、4mm以上6mm以下である、請求項1から6のいずれかに記載の建材の製造装置。
【請求項8】
複数の上記押圧ローラが、上記搬送方向に並ぶ請求項1から7のいずれかに記載の建材の製造装置。
【請求項9】
建材の製造装置を用いた建材の製造方法であって、
上記建材の製造装置は、
搬送装置、樹脂配置装置、及び押圧ローラを備えており、
上記押圧ローラは、
上記搬送装置の搬送方向と交差する軸線周りに回転する軸部材と、
上記軸部材の表面に積層されたシート材と、を有しており、
上記シート材は、径方向外向きへ突出する複数の凸部を有しており、
上記複数の凸部の突出端は、軸線方向及び周方向において相互に離間しており、
ガラス繊維マット材が上面に載置された陶板を上記搬送装置によって上記搬送方向に搬送させる第1工程と、
搬送される上記陶板上の上記ガラス繊維マット材の上面に、上記樹脂配置装置によって液状の合成樹脂材を部分的に配置させる第2工程と、
上記押圧ローラによって、上記ガラス繊維マット材上の上記合成樹脂材を当該ガラス繊維マット材に展開させる第3工程と、を備える建材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂材によってガラス繊維マット材が接着された陶板からなる建材の製造装置及び建材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、補強層を有する陶板を開示する。補強層は、ガラス繊維材にポリエステル樹脂を配合して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-16823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建材は、例えば、ガラス繊維マット材を上に乗せた陶板を搬送しつつ、ガラス繊維マット材の上に液状の合成樹脂材を垂らし、ローラで合成樹脂材をガラス繊維マット材に押し付けてガラス繊維マット材に浸透させた後、加熱によって合成樹脂材を硬化させて製造される。
【0005】
ガラス繊維マット材の密度が高く、網目が細かくなるほど、合成樹脂材がガラス繊維マット材に浸透し難くなる。合成樹脂材がガラス繊維マット材に浸透し難くなると、ローラによって、合成樹脂材が陶板の搬送向きの下流側に押し流されてしまい。ガラス繊維マット材における合成樹脂材の浸透量が低下する。合成樹脂材の浸透量が低下すると、ガラス繊維マット材と陶板との間の結合力(接着力)や、ガラス繊維マット材の強度が低下する。
【0006】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガラス繊維マット材の密度や網目の大きさに拘わらず液状の合成樹脂材をガラス繊維マット材に浸透させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る建材の製造装置は、ガラス繊維マット材が上面に載置された陶板を搬送する搬送装置と、搬送される上記陶板上の上記ガラス繊維マット材の上面に液状の合成樹脂材を部分的に配置する樹脂配置装置と、搬送される上記陶板の上方に位置しており、上記ガラス繊維マット材上の上記合成樹脂材を当該ガラス繊維マット材に展開する押圧ローラと、を備える。上記押圧ローラは、上記搬送装置の搬送方向と交差する軸線周りに回転する軸部材と、上記軸部材の表面に積層されたシート材と、を有する。上記シート材は、径方向外向きへ突出する複数の凸部を有する。上記複数の凸部の突出端は、軸線方向及び周方向において相互に離間する。
【0008】
液状の合成樹脂材は、凸部によってガラス繊維マット材に押し付けられる。ガラス繊維マット材に押し付けられた液状の合成樹脂材の一部は、ガラス繊維マット材に浸透し、他部は、複数の凸部間の間となる位置に逃げる。凸部間の間となる位置に逃げた液状の合成樹脂材は、押圧ローラが回転することにより、他の凸部によってガラス繊維マット材に再度押し付けられる。すなわち、液状の合成樹脂材は、複数回に亘ってガラス繊維マット材に押し付けられ、ガラス繊維マット材13に浸透させられる。
【0009】
(2) 上記複数の凸部の突出端は、軸線方向及び周方向においてそれぞれ列をなして並んでおり、軸線方向に並ぶ第1の列において隣り合う上記突出端の間となる軸線方向の位置に、周方向において当該第1の列に隣り合う第2の列の上記突出端が位置していてもよい。
【0010】
(3) 上記押圧ローラは、径方向に弾性変形可能であってもよい。
【0011】
陶板は、製造上の反りや凹凸を有する。押圧ローラが径方向に弾性変形することにより、押圧ローラとガラス繊維マット材との間の押圧力が高くなり過ぎることが防止される。
【0012】
(4) 上記樹脂配置装置は、合成樹脂材を吐出する複数のノズルを有しており、当該複数のノズルは、上記軸線方向に並んでいることが好ましい。
【0013】
(5) 上記突出端は、矩形であることが好ましい。
【0014】
(6) 上記凸部の高さは、2mm以上4mm以下であることが好ましい。
【0015】
(7) 上記突出端の一辺は、4mm以上6mm以下であることが好ましい。
【0016】
(8) 複数の上記押圧ローラが、上記搬送方向に並んでいてもよい。
【0017】
(9) 本発明に係る建材の製造方法は、建材の製造装置を用いた建材の製造方法である。上記建材の製造装置は、搬送装置、樹脂配置装置、及び押圧ローラを備える。上記押圧ローラは、上記搬送装置の搬送方向と交差する軸線周りに回転する軸部材と、上記軸部材の表面に積層されたシート材と、を有する。上記シート材は、径方向外向きへ突出する複数の凸部を有する。上記複数の凸部の突出端は、軸線方向及び周方向において相互に離間している。当該建材の製造方法は、ガラス繊維マット材が上面に載置された陶板を上記搬送装置によって上記搬送方向に搬送させる第1工程と、搬送される上記陶板上の上記ガラス繊維マット材の上面に、上記樹脂配置装置によって液状の合成樹脂材を部分的に配置させる第2工程と、上記押圧ローラによって、上記ガラス繊維マット材上の上記合成樹脂材を当該ガラス繊維マット材に展開させる第3工程と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ガラス繊維マット材の密度や網目の大きさに拘わらず、合成樹脂材を押し流すことなくガラス繊維マット材に染み込ませる建材の製造装置、及び建材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、建材製造装置10の概略の側面図である。
図2図2は、建材製造装置10の動作を説明する図であって、搬送されるガラス繊維マット材13及び樹脂配置装置30の配置装置本体31を上方から見た概略図である。
図3図3(A)は、押圧ローラ41の側面図であり、図3(B)は、押圧ローラ41の正面図であり、図3(C)は、押圧ローラ41の断面図であり、図3(D)は、ライニング材62に貼り付ける前の板状のシート材46の平面図である。
図4図4は、変形例1及び変形例2に係るシート材46の平面図であって、ライニング材62に貼り付ける前の板状のシート材46の平面図である。
図5図5は、変形例3及び変形例4に係るシート材46の平面図であって、ライニング材62に貼り付ける前の板状のシート材46の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0021】
図1に示される建材製造装置10は、一点鎖線内に示された建材11を製造する装置である。
【0022】
建材11は、陶板12と、ガラス繊維マット材13と、ガラス繊維マット材13に内包された合成樹脂材14とを備える。
【0023】
陶板12は、例えばセラミックス製であり、かつ矩形板状である。
【0024】
ガラス繊維マット材13は、糸状の多数のガラス繊維からなり、矩形の板状(マット状)に成形されている。ガラス繊維マット材13の主面は、陶板12の主面と同形状であり、ガラス繊維マット材13は、陶板12の主面を覆っている。ガラス繊維マット材13は、合成樹脂材14を内包可能な空間を内部に有している。ガラス繊維マット材13内の合成樹脂材14は、ガラス繊維マット材13を陶板12に接着する。すなわち、合成樹脂材14は、陶板12とガラス繊維マット材13とを接着する接着剤として機能する。また、ガラス繊維マット材13内の合成樹脂材14は、ガラス繊維マット材14の強度を高める。
【0025】
合成樹脂材14は、例えば、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂や、エポキシ樹脂やポリアミド樹脂や、フェノール樹脂等である。
【0026】
建材製造装置10は、液状の合成樹脂材14をガラス繊維マット材13に内包させた後、合成樹脂材14を加熱して硬化させてガラス繊維マット材13を陶板12に接着させる製造ラインである。以下、建材製造装置10について詳しく説明する。
【0027】
建材製造装置10は、搬送装置20、樹脂配置装置30、展開装置40、及び加熱炉50を備える。
【0028】
搬送装置20は、ガラス繊維マット材13が載置された陶板12を搬送する装置であって、いわゆるコンベア装置である。図1に示す例では、搬送装置20は、台座21と、台座21に回転可能に支持された複数の搬送ローラ22と、搬送ローラ22を回転させる駆動モータ23とを備える。但し、陶板12を搬送可能であれば、どのような搬送装置20が用いられてもよい。
【0029】
搬送装置20は、陶板12を搬送向き17に搬送する。搬送向き17は、水平方向に沿う向きである。搬送向き17が沿う方向は、本発明の搬送方向の一例である。
【0030】
作業者は、主面が水平方向に沿う向きで陶板12を寝かして搬送ローラ22の上に載置する。次いで、作業者は、陶板12の上にガラス繊維マット材13を四隅を揃えて載置する。そして、作業者は、搬送装置20を駆動して、陶板12及びガラス繊維マット材13を搬送装置20に搬送させる。作業者が搬送装置20を駆動して陶板12及びガラス繊維マット材13を搬送装置20に搬送させる工程は、本発明の第1工程の一例である。
【0031】
樹脂配置装置30は、陶板12とともに搬送されるガラス繊維マット材13に、液状の合成樹脂材14を垂らす装置である。樹脂配置装置30は、搬送装置20に対する相対位置を固定されている。具体的には、樹脂配置装置30は、搬送される陶板12及びガラス繊維マット材13の上方となる位置で固定されている。
【0032】
樹脂配置装置30は、複数のノズル32を有する配置装置本体31と、配置装置本体31とホース等によって接続された不図示の樹脂タンクとを有する。各ノズル32から液状の合成樹脂材14がそれぞれ流出する。
【0033】
図2に示されるように、複数のノズル32は、幅方向16において並んでいる。幅方向16は、上下方向及び搬送向き17に直交する方向である。図2において、上下方向は、紙面に直交する方向である。
【0034】
幅方向16における一方の端のノズル32と他方の端のノズル32との間の距離D1は、ガラス繊維マット材13の幅D2と概ね同じである。陶板12及びガラス繊維マット材13が搬送向き17に搬送されつつ、ノズル32から液状の合成樹脂材14が流出されることにより、液状の合成樹脂材14は、ガラス繊維マット材13の上面に、線状に配置される。すなわち、樹脂配置装置30は、ガラス繊維マット材13の上面に、合成樹脂材14を部分的に配置する。
【0035】
作業者が、建材製造装置10を駆動させて、樹脂配置装置30によってガラス繊維マット材13の上面に合成樹脂材14を配置する工程は、本発明の第2工程の一例である。
【0036】
図1に示されるように、展開装置40は、搬送向き17における樹脂配置装置30の下流となる位置であって、かつ搬送される陶板12及びガラス繊維マット材13の上方となる位置に配置されている。
【0037】
展開装置40は、一対の押圧ローラ41と、保持体42と、不図示のモータと、エアシリンダ44とを備える。
【0038】
各押圧ローラ41は、軸線が沿う方向である軸線方向18(図3(B))が幅方向16(図2)に一致する向きでそれぞれ配置されている。押圧ローラ41として、例えば、軸線方向18における長さが約550mmであり、直径が約50mmのものが使用される。
【0039】
一対の押圧ローラ41は、搬送向き17において相互に離間して並んでいる。押圧ローラ41は、モータによって、軸線周りに回転される。なお、展開装置40は、搬送向き17において相互に離間して並ぶ3つ以上の押圧ローラ41を備えていてもよい。
【0040】
保持体42は、各押圧ローラ41を軸線周りに回転可能に支持している。また、保持体42は、エアシリンダ44のロッドに取り付けられている。
【0041】
エアシリンダ44は、保持体42が取り付けられたロッドが上下方向に伸縮する向きで配置されており、搬送装置20に対する相対位置を固定されている。
【0042】
また、エアシリンダ44は、工場に付設された不図示のエア配管と接続されている。エア配管を通じて、不図示のエアポンプからエアシリンダ44にエアが供給され、ロッドが上下方向に伸縮する。伸長したロッドは、保持体42を下方に移動させる。保持体42が下方に移動されることにより、押圧ローラ41が、ガラス繊維マット材13に押圧される。ガラス繊維マット材13に押圧され、かつモータによって回転された押圧ローラ41は、ガラス繊維マット材13上に配置された液状の合成樹脂材14をガラス繊維マット材13に展開する。液状の合成樹脂材14の展開とは、ガラス繊維マット材13の上面に線状に配置された液状の合成樹脂材14(図2)を幅方向16に押し拡げるとともに、液状の合成樹脂材14をガラス繊維マット材13内に浸透させて、ガラス繊維マット材13内の概ね全領域に亘って合成樹脂材14を内包させることを意味する。
【0043】
作業者が、建材製造装置10を駆動させて、展開装置40によって合成樹脂材14をガラス繊維マット材13に展開させる工程は、本発明の第3工程の一例である。
【0044】
押圧ローラ41について、図3を参照して詳しく説明する。押圧ローラ41は、円柱状の軸部材45と、軸部材45の表面(周面)に積層された円筒状のシート材46とを有する。
【0045】
軸部材45は、ギア等を介してモータと連結された鉄芯61と、鉄芯61に積層されたライニング材62と、を有しており、モータによって回転される。
【0046】
ライニング材62の厚みは、例えば約8mmである。ライニング材62は、硬度が15度前後のブチルゴム等のゴム製である。すなわち、押圧ローラ41は、弾性を有し、径方向に弾性変形可能である。例えば、陶板12は、製造上の反りや凹凸を有する。押圧ローラ41のライニング材62が弾性変形することにより、陶板12の反りや凹凸によって押圧ローラ41とガラス繊維マット材13との間の押圧力が高くなり過ぎることが防止される。
【0047】
シート材46の厚みは、例えば約3mmである。シート材46には、例えば、発泡塩化ビニルシートが用いられる。すなわち、シート材46は、スポンジ状である。
【0048】
シート材46は、矩形板状のシート材46をライニング材62に貼り付けることによって軸部材45に積層される。以下では、ライニング材62に貼り付ける前のシート材46の形状について説明する。なお、図3(D)では、矩形板状のシート材46の一辺に沿う方向であって、ライニング材62に貼り付けた場合において押圧ローラ41の軸線方向18と一致する方向を軸線方向18とし、矩形板状のシート材46の他の一辺に沿う方向であって、ライニング材62に貼り付けた場合において押圧ローラ41の周方向19と一致する方向を周方向19としている。
【0049】
シート材46は、同形状の複数の凸部47を有する。なお、図3(B)では、複数の凸部47の図示が省略されている。
【0050】
凸部47は、シート材36をライニング材62に貼り付けた場合に、周面から径方向外向きに突出する。凸部47は、概ね四角柱状であって、凸部47の突出端(先端面)は、正方形状である。凸部47の突出端の一辺の長さAは、4mm以上6mm以下であることが好ましい。さらに、長さAは、5mmであることが好ましい。一方、凸部47の突出長Bは、2mm以上4mm以下であることが好ましい。さらに、突出長Bは、3mmであることが好ましい。
【0051】
複数の突出端48は、軸線方向18及び周方向19において相互に離間して並んでいる。軸線方向18において隣り合う2つの突出端48間の距離C1は、突出端の一片の長さAと同一である。周方向19において隣り合う2つの突出端48間の距離C2は、突出端の一片の長さAと同一である。
【0052】
軸線方向18に並ぶ複数の突出端48である突出端48Aからなる一の列は、本発明の第1の列の一例である。周方向19において当該一の列と隣り合う他の列であって、複数の突出端48である突出端48Bからなる列は、本発明の第2の列の一例である。当該第1の列において隣り合う2つの突出端48Aの間となる位置に、当該第2の列の突出端48Bが位置している。すなわち、複数の凸部47は、複数の突出端48が格子状となるように設けられている。
【0053】
なお、シート材46をライニング材62に貼り付けることにより、複数の凸部47は、斜め方向においても相互に離間する。斜め方向は、図4(D)において、軸線方向18及び周方向19に対して傾斜する方向である。
【0054】
複数の凸部47の突出端48による合成樹脂材14の展開について詳しく説明する。エアシリンダ44によって下方に付勢された押圧ローラ41が回転すると、軸線方向18において並ぶ一の列の凸部47は、ガラス繊維マット材13上に配置された液状の合成樹脂材14をガラス繊維マット材13に押し付ける。ガラス繊維マット材13に押し付けられた液状の合成樹脂材14の一部は、ガラス繊維マット材13内に浸透する。液状の合成樹脂材14の他部は、複数の凸部47間となる位置に押し出される。押し出された液状の合成樹脂材14の他部は、押圧ローラ41がさらに回転することにより、次の列の凸部47によってガラス繊維マット材13に押し付けられる。すなわち、ガラス繊維マット材13上の液状の合成樹脂材14は、複数回に亘ってガラス繊維マット材13に押し付けられ、幅方向16に押し拡げられつつガラス繊維マット材13に浸透させられる。
【0055】
また、一対の押圧ローラ41のうち、搬送向き17における上流側となる方の押圧ローラ41によってガラス繊維マット材13に浸透することができなかった液状の合成樹脂材14は、下流側となる方の押圧ローラ41によって、ガラス繊維マット材13に浸透させられる。
【0056】
図1に示されるように、加熱炉50は、搬送向き17における展開装置40の下流となる位置に設けられている。加熱炉50は、例えば、ヒータ、温度センサ、制御装置を備える。制御装置は、温度センサが検知する炉内温度が設定温度になるようにヒータの駆動を制御する。すなわち、加熱炉50は、恒温炉である。
【0057】
加熱炉50において加熱されることにより、ガラス繊維マット材13に浸透した液状の合成樹脂材14が硬化する。硬化した合成樹脂材14は、ガラス繊維マット材13を陶板12に接着するとともに、ガラス繊維マット材13の強度を高める。すなわち、強度を高められたガラス繊維マット材13が陶板12に接着された建材11が製造される。
【0058】
従来のガラス繊維マット材よりも密度が高く網目の細かいガラス繊維マット材13を用いてテストを行った結果、凸部47の正方形状の突出端48の一辺の長さAが4mm以上6mm以下である場合、ガラス繊維マット材13を陶板12に接着するのに十分な量の合成樹脂材14がガラス繊維マット材13に浸透することが確認された。
【0059】
また、従来のガラス繊維マット材よりも密度が高く網目の細かいガラス繊維マット材13を用いてテストを行った結果、凸部47の突出長Bが2mm以上4mm以下である場合、ガラス繊維マット材13を陶板12に接着するのに十分な量の合成樹脂材14がガラス繊維マット材13に浸透することが確認された。
【0060】
[実施形態の作用効果]
本実施形態では、軸線方向18及び周方向19において相互に離間する複数の凸部47を押圧ローラ41に設けることにより、従来よりも密度が高く網目の細かなガラス繊維マット材13であっても、ガラス繊維マット材13を陶板12に接着するのに十分な量の合成樹脂材14をガラス繊維マット材13に浸透させることができる。その結果、従来よりも密度が高く網目の細かなガラス繊維マット材13であっても、ガラス繊維マット材13と陶板12との間の結合力(接着力)及びガラス繊維マット材13の強度を十分に確保することができる。
【0061】
また、本実施形態では、ガラス繊維マット材13の密度や網目の大きさに拘わらず液状の合成樹脂材14をガラス繊維マット材13に浸透させることができるから、液状の合成樹脂材14が押圧ローラ41によって搬送向き17の下流側に押し流されて合成樹脂材14がガラス繊維マット材13から垂れることを防止することができる。
【0062】
また、本実施形態では、凸部47によって複数回に亘って液状の合成樹脂材14をガラス繊維マット材13に押し付けて、液状の合成樹脂材14を幅方向16に押し拡げつつガラス繊維マット材13に浸透させるから、ガラス繊維マット材13内にほぼ均等に合成樹脂材14を浸透させることができる。すなわち、本実施形態では、ガラス繊維マット材13内における合成樹脂材14の分布のムラを低減することができる。
【0063】
また、本実施形態では、凸部47の突出端48を格子状に配置することにより、ガラス繊維マット材13への液状の合成樹脂材14の浸透量をさらに増加させることができる。その結果、ガラス繊維マット材13と陶板12との間の結合力(接着力)及びガラス繊維マット材13の強度をさらに高めることができる。
【0064】
また、本実施形態では、ライニング材62がゴム製であるから、陶板12の製造上の反りや凹凸によって押圧ローラ41とガラス繊維マット材13との間の押圧力が高くなり過ぎることが防止される。
【0065】
[変形例1]
上述の実施形態では、突出端48が正方形状である複数の凸部47が押圧ローラ41のシート材46に設けられた例を説明した。本変形例では、図4(A)、(B)に示すように、凸部47の突出端(先端面)48が長方形状である例を説明する。なお、以下に説明する構成以外の構成は、実施形態で説明した構成と同一である。
【0066】
図4(A)に示される例では、突出端48は、周方向19に長い長方形状である。具体的には、周方向19に沿う突出端48の一辺の長さEは、軸線方向18に沿う突出端48の一辺の長さAよりも長い。軸線方向18において隣り合う2つの突出端48間の距離C3は、長さAと同一である。周方向19において隣り合う2つの突出端48間の距離C4は、長さEと同一である。凸部47の突出長は、実施形態で説明した突出長Bと同様に、2mm以上4mm以下であることが好ましい。
【0067】
図4(B)に示される例では、突出端48は、軸線方向18に長い長方形状である。具体的には、軸線方向18に沿う突出端48の一辺の長さFは、周方向19に沿う突出端48の一辺の長さAよりも長い。軸線方向18において隣り合う2つの突出端48間の距離C5は、長さFと同一である。周方向19において隣り合う2つの突出端48間の距離C6は、長さAと同一である。
【0068】
本変形例においても、従来よりも密度が高く網目の細かなガラス繊維マット材13を陶板12に接着するのに十分な量の合成樹脂材14をガラス繊維マット材13に浸透させることができる。
【0069】
[変形例2]
本変形例では、図4(C)に示すように、凸部47が円柱状であって、突出端(先端面)48が円形状である例を説明する。なお、以下に説明する構成以外の構成は、実施形態で説明した構成と同一である。
【0070】
複数の突出端48は、軸線方向18及び周方向19において相互に離間して並んでいる。図4(C)に示す例では、斜め方向において突出端48同士が互いに接している。斜め方向は、軸線方向18及び周方向19に対して傾斜する方向である。
【0071】
突出端48の直径をHとすると、軸線方向18及び周方向19において隣り合う2つの突出端48間の距離J=2Hsin45°-Hとなる。直径Hは、例えば実施形態で説明した長さAと同様に、4mm以上6mm以下であることが好ましい。また、凸部47の突出長は、実施形態で説明した突出長Bと同様に、2mm以上4mm以下であることが好ましい。なお、斜めの方向において突出端48同士が互いに接していなくてもよい。
【0072】
本変形例においても、従来よりも密度が高く網目の細かなガラス繊維マット材13を陶板12に接着するのに十分な量の合成樹脂材14をガラス繊維マット材13に浸透させることができる。
【0073】
[変形例3]
本変形例では、図5(A)に示すように、複数の凸部47が軸線方向18及び周方向19に加え、斜め方向においても相互に離間している例について説明する。斜め方向は、軸線方向18及び周方向19に対して傾斜する方向である。なお、以下に説明する構成以外の構成は、実施形態で説明した構成と同一である。
【0074】
凸部47の突出端(先端面)48は、実施形態と同様に一辺の長さがAである正方形である。軸線方向18における2つの突出端48間の距離C7は、長さAより長い。また、周方向19における2つの突出端48間の距離C8は、距離C7と同一であって、長さAより長い。
【0075】
本変形例においても、従来よりも密度が高く網目の細かなガラス繊維マット材13を陶板12に接着するのに十分な量の合成樹脂材14をガラス繊維マット材13に浸透させることができる。
【0076】
[変形例4]
本変形例では、図5(B)に示すように、凸部47の突出端(先端面)48が正方形であって、かつ突出端48の一辺が斜め方向に沿う例を説明する。斜め方向は、軸線方向18及び周方向19に対して傾斜する方向である。なお、以下に説明する構成以外の構成は、実施形態で説明した構成と同一である。
【0077】
凸部47の突出端(先端面)48は、実施形態と同様に一辺の長さがAである正方形である。複数の突出端48は、軸線方向18、周方向19、及び斜め方向において相互に離間して並んでいる。
【0078】
軸線方向18における2つの突出端48間の距離C9は、長さAより短い。また、周方向19における2つの突出端48間の距離C10は、距離C9と同一であって、長さAより短い。
【0079】
本変形例においても、従来よりも密度が高く網目の細かなガラス繊維マット材13を陶板12に接着するのに十分な量の合成樹脂材14をガラス繊維マット材13に浸透させることができる。
【0080】
[その他の変形例]
凸部47は、突出端48が正方形状や長方形状や円形状の他、楕円状など他の形状となるように形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10・・・建材製造装置
11・・・建材
12・・・陶板
13・・・ガラス繊維マット材
14・・・合成樹脂材
16・・・幅方向
17・・・搬送向き
18・・・軸線方向
19・・・周方向
20・・・搬送装置
30・・・樹脂配置装置
32・・・ノズル
40・・・展開装置
41・・・押圧ローラ
45・・・軸部材
46・・・シート材
47・・・凸部
48・・・突出端
50・・・加熱炉
61・・・鉄芯
62・・・ライニング材
図1
図2
図3
図4
図5