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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】配送用棚及び配送車両
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20240723BHJP
   B65G 1/06 20060101ALI20240723BHJP
   B62B 3/00 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
B65G1/00 501C
B65G1/06 M
B65G1/06 511A
B62B3/00 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021018467
(22)【出願日】2021-02-08
(65)【公開番号】P2022121226
(43)【公開日】2022-08-19
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】岩本 国大
(72)【発明者】
【氏名】糸澤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】古村 博隆
(72)【発明者】
【氏名】高木 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】中本 圭昭
(72)【発明者】
【氏名】太田 順也
【審査官】小野 孝朗
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-052802(JP,A)
【文献】特開昭60-151171(JP,A)
【文献】特開平07-157021(JP,A)
【文献】特開平07-101537(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0223632(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部において、奥行き方向に延設されると共に、上下方向である所定方向に等間隔にM(但し、Mは2以上の整数)段並設されたM対の支持体と、
前記M対の支持体のそれぞれに沿って、スライド可能に支持されつつ、収容された通函をロックするロック機構と、を備え、
予め規定された1又は複数のサイズの通函の全てを収容可能な配送用棚であって、
前記ロック機構は、
前記M対の支持体のそれぞれに設けられ、所定の回転角度において開錠するM個の回転式ロック本体部と、
前記M個の回転式ロック本体部を互いに連結し、前記M個の回転式ロック本体部の回転を連動させる連結部材と、を備え、
前記M個の回転式ロック本体部のそれぞれにおいて、開錠する前記所定の回転角度が異なると共に、前記M個の回転式ロック本体部が、1つの駆動源によって回転駆動される、
配送用棚。
【請求項2】
前記支持体の上を、前記通函から前記所定方向と直交する直交方向の外側に突出した突出部が摺動し、
前記突出部は、施錠させる場合に前記回転式ロック本体部と係合し且つ開錠させる場合に前記回転式ロック本体部と非係合となる切欠き部を有する、
請求項1に記載の配送用棚。
【請求項3】
前記M個の回転式ロック本体部は、いずれも共通する他の所定の回転角度において開錠する、
請求項1又は2に記載の配送用棚。
【請求項4】
前記筐体の前記所定方向と直交する方向に通函がL列(但し、Lは1以上の整数)収容可能となっており、
列毎に、前記M対の支持体と、前記1つの駆動源により前記M個の回転式ロック本体部が駆動される前記ロック機構と、を備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の配送用棚。
【請求項5】
前記連結部材はベルトを含む、
請求項1~のいずれか1項に記載の配送用棚。
【請求項6】
前記連結部材はギヤを含む、
請求項1~のいずれか1項に記載の配送用棚。
【請求項7】
棚を備えた配送車両であって、
前記棚は、筐体と、前記筐体の内部において、奥行き方向に延設されると共に、上下方向である所定方向に等間隔にM(但し、Mは2以上の整数)段並設されたM対の支持体と、前記M対の支持体のそれぞれに沿って、スライド可能に支持されつつ、収容された通函をロックするロック機構と、を有し、予め規定された1又は複数のサイズの通函の全てを収容可能な棚であり、
前記ロック機構は、
前記M対の支持体のそれぞれに設けられ、所定の回転角度において開錠するM個の回転式ロック本体部と、
前記M個の回転式ロック本体部を互いに連結し、前記M個の回転式ロック本体部の回転を連動させる連結部材と、を有し、
前記M個の回転式ロック本体部のそれぞれにおいて、開錠する前記所定の回転角度が異なると共に、前記M個の回転式ロック本体部が、1つの駆動源によって回転駆動される、
配送車両。
【請求項8】
前記支持体の上を、前記通函から前記所定方向と直交する直交方向の外側に突出した突出部が摺動し、
前記突出部は、施錠させる場合に前記回転式ロック本体部と係合し且つ開錠させる場合に前記回転式ロック本体部と非係合となる切欠き部を有する、
請求項に記載の配送車両。
【請求項9】
前記M個の回転式ロック本体部は、いずれも共通する他の所定の回転角度において開錠する、
請求項又はに記載の配送車両。
【請求項10】
前記棚は、
前記筐体の前記所定方向と直交する方向に通函がL列(但し、Lは1以上の整数)収容可能となっており、
列毎に、前記M対の支持体と、前記1つの駆動源により前記M個の回転式ロック本体部が駆動される前記ロック機構と、を備える、
請求項のいずれか1項に記載の配送車両。
【請求項11】
前記連結部材はベルトを含む、
請求項~1のいずれか1項に記載の配送車両。
【請求項12】
前記連結部材はギヤを含む、
請求項~1のいずれか1項に記載の配送車両。
【請求項13】
自律走行車両である、
請求項~1のいずれか1項に記載の配送車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配送用棚及び配送車両に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の配送の自動化、効率化が求められている。また、物品を通函(「通い箱」とも呼ばれる)に収容して配送する手法が広く知られている。特許文献1には、収納部に収納された物品の前方側の端部にロック機構が配置された物品搬送設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-145117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、予め規定された1又は複数のサイズの通函を、筐体の内部において奥行き方向に延設されると共に上下方向又は左右方向に等間隔に並設された複数対の支持体のそれぞれに沿ってスライド可能に支持しつつ収容可能な配送用棚及び配送車両を開発してきた。
【0005】
その中で、発明者らは、棚に収容した通函を独立して施錠/開錠可能なロック機構について検討してきた。例えば一対の支持体毎にソレノイドロック等の電気錠を設けることが考えられるが、各電気錠が駆動源(アクチュエータ等)を備えるため、配送用棚及び配送車両の製造コストが増大してしまう問題があった。
【0006】
例えば、特許文献1に記載の物品配送設備は、収納部に収納される物品のそれぞれついてロック機構が設けられる。よって、この物品配送設備において物品のそれぞれに対応する収納部のそれぞれにソレノイドロックを設けた場合、各ソレノイドロックが駆動源を必要とすることから製造コストが増大してしまう。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みなされたものであり、予め規定された1又は複数のサイズの通函の全てを収容可能な棚において、製造コストをできるだけ抑え、各通函を独立して施錠/開錠させることが可能な配送用棚及び配送車両を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る配送用棚は、
筐体と、
前記筐体の内部において、奥行き方向に延設されると共に、上下方向又は左右方向のいずれか一方である所定方向に等間隔にM(但し、Mは2以上の整数)段並設されたM対の支持体と、
前記M対の支持体のそれぞれに沿って、スライド可能に支持されつつ、収容された通函をロックするロック機構と、を備え、
予め規定された1又は複数のサイズの通函の全てを収容可能な配送用棚であって、
前記ロック機構は、
前記M対の支持体のそれぞれに設けられ、所定の回転角度において開錠するM個の回転式ロック本体部と、
前記M個の回転式ロック本体部を互いに連結し、前記M個の回転式ロック本体部の回転を連動させる連結部材と、を備え、
前記M個の回転式ロック本体部のそれぞれにおいて、開錠する前記所定の回転角度が異なると共に、前記M個の回転式ロック本体部が、1つの駆動源によって回転駆動される、ものである。
【0009】
また、本開示の一態様に係る配送車両は、
棚を備えた配送車両であって、
前記棚は、筐体と、前記筐体の内部において、奥行き方向に延設されると共に、上下方向又は左右方向のいずれか一方である所定方向に等間隔にM(但し、Mは2以上の整数)段並設されたM対の支持体と、前記M対の支持体のそれぞれに沿って、スライド可能に支持されつつ、収容された通函をロックするロック機構と、を有し、予め規定された1又は複数のサイズの通函の全てを収容可能な棚であり、
前記ロック機構は、
前記M対の支持体のそれぞれに設けられ、所定の回転角度において開錠するM個の回転式ロック本体部と、
前記M個の回転式ロック本体部を互いに連結し、前記M個の回転式ロック本体部の回転を連動させる連結部材と、を有し、
前記M個の回転式ロック本体部のそれぞれにおいて、開錠する前記所定の回転角度が異なると共に、前記M個の回転式ロック本体部が、1つの駆動源によって回転駆動される、ものである。
【0010】
上記のように、本開示の一態様では、予め規定された1又は複数のサイズの通函の全てを収容可能な棚において、ロック機構が、M対の支持体のそれぞれに設けられ、所定の回転角度において開錠するM個の回転式ロック本体部と、M個の回転式ロック本体部を互いに連結し、M個の回転式ロック本体部の回転を連動させる連結部材と、を備える。そして、M個の回転式ロック本体部のそれぞれにおいて、開錠する所定の回転角度が異なると共に、M個の回転式ロック本体部が、1つの駆動源によって回転駆動される。M個の回転式ロック本体部のそれぞれにおいて、開錠する所定の回転角度が異なるため、1つの駆動源によってM個の回転式ロック本体部を連動させて回転駆動しても、1つの通函のみをロック解除(開錠)できる。このように、本発明の一態様におけるロック機構では、1つの駆動源によってM個の回転式ロック本体部を連動させて回転駆動するため、棚の製造コストをできるだけ抑え、各通函を独立して施錠/開錠させることができる。
【0011】
前記支持体の上を、前記通函から前記所定方向と直交する直交方向の外側に突出した突出部が摺動し、前記突出部は、施錠させる場合に前記回転式ロック本体部と係合し且つ開錠させる場合に前記回転式ロック本体部と非係合となる切欠き部を有するようにしてもよい。
このような構成によって、通函の突出部を利用してロックを行うことができる。
【0012】
前記M個の回転式ロック本体部は、いずれも共通する他の所定の回転角度において開錠するようにしてもよい。
このような構成によって、全ての通函についての同時ロック解除を、別途専用の機構を設けることなく、回転式ロック本体部の変更だけで実施することができる。
【0013】
前記M対の支持体は、前記筐体の前記所定方向と直交する方向にm列(但し、Mは4以上の整数、mは2以上の整数でMの約数)に分けて並設され、且つ、列毎に等間隔にM/m段並設されることで、合計M段並設されているようにしてもよい。
このような構成により、m列に分けて通函を収容する場合にも、1つの駆動源で各通函を独立して施錠/開錠させることができる。
【0014】
あるいは、前記棚は、前記筐体の前記所定方向と直交する方向に通函がL列(但し、Lは1以上の整数)収容可能となっており、列毎に、前記M対の支持体と、前記1つの駆動源により前記M個の回転式ロック本体部が駆動される前記ロック機構と、を備えるようにしてもよい。
このような構成により、L列に分けて通函を収容する場合に、列毎に1つの駆動源で各通函を独立して施錠/開錠させることができる。
【0015】
前記連結部材はベルトを含むようにしてもよい。
このような構成により、筐体における連結部材の配置の制限を少なくすることができる。
【0016】
前記連結部材はギヤを含むようにしてもよい。
このような構成により、所定の回転角度の制御を精確に行うことができるようになる。
【0017】
前記配送車両は、自律走行車両でもよい。このような構成によって、配送コストを低減できる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、予め規定された1又は複数のサイズの通函の全てを収容可能な棚において、製造コストをできるだけ抑え、各通函を独立して施錠/開錠させることが可能な配送用棚及び配送車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係る配送車両の一例を示す模式側面図である。
図2】第1の実施形態に係る配送車両に収容される通函の一例を示す模式斜視図である。
図3】第1の実施形態に係る配送車両においてレール上に通函を収容する様子の一例を示す模式側面図である。
図4】第1の実施形態に係る配送車両におけるロック機構の一例を示す模式側面図である。
図5図4のロック機構における1つの通函に対するロックの様子を示す模式側面図である。
図6図4のロック機構における1つの通函に対するロックの様子を示す模式断面図である。
図7図4のロック機構におけるプーリの回転角度に対する施錠/開錠状態を示す表である。
図8】第2の実施形態に係る配送車両の一例を示す模式側面図である。
図9】第3の実施形態に係る配送車両の模式側面図である。
図10】移送ロボットの模式側面図である。
図11】第4の実施形態に係る配送用棚の一例を示す模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る配送車両の一例を示す模式側面図である。なお、当然のことながら、図1及びその他の図に示した右手系xyz直交座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、z軸正向きが鉛直上向き、xy平面が水平面であり、図面間で共通である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る配送車両1は、棚10及び2対の車輪W11,W12を備え、物品を搬送する車両である。2対の車輪W11,W12は棚10の筐体11の下側に回転可能に固定されており、モータ等の駆動源(不図示)によって駆動される。無論、車輪の数は問わず、また車輪を備えずとも高圧空気により浮揚させて移動させる構成など、他の構成を採用することもできる。
【0023】
ここで、配送車両1は、棚10等に関する各種制御を行う制御部(図示せず)を備えることができる。この各種制御には、配送車両1における車輪W11,W12の駆動の制御や、後述するロック機構30によるロック(施錠)/ロック解除(開錠)の制御も含むことができる。この制御部は、それぞれ例えばCPU(Central Processing Unit)などの演算部と、各種制御プログラムやデータ等が格納されたRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の記憶部と、を備えることができる。すなわち、この制御部はコンピュータとしての機能を有することができる。この制御部は集積回路を含んで構成されることができる。
【0024】
本実施形態に係る配送車両1が備える棚10は、予め規定された複数サイズの通函21,22,23等の全てを収容可能な棚である。なお、図1は側面図であるが、理解を容易にするため、通函21~23をハッチングして示しており、後述する図4図8図9図11も同様である。
【0025】
配送対象の物品は、その物品が収容できるサイズの通函に収容されて配送されることになる。通函21,22,23等の収容される通函は、何ら限定されないが、例えばプラスチック製、段ボール製、木製、金属製等であり、繰り返し利用される。なお、物品は、通函そのものとすることもできるが、通常、通函に収納された状態で配送されることになる。
【0026】
図1に示すように、棚10は、筐体11、及び筐体11の内部において、奥行き方向(x軸方向)に延設されると共に、高さ方向(z軸方向)に等間隔に並設されたM対のレール13を備えている。なお、配送車両1において筐体11は車体の一部を構成する。レール13は支持体の一例であり、ここではレール13が1列につき3対で2列が設けられた例(合計6対のレール13が設けられた例)を挙げている。但し、Mは2以上の整数とし、M対の支持体が、筐体11の内部において、奥行き方向に延設されると共に高さ方向(上下方向)に等間隔(以下、間隔B)にM段になるように並設されていればよい。
【0027】
また、2列の例を挙げているが、列数mは、2以上の整数でMの約数であればよく、この場合、Mが4以上の整数となる。つまり、M対のレール13は、筐体11の上下方向と直交する直交方向(幅方向)にm列に分けて並設されることができ、その場合、列毎に等間隔BにM/m段併設されることで、合計M段併設されるようにしておけばよい。無論、M対のレール13は、1列でM段になるように、つまり上下方向に等間隔BにM段になるように併設されることもできる。
【0028】
本実施形態では、予め規定された複数サイズの通函21~23は、いずれもy軸方向の幅及びx軸方向の奥行きが共通である。他方、通函21,22と通函23とは、z軸方向の高さが異なる。最もサイズの小さい通函21,22の高さは、z軸方向において隣接するレール13同士の間隔、つまり間隔Bに合わせて設計されている。当然のことながら、通函21,22の高さは、当該レール13同士の間隔Bよりも小さい。通函23の高さは、通函21の高さの約3倍になるように設計されている。すなわち、予め規定された複数サイズの通函の高さは、z軸方向において隣接するレール13同士の間隔の約整数倍になるように設計されている。
【0029】
なお、図1に示した本構成例では、通函のサイズが、2種類であるが、3種類以上でもよい。図1の例では、通函21~23の他に、例えば通函21の高さの約2倍の高さを有する通函を別途設けてもよい。
【0030】
また、棚10には、補助部14もレール13に対向するように設けられている。ここで、レール13及び補助部14は、筐体11の内面及び仕切板12cから略垂直に立ち上がるように設けられている。
【0031】
また、2列で合計6対のレール13を配設するため、棚10は列を仕切るための仕切板12cを備える。図1に示すように、仕切板12cは、筐体11を構成する前面板12b及び背面板12aに平行に(すなわちxz平面に平行に)、かつ、筐体11の一方の側面から他方の側面に至るように、設けられている。ここで、筐体11の前面板12b及び背面板12aと隣接する仕切板12cとの間隔(並びに、mが3以上の整数である場合には仕切板同士の間隔)が等しくなるように仕切板12c等の仕切板が設けられている。
【0032】
このように、棚10において、M対のレール13は、筐体11の内面(前面板12b、背面板12a)及び仕切板12cでなるm列で、奥行き方向(x軸方向)に延設されると共に、高さ方向(z軸方向)に等間隔Bに並設されている。これにより、図1で示す本構成例では、筐体11の内部の幅とほぼ同じ幅で且つ高さ方向の間隔Bのほぼ整数倍数(但し、この例では1倍~3倍)の高さの通函であれば、各レール13,13に沿ってどのようなサイズの通函でも全て収容可能となる。よって、本構成例では、予め規定された複数サイズの通函21~23を用いた配送を効率化できる。
【0033】
次に、本構成例における通函のレール13を用いた収容について具体的に説明する。
まず、筐体11は、z軸正方向側に設けられた天板、z軸負方向側に設けられた底板、y軸正方向側に設けられた前面板12b、y軸負方向側に設けられた背面板12aが一体に形成された構成を有している。すなわち、筐体11の両側面は、通函21~23を出し入れ可能なように開放されている。また、開放されている筐体11の両側面に、開閉可能な扉が設けられていてもよい。なお、筐体11の一方の側面は閉じられていてもよい。
【0034】
そして、一対のレール13は、筐体11の前面板12b、仕切板12cのそれぞれからあるいは背面板12a、仕切板12cのそれぞれから、略垂直に立ち上がるように設けられている。なお、レール13は、通函21~23を支持できればよいため、奥行き方向(x軸方向)に不連続に延設されていてもよい。あるいは、レール13に代えて、短尺の支持体が、奥行き方向(x軸方向)に整列するように配置されていてもよい。さらに、支持体が磁石から構成されており、通函21~23の一部又は全体を吸引するような構成でもよい。
【0035】
通函21の出し入れは、隣接して対向する一対のレール13上を、通函21から幅方向外側に突出した突出部21sa,21sbが摺動することによって可能となる。ここで、通函21の突出部21sa,21sbはレール13に載置された状態で収容されるが、この収容を行うに際し、レール13とでそれぞれ突出部21sa,21sbを挟持できるように押さえる補助部14が設けられている。補助部14は、レール13とz軸方向において対向するように設けられている。突出部21sa,21sbのそれぞれに対応する一対のレール13、一対の補助部14はいずれも、背面板12a、仕切板12cのそれぞれから略垂直に立ち上がるように設けられている。なお、通函22,23の出し入れについても同様であり、レール13上を摺動することによりなされる。
【0036】
次に、本実施形態の主たる特徴の一つであるロック機構30について説明する。
本実施形態では、棚10は、M対のレール13のそれぞれに沿ってスライド可能に支持されつつ収容された通函21~23をロックするロック機構30を備える。
【0037】
ロック機構30の詳細について説明するに先立ち、まず図2を参照して、ロック機構30に対応する通函21の構成例の詳細について説明する。なお、通函22,23等の他の通函についてもそのサイズ以外は基本的に同様の形状を採用することが、配送作業上、望ましい。図2は、第1の実施形態に係る配送車両1の棚10に収容される通函の一例を示す模式斜視図である。
【0038】
図2でその形状を例示するように、通函21はレール13上の摺動を可能にする突出部(フランジ部)21sa,21sbを有することができる。つまり、通函21は、レール13の上を、通函21から幅方向外側に突出した突出部21sa,21sbが摺動するように構成されることができる。ここで、幅方向は、上下方向と直交する方向であり、無論、レール13上を摺動するため、奥行き方向とも直交する方向を指す。
【0039】
さらに、図2に示すように、突出部21saには切欠き部21aが設けられている。ロック機構30では、後述するように、このような通函21の突出部21saを利用してロックを行う。なお、図示しないが、通函21は、突出部21sa,21sbまで覆うような蓋部を有することができ、そのような蓋部を設ける場合には、蓋部においても、突出部21saの切欠き部21aに対応する位置に切欠き部を設けておき、その切欠き部と切欠き部21aとの厚みに合わせてロック機構30を構成するとよい。
【0040】
無論、通函22,23は、通函21と区別なくレール13上に収容されるものであるため、同様に、同じ位置に切欠き部21aが設けられた突出部が設けられることになる。但し、ロック機構30の構成によっては、反対側の突出部(通函21の場合には突出部21sb)に切欠き部が設けられることもある。なお、図2では、便宜上、切欠き部21aが設けられる領域の他の例として、それぞれ領域21b,21cを図示しているように、切欠き部21aの位置は領域21b,21cなどであってもロック機構30の配置に対応していればよい。いずれの場合でも通函21を定位置までスライドさせた状態でロックを行うことができ、途中の状態でロックがなされることがなくなる。
【0041】
また、通函21~23には、持ち運び用の取っ手が設けられていてもよい。この持ち運び用の取っ手は、通函21~23を引き出しとして用いるための引き出し用の取っ手とは異なる。通函21について説明すると、この取っ手は、例えば突出部21sa,21sbのそれぞれの中央付近(突出部21saの場合、領域21cの付近)に設けた、手を入れて把持することができる程度の大きさの貫通穴とすることができる。
【0042】
次に、図3を参照しながら、レール13及び補助部14の構造の例と通函21の収容方法について説明する。図3は、配送車両1においてレール13上に通函21を収容する様子の一例を示す模式側面図である。なお、図3においては、上段のレール13及び補助部14のみを図示し、他を省略している。
【0043】
図3に示すように、レール13は、ローラレールであって、複数のローラ13rを備えている。ローラ13rは、例えばプラスチック製である。ローラ13rによって、通函21の突出部21saの下面とレール13との摩擦係数を小さくできると共に、突出部21saの摺動に伴う摩耗粉の発生を抑制できる。
【0044】
また、図3の中段に示すように、補助部14は、レール13とで突出部21saを挟持できるように押さえる部位であり、レール13と同様にローラレールとすることができ、例えばプラスチック製の複数のローラ14rを備えることができる。ローラ14rによって、通函21の突出部21saの上面と補助部14との摩擦係数を小さくできると共に、突出部21saの摺動に伴う摩耗粉の発生を抑制できる。なお、通函21の収容時には、突出部21sbも突出部21saと同様に、レール13と補助部14とにより挟持された状態となっている。
【0045】
次に、通函21の筐体11への挿入の手順について説明する。まず、図3の上段に示す通函21の未挿入状態から、図3の中段に示すように通函21をレール13上で摺動させながら挿入される。通函21は、レール13上を摺動させる間、ロックが解除された状態となっている。そのため、挿入開始前及び挿入中において、ロック機構30がロックを解除した状態となっている。
【0046】
他方、図3の下段に示すように、通函21がレール13上における所定の位置(収容位置)に停止した状態で、ロック機構30を作動させ通函21をロックさせることができる。また、通函21に蓋部(不図示)を設けていた場合には同時に通函21の蓋部もロックされる。当然のことながら、ロック機構30を通函21について解除すれば、図3の中段に示したように、通函21を再度移動させることができる。なお、他の通函22,23についても同様である。
【0047】
次に、図4図7を参照しながらロック機構30の詳細について説明する。図4は配送車両1におけるロック機構30の一例を示す模式側面図である。図5は、図4のロック機構30における左上段に収容される1つの通函21に対するロックの様子を示す模式側面図で、図6は、その様子を示す模式断面図である。図7は、図4のロック機構30におけるプーリの回転角度に対する施錠/開錠状態を示す表である。
【0048】
ロック機構30は、図4に示すように、M(本構成例ではM=6)対のレール13のそれぞれに設けられ、所定の回転角度において開錠するM個の回転式ロック本体部36-1~36-6を備える。さらに、ロック機構30は、M個の回転式ロック本体部36-1~36-6を互いに連結し、M個の回転式ロック本体部36-1~36-6の回転を連動させる連結部材33,35-1,35-2を備える。なお、回転式ロック本体部及び連結部材はここで例示するものに限らず、同様の機能をもつ他の構造を採用することもできる。
【0049】
そして、ロック機構30は、M個の回転式ロック本体部36-1~36-6のそれぞれにおいて、開錠する所定の回転角度が異なる(互いに異なる所定の回転角度で開錠させる)と共に、M個の回転式ロック本体部36-1~36-6が、1つの駆動源によって回転駆動される。ここでは、1つの駆動源として、回転軸32を有するモータ31を例に挙げて説明するが、他のアクチュエータ等、これに限らない。また、回転式ロック本体部36-1~36-6は切欠き部(切欠き部38-1等)付のプレートが取り付けられたプーリとすることができ、以下、この例を挙げるが、これに限らない。なお、このプレートは図示したように円盤状とすることができるが、多角形とすることもできる。
【0050】
まず、プーリ36-1~36-6にモータ31からの動力を伝達する機構(伝達機構)について説明する。この伝達機構は、ロック機構30の一部であって上記連結部材を含む。この伝達機構は、モータ31の回転軸32と、従動回転軸34-1と、回転軸32から最も離れた位置の従動回転軸34-2と、ベルト33と、ベルト35-1と、ベルト35-2と、を有することができる。このような伝達機構は、M個の回転式ロック本体部36-1~36-6を接続し、同期させてモータ31により駆動させるための機構である。
【0051】
例示する伝達機構の詳細について説明する。ベルト33は、回転軸32と従動回転軸34-2とによって張架され、モータ31の動力を従動回転軸34-2に伝達する。従動回転軸34-1は、回転軸32と従動回転軸34-1との間においてベルト33により動力が伝達できるように配される。従動回転軸34-1,34-2では、ベルト33が架けられる軸方向位置とずらした軸方向位置において、それぞれベルト35-1,35-2が架けられており、動力がそれぞれベルト35-1,35-2に伝達される。このようにして、6個の回転式ロック本体部36-1~36-6は同期して駆動されることができる。
【0052】
プーリ36-1は、左側上段の収容場所の左端側に設けられるもので、切欠き部38-1、共通切欠き部38-0をその外周に有するとともに、ベルト35-1を介してその回転軸(プーリ回転軸)37-1が駆動され、この駆動により切欠き部38-1,38-0の位置(位相)が変わる。プーリ36-1は、突出部21saの切欠き部21aと、施錠させる場合に係合し且つ開錠させる場合に非係合となる。
【0053】
図5及び図6の左側で例示するように、モータ31の駆動制御により、通函21の突出部21saの切欠き部21aの位置と共通切欠き部38-0の位置とを一致させた状態とすることができる。この状態では、図6の左側に矢印で示す方向(x軸正方向)に通函21を引き出すことができる。
【0054】
さらに、モータ31の駆動制御により図5の矢印の方向にベルト35-1を移動させると、図5及び図6の中央の図で例示するように、切欠き部21aの位置がプーリ36-1における共通切欠き部38-0及び切欠き部38-1のいずれとも一致しない状態となる。この状態では、切欠き部21aのx軸負方向側とプーリ36-1とが係合し、通函21をx軸正方向に引き出せない。さらに、図5及び図6の右側で例示するように、モータ31の駆動制御により、切欠き部21aの位置と切欠き部38-1の位置とを一致させた状態とすることができる。この状態では、図6の右側に矢印で示す方向(x軸正方向)に通函21を引き出すことができる。
【0055】
このように、レール13の上を、通函21から幅方向の外側に突出した突出部21saが摺動し、突出部21saは、施錠させる場合にプーリ36-1と係合し且つ開錠させる場合にプーリ36-1と非係合となる切欠き部21aを有するようにしてもよい。このような構成によって、通函21の突出部21saを利用してロックを行うことができる。
【0056】
プーリ36-1について説明したが、他のプーリ36-2~36-6についても基本的に同様の構成であり、その設置位置と、切欠き部38-2~38-6の位相に相当する切欠き方向(上記所定の回転角度)とが、切欠き部38-1と異なるだけである。切欠き部プーリ36-2、36-3は、それぞれ左側中段、左側下段の収容場所の左端側に設けられるもので、ベルト35-1を介してそれぞれプーリ回転軸37-2、37-3が駆動される。プーリ36-4、36-5、36-6はそれぞれ、右側上段、右側中段、右側下段の収容場所の左端側に設けられるもので、ベルト35-2を介してそれぞれプーリ回転軸37-4、37-5、37-6が駆動される。
【0057】
切欠き部38-1~38-6の位相は互いに異なり、よって、通函21の収容場所によって切欠き部21aと非係合になる位相が異なることになる。換言すれば、図4の通函21~23の切欠き部のうちそれぞれ切欠き部38-1,38-3,38-4と非係合になる位相が異なり、個別に非係合とすることができる。図4図6の例では、図7に示すように、プーリ36-1~36-6の位相(回転角度)を、図4の状態を0°として、モータ31の駆動制御により45°進めることで、左上段の収容場所を開錠し他を施錠することができる。同様に、90°、135°、315°、270°、225°進めることで、それぞれ左中段、左下段、右上段、右中段、右下段の収容場所を開錠し他を施錠することができる。
【0058】
一方で、各プーリ36-1~36-6における共通切欠き部38-0の位相は同じであり、当該位相では通函21をどの収容場所に収容した場合でも切欠き部21aと非係合になる位相が同じで、同時に全ての収容場所で非係合とすることができる。換言すれば、図4の通函21~23の切欠き部のうちそれぞれのプーリ36-1,36-3,36-4の切欠き部38-0と非係合になる位相が同じであり、一度に非係合とすることができる。図4図6の例では、図7に示すように、プーリ36-1~36-6の位相(回転角度)を、図4の状態を0°として、モータ31の駆動制御により0°とすることで、全ての列、段の収容場所で非係合になり開錠することができる。
【0059】
このように、6個のプーリ36-1~36-6は、いずれも共通する他の所定の回転角度において開錠するように構成されている。このような構成によって、全ての通函についての同時ロック解除を、別途専用の機構を設けることなく、回転式ロック本体部36-1~36-6の変更だけで実施することができる。
【0060】
また、図4図6の例では、図7に示すように、プーリ36-1~36-6の位相(回転角度)を、図4の状態を0°として、モータ31の駆動制御により180°とすることで、全ての列、段の収容場所で係合になり施錠することができる。但し、精度が良ければ、図7で示した回転角度(但し180°を除く)を除き、全ての列、段の収容場所で施錠を行うこと、つまり通函を引き出し不能にすることができる。
【0061】
以上のように、ロック機構30では、各プーリにおける切欠き部を設ける方向(回転角度に対応)を異ならせ、各プーリを同期させて回転角度を制御することで、通函のロック/ロック解除の状態を選択することができる。また、図3図7の例に限らず、全てのプーリにおける切欠き部(切欠き部38-0以外)の位相を互いに被らないようにずらして接続しておき、モータ31の入力位相を制御することで、任意の位置にある通函のみロックを解除することができる。そして、各プーリに追加で位相の合った共通切欠き部38-0を設けておくことで、その位相(この例では0°)では全通函の同時ロック解除が可能となる。さらに、各プーリの切欠き部38-1~38-6や共通切欠き部38-0が全く被らない位相を設ければ、その位相では全通函の同時ロックが可能となる。
【0062】
図3図7と異なる例としては、例えば、全プーリに0°の位置に切欠き部を設け、さらに10°ずつずらした切欠き部をそれぞれ設けておけば、全ての収容場所で開錠できる全開放モード、全ての収容場所で施錠できる全ロックモードに加えて、34個の通函の任意のロック解除が可能になる。また、各プーリの同期駆動の精度が良ければ、各プーリの切欠き部のズレ量を減らすことで、更に多くの通函についての任意のロック解除が1つのモータ31で実現可能となる。逆に、ここの精度に基づき、1つのモータ31で制御可能な通函の数が決まることになる。
【0063】
また、共通切欠き部38-0を各プーリ36-1~36-6に設けた例を挙げたが、これに限らず、他の機構により全ての通函(全ての収容場所)のロックを解除するようにしてもよい。例えば、ロック機構30の全体をy軸負方向に移動させるような機構を設けておき、全体をy軸負方向に移動させる制御を行うことでも全通函の同時ロック解除が可能となる。この場合にも、全施錠は180°等、各プーリ36-1~36-6での設定角度以外の角度であれば可能である。
【0064】
また、プーリ36-1~36-3を左列の収容場所の左端側に設け、プーリ36-4~36-6を右列の収容場所の左端側に設けた例を挙げたが、これに限らない。例えば、プーリ36-1~36-3を左列の収容場所の左端側に設け、プーリ36-4~36-6を右列の収容場所の右端側に設けること、あるいはプーリ36-1~36-3を左列の収容場所の右端側に設け、プーリ36-4~36-6を右列の収容場所の左端側又は右端側に設けることもできる。
【0065】
また、ベルト33、35-1,35-2のように、ロック機構30の連結部材はベルトを含むことで、筐体11における連結部材の配置の制限を少なくすることができ、また図4のようにm列に分けて通函を収容する場合にも全列に対し1つの駆動源で各通函を独立して施錠/開錠させる構成を採用することができる。
【0066】
また、ベルト33、ベルト35-1,35-2は、いずれもその長手方向の断面が長方形のベルト(平ベルト)とし、各プーリ36-1~36-6はその平ベルトから動力を伝達されることができる。
【0067】
但し、ベルト33、ベルト35-1,35-2は、いずれも平ベルトの内側にリブ(歯)を付けた歯付ベルトとすることが好ましく、この場合、それぞれ従動回転軸34-1,34-2、各プーリ36-1~36-6はギヤ(歯車)を有することになる。この場合、ベルト33については、従動回転軸34-1,34-2と噛み合って動力を伝達することができるため、長時間安定して正確な動力の伝達が可能となり、長時間、位相のずれの心配がなくなる。また、各プーリ36-1~36-6についても、それらと対応する歯付ベルト56-1又は56-2とが噛み合って動力を伝達するため、長時間安定して正確な動力の伝達が可能となり、長時間、位相のずれの心配がなくなる。
【0068】
このように、ロック機構30の連結部材はギヤを含むようにしてもよく、このような構成により、上記所定の回転角度や上記他の所定の回転角度の制御を精確に行うことができるようになる。
【0069】
以上に説明したように、本実施形態に係る配送車両1では、ロック機構30が上述のようなM個の回転式ロック本体部と連結部材とを備え、M個の回転式ロック本体部のそれぞれにおいて、開錠する所定の回転角度が異なると共に、M個の回転式ロック本体部が、1つの駆動源によって回転駆動される。そして、ロック機構30では、M個の回転式ロック本体部のそれぞれにおいて、開錠する所定の回転角度が異なるため、1つの駆動源によってM個の回転式ロック本体部を連動させて回転駆動しても、1つの通函のみをロック解除(開錠)できる。
【0070】
そして、ロック機構30では、1つの駆動源によってM個の回転式ロック本体部を連動させて回転駆動するため、棚の製造コストをできるだけ抑え(それにより配送車両の製造コストをできるだけ抑え)、各通函を独立して施錠/開錠させること、つまり1つの駆動源によって特定の通函のみを開錠できる。
【0071】
また、mが2である例を挙げて、M対の支持体が、筐体11の幅方向にm列に分けて並設され、且つ、列毎に等間隔にM/m段並設されることで、合計M段並設されているよう構成を説明した。但し、mが1である構成に対応するように、筐体11の内部には幅方向に一列だけでM段のレール13が配される構成を採用することもできる。
【0072】
また、各列に共通の1つの駆動源を備える例を挙げたが、各列で異なる駆動源を設けることもできる。この場合、棚10は、筐体11の幅方向に通函がL列収容可能となっており、列毎に、M対の支持体と、1つの駆動源によりM個の回転式ロック本体部が駆動されるロック機構と、を備えることになる。このような構成により、L列に分けて通函を収容する場合に、列毎に1つの駆動源で各通函を独立して施錠/開錠させることができる。なお、この場合のLは2以上の整数となるが、Lは1であってもよく、その場合、上述したmが1である構成になる。
【0073】
また、この場合、支持体が配設される上下方向の間隔Bは各列で同じとすることが管理上及び配送作業上、好ましいが、間隔Bを各列で異ならせることもできる。また、この場合において、各列の幅(y軸方向の距離)は異ならせることができるが、揃えることで効率的な配送が可能となる。
【0074】
また、本実施形態において、棚10が予め規定された複数サイズの通函(例えば通函21~23)の全てを収容可能であることを前提として説明したが、無論、棚10は、予め規定された1つのサイズの通函を収容可能な棚であっても、上記1つのサイズの通函を用いた配送を効率化でき、またロック機構による効果も同様に奏する。予め規定された1つのサイズの通函を収容可能な棚を採用する場合、図示しないが、同様にいずれの列についても複数対のレール(支持体)13が高さ方向(z軸方向)に等間隔に並設されるものの、この等間隔が上記1つのサイズの通函の高さとほぼ一致するようになる。
【0075】
また、本実施形態において、M対の支持体が上下方向に等間隔にM段並設されることを前提とした。しかし、M対の支持体は左右方向(水平方向のうち奥行き方向とは垂直な方向)に等間隔にM段併設されるようにしてもよく、そのような構成においても同様の効果を奏する。つまり、M対の支持体は、筐体の内部において、奥行き方向に延設されると共に、上下方向又は左右方向のいずれか一方である所定方向に等間隔にM段並設されることができる。
【0076】
なお、このような構成の棚は、その詳細については省略するが、例えば図1の棚10を左周りに90度回転させた状態の棚であるが、通函はその開口部が上を向くものを採用すればよい。あるいは、開口部を閉じる蓋を有する通函を採用することでも通函内の物品が落ちる恐れを防ぐことができる。
【0077】
また、駆動源により電気的にプーリで例示した回転式ロック本体部が駆動されることを前提として説明したが、本実施形態は、駆動源を有さず手動で施錠/開錠を行うロック機構を採用することもできる。例えば、ロック機構30は、モータ31の代わりに、その部分に手回しのレバーを設けておくことができる。
【0078】
本実施形態では、このような手動施錠/開錠を行う構成を採用した場合でも、複数存在するロック対象に対し、上記レバーのような1つの操作部を設けておけば済み、製造コストを抑えることができる。さらに、この場合、複数の通函についての施錠/開錠の操作部を共通の領域にまとめることができるため、操作を行い易くなるといった利点もある。
【0079】
また、配送車両1は、例えば自律走行(無人走行)車両とすることができる。なお、配送車両1における棚10の奥行き方向は、車両の左右方向又は前後方向となるが、車両が自律走行車両でない場合には、一般的に前方に運転席が配設されるため奥行き方向の奥側は、左右方向又は運転席側となる。
【0080】
配送車両1を自律走行車両とすることによって、配送コストを低減できる。配送車両1は、例えば、車道はもちろんのこと、歩道等も走行可能であって、通函21~23を、降ろす場所又は移し替える場所の近傍まで配送できる。なお、例えば自律走行ができなくなった場合等には、配送車両1は遠隔操作されてもよい。また、配送者が、配送車両1を運転すると共に、配送車両1から移し替える場所まで、物品(すなわち通函21~23)を運んで移し替えてもよい。通函21~23を移し替える先は、例えば棚10と同様の棚とすることができる。
【0081】
また、通函21~23には、物品を収容すると共に例えば注文識別情報idを付し、その状態で当該物品を配送することもできる。通函21~23に付される注文識別情報idは、例えば、文字、記号、バーコード、二次元コード、FRID(Radio Frequency IDentifier)等である。配送車両1の棚10又は配送車両1の他の部位には、例えば、通函21~23に付された注文識別情報idを読み取り可能なリーダ(不図示)を備えておくことができる。これにより、配送車両1の制御部は、荷下ろしを行う通函についてのロックを、注文識別情報idを指定して解除させるような制御も可能となる。
【0082】
(第2の実施形態)
次に、図8を参照して、第2の実施形態に係る配送車両について説明する。図8は、第2の実施形態に係る配送車両の一例を示す模式側面図である。
【0083】
図8に示すように、本実施形態に係る配送車両1aは、配送車両1において列数を3に増やし、各列を開け閉めする扉41,42,43を設け、ロック機構30の代わりにロック機構30aを設けたものである。その他の構成については同様であり、その説明を省略するが、第1の実施形態で説明した様々な応用例が適用できる。
【0084】
配送車両1aの棚10aは、棚10において3列に構成したものであり、そのため追加の仕切板12dが設けられ、前面板12bと仕切板12dとの間、仕切板12dと仕切板12cとの間、仕切板12cと背面板12aとの間のそれぞれに、3対のレール13及び補助部14が設けられている。
【0085】
また、扉41、42、43は、それぞれ左列51、中央列52、右列53の通函の出し入れを防ぐために設けられることができ、その上下方向に備えたレール(図示せず)に沿って摺動させることができる。なお、図8において扉42は扉43と重なるように移動させて中央列52を開放した状態を示している。扉41~43は、いずれも隣の列にしか移動させることができないようにレールを配することもできるが、いずれの列にもずらして配せるように扉41~43用のレールを設けておくこともできる。
【0086】
但し、m列にレール13が設けられる例では(m-1)個の扉を備えること、つまり本構成例のように3列の場合に2列分の扉のみを設けておくこともできる。これは、開いた列についてはロック機構30aで通函の出し入れを制御できるためである。
【0087】
ロック機構30aは、ロック機構30とそのロックの方法自体は同じであると言えるが、左列51と中央列52との間の仕切板12cに、各段につき1つの回転式ロック本体部を設け、開錠/施錠を隣り合う2列の同段にまで及ぶように構成したものである。
【0088】
図8ではその詳細は図示しないが、例えば、図4の段毎のプーリ36-1、36-2、36-3は、仕切板12cを貫通すると共に、左列51に収容される通函(例えば通函21,22)の突出部と中央列52に収容される通函(例えば通函23)の突出部との双方の切欠き部に対し、係合/非係合を切り換えることができる大きさ(径)としておくとよい。そして、モータ31の駆動制御は、左列51に収容される通函の突出部の切欠き部と係合させる場合の位相と、中央列52に収容される通函の突出部の切欠き部と係合させる場合の位相とは180°異なるように実行されるとよい。
【0089】
なお、仕切板12dは第1の実施形態と同様に、右列53の1列分(通函24を描いた列)のみ各段につき1つの回転式ロック本体部を開錠/施錠が制御できるように設けておけばよい。但し、仕切板12dに設けるプーリは、仕切板12cに設けるプーリの切欠き部の位相とは異ならせておくとよい。無論、本実施形態におけるロック機構を、仕切板12d側を隣り合う2列を制御できるようにし、仕切板12c側を左列51の1列分のみ制御できるように構成することや、仕切板12c,12dの双方で2列を制御できるように構成することもできる。
【0090】
このような通函の出し入れを防ぐ扉41~43を設けた構成により、制御するプーリの数を低減させることができるため、1つのモータ31等の駆動源で制御可能な通函の数を更に増やすことができる。
【0091】
例えば、図8のように列数が3列の場合、プーリは2列分で良い。よって、例えば、10°刻みに位相を異ならせた34個のプーリを使用した場合には、縦の行数を17行(17段)として、1つのモータで例えば51(=34÷2×3)か所の収容場所について通函の出し入れ可/不可の制御が可能となる。
【0092】
また、図8ではx軸正方向の側面のみ図示しているが、x軸負方向の側面は扉を設けず壁としておくことで当該側面からの通函の出し入れを防ぐことができる。無論、当該側面にも同様の扉を設けておくこともでき、その場合にはx軸正方向の扉とx軸負方向の扉による左列51、中央列52、右列53の一側面又は両側面の開放状態に応じて通函の出し入れを可能/不能とすることができる。
【0093】
また、本実施形態のように、隣り合う2列共通に段毎に設けたプーリを一部又は全部(隣り合う2列全て)に採用する例は、扉を設けない第1の実施形態においても適用されることができる。つまり、隣り合う2列での回転式ロック本体部の共通化は、第1の実施形態においても2列以上の収容場所を設けた場合に適用できる。
【0094】
(第3の実施形態)
次に、図9及び図10を参照して、第3の実施形態に係る配送車両について説明する。図9は第3の実施形態に係る配送車両の模式側面図で、図10は移送ロボットの模式側面図である。
【0095】
図9に示すように、本実施形態では、配送車両1が通函21~23を配送している間、配送車両1の下側に移送ロボット70が収容され、機械的もしくは電磁気的に連結されることができる。移送ロボット70は、配送車両1が棚10と同様の配送用棚の近傍に到着した後、配送車両1からその配送用棚へ通函21~23(すなわち物品)を移送する自律走行車両である。ロック機構30を電動制御としておくことで、移送に伴う積み卸しの際に施錠/開錠を通函毎に容易に実行することができる。
【0096】
移送ロボット70は、図10に示すように、車輪W21,W22、本体部71、天板72、支柱73を備えている。2対の車輪W21,W22は本体部71の下側に回転可能に固定されており、モータ等の駆動源(不図示)によって駆動される。
【0097】
図10に示すように、伸縮可能な支柱73を介して、天板72が本体部71に連結されている。天板72は、支柱73の上端に連結されており、移送ロボット70は、天板72に通函21~23を載置して、通函21~23を移送する。支柱73は、例えばテレスコピック型の伸縮機構を有しており、モータ等の駆動源(不図示)によって伸縮される。図10において白抜き矢印で示すように、支柱73の長さを変更することによって、天板72の高さを変更できる。そのため、配送車両1におけるあらゆる収容場所から、配送用棚におけるあらゆる収容場所へ通函21~23を移送できる。
【0098】
ここで、移送ロボット70は、例えばマニピュレータ(不図示)を備えており、当該マニピュレータによって配送車両1から天板72上に通函21~23を移動させ、移送する。そして、当該マニピュレータによって、天板72上の通函21~23を配送用棚に移動させる。
【0099】
なお、図9に示した構成において、移送ロボット70が動力源となって、配送車両1を移動させてもよい。すなわち、配送車両1が、車輪W11、W12を駆動する駆動源を有していなくてもよい。この際、複数(例えば2台)の移送ロボット70がy軸方向に並んで、配送車両1を移動させてもよい。他方、移送ロボット70は、配送車両1に搭載されてもよいし、配送車両1と伴走してもよい。
【0100】
その他の構成は、第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。また、本実施形態でも、例えば図8の配送車両1aを採用するなど、第1、第2の実施形態で説明した様々な応用例が適用できる。
【0101】
(第4の実施形態)
図11は、第4の実施形態に係る配送用棚の一例を示す模式正面図である。
図11に示すように、本実施形態に係る配送用棚10bは、図1及び図9の配送車両1に搭載した棚10と同じ構成を採用することができ、その詳細を省略するが、筐体11、仕切板12c、レール13、補助部14、及びロック機構30を備えることができる。
【0102】
本実施形態に係る配送用棚10bは、配送車両1から通函21~23を移す先として設置しておくこと、あるいは配送車両1で配送させる通函21~23を事前に保管する棚として設置しておくことができる。すなわち、配送用棚10bは、通函21~23を用いた物品の配送における受取用としても発送用としても使用できる。なお、配送用棚10bにおいて、物品が取り出されて空になった通函21~23は、配送車両1によって適宜回収されることができる。
【0103】
また、配送用棚10bは、屋外に設けられることができる。屋外の例として、配送用棚10bは、集合住宅の玄関部や廊下などに設置されていてもよい。さらに、配送用棚10bは、家屋に設置されればよく、屋内に設けられていてもよい。なお、家屋は集合住宅やオフィスビル等を含む。
【0104】
なお、配送用棚10bは、家屋の外壁を貫通するように設けてもよい。そのような構成によって、配送された通函21~23を屋外から配送用棚10bに搬入できると共に、居住空間内において配送用棚10bから通函21~23を取り出せる。なお、居住空間はオフィス空間を含む。その場合、例えば、配送用棚10bの屋外側及び屋内側に開閉可能な外扉及び内扉(不図示)を設けると共に、外扉及び内扉が同時に開かないようにするインターロック機構を設けてもよい。これにより、家屋の居住者のプライバシーを保護できる。
【0105】
その他、本実施形態に係る配送用棚は、例えば図8の配送車両1aに搭載した棚10aと同じ構成を採用するなど、第1~第3の実施形態で説明した様々な応用例が適用できる。
【0106】
(その他)
上述の例において、各種制御プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0107】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、収容させる通函の高さは、配送の効率化を突き詰めず所定方向(図1では高さ方向)に空間を空けて収容することを許容すれば、間隔Bのほぼ倍数に限ったものではない。図1のように1列につき3対のレール13が設けられる例では、例えば高さがBの0.5倍、1.5倍、2.7倍などの通函であっても収容させることできる。
【符号の説明】
【0108】
1、1a 配送車両
10、10a 棚
10b 配送用棚
11 筐体
12a 背面板
12b 前面板
12c、12d 仕切板
13 支持体(レール)
13r ローラ
14 補助部
14a 穴
14r ローラ
21、22、23、24 通函
21a 切欠き部
21b、21c 領域
21sa、21sb、22sa、22sb、23sa、23sb 突出部
30、30a ロック機構
31 モータ
32 回転軸
33、35-1、35-2 ベルト
34-1、34-2 従動回転軸
36-1、36-2、36-3、36-4、36-5、36-6 回転式ロック本体部(プーリ)
37-1、37-2、37-3、37-4、37-5、37-6 プーリ回転軸
38-0 共通切欠き部
38-1、38-2、38-3、38-4、38-5、38-6 切欠き部
41、42、43 扉
51 左列
52 中央列
53 右列
70 移送ロボット
71 本体部
72 天板
73 支柱
W11、W12、W21、W22 車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11