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特許7524795ブリッジレス力率改善回路の同期整流制御を行う集積回路及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ブリッジレス力率改善回路の同期整流制御を行う集積回路及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
H02M7/12 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021028436
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129664
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108866
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】大竹 修
(72)【発明者】
【氏名】古越 隆一
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-187104(JP,A)
【文献】特開2004-222367(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0002033(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨界モードのブリッジレス力率改善回路の同期整流制御を行う集積回路であって、
前記臨界モードのブリッジレス力率改善回路は、
第1のダイオードと第2のダイオードの直列回路の両端子間に出力平滑コンデンサと、第1のNMOSFETと第2のNMOSFETからなるハーフブリッジ回路と、が接続され、
前記第1のダイオードと第2のダイオードの接続点に交流電源の一方の端子が接続され、前記交流電源の他方の端子に第1のリアクトルの一方の端子が接続され、前記第1のリアクトルの他方の端子に前記ハーフブリッジ回路の前記第1のNMOSFETと前記第2のNMOSFETとの接続点に接続され、
記ハーフブリッジ回路の前記第2のNMOSFETの主電極間にコンデンサと抵抗からなる微分回路が接続され、
前記集積回路は、前記出力平滑コンデンサの出力電圧を検出し、所定の基準電圧と比較して、前記出力電圧と前記所定の基準電圧との誤差信号を基に、前記ハーフブリッジ回路をオンオフ制御し、
前記ハーフブリッジ回路の同期整流スイッチ動作のオン時間を、前記ハーフブリッジ回路のアクティブスイッチのオフタイミングから前記微分回路から発生する微分信号が出力されるまでの期間を測定して、測定した時間から所定の時間を引き算した時間を同期整流スイッチ動作の次のオン時間に割り当てることを特徴とする臨界モードのブリッジレス力率改善回路の制御を行う集積回路。
【請求項2】
臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路の同期整流制御を行う集積回路であって、
前記臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路は、
第1のダイオードと第2のダイオードの直列回路の両端子間に出力平滑コンデンサと、マスター側となる第1のNMOSFETと第2のNMOSFETからなる第1のハーフブリッジ回路と、スレーブ側となる第3のNMOSFETと第4のNMOSFETからなる第2のハーフブリッジ回路と、が接続され、
前記第1のダイオードと第2のダイオードの接続点に交流電源の一方の端子が接続され、前記交流電源の他方の端子に第1のリアクトルと第2のリアクトルの一方の端子が接続され、前記第1のリアクトルの他方の端子に前記第1のハーフブリッジ回路の前記第1のNMOSFETと前記第2のNMOSFETとの接続点に接続され、前記第2のリアクトルの他方の端子に前記第2のハーフブリッジ回路の前記第3のNMOSFETと前記第4のNMOSFETとの接続点に接続され、
前記第1のハーフブリッジ回路の前記第2のNMOSFETの主電極間にコンデンサと抵抗からなる微分回路が接続され、
前記集積回路は、前記出力平滑コンデンサの出力電圧を検出し、所定の基準電圧と比較して、前記出力電圧と前記所定の基準電圧との誤差信号を基に、前記第1のハーフブリッジ回路と前記第2のハーフブリッジ回路をオンオフ制御し、
前記第1のハーフブリッジ回路の同期整流スイッチ動作のオン時間を、前記第1のハーフブリッジ回路のアクティブスイッチのオフタイミングから前記微分回路から発生する微分信号が出力されるまでの期間を測定して、前記第2のハーフブリッジ回路の同期整流スイッチ動作の次のオン時間に割り当てることを特徴とする臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路の制御を行う集積回路。
【請求項3】
前記集積回路は、前記第1のハーフブリッジ回路の同期整流スイッチ動作のオン時間を、前記第1のハーフブリッジ回路のアクティブスイッチのオフタイミングから前記微分回路から発生する微分信号が出力されるまでの期間を測定し、測定した時間から所定の時間を引き算した時間を前記第1のハーフブリッジ回路の同期整流スイッチ動作の次のオン時間に割り当てることを特徴とする請求項2記載の臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路の制御を行う集積回路。
【請求項4】
臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路の同期整流制御を行う集積回路であって、
前記臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路は、
マスター側となる第1のNMOSFETと第2のNMOSFETからなる第1のハーフブリッジ回路と、スレーブ側となる第3のNMOSFETと第4のNMOSFETからなる第2のハーフブリッジ回路と、交流電源の交流電圧を同期整流するための第5のNMOSFETと第6のNMOSFETからなる第3のハーフブリッジ回路と、出力平滑コンデンサとが並列に接続され、
前記第5のNMOSFETと前記第6のNMOSFETの接続点に交流電源の一方の端子が接続され、
前記交流電源の他方の端子に第1のリアクトルと第2のリアクトルの一方の端子が接続され、前記第1のリアクトルの他方の端子に前記第1のハーフブリッジ回路の前記第1のNMOSFETと前記第2のNMOSFETとの接続点に接続され、前記第2のリアクトルの他方の端子に前記第2のハーフブリッジ回路の前記第3のNMOSFETと前記第4のNMOSFETとの接続点に接続され、
前記第1のハーフブリッジ回路の前記第2のNMOSFETの主電極間にコンデンサと抵抗からなる微分回路が接続され、
前記集積回路は、前記出力平滑コンデンサの出力電圧を検出し、所定の基準電圧と比較して、前記出力電圧と前記所定の基準電圧との誤差信号を基に、前記第1のハーフブリッジ回路と前記第2のハーフブリッジ回路をオンオフ制御し、
前記第1のハーフブリッジ回路の同期整流スイッチ動作のオン時間を、前記第1のハーフブリッジ回路のアクティブスイッチのオフタイミングから前記微分回路から発生する微分信号が出力されるまでの期間を測定して、前記第2のハーフブリッジ回路の同期整流スイッチ動作の次のオン時間に割り当てることを特徴とする臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路の制御を行う集積回路。
【請求項5】
前記集積回路は、前記第1のハーフブリッジ回路の同期整流スイッチ動作のオン時間を、前記第1のハーフブリッジ回路のアクティブスイッチのオフタイミングから前記微分回路から発生する微分信号が出力されるまでの期間を測定し、測定した時間から所定の時間を引き算した時間を前記第1のハーフブリッジ回路の同期整流スイッチ動作の次のオン時間に割り当てることを特徴とする請求項4記載の臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路の制御を行う集積回路。
【請求項6】
臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路の同期整流制御を行う方法であって、
前記臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路は、
第1の整流素子と第2の整流素子の直列回路の両端子間に出力平滑コンデンサと、マスター側となる第1のNMOSFETと第2のNMOSFETからなる第1のハーフブリッジ回路と、スレーブ側となる第3のNMOSFETと第4のNMOSFETからなる第2のハーフブリッジ回路と、が接続され、
前記第1の整流素子と第2の整流素子の接続点に交流電源の一方の端子が接続され、
前記交流電源の他方の端子に第1のリアクトルと第2のリアクトルの一方の端子が接続され、前記第1のリアクトルの他方の端子に前記第1のハーフブリッジ回路の前記第1のNMOSFETと前記第2のNMOSFETとの接続点に接続され、前記第2のリアクトルの他方の端子に前記第2のハーフブリッジ回路の前記第3のNMOSFETと前記第4のNMOSFETとの接続点に接続され、
前記第1のハーフブリッジ回路の前記第2のNMOSFETの主電極間にコンデンサと抵抗からなる微分回路が接続され、
制御回路は、前記出力平滑コンデンサの出力電圧を検出し、所定の基準電圧と比較して、前記出力電圧と前記所定の基準電圧との誤差信号を基に、前記第1のハーフブリッジ回路と前記第2のハーフブリッジ回路をオンオフ制御し、
前記第1のハーフブリッジ回路の同期整流スイッチ動作のオン時間を、前記第1のハーフブリッジ回路のアクティブスイッチのオフタイミングから前記微分回路から発生する微分信号が出力されるまでの期間を測定して、前記第2のハーフブリッジ回路の同期整流スイッチ動作の次のオン時間に割り当てることを特徴とする臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路の制御を行う方法。
【請求項7】
前記第1のハーフブリッジ回路の同期整流スイッチ動作のオン時間を、前記第1のハーフブリッジ回路のアクティブスイッチのオフタイミングから前記微分回路から発生する微分信号が出力されるまでの期間を測定し、測定した時間から所定の時間を引き算した時間を前記第1のハーフブリッジ回路の同期整流スイッチ動作の次のオン時間に割り当てることを特徴とする請求項6記載の臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路の制御を行う方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力電圧が印加されるリアクトルおよびスイッチ素子の直列回路、並びにリ
アクトルとスイッチ素子との接続点に接続された同期整流素子を有して入力電圧を出力電
圧に変換して出力するブリッジレス力率改善回路に関する。
【背景技術】
【0002】
LCDTV、OLEDTVなどの家電製品には、交流入力電源から安定した出力電圧を
生成する手段として、力率改善回路(PFC)及びDC/DCコンバータが使用されてい
る。特に、力率改善回路においては、高効率で小型の観点からブリッジレスPFCが採用
される。
PFCの高効率化とともに低ノイズ化が必要であるが、図6,7に示すように、ブリッジ
レスPFCの制御回路において、ゼロ電圧スイッチング制御を意図した回路で構成された
ものが、特許文献1に開示されている。
【0003】
に示す特許文献1は、臨界モードスイッチングを用いて動作するトーテムポールタ
イプのPFC回路である。この回路では、1つのスイッチが、ダイオードまたはリターン
回路MOSFETを備える一次電流経路を形成するアクティブスイッチとして動作し、第
2のトーテムポールスイッチが、フリーホイーリングまたは同期整流スイッチとして動作
する。アクティブスイッチおよび同期整流スイッチの役割は、入力電圧が正極と負極の間
で切り替わるごとに交代する。しかし、アクティブスイッチのデバイス電圧がゼロより大
きいときアクティブスイッチ動作がスイッチング損失をもたらし、また、アクティブスイ
ッチのデバイス電圧が負である期間にアクティブスイッチが切り換られるタイミングが遅
いために追加の伝導損失が認められる場合、効率はアクティブスイッチの非ゼロスイッチ
ングにより低下してしまう。
このため、制御方法により、アクティブスイッチのゼロ電圧スイッチングを促進するよう
にブリッジレストーテムポール力率改善コンバータに対して提供され、同期整流スイッチ
・オン時間が、各スイッチングサイクルにおける絶対値の電圧×時間の平衡関係に従って
決定され、および、次のスイッチングサイクルのためにアクティブスイッチ両端の電圧に
基づいて選択的に調整またはオフセットされる。図に示すように同期整流スイッチ・オ
ン時間は、アクティブスイッチ電圧が閾値を上回る場合に増加され、アクティブスイッチ
電圧が負である場合に次のスイッチングサイクルの間減少される。
図7に示すように、特許文献1の制御装置および方法は、アクティブスイッチのデバイス
電圧がゼロより大きい所定の閾電圧を超えるとき同期整流スイッチ・オン時間を遅延し、
また、負電圧のアクティブスイッチ電圧がゼロに復帰するまで同期整流スイッチ・オン時
間を選択的に短縮させることによってゼロ電流スイッチングとなるように調整する。また
、アクティブスイッチのデバイス電圧がゼロから所定の閾電圧の間にあれば同期整流スイ
ッチ・オン時間の調整は行わない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】JP6529045公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、アクティブスイッチゼロ電圧スイッチングを促進するように、アク
ティブスイッチのデバイス電圧が所定の閾値より高いかあるいは0V以下かを1スイッチ
ング辺り2回判定する。この判定結果から、次回の同期整流スイッチ・オン時間のオフセ
ット時間を選択するものである。しかしながら、1スイッチング辺り2回の判定作業とア
クティブスイッチのデバイス電圧を2つの閾値を基に選択するための制御回路、例えばC
PUの処理能力は高性能かつ、処理性能が速い高価なものが必要である。
特にLCD・OLEDの大型TVなどの大電力・低背実装に有利なインターリーブ方式の
力率改善回路に採用する場合、上記の検出および制御回路が2個必要となり高価なものに
なってしまう。
ここで、簡易な方法としてアクティブスイッチのデバイス電圧のゼロ近傍を検出せずに、
上記の計算に基づき次のサイクルのオン時間のみでアクティブスイッチをオンオフ制御さ
せ、アクティブスイッチの損失を多少犠牲にすることで可能ではある。しかし、入出力電
圧を検出する方法において、電圧検出回路をハイインピーダンスにして回路損失を低減す
ることが常套手段であるがゆえ、ノイズの影響を受けやすい。
例えば、図4に示すようにアクティブスイッチがオフする本来のタイミングA(a期間)
に対して、ノイズの影響を受け誤動作した場合にはタイミングD(d期間)となって、リ
アクトル電流IL電流の負電流が多く流れ、同期整流スイッチの損失増加となる。この負
電流は出力平滑コンデンサから交流入力電源側に回生され、この回生された電力分を含め
たより多くの電力を次のスイッチングにて出力側に供給しなければならなくなるので、さ
らに力率改善回路の損失の増加につながり、最悪の場合はアクティブスイッチ、同期整流
スイッチなどの破損に至る場合がある。
上記問題に鑑み、本発明は、臨界モードのブリッジレス力率改善回路の同期整流制御にお
いて、入力電圧検出を行わない簡易な方法で制御を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、臨界モードのブリッジレス力率改善回路の同期整流制御を
行う集積回路であって、
前記臨界モードのブリッジレス力率改善回路は、
第1のダイオードと第2のダイオードの直列回路の両端子間に出力平滑コンデンサと、第
1のNMOSFETと第2のNMOSFETからなるハーフブリッジ回路と、が接続され

前記第1のダイオードと第2のダイオードの接続点に交流電源の一方の端子が接続され、
前記交流電源の他方の端子に第1のリアクトルの一方の端子が接続され、前記第1のリア
クトルの他方の端子に前記ハーフブリッジ回路の前記第1のNMOSFETと前記第2の
NMOSFETとの接続点に接続され、
前記第ハーフブリッジ回路の前記第2のNMOSFETの主電極間にコンデンサと抵抗か
らなる微分回路が接続され、
前記集積回路は、前記出力平滑コンデンサの出力電圧を検出し、所定の基準電圧と比較
して、前記出力電圧と前記所定の基準電圧との誤差信号を基に、前記ハーフブリッジ回路
をオンオフ制御し、
前記ハーフブリッジ回路の同期整流スイッチ動作のオン時間を、前記ハーフブリッジ回
路のアクティブスイッチのオフタイミングから前記微分回路から発生する微分信号が出力
されるまでの期間を測定して、測定した時間から所定の時間を引き算した時間を同期整流
スイッチ動作の次のオン時間に割り当てることを特徴とする。
また、臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路の同期整流制御を行う集
積回路であって、
前記臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路は、
第1のダイオードと第2のダイオードの直列回路の両端子間に出力平滑コンデンサと、マ
スター側となる第1のNMOSFETと第2のNMOSFETからなる第1のハーフブリ
ッジ回路と、スレーブ側となる第3のNMOSFETと第4のNMOSFETからなる第
2のハーフブリッジ回路と、が接続され、
前記第1のダイオードと第2のダイオードの接続点に交流電源の一方の端子が接続され、
前記交流電源の他方の端子に第1のリアクトルと第2のリアクトルの一方の端子が接続さ
れ、前記第1のリアクトルの他方の端子に前記第1のハーフブリッジ回路の前記第1のN
MOSFETと前記第2のNMOSFETとの接続点に接続され、前記第2のリアクトル
の他方の端子に前記第2のハーフブリッジ回路の前記第3のNMOSFETと前記第4の
NMOSFETとの接続点に接続され、
前記第1のハーフブリッジ回路の前記第2のNMOSFETの主電極間にコンデンサと抵
抗からなる微分回路が接続され、
前記集積回路は、前記出力平滑コンデンサの出力電圧を検出し、所定の基準電圧と比較
して、前記出力電圧と前記所定の基準電圧との誤差信号を基に、前記第1のハーフブリッ
ジ回路と前記第2のハーフブリッジ回路をオンオフ制御し、
前記第1のハーフブリッジ回路の同期整流スイッチ動作のオン時間を、前記第1のハー
フブリッジ回路のアクティブスイッチのオフタイミングから前記微分回路から発生する微
分信号が出力されるまでの期間を測定して、前記第2のハーフブリッジ回路の同期整流ス
イッチ動作の次のオン時間に割り当てることを特徴とする臨界モードのブリッジレス・イ
ンターリーブ力率改善回路の制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、臨界モードのブリッジレス力率改善回路においては、同期整流スイッ
チ・オン時間を本来の値より短く設定して、アクティブスイッチの電圧変化を検出するこ
とで正確な同期整流の期間を検出し、小規模の制御回路(CPU)で変換効率の良い力率
改善回路の制御を行える。
また、アクティブスイッチの電圧変化の検出に微分回路を使用することで、損失を増やさ
ずにインピーダンスを小さくでき、入力電圧検出を行わない簡易な方法でノイズに対する
誤動作を抑制できる。
また、臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路においては、マスター側
の同期整流スイッチ・オン時間を本来の値より短く設定し、かつ、マスター側のアクティ
ブスイッチの電圧変化を検出することで正確な同期整流の期間を検出し、該検出時間をス
レーブ側の同期整流スイッチ・オン時間に適用することで、小規模の制御回路(CPU)
で変換効率の良いインターリーブ力率改善回路の制御を行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態1に係るブリッジレス力率改善回路を示す構成図である。
図2図2は、図1に示す本発明の実施形態1における各部の動作波形を示す図である。
図3図3は、本発明の実施形態1に係るブリッジレス力率改善回路の動作波形の理想的な波形を示す図である。
図4図4は、ブリッジレス力率改善回路の動作波形において、ターンオン信号の検出タイミングが遅れた場合の波形図である。
図5図5は、本本発明の実施形態2に係るインターリーブ・ブリッジレス力率改善回路を示す構成図である。
図6図6は、図5に示す本発明の実施形態2における各部の動作波形を示す図である。
図7図7は、本本発明の実施形態3に係るインターリーブ・ブリッジレス力率改善回路を示す構成図である。
図8図8は、従来技術を示す回路構成図である。
図9図9は、図8に示す従来技術の制御における動作原理を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
図1の実施形態1は、臨界モードのブリッジレス力率改善回路である。
図1の実施形態1は、ダイオードD1、D2、第1リアクトルL1、NチャネルMOSF
ET Q1~Q2、微分回路を構成する抵抗R1とコンデンサC3、出力平滑コンデンサ
C2、出力電圧検出抵抗R2、R3、および各種機能を有する回路を備える集積回路Co
nt1で構成されている。
本発明の実施形態に係るブリッジレス力率改善回路1は、交流電源ACのL,N端子の両
端間にノイズ除去用のコンデンサC1が接続され、L端子側に第1リアクトルL1の一方
の端子が接続されている。
交流電源ACのN端子側にはダイオードD1、D2の直列回路の接続点に接続され、ダイ
オードD1のカソードは出力電圧の正極に接続され、ダイオードD2のアノードは出力電
圧の負極に接続、すなわちGNDになっている。
ダイオードD1、D2の直列回路の両端子間には、NチャネルMOSFET Q1とQ2
のハーフブリッジ回路、出力電圧を検出するための直列抵抗回路R2,R3が接続されて
いる。
NチャネルMOSFET Q1とQ2との接続点には、前述の第1のリアクトルL1の他
方の端子が接続されている。
また、NチャネルMOSFET Q1とQ2との接続点とダイオードD2のアノード、す
なわちGNDとの間に微分回路のコンデンサC3と抵抗R1が接続されている。
集積回路Cont1は、交流電源ACのL端子とVin端子が接続され、NチャネルMO
SFET Q1~Q2のゲート端子とH01、LO1端子とが各々接続され、微分回路の
コンデンサC3と抵抗R1の接続点とRC端子、および出力電圧を検出するための直列抵
抗回路R2,R3の接続点とVO端子に各々接続されている。
【0010】
次に、図1図2を参照しながら本発明の実施形態に係るブリッジレス力率改善回路1の
全体動作について説明する。
本発明の実施形態の構成はリアクトルL1、NチャネルMOSFET Q1とQ2、微分
回路のコンデンサC3と抵抗R1からなる。
交流電源ACのL、N端子の電圧極性に応じて、NチャネルMOSFET Q1とQ2の
いずれかがアクティブスイッチ、同期整流スイッチ動作を行う。例えばL端子が正極、N
端子が負極の場合、NチャネルMOSFET Q2がアクティブスイッチ、NチャネルM
OSFET Q1が同期整流スイッチとなり、ダイオードD2が導通し、ダイオードD1
はオフする。従いL端子が負極、N端子が正極の場合には、各々アクティブスイッチ、同
期整流スイッチの役割を交替し、ダイオードD1が導通し、ダイオードD2はオフする。
【0011】
次に、集積回路Cont1の構成と機能について説明する。
まず、出力電圧信号である直列抵抗回路R2,R3の分圧信号が集積回路Cont1のA
DコンバータA/Dで検出され、そのデータが演算器CAL1に送られる。
演算器CAL1は、該分圧信号に基づき図示しない所定の基準電圧と比較し、該分圧信号
と所定の基準電圧との誤差信号をフィルター処理など施してON時間信号を生成する。O
N時間信号は発振器OSC1に送られる。
発振器OSC1はON時間とOFF時間1から、アクティブスイッチ用パルスと同期整流
スイッチ用パルスを生成する。
切替器SW1は、発振器OSC1から送られてきたアクティブスイッチ用パルスと同期整
スイッチ用パルスとをNチャネルMOSFET Q1とQ2へ出力する切替を位相検出
器PD1の出力信号に基づき行う。
ここで、位相検出器PD1は交流電源ACのL端子の電圧を検出して正極または負極の極
性を判定し、入力極性に応じた信号を切替器SW1、エッジ検出器ED2、および基準電
圧Vrmへ出力する。
次に、微分回路のコンデンサC3と抵抗R1との接続点の電圧波形はRC端子に入力され
、抵抗Rc1を介してコンパレータCP1の非反転端子に入力される。該非反転端子とG
ND間には、抵抗Rc2と基準電圧Vrpが接続され、反転端子には基準電圧Vrmが接
続されている。これにより、コンパレータCP1は、入力端子が各々直流重畳され、微分
回路の信号の極性を検出し、エッジ検出器ED2に信号を送る。
ここで、基準電圧Vrmは、位相検出器PD1の出力信号に基づき電圧値を基準電圧Vr
に対して高い値H、または基準電圧Vrに対して低い値Lに切り替える。例えば、交流電
源ACのL端子の電圧が正極の場合は基準電圧VrmをH側に、負極の場合には、基準電
圧VrmをL側に切り替える。これにより、RC端子を介して、微分回路の電圧波形がコ
ンデンサCの充電方向または放電方向の極性を検出することができる。
また、交流電源ACのL端子の電圧極性に基づき基準電圧Vrmを切り替える理由は、微
分回路と並列接続されているNMOSFET Q2がアクティブスイッチまたは同期整流
スイッチに切り替わるためである。NMOSFET Q2がアクティブスイッチのモード
の場合には、微分回路のコンデンサCの放電のタイミングを検出してリアクトルL1に
流れる電流がゼロになったことを検出する。また、NMOSFET Q2が同期整流スイ
ッチのモードの場合には、微分回路のコンデンサC3の充電のタイミングを検出してリア
クトルL1に流れる電流がゼロになったことを検出する。
エッジ検出器ED2はコンパレータCP1の信号をトリガーパルスに加工してタイマーに
ストップ信号として送る。このとき、交流電源ACのL端子の電圧極性に基づき基準電圧
VrmがH側、またはL側になっているので、コンパレータCP1の出力はH→Lのダウ
ンエッジまたはL→Hのアッパーエッジの出力信号となる。エッジ検出器ED2は位相検
出器PD1の信号により、アッパーエッジとダウンエッジを切り替えることでコンパレー
タCP1の信号を正しく検出することができる。
なお、タイマーTimerは、発振器OSC1のアクティブスイッチ用パルスのダウンエ
ッジでスタートする。
また、タイマーTimerのスタートは、発振器OSC1の同期整流スイッチ用パルスの
アッパーエッジを使用することも可能である。
タイマーTimerは、発振器OSC1からのスタート信号とエッジ検出器ED2からの
ストップ信号の二つの信号により、リアクトルL1に流れる電流のリセット時間を測る。
このタイマーの測定データは、発振器OSC1には定数器CD1を介して所定の定数を引
いた少し短い値が送られる。すなわち、タイマーの測定データは同期整流スイッチのオン
時間のデータの基となっている。
【0012】
次に、力率改善回路の動作説明について説明する。
図1においてL端子が正極、N端子が負極の条件とし、図2の波形も同様の条件で波形を
示している。
出力電圧信号である直列抵抗回路R2,R3の分圧信号が集積回路Cont1のADコン
バータA/Dで検出され、そのデータが演算器CAL1に送られる。
演算器CAL1は、該分圧信号に基づき図示しない所定の基準電圧と比較し、該分圧信号
と所定の基準電圧との誤差信号をフィルター処理など施してオン時間信号を生成する。オ
ン時間信号は発振器OSC1に送られる。発振器OSC1は、オン時間信号をもとにアク
ティブスイッチ信号にして出力し、定数器CD1からのOFF時間1を基に同期整流スイ
ッチ信号を切替器SW1に送る。切替器SW1は、位相検出器PD1の出力信号に基づき
NMOSFET Q2にアクティブスイッチのオンパルス信号Vgs_Q2を出力し、N
MOSFET Q1に同期整流スイッチパルス信号Vgs_Q1を出力する。
NMOSFET Q2のオンにより、リアクトルL1に流れる電流IL1は、リアクトル
に印可される入力電圧、すなわち交流電源ACの整流電圧とオンパルス信号Vgs_Q2
に基づきピーク電流が決定される。
ここで、過渡応答性は少し遅くなるが、オンパルス信号Vgs_Q2のパルス幅を交流電
源ACの商用周波数の半周期以上の期間で一定に保つことにより、リアクトルL1に流れ
る電流IL1は入力電圧に応じたピーク電流が流れる。すなわち、ピーク電流波形は入力
電圧に相似する。
また、図2のVds_Q2のドレインソース電圧を微分回路で検出したV_RC波形をも
とに時刻t5にてコンパレータCP1にてパルスCP1outが生成され、エッジ検出器
ED2を介してタイマーTimerにストップ信号を送る。次にタイマーTimerから
定数器CD1を介して発振器OSC1にOFF時間1が送られた後、時刻t6にアクティ
ブスイッチの次のオン・トリガをかける。時刻t5は、アクティブスイッチのVds_Q
2のドレインソース電圧が低下し始めた時点がリアクトルL1に流れる電流IL1がゼロ
になった時点である。
なお、コンパレータCP1のパルスCP1outが終了してからアクティブスイッチの次
のオンまでに遅延期間があるが、この期間はリアクトルL1の回生電流が交流入力電源側
へ流入するので、リアクトル電流IL1が途切れることは生じない。
これにより、リアクトルL1に流れるリアクトル電流IL1を臨界モードでオン制御する
ことが可能になり、先に述べたリアクトル電流IL1のピーク電流が入力電圧と相似であ
るため、リアクトル電流IL1の平均値、すなわち交流電源ACの入力電流波形が入力電
圧と相似になるため力率改善が行われる。これは、高調波規格に対しても十分満足できる
数値を得られる。
【0013】
次に、アクティブスイッチのオンパルス信号Vgs_Q2のターンオフの時刻t3とほぼ
同時に同期整流スイッチのオンパルス信号Vgs_Q1が出力され、同期整流スイッチの
NチャンネルMOSFET Q1がオンする。これにより、同期整流スイッチ(またはN
チャンネルMOSFET Q1の寄生ダイオード)を介してリアクトルL1のリアクトル
電流IL1は出力平滑コンデンサC2に流れる。
ここで、図3のリアクトルL1に蓄積されたエネルギーを放電する期間aに対して同期整
流スイッチNチャンネルMOSFET Q1のオンパルス信号Vgs_Q1のターンオン
の期間が図2に図示の期間c分短くなっている。これは、タイマーTimerで生成され
たOFF時間2のデータから定数器CD1で所定の定数(期間cに相当)を引いた短縮デ
ータとなるOFF時間1を発振器OSC1へ送っている。
本来であれば、同期整流スイッチNチャンネルMOSFET Q1はaの期間すべてのオ
ン動作が望ましいが、図4に示すようにノイズによる誤動作、あるいは入力電圧の急激な
変化などで、aの期間より同期整流スイッチのオン状態が伸びることが懸念される。
また、このaの期間はタイマーTimerで毎回計測され、同期整流スイッチNチャンネ
ルMOSFET Q1の次のオンパルス時間に参照値として割り当てられている。(図2
の時刻t9~t10)
ただし上記の理由から、図2に示すように、同期整流スイッチNチャンネルMOSFET
Q1のオンパルス信号Vgs_Q1は、aの期間に対して所定の時間cだけ短い期間b
(時刻t3~t4)を生成し、確実に微分回路からaの期間を計測できるようにしている
。ここで、所定の時間c(時刻t4~t5)において同期整流スイッチはオフ状態になる
が、この時は同期整流スイッチすなわちNチャンネルMOSFET Q1の寄生ダイオー
ドを介してリアクトル電流IL1は流れる。従って、寄生ダイオードの順方向電圧分の損
失が生じるが、リアクトル電流IL1の電流値はゼロアンペアまで下降してくるため、大
きな損失にならない。
なお、図3に示すように、アクティブスイッチNチャンネルMOSFET Q2のオンパ
ルス信号Vgs_Q2のターンオフと同期整流スイッチNチャンネルMOSFET Q1
のオンパルス信号Vgs_Q1のターンオンとの間には、アクティブスイッチNチャンネ
ルMOSFET Q2と同期整流スイッチNチャンネルMOSFET Q1が同時にオン
状態になって短絡しないように、所定のデッドタイムを設けている。
【0014】
以上、図2では、交流電源ACのL端子側が正極、N端子側が負極の条件での波形表示を
しているが、L端子とN端子の極性が反転した場合は、位相検出器PD1の信号に基づき
切替器SW1とSW2を介して、アクティブスイッチをQ1に切り替え、同期整流スイッ
チをQ2に切り替えて同様の動作を行わせる。
また、微分回路のV_RC波形は負極波形から正極波形に反転するので、位相検出器PD
1の信号に基づき、CP1outパルスを得るため基準電圧Vrmを基準電圧Vrに対し
て低い値Lに切り替える。
【0015】
(実施形態2)
図5の実施形態2は、臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路である。
図5の実施形態2は、ダイオードD1、D2、第1リアクトルL1、第2リアクトルL2
、NチャネルMOSFET Q1~Q4、微分回路を構成する抵抗R1とコンデンサC3
、出力平滑コンデンサC2、出力電圧検出抵抗R2、R3、および各種機能を有する回路
を備える集積回路Cont1aで構成されている。
本発明の実施形態に係る臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路1aは
、交流電源ACのL,N端子の両端間にノイズ除去用のコンデンサC1が接続され、L端
子側に第1リアクトルL1、第2リアクトルL2の一方の端子が接続されている。
交流電源ACのN端子側にはダイオードD1、D2の直列回路の接続点に接続され、ダイ
オードD1のカソードは出力電圧の正極に接続され、ダイオードD2のアノードは出力電
圧の負極に接続、すなわちGNDになっている。
ダイオードD1、D2の直列回路の両端子間には、NチャネルMOSFET Q1とQ2
、およびQ3とQ4のハーフブリッジ回路、出力電圧を検出するための直列抵抗回路R2
,R3が接続されている。
NチャネルMOSFET Q1とQ2との接続点には、前述の第1のリアクトルL1の他
方の端子が接続され、NチャネルMOSFET Q3とQ4との接続点には、前述の第2
のリアクトルLの他方の端子が接続されている。
また、NチャネルMOSFET Q1とQ2との接続点とダイオードD2のアノード、す
なわちGNDとの間に微分回路のコンデンサC3と抵抗R1が接続されている。
集積回路Cont1aは、交流電源ACのL端子とVin端子が接続され、NチャネルM
OSFET Q1~Q4のゲート端子とH01、LO1、HO2、LO2端子とが各々接
続され、微分回路のコンデンサC3と抵抗R1の接続点とRC端子、および出力電圧を検
出するための直列抵抗回路R2,R3の接続点とVO端子に各々接続されている。
【0016】
次に、図5図6を参照しながら本発明の実施形態に係るブリッジレス・インターリーブ
力率改善回路1aの全体動作について説明する。
本発明の実施形態の構成はリアクトルL1、NチャネルMOSFET Q1とQ2、微分
回路のコンデンサC3と抵抗R1からなるマスター回路と、リアクトルL2、Nチャネル
MOSFET Q3とQ4からなるスレーブ回路からなる。マスター回路とスレーブ回路
のスイッチング周期の位相差は180度に設定され、出力リップル電圧を低減させるよう
に制御を行う集積回路Cont1aでオンオフ制御される。
交流電源ACのL、N端子の電圧極性に応じて、NチャネルMOSFET Q1とQ2ま
たはNチャネルMOSFET Q3とQ4のいずれかがアクティブスイッチ、同期整流ス
イッチ動作を行う。例えばL端子が正極、N端子が負極の場合、NチャネルMOSFET
Q2とQ4がアクティブスイッチ、NチャネルMOSFET Q1とQ3が同期整流ス
イッチとなり、ダイオードD2が導通し、ダイオードD1はオフする。従いL端子が負極
、N端子が正極の場合には、各々アクティブスイッチ、同期整流スイッチの役割を交替し
、ダイオードD1が導通し、ダイオードD2はオフする。
【0017】
次に、集積回路Cont1aの構成と機能について説明する。
まず、出力電圧信号である直列抵抗回路R2,R3の分圧信号が集積回路Cont1aの
ADコンバータA/Dで検出され、そのデータが演算器CAL1に送られる。
演算器CAL1は、該分圧信号に基づき図示しない所定の基準電圧と比較し、該分圧信号
と所定の基準電圧との誤差信号をフィルター処理など施してON時間信号を生成する。O
N時間信号は発振器OSC1、OSC2に送られる。発振器OSC1はマスター回路(N
チャネルMOSFET Q1とQ2)用、発振器OSC2はスレーブ回路(NチャネルM
OSFET Q3とQ4)用である。
発振器OSC1はON時間とOFF時間1から、マスター回路用のアクティブスイッチ用
パルスと同期整流スイッチ用パルスを生成する。また、発振器OSC2にトリガーパルス
を出力する。
発振器OSC2はON時間とOFF時間2から、スレーブ回路用のアクティブスイッチ用
パルスと同期整流スイッチ用パルスを生成する。また、発振器OSC1から受け取ったト
リガーパルスを基に、出力パルスの位相を発振器OSC1と比べて180度遅延させる。
切替器SW1は、発振器OSC1から送られてきたマスター回路用のアクティブスイッチ
用パルスと同期整流スイッチ用パルスとをNチャネルMOSFET Q1とQ2へ出力す
る切替を位相検出器PD1の出力信号に基づき行う。同様に、切替器SW2は、発振器O
SC2から送られてきたスレーブ回路用のアクティブスイッチ用パルスと同期整流スイッ
用パルスとをNチャネルMOSFET Q3とQ4へ出力する切替を位相検出器PD1
の出力信号に基づき行う。
ここで、位相検出器PD1は交流電源ACのL端子の電圧を検出して正極または負極の極
性を判定し、入力極性に応じた信号を切替器SW1、SW2、エッジ検出器ED2、およ
び基準電圧Vrmへ出力する。
次に、微分回路のコンデンサC3と抵抗R1との接続点の電圧波形はRC端子に入力され
、抵抗Rc1を介してコンパレータCP1の非反転端子に入力される。該非反転端子とG
ND間には、抵抗Rc2と基準電圧Vrpが接続され、反転端子には基準電圧Vrmが接
続されている。これにより、コンパレータCP1は、入力端子が各々直流重畳され、微分
回路の信号の極性を検出し、エッジ検出器ED2に信号を送る。
ここで、基準電圧Vrmは、位相検出器PD1の出力信号に基づき電圧値を基準電圧Vr
に対して高い値H、または基準電圧Vrに対して低い値Lに切り替える。例えば、交流電
源ACのL端子の電圧が正極の場合は基準電圧VrmをH側に、負極の場合には、基準電
圧VrmをL側に切り替える。これにより、RC端子を介して、微分回路の電圧波形がコ
ンデンサCの充電方向または放電方向の極性を検出することができる。
また、交流電源ACのL端子の電圧極性に基づき基準電圧Vrmを切り替える理由は、微
分回路と並列接続されているNMOSFET Q2がアクティブスイッチまたは同期整流
スイッチに切り替わるためである。NMOSFET Q2がアクティブスイッチのモード
の場合には、微分回路のコンデンサCの放電のタイミングを検出してリアクトルL1に
流れる電流がゼロになったことを検出する。また、NMOSFET Q2が同期整流スイ
ッチのモードの場合には、微分回路のコンデンサC3の充電のタイミングを検出してリア
クトルL1に流れる電流がゼロになったことを検出する。
エッジ検出器ED2はコンパレータCP1の信号をトリガーパルスに加工してタイマーに
ストップ信号として送る。このとき、交流電源ACのL端子の電圧極性に基づき基準電圧
VrmがH側、またはL側になっているので、コンパレータCP1の出力はH→Lのダウ
ンエッジまたはL→Hのアッパーエッジの出力信号となる。エッジ検出器ED2は位相検
出器PD1の信号により、アッパーエッジとダウンエッジを切り替えることでコンパレー
タCP1の信号を正しく検出することができる。
なお、タイマーTimerは、発振器OSC1のアクティブスイッチ用パルスのダウンエ
ッジでスタートする。
また、タイマーTimerのスタートは、発振器OSC1の同期整流スイッチ用パルスの
アッパーエッジを使用することも可能である。
タイマーTimerは、発振器OSC1からのスタート信号とエッジ検出器ED2からの
ストップ信号の二つの信号により、リアクトルL1に流れる電流のリセット時間を測る。
このタイマーの測定データは発振器OSC2に直接送られ、発振器OSC1には定数器C
D1を介して所定の定数を引いた少し短い値が送られる。すなわち、タイマーの測定デー
タは同期整流スイッチのオン時間のデータの基となっている。
【0018】
次に、臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路1aの動作説明について
、マスター回路の動作から説明する。
図5においてL端子が正極、N端子が負極の条件とし、図6の波形も同様の条件で波形を
示している。
出力電圧信号である直列抵抗回路R2,R3の分圧信号が集積回路Cont1aのADコ
ンバータA/Dで検出され、そのデータが演算器CAL1に送られる。
演算器CAL1は、該分圧信号に基づき図示しない所定の基準電圧と比較し、該分圧信号
と所定の基準電圧との誤差信号をフィルター処理など施してオン時間信号を生成する。オ
ン時間信号は発振器OSC1に送られる。発振器OSC1は、オン時間信号をもとにアク
ティブスイッチ信号にして出力し、定数器CD1からのOFF時間1を基に同期整流スイ
ッチ信号を切替器SW1に送る。切替器SW1は、位相検出器PD1の出力信号に基づき
NMOSFET Q2にアクティブスイッチのオンパルス信号Vgs_Q2を出力し、N
MOSFET Q1に同期整流スイッチパルス信号Vgs_Q1を出力する。
NMOSFET Q2のオンにより、リアクトルL1に流れる電流IL1は、リアクトル
に印可される入力電圧、すなわち交流電源ACの整流電圧とオンパルス信号Vgs_Q2
に基づきピーク電流が決定される。
ここで、過渡応答性は少し遅くなるが、オンパルス信号Vgs_Q2のパルス幅を交流電
源ACの商用周波数の半周期以上の期間で一定に保つことにより、リアクトルL1に流れ
る電流IL1は入力電圧に応じたピーク電流が流れる。すなわち、ピーク電流波形は入力
電圧に相似する。
また、図6のVds_Q2のドレインソース電圧を微分回路で検出したV_RC波形をも
とに時刻t5にてコンパレータCP1にてパルスCP1outが生成され、エッジ検出器
ED2を介してタイマーTimerにストップ信号を送る。次にタイマーTimerから
定数器CD1を介して発振器OSC1にOFF時間1が送られた後、時刻t6にアクティ
ブスイッチの次のオン・トリガをかける。時刻t5は、アクティブスイッチのVds_Q
2のドレインソース電圧が低下し始めた時点がリアクトルL1に流れるリアクトル電流I
L1がゼロになった時点である。
なお、コンパレータCP1のパルスCP1outが終了してからアクティブスイッチの次
のオンまでに遅延期間があるが、この期間はリアクトルL1の回生電流が交流入力電源側
へ流入するので、リアクトル電流IL1が途切れることは生じない。
これにより、リアクトルL1に流れる電流IL1を臨界モードでオン制御することが可能
になり、先に述べたリアクトル電流IL1のピーク電流が入力電圧と相似であるため、リ
アクトル電流IL1の平均値、すなわち交流電源ACの入力電流波形が入力電圧と相似に
なるため力率改善が行われる。これは、高調波規格に対しても十分満足できる数値を得ら
れる。
【0019】
次に、アクティブスイッチのオンパルス信号Vgs_Q2のターンオフの時刻t3とほぼ
同時に同期整流スイッチのオンパルス信号Vgs_Q1が出力され、同期整流スイッチの
NチャンネルMOSFET Q1がオンする。これにより、同期整流スイッチ(またはN
チャンネルMOSFET Q1の寄生ダイオード)を介してリアクトルL1の電流IL1
は出力平滑コンデンサC2に流れる。
ここで、図3のリアクトルL1に蓄積されたエネルギーを放電する期間aに対して同期整
流スイッチNチャンネルMOSFET Q1のオンパルス信号Vgs_Q1のターンオン
の期間が期間c分短くなっている。これは、タイマーTimerで生成されたOFF時間
2のデータから定数器CD1で所定の定数(期間cに相当)を引いた短縮データとなるO
FF時間1を発振器OSC1へ送っている。
本来であれば、同期整流スイッチNチャンネルMOSFET Q1はaの期間すべてのオ
ン動作が望ましいが、図4に示すようにノイズによる誤動作、あるいは入力電圧の急激な
変化などで、aの期間より同期整流スイッチのオン状態が伸びることが懸念される。
また、このaの期間はタイマーTimerで毎回計測され、マスター回路に追随してスイ
ッチングするスレーブ回路における同期整流スイッチNチャンネルMOSFET Q3の
オンパルス時間に割り当てられている。(図6の時刻t7~t8)
すなわち、同期整流スイッチの次のオン期間の参照値として活用する。
上記の理由から、図6に示すように、同期整流スイッチNチャンネルMOSFET Q1
のオンパルス信号Vgs_Q1は、aの期間に対して所定の時間cだけ短い期間b(時刻
t3~t4)を生成し、確実に微分回路からaの期間を計測できるようにしている。
ここで、所定の時間c(時刻t4~t5)においてマスター回路の同期整流スイッチはオ
フ状態になるが、この時は同期整流スイッチすなわちNチャンネルMOSFET Q1の
寄生ダイオードを介してリアクトル電流IL1は流れる。従って、寄生ダイオードの順方
向電圧分の損失が生じるが、リアクトル電流IL1の電流値はゼロアンペアまで下降して
くるため、大きな損失にならない。
なお、図3に示すように、アクティブスイッチNチャンネルMOSFET Q2のオンパ
ルス信号Vgs_Q2のターンオフと同期整流スイッチNチャンネルMOSFET Q1
のオンパルス信号Vgs_Q1のターンオンとの間には、アクティブスイッチNチャンネ
ルMOSFET Q2と同期整流スイッチQ1が同時にオン状態になって短絡しないよう
に、所定のデッドタイムを設けている。
【0020】
スレーブ回路においては、発振器OSC2がマスター回路のアクティブスイッチのオンパ
ルス信号Vgs_Q2と同じ幅のパルス信号となるアクティブスイッチNチャンネルMO
SFET Q4のオンパルス信号Vgs_Q4を、オンパルス信号Vgs_Q2に対して
位相差180度遅延して生成し、切替器SW2を介して送る。(時刻t1~t3に対して
時刻t2~t7が相当する。)
また、同期整流スイッチのオンパルス信号Vgs_Q3は、発振器OSC2によってアク
ティブスイッチQ4のオンパルス信号Vgs_Q4のオフとなる時刻t7からデッドタイ
ム時間を挟んで、時刻t8までのaの期間を生成する。ここで、aの期間は前述のタイマ
ーTimerの信号であるOFF時間2がそのまま発振器OSC2に入力され、切替器S
W2を介して同期整流スイッチのオンパルス信号Vgs_Q3として送る。
【0021】
以上、図6では、交流電源ACのL端子側が正極、N端子側が負極の条件での波形表示を
しているが、L端子とN端子の極性が反転した場合は、位相検出器PD1の信号に基づき
切替器SW1とSW2を介して、アクティブスイッチをQ1、Q3に切り替え、同期整流
スイッチをQ2、Q4に切り替えて同様の動作を行わせる。
また、微分回路のV_RC波形は負極波形から正極波形に反転するので、位相検出器PD
1の信号に基づき、CP1outパルスを得るため基準電圧Vrmを基準電圧Vrに対し
て低い値Lに切り替える。
【0022】
(実施形態3)
図7に示す実施形態3は、図5の実施形態2に対してダイオードD1、D2をNチャネル
MOSFET Q5、Q6に置き換えているところが相違点である。それ以外は実施形態
2と同様の構成となっている。
詳しくは、ダイオードをNチャンネルMOSFETに置き換えに合わせて、交流入力電源
ACのL、N端子の正負極性を検出するための抵抗R4~R6の追加と、集積回路Con
t1aから集積回路Cont1bに変更となる。
実施形態は、ダイオードD1、D2の代わりに商用周波数を同期整流させるスイッチと
してNチャネルMOSFET Q5、Q6に置き換えている。ここで、交流入力電源AC
のL端子が正極の場合にはNチャネルMOSFET Q5をオフし、NチャネルMOSF
ET Q6をオンさせ、交流入力電源ACのN端子が正極の場合にはNチャネルMOSF
ET Q6をオフし、NチャネルMOSFET Q5をオンさせるように集積回路Con
t1aは駆動信号AO1、AO2を出力する。
交流入力電源ACの極性検出に、L端子とGND間に抵抗R4、R5の直列抵抗が接続さ
れ、N端子とGND間に抵抗R6、R7の直列抵抗が接続されている。各直列抵抗の接続
点が集積回路Cont1bの位相検出器PD2に接続され、位相検出器PD2は図示しな
い内部基準電圧と比較するか、または、直列抵抗の接続点電圧を比較することで、交流入
力電源ACの極性を検出する。
交流入力電源ACのL、N端子の正負極性を検出するための回路部品が増加するが、ダイ
オードD1、D2の順方向電圧損失はNチャンネルMOSFETのオン抵抗損失に置き換
わり、損失を大幅に低減できる。これにより負荷電力が大きい場合には、力率改善回路の
効率を上げるとともに、ダイオードD1、D2の放熱に必要だった放熱板を削除できるな
どの効果がある。
【0023】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、本発明の技術的思想を具体化
するための例示であって、個々の構成、組合せ等を上記のものに特定するものではない。
本発明は、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
例えば、実施形態2、3の位相検出器PD1、PD2は電圧の検出としたが、電流の検
出でも、コンデンサカップリングによる検出などでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように、本発明に係る力率改善回路の同期整流制御のための集積回路は、臨界モ
ードのブリッジレス力率改善回路及び臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改
善回路に用いるのに好適である。従って、これを用いたLCD、OLEDのTV装置の電
源などに利用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 臨界モードのブリッジレス力率改善回路
1a、1b 臨界モードのブリッジレス・インターリーブ力率改善回路
AC 交流入力電源
A/D ADコンバータ
C1、C3 コンデンサ
C2 出力平滑コンデンサ
CAL1 演算器
Cont1、Cont1a、Cont1b 集積回路
CD1 定数器
CP1 コンパレータ
D1、D2 ダイオード
ED1、ED2 切替器
L1、L2 リアクトル
Load 負荷
OSC1、OSC2 発振器
PD1、PD2 位相検出器
Q1~Q6 NチャネルMOSFET
R1~R7 抵抗
SW1、SW2、SW3 切替器
Timer タイマー
Vrm、Vrp 基準電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9