(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】位置決め機構
(51)【国際特許分類】
H02J 50/90 20160101AFI20240723BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240723BHJP
B60M 7/00 20060101ALN20240723BHJP
B60L 5/00 20060101ALN20240723BHJP
B60L 53/12 20190101ALN20240723BHJP
B60L 53/36 20190101ALN20240723BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/10
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/12
B60L53/36
(21)【出願番号】P 2021037488
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴範
(72)【発明者】
【氏名】日下部 誠
(72)【発明者】
【氏名】石垣 将紀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀彰
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-126344(JP,A)
【文献】特開2012-199370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 -50/90
B60M 1/00 - 7/00
B60L 5/00 - 5/42
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 -13/00
B60L 15/00 -58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決めの対象物と被対象物との相対的な位置ずれを補正する位置決め機構であって、
前記対象物に取り付けられ、第1の磁石が設けられた第1ガイド部と、
前記被対象物に取り付けられ、第2の磁石が設けられた第2ガイド部と、
前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の少なくとも一方に設けられ、前記対象物と前記被対象物との相対的な位置を変更する移動手段と、
を備え、
前記対象物と前記被対象物の正規の位置関係からの位置ずれ量に応じて、前記第1ガイド部に設けられた前記第1の磁石と前記第2ガイド部に設けられた前記第2の磁石との間の磁力が変化し、
前記磁力の変化によるガイド力によって前記対象物と前記被対象物とを前記正規の位置関係に位置決め
し、
前記位置ずれ量に応じて、前記磁力が反発力と吸引力で切り替わることを特徴とする位置決め機構。
【請求項2】
位置決めの対象物と被対象物との相対的な位置ずれを補正する位置決め機構であって、
前記対象物に取り付けられ、第1の磁石が設けられた第1ガイド部と、
前記被対象物に取り付けられ、第2の磁石が設けられた第2ガイド部と、
前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の少なくとも一方に設けられ、前記対象物と前記被対象物との相対的な位置を変更する移動手段と、
を備え、
前記対象物と前記被対象物の正規の位置関係からの位置ずれ量に応じて、前記第1ガイド部に設けられた前記第1の磁石と前記第2ガイド部に設けられた前記第2の磁石との間の磁力が変化し、
前記磁力の変化によるガイド力によって前記対象物と前記被対象物とを前記正規の位置関係に位置決め
し、
前記位置ずれ量が小さくなるにつれて前記磁力は反発力から吸引力へ変化することを特徴とする位置決め機構。
【請求項3】
位置決めの対象物と被対象物との相対的な位置ずれを補正する位置決め機構であって、
前記対象物に取り付けられ、第1の磁石が設けられた第1ガイド部と、
前記被対象物に取り付けられ、第2の磁石が設けられた第2ガイド部と、
前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の少なくとも一方に設けられ、前記対象物と前記被対象物との相対的な位置を変更する移動手段と、
を備え、
前記対象物と前記被対象物の正規の位置関係からの位置ずれ量に応じて、前記第1ガイド部に設けられた前記第1の磁石と前記第2ガイド部に設けられた前記第2の磁石との間の磁力が変化し、
前記磁力の変化によるガイド力によって前記対象物と前記被対象物とを前記正規の位置関係に位置決め
し、
前記第1の磁石は、前記対象物と前記被対象物との前記位置ずれ量が大きくなるにつれて前記第2の磁石に対して反発力が大きくなるように配置されている、又は、
前記第2の磁石は、前記対象物と前記被対象物との前記位置ずれ量が大きくなるにつれて前記第1の磁石に対して反発力が大きくなるように配置されている、ことを特徴とする位置決め機構。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の位置決め機構であって、
前記対象物と前記被対象物とが前記正規の位置関係となった場合、前記第1の磁石と前記第2の磁石との吸引力によって前記対象物と前記被対象物とを前記正規の位置関係を保持することを特徴とする位置決め機構。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の位置決め機構であって、
前記第1ガイド部は凸傾斜ガイド部を有し、前記第2ガイド部は当該凸傾斜ガイド部に対応する凹傾斜ガイド部を有し、又は、前記第1ガイド部は凹傾斜ガイド部を有し、前記第2ガイド部は当該凹傾斜ガイド部に対応する凸傾斜ガイド部を有し、
前記第1の磁石及び前記第2の磁石の少なくとも一方が前記凸傾斜ガイド部及び前記凹傾斜ガイド部の少なくとも一方の傾斜に沿って配置されていることを特徴とする位置決め機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決め機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両や電気駆動車両等において外部から電力を供給することによって電池を充電できる充電システムが必要とされている。例えば、車両外部に配置された送電用コイルと車両に配置された受電用コイルとの間の電磁的な結合によって電力を供給する充電システムが知られている。
【0003】
車両の外部に設置された送電用コイルユニットと非接触の状態で電力を受電可能とされ、車両の底面に配置された受電用コイルユニットと、車両の底面に設けられたガイド板とを備えた車両とする技術が開示されている。当該送電用コイルユニットは、車両の底面よりも下方に配置され、少なくとも車両の幅方向に移動可能なように設けられる。そして、送電用コイルユニットは、ガイド板によって送電コイルの下方に配置されている充電エリア内に案内される。(特許文献1)
【0004】
充電池を備えた車両の充電池に接続された2次コイルを含む受電部と、1次コイルを含むと共に地上側に設置され、車両の受電部と対向した場合に受電部側に移動して受電部に嵌合する給電部とを備えた車両の充電システムが開示されている。ここで、受電部に給電部が嵌合する時に給電部を受電部に対して相対的に位置決めする位置決め機構が設けられている。位置決め機構は、受電部及び給電部にそれぞれ設けられ、互いに嵌合するように構成された斜面部とされている。(特許文献2)
【0005】
送電側コイルと受電側コイルと、送電側コイル又は受電側コイルの一方を少なくとも所定の平面内で移動可能に支持すると共に、固定状態と解放状態とに切り替え可能である可動支持機構とを備えたワイヤレス給電システムが開示されている。可動支持機構を解放状態としたうえで、送電側コイル及び受電側コイルに電流を供給して発生した磁界の引付力によって送電側コイルと受電側コイルとの位置合わせを行うことができる。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-250593号公報
【文献】特開2012-85472号公報
【文献】特開2015-116013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、ガイド板を用いた接触式であるため、スムーズにガイドするためにはガイド板に対して大きな傾斜角度を設ける必要がある。しかしながら、ガイド板に大きな傾斜角を与えると、車両後方に長い距離が必要であり、車両後端の空間を占有してしまうという問題がある。特に、弾性を有する干渉部材を用いた場合、特に摩擦力が大きくなるためガイド板に与える傾斜角度を大きくする必要がある。
【0008】
また、接触式のガイド板が所望の動作を制限する場合がある。例えば、リヤオーバーハングが長い車両が大きな舵角で移動した時、車両の後端が振られてガイド板を破損するおそれがある。さらに、地面を掘って送電コイルを設置する工事が必要であり、設置コストが嵩むという問題がある。
【0009】
特許文献2に記載の技術では、電磁石が使用されるため、構成が複雑となり、コストが高くなる問題がある。また、地面と平行に給電部が配置されるため、給電部に異物が載る可能性があり、塵排出装置を必要とする。また、電磁石の吸着時に大きなショックが発生し、コイルが破損するおそれがある。また、車を大まかにガイドすることができないので、ほぼ決められた場所に車を移動させる技術が必要となる。さらに、次コイル浮上時においてガイドへの引っかかりが発生し、装置が破損するおそれがある。また、地面を掘って凸形状の1次コイルを設置する工事が必要であり、設置コストが嵩むという問題がある。
【0010】
特許文献3に記載の技術では、電磁石が使用されるため、構成が複雑となり、コストが高くなる問題がある。また、地面を掘って送電コイルを設置する工事が必要であり、設置コストが嵩むという問題がある。また、車を大まかにガイドすることができないので、ほぼ決められた場所に車を移動させる技術が必要となる。さらに、給電時において車両の上下方向の固定方法として機械的保持部材が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの態様は、位置決めの対象物と被対象物との相対的な位置ずれを補正する位置決め機構であって、前記対象物に取り付けられ、第1の磁石が設けられた第1ガイド部と、前記被対象物に取り付けられ、第2の磁石が設けられた第2ガイド部と、前記第1ガイド部及び前記第2ガイド部の少なくとも一方に設けられ、前記対象物と前記被対象物との相対的な位置を変更する移動手段と、を備え、前記対象物と前記被対象物の正規の位置関係からの位置ずれ量に応じて、前記第1ガイド部に設けられた前記第1の磁石と前記第2ガイド部に設けられた前記第2の磁石との間の磁力が変化し、前記磁力の変化によるガイド力によって前記対象物と前記被対象物とを前記正規の位置関係に位置決めすることを特徴とする位置決め機構である。
【0012】
ここで、前記位置ずれ量に応じて、前記磁力が反発力と吸引力で切り替わることが好適である。
【0013】
また、前記位置ずれ量が小さくなるにつれて前記磁力は反発力から吸引力へ変化することが好適である。
【0014】
また、前記対象物と前記被対象物とが前記正規の位置関係となった場合、前記第1の磁石と前記第2の磁石との吸引力によって前記対象物と前記被対象物とを前記正規の位置関係を保持することが好適である。
【0015】
また、前記第1ガイド部は凸傾斜ガイド部を有し、前記第2ガイド部は当該凸傾斜ガイド部に対応する凹傾斜ガイド部を有し、又は、前記第1ガイド部は凹傾斜ガイド部を有し、前記第2ガイド部は当該凹傾斜ガイド部に対応する凸傾斜ガイド部を有し、前記第1の磁石及び前記第2の磁石の少なくとも一方が前記凸傾斜ガイド部及び前記凹傾斜ガイド部の少なくとも一方の傾斜に沿って配置されていることが好適である。
【0016】
また、前記第1の磁石は、前記対象物と前記被対象物との前記位置ずれ量が大きくなるにつれて前記第2の磁石に対して反発力が大きくなるように配置されている、又は、前記第2の磁石は、前記対象物と前記被対象物との前記位置ずれ量が大きくなるにつれて前記第1の磁石に対して反発力が大きくなるように配置されている、ことが好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、小型で、部品の摩耗や破損を低減させた位置決め機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態における位置決め機構の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態における位置決め機構の作用を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態における位置決め機構の作用を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態における位置決め機構の別例の構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態における位置決め機構の別例の作用を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態における位置決め機構の別例の作用を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態における位置決め機構の実施例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施の形態における位置決め機構100は、
図1に示すように、第1ガイド部102及び第2ガイド部104から構成される。第1ガイド部102は、位置決めの対象物202に取り付けられる。第2ガイド部104は、位置決めの被対象物204に取り付けられる。位置決め機構100は、対象物202と被対象物204との相対的な位置ずれを補正し、相対的に正しい位置関係に位置決めするために用いられる。
【0020】
例えば、位置決め機構100をハイブリッド車両や電気駆動車両の電池の充放電システムに適用する場合、第1ガイド部102が取り付けられる対象物202を車両とし、第2ガイド部104が取り付けられる被対象物204を駐車場の壁等に取り付けられる給電装置とすればよい。本実施の形態では、対象物202を車両として第1ガイド部102を車両のリア側に設けられた受電装置に取り付け、被対象物204を給電装置として第2ガイド部104を駐車場の壁面等に取り付けた例を示している。
【0021】
なお、以下の説明では、地面に対して水平な面をX-Y平面とし、第1ガイド部102と第2ガイド部104とが近づく又は離れる方向をY方向(前後方向)とし、それに直交する方向をX方向(左右方向)とする。
【0022】
第1ガイド部102は、X方向の左右のそれぞれに配置された凸傾斜ガイド部10(10a,10b)及び永久磁石12(12a,12b)を含んで構成される。
【0023】
凸傾斜ガイド部10aは、対象物202の左側に取り付けられる。凸傾斜ガイド部10aは、X方向に沿って対象物202の中央に向けて凸となる凸傾斜面X1を有する。凸傾斜ガイド部10bは、対象物202の右側に取り付けられる。凸傾斜ガイド部10bは、X方向に沿って対象物202の中央に向けて凸となる凸傾斜面X2を有する。凸傾斜面X1及び凸傾斜面X2は、それぞれ凸傾斜ガイド部10a及び凸傾斜ガイド部10bの被対象物204に対向する面として設けられる。
【0024】
凸傾斜面X1及び凸傾斜面X2には、それぞれ永久磁石12a及び永久磁石12bが設けられる。本実施の形態では、永久磁石12a及び永久磁石12bは、位置決め機構100の使用時において被対象物204に対向する側がN極となるように取り付けられる。
【0025】
第2ガイド部104は、X方向の左右のそれぞれに配置された凹傾斜ガイド部20(20a,20b)、永久磁石22(22a,22b)、永久磁石24(24a,24b)及び移動手段26を含んで構成される。
【0026】
凹傾斜ガイド部20aは、被対象物204の左側に取り付けられる。凹傾斜ガイド部20aは、X方向に沿って被対象物204の中央に向けて凹となる凹傾斜面Y1を有する。凹傾斜ガイド部20bは、被対象物204の右側に取り付けられる。凹傾斜ガイド部20bは、X方向に沿って被対象物204の中央に向けて凹となる凹傾斜面Y2を有する。凹傾斜面Y1及び凹傾斜面Y2は、それぞれ凹傾斜ガイド部20a及び凹傾斜ガイド部20bの対象物202に対向する面として設けられる。
【0027】
凹傾斜面Y1には、永久磁石22a及び永久磁石24aが設けられる。凹傾斜面Y2には、永久磁石22b及び永久磁石24bが設けられる。永久磁石22aは、凹傾斜面Y1において凸傾斜面X1に配置された永久磁石12aに対向する位置に配置される。永久磁石22aは、位置決め機構100の使用時において対象物202に対向する側が永久磁石12aと逆極となるように取り付けられる。本実施の形態では、永久磁石22aは、位置決め機構100の使用時において対象物202に対向する側がS極となるように取り付けられる。永久磁石22bは、凹傾斜面Y2において凸傾斜面X2に配置された永久磁石12bに対向する位置に配置される。永久磁石22bは、位置決め機構100の使用時において対象物202に対向する側が永久磁石12bと逆極となるように取り付けられる。本実施の形態では、永久磁石22bは、位置決め機構100の使用時において対象物202に対向する側がS極となるように取り付けられる。
【0028】
永久磁石24aは、凹傾斜面Y1においてX方向に沿って永久磁石22aより外側に配置される。永久磁石24aは、位置決め機構100の使用時において対象物202に対向する側が永久磁石12aと同極となるように取り付けられる。本実施の形態では、永久磁石24aは、位置決め機構100の使用時において対象物202に対向する側がN極となるように取り付けられる。永久磁石24bは、凹傾斜面Y2においてX方向に沿って永久磁石22bより外側に配置される。永久磁石24bは、位置決め機構100の使用時において対象物202に対向する側が永久磁石12bと同極となるように取り付けられる。本実施の形態では、永久磁石24bは、位置決め機構100の使用時において対象物202に対向する側がN極となるように取り付けられる。
【0029】
凹傾斜面Y1及び凹傾斜面Y2において、永久磁石24a及び永久磁石24bの数はそれぞれ1つに限定されず、数を増やして磁力の範囲を拡げることによって位置決めの範囲を拡げることができる。本実施の形態では、永久磁石24a及び永久磁石24bをそれぞれ3つずつ配置した例を示している。なお、永久磁石24a及び永久磁石24bの数を増やすのではなく、凹傾斜面Y1及び凹傾斜面Y2の斜面に沿って永久磁石24a及び永久磁石24bの幅を拡げるようにしてもよい。
【0030】
なお、本実施の形態における位置決め機構100では、第1ガイド部102に凸傾斜ガイド部10a,10bを設け、第2ガイド部104に凹傾斜ガイド部20a,20bを設けた構成としたが、これらを入れ替えた構成としてもよい。すなわち、第1ガイド部102に凹傾斜ガイド部20a,20bを設け、第2ガイド部104に凸傾斜ガイド部10a,10bを設けた構成としてもよい。
【0031】
移動手段26は、凹傾斜ガイド部20a及び凹傾斜ガイド部20bと共に被対象物204をX方向に沿って移動可能とする手段である。移動手段26は、例えば、機械的又は電磁的な可動レールとすることができる。
【0032】
なお、本実施の形態における位置決め機構100では、X方向のみに凹傾斜ガイド部20a及び凹傾斜ガイド部20bと共に被対象物204を可動とする移動手段26としたが、さらにY方向(前後方向)、X-Y平面に垂直なZ方向(鉛直方向)、回転方向にも可動とする移動手段26としてもよい。
【0033】
また、第2ガイド部104側に移動手段26を設けた構成としたが、第1ガイド部102側に移動手段26を設けた構成としてもよい。また、第1ガイド部102及び第2ガイド部104の両方に移動手段26を設けた構成としてもよい。
【0034】
図2及び
図3は、位置決め機構100の作用を説明するための図である。
図2は、位置決め機構100による位置決め中の状態を示す。
図3は、位置決め機構100による位置決めが完了した状態を示す。
【0035】
図2に示すように、対象物202が被対象物204に対してX方向に沿って左に位置ずれ量が大きい状態で接近すると、左側の凸傾斜ガイド部10aに設けられた永久磁石12aと凹傾斜ガイド部20aに設けられた永久磁石24aとは同極(N極)同士が向かい合う状態となり、凸傾斜ガイド部10aと凹傾斜ガイド部20aとの間には反発力が発生する。このとき、凸傾斜ガイド部10aの凸傾斜面X1と凹傾斜ガイド部20aのY1が傾斜していることで、第1ガイド部102と第2ガイド部104との間には位置決めの中心方向へガイド力が発生する。右側の凸傾斜ガイド部10bに設けられた永久磁石12bと凹傾斜ガイド部20bに設けられた永久磁石22bとは逆極(N極とS極)同士が最も近い位置にある状態となり、凸傾斜ガイド部10bと凹傾斜ガイド部20bとの間には吸引力が発生する。このとき、凸傾斜ガイド部10bの凸傾斜面X2と凹傾斜ガイド部20bのY2が傾斜していることで、第1ガイド部102と第2ガイド部104との間には位置決めの中心方向へガイド力が発生する。すなわち、第1ガイド部102の位置決め中心に対して第2ガイド部104の位置決め中心を近づける方向(左方向)に移動させるガイド力が発生する。移動手段26を用いて、このガイド力によって被対象物204は位置決め中心を近づける方向(左方向)に移動する。
【0036】
次に、対象物202と被対象物204との位置ずれ量が小さくなってくると、左側の凸傾斜ガイド部10aに設けられた永久磁石12aと凹傾斜ガイド部20aに設けられた永久磁石22aも近づき、逆極(N極とS極)同士が近い位置にある状態となり、凸傾斜ガイド部10aと凹傾斜ガイド部20aとの間にも吸引力が発生するようになる。これにより、第1ガイド部102の位置決め中心に対して第2ガイド部104の位置決め中心を近づける方向(左方向)に移動させるガイド力がより強くなる。このガイド力によって被対象物204は位置決め中心を近づける方向(左方向)にさらに移動する。
【0037】
このようにして、
図3に示すように、第1ガイド部102と第2ガイド部104との間に発生するガイド力によって対象物202と被対象物204との位置決め中心が一致するように位置決めが完了する。このとき、凸傾斜ガイド部10aと凹傾斜ガイド部20aとの間、及び、凸傾斜ガイド部10bと凹傾斜ガイド部20bとの間には両方とも吸引力が発生している。したがって、位置決め完了後の状態を保持することができる。
【0038】
図4は、本実施の形態の変形例である位置決め機構110の構成を示す。位置決め機構110は、第1ガイド部112及び第2ガイド部114から構成される。第1ガイド部112は、位置決めの対象物202に取り付けられる。第2ガイド部114は、位置決めの被対象物204に取り付けられる。
【0039】
第1ガイド部112は、X方向の左右のそれぞれに配置された平坦ガイド部10(10c,10d)及び永久磁石12(12c,12d)を含んで構成される。
【0040】
平坦ガイド部10cは、対象物202の左側に取り付けられる。平坦ガイド部10cは、X方向に沿って平坦である平坦面X3を有する。平坦ガイド部10dは、対象物202の右側に取り付けられる。平坦ガイド部10dは、X方向に沿って平坦である平坦面X4を有する。平坦面X3及び平坦面X4は、それぞれ平坦ガイド部10c及び平坦ガイド部10dの被対象物204に対向する面として設けられる。
【0041】
平坦面X3及び平坦面X4には、それぞれ永久磁石12c及び永久磁石12dが設けられる。本実施の形態では、永久磁石12c及び永久磁石12dは、位置決め機構110の使用時において被対象物204に対向する側がN極となるように取り付けられる。
【0042】
第2ガイド部114は、X方向の左右のそれぞれに配置された平坦ガイド部20(20c,20d)、永久磁石22(22c,22d)、永久磁石24(24c,24d)及び移動手段26を含んで構成される。
【0043】
平坦ガイド部20cは、被対象物204の左側に取り付けられる。平坦ガイド部20cは、X方向に沿って平坦な平坦面Y3を有する。平坦ガイド部20dは、被対象物204の右側に取り付けられる。平坦ガイド部20dは、X方向に沿って平坦な平坦面Y4を有する。平坦面Y3及び平坦面Y4は、それぞれ平坦ガイド部20c及び平坦ガイド部20dの対象物202に対向する面として設けられる。
【0044】
平坦面Y3には、永久磁石22c及び永久磁石24cが設けられる。平坦面Y4には、永久磁石22d及び永久磁石24dが設けられる。永久磁石22cは、平坦面Y3において平坦面X3に配置された永久磁石12cに対向する位置に配置される。永久磁石22cは、位置決め機構110の使用時において対象物202に対向する側が永久磁石12cと逆極となるように取り付けられる。本実施の形態では、永久磁石22cは、位置決め機構110の使用時において対象物202に対向する側がS極となるように取り付けられる。永久磁石22dは、平坦面Y4において平坦面X4に配置された永久磁石12dに対向する位置に配置される。永久磁石22dは、位置決め機構110の使用時において対象物202に対向する側が永久磁石12dと逆極となるように取り付けられる。本実施の形態では、永久磁石22dは、位置決め機構110の使用時において対象物202に対向する側がS極となるように取り付けられる。
【0045】
永久磁石24cは、平坦面Y3においてX方向に沿って永久磁石22cより外側に配置される。永久磁石24cは、位置決め機構110の使用時において対象物202に対向する側が永久磁石12cと同極となるように取り付けられる。本実施の形態では、永久磁石24cは、位置決め機構110の使用時において対象物202に対向する側がN極となるように取り付けられる。また、永久磁石24cは、平坦面Y3の外側に向かって磁力が強くなるように配置される。
【0046】
永久磁石24dは、平坦面Y4においてX方向に沿って永久磁石22dより外側に配置される。永久磁石24dは、位置決め機構110の使用時において対象物202に対向する側が永久磁石12dと同極となるように取り付けられる。本実施の形態では、永久磁石24dは、位置決め機構110の使用時において対象物202に対向する側がN極となるように取り付けられる。また、永久磁石24dは、平坦面Y4の外側に向かって磁力が強くなるように配置される。
【0047】
平坦面Y3及び平坦面Y4において、永久磁石24c及び永久磁石24dの数はそれぞれ1つに限定されず、数を増やして磁力の範囲を拡げることによって位置決めの範囲を拡げることができる。本実施の形態では、永久磁石24c及び永久磁石24dをそれぞれ3つずつ配置した例を示している。なお、永久磁石24c及び永久磁石24dの数を増やすのではなく、平坦面Y3及び平坦面Y4の斜面に沿って永久磁石24c及び永久磁石24dの幅を拡げるようにしてもよい。
【0048】
なお、本実施の形態における位置決め機構110では、第2ガイド部114に設けた永久磁石24c,24dの磁力が傾斜を有する構成したが、第1ガイド部112に永久磁石24c,24dを設けて、磁力が傾斜するような構成としてもよい。
【0049】
移動手段26は、平坦ガイド部20c及び平坦ガイド部20dと共に被対象物204をX方向に沿って移動可能とする手段である。移動手段26は、例えば、機械的又は電磁的な可動レールとすることができる。
【0050】
なお、本実施の形態における位置決め機構110では、X方向のみに平坦ガイド部20c及び平坦ガイド部20dと共に被対象物204を可動とする移動手段26としたが、さらにY方向(前後方向)、X-Y平面に垂直なZ方向(鉛直方向)、回転方向にも可動とする移動手段26としてもよい。
【0051】
また、第2ガイド部114側に移動手段26を設けた構成としたが、第1ガイド部112側に移動手段26を設けた構成としてもよい。また、第1ガイド部112及び第2ガイド部114の両方に移動手段26を設けた構成としてもよい。
【0052】
位置決め機構110では、永久磁石24c及び永久磁石24dの磁力が傾斜して配置されている。これによって、位置決め機構110と同様に、第1ガイド部112及び第2ガイド部114にガイド力が発生し、位置決めを行うことができる。
【0053】
図5に示すように、対象物202が被対象物204に対してX方向に沿って左に位置ずれ量が大きい状態で接近すると、左側の平坦ガイド部10cに設けられた永久磁石12cと平坦ガイド部20cに設けられた永久磁石24cとは同極(N極)同士が向かい合う状態となり、平坦ガイド部10cと平坦ガイド部20cとの間には反発力が発生する。このとき、永久磁石24cの磁力が傾斜していることで、第1ガイド部112と第2ガイド部114との間には位置決めの中心方向へガイド力が発生する。右側の平坦ガイド部10dに設けられた永久磁石12dと平坦ガイド部20dに設けられた永久磁石22dとは逆極(N極とS極)同士が最も近い位置にある状態となり、平坦ガイド部10dと平坦ガイド部20dとの間には吸引力が発生する。このとき、第1ガイド部112と第2ガイド部114との間には位置決めの中心方向へガイド力が発生する。すなわち、第1ガイド部112の位置決め中心に対して第2ガイド部114の位置決め中心を近づける方向(左方向)に移動させるガイド力が発生する。このガイド力によって、移動手段26を用いて被対象物204は位置決め中心が近づく方向(左方向)に移動する。
【0054】
次に、対象物202と被対象物204との位置ずれ量が小さくなってくると、左側の平坦ガイド部10cに永久磁石12aと平坦ガイド部20cに設けられた永久磁石22cも近づき、逆極(N極とS極)同士が近い位置にある状態となり、平坦ガイド部10cと平坦ガイド部20cとの間にも吸引力が発生するようになる。これにより、第1ガイド部112の位置決め中心に対して第2ガイド部114の位置決め中心を近づける方向(左方向)に移動させるガイド力がより強くなる。このガイド力によって被対象物204は位置決め中心を近づける方向(左方向)にさらに移動する。
【0055】
このようにして、
図6に示すように、第1ガイド部112と第2ガイド部114との間に発生するガイド力によって対象物202と被対象物204との位置決め中心が一致するように位置決めが完了する。このとき、平坦ガイド部10cと平坦ガイド部20cとの間、及び、平坦ガイド部10dと平坦ガイド部20dとの間には両方とも吸引力が発生している。したがって、位置決め完了後の状態を保持することができる。
【0056】
図7は、本発明の実施例における位置決め機構100の構成を示す斜視図である。
図7に示すように、本実施例では、移動手段26としてX方向(左右)に加えて、Y方向(前後)、Z方向(上下)及び回転方向にも位置ずれに対して追従可能な4軸可動の移動手段26を設けた構成としている。
【0057】
このように、第1ガイド部102及び第2ガイド部104に設けられた磁力ガイド手段と4軸可動の移動手段26とを組み合わせることによって、対象物202と被対象物204との位置ずれを自動的に修正し、正規の位置関係に位置決めすることが可能になる。
【0058】
なお、凸斜面及び凹斜面を利用した位置決め機構100と磁力の傾斜を利用した位置決め機構110とを組み合わせた構成としてもよい。
【0059】
また、本実施の形態における永久磁石12a~12d、永久磁石22a~22d、永久磁石24a~24dの極をそれぞれ逆にしてもよい。また、本実施の形態では、永久磁石を利用したが、電磁石等の他の磁力を発生させることができる磁石を用いてもよい。ただし、装置を小型化するためには永久磁石を用いることが好適である。
【0060】
以上のように、本発明によれば、磁力を用いた非接触の位置決め機構を提供することができる。したがって、接触部における摩擦を考慮して機械的なガイド部の角度等を設定する必要がなく、簡素で小型な位置決め機構を実現することができる。また、接触による部品の摩耗や破損を低減することができる。
【符号の説明】
【0061】
10(10a,10b) 凸傾斜ガイド部、10(10c,10d) 平坦ガイド部、12(12a~12d) 永久磁石、20(20a,20b) 凹傾斜ガイド部、20(20c,20d) 平坦ガイド部、22(22a~22d) 永久磁石、24(24a~24d) 永久磁石、26 移動手段、100,110 位置決め機構、202 対象物、204 被対象物。