IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-表面実装コネクタ 図1
  • 特許-表面実装コネクタ 図2
  • 特許-表面実装コネクタ 図3
  • 特許-表面実装コネクタ 図4
  • 特許-表面実装コネクタ 図5
  • 特許-表面実装コネクタ 図6
  • 特許-表面実装コネクタ 図7
  • 特許-表面実装コネクタ 図8
  • 特許-表面実装コネクタ 図9
  • 特許-表面実装コネクタ 図10
  • 特許-表面実装コネクタ 図11
  • 特許-表面実装コネクタ 図12
  • 特許-表面実装コネクタ 図13
  • 特許-表面実装コネクタ 図14
  • 特許-表面実装コネクタ 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】表面実装コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/57 20110101AFI20240723BHJP
【FI】
H01R12/57
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021053320
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150633
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 大樹
(72)【発明者】
【氏名】野崎 新史
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-190558(JP,A)
【文献】特開2007-294299(JP,A)
【文献】特開2011-070895(JP,A)
【文献】特開2007-294300(JP,A)
【文献】米国特許第04927372(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/57
H01R 12/70-1/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向を板厚方向とする回路基板上に取り付けられる表面実装コネクタであって、
複数の端子と、
前記複数の端子を並列して収容するハウジングと、を備え、
前記複数の端子の下端部には、前記回路基板に接続されるリードが設けられ、
前記複数の端子のそれぞれは、前記ハウジングにおいて独立して上下方向に移動可能に支持されており、
前記複数の端子は、上方から前記ハウジングと係止する係止突起を有し、
前記ハウジングは、下方から前記係止突起と係止する下方係止部を有し、
前記係止突起と前記下方係止部とが係止することで、前記複数の端子は、前記ハウジングから下方に抜けないようになっており、
前記ハウジングが水平な前記回路基板上に固定された際に前記複数の端子が配される上下方向の位置は、基準位置とされており、
前記基準位置において、前記係止突起と前記下方係止部との間には、上下方向に第1クリアランスが設定されており、
前記ハウジングは、上下方向にのび、前記係止突起に摺接するガイド凹部を有し、
前記係止突起と前記ガイド凹部とが摺接することで、前記複数の端子のそれぞれが独立して上下方向に移動することが案内される、表面実装コネクタ。
【請求項2】
前記複数の端子は、下方から前記ハウジングと係止する当接部を有し、
前記ハウジングは、上方から前記当接部と係止する上方係止部を有し、
前記上方係止部と前記当接部とが係止することで、前記複数の端子は、前記ハウジングから上方に抜けないようになっており、
前記基準位置において、前記当接部と前記上方係止部との間には、上下方向に第2クリアランスが設定されている、請求項に記載の表面実装コネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記ハウジングを前記回路基板上に固定する固定部を有している、請求項または請求項に記載の表面実装コネクタ。
【請求項4】
前記係止突起は、上下方向に直交する方向に弾性変形可能に形成されている、請求項から請求項のいずれか一項に記載の表面実装コネクタ。
【請求項5】
前記複数の端子は、上下方向に直交する並び方向に並んでおり、
前記係止突起は、上下方向及び前記並び方向に直交する方向に突出して配されている、請求項から請求項のいずれか一項に記載の表面実装コネクタ。
【請求項6】
前記ハウジングは、上方に開口するフード部を有し、
嵌合相手である相手方コネクタと下方から嵌合する、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の表面実装コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面実装コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
表面実装型コネクタには、基板上の配線パターンに半田で接続されるリードが設けられている。複数のリードを基板に確実に接続するためには、複数のリードの下端部が基板面にほぼ一致して並んでいる必要がある。すなわち、リードのコプラナリティー(平坦度)を担保する必要がある。また、リードのコプラナリティーが良好な場合であっても、例えば、リフロー時に基板の反りが生じた場合には、リードと基板との接続が不良となるおそれがある。
【0003】
上記の課題を解決する表面実装型コネクタとして、従来、特開2010-146728号公報(下記特許文献1)に記載のものが知られている。この表面実装型コネクタは、コンタクトと、コンタクトを保持する絶縁ハウジングと、を備えている。コンタクトは、バネ性を持った可動部と、プリント配線基板に半田付けにより接続されるリードと、を備え、リードは絶縁ハウジングのスタンドオフより下方に配されている。表面実装型コネクタをプリント配線基板に実装する際、コンタクトの可動部を撓ませることで、リードとプリント配線基板とを良好に接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-146728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の構成では、実装の際、可動部を撓ませるために、表面実装型コネクタを下方に押し付ける必要がある。また、可動部の動きを規制する構成が設けられていないため、可動部が上下方向に撓むだけでなく、例えば左右方向にずれる可能性があり、実装がうまく行えないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の表面実装コネクタは、上下方向を板厚方向とする回路基板上に取り付けられる表面実装コネクタであって、複数の端子と、前記複数の端子を並列して収容するハウジングと、を備え、前記複数の端子の下端部には、前記回路基板に接続されるリードが設けられ、前記複数の端子のそれぞれは、前記ハウジングにおいて独立して上下方向に移動可能に支持されている、表面実装コネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、回路基板の反り等によるリードと回路基板との接続不良を抑制可能な表面実装コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態にかかる表面実装コネクタの斜視図である。
図2図2は、表面実装コネクタの平面図である。
図3図3は、図2のA-A断面図である。
図4図4は、図3のB-B断面図である。
図5図5は、端子の斜視図である。
図6図6は、水平な回路基板上に取り付けられた表面実装コネクタの背面図である。
図7図7は、図6のC-C断面図である。
図8図8は、下方に凸状をなして反っている回路基板上に取り付けられた表面実装コネクタの背面図である。
図9図9は、回路基板の下方反り量を示す図8の拡大図である。
図10図10は、図8のD-D断面図である。
図11図11は、上方に凸状をなして反っている回路基板上に取り付けられた表面実装コネクタの背面図である。
図12図12は、回路基板の上方反り量を示す図8の拡大図である。
図13図13は、図11のE-E断面図である。
図14図14は、上方に凸状をなして反っている回路基板上に取り付けられた表面実装コネクタの図6のC-C断面における断面図である。
図15図15は、回路基板の上方反り量を示す図14の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。
【0010】
(1)本開示の表面実装コネクタは、上下方向を板厚方向とする回路基板上に取り付けられる表面実装コネクタであって、複数の端子と、前記複数の端子を並列して収容するハウジングと、を備え、前記複数の端子の下端部には、前記回路基板に接続されるリードが設けられ、前記複数の端子のそれぞれは、前記ハウジングにおいて独立して上下方向に移動可能に支持されている。
【0011】
このような構成によると、回路基板の反りに合わせて、複数の端子のそれぞれが、独立して上下方向に移動することで、リードと回路基板とが当接した状態を確保することができる。したがって、リードと回路基板との接続不良を抑制することができる。
【0012】
(2)前記複数の端子は、上方から前記ハウジングと係止する係止突起を有し、前記ハウジングは、下方から前記係止突起と係止する下方係止部を有し、前記係止突起と前記下方係止部とが係止することで、前記複数の端子は、前記ハウジングから下方に抜けないようになっており、前記ハウジングが水平な前記回路基板上に固定された際に前記複数の端子が配される上下方向の位置は、基準位置とされており、前記基準位置において、前記係止突起と前記下方係止部との間には、上下方向に第1クリアランスが設定されていることが好ましい。
【0013】
このような構成によると、基準位置において、係止突起と下方係止部との間には、上下方向に第1クリアランスが設定されているため、回路基板が下方に凸状をなして反っている場合、端子は回路基板に追従して下方に移動することができ、回路基板とリードとの接続不良を抑制しやすい。
【0014】
(3)前記複数の端子は、下方から前記ハウジングと係止する当接部を有し、前記ハウジングは、上方から前記当接部と係止する上方係止部を有し、前記上方係止部と前記当接部とが係止することで、前記複数の端子は、前記ハウジングから上方に抜けないようになっており、前記基準位置において、前記当接部と前記上方係止部との間には、上下方向に第2クリアランスが設定されていることが好ましい。
【0015】
このような構成によると、基準位置において、端子の当接部と上方係止部との間には、上下方向に第2クリアランスが設定されているため、回路基板が上方に凸状をなして反っている場合、端子は回路基板に追従して上方に移動することができ、回路基板とリードとの接続不良を抑制しやすい。
【0016】
(4)前記ハウジングは、前記ハウジングを前記回路基板上に固定する固定部を有していることが好ましい。
【0017】
このような構成によると、固定部によりハウジングを回路基板上に固定することができる。
【0018】
(5)前記ハウジングは、上下方向にのび、前記係止突起に摺接するガイド凹部を有し、前記係止突起と前記ガイド凹部とが摺接することで、前記複数の端子のそれぞれが独立して上下方向に移動することが案内されることが好ましい。
【0019】
このような構成によると、端子が上下方向に移動しやすくなる。また、上下方向にのびる軸を中心とする端子の回転を抑制することができる。
【0020】
(6)前記係止突起は、上下方向に直交する方向に弾性変形可能に形成されていることが好ましい。
【0021】
このような構成によると、端子をハウジングに収容しやすい。
【0022】
(7)前記複数の端子は、上下方向に直交する並び方向に並んでおり、前記係止突起は、上下方向及び前記並び方向に直交する方向に突出して配されていることが好ましい。
【0023】
このような構成によると、並び方向におけるハウジング及び表面実装コネクタの寸法を小さくすることができる。
【0024】
(8)前記ハウジングは、上方に開口するフード部を有し、嵌合相手である相手方コネクタと下方から嵌合することが好ましい。
【0025】
このような構成によると、表面実装コネクタと相手方コネクタとの嵌合方向が上下方向となり、端子が移動可能とされる方向と一致するので、複数の端子が独立して上下方向に移動しても、表面実装コネクタと相手方コネクタとの嵌合が阻害されにくい。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態について説明する。本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0027】
<実施形態>
本開示の実施形態について、図1から図15を参照しつつ説明する。以下の説明においては、矢線Zの示す方向を上方、矢線Xの示す方向を前方、矢線Yの示す方向を左方として説明する。なお、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0028】
[表面実装コネクタ]
本実施形態の表面実装コネクタ10は、例えば車両等に搭載されるものであって、図1および図2に示すように、複数の端子20(実施形態では20個)と、複数の端子20を並列して収容するハウジング30と、を備える。本実施形態では、複数の端子20は二列に並んでおり、複数の端子20の並び方向は左右方向とされている。表面実装コネクタ10は、図6に示すように、上下方向に板厚方向を有する回路基板5上に取り付けられ、嵌合相手となる相手方コネクタ(図示せず)に下方から嵌合するようになっている。
【0029】
[端子、リード]
端子20は、導電性金属により構成され、図5に示すように、端子本体21と、端子本体21の上側に配され、タブ形状をなす端子接続部22と、端子本体21の下側に配され、端子本体21に対して屈曲されたリード23と、を備える。リード23は、回路基板5上の導電路(図示せず)に半田付けにより電気的に接続されるようになっている(図7参照)。図3に示すように、ハウジング30において左右方向に二列に並ぶ複数の端子20のうち、前列の端子20は、端子本体21に対してリード23が前方にのびるように配され、後列の端子20は、端子本体21に対してリード23が後方にのびるように配されている。図5では、端子20が後列に配されるものとして前後方向及び左右方向を記し、端子20の構成については、特に断らない限り、図5に記載の方向に基づいて説明する。
【0030】
[当接部]
図5に示すように、端子20は、端子本体21に対して折り畳まれた板状の折り畳み部24と、折り畳み部24の下側に設けられた係止突起25と、を有する。折り畳み部24は、端子20の上下方向における中央位置よりやや下側に位置する。折り畳み部24は、上下方向にのびる角線状の端子本体21の右側縁から延出され、左方に折り曲げられている。折り畳み部24は、端子本体21の後面に重なるように配されている。折り畳み部24の上面は、水平面と平行になっており、当接部26とされている。なお、本明細書では、水平面とは重力が働く方向に直交する面のことをいう。また、重力が働く方向は下方であるものとする。
【0031】
[係止突起]
図5に示すように、折り畳み部24の下端部には、下方にのびるとともに、後方に突出する係止突起25が設けられている。係止突起25は、折り畳み部24の下端部を基端として片持ち状に形成されており、前後方向に弾性変形可能とされている。図3に示すように、係止突起25の端子本体21に対する突出量は、上端部から下方に向かうにつれて大きくなり、下端部近傍においては略一定となっている。すなわち、係止突起25の上側部分は、なだらかに傾斜する山形をなす傾斜面25Tとされている。係止突起25の下面25Aは、水平面と平行とされている。
【0032】
[ハウジング、フード部]
ハウジング30は、絶縁性の合成樹脂からなり、図1及び図2に示すように、左右方向に長く、上下方向に開口した箱状に形成されている。ハウジング30の右壁30Cおよび左壁30Dには、ペグ装着部31が設けられており、金属板からなるペグ32(固定部の一例)が装着されるようになっている。図6に示すように、ペグ32を回路基板5上の固定ランド(図示せず)に半田付けすることにより、ハウジング30が回路基板5上に固定される。図1に示すように、ハウジング30は上方に開口するフード部33を有し、フード部33内には端子接続部22が上方に突出している。フード部33は、相手方コネクタ(図示せず)を受け入れるようになっている。
【0033】
[ガイド凹部]
図4に示すように、ハウジング30の内部には、複数の端子20をそれぞれ収容する複数の端子収容部34が設けられている。端子収容部34は、平面視で方形状をなす中央収容部35と、中央収容部35から前方または後方に窪んだガイド凹部36と、を有する。中央収容部35は端子本体21及び折り畳み部24を収容し、ガイド凹部36は係止突起25を収容するようになっている。中央収容部35の前後方向及び左右方向の寸法は、それぞれ折り畳み部24(及び端子本体21)の前後方向及び左右方向の最大寸法と同一かやや大きく設定されている。ガイド凹部36の前後方向及び左右方向の寸法は、それぞれ係止突起25の前後方向及び左右方向の寸法と同一かやや大きく設定されている。したがって、係止突起25とガイド凹部36とが摺接可能とされている。
【0034】
図4に示すように、表面実装コネクタ10において、端子20は、係止突起25が前方または後方(上下方向及び並び方向に直交する方向の一例)に突出するように配されており、端子20の左右方向の寸法は前後方向の寸法に比べて小さくなっている。これにより、ハウジング30及び表面実装コネクタ10の左右方向の寸法を小さくすることができる。
【0035】
[上方係止部、下方係止部]
図3に示すように、中央収容部35の上側には、水平面に平行な面とされる上方係止部37が設けられている。上方係止部37は、当接部26に対向するように配されている。ガイド凹部36は、上下方向にのび、溝状をなしている。ガイド凹部36の下端部は、水平面と平行な面となっており、下方係止部38とされている。下方係止部38は、係止突起25の下面25Aに対向するように配されている。下方係止部38の下側の前壁30A及び後壁30Bには、下方に向かうにつれて外側(前壁30Aにおいては前側、後壁30Bにおいては後側)に位置する誘い込み面39が設けられている。
【0036】
表面実装コネクタ10の組み付けに際し、複数の端子20は、下方からハウジング30に挿入され、端子収容部34の内部に収容される。ハウジング30の誘い込み面39と、端子20の係止突起25の傾斜面25Tと、が摺接することによって、端子20をハウジング30の内部に下方からスムーズに挿入することができる。
【0037】
端子20のハウジング30への挿入が進むと、端子20の係止突起25が、ハウジング30の前壁30Aおよび後壁30Bと摺接して弾性変形した状態から、自然状態に復帰する。すなわち、係止突起25の下面25Aが、下方係止部38よりも上方に配されることで、端子20のハウジング30への組み付けは完了する(図3参照)。
【0038】
図3に示すように、複数の端子20のそれぞれは、ハウジング30において独立して上下方向に移動可能に支持されている。すなわち、端子20の当接部26がハウジング30の上方係止部37に係止するまで、端子20はハウジング30に対して上方に移動することができる。また、端子20の係止突起25の下面25Aが、ハウジング30の下方係止部38に係止するまで、端子20はハウジング30に対して下方に移動することができる。図3では、端子20は、自重により、係止突起25の下面25Aが下方係止部38に係止した状態となっている。
【0039】
また、図4に示すように、係止突起25とハウジング30のガイド凹部36とは摺接しているため、端子20は、ハウジング30に対して上下方向に平行移動することができる。すなわち、ハウジング30において、上下方向(図4における紙面垂直方向)にのびる軸を中心とする端子20の回転や、左右方向及び前後方向における端子20の移動は、抑制されている。
【0040】
次に、表面実装コネクタ10が回路基板5上に固定された状態について、図6から図15を参照しつつ説明する。図6に示すように、リード23およびペグ32が回路基板5に半田付けされることで、表面実装コネクタ10は、回路基板5上に取り付けられる。表面実装コネクタ10の回路基板5への半田付けは、リフロー等によりなされる。
【0041】
[水平な回路基板、基準位置、第1クリアランス、第2クリアランス]
図6は、水平な回路基板5A(回路基板の一例)上に取り付けられた表面実装コネクタ10の背面図である。ハウジング30が水平な回路基板5A上に固定された際に複数の端子20が配される上下方向の位置は、図7に示す基準位置とされている。図7に示すように、基準位置では、リード23が水平な回路基板5Aに接触しており、端子20は、図3に示す自重による係止位置よりもハウジング30に対して上方で支持されている。すなわち、基準位置において、係止突起25の下面25Aと下方係止部38との間には、上下方向に第1クリアランスCL1が設定されている。また、基準位置において、複数の端子20の当接部26と上方係止部37との間には、上下方向に第2クリアランスCL2が設定されている。
【0042】
図6に示すように、本実施形態では、ペグ32の下端は、ハウジング30の下端より下方に位置するようになっているため、ハウジング30の下端より下方に出ているペグ32の上下方向の長さによって、回路基板5に対するハウジング30の上下方向の位置が決まっている。したがって、ペグ32の上下方向の長さを変更することで、回路基板5に対するハウジング30の上下方向の位置を変更することができ、第1クリアランスCL1および第2クリアランスCL2も変更することができる(図7参照)。
【0043】
以下、回路基板5が下方または上方に反っている場合について説明する。回路基板5の反りは、リフロー処理中の熱変形によるものだけでなく、回路基板5の製造工程等で生じたものも含まれる。
【0044】
図8は、下方に凸状をなして反っている回路基板5B(回路基板の一例)上に取り付けられた表面実装コネクタ10の背面図である。図8において、一対のペグ32の下端部を結ぶ一点鎖線は、水平な基準面Hを示しており、リード23が実装される部分の回路基板5Bの表面S1は基準面Hより下方に位置している。図9に示すように、基準面Hと回路基板5Bの表面S1との上下方向の距離を、下方反り量W1と定義する。下方反り量W1は、左右方向において、ペグ32に近づくほど小さく、左右方向中央位置で大きくなっている(図8参照)。一方、簡単のため、前後方向においては、下方反り量W1は一定であるものとする。すなわち、左右方向における同じ位置であれば、前後方向における位置が異なっても下方反り量W1は同一であるものとして説明する。
【0045】
図10に示すように、回路基板5Bは下方に凸状をなしているため、端子20は、自重によって、図7の基準位置よりも下方に移動する。端子20は、係止突起25の下面25Aと下方係止部38とが係止する、もしくはリード23と回路基板5Bの表面S1とが接触するまで下方に移動する。ここで、第1クリアランスCL1(図7参照)を下方反り量W1(図9参照)の最大値以上に設定することで、リード23を回路基板5Bの表面S1に確実に接触させることができる。したがって、回路基板5Bが、図8に示すように、下方に凸状をなして反っている場合でも、リード23と回路基板5Bとの半田付けの接続不良を抑制することが可能である。
【0046】
図11は、上方に凸状をなして反っている回路基板5C(回路基板の一例)上に取り付けられた表面実装コネクタ10の背面図である。図11において、一対のペグ32の下端部を結ぶ一点鎖線は、水平な基準面Hを示しており、リード23が実装される部分の回路基板5Cの表面S2は基準面Hより上方に位置している。図12に示すように、基準面Hと回路基板5Cの表面S2との上下方向の距離を、上方反り量W2と定義する。上方反り量W2は、左右方向において、ペグ32に近づくほど小さく、左右方向中央位置で大きくなっている(図11参照)。一方、簡単のため、前後方向においては、上方反り量W2は一定であるものとする。すなわち、左右方向における同じ位置であれば、前後方向における位置が異なっても上方反り量W2は同一であるものとして説明する。
【0047】
図13に示すように、回路基板5Cは上方に凸状をなしているため、回路基板5Cがリード23に当接することで、端子20は、図7の基準位置よりも上方に移動する。端子20は、当接部26と上方係止部37とが係止するまでハウジング30に対して上方に移動することができる。ここで、第2クリアランスCL2(図7参照)を上方反り量W2(図12参照)の最大値以上に設定することで、ハウジング30が端子20に当たって上方に移動しないようにすることができる。これにより、ペグ32およびペグ32の近くに配されたリード23が回路基板5C上から離れることを抑制することができる(図11参照)。また、中央位置付近において回路基板5Cが当接しているリード3に、ハウジング30の荷重がかからないようにすることができる。したがって、回路基板5Cが、図11に示すように、上方に凸状をなして反っている場合でも、リード23と回路基板5Cとの半田付けの接続不良を抑制することができる。
【0048】
図14は、上方に凸状をなして反っている回路基板5D(回路基板の一例)上に取り付けられた表面実装コネクタ10の側方断面図である。図14において、一点鎖線は、一対のペグ32の下端部を結んでいる水平な基準面Hを示しており、後列の端子20のリード23が実装される部分の回路基板5Dの表面S3は基準面Hより上方に位置している。図15に示すように、基準面Hと回路基板5Dの表面S3との上下方向の距離を、上方反り量W3と定義する。上方反り量W3は、前後方向において、後列の端子20付近で大きく、前列の端子20付近では小さくなっている(図14参照)。一方、簡単のため、左右方向においては、上方反り量W3は一定であるものとする。すなわち、前後方向における同じ位置であれば、左右方向における位置が異なっても上方反り量W3は同一であるものとして説明する。
【0049】
回路基板5Dにおいても回路基板5Cと同様に、第2クリアランスCL2(図7参照)を上方反り量W3(図15参照)の最大値以上に設定することで、ハウジング30が端子20に当たって上方に移動しないようにすることができる。したがって、回路基板5Dが、図14に示すように、上方に凸状をなして反っている場合でも、リード23と回路基板5Dとの半田付けの接続不良を抑制することができる。
【0050】
図示しないものの、例えば、回路基板の下方反り量及び上方反り量が、前後方向及び左右方向において変化するような場合であっても、第1クリアランス及び第2クリアランスを下方反り量及び上方反り量の最大値に合わせて適切に設定することにより、上記と同様に、リードと回路基板との半田付けの接続不良を抑制することができる。
【0051】
[実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、以下の作用、効果を奏する。
本実施形態にかかる表面実装コネクタ10は、上下方向を板厚方向とする回路基板5上に取り付けられる表面実装コネクタ10であって、複数の端子20と、複数の端子20を並列して収容するハウジング30と、を備え、複数の端子20の下端部には、回路基板5に接続されるリード23が設けられ、複数の端子20のそれぞれは、ハウジング30において独立して上下方向に移動可能に支持されている。
【0052】
上記の構成によれば、回路基板5の反りに合わせて、複数の端子20のそれぞれが、独立して上下方向に移動することで、リード23と回路基板5とが当接した状態を確保することができる。したがって、リード23と回路基板5との接続不良を抑制することができる。
【0053】
本実施形態では、複数の端子20は、上方からハウジング30と係止する係止突起25を有し、ハウジング30は、下方から係止突起25と係止する下方係止部38を有し、係止突起25と下方係止部38とが係止することで、複数の端子20は、ハウジング30から下方に抜けないようになっており、ハウジング30が水平な回路基板5A上に固定された際に複数の端子20が配される上下方向の位置は、基準位置とされており、基準位置において、係止突起25と下方係止部38との間には、上下方向に第1クリアランスCL1が設定されている。
【0054】
上記の構成によれば、基準位置において、係止突起25と下方係止部38との間には、上下方向に第1クリアランスCL1が設定されているため、回路基板5Bが下方に凸状をなして反っている場合、端子20は回路基板5Bに追従して下方に移動することができ、回路基板5Bとリード23との接続不良を抑制しやすい。
【0055】
本実施形態では、複数の端子20は、下方からハウジング30と係止する当接部26を有し、ハウジング30は、上方から当接部26と係止する上方係止部37を有し、上方係止部37と当接部26とが係止することで、複数の端子20は、ハウジング30から上方に抜けないようになっており、基準位置において、当接部26と上方係止部37との間には、上下方向に第2クリアランスCL2が設定されている。
【0056】
上記の構成によれば、基準位置において、端子20の当接部26と上方係止部37との間には、上下方向に第2クリアランスCL2が設定されているため、回路基板5C,5Dが上方に凸状をなして反っている場合、端子20は回路基板5C,5Dに追従して上方に移動することができ、回路基板5C,5Dとリード23との接続不良を抑制しやすい。
【0057】
本実施形態では、ハウジング30は、ハウジング30を回路基板5上に固定するペグ32を有している。
【0058】
上記の構成によれば、ペグ32によりハウジング30を回路基板5上に固定することができる。
【0059】
本実施形態では、ハウジング30は、上下方向にのび、係止突起25に摺接するガイド凹部36を有し、係止突起25とガイド凹部36とが摺接することで、複数の端子20のそれぞれが独立して上下方向に移動することが案内される。
【0060】
上記の構成によれば、端子20が上下方向に移動しやすくなる。また、上下方向にのびる軸を中心とする端子20の回転を抑制することができる。
【0061】
本実施形態では、係止突起25は、上下方向に直交する方向に弾性変形可能に形成されている。
【0062】
上記の構成によれば、端子20をハウジング30に収容しやすい。
【0063】
本実施形態では、複数の端子20は、上下方向に直交する左右方向に並んでおり、係止突起25は、上下方向及び左右方向に直交する前後方向に突出して配されている。
【0064】
上記の構成によれば、左右方向におけるハウジング30及び表面実装コネクタ10の寸法を小さくすることができる。
【0065】
本実施形態では、ハウジング30は、上方に開口するフード部33を有し、嵌合相手である相手方コネクタと下方から嵌合する。
【0066】
上記の構成によれば、表面実装コネクタ10と相手方コネクタとの嵌合方向が上下方向となり、端子20が移動可能とされる方向と一致するので、複数の端子20が独立して上下方向に移動しても、表面実装コネクタ10と相手方コネクタとの嵌合が阻害されにくい。
【0067】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、ハウジング30は、上方に開口するフード部33を有し、相手方コネクタと下方から嵌合する構成としたが、これに限られることはなく、例えば、ハウジングは前方に開口するフード部を有し、相手方コネクタと後方から嵌合する構成としてもよい。
(2)上記実施形態では、係止突起25は弾性変形可能とされたが、これに限られることはなく、係止突起は弾性変形不可とされてもよい。
(3)上記実施形態では、表面実装コネクタ10は、並び方向に二列に並んだ複数の端子20を備える構成としたが、これに限られることはなく、表面実装コネクタは、一列または三列以上に並んだ複数の端子を備える構成としてもよい。
(4)上記実施形態では、端子20はタブ形状を有する雄端子とされていたが、これに限られることはなく、端子は筒状をなす雌端子としてもよい。
(5)上記実施形態では、表面実装コネクタ10の固定部はペグ32であったが、これに限られることはない。例えば、固定部は、回路基板のスルーホールに実装されるレグや、回路基板を貫通する貫通孔に嵌め込まれるスナップフィット等でもよい。
【符号の説明】
【0068】
5: 回路基板
5A: 水平な回路基板
5B: 下方に凸状をなして反っている回路基板
5C: 上方に凸状をなして反っている回路基板
5D: 上方に凸状をなして反っている回路基板
10: 表面実装コネクタ
20: 端子
21: 端子本体
22: 端子接続部
23: リード
24: 折り畳み部
25: 係止突起
25A: 下面
25T: 傾斜面
26: 当接部
30: ハウジング
30A: 前壁
30B: 後壁
30C: 右壁
30D: 左壁
31: ペグ装着部
32: ペグ
33: フード部
34: 端子収容部
35: 中央収容部
36: ガイド凹部
37: 上方係止部
38: 下方係止部
39: 誘い込み面
CL1: 第1クリアランス
CL2: 第2クリアランス
H: 基準面
S1,S2,S3: 回路基板の表面
W1: 下方反り量
W2,W3: 上方反り量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15