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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】建設機械のキャブ
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20240723BHJP
   E02F 9/16 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B60H1/00 102U
E02F9/16 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021058274
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154981
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100214961
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 洋三
(72)【発明者】
【氏名】松島 慎之介
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-264654(JP,A)
【文献】特開2006-8074(JP,A)
【文献】実開昭61-193857(JP,U)
【文献】特開平7-47835(JP,A)
【文献】実開昭60-111759(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
E02F 9/16
B60S 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のキャブであって、
左右に間隔をおいて配置された右側壁及び左側壁であって前記右側壁及び前記左側壁の一方が乗降口を有し、前記右側壁及び前記左側壁の他方が横窓を画定する横窓枠と前記横窓枠に支持された少なくとも一つの横透明板とを有する特定側壁である右側壁及び左側壁と、
空気を吹き出す吹出口であるエアコン吹出口を有するエアコンユニットと、
前記横窓枠の下方において前記特定側壁に沿って前後に延びる横梁と、
前記横梁よりも上方に配置され、前記横窓枠の下辺に沿って前後に延び、前記エアコンユニットから吹き出された空気の少なくとも一部が供給される横ダクトであって、前記少なくとも一つの横透明板に向けて空気を吹き出す吹出口である少なくとも一つの横ダクト吹出口を有する横ダクトと、を備える建設機械のキャブ。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械のキャブであって、
前記横梁は、前記エアコンユニットよりも上方に配置されている、建設機械のキャブ。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械のキャブであって、
前記エアコン吹出口から吹き出された空気を前記横ダクトに案内する案内ダクトであって前記横梁の側方において上方に延びて前記横ダクトに接続された案内ダクトをさらに備える建設機械のキャブ。
【請求項4】
請求項3に記載の建設機械のキャブであって、
前記エアコンユニットは、前記特定側壁の前部に沿って配置され、
前記エアコン吹出口は、前記エアコンユニットの上部に形成され、
前記案内ダクトは、平面視において前記エアコン吹出口の少なくとも一部に重なるような位置に配置されている、建設機械のキャブ。
【請求項5】
請求項4に記載の建設機械のキャブであって、
前記少なくとも一つの横ダクト吹出口は、平面視において前記エアコン吹出口の少なくとも一部に重なるような位置に配置されている、建設機械のキャブ。
【請求項6】
請求項5に記載の建設機械のキャブであって、
前記エアコン吹出口、前記案内ダクト及び前記少なくとも一つの横ダクト吹出口は、前記エアコン吹出口から前記少なくとも一つの横ダクト吹出口まで直線状に連続する流路を形成している、建設機械のキャブ。
【請求項7】
請求項3~6の何れか1項に記載の建設機械のキャブであって、
前記案内ダクトは、その少なくとも一部が平面視において前記横ダクトに重なるような位置に配置され、
前記案内ダクトの前後方向の寸法は、前記案内ダクトの左右方向の幅よりも大きく、
前記案内ダクトの左右方向の前記幅は、前記横ダクトの左右方向の幅よりも小さい、建設機械のキャブ。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の建設機械のキャブであって、
前記少なくとも一つの横透明板は、前記横窓における前側の部分に配置された第1の横透明板と、前記横窓における後側の部分に配置された第2の横透明板と、を含み、
前記少なくとも一つの横ダクト吹出口は、前記第1の横透明板に向けて空気を吹き出す吹出口である第1の横ダクト吹出口と、前記第2の横透明板に向けて空気を吹き出す吹出口である第2の横ダクト吹出口と、を含む、建設機械のキャブ。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の建設機械のキャブであって、
前記少なくとも一つの横ダクト吹出口には、空気の吹き出し方向を調節するためのルーバーが配置されている、建設機械のキャブ。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の建設機械のキャブであって、
前記右側壁の後部と前記左側壁の後部とを接続する後側壁と、
前記後側壁に沿って左右方向に延び、前記横ダクトによって後方に案内される空気の少なくとも一部を受け入れることが可能な後ダクトと、をさらに備える建設機械のキャブ。
【請求項11】
請求項10に記載の建設機械のキャブであって、
前記後ダクトは、前記横ダクトよりも上方に配置された後ダクト本体と、前記後ダクト本体と前記横ダクトの後部とを接続する接続部と、を備える、建設機械のキャブ。
【請求項12】
請求項11に記載の建設機械のキャブであって、
前記後側壁は、後窓を画定する後窓枠と前記後窓枠に支持された後透明板とを有し、
前記後ダクトは、前記後透明板に向けて空気を吹き出す吹出口である第1の後ダクト吹出口を有する、建設機械のキャブ。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の建設機械のキャブであって、
前記後ダクトの前方に配置された運転席であって座部と背もたれ部とを有する運転席をさらに備え、
前記後ダクトは、前方に向けて空気を吹き出す吹出口である第2の後ダクト吹出口をさらに有し、
前記第2の後ダクト吹出口は、当該第2の後ダクト吹出口の少なくとも一部が正面視において前記背もたれ部に対して側方にずれるような位置に配置されている、建設機械のキャブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアコンユニットを備えた建設機械のキャブに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の油圧ショベルは、空調装置と、この空調装置からキャブ内の作業装置側の側面部及び背面部に沿って配置された配管装置と、を備える。空調装置で発生した風は、配管装置の第1側面部ダクト、第2側面部ダクト、背面横断ダクトおよび左右の背面塔形ダクトにより運転席の後方へ供給される。特許文献2の油圧ショベルは、空調ユニットと、中部ダクトと、上部ダクトと、下部ダクトと、を備える。空調ユニットにおいて空調された空気は、中部ダクト、上部ダクト及び下部ダクトにそれぞれ送風され、さらに吹き出し部材からキャブの室内に吹き出される。特許文献1,2の油圧ショベルでは、左側壁が乗降口を有し、右側壁が横窓を画定する横窓枠を有し、エアコンユニット及びダクトは、オペレータの乗降の邪魔にならないように右側壁に沿うように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-245894号公報
【文献】特開2008-285162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、油圧ショベルなどの建設機械は、右側壁を補強するために横窓枠の下方において右側壁に沿って前後に延びる横梁を備えていることが望ましい。また、横窓を塞ぐガラス板などの透明板は着霜又は結露することがあるため、右側壁に沿って前後に延びる横ダクトは、透明板を通じたオペレータの視界の確保のために透明板に向けて空調空気を吹き出す吹出口を有することが望ましい。そして、着霜又は結露を効果的に抑制するためには、前記吹出口は、透明板の近くに配置されることが望ましい。
【0005】
例えば、前記横梁を横窓枠の下辺に沿って前後に延びるように配置し、前記横ダクトを横梁の下方において横梁に沿って前後に延びるように配置すると、透明板に対する横ダクトの下方への隔たりが大きくなる。透明板の近くに吹出口を配置するためには、例えば、透明板の近くまで横ダクトから上方に延びる延長ダクトを配置し、この延長ダクトの上端に前記吹出口を形成することが考えられる。しかしながら、前後に延びる横ダクトから上方に延びる延長ダクトを分岐させる構造では、吹出口から吹き出される空気の風量が少なくなりやすい。また、透明板に近い位置に吹出口を配置するためには、例えば、横ダクトを横梁の左側に隣接するように配置し、この横ダクトの上部に前記吹出口を形成することが考えられる。しかしながら、横梁と横ダクトを左右に重ねて配置する構造では、キャブの内部空間において横梁及び横ダクトがこれらの幅を足し合わせた寸法だけキャブの幅方向の内側(左側)に張り出すように配置されるため、キャブの内部空間を狭める。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、キャブの内部空間を狭めることを抑制しながら、側壁の補強及び視界の確保を実現することができる建設機械のキャブを提供することを目的とする。
【0007】
提供される建設機械のキャブは、左右に間隔をおいて配置された右側壁及び左側壁であって前記右側壁及び前記左側壁の一方が乗降口を有し、前記右側壁及び前記左側壁の他方が横窓を画定する横窓枠と前記横窓枠に支持された少なくとも一つの横透明板とを有する特定側壁である右側壁及び左側壁と、空気を吹き出す吹出口であるエアコン吹出口を有するエアコンユニットと、前記横窓枠の下方において前記特定側壁に沿って前後に延びる横梁と、前記横梁よりも上方に配置され、前記横窓枠の下辺に沿って前後に延び、前記エアコンユニットから吹き出された空気の少なくとも一部が供給される横ダクトであって、前記少なくとも一つの横透明板に向けて空気を吹き出す吹出口である少なくとも一つの横ダクト吹出口を有する横ダクトと、を備える。
【0008】
このキャブでは、横窓枠の下方において特定側壁を補強する横梁よりも上方において横ダクトが横窓枠の下辺に沿って前後に延びるように配置されているので、横ダクトから上方に延びる延長ダクトを分岐させることなく、かつ、横梁と横ダクトを左右に重ねて配置しなくても、横ダクトに形成された横ダクト吹出口を横窓枠の下辺の近傍に配置することができる。これにより、キャブの内部空間を狭めることを抑制しながら、特定側壁の補強及び横透明板を通じた視界の確保が実現される。
【0009】
前記横梁は、前記エアコンユニットよりも上方に配置されていることが好ましい。この構成では、エアコンユニットよりも上方で横ダクトよりも下方である中間高さ位置に横梁を配置することにより、横窓枠の下辺に対する横梁の下方への隔たりが大きくなるのを抑制して横窓枠の下辺に比較的近い位置で横梁が特定側壁を補強することが可能になる。これにより、特定側壁を効果的に補強することと、横ダクトに形成された横ダクト吹出口を横窓枠の下辺の近傍に配置することと、を両立させることが可能になる。
【0010】
前記建設機械のキャブは、前記エアコン吹出口から吹き出された空気を前記横ダクトに案内する案内ダクトであって前記横梁の側方において上方に延びて前記横ダクトに接続された案内ダクトをさらに備えることが好ましい。この構成では、前記中間高さ位置に配置された横梁の側方において上方に延びる案内ダクトが、横梁の下方に配置されたエアコンユニットのエアコン吹出口から吹き出された空気を、横梁の上方に配置された横ダクトに案内することができる。この案内ダクトは、横梁の前後の長さと同程度の前後の寸法を有する必要はなく、横ダクトに供給すべき空気の風量を確保できるような前後の寸法を有していればよい。従って、案内ダクトが横梁の側方において上方に延びるように配置されていても、キャブの内部空間は、実質的にほとんど狭められない。
【0011】
前記エアコンユニットは、前記特定側壁の前部に沿って配置され、前記エアコン吹出口は、前記エアコンユニットの上部に形成され、前記案内ダクトは、平面視において前記エアコン吹出口の少なくとも一部に重なるような位置に配置されていることがより好ましい。エアコンユニットが特定側壁の前部に沿って配置され、その上方に案内ダクトが配置されることにより、当該案内ダクトは、操作レバーの可動域(作動範囲)を避けた領域において横梁を乗り越えることができる。これにより、後方小旋回型油圧ショベル(ミニショベル)のように、キャブの内部空間が小さく、例えば運転席の下などに十分なスペースがない場合であっても、キャブの右前下又は左前下にエアコンユニットを配置し、操作レバーの動作の邪魔にならないように案内ダクトを配置することができる。しかも、案内ダクトは、エアコン吹出口から上方に吹き出された空気を当該エアコン吹出口の少なくとも一部に重なるような位置で当該案内ダクト内に受け入れることができるので、案内ダクトに供給される空気の風量が確保されやすくなる。
【0012】
前記少なくとも一つの横ダクト吹出口は、平面視において前記エアコン吹出口の少なくとも一部に重なるような位置に配置されていることがさらに好ましい。この構成では、案内ダクトが平面視においてエアコン吹出口の少なくとも一部に重なるような位置に配置されているだけでなく、少なくとも一つの横ダクト吹出口が平面視においてエアコン吹出口の少なくとも一部に重なるような位置に配置されている。これにより、エアコン吹出口から上方に吹き出された空気が案内ダクトを介して横ダクト吹出口までスムーズに流れることが可能になり、横ダクト吹出口から吹き出される空気の風量をより確保しやすくなる。
【0013】
前記エアコン吹出口、前記案内ダクト及び前記少なくとも一つの横ダクト吹出口は、前記エアコン吹出口から前記少なくとも一つの横ダクト吹出口まで直線状に連続する流路を形成していることがさらに好ましい。この構成では、エアコン吹出口から上方に吹き出された空気が案内ダクトを介して横ダクト吹出口までよりスムーズに流れることが可能になり、横ダクト吹出口から吹き出される空気の風量をさらに確保しやすくなる。
【0014】
前記案内ダクトは、その少なくとも一部が平面視において前記横ダクトに重なるような位置に配置され、前記案内ダクトの前後方向の寸法は、前記案内ダクトの左右方向の幅よりも大きく、前記案内ダクトの左右方向の前記幅は、前記横ダクトの左右方向の幅よりも小さいことが好ましい。この構成では、左右方向の内側(特定側壁から運転席に向かう方向)への案内ダクトの出っ張りを小さくして内部空間を確保しつつ、案内ダクトが横ダクトに供給することが可能な風量を確保することができる。
【0015】
前記少なくとも一つの横透明板は、前記横窓における前側の部分に配置された第1の横透明板と、前記横窓における後側の部分に配置された第2の横透明板と、を含み、前記少なくとも一つの横ダクト吹出口は、前記第1の横透明板に向けて空気を吹き出す吹出口である第1の横ダクト吹出口と、前記第2の横透明板に向けて空気を吹き出す吹出口である第2の横ダクト吹出口と、を含むことが好ましい。この構成では、第1の横透明板と第2の横透明板のそれぞれにおいて除霜すること又は結露を除去することができるので、第1の横透明板と第2の横透明板のそれぞれを通じた視界を確保することができる。
【0016】
前記少なくとも一つの横ダクト吹出口には、空気の吹き出し方向を調節するためのルーバーが配置されていることが好ましい。この構成では、横ダクト吹出口から吹き出される空気の吹き出し方向がルーバーによってオペレータの所望の方向に調節されることで、横透明板における所望の部位を除霜すること又は結露を除去することができる。
【0017】
前記建設機械のキャブは、前記右側壁の後部と前記左側壁の後部とを接続する後側壁と、前記後側壁に沿って左右方向に延び、前記横ダクトによって後方に案内される空気の少なくとも一部を受け入れることが可能な後ダクトと、をさらに備えることが好ましい。この構成では、エアコンユニットから吹き出される空気を横ダクトを介して後ダクトに供給することができる。
【0018】
前記後ダクトは、前記横ダクトよりも上方に配置された後ダクト本体と、前記後ダクト本体と前記横ダクトの後部とを接続する接続部と、を備えることが好ましい。上述したように横ダクトは横梁よりも上方に配置されているので、この構成のように後ダクト本体が横ダクトよりも上方に配置されている場合であっても、後ダクト本体と横ダクトとを接続する接続部の傾斜が大きくなることを抑制できる。これにより、後ダクトへの風量が確保されやすくなる。
【0019】
前記後側壁は、後窓を画定する後窓枠と前記後窓枠に支持された後透明板とを有し、前記後ダクトは、前記後透明板に向けて空気を吹き出す吹出口である第1の後ダクト吹出口を有することが好ましい。この構成では、後透明板を除霜すること又は結露を除去することができ、これにより、後窓からの視界も確保できる。
【0020】
前記建設機械のキャブは、前記後ダクトの前方に配置された運転席であって座部と背もたれ部とを有する運転席をさらに備え、前記後ダクトは、前方に向けて空気を吹き出す吹出口である第2の後ダクト吹出口をさらに有し、前記第2の後ダクト吹出口は、当該第2の後ダクト吹出口の少なくとも一部が正面視において前記背もたれ部に対して側方にずれるような位置に配置されていることが好ましい。この構成では、第2の後ダクト吹出口から前方に空気が吹き出されることにより、運転席にすわるオペレータの快適性を効果的に向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本開示によれば、キャブの内部空間を狭めることを抑制しながら、側壁の補強及び視界の確保を実現することができる建設機械のキャブが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の実施形態に係るキャブを備える建設機械を示す側面図である。
図2】前記建設機械におけるキャブの配置を説明するための平面図である。
図3】前記キャブの内部を示す斜視図である。
図4】前記キャブの内部を示す平面図である。
図5】前記キャブの右側壁を示す側面図である。
図6】前記キャブの内部を示す正面図である。
図7図5のVII-VII線における断面図である。
図8図5のVIII-VIII線における断面図である。
図9】前記キャブにおけるエアコンユニットのエアコン吹出口、上流ダクト、案内ダクト、横ダクト、及び横ダクト吹出口の位置関係を説明するための概略の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。
【0024】
[建設機械の全体構造]
図1は、実施形態に係るキャブ105を備える油圧ショベル100を示す側面図であり、図2は、油圧ショベル100におけるキャブ105の配置を説明するための平面図である。図1及び図2に示す本実施形態に係る油圧ショベル100は、後方小旋回型油圧ショベルである。後方小旋回型油圧ショベルは、建設機械の一例である。
【0025】
油圧ショベル100は、下部走行体101と、この下部走行体101に旋回可能に支持された上部旋回体102と、この上部旋回体102に起伏可能に支持された作業装置103と、を備える。
【0026】
図面に示される「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」の方向は、油圧ショベル100の上部旋回体102の向きを基準とするものである。これらの方向は、実施形態に係る油圧ショベル100を説明するために便宜上示すものであり、油圧ショベル100の移動方向や使用態様などを限定するものではない。
【0027】
下部走行体101は、左右一対のクローラ式走行装置110,110と、一対のクローラ式走行装置110,110を連結するとともに上部旋回体102を支持する図略の下部フレームと、下部フレームに回動可能に取り付けられた基端部を有するドーザー111と、を備える。図2では、作業装置103及びドーザー111の図示が省略されている。
【0028】
上部旋回体102は、上下に延びる縦軸である旋回中心軸Aの回りに旋回可能となるように下部走行体101の前記下部フレームに支持された上部フレーム104と、上部フレーム104に支持され、箱形状を有するキャブ105と、上部フレーム104の後部に支持されたカウンタウエイト106と、上部フレーム104に支持された機械室107と、上部フレーム104の前部に配置された作業装置取付部108と、を備える。
【0029】
キャブ105と機械室107は、カウンタウエイト106の前方において、平面視で左右に並ぶように配置されている。具体的には、キャブ105は、機械室107の左方に配置され、キャブ105の幅方向(左右方向)の中央は、旋回中心軸Aに対して左にずれた位置にある。機械室107には、例えば油圧ポンプ、タンク等の種々の機器が配置されている。また、カウンタウエイト106とキャブ105との間のスペースには、例えばエンジン112が配置されている。なお、キャブ105、機械室107及びエンジン112の配置は、図1及び図2に示す具体例に限られず、建設機械の仕様に応じて種々の配置を採用可能である。
【0030】
作業装置103は、ブーム103Aと、アーム103Bと、バケット103Cと、これらを作動させる複数の油圧シリンダと、を含む。ブーム103Aの基端部は、作業装置取付部108に取り付けられている。アーム103Bの基端部は、ブーム103Aの先端部に回動可能に取り付けられている。バケット103Cは、アーム103Bの先端部に回動可能に取り付けられている。
【0031】
[キャブの全体構造]
図3は、キャブ105の内部を示す斜視図であり、図4は、キャブ105の内部を示す平面図である。図1図4に示すように、キャブ105は、複数の壁11~14と、天板15と、床板16と、横梁20と、エアコンユニット30と、複数のダクト40,50,60,70,76と、運転席201と、左右の作業装置操作レバー211,212と、ドーザー操作レバー213と、左右の走行ペダル231,232と、左右の走行レバー221,222と、操作パネル214と、を備える。
【0032】
複数の壁11~14は、左右に間隔をおいて配置された右側壁11及び左側壁12と、前後に間隔をおいて配置された前側壁13及び後側壁14と、を含む。前側壁13は、右側壁11の前部と左側壁12の前部とを接続し、後側壁14は、右側壁11の後部と左側壁12の後部とを接続する。天板15及び床板16は、上下に間隔をおいて配置されている。これらの壁11~14、天板15及び床板16は、内部空間を囲むように配置されている。右側壁11は、キャブ105の右側面を含む部分である。右側壁11は、特定側壁の一例である。左側壁12は、キャブ105の左側面を含む部分である。前側壁13は、キャブ105の前面を含む部分である。後側壁14は、キャブ105の後面を含む部分である。天板15は、キャブ105の上面を含む部分である。床板16は、キャブ105の床面を含む部分である。
【0033】
図5に示すように、右側壁11は、右前ピラーP1と、右後ピラーP2と、右上梁P3と、右パネル11Aと、第1の横透明板80W1及び第2の横透明板80W2と、を備える。図5に示すように、右前ピラーP1は、キャブ105の右前部において上下に延びる柱状の部分であり、右後ピラーP2は、キャブ105の右後部において上下に延びる柱状の部分である。右上梁P3は、右前ピラーP1の上端と右後ピラーP2の上端とをつなぐように前後に延びる部分である。右パネル11Aは、右前ピラーP1と右後ピラーP2とを前後につなぐ板状の部材である。
【0034】
上述したように本実施形態に係る油圧ショベル100は、後方小旋回型油圧ショベルであり、例えばエンジン112が配置されるスペースを確保するために、右パネル11Aは、図5に示すように、当該右パネル11Aにおける後側でかつ下側の部分が切り欠かれたような形状を有する。
【0035】
右側壁11は、右窓80Wを画定する横窓枠80を有する。横窓枠80は、右パネル11Aの上に形成されている。第1の横透明板80W1及び第2の横透明板80W2は、横窓枠80にはめ込まれることにより当該横窓枠80に支持されている。第1の横透明板80W1及び第2の横透明板80W2のそれぞれは、例えば透明なガラス板であってもよく、透明な樹脂板であってもよい。第1の横透明板80W1及び第2の横透明板80W2は、運転席201に座るオペレータの右方の視界を確保する。特に、第1の横透明板80W1は、右斜め前方の視界を確保する。オペレータは、第1の横透明板80W1を通じて、バケット103Cを含む作業装置103を目視しながら油圧ショベル100を操縦することができる。また、第1の横透明板80W1及び第2の横透明板80W2における着霜又は結露を抑制してこれらの横透明板80W1,80W2を通じた視界が確保されることにより、オペレータは油圧ショベル100の周りの状況を確認できるため、作業の安全性を高めることが可能である。横窓枠80は、横窓枠の一例であり、右窓80Wは、横窓の一例である。
【0036】
横窓枠80は、前後に延びる下辺81(下枠)と、下辺81よりも上方において前後に延びる上辺82(上枠)と、下辺81の前端と上辺82の前端とをつなぐように上下に延びる前辺83(前枠)と、下辺81の後端と上辺82の後端とをつなぐように上下に延びる後辺84(後枠)と、を含む。
【0037】
図4に示すように、下辺81は、前後に延びる内溝81Aと、内溝81Aよりも外側(右側)において前後に延びる外溝81Bと、を有する。図8に示すように、内溝81A及び外溝81Bのそれぞれには、樹脂製のシール部品であるガラスランが前後に延びるように配置されている。なお、図示は省略するが、上辺82は、下辺81と同様に、内溝と外溝とを有する。
【0038】
第1の横透明板80W1は、右窓80Wの前側部分を塞ぐことが可能な形状を有し、第2の横透明板80W2は、右窓80Wの後側部分を塞ぐことが可能な形状を有する。図5に示す具体例では、第1の横透明板80W1及び第2の横透明板80W2のそれぞれは、側面視で四角形状を有する。第1の横透明板80W1は、例えば下辺81の内溝81Aに沿って前後にスライド可能なように内溝81Aに支持され、第2の横透明板80W2は、例えば下辺81の外溝81Bに沿って前後にスライド可能なように外溝81Bに支持されている。なお、第1の横透明板80W1が外溝81Bに支持され、第2の横透明板80W2が内溝81Aに支持されていてもよい。
【0039】
図1に示すように、左側壁12は、乗降口96を有する。乗降口96には、オペレータがキャブ105に出入りするための開閉扉が配置されている。この開閉扉は、窓(左窓)を有し、前側壁13は前窓を有する。
【0040】
図6に示すように、後側壁14は、後パネル14Aと、後透明板90W1と、を備える。後パネル14Aは、後窓90Wを画定する後窓枠90を有する。後窓枠90は、後パネル14Aの上に形成されている。後透明板90W1は、後窓枠90にはめ込まれることにより当該後窓枠90に支持されている。後透明板90W1は、例えば透明なガラス板であってもよく、透明な樹脂板であってもよい。後透明板90W1は、運転席201に座るオペレータの後方の視界を確保する。
【0041】
後窓枠90は、左右に延びる下辺91と、下辺91よりも上方において左右に延びる上辺92と、下辺91の右端と上辺92の右端とをつなぐように上下に延びる右辺93と、下辺91の左端と上辺92の左端とをつなぐように上下に延びる左辺94と、を含む。後透明板90W1は、後窓90Wを塞ぐことが可能な形状を有する。図6に示す具体例では、後透明板90W1は、正面視で四角形状を有する。
【0042】
横梁20は、右側壁11における横窓枠80の下辺の近傍を補強するための補強部材である。横梁20は、横窓枠80の下方において右側壁11に沿って前後に延びている。エアコンユニット30は、キャブ105の内部空間の空調を行うための装置である。エアコンユニット30は、冷房機能、暖房機能及び除湿機能の少なくとも一つの機能を備える。複数のダクト40,50,60,70,76は、エアコンユニット30から吹き出された空気(空調空気)をキャブ105内の予め設定された複数の領域に案内する。横梁20、エアコンユニット30及び複数のダクト40,50,60,70,76の詳細については後述する。
【0043】
運転席201は、オペレータが座るための座席である。運転席201は平面視においてキャブ105の中央付近に配置されている。運転席201は、座部202と、背もたれ部203と、を備える。座部202は、オペレータの臀部を載せる部分である。背もたれ部203は、座部202の後端部に取り付けられ、この後端部から上方に起立する部分であり、オペレータの胴部を支える。
【0044】
左右の作業装置操作レバー211,212は、作業装置103の動作及び上部旋回体102の旋回動作を行わせるための操作が与えられる操作部材である。具体的には、例えば、右側の作業装置操作レバー211は、ブーム103Aの起伏動作及びバケット103Cの回動動作を行わせるための操作が与えられ、左側の作業装置操作レバー212は、アーム103Bの回動動作及び上部旋回体102の旋回動作を行わせるための操作が与えられる。ただし、左右の作業装置操作レバー211,212の機能の割り当ては、上記の具体例に限られない。ドーザー操作レバー213は、ドーザー111の回動動作を行わせるための操作部材である。図4に示す具体例では、右側の作業装置操作レバー211は、運転席201の右斜め前方に配置され、左側の作業装置操作レバー212は、運転席201の左斜め前方に配置され、ドーザー操作レバー213は、運転席201の右方に配置されている。
【0045】
図4に示す走行レバー221,222は、下部走行体101を走行させるための操作が与えられる操作部材である。同様に、走行ペダル231,232は、下部走行体101を走行させるための操作が与えられる操作部材である。操作パネル214には、例えば複数のスイッチが配置されている。図4に示す具体例では、走行レバー221,222及び走行ペダル231,232は、運転席201の前方に配置され、操作パネル214は、運転席201の右斜め後方に配置されている。なお、図3では、走行レバー221,222及び走行ペダル231,232の図示は省略されている。
【0046】
キャブ105の概略の構造は以上の通りであるが、以下では、横梁20、エアコンユニット30及び複数のダクト40,50,60,70,76についてより具体的に説明する。
【0047】
エアコンユニット30は、箱形状を有するエアコンケース33と、このエアコンケース33内に収納された種々の部品と、を備える。種々の部品は、例えば冷媒が流れる冷媒配管と、冷媒と空気との間で熱交換を行わせるための熱交換器と、を含んでいてもよい。図3図6に示す具体例では、エアコンケース33は、略直方体形状を有するが、エアコンケース33の形状は直方体に限られない。なお、図4では、エアコンユニット30のエアコンケース33の形状及び位置は、一点鎖線の四角の枠によって示されている。
【0048】
エアコンユニット30は、キャブ105の内部空間における空気をエアコンケース33内に吸い込むエアコン吸込口31と、温度又は湿度が調節された空気(空調空気)をキャブ105の内部空間に吹き出すエアコン吹出口32と、を有する。本実施形態では、エアコン吸込口31は、例えばエアコンケースの左側面に形成されており、エアコン吹出口32は、エアコンケース33の上面に形成されているが、エアコン吸込口31の位置及びエアコン吹出口32の位置は、エアコンケース33の左側面及び上面に限られない。
【0049】
エアコンユニット30は、右側壁11の前部に沿って配置されている。具体的には、エアコンユニット30は、右側壁11の前側でかつ下側の部分に沿って配置されている。エアコンユニット30は、図5に示す側面視において第1の横透明板80W1の下に位置している。エアコンユニット30は、右側壁11の内側面(右パネル11Aの内側面)に隣接するような位置に配置されている。図4に示すように、エアコンユニット30は、前後の寸法が左右の寸法よりも大きい。
【0050】
図5に示すように、横梁20は、エアコンユニット30よりも上方に配置され、右側壁11の内側面に沿って前後に延びている。横梁20は、右側壁11の前端部から後端部まで延びるような形状を有する。具体的には、横梁20は、右前ピラーP1から右後ピラーP2まで直線状に連続するように延びている。図7に示すように、横梁20は、右側壁11の右パネル11Aの内側面に固定されている。横梁20は、当該横梁20と右パネル11Aとが閉断面を形成することが可能な断面形状を有する。図7に示す具体例では、当該閉断面は、四角形状を有する。ただし、閉断面の形状は、四角形状に限られない。また、横梁20は、それ自身で閉断面を形成する管状(角管状又は円管状)の部材であってもよい。
【0051】
複数のダクトは、上流ダクト40と、案内ダクト50と、横ダクト60と、後ダクト70と、前ダクト76と、を含む。なお、図3では、上流ダクト40、案内ダクト50、横ダクト60及び前ダクト76の位置と形状を判別しやすいように、これらのダクトをカバーするカバー部材の図示が省略されている。
【0052】
上流ダクト40は、エアコンユニット30のエアコン吹出口32に直接接続されたダクトである。上流ダクト40は、エアコンユニット30の真上に配置されている。上流ダクト40は、エアコン吹出口32から吹き出された空気を受け入れる開口を有し、この開口は上流ダクト40の下部に形成されている。上流ダクト40は、当該上流ダクト40を流れる空気の一部を運転席201に座るオペレータに向けて吹き出すための上流ダクト吹出口41を有する。
【0053】
図9は、エアコンユニット30のエアコン吹出口32、上流ダクト40、案内ダクト50、横ダクト60、及び横ダクト吹出口61の位置関係を説明するための概略の平面図である。上流ダクト40は、エアコンユニット30のエアコンケース33の上面に沿うように前後に延びるような形状を有し、上流ダクト40の前記開口は、エアコン吹出口32に対応するような位置に形成されている。
【0054】
図3及び図5に示すように、横ダクト60は、横梁20よりも上方に配置されている。図5に示すように、横ダクト60は、横窓枠80の下辺81に沿って前後に延びている。横ダクト60は、エアコンユニット30から吹き出された空気の少なくとも一部が供給される。横ダクト60は、右窓80Wに向けて空気を吹き出す吹出口である複数の横ダクト吹出口を有する。複数の横ダクト吹出口は、第1の横ダクト吹出口61と、第2の横ダクト吹出口62と、を含む。
【0055】
第1の横ダクト吹出口61は、第1の横透明板80W1に向けて空気を吹き出す吹出口であり、側面視において第1の横透明板80W1に対応する位置に配置されている。第2の横ダクト吹出口62は、第2の横透明板80W2に向けて空気を吹き出す吹出口であり、側面視において第2の横透明板80W2に対応する位置に配置されている。本実施形態では、第1の横ダクト吹出口61及び第2の横ダクト吹出口62のそれぞれは、横窓枠80の下辺81とほぼ同じ高さ位置に配置されているが、横窓枠80の下辺81に対して多少上又は下にずれた位置に配置されていてもよい。図4に示すように、第1及び第2の横ダクト吹出口61,62のそれぞれには、空気の吹き出し方向を調節するためのルーバー63が配置されている。
【0056】
案内ダクト50は、エアコン吹出口32から吹き出された空気を横ダクト60に案内するダクトである。案内ダクト50は、図6及び図7に示すように横梁20の左側において上方に延びて横ダクト60に接続されている。図7に示すように、案内ダクト50と横梁20は、左右に隣合うように配置されている。
【0057】
図7及び図9に示すように、案内ダクト50の内側面(左側面)は、横ダクト60の最も内側(左側)の部分よりも外側(右側)に位置し、案内ダクト50の外側面(右側面)は、横ダクト60の最も外側(右側)の部分よりも内側(左側)に位置している。言い換えると、案内ダクト50は、平面視において横ダクト60の範囲内に含まれるような形状を有する。これにより、案内ダクト50は、キャブ105の内部空間を狭める原因とはならない。ただし、案内ダクト50の一部が平面視において横ダクト60の範囲外に位置していてもよい。
【0058】
図5図7及び図9に示すように、案内ダクト50の前後方向の寸法は、案内ダクト50の左右方向の幅よりも大きい。案内ダクト50の左右方向の前記幅は、横ダクト60の左右方向の幅よりも小さい。
【0059】
案内ダクト50は、平面視においてエアコン吹出口32の少なくとも一部に重なるような位置に配置されている。案内ダクト50は、その少なくとも一部が平面視において横ダクト60に重なるような位置に配置されている。
【0060】
第1の横ダクト吹出口61は、平面視においてエアコン吹出口32の少なくとも一部に重なるような位置に配置されている。図5図7及び図9に示すように、エアコン吹出口32、上流ダクト40、案内ダクト50、横ダクト60及び第1の横ダクト吹出口61は、エアコン吹出口32から第1の横ダクト吹出口61まで直線状に連続する流路L1を形成している。エアコン吹出口32、上流ダクト40、案内ダクト50、横ダクト60及び第1の横ダクト吹出口61は、エアコン吹出口32から吹き出された空気の少なくとも一部が第1の横ダクト吹出口61まで上方に直線状に移動することが可能なように配置されている。
【0061】
前ダクト76は、エアコンユニット30から吹き出された空気の一部が供給され、運転席201に座るオペレータの上半身及び下半身に空調空気を吹き出す複数の吹出口を有する。前ダクト76は省略可能である。
【0062】
後ダクト70は、後側壁14に沿って左右方向に延び、横ダクト60によって後方に案内される空気の少なくとも一部を受け入れることが可能なダクトである。後ダクト70は、横ダクト60よりも上方に配置された後ダクト本体71と、後ダクト本体71と横ダクト60の後部とを接続する接続部72と、を備える。運転席201は、後ダクト70の前方に配置されている。
【0063】
後ダクト70は、後窓90Wを塞ぐ後透明板90W1に向けて空気を吹き出す吹出口である第1の後ダクト吹出口73と、前方に向けて空気を吹き出す吹出口である左右の第2の後ダクト吹出口74,74と、を有する。図3図4及び図6に示すように、左右の第2の後ダクト吹出口74,74は、正面視において背もたれ部203に対して左側及び右側にそれぞれずれるような位置に配置されている。後ダクト吹出口73には、空気の吹き出し方向を調節するためのルーバー63が配置されている。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係るキャブ105では、エアコンユニット30よりも上方で横ダクト60よりも下方である中間高さ位置に横梁20を配置することにより、横窓枠80の下辺81に対する横梁20の下方への隔たりが大きくなるのを抑制して横窓枠80の下辺81に比較的近い位置で横梁20が右側壁11を補強することが可能になるとともに、横ダクト60を横窓枠80の下辺81の近傍に配置して当該横ダクト60に形成された第1の横ダクト吹出口61を横窓枠80の下辺81の近傍に配置することが可能になる。これにより、キャブ105の内部空間を狭めることを抑制しながら、右側壁11の補強及び第1の横透明板80W1を通じた視界の確保が実現される。キャブ105の内部空間を狭めることが抑制されると、例えば、右の作業装置操作レバー211の可動域及びドーザー操作レバー213の可動域が制限されることを抑制できる。また、本実施形態では、前記延長ダクトにかかるコストアップを回避することができる。
【0065】
本実施形態に係るキャブ105では、図6及び図7に示すように、前記中間高さ位置に配置された横梁20の左側において上方に延びる案内ダクト50が、横梁20の下方に配置されたエアコンユニット30のエアコン吹出口32から吹き出された空気を、横梁20の上方に配置された横ダクト60に案内することができる。この案内ダクト50は、横梁20の前後の長さと同程度の前後の寸法を有する必要はなく、横ダクト60に供給すべき空気の風量を確保できるような前後の寸法を有していればよい。従って、案内ダクト50が横梁20の左側において上方に延びるように配置されていても、キャブ105の内部空間は、実質的にほとんど狭められない。
【0066】
本実施形態に係るキャブ105では、エアコンユニット30は、右側壁11の右前下の部分に沿って配置され、エアコン吹出口32は、エアコンユニット30の上部に形成され、案内ダクト50は、平面視においてエアコン吹出口32の少なくとも一部に重なるような位置に配置されている。エアコンユニット30が右側壁11の右前下に沿って配置され、その上方に案内ダクト50が配置されることにより、当該案内ダクト50は、操作レバー211,213の可動域(作動範囲)を避けた領域において横梁20を上方に乗り越えることができる。これにより、後方小旋回型油圧ショベルのように、キャブ105の内部空間が小さく、例えば運転席201の下などに十分なスペースがない場合であっても、キャブ105の右前下にエアコンユニット30を配置し、操作レバー211,213の動作の邪魔にならないように案内ダクト50を配置することができる。しかも、案内ダクト50は、エアコン吹出口32から上方に吹き出された空気を当該エアコン吹出口32の少なくとも一部に重なるような位置で当該案内ダクト50内に受け入れることができるので、案内ダクト50に供給される空気の風量が確保されやすくなる。
【0067】
本実施形態に係るキャブ105では、案内ダクト50が平面視においてエアコン吹出口32の少なくとも一部に重なるような位置に配置されているだけでなく、第1の横ダクト吹出口61が平面視においてエアコン吹出口32の少なくとも一部に重なるような位置に配置されている。これにより、エアコン吹出口32から上方に吹き出された空気が案内ダクト50を介して第1の横ダクト吹出口61までスムーズに流れることが可能になり、第1の横ダクト吹出口61から吹き出される空気の風量をより確保しやすくなる。このことは、第1の横ダクト吹出口61に対応する位置にある第1の横透明板80W1を通じてオペレータが視認する頻度が高い右前方の領域を効果的に確保することを可能にする。
【0068】
本実施形態に係るキャブ105では、エアコン吹出口32、案内ダクト50及び第1の横ダクト吹出口61は、エアコン吹出口32から第1の横ダクト吹出口61まで直線状に連続する流路L1を形成している。これにより、エアコン吹出口32から上方に吹き出された空気が案内ダクト50を介して第1の横ダクト吹出口61までよりスムーズに流れることが可能になり、第1の横ダクト吹出口61から吹き出される空気の風量をさらに確保しやすくなる。
【0069】
本実施形態に係るキャブ105では、案内ダクト50は、その少なくとも一部が平面視において横ダクト60に重なるような位置に配置され、案内ダクト50の前後方向の寸法は、案内ダクト50の左右方向の幅よりも大きく、案内ダクト50の左右方向の前記幅は、横ダクト60の左右方向の幅よりも小さい。これにより、左右方向の内側(右側壁11から運転席201に向かう方向)への案内ダクト50の出っ張りを小さくしてキャブ105の内部空間を確保しつつ、案内ダクト50が横ダクト60に供給することが可能な風量を確保することができる。
【0070】
本実施形態に係るキャブ105では、横ダクト吹出口から吹き出される空気の吹き出し方向がルーバー63によってオペレータの所望の方向に調節されることで、横透明板における所望の部位を除霜すること又は結露を除去することができる。また、横ダクト吹出口から吹き出される空気の吹き出し方向がルーバー63によって運転席201の方に向けられる場合には、オペレータの快適性が向上する。
【0071】
本実施形態に係るキャブ105では、後ダクト70は、横ダクト60よりも上方に配置された後ダクト本体71と、後ダクト本体71と横ダクト60の後部とを接続する接続部72と、を備える。横ダクト60は横梁20よりも上方に配置されているので、本実施形態のように後ダクト本体71が横ダクト60よりも上方に配置されている場合であっても、後ダクト本体71と横ダクト60の後部とを接続する接続部72の傾斜が大きくなることを抑制できる。これにより、後ダクト70への風量が確保されやすくなる。
【0072】
第2の後ダクト吹出口74,74は、当該第2の後ダクト吹出口74,74の少なくとも一部が正面視において背もたれ部203に対して側方にずれるような位置に配置されている。これにより、第2の後ダクト吹出口74,74から前方に空気が吹き出されることにより、運転席にすわるオペレータの快適性を効果的に向上させることができる。また、第2の後ダクト吹出口74,74から前方に吹き出される空気がオペレータの腰から太ももにかけて当たることで、キャブ105内に配置されるコンソールからの熱に対するオペレータの快適性を向上させることができる。前記コンソールは、例えば運転席201の座部202の側方に配置される装置である。
【0073】
[変形例]
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されない。本発明は、例えば次のような態様を包含する。
【0074】
(A)エアコンユニットについて
前記実施形態では、エアコンユニット30は、右側壁11の前部に沿って配置されているが、右側壁11の後部に沿って配置されていてもよく、右側壁11の前部と後部の間の中間部に沿って配置されていてもよい。
【0075】
(B)ダクトについて
図5に示す前記実施形態では、横ダクト60の一部である横ダクト吹出口61,62が形成されている部分は、横窓枠80の下辺81とほぼ同じ高さ位置に配置され、横ダクト60の他の部分は、横窓枠80の下辺81よりも下に配置されているが、このような形態に限られない。横ダクト60は、横ダクト60の上部(例えば横ダクト60の横ダクト吹出口が形成されている部分)が横窓枠80の下辺81よりも上に位置するような状態で、横窓枠80の下辺81に沿って前後に延びていてもよい。また、横ダクト60は、その全体が横窓枠80の下辺81よりも下に位置するような状態で、横窓枠80の下辺81に沿って前後に延びていてもよい。
【0076】
また、案内ダクト50がエアコンユニット30のエアコン吹出口32に直接接続される場合には、上流ダクト40は、省略可能である。
【0077】
(C)横梁について
前記実施形態では、横梁20は、右側壁11の前端部から後端部まで延びる形状を有するが、横梁20は、必ずしも右側壁11の前端部から後端部まで延びていなくてもよい。また、前記実施形態では、横梁20は、エアコンユニット30よりも上方に配置されているが、必ずしもエアコンユニット30よりも上方に配置されていなくてもよい。横梁20は、例えば、エアコンユニット30よりも下方に配置されていてもよく、エアコンユニット30の上端位置と下端位置との間の高さに配置されていてもよい。
【0078】
(D)特定側壁について
前記実施形態では、本開示における特定側壁が右側壁であるが、乗降口が右側壁に形成される場合には、特定側壁は左側壁であってもよい。
【0079】
(E)建設機械について
前記実施形態に係る建設機械は、後方小旋回型油圧ショベルであるが、小旋回型に限られず、小旋回型よりも大型の建設機械であってもよい。また、建設機械において、ドーザー111は、省略されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
11 :右側壁(特定側壁の一例)
12 :左側壁
14 :後側壁
20 :横梁
30 :エアコンユニット
32 :エアコン吹出口
50 :案内ダクト
60 :横ダクト
61 :第1の横ダクト吹出口
62 :第2の横ダクト吹出口
63 :ルーバー
70 :後ダクト
71 :後ダクト本体
72 :接続部
73 :第1の後ダクト吹出口
74 :第2の後ダクト吹出口
80 :横窓枠
80W :右窓
80W1 :第1の横透明板
80W2 :第2の横透明板
81 :横窓枠の下辺
90 :後窓枠
90W :後窓
90W1 :後透明板
96 :乗降口
100 :油圧ショベル(建設機械の一例)
105 :キャブ
201 :運転席
202 :座部
203 :背もたれ部
L1 :流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9