(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】流体機械
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20240723BHJP
F04B 39/06 20060101ALI20240723BHJP
F04C 29/06 20060101ALI20240723BHJP
F04C 29/04 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F04B39/00 101L
F04B39/06 F
F04C29/06 C
F04C29/04 H
(21)【出願番号】P 2021102748
(22)【出願日】2021-06-21
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】中山 晴永
(72)【発明者】
【氏名】岩波 重樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 渓太
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-285146(JP,A)
【文献】実開昭58-165272(JP,U)
【文献】特開2010-031726(JP,A)
【文献】特開2008-184945(JP,A)
【文献】特開2018-173050(JP,A)
【文献】特開平10-077979(JP,A)
【文献】特開平05-231359(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244526(WO,A1)
【文献】特開2005-291015(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0017885(US,A1)
【文献】国際公開第2018/011970(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00-39/16
F04C 2/02、18/02、
23/00-29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を吸入する流体機械(10)であって、
通電により駆動するモータ部(20)と、
流体を吸入するポンプ吸入口(52a)を有し、前記モータ部の駆動により前記ポンプ吸入口から流体を吸入するポンプ部(30)と、
前記モータ部の外側に設けられ、前記モータ部の外面(20a)に沿って延びて前記ポンプ吸入口に通じるカバー流路(70)を前記モータ部との間に形成し、且つ前記カバー流路に前記流体を吸入するカバー吸入口(72a,72b)を形成している外側カバー(60)と、
前記モータ部に対する前記外側カバーの相対的な変位を規制する変位規制部(65)と、
を備え
、
前記変位規制部は、前記カバー流路を前記カバー吸入口に通じる上流路(72)と前記ポンプ吸入口に通じる下流路(73,75,76)とに仕切っており、
前記カバー流路は、
前記モータ部と前記外側カバーとの間に設けられ、前記上流路と前記下流路とを接続するカバー接続路(74)、を有している流体機械。
【請求項2】
前記カバー接続路は、前記モータ部の回転方向(γ)及び径方向(β)の少なくとも一方において前記ポンプ吸入口から離間した位置に設けられている、請求項
1に記載の流体機械。
【請求項3】
前記カバー接続路は、前記モータ部の回転方向(γ)及び径方向(β)の少なくとも一方において前記カバー吸入口から離間した位置に設けられている、請求項
1又は
2に記載の流体機械。
【請求項4】
前記カバー吸入口の開放面積は、前記カバー接続路の開放面積よりも小さい、請求項
1~
3のいずれか1つに記載の流体機械。
【請求項5】
前記変位規制部は、前記外側カバーに固定され且つ前記モータ部に離間可能に接触した状態で、前記モータ部に対する前記外側カバーの相対的な変位を規制する、請求項1~
4のいずれか1つに記載の流体機械。
【請求項6】
前記変位規制部は、前記モータ部に対する前記外側カバーの相対的な変位に伴って弾性変形する弾性変形部(66)を有している、請求項1~
5のいずれか1つに記載の流体機械。
【請求項7】
前記カバー吸入口は、前記モータ部の回転方向(γ)及び径方向(β)の少なくとも一方において前記ポンプ吸入口から離間した位置に設けられている、請求項1~
6のいずれか1つに記載の流体機械。
【請求項8】
前記カバー吸入口の開口面積は、前記カバー流路において最も拡張された部分の断面積の1/4以下である、請求項1~
7のいずれか1つに記載の流体機械。
【請求項9】
前記ポンプ部は、前記ポンプ吸入口から吸入された前記流体を外部に吐出するポンプ流路(50)を有しており、
前記ポンプ流路は、前記ポンプ吸入口に対して拡張されたポンプ拡張路(55)を有しており、
前記ポンプ拡張路において最も拡張された部分の断面積は、前記ポンプ吸入口の開口面積の4倍以上である、請求項1~
8のいずれか1つに記載の流体機械。
【請求項10】
前記カバー流路と、前記ポンプ吸入口から吸入した前記流体を圧縮する圧縮室(51)と、を有し、前記圧縮室にて圧縮又は膨張させた前記流体を外部に吐出する機械流路(11)を備え、
前記カバー流路の長さ寸法、及び前記カバー流路において最も拡張された部分の断面積は、前記圧縮室から伝わる脈動音が前記カバー流路にて減衰するように設定されている、請求項1~
9のいずれか1つに記載の流体機械。
【請求項11】
前記カバー流路において最も拡張された部分の断面積は、前記圧縮室から伝わる脈動音が減衰する減衰量(R)の最大値が目標値(Rm)よりも大きくなるように設定されている、請求項
10に記載の流体機械。
【請求項12】
前記カバー流路の長さ寸法は、特定周波数(fm)について、前記圧縮室から伝わる脈動音が減衰する減衰量(R)が目標値(Rm)よりも大きくなるように設定されている、請求項
10又は
11に記載の流体機械。
【請求項13】
前記外側カバーには、前記カバー吸入口を形成する貫通孔(62)が設けられており、
前記貫通孔の内面(62a)は、前記貫通孔の内側に向けて膨らむように曲がっている、請求項1~
12のいずれか1つに記載の流体機械。
【請求項14】
前記カバー流路において前記ポンプ吸入口と前記カバー吸入口との間に設けられ、前記流体から異物を除去するカバーフィルタ(81)、を備えている請求項1~
13のいずれか1つに記載の流体機械。
【請求項15】
前記モータ部は、前記外面を形成するモータケース(23)を有しており、
前記外側カバーの熱伝導性は前記モータケースの熱伝導性よりも高い、請求項1~
14のいずれか1つに記載の流体機械。
【請求項16】
前記外側カバーと前記ポンプ部との間に設けられ、前記カバー流路から前記流体が漏れることを規制するシール部材(61)、を備えている請求項1~
15のいずれか1つに記載の流体機械。
【請求項17】
前記ポンプ吸入口は、前記ポンプ部の外面(30a)に設けられており、
前記外側カバーは、前記カバー流路が前記ポンプ吸入口に通じるように前記ポンプ吸入口を覆った状態で前記ポンプ部に固定されている、請求項1~
16のいずれか1つに記載の流体機械。
【請求項18】
前記ポンプ部は、前記ポンプ吸入口から吸入した前記流体を吐出するポンプ吐出口(53a)を有しており、
前記カバー吸入口は、前記ポンプ吐出口とは逆向きに開口されている、請求項1~
17のいずれか1つに記載の流体機械。
【請求項19】
前記モータ部と前記ポンプ部とは、前記モータ部の軸方向(α)に並べられており、
前記カバー吸入口は、前記軸方向において前記ポンプ部とは反対側に向けて前記モータ部から離間した位置に設けられている、請求項1~
18のいずれか1つに記載の流体機械。
【請求項20】
前記カバー流路は、前記モータ部の回転方向(γ)に環状に延びている、請求項1~
19のいずれか1つに記載の流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スクロール送風機について開示されている。このスクロール送風機においては、ロータの回転に伴って吸込口からスクロール部に空気が吸い込まれる。このスクロール送風機においては、ロータ及びステータがリングの内側に設けられており、吸込口に通じる吸込風路がステータとリングとの間に形成されている。スクロール送風機において、ロータ、ステータ及びリングにより形成された部位をモータ部と称すると、吸込風路はモータの内部に設けられていることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、吸込風路がモータの内部に設けられているため、スクロール部に吸い込まれる空気がロータ及びステータに触れることになる。このため、ロータ及びステータの腐食が生じるなどモータ部の耐久性が低下することが懸念される。
【0005】
本開示の1つの目的は、冷却効果及び騒音低減効果を発揮し且つ耐久性を高めることができる流体機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲及びこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するため、開示された第1の態様は、
流体を吸入する流体機械(10)であって、
通電により駆動するモータ部(20)と、
流体を吸入するポンプ吸入口(52a)を有し、モータ部の駆動によりポンプ吸入口から流体を吸入するポンプ部(30)と、
モータ部の外側に設けられ、モータ部の外面(20a)に沿って延びてポンプ吸入口に通じるカバー流路(70)をモータ部との間に形成し、且つカバー流路に流体を吸入するカバー吸入口(72a,72b)を形成している外側カバー(60)と、
モータ部に対する外側カバーの相対的な変位を規制する変位規制部(65)と、
を備え、
変位規制部は、カバー流路をカバー吸入口に通じる上流路(72)とポンプ吸入口に通じる下流路(73,75,76)とに仕切っており、
カバー流路は、
モータ部と外側カバーとの間に設けられ、上流路と下流路とを接続するカバー接続路(74)、を有している流体機械である。
【0008】
第1の態様によれば、カバー流路がモータ部の外面に沿って延びているため、カバー吸入口から吸入された流体がモータ部の外面に沿って流れる。この構成では、流体がモータ部の内部を流れることに起因してモータ部の耐久性が低下するということを回避できる。また、この構成では、流体の冷却効果がモータ部の外面に付与されるため、流体をモータ部の内部に流さなくても、流体によりモータ部を冷却するができる。さらに、この構成では、流体をモータ部の内部に流さなくても、モータ部にて生じた脈動音等の騒音をカバー流路にて減衰させることができる。したがって、流体機械に冷却効果及び騒音低減効果を発揮させ、且つ流体機械の耐久性を高めることができる。
【0009】
しかも、モータ部と外側カバーとの間に設けられた変位規制部によりモータ部に対する外側カバーの変位が規制されている。この構成では、モータ部に対して外側カバーが相対的に振動するということが生じにくい。このため、モータ部にて生じた脈動音等の騒音に外側カバーが共鳴する、ということを抑制できる。したがって、流体機械の騒音が増加することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】減衰理論式及び減衰モデルについて説明するための図。
【
図4】膨張比について脈動周波数と透過損失との関係を示す図。
【
図5】膨張室の長さについて脈動周波数と透過損失との関係を示す図。
【
図10】第6実施形態におけるポンプ部の縦断面図。
【
図11】
図10のXI-XI線断面図であって、ポンプ部の横断面図。
【
図12】第7実施形態におけるポンプ部の横断面図。
【
図13】ポンプロータを第1端面側から見た平面図。
【
図15】ポンプロータを第2端面側から見た平面図。
【
図18】シリンダ内周面と第1ベーンのベーン先端部との位置関係を示す図。
【
図20】第8実施形態におけるポンプ部の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0017】
<第1実施形態>
図1に示す流体機械10は、流体を吸入すること、及び流体を吐出することが可能である。流体機械10は、流体を圧縮する装置又は流体を膨張する装置を含んでいる。流体機械10は、作動流体として採用される液体、気体、気液混合流体等の流体を圧縮又は膨張して外部へ流出させることができる。流体機械10は、圧縮機又は膨張機と称されることがある。例えば作動流体は、空気、水、各種の冷媒等である。流体機械10は、閉じられたループ回路に設けられる装置ではなく、流体機械10から流出する流体は開放された外部へ供給される。流体機械10は、オイルレスで使用することができる。流体機械10は、オイルセパレータなどの付属装置が不要にできる。流体機械10は、例えば医療用エアや工場用エアなど、クリーンな空気を供給する空気圧源として適用することができる。本実施形態では、気体としての空気が作動流体として流体機械10に吸入される。
【0018】
流体機械10は、モータ部20、ポンプ部30及び外側カバー60を有している。モータ部20については軸方向α、径方向β及び周方向γが設定されている。軸方向αは、モータ部20の回転軸線Raが延びる方向である。軸方向α、径方向β及び周方向γは互いに直交している。モータ部20においては、周方向γが回転方向に相当する。モータ部20とポンプ部30とは、回転軸線Raに沿って軸方向αに並べられている。外側カバー60は、モータ部20の外側に設けられている。
【0019】
モータ部20は、通電により駆動し、ポンプ部30にとっての動力になる。モータ部20は、モータ21、シャフト22及びモータケース23を有している。モータ21は、図示しないステータ及びロータを有している。ステータはモータケース23に固定されており、ロータはステータに対して周方向γに回転する。シャフト22は、ロータに固定されており、ロータと共に回転する。シャフト22は、モータ部20の回転軸であり、軸方向αに延びている。回転軸線Raは、シャフト22の中心線であり、軸方向αに直線状に延びた仮想線である。回転軸線Raは、ロータの中心線でもある。
【0020】
シャフト22は、モータ部20から軸方向αに突出するように延びている。シャフト22は、軸受部24,25により回転可能に支持されている。軸受部24は、ポンプ部30に取り付けられており、軸受部25はモータケース23に取り付けられている。シャフト22は、モータ部20への通電に伴ってロータと共に回転軸線Raを中心に回転する。
【0021】
モータケース23は、モータ21及びシャフト22を収容している。モータケース23は、モータ外面20aを形成している。モータ外面20aは、モータ部20の外面である。モータケース23は、モータ21及びシャフト22を覆った状態でポンプ部30に取り付けられている。モータケース23は、ポンプ部30に対してボルト等の固定具や溶接により固定されている。モータケース23は、モータ部20の内部に異物が侵入しないようにモータ21及びシャフト22を保護しており、モータカバーと称されることがある。気体にとっての異物としては、例えば水等の液体が挙げられる。なお、モータ部20の内部への異物の侵入を防止できれば、
図1に示すようにシャフト22がモータケース23から突出していてもよい。
【0022】
モータケース23は、金属材料等により形成されており、熱伝導性を有している。モータケース23の少なくとも一部は磁性体であり、モータ部20においてヨークを形成している。モータケース23は、ケース外周部23a及びケース底部23bを有している。ケース外周部23aは、全体として筒状に形成されており、回転軸線Raに沿って軸方向αに延びている。ケース底部23bは、ケース外周部23aの内部空間をポンプ部30とは反対側から塞いだ状態になっている。ケース底部23bは、全体としてポンプ部30とは反対側に膨らんだ形状になっている。
【0023】
ポンプ部30は、モータ部20の駆動により流体の吸入及び吐出を行う。ポンプ部30は、吸入した流体を圧縮又は膨張させて吐出する。ポンプ部30はスクロール型のポンプである。流体機械10は、スクロール型流体機械と称されることがある。ポンプ部30は、固定スクロール31、旋回スクロール32、ハウジング33を有している。
【0024】
ハウジング33は、ポンプ外面30aを形成している。ポンプ外面30aは、ポンプ部30の外面である。ポンプ外面30aは、外周面30b、対向面30c及び反対面30dを有している。外周面30bは、周方向γに環状に延びており、軸方向αにおいて対向面30cと反対面30dとにかけ渡された状態になっている。対向面30cと反対面30dとは、軸方向αに並べられており、互いに逆向きになっている。対向面30cは、モータ部20側を向いており、モータ部20に対向している。モータ部20は、対向面30cに取り付けられた状態になっている。反対面30dは、モータ部20とは反対側を向いている。
【0025】
モータケース23は、対向面30cに対して固定されている。ケース外周部23aの端面が対向面30cに重ねられた状態になっている。ケース外周部23aの端面と対向面30cとの間には、シール部材が挟み込まれた状態になっている。このシール部材は、ケース外周部23aの端面と対向面30cとの間から流体がモータケース23の内部に侵入することを規制している。
【0026】
モータ部20は、径方向βにおいてポンプ部30から外側にはみ出していない。例えば、ケース外周部23aは、径方向βにおいて対向面30cの外周縁から内側に離間した位置にある。対向面30cにおいては、ケース外周部23aの端面は、径方向βにおいて対向面30cの外周縁から内側に離間した位置に設けられ、対向面30cの外周縁に沿って周方向に延びている。
【0027】
ハウジング33は、第1ハウジング部35、第2ハウジング部36及びエンドプレート37を有している。第1ハウジング部35と第2ハウジング部36は、流体機械10において、可動する旋回スクロール32に対して、静止している固定側部材である。第1ハウジング部35と第2ハウジング部36はいずれも、例えばアルミニウム、その合金など、熱伝導性の高い金属により形成されている。第1ハウジング部35と第2ハウジング部36は、ボルト締め又は溶接等により固定されている。第2ハウジング部36が対向面30cを形成している。
【0028】
第1ハウジング部35と第2ハウジング部36はそれぞれの外壁が大気に露出するように設置されている。第1ハウジング部35、第2ハウジング部36は、旋回スクロール32よりも熱伝導率が高い材質で形成されている。また、第1ハウジング部35と第2ハウジング部36は、少なくとも一部が金属により形成されていればよい。第1ハウジング部35と第2ハウジング部36は、少なくとも一部が大気に露出するように構成されていればよい。この構成によれば、旋回スクロール32との摺動面において発生する熱は、ハウジング33を通じて拡散し、流体機械10の外部に放出されやすい。
【0029】
流体機械10は、ハウジング33に一体に固定されているエンドプレート37を備える。エンドプレート37と第1ハウジング部35は、ボルト締め又は溶接等により固定されている。エンドプレート37と第1ハウジング部35は、軸方向に積層するように設置されている。エンドプレート37には固定スクロール31が固定されている。エンドプレート37は、第1ハウジング部35よりも、軸方向外側に又は旋回スクロール32とは反対側に位置している。エンドプレート37は反対面30dを形成している。エンドプレート37は、例えば旋回スクロール32よりも熱伝導率が高い材質で形成されている。エンドプレート37は、外壁が大気に露出するように設置されている。旋回スクロール32との摺動面において発生する熱は、ハウジング33を通じて拡散して外部に放出され、又はハウジング33からエンドプレート37を介して外部に放出される。
【0030】
ハウジング33の内側には、固定スクロール31と旋回スクロール32が収容されている。流体機械10が流体を圧縮する圧縮機である場合、スクロール31,32は、作動流体を吸入し圧縮し、吐き出すための圧縮機構部を構成している。なお、固定スクロール31は、ハウジング33に一体的に形成されていてもよい。例えば、1つの部材の一部が第1ハウジング部35であり、残りが固定スクロール31であってもよい。
【0031】
固定スクロール31の材質には、金属、樹脂などを用いることができる。固定スクロール31は、樹脂材料によって形成されている構成でもよい。固定スクロール31は、円盤状の固定側基盤部31aと、固定側基盤部31aから突出している固定側歯部31bとを備えている。固定側歯部31bは、固定スクロール31に設けられた固定側ラップであり、固定スクロール31を軸方向に視て渦巻状に形成されている。固定側基盤部31aの外周縁から延びる外周壁部31cは、第1ハウジング部35の内壁に対し、圧入などによって固定されている。外周壁部31cは、固定側歯部31bの径外側を囲むように設けられている。
【0032】
旋回スクロール32は、円盤状の旋回側基盤部32aと、旋回側基盤部32aに設けられる旋回側歯部32bとを有している。旋回スクロール32の材質には、金属、樹脂などを用いることができる。旋回スクロール32は、樹脂材料によって形成されている構成でもよい。旋回スクロール32が樹脂材料によって形成されている場合、熱伝導率が低いため、旋回スクロール32からの放熱が期待できない。このため、相手側の摺動面における放熱を効果的に行うことが摺動部の温度上昇を抑制し、信頼性の確保に重要となる。樹脂製の旋回スクロール32である場合、旋回スクロール32の遠心力による振動を低減でき、振動面及び騒音面で有利になる。
【0033】
旋回側歯部32bは、旋回スクロール32に設けられた旋回側ラップであり、旋回スクロール32を軸方向に視て渦巻状に形成されている。圧縮室51は、固定側ラップと旋回側ラップとの間に流体を吸入、圧縮及び吐出する流体室である。圧縮室51は、軸方向に視て三日月状に形成されている。圧縮室51はポンプ室と称されることがある。固定側基盤部31aと旋回側基盤部32aとは、互いに対向した状態で軸方向αに並べられている。固定側基盤部31aと旋回側基盤部32aとの間の空間が圧縮室51になっている。
【0034】
固定側歯部31bは、旋回側歯部32bにおける径方向外側部位よりもさらに径外側に位置する渦巻き状部を有している。旋回側基盤部32aのうち圧縮室51とは反対側には、円筒状のボス部41が設けられている。
【0035】
流体機械10が流体を膨張する膨張機である場合は、流体室が固定スクロール31の中心部から外端部へ向かって移動する構成を有する。この場合、ポンプ吸入口52aが吐出口として機能し、ポンプ吐出口53aを吸入口として機能させることができる。これにより、流体室の容積が増大していくように変化し、中心部側から流体室に取込まれた流体が膨張するようになる。
【0036】
シャフト22は、モータ部20が与える駆動力によって回転駆動される。シャフト22の端部は、第2ハウジング部36を通してハウジング33の内側に挿入されている。シャフト22の端部には、偏心部42が固定されている。偏心部42の中心軸は、シャフト22の回転軸に対してずらした位置に設置されている。ボス部41には軸受部43が設けられており、偏心部42は、軸受部43により旋回スクロール32に対して回転可能になっている。偏心部42は、旋回スクロール32の中心軸部である。シャフト22は、旋回スクロール32を旋回させる駆動軸である。
【0037】
ポンプ部30は、流体が流れるポンプ流路50を有している。ポンプ流路50は、ポンプ部30の内部に設けられている。ポンプ流路50は、ポンプ吸入口52a及びポンプ吐出口53aを有している。ポンプ吸入口52aは、ポンプ流路50において上下流方向の上流端部であり、流体を吸入する。上下流方向は、流体が流れる方向である。ポンプ吸入口52aは、ポンプ部30において対向面30cに設けられており、モータ部20側に向けて開口している。ポンプ吐出口53aは、ポンプ流路50において上下流方向の下流端部であり、ポンプ吸入口52aから吸入された流体を吐出する。ポンプ吐出口53aは、ポンプ部30において反対面30dに設けられており、モータ部20とは反対側に向けて開口している。
【0038】
ポンプ流路50は、圧縮室51、ポンプ吸入路52、ポンプ吐出路53を有している。ポンプ吸入路52は、ポンプ流路50の上下流方向においてポンプ吸入口52aから圧縮室51向けて延びている。ポンプ吸入口52aは、ポンプ吸入路52の上流端部である。ポンプ吐出路53は、ポンプ流路50の上下流方向においてポンプ吐出口53aから圧縮室51に向けて延びている。ポンプ吐出口53aは、ポンプ吐出路53の下流端部である。ポンプ吐出路53には、偏心部42の少なくとも一部が収容されている。ポンプ吸入路52及びポンプ吐出路53はいずれも圧縮室51に接続されている。
【0039】
ポンプ吸入路52は圧縮室導入路52bを有している。圧縮室導入路52bは、ポンプ吸入路52において圧縮室51に接続された部位であり、圧縮室51に流体を導入する流路である。圧縮室導入路52bは、径方向βにおいて圧縮室51の外側に設けられており、圧縮室51よりも圧力が低い空間になっている。圧縮室導入路52bは、固定スクロール31の外周壁部31cと旋回スクロール32の旋回側歯部32bとの間に形成されている。
【0040】
モータ部20に通電すると、シャフト22が回転軸周りに自転する。その際、モータ部20が出力するトルクは、偏心部42を介して旋回スクロール32のボス部41に伝達される。旋回スクロール32は、自転防止機構などによって自転を規制されつつ、シャフト22の回転軸の周りを公転する。公転半径は、偏心部42の中心軸とシャフト22の回転軸の距離と同等である。このとき、旋回スクロール32には、遠心力が作用する。
【0041】
旋回スクロール32が公転すると、スクロール31,32の間に形成される圧縮室51は、径方向外側から径方向内側に向かって旋回しながら移動する。圧縮室導入路52b側に位置する圧縮室51は、シャフト22の回転角度が0度から360度に変化する間に、シャフト22の回転軸又はポンプ吐出路53に近づきながら、その容積が次第に縮小するように変化する。これにより、圧縮室導入路52bを通じて圧縮室51に供給された空気は圧縮され、この空気はポンプ吐出口53aから流体機械10の外部に吐き出される。
【0042】
第1ハウジング部35と第2ハウジング部36が金属により形成され、スクロール31,32が樹脂により形成されている場合、ハウジング部35,36の熱膨張率より、スクロール31,32の熱膨張率は大きい。そこで、流体機械10は、温度が上昇したときに、スクロール31,32が互いに接触しないように構成されている。
【0043】
固定側歯部31bの先端と旋回側基盤部32aとの間には、所定の隙間が設けられている。旋回側歯部32bの先端と固定側基盤部31aとの間には、所定の隙間が設けられている。固定側歯部31bの先端と旋回側歯部32bの先端には、それぞれチップシールが設けられている。このチップシールによって、前述の各隙間を通じて圧縮室51の空気がスラスト方向に漏れることを防いでいる。
【0044】
スクロール31,32は、旋回スクロール32が公転する際、固定側歯部31bの側面と旋回側歯部32bの側面とが最も近づく箇所に所定の隙間が常に形成されるように構成されている。これにより、固定側歯部31bの側面と旋回側歯部32bの側面との摩耗や溶融凝着を抑制できる。
【0045】
流体機械10は、スラスト軸受部45を有している。スラスト軸受部45は、第2ハウジング部36と旋回側基盤部32aとの間に設けられている。スラスト軸受部45は、第2ハウジング部36と旋回側基盤部32aとの間に挟まれた状態になっている。スラスト軸受部45は、板状の部材により形成されており、摺動プレート部材と称されることがある。旋回スクロール32は、内周縁部と外周縁部とを有する環状の平板である。スラスト軸受部45は、旋回スクロール32に対して摺動するための摺動面と、第2ハウジング部36に対して摺動するための摺動面とを有している。
【0046】
スラスト軸受部45と旋回スクロール32との摺動部分には、自己潤滑性を有するフッ素又は二硫化モリブデンを含有するコーティング部が設けられている。フッ素を含有するコーティング部には、例えば、ポリテトラフルオロエチレンのコーティングが含まれる。このコーティングはPTFEコーティングと称されることがある。このようなコーティング部は薄膜であるので、旋回スクロール32からハウジング33への伝熱を阻害しにくい効果を奏する。このようなコーティング部によれば、スラスト軸受部45の摺動面について摩擦係数を低くすることが可能である。このため、スラスト軸受部45と旋回スクロール32とが、圧縮室51から圧力が加えられるなど高荷重の下で摺動する場合でも摺動部分の温度上昇を抑制することができる。
【0047】
旋回スクロール32を摺動させるための摺動面がスラスト軸受部45に形成されているため、例えばこの摺動面が第2ハウジング部36に形成された構成に比べて、摺動面を形成するための研磨加工やコーティング加工を行う作業負担やコストが低減する。旋回スクロール32とスラスト軸受部45とは、フッ素、ポリテトラフルオロエチレンなどを含有する材料を含んでいる構成でもよい。
【0048】
スラスト軸受部45は、ポンプ吸入路52に設けられている。ポンプ吸入路52を流れる作動流体は、圧縮室導入路52bから圧縮室51にかけて圧縮されてポンプ吐出路53に吐出され、ポンプ吐出口53aより外部に流出する。この流下流路によれば、摺動部分を含む、スラスト軸受部45及び旋回スクロール32を作動流体によって冷却するため、流体機械10の冷却効率を高めることができる。この流下流路は、特に、振動に有利な樹脂製の旋回スクロール32を有し、無給油で使用した流体機械10において、摺動部を冷却する上で有用である。
【0049】
外側カバー60は、モータ部20を収容している。外側カバー60は、モータ部20を覆った状態でポンプ部30に取り付けられている。外側カバー60は、ポンプ吸入口52aを覆った状態で、ボルト等の固定具や溶接によりポンプ部30に固定されている。外側カバー60は、モータケース23から外側に離間した位置において、モータ外面20aに沿って延びている。流体機械10は、モータケース23及び外側カバー60により構成された内外二重のカバー構造を有している。
【0050】
外側カバー60は、アルミニウム等の金属材料により形成されており、熱伝導性を有している。外側カバー60の熱伝導性は、モータケース23の熱伝導性よりも高くなっている。外側カバー60は、モータケース23よりも軽量の材料により形成されている。例えば、外側カバー60を形成する材料は、モータケース23を形成する材料よりも、単位体積当たりの質量である密度が小さい。また、外側カバー60は、モータケース23よりも軽い。外側カバー60は、遮音性を有している。外側カバー60の遮音性は、モータケース23の遮音性よりも高い。
【0051】
なお、外側カバー60は、熱伝導性を有していれば、樹脂材料等により形成されていてもよい。このように樹脂製の外側カバー60が用いられた構成では、外側カバー60及び流体機械10の軽量化を図ることができる。
【0052】
外側カバー60は、カバー外周部60a及びカバー底部60bを有している。カバー外周部60aは、全体として筒状に形成されており、回転軸線Raに沿って軸方向αに延びている。カバー底部60bは、カバー外周部60aの内部空間をポンプ部30とは反対側から塞いだ状態になっている。カバー底部60bは、全体としてポンプ部30とは反対側に膨らんだ形状になっている。
【0053】
外側カバー60は、径方向βにおいてポンプ部30から外側にはみ出していない。カバー外周部60aの端面は、対向面30cに重ねられた状態になっており、対向面30cの外周縁に沿って延びている。カバー外周部60aの端面は、径方向βにおいて対向面30cの外周縁とケース外周部23aの端面との間に配置されている。カバー外周部60aは、径方向βにおいてポンプ部30の外周縁とモータケース23の外周縁とが離間した領域に配置されている。このため、径方向βにおいては、外側カバー60の有無に関係なく、流体機械10の大きさが同じになっている。
【0054】
流体機械10は変位規制部65を有している。変位規制部65は、モータケース23と外側カバー60との間に設けられている。変位規制部65は、モータケース23に対する外側カバー60の相対的な変位を規制する。変位規制部65は、外側カバー60に固定されている一方で、モータケース23には固定されていない。変位規制部65は、モータケース23に離間可能に接触しており、この状態でモータケース23の変位を規制する。変位規制部65は、外側カバー60がモータケース23に接触しないように設けられている。
【0055】
変位規制部65は、周方向γに延びており、全体としてモータケース23の周りを一周するように環状に形成されている。変位規制部65は、周方向γ及び径方向βの両方に延びた形状になっている。例えば、変位規制部65は、カバー外周部60aとカバー底部60bとにかけ渡されており、これらカバー外周部60a及びカバー底部60bの両方に固定されている。変位規制部65は、ケース外周部23aとケース底部23bとにかけ渡されており、これらケース外周部23a及びケース底部23bの両方に接触している。
【0056】
変位規制部65は、振動吸収部材66及び土台部67を有している。振動吸収部材66は、ゴム材料等により形成されており、弾性変形可能になっている。振動吸収部材66は、モータケース23に対する外側カバー60の相対的な変位を規制すること、モータケース23に対する外側カバー60の振動を吸収することが可能になっている。振動吸収部材66は、外側カバー60の振動を吸収することで、外側カバー60の振動を抑制すること及び低減することが可能になっている。振動吸収部材66は弾性変形部に相当する。
【0057】
土台部67は、金属材料や樹脂材料により形成されており、外側カバー60にネジ等の固定具や溶接により固定されている。振動吸収部材66は、土台部67により支持されており、接着剤等により土台部67に固定されている。振動吸収部材66は、土台部67とモータケース23との間に挟まれた状態になっている。土台部67及び振動吸収部材66は、土台部67がモータケース23に接触しないように設けられている。
【0058】
振動吸収部材66及び土台部67は、周方向γに延びており、全体としてモータケース23の周りを一周するように環状に延びている。振動吸収部材66及び土台部67は、周方向γ及び径方向βの両方に延びた形状になっている。例えば、振動吸収部材66は、ケース外周部23aとケース底部23bとにかけ渡されており、これらケース外周部23a及びケース底部23bに接触している。土台部67は、カバー外周部60aとカバー底部60bとにかけ渡されており、これらカバー外周部60a及びカバー底部60bの両方に固定されている。
【0059】
図1、
図2に示すように、流体機械10は、ポンプ流路50に加えてカバー流路70を有している。カバー流路70は、ポンプ流路50に接続されており、ポンプ吸入口52aに通じている。カバー流路70は外側カバー60の内側に設けられている。カバー流路70は、モータケース23と外側カバー60との間に設けられている。モータケース23と外側カバー60との間の空間がカバー流路70になっている。カバー流路70は、モータ外面20aに沿って延びている。カバー流路70は、軸方向α及び周方向γの両方に延びている。カバー流路70は、全体として周方向γに環状に延びている。カバー流路70及びポンプ流路50は、通風路と称されることがある。
【0060】
カバー流路70は、カバー吸入口72aを有している。カバー吸入口72aは、カバー流路70に対して1つ設けられている。カバー吸入口72aは、カバー流路70において上下流方向の上流端部であり、流体機械10の外部から流体を吸入する。カバー吸入口72aは、カバー底部60bの外面に設けられている。カバー吸入口72aは、ポンプ吸入口52aから軸方向αに離間した位置にある。カバー流路70の下流側端部は、ポンプ流路50とカバー流路70との境界部に含まれている。ポンプ流路50とカバー流路70との境界部には、ポンプ吸入路52も含まれている。
【0061】
流体機械10においては、ポンプ流路50及びカバー流路70により機械流路11が形成されている。機械流路11においては、ポンプ流路50の上流側にカバー流路70が設けられている。カバー流路70は、機械流路11の上下流方向においてポンプ流路50から上流に向けて延びている。機械流路11の上流端部がカバー吸入口72aであり、下流端部がポンプ吐出口53aである。機械流路11等の流路は通風路と称されることがある。機械流路11においては、上下流方向に直交する断面の面積が断面積である。
【0062】
流体機械10においては、流体がカバー流路70から漏れ出さないようになっている。例えば、外側カバー60とポンプ部30との固定部分にはカバーシール部61が設けられている。カバーシール部61は、シール部材であり、ゴム材料や樹脂材料等により形成されている。カバーシール部61は、カバー外周部60aの端面と対向面30cとの間に挟み込まれた状態になっている。カバーシール部61は、外側カバー60の外周縁に沿って環状に延びている。カバーシール部61は、機械流路11を流れる流体が外側カバー60とポンプ部30との間から流体機械10の外側に漏れ出すことを規制している。なお、シール部材は、化学シール材により形成されていてもよい。また、カバーシール部61は、外側カバー60とポンプ部30との間に圧入されていてもよい。
【0063】
同様に、モータケース23とポンプ部30との接続部分にもシール部材が設けられている。このシール部材は、機械流路11を流れる流体がモータケース23とポンプ部30との間から流体機械10の内側に漏れ出すことを規制している。
【0064】
図1に示すように、カバー流路70は、カバー吸入路72、カバー案内路73及びカバー接続路74を有している。変位規制部65は、カバー流路70を上流側と下流側とに仕切っている。カバー流路70においては、変位規制部65により仕切られた上流側部分と下流側部分とのうち、上流側部分がカバー吸入路72であり、下流側部分がカバー案内路73である。カバー吸入路72は、カバー流路70の上下流方向においてカバー吸入口72aからポンプ流路50に向けて延びている。カバー吸入口72aは、カバー吸入路72の上流端部である。カバー案内路73は、カバー流路70の上下流方向においてカバー案内路73からポンプ流路50とは反対側に向けて延びている。カバー吸入路72が上流路に相当し、カバー案内路73が下流路に相当する。
【0065】
カバー接続路74は、カバー吸入路72とカバー案内路73とを接続している。カバー接続路74は、軸方向αにおいてカバー吸入口72aとポンプ吸入口52aとの間に設けられている。カバー接続路74は、軸方向αにおいてカバー吸入口72a及びポンプ吸入口52aのいずれからも離間した位置にある。カバー接続路74は、ケース外周部23aとケース底部23bとにかけ渡されるように、且つカバー外周部60aとカバー底部60bとにかけ渡されるように延びている。
【0066】
カバー接続路74は、モータケース23と外側カバー60との間において変位規制部65により形成されている。変位規制部65には、この変位規制部65をカバー流路70の上下流方向に貫通する貫通孔が設けられている。この貫通孔によりカバー接続路74が形成されている。変位規制部65においては、振動吸収部材66及び土台部67の少なくとも一方にカバー接続路74が設けられている。カバー接続路74は、振動吸収部材66と土台部67との境界部を跨ぐようにして、振動吸収部材66及び土台部67の両方に設けられている。
【0067】
なお、カバー接続路74は、貫通孔ではなく切り欠きにより形成されていてもよい。また、振動吸収部材66及び土台部67の少なくとも一方が周方向γに複数並べられ、隣り合う2つの振動吸収部材66の隙間、及び隣り合う2つの土台部67の隙間の少なくとも一方によりカバー接続路74が形成されていてもよい。また、カバー接続路74を形成する貫通孔が、振動吸収部材66及び土台部67のうち振動吸収部材66だけに設けられていてもよい。この構成では、土台部67に貫通孔を形成する作業を行う必要がないため、カバー接続路74を形成するための作業負担が低減されやすい。さらに、カバー接続路74を形成する貫通孔が、振動吸収部材66及び土台部67のうち土台部67だけに設けられていてもよい。この構成では、振動吸収部材66に貫通孔を形成する必要がないため、振動吸収部材66がモータケース23に接触する面積が不足しにくい。このため、振動吸収部材66が発揮する変位規制効果や振動吸収効果が不足しにくい。
【0068】
カバー吸入路72はカバー貫通路72bを有している。カバー貫通路72bは、カバー吸入口72aを有しており、カバー吸入路72の上下流方向においてカバー吸入口72aから下流側に延びている。カバー貫通路72bは、外側カバー60の一部を貫通した流路であり、カバー貫通孔62により形成されている。カバー貫通路72bは、カバー吸入口72aから下流側に向けて徐々に細くなっている。カバー貫通路72bの断面積は、カバー流路70の下流端部にて最も小さくなっている。この形状のカバー貫通路72bにおいては、下流端部の断面積が開放面積になっている。カバー貫通路72bの開放面積は、カバー接続路74の開放面積及びポンプ吸入口52aの開口面積のいずれよりも小さくなっている。
【0069】
カバー貫通孔62は、外側カバー60を内外に貫通した貫通孔であり、例えばカバー底部60bを軸方向αに貫通している。カバー貫通孔62の中心線は、軸方向αに延びており、回転軸線Raに一致している。カバー貫通孔62は、カバー底部60bの外面から内面に向けて徐々に細くなっている。カバー貫通孔62の内面62aは、環状に延びている。内面62aは、カバー底部60bの厚さ方向に延びており、カバー貫通孔62の内側に向けて膨らむように曲がっている。内面62aでは、カバー貫通孔62の径方向外側において、カバー吸入口72aがカバー貫通孔62の中心から最も遠い部位になっている。内面62aにおいては、カバー底部60bの厚さ方向においてカバー吸入口72a側の部分が湾曲面を形成するように面取りされた状態になっている。なお、内面62aにおいて面取りされた部分には、湾曲面ではなく折れ曲がり面が形成されていてもよい。
【0070】
カバー流路70は、全体としてカバー吸入口72a及びポンプ吸入口52aに対して拡張されている。カバー吸入口72aからカバー流路70に吸入されてきた流体は、カバー流路70において膨張しやすい。ポンプ吸入口52aからカバー流路70に逆流してきた流体は、カバー流路70において膨張しやすい。カバー流路70は、流体が膨張しやすい空間であり、膨張室やカバー膨張室と称されることがある。カバー流路70においては、カバー吸入路72、カバー案内路73及びカバー接続路74が1つの膨張室を形成している。カバー流路70においては、カバー吸入路72が形成した膨張室と、カバー案内路73が形成した膨張室とがカバー接続路74により接続されている、としてもよい。カバー吸入口72a及びポンプ吸入口52aは、カバー流路70を絞っており、絞り路と称されることがある。
【0071】
なお、カバー流路70を絞っているのは、正確には、カバー貫通路72bの下流端部であるが、本実施形態では説明の便宜上、カバー吸入口72aがカバー流路70を絞っていると表現することがある。また、カバー吸入口72aから吸入された流体が膨張するのは、カバー貫通路72bの下流端部を通過した後であるが、本実施形態では説明の便宜上、カバー吸入口72aから吸入された流体がカバー流路70にて膨張すると表現することがある。さらに、カバー貫通路72bの開放面積のことをカバー吸入口72aの開口面積と表現することがある。カバー吸入口72aを含むカバー貫通路72bがカバー吸入口に相当する。
【0072】
カバー流路70においては、カバー吸入路72、カバー案内路73及びカバー接続路74が1つの膨張室を形成しているとが形成されているとしてもよく、カバー吸入路72及びあにより接続された加えて、カバー流路70においては、が1つの膨張室であると
図1、
図2に示すように、カバー接続路74は、周方向γ及び径方向βの少なくとも一方において、カバー吸入口72a及びポンプ吸入口52aの両方から離間した位置にある。例えば、カバー接続路74は、径方向βにおいてカバー吸入口72aから離間した位置にある。カバー接続路74は、カバー吸入口72aよりも径方向βの外側にある。カバー接続路74は、周方向γ及び径方向βの両方においてポンプ吸入口52aから離間した位置にある。カバー接続路74は、カバー吸入口72a及びポンプ吸入口52aのそれぞれと径方向βに並べられている。カバー接続路74は、径方向βにおいてカバー吸入口72aを介してポンプ吸入口52aとは反対側にある。
【0073】
カバー接続路74は、カバー流路70の上下流方向においてポンプ吸入口52aよりもカバー吸入口72aに近い位置にある。カバー接続路74は、軸方向α、径方向β及び周方向γのいずれにおいてもポンプ吸入口52aよりもカバー吸入口72aに近い位置にある。
【0074】
カバー吸入口72aは、周方向γ及び径方向βの少なくとも一方において、ポンプ吸入口52aから離間した位置にある。例えば、カバー吸入口72aは、径方向βにおいてポンプ吸入口52aから離間した位置にある。カバー吸入口72aは、ポンプ吸入口52aに径方向βに並べられている。
【0075】
流体機械10では、モータ部20の駆動によりポンプ部30がポンプ吸入口52aから流体を吸入することに伴って、カバー吸入口72aから流体が吸入される。カバー流路70においては、カバー吸入口72aから流入した流体が周方向γに遠回りしてポンプ吸入口52aに到達する。例えば、カバー吸入口72aから流入した流体は、径方向βにおいてポンプ吸入口52aとは反対側に向けてケース底部23bに沿って流れる。この流体は、ケース底部23bに沿って径方向βや周方向γに流れてカバー接続路74に到達する。そして、カバー接続路74を通った流体は、径方向βにおいてカバー吸入口72aよりも遠いポンプ吸入口52aに向けてケース外周部23aに沿って流れる。この流体は、ケース外周部23aに沿って軸方向αや周方向γに流れ、ポンプ吸入口52aからポンプ吸入路52に吸入される。
【0076】
流体機械10においては、動力源であるモータ部20にて熱が発生しやすい。これに対して、カバー流路70を流れる流体は、モータ部20を冷却する冷却効果を発揮する。カバー吸入路72を流れる流体は、ケース底部23bと熱交換を行うことなどによりケース底部23bやモータ21を冷却する。カバー案内路73を流れる流体は、ケース外周部23aと熱交換を行うことなどによりケース外周部23aやモータ21を冷却する。
【0077】
ポンプ部30においては、モータ部20の駆動によりポンプ吸入口52aから流体を吸入する際の脈動音が吸入脈動音として発生し、この吸入脈動音が騒音になることがある。例えば、圧縮室51で圧縮された流体の一部が、ポンプ吸入路52をポンプ吸入口52aに向けて圧力波として逆流して吸入脈動音を生じさせることがある。吸入脈動音は、モータ部20の回転数に起因した脈動周波数を有しており、圧縮室51からポンプ吸入路52に伝わる。
【0078】
これに対して、流体機械10では、ポンプ吸入路52にカバー流路70が接続されている。カバー流路70は、吸入脈動音を減衰させることで消音効果を発揮する。ポンプ部30にて発生した吸入脈動音については、距離による距離減衰、膨張による膨張減衰、及び圧力損失の増加による減衰がカバー流路70において生じやすい。
【0079】
吸入脈動音は、カバー流路70においてポンプ吸入口52aとカバー吸入口72aとの離間距離が大きいほど距離減衰しやすい。また、吸入脈動音は、ポンプ吸入口52a及びカバー吸入口72aに対するカバー流路70の拡張度合いが大きいほど膨張減衰しやすい。膨張減衰については、例えば、ポンプ吸入路52を逆流した流体はカバー流路70で膨張し、速度と圧力が低減する。このため、ポンプ吸入路52を逆流した圧力波のエネルギがカバー流路70を通ってカバー吸入口72aに到達したときには低減しており、圧力波による脈動音が減衰する。さらに、吸入脈動音は、カバー吸入口72a及びポンプ吸入口52aによるカバー流路70の絞り度合いが大きいほど圧力損失が増加して減衰しやすい。
【0080】
カバー流路70は、消音器やマフラーと称されることがある。カバー流路70は、吸入脈動音の膨張減衰を利用することから膨張型消音器や膨張型マフラーと称されることもある。また、流体機械10において、カバー流路70を形成する外側カバー60等の部材や部位のことが消音器やマフラーと称されることがある。
【0081】
脈動の減衰については、
図3に示す減衰理論式及び減衰モデルがある。減衰理論式は、脈動の減衰量である脈動減衰量を透過損失R[dB]として算出する式である。透過損失Rは論理透過損失と称されることがある。透過損失Rは、第1断面積S1に対する第2断面積S2の比である膨張比mと膨張室C2の長さlとによって算出できる。減衰理論式及び減衰モデルでは、透過損失Rが大きいほど脈動の減衰量が大きいことが示されている。また、減衰理論式及び減衰モデルでは、膨張比mが大きいほど透過損失Rが大きくなること、及び長さlが大きいほど透過損失Rが大きくなることが示されている。第1断面積S1は入口C1の断面積であり、第2断面積S2は膨張室C2の断面積である。流体は、入口C1から膨張室C2に流入し、出口C3から流出する。
【0082】
減衰理論式及び減衰モデルでは、透過損失Rの大きさが膨張比mに応じて増減する。例えば長さlが所定値に固定設定された条件では、
図4に示すように、膨張比mが第1膨張比m1に設定された場合の第1透過損失R1は、膨張比mが第2膨張比m2に設定された場合の第2透過損失R2よりも大きい。第1膨張比m1は、第2膨張比m2よりも大きく、第2膨張比m2よりも大きい減衰効果及び膨張効果を発揮する。例えば、第1透過損失R1は、第1膨張比m1により得られる透過損失Rの最大値である。第2透過損失R2は、第2膨張比m2により得られる透過損失Rの最大値である。
【0083】
透過損失Rは、脈動周波数f[Hz]に応じて増減する。脈動周波数fについては、複数の周波数帯域が設定されている。複数の周波数帯域においては、それぞれの周波数領域の中央値に近いほど透過損失Rが大きくなっており、中央値から遠いほど透過損失Rが小さくなっている。複数の周波数帯域においては、周波数帯域の幅である帯域幅Bが互いに同じになっている。
【0084】
減衰理論式及び減衰モデルでは、帯域幅Bが長さlに応じて増減する。例えば膨張比mが所定値に固定設定された条件では、
図5に示すように、長さlが第1長さl1に設定された場合の第1帯域幅B1は、長さlが第2長さl2に設定された場合の第2帯域幅B2よりも小さい。例えば、第1帯域幅B1の値よりも小さい特定周波数fmでは、第1長さl1により得られる第1透過損失R1が、第2長さl2により得られる第2透過損失R2よりも大きい。特定周波数fmでは、第1長さl1が第2長さl2よりも大きい減衰効果を発揮する。
【0085】
カバー流路70においては、カバー吸入口72aが入口C1に該当し、カバー流路70が膨張室C2に該当し、ポンプ吸入口52aが出口C3に該当する。カバー吸入口72aの開口面積が第1断面積S1に該当し、カバー流路70の最大面積が第2断面積S2に該当する。カバー流路70においては、最も拡張された部分の断面積を最大面積と称する。カバー吸入口72aの開口面積とカバー流路70の最大面積との面積比が膨張比mに該当する。カバー流路70の長さ寸法が長さlに該当する。この長さ寸法は、上下流方向におけるカバー流路70の長さであって、上下流方向においてカバー吸入口72aとポンプ吸入口52aとの離間距離である。
【0086】
カバー流路70においては、所定の脈動周波数fについて吸入脈動音の減衰量が十分に大きくなるように、カバー流路70の面積比及び長さ寸法が設定されている。例えば、比較的低い周波数である特定周波数fmにて、吸入脈動音の減衰量が損失目標値Rmになるように、カバー吸入口72aの開口面積、カバー流路70の最大面積及び長さ寸法が設定されている。損失目標値Rmは、第1透過損失R1よりも小さく且つ第2透過損失R2よりも大きい値に設定されている。損失目標値Rmは、例えば第2透過損失R2よりも第1透過損失R1に近い値である。損失目標値Rmが目標値に相当する。
【0087】
減衰理論式及び減衰モデルでは、流体機械10について、カバー流路70の面積比が小さいほど吸入脈動音の減衰量が大きくなることが示されている。このため、流体機械10においては、カバー吸入口72aの開口面積が小さいほど、カバー流路70の面積比が大きくなって吸入脈動音の減衰量が大きくなる。ところが、カバー吸入口72aの開口面積が小さすぎると、カバー吸入口72aでの圧力損失が過剰に増加し、カバー吸入口72aからの流体の吸入量やポンプ吐出口53aからの流体の吐出量が低下するなどポンプ性能が低下する、ということが懸念される。
【0088】
流体機械10において、ポンプ性能の低下は機能性の観点などから1割以下であることが望ましい。例えば、理想気体の状態方程式を用いた観点では、圧力損失が10kPa以下になるようにカバー吸入口72aの開口面積が設定されることが望ましい。10kPaは、常温大気圧の約1割になる値である。理想気体の状態方程式はPV=nRTである。Pが圧力[Pa]、Vが体積[m3]、nが物質量[mol]、Rが気体定数[J/(mol・K)]、Tが温度[K]である。カバー吸入口72aの開口面積について、小さすぎない値としては、例えば圧縮室導入路52bの断面積よりも大きい値が挙げられる。
【0089】
図4に示すように、膨張比mにより得られる透過損失Rの最大値が損失目標値Rmよりも大きくなるように、カバー流路70の面積比が設定されている。例えば、カバー吸入口72aの開口面積がカバー流路70の最大面積の1/4以下に設定されている。換言すれば、カバー流路70の最大面積は、カバー吸入口72aの開口面積の4倍以上に設定されている。また、
図5に示すように、特定周波数fmが、長さlに応じて決まる帯域幅Bの中央値になるように、カバー流路70の長さ寸法が設定されている。これらのようにカバー流路70の面積比及び長さ寸法が設定されることで、吸入脈動音の透過損失Rが特定周波数fmについて損失目標値Rmよりも大きくなる。このため、吸入脈動音のうち特定周波数fmという周波数が比較的低い低周波音が、透過損失Rが損失目標値Rmよりも大きくなるように減衰しやすくなっている。
【0090】
カバー流路70については、特定周波数fmが250Hzとされた場合、5dB以上の透過損失Rを得るために、膨張比mが16以上に設定されていることが好ましい。5dB以上の透過損失Rは、十分な減衰効果が得られたことを示す一例である。また、長さlが40~150mmに設定された構成では、例えば長さlが40mm以下に設定された構成に比べて、透過損失Rが5dB以上になる可能性を高めることができる。
【0091】
ここまで説明した本実施形態によれば、カバー流路70がモータ外面20aに沿って延びているため、カバー吸入口72aから吸入された流体がモータ外面20aに沿って流れる。この構成では、流体がモータ部20の内部を流れることに起因してモータ部20の耐久性が低下するということを回避できる。また、この構成では、流体の冷却効果がモータ外面20aに付与されるため、流体をモータ部20の内部に流さなくても、流体によりモータ部20を冷却することができる。さらに、この構成では、流体をモータ部20の内部に流さなくても、モータ部20にて生じた吸入脈動音等の騒音をカバー流路70にて減衰させることができる。したがって、流体機械10に冷却効果及び騒音低減効果を発揮させ、且つ流体機械10の耐久性を高めることができる。
【0092】
例えば本実施形態とは異なり、流体がモータ部20の内部を流れる構成では、モータ部20の内部に腐食などが生じることが懸念される。例えば、流体として外気等の空気がモータ部20の内部を流れる構成では、空気に含まれる水分や異物などがロータの内部に侵入すると、これら水分や異物などによりロータが腐食されやすくなってしまう。このように、モータ部20の内部においてロータなどに腐食が生じると、耐久性が低下し、製品寿命に大きな影響が及ぶことになる。
【0093】
本実施形態によれば、モータ部20の外側に外側カバー60が設けられている。この構成では、モータ部20の外径を利用して、モータ部20の外側にカバー流路70を形成することができる。このため、流体機械10の体格をコンパクトにすることができる。特に、径方向βにおいて外側カバー60がポンプ部30よりも外側に突出していないため、流体機械10が径方向βに大型化することを抑制しつつ、カバー流路70を流体機械10に設けることができる。
【0094】
本実施形態によれば、ポンプ吸入口52aにカバー流路70が接続されている。この構成では、カバー流路70において吸入脈動音の距離減衰が生じやすいため、流体機械10の騒音低減効果を高めることができる。しかも、カバー流路70がカバー吸入口72aに対して拡張された状態になっている。この構成では、カバー流路70において吸入脈動音の膨張減衰が生じやすいため、流体機械10の騒音低減効果を高めることができる。特に、カバー吸入口72aの開口面積がカバー流路70の最大面積の1/4以下に設定されているため、カバー流路70において吸入脈動音が更に減衰しやすくなっている。
【0095】
本実施形態によれば、透過損失Rの最大値が損失目標値Rmよりも大きくなるように、カバー流路70の最大面積が設定されている。この構成では、カバー流路70の最大面積によりカバー流路70の面積比を適正に設定できるため、カバー流路70において吸入脈動音が更に減衰しやすくなっている。
【0096】
本実施形態によれば、特定周波数fmについて透過損失Rが損失目標値Rmよりも大きくなるように、カバー流路70の長さ寸法が設定されている。この構成では、カバー流路70の長さ寸法を適正に設定できるため、カバー流路70において吸入脈動音が更に減衰しやすくなっている。
【0097】
本実施形態によれば、カバー貫通孔62においては、内面62aがカバー貫通孔62の内側に向けて膨らむように曲がっている。この構成では、カバー貫通孔62に吸入される流体が内面62aの曲がりに沿って流れやすい。このため、カバー貫通孔62に流体が吸入される際に風切り音などの音が生じる、ということを抑制できる。
【0098】
本実施形態によれば、外側カバー60の熱伝導性がモータケース23の熱伝導性よりも高い。この構成では、カバー流路70を流れる流体の熱が外側カバー60を介して外部に放出されやすい。このため、モータケース23から流体に熱が付与された場合に、その熱が外側カバー60の内側においてカバー流路70にこもるということを抑制できる。
【0099】
本実施形態によれば、カバー流路70から流体が漏れることを規制するカバーシール部61が、外側カバー60とポンプ外面30aとの間に設けられている。この構成では、カバー吸入口72aから吸入した流体の全てがカバー流路70からポンプ吸入口52aに吸入される可能性が高くなる。また、外側カバー60とポンプ外面30aとの隙間から吸入脈動音が流体機械10の外部に伝わるということが規制される。これらのことにより、カバー流路70による騒音低減効果を高めることができる。
【0100】
本実施形態によれば、外側カバー60は、カバー流路70がポンプ吸入口52aに通じるようにポンプ吸入口52aを覆った状態でポンプ部30に固定されている。この構成では、外側カバー60をポンプ部30に固定することができれば、外側カバー60によりカバー流路70を形成する上でポンプ部30の設計変更を必要としない。このため、流体機械10にカバー流路70を設ける上で、ポンプ部30を製造するためのコストが増加することを抑制できる。
【0101】
本実施形態によれば、外側カバー60とモータケース23との間にカバー流路70が形成されている。この構成では、外側カバー60がモータケース23を覆うことができれば、外側カバー60によりカバー流路70を形成する上でモータ部20の設計変更を必要としない。このため、モータ部20を製造するためのコストが増加することを抑制できる。
【0102】
本実施形態によれば、カバー吸入口72aはポンプ吐出口53aとは逆向きに開口されている。この構成では、カバー吸入口72aから吸入される流体と、ポンプ吐出口53aから吐出された流体と、互いに干渉するということが生じにくい。これにより、カバー流路70において吸入脈動音が減衰しやすい構成を実現できる。
【0103】
本実施形態によれば、カバー吸入口72aは、軸方向αにおいてポンプ部30とは反対側に向けてモータ部20から離間した位置にある。この構成では、軸方向αにおいて、カバー吸入口72aとポンプ吸入口52aとの離間距離を極力大きくできるため、カバー流路70において吸入脈動音が距離減衰しやすくなっている。
【0104】
本実施形態によれば、カバー流路70が周方向γに環状に延びている。この構成では、周方向γにおいてカバー流路70の長さ寸法を極力大きくできるため、カバー流路70において吸入脈動音が距離減衰しやすくなっている。また、この構成では、カバー流路70の最大面積を極力大きくできるため、カバー流路70において吸入脈動音が膨張減衰しやすくなっている。
【0105】
本実施形態によれば、モータ部20と外側カバー60との間に設けられた変位規制部65によりモータ部20に対する外側カバー60の変位が規制されている。この構成では、モータ部20に対して外側カバー60が相対的に振動するということが生じにくい。このため、モータ部20にて生じた吸入脈動音等の騒音に外側カバー60が共鳴する、ということを抑制できる。したがって、流体機械10の騒音が外側カバー60により増加するということを抑制できる。
【0106】
本実施形態によれば、カバー流路70においては、カバー吸入路72とカバー案内路73とがカバー接続路74により接続されている。このため、変位規制部65によってカバー流路70がカバー吸入路72とカバー案内路73とに仕切られていても、カバー吸入路72及びカバー案内路73を含むカバー流路70全体を、吸入脈動音を減衰させる膨張室として機能させることができる。このため、カバー流路70が発揮する吸入脈動音の減衰効果が変位規制部65によって低下するということを抑制できる。
【0107】
本実施形態によれば、カバー接続路74は、周方向γ及び径方向βの少なくとも一方においてポンプ吸入口52aから離間した位置に設けられている。この構成では、例えば本実施形態とは異なり、カバー接続路74とポンプ吸入口52aとが周方向γ及び径方向βのいずれにも重複した位置にある構成に比べて、カバー接続路74とポンプ吸入口52aとの離間距離を大きくできる。特に、カバー接続路74がポンプ吸入口52aから周方向γに離間した位置にあることで、モータケース23の外周長さを利用してカバー接続路74とポンプ吸入口52aとの離間距離を大きくできる。このようにカバー接続路74とポンプ吸入口52aとの離間距離を大きくすることで、カバー流路70において吸入脈動音が距離減衰しやすくなっている。
【0108】
本実施形態によれば、カバー接続路74は、周方向γ及び径方向βの少なくとも一方においてカバー吸入口72aから離間した位置に設けられている。この構成では、例えば本実施形態とは異なり、カバー接続路74とカバー吸入口72aとが周方向γ及び径方向βのいずれにも重複した位置にある構成に比べて、カバー接続路74とカバー吸入口72aとの離間距離を大きくできる。特に、カバー接続路74がカバー吸入口72aから径方向βに離間した位置にあることで、モータケース23の外径寸法を利用してカバー接続路74とカバー吸入口72aとの離間距離を大きくできる。このようにカバー接続路74とカバー吸入口72aとの離間距離を大きくすることで、カバー流路70において吸入脈動音が距離減衰しやすくなっている。
【0109】
本実施形態によれば、カバー吸入口72aの開口面積がカバー接続路74の開放面積よりも小さい。この構成では、カバー流路70においてカバー吸入口72aが絞り路として機能するため、カバー流路70全体を、吸入脈動音を減衰させるための膨張室とすることができる。この場合、カバー流路70の長さ寸法が膨張室の長さ寸法になって膨張室の長さ寸法が十分に確保されるため、カバー流路70において吸入脈動音が距離減衰しやすくなっている。
【0110】
例えば本実施形態とは異なり、カバー接続路74の開放面積がカバー吸入口72aの開口面積よりも小さい構成では、カバー流路70においてカバー案内路73が膨張室として機能する一方で、カバー吸入路72が膨張室として機能しにくくなってしまう。この場合、カバー案内路73の長さ寸法が膨張室の長さ寸法になって膨張室の長さ寸法が不足しやすくなる。このため、カバー流路70において吸入脈動音が距離減衰しにくくなることが懸念される。
【0111】
本実施形態によれば、変位規制部65は、外側カバー60に固定され且つモータケース23に離間可能に接触した状態で、モータケース23に対する外側カバー60の相対的な変位を規制する。この構成では、変位規制部65付きの外側カバー60をモータケース23に装着することができれば、変位規制部65をモータケース23に接触させる上でモータ部20の設計変更を必要としない。このため、流体機械10に変位規制部65を設ける上で、ポンプ部30を製造するためのコストが増加することを抑制できる。
【0112】
本実施形態によれば、振動吸収部材66は、モータ部20に対する外側カバー60の相対的な変位に伴って弾性変形する。この構成では、ポンプ部30による流体の吸入に伴ってモータ部20が振動している場合に、その振動が振動吸収部材66により減衰される。このため、モータ部20から外側カバー60に伝わることを振動吸収部材66により抑制できる。また、ポンプ吸入口52aからカバー流路70に伝わった吸入脈動音により外側カバー60が振動するということを振動吸収部材66により抑制できる。したがって、ポンプ部30の振動や吸入脈動音に外側カバー60が共鳴することを抑制できる。
【0113】
本実施形態によれば、カバー吸入口72aは、周方向γ及び径方向βの少なくとも一方においてポンプ吸入口52aから離間した位置に設けられている。この構成では、例えば本実施形態とは異なり、カバー吸入口72aとポンプ吸入口52aとが周方向γ及び径方向βのいずれにも重複した位置にある構成に比べて、カバー吸入口72aとポンプ吸入口52aとの離間距離を大きくできる。特に、カバー吸入口72aがポンプ吸入口52aから径方向βに離間した位置にあることで、モータケース23の外径寸法を利用してカバー吸入口72aとポンプ吸入口52aとの離間距離を大きくできる。このように、カバー吸入口72aとポンプ吸入口52aとの離間距離を大きくすることで、カバー接続路74がカバー流路70に設けられているか否かに関係なく、カバー流路70において吸入脈動音が距離減衰しやすくなっている。
【0114】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、機械流路11においてカバー流路70が膨張室としての機能を発揮する構成になっていた。これに対して、第2実施形態では、ポンプ流路50の少なくとも一部が膨張室としての機能を発揮する構成になっている。第2実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第2本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0115】
図6に示すように、ポンプ流路50はポンプ膨張室55を有している。ポンプ膨張室55は、ポンプ流路50の上下流方向においてポンプ吸入口52aと圧縮室導入路52bとの間に設けられている。ポンプ膨張室55は、ポンプ吸入口52aから下流側に離間した位置にある。ポンプ膨張室55は、圧縮室導入路52bから上流側に離間した位置にある。ポンプ膨張室55は、ポンプ吸入口52a及び圧縮室導入路52bに対して拡張されている。ポンプ膨張室55には、偏心部42の少なくとも一部が収容されている。ハウジング33には肉抜き部が設けられており、ポンプ膨張室55は、肉抜き部により形成された内部空間である。ポンプ膨張室55は、ポンプ拡張路に相当する。ポンプ膨張室55は、カバー流路70に対して追加して設けられた追加膨張室と称されることがある。
【0116】
ポンプ吸入口52aからポンプ膨張室55に吸入されてきた流体は、ポンプ膨張室55にて膨張しやすい。圧縮室導入路52bからポンプ膨張室55に逆流してきた流体は、ポンプ膨張室55にて膨張しやすい。ポンプ膨張室55は、流体が膨張しやすい空間である。ポンプ吸入口52a及び圧縮室導入路52bは、ポンプ膨張室55に対してポンプ流路50を絞っており、絞り路と称されることがある。
【0117】
本実施形態では、カバー流路70に加えて、ポンプ膨張室55が、吸入脈動音を低減する消音効果を発揮することができる。圧縮室51にて発生した吸入脈動音については、距離による距離減衰、膨張による膨張減衰、及び圧力損失の増加による減衰が、カバー流路70に加えてポンプ膨張室55において生じやすい。ポンプ膨張室55は、カバー流路70と同様に、消音器やマフラーと称されることがある。また、流体機械10において、ポンプ膨張室55を形成する第2ハウジング部36等の部材や部位のことが消音器やマフラーと称されることがある。
【0118】
ポンプ膨張室55を有するポンプ吸入路52については、上記第1実施形態のカバー流路70と同様に、減衰理論式及び減衰モデルを適用することが可能である。ポンプ吸入路52においては、ポンプ吸入口52aが入口C1に該当し、ポンプ膨張室55が膨張室C2に該当し、圧縮室導入路52bが出口C3に該当する。ポンプ吸入口52aの開口面積が第1断面積S1に該当し、ポンプ膨張室55の最大面積が第2断面積S2に該当する。ポンプ膨張室55においては、最も拡張された部分の断面積を最大面積と称する。ポンプ吸入口52aの開口面積とポンプ膨張室55の最大面積との面積比が膨張比mに該当する。ポンプ膨張室55の長さ寸法が長さlに該当する。この長さ寸法は、上下流方向におけるポンプ膨張室55の長さである。
【0119】
ポンプ吸入路52においては、膨張比mにより得られる透過損失Rの最大値が損失目標値Rmよりも大きくなるように、ポンプ膨張室55の面積比が設定されている。例えば、ポンプ吸入口52aの開口面積がポンプ膨張室55の最大面積の1/4以下に設定されている。換言すれば、ポンプ膨張室55の最大面積は、ポンプ吸入口52aの開口面積の4倍以上に設定されている。
【0120】
ポンプ膨張室55は、ポンプ吸入口52aに加えて、カバー吸入口72aに対して拡張されている。ポンプ膨張室55の最大面積は、カバー吸入口72aの開口面積よりも大きい。例えば、ポンプ膨張室55の最大面積は、カバー吸入口72aの開口面積の4倍以上に設定されている。換言すれば、カバー吸入口72aの開口面積は、ポンプ膨張室55の最大面積の1/4以下に設定されている。
【0121】
流体機械10はカバーフィルタ81を有している。カバーフィルタ81は、カバー流路70に設けられており、カバー流路70を流れる流体から異物を除去する。カバーフィルタ81は、メッシュ状のフィルタ部材により形成されている。フィルタ部材としては、例えば繊維の織布、不織布などの濾材などがある。カバーフィルタ81は、カバー吸入口72aからカバー流路70に吸入された全ての流体が通る位置に設けられている。カバーフィルタ81は、例えばカバー案内路73に設けられている。カバーフィルタ81は、ポンプ吸入口52aを覆う状態になっている。カバーフィルタ81は、モータケース23の周りを一周するように環状に延びている。
【0122】
ここまで説明した本実施形態によれば、ポンプ膨張室55がポンプ吸入口52aに対して拡張された状態になっている。この構成では、ポンプ膨張室55において吸入脈動音の膨張減衰が生じやすいため、流体機械10の騒音低減効果を高めることができる。特に、ポンプ膨張室55の最大面積がポンプ吸入口52aの開口面積の4倍以上に設定されているため、ポンプ膨張室55において吸入脈動音が更に減衰しやすくなっている。
【0123】
本実施形態によれば、カバー流路70及びポンプ膨張室55という2つの膨張室が機械流路11に設けられている。このため、仮に、カバー流路70による膨張効果だけでは消音性能が不足してしまった場合でも、ポンプ膨張室55による膨張効果で消音性能の不足を補うことができる。しかも、ポンプ膨張室55は、ハウジング33の肉抜き部により形成されていることで、ハウジング33の内部に収容されている。このため、ポンプ膨張室55の分だけハウジング33が大型化するということが生じにくい。すなわち、ポンプ膨張室55によって流体機械10が増加するということを回避できる。
【0124】
本実施形態によれば、カバーフィルタ81は、カバー流路70においてポンプ吸入口52aとカバー吸入口72aとの間に設けられている。この構成では、仮に異物が流体と共にカバー吸入口72aからカバー流路70に侵入したとしても、カバーフィルタ81により異物が除去される。このため、異物がポンプ流路50に侵入し、この異物によりポンプ部30に異常が発生する、ということを抑制できる。
【0125】
<第3実施形態>
上記第1実施形態では、ポンプ吸入口52aがポンプ外面30aのうち対向面30cに設けられていた。これに対して、第3実施形態では、ポンプ吸入口52aが対向面30cに設けられていない。第3実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第3本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0126】
図7に示すように、ポンプ吸入口52aは、ポンプ外面30aのうち外周面30bに設けられている。ポンプ吸入口52aは、径方向βに向けて開口されており、軸方向αにおいて対向面30cから反対面30d側に離間した位置にある。
【0127】
外側カバー60は、上記第1実施形態と同様に、ポンプ吸入口52aを覆った状態になっている。外側カバー60は、対向面30cに加えて外周面30bに対して固定具や溶接等により固定されている。外側カバー60と外周面30bとの固定部分においては、外側カバー60の端面と外周面30bとの間にカバーシール部61が挟み込まれた状態になっている。
【0128】
外側カバー60はカバー膨出部60cを有している。カバー膨出部60cは、外側カバー60においてカバー外周部60aから径方向βに膨出した部位である。カバー膨出部60cは、軸方向αにおいてポンプ部30とカバー外周部60aとにかけ渡された状態になっている。カバー膨出部60cは、対向面30c及びカバー外周部60aのそれぞれに固定されている。カバー膨出部60cは、外周面30bに沿って軸方向α及び周方向γに延びている。
【0129】
カバー流路70は、カバー膨出路75及び膨出接続路76を有している。カバー膨出路75は、カバー膨出部60cと外周面30bとの間に形成されている。カバー膨出路75は、カバー流路70の上下流方向においてカバー案内路73よりも下流側に設けられている。カバー膨出路75は、ポンプ吸入口52aに接続されている。カバー膨出路75は、外周面30bに沿って軸方向α及び周方向γに延びている。
【0130】
膨出接続路76は、カバー案内路73とカバー膨出路75とを接続している。膨出接続路76は、カバー外周部60aを貫通した貫通孔により形成されている。カバー膨出部60cは、膨出接続路76を形成する貫通孔とポンプ吸入口52aとを覆っている。膨出接続路76は、中継吸入口と称されることがある。なお、カバー膨出路75及び膨出接続路76は、カバー案内路73と共に下流路に相当する。
【0131】
カバー膨出路75は、膨出接続路76及びポンプ吸入口52aに対して拡張されている。膨出接続路76からカバー膨出路75に吸入されてきた流体は、カバー膨出路75において膨張しやすい。ポンプ吸入口52aからカバー膨出路75に逆流してきた流体は、カバー膨出路75において膨張しやすい。カバー膨出路75は、カバー流路70において膨出室としての機能を発揮することが可能であり、追加膨張室と称されることがある。例えば、カバー吸入路72、カバー案内路73及びカバー接続路74を第1膨張室と称し、カバー膨出路75を第2膨張室と称してもよい。なお、カバー膨出路75及び膨出接続路76を含んでカバー流路70全体が1つの膨張室を形成している、としてもよい。
【0132】
カバー膨出路75については、上記第1実施形態のカバー流路70と同様に、減衰論理式及び減衰モデルを適用することが可能である。カバー膨出路75においては、膨出接続路76が入口C1に該当し、カバー膨出路75が膨張室C2に該当し、ポンプ吸入口52aが出口C3に該当する。膨出接続路76の断面積が第1断面積S1に該当し、膨出接続路76の最大面積が第2断面積S2に該当する。膨出接続路76においては、最も拡張された部分の断面積を最大面積と称する。膨出接続路76の開口面積とカバー膨出路75の最大面積との面積比が膨張比mに該当する。カバー膨出路75の長さ寸法が長さlに該当する。この長さ寸法は、上下流方向におけるカバー膨出路75の長さである。
【0133】
カバー吸入口72aはカバー底部60bに設けられていなくてもよい。例えば本実施形態では、カバー吸入口72aが吸入管60dにより形成されている。吸入管60dは、管接続部60eを介してカバー底部60bに接続されている。吸入管60d及び管接続部60eは、外側カバー60に含まれている。吸入管60dは、軸方向αにおいてポンプ部30とは反対側に向けてカバー底部60bから延びている。吸入管60dの内部空間がカバー流路70の一部を形成している。カバー吸入口72aは、吸入管60dの先端部に設けられている。
【0134】
カバー接続路74は1つでなくてもよい。例えば本実施形態では、カバー接続路74が周方向γに複数並べられている。複数のカバー接続路74には、径方向βにおいてカバー吸入口72aとポンプ吸入口52aとの間に設けられたカバー接続路74と、径方向βにおいてカバー吸入口72aを介してポンプ吸入口52aとは反対側に設けられたカバー接続路74とが含まれている。カバー吸入口72aからカバー流路70に吸入された流体は、周方向γに遠回りせずに最短距離でポンプ吸入口52aに到達すること、及び周方向γに遠回りしてポンプ部30を迂回するようにポンプ吸入口52aに到達することの両方が可能になる。
【0135】
本実施形態によれば、カバー膨出路75が外周面30bに沿って延びているため、カバー吸入口72aからカバー流路70に吸入された流体が外周面30bに沿って流れる。この構成では、流体の冷却効果が外周面30bに付与されるため、カバー膨出路75を流れる流体によりハウジング33の外側からポンプ部30を冷却することができる。また、この構成では、カバー膨出路75及び膨出接続路76の分だけカバー流路70を長くすることができるため、カバー流路70の消音効果を高めることができる。このように、スラスト摺動の発熱量が問題にならない場合などには、ポンプ部30の外側にカバー膨出路75を配置することで消音効果を高めやすくできる。カバー膨出路75を形成するカバー膨出部60cは、ポンプ部30の外側において外気等の外部流体と接するため、ポンプ部30やモータ部20に対する冷却効果を更に高めることができる。
【0136】
<第4実施形態>
上記第1実施形態では、カバー流路70に対してカバー吸入口72aが1つ設けられていた。これに対して、第4実施形態では、カバー流路70に対してカバー吸入口72aが複数設けられている。第4実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第4本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0137】
図8に示すように、カバー吸入口72aがカバー底部60bに複数設けられている。複数のカバー吸入口72aは、径方向β及び周方向γの少なくとも一方に並べられている。カバー吸入口72aは、径方向βにおいて回転軸線Raと外側カバー60との間にある。
【0138】
本実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、カバー流路70について、減衰論理式及び減衰モデルを適用することが可能である。本実施形態では、複数のカバー吸入口72aの全てが入口Cに該当する。また、複数のカバー吸入口72aにおいてそれぞれの開口面積の合計が第1断面積S1に該当する。これら開口面積の合計がカバー吸入口の開口面積に相当する。カバー吸入口72aの数や開口面積は、減衰論理式において消音効果を失わない範囲で設定されていることが好ましい。すなわち、カバー吸入口72aの数や開口面積は、第1断面積S1が大きくなり過ぎないように設定されていることが好ましい。
【0139】
カバー流路70は、カバー吸入路72とカバー案内路73とに仕切られていなくてもよい。例えば本実施形態では、モータケース23と外側カバー60との間に変位規制部65が設けられていない。この構成では、カバー流路70がカバー案内路73を有しておらず、カバー吸入路72が膨出接続路76を介してカバー膨出路75に接続されている。
【0140】
本実施形態では、流体機械10が外側フィルタ82を有している。外側フィルタ82は、カバー吸入口72aよりも外側に設けられており、カバー吸入口72aに流入する流体から異物を除去する。外側フィルタ82は、異物防止フィルタと称されることがある。外側フィルタ82は、メッシュ状のフィルタ部材により形成されている。外側フィルタ82は、カバー吸入口72aから外側に離間した位置に設けられている。例えば、外側フィルタ82は、カバー吸入口72aから径方向βに離間した位置にある。外側フィルタ82は、カバー吸入口72aよりも小さい複数の孔を有している。これら孔は、フィルタ部材が有する網目により形成されている。外側フィルタ82は、外装部材であり、外側カバー60と共に流体機械10の外面を形成している。
【0141】
外側カバー60においては、カバー外周部60aの先端部がカバー底部60bよりも先端側に突出している。外側フィルタ82は、カバー底部60bに対向した状態で、カバー外周部60aの先端部に取り付けられている。カバー外周部60aの内側においては、カバー底部60bと外側フィルタ82との間に外側流路83が形成されている。流体は、外側フィルタ82を介して外側流路83に流入し、この外側流路83からカバー吸入口72aを介してカバー流路70に吸入される。流体が流れる方向において、外側フィルタ82はカバー吸入口72aよりも上流側に設けられている。
【0142】
本実施形態によれば、カバー吸入口72aよりも外側に外側フィルタ82が設けられているため、カバー吸入口72aにゴミ等の異物が詰まることを防止できる。また、外側フィルタ82がカバー吸入口72aから外側に離間した位置にある。この構成では、仮にゴミ等の異物により外側フィルタ82の目詰まりが生じたとしても、カバー流路70が圧力損失の影響を受けにくくなっている。また、この構成では、例えば水に濡れた落ち葉等の異物が外側フィルタ82に引っ掛かったとしても、異物に付着した水等の液体がカバー底部60bに接触するということが生じにくくなっている。このため、カバー吸入口72aへの侵入が外側フィルタ82により阻止された異物について、その異物に付着した水等の液体だけがカバー吸入口72aに侵入するということを抑制できる。
【0143】
本実施形態では、上記第3実施形態と同様に、カバー膨出部60cによりカバー膨出路75が形成されている。ただし、本実施形態では、カバー膨出路75が膨張室としての機能を発揮しにくくなっている。例えば、カバー膨出路75の断面積が、膨出接続路76の断面積やポンプ吸入口52aの開口面積とほぼ同じになっている。
【0144】
本実施形態では、上記第2実施形態と同様に、図示しないカバーフィルタ81がカバー流路70に設けられていてもよい。例えば、カバーフィルタ81は、外側フィルタ82よりも目が細かいフィルタ部材により形成されている。カバーフィルタ81は、外側フィルタ82よりも細かい異物を除去することが可能になっている。カバーフィルタ81は、例えばカバー吸入口72aと膨出接続路76との間に設けられている。
【0145】
<第5実施形態>
上記第1実施形態では、外側カバー60がモータ部20の全体を覆っていた。これに対して、第5実施形態では、外側カバー60がモータ部20の一部だけを覆っている。第5実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第5本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0146】
図9に示すように、モータ部20においては、モータ部20の先端寄りの部分が外側カバー60から外側に露出している。モータ部20においては、少なくともケース底部23bが流体機械10の外側に露出している。外側カバー60は、軸方向αにおいてモータケース23よりも短くなっている。カバー底部60bには、モータ部20が挿通された開口が設けられている。カバー底部60bの内周面は、モータ外面20aに重ねられた状態になっている。カバー底部60bの内周面とモータ外面20aとの間には、シール部材が設けられている。このシール部材は、カバー流路70を流れる流体がカバー底部60bとケース外周部23aとの間から漏れ出すことを規制している。
【0147】
カバー底部60bは、軸方向αにおいてケース底部23bからポンプ部30側に離間した位置にある。カバー吸入口72aは、カバー底部60bにおいてケース外周部23aから径方向βの外側に離間した位置にある。カバー吸入口72aは、径方向βにおいてモータ部20を介してポンプ吸入口52aとは反対側に配置されている。本実施形態では、軸方向αにおいてカバー流路70がモータ部20よりも短くなっているが、この構成でも吸入脈動音に対する消音効果がカバー流路70により発揮される。
【0148】
<第6実施形態>
上記第1実施形態では、流体機械10がスクロール型流体機械であった。これに対して、第6実施形態では、流体機械10がベーン式流体機械である。第6実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第1実施形態と同様である。第6本実施形態では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0149】
図10、
図11に示すポンプ部30は、ベーン式のポンプである。ポンプ部30は、上記第1実施形態と同様に、ハウジング33及びポンプ流路50を有している。また、ポンプ流路50は、圧縮室51、ポンプ吸入路52及びポンプ吐出路53を有している。さらに、ポンプ吸入路52はポンプ吸入口52aを有しており、ポンプ吐出路53はポンプ吐出口53aを有している。
【0150】
本実施形態では、ハウジング33が、シリンダ91、ポンプカバー92、第1プレート93及び第2プレート94を有している。第1プレート93、シリンダ91、第2プレート94及びポンプカバー92は、軸方向αに並べられ、積層された状態になっている。第1プレート93と第2プレート94とは、互いに対向した状態で軸方向αに並べられている。シリンダ91は、軸方向αに延びた筒状の部材であり、第1プレート93と第2プレート94との間に設けられている。ポンプカバー92は、第2プレート94を介してシリンダ91の反対側に設けられている。第1プレート93にはポンプ吸入口52aが形成されている。ポンプカバー92にはポンプ吐出口53aが形成されている。第1プレート93及び第2プレート94は、サイドプレートと称されることがある。
【0151】
第1プレート93、シリンダ91、第2プレート94及びポンプカバー92は、固定具や溶接等により互いに固定されている。ハウジング33においては、流体がポンプ流路50から外部に漏れだすことがガスケット95により規制されている。ガスケット95は、シール部材により形成されている。ガスケット95は、第1プレート93とシリンダ91との間、シリンダ91と第2プレート94との間、第2プレート94とポンプカバー92との間のそれぞれに設けられている。
【0152】
ポンプ部30においては、シリンダ91が、上記第1実施形態の固定スクロール31に対応する機能を有している。また、ポンプロータ102は、上記第1実施形態の旋回スクロール32に対応する機能を有している。
【0153】
圧縮室51は、吸入ポート97及び吐出ポート98を有している。吸入ポート97は、圧縮室51の入口であり、圧縮室51に流体を吸入させる。吸入ポート97にはポンプ吸入路52が接続されている。吸入ポート97は、第1プレート93に形成されている。吐出ポート98は、圧縮室51の出口であり、圧縮室51から流体を吐出させる。吐出ポート98にはポンプ吐出路53が接続されている。吐出ポート98は第2プレート94に形成されている。
【0154】
図10、
図11での図示は省略するが、外側カバー60は、上記第1実施形態と同様に、ハウジング33に対して固定具や溶接等により固定されている。例えば、外側カバー60が第1プレート93に固定されている。なお、ハウジング33が吸入室ケースを有している構成では、外側カバー60が吸入室ケースに固定されていてもよい。吸入室ケースは、ポンプ吸入路52に含まれた吸入室を形成している。吸入室がポンプ吸入口52aに対して拡張された構成では、吸入室について、カバー流路70と同様に、減衰理論式及び減衰モデルを適用することが可能である。吸入室ケースは、軸方向αにおいて第1プレート93を介してシリンダ91の反対側に設けられている。ポンプ吸入口52aは、吸入室ケースの外面に形成されている。ポンプ吸入口52aから吸入された流体は、吸入室を介して圧縮室51に流入する。
【0155】
ポンプ部30は、ベーン101、ポンプロータ102、連結部103及び駆動用ピン104を有している。ポンプロータ102は、円柱状の部材であり、第1プレート93と第2プレート94との間においてシリンダ91の内側に設けられている。ポンプロータ102の中心軸は、シリンダ91の中心軸に対してずれた位置に設けられている。この構成により、ポンプロータ102は、シリンダ91の内側において片側に寄った位置で回転する。圧縮室51は、第1プレート93と第2プレート94との間の空間であって、シリンダ内周面91aとロータ外周面102aとの間の空間である。シリンダ内周面91aは、シリンダ91の内周面である。ロータ外周面102aは、ポンプロータ102の外周面である。
【0156】
連結部103は、ポンプロータ102とシャフト22とを連結している。ポンプロータ102は、モータ部20の駆動に伴ってシャフト22と共に回転する。ポンプロータ102の中心軸とシャフト22の中心軸とは互いに一致している。例えば、連結部103、ポンプロータ102及びシャフト22が同軸になっている。シャフト22の中心軸は、ポンプロータ102の回転軸である。シャフト22は、駆動用ピン104を介してポンプロータ102を回転させる駆動軸である。
【0157】
シャフト22は、ポンプロータ102に対して遊嵌されている。例えば、ポンプロータ102に形成された孔に連結部103の一部が遊嵌されている。この構成では、ポンプロータ102は、連結部103に対して軸方向αに相対的に移動可能になっている。すなわち、ポンプロータ102は、シャフト22に対して軸方向αに相対的に移動可能になっている。これにより、軸方向αについて、ポンプロータ102に対するシャフト22の組み付け公差を緩和することが可能になっている。
【0158】
駆動用ピン104は、連結部103に対するポンプロータ102の相対的な回転を規制している。駆動用ピン104は、軸方向αに延びており、連結部103とポンプロータ102とにかけ渡された状態になっている。駆動用ピン104においては、一方の端部がポンプロータ102に固定され、他方の端部が連結部103に固定されている。駆動用ピン104は、ポンプロータ102に形成された係合穴に圧入され、且つ連結部103に形成された係合穴に圧入されている。駆動用ピン104は、回り止めピンと称されることがある。
【0159】
ベーン101は、板状の部材であり、ポンプロータ102に複数装着されている。複数のベーン101は、ポンプロータ102に対して滑動可能になっている。ポンプロータ102には、複数のスリット102bが設けられている。複数のスリット102bのそれぞれにベーン101が装着されている。スリット102bは、ロータ外周面102aから、ポンプロータ102の中心からずれた位置に向けて内側に延びている。スリット102bは、スリット102bの延長線がポンプロータ102の中心を通らない向きに配置されている。スリット102bは、ポンプロータ102を軸方向αに貫通している。ベーン101は、スリット102bに入り込んだ状態になっており、スリット102bに対して径方向βに移動可能になっている。ポンプロータ102が回転している場合、ベーン101は、ロータ外周面102aから径方向βに突出した状態でシリンダ内周面91aに摺動する。圧縮室51は、複数のベーン101により複数の圧縮領域51aに仕切られた状態になる。
【0160】
第1プレート93、シリンダ91、第2プレート94、ポンプカバー92は、それぞれの外壁が大気に露出するように設置されている。これらの部材は、少なくとも一部が熱伝導性の良い金属によって形成されている構成でもよい。これらの部材は、少なくとも一部が大気に露出するように構成されていればよい。この構成によれば、ポンプロータ102の回転によって摺動する部分で発生する熱は、外壁を通じて拡散し、流体機械10の外部の雰囲気に放出される。
【0161】
シリンダ91、第1プレート93、第2プレート94、ポンプカバー92は、金属、樹脂などによって形成することができる。ポンプロータ102は、ステンレス系の材質によって形成されている。第1プレート93、第2プレート94は、ポンプロータ102と摺動する摺動面に設けられたポリテトラフルオロエチレンのコーティングを有している。あるいは、ポンプロータ102はカーボンによって形成されており、第1プレート93、第2プレート94はステンレス系の材質によって形成されている構成としてもよい。このような構成によれば、外部から潤滑油の供給が無い無給油条件下における摺動性能を確保することに寄与する。
【0162】
シリンダ91は、ステンレス系の材質によって形成されている。ベーン101は、カーボンによって形成されていることが好ましい。この構成によれば、ベーン101の先端とシリンダ内周面91aとの摩耗や焼き付きを抑えることに寄与し、無給油条件下で使用される流体機械10において有用である。
【0163】
ポンプ吐出路53には、ポンプフィルタ105が設けられている。ポンプフィルタ105は、固定された部材とポンプロータ102との摺動によって発生する摩耗粉などを捕集可能な部材である。ポンプフィルタ105は、多孔質材料によって形成されている。ポンプフィルタ105は、多孔質材料を所定の形状に形成した部材である。ポンプフィルタ105は、例えば、繊維の織布、不織布などの濾材によって形成されている。
【0164】
ポンプ部30においては、シリンダ91、ポンプロータ102及びベーン101が、作動流体を吸入し圧縮し、吐き出すための圧縮機構部を構成している。
【0165】
ポンプロータ102は、モータ部20の駆動に伴って、円弧状シール部と離間部とを形成した状態でシリンダ91内を自転する。ロータ外周面102aのうち、シリンダ内周面91aに最接近した部位が円弧状シール部であり、シリンダ内周面91aから大きく離間した部位が離間部である。離間部は、ロータ外周面102aにおいて円弧状シール部とは反対側に位置する部分である。ベーン101において、ロータ外周面102aから径方向外側に突出する部分の長さは、離間部において最大になり、円弧状シール部において最小になる。
【0166】
ポンプ部30では、圧縮室51において、円弧状シール部側に狭い圧縮領域51aが形成され、離間部側に広い圧縮領域51aが形成される。狭い圧縮領域51aは、ベーン101が回転する間に回転方向に移動し、離間部に近づくにつれて拡大して広い圧縮領域51aに変化する。広い圧縮領域51aは、ベーン101が回転する間に回転方向に移動し、円弧状シール部に近づくにつれて縮小して狭い圧縮領域51aに変化する。このように各圧縮領域51aは、ベーン101が1回転する間に吐出ポート98に近づきながら、その容積が次第に縮小するように変化する。吸入ポート97を通じて圧縮室51に供給された空気は圧縮領域51aにて圧縮され、この空気は吐出ポート98からポンプ吐出路53に吐き出される。
【0167】
ポンプ部30において作動流体である空気は、ポンプ吸入口52aからポンプ吸入路52に吸入され、圧縮室51に流下する。空気は、圧縮室51からポンプ吐出路53に流下し、ポンプ吐出口53aから外部に流出する。空気は、この流体経路を流れる過程において、各部の冷却を図り、特に摺動部分の熱を効果的に放出することに寄与する。
【0168】
<第7実施形態>
第7実施形態では、流体機械10がスルーベーン式流体機械である。第7実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第6実施形態と同様である。第7実施形態では、上記第6実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0169】
図12に示すポンプ部30は、スルーベーン式のポンプである。ポンプ部30は、第1ベーン110、第2ベーン120、ポンプロータ130、連結部103及び駆動用ピン104を有している。ポンプロータ130は、円柱状の部材であり、第1プレート93と第2プレート94との間においてシリンダ91の内側に設けられている。ポンプロータ130の中心軸は、シリンダ91の中心軸に対してずれた位置に設けられている。この構成により、ポンプロータ130は、シリンダ91の内側において片側に寄った位置で回転する。圧縮室51は、第1プレート93と第2プレート94との間の空間であって、シリンダ内周面91aとロータ外周面130aとの間の空間である。ロータ外周面130aはポンプロータ130の外周面である。
【0170】
連結部103は、ポンプロータ130とシャフト22とを連結している。ポンプロータ130は、モータ部20の駆動に伴ってシャフト22と共に回転する。ポンプロータ130の中心軸とシャフト22の中心軸とは互いに一致している。例えば、連結部103、ポンプロータ130及びシャフト22が同軸になっている。シャフト22の中心軸は、ポンプロータ130の回転軸である。シャフト22は、駆動用ピン104を介してポンプロータ130を回転させる駆動軸である。
【0171】
シャフト22は、ポンプロータ130に対して遊嵌されている。例えば、ポンプロータ130に形成された孔に連結部103の一部が遊嵌されている。この構成では、ポンプロータ130は、連結部103に対して軸方向αに相対的に移動可能になっている。すなわち、ポンプロータ130は、シャフト22に対して軸方向αに相対的に移動可能になっている。これにより、軸方向αについて、ポンプロータ130に対するシャフト22の組み付け公差を緩和することが可能になっている。
【0172】
駆動用ピン104は、連結部103に対するポンプロータ130の相対的な回転を規制している。駆動用ピン104は、軸方向αに延びており、連結部103とポンプロータ130とにかけ渡された状態になっている。駆動用ピン104においては、一方の端部がポンプロータ130に固定され、他方の端部が連結部103に固定されている。駆動用ピン104は、ポンプロータ130に形成された係合穴に圧入され、且つ連結部103に形成された係合穴に圧入されている。
【0173】
第1ベーン110及び第2ベーン120は、板状の部材であり、ポンプロータ130に装着されている。第1ベーン110は一対の第1先端部110aを有しており、これら第1先端部110aは径方向βに並んでいる。第2ベーン120は一対の第2先端部120aを有しており、これら第2先端部120aは径方向βに並んでいる。第1ベーン110及び第2ベーン120は、ポンプロータ130に対して滑動可能になっている。ポンプロータ130には、第1スリット131及び第2スリット132が設けられている。第1スリット131には第1ベーン110が装着され、第2スリット132には第2ベーン120が装着されている。第1スリット131及び第2スリット132は、互いに直交するように、ポンプロータ130の中心を通って径方向βに延びている。第1スリット131及び第2スリット132は、径方向βにポンプロータ130を貫通している。
【0174】
第1ベーン110は、第1スリット131に入り込んだ状態になっており、第1スリット131に対して径方向βに移動可能になっている。第2ベーン120は、第2スリット132に入り込んだ状態になっている。第2スリット132に対して径方向βに移動可能になっている。ポンプロータ130が回転している場合、第1ベーン110の第1先端部110aは、ロータ外周面130aから径方向βに突出した状態でシリンダ内周面91aに摺動する。また、この場合、第2ベーン120の第2先端部120aは、ロータ外周面130aから径方向βに突出した状態でシリンダ内周面91aに摺動する。圧縮室51は、第1ベーン110及び第2ベーン120により複数の圧縮領域51aに仕切られた状態になる。
【0175】
図13~
図15に示すように、ポンプロータ130は第1端面130b及び第2端面130cを有している。ポンプロータ130は、全体として柱状に形成されており、一対の端面を有している。ポンプロータ130においては、一方の端面が第1端面130bであり、他方の端面が第2端面130cである。第1端面130b及び第2端面130cは、軸方向αに直交する方向に延びている。ロータ外周面102aは、第1端面130bと第2端面130cとを接続している。
【0176】
ポンプロータ130は連結孔133を有している。連結孔133は、第2端面130cから第1端面130bに向けてポンプロータ130の軸方向に延びている。連結孔133は、ポンプロータ130を軸方向に貫通している。連結孔133及びポンプロータ130の各中心線は軸方向に延びており、これら中心線は一致している。連結孔133には、連結部103の一部が挿入されている。ポンプロータ130は、連結孔133に連結部103が挿入されていることで、連結部103を介してシャフト22に接続されている。連結部103は、連結孔133に圧入されているのではなく、連結部103の一部が接触するように連結孔133に嵌合されている。連結部103は、連結孔133に隙間嵌合された状態になっている。
【0177】
ポンプロータ130はピン孔135を有している。ピン孔135は、第2端面130cから第1端面130bに向けて軸方向に延びている。ピン孔135は、ポンプロータ130を軸方向に貫通している。ピン孔135は、連結孔133から径方向に離間した位置に設けられている。ピン孔135には、駆動用ピン104が挿入されている。ピン孔135は係合穴である。
【0178】
ポンプロータ130は孔形成部134を有している。孔形成部134は、ポンプロータ130において連結孔133を形成している。孔形成部134は、ポンプロータ130において、連結孔133の外周縁に沿って周方向に延びた環状の部位である。孔形成部134は、ロータ外周面130aから径方向内側に離間した位置にある。孔形成部134は、連結孔133に沿って軸方向αに延びており、第1端面130bと第2端面130cとにかけ渡された状態になっている。孔形成部134の一方の端面は第1端面130bに含まれており、他方の端面は第2端面130cに含まれている。
【0179】
孔形成部134は、第1形成部134a、第2形成部134b及び接続形成部134cを有している。第1形成部134aは、第1端面130bから第2端面130cに向けて延びている。第2形成部134bは、第2端面130cから第1端面130bに向けて延びている。接続形成部134cは、軸方向において第1形成部134aと第2形成部134bとの間に設けられており、これら第1形成部134aと第2形成部134bとを接続している。接続形成部134cは、軸方向において第1端面130b及び第2端面130cの両方から離間した位置にある。
【0180】
接続形成部134cは、第1形成部134a及び第2形成部134bよりも径方向内側に突出している。接続形成部134cの内周面は、第1形成部134a及び第2形成部134bの各内周面のいずれよりも径方向内側にある。連結孔133に挿入された連結部103の外周面には、接続形成部134cが接触しやすく、第1形成部134a及び第2形成部134bが接触しにくくなっている。孔形成部134においては、連結孔133に対する連結部103の隙間嵌合が第1形成部134a、第2形成部134b及び接続形成部134cにより実現されている。
【0181】
第1スリット131は、ポンプロータ130の径方向及び軸方向に延びている。第1スリット131は、軸方向において第1端面130bと第2端面130cとにかけ渡された状態になっている。すなわち、第1スリット131は、第1端面130b及び第2端面130cのそれぞれに開口を形成している。ただし、
図14に示すように、第1スリット131は、孔形成部134のうち、第1形成部134aに設けられている一方で、第2形成部134b及び接続形成部134cには設けられていない。このため、第1スリット131と第2形成部134b及び接続形成部134cとは、ポンプロータ130の軸方向に並んだ状態になっている。
【0182】
第2スリット132は、ポンプロータ130の径方向及び軸方向に延びている。第2スリット132は、軸方向において第1端面130bと第2端面130cとにかけ渡された状態になっている。すなわち、第2スリット132は、第1端面130b及び第2端面130cのそれぞれに開口を形成している。ただし、第2スリット132は、孔形成部134のうち、第2形成部134bに設けられている一方で、第1形成部134a及び接続形成部134cには設けられていない。このため、第2スリット132と第1形成部134a及び接続形成部134cとは、ポンプロータ130の軸方向に並んだ状態になっている。
【0183】
図16に示すように、第1ベーン110は、全体として板状に形成されている。第1ベーン110は、第1ベーン部111及び第1接続部112を有している。第1ベーン部111は、互いに離間した状態で一対設けられており、第1ベーン110の長手方向に並べられている。一対の第1ベーン部111が一対の第1先端部110aを形成している。第1ベーン110においては、長手方向の長さ寸法がポンプロータ130の外径寸法よりも大きい。第1接続部112は、一対の第1ベーン部111が並んだ方向に延びており、一対の第1ベーン部111を接続している。一対の第1ベーン部111は、第1接続部112から同じ向きに延びている。一対の第1ベーン部111の離間距離は、孔形成部134の外径寸法よりも大きい。
【0184】
図17に示すように、第2ベーン120は、全体として板状に形成されている。第2ベーン120は、第2ベーン部121及び第2接続部122を有している。第2ベーン部121は、互いに離間した状態で一対設けられており、第2ベーン120の長手方向に並べられている。一対の第2ベーン部121が一対の第2先端部120aを形成している。第2ベーン120においては、長手方向の長さ寸法がポンプロータ130の外径寸法よりも大きい。第2接続部122は、一対の第2ベーン部121が並んだ方向に延びており、一対の第2ベーン部121を接続している。一対の第2ベーン部121は、第2接続部122から同じ向きに延びている。一対の第2ベーン部121の離間距離は、孔形成部134の外径寸法よりも大きい。
【0185】
図12に示すように、第1ベーン110は、第1端面130b側から第1スリット131の内部に入り込むようにして、ポンプロータ130に装着されている。第1ベーン110は、一対の第1ベーン部111で孔形成部134を径方向に跨いだ状態になっている。第2ベーン120は、第2端面130c側から第2スリット132の内部に入り込むようにして、ポンプロータ130に装着されている。第2ベーン120は、一対の第2ベーン部121で孔形成部134を径方向に跨いだ状態になっている。
【0186】
ポンプロータ130は、第2端面130cがモータ部20側を向くように、シリンダ91の内側に設けられている。連結部103は連結溝103aを有している。連結溝103aは、連結部103において連結孔133に挿入される部位の先端面に設けられている。連結溝103aは、軸方向αにおいて第1端面130b側に向けて開放されている。連結溝103aの内側には、第2ベーン120が入り込んだ状態になっている。連結溝103aの幅寸法は、第2ベーン120の厚さ寸法よりも大きい。第2ベーン120は、ポンプロータ130の回転中に連結溝103aの内部を滑動し得る。
【0187】
ポンプロータ130は、孔形成部134において連結部103の外周面に接触し、孔形成部134以外の部分では連結部103に接触していない。連結部103は、ポンプロータ130が連結部103に対して相対的に軸方向移動可能なように孔形成部134を支持している。また、連結部103は、シャフト22の軸心に対してポンプロータ130が相対的に傾動可能なように、孔形成部134を支持している。連結部103は、モータ部20側の端部が固定端であり、ポンプ吐出路53側の端部が自由端である。この片持ち構造であるため、連結部103は径方向βに移動するように撓むことが可能である。この撓み作用は、孔形成部134をシャフト22に対して相対的に傾動可能なように、支持することに寄与する。
【0188】
連結部103と孔形成部134は、相対的に軸方向移動可能なように及び/または傾動可能なように、一体に連結されている。連結部103と孔形成部134は、相対的に軸方向移動可能なように及び/または傾動可能であるように、嵌合する構成でもよい。連結部103と孔形成部134は、相対的に軸方向移動可能なように及び/または傾動可能であるように、両者の一部が接触し残部が離間する連結構造を有する構成でもよい。連結部103と孔形成部134は、相対的に軸方向移動可能なように、かつ傾動可能なように、一体に連結されていることが好ましい。相対的に軸方向移動可能とは、シャフト22とポンプロータ130の一方が他方に対して軸方向に移動しながら回転できる状態である。相対的に傾動可能とは、シャフト22とポンプロータ130の一方が他方に対して傾むきながら回転できる状態である。
【0189】
図18は、ポンプロータ130の回転位置における、シリンダ内周面91aと第1ベーン110の第1先端部110aとの位置関係を示している。以下の説明は、第1ベーン110を例示するが、第2ベーン120についても適用される。第1先端部110aの先端面は、所定の半径寸法に形成された曲面を有している。モータ部20に通電した場合、シャフト22が回転軸周りに自転し、その際、モータ部20が出力するトルクは、連結部103及び駆動用ピン104を介してポンプロータ130に伝達される。ポンプロータ130は、ロータ外周面130aのうちシリンダ内周面91aに最接近する円弧状シール部とシリンダ内周面91aから大きく離間する離間部とを形成した状態で、シリンダ91内を自転する。
図18に示すように、円弧状シール部は、回転角度AGの範囲に相当する。離間部は、ロータ外周面130aにおいて円弧状シール部とは反対側に位置する部分である。ロータ外周面130aよりも径外側に突出する部分の長さは、離間部において最大になり、円弧状シール部において最小になる。
【0190】
第1ベーン110は、ポンプロータ130の回転中に、径方向に滑動しながらシリンダ内周面91aに摺動したり離間したりしながらポンプロータ130とともに回転する。第1ベーン110は1回転する間に第1先端部110aは、例えば
図18の2点鎖線で示すように変位する。シリンダ91のシリンダ内周面91aと第1先端部110aには、第1ベーン110が1回転する間に第1ベーン110が突っ張ることがないように、微小隙間が設けられている。この微小隙間は、作動流体の漏れや騒音の抑制のために、50μm~200μm程度に設定されていることが好ましい。
【0191】
円弧状シール部における第1先端部110aとシリンダ内周面91aの隙間GP1はほぼ一定であり、円弧状シール部において安定したシール長さを確保できる。円弧状シール部の回転角度AGは、第1ベーン110などの摩耗抑制の観点から、20度~60度の範囲に設定することが好ましい。第1ベーン110が1回転する間に、第1先端部110aとシリンダ内周面91aの隙間が最小になる回転位置は変位する。第1ベーン110は、円弧状シール部及び離間部を除く回転位置において、一方の第1先端部110aがシリンダ内周面91aに接触する場合がある。このとき、他方の第1先端部110aとシリンダ内周面91aは、隙間GP2に設定されている。第1ベーン110が1回転する間に隙間GP2がほぼ一定になるように、第1ベーン110とシリンダ内周面91aとは形成されている。
【0192】
図19に示すように、第1先端部110aの先端面は、シリンダ内周面91aと接触して滑る摺動長さSLが第1ベーン110の厚さTHよりも小さくなるように、曲面形状に形成されている。この構成により、安定した第1ベーン110の摺動状態を確保できる。
【0193】
流体機械10は、円弧状シール部側に狭い圧縮領域51aを形成し、離間部側に広い圧縮領域51aを形成する。狭い圧縮領域51aは、第1ベーン110が回転する間に回転方向に移動し、離間部に近づくにつれて拡大して広い圧縮領域51aに変化する。広い圧縮領域51aは、第1ベーン110が回転する間に回転方向に移動し、円弧状シール部に近づくにつれて縮小して狭い圧縮領域51aに変化する。このように各圧縮領域51aは、第1ベーン110が1回転する間に吐出ポート98に近づきながら、その容積が次第に縮小するように変化する。
【0194】
第1ベーン110及び第2ベーン120は、ポンプロータ130の中心軸を通ってポンプロータ130を貫通するように延びるスルーベーンである。このスルーベーンは、ポンプロータ130の中心軸を通らない形状のベーンに比べて、ポンプロータ130に支持されている部分の支持長さが長い。このため、ポンプロータ130においてスリットが形成されている部分がベーンから受ける荷重を抑えることができる。この効果によれば、スルーベーン型の流体機械10は、樹脂によってポンプロータ130を形成することできる。この樹脂には、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンを採用して耐熱性を持たせることが好ましい。ポンプロータ130は、自己潤滑性を有するポリテトラフルオロエチレンやカーボンを含む材質で形成してもよい。
【0195】
<第8実施形態>
第8実施形態では、流体機械10がローリングピストン型流体機械である。第8実施形態で特に説明しない構成、作用、効果については上記第6実施形態と同様である。第8実施形態では、上記第6実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0196】
図20、
図21に示すポンプ部30は、ベーン141、ポンプロータ142及び弾性部材145を有している。ポンプロータ142は、円柱状の部材であり、第1プレート93と第2プレート94との間においてシリンダ91の内側に設けられている。ポンプロータ142の中心軸は、シリンダ91の中心軸に対してずれた位置に設けられている。この構成により、ポンプロータ142は、シリンダ91の内側において片側に寄った位置で回転する。圧縮室51は、第1プレート93と第2プレート94との間の空間であって、シリンダ内周面91aとロータ外周面142aとの間の空間である。ロータ外周面142aはポンプロータ142の外周面である。
【0197】
シリンダ91には、ベーン141が滑動可能に装着されている。ベーン141は、シリンダ91に形成されたスリット143に嵌まった状態で径方向βに滑動する。ベーン141のベーン内側端部141aは、ロータ外周面130aに接触している。ベーン141では、径方向βにおいてポンプロータ142側の端部がベーン内側端部141aであり、反対側の端部がベーン外側端部141bである。ベーン外側端部141bは、スプリングなどの弾性部材145に接触している。これにより、ベーン141は、ベーン内側端部141aがロータ外周面130aに押して当てられるようにポンプロータ142に付勢されている。ベーン内側端部141aは、ポンプロータ142の回転とともにロータ外周面130aに対して摺動する。
【0198】
ベーン141は、圧縮室51を複数の圧縮領域51aに仕切った状態になっている。圧縮室51は、ベーン141により例えば2つの圧縮領域51aに仕切られている。各圧縮領域51aは、ベーン141とシリンダ内周面91aとロータ外周面130aと第1プレート93と第2プレート94とによって区画されている。
【0199】
上記第1実施形態と同様に、シャフト22には偏心部42が固定されている。偏心部42は、中心軸がシャフト22の回転軸に対してずらした位置となるように設置されている。偏心部42は、中心軸がポンプロータ142の中心軸に一致するようにポンプロータ142に固定されている。したがって、ポンプロータ142の中心軸は、シャフト22の中心軸に対してずらした位置に設定されている。モータ部20への通電により、シャフト22が回転軸周りに自転する際、モータ部20が出力するトルクは、偏心部42を介してポンプロータ142に伝達される。ポンプロータ142は、シャフト22の回転軸の周りを公転する。
【0200】
<他の実施形態>
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、又は組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0201】
上記各実施形態において、外側カバー60の少なくとも一部がポンプ部30から径方向βの外側にはみ出していてもよい。例えば、カバー吸入口72aは、径方向βにおいてポンプ部30よりも外側に設けられていてもよい。外側カバー60は、ポンプ部30及びモータ部20の少なくとも一方に固定されていればよい。例えば、カバー流路70がポンプ吸入口52aに通じた構成が実現されていれば、外側カバー60は、ポンプ部30に固定されずにモータ部20に固定されていてもよい。
【0202】
上記各実施形態において、カバー吸入口72aは、ポンプ吸入口52aに対して軸方向αに重複する位置にあってもよい。カバー吸入口72aは、カバー接続路74に対して軸方向αに重複する位置にあってもよい。カバー接続路74は、ポンプ吸入口52aに対して軸方向αに重複する位置にあってもよい。また、カバー吸入口72aとポンプ吸入口52aとは、軸方向α、径方向β及び周方向γの少なくとも1つの方向において互いに離間していればよい。
【0203】
上記各実施形態において、カバー吸入口72aは、外側カバー60においてカバー外周部60aに形成されていてもよい。例えば、カバー吸入口72aは、径方向βに開口されるようにカバー外周部60aに形成されていてもよい。カバー吸入口72aは、軸方向α、径方向β及び周方向γの少なくとも1つの方向に延びるような形状になっていてもよい。カバー吸入口72aが複数設けられた構成では、複数のカバー吸入口72aは、軸方向α、径方向β及び周方向γの少なくとも1つの方向に並べられていてもよい。
【0204】
上記各実施形態において、外側カバー60は、カバー吸入口72aの少なくとも一部を形成していれば、カバー吸入口72aの全てを形成していなくてもよい。例えば、外側カバー60とモータケース23との間の隙間がカバー吸入口72aとされていてもよい。この構成では、外側カバー60及びモータケース23という2つの部材によりカバー吸入口72aが形成されている。
【0205】
上記各実施形態において、カバー流路70は、モータ外面20aに沿って延びていれば、軸方向α、径方向β及び周方向γの少なくとも1つの方向に延びていればよい。例えば、カバー流路70は環状になっていなくてもよい。また、カバー流路70がポンプ外面30aに沿って延びた構成では、カバー流路70は周方向γに環状に延びていてもよい。カバー流路70は複数設けられていてもよい。例えば、ポンプ部30がポンプ吸入口52aを複数有しており、複数のポンプ吸入口52aのそれぞれに通じるカバー流路70が個別に設けられていてもよい。
【0206】
上記各実施形態において、変位規制部65は、外側カバー60及びモータケース23の少なくとも一方に固定されていればよい。変位規制部65は、振動吸収部材66を有していれば、土台部67を有していなくてもよい。例えば、変位規制部65が土台部67を有しておらずに、振動吸収部材66が外側カバー60及びモーラケース両方に固定されていてもよい。この構成でも、変位規制部65は、振動吸収部材66が弾性変形することで、モータケース23に対する外側カバー60の相対的な変位や振動を抑制できる。また、流体機械10は、変位規制部65を有していなくてもよい。
【0207】
上記各実施形態において、カバー接続路74は、軸方向α、径方向β及び周方向γの少なくとも1つの方向に延びるような形状になっていてもよい。カバー接続路74が複数設けられた構成では、複数のカバー接続路74は、軸方向α、径方向β及び周方向γの少なくとも1つの方向に並べられていてもよい。
【符号の説明】
【0208】
10…流体機械、11…機械流路、20…モータ部、20a…外面としてのモータ外面、23…モータケース、30…ポンプ部、30a…外面としてのポンプ外面、50…ポンプ流路、51…圧縮室、53a…ポンプ吐出口、55…ポンプ拡張路としてのポンプ膨張室、52a…ポンプ吸入口、60…外側カバー、61…シール部材としてのカバーシール部、62…貫通孔としてのカバー貫通孔、62a…内面、65…変位規制部、66…弾性変形部としての振動吸収部材、70…カバー流路、72…上流路としてのカバー吸入路、72a…カバー吸入口、72b…カバー吸入口としてのカバー貫通路、73…下流路としてのカバー案内路、74…カバー接続路、75…下流路としてのカバー膨出路、76…下流路としての膨出接続路、81…カバーフィルタ、fm…特定周波数、R…減衰量としての透過損失、Rm…目標値としての損失目標値、α…軸方向、β…径方向、γ…回転方向としての周方向。