IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

特許7524838半導体装置の故障予測方法および半導体装置
<>
  • 特許-半導体装置の故障予測方法および半導体装置 図1
  • 特許-半導体装置の故障予測方法および半導体装置 図2
  • 特許-半導体装置の故障予測方法および半導体装置 図3
  • 特許-半導体装置の故障予測方法および半導体装置 図4
  • 特許-半導体装置の故障予測方法および半導体装置 図5
  • 特許-半導体装置の故障予測方法および半導体装置 図6
  • 特許-半導体装置の故障予測方法および半導体装置 図7
  • 特許-半導体装置の故障予測方法および半導体装置 図8
  • 特許-半導体装置の故障予測方法および半導体装置 図9
  • 特許-半導体装置の故障予測方法および半導体装置 図10
  • 特許-半導体装置の故障予測方法および半導体装置 図11
  • 特許-半導体装置の故障予測方法および半導体装置 図12
  • 特許-半導体装置の故障予測方法および半導体装置 図13
  • 特許-半導体装置の故障予測方法および半導体装置 図14
  • 特許-半導体装置の故障予測方法および半導体装置 図15
  • 特許-半導体装置の故障予測方法および半導体装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】半導体装置の故障予測方法および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240723BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240723BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240723BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240723BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01L29/78 658L
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
H01L29/78 653A
H01L29/78 652K
H01L29/78 657G
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652P
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 652H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021102750
(22)【出願日】2021-06-21
(65)【公開番号】P2023001801
(43)【公開日】2023-01-06
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】出口 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】村松 潤哉
(72)【発明者】
【氏名】片岡 惠太
(72)【発明者】
【氏名】朽木 克博
(72)【発明者】
【氏名】青柳 勲
(72)【発明者】
【氏名】富永 孝
(72)【発明者】
【氏名】岡地 涼輔
(72)【発明者】
【氏名】香山 貴志
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-205230(JP,A)
【文献】特開2020-065084(JP,A)
【文献】特開2019-047010(JP,A)
【文献】特開2013-251466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/12
H01L 29/739
H01L 29/78
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメインセル(14)が並列接続されて構成されたトレンチゲート構造の半導体素子(15)を備える半導体装置の故障予測方法であって、
複数の前記メインセルは、複数の第1セル(141)と、前記第1セルの故障を予測するために前記第1セルに較べて通電によりゲート絶縁膜が壊れやすい構造を有し、前記第1セルよりも数の少ない第2セル(142)と、を含み、
前記半導体素子の駆動時に、前記第1セルのゲート電極と前記第2セルのゲート電極とに、共通のゲート駆動電圧を印加し、
電気特性を測定して、前記駆動時の通電による前記第2セルの故障を検出し、
故障した前記第2セルに前記ゲート駆動電圧が印加されないように、故障した前記第2セルのゲート電極を前記第1セルのゲート電極に対して電気的に分離し、
前記第2セルの故障に基づいて前記第1セルの故障を予測し、
複数の前記メインセルは、前記ゲート絶縁膜の壊れやすさが互いに異なる複数の前記第2セルを含み、
複数の前記第2セルの故障に基づいて前記第1セルの故障を予測する、半導体装置の故障予測方法。
【請求項2】
前記第2セルの故障時期に基づいて前記第1セルの故障時期を予測する、請求項1に記載の半導体装置の故障予測方法。
【請求項3】
前記第2セルの故障数が所定数に達することで前記第1セルの故障を予測する、請求項1に記載の半導体装置の故障予測方法。
【請求項4】
前記第1セルの故障の予測に応じて報知を行う、請求項1~3いずれか1項に記載の半導体装置の故障予測方法。
【請求項5】
前記駆動時に、前記第1セルのゲート電極に接続された第1スイッチ(341、841)をオンするとともに、前記第2セルのゲート電極に接続された第2スイッチ(342、842)をオンすることで、前記第1セルおよび前記第2セルに共通の前記ゲート駆動電圧を印加し、
前記半導体素子の非駆動時に、前記第1スイッチをオフするとともに、前記第2スイッチをオンした前記第2セルのみに前記ゲート駆動電圧を印加して電気特性を測定し、前記駆動時の通電による前記第2セルの故障を検出し、
故障した前記第2セルに対応する前記第2スイッチをオフすることで、故障した前記第2セルを前記第1セルに対して電気的に分離する、請求項1~4いずれか1項に記載の半導体装置の故障予測方法。
【請求項6】
前記駆動時に、ヒューズ(35)を介して前記第2セルのゲート電極に前記ゲート駆動電圧を印加するとともに、前記ヒューズを介さずに前記第1セルのゲート電極に前記ゲート駆動電圧を印加し、
前記駆動時に電気特性を測定することで、前記駆動時の通電による前記第2セルの故障を検出し、
前記第2セルの故障により前記ヒューズが溶断することで、故障した前記第2セルを前記第1セルに対して電気的に分離する、請求項1~4いずれか1項に記載の半導体装置の故障予測方法。
【請求項7】
複数のメインセル(14)が並列接続されて構成されたトレンチゲート構造の半導体素子(15)を備える半導体装置であって、
複数の前記メインセルが設けられた領域であり、前記メインセルとして、複数の第1セル(141)と、前記第1セルの故障を予測するために前記第1セルに較べて通電によりゲート絶縁膜が壊れやすい構造を有し、前記第1セルよりも数の少ない第2セル(142)と、を含むメインセル領域(12)と、前記メインセル領域を取り囲む外周領域(13)と、を有する半導体基板(11)と、
前記第1セルのゲート電極に接続された第1パッド(301)と、前記第1パッドとは別に設けられ、前記第2セルのゲート電極に接続された第2パッド(302)と、を含み、前記メインセルのゲート電極にゲート駆動電圧を印加するために前記半導体基板の一面上に設けられた複数のゲートパッド(30)と、
前記第1パッドに接続された第1スイッチ(341)と、前記第2パッド(302)に接続された第2スイッチ(342)と、を含み、前記ゲートパッドに対して個別に設けられ、前記ゲートパッドへの前記ゲート駆動電圧の印加を許可または遮断する複数のスイッチ(34)と、を備え、
前記半導体素子の駆動時において、前記第2セルに故障が生じていない場合には、すべての前記スイッチがオンされ、故障している場合には、故障した前記第2セルに対応する前記第2スイッチのみオフ、残りの前記スイッチがオンされ、
前記半導体素子の非駆動時において、前記第1スイッチがオフ、前記第2スイッチがオンされる、半導体装置。
【請求項8】
複数のメインセル(14)が並列接続されて構成されたトレンチゲート構造の半導体素子(15)を備える半導体装置であって、
複数の前記メインセルが設けられた領域であり、前記メインセルとして、複数の第1セル(141)と、前記第1セルの故障を予測するために前記第1セルに較べて通電によりゲート絶縁膜が壊れやすい構造を有し、前記第1セルよりも数の少ない第2セル(142)と、を含むメインセル領域(12)と、前記メインセル領域を取り囲む外周領域(13)と、を有する半導体基板(11)と、
前記第1セルのゲート電極に接続された第1パッド(301)と、前記第1パッドとは別に設けられ、前記第2セルのゲート電極に接続された第2パッド(302)と、を含み、前記メインセルのゲート電極にゲート駆動電圧を印加するために前記半導体基板の一面上に設けられた複数のゲートパッド(30)と、
前記第2パッドと前記第1パッドとを個別に接続するヒューズ(35)と、を備え、
前記第2セルの故障にともなって、故障した前記第2セルに対応する前記第2パッドに接続された前記ヒューズが溶断する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、半導体装置の故障予測方法および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、トレンチ構造のMOS半導体装置の寿命評価方法を開示している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-205230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、メイン素子と、メイン素子よりもゲート酸化膜の膜厚が薄いセンス素子を有するMOS半導体装置を用い、センス素子に加速試験を行うことで、メイン素子の寿命を予測する。加速試験によるストレスは、実際に市場で加えられるストレスとは異なる。また、センス素子には加速試験によって故障に至るストレスが印加されるため、市場においてセンス素子を利用できず、半導体素子の利用効率、つまりチップ面積の利用効率が低下する。上記した観点において、または言及されていない他の観点において、半導体装置の故障予測方法および半導体装置にはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、半導体素子の利用効率の低下を抑制しつつ、故障を精度よく予測できる半導体装置の故障予測方法および半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された半導体装置の故障予測方法は、
複数のメインセル(14)が並列接続されて構成されたトレンチゲート構造の半導体素子(15)を備える半導体装置の故障予測方法であって、
複数のメインセルは、複数の第1セル(141)と、第1セルの故障を予測するために第1セルに較べて通電によりゲート絶縁膜が壊れやすい構造を有し、第1セルよりも数の少ない第2セル(142)と、を含み、
半導体素子の駆動時に、第1セルのゲート電極と第2セルのゲート電極とに、共通のゲート駆動電圧を印加し、
電気特性を測定して、駆動時の通電による第2セルの故障を検出し、
故障した第2セルにゲート駆動電圧が印加されないように、故障した第2セルのゲート電極を第1セルのゲート電極に対して電気的に分離し、
第2セルの故障に基づいて第1セルの故障を予測し、
複数のメインセルは、ゲート絶縁膜の壊れやすさが互いに異なる複数の第2セルを含み、
複数の第2セルの故障に基づいて第1セルの故障を予測する。
【0007】
開示された半導体装置の故障予測方法によれば、半導体素子の駆動時に第2セルにも第1セルと共通のゲート駆動電圧を印加し、第2セルの故障を検出すると故障した第2セルのゲート電極を第1セルのゲート電極に対して電気的に分離する。第2セルの故障が生じるまでは、第2セルも半導体素子を構成するメインセルとして機能するため、半導体素子の利用効率の低下を抑制することができる。
【0008】
また、電気特性を測定して駆動時の通電による第2セルの故障を検出する。第2セルは、実際に市場で加えられるストレスにより故障するため、第2セルの故障に基づいて第1セルの故障、つまり半導体素子の故障を精度よく予測することができる。
【0009】
ここに開示された半導体装置は、
複数のメインセル(14)が並列接続されて構成されたトレンチゲート構造の半導体素子(15)を備える半導体装置であって、
複数のメインセルが設けられた領域であり、メインセルとして、複数の第1セル(141)と、第1セルの故障を予測するために第1セルに較べて通電によりゲート絶縁膜が壊れやすい構造を有し、第1セルよりも数の少ない第2セル(142)と、を含むメインセル領域(12)と、メインセル領域を取り囲む外周領域(13)と、を有する半導体基板(11)と、
第1セルのゲート電極に接続された第1パッド(301)と、第1パッドとは別に設けられ、第2セルのゲート電極に接続された第2パッド(302)と、を含み、メインセルのゲート電極にゲート駆動電圧を印加するために半導体基板の一面上に設けられた複数のゲートパッド(30)と、
第1パッドに接続された第1スイッチ(341)と、第2パッド(302)に接続された第2スイッチ(342)と、を含み、ゲートパッドに対して個別に設けられ、ゲートパッドへのゲート駆動電圧の印加を許可または遮断する複数のスイッチ(34)と、を備え、
半導体素子の駆動時において、第2セルに故障が生じていない場合には、すべてのスイッチがオンされ、故障している場合には、故障した第2セルに対応する第2スイッチのみオフ、残りのスイッチがオンされ、
半導体素子の非駆動時において、第1スイッチがオフ、第2スイッチがオンされる。
【0010】
開示された半導体装置によれば、半導体素子の駆動時に第2セルにも第1セルと共通のゲート駆動電圧を印加し、第2セルが故障すると、故障した第2セルへのゲート駆動電圧の印加を遮断することができる。つまり、第2セルの故障が生じるまでは、第2セルも半導体素子を構成するメインセルとして機能するため、半導体素子の利用効率の低下を抑制することができる。
【0011】
また、第2セルは、半導体素子の駆動時において第1セルとともに動作することで故障する。つまり、実際に市場で加えられるストレスにより故障する。したがって、第2セルの故障に基づいて第1セルの故障、つまり半導体素子の故障を精度よく予測することが可能となる。
【0012】
ここに開示された別の半導体装置は、
複数のメインセル(14)が並列接続されて構成されたトレンチゲート構造の半導体素子(15)を備える半導体装置であって、
複数のメインセルが設けられた領域であり、メインセルとして、複数の第1セル(141)と、第1セルの故障を予測するために第1セルに較べて通電によりゲート絶縁膜が壊れやすい構造を有し、第1セルよりも数の少ない第2セル(142)と、を含むメインセル領域(12)と、メインセル領域を取り囲む外周領域(13)と、を有する半導体基板(11)と、
第1セルのゲート電極に接続された第1パッド(301)と、第1パッドとは別に設けられ、第2セルのゲート電極に接続された第2パッド(302)と、を含み、メインセルのゲート電極にゲート駆動電圧を印加するために半導体基板の一面上に設けられた複数のゲートパッド(30)と、
第2パッドと第1パッドとを個別に接続するヒューズ(35)と、を備え、
第2セルの故障にともなって、故障した第2セルに対応する第2パッドに接続されたヒューズが溶断する。
【0013】
開示された半導体装置によれば、半導体素子の駆動時に、第2セルにもヒューズを介して第1セルと共通のゲート駆動電圧を印加することができる。そして、ゲート絶縁膜の破壊により第2セルが故障するのにともなってヒューズが溶断し、故障した第2セルへのゲート駆動電圧の印加を遮断することができる。つまり、第2セルの故障が生じるまでは、第2セルも半導体素子を構成するメインセルとして機能するため、半導体素子の利用効率の低下を抑制することができる。
【0014】
また、第2セルは、半導体素子の駆動時において第1セルとともに動作することで故障する。つまり、実際に市場で加えられるストレスにより故障する。したがって、第2セルの故障に基づいて第1セルの故障、つまり半導体素子の故障を精度よく予測することが可能となる。
【0015】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態において、半導体装置を示す平面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】ゲートパッド周辺を示す図である。
図4】駆動時におけるスイッチの開閉パターンの一例を示す図である。
図5】非駆動時におけるスイッチの開閉パターンの一例を示す図である。
図6】第2セルに故障が生じたときの駆動時におけるスイッチの開閉パターンの一例を示す図である。
図7】故障予測方法を示すフローチャートである。
図8】駆動時処理を示すフローチャートである。
図9】非駆動時処理を示すフローチャートである。
図10】第2実施形態に係る半導体装置において、ゲートパッド周辺を示す図である。
図11】第3実施形態に係る半導体装置において、ゲートパッド周辺を示す図である。
図12】故障予測方法を示すフローチャートである。
図13】故障検出を示す図である。
図14】第1セルの故障時期の予測を示す図である。
図15】第4実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
図16】第5実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0018】
(第1実施形態)
まず、半導体装置の概略構成について説明する。
【0019】
<半導体装置>
次に、図1および図2に基づき、半導体装置の構造について説明する。図1は、半導体装置を示す平面図である。図1では、ゲート電極とゲート配線との接続を示すために、半導体基板上の保護膜や層間絶縁膜を省略するとともに、ソース電極を一点鎖線で示している。また、半導体基板上に設けたスイッチを簡略化して図示している。図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。
【0020】
以下において、半導体基板の板厚方向をZ方向とする。Z方向に直交し、トレンチの並設方向をY方向とする。Z方向およびY方向の両方向に直交する方向をX方向とする。特に断わりのない限り、Z方向からの平面視を単に平面視と示す。
【0021】
図1に示すように、半導体装置10は、半導体基板11を備えている。半導体基板11は、半導体チップと称されることがある。半導体基板11は、シリコン(Si)、シリコンよりもバンドギャップが広いワイドバンドギャップ半導体などを材料とする。ワイドバンドギャップ半導体としては、たとえばシリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga)、ダイヤモンドがある。
【0022】
半導体基板11は、メインセル領域12と、外周領域13を有している。外周領域13は、平面視においてメインセル領域12を取り囲んでいる。外周領域13は、メインセル領域12の外周端、つまり図1に示す破線よりも外側の領域である。図示を省略するが、外周領域13には、たとえばガードリングなどの耐圧構造部が形成されている。
【0023】
メインセル領域12は、素子形成領域、素子領域、メイン領域、アクティブ領域などと称されることがある。メインセル領域12には、複数のメインセル14が設けられている。メインセル14は、単位セル、単位構造部、単位回路、素子などと称されることがある。複数のメインセル14が互いに並列接続されて、トレンチゲート構造の半導体素子15が構成されている。半導体装置10は、半導体素子15を備えている。
【0024】
本実施形態の半導体素子15は、SiCを材料とする半導体基板11に形成されたMOSFETである。トレンチゲート構造の半導体素子15は、MOSFETに限定されない。たとえばMOSFETに代えて、IGBTを採用してもよい。MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略称である。IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略称である。
【0025】
図2に示すように、半導体基板11は、ドレイン領域20、ドリフト領域21、ベース領域22、ソース領域23、およびベースコンタクト領域24を有している。半導体基板11は、たとえばSiC基板上に、エピタキシャル成長、不純物のイオン注入などによって、SiCを材料とする各半導体領域が形成されてなる。半導体領域は、半導体層、拡散層などと称されることがある。半導体基板11は、主面(板面)として、一面11aと、裏面11bを有している。裏面11bは、一面11aとはZ方向において反対の面である。
【0026】
ドレイン領域20は、半導体基板11の一面11aをなしている。ドレイン領域20は、ドリフト領域21よりも不純物濃度が高いn導電型(n+)の半導体領域である。
【0027】
ドリフト領域21は、ドレイン領域20において一面11aをなす面とは反対の面上に形成されている。ドリフト領域21は、ドレイン領域20よりも不純物濃度が低いn導電型(n)の半導体領域である。ドレイン領域20およびドリフト領域21は、平面視において半導体基板11のほぼ全域に設けられている。
【0028】
ベース領域22は、ドリフト領域21においてドレイン領域20側の面とは反対の面上に形成されている。ベース領域22は、p導電型(p)の半導体領域である。ベース領域22は、主として半導体基板11のメインセル領域12に設けられている。ベース領域22は、半導体基板11の裏面11b側の表層に設けられている。n導電型を第1導電型とすると、p導電型は第2導電型である。
【0029】
ソース領域23は、ベース領域22内において裏面11b側の表層に設けられている。ソース領域23は、ドリフト領域21よりも不純物濃度が高いn導電型(n+)の半導体領域である。
【0030】
ベースコンタクト領域24は、ベース領域22内において裏面11b側の表層に設けられている。ベースコンタクト領域24は、ソース領域23に隣接して設けられている。ベースコンタクト領域24は、ベース領域22よりも不純物濃度が高いp導電型(p+)の半導体領域である。ソース領域23およびベースコンタクト領域24は、メインセル領域12に設けられている。本実施形態の半導体基板11は、一例としてベースコンタクト領域24を有するが、ベースコンタクト領域24を有さない構成としてもよい。
【0031】
上記した構成の半導体基板11には、トレンチ25が形成されている。トレンチ25は、裏面11bから、所定の深さを有して形成されている。トレンチ25は、ソース領域23およびベース領域22を貫通している。トレンチ25の先端は、ドリフト領域21に達している。ベース領域22およびソース領域23は、トレンチ25の側面に接するように形成されている。半導体基板11のメインセル領域12には、複数本のトレンチ25が形成されている。各トレンチ25は、X方向に延設されている。複数本のトレンチ25は、Y方向において略等間隔で配置され、平面視においてストライプ状をなしている。トレンチ25は、2列配置とされている。
【0032】
トレンチ25は、主としてメインセル領域12に形成されている。トレンチ25は、メインセル14を規定している。メインセル14のそれぞれはひとつのトレンチ25を含んでおり、複数のメインセル14はY方向に並設されている。
【0033】
トレンチ25の壁面には、ゲート絶縁膜26が形成されている。そして、トレンチ25を埋めるように、ゲート絶縁膜26の表面にゲート電極27が形成されている。ゲート電極27は、ソース領域23およびベース領域22を貫通し、ドリフト領域21に達している。半導体基板11のメインセル領域12には、複数本のゲート電極27が形成されている。各ゲート電極27は、X方向に延設されている。複数本のゲート電極27は、Y方向において略等間隔で配置され、平面視においてストライプ状をなしている。ゲート電極27は、2列配置とされている。
【0034】
半導体基板11の裏面11b上には、ソース電極28が形成されている。ソース電極28は、主としてメインセル領域12上に形成されている。ソース電極28は、ソース領域23に電気的に接続されている。ソース電極28は、ベースコンタクト領域24を介してベース領域22に電気的に接続されている。ソース電極28は、層間絶縁膜29により、ゲート電極27に対して電気的に分離されている。半導体基板11の裏面11b上には、信号電極であるパッドも形成されている。パッドは、複数のゲートパッド30を含んでいる。
【0035】
半導体基板11の一面11a上には、ドレイン電極31が形成されている。ドレイン電極31は、一面11aのほぼ全域に形成されている。ドレイン電極31は、ドレイン領域20に電気的に接続されている。
【0036】
このように、半導体基板11の各メインセル14には、トレンチ構造のゲート電極27を有するMOS構造部が形成されている。そして、複数のメインセル14が互いに並列接続されてトレンチゲート構造の半導体素子15、具体的には縦型のnチャネルMOSFETが構成されている。
【0037】
半導体装置10は、たとえばインバータやコンバータなどの電力変換回路に適用することができる。
【0038】
<メインセル>
次に、図1および図2に基づき、メインセル14について説明する。
【0039】
図1および図2に示すように、半導体基板11のメインセル領域12には、複数のメインセル14が設けられている。複数のメインセル14は、互いに並列に接続されている。複数のメインセル14は、複数の第1セル141と、第1セル141よりも数の少ない第2セル142を含んでいる。複数のメインセル14の大部分は第1セル141であり、残りの部分は第2セル142である。
【0040】
第1セル141は、半導体素子15として機能する主たる部分である。第1セル141は、メインセル領域12の大部分を占めている。第1セル141は、互いに共通の構造を有している。第1セル141は、通常構造部、通常素子部、標準セルなどと称されることがある。
【0041】
第2セル142は、第1セル141の故障を予測するために設けられたメインセル14である。第2セル142は、第1セル141の故障を予測するために第1セル141に較べて通電によりゲート絶縁膜26が壊れやすい構造を有している。第2セル142は、検知構造部、検知素子部、故障検知部、検知セルなどと称されることがある。第2セル142は、故障するまで、第1セル141とともに半導体素子15として機能する。メインセル14は、少なくとも1種類の第2セル142を含んでいる。
【0042】
本実施形態のメインセル14は、ゲート絶縁膜26の壊れやすさが互いに異なる複数の第2セル142を含んでいる。第2セル142は、ゲート絶縁膜26の厚みが互いに異なる3種類の第2セル142a、142b、142cを含んでいる。第2セル142a、142b、142cにおいて、ゲート電極27の大きさは互いにほぼ同じであり、トレンチ25の大きさが互いに異なることでゲート絶縁膜26の厚みが互いに異なっている。
【0043】
ゲート絶縁膜26の厚みが薄いほど、ゲート絶縁膜26に印加される電界が高くなり、絶縁破壊が起きやすくなる。図2に示すように、第2セル142a、142b、142cのゲート絶縁膜26は、いずれも第1セル141のゲート絶縁膜26より薄い。第2セル142aのゲート絶縁膜26がもっとも薄く、次いで第2セル142bのゲート絶縁膜が薄い。ゲート絶縁膜26の厚みは、第2セル142a<第2セル142b<第2セル142c<第1セル141の関係を満たしている。
【0044】
また、図1に示すように、第2セル142は、複数のメインセル14の並設方向、つまりY方向においてメインセル領域12の端部に設けられている。本実施形態では、ゲートパッド30に対して遠い側のメインセル領域12の端部から3本分のゲート電極27に対応するメインセル14が、第2セル142となっている。第2セル142aは、Y方向においてゲートパッド30からもっとも離れた位置に設けられている。第2セル142bは、第2セル142a、142cの間に設けられている。第2セル142cよりもゲートパッド30に近いメインセル14は、すべて第1セル141である。
【0045】
<ゲートパッドおよびその接続構造>
次に、図1および図3に基づき、ゲートパッド30、および、ゲートパッド30とゲート電極27との接続構造について説明する。図3は、ゲートパッド周辺を示す図である。
【0046】
ゲートパッド30は、後述するゲート配線を介してゲート電極27に接続されたパッドである。複数のゲートパッド30は、第1パッド301と、第2パッド302を含んでいる。第1パッド301は、メインセル14のうち、第1セル141のゲート電極27に電気的に接続されている。第2パッド302は、メインセル14のうち、第2セル142のゲート電極27に電気的に接続されている。
【0047】
本実施形態の第2パッド302は、第2パッド302a、302b、302cを含んでいる。第2パッド302aは、第2セル142aのゲート電極27に電気的に接続されている。第2パッド302bは、第2セル142bのゲート電極27に電気的に接続されている。第2パッド302cは、第2セル142cのゲート電極27に電気的に接続されている。
【0048】
半導体装置10は、共通パッド32と、複数のゲート配線33と、複数のスイッチ34をさらに備えている。共通パッド32は、複数のゲートパッド30が共通して接続されるパッドである。共通パッド32には、図示しない駆動回路(ドライバ)からゲート駆動電圧が印加される。
【0049】
本実施形態の半導体装置10は、第1パッド301をひとつ、第2パッド302aを2つ、第2パッド302bを2つ、第2パッド302cを2つ、共通パッド32をひとつ備えている。第1パッド301および第2パッド302は、X方向に並んでいる。具体的には、一端側から、第2パッド302a、第2パッド302b、第2パッド302c、第1パッド301、第2パッド302c、第2パッド302b、第2パッド302aの順に並んでいる。第1パッド301および第2パッド302と、共通パッド32とは、Y方向に並んでいる。Y方向において、共通パッド32が半導体基板11の端部側に配置され、第1パッド301および第2パッド302がメインセル領域12側に配置されている。
【0050】
ゲート配線33は、ゲート電極27とゲートパッド30とを電気的に接続している。複数のゲート配線33は、第1配線331と、第2配線332を含んでいる。第1配線331は、第1セル141のゲート電極27と第1パッド301とを電気的に接続している。第2配線332は、第2セル142のゲート電極27と第2パッド302とを電気的に接続している。
【0051】
本実施形態の第2配線332は、第2配線332a、332b、332cを含んでいる。第2配線332aは、第2セル142aのゲート電極27と第2パッド302aとを電気的に接続している。第2配線332bは、第2セル142bのゲート電極27と第2パッド302bとを電気的に接続している。第2配線332cは、第2セル142cのゲート電極27と第2パッド302cとを電気的に接続している。上記したように、ゲート電極27は2列配置であるため、第1配線331、第2配線332a、332b、332cはそれぞれ2本ずつ設けられている。
【0052】
スイッチ34は、ゲートパッド30へのゲート駆動電圧の印加(入力)を許可または遮断する。スイッチ34は、ゲートパッド30に対して個別に設けられている。本実施形態では、スイッチ34が、共通パッド32とゲートパッド30との通電経路に設けられている。スイッチ34の主端子のひとつ、たとえばドレイン端子は共通パッド32に接続され、主端子の他のひとつ、たとえばソース端子はゲートパッド30に接続されている。
【0053】
スイッチ34は、半導体基板11の裏面11b上に形成されている。スイッチ34は、たとえば横型のMOSFETである。スイッチ34は、半導体薄膜、ゲート電極、ゲート絶縁膜などが多層に配置されてなる。半導体薄膜には、不純物のドープにより、ベース領域、ドレイン領域、ソース領域が形成されている。
【0054】
複数のスイッチ34は、第1スイッチ341と、第2スイッチ342を含んでいる。第1スイッチ341は、共通パッド32と第1パッド301との通電経路に設けられている。第1スイッチ341のオンにより共通パッド32と第1パッド301とが電気的に接続(導通)され、第1スイッチ341のオフにより共通パッド32と第1パッド301との電気的な接続が遮断される。
【0055】
第2スイッチ342は、共通パッド32と第2パッド302との通電経路に設けられている。第2スイッチ342は、第2パッド302に対して個別に設けられている。本実施形態の第2スイッチ342は、第2スイッチ342a、342b、342cを含んでいる。第2スイッチ342aは、共通パッド32と第2パッド302aとの通電経路に設けられている。第2スイッチ342aのオンにより共通パッド32と第2パッド302aとが電気的に接続され、第2スイッチ342aのオフにより共通パッド32と第2パッド302aとの電気的な接続が遮断される。
【0056】
同様に、第2スイッチ342bは、共通パッド32と第2パッド302bとの通電経路に設けられている。第2スイッチ342bのオンにより共通パッド32と第2パッド302bとが電気的に接続され、第2スイッチ342bのオフにより共通パッド32と第2パッド302bとの電気的な接続が遮断される。
【0057】
<スイッチの開閉パターン>
次に、図3図6に基づき、スイッチ34の開閉パターンについて説明する。図4は、半導体素子15の駆動時であって第2セル142に故障が生じていないときのスイッチ34の開閉パターンを示している。図5は、半導体素子15の非駆動時に、第2セル142を動作(検知動作)させるときのスイッチ34の開閉パターンを示している。図6は、半導体素子15の駆動時であって第2セル142の一部に故障が生じているときのスイッチ34の開閉パターンを示している。図4図6では、スイッチ34を簡素化して図示している。
【0058】
図3に示すように、半導体素子15を駆動、つまりオン駆動、オフ駆動させるためのゲート駆動電圧は、ゲート駆動電源80から供給される。ゲート駆動電源80は、半導体素子のゲート電極27にゲート駆動電圧を印加するための電源である。ゲート駆動電源80は、図示しない制御回路からの制御指令に基づいてゲート駆動電圧を生成し、半導体装置10の共通パッド32に出力する。
【0059】
一方、各スイッチ34をオンオフさせるためのゲート駆動電圧は、スイッチ用電源81から供給される。スイッチ用電源81は、スイッチ34に対して個別に設けられる。スイッチ用電源81は、対応するスイッチ34のゲート電極に電気的に接続される。
【0060】
ゲート駆動電源80と共通パッド32との間には、電流センサ82が設けられる。電流センサ82は、電気特性としてゲート電流Igsを検出する。電流センサ82の検出値に基づいて、第2セル142の故障を検出することができる。ゲート駆動電源80、スイッチ用電源81、および電流センサ82の少なくともひとつは、たとえば半導体素子15の駆動回路に形成される。
【0061】
半導体素子15は、駆動することで図示しない負荷(たとえば、モータ)に電力を供給する。半導体素子15の駆動時は、負荷に電力を供給する期間である。駆動時は、通常動作時、通常使用時などと称されることがある。半導体素子15の駆動時であって、第2セル142に故障が生じていない場合、図4に示すように、第1スイッチ341をオンするとともに、すべての第2スイッチ342をオンする。これにより、ゲート駆動電源80から、共通パッド32、第1スイッチ341、および第1パッド301を介して、第1セル141のゲート電極27にゲート駆動電圧が印加される。また、ゲート駆動電源80から、共通パッド32、第2スイッチ342、および第2パッド302を介して、第2セル142それぞれのゲート電極27にゲート駆動電圧が印加される。よって、すべてのメインセル14が半導体素子15として機能する。
【0062】
本実施形態では、負荷に電力を供給しない期間、つまり半導体素子15の非駆動時において、第2セル142を検知動作させる。図5に示すように、検知動作させる第2セル142に対応する第2スイッチ342のみをオンし、他のスイッチ34をオフする。本実施形態では、複数種類の第2セル142a、142b、142cを順に検知動作させる。図5は、一例として、第2セル142aを検知動作させるときにスイッチ34の開閉パターンを示している。
【0063】
図5に示すように、第2スイッチ342aのみをオン、他の第2スイッチ342b、342cおよび第1スイッチ341をオフする。これにより、ゲート駆動電源80から、共通パッド32、第2スイッチ342a、および第2パッド302aを介して、第2セル142aのゲート電極27にゲート駆動電圧が印加される。よって、メインセル14のうち、第2セル142aのみが動作する。電流センサ82は、メインセル14のうち、第2セル142aのゲート電極27に流れる電流を検出する。電流センサ82により検出されるゲート電流と絶縁破壊を判定するための閾値との比較により、第2セル142aの故障を検出することができる。具体的には、ゲート電流が閾値を超えると、第2セル142aに故障が生じていると判定する。
【0064】
閾値は、ゲート絶縁膜26に絶縁破壊が起き、ゲート・ソース間に短絡(ショート)が生じた状態を検出するように設定してもよいし、絶縁破壊の兆し(予兆)がある状態から検出するように設定してもよい。
【0065】
同様に、第2スイッチ342bのみをオン、他の第2スイッチ342a、342cおよび第1スイッチ341をオフすると、第2セル142bのゲート電極27のみにゲート駆動電圧が印加される。これにより、第2セル142bの故障を検出することができる。また、第2スイッチ342cのみをオン、他の第2スイッチ342a、342bおよび第1スイッチ341をオフすると、第2セル142cのゲート電極27のみにゲート駆動電圧が印加される。これにより、第2セル142cの故障を検出することができる。
【0066】
第2セル142の故障を検出した後は、半導体素子15の駆動時において故障した第2セル142にゲート駆動電圧を印加しないように、駆動におけるスイッチ34の開閉パターンを切り替える。たとえば第2セル142aの故障を検出した場合、図6に示すように、故障した第2セル142aに対応する第2スイッチ342aをオフし、残りの第2スイッチ342b、342cおよび第1スイッチ341をオンする。これにより、故障した第2セル142aを除くメインセル14、つまり第1セル141および第2セル142b、142cが半導体素子15として機能する。
【0067】
<故障予測方法>
次に、図7図9に基づき、半導体装置10の故障予測方法について説明する。図7は、故障予測方法の一例を示すフローチャートである。図8は、駆動時処理を示すフローチャートである。図9は、非駆動時処理を示すフローチャートである。以下に示す故障予測方法は、半導体素子15の駆動と非駆動との切り替わりのタイミングで実行してもよいし、所定の周期で繰り返し実行してもよい。
【0068】
図7に示すように、まず駆動時か否かを判定する(ステップS100)。駆動時の場合、駆動時処理、つまり通常使用時処理を実行し(ステップS200)、一例の処理を終了する。非駆動時の場合、非駆動時処理、つまり検知時処理を実行し(ステップS300)、一連の処理を終了する。
【0069】
図8に示すように、駆動時処理では、まず故障した第2セル142があるか否かを判定する(ステップS201)。故障した第2セル142とは、非駆動時処理にて故障が検出された第2セル142である。故障した第2セル142に関する情報は、後述する非駆動時処理においてメモリに記憶されている。
【0070】
故障した第2セル142がある場合、故障していないメインセル14、つまり正常セルに対応するスイッチ34をオンして半導体素子15を駆動する(ステップS202)。図6に例示したように、故障した第2セル142に対応する第2スイッチ342についてはオフする。これにより、故障した第2セル142のゲート電極27は、第1セル141を含む他のメインセル14のゲート電極27とは電気的に分離され、ゲート駆動電圧が印加されない。故障した第2セル142を除くメインセル14が、半導体素子15として機能する。
【0071】
一方、故障した第2セル142がない場合、すべてのスイッチ34をオンして半導体素子15を駆動する(ステップS203)。図4に示したように、第1スイッチ341をオンするとともに第2スイッチ342のすべてをオンする。これにより、すべてのメインセル14が半導体素子15として機能する。ステップS202またはステップS203の処理が終了すると、駆動時処理を終了する。
【0072】
図9に示すように、非駆動時処理では、まず第1スイッチ341をオフする(ステップS301)。これにより、第1セル141のゲート電極27にゲート駆動電圧が印加されない状態となる。
【0073】
次いで、故障が生じてない第2セル142、つまり正常な第2セル142が存在するか否かを判定する(ステップS302)。
【0074】
正常な第2セル142が存在する場合、第2スイッチ342を選択的にオンして、オンした第2スイッチ342に対応する正常な第2セル142のみを動作、つまり検知動作させる(ステップS303)。具体的には、検知動作が今回のフローで未実施であり、かつ、正常な第2セル142のうち、ゲート絶縁膜26がもっとも壊れやすい第2セル142が動作(検知動作)するように、対応する第2スイッチ342をオンする。
【0075】
たとえば、すべての第2セル142について検知動作が未実施であり、かつ、いずれも故障していない場合、図5に例示したように、ゲート絶縁膜26がもっとも壊れやすい第2セル142aが検知動作するように、第2スイッチ342aのみをオンする。第2スイッチ342aのオンにより、第2セル142aのゲート電極27のみにゲート駆動電圧が印加され、第2セル142aのみが故障を検知するために動作する。なお、正常な第2セル142がひとつ(1種類)のみの場合、正常な第2セル142に対応する第2スイッチ342をオンする。
【0076】
次いで、検知動作時にゲート電流(電流)を測定し、測定した電流値が絶縁破壊を判定するための閾値を超えたか否かを判定する(ステップS304)。たとえば第2セル142aを検知動作させているとき、電流センサ82によって測定される電流値は、第2セル142aのゲート電極27に流れる電流の値である。
【0077】
電流が閾値を超えた場合、故障が生じていると判定し、検知動作した第2セル142の故障を記憶する(ステップS305)。次いで、ステップS303で選択した第2セル142について検知動作済みであることを記憶する(ステップS306)。ステップS304において電流が閾値を超えない場合には、ステップS305の処理を実行せずに、ステップS306の処理を実行する。
【0078】
ステップS306の実行後、正常の第2セル142のすべてが検知動作を実行したか否か、つまりすべての検知が完了したか否かを判定する(ステップS307)。検知動作が未実施の正常な第2セル142が残っている場合、ステップS303に戻って以降の処理を再び実行する。
【0079】
検知が完了した場合、次いで、故障を検出した第2セル142が所定数に達したか否かを判定する(ステップS308)。故障が所定数に到達した場合、第1セル141が故障するリスクが高いと予測する。つまり、第1セル141の故障を予測する。本実施形態の場合、3つの第2セル142a、142b、142cがすべて故障すると、第1セル141が故障するリスクが高いと予測する。
【0080】
そして、報知用のフラグをオンし(ステップS309)、非駆動時処理を終了する。フラグをオンすることで、外部報知が実行される。たとえば、表示や音声などにより、異常が報知される。報知は、たとえば半導体装置10の取り換え(交換)を、車両のユーザに促す。
【0081】
ステップS308で故障が所定数に達していない場合、ステップS309の処理を実行せずに、非駆動時処理を終了する。また、ステップS302で正常な第2セル142が存在しない場合には、ステップS303以降の処理を実行せずに、非駆動時処理を終了する。
【0082】
非駆動時処理において、ステップS301の処理とステップS302の処理の順序を逆にしてもよい。つまり、ステップS302の処理を実行した後に、ステップS301の処理を実行してもよい。
【0083】
ステップS304の処理において、ゲート電流の値と閾値を比較して第2セル142の故障、つまりゲート絶縁膜26の破壊を判断する例を示したがこれに限定されない。たとえばニューラルネットワークなどの非線形手法を用いて判断してもよい。
【0084】
上記した故障予測方法は、コンピュータ実行可能命令で実装されてもよい。一実施形態では、非一時的コンピュータ可読媒体は、プロセッサ、コンピュータなどの機械によって実行されると、機械および/または関連するコンポーネントに方法を実行させる、コンピュータ実行可能命令を記憶した状態で構成される。プロセッサと、プロセッサに実行させる命令を含むプログラムを記憶するメモリと、を備える故障予測装置として構成されてもよい。
【0085】
<第1実施形態のまとめ>
上記したように、本実施形態に係る半導体装置10の故障予測方法によれば、半導体素子15の駆動時に第2セル142にも第1セル141と共通のゲート駆動電圧を印加する。また、第2セル142の故障を検出すると、故障した第2セル142のゲート電極27を第1セル141のゲート電極27に対して電気的に分離する。第2セル142の故障が生じるまでは、第2セル142も半導体素子15を構成するメインセル14として機能するため、チップ面積の利用効率の低下、つまり半導体素子15の利用効率の低下を抑制することができる。
【0086】
また、電気特性を測定して駆動時の通電による第2セル142の故障を検出する。上記したように、半導体素子15の駆動時において、第2セル142は、第1セル141と同様に駆動する。よって、第2セル142は、実際に市場で加えられるストレスにより故障する。したがって、第2セル142の故障に基づいて第1セル141の故障、つまり半導体素子15の故障を精度よく予測することができる。
【0087】
以上より、本実施形態に係る半導体装置10の故障予測方法によれば、半導体素子15の利用効率の低下を抑制しつつ、故障を精度よく予測することができる。
【0088】
ところで、ゲート絶縁膜は、半導体素子の動作中の電界集中によって絶縁破壊が起き、ゲートとソース間が短絡(ショート)することで、故障と判断される。短絡が生じると、スイッチングデバイスとしての機能が失われる。このような故障は、半導体素子において、応力が集中しやすい端の部分で生じやすい。半導体素子は、複数のメインセル(単位構造部)が並列接続されて構成されているが、短絡による電流集中で温度が上昇し、広範囲にわたってメインセルが破壊されてしまうと、半導体素子として使えなくなってしまう。
【0089】
これに対し、本実施形態では、第2セル142の故障を検出すると、故障した第2セル142のゲート電極27を第1セル141に対して電気的に分離して、ゲート駆動電圧が印加されないようにする。これにより、第2セル142の故障による温度上昇で、他のメインセル14が故障するのを抑制することができる。つまり、半導体素子15としての機能を維持しつつ、第1セル141の故障を精度よく予測することができる。
【0090】
本実施形態では、メインセル14が、ゲート絶縁膜26の壊れやすさが互いに異なる複数の第2セル142(142a、142b、142c)を含んでいる。そして、複数の第2セル142の故障に基づいて、第1セル141の故障を予測する。複数の第2セル142は、理想的にはゲート絶縁膜26の壊れやすい順、たとえばゲート絶縁膜26の薄い順に、時系列で壊れる。よって、複数の第2セル142の故障に基づいて半導体素子全体の故障の進行度合いを推定することができる。したがって、故障の予測精度をより高めることができる。
【0091】
本実施形態では、第2セル142の故障の数が所定数に到達すると、第1セル141の故障を予測する。上記したように複数の第2セル142は時系列で壊れるため、第2セル142の故障数によって、故障の進行度合いを推定することができる。つまり、第1セル141の故障を予測することができる。
【0092】
本実施形態では、第1セル141の故障を予測すると報知を行う。これにより、半導体装置10の交換を車両のユーザに促すことができる。
【0093】
本実施形態では、半導体素子15の駆動時に、第1セル141のゲート電極27に接続された第1スイッチ341をオンするとともに、第2セル142のゲート電極27に接続された第2スイッチ342をオンする。これにより、第1セル141および第2セル142に共通のゲート駆動電圧を印加する。また、半導体素子15の非駆動時に、第1スイッチ341をオフするとともに、第2スイッチ342をオンした第2セル142のみにゲート駆動電圧を印加して電気特性を測定し、駆動時の通電による第2セル142の故障を検出する。そして、故障した第2セル142に対応する第2スイッチ342をオフすることで、故障した第2セル142を第1セル141に対して電気的に分離する。
【0094】
このように、スイッチ34(341、342)を選択的にオンオフさせることで、駆動時に第2セル142も動作させ、非駆動時に第2セル142のみを動作させて故障を検出し、故障した第2セル142にゲート駆動電圧が印加されないようにすることができる。非駆動時に、第1セル141を動作させず、第2スイッチ342をオンした第2セル142のみを動作させるため、電気特性の測定により第2セル142の故障を精度よく検出することができる。
【0095】
本実施形態に係る半導体装置10は、上記した故障予測方法を実行可能に構成されている。具体的には、メインセル14が、複数の第1セル141と、第1セル141よりも数の少ない第2セル142を含んでいる。また、ゲートパッド30が、第1セル141のゲート電極27に接続された第1パッド301と、第1パッド301とは別に設けられ、第2セル142のゲート電極27に接続された第2パッド302を含んでいる。さらに半導体装置10は、ゲートパッド30に個別に接続された複数のスイッチ34を備えている。スイッチ34は、第1パッドに接続された第1スイッチ341と、第2パッド302に接続された第2スイッチ342を含んでいる。
【0096】
そして、半導体素子15の駆動時において、第2セル142に故障が生じていない場合には、すべてのスイッチ34がオンされ、故障している場合には、故障した第2セル142に対応する第2スイッチ342のみオフ、残りのスイッチ34がオンされる。また、半導体素子15の非駆動時において、第1スイッチ341がオフ、第2スイッチ342がオンされる。
【0097】
本実施形態では、ゲート絶縁膜26の壊れやすさが互いに異なる複数の第2セル142を備える例を示したが、これに限定されない。1種類の第2セル142のみを備えてもよいし、2種類の第2セル142を備えてもよい。4種類以上の第2セル142を備えてもよい。
【0098】
また、半導体装置10が共通パッド32を備える例を示したが、これに限定されない。共通パッド32を排除した構成としてもよい。この場合、ボンディングワイヤなどの配線部材を介して、スイッチ34が駆動回路に個別に接続される。
【0099】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、半導体装置10が、スイッチ34を備えていた。これに代えて、スイッチ34を排除した構成としてもよい。
【0100】
図10は、本実施形態に係る半導体装置10において、ゲートパッド30の周辺を示している。図10では、半導体装置10と駆動回路83との接続構造を示している。
【0101】
駆動回路83は、回路基板に構成されている。駆動回路83は、ゲート駆動回路、ドライバ、ゲートドライバなどと称されることがある。駆動回路83は、上記したゲート駆動電源80、スイッチ用電源81、および電流センサ82を備えている。駆動回路83は、スイッチ84をさらに備えている。スイッチ84は、ゲートパッド30に対して個別に設けられている。スイッチ84は、上記したスイッチ34に対応している。
【0102】
スイッチ84は、第1スイッチ841と、複数の第2スイッチ842を含んでいる。また、複数の第2スイッチ842は、第2スイッチ842a、842b、842cを含んでいる。第1スイッチ841は第1スイッチ341に相当し、第2スイッチ842は第2スイッチ342に相当する。また、第2スイッチ842a、842b、842cは、第2スイッチ342a、342b、342cに相当する。
【0103】
スイッチ84は、ゲート駆動電源80とゲートパッド30の間に設けられている。複数のスイッチ84は、互いに並列に接続されている。複数のスイッチ84の主端子のひとつ、たとえばドレイン端子は、ゲート駆動電源80に接続されている。主端子の他のひとつ、たとえばソース端子は、ボンディングワイヤなどの配線部材85を介して対応するゲートパッド30に接続されている。スイッチ84のゲートには、スイッチ用電源81が個別に接続されている。
【0104】
<第2実施形態のまとめ>
上記した構成によれば、先行実施形態に示した故障予測方法を実行することができる。具体的には、半導体素子15の駆動時に、第1スイッチ841をオンするとともに第2スイッチ842をオンすることで、第1セル141および第2セル142に共通のゲート駆動電圧を印加する。また、半導体素子15の非駆動時に、第1スイッチ841をオフするとともに、第2スイッチ842をオンした第2セル142のみにゲート駆動電圧を印加して電気特性を測定し、駆動時の通電による第2セル142の故障を検出する。そして、故障した第2セル142に対応する第2スイッチ842をオフすることで、故障した第2セル142を第1セル141に対して電気的に分離する。
【0105】
このように、スイッチ84(841、842)を選択的にオンオフさせることで、駆動時に第2セル142も動作させ、非駆動時に第2セル142のみを動作させて故障を検出し、故障した第2セル142にゲート駆動電圧が印加されないようにすることができる。
【0106】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、スイッチ34、84のオフにより、故障した第2セル142に対してゲート駆動電圧を印加しないようにした。これに代えて、ヒューズの溶断により、故障した第2セル142に対してゲート駆動電圧を印加しないようにしてもよい。
【0107】
<半導体装置>
図11は、本実施形態に係る半導体装置10において、ゲートパッド30の周辺を示す図である。図11は、図3に対応している。
【0108】
図11に示すように、半導体装置10は、共通パッド32と、スイッチ34を備えていない。図示を省略するが、本実施形態のメインセル14も、先行実施形態同様、第1セル141と、複数の第2セル142(142a、142b、142c)を有している。また、ゲートパッド30が、第1パッド301と、複数の第2パッド302(302a、302b、302c)を有している。
【0109】
半導体装置10は、ヒューズ35を備えている。ヒューズ35は、電流ヒューズと称されることがある。ヒューズ35は、第2パッド302と第1パッド301とを個別に接続している。本実施形態の半導体装置10は、複数のヒューズ35(35a、35b、35c)を備えている。ヒューズ35aは、第2パッド302aと第1パッド301とを接続している。ヒューズ35bは、第2パッド302bと第1パッド301とを接続している。ヒューズ35cは、第2パッド302cと第1パッド301とを接続している。
【0110】
ヒューズ35は、定格電流値を超える電流が流れると、局所的に発熱、溶断して回路を遮断する。ヒューズ35は、対応する第2セル142においてゲート絶縁膜26が絶縁破壊され、ゲート・ソース間が短絡することで定格電流値を超える電流が流れると、溶断する。
【0111】
図11に示すように、ゲート駆動電源80は、第1パッド301に接続される。ゲート電流Igsを検出するための電流センサ82は、第1パッド301とゲート駆動電源80との通電経路に設けられる。スイッチ34を設けないため、スイッチ用電源81は不要となる。
【0112】
<故障予測方法>
次に、図12図14に基づき、故障予測方法について説明する。図12は、故障予測方法の一例を示すフローチャートである。図13は、故障検出を示す図である。図14は、第1セルの故障時期の予測を示す図である。
【0113】
本実施形態では、半導体素子15の駆動時において、第2セル142の故障も検出する。図12に示すように、半導体素子15の駆動指示によりスタートし、まず半導体素子15を駆動させるためにゲート駆動電圧を印加する(ステップS400)。具体的には、ゲート駆動電源80から第1パッド301にゲート駆動電圧を印加する。つまり、第1セル141のゲート電極27に、ゲート駆動電圧を印加する。また、対応するヒューズ35が溶断していない第2セル142、つまり故障していない第2セル142のゲート電極27に、ゲート駆動電圧を印加する。第1セル141および故障していない第2セル142が動作し、半導体素子15として機能する。
【0114】
次いで、電流センサ82によりゲート電流Igsのモニタを開始し(ステップS401)、ゲート電流に基づいて、第2セル142に故障が生じたか否かを判定する(ステップS402)。そして、故障が生じた場合には、故障するまでの時間を記憶し(ステップS403)、故障が生じない場合にはステップS402を繰り返し実行する。
【0115】
図13に示すように、ゲート電流は、第2セル142のゲート絶縁膜が劣化するにつれて増加する。そして、ゲート絶縁膜26の破壊によりゲート・ソース間が短絡すると、ヒューズ35に定格電流値を超える電流が流れて溶断し、ゲート電流が急激に小さくなる。本実施形態では、一例として、ゲート電流値が大から小へ急激に変化するまでの時間、つまりヒューズ35が溶断するまでの時間を、第2セル142が故障するまでの動作時間として記憶する。動作時間とは、第2セル142が故障するまでのゲート駆動電圧の累積印加時間である。なお、ゲート電流が所定の閾値を超えることで第2セル142を故障と判定してもよい。この場合、閾値を超えるまでの時間を動作時間としてもよい。
【0116】
第2セル142が故障すると、ヒューズ35の溶断により、故障した第2セル142のゲート電極27は、他のメインセル14のゲート電極27と電気的に分離される。つまり、故障した第2セル142のゲート電極27には、ゲート駆動電圧が印加できなくなる。
【0117】
次いで、すべての第2セル142が故障したか否かを判定する(ステップS404)。故障していない第2セル142が残っている場合には、ステップS402以降の処理を再び実行する。本実施形態の場合、3種類の第2セル142a、142b、142cすべてが故障するまでステップS402以降の処理を繰り返し実行する。第2セル142がひとつの場合には、必然的にステップS405に移行する。
【0118】
上記したように、第2セル142a、142b、142cはゲート絶縁膜の壊れやすさが互いに異なる。本実施形態でも、先行実施形態同様、ゲート絶縁膜26の厚みが互いに異なっている。このため、図13に示すように、ゲート絶縁膜26がもっとも薄い第2セル142aの動作時間はt1である。また、ゲート絶縁膜26が二番目に薄い第2セル142bの動作時間はt2(>t1)である。第2セル142の中でゲート絶縁膜26がもっとも厚い第2セル142cの動作時間はt3(>t2)である。このように、故障するまでの動作時間に差が生じる。時間t1、t2、t3が、第2セル142の故障時期に相当する。
【0119】
次いで、すべての第2セル142の故障時期に基づいて、第1セル141の故障時期を予測し(ステップS405)、一連の処理を終了する。
【0120】
たとえば、第1セル141および第2セル142それぞれのゲート絶縁膜26の耐圧限界となる電界Eは、構造が決まっていればデバイスシミュレーションにて予め算出が可能である。そこで、第2セル142a、142b、142cの破壊電界をE1、E2、E3、第1セル141の破壊電界をExとして準備しておき、得られた時間t1、t2、t3を用いて図9に示すように2次元プロットする。これにより、第1セル141の絶縁破壊が起きる時間txを予測することができる。時間txが、第1セル141の故障時期に相当する。
【0121】
<第3実施形態のまとめ>
本実施形態に係る半導体装置10の故障予測方法によれば、先行実施形態同様、半導体素子15の駆動時に、第2セル142にもヒューズ35を介して第1セル141と共通のゲート駆動電圧を印加する。また、電気特性を測定して、第2セル142の故障を検出する。ヒューズ35の溶断により、故障した第2セル142のゲート電極27を第1セル141のゲート電極27に対して電気的に分離する。第2セル142の故障が生じるまでは、第2セル142も半導体素子15を構成するメインセル14として機能するため、チップ面積の利用効率の低下、つまり半導体素子15の利用効率の低下を抑制することができる。
【0122】
また、電気特性を測定して駆動時の通電による第2セル142の故障を検出する。上記したように、半導体素子15の駆動時において、第2セル142は、第1セル141と同様に駆動する。よって、第2セル142は、実際に市場で加えられるストレスにより故障する。したがって、第2セル142の故障に基づいて第1セル141の故障、つまり半導体素子15の故障を精度よく予測することができる。
【0123】
本実施形態では、第2セル142が故障にともなってヒューズ35が溶断し、故障した第2セル142のゲート電極27を第1セル141に対して電気的に分離して、ゲート駆動電圧が印加されないようにする。これにより、第2セル142の故障による温度上昇で、他のメインセル14が故障するのを抑制することができる。つまり、半導体素子15としての機能を維持しつつ、第1セル141の故障を精度よく予測することができる。
【0124】
本実施形態の半導体装置10によれば、半導体素子15の駆動時に、第2セル142にもヒューズ35を介して第1セル141と共通のゲート駆動電圧を印加することができる。そして、ゲート絶縁膜26の破壊により第2セル142が故障するのにともなってヒューズ35が溶断し、故障した第2セル142へのゲート駆動電圧の印加を遮断することができる。つまり、第2セル142の故障が生じるまでは、第2セル142も半導体素子15を構成するメインセル14として機能するため、半導体素子15の利用効率の低下を抑制することができる。
【0125】
また、第2セル142は、半導体素子15の駆動時において第1セル141とともに動作することで故障する。つまり、実際に市場で加えられるストレスにより故障する。したがって、第2セル142の故障に基づいて第1セル141の故障、つまり半導体素子15の故障を精度よく予測することが可能となる。
【0126】
本実施形態では、第2セル142の故障時期に基づいて第1セル141の故障時期を予測する。上記したように複数の第2セル142は時系列で壊れるため、第2セル142の故障時期から、第1セル141の故障時期を予測することができる。特に本実施形態では、複数の第2セル142の故障時期を用いるため、第1セル141の故障時期を予測することができる。
【0127】
<変形例>
本実施形態では、複数の第2セル142(142a、142b、142c)の故障時期に基づいて、第1セル141の故障時期を予測する例を示したが、これに限定されない。1種類の第2セル142の故障時期に基づいて第1セル141の故障時期を予測してもよい。
【0128】
第1セル141の故障時期の予測(推定)については、上記した手法に限定されない。たとえば、ゲート絶縁膜26の厚みが互いに異なる場合、ゲート絶縁膜26の厚みの比と、上記した動作時間に基づいて、第1セル141の故障時期を算出してもよい。また、非線形回帰手法を用いて予測してもよい。
【0129】
ヒューズ35を用いる構成において、第2セル142の故障時期に基づき、第1セル141の故障時期を予測する例を示したが、これに限定されない。ヒューズ35を用いる構成において、先行実施形態同様、第2セル142の故障数が所定数に達することで、第1セル141の故障を予測してもよい。この際、第1セル141の故障を予測すると報知を行ってもよい。
【0130】
先行実施形態に示したスイッチ34、84を用いる構成において、本実施形態に記載のように、第2セル142の故障時期に基づき、第1セル141の故障時期を予測してもよい。たとえば、図9に示した非駆動時処理において、ステップS305で第2セル142の故障時期、つまり故障するまでの時間を記憶し、ステップS308に代えて、第2セル142の故障時期に基づき、第1セル141の故障時期を予測してもよい。
【0131】
第2セル142の故障時期に基づき、第1セル141の故障時期を予測した後に、予測した第1セル141の故障時期に応じて報知を行ってもよい。たとえば予測した故障時期に達したら報知してもよいし、故障時期よりも所定時間前に達したら報知してもよい。
【0132】
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、ゲート絶縁膜26の厚みを薄くすることで、第2セル142のゲート絶縁膜26を第1セル141よりも壊れやすくした。これに代えて、ドリフト領域21内に周期的に設けたディープ領域を調整することで、第2セル142のゲート絶縁膜26を第1セル141よりも壊れやすくしてもよい。
【0133】
図15は、本実施形態の半導体装置10を示す断面図である。図15は、図1に示したII-II線を外周領域13まで延長した断面図である。図15に示すように、半導体装置10は、先行実施形態に示した構成に加えて、ディープ領域36と、ガードリング37をさらに有している。
【0134】
ディープ領域36は、メインセル領域12においてドリフト領域21内に周期的に設けられている。ディープ領域36は、ベース領域22から下方、つまりドレイン領域20側に延びている。ディープ領域36は、トレンチ25よりも深い位置まで延びている。
【0135】
ディープ領域36は、ベース領域22およびベースコンタクト領域24よりも不純物濃度が高いp導電型(p++)の半導体領域である。ディープ領域36は、ベース領域22およびベースコンタクト領域24を介して、ソース電極28と電気的に接続されている。ディープ領域36は、メインセル領域12において、隣り合うトレンチ25の間に設けられている。ディープ領域36は、X方向に延び、Y方向においてトレンチ25と並設されている。
【0136】
ガードリング37は、外周領域13においてドリフト領域21内に設けられている。ガードリング37は、ベース領域22よりも不純物濃度が高いp導電型の半導体領域である。ガードリング37の下端位置は、たとえばディープ領域36の下端位置とほぼ等しい。ガードリング37は、多重に設けられている。多重に設けられたガードリング37のうち、もっとも内側のガードリング37Aは、他のガードリング37(p+)よりも不純物濃度が高いp導電型(p++)の半導体領域である。
【0137】
ガードリング37Aは、外周領域13に位置するベース領域22の端部に連なっている。ガードリング37Aは、Y方向において端部に配置されたトレンチ25との間に所定の距離D1を有するように設けられている。ガードリング37Aは、ベース領域22およびベースコンタクト領域24を介して、ソース電極28と電気的に接続されている。ガードリング37Aを除く他のガードリング37は、ベース領域22に接しておらず、半導体基板11の裏面11bから所定の深さを有して設けられている。他のガードリング37は、ソース電極28に電気的に接続されていない。
【0138】
空乏層は、ジャンクションを起点に広がる。また、不純物濃度が高いほど、空乏層が広がりにくい。トレンチ25よりも下方まで延びる不純物濃度が高いディープ領域36をメインセル領域12内に設けると、トレンチ25の下部に電界集中が生じ難くなる。また、もっとも内側のガードリング37Aの不純物濃度を高くすると、端部のトレンチ25に電界集中が生じ難くなる。
【0139】
本実施形態では、意図的に上記した距離D1および/またはガードリング37Aの不純物濃度を制御することで、第2セル142のゲート絶縁膜26を第1セル141に較べて破壊されやすくしている。つまり、距離D1および/またはガードリング37Aの不純物濃度を制御することで、第2セル142のゲート絶縁膜26に電界が集中しやすい構造としている。たとえば距離D1を長くするほど端部のゲート絶縁膜26にかかる電界が強くなり、絶縁破壊が起きやすくなる。また、ガードリング37Aの不純物濃度を低くするほど、端部のゲート絶縁膜26にかかる電界が強くなり、絶縁破壊が起きやすくなる。その他の構成については、先行実施形態に記載した構成と同様である。
【0140】
<第4実施形態のまとめ>
上記した構造によれば、ゲート絶縁膜26およびゲート電極27を含むトレンチ構造を第1セル141と第2セル142とで共通にしても、第2セル142のゲート絶縁膜26を第1セル141に較べて壊れやすくすることができる。
【0141】
(第5実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。先行実施形態では、ゲート絶縁膜26の厚みを全体的に薄くすることで、第2セル142のゲート絶縁膜26を第1セル141よりも壊れやすくした。これに代えて、ゲート絶縁膜26の厚みを局所的に薄くすることで、第2セル142のゲート絶縁膜26を第1セル141よりも壊れやすくしてもよい。
【0142】
図16は、本実施形態の半導体装置10を示す断面図である。図16は、図1に示したII-II線に沿う断面図である。図16に示すように、本実施形態では、第2セル142において、トレンチ25の底壁と側壁との角部が、切り欠いた形状となっている。切り欠いた形状は、面取り形状、テーパ形状などと称されることがある。これにより、第2セル142のゲート絶縁膜26の厚みは、切り欠き部分において第1セル141よりも薄く、その他の部分において第1セル141とほぼ同じである。その他の構成については、先行実施形態に記載した構成と同様である。
【0143】
<第5実施形態のまとめ>
上記した構造を採用すると、第1セル141と第2セル142のゲート絶縁膜26の厚みの相違による閾値電圧Vthのばらつきを低減乃至なくすことができる。その一方で、切り欠き部分に電界が集中するため、第2セル142のゲート絶縁膜26を第1セル141に較べて壊れやすくすることができる。
【0144】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0145】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【符号の説明】
【0146】
10…半導体装置、11…半導体基板、11a…一面、11b…裏面、12…メインセル領域、13…外周領域、14…メインセル、141…第1セル、142、142a、142b、142c…第2セル、15…半導体素子、20…ドレイン領域、21…ドリフト領域、22‥ベース領域、23‥ソース領域、24…ベースコンタクト領域、25…トレンチ、26…ゲート絶縁膜、27…ゲート電極、28…ソース電極、29…層間絶縁膜、30…ゲートパッド、301…第1パッド、302、302a、302b、302c…第2パッド、31…ドレイン電極、32…共通パッド、33…ゲート配線、331…第1配線、332、332a、332b、332c…第2配線、34…スイッチ、341…第1スイッチ、342、342a、342b、342c…第2スイッチ、35、35a、35b、35c…ヒューズ、36…ディープ領域、37、37A…ガードリング、80…ゲート駆動電源、81…スイッチ用電源、82…電流センサ、83…駆動回路、84…スイッチ、841…第1スイッチ、842、842a、842b、842c…第2スイッチ、85…配線部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16