IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-給電マット 図1
  • 特許-給電マット 図2
  • 特許-給電マット 図3
  • 特許-給電マット 図4
  • 特許-給電マット 図5
  • 特許-給電マット 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】給電マット
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20240723BHJP
   H02J 50/60 20160101ALI20240723BHJP
   H02J 50/70 20160101ALI20240723BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J50/60
H02J50/70
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021108860
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006319
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】小林 勝也
(72)【発明者】
【氏名】平野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】杉山 緑
(72)【発明者】
【氏名】山下 龍之介
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-508008(JP,A)
【文献】特開2017-137701(JP,A)
【文献】特開2017-118690(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047498(WO,A1)
【文献】特開2016-103645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/10
H02J 50/60
H02J 50/70
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された受電コイルに電力を伝送可能な送電コイル及び前記送電コイルを被覆する被覆シートを含む基材と、
前記基材の上方及び下方の少なくとも一方に設けられることが可能であり、所定の機能を有する少なくとも一つの機能層と、を備え
前記少なくとも一つの機能層は、前記基材の上方に設けられることが可能であり、前記所定の機能として表示機能を有する表示層を含み、
前記表示層は、光学表示によって所定の表示を表示可能である、給電マット。
【請求項2】
前記所定の表示は、前記車両を誘導する表示である、請求項に記載の給電マット。
【請求項3】
車両に搭載された受電コイルに電力を伝送可能な送電コイル及び前記送電コイルを被覆する被覆シートを含む基材と、
前記基材の上方及び下方の少なくとも一方に設けられることが可能であり、所定の機能を有する少なくとも一つの機能層と、を備え、
前記少なくとも一つの機能層は、前記基材の上方に設けられることが可能であり、前記所定の機能として発電機能を有する発電層を含む、給電マット。
【請求項4】
前記発電層は、太陽光発電パネルからなる、請求項に記載の給電マット。
【請求項5】
前記少なくとも一つの機能層は、前記基材の上方に設けられることが可能であり、前記所定の機能として前記基材を保護する機能を有する上側保護層を含む、請求項1から4のいずれかに記載の給電マット。
【請求項6】
前記上側保護層は、前記基材を保護する機能として、応力集中の発生の低減機能、防水機能及び融雪機能の少なくとも一つを含む、請求項に記載の給電マット。
【請求項7】
前記少なくとも一つの機能層は、前記基材の上面又は下面に接するように設けられることが可能であり、前記所定の機能として前記基材の熱を放散させる機能を有する放熱層を含み、
前記放熱層は、前記基材の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する、請求項1からのいずれかに記載の給電マット。
【請求項8】
前記少なくとも一つの機能層は、前記基材の下方に設けられることが可能であり、前記所定の機能として前記基材を保護する機能を有する下側保護層を含む、請求項1からいずれかに記載の給電マット。
【請求項9】
前記下側保護層は、前記基材を保護する機能として電磁波を遮断する機能を有する、請求項に記載の給電マット。
【請求項10】
前記基材は、前記車両と通信可能なアンテナを含み、
前記アンテナは、前記送電コイルから前記受電コイルに送られる電磁波に、当該電磁波の周波数よりも小さな周波数を有する情報を重畳させる、請求項1からのいずれかに記載の給電マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、給電マットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触で車両等の充電が可能で、かつ、持ち運びが可能な給電マットが知られている。例えば、特許第6145318号公報には、車両に搭載された受電コイルに対して電力伝送用の電磁波を送電する送電コイルと、送電コイルを被覆する可撓性シートであるシート材と、を備える送電コイル部材が開示されている。この送電コイル部材は、持ち運びが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6145318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許第6145318号公報に記載されるような送電コイル部材は、ユーザによって使用される場所や目的等が異なるため、ユーザごとに求められる機能が異なる。
【0005】
本開示の目的は、ユーザの所望する機能を付与可能な給電マットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面に従った給電マットは、車両に搭載された受電コイルに電力を伝送可能な送電コイル及び前記送電コイルを被覆する被覆シートを含む基材と、前記基材の上方及び下方の少なくとも一方に設けられることが可能であり、所定の機能を有する少なくとも一つの機能層と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ユーザの所望する機能を付与可能な給電マットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態における給電マットを含む非接触充電システムの構成を概略的に示す斜視図である。
図2】給電マット上に複数の車両が位置する状態を概略的に示す斜視図である。
図3】給電マットが壁面に設置された状態を概略的に示す斜視図である。
図4】給電マットが巻かれた状態を概略的に示す斜視図である。
図5】給電マットの断面図である。
図6】給電マットの変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態における給電マットを含む非接触充電システムの構成を概略的に示す斜視図である。図2は、給電マット上に複数の車両が位置する状態を概略的に示す斜視図である。
【0011】
車両2として、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)の他、図1及び図2に示されるように、例えば定員が1、2名の小型モビリティや、無人で搬送物を搬送可能な自動運転車両が挙げられる。図1に示されるように、車両2は、受電コイル2aと、蓄電装置2bと、カメラ2cと、を有している。
【0012】
図1に示されるように、非接触充電システム1は、給電マット10と、給電装置20と、を備えている。
【0013】
給電マット10は、非接触で車両2に電力を送ることが可能である。給電マット10は、図1及び図2に示されるように路面等に設置されてもよいし、図3に示されるように壁面に設置されてもよい。図4に示されるように、給電マット10は、ロール状に巻かれることが可能な柔軟性ないし可撓性を有していてもよい。給電マット10は、基材100と、少なくとも一つの機能層200と、を備えている。
【0014】
図5に示されるように、基材100は、少なくとも一つの送電コイル110と、被覆シート120と、アンテナ130と、を有している。本実施形態では、少なくとも一つの送電コイル110は、複数の送電コイル110を含んでいる。
【0015】
送電コイル110は、車両2に搭載された受電コイル2aに非接触で電力を伝送可能である。送電コイル110は、その上方に受電コイル2aが位置するときに、当該受電コイル2aに対して電力伝送用の電磁波を送る。受電コイル2aは、その電磁波に基づいて生成された電力によって蓄電装置2bを充電する。送電コイル110は、図1及び図3に示されるように、平面視において四角形状に形成されてもよいし、図2及び図4に示されるように、平面視において六角形状に形成されてもよいし、平面視において四角形状及び六角形状とは異なる形状に形成されてもよい。
【0016】
被覆シート120は、送電コイル110を被覆している。被覆シート120は、ガラスやエポキシ樹脂等からなる。なお、送電コイル110は、被覆シート120によって被覆されているものの、図1図4では、送電コイル110が実線で示されている。
【0017】
アンテナ130は、被覆シート120内に設けられている。アンテナ130は、例えば、ループアンテナである。アンテナ130は、送電コイル110から受電コイル2aに送られる電磁波に、当該電磁波の周波数よりも小さな周波数を有する情報を重畳させる。なお、前記情報として、車両2の位置情報、車両2が要求する給電量、車両2の識別番号等が挙げられる。
【0018】
給電装置20は、給電マット10に電力を供給する。給電装置20は、交流電源25に接続可能である。給電装置20は、交流電源25から供給される交流電力の電圧を適切な値に変換するとともに、その変換後の交流電力を給電マット10に供給する。
【0019】
給電装置20は、センサユニット28を有していてもよい。センサユニット28は、給電マット10上を通過する車両2の位置を検出する。センサユニット28は、カメラ、レーダー(Radar)及びライダー(LIDAR:Laser Imaging Detection and Ranging)のうちの少なくとも一つを含む。
【0020】
少なくとも一つの機能層200は、所定の機能を有している。少なくとも一つの機能層200は、基材100の上方及び下方の少なくとも一方に設けられることが可能である。本実施形態では、図5に示されるように、少なくとも一つの機能層200は、上側保護層210と、放熱層220と、表示層230と、下側保護層240と、異物検知層250と、生体検知層260と、を含んでいる。各層210~260及び基材100は、基材100の厚み方向(図5における上下方向)に互いに着脱可能に構成されていてもよいし、一体となるように(着脱できないように)互いに固定されていてもよい。なお、各層210~260及び基材100を着脱可能とする構造として、凹凸による嵌合、ボルト等の締結部材による締結、面ファスナーによる接続等が挙げられる。
【0021】
上側保護層210は、所定の機能として基材100を保護する機能を有している。上側保護層210は、基材100の上方に設けられることが可能である。上側保護層210は、基材100を保護する機能として、応力集中の発生の低減機能、防水機能及び融雪機能の少なくとも一つを有している。本実施形態では、上側保護層210は、応力集中の発生の低減機能及び防水機能を備える第1保護層211と、融雪機能を備える第2保護層212と、を有している。
【0022】
第1保護層211は、車両2の重量に起因する基材100への応力集中の発生を低減させ、かつ、基材100の防水性を向上させる。第1保護層211は、被覆シート120の剛性よりも高い剛性を有する材料(ポリカーボネート等)、あるいは、第1保護層211は、被覆シート120の剛性よりも低い剛性を有する材料(ゴム等)からなる。第1保護層211は、光透過性を有する材料からなることが好ましい。
【0023】
第2保護層212は、第1保護層211の下面に設けられることが可能である。第2保護層212は、ヒーター等の加熱部を有している。この加熱部は、第1保護層211上への積雪が検知されたときに作動する。第2保護層212は、光透過性を有する材料からなることが好ましい。なお、第2保護層212は、省略されてもよい。
【0024】
放熱層220は、所定の機能として基材100の熱を放散させる機能を有している。放熱層220は、基材100の上面又は下面に接するように設けられることが可能である。本実施形態では、図5に示されるように、放熱層220は、基材100の下面に接するように設けられることが可能である。放熱層220は、基材100の被覆シート120の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料からなる。放熱層220は、例えば、シリコンゴムに熱伝導性を有する粒子を添加することにより形成される。
【0025】
なお、図示は省略するが、放熱層220は、基材100の上面に接するように設けられることも可能である。この場合、放熱層220のうち基材100の上面と対向する面(下面)が粗面に形成され、基材100の上面と放熱層220の下面との間に放熱用の空間が形成されることが好ましい。
【0026】
表示層230は、所定の機能として表示機能を有している。表示層230は、基材100の上方に設けられることが可能である。基材100の上方に上側保護層210が設けられる場合、表示層230は、基材100と上側保護層210との間に設けられる。表示層230は、光学表示によって所定の表示を表示可能である。前記所定の表示として、車両を誘導する表示等が挙げられる。前記所定の表示は、給電装置20により適宜変更される。表示層230による表示は、車両2に搭載されたカメラ2cによって読み取られる。
【0027】
下側保護層240は、所定の機能として基材100を保護する機能を有している。下側保護層240は、基材100の下方に設けられることが可能である。基材100の下方に放熱層220が設けられる場合、下側保護層240は、放熱層220の下方に設けられる。下側保護層240は、電磁波を遮断する機能を有している。下側保護層240は、電磁波を遮断可能な材料(金属やフェライト)を含んでいる。
【0028】
異物検知層250は、所定の機能として、基材100の上方に存在する異物を検知する機能を有している。異物検知層250は、基材100の上方に設けられることが可能である。異物検知層250は、基材100の上面に接するように設けられる。異物検知層250は、金属を探知するコイルを有している。
【0029】
生体検知層260は、所定の機能として、基材100の上方に存在する生体(人や動物等)を検知する機能を有している。生体検知層260は、基材100の上方に設けられることが可能である。図5に示されるように、生体検知層260は、異物検知層250の上面に接するように設けられてもよいし、基材100の上面に接するように設けられてもよい。生体検知層260は、例えば、静電容量を検知するセンサを有している。
【0030】
以上に説明したように、この給電マット10では、基材100に任意の機能層200を組み合わせることが可能であるため、基材100に対してユーザの所望する機能を付与することが可能となる。
【0031】
上記実施形態において、図6に示されるように、表示層230の代わりに、所定の機能として発電機能を有する発電層235が設けられてもよい。発電層235は、太陽光発電パネルで構成されることが好ましい。
【0032】
また、上記実施形態では、給電マット10が複数の機能層200を含む例が説明されたが、給電マット10は、上記複数の機能層200のうちの一層のみを有していればよい。
【0033】
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0034】
上記実施形態における給電マットは、車両に搭載された受電コイルに電力を伝送可能な送電コイル及び前記送電コイルを被覆する被覆シートを含む基材と、前記基材の上方及び下方の少なくとも一方に設けられることが可能であり、所定の機能を有する少なくとも一つの機能層と、を備える。
【0035】
この給電マットでは、基材に機能層を組み合わせることが可能であるため、基材に対してユーザの所望する機能を付与することが可能となる。
【0036】
また、前記少なくとも一つの機能層は、前記基材の上方に設けられることが可能であり、前記所定の機能として前記基材を保護する機能を有する上側保護層を含んでいてもよい。
【0037】
この態様では、上側保護層によって基材が有効に保護される。
【0038】
また、前記上側保護層は、前記基材を保護する機能として、応力集中の発生の低減機能、防水機能及び融雪機能の少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0039】
また、前記少なくとも一つの機能層は、前記基材の上面又は下面に接するように設けられることが可能であり、前記所定の機能として前記基材の熱を放散させる機能を有する放熱層を含んでいてもよい。この場合において、前記放熱層は、前記基材の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有することが好ましい。
【0040】
この態様では、送電コイルで発生した熱が放熱層を通じて有効に路面等に放散される。
【0041】
また、前記少なくとも一つの機能層は、前記基材の上方に設けられることが可能であり、前記所定の機能として表示機能を有する表示層を含んでいてもよい。前記表示層は、光学表示によって所定の表示を表示可能であることが好ましい。
【0042】
この場合において、前記所定の表示は、前記車両を誘導する表示であることが好ましい。
【0043】
この態様では、車両に搭載されたカメラ等によって所定の表示を読み取ることにより、車両を誘導すること(移動方向を変更すること等)が可能となる。
【0044】
また、前記少なくとも一つの機能層は、前記基材の上方に設けられることが可能であり、前記所定の機能として発電機能を有する発電層を含んでいてもよい。
【0045】
この場合において、前記発電層は、太陽光発電パネルからなることが好ましい。
【0046】
また、前記少なくとも一つの機能層は、前記基材の下方に設けられることが可能であり、前記所定の機能として前記基材を保護する機能を有する下側保護層を含んでいてもよい。
【0047】
この場合において、前記下側保護層は、前記基材を保護する機能として電磁波を遮断する機能を有することが好ましい。
【0048】
この態様では、送電コイルからの電磁波が下方に向かうことが抑制される。
【0049】
また、前記基材は、前記車両と通信可能なアンテナを含んでいてもよい。この場合において、前記アンテナは、前記送電コイルから前記受電コイルに送られる電磁波に、当該電磁波の周波数よりも小さな周波数を有する情報を重畳させることが好ましい。
【0050】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 非接触充電システム、2 車両、2a 受電コイル、2b 蓄電装置、2c カメラ、10 給電マット、100 基材、110 送電コイル、120 被覆シート、130 アンテナ、200 機能層、210 上側保護層、211 第1保護層、212 第2保護層、220 放熱層、230 表示層、235 発電層、240 下側保護層、250 異物検知層、260 生体検知層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6