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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】サーバ
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/80 20160101AFI20240723BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240723BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20240723BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240723BHJP
   B60L 53/68 20190101ALI20240723BHJP
   B60L 53/67 20190101ALI20240723BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20240723BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20240723BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240723BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20240723BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/12
H02J50/40
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
B60L53/68
B60L53/67
B60M7/00 X
B60L5/00 B
G16Y10/40
G16Y40/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021109507
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006755
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100167461
【弁理士】
【氏名又は名称】上木 亮平
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】津下 聖悟
(72)【発明者】
【氏名】松田 和久
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-078294(JP,A)
【文献】特開2013-038924(JP,A)
【文献】特開2011-120359(JP,A)
【文献】特開2018-157686(JP,A)
【文献】特開2020-178471(JP,A)
【文献】国際公開第2020/235256(WO,A1)
【文献】特開2020-159727(JP,A)
【文献】特開2012-133986(JP,A)
【文献】特開2013-252040(JP,A)
【文献】特開2020-188649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/80
H02J 50/12
H02J 50/40
H02J 7/00
B60L 53/68
B60L 53/67
B60M 7/00
B60L 5/00
G16Y 10/40
G16Y 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理部と、
走行中の車両に非接触で電力を送電する複数の地上給電装置と通信可能な通信部と、
複数の前記地上給電装置の所定期間内の総給電量に関する情報を少なくとも記憶する記憶部と、
を備えるサーバであって、
前記処理部は、
複数の前記地上給電装置のうちの一の地上給電装置から前記通信部を介して受信した前記一の地上給電装置の所定期間内の総給電量が、前記記憶部に記憶された複数の前記地上給電装置の所定期間内の総給電量のデータに基づいて設定された判定閾値以上であれば、前記一の地上給電装置で盗電又は漏電が発生していると判定する、
サーバ。
【請求項2】
前記処理部は、
前記記憶部に記憶された複数の前記地上給電装置の所定期間内の総給電量のデータから、統計的手法を用いて前記判定閾値を設定する、
請求項1に記載のサーバ。
【請求項3】
前記処理部は、
前記記憶部に記憶された複数の前記地上給電装置の所定期間内の総給電量のデータのうちの、前記一の地上給電装置から給電を受けた前記車両が走行する可能性の高い範囲内に存在する前記地上給電装置の所定期間内の総給電量のデータから、統計的手法を用いて前記判定閾値を設定する、
請求項2に記載のサーバ。
【請求項4】
前記一の地上給電装置から給電を受けた前記車両が走行する可能性の高い範囲内に存在する地上給電装置は、前記一の地上給電装置が設置された走行レーンに沿って連続的に配置されている地上給電装置である、
請求項3に記載のサーバ。
【請求項5】
前記処理部は、
前記一の地上給電装置で盗電又は漏電が発生していると判定したときは、前記通信部を介して前記一の地上給電装置に対して給電の禁止を指示する、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のサーバ。
【請求項6】
前記通信部は、
外部の関係機関とも通信可能に構成され、
前記処理部は、
前記一の地上給電装置で盗電又は漏電が発生していると判定したときは、前記通信部を介して前記関係機関に前記一の地上給電装置で盗電又は漏電が発生していることを通知する、
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁界結合(電磁誘導)、電界結合、磁界共振結合(磁界共鳴)及び電界共振結合(電界共鳴)のような伝送方式を用いて、地面に設けられた地上給電装置から、走行中の車両に電力を非接触で伝送する非接触給電システムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-157686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の非接触給電システムは、地上給電装置からの盗電又は漏電を検出するための手段を有しておらず、そのため、盗電又は漏電を発見することが難しいという問題点があった。
【0005】
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、地上給電装置からの盗電又は漏電を検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様によるサーバは、処理部と、車両に非接触で電力を送電する複数の地上給電装置と通信可能な通信部と、複数の地上給電装置の所定期間内の総給電量に関する情報を少なくとも記憶する記憶部と、を備える。処理部は、複数の地上給電装置のうちの一の地上給電装置から通信部を介して受信した一の地上給電装置の所定期間内の総給電量が、記憶部に記憶された複数の地上給電装置の所定期間内の総給電量のデータに基づいて設定された判定閾値以上であれば、一の地上給電装置で盗電又は漏電が発生していると判定するように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のこの態様によれば、地上給電装置からの盗電又は漏電を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、非接触給電システムの概略構成図である。
図2図2は、地上給電装置及び車両の詳細な構成について説明する図である。
図3図3は、送電コントローラ及び送電コントローラに接続された機器の概略的な構成図である。
図4図4は、車両コントローラ及び車両コントローラに接続された機器の概略的な構成図である。
図5図5は、各地上給電装置における盗電又は漏電を検出するために、各地上給電装置とサーバとの間で実行される処理の内容について説明するフローチャートである。
図6図6は、判定閾値の設定方法の一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0010】
<非接触給電システムの説明>
図1は、本発明の一実施形態による非接触給電システム100の概略構成図である。
【0011】
本実施形態による非接触給電システム100は、サーバ1と、道路に沿って所定間隔で連続的に設置された複数の地上給電装置2と、地上給電装置2から無線送電される電力を受電するための受電装置5(図2参照)が搭載された複数の車両3と、を備え、地上給電装置2から車両3へ磁界共振結合(磁界共鳴)による非接触電力伝送を行う。特に本実施形態では、非接触給電システム1は、車両3が走行しているときに、地上給電装置2から車両3への非接触電力伝送を行う。したがって、地上給電装置2は、車両3が走行しているときに、車両3へ非接触で電力を送電し、車両3は、車両3が走行しているときに、地上給電装置2から非接触で電力を受電する。
【0012】
なお、本明細書において、「走行」という用語は、車両が走行のために道路上に位置する状態を意味する。したがって、「走行」という用語は、車両が実際にゼロよりも大きい任意の速度で走っている状態のみならず、例えば信号待ちなどによって道路上で停止している状態も含む。一方、車両が道路上に位置していても、例えば駐停車されているような場合には、走行には含まれない。また、以下の説明では、送電装置2が設置されている道路のことを、必要に応じて「電化道路」という。
【0013】
サーバ1は、サーバ通信部11と、サーバ記憶部12と、サーバ処理部13と、を備える。
【0014】
サーバ通信部11は、サーバ1を例えばゲートウェイ等を介してネットワーク6と接続するための通信インターフェース回路を有する。サーバ1は、サーバ通信部11を介して地上給電装置2及び車両3と通信すると共に、必要に応じて外部の関係機関(例えば地上給電装置2の保守管理会社や警察などの公的機関)とも通信する。
【0015】
サーバ記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)や光記録媒体、半導体メモリ等の記憶媒体を有し、サーバ処理部13での処理に用いられる各種のコンピュータプログラムやデータ等を記憶する。
【0016】
サーバ処理部13は、一又は複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。サーバ処理部13は、サーバ記憶部12に格納された各種のコンピュータプログラムを実行し、サーバ1の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えばプロセッサである。サーバ処理部13、ひいてはサーバ1で実施される処理については、図5などを参照して後述する。
【0017】
図2は、本実施形態による地上給電装置2及び車両3の詳細な構成について説明する図である。
【0018】
図2に示すように、地上給電装置2は、地上側通信装置71、送電装置4、電源21及び送電コントローラ22を有する。地上側通信装置71、電源21及び送電コントローラ22は、道路内に埋め込まれてもよいし、道路内とは別の場所(地上を含む)に配置されてもよい。
【0019】
地上側通信装置71は、サーバ1及び車両3と通信可能に構成される。本実施形態では地上側通信装置71は、ネットワーク6(図1参照)と不図示のゲートウェイ等を介して接続される無線基地局7(図1参照)にアクセスすることで、無線基地局7を介してネットワーク6と接続される。これにより、地上側通信装置71とサーバ1との間で無線通信が行われ、例えば、車両3に対して非接触給電を行うために必要な各種の情報のやり取りが行われる。
【0020】
また地上側通信装置71は、所定の無線通信回線を利用して各車両3に搭載された車両側通信装置72との間で直接的に無線通信を行い、車両側通信装置72から送信される接近信号を受信する。接近信号は、車両3が地上給電装置2に接近していることを知らせるための信号であって、地上側通信装置71を介して接近信号を受信した地上給電装置2に対して送電の準備を促すための信号である。
【0021】
電源21は、送電装置4に電力を供給する。電源21は、例えば、単層交流電力を供給する商用交流電源である。なお、電源21は、三相交流電力を供給する他の交流電源であってもよいし、燃料電池のような直流電源であってもよい。
【0022】
送電装置4は、電源21から供給された電力を車両3へ送る。送電装置4は、送電側整流回路41、インバータ42及び送電側共振回路43を有する。送電装置4では、電源21から供給される交流電力が送電側整流回路41において整流されて直流電流に変換され、この直流電流がインバータ42において交流電力に変換され、この交流電力が送電側共振回路43に供給される。
【0023】
送電側整流回路41は、電源21及びインバータ42に電気的に接続される。送電側整流回路41は、電源21から供給される交流電力を整流して直流電力に変換し、直流電力をインバータ42に供給する。送電側整流回路41は例えばAC/DCコンバータである。
【0024】
インバータ42は送電側整流回路41及び送電側共振回路43に電気的に接続される。インバータ42は、送電側整流回路41から供給された直流電力を、電源21の交流電力よりも高い周波数の交流電力(高周波電力)に変換し、高周波電力を送電側共振回路43に供給する。
【0025】
送電側共振回路43は、コイル44及びコンデンサ45から構成される共振器を有する。コイル44及びコンデンサ45の各種パラメータ(コイル44の外径及び内径、コイル44の巻数、コンデンサ45の静電容量等)は、送電側共振回路43の共振周波数が所定の設定値になるように定められる。所定の設定値は、例えば10kHz~100GHzであり、好ましくは、非接触電力伝送用の周波数帯域としてSAE TIR J2954規格によって定められた85kHzである。
【0026】
送電側共振回路43は、コイル44の中心が車線の中央に位置するように、車両3が通過する車線の中央に配置される。インバータ42から供給された高周波電力が送電側共振回路43に印加されると、送電側共振回路43は、送電するための交流磁界を発生させる。なお、電源21が直流電源である場合には、送電側整流回路41は省略されてもよい。
【0027】
送電コントローラ22は、例えば汎用コンピュータであり、地上給電装置2の各種制御を行う。例えば、送電コントローラ22は、送電装置4のインバータ42に電気的に接続され、送電装置4による電力送信を制御すべくインバータ42を制御する。また送電コントローラ22は、地上側通信装置71を介してサーバ1及び車両3と通信を行う。なお車両3とは、地上側通信装置71を介して直接的に通信することもできるし、地上側通信装置71からサーバ1を経由して間接的に通信することもできる。
【0028】
図3は、送電コントローラ22及び送電コントローラ22に接続された機器の概略的な構成図である。
【0029】
送電コントローラ22は、通信インターフェース221、記憶部222及び送電処理部223を備える。通信インターフェース221、記憶部222及び送電処理部223は信号線を介して互いに接続されている。
【0030】
通信インターフェース221は、地上給電装置2を構成する各種機器(例えば、インバータ42、地上側通信装置71及び後述する地上側センサ23など)に送電コントローラ22を接続するためのインターフェース回路を有する。送電コントローラ22は、通信インターフェース221を介して地上給電装置2を構成する各種機器と通信する。
【0031】
記憶部222は、HDDや光記録媒体、半導体メモリ等の記憶媒体を有し、送電処理部223での処理に用いられる各種のコンピュータプログラムやデータ等を記憶する。
【0032】
送電処理部223は、一又は複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。送電処理部223は、記憶部222に格納された各種のコンピュータプログラムを実行し、地上給電装置2の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えばプロセッサである。送電処理部223、ひいては送電コントローラ22は、例えば、地上側通信装置71を介して接近信号を受信すると、車両3が通過したときに当該車両3に対して電力を伝送することができるように、地上給電装置2を制御する。
【0033】
また、送電コントローラ22には、地上側センサ23が接続されている。地上側センサ23は、例えば、送電装置4の各種機器(特に、送電側共振回路43、インバータ42及び送電側整流回路41)に流れる電流を検出する送電装置電流センサ、送電装置4の各種機器に加わる電圧を検出する送電装置電圧センサ、送電装置4の各種機器の温度を検出する送電装置温度センサ、送電装置4が埋め込まれた道路上の異物を検出する異物センサ、及び送電装置4が埋め込まれた道路上の生体を検出する生体センサを含む。地上側センサ23の出力は、送電コントローラ22に入力される。
【0034】
図2に戻り、車両3は、車両側通信装置72、受電装置5、モータ31、バッテリ32、パワーコントロールユニット(PCU)33及び車両コントローラ34を有する。本実施形態による車両3は、バッテリ32のみを動力源とする電動車両(BEV;Battery Electric Vehicle)であるが、バッテリ32以外にも内燃機関等の動力源を備えるいわゆるハイブリッド車両(HEV;Hybrid Electric Vehicle、又はPHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)であってもよく、特にその種類が限られるものではない。
【0035】
車両側通信装置72は、サーバ1及び地上給電装置2と通信可能に構成される。本実施形態では車両通信装置は、ネットワーク6(図1参照)と不図示のゲートウェイ等を介して接続される無線基地局7(図1参照)にアクセスすることで、無線基地局7を介してネットワーク6と接続される。これにより、車両側通信装置72とサーバ1との間で無線通信が行われ、例えば、地上給電装置2から非接触給電を受けるために必要な各種の情報のやり取りが行われる。この際、サーバ1を介して車両3と地上給電装置2との間で情報のやり取りが行われる。
【0036】
また車両側通信装置72は、所定の無線通信回線を利用して各地上給電装置2の地上側通信装置71との間で直接的に通信を行い、各地上給電装置2に前述した接近信号を送信する。
【0037】
モータ31は、例えば交流同期モータであり、電動機及び発電機として機能する。モータ31は、電動機として機能するとき、バッテリ32に蓄えられた電力を動力源として駆動される。モータ31の出力は減速機及び車軸を介して車輪30に伝達される。一方、車両3の減速時には車輪30の回転によってモータ31が駆動され、モータ31は発電機として機能して回生電力を発電する。
【0038】
バッテリ32は、充電可能な二次電池であり、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等から構成される。バッテリ32は車両3の走行に必要な電力(例えばモータ31の駆動電力)を蓄える。送電装置4から受電装置5が受電した電力が供給されると、バッテリ32が充電される。また、モータ31によって発電された回生電力がバッテリ32に供給されると、バッテリ32が充電される。バッテリ32が充電されると、バッテリ32の充電率(SOC:State Of Charge)が回復する。なお、バッテリ32は、車両3に設けられた充電ポートを介して地上給電装置2以外の外部電源によっても充電可能であってもよい。
【0039】
PCU33はバッテリ32及びモータ31に電気的に接続される。PCU33は、インバータ、昇圧コンバータ及びDC/DCコンバータを有する。インバータは、バッテリ32から供給された直流電力を交流電力に変換し、交流電力をモータ31に供給する。一方、インバータは、モータ31によって発電された交流電力(回生電力)を直流電力に変換し、直流電力をバッテリ32に供給する。昇圧コンバータは、バッテリ32に蓄えられた電力がモータ31に供給されるときに、必要に応じてバッテリ32の電圧を昇圧する。DC/DCコンバータは、バッテリ32に蓄えられた電力がヘッドライト等の電子機器に供給されるときに、バッテリ32の電圧を降圧する。
【0040】
受電装置5は、送電装置4から受電し、受電した電力をバッテリ32に供給する。受電装置5は、受電側共振回路51、受電側整流回路54及び充電回路55を有する。
【0041】
受電側共振回路51は、路面との距離が小さくなるように車両3の底部に配置される。受電側共振回路51は、送電側共振回路43と同様の構成を有し、コイル52及びコンデンサ53から構成される共振器を有する。コイル52及びコンデンサ53の各種パラメータ(コイル52の外径及び内径、コイル52の巻数、コンデンサ53の静電容量等)は、受電側共振回路51の共振周波数が送電側共振回路43の共振周波数と一致するように定められる。なお、受電側共振回路51の共振周波数と送電側共振回路43の共振周波数とのずれ量が小さければ、例えば受電側共振回路51の共振周波数が送電側共振回路43の共振周波数の±20%の範囲内であれば、受電側共振回路51の共振周波数は送電側共振回路43の共振周波数と必ずしも一致している必要はない。
【0042】
受電側共振回路51が送電側共振回路43と対向しているときに、送電側共振回路43によって交流磁界が生成されると、交流磁界の振動が、送電側共振回路43と同一の共振周波数で共鳴する受電側共振回路51に伝達される。この結果、電磁誘導によって受電側共振回路51に誘導電流が流れ、誘導電流によって受電側共振回路51において誘導起電力が発生する。すなわち、送電側共振回路43は受電側共振回路51へ送電し、受電側共振回路51は送電側共振回路43から受電する。
【0043】
受電側整流回路54は、受電側共振回路51及び充電回路55に電気的に接続される。受電側整流回路54は、受電側共振回路51から供給される交流電力を整流して直流電力に変換し、直流電力を充電回路55に供給する。受電側整流回路54は例えばAC/DCコンバータである。
【0044】
充電回路55は受電側整流回路54及びバッテリ32に電気的に接続される。特に、バッテリ32へは、リレー38を介して接続される。充電回路55は、受電側整流回路54から供給された直流電力をバッテリ32の電圧レベルに変換してバッテリ32に供給する。送電装置4から送電された電力が受電装置5によってバッテリ32に供給されると、バッテリ32が充電される。充電回路55は例えばDC/DCコンバータである。
【0045】
車両コントローラ34は、車両3の各種制御を行う。例えば、車両コントローラ34は、受電装置5の充電回路55に電気的に接続され、送電装置4から送信された電力によるバッテリ32の充電を制御すべく充電回路55を制御する。また、車両コントローラ34は、PCU33に電気的に接続され、バッテリ32とモータ31との間の電力の授受を制御すべくPCU33を制御する。さらに、車両コントローラ34は、車両側通信装置72を制御する。
【0046】
図4は、車両コントローラ34及び車両コントローラ34に接続された機器の概略的な構成図である。
【0047】
車両コントローラ34は、通信インターフェース341、記憶部342及び車両処理部343を有する。通信インターフェース341、記憶部342及び車両処理部343は、信号線を介して互いに接続されている。
【0048】
通信インターフェース341は、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内ネットワークに車両コントローラ34を接続するためのインターフェース回路を有する。車両コントローラ34は、通信インターフェース341を介して他の機器と通信する。
【0049】
記憶部342は、HDDや光記録媒体、半導体メモリ等の記憶媒体を有し、車両処理部343での処理に用いられる各種のコンピュータプログラムやデータ等を記憶する。
【0050】
車両処理部343は、一又は複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。車両処理部343は、記憶部342に格納された各種のコンピュータプログラムを実行し、車両3の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えばプロセッサである。車両処理部343、ひいては車両コントローラ34は、例えば、車両3が電化道路に近づいたことを検知すると、車両側通信装置72を介して接近信号の送信を開始し、車両3が電化道路を走行しているときに地上給電装置2から電力を受けることができるように、受電装置5などを制御する。
【0051】
また、車両3は、GNSS受信機35、ストレージ装置36、複数の車両側センサ37、及びリレー38を更に備える。GNSS受信機35、ストレージ装置36、車両側センサ37、及びリレー38は車内ネットワークを介して車両コントローラ34に電気的に接続される。
【0052】
GNSS受信機35は、複数(例えば3つ以上)の測位衛星から得られる測位情報に基づいて、車両3の現在位置(例えば車両3の緯度及び経度)を検出する。GNSS受信機35の出力、すなわちGNSS受信機35によって検出された車両3の現在位置は車両コントローラ34に送信される。
【0053】
ストレージ装置36は、データを記憶する。ストレージ装置36は、例えば、HDD、SSD(Solid State Drive)又は光記録媒体を備える。本実施形態では、ストレージ装置36は、地図情報を記憶する。地図情報には、道路に関する情報に加えて、地上給電装置2の設置位置情報等の情報が含まれる。車両コントローラ34はストレージ装置36から地図情報を取得する。なお、ストレージ装置36には地図情報が含まれていなくてもよく、この場合、車両コントローラ34は車両側通信装置72を介して車両3の外部(例えば、サーバ1)から地図情報を取得してもよい。
【0054】
車両側センサ37は、車両3の状態を検出する。本実施形態では、車両側センサ37は、車両3の状態を検出するセンサとして、車両3の速度を検出する速度センサ、バッテリ32の温度を検出するバッテリ温度センサ、受電装置5の各種機器(特に、受電側共振回路51及び受電側整流回路54)の温度を検出する受電装置温度センサ、バッテリ32の充電電流値及び放電電流値を検出するバッテリ電流センサ、受電装置5の各種機器に流れる電流を検出する受電装置電流センサ、及び受電装置5の各種機器に加わる電圧を検出する受電装置電圧センサを含む。車両側センサ37の出力は、車両コントローラ34に入力される。
【0055】
リレー38は、バッテリ32と受電装置5との間に配置されて、バッテリ32と受電装置5とを接続・遮断する。リレー38が接続されているときには受電装置5が受電した電力がバッテリ32に供給される。しかしながら、リレー38が遮断されているときには受電装置5からバッテリ32へ電流が流れず、よって受電装置5は実質的に受電することができなくなる。
【0056】
<盗電・漏電対策>
ところで、盗電(電気窃盗)を目的として、人目につきにくい深夜帯に地上給電装置2の上に受電装置5が設置されたり、又は人目につきにくい場所に埋設されている地上給電装置2の上に受電装置5が設置されたりすることがある。また、例えば地上給電装置2のコイル44の被覆が損傷するなどして、地上給電装置2から漏電が発生することがある。地上給電装置2において盗電又は漏電が発生している場合には、それを早期に検出できるようにすることが望ましいが、盗電又は漏電の早期検出のために作業員による地上給電装置2の保守点検作業の頻度を増やすことは、現実的ではない。なお盗電は、車両3以外へ給電を行うことも含まれる。
【0057】
ここで、盗電が行われている地上給電装置2の給電量は、盗電が行われていない周りの地上給電装置2の給電量よりも盗電分だけ多くなると考えられる。同様に、漏電が発生している地上給電装置2の給電量は、漏電が発生していない周りの地上給電装置2の給電量よりも漏電分だけ多くなると考えられる。そこで本実施形態では、各地上給電装置2の所定期間内の総給電量に基づいて、各地上給電装置2における盗電又は漏電の発生を検出することとした。
【0058】
図5は、各地上給電装置2における盗電又は漏電の発生を検出するために、各地上給電装置2とサーバとの間で実行される本実施形態による処理の内容について説明するフローチャートである。
【0059】
ステップS1において、地上給電装置2の送電コントローラ22は、給電情報の送信タイミングであるか否かを判定する。給電情報は、地上給電装置2毎に設定されているID情報と、地上給電装置2の所定期間内の総給電量に関する情報(以下「総給電量情報」という。)と、地上給電装置2の設置位置に関する情報(以下「設置位置情報」という。)と、を含む情報である。地上給電装置2の送電コントローラ22は、給電情報を前回送信したタイミングから所定期間が経過していれば、給電情報の送信タイミングであると判定してステップS2の処置に進む。一方で地上給電装置2の送電コントローラ22は、給電情報を前回送信したタイミングから所定期間が経過していなければ、今回の処理を終了する。
【0060】
ステップS2において、地上給電装置2の送電コントローラ22は、給電情報をサーバ1に送信する。
【0061】
ステップS3において、サーバ1は、受信した給電情報を、サーバ記憶部12内の給電情報データベースに格納する。このようにしてサーバ1には、各地上給電装置2の給電情報が集約されて、集約された各地上給電装置2の給電情報が給電情報データベースに格納される。
【0062】
ステップS4において、サーバ1は、給電情報データベースを参照し、ステップS3で受信した給電情報の中の設置位置情報に基づいて、その給電情報を送信した地上給電装置2(すなわち、ステップS2で給電情報を送信した地上給電装置2。以下、必要に応じて「送信元地上給電装置2」という。)の近辺に設置されている地上給電装置2を特定する。
【0063】
例えばサーバ1は、簡便には、送信元地上給電装置2を中心とする所定範囲内に存在する地上給電装置2を、送信元地上給電装置2の近辺に設置されている地上給電装置2として特定することができる。しかしながら、後述するように、送信元地上給電装置2が設置された走行レーンに沿って連続的に配置されている地上給電装置2など、送信元地上給電装置2から給電を受けた車両が走行する可能性の高い範囲内に存在する地上給電装置2を、送信元地上給電装置2の近辺に設置されている地上給電装置2として特定することが好ましい。
【0064】
ステップS5において、サーバ1は、給電情報データベースから、ステップS4で特定した各地上給電装置2の所定期間内の総給電量のデータ、すなわち、送信元地上給電装置2の近辺に設置されている各地上給電装置2の総給電量のデータを取得し、取得した各地上給電装置2の総給電量のデータに基づいて、送信元地上給電装置2で盗電又は漏電が発生しているかを判定するための判定閾値を設定する。
【0065】
判定閾値は、送信元地上給電装置2の近辺に設置されている各地上給電装置2の総給電量のデータに基づいて、公知の種々の統計的な手法を用いて設定することができる。例えば当該データは、基本的に正規分布に従うと考えられるので、当該データの平均値をμ、標準偏差をσとすると、簡便には、例えば図6に示すように、平均μから2σだけ大きい値T1や3σだけ大きい値T2など、平均μから一定程度離れた値を判定閾値として設定することができる。
【0066】
このように本実施形態では、送信元地上給電装置2の近辺に設置されている各地上給電装置2の総給電量のデータに基づいて、統計的な手法を用いて判定閾値を設定している。ここで、各地上給電装置2の車両3に対する給電量は、車両3が同一であれば基本的に同一となる可能性が高く、したがって、例えばそのうちの一の地上給電装置2において盗電又は漏電が発生していた場合には、その一の地上給電装置2の給電量だけが周りの他の地上給電装置2の給電量よりも多くなる。
【0067】
そのため、前述したように、送信元地上給電装置2から給電を受けた車両3が走行する可能性の高い範囲内に存在する地上給電装置2を、送信元地上給電装置2の近辺に設置されている地上給電装置2として特定することで、同一の車両3に対して給電を行った可能性の高い各地上給電装置2の所定期間内の総給電量のデータに基づいて、統計的手法を用いて判定閾値を設定することができる。したがって、判定閾値の確度を高めることができ、盗電又は漏電が発生しているか否かの判定精度を高めることができる。
【0068】
ステップS6において、サーバ1は、ステップS3で受信した給電情報の中の総給電量情報に基づいて、送信元地上給電装置2の所定期間内の総給電量が判定閾値以上であるか否かを判定する。サーバ1は、送信元地上給電装置2の所定期間内の総給電量が判定閾値以上であれば、送信元地上給電装置2で盗電又は漏電が発生している疑いがあると判定し、ステップS7の処理に進む。一方でサーバ1は、送信元地上給電装置2の所定期間内の総給電量が判定閾値以上であれば、送信元地上給電装置2で盗電又は漏電が発生している疑いはないと判定し、今回の処理を終了する。
【0069】
ステップS7において、サーバ1は、送信元地上給電装置2に対して、給電禁止信号を送信する。なお、このときに、外部の関係機関(例えば地上給電装置22の保守管理会社や警察などの公的機関)に対して、送信元地上給電装置2の位置情報と共に当該送信元地上給電装置2で盗電又は漏電が発生していることを通知してもよい。
【0070】
ステップS8において、地上給電装置2の送電コントローラ22は、給電禁止信号を受信すると、例えば、電源21から送電装置4への電力供給を完全にカットするなどして、車両3に対する給電を禁止する。
【0071】
<作用効果>
以上説明した本実施形態によるサーバ1は、サーバ処理部13と、車両3に非接触で電力を送電する複数の地上給電装置2と通信可能なサーバ通信部11と、複数の地上給電装置2の所定期間内の総給電量に関する情報を少なくとも記憶するサーバ記憶部12と、を備える。そしてサーバ処理部13は、複数の地上給電装置2のうちの一の地上給電装置2からサーバ通信部11を介して受信した前記一の地上給電装置2の所定期間内の総給電量が、サーバ記憶部12に記憶された複数の地上給電装置2の所定期間内の総給電量のデータに基づいて設定された判定閾値以上であれば、前記一の地上給電装置2で盗電又は漏電が発生していると判定するように構成されている。
【0072】
これにより、サーバ1において各地上給電装置2における盗電又は漏電の発生を定期的(所定期間毎)に検出することができるので、盗電又は漏電の発生が疑われる地上給電装置2を早期に検出することができる。
【0073】
特に本実施形態では、サーバ処理部13は、サーバ記憶部12に記憶された複数の地上給電装置2の所定期間内の総給電量のデータから、統計的手法を用いて判定閾値を設定するように構成されている。
【0074】
より具体的には、サーバ処理部13は、サーバ記憶部12に記憶された複数の地上給電装置2の所定期間内の総給電量のデータのうちの、前記一の地上給電装置2から給電を受けた車両3が走行する可能性の高い範囲内に存在する地上給電装置2の所定期間内の総給電量のデータから、統計的手法を用いて判定閾値を設定するように構成されている。前記一の地上給電装置2から給電を受けた車両3が走行する可能性の高い範囲内に存在する地上給電装置2の例としては、例えば、前記一の地上給電装置2が設置された走行レーンに沿って連続的に配置されている地上給電装置2が挙げられる。
【0075】
各地上給電装置2の車両3に対する給電量は、車両3が同一であれば基本的に同一となる可能性が高く、したがって、例えばそのうちの一の地上給電装置2において盗電又は漏電が発生していた場合には、その一の地上給電装置2の給電量だけが周りの他の地上給電装置2の給電量よりも多くなる。そのため、同一の車両3に対して給電を行った可能性の高い各地上給電装置2の所定期間内の総給電量のデータに基づいて、統計的手法を用いて判定閾値を設定することで、その判定閾値の確度を高めることができ、盗電又は漏電が発生しているか否かの判定精度を高めることができる。
【0076】
また本実施形態では、サーバ処理部13は、前記一の地上給電装置2で盗電又は漏電が発生していると判定したときは、サーバ通信部11を介して前記一の地上給電装置2に対して給電の禁止を指示するように構成されている。これにより、禁止指示以降の盗電又は漏電を防ぐことができる。
【0077】
またサーバ通信部11は、外部の関係機関とも通信可能に構成されており、サーバ処理部13は、前記一の地上給電装置2で盗電又は漏電が発生していると判定したときは、サーバ通信部11を介して外部の関係機関に前記一の地上給電装置2で盗電又は漏電が発生していることを通知するように構成されている。これにより、盗電又は漏電が発生している場合に、適切な事後対応を行うことができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0079】
1 サーバ
2 地上給電装置
3 車両
11 サーバ通信部(通信部)
12 サーバ記憶部(記憶部)
13 サーバ処理部(処理部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6