(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】診断支援装置、診断支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20240723BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
A61B10/00 Q
A61B5/00 M
(21)【出願番号】P 2021121966
(22)【出願日】2021-07-26
(62)【分割の表示】P 2020565679の分割
【原出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2019002461
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】青木 信裕
(72)【発明者】
【氏名】北條 芳治
(72)【発明者】
【氏名】峯尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】武井 淳一
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-206959(JP,A)
【文献】特開2003-006335(JP,A)
【文献】特開2008-040906(JP,A)
【文献】国際公開第2015/012028(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診察中の音声を収音する収音部と、
診察対象の患部の画像データが分析されることによる前記患部が悪性であるか否かの判断結果に基づいて、前記収音部によって収音された音声を保存すべきかを判断する処理部と、
を備える診断支援装置。
【請求項2】
前記処理部は、
録音条件が成立したか否かを判定し、
前記録音条件が成立したと判定され、かつ、前記患部が悪性であると判断されたことを条件として、前記収音部により収音された音声を保存するように制御する、
請求項1に記載の診断支援装置。
【請求項3】
前記処理部は、
前記録音条件が成立しているときに、録音された音声を、前記患部が悪性でないと判定された場合に破棄する、
請求項2に記載の診断支援装置。
【請求項4】
前記患部に光を照射する光源をさらに備え、
前記録音条件には、前記光源が点灯されているという条件が含まれる、
請求項2又は3に記載の診断支援装置。
【請求項5】
前記処理部は、
前記患部が悪性であると判定した場合に、前記患部の悪性の種類をさらに判定し、
判定された前記患部の悪性の種類を表すラベルを、前記音声に関係づけて保存する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の診断支援装置。
【請求項6】
コンピュータが行う診断支援方法であって、
診察中の音声を収音し、
診察対象の患部の画像データが分析されることによる前記患部が悪性であるか否かの判断結果に基づいて、収音された音声を保存すべきかを判断する、
診断支援方法。
【請求項7】
コンピュータを、
診察対象の患部の画像データが分析されることによる前記患部が悪性であるか否かの判断結果に基づいて、診察中に収音された音声を保存すべきかを判断する手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断支援装置、診断支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メラノーマ(悪性黒色腫)等の観察にあたっては、全切除生検ではなく部分生検を行った場合、腫瘍の播種を招くおそれがあることから、患者の利益につながらないとの見解が知られている。したがって、その観察は熟練した医師の目視に頼っている。
【0003】
部分生検によらず非侵襲で疾患を観察するために、ダーモスコープの一種として、デジタルカメラで所定の大きさの皮膚の色素沈着等を拡大撮影する装置及び観察方法が知られている。この装置は、デジタルカメラにダーモスコープモジュールを取り付けて皮膚表面と、真皮まで達してから反射されるそれぞれの反射光を観察することにより、皮膚表面から真皮付近に至る皮膚組織の色素沈着状態を検索することを可能とする。このようなデジタルダーモスコープとしては、偏光フィルタを使用することにより、皮膚表面及び真皮内部から反射した光をそれぞれ観察できる観察システムも提案されている。この従来のダーモスコープでは、表皮を通過して真皮層まで達した後に反射される、いわゆる拡散反射を検出するために、高強度の光線を使用する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のダーモスコープは、その場その時点で患者の疾患を観察するものであることから、診察後になって診察の過程を再確認できないという課題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、診察終了後に診察の過程を確認することができる診断支援装置、診断支援方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の診断支援装置は、
診察中の音声を収音する収音部と、
診察対象の患部の画像データが分析されることによる前記患部が悪性であるか否かの判断結果に基づいて、前記収音部によって収音された音声を保存すべきかを判断する処理部と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、診察終了後に診察の過程を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る診断支援装置の背面斜視図である。
【
図2】実施形態1に係る診断支援装置の正面斜視図である。
【
図3】実施形態1に係る診断支援装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態1に係る音声保存処理のフローチャートである。
【
図5】実施形態2に係る音声保存処理のフローチャートである。
【
図6】実施形態3に係る音声保存処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る診断支援装置等について、図表を参照して説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付す。
【0011】
(実施形態1)
実施形態1に係る診断支援装置は、ダーモスコープを含み、患者の疾患を観察し、例えば、色素細胞母斑、悪性黒色腫(メラノーマ)、脂漏性角化症、基底細胞癌、血管病変及びボーエン病などの検査、観察及び/又は治療に用いることができる。このダーモスコープは、光源により皮膚の標的部に光を照射するとともに、皮膚内部を覆う皮膚表面からの反射光を低減し、かつ、標的部を拡大して観察することで、非侵襲的で皮膚内部の炎症、色、色素沈着、毛嚢及び血管などを視覚化できるものである。診断支援装置のユーザ(医師等)は、患部の診察の際に本診断支援装置を用いて患部を観察することにより、診察終了後も、診察の過程を確認することが可能になり、診断を下す際の参考にすることができる。
【0012】
本明細書では、「マイクロスコープ(microscope):顕微鏡」及び「マイクロスコピー(microscopy):顕微鏡による検査又は顕微鏡使用(法)」の使い分けに準じ、「ダーモスコープ(dermoscope)」及び「ダーモスコピー(dermoscopy)」の用語を、皮膚検査用の拡大鏡(装置)及び同拡大鏡を用いた皮膚検査又は同拡大鏡使用(行為)という意味で用いている。
【0013】
実施形態1に係る診断支援装置1は、
図1及び
図2に示すように、上部に観察レンズ154を備える。観察レンズ154は診断支援装置1の正面からも背面からも確認できるが、背面側により近い部分(正面から見ると奥まった部分)に配置されている。また、診断支援装置1は、
図1に示すように、背面にマイクロフォン401、表示パネル171、を備え、背面に向かって左側面にライト種切替ボタン181を備える。また、
図2に示すように、診断支援装置1は、正面に病変撮影用レンズ200及び撮像素子113、光源151、を備え、正面に向かって左側面に電源ボタン182を備える。なお、ライト種切替ボタン181は、後述するように、光源151のライトの種類や明るさを切り替えるボタンである。また、電源ボタン182は、診断支援装置1の電源をON/OFFするボタンである。
図1及び
図2に示すように、ライト種切替ボタン181及び電源ボタン182は、観察レンズ154と持ち手の部分の間の側面に設けられている。このため、診断支援装置1のユーザは、持ち手の親指などでこれらのボタンを操作できる。なお、本明細書において、診断支援装置1の正面とは、光源151が設けられた表面をいい、診断支援装置1の背面とは、ユーザが患部を観察する場合のユーザ側の表面をいうものとする。
図1に示すように、表示パネル171は診断支援装置1の持ち手側の部分にあり、マイクロフォン401は、観察レンズ154と表示パネル171の間に設けられている。このため、マイクロフォン401については、ユーザが診断支援装置1を持つ際の手が収音の妨げにならず、周囲の音を収音しやすくなっている。
【0014】
図1及び
図2に示すように、診断支援装置1のユーザ(医師等)は、診断支援装置1の正面の方向に存在する患部を、診断支援装置1の背面の方から観察レンズ154を通して、直接目で観察することができる。その際、診断支援装置1の正面に設けられた光源151のライトの種類や明るさを、ライト種切替ボタン181で切り替えることができる。また、診断支援装置1は、病変撮影用レンズ200及び撮像素子113により、患部(病変画像)を撮影して画像データを取得することができる。
【0015】
図2に示すように、撮像素子113は、観察レンズ154が取り付けられている部分の外周部に、光源151とともに備えられている。そして、診断支援装置1における撮像素子113よりも前側(表面側)の部分に、病変撮影用レンズ200が設けられている。診断支援装置1は、診断支援装置1の正面の方向からの光の像(患部の反射像)を、病変撮影用レンズ200で拡大したダーモスコピー画像として、撮像素子113で撮影することにより、ダーモスコピー撮影が可能になる。なお、後述する撮像光学系111が病変撮影用レンズ200を兼ねる場合は、病変撮影用レンズは設けられなくてもよい。
【0016】
病変撮影用レンズ200は、患部を拡大する拡大レンズとして機能する。例えば、その拡大率は5倍から30倍である。病変撮影用レンズ200は、1つの両面凸レンズであってもよいし、2つ又は複数の凸レンズを組み合わせたレンズ、1つのアクロマートレンズ、2つ又は複数のアクロマートレンズを組み合わせたレンズのいずれかであってもよい。また、病変撮影用レンズ200は、無収差レンズであってもよい。さらにまた、病変撮影用レンズ200は、良好な光学性と歪みを低減するために、球面レンズに非球面レンズを組み込んだものでもよい。病変撮影用レンズ200には、さらに反射防止膜やカラーフィルタが含まれてもよい。
【0017】
また、
図3に示すように、診断支援装置1は、撮像部110と、撮像制御部120と、画像データ生成部125と、記憶部140と、画像変換部160と、表示部170と、操作入力部180と、中央制御部190と、録音部400と、マイクロフォン401と、時計部500を備える。これらはそれぞれバスライン102を介して共通に接続され、診断支援装置1の筺体内に配されている。
【0018】
なお、
図3中、破線領域Aは、病変を撮影する機能に絞った診断支援装置1の構成を示している。また、診断支援装置1が、外部機器(コンピュータ)との間で情報を送受信する通信部を更に備えることにより、記憶部140、表示部170及び操作入力部180のうちの一部又は全部を外部機器に移管(外部機器側に設ける構成に)してもよい。この場合は、後述するように、外部機器と診断支援装置1とで、観察システムが構成される。なお、観察システムを構成するにあたっては、中央制御部190の一部又は全部についても外部機器に移管するなど、外部機器に移管する構成は適宜拡張されてもよい。
【0019】
撮像部110は、撮像光学系111と、撮像光学系駆動部112と、撮像素子113とを備え、患部の撮影を行う。撮像光学系駆動部112は、モータ等のアクチュエータで構成され、撮像光学系111の絞り及びレンズを駆動する。撮像素子113は、撮像光学系111によって投影された患部の反射像を光電変換により電気信号に変換して、画像信号として出力する。
【0020】
撮像光学系111は、ズームレンズ、フォーカスレンズ及び絞りの少なくとも1つを含む。撮像光学系111が、例えば30倍の拡大が可能なズームレンズを備える等、病変撮影用レンズ200の機能を兼ね備える場合は、上述したように診断支援装置1には、病変撮影用レンズ200が設けられなくてもよい。しかし、通常は、撮像光学系111とは別に、患部を拡大するための病変撮影用レンズ200が設けられるのが望ましい。病変撮影用レンズ200が設けられることにより、撮像光学系111のレンズの拡大率をあまり上げずに済むようになるため、歪みの少ない良好な光学性能を確保することができるからである。撮像光学系111は、
図3に示す撮像制御部120からの制御信号に基づいて、撮像光学系駆動部112によって絞りとレンズが駆動され、適切な明るさに設定された患部の反射像を、撮像素子113上に結像させる。撮像素子113は、撮像光学系111により結像された患部の反射像を、光電変換により電気信号に変換し、画像データ生成部125に出力する。撮像素子113は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。
【0021】
撮像制御部120は、撮像素子113の駆動を制御して、撮像部110による患部の撮影を制御する機能を有する。すなわち、撮像制御部120は、図示は省略するが、タイミング発生器、ドライバなどを備え、タイミング発生器、ドライバにより撮像素子113を駆動して、撮像光学系111により結像された患部の反射像を、撮像素子113により、所定周期ごとに光電変換で電気信号(二次元の画像データを生成するための撮像信号)に変換し、撮像素子113から画像データ生成部125に撮像信号を出力させる。なお、撮像信号は、少なくとも輝度信号を有し、通常は輝度信号及び色差信号を含む。
【0022】
また、撮像制御部120は、更に、撮像部110に対して露出条件を変えながら略等しい構図で複数回撮影するよう制御したり、AF(Auto Focus:自動合焦処理)、AE(Auto Exposure:自動露出処理)、AWB(Auto White Balance:自動ホワイトバランス)等の被写体を撮影する際の条件の調整制御を行ったりする機能を有するものであってもよい。
【0023】
画像データ生成部125は、撮像素子113から転送されたアナログ信号である撮像信号からデジタル信号であるダーモスコピー画像データDd及びダーモスコピー変換画像データDt1,Dt2の少なくとも1つを含む画像データを生成する機能を有する。例えば、画像データ生成部125は、アナログ値の撮像信号に対してRGBの色成分ごとに適宜ゲイン調整した後に、サンプルホールド回路(図示略)でサンプルホールドしてA/D(Analog/Digital)変換器(図示略)でデジタルデータに変換し、カラープロセス回路(図示略)で画素補間処理及びγ補正処理を含むカラープロセス処理を行った後、画素毎にデジタル値のR値(当該画素の赤成分の大きさを示す値)、G値(当該画素の緑成分の大きさを示す値)及びB値(当該画素の青成分の大きさを示す値)を含む画像データを生成する。この画像データは、図示しないDMA(Direct Memory Access)コントローラなどを介して、記憶部140に転送される。
【0024】
記憶部140は、画像変換部160や中央制御部190等によって処理されるダーモスコピー画像データDd及びダーモスコピー変換画像データDt1,Dt2の少なくとも1つを含む画像データを格納(記憶)し、中央制御部190の制御によって、画像変換部160や表示部170に該画像データを出力する機能を有するものである。記憶部140は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等により構成される。記憶部140は、診断支援装置1の内部の回路基板に固定されて設けられるものでもよいし、後述する記憶媒体制御部によって制御される着脱可能な記憶媒体であってもよいし、又は、これらの組合せであってもよい。なお、ROMには中央制御部190のCPU(Central Processing Unit)が実行するプログラム及びプログラムを実行する上で予め必要なデータが記憶されている。RAMには、プログラム実行中に作成されたり変更されたりするデータが記憶される。また、診断支援装置1の電源OFFの後も保存しておきたいデータに関しては、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリに保存される。
【0025】
例えば、
図3に示すように、記憶部140には、第1の記憶部141と第2の記憶部142と第3の記憶部143と、を含む複数の記憶部が割り付けられてもよい。この例では、例えば、第1の記憶部141には、病変撮影用レンズ200を介して撮影されたダーモスコピー画像データDdが記憶され、第2の記憶部142には、画像変換部160により得られるハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理を行うことで、患部を明瞭化かつ顕在化することができるダーモスコピー変換画像データDt1が記憶され、第3の記憶部143には、画像変換部160により他の画像変換処理を行うことで得られるダーモスコピー変換画像データDt2が記憶される。なお、画像変換部160が画像変換を行うタイミングは任意であり、画像変換部160は、撮影直後のダーモスコピー画像データDdだけでなく、過去に撮影され記憶部140に記憶されたダーモスコピー画像データDdを用いて画像変換(例えば、ハイダイナミックレンジ(HDR)変換処理)を行うことも可能である。
【0026】
記憶媒体制御部は、診断支援装置1に着脱可能に装着された記憶媒体からのデータの読み出しや記憶媒体に対するデータの書き込みを制御する機能を有する。すなわち、記憶媒体制御部は、ダーモスコピー画像データDd及びダーモスコピー変換画像データDt1,Dt2の少なくとも1つを含む画像データを、所定の符号化方式(例えば、JPEG形式、モーションJPEG形式、MPEG形式など)にしたがって符号化したり、上記画像データを記憶媒体から読み出して画像変換部160に転送したりするものである。なお、例えば、上記着脱可能な記憶媒体としては、不揮発性メモリ(フラッシュメモリ)等が例示されるが、一例であってこれに限られるものではなく、適宜変更可能である。
【0027】
画像変換部160は、ダーモスコピー画像データDdを画像変換してダーモスコピー変換画像データDt1、Dt2を生成する機能を有する。ここで、ダーモスコピー変換画像データDt1とDt2とは、それぞれ異なる画像変換方法によって作成されたダーモスコピー変換画像データである。この画像変換方法には、種々の方法が存在するが、例えば、ダーモスコピー画像データDdに係る複数の画像データを合成して、ダイナミックレンジを広くするハイダイナミックレンジ(HDR)合成を行うことによる画像変換方法により、ダーモスコピー変換画像データDt1が生成されてもよい。また、後述する光源151に例えばピーク波長の異なる複数種の光源を用いて、その点灯及び消灯を切り替えて撮影された複数のダーモスコピー画像データDdを合成して、患部における症状を見やすくする画像変換方法により、ダーモスコピー変換画像データDt2が生成されてもよい。なお、ここでは、ダーモスコピー変換画像データとして、2種類のダーモスコピー変換画像データDt1、Dt2を生成するものとして説明したが、画像変換部160は、1種類のダーモスコピー変換画像データDt1のみを生成してもよい。また画像変換部160は、3種類以上の画像変更方法を用いて、3種類以上のダーモスコピー変換画像データDt1、Dt2、Dt3、…を生成してもよい。
【0028】
表示部170は、例えば、対象データ、記憶部140に格納されているダーモスコピー画像データDd及びダーモスコピー変換画像データDt1,Dt2の少なくともいずれか一つに基づいて、文字や画像を視覚的に表示するものである。表示部170は、表示パネル171と、表示制御部172とを備える。
【0029】
表示パネル171は、液晶表示パネルや有機EL(Electro-Luminescence)表示パネルなどであり、記憶部140に格納されている画像データ等を表示する。表示制御部172は、記憶部140に格納されている表示用の各画像データを読み出して、表示パネル171に表示させる制御を行う。具体的には、表示制御部172は、VRAM(Video Random Access Memory)、VRAMコントローラ、デジタルビデオエンコーダなどを備えていてもよい。そして、デジタルビデオエンコーダは、画像変換部160により復号されてVRAMに記憶されている画像データを、VRAMコントローラを介してVRAMから所定の再生フレームレートで読み出して、これらのデータを元にビデオ信号を発生して表示パネル171に出力する。
【0030】
なお、
図1では、診断支援装置1の背面側に表示パネル171が設けられているが、表示パネル171は、診断支援装置1の正面側に設けられてもよい。また、表示パネル171は、タッチパッド等を重ね合わせて設けることにより、タッチパネルとして機能してもよい。この場合、表示パネル171に操作画面を表示することにより、このタッチパネルは、操作入力部180を兼ねることになる。また、表示制御部172は、例えば、1つの画像を表示するように表示パネル171を制御してもよいし、複数の画像を並置して表示するように表示パネル171を制御してもよい。
【0031】
操作入力部180は、ユーザからの指示などを受け付けて、中央制御部190に出力する入力インタフェースであり、タッチパネル、スイッチ、ボタンなどを備える。例えば、
図1に示すライト種切替ボタン181及び
図2に示す電源ボタン182は、操作入力部180に含まれる。また、上述したように、表示パネル171をタッチパネルとして機能させた場合は、表示パネル171(タッチパネル)は、操作入力部180に含まれる。また操作入力部180は、上述のライト種切替ボタン181、電源ボタン182、タッチパネル等とは別に設けられた操作ボタン、スイッチ等を含んでもよい。
【0032】
操作入力部180は、例えば、対象識別記号を含む対象データを診断支援装置1に入力する。ここで、対象識別記号とは、カルテ番号などであるが、患者や被験者などの対象を識別できる記号であれば形式は問わない。対象識別記号としては、カルテ番号、ファイル番号、検査番号、氏名又は患者番号などが例示される。対象データには、対象識別記号、氏名・年齢・性別・住所及び保険証番号等の患者の基本情報、主訴、現病歴、既往歴、家族歴、社会歴、嗜好、アレルギーの有無、現症・身体所見、予約の状況、入院後経過・看護記録、治療方針などが含まれていてもよい。
【0033】
中央制御部190は、診断支援装置1の全体を制御するものである。具体的には、中央制御部190は、CPU等を備え、診断支援装置1用の各種処理プログラム(図示略)にしたがって各種の制御動作を行う。例えば、中央制御部190は、記憶部140に記憶されている画像分析ソフトウエアを実行することにより、撮影画像中の患部の疾患名(例えばメラノーマであるか否か等)や、撮影画像中の患部が悪性であるか否か等を分析することができる。また、記憶部140に、撮像制御プログラム、画像データ生成プログラム、画像変換プログラム、表示制御プログラム等を予め記憶させておき、中央制御部190のCPUがこれらのプログラムを実行することにより、上述の撮像制御部120、画像データ生成部125、画像変換部160、表示制御部172として機能するようにしてもよい。この場合、中央制御部190だけでなく、撮像制御部120、画像データ生成部125、画像変換部160、表示制御部172もCPUで構成されることになる。
【0034】
中央制御部190は、操作入力部180による対象識別記号を含む対象データの入力に応じて、ダーモスコピー画像データDd及びダーモスコピー変換画像データDt1,Dt2の少なくともいずれか一つを、カルテ番号等の対象識別記号を含む対象データに関連付けて記憶部140に保存してもよい。これは、ダーモスコピー画像データDd、ダーモスコピー変換画像データDt1,Dt2のうち少なくとも1つに、Exifなどの形式によって対象識別記号を含む対象データを書き込んで、記憶部140に保存することにより行われる。
【0035】
診断支援装置1は、撮像部110とは別に設けられ、患部を非撮像で観察するダーモスコープレンズ部150を有する。ダーモスコープレンズ部150は、前述した観察レンズ154(光学レンズ)及び光源151を少なくとも含み、観察レンズ154を介して目で患部を観察できるものである。以上により、診断支援装置1は、ダーモスコープレンズ部150を用いたダーモスコープ(ルーペ)機能と撮像部110を用いたダーモスコープ撮像機能とを兼ね備えることができる。したがって、従来、複数の装置を用いて行われてきた(1)ダーモスコープ(ルーペ)による良性の色素性母斑なのか悪性のメラノーマ(悪性黒色腫)なのかのスクリーニング、(2)ダーモスコピー撮影による患部の拡大撮影、を1つの装置で連続的に行うことができる。
【0036】
ダーモスコープレンズ部150の観察レンズ154は、患部を拡大する拡大レンズであり、裏面側から覗いて患部を観察する拡大鏡、いわゆるルーペとして機能する。例えば、その拡大率は5倍から30倍である。観察レンズ154は、1つの両面凸レンズであってもよいし、2つ又は複数の凸レンズを組み合わせたレンズ、1つのアクロマートレンズ、2つ又は複数のアクロマートレンズを組み合わせたレンズのいずれかであってもよい。また、観察レンズ154は、無収差レンズであってもよい。さらにまた、観察レンズ154は、良好な光学性と歪みを低減するために、球面レンズに非球面レンズを組み込んだものでもよい。観察レンズ154には、さらに反射防止膜やカラーフィルタが含まれてもよい。観察レンズ154のレンズ径は、例えば15mm径のものが用いられる。
【0037】
観察レンズ154の外周部には、1つ又は複数の光源151が配置されており、必要に応じて光源151を点灯させ、被写体の照明として使用する。光源151は、
図2に示すように、観察レンズ154の外周よりも若干大きい環状ライン上に等間隔で配置されている。図示しないが、光源151は、光源151から放出された光が観察レンズ154の中心方向に集光するように、観察レンズ154の中心軸に対して光軸が傾斜するように配置されていてもよい。光源151としては、ハロゲンランプなどの高輝度ライトや発光ダイオード、半導体発光素子及び有機エレクトロルミネッセンスなどの発光素子が用いられる。
【0038】
光源151が複数ある場合、複数の光源151は、同一の波長の光源からなるものでもよいし、互いに異なる波長の光源を含んでもよい。例えば、紫外線又は青色光は、色素沈着部に吸収されやすいから、色素沈着部を好適に視覚化することができる。同様に、緑色光は、血管に吸収されやすいから、血管を好適に視覚化することができる。白色光は、皮膚疾患の観察に用いられる解剖学的情報を得ることができ、又は、皮膚表面を好適に視覚化することができる。
【0039】
したがって、複数の光源151は、一の波長の光源151が点灯しているときに、この一の波長とは異なる他の波長の光源151が消灯し、又は、この他の波長の光源151が点灯しているときにこの一の波長の光源151が消灯するように構成してもよい。これによって、様々な波長の光源151の点灯及び消灯を切り替えて撮影することにより、複数のダーモスコピー画像データDdを取得することができ、皮膚内部の情報をより好適に得ることができる。そして、これら複数のダーモスコピー画像データDdを比較したり、重ね合わせたりすることで、標的部の検査、観察及び治療をしやすくすることができる。
【0040】
なお、光源151は、光を集中させるためのフォーカスレンズを更に有していてもよい。また、光源151は、診断支援装置1の内部の回路基板の配線に電気的に接続されている。そして、この配線は、電池や外部電源などの電源に電気的に接続されている。
図1に示すライト種切替ボタン181(操作入力部180)が押されると、中央制御部190がダーモスコープレンズ部150を制御することにより、光源151に使われているライトの種類(ハロゲンランプ、発光ダイオード、有機エレクトロルミネッセンス等)、波長、輝度等が変更される。
【0041】
図3に戻り、マイクロフォン401と録音部400と時計部500について、説明する。診断支援装置1は、音声を収音するマイクロフォン401と、マイクロフォン401によって収音された音声データDvを記録する録音部400と、時刻を計時して時刻データDhを取得する時計部500と、を備える。
【0042】
マイクロフォン401は、音声を収音する収音手段として機能する。
図1では、マイクロフォン401として、診断支援装置1の背面にモノラルマイクロフォンを配置した例を図示しているが、マイクロフォン401の態様はこれに限定されない。マイクロフォン401は、ステレオマイクロフォンやズームマイクロフォンであってもよいし、また、診断支援装置1に内蔵されたものではなく、有線又は無線による外付けのマイクロフォン401であってもよい。
【0043】
録音部400は、患部の診察の過程においてマイクロフォン401によって収音された診察現場の音声データDvを記録する。音声データDvの記録においては、録音部400が音声データDvの記録用のメモリを備えていてもよいし、記憶部140に音声データDvを記録してもよい。
【0044】
時計部500は、時刻を計時し時刻データDhを取得するモジュールである。時計部500は、予め設定された時刻からの経過時間を計ることにより、現在時刻を計測することができる。そして、時計部500は、現在時刻(日時)をタイムスタンプとして出力することができる。例えば、中央制御部190は、撮像部110や録音部400が動作するに際し、その開始/終了の時刻(日時)を時計部500から取得して、タイムスタンプとして、撮像画像や音声データDvに付加することができる。これによって、撮像画像及び音声データDvの双方の面から診察の事実と内容を画定することができ、後刻又は後日にカルテを記入する際の確認資料として利用できるとともに、仮に患者との何らかのトラブルが発生した際の証拠としても活用できる。
【0045】
中央制御部190は、所定のトリガ(後述する録音条件が成立したことの判定)により録音部400を起動させ、録音部400によって記録された音声データDvに、時計部500によって取得された時刻データDhをタイムスタンプとして付加して、記憶部140に記憶する。これにより、診察終了後に診察の過程を医師が確認することができるとともに、電子カルテの作成にも資することができる。さらには、次回以降の診察時において患者との間で疾患の推移について確認することができ、インフォームドコンセントにも資することができる。
【0046】
録音部400は、医師及び/又は患者に加え、診察現場の音声のデータとして看護師や患者の家族の音声データDvを記録することもできる。なお、時計部500は、常時、計時動作を行っている。以下の説明において、所定のトリガによって録音部400と時計部500が起動すると言うことがあるが、この説明は、所定のトリガによって時計部500が録音部400による録音の開始時刻を決定するという意味で用いている
【0047】
中央制御部190は、例えば、ダーモスコープレンズ部150で患者を診察中であると検出した場合を所定のトリガとして、音声データDvを記憶部140に記憶する。すなわち、中央制御部190は、所定のトリガの設定によって、診察中に音声データDvを記録し、診察中でないときに音声データDvを記録しない。録音部400は、疾患の診察過程及び結果をリアルタイムに音声で記録したり、医師、看護師、患者及び/又は患者の家族の間の会話などを録音したりするなど、診察現場の音声(音声データDv)を取得することができる。
【0048】
録音部400と時計部500を起動させる所定のトリガとしては、種々の態様によって構成することができる。中央制御部190は、録音部400と時計部500のON/OFFの起動のトリガとして、例えば、医師が手動で専用のスイッチ(録音ボタン)をON/OFFしたことを中央制御部190が検出してもよいし、診断支援装置1の電源ボタン182のON/OFFを検出してもよい。さらに、中央制御部190は、トリガとして、診断支援装置1の光源151の点灯中を診察中としてもよい。
【0049】
さらに、診断支援装置1の撮像部110で撮影する場合、医師は、診断支援装置1を操作する当初において、タッチパネル(表示パネル171)からカルテ番号等の対象識別記号を入力してOKボタンを押すことにより関連撮影を開始し、終了ボタンにタッチして関連撮影を終了するが、録音部400は、この関連撮影の開始/終了に連動して録音をON/OFFさせてもよい。以上のような構成によって、記憶部140に診察中の音声データDvを効率的に記憶することができる。なお、さらに徹底して、録音部400のON中、医師、看護師、患者及び/又は患者の家族の音声を拾うことができたときのみ、記録するようにしてもよい。
【0050】
また、中央制御部190は撮像画像を分析する画像分析ソフトウエアを実行し、この画像分析による結果をもってトリガとしてもよい。例えば、画像分析ソフトウエアによって撮像画像を分析し、患部がメラノーマであるか否かについて判別手段がメラノーマであると判別した場合に、トリガとしてもよい。あるいは、画像分析ソフトウエアによって撮像画像を分析し、患部が悪性であるか否かについて判別手段が悪性の可能性があると判別した場合に、トリガとしてもよい。なお、いずれの場合も、中央制御部190が、画像分析ソフトウエアを実行することにより、判別手段として機能する。
【0051】
この判別手段は、例えば、疾患のある部分(患部)の位置情報とその位置における拡散反射スペクトルとを含む複数の画素データを取得し、拡散反射スペクトルを多次元ベクトルとみなし、この多次元ベクトルと基準ベクトルとのなす角度を求め、角度及び画素データの位置情報に基づき、疾患に係る患部表面の分子情報を反映している疾患データDcとして、該疾患データDcを用いて所定の閾値によりメラノーマであるか否か、悪性であるか良性であるかを判別する。なお、機械学習によって病変を識別する技術も進んでいるので、中央制御部190は、機械学習を用いた画像識別処理によって患部がメラノーマであるか否か、又は悪性であるか良性であるかを識別するようにしてもよい。
【0052】
録音部400に録音された音声データDvは、いつでも再生することができる。例えば、医師は、診断支援装置1の記憶部140に保存されているダーモスコピー画像データDd、ダーモスコピー変換画像データDt1又はダーモスコピー変換画像データDt2を必要な時に呼び出して再生することができるが、その画像の再生に連動して、画像データ及び音声データDvに付加されているタイムスタンプを用いることにより、当該画像データを撮影した際の音声データDvを同時に再生するようにしてもよい。
【0053】
診断支援装置1は、以上の各部に加え、位置検出部を備えてもよい。位置検出部は、自身の位置を検出する機能を有する。位置検出部は、例えば、GPS衛星その他から出力されている信号に基づいて、診断支援装置1の現在位置を示す位置情報を生成することができる。これにより、医師が患者の診察を行った場所(病院、医院、保養施設、在宅など)をタイムスタンプと同時に画定することが可能となる。
【0054】
次に、本実施形態に係る診断支援装置1の使用方法及び制御方法を説明する。診断支援装置1は、電源ボタン182をONにすると、表示パネル171に機能選択メニューが表示される。機能選択メニューとは、診断支援装置1の各機能(関連撮影機能、画像一覧表示機能等)が画面上にボタンとして表示されたものである。ユーザが、各機能のボタンをタッチすることにより、診断支援装置1の当該機能が起動する。
【0055】
まず、診断支援装置1の機能のうち、関連撮影機能について説明する。これは、一連の撮影した画像を関連付けする機能である。
【0056】
まず、一人の患者に対して複数の写真を撮影する際に、カルテ番号などを基にして一連の画像を関連付けする場合を説明する。診断支援装置1の電源をONにすると、表示パネル171(タッチパネル)に機能選択メニューが表示される。ユーザが、機能選択メニュー(操作入力部180)に一覧されている機能のうち、「関連撮影機能」をタッチすると、これから撮影する患部の一連の画像データを関連付ける機能である「関連撮影」が開始される。そして、表示パネル171(タッチパネル)には、カルテ番号などの対象識別記号を入力する画面が表示される。ユーザが、タッチパネル(操作入力部180)に、これから撮影する患者の対象識別記号を入力すると、表示パネル171には、例えば「病変撮影」、「撮影終了」などの操作メニューが表示され、撮影待機状態になる。
【0057】
撮影待機状態でユーザが操作メニューの中の「病変撮影」にタッチすると、診断支援装置1は、撮像部110を用いて患部をダーモスコピー撮影し、ダーモスコピー撮影した画像データをダーモスコピー画像データDdとして記憶部140に保存する。その際、ダーモスコピー画像データDdには、Exifなどの形式により、対象識別記号等の情報も書き込まれた上で、記憶部140に保存される。また、患部の撮影の際、中央制御部190は、ダーモスコピー画像データDd及びダーモスコピー変換画像データDt1,Dt2の少なくとも2つを関連付けて記憶部140に保存するように制御してもよい。この場合、中央制御部190は、ダーモスコピー画像データDd及びダーモスコピー変換画像データDt1,Dt2の少なくとも2つを一組みのデータセット(レコード)として、記憶部140に保存することにより行う。
【0058】
従来は、皮膚科医などが大まかな疾患のある部分(患部)の位置(例えば『左の手首』など)がわかるよう、通常のデジタルカメラで患部を撮影した通常画像と、もうひとつは特殊な拡大レンズを使用して患部を拡大して撮影したダーモスコピー画像と、の少なくとも1つを撮影する場合、対象を特定するためにこれらの撮影後に患者のカルテなど対象を特定できる対象データを撮影していた。これは、撮影された対象データに基づいて対象を特定し、手動で画像を整理するためであったが、画像データは大量であり、画像整理は煩雑で、大きな労力がかかっていた。
【0059】
これに対し、本実施形態では、ダーモスコピー画像データDd及びダーモスコピー変換画像データDt1,Dt2の少なくともいずれか一つを対象データに関連付けて記憶部140に保存することで、画像整理の手間がかからず、短時間に、かつ、正確に患者などの対象情報の整理をすることができる。また、表示部170を使って患者に画像を見せることもあるが、対象データを用いて検索できるようにすることで、診断支援装置1内に保存してある他の対象の画像を見せてしまうというリスクを回避することが可能である。
【0060】
診断支援装置1は、撮影後、撮影待機状態に戻る。撮影待機状態でユーザが操作メニューの中の「撮影終了」にタッチすると、関連撮影機能を終了する。関連撮影機能を終了すると、画像一覧表示機能が起動し、表示部170に、ダーモスコピー画像データDd及びダーモスコピー変換画像データDt1又はダーモスコピー変換画像データDt2の少なくとも一つを含む関連画像(対象識別記号で表される患者の画像データ)の一覧が表示される。なお、診断支援装置1は、関連撮影機能を終了すると、機能選択メニューを表示する画面に戻る仕様になっていてもよい。
【0061】
各画像データには、前述したように、録音部400で録音された音声データDvや、時計部500でタイムスタンプされた時刻データDhが(位置検出部を備える場合には、位置検出部によって検出された位置情報についても)、対象識別記号ごとに、各画像と1対1に関連付けられて保存される。その際のデータ構造は、例えば、医師ID(Identification)と、患者IDと、画像IDと、音声データDvと、時刻データDhと、疾患データDcと、で構成され、これらが画像データとともに一組となって記憶部140に記憶される。これらの情報(各ID、時刻データDh、疾患データDc等)は、対象識別記号と同様に、当該画像データにExifなどの形式により書き込まれることによって、記憶部140に記憶されてもよい。
【0062】
ここで、医師IDとは、医師を一意に特定するための識別子であり、患者IDとは、患者を一意に特定するための識別子であり、画像IDとは、画像を一意に特定するための識別子である。このデータ構造を用いる場合、診断支援装置1の中央制御部190は、医師IDを取得する処理、患者IDを取得する処理、画像IDを取得する処理、所定のトリガにより起動し、時刻データDhとともに音声データDvを記憶部140に記録する処理、診断支援装置1の撮像部110によって取得された撮像画像による診察の結果に基づく疾患データDcを取得する処理、医師ID、患者ID、音声データDv、時刻データDh及び疾患データDcをそれぞれ関連付けて記憶部140に記憶する処理、を実行する。
【0063】
診断支援装置1は、上記の処理に対応して、診断支援装置1を使用する医師の医師IDを取得する手段と、被写体となる患者の患者IDを取得する手段と、診察の結果に基づく疾患データDcを取得する手段と、を更に備えてもよい。この態様では、中央制御部190は、医師ID、患者ID及び疾患データDcを音声データDvに関連付けて記憶部140に記憶する。医師IDを取得する手段や患者の患者IDを取得する手段は、種々の態様を採用することができる。例えば、中央制御部190は、操作入力部180を用いてキー入力等により各IDを取得してもよい。また、身分証のバーコード、指紋、顔などを撮像部110で撮影し、それを中央制御部190が画像認識し、バーコード認証、指紋認証、顔認証などによりIDを取得してもよい。また中央制御部190は、磁気読み取り装置と接続し、身分証の磁気を当該磁気読み取り装置で読み取ってIDを取得してもよい。
【0064】
疾患データDcについては、画像分析ソフトウエアにより患部の疾患として可能性の高い候補の一覧を表示部170に表示し、当該一覧から選択することにより疾患データDcを取得するように、疾患データDcを取得する手段を構成することが、効率的かつ正確な診察を行う観点から好ましい。
【0065】
次に、機能選択メニューから「画像一覧表示」をタッチすると起動する画像一覧表示機能について説明する。画像一覧表示機能は、記憶部140内に保存された画像データのうち、特定の患者の画像のみ(入力された対象識別記号に関連付けられた画像のみ)を表示する機能である。
【0066】
ユーザが診断支援装置1の電源をONにすると、表示パネル171(タッチパネル)に機能選択メニューが表示される。そして、ユーザが、機能選択メニューの中から「画像一覧表示」を選択すると、画像一覧表示機能が起動し、表示パネル171(タッチパネル)に、カルテ番号等の対象識別記号を入力される画面が表示される。そして、ユーザが、タッチパネルに、これから表示させる患者の対象識別記号(カルテ番号など)を入力すると、対象識別記号に関連付けられた画像データの画像のみからなる画像のサムネイルの一覧が表示パネル171に表示される。なお上述したように、本実施形態では利便性向上のため、関連撮影機能を終了することによっても、画像一覧表示機能が起動し、関連撮影機能を起動した時に入力した対象識別記号に関連付けられた画像データの画像のみからなる画像のサムネイルの一覧が表示パネル171に表示される。
【0067】
ここで、各画像のサムネイルをタップして選択すると、選択された画像が表示パネル171に表示される。ここでは、例えば、ダーモスコピー画像を表示したり、ダーモスコピー変換1画像を表示したり、ダーモスコピー変換2画像を表示したりすることができる。表示パネル171に表示されるこれらの画像は、タッチパネルである表示パネル171上でのスワイプ操作や操作入力部180の他の入力操作により、切り替えることができる。
【0068】
これらの画像は、対象識別記号に関連付けられた画像データの画像のみであり、他の患者の画像は表示パネル171に表示されないので、ある特定の患者に現在又は過去の診察状態を説明するにあたって、診断支援装置1に保存してある他の患者の画像を見せてしまうというようなリスクを回避することができる。
【0069】
以上説明したような診察を経て、中央制御部190は、表示パネル171に、疾患データDcとして、疾患データDcの候補一覧を表示してもよい。例えば、中央制御部190は、「良性」と「悪性」の区別に加え、「メラノーマ」のほか、代表的な皮膚病変である「基底細胞がん」、「脂漏性角化症」及び「色素性母斑」を候補一覧として表示してもよい。
【0070】
画像分析ソフトウエアは、画像データを分析して、患部の疾患名として可能性の高い病名を当該一覧から選択して、診察結果に対応する病名を疾患データDcとして取得する。その際、医師や看護師などによる確認を容易にするために、中央制御部190は、表示パネル171に、可能性の高い病名の表示を変色又は点滅させるなどしてハイライトしたり、各病名に対応してあらかじめ保存していた症例の画像を表示したりするようにしてもよい。上述した例では疾患データDcとして代表的な4つの病名を表示してもよいとしたが、これは一例であって、例えば20個ほどの症例を記憶部140に用意しておき、前述した画像分析ソフトウエアにより診察結果に類似する症例を検索し、類似度が上位の幾つかを表示パネル171に表示させるようにしてもよい。
【0071】
以上、診断支援装置1による、関連撮影機能や、画像一覧表示機能について説明した。次に、診断支援装置1による音声保存処理について、
図4を参照して説明する。この処理は、中央制御部190が、録音部400による音声記録を自動的に行うための処理であり、診断支援装置1の電源がONになると、開始される。
【0072】
まず、中央制御部190は、操作入力部180において、撮影の指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。例えば、ユーザが操作メニューの中の「病変撮影」にタッチすると、撮影の指示を受け付けることになる。
【0073】
撮影の指示を受け付けていないなら(ステップS101;No)、ステップS101に戻る。撮影の指示を受け付けたなら(ステップS101;Yes)、中央制御部190は、撮像部110で病変画像を撮影する(ステップS102)。
【0074】
そして、中央制御部190は、画像分析ソフトウエアにより、病変画像を分析し(ステップS103)、病変画像中の患部が悪性であるか否かを判定する(ステップS104)。ステップS104で、中央制御部190は判定手段として機能する。また、本実施形態においては、患部が悪性と判定されたことにより、録音条件が成立したと判定されるので、ステップS104で、中央制御部190は録音条件判定手段としても機能する。
【0075】
悪性でなければ(ステップS104;No)、ステップS106に進む。悪性であれば(ステップS104;Yes)、中央制御部190は、録音部400により、録音を開始する(ステップS105)。ステップS105で、中央制御部190は録音制御手段として機能する。
【0076】
そして、中央制御部190は、操作入力部180において電源OFFの指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS106)。例えば、ユーザが電源ボタン182をOFFにすると、電源OFFの指示を受け付けることになる。
【0077】
電源OFFの指示を受け付けていなければ(ステップS106;No)、ステップS101に戻る。電源OFFの指示を受け付けたなら(ステップS106;Yes)、中央制御部190は、記憶部140に、録音部400が録音した録音データを保存する(ステップS107)。なお、上述したように、この録音データには時計部500によって取得されたタイムスタンプが付加されているため、記憶部140には録音データとともにタイムスタンプも保存される。ステップS107で、中央制御部190は音声保存手段として機能する。そして、中央制御部190は、診断支援装置1の電源をOFFにし(ステップS108)、音声保存処理を終了する。
【0078】
実施形態1に係る診断支援装置1は、上述の音声保存処理を実行することにより、患部が悪性と判別された場合に録音データを記憶部140に保存するので、医師と患者との間の重要な会話のみを保存することができ、無駄な録音データを保存せずに済むという効果がある。
【0079】
(実施形態2)
実施形態2に係る診断支援装置2の構成は、診断支援装置1と同様であるが、中央制御部190が実行する音声保存処理の処理内容が少し異なる。実施形態2に係る音声保存処理について、
図5を参照して説明する。診断支援装置2の電源がONになると、
図5に示す音声保存処理が開始される。
【0080】
まず、中央制御部190は、録音条件が成立しているか否かを判定する(ステップS200)。録音条件とは、録音部400での録音を開始させる条件である。ここでは、診断支援装置2の電源がONにされると、この録音条件が成立することとする。ステップS200において、中央制御部190は、録音条件判定手段として機能する。
【0081】
録音条件が成立していなければ(ステップS200;No)、ステップS200に戻る。録音条件が成立していれば(ステップS200;Yes)、中央制御部190は、録音部400により、録音を開始する(ステップS201)。すなわち、診察の開始に伴ってユーザが診断支援装置2の電源をONすると、診察中の音声の録音が開始されることになる。ステップS201で、中央制御部190は録音制御手段として機能する。次に、中央制御部190は、操作入力部180において、撮影の指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS202)。
【0082】
撮影の指示を受け付けていないなら(ステップS202;No)、ステップS202に戻る。撮影の指示を受け付けたなら(ステップS202;Yes)、中央制御部190は、撮像部110で病変画像を撮影する(ステップS203)。
【0083】
そして、中央制御部190は、画像分析ソフトウエアにより、病変画像を分析し、分析結果を記憶部140に保存する(ステップS204)。
【0084】
そして、中央制御部190は、操作入力部180において電源OFFの指示を受け付けたか否かを判定する(ステップS205)。電源OFFの指示を受け付けていなければ(ステップS205;No)、ステップS202に戻る。
【0085】
電源OFFの指示を受け付けたなら(ステップS205;Yes)、ステップS204で保存した分析結果の中に、病変画像中の患部が悪性であると分析したものが1つでもあるか否かを判定する(ステップS206)。
分析結果の中に、病変画像中の患部が悪性であると分析したものが1つもなければ(ステップS206;No)、中央制御部190は、録音部400が録音した録音データを破棄し(ステップS208)、ステップS209に進む。分析結果の中に、病変画像中の患部が悪性であると分析したものが1つでもあれば(ステップS206;Yes)、中央制御部190は、記憶部140に、録音部400が録音した録音データを保存する(ステップS207)。なお、上述したように、この録音データには時計部500によって取得されたタイムスタンプが付加されているため、記憶部140には録音データとともにタイムスタンプも保存される。
【0086】
そして、中央制御部190は、診断支援装置2の電源をOFFにし(ステップS209)、音声保存処理を終了する。なお、上述のステップS200においては、診断支援装置2の電源がONにされると録音条件が成立することとしたが、これは一例である。例えば、中央制御部190は、ライト種切替ボタン181が押されたことを検出すると、録音条件が成立することとしてもよい。この場合、中央制御部190は、ライト種切替ボタン181が押されたことを検出したことに伴い、光源151を点灯させるので、光源151の点灯の開始時から音声が録音されることになる。また、中央制御部190が音声認識手段を備え、「○○さん(患者の名前)お入りください」というような音声を認識すると、録音条件が成立することとしてもよい。
【0087】
実施形態2に係る診断支援装置2は、上述の音声保存処理を実行することにより、患部が悪性でないと判定された場合(すなわち良性と判定された場合)に録音データを破棄するので、無駄な録音データを保存せずに済むという効果がある。また、録音条件が成立した後の会話を常時録音しているため、患部が悪性と判定された場合は、診察の前後を含めた医師と患者との間の全ての会話を保存することができるという効果がある。
【0088】
(実施形態3)
実施形態3に係る診断支援装置3の構成は、診断支援装置1と同様であるが、中央制御部190が実行する音声保存処理の処理内容が少し異なる。実施形態3に係る音声保存処理について、
図6を参照して説明する。診断支援装置3の電源がONになると、
図6に示す音声保存処理が開始される。
【0089】
この音声保存処理のうち、ステップS300からステップS303までの処理は、それぞれ、上述した実施形態2に係る音声保存処理のステップS200からステップS203までの処理と同様であるので、説明を省略する。
【0090】
ステップS303の処理を終えると、中央制御部190は、画像分析ソフトウエアにより、病変画像を分析する(ステップS304)。そして、中央制御部190は、ステップS304で病変画像中の患部が悪性であると分析したか否かを判定する(ステップS305)。
【0091】
病変画像中の患部が悪性であると分析したなら(ステップS305;Yes)、中央制御部190は、分析結果から得られる悪性ラベルを、時計部500から取得したタイムスタンプと共に記憶部140に保存し(ステップS306)、ステップS308に進む。分析結果から得られる悪性ラベルとは、患部の悪性の種類を表すラベルであり、例えば、悪性の疾患名(悪性黒色腫(メラノーマ)、基底細胞癌等)である。ステップS306で、中央制御部190は悪性ラベル保存手段として機能する。
【0092】
一方、病変画像中の患部が悪性ではない(良性)と分析したなら(ステップS305;No)、中央制御部190は、分析結果から得られる良性ラベルを、時計部500から取得したタイムスタンプと共に記憶部140に保存し(ステップS307)、ステップS308に進む。分析結果から得られる良性ラベルとは、患部の良性の種類を表すラベルであり、例えば、良性の疾患名(色素細胞母斑、脂漏性角化症等)である。ステップS307で、中央制御部190は良性ラベル保存手段として機能する。
【0093】
そして、ステップS308では、中央制御部190は、操作入力部180において電源OFFの指示を受け付けたか否かを判定する。電源OFFの指示を受け付けていなければ(ステップS308;No)、ステップS302に戻る。
【0094】
電源OFFの指示を受け付けたなら(ステップS308;Yes)、中央制御部190は、録音部400が録音した録音データに、ステップS306及びステップS307で保存したラベル(良性ラベル及び悪性ラベル)を埋め込んで、記憶部140に保存する(ステップS309)。中央制御部190は、ラベルを音声データに埋め込む際には、各ラベルとともに保存されたタイムスタンプの情報に基づき、音声データの対応する時刻の部分に当該ラベルを埋め込む。
【0095】
そして、中央制御部190は、診断支援装置3の電源をOFFにし(ステップS310)、音声保存処理を終了する。
【0096】
なお、ステップS309においては、中央制御部190は、録音部400が録音した録音データのうち、ステップS306で保存された悪性ラベルに対応する部分のみを悪性ラベルとともに記憶部140に保存し、ステップS307で保存された良性ラベルに対応する部分を記憶部140に保存せずに破棄してもよい。
【0097】
また、上述の音声保存処理では、中央制御部190は、ステップS301において録音を開始しているが、実施形態1に係る音声保存処理と同様に、ステップS301では録音を開始せずに、(ステップS304で病変画像中の患部が悪性であると分析したら)ステップS306で録音を開始してもよい。
【0098】
実施形態3に係る診断支援装置3は、上述の音声保存処理を実行することにより、録音条件が成立した後の会話を常時録音しているため、診察の前後を含めた医師と患者との間の全ての会話を保存することができるという効果がある。また、病変画像の分析結果をラベルとして音声データに埋め込むので、医師が気になる疾患がある場合には、その疾患に対応するラベルにより、音声データを検索することができ、効率的に音声データを確認することができるという効果がある。
【0099】
[診察システム]
また、診断支援装置1,2,3は、上述したように、外部のコンピュータと接続して診察システムを構成することも可能である。この場合、診断支援装置1,2,3は、パーソナルコンピュータなどの外部機器(コンピュータ)との間で画像データなどの情報を送受信する通信部を更に備える。そして、この診察システムにおいては、診断支援装置1,2,3は、記憶部140、表示部170及び操作入力部180の一部又は全部を外部機器側に設ける構成としてもよい。この場合、例えば、診断支援装置1,2,3の外部の記憶媒体(着脱可能な記憶媒体や、外部機器の記憶媒体)を記憶部140として用いることができる。また、外部機器のディスプレイ装置などを、表示部170として用いることができる。また、外部機器のキーボード、マウスなどのポインティングデバイス、音声認識装置などを操作入力部180として用いることができる。
【0100】
さらに詳しく説明すると、疾患の診察を行う診察システムは、被写体を撮影する診断支援装置1と、診断支援装置1と接続された外部機器(コンピュータ)と、を備える。診断支援装置1,2,3は、被写体を撮影して撮像画像を取得する撮像部110と、マイクロフォン401によって診察現場の音声データDvを記録する録音部400と、時刻を計時して時刻データDhを取得する時計部500と、診察の結果を記憶する記憶部140と、診断支援装置1、録音部400、時計部500及び記憶部140を制御する中央制御部190と、を含む。
【0101】
中央制御部190は、所定のトリガにより録音部400を起動させ、録音部400によって記録された音声データDvに、時計部500によって取得された時刻データDhをタイムスタンプとして付加し、外部機器に転送する。また、中央制御部190は、撮像部110で撮影した撮像画像を外部機器に転送する。外部機器は、画像管理ソフトウエアにより撮像画像を管理する。
【0102】
この画像管理ソフトウエアは、音声データDvをテキスト化し、前述したデータ構造に示したように別に入力される医師ID、患者ID及び画像IDと組み合わせることにより、当該患者の電子カルテを自動的に作成するようにしてもよい。これにより、診察中又は終了後に紙カルテを記入する手間が省くことができ、診察を効率良く行うことが可能となる。
【0103】
ここで、電子カルテを作成した場合、診察結果を第三者に例えば医学上のデータとして提供したようなとき、あるいは、第三者が不正に電子カルテにアクセスしようとしたときなどにおいて、画像ID又は患者IDから患者が特定されてその個人情報が第三者に知られてしまうことは避けなければならない。そこで、本実施形態では、電子カルテの情報漏洩防止策が取られている。例えば、被写体の撮影者(医師など)の本人認証、撮影者と患者に対応する秘密鍵の設定、医用画像情報から個人情報を除去した画像情報の作成、医用画像付帯情報の暗号化と第三者機関の管理化などは診察システムのサブシステムとして構築される。
【0104】
なお、この診察システムにおいては、前述した音声データDv、時刻データDh、疾患データDc等を中央制御部190が個別に外部機器に送り、外部機器内で画像管理ソフトウエアにより関連付けを行ってもよい。さらには、記憶部140が外部機器内にあってもよい。
【0105】
そして、外部機器が、撮像画像を分析する画像分析ソフトウエアを備え、中央制御部190の代わりに画像を分析してもよい。この場合、外部機器で実行される画像分析ソフトウエアが判別手段として機能し、前述の所定のトリガについて、例えば次のように設定することができる。すなわち、画像分析ソフトウエアは、撮像画像を分析して疾患(診察時の被写体)がメラノーマであるか否かを判別し、メラノーマであると判別した場合を録音部400と時計部500を起動させる所定のトリガとしてもよい。あるいは、画像分析ソフトウエアは、撮像画像を分析して疾患(診察時の被写体)が悪性であるか否かを判別し、悪性の可能性があると判別した場合を所定のトリガとしてもよい。
【0106】
この判別手段による画像の判別方法は、中央制御部190による上述の判別手段と同様である。また、外部機器も、中央制御部190と同様に、機械学習を用いた画像識別処理によって患部がメラノーマであるか否か、又は悪性であるか良性であるかを識別するようにしてもよい。
【0107】
なお、上述の実施形態では、中央制御部190は、録音条件が成立したことを判定した後は、電源OFFが指示されるまで、録音部400で録音し続ける処理になっているが、この処理は一例に過ぎない。例えば、中央制御部190は、光源151の消灯、録音ボタンがOFFにされたことの検出等により、録音部400での録音を停止してもよい。このようにすることにより、録音条件が成立している間の音声のみを、録音部400で録音することができるようになる。
【0108】
また、上述の実施形態では、診断支援装置1,2,3は、撮像素子113、観察レンズ154、マイクロフォン401、を診断支援装置1,2,3と同一の筐体に設けているが、これらのうちのいくつか又は全てを別体で設けてもよい。
【0109】
[実施の形態の効果]
本実施形態は、診察中の重要な会話などを記録として残すことができ、診察後の病状検討に使用したり、会話を証拠として残したりすることができるという効果がある。また、ダーモスコープに液晶表示を付け、タイムスタンプや疾患データの候補一覧から病変画像を選択し、診察時のメモを音声により簡単に記録できるようにすることにより、気になった病変を見たときの日時を記録したり、病名の候補を記録として残したりすることができ、診察後の病状検討の材料に使用できるという効果がある。
【0110】
なお、診断支援装置1,2,3の各機能は、通常のPC(Personal Computer)等のコンピュータによっても実施することができる。具体的には、上記実施形態では、診断支援装置1,2,3が行う音声保存処理のプログラムや各種ソフトウエアが、記憶部20のROMに予め記憶されているものとして説明した。しかし、プログラムを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto-Optical Disc)、メモリカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータに読み込んでインストールすることにより、上述の各機能を実現することができるコンピュータを構成してもよい。
【0111】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0112】
(付記1)
患部の周囲の音声を収音する収音手段と、
撮影された前記患部の画像データに基づいて、前記患部が悪性であるか否かを判定する判定手段と、
前記収音手段により収音された音声を、前記判定手段により前記患部が悪性であると判定された場合に保存する音声保存手段と、
を備える診断支援装置。
【0113】
(付記2)
録音条件が成立したか否かを判定する録音条件判定手段と、
前記録音条件が成立したと判定され、かつ、前記判定手段により前記患部が悪性であると判定されたことを条件として、前記収音手段により収音された音声の録音を開始するように制御する録音制御手段と、をさらに備え、
前記音声保存手段は、前記録音制御手段による制御によって録音された音声を保存する、
付記1に記載の診断支援装置。
【0114】
(付記3)
前記音声保存手段は、前記録音条件が成立しているときに前記録音制御手段による制御により録音された音声を、前記判定手段により前記患部が悪性でないと判定された場合に破棄する、
付記2に記載の診断支援装置。
【0115】
(付記4)
前記患部に光を照射する光源をさらに備え、
前記録音条件には、前記光源が点灯されているという条件が含まれる、
付記2又は3に記載の診断支援装置。
【0116】
(付記5)
前記判定手段は、前記患部が悪性であると判定した場合に、前記患部の悪性の種類をさらに判定し、
前記判定手段により判定された前記患部の悪性の種類を表すラベルを、前記音声に関係づけて保存する悪性ラベル保存手段をさらに備える、
付記1から4のいずれか1つに記載の診断支援装置。
【0117】
(付記6)
前記判定手段は、前記患部が悪性でないと判定した場合に、前記患部の良性の種類をさらに判定し、
前記判定手段により判定された前記患部の良性の種類を表すラベルを、前記音声に関係づけて保存する良性ラベル保存手段をさらに備える、
付記1若しくは2、付記2を引用する付記4、又は、付記1、2若しくは付記2を引用する付記4を引用する付記5に記載の診断支援装置。
【0118】
(付記7)
患部の周囲の音声を収音し、
撮影された前記患部の画像データに基づいて、前記患部が悪性であるか否かを判定し、
前記収音された音声を、前記患部が悪性であると判定された場合に保存する、
診断支援方法。
【0119】
(付記8)
コンピュータを、
撮影された患部の画像データに基づいて、前記患部が悪性であるか否かを判定する判定手段、及び、
収音された前記患部の周囲の音声を、前記判定手段により前記患部が悪性であると判定された場合に保存する音声保存手段、
として機能させるプログラム。
【0120】
本出願は、2019年1月10日に出願された日本国特許出願特願2019-2461号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2019-2461号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、患部の診察終了後に診察の過程を確認することを可能にする等、診断を支援する診断支援装置、診断支援方法及びプログラムに適用可能である。
【符号の説明】
【0122】
1,2,3…診断支援装置、102…バスライン、110…撮像部、111…撮像光学系、112…撮像光学系駆動部、113…撮像素子、120…撮像制御部、125…画像データ生成部、140…記憶部、141…第1の記憶部、142…第2の記憶部、143…第3の記憶部、150…ダーモスコープレンズ部、151…光源、154…観察レンズ、160…画像変換部、170…表示部、171…表示パネル、172…表示制御部、180…操作入力部、181…ライト種切替ボタン、182…電源ボタン、190…中央制御部、200…病変撮影用レンズ、400…録音部、401…マイクロフォン、500…時計部、Dc…疾患データ、Dd…ダーモスコピー画像データ、Dh…時刻データ、Dt1,Dt2,Dt3…ダーモスコピー変換画像データ、Dv…音声データ