(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】シート制御装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240723BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20240723BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20240723BHJP
B60N 2/14 20060101ALI20240723BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B60N2/90
A47C7/62 Z
B60N2/06
B60N2/14
B60N2/22
(21)【出願番号】P 2021133605
(22)【出願日】2021-08-18
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 光由
(72)【発明者】
【氏名】桜井 英之
(72)【発明者】
【氏名】冨田 浩之
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-186654(JP,A)
【文献】特開2020-055503(JP,A)
【文献】特開2020-111292(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0170181(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
A47C 7/62
B60N 2/06
B60N 2/14
B60N 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員の選択に基づいて、前記車両が有する複数の映像表示領域のうち映像を表示する映像表示領域を決定する第1決定部と、
前記第1決定部で決定された前記映像表示領域に対応する、前記車両に設けられた車両用シートの調整量を決定する第2決定部と、
前記第2決定部で決定された車両用シートの調整量に基づき前記車両用シートの位置及び姿勢を調節する調節部と、
前記車両用シートに着座した着座乗員を検知する乗員検知機構と、
を備え
、
前記第2決定部は、前記乗員検知機構で検知された乗員が着座した前記車両用シートに応じて前記車両用シートの調整量を決定するシート制御装置。
【請求項2】
前記第2決定部は、
前記第1決定部で決定された前記映像表示領域に基づいて、各車両用シートの位置及び姿勢の設定条件が決定される設定部と、
各前記車両用シートの位置及び姿勢を検知する姿勢検知部と、
前記設定条件と前記姿勢検知部で検知された当該車両用シートの位置及び姿勢との差分である各前記車両用シートの調整量が決定される調整部と、
を有する請求項1記載のシート制御装置。
【請求項3】
前記第2決定部は、車両前後方向に沿った車両用シートの位置、車幅方向に沿った車両用シートの位置、鉛直方向の軸回りにおける車両用シートの回転角度、及びシートバック部のリクライニング角度、の少なくとも1つの調整量を決定する請求項1又は2記載のシート制御装置。
【請求項4】
前記乗員検知機構は、前記車両用シートに着座した乗員の体格を検知し、
前記第2決定部は、前記乗員の体格に応じて前記車両用シートの調整量を決定する請求項1記載のシート制御装置。
【請求項5】
前記乗員検知機構は、前記車両の車室内を撮影する室内カメラ、又は前記車両用シートに乗員が着座したことを検知するシートセンサ、又は前記室内カメラ及び前記シートセンサを含む請求項1又は4記載のシート制御装置。
【請求項6】
車両が有する複数の映像表示領域のうち映像を表示する映像表示領域を決定し、
決定した映像表示領域に対応する前記車両に設けられた車両用シートの調整量を決定し、
決定した車両用シートの調整量に基づき前記車両用シートの位置及び姿勢を調節する
ことを含む処理をコンピュータによって実行させるシート制御方法であって、
前記車両用シートに着座した着座乗員を検知する乗員検知機構で検知された乗員が着座した前記車両用シートに応じて前記車両用シートの調整量を決定するシート制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
車両が有する複数の映像表示領域のうち映像を表示する映像表示領域を決定し、
決定した映像表示領域に対応する前記車両に設けられた車両用シートの調整量を決定し、
決定した車両用シートの調整量に基づき前記車両用シートの位置及び姿勢を調節する
ことを含む処理を実行させるためのシート制御プログラムであって、
前記車両用シートに着座した着座乗員を検知する乗員検知機構で検知された乗員が着座した前記車両用シートに応じて前記車両用シートの調整量を決定するシート制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はシート制御装置、シート制御方法及びシート制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車体に対して回転可能に取付けられた少なくとも2つの車両用シートを備える車両に適用され、表示用のモニタと検出手段と制御装置とを備える車両用画面表示装置が記載されている。表示用のモニタは、少なくとも2つの車両用シートの間において車体に対して回転可能に取付けられ、一方の面に第1の映像を表示する第1表示部を備え、且つ他方の面に第1の映像と同一の又は異なる第2の映像を表示する第2表示部を備えている。また、検出手段は、少なくとも2つの車両用シートのそれぞれの向きとモニタの向きとの相対関係を検出し、制御装置は、検出された相対関係に応じて、第1表示部及び第2表示部を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転が普及すると、車内に設けられた映像表示領域に映像を表示させ、表示させた映像を乗員が視聴するなどのエンターテイメントを楽しむ機会が増えることが想定される。しかしながら、車内に映像表示領域が複数設けられ、複数の映像表示領域のうちの何れかに映像を表示させる場合、乗員は表示される映像が見易い位置に車両用シートを動かす必要があり、車両用シートを動かす手間がかかるという課題がある。
【0005】
本開示は上記事実を考慮して成されたもので、車両が有する複数の映像表示領域のうちの何れかに映像を表示させる場合に、乗員が車両用シートを動かす手間を削減できるシート制御装置、シート制御方法及びシート制御プログラムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係るシート制御装置は、車両の乗員の選択に基づいて、前記車両が有する複数の映像表示領域のうち映像を表示する映像表示領域を決定する第1決定部と、前記第1決定部で決定された前記映像表示領域に対応する、前記車両に設けられた車両用シートの調整量を決定する第2決定部と、前記第2決定部で決定された車両用シートの調整量に基づき前記車両用シートの位置及び姿勢を調節する調節部と、を備える。
【0007】
第1の態様では、第1決定部で乗員の選択に基づいて車両が有する複数の映像表示領域のうち映像を表示する映像表示領域が決定され、第2決定部で決定された映像表示領域に対応する車両用シートの調整量が決定され、第2決定部で決定された車両用シートの調整量に基づき車両用シートの位置及び姿勢が調節される。これにより、第1の態様によれば、車両が有する複数の映像表示領域のうちの何れかに映像を表示させる場合に、乗員が車両用シートを動かす手間を削減することができる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記第2決定部は、前記第1決定部で決定された前記映像表示領域に基づいて、各車両用シートの位置及び姿勢の設定条件が決定される設定部と、各前記車両用シートの位置及び姿勢を検知する姿勢検知部と、前記設定条件と前記姿勢検知部で検知された当該車両用シートの位置及び姿勢との差分である各前記車両用シートの調整量が決定される調整部と、を有する。
【0009】
第2の態様によれば、第2決定部は、設定部で第1決定部で決定された映像表示領域に基づいて各車両用シートの位置及び姿勢の設定条件が決定され、姿勢検知部で各車両用シートの位置及び姿勢が検知され、調整部で各車両用シートの設定条件と姿勢検知部で検知された各車両用シートの位置及び姿勢との差分に基づいて調整量が決定される。
【0010】
第3の態様は、第1又は2の態様において、前記第2決定部は、車両前後方向に沿った車両用シートの位置、車幅方向に沿った車両用シートの位置、鉛直方向の軸回りにおける車両用シートの回転角度、及びシートバック部のリクライニング角度、の少なくとも1つの調整量を決定する。
【0011】
第3の態様によれば、第2決定部で、第1決定部で決定された映像表示領域に表示される映像に対し、乗員が見易いように車両用シートの調整量を決定することが可能となる。
【0012】
第4の態様は、第1~第3のいずれか1項の態様において、前記車両用シートに着座した着座乗員を検知する乗員検知機構をさらに備え、前記第2決定部は、前記乗員検知機構で検知された乗員が着座した前記車両用シートに応じて前記車両用シートの調整量を決定する。
【0013】
第4の態様によれば、乗員検知機構で複数の車両用シートのうち、乗員が着座している車両用シート(の配置)が検知されるため、その車両用シートの配置に応じて各車両用シートの調整量を決定することができる。例えば、天井の映像表示領域が映像を表示する領域に決定された場合に車両用シートをリクライニングさせる場合でも、乗員が着座している車両用シートのみリクライニングさせるように調整量を決定することができる。
【0014】
第5の態様は、第4の態様において、前記乗員検知機構は、前記車両用シートに着座した乗員の体格を検知し、前記第2決定部は、前記乗員の体格に応じて前記車両用シートの調整量を決定する。
【0015】
第5の態様によれば、第2決定部は乗員検知機構が検知した車両用シートに着座した乗員の体格に応じて車両用シートの調整量を決定する。例えば、車両用シートの着座乗員の座高(アイポイント)が低い場合に、車両用シートを上昇させるように、調整量を設定することができる。これにより、着座乗員の体格に応じて車両用シートの位置及び姿勢、例えば高さを調節することができる。
【0016】
第6の態様は、第4又は第5態様において、前記乗員検知機構は、前記車両の車室内を撮影する室内カメラ、又は前記車両用シートに乗員が着座したことを検知するシートセンサ、又は前記室内カメラ及び前記シートセンサを含む。
【0017】
第6の態様によれば、室内カメラによって撮像された車室内映像に基づいて乗員が着座している車両用シートを検知したり、着座乗員の体格(例えば、座高(アイポイント))を検知することができる。また、シートセンサによって乗員が着座している車両用シートを検知することができる。
【0018】
第7の態様に係るシート制御方法は、車両が有する複数の映像表示領域のうち映像を表示する映像表示領域を決定し、決定した映像表示領域に対応する前記車両に設けられた車両用シートの調整量を決定し、決定した車両用シートの調整量に基づき前記車両用シートの位置及び姿勢を調節することを含む処理をコンピュータによって実行させる。
【0019】
第7の態様に係るシート制御方法によれば、第1の態様と同様に、車両が有する複数の映像表示領域のうちの何れかに映像を表示させる場合に、乗員が車両用シートを動かす手間を削減することができる。
【0020】
第8の態様に係るシート制御プログラムは、コンピュータに、車両が有する複数の映像表示領域のうち映像を表示する映像表示領域を決定し、決定した映像表示領域に対応する前記車両に設けられた車両用シートの調整量を決定し、決定した車両用シートの調整量に基づき前記車両用シートの位置及び姿勢を調節することを含む処理を実行させる。
【0021】
第8の態様に係るシート制御プログラムによれば、第1の態様と同様に、車両が有する複数の映像表示領域のうちの何れかに映像を表示させる場合に、乗員が車両用シートを動かす手間を削減することができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示は、車両が有する複数の映像表示領域のうちの何れかに映像を表示させる場合に、乗員が車両用シートを動かす手間を削減できる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2A】一実施形態に係るシート制御装置が適用される車両の車両用シートの配置を模式的に示す車両上方から視た図である。
【
図2B】一実施形態に係るシート制御装置が適用される車両の車両用シートの配置を模式的に示す車両側方から視た図である。
【
図3】一実施形態に係るシート制御装置の選択スイッチの説明図である。
【
図4】一実施形態に係るシート制御装置の制御部の機能構成示すブロック図である。
【
図5】一実施形態に係る車両用シート制御を示すフローチャートである。
【
図6A】一実施形態に係るシート制御装置が適用される車両において、天井の映像表示領域が選択された場合の車両用シートの配置を模式的に示す車両上方から視た図である。
【
図6B】一実施形態に係るシート制御装置が適用される車両において、天井の映像表示領域が選択された場合の車両用シートの配置を模式的に示す車両側方から視た図である。
【
図7A】一実施形態に係るシート制御装置が適用される車両において、フロントウインドシールドの映像表示領域が選択された場合の車両用シートの配置を模式的に示す車両上方から視た図である。
【
図7B】一実施形態に係るシート制御装置が適用される車両において、フロントウインドシールドの映像表示領域が選択された場合の車両用シートの配置を模式的に示す車両側方から視た図である。
【
図8】一実施形態に係るシート制御装置が適用される車両において、一方(左側)のサイドガラスの映像表示領域が選択された場合の車両用シートの配置を模式的に示す車両上方から視た図である。
【
図9】一実施形態に係るシート制御装置が適用される車両において、両方のサイドガラスの映像表示領域が選択された場合の車両用シートの配置を模式的に示す車両上方から視た図である。
【
図10】一実施形態に係るシート制御装置が適用される車両において、車両用シートの映像表示領域が選択された場合の車両用シートの配置を模式的に示す車両側方から視た図である。
【
図11】一実施形態に係るシート制御装置が適用される車両において、フロントウインドシールドの映像表示領域が選択された場合で、後列の車両用シートに着座乗員がいない場合の車両用シートの配置を模式的に示す車両上方から視た図である。
【
図12】一実施形態に係るシート制御装置が適用される車両において、パーティションの映像表示領域が選択された場合の車両用シートの配置を模式的に示す車両側方から視た図である。
【
図13】一実施形態に係るシート制御装置が適用される車両において、サイドガラスの映像表示領域が選択され、着座乗員が個別に視聴する場合の車両用シートの配置を模式的に示す車両上方から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本開示の実施形態の一例を詳細に説明する。なお、各図において、矢印FR、矢印RH、矢印UPはそれぞれ車両前方、車両右側、車両上方を示す。
【0025】
〔一実施形態〕
一実施形態に係るシート制御装置について説明する。
【0026】
先ず、シート制御装置10(
図1参照)が制御する複数の車両用シート12が配置された車両14(
図2A、
図2B参照)について説明する。
【0027】
車両14は、
図2A、
図2Bに模式的に示すように、いわゆるワンボックスカーである。車両14の車室16内には、床面18上に、車幅方向に2つ並べて配置された車両用シート12が前後二列に配置されている。なお、各車両用シート12を区別したい場合には、前列右側、前列左側、後列右側、後列左側の車両用シート12をそれぞれ車両用シート12A~12Dという。
【0028】
なお、各車両用シート12は、後述するチルト機構82(
図1参照)によって車両上下方向の高さを調節可能とされている。また、車両用シート12は、後述するシートスライド機構84(
図1参照)によって車両前後方向及び車幅方向の位置を調節可能とされている。さらに、車両用シート12は、シートリクライニング機構86(
図1参照)によってシートバックのリクライニング角度を調節可能とされている。また、車両用シート12は、後述するシート回転機構88(
図1参照)によって車両用シート12の向き(鉛直方向の軸回りにおける車両用シート12の回転角度)を調節可能とされている。
【0029】
図2A、
図2Bに示すように、車室16において前列右側の車両用シート12Aの車両前方には、ステアリングホイール19が配置されている。
【0030】
また、
図2Bに示すように、車室16には天井20が設けられていると共に、天井20の前端から車両前方側に向かって車両下方側へ傾斜したフロントウインドシールド22が設けられている。
【0031】
天井20の内側には、
図6A、
図6Bに示すように、前後に分かれて2つの映像表示領域20FAと20RAが設けられている。
【0032】
また、フロントウインドシールド22の内側には、
図7A、
図7Bに示すように、一つの映像表示領域22Aが設けられている。
【0033】
さらに、
図9に示すように、車室16の右側には、前後に分かれて2つのサイドガラス24R1、24R2が設けられていると共に、車室16の左側に前後に分かれて2つのサイドガラス24L1、24L2が設けられている。
【0034】
なお、右側の二枚のサイドガラス24R1、24R2の内側には、それぞれ映像表示領域24R1Aと24R2Aが設けられている。同様に、左側の二枚のサイドガラス24L1、24L2の内側には、それぞれ映像表示領域24L1Aと24L2Aが設けられている。
【0035】
また、
図10に示すように、前列の車両用シート12(12A、12B)のシートバック90及びヘッドレスト92の後側にも映像表示領域27RA、27LAが設けられている。
【0036】
これら映像表示領域20FA、20RA、22A、24R1A、24R2A、24L1A、24L2A、26A、27RA、27LAは、図示しないプロジェクタから映像を投影することにより映像を表示するように構成しても良いし、当該映像表示領域に設けられた有機EL等で映像を表示する構成としても良く、公知の映像表示手段であれば特に限定するものではない。
【0037】
シート制御装置10は、
図1に示すように、選択スイッチ30と、乗員検知機構40と、シート姿勢検知機構50と、制御部60と、シート調節機構80と、を有する。シート調節機構80が「調節部」に相当する。
【0038】
選択スイッチ30は、車室16内で運転席(本実施形態では前列右側の車両用シート12A)の車両側方に設けられたスイッチである。選択スイッチ30は、
図3に示すように、選択する映像表示領域が天井であることを示す「天井」スイッチ31、フロントウインドシールド22であることを示す「FR」スイッチ32、車両右側のサイドガラス24Rであることを示す「SIDE R」スイッチ33、車両左側のサイドガラス24Lであることを示す「SIDE L」スイッチ34、車両用シート12であることを示す「SEAT」スイッチ35を有する。
【0039】
乗員検知機構40は、
図1に示すように、車室16に設けられ車室内(の全車両用シート12)を撮影可能な室内カメラ42と、各車両用シート12に設けられ当該車両用シート12に乗員が着座しているか否かを検出する乗員検知センサ44と、を有する。乗員検知センサ44が「シートセンサ」に相当する。
【0040】
シート姿勢検知機構50は、
図1に示すように、各車両用シート12に設けられ各車両用シート12のシート前方側が平面視でどちらの方向に向いているかを検知するシート方向検知センサ52、各車両用シートの車両前後方向及び車幅方向における位置を検知するシート位置検知センサ54と、車両用シート12の高さを検知するシート高さ検知センサ56と、車両用シート12のシートバックのリンライニング角度を検知するリクライニング角度検知センサ58と、を有する。
【0041】
制御部60は、
図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)60A、ROM(Read Only Memory)60B、RAM(Random Access Memory)60C、ストレージ60D及び入出力I/F60Fを含んで構成されている。CPU60A、ROM60B、RAM60C、ストレージ60D及び入出力I/F60Fは、内部バス60Gを介して相互に通信可能に接続されている。
【0042】
CPU60Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU60Aは、ROM60B又はストレージ60Dからプログラムを読み出し、RAM60Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0043】
ROM60Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。
【0044】
RAM60Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0045】
ストレージ60Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のストレージ60Dには、処理プログラム100、設定情報110が記憶されている。処理プログラム100が「シート制御プログラム」に相当する。
【0046】
入出力I/F60Fは、選択スイッチ30、乗員検知機構40、シート姿勢検知機構50、シート調節機構80等と接続されている。
【0047】
シート制御プログラムとしての処理プログラム100は、制御部60を制御するためのプログラムである。処理プログラム100の実行に伴い、制御部60は、選択スイッチ30から入力された選択信号に基づき、車両用シート12の着座乗員が選択された映像表示領域で映像を視聴可能なように、後述する設定条件等に基づいてシート調節機構80に駆動信号を送信することによりシート調節機構80が駆動され、車両用シート12が好適な位置及び姿勢に調節される。
【0048】
設定情報110は、乗員によって選択された映像表示領域毎に各車両用シート12の設定条件が格納されている。具体的には、平面視における車両用シート12の向き(鉛直方向の軸回りにおける車両用シート12の回転角度)、車両前後方向及び車幅方向における位置、リクライニング角度等である。
【0049】
図4に示すように、本実施形態の制御部60では、CPU60Aが、処理プログラム100を実行することで、選択部200、乗員検知部210、姿勢検知部220、設定部230、調整部240及び送信部250として機能する。選択部200が「第1決定部」に相当する。姿勢検知部220、設定部230、調整部240が「第2決定部」に相当する。
【0050】
選択部200は、乗員が選択スイッチ30を操作することにより選択スイッチ30から選択信号が入力され、この選択信号に基づいて映像を表示する映像表示領域を決定する機能を有する。例えば、「天井」スイッチ31が操作された場合には、選択部200は映像を表示する領域を天井20に設けられた映像表示領域20FA、20RA(
図6A、
図6B参照)に決定する。
【0051】
同様に、「SIDE L」スイッチ34が操作された場合には、選択部200は映像を表示する領域を左側のサイドガラス24L1、24L2に設けられた映像表示領域24L1A、24L2A(
図9参照)に決定する。「SIDE R」スイッチ33が操作された場合には、選択部200は同様に、映像を表示する領域を右側のサイドガラス24R1、24R2に設けられた映像表示領域24R1A、24R2A(
図9参照)に決定する。
【0052】
また、「SIDE R」スイッチ33と「SIDE L」スイッチ34が同時に操作された場合には、選択部200は映像を表示する領域を右側のサイドガラス24R1、24R2に設けられた映像表示領域24R1A、24R2Aと、左側のサイドガラス24L1、24L2に設けられた映像表示領域24L1A、24L2Aに決定する。
【0053】
乗員検知部210は、乗員検知機構40からの出力信号に基づいて各車両用シート12の着座状態(乗員が着座しているか否か)を検知する機能を有する。
【0054】
すなわち、室内カメラ42の車室16の撮像画像からどの車両用シート12に乗員が着座しているか否かを判定し、乗員が着座している車両用シート12を検知する。あるいは、各車両用シート12に設けられた乗員検知センサ44の出力信号に基づき乗員が着座している車両用シート12を検知する。
【0055】
姿勢検知部220は、シート姿勢検知機構50からの出力信号に基づいて車両用シート12の姿勢(状態量)を検知する機能を有する。例えば、シート方向検知センサ52の出力信号から平面視における各車両用シート12の方向(向き)を検知する。また、シート位置検知センサ54の出力信号から各車両用シート12の車両前後方向及び車幅方向の位置を検知する。さらに、シート高さ検知センサ56の出力信号から各車両用シート12の上下方向高さを検知する。さらに、リクライニング角度検知センサ58の出力信号から各車両用シート12のリクライニング角度を検知する。
【0056】
なお、本明細書でいう車両用シート12の「姿勢」には、車両用シート12の向き、高さ、リクライニング角度だけでなく、車両前後方向及び車幅方向の位置を含む場合がある。
【0057】
設定部230は、選択部200で選択された映像表示領域と、乗員検知部210で検知された車両用シート12の着座状態に応じて、ストレージ60Dに予め格納された設定情報110から各車両用シート12の設定条件を読み出す機能を有する。
【0058】
例えば、選択された映像表示領域が天井20である場合、前列の車両用シート12A、12Bが車両前後方向において映像表示領域20FAの真下に位置するように設定されており、後列の車両用シート12C、12Dが車両前後方向において映像表示領域20RAの真下に位置するように設定されている。また、着座乗員の顔が天井の映像表示領域20FA、20RAに向くように各車両用シート12A~12Dのリクライニング角度を大きくする設定条件が設定されている。
【0059】
調整部240は、各車両用シート12の設定条件と姿勢検知部220で検知された各車両用シート12の姿勢(状態量)の差分である調整量を算出し、調整量に基づいてシート調節機構80に対する駆動信号を生成する機能を有する。例えば、選択された映像表示領域が天井20である場合、車両用シート12Aの車両前後方向の現在位置と設定条件で設定された車両前後方向の位置との差分に基づいて車両用シート12Aの車両前後方向の移動量(調整量)が算出され、この移動量に基づいた駆動信号が生成される。
【0060】
送信部250は、調整部240で生成された駆動信号を入出力I/F60Fを介してシート調節機構80(チルト機構82、シートスライド機構84、シートリクライニング機構86、シート回転機構88)に送信する機能を有する。
【0061】
シート調節機構80は、チルト機構82、シートスライド機構84、シートリクライニング機構86、シート回転機構88を有する。各機構は、各車両用シート12毎に設けられている。
【0062】
チルト機構82は、制御部60からの駆動信号に基づいて車両用シート12を上下方向に変位させるものである。これは、乗員の体格(座高・アイポイントの位置)等に応じて車両用シート12の高さを調節して、乗員が楽に映像を視聴できるようにするものである。
【0063】
シートスライド機構84は、制御部60からの駆動信号に基づいて車両用シート12を車両前後方向及び車幅方向に変位可能に構成されている。これにより、選択された映像表示領域に正対するように車両用シート12を移動可能である。また、例えば、
図7Aに示すように、映像表示領域22Aに近い前列の車両用シート12A、12Bを車幅方向外側に移動させ、後列の車両用シート12C、12Dを車幅方向内側に移動させることで、全ての車両用シート12の着座乗員が良好に映像を視聴可能とさせるものである。
【0064】
シートリクライニング機構86は、制御部60からの駆動信号に基づいて車両用シート12のシートクッションに対するシートバックの傾動角度(リクライニング角度)を変更するものである。例えば、天井20(映像表示領域20FA、20RA)に表示される映像を視聴する場合にはリクライニング角度を大きくし、フロントウインドシールド22(映像表示領域22A)に表示される映像を視聴する場合にはリクライニング角度を小さくすることによって、いずれの場合にも着座乗員が映像を楽な姿勢で視聴可能とさせるものである。
【0065】
シート回転機構88は、鉛直方向に延在する回転軸回りに車両用シート12が回転可能とされているものであり、制御部60からの駆動信号に基づいて車両用シート12の向き(回転角度)を調節するものである。例えば、車両前方を向いていた車両用シート12を車幅方向外側に30度回転させるものである(
図13参照)。
【0066】
(作用)
本実施形態において、乗員が選択スイッチ30で映像表示領域を選択することにより制御部60で実行される車両用シート制御処理の流れについて、
図5のフローチャートを用いて説明する。当該処理は、所定のタイミングであるいは定期的に制御部60のCPU60Aが選択部200、乗員検知部210、姿勢検知部220、設定部230、調整部240及び送信部250として機能することにより実行される。
【0067】
先ず、制御部60で車両14が自動運転(完全自動運転)に移行したことが検知されることにより、CPU60Aはストレージ60Dから処理プログラム100を読み出し、実行することで本制御が実行される。
【0068】
CPU60Aは、選択スイッチ30から選択信号が入力されたか否かを判定する(
図5(以下、「
図5」を省略する)、ステップS100)。CPU60Aは、入力信号がない場合(ステップS100でNO)には、選択信号が入力されるまで待機する。
【0069】
CPU60Aは、選択信号が入力されると、選択信号に基づいて映像表示領域を決定する(ステップS102)。
【0070】
例えば、乗員が選択スイッチ30の「天井」スイッチ31を押圧することにより、制御部60に天井選択信号が入力されると、CPU60Aは、天井20の映像表示領域20FA、20RAを映像を表示する領域として決定する。
【0071】
次に、CPU60Aは、車室16内を撮影する室内カメラ42の撮像画像又は乗員検知センサ44の出力信号に基づいて、乗員が着座している車両用シート12(車両用シート12A~12D)を特定する(ステップS104)。例えば、全ての車両用シート12に乗員が着座していることを検知する(
図2A参照)。
【0072】
続いて、CPU60Aは、各車両用シート12に設けられたシート方向検知センサ52、シート位置検知センサ54、シート高さ検知センサ56、リクライニング角度検知センサ58の出力信号から車両用シート12の姿勢情報を取得する(ステップS106)。すなわち、各車両用シート12が向いている方向、車両前後方向及び車幅方向における各車両用シート12の位置、各車両用シート12の高さ、各車両用シート12のリクライニング角度を検知する。
【0073】
さらに、CPU60Aは、決定された映像表示領域に基づいて、ストレージ60Dの設定情報110に格納された車両用シート12の設定条件を読み出す(ステップS108)。例えば、選択された映像表示領域が天井の場合には、前列の車両用シート12A、12Bが映像表示領域20FAの直下に位置し、後列の車両用シート12C、12Dが映像表示領域20RAの直下に位置すると共に、全車両用シート12に対してリクライニング角度を大きくする設定条件が読み出される。
【0074】
次に、CPU60Aは、各車両用シート12の設定条件と車両用シート12の現在の姿勢(状態量)との差分である各車両用シート12の調整量を算出し、この調整量に基づいて各車両用シート12の駆動信号を生成する(ステップS110)。例えば、各車両用シート12を車両後方側に所定量移動させ、リクライニング角度を所定角度増大させる駆動信号が生成される。
【0075】
続いて、CPU60Aは、生成された駆動信号を入出力I/F60Fを介してシート調節機構80の各機構に送信する(ステップS112)。
【0076】
これにより、
図6A、
図6Bに示すように、シートスライド機構84が駆動されて車両用シート12が車両後方側に移動されて映像表示領域20FAの直下に前列の車両用シート12A、12Bが位置し、映像表示領域20RAの直下に後列の車両用シート12C、12Dが位置する。また、各車両用シート12がリクライニング角度を大きくされることで、各車両用シートの着座乗員の顔が映像表示領域20FA、20RAに向くようになる。
【0077】
この一連の処理を完全自動運転が終了されるまで繰り返される。
【0078】
なお、本実施形態では、全車両用シート12に着座乗員がいる場合でも、車両用シート12の一部のみに着座乗員がいる場合(一部に空席がある場合)でも、車両用シート12の姿勢の調節(制御)は変更しない。
【0079】
(効果)
したがって、着座乗員は、選択した映像表示領域20FA、20RAに対応して車両用シート12の姿勢(位置やリクライニング角度)を調節することなく、着座乗員の視聴に適切な状態に車両用シート12の姿勢が自動調節されるので、乗員が車両用シート12を調節する手間が省かれる。
【0080】
また、車両用シート12の調節を手動で行う場合、リクライニング角度を大きくした前列の車両用シート12A、12Bと、後列の車両用シート12C、12Dの着座乗員が干渉しないように、各車両用シート12を調節することが必要となる。したがって、各車両用シート12の着座乗員が他の車両用シート12の姿勢等を確認しながら調節しなくてはならず、調節に手間がかかるが、本実施形態の場合には上記干渉が生じないように、予め設定情報110に設定条件が格納されているため、乗員が車両用シート12を調節する手間が省略される。
【0081】
さらに、本実施形態では、全車両用シート12に着座乗員がいる場合でも、車両用シート12の一部のみに着座乗員がいる場合(一部に空席がある場合)でも、車両用シート12の姿勢の調節(制御)を変更しないため、制御が簡略化される。
【0082】
なお、上記処理では選択された映像表示領域が天井20であったが、他の映像表示領域が選択された場合にも同様の制御が行われる。以下、それぞれが選択された場合の制御とその効果を簡略に説明する。
【0083】
(「FR」スイッチ32が選択された場合)
すなわち、乗員が選択スイッチで「FR」スイッチ32を選択した場合には、上記と同様に、CPU60Aは、フロントウインドシールド22の映像表示領域22Aを映像を表示する領域に決定する(ステップS102)。また、CPU60Aは、決定された映像表示領域に対応した設定条件を設定情報110から読み出す。さらに、CPU60Aは、設定条件と各車両用シートの姿勢との差分である調整量を算出し、調整量に応じて生成された駆動信号をシート調節機構80に出力する。
【0084】
この駆動信号によってシートスライド機構84とシート回転機構88が駆動され、
図7Aに示すように、前列の車両用シート12A、12Bがそれぞれ車幅方向両端部(両側)に移動させられると共に、各車両用シート12A、12Bがそれぞれ映像表示領域22Aに向かって正対するように平面視で車両前方から車幅方向内側に向くように回転させられる。一方、後列の車両用シート12C、12Dは、車幅方向中央側に移動させられる。また、全車両用シート12は、リクライニング角度を大きくされる。
【0085】
(効果)
このように、前列の車両用シート12A、12Bを車幅方向両端部側に移動させると共に、後列の車両用シート12C、12Dに移動させることで、後列の車両用シート12C、12Dの着座乗員も前列の車両用シート12A、12B及びその着座乗員に邪魔されることなく、フロントウインドシールド22(の映像表示領域22A)に表示された映像を確実に視聴することができる(
図7A、
図7B参照)。すなわち、車両用シート12の着座乗員全員が映像表示領域22Aに表示される映像を視聴できるように、着座乗員が相互に車両用シート12の姿勢を調節することが不要となり、調節の煩雑さが解消される。
【0086】
また、車幅方向両端部に移動させられた車両用シート12A、12Bは、それぞれ平面視で車両前方から車幅方向中央側に傾斜した方向に向いているので、着座乗員がフロントウインドシールド22(の映像表示領域22A)に向くことになり、車幅方向両端部から確実に視聴できる。さらに、各車両用シート12がリクライニングされることにより、着座乗員が安楽姿勢で視聴可能にされる。
【0087】
(「SIDE L」スイッチ34が選択された場合)
乗員が選択スイッチで「SIDE L」スイッチ34を選択した場合には、上記と同様に、CPU60Aは、
図8に示すように、サイドガラス24L1、24L2の映像表示領域24L1A、24L2Aを映像を表示する領域として決定する(ステップS102)。また、CPU60Aは、決定された映像表示領域24L1A、24L2Aに対応した設定条件を設定情報110から読み出す。さらに、CPU60Aは、設定条件と各車両用シートの姿勢との差分である調整量を算出し、調整量に応じて生成された駆動信号をシート調節機構80に出力する。
【0088】
この駆動信号によってシートスライド機構84とシート回転機構88が駆動され、
図8に示すように、前列の車両用シート12A、12Bが平面視で車両後方から車幅方向左側に傾斜した角度に向けられ、後列の車両用シート12C、12Dが平面視で車両前方から車幅方向左側に傾斜した角度に向けられる。
【0089】
なお、前列左側の車両用シート12Bよりも前列右側の車両用シート12Aが車両後方側に位置するように、後列左側の車両用シート12Dよりも後列右側の車両用シート12Cが車両前方側に位置するように、各車両用シート12の位置が調節される。
【0090】
また、全車両用シート12は、リクライニング角度を大きくされる。
【0091】
ところで、この場合には、二つの映像表示領域24L1A、24L2Aで一画面として映像が表示される。
【0092】
(効果)
このように、前列の車両用シート12A、12Bを平面視で車両後方から車幅方向左側に向けたため、また後列の車両用シート12C、12Dを平面視で車両前方から車幅方向左側に向けたため、車両14の左側に位置する映像表示領域24L1A、24L2Aに全車両用シート12の着座乗員が向くことになり、映像表示領域24L1A、24L2Aに表示される映像の視聴が容易とされる。
【0093】
また、前列左側の車両用シート12Bよりも前列右側の車両用シート12Aが車両後方側に位置し、後列左側の車両用シート12Dよりも後列右側の車両用シート12Cが車両前方側に位置しているため、右側の車両用シート12A、12Cの着座乗員が左側の車両用シート12B、12D及びその着座乗員に邪魔されることなく、左側のサイドガラス24L1、24L2(の映像表示領域24L1A、24L2A)に表示された映像を確実に視聴することができる。さらに、各車両用シート12がリクライニングされることにより、着座乗員が安楽姿勢で視聴可能にされる。
【0094】
なお、「SIDE R」スイッチ33が選択された場合も、「SIDE L」スイッチ34が選択された場合と左右対称で同様なので説明を省略する。
【0095】
(「SIDE L」スイッチ34と「SIDE R」スイッチ33を同時に選択した場合)
乗員が選択スイッチ30で「SIDE L」スイッチ34と「SIDE R」スイッチ33を同時に選択した場合には、上記と同様に、CPU60Aは、
図9に示すように、サイドガラス24R1、24R2の映像表示領域24R1A、24R2Aと、サイドガラス24L1、24L2の映像表示領域24L1A、24L2Aを映像を表示する領域として決定する(ステップS102)。また、CPU60Aは、決定された映像表示領域24R1A、24R2A、24L1A、24L2Aに対応した設定条件を設定情報110から読み出す。さらに、CPU60Aは、設定条件と各車両用シート12の姿勢との差分である調整量を算出し、調整量に応じて生成された駆動信号をシート調節機構80に出力する。
【0096】
この駆動信号によってシートスライド機構84とシート回転機構88が駆動され、
図9に示すように、前列の車両用シート12A、12Bが車両前方側に移動され、後列の車両用シート12C、12Dが車両後方側に移動されることにより、前列の車両用シート12A、12Bと後列の車両用シート12C、12Dが離間される。
【0097】
また、
図9に示すように、前列右側の車両用シート12Aが平面視で車両後方から車幅方向右側に向けられ、後列右側の車両用シート12Cが平面視で車両前方から車幅方向右側に向けられる。また、
図9に示すように、前列左側の車両用シート12Bが平面視で車両後方から車幅方向左側に向けられ、後列左側の車両用シート12Dが平面視で車両前方から車幅方向外側左側に向けられる。すなわち、右側の車両用シート12A、12Cが右側のサイドガラス24R1、24R2の映像表示領域24R1A、24R2Aに向けられ、左側の車両用シート12B、12Dが左側のサイドガラス24L1、24L2の映像表示領域24L1A、24L2Aに向けられる。さらに、全車両用シート12は、リクライニング角度を大きくされる。
【0098】
ところで、この場合には、二つの映像表示領域24R1A、24R2Aで一画面としてまた、二つの映像表示領域24L1A、24L2Aで一画面として、それぞれ映像が表示される。
【0099】
(効果)
このように、右側の車両用シート12A、12Cを右側のサイドガラス24R1、24R2の映像表示領域24R1A、24R2Aに向け、左側の車両用シート12B、12Dを左側のサイドガラス24L1、24L2の映像表示領域24L1A、24L2Aに向けたため、各車両用シート12の着座乗員の顔が映像表示領域24R1A、24R2A又は映像表示領域24L1A、24L2Aに向くことになり、視聴が容易になる。また、各車両用シート12がリクライニングされることにより、着座乗員が安楽姿勢で視聴可能にされる。
【0100】
(「SEAT」スイッチ35を選択した場合)
乗員が選択スイッチで「SEAT」スイッチ35を選択した場合には、CPU60Aは、上記と同様に、最後列の車両用シート(本実施形態では車両用シート12C、12D)を除く車両用シート12A、12Bのシートバック90の後側からヘッドレスト92の後側にかけて設定された映像表示領域27RA、27LA(
図10参照)を映像を表示する領域として決定する(ステップS102)。また、CPU60Aは、決定された映像表示領域27RA、27LAに対応した設定条件を設定情報110から読み出す。また、CPU60Aは、設定条件と各車両用シートの姿勢との差分である調整量を算出し、調整量に応じて生成された駆動信号をシート調節機構80に出力する。
【0101】
この駆動信号によってシートリクライニング機構86が駆動され、
図10に示すように、前列の車両用シート12A、12Bが映像表示領域27RA、27LAが後列の車両用シート12C、12Dの着座乗員から視認されやすいように、車両用シート12A、12B及び車両用シート12C、12Dのリクライニング角度が調節される。
【0102】
また、シートスライド機構84が駆動され、前列の車両用シート12A、12Bと後列の車両用シート12C、12Dとの車両前後方向距離を所定距離とする。
【0103】
(効果)
このように、前列の車両用シート12A、12Bのリンライニング角度を調節して各車両用シート12A、12Bのシートバック90とヘッドレスト92の設定された映像表示領域27RA、27LAが後列の車両用シート12C、12Dの着座乗員から視聴しやすくなる。
【0104】
また、前列の車両用シート12A、12Bと後列の車両用シート12C、12Dの車両前後方向距離が所定距離とされることで映像表示領域27RA、27LAが後列の車両用シート12C、12Dの着座乗員から視聴しやすくなる。
【0105】
すなわち、後列の車両用シート12C、12Dの各着座乗員が各車両用シート12A、12Bの姿勢を調節せずとも、視聴しやすい姿勢に車両用シート12が自動で調節される。
【0106】
[バリエーション]
【0107】
以下、本実施形態のバリエーションを説明する。各バリエーションは、上記実施形態と略同様の構成であり、実施形態と同様の構成要素には同一の参照符号を付して、又は上記実施形態の説明で使用した図面を参照し、その詳細な説明を省略する。なお、各バリエーションについて、上記実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0108】
[バリエーション1]
【0109】
なお、上記実施形態では、全車両用シート12に着座乗員がいる場合について説明したが、一部の車両用シート12にだけ着座乗員がいる場合には、上記制御と同様に全車両用シート12の姿勢を制御しても良いが、下記のように変更することも可能である。
【0110】
バリエーション1に係るシート制御装置10では、CPU60Aが、乗員による選択スイッチ30の操作から映像が表示される映像表示領域、例えば、フロントウインドシールド22の映像表示領域22Aを決定する。この場合において、CPU60Aは、乗員検知機構40の出力信号から車両用シート12A、12Bに着座乗員がいること、及び車両用シート12C、12Dが空席である(着座乗員がいない)ことを検知する(
図11参照)。この際、CPU60Aは、上記条件に基づいた設定条件をストレージ60Dの設定情報110から読み出す(ステップS108参照)。
【0111】
なお、設定情報110には、決定された映像表示領域と共に、着座シート情報(乗員が着座した車両用シート12の(配置)情報)に基づいた設定条件がそれぞれ格納されている。
【0112】
この設定条件と各車両用シート12の姿勢情報との差分である車両用シート12の調整量を算出し、この調整量に基づいて生成された駆動信号がシート調節機構80に出力されることで、各車両用シート12の姿勢が調節される。
【0113】
上記実施形態の場合には、
図7Aに示すように、全車両用シート12に着座乗員がいるため、前列の車両用シート12A、12Bを左右の車幅方向端部に移動させると共に、後列の車両用シート12C、12Dを車幅方向中央側に移動させることで、後列の車両用シート12C、12Dの着座乗員が前列の車両用シート12A、12B及びその着座乗員に邪魔されることなく視聴可能としている。
【0114】
しかし、本バリエーション1では、
図11に示すように、後列の車両用シート12C、12Dには着座乗員がいないため、各車両用シート12の位置を動かさない。
【0115】
このように、着座乗員のいる車両用シート12(の配置)を考慮した設定条件に基づいて車両用シート12の姿勢制御を行うことで、車両用シート12の調節量を抑制することができる。
【0116】
なお、本バリエーション1では、フロントウインドシールド22の映像表示領域22Aが選択された場合を例示したが、他の映像表示領域が選択された場合でも同様である。例えば、天井20の映像表示領域20FA、20RAが選択された場合でも、後列の車両用シート12C、12Dに着座乗員がいない場合には、前列の車両用シート12A、12Bのみ映像表示領域20FAの下部に移動させると共に、リクライニング角度を大きくして着座乗員の顔が映像表示領域20FAに向けられるように車両用シート12A、12Bの姿勢が調節される(不図示。
図6A、
図6B参考)。換言すれば、車両用シート12C、12Dは姿勢制御されず、当初の状態が維持される。すなわち、車両用シート12A、12Bのみの姿勢を調節すれば良いので、車両用シート12の調節量が抑制される。
【0117】
[バリエーション2]
【0118】
バリエーション2に係るシート制御装置が適用される車両14には、
図12に示すように、車室16に車幅方向及び車両上下方向に延在する隔壁28が設けられている。この隔壁28により、車室16は、前列の車両用シート12A、12B側と後列の車両用シート12C、12D側に隔てられている。隔壁28の車両後方側には、映像表示領域28Aが設けられている。
【0119】
また、選択スイッチ30には、
図3に二点鎖線で示すように、選択する映像表示領域が隔壁28であることを示す「PARTITION」スイッチ36がさらに設けられている。
【0120】
(作用)
乗員が選択スイッチ30で「PARTITION」スイッチ36を選択した場合には、上記と同様に、CPU60Aは、
図12に示すように、隔壁28に設けられた映像表示領域28Aを映像を表示する領域として決定する(ステップS102)。また、CPU60Aは、着座シートの情報(例えば、全車両用シート12に着座乗員有り)及び決定された映像表示領域に基づく設定条件を設定情報110から読み出す。さらに、CPU60Aは、設定条件と各車両用シートの姿勢の差分である調整量を算出し、調整量に基づいて生成された駆動信号をシート調節機構80に出力する。
【0121】
この駆動信号によってシートスライド機構84が駆動され、
図12に示すように、後列の車両用シート12C、12Dが車両後方側に移動され、隔壁28(映像表示領域28A)から所定距離離間される。
【0122】
(効果)
このように、後列の車両用シート12C、12Dを車両後方側に移動させて隔壁28(映像表示領域28A)から所定距離離間させることにより、後列の車両用シート12C、12Dの着座乗員から映像表示領域28Aに表示される映像が視聴しやすくなる。
【0123】
すなわち、後列の車両用シート12の各着座乗員が各車両用シート12の姿勢を調節せずとも、自動で視聴しやすい姿勢に車両用シート12を調節可能である。
【0124】
[バリエーション3]
バリエーション3に係るシート制御装置10では、乗員が選択スイッチ30で「SIDE L」スイッチ34と「SIDE R」スイッチ33を同時に連続2回押圧した場合には、着座乗員が個別に映像表示領域24R1A、24R2A、24L1A、24L2Aで視聴可能なように車両用シート12が姿勢制御される。
【0125】
(作用)
乗員が選択スイッチ30で「SIDE L」スイッチ34と「SIDE R」スイッチ33を同時に連続2回押圧した場合には、CPU60Aは、
図12に示すように、サイドガラス24R1、24R2、24L1、24L2に設けられた映像表示領域24R1A、24R2A、24L1A、24L2Aを映像を表示する領域として決定する(ステップS102)。また、CPU60Aは、着座シートの情報(例えば、全車両用シート12に着座乗員有り)及び決定された映像表示領域に基づく設定条件を設定情報110から読み出す。さらに、CPU60Aは、設定条件と各車両用シートの姿勢の差分である調整量を算出し、調整量に基づいて生成された駆動信号をシート調節機構80に出力する。
【0126】
この場合には、駆動信号によってシート回転機構88が駆動される。これにより、
図13に示すように、右側の車両用シート12A、12Cが平面視で車両前方から車幅方向右側に向けられ、左側の車両用シート12B、12Dが平面視で車両前方から車幅方向左側に向けられる。すなわち、右側の車両用シート12A、12Cが右側のサイドガラス24R1、24R2に設定された映像表示領域24R1A、24R2Aにそれぞれ向けられ、左側の車両用シート12B、12Dが左側のサイドガラス24L1、24L2に設定され映像表示領域24L1A、24L2Aにそれぞれ向けられる。
【0127】
(効果)
このように、右側の車両用シート12A、12Cが右側の各映像表示領域24R1A、24R2Aにそれぞれ向けられ、左側の車両用シート12B、12Dが左側の映像表示領域24L1A、24L2Aにそれぞれ向けられたため、各車両用シート12の着座乗員がそれぞれ映像表示領域24R1A、24R2A、24L1A、24L2Aに向くことになり、各映像表示領域に表示された映像の視聴が容易になる。また、各車両用シート12に着座した乗員が個別に映像表示領域24R1A、24R2A、24L1A、24L2Aを視聴するため、各映像表示領域24R1A、24R2A、24L1A、24L2Aに別々の映像を流すことも可能である。
【0128】
[その他]
【0129】
なお、上記では本開示に係る処理プログラム100が制御部60のストレージ60Dに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、本開示に係る処理プログラム100は、HDD、SSD、DVD等の非一時的記録媒体に記録されている形態で提供することも可能である。
【0130】
さらに、本実施形態では、乗員の姿勢がリラックスできると共に視聴可能な姿勢として、車両用シートの姿勢を予め設定条件を設定したものとしたが、乗員個々の体格に応じて調節しても良い。例えば、室内カメラ42の撮像映像より、乗員が想定されている座高(アイポイント)よりも所定値以上低い場合(例えば、子供の場合)、車両用シート12の高さを上昇させるように調整量を変更することが考えられる。すなわち、チルト機構82を駆動して車両用シート12の高くすることで、乗員が映像表示領域に表示された映像を視聴しやすることが考えられる。
【0131】
また、一連の実施形態では、制御部60で選択された映像表示領域に応じて車両用シート12の向き(方向)、車両前後方向位置、車幅方向位置、リクライニング角度等を設定し、シート調節機構80で調節していたが、制御部60では、車両用シート12の向き(方向)、車両前後方向位置、車幅方向位置、リクライニング角度の少なくても一つを設定し、シート調節機構80で調節するだけでも良い。
【0132】
さらに、本実施形態のシート制御では、車両用シート12を映像に視聴可能な状態に調節するだけであったが、映像終了後に車両用シート12を原位置に復帰するように構成しても良い。
【0133】
また、本実施形態では、乗員による映像表示領域の選択を選択スイッチ30の押圧によって行ったが、他の手段でも良い。例えば、タッチパネル操作や音声入力でも良い。
【0134】
さらに、本実施形態では、設定条件と各車両用シート12の姿勢・位置との差分である調整量に基づいて各車両用シート12の姿勢・位置が調節されたが、これに限定されるものではない。例えば、車両用シート12が位置、姿勢を最大限調節できるように調整量が設定されており、車両用シート12が目標位置、目標リンクライン角度に到達したことを検知されることで車両用シート12の調節を停止し、車両用シート12を所定位置・姿勢に調節するものでも良い。
【符号の説明】
【0135】
10 シート制御装置
12 車両用シート
14 車両
20FA、20RA、22A、24R1A、24R2A、24L1A、24L2A、26A、27RA、27LA、28A 映像表示領域
40 乗員検知機構
42 室内カメラ
44 乗員検知センサ(シートセンサ)
80 シート調節機構(調節部)
200 選択部(第1決定部)
220 姿勢検知部(第2決定部)
230 設定部(第2決定部)
240 調整部(第2決定部)