(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】試験装置、圧入方法および、マイクロ流路デバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20240723BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20240723BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N1/00 101G
G01N37/00 101
(21)【出願番号】P 2021139555
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2020149834
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一平
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/163688(WO,A1)
【文献】特開2008-151772(JP,A)
【文献】国際公開第2019/107231(WO,A1)
【文献】特開2010-019852(JP,A)
【文献】特開2017-067620(JP,A)
【文献】特開2018-198543(JP,A)
【文献】国際公開第2007/052471(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/08
G01N 37/00
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流路デバイスを用いて、検体を含む試験液を用いる試験を行う試験装置であって、
前記マイクロ流路デバイスは、
前記試験液を受ける第1開口と、
前記第1開口と連通する複数の分岐流路と、
各々の前記分岐流路に連通する複数のマイクロ流路と、
前記第1開口と連通する側の反対にある各々の前記分岐流路の端部に設けられ、前記試験液の一部を回収する回収部と、
前記回収部に設けられる第2開口と、を有し、
前記第1開口に接続され、空気圧を付与して前記マイクロ流路に前記試験液を圧入する加圧部と、
前記第2開口の開閉の状態を切り替える開閉部と、
前記加圧部および前記開閉部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記開閉部で前記第2開口を閉じた状態に制御し、前記加圧部で前記マイクロ流路に前記試験液を圧入し、
前記マイクロ流路に前記試験液を圧入した後、前記開閉部で前記第2開口を開いた状態に制御し、前記加圧部で空気圧を付与して前記分岐流路の前記試験液を前記回収部に回収させる、試験装置。
【請求項2】
前記開閉部は、弾性部材で前記第2開口を塞ぐことで閉じた状態に制御する機構を有する、請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記加圧部は、
前記試験液を吸引または排出するピペットと、
前記ピペットと前記マイクロ流路デバイスとの相対位置を変更するための移動機構と、を有し、
前記移動機構で前記ピペットを前記第1開口に接続し、吸引した前記試験液を前記第1開口に排出することで前記マイクロ流路に前記試験液を圧入する、請求項1または請求項2に記載の試験装置。
【請求項4】
前記試験液の揮発を抑える封止材を塗布する塗布部をさらに備え、
前記マイクロ流路デバイスは、前記分岐流路と連通する側から見て下流側に設けられる第3開口を、さらに有し、
前記塗布部は、前記試験液を圧入した前記マイクロ流路の少なくとも前記第1開口および前記第3開口に前記封止材を塗布する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の試験装置。
【請求項5】
前記封止材は、シリコーンオイルである、請求項4に記載の試験装置。
【請求項6】
検体を含む試験液をマイクロ流路デバイスに圧入する圧入方法であって、
前記マイクロ流路デバイスは、前記試験液を受ける第1開口と、前記第1開口と連通する複数の分岐流路と、各々の前記分岐流路に連通する複数のマイクロ流路と、前記第1開口と連通する側の反対にある各々の前記分岐流路の端部に設けられ、前記試験液の一部を回収する回収部と、前記回収部に設けられる第2開口と、を有し、
前記第2開口を閉じるステップと、
前記試験液を吸引したピペットを前記第1開口に接続するステップと、
吸引した前記試験液を前記第1開口に排出することで前記マイクロ流路に前記試験液を圧入するステップと、
前記第2開口を開くステップと、
前記ピペットで空気圧を付与して前記分岐流路の前記試験液を前記回収部に回収させるステップとを含む、圧入方法。
【請求項7】
前記マイクロ流路デバイスは、前記分岐流路と連通する側から見て下流側に設けられる第3開口を、さらに有し、
前記試験液を圧入した前記マイクロ流路の少なくとも前記第1開口および前記第3開口に前記試験液の揮発を抑える封止材を塗布するステップをさらに含む、請求項6に記載の圧入方法。
【請求項8】
前記封止材は、シリコーンオイルである、請求項7に記載の圧入方法。
【請求項9】
検体を含む試験液を使用する試験に用いるマイクロ流路デバイスであって、
前記試験液を受ける第1開口と、
前記第1開口と連通する複数の分岐流路と、
各々の前記分岐流路に連通する複数のマイクロ流路と、
前記第1開口と連通する側の反対にある各々の前記分岐流路の端部に設けられ、前記試験液の一部を回収する回収部と、
前記回収部に設けられる第2開口と、を備える、マイクロ流路デバイス。
【請求項10】
前記回収部は、前記分岐流路の端部に連通し、前記分岐流路の体積より大きいバッファ空間である、請求項9に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項11】
前記バッファ空間に吸水部材を設ける、請求項10に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項12】
前記マイクロ流路の流路抵抗は、前記分岐流路の流路抵抗より大きい、請求項9~請求項11のいずれか1項に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項13】
前記第2開口を被うガス透過膜をさらに備える、請求項9~請求項12のいずれか1項に記載のマイクロ流路デバイス。
【請求項14】
前記回収部は、少なくとも一部に開口部を有し、
前記開口部を被うガス透過膜をさらに備える、請求項9~請求項12のいずれか1項に記載のマイクロ流路デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験液をマイクロ流路に圧入して測定する試験装置、圧入方法および、マイクロ流路デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌薬に対する細菌の感受性などを試験するため、特許文献1等のようにマイクロ流路デバイスを用いて試験する方法が知られている。例えば、特許文献1では、外部に連通する導入口および排出口と、導入口から供給された試験液が排出口側に流れる流路と、を備えるマイクロ流路デバイスに、導入口から流路の内部に空気を圧入して先に導入した試験液を微細な流路に押し込む。流路には、導入口から供給された試験液が貯留される反応部が設けられ、当該反応部に配置された薬剤が細菌に作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロ流路に試験液を満たす場合、毛細管現象や圧力を用いる方法が知られているが、特許文献1のように空気を圧入する方法がマイクロ流路に確実かつ迅速に試験液を充填できる有効な方法である。しかし、1つの導入口から複数の流路に分岐するマイクロ流路デバイスに試験液を圧入した場合、各流路間もしくは導入口から各流路に至る部分において液面の高さ(液頭)に差が生じる場合があり、当該差により各流路内で試験液に流れが発生することがある。反応部内で試験液に流れが発生すると、正しい結果を観察することができなくなる可能性がある。
【0005】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、流路内で発生する試験液の流れを抑え、正しい結果を観察することができる試験装置、圧入方法および、マイクロ流路デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の試験装置は、マイクロ流路デバイスを用いて、検体を含む試験液を用いる試験を行う試験装置であって、マイクロ流路デバイスは、試験液を受ける第1開口と、第1開口と連通する複数の分岐流路と、各々の分岐流路に連通する複数のマイクロ流路と、第1開口と連通する側の反対にある各々の分岐流路の端部に設けられ、試験液の一部を回収する回収部と、回収部に設けられる第2開口と、を有し、第1開口に接続され、空気圧を付与してマイクロ流路に試験液を圧入する加圧部と、第2開口の開閉の状態を切り替える開閉部と、加圧部および開閉部を制御する制御部と、を備え、制御部は、開閉部で第2開口を閉じた状態に制御し、加圧部でマイクロ流路に試験液を圧入し、マイクロ流路に試験液を圧入した後、開閉部で第2開口を開いた状態に制御し、加圧部で空気圧を付与して分岐流路の試験液を回収部に回収させる。
【0007】
本開示の圧入方法は、検体を含む試験液をマイクロ流路デバイスに圧入する圧入方法であって、マイクロ流路デバイスは、試験液を受ける第1開口と、第1開口と連通する複数の分岐流路と、各々の分岐流路に連通する複数のマイクロ流路と、第1開口と連通する側の反対にある各々の分岐流路の端部に設けられ、試験液の一部を回収する回収部と、回収部に設けられる第2開口と、を有し、第2開口を閉じるステップと、試験液を吸引したピペットを第1開口に接続するステップと、吸引した試験液を第1開口に排出することでマイクロ流路に試験液を圧入するステップと、第2開口を開くステップと、ピペットで空気圧を付与して分岐流路の試験液を回収部に回収させるステップとを含む。
【0008】
本開示のマイクロ流路デバイスは、検体を含む試験液を使用する試験に用いるマイクロ流路デバイスであって、試験液を受ける第1開口と、第1開口と連通する複数の分岐流路と、各々の分岐流路に連通する複数のマイクロ流路と、第1開口と連通する側の反対にある各々の分岐流路の端部に設けられ、試験液の一部を回収する回収部と、回収部に設けられる第2開口と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記の試験装置、圧入方法および、マイクロ流路デバイスによれば、流路内で発生する試験液の流れを抑え、正しい結果を観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に従う試験装置の全体構成例を示す図である。
【
図2】本実施の形態に従う試験装置におけるピペットノズルの周辺構成例を示す図である。
【
図3】本実施の形態に従う試験装置の制御を説明するためのブロック図である。
【
図4】本実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの構成例を示す図である。
【
図5】本実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの流路に試験液を圧入した構成例を示す図である。
【
図6】本実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの流路に試験液を圧入した後の状態を示す図である。
【
図7】本実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの分岐流路から試験液を排出した後の状態を示す図である。
【
図8】本実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの分岐流路から試験液を排出する方法を説明するための図である。
【
図9】本実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの開口に封止材を塗布した状態を示す図である。
【
図10】本実施の形態に従う試験装置の圧入方法を説明するためのフローチャートである。
【
図11】変形例に従う回収部および開口の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[装置構成]
図1は、本実施の形態に従う試験装置の全体構成例を示す図である。
図2は、本実施の形態に従う試験装置におけるピペットノズルの周辺構成例を示す図である。
図3は、本実施の形態に従う試験装置の制御を説明するためのブロック図である。なお、本開示の試験装置は、マイクロ流路デバイスのマイクロ流路に検体を含む試験液を圧入して試験液を測定する装置であり、抗菌薬(薬剤)に対する細菌の感受性を測定するために試験液をマイクロ流路に圧入する例を一例として以下説明する。試験液は、検体を含む。検体は、菌(具体例では病原菌)であってもよい。具体例では、試験液は、細菌の懸濁液であってもよい。もちろん、本開示の試験装置は、マイクロ流路デバイスのマイクロ流路に圧入する試験液であれば、上述の試験液に限定されない。
【0013】
図1~
図3を参照して、試験装置100は、試験液設置部10、ピペットノズル駆動部12、テーブル駆動部13、ポンプ14、ピペットノズル15、テーブル16、開閉部30、開閉駆動部31、塗布部32、ポンプ33、塗布駆動部34および制御部50を含む。
【0014】
試験液設置部10は、試験液を収容した試験液容器5を複数並べることができるラックである。試験液設置部10は、試験装置100に対してラック単位で複数の試験液容器5をセットすることができる。
【0015】
ピペットノズル15は、着脱可能なピペットチップ1を取り付け、ピペットチップ1の先端部を通じて試験液容器5から試験液を吸引または排出する。ピペットノズル駆動部12は、ピペットノズル15に接続されたポンプ14と、ピペットノズル15を水平移動、および昇降移動させる。ピペットノズル駆動部12は、例えば、ソレノイドアクチュエータやステッピングモータによってピペットノズル15を自在に移動させることができる。
【0016】
テーブル16は、マイクロ流路デバイスを載置するための支持部材である。テーブル16は、平板状に形成され、マイクロ流路デバイスを上面に固定する。テーブル駆動部13は、テーブル16を水平方向に移動させることができる。テーブル駆動部13は、例えば、ソレノイドアクチュエータやステッピングモータによってテーブル16を自在に移動させることができる。もちろん、テーブル駆動部13は、テーブル16を昇降移動させるようにして、ピペットノズル15を昇降移動させないようにしてもよい。なお、少なくともピペットノズル駆動部12およびテーブル駆動部13は、ピペットノズル15とマイクロ流路デバイスとの相対位置を変更するための移動機構である。
【0017】
ポンプ14は、図示していないが、例えばシリンジと、シリンジ内を往復動作可能なプランジャと、プランジャを駆動する駆動モータとを含む。ポンプ14は、配管を介してピペットノズル15に接続した状態で、プランジャを往復運動させることによって、ピペットチップ1内の空気圧を調整して試験液をピペットチップ1内に吸入させたり、ピペットチップ1内の試験液を外部に排出させたりすることができる。また、ポンプ14は、ピペットチップ1内の試験液を外部に排出した状態で、さらにプランジャをシリンジ内に押し込む方向に移動させることで、ピペットチップ1外に空気を送り出すことができる。
【0018】
開閉部30は、後述するマイクロ流路デバイスの開口(第2開口)を開閉する機構である。具体的に、開閉部30は、弾性部材で開口を塞ぐことで閉じた状態に制御する機構であって、例えば、棒状の支持部の先にシリコーン樹脂30aが設けてある。開閉部30は、ピペットノズル15に対して予め定められた位置に取り付けてあるので、ピペットノズル15をマイクロ流路デバイスの開口(第1開口)に移動させることで第2開口の位置に移動する。開閉駆動部31は、第2開口の位置に移動した開閉部30を駆動し、シリコーン樹脂30aを昇降移動させ第2開口にシリコーン樹脂30aを押し当てて塞ぎ、第2開口を閉じた状態に制御する。なお、
図1および
図2では、図示を簡略化する目的で開閉部30を1つのみ図示しているが、開閉の必要がある第2開口の数に合わせて複数の開閉部30を設ける。また、開閉駆動部31は、シリコーン樹脂30aを昇降移動させるだけでなく、ピペットノズル15に対して開閉部30を相対的に移動させてもよい。
【0019】
塗布部32は、マイクロ流路デバイスの開口などから圧入した試験液が揮発することを抑える目的で、当該開口などに封止材を塗布する。具体的に、塗布部32は、例えばシリコーンオイルなどの封止材を開口などに排出するノズルであり、ポンプ33によって当該ノズルで封止材を開口などに塗布する。塗布部32の構成はこれに限定されず、ブラシなどで封止材を開口などに塗布する機構でもよい。塗布駆動部34は、封止材を塗布するマイクロ流路デバイスの開口などの位置に塗布部32を移動させ、ポンプ33を駆動する。
図1および
図2では、塗布部32がピペットノズル15と同じ移動機構に設けられる構成で図示されているが、塗布部32をピペットノズル15と異なる移動機構に設け、塗布駆動部34で塗布部32を移動させてもよい。なお、試験液の揮発が問題にならなければ、試験装置100に塗布部32を設けなくてもよい。
【0020】
制御部50は、試験装置100の動作を制御する。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサーと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random access memory)のようなメモリーを備える。メモリーは、制御プログラムを記憶する。プロセッサーが、制御プログラムを実行することによって、試験装置100の動作を制御する。なお、制御部50のメモリーが、HDD(Hard Disk Drive)を備えてもよい。
【0021】
制御部50は、マイクロ流路デバイスを所定の位置となるように、テーブル駆動部13のモータを制御してテーブル16を移動させる。また、制御部50は、マイクロ流路デバイスを所定の位置まで移動した後、マイクロ流路デバイスのマイクロ流路の開口に試験液を排出させるため、ピペットノズル駆動部12のモータを制御してピペットノズル15を移動させる。さらに、制御部50は、開閉駆動部31を制御してマイクロ流路デバイスの開口(第2開口)の開閉の状態を切り替える。また、制御部50は、塗布駆動部34を制御してマイクロ流路デバイスの開口などに封止材を塗布する。
【0022】
具体的には、制御部50は、ピペットノズル駆動部12のモータを制御して、所定の試験液容器5の位置にピペットノズル15を移動させ、ポンプ14を制御して試験液容器5内の試験液をピペットチップ1の先端部から吸引する。その後、制御部50は、ピペットノズル駆動部12のモータを制御して、マイクロ流路デバイスの開口の位置にピペットノズル15を移動させ、ポンプ14を制御して試験液をピペットチップ1の先端部から排出する。
【0023】
制御部50は、パーソナルコンピュータ(PC)や専用のコンピュータによって実現される演算処理装置200と接続することができる。使用者が、演算処理装置200を介して、試験装置100を管理することができる。例えば、演算処理装置200では、テーブル駆動部13によるテーブル16の移動量、ピペットノズル駆動部12によるピペットノズル15の移動量、ポンプ14によるピペットチップ1の先端部から吸引または排出する試験液の量などを設定することができる。演算処理装置200は、試験装置100に隣接して配置された他の装置と電気的に接続され試験システムを構成してもよい。
【0024】
[マイクロ流路デバイスの構成]
図4は、本実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの構成例を示す図である。
図4では、マイクロ流路デバイス2の平面図を示している。マイクロ流路デバイス2は、試験装置100のテーブル16に載置される。
【0025】
図4に示すように、マイクロ流路デバイス2は、板状部材20と、流路構造とを備える。流路構造は、開口部21、開口22(第1開口)、分岐流路23a、マイクロ流路23b、貯留部24、開口26(第3開口)、ガス透過膜27、回収部28、および開口29(第2開口)を備える。なお、マイクロ流路デバイス2は、開口26(第3開口)を有していない構成であってもよい。
【0026】
開口22は、開口部21内に設けられ、開口部21と分岐流路23aとを連通させる部分である。つまり、開口22は、分岐流路23aの一方の端部に接続される。開口22からは、流体圧を用いて試験液が分岐流路23aへと圧入される。分岐流路23aに圧入された試験液は、さらにマイクロ流路23bへと圧入される。本実施形態では、流体圧として空気圧が用いられる。開口22は、例えば、断面が円形状に形成される。開口22の直径は、例えば5μm~5mmである。本実施形態では、開口22には、4本の分岐流路23aが接続される。4本の分岐流路23aは、開口22を中心として放射状に配置される。
【0027】
本実施形態では、開口22に、4本の分岐流路23aが接続されるが、本発明の実施形態の内容はこれに限定されない。開口22に、少なくとも1本の分岐流路23aが接続されればよい。また、開口22に、2本の分岐流路23aが接続されてもよいし、開口22に、3本の分岐流路23aが接続されてもよい。更に、開口22に、5本以上の分岐流路23aが接続されてもよい。
【0028】
開口22から延びた分岐流路23aは、さらに複数のマイクロ流路23bに分岐する。分岐流路23aは、複数のマイクロ流路23bに対して試験液が流動可能に接続されている。開口22から流入した試験液は、分岐流路23aを経て分岐した複数のマイクロ流路23bに流動する。分岐流路23aおよびマイクロ流路23bの断面は矩形状であり、分岐流路23aおよびマイクロ流路23bの幅は、例えば1μm~1mmである。しかし、分岐流路23aとマイクロ流路23bとで深さ(高さ)が異なる。例えば、分岐流路23aの深さが0.5mmであるのに対して、マイクロ流路23bの深さが0.025mmと小さい。そのため、分岐流路23aに比べマイクロ流路23bの流路抵抗が大きくなっている。分岐流路23aに比べマイクロ流路23bの流路抵抗を大きくすることで、後述するように開口22から流入した試験液が、一旦分岐流路23aを満たした後に、複数のマイクロ流路23bに対してほぼ一斉に流入することができる。なお、本実施形態では、1本の分岐流路23aから、14本のマイクロ流路23bに分岐している。
【0029】
分岐流路23aは、複数のマイクロ流路23bに分岐するまでX軸方向に沿って配置され、分岐後、各々のマイクロ流路23bはY軸方向に沿って配置される。分岐後の各々のマイクロ流路23bの途中には貯留部24が設けられている。各々のマイクロ流路23bは、開口22から流入した試験液を貯留部24に流動させる。
【0030】
貯留部24は、薬剤が配置され、分岐流路23aおよびマイクロ流路23bを介して開口22と接続され、開口22から流入した試験液を貯留する。貯留部24において、試験液は薬剤と反応する。薬剤は、例えば、抗菌薬である。薬剤は、固体であってもよいし、液体であってもよい。薬剤は、貯留部24に、予め載置される。すなわち、貯留部24に試験液が流入する前に、薬剤は貯留部24に載置される。本実施形態では、薬剤は貯留部24の全体に塗布されている。
【0031】
貯留部24は、直方体状に形成される。貯留部24の一辺の長さは、例えば10μm~10mmである。
【0032】
図4では、板状部材20に56個(=14個×4)の貯留部24が形成されている。56個の貯留部24に貯留される試験液の容量は互いに同一である。一方、56個の貯留部24に載置される薬剤の種類および薬剤の量は、互いに同一であってもよいし、互いに相違してもよい。
【0033】
貯留部24から開口26までの間にあるマイクロ流路23bは、試験液が流動可能に構成される。このマイクロ流路23bは、Y軸方向に沿って配置される。マイクロ流路23bの一方の端部は貯留部24に接続され、マイクロ流路23bの他方の端部は開口26に接続される。マイクロ流路23bは、貯留部24から流入した試験液を開口26に流動させる。
【0034】
開口26は、マイクロ流路23bの他方の端部に接続される。開口26は、例えば、断面が円形状に形成される。開口26の直径は、例えば5μm~5mmである。
【0035】
開口26は、ガス透過膜27で被われる。具体的に、
図4では、板状部材20に56個(=14個×4)の開口26が形成される。56個の開口26のうち、板状部材20においてY軸の正方向端に形成された28個の開口26が1枚のガス透過膜27で被われ、板状部材20においてY軸の負方向端に形成された28個の開口26が1枚のガス透過膜27で被われる。2枚のガス透過膜27の各々は、X軸方向に沿って配置される。
【0036】
ガス透過膜27は、気体を透過させ、且つ液体を透過させない機能を有する。ガス透過膜27の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。ガス透過膜27は、撥水性を有することが好ましい。ガス透過膜27の厚みは、1mm以下である。
【0037】
ガス透過膜27は、板状部材20に、接着剤による接着、超音波融着等で固定される。接着剤としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、感圧性樹脂等が挙げられる。
【0038】
回収部28は、開口22が接続される端と反対側の分岐流路23aの端に接続され、試験液の一部を回収する部分である。回収部28は、直方体状に形成される。回収部28の一辺の長さは、例えば10μm~10mmである。回収部28にスポンジなどの水分を吸収する部材(吸水部材)を設けてもよい。これにより、回収部28から分岐流路23aへの逆流を防止できるとともに、分岐流路23aからの試験液の揮発を防止できる。
【0039】
開口29は、分岐流路23aが接続される端と反対側の回収部28の端に接続されている。開口22から開口29までは、分岐流路23aおよび回収部28により試験液が流動可能に構成される。また、開口29は、開閉部30のシリコーン樹脂30aにより塞ぐことで閉じた状態になる。開口29を閉じることで、分岐流路23aに流入した試験液が回収部28および開口29に排出されないように制御し、開口29を開けることで分岐流路23aに残った試験液を回収部28に排出させて回収することができる。
【0040】
図5は、本実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの流路に試験液を圧入した構成例を示す図である。板状部材20は、
図5の上側の第1板状部材20aと下側の第2板状部材20bとを備える。第2板状部材20bは、第1板状部材20aに積層される。第2板状部材20bは、第1板状部材20aに対して
図4に示すZ軸の負方向(下方向)に配置される。
【0041】
第1板状部材20aおよび第2板状部材20bは、透明な材料で矩形板状に形成される。第1板状部材20aおよび第2板状部材20bの材料としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂のようなアクリル樹脂、ガラスなどが挙げられる。第1板状部材20aには、流路構造が形成される。具体的に、第1板状部材20aには、開口22、分岐流路23a、マイクロ流路23b、貯留部24、開口26、および回収部28(
図4参照)が形成される。第2板状部材20bは、開口22、分岐流路23a、マイクロ流路23b、貯留部24、開口26、および回収部28の下面として機能する。第1板状部材20aおよび第2板状部材20bの厚みは、特に限定されないが、例えば、0.5mm~3mmに設定される。なお、第2板状部材20bは、超音波溶融により第1板状部材20aに直接固定されるが、接着剤を介して固定されてもよい。
【0042】
本実施の形態では、ピペットチップ1で吸入した試験液を、マイクロ流路デバイス2の開口部21に排出し、排出した試験液を空気圧で加圧して開口22からマイクロ流路23bに圧入する。試験液を加圧してマイクロ流路23bに圧入するため、マイクロ流路23bに連通する開口部21を覆う圧入パッド(図示せず)を設けてもよい。しかし、圧入パッドを設けた場合、開口部21に圧入パッドを押し当てて、試験液に空気圧を加えてマイクロ流路23bに圧入すると、試験液が圧入パッドに付着して汚染される可能性がある。圧入パッドは、別のマイクロ流路デバイスに対しても繰り返し使用されるため、別の試験液を測定する際に、以前に測定した試験液が混入(コンタミネーション)して試験結果に影響を与える可能性がある。
【0043】
そこで、ピペットチップ1に取り付け可能な圧入パッドを用意し、試験液を加圧してマイクロ流路23bに圧入する際、圧入パッドで開口部21を覆いつつ、ピペットチップ1から空気圧を送り込む。その後、ピペットチップ1とともに圧入パッドを廃棄してもよい。そのため、試験液のコンタミネーションを防止し、精度の高い試験結果が得られる。
【0044】
図5に示すように、ピペットチップ1から流入された試験液は、開口22、分岐流路23aを経てマイクロ流路23b、貯留部24、および開口26を満たす。しかし、マイクロ流路デバイス2は、複数のマイクロ流路23bが分岐流路23aを介して連通している。そのため、1つの開口22から分岐流路23aを経て複数のマイクロ流路23bに分岐するマイクロ流路デバイス2に試験液を圧入した場合、各流路間もしくは開口22から各流路に至る部分において液面の高さ(液頭)に差が生じると、当該差により各流路内で試験液に流れが発生する。
【0045】
図6は、本実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの流路に試験液を圧入した後の状態を示す図である。
図6に示す上側の経路を経路A、下側の経路を経路Bとする。開口22から流入した試験液は、分岐流路23aを経て経路Aのマイクロ流路23b、経路Bのマイクロ流路23bに分かれ、各々の開口26に至る。
図6に示すように経路Bの方が経路Aより開口22からの距離が長いため、経路Aの開口26の液頭の方が、経路Bの開口26の液頭より高くなっている。経路Aと経路Bとで液頭に差が生じているので、当該差を解消するために経路Aと経路Bとの間で試験液に流れが発生する。経路Aおよび経路Bの貯留部24内で試験液に流れが発生すると、正しい結果を観察することができなくなる可能性がある。
【0046】
そこで、本実施の形態では、複数のマイクロ流路23bに試験液を圧入した後に分岐流路23aに残った試験液を回収部28に排出する。分岐流路23aに残った試験液を排出することで、分岐流路23aを介して複数のマイクロ流路23bおよび開口26が繋がり全体として1つの流路とみなせないように各流路を独立させ、液頭差による流れを防止する。
【0047】
図7は、本実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの分岐流路から試験液を排出した後の状態を示す図である。
図7に示す上側の経路を経路A、下側の経路を経路Bとする。分岐流路23aから試験液を排出することで、経路Aのマイクロ流路23bと、経路Bのマイクロ流路23bとは分岐流路23aを介して1つの流路とみなせなくなる。そのため、経路Aの開口26の液頭の方が、経路Bの開口26の液頭より高くなっていても、当該差を解消するために経路Aと経路Bとの間で試験液の流れは発生しない。
【0048】
図8は、本実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの分岐流路から試験液を排出する方法を説明するための図である。
図8では、分岐流路23aに複数のマイクロ流路23bが接続され、分岐流路23aの一方の端に回収部28が接続され、分岐流路23aが接続される端と反対側の回収部28の端に開口29が設けられている。図示していないが、分岐流路23aは、回収部28が接続される端と反対側の端で開口22と接続している。
【0049】
分岐流路23aに試験液が流入されると、分岐流路23aに比べ各々のマイクロ流路23bの流路抵抗が大きいので、分岐流路23aをすべて試験液で満たした後でないと、各々のマイクロ流路23bに試験液が流入しない。分岐流路23aに比べ各々のマイクロ流路23bの流路抵抗を大きくするには、分岐流路23aの断面積を各々のマイクロ流路23bの断面積より大きくすればよい。分岐流路23aの幅と各々のマイクロ流路23bの幅とが同じであれば、分岐流路23aの深さを各々のマイクロ流路23bの深さより深くする。例えば、分岐流路23aの深さを0.5mmとすると、各々のマイクロ流路23bの深さを0.001mmとすれば、分岐流路23aの断面積を各々のマイクロ流路23bの断面積の500倍とすることができる。
【0050】
分岐流路23aに試験液を流入する場合、開口29は開閉部30のシリコーン樹脂30aで塞がれ閉じられた状態である。そのため、分岐流路23aに流入した試験液は、この段階では回収部28へ排出されない。分岐流路23aをすべて試験液で満たした後、
図8に示すように、試験液は、各々のマイクロ流路23bにほぼ一斉に流入する。これにより、各々のマイクロ流路23bおよび各々の貯留部24に試験液が流入する。
【0051】
その後、開口29を塞いでいる開閉部30のシリコーン樹脂30aを取り除き、開口29を開いた状態で開口22から空気を送り込むことで、
図8に示すように分岐流路23a内に残った試験液を回収部28に排出する。なお、開口22から送り込む空気は、試験液を圧入するためにピペットチップ1から排出する空気を利用することができる。回収部28は、排出される分岐流路23a内の試験液を保持する空間(バッファ空間)があり、当該空間は分岐流路23aの体積よりも大きい。
【0052】
回収部28に分岐流路23a内の試験液を排出するか否かは、開口29の開閉により制御することができる。分岐流路23a内に残った試験液は、開口22から空気によって回収部28へ排出される。
【0053】
本実施の形態では、各々のマイクロ流路23bに試験液を圧入し、分岐流路23a内に残った試験液を回収部28に排出した後、開口22、開口26、開口29などにシリコーンオイルなどの封止材を塗布する。
図9は、本実施の形態に従うマイクロ流路デバイスの開口に封止材を塗布した状態を示す図である。
図9に示すように、塗布部32で開口22、開口26、開口29(
図8参照)などにシリコーンオイル33aを塗布する。開口22、開口26、開口29などにシリコーンオイル33aを塗布することで、各々のマイクロ流路23bの試験液が開口22、開口26、開口29などから揮発するのを抑制できる。なお、開口26にはガス透過膜27が設けられているので、少なくとも開口22および開口29にシリコーンオイル33aを塗布する。
【0054】
開口22、開口26、開口29などに塗布する封止材は、シリコーンオイル33aに限定されず、開口22、開口26、開口29などに留まり試験液の揮発を抑える材料であれば何れの材料でもよい。
【0055】
次に、本実施の形態に従う試験装置の圧入方法を、フローチャートを用いて説明する。
図10は、本実施の形態に従う試験装置の圧入方法を説明するためのフローチャートである。まず、試験装置100の制御部50は、ピペットノズル駆動部12のモータを制御して、所定の試験液容器5の位置にピペットノズル15を移動させ、ポンプ14を制御して試験液容器5内の試験液をピペットチップ1の先端部から吸引する(ステップS11)。制御部50は、ピペットノズル駆動部12のモータを制御して、マイクロ流路デバイス2の開口22の位置にピペットノズル15を移動させる(ステップS12)。
【0056】
なお、ピペットノズル15に対する開閉部30の位置は、マイクロ流路デバイス2の開口22に対する開口29の位置に応じて予め定められている。そのため、ステップS12でピペットノズル15をマイクロ流路デバイス2の開口22の位置に合わせると、開閉部30は、開口29の真上の位置まで移動している。制御部50は、開閉駆動部31で弾性部材(シリコーン樹脂30a)を、開口29を塞ぐ位置まで移動させる(ステップS13)。制御部50は、すべての開口29を塞ぐ位置まで弾性部材(シリコーン樹脂30a)を移動させたか否かで、開口29を閉じたか否かを判断する(ステップS14)。すべての開口29を閉じていないと判断した場合(ステップS14でNO)、制御部50は、処理をステップS13に戻す。
【0057】
すべての開口29を閉じたと判断した場合(ステップS14でYES)、制御部50は、ポンプ14を制御して試験液をピペットチップ1の先端部から排出して、マイクロ流路デバイス2の流路(分岐流路23a、マイクロ流路23b)へ試験液を圧入する(ステップS15)。
【0058】
制御部50は、すべてのマイクロ流路デバイス2の流路に試験液を圧入したか否かを判断する(ステップS16)。なお、制御部50は、例えば、マイクロ流路デバイス2の流路に試験液を圧入する時間、ピペットチップ1内の試験液の残量に基づきすべてのマイクロ流路デバイス2の流路に試験液を圧入したか否かを判断する。すべてのマイクロ流路デバイス2の流路に試験液を圧入していない場合(ステップS16でNO)、制御部50は、処理をステップS15に戻す。
【0059】
すべてのマイクロ流路デバイス2の流路に試験液を圧入した場合(ステップS16でYES)、制御部50は、開閉駆動部31で弾性部材(シリコーン樹脂30a)を、開口29を塞ぐ位置から移動させて、開口29を開く(ステップS17)。制御部50は、ポンプ14を制御してピペットチップ1の先端部から空気を排出して、分岐流路23a内に残った試験液を回収部28に排出する(ステップS18)。
【0060】
制御部50は、ピペットノズル駆動部12のモータを制御して、開口22,26,29の位置に塗布部32を移動させ、開口22,26,29に封止材を塗布する(ステップS19)。
【0061】
[変形例]
(1)本実施の形態に係る試験装置100では、開口29を開閉部30のシリコーン樹脂30aで塞いで開口29を閉じた状態としたが、これに限定されず、開口29の開閉の状態を切り替える構成であればいずれの構成でもよい。例えば、マイクロ流路デバイス2の開口29に予め開閉機構(シャッターなど)が設けられている場合、開閉部30は、当該開閉機構の状態を切り替える構成でもよい。
【0062】
(2)本実施の形態に係る試験装置100では、開口22,26,29に封止材を塗布すると説明したが、これに限定されず、試験液の揮発を抑えることができればいずれの構成でもよい。例えば、開口22,26,29にあらかじめ用意したカバーを付けることで、試験液の揮発を抑えてもよい。
【0063】
(3)本実施の形態に係る試験装置100では、例えば、開口29の断面が円形状に形成され、回収部28と連通している。そのため、開口29を開いた状態で開口22から空気を送り込み分岐流路23a内に残った試験液を回収部28に排出する場合、送り込む空気の圧力によっては、試験液が回収部28に排出されるだけでなく、開口29から溢れ出る可能性がある。そこで、開口29をガス透過膜で被う。
図11は、変形例に従う回収部および開口の構成を示す図である。
図11(a)は、複数のマイクロ流路23bが接続された分岐流路23aの端に回収部28が設けられた部分の平面図がある。
図11(b)は、
図11(a)に示す回収部28の切断線Iでの断面図である。
【0064】
図11(b)には、開口29を被うガス透過膜27aが図示されている。ガス透過膜27aは、開口26を被うガス透過膜27と同じ材料でも、異なる材料でもよく、気体を透過させ、且つ液体を透過させない機能を有していればよい。ガス透過膜27aの材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。ガス透過膜27aは、撥水性を有することが好ましい。ガス透過膜27aの厚みは、1mm以下である。
【0065】
開口29をガス透過膜27aで被うことにより、分岐流路23a内に残った試験液を回収部28に排出する際に、開口29から試験液が溢れ出ることを防止することができる。なお、開口29を閉じた状態とするためには、ガス透過膜27aの上から開口29を開閉部30のシリコーン樹脂30aで塞ぐ必要がある。
【0066】
このように、開口29(第2開口)を被うガス透過膜27aをさらに備えることで、分岐流路23a内に残った試験液を回収部28に排出する際に、試験液が回収部28に留まらず開口29から排出されてしまうリスクを低減することができる。
【0067】
図11(b)では、分岐流路23aが接続される端と反対側の回収部28の端に開口29が設けられているが、回収部28自体に開口部を設けることで開口29を設けない構成を実現できる。開口29を設けない構成であっても、回収部28に設けた開口部を開いた状態で開口22から空気を送り込み分岐流路23a内に残った試験液を回収部28に排出する必要がある。そのため、送り込む空気の圧力によっては、試験液が回収部28に排出されるだけでなく、回収部28に設けた開口部から溢れ出る可能性がある。
【0068】
図11(c)は、
図11(b)に示す回収部28の変形例である。
図11(c)には、回収部28の上面にある第1板状部材20aの全てが取り除いて設けた開口部28aが図示されている。さらに、回収部28に設けた開口部28aは、ガス透過膜27bに被われている。回収部28の上面の全面に開口部28aを設けることで、ガス透過膜27bの全面が試験液に触れる可能性がなく、常にガス透過膜27bから空気が抜ける状態となり、分岐流路23a内に残った全ての試験液を排出しやすくなる。なお、開口部28aは、回収部28の上面の全面に設ける必要はなく、回収部28へ排出される試験液の量に対して十分な大きさを持っていれば回収部28の上面の少なくとも一部に設けるだけでもよい。
【0069】
ガス透過膜27bは、開口26を被うガス透過膜27と同じ材料でも、異なる材料でもよく、気体を透過させ、且つ液体を透過させない機能を有していればよい。ガス透過膜27bの材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。ガス透過膜27bは、撥水性を有することが好ましい。ガス透過膜27bの厚みは、1mm以下である。
【0070】
回収部28に設けた開口部28aをガス透過膜27bで被うことにより、分岐流路23a内に残った試験液を回収部28に排出する際に、開口部28aから試験液が溢れ出ることを防止することができる。なお、開口部28aを閉じた状態とするためには、ガス透過膜27bの上から開口部28aの全体を開閉部30のシリコーン樹脂30aで塞ぐ必要がある。
【0071】
このように、回収部28は、少なくとも一部に開口部28aを有し、開口部28aを被うガス透過膜27bをさらに備えることで、分岐流路23a内に残った全ての試験液を排出しやすくできるとともに、試験液が回収部28に留まらず開口部28aから排出されてしまうリスクを低減することができる。
【0072】
[態様]
上述した実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0073】
(第1項)
一態様に係る試験装置は、マイクロ流路デバイスを用いて、検体を含む試験液を用いる試験を行う試験装置であって、マイクロ流路デバイスは、試験液を受ける第1開口と、第1開口と連通する複数の分岐流路と、各々の分岐流路に連通する複数のマイクロ流路と、第1開口と連通する側の反対にある各々の分岐流路の端部に設けられ、試験液の一部を回収する回収部と、回収部に設けられる第2開口と、を有し、第1開口に接続され、空気圧を付与してマイクロ流路に試験液を圧入する加圧部と、第2開口の開閉の状態を切り替える開閉部と、加圧部および開閉部を制御する制御部と、を備え、制御部は、開閉部で第2開口を閉じた状態に制御し、加圧部でマイクロ流路に試験液を圧入し、マイクロ流路に試験液を圧入した後、開閉部で第2開口を開いた状態に制御し、加圧部で空気圧を付与して分岐流路の試験液を回収部に回収させる。
【0074】
第1項に記載の試験装置によれば、分岐流路の試験液を回収部に排出して回収させることができるので、流路内で発生する試験液の流れを抑え、正しい結果を観察することができる。
【0075】
(第2項)
第2項に記載の試験装置であって、開閉部は、弾性部材で第2開口を塞ぐことで閉じた状態に制御する機構を有する。
【0076】
第2項に記載の試験装置によれば、弾性部材で第2開口を塞ぐので、装置構成が簡略化でき、簡単に第2開口を閉じた状態にすることができる。
【0077】
(第3項)
第3項に記載の試験装置であって、加圧部は、試験液を吸引または排出するピペットと、ピペットとマイクロ流路デバイスとの相対位置を変更するための移動機構と、を有し、移動機構でピペットを第1開口に接続し、吸引した試験液を第1開口に排出することでマイクロ流路に試験液を圧入する。
【0078】
第3項に記載の試験装置によれば、マイクロ流路デバイスの各々のマイクロ流路に対して試験液を容易に圧入することができる。
【0079】
(第4項)
第4項に記載の試験装置であって、試験液の揮発を抑える封止材を塗布する塗布部をさらに備え、マイクロ流路デバイスは、分岐流路と連通する側から見て下流側に設けられる第3開口を、さらに有し、塗布部は、試験液を圧入したマイクロ流路の少なくとも第1開口および第3開口に封止材を塗布する。
【0080】
第4項に記載の試験装置によれば、第1開口および第3開口に封止材を塗布するので、開口から試験液の揮発を防ぐことができる。
【0081】
(第5項)
第5項に記載の試験装置であって、封止材は、シリコーンオイルである。
【0082】
第5項に記載の試験装置によれば、封止材がシリコーンオイルであるので、開口に対して封止材を塗布するのが容易である。
【0083】
(第6項)
一態様に係る圧入方法は、検体を含む試験液をマイクロ流路デバイスに圧入する圧入方法であって、マイクロ流路デバイスは、試験液を受ける第1開口と、第1開口と連通する複数の分岐流路と、各々の分岐流路に連通する複数のマイクロ流路と、第1開口と連通する側の反対にある各々の分岐流路の端部に設けられ、試験液の一部を回収する回収部と、回収部に設けられる第2開口と、を有し、第2開口を閉じるステップと、試験液を吸引したピペットを第1開口に接続するステップと、吸引した試験液を第1開口に排出することでマイクロ流路に試験液を圧入するステップと、第2開口を開くステップと、ピペットで空気圧を付与して分岐流路の試験液を回収部に回収させるステップとを含む。
【0084】
第6項に記載の圧入方法によれば、分岐流路の試験液を回収部に排出して回収させることができるので、流路内で発生する試験液の流れを抑え、正しい結果を観察することができる。
【0085】
(第7項)
第7項に記載の圧入方法であって、マイクロ流路デバイスは、分岐流路と連通する側から見て下流側に設けられる第3開口を、さらに有し、試験液を圧入したマイクロ流路の少なくとも第1開口および第3開口に試験液の揮発を抑える封止材を塗布するステップをさらに含む。
【0086】
第7項に記載の圧入方法によれば、第1開口および第3開口に封止材を塗布するので、開口から試験液の揮発を防ぐことができる。
【0087】
(第8項)
第8項に記載の圧入方法であって、封止材は、シリコーンオイルである。
【0088】
第8項に記載の圧入方法によれば、封止材がシリコーンオイルであるので、開口に対して封止材を塗布するのが容易である。
【0089】
(第9項)
一態様に係るマイクロ流路デバイスは、検体を含む試験液を使用する試験に用いるマイクロ流路デバイスであって、試験液を受ける第1開口と、第1開口と連通する複数の分岐流路と、各々の分岐流路に連通する複数のマイクロ流路と、第1開口と連通する側の反対にある各々の分岐流路の端部に設けられ、試験液の一部を回収する回収部と、回収部に設けられる第2開口と、を備える。
【0090】
第9項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、分岐流路の試験液を回収部に排出して回収させることができるので、流路内で発生する試験液の流れを抑え、正しい結果を観察することができる。
【0091】
(第10項)
第10項に記載のマイクロ流路デバイスであって、回収部は、分岐流路の端部に連通し、分岐流路の体積より大きいバッファ空間である。
【0092】
第10項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、回収部が、分岐流路の体積より大きいバッファ空間であるので、分岐流路内に残った試験液をすべて回収することができる。
【0093】
(第11項)
第11項に記載のマイクロ流路デバイスであって、バッファ空間に吸水部材を設ける。
【0094】
第11項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、回収部から分岐流路への逆流を防止できるとともに、分岐流路からの試験液の揮発を防止できる。
【0095】
(第12項)
第12項に記載のマイクロ流路デバイスであって、マイクロ流路の流路抵抗は、分岐流路の流路抵抗より大きい。
【0096】
第12項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、マイクロ流路の流路抵抗が、分岐流路の流路抵抗より大きいので、分岐流路の試験液を各々のマイクロ流路にほぼ一斉に流入させることができる。
【0097】
(第13項)
第13項に記載のマイクロ流路デバイスであって、第2開口を被うガス透過膜をさらに備える。
【0098】
第13項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、分岐流路内に残った試験液を回収部に排出する際に、試験液が回収部に留まらず開口から排出されてしまうリスクを低減することができる。
【0099】
(第14項)
第14項に記載のマイクロ流路デバイスであって、回収部は、少なくとも一部に開口部を有し、開口部を被うガス透過膜をさらに備える。
【0100】
第14項に記載のマイクロ流路デバイスによれば、分岐流路内に残った全ての試験液を排出しやすくできるとともに、試験液が回収部に留まらず開口部から排出されてしまうリスクを低減することができる。
【0101】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0102】
1 ピペットチップ、2 マイクロ流路デバイス、5 試験液容器、10 試験液設置部、12 ピペットノズル駆動部、13 テーブル駆動部、14,33 ポンプ、15 ピペットノズル、16 テーブル、21,28a 開口部、22,26,29 開口、23 分岐流路、23b マイクロ流路、24 貯留部、27,27a,27b ガス透過膜、28 回収部、30 開閉部、31 開閉駆動部、32 塗布部、34 塗布駆動部、50 制御部、100 試験装置、200 演算処理装置。