(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0562 20100101AFI20240723BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/491 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/44 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/454 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240723BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240723BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M50/457
H01M50/491
H01M50/44
H01M50/434
H01M50/454
H01M50/489
H01M10/0585
(21)【出願番号】P 2021155101
(22)【出願日】2021-09-24
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】後藤 一平
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/151363(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106654362(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110581314(CN,A)
【文献】国際公開第2021/153594(WO,A1)
【文献】特開2016-031789(JP,A)
【文献】特開2014-096311(JP,A)
【文献】特開2021-163759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05 - 10/0587
H01M 50/40 - 50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層、固体電解質層、負極層をこの順で有する固体電池であって、
前記固体電解質層は、第1固体電解質層、第2固体電解質層
、第3固体電解質層を有し、
前記第1固体電解質層は、
前記負極層に隣接して配置され、
前記第3固体電解質層は、前記正極層に隣接して配置され、
前記第2固体電解質層は、前記第1固体電解質層
と前記第3固体電解質層との間に配置され、
前記第1固体電解質層
と前記第3固体電解質層は、固体電解質を含み、
前記第2固体電解質層は、空孔を有する支持体、及び、前記固体電解質を含み、当該支持体の表面及び空孔内部に前記固体電解質が配置されているシートであ
り、
前記支持体の空隙率が80%であり、
前記第2固体電解質層の厚さが20μm以上25μm以下であり、
前記第1固体電解質層、及び、前記第3固体電解質層の厚さが3μm以上5μm以下であることを特徴とする固体電池。
【請求項2】
前記支持体が不織布である、請求項
1に記載の固体電池。
【請求項3】
前記固体電解質が硫化物系固体電解質である、請求項1
又は2に記載の固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電池は、正極と負極の間に介在する電解質として、有機溶媒を含む電解液に替えて固体電解質を用いるという点で注目されている。
【0003】
特許文献1には、不織布、及び、不織布の表面及び内部に固体電解質を含む固体電解質シートが開示されている。
【0004】
特許文献2には、結晶性酸化物系無機固体電解質粒子が、基材上に一層に担持されてなるセパレータであって、セパレータの両面で固体電解質粒子が露出しており、固体電解質粒子の露出率はセパレータの両面それぞれ10~100%であり、基材が不織布である旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-031789号公報
【文献】特開2020-188026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固体電池の容量維持率向上の観点から、固体電池の固体電解質層として支持体を含む固体電解質層が用いられる。
支持体を含む固体電解質層を用いた固体電池は、固体電解質層と、正極及び負極との接触抵抗が高い。そのため、支持体を含む固体電解質層を用いた固体電池は、所望の容量維持率を維持しつつ、電池抵抗を低減することが求められる。
【0007】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、支持体を含む固体電解質層を用いた場合であっても、容量維持率が高く、電池抵抗の低い固体電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の固体電池は、正極層、固体電解質層、負極層をこの順で有する固体電池であって、
前記固体電解質層は、第1固体電解質層、第2固体電解質層を有し、
前記第1固体電解質層は、前記正極層又は前記負極層に隣接して配置され、
前記第2固体電解質層は、前記第1固体電解質層に隣接して配置され、
前記第1固体電解質層は、固体電解質を含み、
前記第2固体電解質層は、空孔を有する支持体、及び、前記固体電解質を含み、当該支持体の表面及び空孔内部に前記固体電解質が配置されているシートであることを特徴とする。
【0009】
本開示の固体電池は、前記固体電解質層は、さらに第3固体電解質層を有し、
前記第1固体電解質層は、前記負極層に隣接して配置され、
前記第3固体電解質層は、前記正極層に隣接して配置され、
前記第2固体電解質層は、前記第1固体電解質層と前記第3固体電解質層との間に配置され、
前記第3固体電解質層は、前記固体電解質を含んでもよい。
【0010】
本開示の固体電池は、前記支持体の空隙率が70%以上、90%以下であってもよい。
【0011】
本開示の固体電池は、前記支持体が不織布であってもよい。
【0012】
本開示の固体電池は、前記固体電解質が硫化物系固体電解質であってもよい。
【0013】
本開示の固体電池は、前記第2固体電解質層の厚さが10μm以上25μm以下であってもよい。
【0014】
本開示の固体電池は、前記第1固体電解質層、及び、前記第3固体電解質層の厚さが3μm以上10μm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示は、支持体を含む固体電解質層を用いた場合であっても、容量維持率が高く、電池抵抗の低い固体電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は本開示の固体電池の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の固体電池は、正極層、固体電解質層、負極層をこの順で有する固体電池であって、
前記固体電解質層は、第1固体電解質層、第2固体電解質層を有し、
前記第1固体電解質層は、前記正極層又は前記負極層に隣接して配置され、
前記第2固体電解質層は、前記第1固体電解質層に隣接して配置され、
前記第1固体電解質層は、固体電解質を含み、
前記第2固体電解質層は、空孔を有する支持体、及び、前記固体電解質を含み、当該支持体の表面及び空孔内部に前記固体電解質が配置されているシートであることを特徴とする。
【0018】
図1は、本開示の固体電池の一例を示す断面模式図である。
図1に示すように、固体電池100は、負極集電体11と負極層12と第1固体電解質層13と第2固体電解質層14と第3固体電解質層15と正極層16と正極集電体17をこの順に備える。
【0019】
本開示の固体電池は、正極層、固体電解質層、負極層をこの順で有する。
本開示の固体電池は、正極層を含む正極、固体電解質層、負極層を含む負極を備えていてもよい。
【0020】
[固体電解質層]
固体電解質層は、少なくとも第1固体電解質層、第2固体電解質層を有し、必要に応じてさらに第3固体電解質層を有してもよい。
固体電解質層が2層構成の場合、第1固体電解質層は、正極層又は負極層に隣接して配置される。
固体電解質層が2層構成の場合、第2固体電解質層は、第1固体電解質層に隣接して配置される。
固体電解質層が3層構成の場合、第1固体電解質層は、負極層に隣接して配置される。
固体電解質層が3層構成の場合、第3固体電解質層は、正極層に隣接して配置される。
固体電解質層が3層構成の場合、第2固体電解質層は、第1固体電解質層と第3固体電解質層との間に配置される。
【0021】
第2固体電解質層は、空孔を有する支持体、及び、固体電解質を含む。
第2固体電解質層は、支持体の表面及び空孔内部に固体電解質が配置されているシートである。支持体の表面及び空孔内部に固体電解質を配置することにより、正極および負極と固体電解質との接触面積が増えて電池抵抗を低減することができる。
【0022】
支持体は、空孔を有するものであれば特に限定されず、例えば、不織布であってもよい。織布は繊維間の空間で構成される細孔径の分布が狭いのに対して、不織布は細孔径の分布が広く、細孔容積が大きい細孔と小さい細孔とが存在する。表面及び空孔内部に固体電解質を含む不織布を用いると、小さい細孔が固体電解質の脱落を効果的に抑制して、自立性と可撓性とを担い、大きい細孔がイオンパスを形成する機能を持つ。
不織布に用いられる繊維の材料は、特に限定されず、固体電解質に悪影響を及ぼさず、絶縁性と可撓性をそなえた繊維であってもよい。繊維の材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の樹脂が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、及び、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。ポリアミド系樹脂としては、例えばナイロン、及び、アラミド等が挙げられる。また、繊維の材料としては、ガラスを用いてもよい。すなわち、不織布は、ガラス繊維不織布であってもよい。不織布を構成する繊維の繊維径および繊維長は、特に限定されない。
不織布の種類としては、例えば、ケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、エアレイ不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ニードルパンチ不織布、およびステッチボンド不織布等が挙げられる。
【0023】
支持体の空隙率は、特に限定されないが、例えば50%以上であり、60%以上であってもよく、70%以上であってもよい。支持体の空隙率が小さすぎると、内部抵抗が増加しやすい。一方、支持体の空隙率は、例えば95%以下であり、90%以下であってもよい。支持体の空隙率が大きすぎると、支持体として機能しない可能性がある。支持体の空隙率は、例えば、不織布の断面観察により求めることができる。また、空孔(空隙)の大きさは、特に限定されない。
支持体における空孔の合計体積に対する、固体電解質の合計体積の割合は、例えば50体積%以上であり、70体積%以上であってもよく、90体積%以上であってもよい。
支持体の厚さは、例えば1μm以上であり、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。一方、支持体の厚さは、例えば25μm以下であってもよい。支持体の厚さは、第2固体電解質層の厚さと同じであってもよい。
【0024】
第2固体電解質層の厚さは、10μm以上25μm以下であってもよい。
第2固体電解質層の厚さを10μm以上とすることにより、支持体の表面及び空孔内部に固体電解質を含み、固体電解質が空孔内部にも分布し、かつ、支持体の裏まで貫通させることができる。このため、上述のような機能を担保することが可能になる。また、第2固体電解質層の厚さを25μm以下とすることにより、固体電池のインピーダンスの上昇を抑制することができ、固体電池の放電容量の減少を抑制することができる。
【0025】
第2固体電解質層を形成する方法としては、例えば、基材の上に設置された支持体の表面に、固体電解質を含む塗工液(固体電解質層用ペースト)を塗布乾燥することにより形成する方法等が挙げられる。これにより、塗工液が乾燥された後支持体を基材から剥離することで、自立した第2固体電解質層として作製される。支持体の基材としては、固体電解質層用ペーストに使用される溶媒としてのキシレン等に溶解しないものであれば特に限定されず、例えば、金属箔、ガラス板、及び、ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
【0026】
第1固体電解質層及び第3固体電解質層は、固体電解質を含む。
第1固体電解質層、及び、第3固体電解質層の厚さは、3μm以上10μm以下であってもよい。第1固体電解質層の厚さと第3固体電解質層の厚さは、同じであっても異なっていてもよい。
第1固体電解質層及び第3固体電解質層を形成する方法としては、固体電解質を含む固体電解質材料の粉末を加圧成形する方法等が挙げられる。固体電解質材料の粉末を加圧成形する場合には、通常、1MPa以上2000MPa以下程度のプレス圧を負荷する。
加圧方法としては、特に制限されないが、正極層の形成において例示する加圧方法が挙げられる。
【0027】
固体電解質層に含有させる固体電解質としては、固体電池に使用可能な公知の固体電解質を適宜用いることができ、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質、水素化物系固体電解質、ハロゲン化物系固体電解質、及び、窒化物系固体電解質等の無機固体電解質が挙げられる。硫化物系固体電解質は、アニオン元素の主成分として、硫黄(S)を含有してもよい。酸化物系固体電解質は、アニオン元素の主成分として、酸素(O)を含有してもよい。水素化物系固体電解質は、アニオン元素の主成分として、水素(H)を含有してもよい。ハロゲン化物系固体電解質は、アニオン元素の主成分として、ハロゲン(X)を含有してもよい。窒化物系固体電解質は、アニオン元素の主成分として、窒素(N)を含有してもよい。
【0028】
硫化物系固体電解質としては、例えば、Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、LiX-Li2S-SiS2、LiX-Li2S-P2S5、LiX-Li2O-Li2S-P2S5、LiX-Li2S-P2O5、LiX-Li3PO4-P2S5、及びLi3PS4等が挙げられる。なお、上記「Li2S-P2S5」の記載は、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなる材料を意味し、他の記載についても同様である。また、上記LiXの「X」は、ハロゲン元素を示す。上記LiXを含む原料組成物中にLiXは1種又は2種以上含まれていてもよい。LiXが2種以上含まれる場合、2種以上の混合比率は特に限定されるものではない。
硫化物系固体電解質における各元素のモル比は、原料における各元素の含有量を調整することにより制御できる。また、硫化物系固体電解質における各元素のモル比や組成は、例えば、ICP発光分析法で測定することができる。
【0029】
硫化物系固体電解質は、硫化物ガラスであってもよく、結晶化硫化物ガラス(ガラスセラミックス)であってもよく、原料組成物に対する固相反応処理により得られる結晶質材料であってもよい。
硫化物系固体電解質の結晶状態は、例えば、硫化物系固体電解質に対してCuKα線を使用した粉末X線回折測定を行うことにより確認することができる。
【0030】
硫化物ガラスは、原料組成物(例えばLi2SおよびP2S5の混合物)を非晶質処理することにより得ることができる。非晶質処理としては、例えば、メカニカルミリングが挙げられる。
【0031】
ガラスセラミックスは、例えば、硫化物ガラスを熱処理することにより得ることができる。
熱処理温度は、硫化物ガラスの熱分析測定により観測される結晶化温度(Tc)よりも高い温度であればよく、通常、195℃以上である。一方、熱処理温度の上限は特に限定されない。
硫化物ガラスの結晶化温度(Tc)は、示差熱分析(DTA)により測定することができる。
熱処理時間は、ガラスセラミックスの所望の結晶化度が得られる時間であれば特に限定されるものではないが、例えば1分間~24時間の範囲内であり、中でも、1分間~10時間の範囲内が挙げられる。
熱処理の方法は特に限定されるものではないが、例えば、焼成炉を用いる方法を挙げることができる。
【0032】
酸化物系固体電解質としては、例えば、Li元素、Y元素(Yは、Nb、B、Al、Si、P、Ti、Zr、Mo、W、Sの少なくとも一種である)、および、O元素を含有する固体電解質が挙げられる。酸化物系固体電解質の具体例としては、Li7La3Zr2O12、Li7-xLa3(Zr2-xNbx)O12(0≦x≦2)、Li5La3Nb2O12等のガーネット型固体電解質;(Li,La)TiO3、(Li,La)NbO3、(Li,Sr)(Ta,Zr)O3等のペロブスカイト型固体電解質;Li(Al,Ti)(PO4)3、Li(Al,Ga)(PO4)3のナシコン型固体電解質;Li3PO4、LIPON(Li3PO4のOの一部をNで置換した化合物)等のLi-P-O系固体電解質;Li3BO3、Li3BO3のOの一部をCで置換した化合物等のLi-B-O系固体電解質が挙げられる。
【0033】
水素化物系固体電解質は、例えば、Liと、水素を含有する錯アニオンと、を有する。錯アニオンとしては、例えば、(BH4)-、(NH2)-、(AlH4)-、および(AlH6)3-等が挙げられる。
ハロゲン化物系固体電解質としては、例えば、Li6 3zYzX6(XはClおよびBrの少なくとも一種であり、zは0<z<2を満たす)等が挙げられる。
窒化物系固体電解質としては、例えばLi3N等が挙げられる。
【0034】
固体電解質の形状は、取扱い性が良いという観点から粒子状であってもよい。
固体電解質の粒子の平均粒径は、特に限定されないが、例えば10nm以上であり、100nm以上であってもよい。一方、固体電解質の粒子の平均粒径は、例えば25μm以下であり、10μm以下であってもよい。固体電解質の粒子の平均粒径は、支持体の厚さよりも小さくてもよく、支持体の空孔の孔径よりも小さくてもよい。
【0035】
本開示において、粒子の平均粒径は、特記しない限り、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定により測定される体積基準のメディアン径(D50)の値である。また、本開示においてメディアン径(D50)とは、粒径の小さい粒子から順に並べた場合に、粒子の累積体積が全体の体積の半分(50%)となる径(体積平均径)である。
【0036】
固体電解質は、1種単独で、又は2種以上のものを用いることができる。また、2種以上の固体電解質を用いる場合、2種以上の固体電解質を混合してもよく、又は2層以上の固体電解質それぞれの層を形成して多層構造としてもよい。
固体電解質層中の固体電解質の割合は、特に限定されるものではないが、例えば50質量%以上であり、60質量%以上100質量%以下の範囲内であってもよく、70質量%以上100質量%以下の範囲内であってもよく、100質量%であってもよい。
【0037】
固体電解質層には、可塑性を発現させる等の観点から、結着剤を含有させることもできる。そのような結着剤としては、正極層に用いられる結着剤として例示する材料等を例示することができる。ただし、高出力化を図り易くするために、固体電解質の過度の凝集を防止し且つ均一に分散された固体電解質を有する固体電解質層を形成可能にする等の観点から、固体電解質層に含有させる結着剤は5質量%以下としてもよい。
【0038】
[正極]
正極は、正極層を含み、必要に応じて正極集電体を含む。
【0039】
[正極層]
正極層は、正極活物質を含み、任意成分として、固体電解質、導電材、及びバインダー等が含まれていてもよい。
【0040】
正極活物質の種類について特に制限はなく、固体電池の活物質として使用可能な材料をいずれも採用可能である。正極活物質は、例えば、金属リチウム(Li)、リチウム合金、LiCoO2、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、LiNixCo1-xO2(0<x<1)、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiMnO2、異種元素置換Li-Mnスピネル、チタン酸リチウム、リン酸金属リチウム、LiCoN、Li2SiO3、及びLi4SiO4、遷移金属酸化物、TiS2、Si、SiO2、Si合金及びリチウム貯蔵性金属間化合物等を挙げることができる。異種元素置換Li-Mnスピネルは、例えばLiMn1.5Ni0.5O4、LiMn1.5Al0.5O4、LiMn1.5Mg0.5O4、LiMn1.5Co0.5O4、LiMn1.5Fe0.5O4、及びLiMn1.5Zn0.5O4等である。チタン酸リチウムは、例えばLi4Ti5O12等である。リン酸金属リチウムは、例えばLiFePO4、LiMnPO4、LiCoPO4、及びLiNiPO4等である。遷移金属酸化物は、例えばV2O5、及びMoO3等である。リチウム貯蔵性金属間化合物は、例えばMg2Sn、Mg2Ge、Mg2Sb、及びCu3Sb等である。
リチウム合金としては、Li-Au、Li-Mg、Li-Sn、Li-Si、Li-Al、Li-B、Li-C、Li-Ca、Li-Ga、Li-Ge、Li-As、Li-Se、Li-Ru、Li-Rh、Li-Pd、Li-Ag、Li-Cd、Li-In、Li-Sb、Li-Ir、Li-Pt、Li-Hg、Li-Pb、Li-Bi、Li-Zn、Li-Tl、Li-Te、及びLi-At等が挙げられる。Si合金としては、Li等の金属との合金等が挙げられ、その他、Sn、Ge、及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属との合金であってもよい。
正極活物質の形状は特に限定されるものではないが、粒子状であってもよい。正極活物質が粒子状である場合、正極活物質は一次粒子であってもよく、二次粒子であってもよい。
正極活物質の表面には、Liイオン伝導性酸化物を含有するコート層が形成されていても良い。正極活物質と、固体電解質との反応を抑制できるからである。
Liイオン伝導性酸化物としては、例えば、LiNbO3、Li4Ti5O12、及び、Li3PO4等が挙げられる。コート層の厚さは、例えば、0.1nm以上であり、1nm以上であっても良い。一方、コート層の厚さは、例えば、100nm以下であり、20nm以下であっても良い。正極活物質の表面におけるコート層の被覆率は、例えば、70%以上であり、90%以上であっても良い。
【0041】
固体電解質としては、固体電解質層において例示するものと同様のものを例示することができる。
正極層における固体電解質の含有量は、特に限定されないが、正極層の総質量を100質量%としたとき、例えば1質量%~80質量%の範囲内であってもよい。
【0042】
導電材としては、公知のものを用いることができ、例えば、炭素材料、及び金属粒子等が挙げられる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、VGCF、カーボンナノチューブ、及び、カーボンナノファイバーからなる群より選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。中でも、電子伝導性の観点から、VGCF、カーボンナノチューブ、及び、カーボンナノファイバーからなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。金属粒子としては、Ni、Cu、Fe、及びSUS等の粒子が挙げられる。
正極層における導電材の含有量は特に限定されるものではない。
【0043】
結着剤(バインダー)としては、アクリロニトリルブタジエンゴム(ABR)、ブタジエンゴム(BR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等を例示することができる。正極層におけるバインダーの含有量は特に限定されるものではない。
【0044】
正極層の厚みについては特に限定されるものではない。
【0045】
正極層は、従来公知の方法で形成することができる。
例えば、正極活物質、及び、必要に応じ他の成分を溶媒中に投入し、撹拌することにより、正極層用スラリーを作製し、当該正極層用スラリーを正極集電体等の基材の一面上に塗布して乾燥させることにより、正極層が得られる。
溶媒は、例えば酢酸ブチル、酪酸ブチル、メシチレン、テトラリン、ヘプタン、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が挙げられる。
正極集電体等の基材の一面上に正極層用スラリーを塗布する方法は、特に限定されず、ドクターブレード法、メタルマスク印刷法、静電塗布法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、及びスクリーン印刷法等が挙げられる。
基材としては、例えばCu及びAlなどの金属箔等を用いることができる。
【0046】
また、正極層の形成方法の別の方法として、正極活物質及び必要に応じ他の成分を含む正極合剤の粉末を加圧成形することにより正極層を形成してもよい。正極合剤の粉末を加圧成形する場合には、通常、1MPa以上2000MPa以下程度のプレス圧を負荷する。
加圧方法としては、特に制限されないが、例えば、平板プレス、及びロールプレス等を用いて圧力を付加する方法等が挙げられる。
【0047】
[正極集電体]
正極集電体としては、固体電池の集電体として使用可能な公知の金属を用いることができる。そのような金属としては、Cu、Ni、Al、V、Au、Pt、Mg、Fe、Ti、Co、Cr、Zn、Ge、及びInからなる群から選択される一又は二以上の元素を含む金属材料を例示することができる。正極集電体としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等が挙げられる。
正極集電体の形態は特に限定されるものではなく、箔状、及びメッシュ状等、種々の形態とすることができる。正極集電体の厚さは、形状によって異なるものであるが、例えば1μm~50μmの範囲内であってもよく、5μm~20μmの範囲内であってもよい。
【0048】
[負極]
負極は、負極層を含み、必要に応じて負極集電体を含む。
【0049】
[負極層]
負極層は、少なくとも負極活物質を含有し、必要に応じ、固体電解質、導電材、及び、結着剤等を含有する。
負極活物質としては、グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン、リチウム単体、リチウム合金、Si単体、Si合金、及びLi4Ti5O12等が挙げられる。リチウム合金及びSi合金としては、正極活物質において例示するものと同様のものを用いることができる。
負極活物質の形状は特に限定されず、粒子状、及び板状等が挙げられる。負極活物質が粒子状である場合、負極活物質は一次粒子であってもよく、二次粒子であってもよい。
負極層に用いられる導電材、及び、結着剤は、正極層において例示するものと同様のものを用いることができる。負極層に用いられる固体電解質は、固体電解質層において例示するものと同様のものを例示することができる。
負極層の厚さは、特に限定されないが、例えば、10~100μmであってもよい。
負極層における負極活物質の含有量は、特に限定されないが、例えば、20質量%~90質量%であってもよい。
【0050】
[負極集電体]
負極集電体の材料は、Liと合金化しない材料であってもよく、例えばSUS及び、銅及び、ニッケル等を挙げることができる。負極集電体の形態としては、例えば、箔状及び、板状等を挙げることができる。負極集電体の平面視形状は、特に限定されるものではないが、例えば、円状、楕円状、矩形状、及び、任意の多角形状等を挙げることができる。また、負極集電体の厚さは、形状によって異なるものであるが、例えば1μm~50μmの範囲内であってもよく、5μm~20μmの範囲内であってもよい。
【0051】
固体電池は、必要に応じ、正極集電体、正極層、固体電解質層、負極層および負極集電体をこの順に備えた積層体を収容する外装体及び拘束部材等を備える。
外装体の材質は、電解質に安定なものであれば特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、及び、アクリル樹脂等の樹脂等が挙げられる。
拘束部材は、積層体に、積層方向の拘束圧力を与えることができればよく、固体電池の拘束部材として使用可能な公知の拘束部材を用いることができる。例えば、積層体の両表面を挟む板状部と、2つの板状部を連結する棒状部と、棒状部に連結され、ねじ構造等により拘束圧力を調整する調整部を有する拘束部材が挙げられる。調整部によって、積層体に所望の拘束圧力を与えることができる。
拘束圧力は、特に限定されるものではないが、例えば、0.1MPa以上であってもよく、1MPa以上であってもよく、5MPa以上であってもよい。拘束圧力を大きくすることで、各層の接触を良好にしやすいという利点があるためである。一方、拘束圧力は、例えば、100MPa以下であってもよく、50MPa以下であってもよく、20MPa以下であってもよい。拘束圧力が大きすぎると、拘束部材に高い剛性が求められ、拘束部材が大型化する可能性があるためである。
【0052】
固体電池は、上記積層体を1つのみ有するものであってもよいし、積層体を複数個積層してなるものであってもよい。
固体電池としては、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも二次電池であってもよい。二次電池は繰り返し充放電が可能である。二次電池は、例えば車載用電池として有用である。また、固体電池は、固体リチウム二次電池、固体リチウムイオン二次電池であってもよい。
固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型、及び角型等を挙げることができる。
本開示において固体電池は、正極と負極の間に介在する電解質層の電解質として、有機溶媒を含む電解液に替えて固体電解質を用いるものであればよく、正極、負極、及び、電解質層が全て固体の材料で構成される全固体電池であってもよい。
固体電池の用途は、特に限定されないが、例えば、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車または電気自動車の駆動用電源に用いられてもよい。また、本開示における固体電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0053】
本開示の固体電池の製造方法は、例えば、まず、第1固体電解質層、第2固体電解質層、第3固体電解質層の3層を有する固体電解質層を準備する。そして、固体電解質層の一面に正極活物質を含む正極材料の粉末を加圧成形することにより正極層を得る。その後、負極集電体の一面上に負極材料の粉末を加圧成形することにより負極層を得る。固体電解質層の正極層を形成した面とは反対側の面上に負極層が固体電解質層と接するように負極集電体-負極層積層体を取り付ける。そして、正極層の固体電解質層とは反対側の面上に正極集電体を取り付ける。これにより、本開示の固体電池としてもよい。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
<正極の作製>
正極活物質として、レーザ回折・散乱法に基づいて測定される平均粒子径(D50)が、5μmのLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2粉体を使用した。そして、ゾルゲル法を用いて当該正極活物質の表面にLiNbO3を被覆した。
硫化物系固体電解質としてレーザ回折・散乱法に基づいて測定される平均粒子径(D50)が2.5μmの15LiBr・10LiI・75(0.75Li2S・0.25P2S5)ガラスセラミックスを使用した。
上記正極活物質と硫化物系固体電解質との重量比率が活物質:固体電解質=75:25となるように秤量し、さらに正極活物質100重量部に対してSBR(スチレンーブタジエンゴム)系バインダーを3wt%および導電材(CNF)を10wt%秤量し、これらを酪酸ブチルに固形分60wt%となるように調合し、超音波分散装置を用いて1分間超音波分散処理することにより、正極層形成用の組成物(正極層用ぺ-スト)を得た。
次いで、得られた正極層用ペーストを、市販のアプリケーターを用いるブレードコーティングによって、厚さ15μmのアルミニウム箔製の正極集電体上に目付量が15mg/cm2となるように均一に塗布した。
その後、得た塗膜を100℃で60分間乾燥処理し、アルミニウム箔製の正極集電体上に正極層が形成された正極を得た。
【0055】
<負極の作製>
負極活物質としてレーザ回折・散乱法に基づいて測定される平均粒子径(D50)が5μmのSi粉末を使用した。
固体電解質としては、正極と同じ硫化物系固体電解質を使用した。
上記負極活物質と硫化物固体電解質との重量比率が負極活物質:固体電解質=50:50となるように秤量し、さらに負極活物質100重量部に対してSBR系バインダーを3wt%および導電材(CNF)を10wt%秤量し、これらを酪酸ブチルに固形分40wt%となるように調合し、超音波分散装置を用いて1分間超音波分散処理することにより、負極層形成用の組成物(負極層用ぺ-スト)を得た。
次いで、得られた負極層用ペーストを、市販のアプリケーターを用いるブレードコーティングによって、厚さ25μmの表面粗化銅箔製の負極集電体上に目付量が3mg/cm2となるように均一に塗布した。
その後、得た塗膜を100℃で60分間乾燥処理し、表面粗化銅箔製の負極集電体上に電池用の負極層が形成された負極を得た。
【0056】
<支持体を含まない固体電解質層の作製>
正極の作製に使用した上記硫化物系固体電解質を使用して支持体を含まない固体電解質層を作製した。具体的には、硫化物系固体電解質99wt%、SBR系バインダー1wt%を秤量し、これらを酪酸ブチルに固形分50wt%となるように調合し、正極と同じ超音波分散装置を用いて1分間超音波分散処理することにより、固体電解質形成用の組成物(固体電解質層用ぺ-スト)を得た。
次いで、得られた固体電解質層用ペーストを、上述した正極作製時と同様の操作により、厚さ15μmのアルミニウム箔上に目付量が0.6mg/cm2(厚さ3μm)となるように均一に塗布した。その後、得た塗膜を100℃で60分間乾燥処理し、アルミニウム箔上に支持体を含まない固体電解質層を作製した。同様の方法で、支持体を含まない固体電解質層を合計2層(第1固体電解質層及び第3固体電解質層)作成した。
【0057】
<支持体を含む固体電解質層の作製>
正極の作製に使用した上記硫化物系固体電解質を使用して支持体を含む固体電解質層を作製した。具体的には、硫化物系固体電解質99wt%、SBR系バインダー1wt%を秤量し、これらを酪酸ブチルに固形分50wt%となるように調合し、正極と同じ超音波分散装置を用いて1分間超音波分散処理することにより、固体電解質形成用の組成物(固体電解質層用ぺ-スト)を得た。
次いで、厚さ15μmのアルミニウム箔上に厚さ25μm、空隙率80%のPET製不織布を敷き、得られた固体電解質層用ペーストを、上述した正極作製時と同様の操作により、アルミニウム箔上に固体電解質の目付量が4.8mg/cm2(不織布込みの厚さ25μm)となるように均一に塗布した。
その後、得た塗膜を100℃で60分間乾燥処理し、アルミニウム箔上に支持体を含む固体電解質層(第2固体電解質層)を作製した。
【0058】
<固体電池(電池組立体)の作製>
支持体を含まない固体電解質層(第1固体電解質層)をアルミニウム箔ごと1.4cm×1.4cmの正方形状に打ち抜いた。同様に負極を、1.4cm×1.4cmの正方形状に打ち抜いた。負極層が支持体を含まない固体電解質層(第1固体電解質層)と接するように、負極を支持体を含まない固体電解質層(第1固体電解質層)に重ね合わせ、1トン/cm2のプレス圧でプレスし、負極-第1固体電解質層-アルミニウム箔を得た。
次いで、負極-第1固体電解質層-アルミニウム箔の支持体を含まない固体電解質層(第1固体電解質層)に付いていたアルミニウム箔を剥がし、同形状に打ち抜いた支持体を含む固体電解質層(第2固体電解質層)を、支持体を含まない固体電解質層(第1固体電解質層)に重ね合わせ、1トン/cm2のプレス圧でプレスし、負極-第1固体電解質層-第2固体電解質層を得た。
また、別の支持体を含まない固体電解質層(第3固体電解質層)をアルミニウム箔ごと1cm×1cmの正方形状に打ち抜いた同様に正極を、1.4cm×1.4cmの正方形状に打ち抜いた。正極層が支持体を含まない固体電解質層(第3固体電解質層)と接するように、正極を支持体を含まない固体電解質層(第3固体電解質層)に重ね合わせ、1トン/cm2のプレス圧でプレスし、正極-第3固体電解質層-アルミニウム箔を得た。
その後、負極に積層した支持体を含む固体電解質層(第2固体電解質層)と、正極に積層した支持体を含まない固体電解質層(第3固体電解質層)を重ね合わせ、3トン/cm2のプレス圧でプレスし、負極-第1固体電解質層-第2固体電解質層-第3固体電解質層-正極の積層体を得た。
こうして得られた積層体を予め正負極端子が付設されたアルミニウム製のラミネートフィルムからなる外装体で密閉し、実施例1の試験用固体電池(固体リチウムイオン二次電池)を作製した。
【0059】
<実施例2>
固体電解質層の作製において、支持体を含まない固体電解質層(第1固体電解質層及び第3固体電解質層)の目付量を1.0mg/cm2(厚さ5μm)、支持体を含む固体電解質層(第2固体電解質層)の、不織布の厚みを20μm、固体電解質の目付量を3.9g/cm2(不織布込みの厚さ20μm)とした以外は、実施例1と同様の材料および工程により、実施例2の試験用固体電池(固体リチウムイオン二次電池)を作製した。
【0060】
<実施例3>
固体電解質層の作製において、支持体を含まない固体電解質層(第1固体電解質層及び第3固体電解質層)の目付量を2.0mg/cm2(厚さ10μm)、支持体を含む固体電解質層(第2固体電解質層)の、不織布の厚みを10μm、固体電解質の目付量を1.9mg/cm2(不織布込みの厚さ10μm)とした以外は、実施例1と同様の材料および工程により、実施例3の試験用固体電池(固体リチウムイオン二次電池)を作製した。
【0061】
(実施例4)
支持体を含まない固体電解質層(第1固体電解質層及び第3固体電解質層)の厚さを10μmとし、支持体を含む固体電解質層(第2固体電解質層)の厚さを20μmとし、固体電池の作製において、負極に支持体を含まない固体電解質層(第1固体電解質層)を積層せず、負極-第2固体電解質層-第3固体電解質層-正極の積層体を得た以外は、実施例1と同様の材料および工程により、実施例4の試験用固体電池(固体リチウムイオン二次電池)を作製した。
【0062】
(実施例5)
支持体を含まない固体電解質層(第1固体電解質層及び第3固体電解質層)の厚さを10μmとし、支持体を含む固体電解質層(第2固体電解質層)の厚さを20μmとし、固体電池の作製において、正極に支持体を含まない固体電解質層(第3固体電解質層)を積層せず、負極-第1固体電解質層-第2固体電解質層-正極の積層体を得た以外は、実施例1と同様の材料および工程により、実施例5の試験用固体電池(固体リチウムイオン二次電池)を作製した。
【0063】
<比較例1>
固体電解質層の作製において、支持体を含まない固体電解質層(第1固体電解質層及び第3固体電解質層)の目付量を6.0mg/cm2(厚さ30μm)とし、固体電池の作製において、負極に支持体を含まない固体電解質層(第1固体電解質層)のみ積層し、正極に支持体を含まない固体電解質層(第3固体電解質層)を積層せず、負極-第1固体電解質層-正極の積層体を得た以外は、実施例1と同様の材料および工程により、比較例1の試験用固体電池(固体リチウムイオン二次電池)を作製した。
【0064】
<比較例2>
固体電解質層の作製において、支持体を含む固体電解質層(第1固体電解質層及び第3固体電解質層)の目付量を5.8g/cm2(不織布込みの厚さ30μm)とし、固体電池の作製において、負極に支持体を含む固体電解質層(第2固体電解質層)のみを積層し、正極に支持体を含まない固体電解質層(第3固体電解質層)を積層せず、負極-第2固体電解質層-正極の積層体を得た以外は、実施例1と同様の材料および工程により、比較例2の試験用固体電池(固体リチウムイオン二次電池)を作製した。
【0065】
<評価>
<試験1:電池抵抗測定>
実施例1~5、比較例1~2の各固体電池を100MPaで拘束し、4.5V-CCCV充電、電流レート1mA、0.01mA電流カット、4.0V-CCCV放電、電流レート1mA、0.01mA電流カットで充放電を行い、1時間放置した。
次いで、CC放電、電流レート10mA、10秒カットで放電を行い、オームの法則に従って電池抵抗を測定した。電池抵抗は、表1に示す。
【0066】
<試験2:サイクル試験>
評価1完了後の各固体電池を、4.5V-CCCV充電、電流レート1mA、0.01mA電流カット、3.0V-CCCV放電、電流レート1mA、0.01mA電流カットで充放電を100回繰り返した。1サイクル目の放電容量に対する、100サイクル目の放電容量の比を容量維持率として比較した。容量維持率は、表1に示す。
容量維持率(%):(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100
【0067】
【0068】
<結果>
実施例1~3の各固体電池は支持体を導入したことによる容量維持率改善の効果を維持しつつ、支持体を入れない固体電池と同等の電池抵抗となっている。電極と支持体を含む固体電解質層とは、接触抵抗が高いが、支持体を含まない固体電解質層を電極と支持体を含む固体電解質層との間に挟むことで抵抗増加は抑制されている。
実施例4、5の支持体を含まない固体電解質層と支持体を含む固体電解質層の2層構成の固体電解質層を用いた各固体電池の場合は、支持体を含む固体電解質層1層の構成の固体電解質層を用いた比較例2の固体電池の場合よりも電池抵抗が低減していることが確認できた。
【符号の説明】
【0069】
11 負極集電体
12 負極層
13 第1固体電解質層
14 第2固体電解質層
15 第3固体電解質層
16 正極層
17 正極集電体
100 固体電池