(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】電力供給回路、電力供給方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B60R 16/033 20060101AFI20240723BHJP
B60R 16/03 20060101ALI20240723BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B60R16/033 C
B60R16/03 A
H02J1/00 309C
(21)【出願番号】P 2021155599
(22)【出願日】2021-09-24
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】森 達則
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洸
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-120464(JP,A)
【文献】特開2004-328988(JP,A)
【文献】特開2009-005529(JP,A)
【文献】特開2008-230405(JP,A)
【文献】特開2014-184869(JP,A)
【文献】特開2019-092316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/033
B60R 16/03
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電力供給回路であって、
第1の電力供給源と負荷とを電気的に接続する第1の電路と、
第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するとともに、前記負荷に供給される電力に係る電圧を変換する変換部を含む第2の電路と、
前記第2の電力供給源と前記負荷とを、前記変換部を介さずに、電気的に接続するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断可能な切替部を含む第3の電路と、
前記第1の電力供給源から前記負荷に電力を供給できないが、前記第2の電力供給源から前記負荷に電力を供給できる場合に、前記第2の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される一方で、前記第3の電路を介して前記負荷に電力が供給されない第1の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断するように前記切替部を制御する制御手段と、
前記負荷に係る予備状態を検出する検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記第1の状態になるように前記変換部及び前記切替部を制御した後、前記負荷について所定の条件が成立した場合、前記第2の電路及び前記第3の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される第2の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するように前記切替部を制御し、
前記所定の条件は、前記検出手段により前記予備状態が検出されたことであり、
前記予備状態は、(i)前記第1の電力供給源から前記負荷に電力が供給されなくなってから所定時間経過したこと、(ii)前記負荷から前記制御
手段に対して電力供給要求があったこと、(iii)前記車両に衝撃が加わったことが感知されたこと、(iv)前記車両のドアが操作されたこと、及び、(v)前記第2の電力供
給源に係る蓄電量が低下したこと、の少なくとも一つである
ことを特徴とする電力供給回路。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1の電力供給源から前記負荷に電力を供給できないが、前記第2の電力供給源から前記負荷に電力を供給できる場合に、前記第2の状態になるように前記変換部及び前記切替部を制御した後、前記第1の状態になるように前記変換部及び前記切替部を制御し、
前記制御手段は、前記所定の条件が成立した場合、前記第1の状態から前記第2の状態になるように前記変換部及び切替部を制御し、
前記制御手段は、前記所定の条件が成立しない場合、前記第1の状態を維持するように前記変換部及び前記切替部を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の電力供給回路。
【請求項3】
車両に搭載され、第1の電力供給源と負荷とを電気的に接続する第1の電路と、第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するとともに、前記負荷に供給される電力に係る電圧を変換する変換部を含む第2の電路と、前記第2の電力供給源と前記負荷とを、前記変換部を介さずに、電気的に接続するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断可能な切替部を含む第3の電路と、を備える電力給電回路における電力供給方法であって、
前記第1の電力供給源から前記負荷に電力を供給できないが、前記第2の電力供給源から前記負荷に電力を供給できる場合に、前記第2の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される一方で、前記第3の電路を介して前記負荷に電力が供給されない第1の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断するように前記切替部を制御する第1の制御工程と、
前記第1の状態になるように前記変換部及び前記切替部を制御した後、前記負荷について所定の条件が成立した場合、前記第2の電路及び前記第3の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される第2の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するように前記切替部を制御する第2の制御工程と、
を含み、
前記所定の条件は、前記負荷に係る予備状態が検出されたことであり、
前記予備状態は、(i)前記第1の電力供給源から前記負荷に電力が供給されなくなってから所定時間経過したこと、(ii)前記負荷か
ら電力供給要求があったこと、(iii)前記車両に衝撃が加わったことが感知されたこと、(iv)前記車両のドアが操作されたこと、及び、(v)前記第2の電力供
給源に係る蓄電量が低下したこと、の少なくとも一つである
ことを特徴とする電力供給方法。
【請求項4】
車両に搭載され、第1の電力供給源と負荷とを電気的に接続する第1の電路と、第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するとともに、前記負荷に供給される電力に係る電圧を変換する変換部を含む第2の電路と、前記第2の電力供給源と前記負荷とを、前記変換部を介さずに、電気的に接続するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断可能な切替部を含む第3の電路と、を備える電力給電回路のコンピュータを、
前記第1の電力供給源から前記負荷に電力を供給できないが、前記第2の電力供給源から前記負荷に電力を供給できる場合に、前記第2の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される一方で、前記第3の電路を介して前記負荷に電力が供給されない第1の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断するように前記切替部を制御し、
前記第1の状態になるように前記変換部及び前記切替部を制御した後、前記負荷について所定の条件が成立した場合、前記第2の電路及び前記第3の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される第2の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するように前記切替部を制御する
制御手段として機能させ、
前記所定の条件は、前記負荷に係る予備状態が検出されたことであり、
前記予備状態は、(i)前記第1の電力供給源から前記負荷に電力が供給されなくなってから所定時間経過したこと、(ii)前記負荷から前記制御
手段に対して電力供給要求があったこと、(iii)前記車両に衝撃が加わったことが感知されたこと、(iv)前記車両のドアが操作されたこと、及び、(v)前記第2の電力供
給源に係る蓄電量が低下したこと、の少なくとも一つである
ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される電力供給回路、及び、該電力供給回路における電力供給方法、並びに、コンピュータプログラムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回路として、例えば、車両において、電源部からの電力供給が途絶えたときに、電力供給対象に電力を供給する車載用のバックアップ回路であって、第1電圧変換部及び第2電圧変換部を有し、第1バックアップ条件の成立時に第2電圧変換部に電圧変換動作を行わせ、第2電圧変換部が電圧変換動作を行っている場合に第2バックアップ条件が成立したことを条件に第1電圧変換部に第2動作を行わせるバックアップ回路が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力供給回路では、急峻な(又は突然の)負荷増大に起因して著しい電圧降下が発生することがある。特許文献1に記載の技術では、このような著しい電圧降下への対策が不十分であるという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、急峻な負荷増大に対応することができる電力供給回路、電力供給方法及びコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電力供給回路は、車両に搭載される電力供給回路であって、第1の電力供給源と負荷とを電気的に接続する第1の電路と、第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するとともに、前記負荷に供給される電力に係る電圧を変換する変換部を含む第2の電路と、前記第2の電力供給源と前記負荷とを、前記変換部を介さずに、電気的に接続するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断可能な切替部を含む第3の電路と、前記第1の電力供給源から前記負荷に電力を供給できないが、前記第2の電力供給源から前記負荷に電力を供給できる場合に、前記第2の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される一方で、前記第3の電路を介して前記負荷に電力が供給されない第1の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断するように前記切替部を制御する制御手段と、前記負荷に係る予備状態を検出する検出手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1の状態になるように前記変換部及び前記切替部を制御した後、前記負荷について所定の条件が成立した場合、前記第2の電路及び前記第3の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される第2の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するように前記切替部を制御し、前記所定の条件は、前記検出手段により前記予備状態が検出されたことであり、前記予備状態は、(i)前記第1の電力供給源から前記負荷に電力が供給されなくなってから所定時間経過したこと、(ii)前記負荷から前記制御手段に対して電力供給要求があったこと、(iii)前記車両に衝撃が加わったことが感知されたこと、(iv)前記車両のドアが操作されたこと、及び、(v)前記第2の電力供給源に係る蓄電量が低下したこと、の少なくとも一つであるというものである。
【0007】
本発明の一態様に係る電力供給方法は、車両に搭載され、第1の電力供給源と負荷とを電気的に接続する第1の電路と、第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するとともに、前記負荷に供給される電力に係る電圧を変換する変換部を含む第2の電路と、前記第2の電力供給源と前記負荷とを、前記変換部を介さずに、電気的に接続するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断可能な切替部を含む第3の電路と、を備える電力給電回路における電力供給方法であって、前記第1の電力供給源から前記負荷に電力を供給できないが、前記第2の電力供給源から前記負荷に電力を供給できる場合に、前記第2の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される一方で、前記第3の電路を介して前記負荷に電力が供給されない第1の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断するように前記切替部を制御する第1の制御工程と、前記第1の状態になるように前記変換部及び前記切替部を制御した後、前記負荷について所定の条件が成立した場合、前記第2の電路及び前記第3の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される第2の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するように前記切替部を制御する第2の制御工程と、を含み、前記所定の条件は、前記負荷に係る予備状態が検出されたことであり、前記予備状態は、(i)前記第1の電力供給源から前記負荷に電力が供給されなくなってから所定時間経過したこと、(ii)前記負荷から電力供給要求があったこと、(iii)前記車両に衝撃が加わったことが感知されたこと、(iv)前記車両のドアが操作されたこと、及び、(v)前記第2の電力供給源に係る蓄電量が低下したこと、の少なくとも一つであるというものである。
【0008】
本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、車両に搭載され、第1の電力供給源と負荷とを電気的に接続する第1の電路と、第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するとともに、前記負荷に供給される電力に係る電圧を変換する変換部を含む第2の電路と、前記第2の電力供給源と前記負荷とを、前記変換部を介さずに、電気的に接続するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断可能な切替部を含む第3の電路と、を備える電力給電回路のコンピュータを、前記第1の電力供給源から前記負荷に電力を供給できないが、前記第2の電力供給源から前記負荷に電力を供給できる場合に、前記第2の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される一方で、前記第3の電路を介して前記負荷に電力が供給されない第1の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断するように前記切替部を制御し、前記第1の状態になるように前記変換部及び前記切替部を制御した後、前記負荷について所定の条件が成立した場合、前記第2の電路及び前記第3の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される第2の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するように前記切替部を制御する制御手段として機能させ、前記所定の条件は、前記負荷に係る予備状態が検出されたことであり、前記予備状態は、(i)前記第1の電力供給源から前記負荷に電力が供給されなくなってから所定時間経過したこと、(ii)前記負荷から前記制御手段に対して電力供給要求があったこと、(iii)前記車両に衝撃が加わったことが感知されたこと、(iv)前記車両のドアが操作されたこと、及び、(v)前記第2の電力供給源に係る蓄電量が低下したこと、の少なくとも一つであるというものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る電源ECUの構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る電源ECUにおける電力供給路の一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る電源ECUにおける電力供給路の他の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る電源ECUにおける電力供給路の他の一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る電源ECUにおける電力供給路の他の一例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る電源ECUの動作を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態に係るコンピュータの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
電力供給回路に係る実施形態について
図1乃至
図6を参照して説明する。ここでは、電力供給回路として、車両1に搭載された電源ECU(Electrnic Control Unit)10を一例として挙げる。
【0011】
図1において、電源ECU10は、例えばバッテリ等である電源20と、例えば車両補機等である電力供給対象30とを電気的に接続する電路上に配置されている。電源ECU10は、制御部11、蓄電素子12、バランス回路13、内部電源生成部14及びDCDC昇降圧器15を有する。
【0012】
制御部11は、例えばDCDC昇降圧器15、スイッチSW1等を制御可能に構成されている。蓄電素子12は、例えば複数のキャパシタを有する。バランス回路13は、蓄電素子12を構成する、例えば複数のキャパシタ各々の電圧を均等化する。内部電源生成部14は、制御部11に電力を供給可能に構成されている。蓄電素子12、バランス回路13、内部電源生成部14及びDCDC昇降圧器15には、既存の各種態様を適用可能であるので、その詳細についての説明は省略する。
【0013】
次に、電源ECU10の電路について
図2乃至
図5を参照して説明する。
図2において、電源20から電力が出力される場合、電源20から出力された電力は電路E1により、電力供給対象30に供給される。
図2に示す状態を、以降「動作状態1」と称する。
【0014】
尚、電源20から電力が出力される場合、電源20から出力された電力の一部が蓄電素子12に供給されることにより、蓄電素子12が充電されてよい。また、この場合、電源20から出力された電力の一部が内部電源生成部14を介して制御部11に供給されてよい。
【0015】
図3において、電源20から電力が出力されており、且つ、蓄電素子12の充電が完了した場合、制御部11は、スイッチSW1をON状態にする。このとき、蓄電素子12から出力された電力は、スイッチSW1を経由する電路E2により、電力供給対象30に供給される。この場合、電源20及び蓄電素子12の両方から電力供給対象30に電力が供給される。
図3に示す状態を、以降「動作状態2」と称する。
【0016】
動作状態2が継続されたことにより蓄電素子12の蓄電量が所定量まで減少した場合、電源20から電力が出力されていることを条件に、動作状態2から動作状態1に移行する。つまり、電源20から電力が出力されているときには、蓄電素子12の充電と放電とが交互に繰り返されることにより、動作状態1と動作状態2とが交互に切り替えられる。尚、上記「所定量」は、蓄電素子12の充電が必要な程度の蓄電量として設定されてよい。
【0017】
図4において、何らかの原因により電源20から電力が出力されなくなった場合(即ち、電源が失陥した場合)、蓄電素子12に充分な蓄電量があることを条件に、制御部11は、スイッチSW1をON状態とするとともに、DCDC昇降圧器15を作動させる。尚、「蓄電素子12に充分な蓄電量がある」とは、電力供給対象30に電力を供給可能な蓄電量があるという意味である。
【0018】
この場合、蓄電素子12から出力された電力は、上述の電路E2と、DCDC昇降圧器15を経由する電路E3とにより、電力供給対象30に供給される。また、この場合、蓄電素子12から出力された電力の一部が内部電源生成部14を介して制御部11に供給されてよい。
図4に示す状態を、以降「動作状態3」と称する。尚、電路E3及びE4各々を構成する回路を、以降「バックアップ回路」と称する。
【0019】
動作状態3になってから所定の期間が経過すると、制御部11は、スイッチSW1をOFF状態にする。この結果、
図5に示すように、蓄電素子12から出力された電力は、上述の電路E3により電力供給対象30に供給される。このように構成すれば、電力の消費量を抑制することができるので、蓄電素子12の蓄電量の減少を抑制することができる。
図5に示す状態を、以降「動作状態4」と称する。
【0020】
ところで動作状態4では、電力供給対象30はスタンバイモードになっていることが多い。このとき、例えば車両1のユーザにより何らかの操作(例えばスイッチの押下、タッチパネルの操作等)が行われたことに起因して、電力供給対象30がスタンバイモードから復帰又は起動しようとすると、負荷が急に増大することにより著しい電圧降下が発生することが多い。
【0021】
ここで、制御部11が適切に動作するためには、例えば8ボルト等、所定の電圧が制御部11に印加されている必要がある。上述した著しい電圧降下に起因して、制御部11に印加される電圧が上記所定の電圧を下回ってしまうと、制御部11がその動作を維持することができなくなってしまう。すると、電力供給対象30にも電力が供給されなくなってしまう。つまり、上述した著しい電圧降下が発生すると、電源ECU10及び電力供給対象30の動作に影響が現れることになる。
【0022】
そこで当該電源ECU10は、負荷増大の予兆を検出するように構成されている。そして、電源ECU10は、動作状態4になっているときに負荷増大の予兆が検出された場合、動作状態4から動作状態3に移行するように、スイッチSW1をON状態にする。このように構成すれば、電力供給対象30がスタンバイモードから復帰又は起動しようとするときに、十分な電力(又は電流)を電力供給対象30に供給することができ、電圧降下の発生を抑制することができる。
【0023】
電源ECU10の動作について
図6のフローチャートを参照して説明を加える。
図6において、電源ECU10の制御部11は、動作状態1のときに蓄電素子12の蓄電量が充分であるか否かを判定する(ステップS101)。ステップS101の処理において、蓄電素子12の蓄電量が充分ではないと判定された場合(ステップS101:No)、蓄電素子12の充電が完了していないので、制御部11は、バックアップ回路の動作を停止する(又は、停止を維持する)(ステップS105)。この場合、動作状態1が継続される。
【0024】
ステップS101の処理において、蓄電素子12の蓄電量が充分であると判定された場合(ステップS101:Yes)、制御部11は、電源失陥が未検出であるか否かを判定する(ステップS102)。ステップS102の処理において、電源失陥が未検出であると判定された場合(ステップS102:Yes)、制御部11は、スイッチSW1をON状態にしてバックアップ回路を動作させる(ステップS103)。この場合、動作状態1から動作状態2に移行する。
【0025】
ステップS102の処理において、電源失陥が検出されたと判定された場合(ステップS102:No)、制御部11は、スイッチSW1をON状態にするとともに、DCDC昇降圧器15を作動させる。この場合、動作状態1から動作状態3に移行する。その後所定の期間が経過すると、制御部11は、スイッチSW1をOFF状態にする一方、DCDC昇降圧器15の作動を維持する。この結果、動作状態3から動作状態4に移行する。
【0026】
その後、制御部11は、電力供給対象30の動作予兆(即ち、負荷増大の予兆)が検出されたか否かを判定する(ステップS104)。ステップS104の処理において、電力供給対象30の動作予兆が検出されたと判定された場合(ステップS104:Yes)、制御部11は、スイッチSW1をON状態にするとともに、DCDC昇降圧器15の作動を維持する(ステップS103)。この結果、動作状態4から動作状態3に移行する。
【0027】
ステップS104の処理において、電力供給対象30の動作予兆が検出されていないと判定された場合(ステップS104:No)、制御部11は、DCDC昇降圧器15の作動を維持する。この場合、動作状態4が維持される。その後、例えば蓄電素子12の蓄電量が減少すると、電力供給対象30への電力供給が停止される(ステップS105)。
【0028】
上述した負荷増大の予兆(又は、電力供給対象30の動作予兆)について説明する。負荷増大の予兆は、電力供給対象30の種別によって異なる。電力供給対象30が、例えば車両1の自己診断装置である場合、電源20の失陥がある程度継続した場合に自己診断装置が起動することがある。この場合、制御部11は、電源20から電力供給対象30に電力が供給されてなくなってからの経過時間が所定時間以上である場合に、負荷増大の予兆があると判定してよい。つまり、電源20から電力供給対象30に電力が供給されてなくなってから所定時間経過したこと、が負荷増大の予兆の一例である。
【0029】
電力供給対象30が、例えば、起動前に電源ECU10の制御部11に対して電力供給要求信号を送信する装置である場合、制御部11は、電力供給要求信号を受信した場合に、負荷増大の予兆があると判定してよい。つまり、電力供給対象30から制御部11に対する電力供給要求信号があったことが、負荷増大の予兆の他の一例である。
【0030】
電力供給対象30が、例えば、車両1の衝突時に起動する装置である場合、制御部11は、車両1に衝撃が加わったことが感知された場合に、負荷増大の予兆があると判定してよい。つまり、車両1に衝撃が加わったことが感知されたことが、負荷増大の予兆の他の一例である。
【0031】
電力供給対象30が、例えば、車両1のドアの開閉に起因して作動する装置(室内灯等)である場合、制御部11は、車両1のドアが操作された場合に、負荷増大の予兆があると判定してよい。つまり、車両1のドアが操作されたことが、負荷増大の予兆の他の一例である。
【0032】
また、制御部11は、蓄電素子12の蓄電量が比較的少なくなった場合に、負荷増大の予兆があると判定してよい。この場合は、電力供給対象30への電力供給が難しくなり、著しい電圧降下が発生しやすいからである。つまり、蓄電素子12の蓄電量が低下したことが、負荷増大の予兆の他の一例である。
【0033】
(技術的効果)
当該電源ECU10では、電源20が失陥し、動作状態4のときに、負荷増大の予兆が検出された場合は、動作状態4から動作状態3に移行する。動作状態4から動作状態3に移行することにより、電力供給対象30に比較的大きな電力(又は電流)を供給しやすくなる。この結果、電力供給対象30が作動した際の電圧降下の程度を抑制することができる。従って、当該電源ECU10によれば、急峻な負荷増大に対応することができる。上述した実施形態の手法では、電源ECU10を構成する回路構成を変更する必要がないので、例えば製品コストの増大や、回路の専有面積の肥大化等を回避することができ、実用上非常に有利である。
【0034】
<コンピュータプログラム>
コンピュータプログラムに係る実施形態について
図7を参照して説明する。
図7は、実施形態に係るコンピュータの構成を示すブロック図である。
【0035】
図7において、コンピュータ50は、上述した電源ECU10の一部(例えば制御部11)を構成する。コンピュータ50は、CPU(Central Processing Unit)51、RAM(Random Access Memory)52、HDD(Hard Disk Drive)53及びI/O(Input/Output)54を備えて構成されている。CPU51、RAM52、HDD53及びI/O54は、バス55により相互に接続されている。HDD53には、本実施形態に係るコンピュータプログラム531が予め格納されている。
【0036】
尚、コンピュータ50は、HDD53に代えて又は加えて、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性メモリを備えていてよい。コンピュータプログラム531は、不揮発性メモリに格納されていてよい。
【0037】
コンピュータプログラム531によるCPU51の処理について説明する。CPU51は、動作状態1のときに蓄電素子12の蓄電量が充分であるか否かを判定する。蓄電素子12の蓄電量が充分ではないと判定された場合CPU51は、バックアップ回路の動作を停止する(又は、停止を維持する)。この場合、動作状態1が維持される。他方で、蓄電素子12の蓄電量が充分であると判定された場合、CPU51は、電源失陥が未検出であるか否かを判定する。
【0038】
電源失陥が未検出であると判定された場合、CPU51は、スイッチSW1をON状態にしてバックアップ回路を動作させる。この場合、動作状態1から動作状態2に移行する。他方で、電源失陥が検出されたと判定された場合、CPU51は、スイッチSW1をON状態にするとともに、DCDC昇降圧器15を作動させる。これにより、動作状態1から動作状態3に移行する。その後所定の期間が経過すると、CPU51は、スイッチSW1をOFF状態にする一方、DCDC昇降圧器15の作動を維持する。これにより、動作状態3から動作状態4に移行する。
【0039】
その後、CPU51は、動作状態4のときに電力供給対象30の動作予兆が検出されたか否かを判定する。電力供給対象30の動作予兆が検出されたと判定された場合、CPU51は、スイッチSW1をON状態にするとともに、DCDC昇降圧器15の作動を維持する。これにより、動作状態4から動作状態3に移行する。他方で、電力供給対象30の動作予兆が検出されていないと判定された場合、CPU51は、DCDC昇降圧器15の作動を維持する。この場合、動作状態4が維持される。
【0040】
尚、コンピュータ50が、例えば、コンピュータプログラム531を格納するCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の光ディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ、等の記録媒体から、コンピュータプログラム531を読み込むことにより、HDD53にコンピュータプログラム531が格納されてよい。或いは、コンピュータ50が、例えばインターネット等のネットワークを介して、コンピュータプログラム531をダウンロードすることにより、HDD53にコンピュータプログラム531が格納されてよい。
【0041】
コンピュータプログラム531によれば、上述した実施形態における電源ECU10と同様に、急峻な負荷増大に対応することができる。コンピュータプログラム531によれば、上述した実施形態における電源ECU10を比較的容易に実現することができる。
【0042】
以上に説明した実施形態から導き出される発明の各種態様を以下に説明する。
【0043】
発明の一態様に係る電力供給回路は、車両に搭載される電力供給回路であって、第1の電力供給源と負荷とを電気的に接続する第1の電路と、第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するとともに、前記負荷に供給される電力に係る電圧を変換する変換部を含む第2の電路と、前記第2の電力供給源と前記負荷とを、前記変換部を介さずに、電気的に接続するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断可能な切替部を含む第3の電路と、前記第1の電力供給源から前記負荷に電力を供給できないが、前記第2の電力供給源から前記負荷に電力を供給できる場合に、前記第2の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される一方で、前記第3の電路を介して前記負荷に電力が供給されない第1の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断するように前記切換部を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1の状態になるように前記変換部及び前記切換部を制御した後、前記負荷について所定の条件が成立した場合、前記第2の電路及び前記第3の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される第2の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するように前記切換部を制御するというものである。
【0044】
上述の実施形態においては「電源ECU10」が「電力供給回路」の一例に相当し、「電源20」が「第1の電力供給源」の一例に相当し、「蓄電素子12」が「第2の電力供給源」の一例に相当し、「電力供給対象30」が「負荷」の一例に相当し、「DCDC昇降圧器15」が「変換部」の一例に相当し、「スイッチSW1」が「切替部」の一例に相当し、「制御部11」が「制御手段」の一例に相当する。上述の実施形態においては「電路E1」が「第1の電路」の一例に相当し、「電路E3」が「第2の電路」の一例に相当し、「電路E2」が「第3の電路」の一例に相当し、「動作状態4」が「第1の状態」の一例に相当し、「動作状態3」が「第2の動作状態」の一例に相当する。
【0045】
当該電力供給回路は、前記負荷に係る予備状態を検出する検出手段を備えてよく、前記所定の条件は、前記検出手段により前記予備状態が検出されたことであってよい。上述の実施形態においては「制御部11」が「検出手段」の一例に相当し、「負荷増大の予兆」が「負荷に係る予備状態」の一例に相当する。
【0046】
ここで、前記予備状態は、(i)前記第1の電力供給源から前記負荷に電力が供給されなくなってから所定時間経過したこと、(ii)前記負荷から前記制御部に対して電力供給要求があったこと、(iii)前記車両に衝撃が加わったことが感知されたこと、(iv)前記車両のドアが操作されたこと、及び、(v)前記第2の電力供給電源に係る蓄電量が低下したこと、の少なくとも一つであってよい。
【0047】
当該電力供給回路では、前記制御手段は、前記第1の電力供給源から前記負荷に電力を供給できないが、前記第2の電力供給源から前記負荷に電力を供給できる場合に、前記第2の状態になるように前記変換部及び前記切換部を制御した後、前記第1の状態になるように前記変換部及び前記切換部を制御してよく、前記制御手段は、前記所定の条件が成立した場合、前記第1の状態から前記第2の状態になるように前記変換部及び切替部を制御してよく、前記制御手段は、前記所定の条件が成立しない場合、前記第1の状態を維持するように前記変換部及び前記切換部を制御してよい。
【0048】
本発明の一態様に係る電力供給方法は、車両に搭載され、第1の電力供給源と負荷とを電気的に接続する第1の電路と、第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するとともに、前記負荷に供給される電力に係る電圧を変換する変換部を含む第2の電路と、前記第2の電力供給源と前記負荷とを、前記変換部を介さずに、電気的に接続するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断可能な切替部を含む第3の電路と、を備える電力給電回路における電力供給方法であって、前記第1の電力供給源から前記負荷に電力を供給できないが、前記第2の電力供給源から前記負荷に電力を供給できる場合に、前記第2の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される一方で、前記第3の電路を介して前記負荷に電力が供給されない第1の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断するように前記切換部を制御する第1の制御工程と、前記第1の状態になるように前記変換部及び前記切換部を制御した後、前記負荷について所定の条件が成立した場合、前記第2の電路及び前記第3の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される第2の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するように前記切換部を制御する第2の制御工程と、を含むというものである。
【0049】
本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、車両に搭載され、第1の電力供給源と負荷とを電気的に接続する第1の電路と、第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するとともに、前記負荷に供給される電力に係る電圧を変換する変換部を含む第2の電路と、前記第2の電力供給源と前記負荷とを、前記変換部を介さずに、電気的に接続するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断可能な切替部を含む第3の電路と、を備える電力給電回路のコンピュータを、前記第1の電力供給源から前記負荷に電力を供給できないが、前記第2の電力供給源から前記負荷に電力を供給できる場合に、前記第2の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される一方で、前記第3の電路を介して前記負荷に電力が供給されない第1の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷との電気的な接続を切断するように前記切換部を制御し、前記第1の状態になるように前記変換部及び前記切換部を制御した後、前記負荷について所定の条件が成立した場合、前記第2の電路及び前記第3の電路を介して前記第2の電力供給源から前記負荷に電力が供給される第2の状態になるように、前記変換部を制御するとともに、前記第2の電力供給源と前記負荷とを電気的に接続するように前記切換部を制御する制御手段として機能させるというものである。
【0050】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電力供給回路、電力供給方法及びコンピュータプログラムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0051】
1…車両、10…電源ECU、11…制御部、12…蓄電素子、13…バランス回路、14…内部電源生成部、15…DCDC昇降圧器、20…電源、30…電力供給対象、SW1…スイッチ