IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-全固体電池 図1
  • 特許-全固体電池 図2
  • 特許-全固体電池 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20240723BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240723BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20240723BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20240723BHJP
   H01M 10/0564 20100101ALI20240723BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M50/44
H01M50/446
H01M10/0564
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021156529
(22)【出願日】2021-09-27
(65)【公開番号】P2023047557
(43)【公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】後藤 一平
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-039876(JP,A)
【文献】特開2016-031789(JP,A)
【文献】特開2015-046325(JP,A)
【文献】特開2016-072233(JP,A)
【文献】特開2016-139461(JP,A)
【文献】特開2020-173955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587;10/36-10/39
H01M50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層と、負極層と、前記正極層および前記負極層の間に配置された固体電解質層と、を有する全固体電池であって、
前記固体電解質層は、第1固体電解質層と、前記第1固体電解質層より前記負極層側に配置された第2固体電解質層と、を有し、
前記第1固体電解質層は、第1不織布と、前記第1不織布の内部に配置された第1固体電解質と、を含有し、
前記第2固体電解質層は、第2不織布と、前記第2不織布の内部に配置された第2固体電解質と、を含有し、
厚さ方向に沿った平面視において、前記第1不織布における第1繊維方向と、前記第2不織布における第2繊維方向との角度が、45°以上90°以下であり、
前記第1不織布において、前記第1繊維方向の引張強度が、前記第1繊維方向に直交する方向の引張強度より大きく、
前記第2不織布において、前記第2繊維方向の引張強度が、前記第2繊維方向に直交する方向の引張強度より大きく、
前記第1繊維方向の引張強度と、前記第2繊維方向の引張強度とが同じである、全固体電池。
【請求項2】
前記角度が、80°以上90°以下である、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記第1不織布における空隙率、および、前記第2不織布における空隙率が、それぞれ70%以上90%以下である、請求項1または請求項2に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記第1固体電解質および前記第2固体電解質の少なくとも一方が、無機固体電解質である、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記無機固体電解質が、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質および水素化物固体電解質の少なくとも一種である、請求項4に記載の全固体電池。
【請求項6】
前記第1固体電解質および前記第2固体電解質の少なくとも一方が、25℃で固体の溶融塩である、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の全固体電池。
【請求項7】
前記第1固体電解質および前記第2固体電解質の少なくとも一方が、柔粘性結晶固体電解質である、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
全固体電池は、正極層および負極層の間に固体電解質層を有する電池であり、可燃性の有機溶媒を含む電解液を有する液系電池に比べて、安全装置の簡素化が図りやすいという利点を有する。特許文献1には、全固体二次電池に用いられる固体電解質シートであって、不織布と、不織布の表面および内部に固体電解質とを含む固体電解質シートが開示されている。
【0003】
特許文献2には、樹脂からなるファイバーを有する不織布を形成する工程を備える、全固体電池用の固体電解質膜の製造方法が開示されている。また、特許文献3には、第1方向に延びた複数の纎維状の第1構造体を含む第1電極と、第1方向と異なる第2方向に延びた複数の纎維状の第2構造体を含む第2電極と、第1構造体と第2構造体との間に配置された分離膜とを有する、電極組立体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-031789号公報
【文献】特開2020-181758号公報
【文献】特表2013-534704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池性能向上の観点から、サイクル特性が良好な全固体電池が求められている。本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、サイクル特性が良好な全固体電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示においては、正極層と、負極層と、上記正極層および上記負極層の間に配置された固体電解質層と、を有する全固体電池であって、上記固体電解質層は、第1固体電解質層と、上記第1固体電解質層より上記負極層側に配置された第2固体電解質層と、を有し、上記第1固体電解質層は、第1不織布と、上記第1不織布の内部に配置された第1固体電解質と、を含有し、上記第2固体電解質層は、第2不織布と、上記第2不織布の内部に配置された第2固体電解質と、を含有し、厚さ方向に沿った平面視において、上記第1不織布における第1繊維方向と、上記第2不織布における第2繊維方向との角度が、45°以上90°以下である、全固体電池を提供する。
【0007】
本開示によれば、第1繊維方向および第2繊維方向の角度が、所定の範囲内にあることから、サイクル特性が良好な全固体電池となる。
【0008】
上記開示においては、上記角度が、80°以上90°以下であってもよい。
【0009】
上記開示においては、上記第1不織布における空隙率、および、上記第2不織布における空隙率が、それぞれ70%以上90%以下であってもよい。
【0010】
上記開示では、上記第1不織布において、上記第1繊維方向の引張強度が、上記第1繊維方向に直交する方向の引張強度より大きく、上記第2不織布において、上記第2繊維方向の引張強度が、上記第2繊維方向に直交する方向の引張強度より大きくてもよい。
【0011】
上記開示においては、上記第1固体電解質および上記第2固体電解質の少なくとも一方が、無機固体電解質であってもよい。
【0012】
上記開示においては、上記無機固体電解質が、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質および水素化物固体電解質の少なくとも一種であってもよい。
【0013】
上記開示においては、上記第1固体電解質および上記第2固体電解質の少なくとも一方が、25℃で固体の溶融塩であってもよい。
【0014】
上記開示においては、上記第1固体電解質および上記第2固体電解質の少なくとも一方が、柔粘性結晶固体電解質であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示における全固体電池は、サイクル特性が良好であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示における全固体電池を例示する概略断面図である。
図2】本開示における全固体電池を説明する概略斜視図である。
図3】本開示における第1繊維方向および第2繊維方向を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示における全固体電池について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、部材の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、各図において、部材の断面を示すハッチングを適宜省略している。
【0018】
図1は、本開示における全固体電池を例示する概略断面図である。図1に示す全固体電池10は、正極層1と、負極層2と、正極層1および負極層2の間に配置された固体電解質層3と、正極層1の集電を行う正極集電体4と、負極層2の集電を行う負極集電体5と、を有する。固体電解質層3は、第1固体電解質層3aと、第1固体電解質層3aより負極層2側に配置された第2固体電解質層3bと、を有する。第1固体電解質層3aは、第1不織布と、第1不織布の内部に配置された第1固体電解質と、を含有する。また、第2固体電解質層3bは、第2不織布と、第2不織布の内部に配置された第2固体電解質と、を含有する。
【0019】
図2は、本開示における全固体電池を説明する概略斜視図である。なお、図2では、便宜上、各層の間に空間を設けている。図2に示すように、第1固体電解質層3aに含まれる第1不織布における第1繊維方向をDとする。同様に、第2固体電解質層3bに含まれる第2不織布における第2繊維方向をDとする。厚さ方向Dに沿った平面視において、DとDとの角度が所定の範囲にある。例えば図3においては、DとDとの角度θが90°である。本開示において、DとDとの角度θは、鋭角側の角度を意味し、通常、90°以下である。
【0020】
本開示によれば、第1繊維方向および第2繊維方向の角度が、所定の範囲内にあることから、サイクル特性が良好な全固体電池となる。上述した特許文献1に記載されているように、不織布の内部に固体電解質を含む固体電解質シート(固体電解質層)が知られている。固体電解質層が不織布を含むことで、例えば、絶縁性能を維持したまま、固体電解質層の厚さを薄くできるという利点がある。
【0021】
一方、不織布を構成する複数の繊維が、一方向に沿って延びている場合、その引張強度は、等方的ではなく、異方的である。ここで、複数の繊維が主として延びる方向を繊維方向と定義する。繊維方向は、通常、不織布の製造工程における進行方向(流れ方向)に該当するMD(Machine Direction)方向と一致する。また、一般的に、MD方向に直交する方向は、CD(Cross Direction)方向と称される。MD方向およびCD方向は、不織布を顕微鏡で観察し、その繊維が延びる方向を確認することにより、特定できる。不織布を構成する複数の繊維が、一方向に沿って延びている場合、繊維方向(MD方向)の引張強度は、通常、繊維方向に直交する方向(CD方向)の引張強度より大きくなる。
【0022】
不織布において、MD方向の引張強度と、CD方向の引張強度とが異なると、充放電に伴う応力が固体電解質層に加わるたびに、固体電解質層の均一性が低下する。その結果、微短絡等の内部短絡が生じやすくなり、サイクル特性が低下する。これに対して、本開示においては、第1不織布における第1繊維方向と、第2不織布における第2繊維方向とが交差するように、第1固体電解質層および第2固体電解質層を配置する。これにより、引張強度の異方性が緩和される。その結果、固体電解質層の均一性が維持され、サイクル特性が向上する。
【0023】
図2に示すように、第1固体電解質層3aに含まれる第1不織布における第1繊維方向をDとする。同様に、第2固体電解質層3bに含まれる第2不織布における第2繊維方向をDとする。また、図3に示すように、DとDとの角度をθとする。角度θは、通常、45°以上であり、60°以上であってもよく、70°以上であってもよく、80°以上であってもよい。一方、角度θは、90°であってもよく、90°未満であってもよい。
【0024】
1.固体電解質層
本開示における固体電解質層は、正極層および負極層の間に配置される層である。また、固体電解質層は、第1固体電解質層と、第1固体電解質層より負極層側に配置された第2固体電解質層とを有する。
【0025】
(1)第1固体電解質層
第1固体電解質層は、第1不織布と、上記第1不織布の内部に配置された第1固体電解質と、を含有する。
【0026】
(i)第1不織布
第1不織布は、通常、複数の繊維を有し、複数の繊維の間に空隙が形成されている。また、複数の繊維は、第1繊維方向に沿って延びている。複数の繊維は、第1繊維方向に沿って、直線的に延びていてもよく、蛇行またはジグザグに延びていてもよい。繊維の材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の樹脂が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)が挙げられる。ポリアミド系樹脂としては、例えばナイロン、アラミドが挙げられる。また、繊維の材料としてガラスを用いてもよい。すなわち、第1不織布は、ガラス繊維不織布であってもよい。第1不織布を構成する繊維の繊維径および繊維長は、特に限定されない。
【0027】
第1不織布の空隙率は、特に限定されないが、例えば50%以上であり、60%以上であってもよく、70%以上であってもよい。第1不織布の空隙率が少なすぎると、内部抵抗が増加しやすい。一方、第1不織布の空隙率は、例えば95%以下であり、90%以下であってもよい。第1不織布の空隙率が多すぎると、支持体として機能しない可能性がある。第1不織布の空隙率は、例えば、不織布の断面観察により求めることができる。また、空隙の大きさは、特に限定されない。
【0028】
第1不織布において、第1繊維方向(MD方向)の引張強度をTSとし、第1繊維方向に直交する方向(CD方向)の引張強度をTSとする。TSは、TSより大きいことが好ましい。この場合、引張強度の異方性に起因して、サイクル特性が低下しやすい。これに対して、本開示においては、第1繊維方向および第2繊維方向の角度を、所定の範囲内にすることで、引張強度の異方性が緩和される。TSは、例えば1N/cm以上であり、3N/cm以上であってもよく、5N/cm以上であってもよい。一方、TSは、例えば50N/cm以下である。また、TSは、例えば0.1N/cm以上であり、0.5N/cm以上であってもよく、1N/cm以上であってもよい。一方、TSは、例えば30N/cm以下である。また、TSに対するTSの割合(TS/TS)は、例えば、1.1以上であり、1.5以上であってもよく、2.0以上であってもよく、5.0以上であってもよい。一方、TS/TSは、例えば50以下である。
【0029】
第1不織布の種類としては、例えば、ケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、エアレイ不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ニードルパンチ不織布、ステッチボンド不織布が挙げられる。また、第1不織布の厚さは、特に限定されないが、例えば1μm以上であり、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。一方、第1不織布の厚さは、例えば50μm以下である。
【0030】
(ii)第1固体電解質
第1固体電解質層は、第1不織布の内部に配置された第1固体電解質を含有する。第1固体電解質層は、第1固体電解質を1種のみ含有していてもよく、2種以上含有していてもよい。第1固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、水素化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質、窒化物固体電解質等の無機固体電解質が挙げられる。硫化物固体電解質は、アニオン元素の主成分として、硫黄(S)を含有することが好ましい。酸化物固体電解質は、アニオン元素の主成分として、酸素(O)を含有することが好ましい。水素化物固体電解質は、アニオン元素の主成分として、水素(H)を含有することが好ましい。ハロゲン化物固体電解質は、アニオンの主成分として、ハロゲン(X)を含有することが好ましい。窒化物固体電解質は、アニオン元素の主成分として、窒素(N)を含有することが好ましい。
【0031】
硫化物固体電解質は、例えば、Li元素、A元素(Aは、P、As、Sb、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga、Inの少なくとも一種である)、および、S元素を含有することが好ましい。また、硫化物固体電解質は、O元素およびハロゲン元素の少なくとも一方をさらに含有していてもよい。ハロゲン元素としては、例えば、F元素、Cl元素、Br元素、I元素が挙げられる。
【0032】
硫化物固体電解質は、オルト組成のアニオン構造(例えば、PS 3-構造、SiS 4-構造、GeS 4-構造、AlS 3-構造またはBS 3-構造)をアニオン構造の主成分として有することが好ましい。化学安定性の高いからである。オルト組成のアニオン構造の割合は、硫化物固体電解質における全アニオン構造に対して、例えば70mol%以上であり、90mol%以上であってもよい。
【0033】
硫化物固体電解質は、非晶質であってもよく、結晶質であってもよい。後者の場合、硫化物固体電解質は、結晶相を有する。結晶相としては、例えば、Thio-LISICON型結晶相、LGPS型結晶相、アルジロダイト型結晶相が挙げられる。
【0034】
硫化物固体電解質の組成は、特に限定されないが、例えば、xLiS・(100-x)P(70≦x≦80)、yLiI・zLiBr・(100-y-z)(xLiS・(1-x)P)(0.7≦x≦0.8、0≦y≦30、0≦z≦30)が挙げられる。
【0035】
硫化物固体電解質は、一般式(1):Li4-xGe1-x(0<x<1)で表される組成を有していてもよい。一般式(1)において、Geの少なくとも一部は、Sb、Si、Sn、B、Al、Ga、In、Ti、Zr、VおよびNbの少なくとも一つで置換されていてもよい。一般式(1)において、Pの少なくとも一部は、Sb、Si、Sn、B、Al、Ga、In、Ti、Zr、VおよびNbの少なくとも一つで置換されていてもよい。一般式(1)において、Liの一部は、Na、K、Mg、CaおよびZnの少なくとも一つで置換されていてもよい。一般式(1)において、Sの一部は、ハロゲン(F、Cl、BrおよびIの少なくとも一つ)で置換されていてもよい。
【0036】
硫化物固体電解質の他の組成として、例えば、Li7-x-2yPS6-x-y、Li8-x-2ySiS6-x-y、Li8-x-2yGeS6-x-yが挙げられる。これらの組成において、Xは、F、Cl、BrおよびIの少なくとも一種であり、xおよびyは、0≦x、0≦yを満たす。
【0037】
酸化物固体電解質としては、例えば、Li元素、Y元素(Yは、Nb、B、Al、Si、P、Ti、Zr、Mo、W、Sの少なくとも一種である)、および、O元素を含有する固体電解質が挙げられる。酸化物固体電解質の具体例としては、LiLaZr12、Li7-xLa(Zr2-xNb)O12(0≦x≦2)、LiLaNb12等のガーネット型固体電解質;(Li,La)TiO、(Li,La)NbO、(Li,Sr)(Ta,Zr)O等のペロブスカイト型固体電解質;Li(Al,Ti)(PO、Li(Al,Ga)(POのナシコン型固体電解質;LiPO、LIPON(LiPOのOの一部をNで置換した化合物)等のLi-P-O系固体電解質;LiBO、LiBOのOの一部をCで置換した化合物等のLi-B-O系固体電解質が挙げられる。
【0038】
水素化物固体電解質は、例えば、Liと、水素を含有する錯アニオンと、を有する。錯アニオンとしては、例えば、(BH、(NH、(AlH、(AlH3-が挙げられる。ハロゲン化物固体電解質としては、例えば、Li6 3z(XはClおよびBrの少なくとも一種であり、zは0<z<2を満たす)が挙げられる。窒化物固体電解質としては、例えばLiNが挙げられる。
【0039】
第1固体電解質の他の例としては、25℃で固体の溶融塩が挙げられる。溶融塩は、カチオンおよびアニオンを有する。カチオンとしては、例えば、リチウムイオン等の無機カチオン;アンモニウム系カチオン、ピペリジニウム系カチオン、ピロジジニウム系カチオン、イミダゾリウム系カチオン、ピリジウム系カチオン、脂環式アミン系カチオン、脂肪族アミン系カチオン、脂肪族ホスホニウム系カチオン等の有機カチオンが挙げられる。アニオンとしては、例えば、スルホニルアミド構造を有するアニオンが挙げられる。スルホニルアミド構造を有するアニオンとしては、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)アミド、ビス(フルオロスルフォニル)アミド、ビス(ペンタフロオロエタンスルフォニル)アミド、(フルオロスルフォニル)(トリフロオロメタンスルフォニル)アミドが挙げられる。溶融塩の融点は、通常、25℃以上であり、30℃以上であってもよく、40℃以上であってもよい。一方、溶融塩の融点は、例えば200℃以下であり、150℃以下であってもよく、120℃以下であってもよい。
【0040】
第1固体電解質の他の例としては、柔粘性結晶固体電解質が挙げられる。柔粘性結晶とは、規則的に整列した三次元結晶格子から構成され、分子種もしくは分子イオンのレベルでは配向的、回転的な無秩序さが存在する物質をいう。柔粘性結晶は、カチオンおよびアニオンを有する。カチオンとしては、例えば、ピロリジニウム、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウムが挙げられる。アニオンとしては、例えば、ヘキサフルオロホスフェイト、テトラフルオロボレート、チオシアネート、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)アミド、ビス(フルオロスルフォニル)アミド、ビス(ペンタフロオロエタンスルフォニル)アミド、(フルオロスルフォニル)(トリフロオロメタンスルフォニル)アミドが挙げられる。
【0041】
第1固体電解質の形状としては、例えば、粒子状が挙げられる。第1固体電解質の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、例えば10nm以上であり、100nm以上であってもよい。一方、第1固体電解質の平均粒径(D50)は、例えば50μm以下であり、20μm以下であってもよい。第1固体電解質の平均粒径(D50)は、第1不織布の厚さより小さいことが好ましい。平均粒径(D50)は、例えば、レーザー回折式粒度分布計、走査型電子顕微鏡(SEM)による測定から算出できる。第1不織布における空隙の合計体積に対する、第1固体電解質の合計体積の割合は、例えば50体積%以上であり、70体積%以上であってもよく、90体積%以上であってもよい。
【0042】
(iii)第1固体電解質層
第1固体電解質層は、バインダーを含有していてもよく、含有していなくてもよい。バインダーとしては、例えば、ブタジエンゴム、水素化ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素化スチレンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム等のゴム系バインダー;ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-ポリヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等のフッ化物系バインダーが挙げられる。第1固体電解質層におけるバインダーの割合は、第1固体電解質100重量部に対して、例えば、0重量部以上3重量部以下である。
【0043】
第1固体電解質層の平面視形状は、特に限定されないが、正方形、長方形等の矩形が挙げられる。第1固体電解質層のヤング率は、例えば1GPa以上である。第1固体電解質層の厚さは、特に限定されないが、例えば1μm以上であり、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。一方、第1固体電解質層の厚さは、例えば50μm以下である。
【0044】
(2)第2固体電解質層
第2固体電解質層は、第2不織布と、上記第2不織布の内部に配置された第2固体電解質と、を含有する。第2不織布および第2固体電解質の詳細ついては、それぞれ、上述した第1不織布および第1固体電解質の記載と同様であるので、ここでの記載は省略する。第2固体電解質および第1固体電解質は、例えば硫化物固体電解質であることが好ましい。また、第2固体電解質層の好ましい態様については、上述した第1固体電解質層の好ましい態様と同様である。
【0045】
(3)固体電解質層
本開示における固体電解質層は、第1固体電解質層および第2固体電解質層を有する。第1固体電解質層における第1不織布と、第2固体電解質層における第2不織布とは、直接接触していてもよい。両者が直接接触することで、例えば、引張強度の異方性がより緩和される。一方、第1不織布と、第2不織布との間には、中間固体電解質層が配置されていてもよい。中間固体電解質層が配置されることで、内部抵抗が低減される。中間固体電解質層は、少なくとも固体電解質を含有し、必要に応じてバインダーを含有していてもよい。固体電解質およびバインダーについては、上記「(1)第1固体電解質層」に記載した内容と同様である。中間固体電解質層は、通常、不織布を含有しない層である。中間固体電解質層の厚さは、特に限定されないが、例えば、第1不織布の厚さ、および、第2不織布の厚さより小さい。
【0046】
第1固体電解質層における第1不織布と、正極層とは、直接接触していてもよい。一方、第1不織布と、正極層との間には、正極側固体電解質層が配置されていてもよい。正極側固体電解質層が配置されることで、内部抵抗が低減される。正極側固体電解質層は、少なくとも固体電解質を含有し、必要に応じてバインダーを含有していてもよい。固体電解質およびバインダーについては、上記「(1)第1固体電解質層」に記載した内容と同様である。正極側固体電解質層は、通常、電子伝導性を有しない。また、正極側固体電解質層は、通常、不織布を含有しない。正極側固体電解質層の厚さは、特に限定されないが、例えば、第1固体電解質層の厚さより小さい。
【0047】
第2固体電解質層における第2不織布と、負極層とは、直接接触していてもよい。一方、第2不織布と、負極層との間には、負極側固体電解質層が配置されていてもよい。負極側固体電解質層が配置されることで、内部抵抗が低減される。負極側固体電解質層は、少なくとも固体電解質を含有し、必要に応じてバインダーを含有していてもよい。固体電解質およびバインダーについては、上記「(1)第1固体電解質層」に記載した内容と同様である。負極側固体電解質層は、通常、電子伝導性を有しない。また、負極側固体電解質層は、通常、不織布を含有しない。負極側固体電解質層の厚さは、特に限定されないが、例えば、第2固体電解質層の厚さより小さい。
【0048】
本開示における固体電解質層は、不織布を含有する層として、第1固体電解質層および第2固体電解質のみを有していてもよく、さらに、1または2以上の他の層(不織布含有層)を含有していてもよい。他の層の不織布における繊維方向と、第1繊維方向との角度は、例えば30°以上である。また、他の層の不織布における繊維方向と、第2繊維方向との角度は、例えば30°以上である。
【0049】
固体電解質層の厚さは、例えば1μm以上であり、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。一方、固体電解質層の厚さは、例えば150μm以下であり、100μm以下であってもよい。
【0050】
2.正極層
正極層は、少なくとも正極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質、導電材およびバインダーの少なくとも一つを含有していてもよい。正極活物質としては、例えば、酸化物活物質が挙げられる。酸化物活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等の岩塩層状型活物質、LiMn、LiTi12、Li(Ni0.5Mn1.5)O等のスピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO等のオリビン型活物質が挙げられる。
【0051】
酸化物活物質の表面には、Liイオン伝導性酸化物を含有する保護層が形成されていてもよい。酸化物活物質と、固体電解質との反応を抑制できるからである。Liイオン伝導性酸化物としては、例えばLiNbOが挙げられる。保護層の厚さは、例えば、1nm以上30nm以下である。また、正極活物質として、例えばLiSを用いることもできる。
【0052】
正極活物質の形状としては、例えば、粒子状が挙げられる。正極活物質の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、例えば10nm以上であり、100nm以上であってもよい。一方、正極活物質の平均粒径(D50)は、例えば50μm以下であり、20μm以下であってもよい。
【0053】
正極層は、導電材を含有していてもよい。導電材としては、例えば、炭素材料、金属粒子、導電性ポリマーが挙げられる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)等の粒子状炭素材料、炭素繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバー(CNF)等の繊維状炭素材料が挙げられる。また、正極層に用いられる固体電解質およびバインダーについては、上記「1.固体電解質層」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。正極層の厚さは、例えば、0.1μm以上、1000μm以下である。
【0054】
3.負極層
負極層は、少なくとも負極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質、導電材およびバインダーの少なくとも一つを含有していてもよい。負極活物質としては、例えば、金属リチウム、リチウム合金等のLi系活物質;グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素系活物質;チタン酸リチウム等の酸化物系活物質;Si単体、Si合金、酸化ケイ素等のSi系活物質が挙げられる。
【0055】
負極活物質の形状は、例えば、粒子状が挙げられる。負極活物質の平均粒径(D50)は、例えば10nm以上であり、100nm以上であってもよい。一方、負極活物質の平均粒径(D50)は、例えば50μm以下であり、20μm以下であってもよい。
【0056】
負極層に用いられる導電材、固体電解質およびバインダーについては、上記「1.固体電解質層」および上記「2.正極層」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。負極層の厚さは、例えば、0.1μm以上、1000μm以下である。
【0057】
4.全固体電池
本開示における全固体電池は、正極層、固体電解質層および負極層を有する。ここで、正極層、固体電解質層および負極層のセットを発電単位とした場合、全固体電池は、発電単位を1つのみ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。全固体電池が2つ以上の発電単位を有する場合、それらの発電単位は、直列接続されていてもよく、並列接続されていてもよい。
【0058】
全固体電池は、正極層の集電を行う正極集電体を有していてもよい。正極集電体は、典型的には、正極層を基準として、固体電解質層とは反対側の位置に配置される。正極集電体の材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、カーボンが挙げられる。また、正極集電体の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状が挙げられる。
【0059】
全固体電池は、負極層の集電を行う負極集電体を有していてもよい。負極集電体は、典型的には、負極層を基準として、固体電解質層とは反対側の位置に配置される。負極集電体の材料としては、例えば、ステンレス鋼、銅、ニッケル、カーボンが挙げられる。また、負極集電体の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状が挙げられる。
【0060】
全固体電池は、上述した発電単位を少なくとも収納する外装体を有していてもよい。外装体としては、例えば、ラミネート型外装体、ケース型外装体が挙げられる。
【0061】
全固体電池は、正極層、固体電解質層および負極層に対して、厚さ方向に拘束圧力を付与する拘束部材を備えていてもよい。拘束圧力は、例えば0.1MPa以上であり、1MPa以上であってもよく、5MPa以上であってもよい。一方、拘束圧力は、例えば100MPa以下であり、50MPa以下であってもよく、20MPa以下であってもよい。
【0062】
本開示における全固体電池は、典型的には全固体リチウムイオン二次電池である。全固体電池の用途は、特に限定されないが、例えば、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車または電気自動車の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における全固体電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0063】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例
【0064】
[実施例1]
(正極の作製)
正極活物質として、レーザー回折・散乱法に基づいて測定される平均粒子径(D50)が5μmであるLiNi1/3Co1/3Mn1/3粉体を使用した。次に、ゾルゲル法を用いて、正極活物質の表面にLiNbOを被覆した。また、硫化物固体電解質として、レーザー回折・散乱法に基づいて測定される平均粒子径(D50)が2.5μmである15LiBr・10LiI・75(0.75LiS・0.25P)ガラスセラミックスを使用した。
【0065】
その後、正極活物質および硫化物固体電解質を、重量比率が、正極活物質:硫化物固体電解質=75:25となるように秤量し、それらを混合し、第1混合物を得た。次に、正極活物質100重量部に対して、SBR(スチレンブタジエンゴム)系バインダーが3重量部、導電材(カーボンナノファイバー、CNF)が10重量部となるように秤量し、それらを第1混合物に添加し、第2混合物を得た。次に、第2混合物に分散媒(酪酸ブチル)を添加し、固形分濃度を60重量%に調整し、1分間超音波分散処理することで、正極スラリーを得た。
【0066】
得られた正極スラリーを、ブレードコーティングにより、正極集電体(アルミニウム箔、厚さ15μm)上に、目付量15mg/cmで均一に塗工し、100℃で60分間乾燥した。これにより、正極集電体および正極層を有する正極(正極構造体)を得た。
【0067】
(負極の作製)
負極活物質として、レーザー回折・散乱法に基づいて測定される平均粒子径(D50)が5μmであるSi粉末を使用した。また、硫化物固体電解質として、レーザー回折・散乱法に基づいて測定される平均粒子径(D50)が2.5μmである15LiBr・10LiI・75(0.75LiS・0.25P)ガラスセラミックスを使用した。
【0068】
その後、負極活物質および硫化物固体電解質を、重量比率が、負極活物質:硫化物固体電解質=50:50となるように秤量し、それらを混合し、第3混合物を得た。次に、負極活物質100重量部に対して、SBR系バインダーが3重量部、導電材(CNF)が10重量部となるように秤量し、それらを第3混合物に添加し、第4混合物を得た。次に、第4混合物に分散媒(酪酸ブチル)を添加し、固形分濃度を40重量%に調整し、1分間超音波分散処理することで、負極スラリーを得た。
【0069】
得られた負極スラリーを、ブレードコーティングにより、負極集電体(粗化銅箔、厚さ25μm、R=5μm)上に、目付量3mg/cmで均一に塗工し、100℃で60分間乾燥した。これにより、負極集電体および負極層を有する負極(負極構造体)を得た。
【0070】
(固体電解質層の作製)
硫化物固体電解質として、レーザー回折・散乱法に基づいて測定される平均粒子径(D50)が2.5μmである15LiBr・10LiI・75(0.75LiS・0.25P)ガラスセラミックスを使用した。また、バインダーとして、SBR系バインダーを使用した。
【0071】
その後、硫化物固体電解質およびバインダーを、重量比率が、硫化物固体電解質:バインダー=99:1となるように秤量し、それらを混合し、第5混合物を得た。次に、第5混合物に分散媒(酪酸ブチル)を添加し、固形分濃度を50重量%に調整し、1分間超音波分散処理することで、固体電解質層用のスラリーを得た。
【0072】
その後、アルミニウム箔上に、ポリエステル製不織布(厚さ15μm、空隙率80%、MD方向の引張強度5N/cm、CD方向の引張強度1N/cm)を配置した。次に、得られたスラリーを、ブレードコーティングにより、ポリエステル製不織布上に、目付量2.9mg/cm(不織布を含む厚さ15μm)で均一に塗工し、100℃で60分間乾燥した。これにより、アルミニウム箔および固体電解質層を有する転写部材を得た。また、同様の操作を行い、同じ転写部材を作製した。
【0073】
(全固体電池の作製)
2つの転写部材を、それぞれ、6.2cm×6.2cmの正方形に切り出した。この際、1つの転写部材については、その繊維方向(MD方向)が正方形の一辺と平行となるように切り出した(転写部材A)。もう1つの転写部材については、その繊維方向(MD方向)が正方形の一辺と45°で交差するように切り出した(転写部材B)。また、負極構造体を6.2cm×6.2cmの正方形に切り出した。また、正極構造体を、6.0cm×6.0cmの正方形に切り出した。
【0074】
その後、負極構造体における負極層と、転写部材Aにおける固体電解質層とを重ね合わせ、1ton/cmのプレス圧でロールプレスし、次いで、転写部材Aからアルミニウム箔を剥離した。次に、露出した固体電解質層と、転写部材Bにおける固体電解質層とを重ね合わせ、1ton/cmのプレス圧でロールプレスし、次いで、転写部材Bからアルミニウム箔を剥離した。これにより、負極集電体、負極層、第2固体電解質層および第1固体電解質層を有する構造体Xを得た。次に、構造体Xにおける第1固体電解質層と、正極構造体における正極層とを重ね合わせ、3ton/cmのプレス圧でロールプレスした。これにより、負極集電体、負極層、第2固体電解質層、第1固体電解質層、正極層および正極集電体を有する構造体Yを得た。次に、構造体Yを、正極端子および負極端子が予め付設された外装体(アルミニウム製のラミネートフィルム)で密閉することで、全固体電池を得た。
【0075】
[実施例2]
2つの転写部材Aを用い、第1固体電解質層における繊維方向(MD方向)と、第2固体電解質層における繊維方向(MD方向)との角度が90°となるように、第1固体電解質層および第2固体電解質層を配置したこと以外は、実施例1と同様にして全固体電池を得た。
【0076】
[比較例1]
実施例1と同様にして、固体電解質層用のスラリーを得た。次に、アルミニウム箔上に、ポリエステル製不織布(厚さ30μm)を配置した。次に、得られたスラリーを、ブレードコーティングにより、ポリエステル製不織布上に、目付量5.8mg/cm(不織布を含む厚さ30μm)で均一に塗工し、100℃で60分間乾燥した。これにより、アルミニウム箔および固体電解質層を有する転写部材を得た。
【0077】
得られた転写部材を用い、固体電解質層における繊維方向(MD方向)がロールプレスの進行方向と平行となるように、各ロールプレスを行ったこと以外は、実施例1と同様にして全固体電池を得た。
【0078】
[比較例2]
固体電解質層における繊維方向(MD方向)がロールプレスの進行方向と直交するように、各ロールプレスを行ったこと以外は、比較例1と同様にして全固体電池を得た。
【0079】
[評価]
実施例1、2および比較例1、2で作製した全固体電池を用いて、サイクル試験を行った。測定は、以下の手順で行った。まず、全固体電池を、100MPaの圧力で拘束し、電流レート36mAで、4.5VまでCCCV充電した(電流カット値:0.36mA)。次に、電流レート36mAで、3.0VまでCCCV放電した(電流カット値:0.36mA)。この充放電を100サイクル行い、容量維持率を求めた。その結果を表1に示す。
容量維持率(%)=100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量×100
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示すように、実施例1、2では、比較例1、2に比べて、容量維持率が大きくなった。その理由は、第1不織布における繊維方向(MD方向)と、第2不織布における繊維方向(MD方向)との角度を45°以上90°以下にすることで、引張強度の異方性が緩和されたためであると推測される。
【符号の説明】
【0082】
1…正極層
2…負極層
3…固体電解質層
3a…第1固体電解質層
3b…第2固体電解質層
4…正極集電体
5…負極集電体
10…全固体電池
図1
図2
図3