(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】車載通信装置の基板接続構造
(51)【国際特許分類】
H04B 1/3822 20150101AFI20240723BHJP
H04B 1/08 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H04B1/3822
H04B1/08
(21)【出願番号】P 2021165488
(22)【出願日】2021-10-07
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】谷村 康成
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-306322(JP,A)
【文献】登録実用新案第3107906(JP,U)
【文献】特開2020-205490(JP,A)
【文献】特開2013-004361(JP,A)
【文献】中国実用新案第212332571(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0025709(US,A1)
【文献】特開2018-000053(JP,A)
【文献】特開2002-196065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/3822
H04B 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、セルラー通信機能を有するNAD(Network Access Device;3,53)が搭載されたメイン基板(1,52)に対して、
オプションとしての通信機能が搭載されたサブ基板(2,57)が同軸コネクタ(7)を介して上下に重なる状態で接続可能であり、
前記メイン基板には、前記NAD及び前記サブ基板の通信機能が行う無線通信に用いるアンテナ(24)を接続するためのRFコネクタ(5)が搭載されており、
前記サブ基板が接続されると、前記同軸コネクタを介して、前記アンテナが前記サブ基板の通信機能にも接続されるように構成され
、
前記NAD(53)は、衛星測位用の通信機能(54)を有しており、
前記オプションとしての通信機能は、前記NADよりも精度が高い衛星測位用の通信機能(58)である車載通信装置の基板接続構造。
【請求項2】
前記NADは、前記メイン基板に前記サブ基板が接続される際には、自身が有している衛星測位用の通信機能を無効化し、
前記サブ基板の通信機能より得られる衛星測位の結果を、自身が行う通信に使用する請求項
1記載の車載通信装置の基板接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される通信装置の基板接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両は多機能化が進んでいるため、車両において行われる無線通信も様々な種類が増えており、それに応じて搭載される通信機の数も増加する傾向にある。そこで、それらの搭載スペースや重量を削減する目的で、例えば電話やWi-Fi(登録商標)、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の通信を行なう機器の統合も進められている。また、無線通信のシステム仕様は各国で異なるため、統合する通信機能を組み合わせるパターンも増加している。
【0003】
このような通信機能の組み合わせパターンの増加に対応するため、例えば特許文献1には、車両に搭載されるラジオチューナを、各国の放送周波数や仕様の相違に対応させるためモジュール化してサブ基板に実装し、メイン基板に接続するサブ基板を交換可能とした構成が開示されている。また、特許文献2には、同様に無線モジュールを実装したサブ基板をメイン機器に搭載する構成において、小型化,薄型化を図ったものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-205489号公報
【文献】特許第6210614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている構成では、チューナ用の2つのアンテナコネクタがサブ基板側に実装されているため、サブ基板にそれらのコネクタを並べるためのスペースが必要となり、通信装置全体の体格が大型化してしまう。
【0006】
また、特許文献2に開示されている構成では、サブ基板に背が低い同軸コネクタを実装することで薄型化しているが、外部アンテナをその同軸コネクタに対して製品の上面又は下面から接続する構成であるため、薄型化のメリットが十分に得られない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、サブ基板に外部アンテナ接続用のコネクタを実装することなく、無線通信機能を搭載したサブ基板をメイン基板に対して挿抜可能な構成とした車載通信装置の基板接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の車載通信装置の基板接続構造によれば、少なくとも、セルラー通信機能を有するNADが搭載されたメイン基板に対して、オプションとしての通信機能が搭載されたサブ基板が同軸コネクタを介して上下に重なる状態で接続可能とする。そして、メイン基板には、NAD及びサブ基板の通信機能が行う無線通信に用いるアンテナを接続するためのRFコネクタを搭載し、サブ基板が接続されると、同軸コネクタを介して前記アンテナがサブ基板の通信機能にも接続される。
【0009】
このように構成すれば、サブ基板側に、オプションである通信を行うためのアンテナを接続するコネクタを設ける必要がなくなるので、サブ基板を小型に構成できる。そして、メイン基板にサブ基板を接続すると、両者が上下に重なる状態となることで接続された構造体を薄型化することも可能になる。
【0011】
また、請求項1記載の車載通信装置の基板接続構造によれば、オプションとしての通信機能を、メイン基板のNADよりも精度が高い衛星測位用の通信機能とする。このように構成すれば、メイン基板には予め、比較的精度が低い衛星測位用の通信機能を搭載すれば良く、より精度が高い通信機能が要求される際には、メイン基板にサブ基板を接続して対応できる。したがって、メイン基板の製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態であり、SCUを構成するメイン基板及びサブ基板の一部を透視して示す分解斜視図
【
図2】メイン基板のみを使用する場合のSCUの機能ブロック図
【
図3】メイン基板にサブ基板を接続して使用する場合のSCUの機能ブロック図
【
図4】メイン基板のみを使用する場合を概略的に示すSCUの正面図
【
図5】メイン基板にサブ基板を接続して使用する場合を概略的に示すSCUの正面図
【
図6】第2実施形態であり、メイン基板のみを使用する場合のSCUの機能ブロック図
【
図7】メイン基板にサブ基板を接続して使用する場合のSCUの機能ブロック図
【
図8】メイン基板のみを使用する場合を概略的に示すSCUの正面図
【
図9】メイン基板にサブ基板を接続して使用する場合を概略的に示すSCUの正面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の基板接続構造は、メイン基板1及びサブ基板2を相互に電気的に接続する構造であり、これらは車載統合通信機であるSCU(Smart Communication Unit)50を構成している。SCU50は、例えば車両においてセンタ装置等と通信を行うために使用される。
【0014】
メイン基板1には、NAD(Network Access Device)3,各種の通信のインターフェース(I/F)等を外部と接続するためのメインコネクタ4,アンテナが接続されるRFコネクタ5(1)及び5(2)や、回路部品6等が搭載されている。NAD3は、一般的なセルラー無線通信を行う機能部である。
【0015】
また、メイン基板1には、サブ基板2との間で高周波信号を伝送するための同軸BtoBコネクタ7Fが搭載されている。このコネクタ7Fには、RFコネクタ5(1)及び5(2)が配線パターンにより接続されている。
【0016】
一方、サブ基板2の表面には、V2X(Vehicle to X)通信を行う機能部である無線モジュール8が搭載されている。V2Xには、DSRCとC-V2Xとの2つの方式があり、通信周波数は、例えば数100MHz~数GHzである。また、サブ基板2の裏面には、メイン基板1の同軸BtoBコネクタ7Fに接続される同軸BtoBコネクタ7Mが搭載されている。
【0017】
その他、メイン基板1には、
図2に示すように、アプリケーション用のCPU11や車載LANの一種であるCAN(登録商標)通信用のMPU12,Wi-Fi(登録商標)通信用のモジュール13等も搭載されている。MPU12には、スイッチI/F14,インジケータI/F15,CAN_I/F16,エアバッグI/F17,イグニッション(IG)I/F18等が接続されている。MPU12は、NAD3及びCPU11とメイン基板1内で通信を行う。尚、NAD3には、セルラー無線通信機能に加えて、セルラーV2X;C-V2X通信機能を備えていても良い。
【0018】
バックアップバッテリ(BUB)19は、電源コネクタ20を介してメイン基板1に接続されている。BUB19からの電源は、BUB制御部21及び電源供給部22を介してメイン基板1及びサブ基板2の各電子部品等に、バックアップ用電源を供給する。
【0019】
Wi-Fiモジュール13には、Wi-Fi通信用のアンテナ23(1)及び23(2)が接続されており、Wi-Fiモジュール13は、CPU11とメイン基板1内で通信を行う。NAD3には、
図2では示さないが、RFコネクタ5(1)及び5(2)を介してV2X通信用のアンテナ24(1)及び24(2)が接続されている。その他、NAD3には、セルラー通信用のアンテナ25(1)及び25(2)や、衛星測位用の通信であるGNSS(Global Navigation Satellite System)通信用のアンテナ26が接続されている。
【0020】
また、NAD3には、オーディオI/F27がコーデック28を介して接続されていると共に、IMU(Inertial Measurement Unit)29やシムカードであるeSIM30などが接続されている。NAD3は、CPU11と通信を行う。CPU11には、図中で「ETH PHY」と示すEthernet(登録商標)のインターフェイス31や、フラッシュメモリ32及びDDR(Double Data Rate SDRAM)33等のメモリが接続されている。
【0021】
図3は、メイン基板1にサブ基板2が接続された状態を示している。
図4,
図5は、それぞれ
図2,
図3の状態に対応したイメージである。メイン基板1にNAD3を搭載し、オプションとしてV2X通信を行うための無線モジュール8をサブ基板2に搭載することで、メイン基板1の面積を小さく抑えている。そして、V2X通信を行う機能が要求される際には、メイン基板1に同軸BtoBコネクタ7を介してサブ基板2を接続する。その際に、サブ基板2の無線モジュール8には、RFコネクタ5(1)及び5(2)に接続されているアンテナ24(1)及び24(2)を利用して、V2X通信を行うことが可能になる。また、この時無線モジュール8は、同軸BtoBコネクタ7を介してCPU11と通信を行う。
【0022】
以上のように本実施形態によれば、SCU50において、少なくともセルラー通信機能が搭載されたメイン基板1に対し、オプションとしての通信機能が搭載されたサブ基板2が同軸BtoBコネクタ7を介して上下に重なる状態で接続可能とする。そして、メイン基板1には、NAD3及びサブ基板2の通信機能が行う無線通信に用いるアンテナ24(1)及び24(2)を接続するためのRFコネクタ5(1)及び5(2)を搭載し、サブ基板2が接続されると、同軸BtoBコネクタ7を介してアンテナ24(1)及び24(2)がサブ基板2の無線モジュール8にも接続される。
【0023】
このように構成すれば、サブ基板2側に、オプションである通信を行うためのアンテナ24を接続するコネクタを設ける必要がなくなるので、サブ基板2を小型に構成できる。そして、メイン基板1にサブ基板2を接続すれば、両者が上下に重なる状態となることで接続された構造体であるSCU50を薄型化することも可能になる。
【0024】
現状では、V2X通信の車両への搭載率は低く、また、仕向け地に応じて仕様が異なっているため、メイン基板1のみで予めV2X通信にも対応させることを想定するとバリエーションが多くなり、開発工数が増大すると共に生産管理も煩雑となり、総じてコストアップを招来する。そこで、オプションとしてV2X通信を使用可能にすることで、将来的な汎用性や拡張性に対応させることができる。
【0025】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。第2実施形態のSCU51は、メイン基板52に搭載されるNAD53の機能が、NAD3とは若干相違している。NAD53は、C-V2X通信機能と全球測位衛星システムであるGNSS(Global Navigation Satellite System)機能とを内蔵しており、これらの機能は、択一的に実行される。
【0026】
図6ではNAD53にGNSS機能部54を明示しており、
図7では、C-V2X通信機能部55を明示している。GNSS機能部54には、GNSS通信用のアンテナ56が接続されている。
図6に示すように、メイン基板52のみを使用する場合は、NAD53のGNSS機能部54を有効化する。C-V2X通信を行わない場合、GNSSに要求される精度は比較的低く、例えば数10m程度であるから、GNSS機能部54は、それに応じた低精度のものを用いる。
【0027】
一方、
図7に示すように、サブ基板57には、GNSS受信機58を搭載する。そして、メイン基板52にサブ基板57を接続して使用する場合は、NAD53のC-V2X通信機能部55を有効化する。C-V2X通信を行う場合、GNSSに要求される精度は比較的高く、例えば数m程度であるから、GNSS受信機58は、それに応じた高精度のものを用いる。この時、GNSS受信機58には、同軸BtoBコネクタ7を介してアンテナ56が接続される。
図8,
図9は、それぞれ
図6,
図7の状態に対応したイメージである。
尚、
図6に示すように、C-V2X通信機能部55を使用しない場合には、アンテナ24(1)及び24(2)をメイン基板52に接続する必要はない。
【0028】
以上のように第2実施形態によれば、サブ基板57に搭載するオプションとしての通信機能を、メイン基板52のNAD53が備えるGNSS機能部54よりも、精度が高いGNSS受信機58とする。このように構成すれば、メイン基板52の製造コストを低減できる共に、より精度が高い通信機能が要求される際には、メイン基板52にサブ基板57を接続して対応できる。
【0029】
そして、NAD53は、メイン基板52にサブ基板57が接続される際には、GNSS機能部54を無効化し、サブ基板57のGNSS受信機58より得られる衛星測位の結果を、C-V2X通信機能部55で行う通信に使用する。これにより、NAD53は、自身が行うC-V2X通信に必要な精度の衛星測位の結果を利用できる。
【0030】
(その他の実施形態)
使用する通信プロトコルは、個別の設計に応じて適宜選択すれば良い。
オプションとしての通信機能は、V2Xに限らない。
メイン基板に搭載するNADの周辺回路も、必要に応じて適宜選択すれば良い。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0031】
図面中、1はメイン基板、2はサブ基板、3はNAD、5はRFコネクタ、7は同軸BtoBコネクタ、8は無線モジュール、24はアンテナ、50はSCUを示す。