(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240723BHJP
B60R 3/00 20060101ALI20240723BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240723BHJP
【FI】
B62D25/20 E
B60R3/00
B60K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2021182839
(22)【出願日】2021-11-09
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 宗志朗
(72)【発明者】
【氏名】大竹 和樹
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-116112(JP,A)
【文献】特開2017-193299(JP,A)
【文献】特開2020-44950(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110920416(CN,A)
【文献】米国特許第10994795(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B60R 3/00
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床下に設けられたベース部材と、
前記ベース部材の車両上方側でかつその車両前後方向両側に設けられ、車両幅方向を長手方向として配置され、長手方向から見て車両上方側が開放された断面ハット状に形成されてその車両前後方向の両端部がフランジとされた一対の強度部材と、
前記ベース部材の車両上方側でかつ前記一対の強度部材の間に収納され、車両側方側にスロープ板を繰り出し可能に構成されたスロープ装置と、
前記一対の強度部材に車両下方側から支持されて車室の床面を構成すると共に前記スロープ装置に対して車両上方側に間隔をあけて配置された車体フロアと、
を有し、
前記一対の強度部材の各一対の前記フランジのうち前側強度部材の後フランジ及び後側強度部材の前フランジのそれぞれには前記スロープ装置及び前記車体フロアの両方が締結されかつ前記スロープ装置が締結される位置と前記車体フロアが締結される位置とが互いに異なる位置に設定されており、
前記スロープ装置と前記前側強度部材の後フランジ及び前記後側強度部材の前フランジとの第一の締結部分は、前記車体フロアとは接触しないように配置され、前記車体フロアと前記前側強度部材の後フランジ及び前記後側強度部材の前フランジとの第二の締結部分は、前記スロープ装置とは接触しないように配置されている、車両下部構造。
【請求項2】
前記前側強度部材の後フランジは、前記前側強度部材の前フランジよりも、車両上下方向の高さ位置が低い位置に設定され、
前記後側強度部材の前フランジは、前記後側強度部材の後フランジよりも、車両上下方向の高さ位置が低い位置に設定されている、請求項1記載の車両下部構造。
【請求項3】
前記ベース部材は、バッテリを収容するバッテリケースである、請求項1又は請求項2に記載の車両下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、スロープ装置を搭載した車両に関する技術が開示されている。簡単に説明すると、この先行技術では、ベースフレームの車両上方側に床パネルが離間して配置され、ベースフレームと床パネルとの間の隙間に、歩道あるいは道路に向かってスロープ板を繰り出すことが可能なスロープ装置が搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような先行技術では、床パネルに作用する荷重がスロープ装置に直接的に伝達されてしまうと、スロープ装置の動作が不安定になる可能性があり、この点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、車体フロアに作用する荷重がスロープ装置に直接的に伝達されるのを防止又は抑制することで、スロープ装置の動作を安定化させることが可能な車両下部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両下部構造は、車両の床下に設けられたベース部材と、前記ベース部材の車両上方側でかつその車両前後方向両側に設けられ、車両幅方向を長手方向として配置され、長手方向から見て車両上方側が開放された断面ハット状に形成されてその車両前後方向の両端部がフランジとされた一対の強度部材と、前記ベース部材の車両上方側でかつ前記一対の強度部材の間に収納され、車両側方側にスロープ板を繰り出し可能に構成されたスロープ装置と、前記一対の強度部材に車両下方側から支持されて車室の床面を構成すると共に前記スロープ装置に対して車両上方側に間隔をあけて配置された車体フロアと、を有し、前記一対の強度部材の各一対の前記フランジのうち前側強度部材の後フランジ及び後側強度部材の前フランジのそれぞれには前記スロープ装置及び前記車体フロアの両方が締結されかつ前記スロープ装置が締結される位置と前記車体フロアが締結される位置とが互いに異なる位置に設定されており、前記スロープ装置と前記前側強度部材の後フランジ及び前記後側強度部材の前フランジとの第一の締結部分は、前記車体フロアとは接触しないように配置され、前記車体フロアと前記前側強度部材の後フランジ及び前記後側強度部材の前フランジとの第二の締結部分は、前記スロープ装置とは接触しないように配置されている。
【0007】
上記構成によれば、車両の床下にはベース部材が設けられ、ベース部材の車両上方側でかつその車両前後方向両側には、車両幅方向を長手方向として配置された一対の強度部材が設けられている。強度部材は、その長手方向から見て車両上方側が開放された断面ハット状に形成されてその車両前後方向の両端部がフランジとされている。また、ベース部材の車両上方側でかつ一対の強度部材の間にはスロープ装置が収納されており、このスロープ装置は、車両側方側にスロープ板を繰り出し可能となっている。さらに、一対の強度部材は、車室の床面を構成する車体フロアを車両下方側から支持しており、車体フロアは、スロープ装置に対して車両上方側に間隔をあけて配置されている。
【0008】
ここで、一対の強度部材の各一対のフランジのうち前側強度部材の後フランジ及び後側強度部材の前フランジのそれぞれにはスロープ装置及び車体フロアの両方が締結されかつスロープ装置が締結される位置と車体フロアが締結される位置とが互いに異なる位置に設定されている。さらに、スロープ装置と前側強度部材の後フランジ及び後側強度部材の前フランジとの第一の締結部分は、車体フロアとは接触しないように配置され、車体フロアと前側強度部材の後フランジ及び後側強度部材の前フランジとの第二の締結部分は、スロープ装置とは接触しないように配置されている。これらにより、車体フロアに作用する荷重がスロープ装置に直接的に伝達されるということが防止又は抑制されるので、スロープ装置の動作を安定化させることが可能になる。
【0009】
請求項2に記載する本発明の車両下部構造は、請求項1記載の構成において、前記前側強度部材の後フランジは、前記前側強度部材の前フランジよりも、車両上下方向の高さ位置が低い位置に設定され、前記後側強度部材の前フランジは、前記後側強度部材の後フランジよりも、車両上下方向の高さ位置が低い位置に設定されている。
【0010】
上記構成によれば、スロープ装置と前側強度部材の後フランジ及び後側強度部材の前フランジとの第一の締結部分が車体フロアと接触しない構成を、車体フロアの下面側に非接触用の構造を設けなくても実現することが可能となる。
【0011】
請求項3に記載する本発明の車両下部構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記ベース部材は、バッテリを収容するバッテリケースである。
【0012】
上記構成によれば、車両の床下にバッテリケースが設けられた車両において、バッテリケースと車体フロアとの間に配置されたスロープ装置に対して、車体フロアに作用する荷重が直接的に伝達されるのを防止又は抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の車両下部構造によれば、車体フロアに作用する荷重がスロープ装置に直接的に伝達されるのを防止又は抑制することで、スロープ装置の動作を安定化させることが可能になるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両下部構造が適用された車両を示す斜視図である。
【
図2】
図1の2-2線に沿って切断した状態を拡大して簡略化して示す断面図である。
【
図3】
図1の車両下部の一部を分解して簡略化して示す分解斜視図である。
【
図4】
図1の車両下部のうち
図3と同様の範囲から車体フロアを取り外して車両上方側から見た状態を簡略化して示す平面図である。
【
図5】
図1の車両下部を
図4の5-5線に相当する位置で切断した状態を拡大して示す断面図である。
【
図6】
図1の車両下部を
図4の6-6線に相当する位置で切断した状態を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る車両下部構造について
図1~
図6を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印LHは車両左側を示している。
【0016】
(実施形態の構成)
図1には、本発明の一実施形態に係る車両下部構造を適用した車両10が斜視図で示されている。なお、
図1に示す車両10は、一例として、自動運転で走行する電動車両とされ、遠隔操作による走行も可能となっている。また、この車両10の前部側及び後部側における車両幅方向の両側には、車両用駆動ユニット18が設けられており、この車両用駆動ユニット18には一例としてインホイールモータ(図示省略)が組み込まれている。
【0017】
図1に示されるように、この車両10の左側の車体側部12には、車両前後方向中間部にドア開口部14が形成されている。ドア開口部14は、車室外と車室内とを連通させており、一対のドア16、17によって開閉されるようになっている。一対のドア16、17は、車両前後方向に沿ってスライドするスライドドアとされる。
【0018】
車両10の下部には、電動のスロープ装置20が搭載されている。スロープ装置20は、ドア開口部14の下縁側から車両側方側にスロープ板20Aを繰り出し可能に構成されている。スロープ装置20は、スロープ板20Aと、スロープ板20Aの移動をガイドするための前後一対のレール20B(
図3参照)と、スロープ板20Aを移動させる駆動モータ(図示省略)と、を含んで構成され、ジャムプロテクション機能を備える。ジャムプロテクション機能は、スロープ板20Aの展開中にスロープ板20Aが例えば人等に当接した場合等の異常時にスロープ板20Aの移動を停止させる機能である。なお、スロープ装置20の基本構成は、公知であるため、詳細説明を省略する。また、スロープ板20Aは、一枚で構成されてもよいし、複数枚で構成されてもよい。
【0019】
図2には、
図1の2-2線に沿って切断した状態を拡大して簡略化した断面図が示されている。なお、
図2では、前述したスロープ装置20を便宜上一塊で図示している。
図2に示されるように、車両10の床下にはベース部材としてのバッテリケース24が設けられている。バッテリケース24は、バッテリ22を収容するケース体である。バッテリケース24は、一例として、その上部を構成するアッパケース24Aと、アッパケース24Aの下側に配置されてアッパケース24Aと共に内部空間を形成するロアケース24Bと、を備え、アッパケース24Aとロアケース24Bとが接合されて構成されている。このバッテリケース24は、図示しない車体構成部材に固定されている。
【0020】
バッテリケース24の車両上方側でかつその車両前後方向両側には、鉄製(鋼製)の一対の強度部材としてのリインフォース32、34が設けられている。一対のリインフォース32、34は、車両幅方向を長手方向として配置されている(
図3参照)。なお、一対のリインフォース32、34の各々は、一部材で構成されてもよいし、長手方向に連接される複数部材が接合されることで一体を成すように構成されてもよい。一対のリインフォース32、34は、ボデー骨格部30の一部を構成している。ボデー骨格部30は、一対のリインフォース32、34よりも車両後方側に車両幅方向を長手方向として配置された鉄製(鋼製)のリインフォース36を含んで構成されている。
【0021】
なお、以下の説明では、一対のリインフォース32、34のうち車両前後方向前側のリインフォース(前側強度部材)を前側リインフォース32といい、一対のリインフォース32、34のうち車両前後方向後側のリインフォース(後側強度部材)を後側リインフォース34という。また、前側リインフォース32と後側リインフォース34とを区別せずにまとめて説明する場合は、一対のリインフォース32、34という。
【0022】
一対のリインフォース32、34は、長手方向から見て車両上方側が開放された断面ハット状に形成されてその車両前後方向の両端部がフランジ32A、32B、34A、34Bとされている。以下の説明では、前側リインフォース32のフランジ32A、32Bのうち車両前後方向前側のフランジを前フランジ32Aといい、前側リインフォース32のフランジ32A、32Bのうち車両前後方向後側のフランジを後フランジ32Bという。同様に、後側リインフォース34のフランジ34A、34Bのうち車両前後方向前側のフランジを前フランジ34Aといい、後側リインフォース34のフランジ34A、34Bのうち車両前後方向後側のフランジを後フランジ34Bという。
【0023】
図3には、
図1の車両10の下部の一部を分解して簡略化した分解斜視図が示されている。
図2及び
図3に示されるように、前側リインフォース32の前フランジ32A及び後側リインフォース34の後フランジ34Bは、鉄製(鋼製)のボデー骨格部30におけるパネル体38の下面側に接合されている。
【0024】
図3に示されるように、パネル体38は、複数のパネル材38A、38B、38Cを含んで構成されている。複数のパネル材38A、38B、38Cの隣り合う部分同士は接合されている。パネル体38には、車両上下方向に貫通した略矩形状の貫通部38Hが形成されており、この貫通部38Hは、車両平面視で車両左側が開放されている。この貫通部38Hの周縁部の前側部分に前側リインフォース32の前フランジ32Aが接合され、貫通部38Hの周縁部の後側部分に後側リインフォース34の後フランジ34Bが接合されている。なお、
図3では図示を省略するが、
図2に示されるように、後側リインフォース34よりも車両後方側に配置されるリインフォース36もパネル体38に接合されている。
【0025】
前側リインフォース32の後フランジ32Bは、前側リインフォース32の前フランジ32Aよりも、車両上下方向の高さ位置が低い位置に設定されている。また、後側リインフォース34の前フランジ34Aは、後側リインフォース34の後フランジ34Bよりも、車両上下方向の高さ位置が低い位置に設定されている。前側リインフォース32の後フランジ32Bと他部材との接合及び後側リインフォース34の前フランジ34Aと他部材との接合については後述する。
【0026】
バッテリケース24の車両上方側でかつ一対のリインフォース32、34の間には、前述したスロープ装置20が収納されている。また、一対のリインフォース32、34は、車室10Xの床面を構成する車体フロア40を車両下方側から支持している。なお、
図2では、車体フロア40の上に多数の乗員が立ち乗りしている場合に作用する等分布荷重を模式的に矢印Fで示している。車体フロア40の下面に対して、前側リインフォース32の後フランジ32B及び後側リインフォース34の前フランジ34Aは車両下方側に離間している。また、車体フロア40は、スロープ装置20に対して車両上方側に間隔をあけて配置されている。ちなみに、車体フロア40を取り外した状態にした場合、スロープ装置20は脱着可能となっている。
【0027】
図3に示されるように、車体フロア40は、一例として複数のフロア構成材40Aで構成されている。フロア構成材40Aは、アルミニウム合金製の押出材であり、中空状とされて(
図5及び
図6参照)平面視で長尺矩形状に形成されている。なお、フロア構成材40Aの成形時の押出方向は、フロア構成材40Aの長手方向と同じ方向である。また、
図2及び
図3では、図を簡略化するために、中空状のフロア構成材40Aの中空部の図示を省略している。
図3に示されるように、複数のフロア構成材40Aは、それぞれ車両前後方向を長手方向として配置されると共に車両幅方向に並べられてパネル体38の貫通部38Hを塞ぐようにボデー骨格部30に接合される。複数のフロア構成材40Aは、ボデー骨格部30に対して脱着可能とされている。
【0028】
図4には、
図1の車両10の下部のうち
図3と同様の範囲から車体フロア40を取り外して車両上方側から見た状態の平面図が簡略化されて示されている。なお、
図4では、車体フロア40を配置した場合の車体フロア40の外形線を簡略化して二点鎖線で示すと共に、スロープ装置20を便宜上一塊で示す。また、ボデー骨格部30において車体フロア40が締結される位置に符号32Y、32Z、34Y、34Z、38Zを付し、ボデー骨格部30においてスロープ装置20が締結される位置に符号32X、34Xを付す。補足説明すると、
図4において符号32X、32Y、32Z、34X、34Y、34Z、38Zが付された丸印は、車両上方側から見た場合における締結具の配置位置として捉えることもできる。
【0029】
一方、
図5には、
図1の車両10の下部を
図4の5-5線に相当する位置で切断して拡大した状態の断面図が示され、
図6には、
図1の車両10の下部を
図4の6-6線に相当する位置で切断して拡大した状態の断面図が示されている。なお、
図5及び
図6では、スロープ装置20を簡略化した状態で図示し、例えば、スロープ板20Aとその車両前後方向の前端側に取り付けられた部材とを便宜上一体化した状態で図示して移動体20Mとしている。また、その移動体20Mとレール20Bとの間には滑車等の部材(図示省略)が配置される。ちなみに、移動体20Mの車両前後方向の両端側における上部にはサイドガード20Cが設けられ、このサイドガード20Cは、スロープ装置20の使用時に車両幅方向の軸線回りに90度回転して縦壁状に配置される。
【0030】
図4~
図6に示されるように、前側リインフォース32の後フランジ32B及び後側リインフォース34の前フランジ34Aのそれぞれにはスロープ装置20及び車体フロア40の両方が締結されかつスロープ装置20が締結される位置32X、34X(
図4参照)と車体フロア40が締結される位置32Y、34Y(
図4参照)とが互いに異なる位置に設定されている。以下、これらの構造及びその周辺構造について具体的に説明する。
【0031】
図4に示されるように、スロープ装置20における車両前後方向の前端側からは複数の前側張出部20Fが車両前方側に張り出している。また、スロープ装置20における車両前後方向の後端側からは複数の後側張出部20Rが車両後方側に張り出している。前側張出部20F及び後側張出部20Rは、一例として、スロープ装置20の前後端側における車両幅方向両端に近い部分とスロープ装置20の前後端側における車両幅方向中間部とに設定されている。
【0032】
図4及び
図5に示されるように、スロープ装置20の前側張出部20Fは、前側リインフォース32の後フランジ32Bに車両上方側から重ねられて締結されている。
図5に示されるように、前側張出部20Fにはボルト挿通孔20F1が貫通形成されている。また、前側リインフォース32の後フランジ32Bには、ボルト挿通孔20F1と対応する位置にボルト挿通孔32B1が貫通形成されている。前側リインフォース32の後フランジ32Bの下面には、ボルト挿通孔32B1の外周部にウエルドナット48が予め固着されている。ウエルドナット48には、ボルト挿通孔20F1、32B1を車両上方側から貫通したボルト49の軸部49Aが螺合されている。これにより、ボルト49の頭部49Bとウエルドナット48との間でスロープ装置20の前側張出部20F及び前側リインフォース32の後フランジ32Bが挟まれて締め付けられている。ボルト49の頭部49Bと車体フロア40の下面との間には間隔があけられている。
【0033】
図4に示されるように、スロープ装置20の後側張出部20Rは、後側リインフォース34の前フランジ34Aに車両上方側から重ねられて締結されている。スロープ装置20の後側張出部20Rと後側リインフォース34の前フランジ34Aとの締結構造は、
図5に示されるスロープ装置20の前側張出部20Fと前側リインフォース32の後フランジ32Bとの締結構造を前後反転させた構造と実質的に同様とされる。以上により、
図4に示されるスロープ装置20と前側リインフォース32の後フランジ32B及び後側リインフォース34の前フランジ34Aとの第一の締結部分50(
図5参照、スロープ装置20と後側リインフォース34の前フランジ34Aとの締結部分の断面図は図示省略)は、
図5に示される車体フロア40とは接触しないように配置されている。
【0034】
図4及び
図6に示されるように、車体フロア40の車両前後方向の前部は、前側リインフォース32の前フランジ32A及び後フランジ32Bに締結されている。
【0035】
図6に示されるように、前側リインフォース32の前フランジ32Aにはボルト挿通孔32A1が貫通形成されている。前側リインフォース32の前フランジ32Aの下面には、ボルト挿通孔32A1の外周部にウエルドナット46が予め固着されている。また、パネル体38において前側リインフォース32の前フランジ32Aと重なる重ね部38Dにはボルト挿通孔38D1が貫通形成されている。さらに、車体フロア40の下壁40Lにはボルト挿通孔38D1と対応する位置にボルト挿通孔40L1が貫通形成されている。車体フロア40の上壁40Uにはボルト挿通孔40L1の車両上方側にボルト挿通孔40L1よりも径が大きい作業孔40U1が貫通形成されている。作業孔40U1はボルト47を通過させることが可能な寸法に設定されている。ボルト47の軸部47Aは、ボルト挿通孔40L1、38D1、32A1を車両上方側から貫通してウエルドナット46に螺合されている。これにより、ボルト47の頭部47Bとウエルドナット46との間で車体フロア40の下壁40L、パネル体38の重ね部38D及び前側リインフォース32の前フランジ32Aが挟まれて締め付けられている。
【0036】
また、前側リインフォース32の後フランジ32Bにはボルト挿通孔32B2が貫通形成されている。前側リインフォース32の後フランジ32Bの下面には、ボルト挿通孔32B2の外周部にウエルドナット44が予め固着されている。前側リインフォース32の後フランジ32Bと車体フロア40の下壁40Lとの間には、ウエルドナット44と同軸上に金属製で円筒状のカラー42が介在されている。このカラー42は、一例として前側リインフォース32の後フランジ32Bに予め固着されている。
【0037】
車体フロア40の下壁40Lには前側リインフォース32の後フランジ32Bのボルト挿通孔32B2と対応する位置にボルト挿通孔40L2が貫通形成されている。車体フロア40の上壁40Uにはボルト挿通孔40L2の車両上方側にボルト挿通孔40L2よりも径が大きい作業孔40U2が貫通形成されている。作業孔40U2はボルト45を通過させることが可能な寸法に設定されている。ボルト45の軸部45Aは、ボルト挿通孔40L2、カラー42及びボルト挿通孔32B2を車両上方側から貫通してウエルドナット44に螺合されている。これにより、ボルト45の頭部45Bとウエルドナット44との間で車体フロア40の下壁40L、カラー42及び前側リインフォース32の後フランジ32Bが挟まれて締め付けられている。ウエルドナット44、前側リインフォース32の後フランジ32B及びカラー42は、スロープ装置20の前面20Xに対して車両前後方向に離間している。
【0038】
図4に二点鎖線で示される車体フロア40の車両前後方向の後部は、後側リインフォース34の前フランジ34A及び後フランジ34Bに締結されている。車体フロア40の車両前後方向の後部と後側リインフォース34の前フランジ34A及び後フランジ34Bとの締結構造は、
図6に示される車体フロア40の車両前後方向の前部と前側リインフォース32の前フランジ32A及び後フランジ32Bとの締結構造を前後反転させた構造と実質的に同様とされる。以上により、
図4に二点鎖線で示される車体フロア40と前側リインフォース32の後フランジ32B及び後側リインフォース34の前フランジ34Aとの第二の締結部分52(
図6参照、車体フロア40と後側リインフォース34の前フランジ34Aとの締結部分の断面図は図示省略)は、スロープ装置20とは接触しないように配置されている。
【0039】
なお、
図5及び
図6に示されるウエルドナット44、46、48及びボルト45、47、49は、広義には締結具として把握される要素である。また、詳細説明を省略するが、
図4に示されるように、二点鎖線で示される車体フロア40の車両右側の端部は一例としてパネル体38の貫通部38Hの周縁部における車両右側部分に複数箇所(符号38Zで示される位置)で締結されている。
【0040】
(実施形態の作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0041】
図2に示されるように、一対のリインフォース32、34は、車体フロア40を車両下方側から支持しており、車体フロア40は、スロープ装置20に対して車両上方側に間隔をあけて配置されている。また、
図4~
図6に示されるように、前側リインフォース32の後フランジ32B及び後側リインフォース34の前フランジ34Aのそれぞれにはスロープ装置20及び車体フロア40の両方が締結されかつスロープ装置20が締結される位置32X、34X(
図4参照)と車体フロア40が締結される位置32Y、34Y(
図4参照)とが互いに異なる位置に設定されている。さらに、スロープ装置20と前側リインフォース32の後フランジ32B及び後側リインフォース34の前フランジ34Aとの第一の締結部分50(
図5参照)は、車体フロア40とは接触しないように配置され、車体フロア40と前側リインフォース32の後フランジ32B及び後側リインフォース34の前フランジ34Aとの第二の締結部分52(
図6参照)は、スロープ装置20とは接触しないように配置されている。これらにより、車体フロア40に作用する荷重がスロープ装置20に直接的に伝達されるということが防止又は抑制されるので、スロープ装置20の動作を安定化させることが可能になる。
【0042】
補足説明すると、本実施形態の構成では、車体フロア40に車両上下方向の大きな荷重が作用した場合であっても、その荷重はカラー42及び一対のリインフォース32、34等の部材を介してのみスロープ装置20に伝達されるに過ぎない。これにより、スロープ装置20のレール20B(
図5及び
図6参照)に大きな入力が直接負荷されることがなくなるので、スロープ板20Aの展開時における摺動抵抗の上昇(摺動抵抗の異常の発生)が抑制される。その結果、スロープ板20Aの展開中に摺動抵抗の異常に関する誤判定がなされるのを低減することができ、前記誤判定に基づいてジャムプロテクション機能でスロープ装置20の動作が停止してしまうといった事態の発生を防止又は効果的に抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態では、前側リインフォース32の後フランジ32Bは、前側リインフォース32の前フランジ32Aよりも、車両上下方向の高さ位置が低い位置に設定され、
図2に示されるように、後側リインフォース34の前フランジ34Aは、後側リインフォース34の後フランジ34Bよりも、車両上下方向の高さ位置が低い位置に設定されている。このため、スロープ装置20と前側リインフォース32の後フランジ32B及び後側リインフォース34の前フランジ34Aとの第一の締結部分50(
図5参照)が車体フロア40と接触しない構成を、車体フロア40の下面側に非接触用の構造を設けなくても実現することが可能となる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の車両下部構造によれば、車体フロア40に作用する荷重がスロープ装置20に直接的に伝達されるのを防止又は抑制することで、スロープ装置20の動作を安定化させることが可能になる。
【0045】
また、本実施形態では、
図4~
図6に示されるように、前側リインフォース32の後フランジ32B及び後側リインフォース34の前フランジ34Aのそれぞれにスロープ装置20及び車体フロア40の両方が締結される構成を採用したうえで、車体フロア40に作用する荷重がスロープ装置20に直接的に伝達されるのを防ぐ構成を採用したので、
図4に示されるように、車体フロア40における一対のリインフォース32、34への締結ピッチを小さくすることができる。そして、前記締結ピッチを小さくすることで、例えば走行中の車両10(
図1参照)が突起を乗り越した場合等に
図2に示される車体フロア40に車両上下方向の荷重が作用した場合であっても、車体フロア40の撓みを小さくすることができる。その結果、車体フロア40がスロープ装置20及びバッテリケース24に直接的又は間接的に当たるのを防止又は効果的に抑制することができる。
【0046】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態の変形例として、一対の強度部材としての一対のリインフォースの各一対のフランジの車両上下方向の高さ位置を揃えると共に、スロープ装置と前側リインフォース(前側強度部材)の後フランジ及び後側リインフォース(後側強度部材)の前フランジとの第一の締結部分が車体フロアと接触しないように、車体フロアの下面側に非接触用の凹構造を設ける、といった構成も採り得る。
【0047】
また、上記実施形態では、ベース部材がバッテリケース24である場合を例に挙げて説明したが、ベース部材は、バッテリを収容したベースフレーム(例えば、特開2019-116112号公報等に示されるようなベースフレーム)でもよいし、バッテリを収容していないベースフレームでもよい。
【0048】
また、上記実施形態の変形例として、
図6に示されるカラー42に代えて、鋼板製のブラケットが設置されてもよい。
【0049】
また、上記実施形態の変形例として、車体フロアは、例えば、アルミニウム合金をプレス成形したもの等でもよい。また、車体フロアは、一部材で構成されたものでもよい。
【0050】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0051】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
10 車両
10X 車室
20 スロープ装置
20A スロープ板
22 バッテリ
24 バッテリケース(ベース部材)
32 前側リインフォース(前側強度部材(強度部材))
32A 前側リインフォースの前フランジ(前側強度部材の前フランジ)
32B 前側リインフォースの後フランジ(前側強度部材の後フランジ)
32X スロープ装置が締結される位置
32Y 車体フロアが締結される位置
34 後側リインフォース(後側強度部材(強度部材))
34A 後側リインフォースの前フランジ(後側強度部材の前フランジ)
34B 後側リインフォースの後フランジ(後側強度部材の後フランジ)
34X スロープ装置が締結される位置
34Y 車体フロアが締結される位置
40 車体フロア
50 第一の締結部分
52 第二の締結部分