(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】車両用電力管理システム
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20240723BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240723BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240723BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20240723BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240723BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/22 671
B60L1/00 L
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/12
(21)【出願番号】P 2021184466
(22)【出願日】2021-11-12
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島内 隆行
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-107910(JP,A)
【文献】特開2011-255686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60L 1/00
B60L 50/60
B60L 53/14
B60L 58/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたバッテリと、
前記バッテリの電力により駆動される車室用の空調装置と、
前記バッテリの電力を車外の電気機器に給電させる外部給電が可能な外部給電装置と、
前記外部給電中に、前記空調装置に対する稼働制限の実行可否を判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記稼働制限の実行可否判定として、前記空調装置の冷房運転状態に関して、
(A-1)目標吹出温度が所定の冷房時吹出閾値温度未満である
(A-2)車外の気温が所定の冷房時外気閾値温度を超過する
(A-3)車室内へ送風される空気と熱交換した後の冷媒温度が所定の冷房時冷媒閾値温度を超過する
(A-4)前記空調装置のブロア風量が所定の閾値風量を超過する
の4条件を全て満たす場合に、前記稼働制限を実行させる判定を行う、
車両用電力管理システム。
【請求項2】
車両に搭載されたバッテリと、
前記バッテリの電力により駆動される車室用の空調装置と、
前記バッテリの電力を車外の電気機器に給電させる外部給電が可能な外部給電装置と、
前記外部給電中に、前記空調装置に対する稼働制限の実行可否を判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記稼働制限の実行可否判定として、前記空調装置の暖房運転状態に関して、
(B-1)目標吹出温度が所定の暖房時吹出閾値温度を超過する
(B-2)車外の気温が所定の暖房時外気閾値温度未満である
(B-3)車室内へ送風される空気と熱交換した後の冷媒温度が所定の暖房時冷媒閾値温度未満である
(B-4)前記空調装置のブロア風量が所定の閾値風量を超過する
の4条件を全て満たす場合に、前記稼働制限を実行させる判定を行う、
車両用電力管理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用電力管理システムであって、
前記判定部は、前記バッテリのSOCが所定のバッテリ判定閾値未満であるときに、前記稼働制限の実行可否判定を行う、車両用電力管理システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用電力管理システムであって、
前記判定部によって前記稼働制限を実行させる判定が出力されると、前記空調装置は、前記稼働制限が実行される全期間に亘って外気導入口を閉止させる、車両用電力管理システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用電力管理システムであって、
前記判定部によって前記稼働制限を実行させる判定が出力されると、前記空調装置は、前記稼働制限が実行される全期間に亘って、車内の空調操作パネルからの入力操作による外気導入指令を無効にする、車両用電力管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、外部給電時の空調装置に対する制御を通じて車載バッテリのSOC管理が可能な、車両用電力管理システムが開示される。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された空調装置には、冷媒を圧縮するコンプレッサが設けられる。従来の車載空調システムでは、コンプレッサは内燃機関により駆動される。一方、回転電機を駆動源に持つハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、及び燃料電池車(FCEV)では、電源として大容量のバッテリが搭載される。このことから、これらの車両では、車載バッテリの電力を用いて駆動される電動コンプレッサが用いられる場合がある。
【0003】
電動コンプレッサを用いることで、例えば従来車両のように、空調機能を利用する際に内燃機関を駆動させる必要が無くなる。このことから、例えば走行不可状態であるIG OFF(イグニッション オフ)状態においても空調機能を利用可能となる。
【0004】
また、プラグインハイブリッド車や電気自動車では、上記のIG OFF状態において、車載バッテリの電力を外部の電気機器に給電する外部給電が可能となっている。この外部給電により、例えばキャンプ地や避難場所等での電気機器(例えば調理家電)の使用が可能となる。
【0005】
外部給電と空調機能を同時利用すると、バッテリの充電状態を示すSOC(State Of Charge)が急減するおそれがある。そこで例えば特許文献1では、外部給電中は空調装置が省電力モードにて動作するように制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、外部給電中に空調機能が一律に稼働制限されると、乗員の快適性が損なわれるおそれがある。そこで本明細書では、外部給電中の空調機能について、従来よりも乗員の快適性を向上可能な、車両用電力管理システムが開示される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示される車両用電力管理システムは、バッテリ、車室用の空調装置、外部給電装置、及び判定部を備える。バッテリは車両に搭載される。空調装置はバッテリの電力により駆動される。外部給電装置はバッテリの電力を車外の電気機器に給電させる外部給電が可能となっている。判定部は、外部給電中に、空調装置に対する稼働制限の実行可否を判定する。判定部は、稼働制限の実行可否判定として、空調装置の冷房運転状態に関して、
(A-1)目標吹出温度が所定の冷房時吹出閾値温度未満である
(A-2)車外の気温が所定の冷房時外気閾値温度を超過する
(A-3)車室内へ送風される空気と熱交換した後の冷媒温度が所定の冷房時冷媒閾値温度を超過する
(A-4)空調装置のブロア風量が所定の閾値風量を超過する
の4条件を全て満たす場合に、稼働制限を実行させる判定を行う。
【0009】
上記構成によれば、冷房運転について、目標吹出温度、外気温、熱交換後の冷媒温度、及びブロア風量に関する条件(A-1)-(A-4)のいずれも満たす、いわゆる強冷房の場合に限って、空調装置の稼働制限が実行される。
【0010】
また本明細書で開示される車両用電力管理システムは、バッテリ、車室用の空調装置、外部給電装置、及び判定部を備える。バッテリは車両に搭載される。空調装置はバッテリの電力により駆動される。外部給電装置はバッテリの電力を車外の電気機器に給電させる外部給電が可能となっている。判定部は、外部給電中に、空調装置に対する稼働制限の実行可否を判定する。判定部は、稼働制限の実行可否判定として、空調装置の暖房運転状態に関して、
(B-1)目標吹出温度が所定の暖房時吹出閾値温度を超過する
(B-2)車外の気温が所定の暖房時外気閾値温度未満である
(B-3)車室内へ送風される空気と熱交換した後の冷媒温度が所定の暖房時冷媒閾値温度未満である
(B-4)空調装置のブロア風量が所定の閾値風量を超過する
の4条件を全て満たす場合に、稼働制限を実行させる判定を行う。
【0011】
上記構成によれば、暖房運転について、目標吹出温度、外気温、熱交換後の冷媒温度、及びブロア風量に関する条件(B-1)-(B-4)のいずれも満たす、いわゆる強暖房の場合に限って、空調装置の稼働制限が実行される。
【0012】
また上記構成において、判定部は、バッテリのSOCが所定のバッテリ判定閾値未満であるときに、稼働制限の実行可否判定を行ってもよい。
【0013】
上記構成によれば、稼働制限が実行されることで、バッテリのSOCの過度な低下を抑制可能となる。
【0014】
また上記構成において、判定部によって稼働制限を実行させる判定が出力されると、空調装置は、稼働制限が実行される全期間に亘って外気導入口を閉止させてもよい。
【0015】
上記構成によれば、稼働制限の全期間に亘って内気循環による空調運転が行われる。空調装置によって暖められた/または冷やされた内気を循環させることで、稼働制限による空調能力の低下が補償される。
【0016】
また上記構成において、判定部によって稼働制限を実行させる判定が出力されると、空調装置は、稼働制限が実行される全期間に亘って、車内の空調操作パネルからの入力操作による外気導入指令を無効にしてもよい。
【0017】
上記構成によれば、車内の乗員からの外気導入指示を無効とすることで、稼働制限の全期間に亘る内気循環が維持可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本明細書に係る車両用電力管理システムによれば、外部給電中の空調機能について、従来よりも乗員の快適性が向上可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る車両用電力管理システムが搭載された車両の構成を例示する図である。
【
図2】外部充電/給電機構について説明する図である。
【
図4】空調装置を操作する空調操作パネルを例示する図である。
【
図5】HV-ECUのハードウェア構成を例示する図である。
【
図6】空調機器の稼働制限に対する実行可否判定フローを例示する図である。
【
図7】実行可否判定フロー内のサブプロセスである強冷房判定フロー(1/2)を例示する図である。
【
図8】実行可否判定フロー内のサブプロセスである強冷房判定フロー(2/2)を例示する図である。
【
図9】冷房時の目標吹出温度マップを例示する図である。
【
図10】冷房時の外気温マップを例示する図である。
【
図11】冷房時のエバポレータ出口水温マップを例示する図である。
【
図13】実行可否判定フロー内のサブプロセスである強暖房判定フロー(1/2)を例示する図である。
【
図14】実行可否判定フロー内のサブプロセスである強暖房判定フロー(2/2)を例示する図である。
【
図15】暖房時の目標吹出温度マップを例示する図である。
【
図16】暖房時の外気温マップを例示する図である。
【
図17】暖房時のコンデンサ出口水温マップを例示する図である。
【
図18】空調機器の稼働制限制御の例として、コンプレッサ及びブロアの回転数制限マップを例示する図である。
【
図19】空調機器の稼働制限制御の例として、エバポレータ出口水温制限マップを例示する図である。
【
図20】空調機器の稼働制限制御の例として、コンデンサ出口水温制限マップを例示する図である。
【
図21】空調装置の別例であって、暖房機能としてヒータが用いられる例を示す図である。
【
図22】空調装置の別例における、強暖房判定フロー(1/2)を例示する図である。
【
図23】空調装置の別例における、強暖房判定フロー(2/2)を例示する図である。
【
図24】空調装置の別例における、ヒータ出口水温マップを例示する図である。
【
図25】空調装置の別例における、ヒータ出口水温制限マップを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、本実施形態に係る車両用電力管理システムを含む車両100の全体構成が例示される。車両100は、例えば駆動源として内燃機関16及び回転電機MG1,MG2を備え、外部充電及び外部給電の可能な、プラグインハイブリッド車(PHEV)であってよい。
【0021】
ただし車両100はプラグインハイブリッド車に限らず、要するに車両の走行不可時(IG OFF時)において、空調機能及び外部給電の両者が利用可能な車両であればよい。例えば車両100は、駆動源として回転電機を備え、また電源としてバッテリ10を備える、ハイブリッド車(HEV)、及び電気自動車(BEV)であってもよい。
【0022】
車両100に搭載されるバッテリ10は、例えばニッケル水素電池、リチウムイオン電池、及び全固体電池のいずれかから構成される。例えばバッテリ10の容量は5kWh以上100kWh以下であってよい。
【0023】
下記にて詳細に説明されるように、本実施形態に係る車両用電力管理システムは、バッテリ10、空調装置25、外部充電/給電装置15、HV-ECU40、及び空調ECU43を含んで構成される。
【0024】
なお、後述される稼働制限の実行可否判定フロー(
図6)では、HV-ECU40及び空調ECU43が分担して判定フローの各ステップを処理する。このことから、実行可否判定フローでは、HV-ECU40及び空調ECU43の両者が纏まって(一体となって)判定部として機能する。
【0025】
<外部充電/給電装置>
図1、
図2を参照して、外部充電/給電装置15は、インレット17、充放電器20、パワーコネクタ70、及びプラグインチャージECU41を含んで構成される。
【0026】
車両100は、外部充電/給電装置15を介して、車外の電源装置からバッテリ10を充電することのできる、いわゆるプラグイン充電が可能となっている。
図2を参照して、車両100の側面(前面でもよい)に設けられたインレット17に、図示しない外部電源のプラグを差し込むことで、バッテリ10への充電が可能となる。具体的には、充放電器20に内蔵されたインバータが外部電源の交流電力を直流電力に変換し、バッテリ10が充電される。
【0027】
さらに外部充電/給電装置15は、車外の電気機器72にバッテリ10の電力を供給する、外部給電が可能となっている。外部給電に当たり、パワーコネクタ70のプラグがインレット17に差し込まれる。パワーコネクタ70がインレット17に挿入されることで、プラグインチャージECU41は、外部充電/外部給電のうち後者が選択されたことを認識する。パワーコネクタ70には図示しないインレットが設けられ、このインレットに電気機器72のプラグ71が挿入される。
【0028】
パワーコネクタ70を介して電気機器72が充放電器20に接続されると、充放電器20は内蔵されたインバータを駆動させて、バッテリ10の直流電力を交流電力に変換する。これにより、バッテリ10を例えば60HzのAC100V電源(最大消費電力1500W)に変換した状態での外部給電が可能となる。
【0029】
バッテリ10の電力利用の態様として、いわゆるEV給電モードとHV給電モードが挙げられる。HV給電モードでは、バッテリ10のSOCが低下すると内燃機関16(
図1参照)が始動して回転電機MG2を発電機として駆動してバッテリ10を充電させる。
【0030】
一方EV給電モードでは内燃機関16は駆動させずに、バッテリ10に蓄積された電力のみにて給電が行われる。さらにバッテリ10のSOCが低下すると、過放電によるバッテリ10の劣化を防止するため、給電が停止される。
【0031】
例えばEV給電モードは、夜間のキャンプ地やアイドリングストップ条例のある地域、及び車両100の燃料が所定の閾値量以下である場合に選択される。加えて、車両100に内燃機関が搭載されない電気自動車(BEV)では、専らEV給電モードが設定される。
【0032】
<空調装置>
図1、
図3を参照して、空調装置25は、電気機器として、降圧DC/DCコンバータ18、インバータ19、コンプレッサ33、ブロアモータ34A、及びアクチュエータ68を備える。さらに
図3を参照して、空調装置25は、コンプレッサ33の他に冷媒の流路上に設けられる機器として、室外コンデンサ30、エバポレータ31、室内コンデンサ32、膨張弁35,36、アキュムレータ37、電磁弁38、及び逆止弁39を備える。加えて空調装置25は、制御系機器として、空調ECU43及び空調操作パネル50を備える。
【0033】
図3を参照して、車室用の空調装置25は、いわゆるヒートポンプ型の空調装置である。コンプレッサ33、ブロア34、アクチュエータ68(
図1参照)を含む、空調装置25の機器は、バッテリ10の電力を受けて駆動する。
【0034】
図3に例示されるように、ブロア34はブロアモータ34A及びブロアファン34Bを含んで構成される。ブロアモータ34Aは例えばDCモータであってよく、印加電圧が上がるほど回転数が上昇する。ブロアモータ34Aはバッテリ10から降圧DC/DCコンバータ18を介して電力が供給される。降圧DC/DCコンバータ18のスイッチング素子のオン/オフを定める駆動信号(例えばPWM信号)は、空調ECU43の機器制御部43Aにより生成される。降圧DC/DCコンバータ18への駆動信号におけるデューティ比に基づいて降圧率が定まり、これに応じてブロアモータ34A及びブロアファン34Bの回転数が定まる。
【0035】
コンプレッサ33は例えばモータが内蔵された電動型であり、
図1に例示されるように、インバータ19を介してバッテリ10から電力が供給される。インバータ19のスイッチング素子のオン/オフを定める駆動信号(例えばPWM信号)は、空調ECU43の機器制御部43Aにより生成される。駆動信号のデューティ比に基づいてコンプレッサ33の回転数が定まる。
【0036】
従来内燃機関によって駆動されていたコンプレッサ33がモータ駆動型等の電動型となることで、コンプレッサ33の駆動トルクを得るための大電力が要求される。例えば車両100の中で大電力が要求される電気機器として、駆動源である回転電機MG1,MG2が挙げられるが、コンプレッサ33はそれに次ぐ規模の電力を消費する。例えばオーディオやナビゲーションシステム等の消費電力がワット[W]単位である一方で、コンプレッサ33の消費電力はキロワット[kW]単位となる。
【0037】
空調装置25には気流を制御するダクト60(
図3参照)が設けられる。ダクト60の上流端には内気導入口61及び外気導入口62が設けられる。内気導入口61は車室内に配置され、外気導入口62は車外に露出される。ダクト60に取り込む内気と外気の混合割合は内外気切替ドア67Aの設定角度に応じて定められる。
【0038】
内気導入口61及び外気導入口62の少なくとも一方から取り込まれた空気はブロアファン34Bにより吸引され、エアクリーナ66を経由してエバポレータ31を通過する。さらにエアミックスドア67Bが室内コンデンサ32を閉塞している場合(冷房時)には、これを迂回して空気が送られる。さらに空気はフロントデフロスタダクト63、フェイスレジスタ64、及びフットレジスタ65の少なくともいずれか一つから車室内に吹き出される。フロントデフロスタダクト63、フェイスレジスタ64、及びフットレジスタ65からの吹出量は、デフロスタドア67C、フェイスドア67D、及びフットドア67Eの開度に応じて定まる。
【0039】
内外気切替ドア67A、エアミックスドア67B、デフロスタドア67C、フェイスドア67D、及びフットドア67Eは、
図1に例示されたアクチュエータ68により開度調整される。後述されるように、空調ECU43の機器制御部43Aは、アクチュエータ68を駆動させて、空調装置25の稼働制限が実行される全期間に亘って外気導入口62を閉止させる。これにより、空調装置25の稼働制限の全期間に亘って内気循環による空調運転が行われる。
【0040】
なお、フロントデフロスタダクト63、フェイスレジスタ64、及びフットレジスタ65から吹き出される空調空気の温度は吹出温度と呼ばれる。後述される目標吹出温度TAOはこの吹出温度の目標値である。
【0041】
ヒートポンプ型の空調装置25の運転内容は既知であることから、ここでは簡単に説明される。空調装置25の暖房機能利用時には、エアミックスドア67Bが室内コンデンサ32に対して全開される。このとき冷媒は、コンプレッサ33→室内コンデンサ32→膨張弁35→室外コンデンサ30→電磁弁38→アキュムレータ37→コンプレッサ33との循環経路を流れる。
【0042】
このような循環経路を冷媒が流れる間に、ブロア34から室内コンデンサ32に空気が送られる。室内コンデンサ32を通過した(つまり熱交換した)空気が温風となって、フロントデフロスタダクト63、フェイスレジスタ64、及びフットレジスタ65の少なくともいずれか一つから車室内に吹き出される。
【0043】
空調装置25の冷房機能利用時には、エアミックスドア67Bが室内コンデンサ32に対して全閉される。このとき冷媒は、コンプレッサ33→室内コンデンサ32→膨張弁35→室外コンデンサ30→膨張弁36→エバポレータ31→アキュムレータ37→コンプレッサ33との循環経路を流れる。
【0044】
このような循環経路を冷媒が流れる間に、ブロア34からエバポレータ31に空気が送られる。エバポレータ31を通過した(つまり熱交換した)空気が冷風となって、フロントデフロスタダクト63、フェイスレジスタ64、及びフットレジスタ65の少なくともいずれか一つから車室内に吹き出される。
【0045】
<空調操作パネル>
図4を参照して、空調装置25の運転状態は、空調操作パネル50によって操作される。例えば空調操作パネル50は、インストルメントパネルの運転席側方に設けられる。
【0046】
空調操作パネル50は例えば入力部と表示部が重複するタッチパネルであってよい。空調操作パネル50には風量操作ボタン51A,51B、温度設定ボタン52A,52B、オートスイッチ53、及びブロアスイッチ54が設けられる。さらに空調操作パネル50には、エアコンスイッチ55、内外気切替スイッチ56、表示部57、デフロスタースイッチ58A、リアデフォッガースイッチ58B、及び吹出口選択スイッチ59が設けられる。これらのボタンやスイッチの機能については既知であるためここでは説明が適宜省略される。
【0047】
空調操作パネル50の各種スイッチやボタンの操作による信号は空調ECU43(空調制御部、
図1参照)に送信される。空調ECU43の機器制御部43Aは、空調操作パネル50への入力内容に応じて、空調装置25への制御内容を変更させる。
【0048】
例えば内外気切替スイッチ56が押下げ操作されると、空調ECU43の機器制御部43Aは、アクチュエータ68を駆動させて内気導入口61(
図3参照)を全開にする(外気導入口62は全閉される)。また、再度内外気切替スイッチ56が押下げ操作されると、空調ECU43の機器制御部43Aは、アクチュエータ68を駆動させて外気導入口62を全開にする(内気導入口61は全閉される)。
【0049】
なお後述されるように、空調装置25に対する稼働制限が実行される全期間に亘り、空調ECU43の機器制御部43Aは、内外気切替スイッチ56の入力操作による外気導入指令を無効とする。
【0050】
<空調制御>
図1、
図3、
図4を参照して、空調ECU43の機器制御部43Aは、各種温度センサや空調操作パネル50の入力等を受けて、空調装置25を制御する。機器制御部43Aの制御対象には、コンプレッサ33、ブロア34、及びアクチュエータ68が含まれる。
【0051】
例えばアクチュエータ68については、機器制御部43Aは、空調操作パネル50の吹出口選択スイッチ59や内外気切替スイッチ56によって選択された吹出口が開放されるように、アクチュエータ68を駆動制御する。
【0052】
またコンプレッサ33及びブロア34については、インバータ19及び降圧DC/DCコンバータ18へのPWM制御を介した回転数制御が行われる。コンプレッサ33及びブロア34の回転数の設定に当たり、機器制御部43Aは、空調操作パネル50の温度設定ボタン52A,52Bへの操作による設定温度T
SET、風量操作ボタン51A,51Bへの操作による設定風量Q
SETを参照する。さらに機器制御部43Aは、外気温センサ23(
図1参照)が検出した外気温T
OUT、車内温度センサ24が検出した車内温度T
INを参照する。加えて機器制御部43Aは、コンデンサ出口水温センサ27(
図3参照)が検出した冷媒温度であるコンデンサ出口水温T
CD、及びエバポレータ出口水温センサ26が検出した冷媒温度であるエバポレータ出口水温T
EVを参照する。
【0053】
さらに機器制御部43Aには例えば関数が記憶される。この関数は設定温度TSET、設定風量QSET、外気温TOUT、車内温度TIN、コンデンサ出口水温TCD、及びエバポレータ出口水温TEVを入力項目に含み、目標吹出温度TAO、目標風量QAO及びコンプレッサ回転数RCOMPを出力項目に含む。
【0054】
定性的には、冷房時には、設定温度TSETが下げられる、または、外気温TOUT、車内温度TIN、エバポレータ出口水温TEVが上がる場合に、強冷房寄りの運転設定となる。このとき、目標吹出温度TAOが下げられ、またコンプレッサ回転数RCOMPが上げられる。
【0055】
一方暖房時には、設定温度TSETが上げられる、または、外気温TOUT、車内温度TIN、コンデンサ出口水温TCDが下がる場合に、強暖房寄りの運転設定となる。このとき、目標吹出温度TAOが上げられ、またコンプレッサ回転数RCOMPが上げられる。
【0056】
また機器制御部43Aは、上記関数にて得られた目標吹出温度TAO及び目標風量QAOに基づいてブロア回転数RBLを設定する。また機器制御部43Aは、目標吹出温度TAOに基づいてエアミックスドア67Bの開度を設定する。
【0057】
<ECU>
図1に例示されるように、車両100には複数の電子コントロールユニット(ECU)が設けられる。これらの電子コントロールユニットは例えば車両100の機能別に設けられる。例えば車両100は、外部充電/給電装置15を制御するプラグインチャージECU41、及びバッテリ10のSOCや電力管理を行うバッテリECU42を備える。
【0058】
加えて車両100は、空調装置25を制御する空調ECU43、回転電機MG1,MG2を制御するモータECU44、及び内燃機関16を制御するエンジンECU45を備える。さらにこれらの機能別ECUを統合する、セントラルゲートウェイとも呼ばれる中核的なECUとして、車両100はHV-ECU40を備える。
【0059】
個々の機能別ECUは、HV-ECU40を介して相互に通信可能となっている。また、これらの機能別ECUとHV-ECU40とは、例えばCAN規格(Controller Area Network)に則った信号線で接続される。
【0060】
図5には、HV-ECU40のハードウェア構成が例示される。なお、車両100の他のECUも、
図5と同様の構成を備える。HV-ECU40(及びその他のECU)は、例えばコンピュータ(電子計算機)から構成され、入出力コントローラ40C、CPU40D、RAM40E、ROM40F、及びストレージ40Gを備える。これらの機器は、内部バス40Hにより相互に通信可能となっている。
【0061】
入出力コントローラ40Cは、車両100に搭載された各種センサや他のECUから出力された信号を受信するとともに、アクチュエータやランプ等の車載機器に駆動指令を出力する。CPU40Dは入出力コントローラ40Cから受信した信号を基に演算を実行して、駆動指令、後述するバッテリ10に対する保護指令、ならびに空調装置25に対する稼働制限実行指令及び制限解除指令を生成し、入出力コントローラ40Cに送信する。RAM40E、ROM40F、ストレージ40G等の記憶素子には、制御プログラムやセンサが検出したデータ等が記憶される。
【0062】
ストレージ40GまたはROM40Fに記憶された制御プログラムをCPU40Dが実行することで、HV-ECU40には、機能ブロックとして電力制限判定部40A(
図1参照)及び表示制御部40Bが構成される。
【0063】
また、空調ECU43のストレージまたはROMに記憶された制御プログラムをCPUが実行することで、空調ECU43には、機能ブロックとして、機器制御部43A、判定結果記憶部43B、強冷房判定部43C、強暖房判定部43D、及び消費電力算出部43Eが構成される。
【0064】
後述されるように、HV-ECU40の電力制限判定部40Aは、外部給電中に、空調装置25に対する稼働制限の実行可否を判定する。また空調ECU43の強冷房判定部43C及び強暖房判定部43Dは、電力制限判定部40Aによる稼働制限の実行可否判定フローに含まれるサブプロセス(後述される)を実行する。このことから、空調装置25に対する稼働制限の実行可否フローに関して、HV-ECU40の電力制限判定部40Aと空調ECU43の強冷房判定部43C及び強暖房判定部43Dとが協働して一体の判定部として機能する。
【0065】
強冷房判定部43Cには、後述される目標吹出温度マップ(
図9)、外気温マップ(
図10)、エバポレータ出口水温マップ(
図11)、及びブロア風量マップ(
図12)が記憶される。強暖房判定部43Dには、目標吹出温度マップ(
図15)、外気温マップ(
図16)、コンデンサ出口水温マップ(
図17)、及び上述したブロア風量マップ(
図12)が記憶される。
【0066】
判定結果記憶部43Bには、強冷房判定部43C及び強暖房判定部43Dが各種マップから導いたフラグ値が記憶される。このフラグ値は0または1のいずれかの値を取る。さらに機器制御部43Aには後述される回転数制限マップ(
図18)、エバポレータ出口水温制限マップ(
図19)、及びコンデンサ出口水温制限マップ(
図20)が記憶される。
【0067】
消費電力算出部43Eは、制御対象である空調装置25の消費電力を算出する。例えばコンプレッサ33に駆動電力を供給するためのインバータ19への指令信号(例えばPWM信号)に基づいて、消費電力算出部43Eは、コンプレッサ33による消費電力を算出する。また消費電力算出部43Eは、ブロアモータ34Aに駆動電力を供給するための降圧DC/DCコンバータ18への指令信号(例えばPWM信号)に基づいて、ブロアモータ34Aによる消費電力を算出する。これらの算出された消費電力値はHV-ECU40の電力制限判定部40Aに送信される。
【0068】
図1を参照して、プラグインチャージECU41は、外部給電を制御する、外部給電装置として機能する。プラグインチャージECU41のROMまたはストレージに記憶された制御プログラムをCPUが実行することで、プラグインチャージECU41には機器制御部41A及び消費電力算出部41Bが構成される。
【0069】
消費電力算出部41Bは、インレット17から車外の電気機器72に給電される、外部給電電力[W]を算出して、その電力値をHV-ECU40の電力制限判定部40Aに送信する。
【0070】
機器制御部41Aは、外部充電/給電装置15による外部充電電力/外部給電電力を制御する。例えば機器制御部41Aは、車両100が走行不可状態であるIG OFF状態に限り、外部給電を許可する。また例えばバッテリ10のSOCが低下して過放電に繋がるおそれのある時には、機器制御部41Aは、HV-ECU40の電力制限判定部40Aから保護指令を受ける。これを受けて機器制御部41Aは、インレット17とバッテリ10とを繋ぐ、図示しない外部給電リレーを接続状態から切断状態に切り替えて、外部充電/給電装置15の稼働を停止させる。
【0071】
バッテリECU42はバッテリ10の監視及び保護を行う。バッテリECU42のROMまたはストレージに記憶された制御プログラムをCPUが実行することで、バッテリECU42にはSOC算出部42Aが構成される。SOC算出部42Aは、バッテリ10のSOCを算出してこれをHV-ECU40の電力制限判定部40Aに送信する。
【0072】
SOCの算出に当たり、SOC算出部42Aは、バッテリ10に接続された電流センサ10Aから検出した電流値に基づいて、バッテリ10に流出入する電流を測定し、その積算値(電流積算値)に基づいてバッテリ10のSOCを推定する。
【0073】
また、バッテリ10はその内部で化学反応等に伴う自己放電が生じる場合があり、これに起因してSOCが低下する。しかしながら、自己放電はバッテリの内部反応であって外部への電流の流出入を伴わないため、自己放電が起こっても電流積算値には反映されない。その結果、自己放電が進むにつれて電流積算値ベースのSOC推定値と実際のSOCとの乖離が大きくなる。そこで例えばSOC算出部42Aは、バッテリの開放端電圧値(OCV)に基づいてSOCを推定し、これに基づいて電流積算値ベースのSOC推定値を補正する。
【0074】
<稼働制限の実行可否判定>
図6には、外部給電及び空調装置25の稼働制限の実行可否を判定するフローチャートが例示される。この判定フローは、車両100が外部給電を行っている際に所定の時間間隔(例えば1分間隔)を置いて繰り返し実行される。
【0075】
HV-ECU40の電力制限判定部40Aは、バッテリECU42のSOC算出部42Aから、バッテリ10のSOCを取得する。さらに電力制限判定部40Aは、取得したSOCが、所定のバッテリ保護閾値SOCth0未満か否かを判定する(S10)。バッテリ保護閾値SOCth0は例えば20%に設定される。
【0076】
バッテリ10のSOCがバッテリ保護閾値SOCth0未満である場合、過放電によりバッテリ10が劣化するおそれがある。そこでHV-ECU40は、外部充電/給電装置15及び空調装置25を停止させる。
【0077】
ここで、電力制限判定部40Aは、外部充電/給電装置15及び空調装置25に対する停止指令の出力前に、表示制御部40Bに警告指令を出力する。これを受けて表示制御部40Bは、空調操作パネル50(
図4)の表示部57に、外部給電及び空調機能が所定時間後(例えば3分後)に停止する旨のメッセージ(バッテリ保護メッセージ)を表示させる(S12)。
【0078】
特に外部給電については、給電先の電気機器72が多岐に亘り、突然の電力遮断により故障するおそれがある。そこで電力遮断前に乗員に電力遮断を予告することで、当該乗員による電気機器の停止操作を促すことが出来る。
【0079】
バッテリ保護メッセージの表示から所定時間後、電力制限判定部40Aは、プラグインチャージECU41の機器制御部41Aに、外部充電/給電装置15の稼働を停止させる停止指令を送信する(S14)。またこれと併せて電力制限判定部40Aは、空調ECU43の機器制御部43Aに、空調装置25の稼働を停止させる停止指令を送信する。その後
図6のフローは終了する。
【0080】
ステップS10に戻り、バッテリ10のSOCがバッテリ保護閾値SOCth0以上である場合には、電力制限判定部40Aは、バッテリ10のSOCが所定のバッテリ判定閾値SOCth1(>SOCth0)未満であるか否かを判定する(S16)。バッテリ判定閾値SOCth1は、例えば50%であってよい。
【0081】
ステップS16にてSOC≧SOCth1である場合には、バッテリ10のSOCは十分にあると判定されることから、電力制限判定部40Aは、空調ECU43の機器制御部43Aに制限解除指令を送信する。これを受けて機器制御部43Aは、空調使用電力制限をオフ設定する(S28)。これにより、専ら空調操作パネル50(
図4参照)の各種スイッチ及びボタン操作に基づいて、機器制御部43Aはコンプレッサ33及びブロア34の稼働制御を行う。
【0082】
一方、ステップS16にて、バッテリ10のSOCがバッテリ判定閾値SOCth1未満である場合には、電力制限判定部40Aは、空調ECU43の強冷房判定部43Cに対して、強冷房判定フロー(
図7、
図8参照)の実行指令を出力する(S18)。
【0083】
強冷房判定フローは、
図6の実行可否判定フローのサブプロセスである。強冷房判定フローの詳細は後述されるが、同フローでは、空調装置25の冷房運転状態について、下記の4条件(A-1)-(A-4)を全て満たす場合に、強冷房判定部43Cは、空調装置25が強冷房実行中であると判定する。一方、下記4条件の少なくともいずれか一つが満たされない場合には、強冷房判定部43Cは、強冷房は実行されていないと判定する。
(A-1)目標吹出温度T
AOが所定の冷房時吹出閾値温度*T
AO-C/D未満である(車内が暑いので吹出温度が低く設定される)
(A-2)車外の気温T
OUTが所定の冷房時外気閾値温度*T
OUT-C/Dを超過する(外が暑い)
(A-3)車室内へ送風される空気と熱交換した後の冷媒温度、すなわちエバポレータ出口水温T
EVが所定の冷房時冷媒閾値温度*T
EV-C/Dを超過する(熱交換量が多い)
(A-4)ブロア34の目標風量Q
AOが所定の閾値風量*Q
AOを超過する(空調の風量が多い)
【0084】
電力制限判定部40Aは、強冷房判定部43Cによる判定結果が強冷房実行中であるか否かを確認する(S20)。空調装置25が強冷房実行中であると判定された場合、電力制限判定部40Aは、稼働制限を実行させる判定を行う(S26)。稼働制限の詳細は後述される。
【0085】
ステップS20にて、空調装置25の冷房状態が強冷房では無いと強冷房判定部43Cにより判定されると、HV-ECU40の電力制限判定部40Aは、空調ECU43の強暖房判定部43Dに対して、強暖房判定フロー(
図13、
図14参照)の実行指令を出力する(S22)。
【0086】
強暖房判定フローの詳細は後述されるが、このフローでは、空調装置25の暖房運転状態について、下記の4条件(B-1)-(B-4)を全て満たす場合に、強暖房判定部43Dは、空調装置25が強暖房実行中であると判定する。一方、下記4条件の少なくともいずれか一つが満たされない場合には、強暖房判定部43Dは、強暖房は実行されていないと判定する。
(B-1)目標吹出温度TAOが所定の暖房時吹出閾値温度*TAO-W/Uを超過する(車内が寒いので吹出温度が高く設定される)
(B-2)車外の気温TOUTが所定の暖房時外気閾値温度*TOUT-W/U未満である(外が寒い)
(B-3)車室内へ送風される空気と熱交換した後の冷媒温度、すなわちコンデンサ出口水温TCDが所定の暖房時冷媒閾値温度*TCD-W/U未満である(熱交換量が多い)
(B-4)ブロア34の目標風量QAOが所定の閾値風量*QAOを超過する(空調の風量が多い)
【0087】
電力制限判定部40Aは、強暖房判定部43Dによる判定結果が強暖房実行中であるか否かを確認する(S24)。空調装置25が強暖房実行中であると判定された場合、電力制限判定部40Aは、稼働制限を実行させる判定を行う(S26)。稼働制限の詳細は後述される。
【0088】
一方ステップS24にて、空調装置25は強暖房を実行していないと判定されると、強冷房と強暖房の両者が実行されていないことになることから、電力制限判定部40Aは、駆動制限に対する不実行判定の出力として、空調ECU43の機器制御部43Aに制限解除指令を送信する。これを受けて機器制御部43Aは、空調使用電力制限をオフ設定する(S28)。
【0089】
このように、空調装置25の稼働制限を、強冷房または強暖房の実行時に限り有効とすることで、乗員の快適性を従来よりも向上させることが出来る。
【0090】
<強冷房判定>
図7、
図8には、強冷房判定部43Cにより実行される強冷房判定フローが例示される。強冷房判定部43Cは、判定結果記憶部43Bから前回の強冷房判定結果を呼び出して、目標吹出温度判定フラグのフラグ値が1であるか否かを判定する(S30)。
【0091】
図9には、冷房時目標吹出温度マップが例示される。このマップは横軸に目標吹出温度T
AO、縦軸にフラグ値0,1を取る。このマップを含めて、
図9-
図12に例示されるマップは、例えば強冷房判定部43Cに記憶される。
【0092】
またこのマップを含め、強冷房判定フロー及び強暖房判定フローで利用されるマップ(
図9-
図12及び
図15-
図17)では、チャタリングを防ぐためのヒステリシス設定が施される。すなわち、フラグ値0,1のどちらを取るかを定める閾値として、相対的に低位の閾値と高位の閾値が設定される。
【0093】
例えば
図9の冷房時目標吹出温度マップでは、冷房時吹出閾値温度*T
AO-C/Dとして、温度値T1及び温度値T2(T1<T2)が定められる。例えば温度値T1は20℃、温度値T2は23℃に設定される。
【0094】
前回の強冷房判定でフラグ値1が出力された場合には、機器制御部43Aから取得した目標吹出温度TAOの現在値が温度値T2未満であるときに、フラグ値1が出力される。一方、前回の強冷房判定でフラグ値0であった時には、目標吹出温度TAOの現在値が温度値T1未満であるときに、フラグ値1が出力される。
【0095】
強冷房判定部43Cは、判定結果記憶部43Bから冷房時目標吹出温度マップの前回値を参照して、その前回値が1であるか否かを確認する(S30)。前回値が1である場合、強冷房判定部43Cは機器制御部43Aから目標吹出温度TAOの現在値を取得して、当該現在値が閾値T2未満であるか否かを判定する(S32)。TAO<T2である場合、強冷房判定部43Cは目標吹出温度判定フラグの値を1に設定する(S36)。一方、TAO≧T2である場合、強冷房判定部43Cは目標吹出温度判定フラグの値を0に設定する(S38)。
【0096】
ステップS30に戻り、前回値が0であった場合、強冷房判定部43Cは目標吹出温度TAOの現在値が閾値T1未満であるか否かを判定する(S34)。TAO<T1である場合、強冷房判定部43Cは目標吹出温度判定フラグの値を1に設定する(S36)。一方、TAO≧T1である場合、強冷房判定部43Cは目標吹出温度判定フラグの値を0に設定する(S38)。
【0097】
次に強冷房判定部43Cは、判定結果記憶部43Bから冷房時外気温マップ(
図10参照)の前回値を参照して、その前回値(つまり判定フラグ値)が1であるか否かを確認する(S40)。なおこのマップでは、冷房時外気閾値温度*T
OUT-C/Dは閾値T3及びT4(T3<T4)となる。例えば温度値T3は30℃、温度値T4は33℃に設定される。
【0098】
冷房時外気温マップの前回値が1である場合、強冷房判定部43Cは外気温センサ23から外気温TOUTの現在値を取得して、当該現在値が閾値T3を超過するか否かを判定する(S42)。TOUT>T3である場合、強冷房判定部43Cは目標吹出温度判定フラグの値を1に設定する(S46)。一方、TOUT≦T3である場合、強冷房判定部43Cは外気温判定フラグの値を0に設定する(S48)。
【0099】
ステップS40に戻り、目標吹出温度判定フラグの前回値が0であった場合、強冷房判定部43Cは外気温TOUTの現在値が閾値T4を超過するか否かを判定する(S44)。TOUT>T4である場合、強冷房判定部43Cは目標吹出温度判定フラグの値を1に設定する(S46)。一方、TOUT≦T4である場合、強冷房判定部43Cは目標吹出温度判定フラグの値を0に設定する(S48)。
【0100】
次に強冷房判定部43Cは、判定結果記憶部43Bから冷房時エバポレータ出口水温マップ(
図11参照)の前回値を参照して、その前回値が1であるか否かを確認する(S50)。なおこのマップでは、冷房時冷媒閾値温度*T
EV-C/Dは閾値T5及びT6(T5<T6)となる。例えば温度値T5は0℃に設定され、温度値T6は3℃に設定される。
【0101】
冷房時エバポレータ出口水温マップの前回値が1である場合、強冷房判定部43Cはエバポレータ出口水温センサ26からエバポレータ出口水温TEVの現在値を取得して、当該現在値が閾値T5を超過するか否かを判定する(S52)。TEV>T5である場合、強冷房判定部43Cはエバポレータ出口水温判定フラグの値を1に設定する(S56)。一方、TEV≦T5である場合、強冷房判定部43Cはエバポレータ出口水温判定フラグの値を0に設定する(S58)。
【0102】
ステップS50に戻り、エバポレータ出口水温判定フラグの前回値が0であった場合、強冷房判定部43Cはエバポレータ出口水温TEVの現在値が閾値T6を超過するか否かを判定する(S54)。TEV>T6である場合、強冷房判定部43Cはエバポレータ出口水温判定フラグの値を1に設定する(S56)。一方、TEV≦T6である場合、強冷房判定部43Cはエバポレータ出口水温判定フラグの値を0に設定する(S58)。
【0103】
次に強冷房判定部43Cは、判定結果記憶部43Bからブロア風量マップ(
図12参照)の前回値を参照して、その前回値が1であるか否かを確認する(S60)。なおこのマップでは、閾値風量*Q
AOは閾値Q1及びQ2(Q1<Q2)となる。例えば風量Q1はブロア34の最大風量の80%の値に設定され、風量Q2はブロア34の最大風量の90%に設定される。
【0104】
ブロア風量マップの前回値が1である場合、強冷房判定部43Cは機器制御部43Aからブロア34の目標風量QAOの現在値を取得して、当該現在値が閾値Q1を超過するか否かを判定する(S62)。QAO>Q1である場合、強冷房判定部43Cはブロア風量判定フラグの値を1に設定する(S66)。一方、QAO≦Q1である場合、強冷房判定部43Cはブロア風量判定フラグの値を0に設定する(S68)。
【0105】
ステップS60に戻り、ブロア風量判定フラグの前回値が0であった場合、強冷房判定部43Cはブロア34の目標風量QAOの現在値が閾値Q2を超過するか否かを判定する(S64)。QAO>Q2である場合、強冷房判定部43Cはブロア風量判定フラグの値を1に設定する(S66)。一方、QAO≦Q2である場合、強冷房判定部43Cはブロア風量判定フラグの値を0に設定する(S68)。
【0106】
さらに強冷房判定部43Cは、目標吹出温度判定フラグ、外気温判定フラグ、エバポレータ出口水温判定フラグ、及びブロア風量判定フラグの全てにおいてフラグ値1が設定されたか否かを判定する(S70)。4種のフラグ全てがフラグ値1であるとき、強冷房判定部43Cは、空調装置25が強冷房実行中であると判定する(S72)。一方、上記4種のフラグの少なくともいずれか一つがフラグ値0を取る場合には、強冷房判定部43Cは、空調装置25は強冷房を実行していないと判定する(S74)。
【0107】
<強暖房判定>
図13、
図14には、強暖房判定部43Dにより実行される強暖房判定フローが例示される。また
図15には、暖房時目標吹出温度マップが例示される。このマップは横軸に目標吹出温度T
AO、縦軸にフラグ値0,1を取る。このマップを含めて、
図15-
図17に例示されるマップは、例えば強暖房判定部43Dに記憶される。またブロア風量マップ(
図12参照)も強暖房判定部43Dに記憶される。
【0108】
図15に例示される暖房時目標吹出温度マップでは、暖房時吹出閾値温度*T
AO-W/Uとして、温度値T11及び温度値T12(T11<T12)が定められる。例えば温度値T11は25℃、温度値T12は28℃に設定される。強暖房判定部43Dは、判定結果記憶部43Bから暖房時目標吹出温度マップの前回値を参照して、その前回値が1であるか否かを確認する(S100)。
【0109】
前回値が1である場合、強暖房判定部43Dは機器制御部43Aから目標吹出温度TAOの現在値を取得して、当該現在値が閾値T11を超過するか否かを判定する(S102)。TAO>T11である場合、強暖房判定部43Dは目標吹出温度判定フラグの値を1に設定する(S106)。一方、TAO≦T11である場合、強暖房判定部43Dは目標吹出温度判定フラグの値を0に設定する(S108)。
【0110】
ステップS100に戻り、暖房時目標吹出温度マップの前回値が0であった場合、強暖房判定部43Dは目標吹出温度TAOの現在値が閾値T12を超過するか否かを判定する(S104)。TAO>T12である場合、強暖房判定部43Dは目標吹出温度判定フラグの値を1に設定する(S106)。一方、TAO≦T12である場合、強暖房判定部43Dは目標吹出温度判定フラグの値を0に設定する(S108)。
【0111】
次に強暖房判定部43Dは、判定結果記憶部43Bから暖房時外気温マップ(
図16参照)の前回値を参照して、その前回値(つまり判定フラグ値)が1であるか否かを確認する(S110)。なおこのマップでは、暖房時外気閾値温度*T
OUT-W/Uは閾値T13及びT14(T13<T14)となる。例えば温度値T13は3℃、温度値T14は6℃に設定される。
【0112】
暖房時外気温マップの前回値が1である場合、強暖房判定部43Dは外気温センサ23から外気温TOUTの現在値を取得して、当該現在値が閾値T14未満であるか否かを判定する(S112)。TOUT<T14である場合、強暖房判定部43Dは目標吹出温度判定フラグの値を1に設定する(S116)。一方、TOUT≧T14である場合、強暖房判定部43Dは外気温判定フラグの値を0に設定する(S118)。
【0113】
ステップS110に戻り、目標吹出温度判定フラグの前回値が0であった場合、強暖房判定部43Dは外気温TOUTの現在値が閾値T13未満であるか否かを判定する(S114)。TOUT<T13である場合、強暖房判定部43Dは目標吹出温度判定フラグの値を1に設定する(S116)。一方、TOUT≧T13である場合、強暖房判定部43Dは目標吹出温度判定フラグの値を0に設定する(S118)。
【0114】
次に強暖房判定部43Dは、判定結果記憶部43Bから暖房時コンデンサ出口水温マップ(
図17参照)の前回値を参照して、その前回値が1であるか否かを確認する(S120)。なおこのマップでは、暖房時冷媒閾値温度*T
CD-W/Uは閾値T15及びT16(T15<T16)となる。例えば温度値T15は40℃、温度値T16は43℃に設定される。
【0115】
暖房時コンデンサ出口水温マップの前回値が1である場合、強暖房判定部43Dはコンデンサ出口水温センサ27からコンデンサ出口水温TCDの現在値を取得して、当該現在値が閾値T16未満であるか否かを判定する(S122)。TCD<T16である場合、強暖房判定部43Dはコンデンサ出口水温判定フラグの値を1に設定する(S126)。一方、TCD≧T16である場合、強暖房判定部43Dはコンデンサ出口水温判定フラグの値を0に設定する(S128)。
【0116】
ステップS120に戻り、コンデンサ出口水温判定フラグの前回値が0であった場合、強暖房判定部43Dはコンデンサ出口水温TCDの現在値が閾値T15未満であるか否かを判定する(S124)。TCD<T15である場合、強暖房判定部43Dはコンデンサ出口水温判定フラグの値を1に設定する(S126)。一方、TCD≧T15である場合、強暖房判定部43Dはコンデンサ出口水温判定フラグの値を0に設定する(S128)。
【0117】
次に強暖房判定部43Dは、判定結果記憶部43Bからブロア風量マップ(
図12参照)の前回値を参照して、その前回値が1であるか否かを確認する(S130)。ブロア風量マップの前回値が1である場合、強暖房判定部43Dは機器制御部43Aからブロア34の目標風量Q
AOの現在値を取得して、当該現在値が閾値Q1を超過するか否かを判定する(S132)。Q
AO>Q1である場合、強暖房判定部43Dはブロア風量判定フラグの値を1に設定する(S136)。一方、Q
AO≦Q1である場合、強暖房判定部43Dはブロア風量判定フラグの値を0に設定する(S138)。
【0118】
ステップS130に戻り、ブロア風量判定フラグの前回値が0であった場合、強暖房判定部43Dはブロア34の目標風量QAOの現在値が閾値Q2を超過するか否かを判定する(S134)。QAO>Q2である場合、強暖房判定部43Dはブロア風量判定フラグの値を1に設定する(S136)。一方、QAO≦Q2である場合、強暖房判定部43Dはブロア風量判定フラグの値を0に設定する(S138)。
【0119】
さらに強暖房判定部43Dは、目標吹出温度判定フラグ、外気温判定フラグ、コンデンサ出口水温判定フラグ、及びブロア風量判定フラグの全てにおいてフラグ値1が設定されたか否かを判定する(S140)。4種のフラグ全てがフラグ値1であるとき、強暖房判定部43Dは、空調装置25が強暖房実行中であると判定する(S142)。一方、上記4種のフラグの少なくともいずれか一つがフラグ値0を取る場合には、強暖房判定部43Dは、空調装置25は強暖房を実行していないと判定する(S144)。
【0120】
以上説明したように、本実施形態に係る強冷房及び強暖房判定フローでは、目標吹出温度、外気温、コンデンサ出口水温、及びブロア風量に関する条件を全て満たさないと強冷房及び強暖房の実行判定がされない。このように強冷房及び強暖房の成立条件を限定することで、過度な空調の稼働制限が避けられ、乗員の快適性の向上が図られる。
【0121】
<空調稼働制限>
HV-ECU40の電力制限判定部40Aから制限実行指令を受信すると、機器制御部43Aは、
図18-
図20に例示される空調制限マップに基づいて、空調装置25の稼働制限を行う。
【0122】
図18の制限マップには、横軸にバッテリ10のSOCが示され、縦軸にコンプレッサ33及びブロア34の上限回転数が示される。この横軸及び縦軸により規定される座標平面上に、制限特性線L1が設定される。制限特性線L1は、例えば右肩上がりの階段状に設定される。
【0123】
例えばバッテリ10のSOCが所定のバッテリ判定閾値SOCth1以上である場合には、コンプレッサ33及びブロア34の上限回転数は、最大回転数Rmaxまで設定可能となっている。一方、バッテリ10のSOCがバッテリ判定閾値SOCth1未満になると、特性線L1に沿って、SOCが0に近づくにつれて段階的にコンプレッサ33及びブロア34の上限回転数が絞られる。さらにバッテリ10のSOCが所定のバッテリ保護閾値SOCth0未満になると、コンプレッサ33及びブロア34の上限回転数は0となり、コンプレッサ33及びブロア34が停止させられる。
【0124】
機器制御部43Aには、電力制限判定部40Aから、制限実行指令とともにバッテリ10のSOCが送信される。これを受けて機器制御部43Aは、受信したSOCと制限特性線L1とに基づいて、コンプレッサ33の上限回転数を求める。
【0125】
上限回転数が求められた後に、空調操作パネル50の温度設定ボタン52A,52Bへの操作に伴うコンプレッサ33の要求回転数が、上限回転数を超過する場合には、機器制御部43Aは、(操作に反して)コンプレッサ33の設定回転数を、要求回転数ではなく上限回転数に定める。
【0126】
図19には冷房時に使用されるエバポレータ31(
図3参照)の出口水温の目標温度に関する制限マップが例示される。この制限マップでは横軸にバッテリ10のSOCが示され、縦軸にエバポレータ出口水温の目標温度が示される。この横軸及び縦軸により規定される座標平面上に、制限特性線L2が設定される。制限特性線L2は、例えば右肩下がりの階段状に設定される。
【0127】
例えばバッテリ10のSOCが所定のバッテリ判定閾値SOCth1以上である場合には、エバポレータ出口水温の目標温度は、通常稼働時の温度TEV-OBJに設定される。一方、バッテリ10のSOCがバッテリ判定閾値SOCth1未満になると、特性線L2に沿って、SOCが0に近づくにつれて段階的にエバポレータ出口水温の目標温度が引き上げられる。例えば、通常稼働時の温度TEV-OBJに所定温度(5℃から20℃)が加算された値がエバポレータ出口水温の目標温度値の決定値となる。
【0128】
図20には暖房時に使用される室内コンデンサ32(
図3参照)の出口水温の目標温度に関する制限マップが例示される。この制限マップでは横軸にバッテリ10のSOCが示され、縦軸にコンデンサ出口水温の目標温度が示される。この横軸及び縦軸により規定される座標平面上に、制限特性線L3が設定される。制限特性線L3は、例えば右肩上がりの階段状に設定される。
【0129】
例えばバッテリ10のSOCが所定のバッテリ判定閾値SOCth1以上である場合には、コンデンサ出口水温の目標温度は、通常稼働時の温度TCD-OBJに設定される。一方、バッテリ10のSOCがバッテリ判定閾値SOCth1未満になると、特性線L3に沿って、SOCが0に近づくにつれて段階的にコンデンサ出口水温の目標温度が引き上げられる。例えば、通常稼働時の温度TCD-OBJに所定温度(5℃から20℃)が減算された値がコンデンサ出口水温の目標温度値の決定値となる。
【0130】
エバポレータ出口水温やコンデンサ出口水温の実際値が目標温度から乖離している場合、実際値と目標値との差を縮めるようなフィードバック制御が実行される。例えば冷房では実際値が目標温度よりも高く、暖房では実際値が目標温度よりも低い場合には、コンプレッサ33やブロア34の回転数が引き上げられ、また目標吹出温度が低減(冷房時)または増加(暖房時)される。
図19、
図20のような、目標温度と実際値との差を縮めるような稼働制限が掛けられることで、コンプレッサ33やブロア34の回転数増加や、目標吹出温度の低減(冷房時)または増加(暖房時)を抑制可能となる。
【0131】
なお、空調装置25に稼働制限が実行される全期間に亘って、機器制御部43Aは内外気切替ドア67A(
図3参照)を制御して、外気導入口62を閉止させる。つまり機器制御部43Aは稼働制限の全期間に亘って内気導入口61を全開させて内気循環による空調管理を行う。
【0132】
内気循環を行うことで、空調装置25に繰り返し空気が流入することから、空調装置25の稼働制限下であっても段階的に車内温度を目標吹出温度TAOに近づけることが出来る。
【0133】
なお一般的に、内気循環により車室内の湿度が上昇し、ウインドシールドガラス等の窓材に曇りが生じるおそれがある。しかしながら上述のように外部給電は車両100が走行不可となるIG OFF状態で利用可能となることから、窓材が曇って視界不良になることで運転が困難になるような状況はそもそも発生しない。
【0134】
このような、内気循環による空調管理を確実に可能とするため、機器制御部43Aは、空調操作パネル50(
図4参照)からの内外気切替スイッチ56の操作を受け付けない。例えば機器制御部43Aは、稼働制限が実行されている全期間に亘って、空調操作パネル50からの入力操作による外気導入指令を無効とする。
【0135】
なお、このように外気導入操作が禁止されたときに、乗員が窓を開放することで、窓材の曇りは解消される。このような操作を可能とするため、図示しないウインドウレギュレータは、空調装置25への稼働制限の実行有無に関わらず稼働可能に設定される。
【0136】
<稼働制限と強冷房/強暖房判定との関わり>
空調装置25に稼働制限が掛けられることで、車室内温度は暑い(冷房時)または寒い(暖房時)状態が暫く維持される。したがって、目標吹出温度TAOは低い値(冷房時)または高い値(暖房時)が維持される。つまり強冷房判定及び強暖房判定では目標吹出温度判定フラグが1に設定される条件が維持される。
【0137】
また
図19、
図20の制限マップにより、エバポレータ出口水温(冷房時)は高い温度が維持され、コンデンサ出口水温(暖房時)は低い温度が維持される。これに伴いエバポレータ出口水温判定フラグ(冷房時)及びコンデンサ出口水温判定フラグ(暖房時)は1に設定される条件が維持される。
【0138】
その一方で、外気温が下がる(冷房時)または上がる(暖房時)場合には、外気温判定フラグが0に設定され得る。また乗員がブロア風量を絞った場合に、ブロア風量判定フラグは0に設定され得る。このような外的条件や乗員の操作により、強冷房や強暖房の判定が解除される。
【0139】
<空調装置の別例>
図21には、空調装置25の別例が示される。この空調装置25は、
図3のようなヒートポンプ型とは異なり、暖房機構と冷房機構が分離される。具体的には、ラジエータ130、内燃機関16、及びヒータコア132を備えるヒータ機構が空調装置25に設けられる。さらにヒータコア132の冷媒出口には、冷媒温度を検出するヒータ出口水温センサ127が設けられる。またコンプレッサ33、室外コンデンサ30、エバポレータ31、及びアキュムレータ37を備えるクーラ機構が空調装置25に設けられる。
【0140】
このような空調装置25においても、
図6に例示される稼働制限の実行判定フローがHV-ECU40の電力制限判定部40Aにより実行される。加えて空調ECU43の強冷房判定部43Cにより強冷房判定が実行され、強暖房判定部43Dにより強暖房判定が実行される。
【0141】
図22、
図23には、強暖房判定部43Dによる強暖房判定フローが例示される。このフローは、
図13、
図14の強暖房判定フローと比較して、コンデンサ出口水温判定(S120-S128)のステップ群がヒータ出口温度判定(S150-S158)のステップ群に置き換わる。また
図14のステップS140において、コンデンサ出口水温判定フラグの値が確認されるのに代わり、
図23のステップS160において、ヒータ出口水温判定フラグの値が確認される。残りのステップは
図13、
図14と同一であるため、以下では適宜説明が省略される。
【0142】
また、強暖房判定部43Dには、コンデンサ出口水温マップ(
図17参照)に代わり、
図24に例示されるヒータ出口水温マップが記憶される。このマップでは、暖房時冷媒閾値温度*T
HT-W/Uは閾値T17及びT18(T17<T18)となる。例えば温度値T17は40℃、温度値T18は43℃に設定される。
【0143】
図22、
図23の強暖房判定フローにおいて、ステップS116またはステップS118の実行後、強暖房判定部43Dは、判定結果記憶部43Bからヒータ出口水温マップの前回値を参照して、その前回値が1であるか否かを確認する(S150)。
【0144】
ヒータ出口水温マップの前回値が1である場合、強暖房判定部43Dはヒータ出口水温センサ127からヒータ出口水温THTの現在値を取得して、当該現在値が閾値T18未満であるか否かを判定する(S152)。THT<T18である場合、強暖房判定部43Dはヒータ出口水温判定フラグの値を1に設定する(S156)。一方、THT≧T18である場合、強暖房判定部43Dはヒータ出口水温判定フラグの値を0に設定する(S158)。
【0145】
ステップS150に戻り、ヒータ出口水温判定フラグの前回値が0であった場合、強暖房判定部43Dはヒータ出口水温THTの現在値が閾値T17未満であるか否かを判定する(S154)。THT<T17である場合、強暖房判定部43Dはヒータ出口水温判定フラグの値を1に設定する(S156)。一方、THT≧T17である場合、強暖房判定部43Dはヒータ出口水温判定フラグの値を0に設定する(S158)。
【0146】
そして、
図23においてステップS136及びステップS138が実行された後、強暖房判定部43Dは、目標吹出温度判定フラグ、外気温判定フラグ、ヒータ出口水温判定フラグ、及びブロア風量判定フラグの全てにおいてフラグ値1が設定されたか否かを判定する(S160)。4種のフラグ全てがフラグ値1であるとき、強暖房判定部43Dは、空調装置25が強暖房実行中であると判定する(S142)。一方、上記4種のフラグの少なくともいずれか一つがフラグ値0を取る場合には、強暖房判定部43Dは、空調装置25は強暖房を実行していないと判定する(S144)。
【0147】
また、空調装置25の稼働制限実行時には、室内コンデンサ32(
図3参照)の出口水温の目標温度に関する制限マップ(
図20参照)に代えて、ヒータコア132(
図21参照)の出口水温の目標温度に関する制限マップ(
図25参照)が用いられる。
【0148】
この制限マップでは横軸にバッテリ10のSOCが示され、縦軸にヒータ出口水温の目標温度が示される。この横軸及び縦軸により規定される座標平面上に、制限特性線L4が設定される。制限特性線L4は、例えば右肩上がりの階段状に設定される。
【0149】
例えばバッテリ10のSOCが所定のバッテリ判定閾値SOCth1以上である場合には、ヒータ出口水温の目標温度は、通常稼働時の温度THT-OBJに設定される。一方、バッテリ10のSOCがバッテリ判定閾値SOCth1未満になると、特性線L4に沿って、SOCが0に近づくにつれて段階的にコンデンサ出口水温の目標温度が引き上げられる。
【0150】
<稼働制限の実行判定フローの別例>
図6に例示される実行判定フローでは、バッテリ10のSOCがSOCth1未満になったときに、稼働制限の実行可否が判定されたが、SOCによる条件が省略されてもよい。すなわち、
図6の判定フローにおいて、ステップS16を省略してバッテリ10のSOCが高い場合でも強冷房及び強暖房を規制できるような空調制御が行われてもよい。このようにすることで、外部給電に充てる電力を増やすことが出来る。
【符号の説明】
【0151】
10 バッテリ、15 外部充電/給電装置、16 内燃機関、23 外気温センサ、24 車内温度センサ、25 空調装置、26 エバポレータ出口水温センサ、27 コンデンサ出口水温センサ、30 室外コンデンサ、31 エバポレータ、32 室内コンデンサ、33 コンプレッサ、34 ブロア、34A ブロアモータ、34B ブロアファン、40 HV-ECU(判定部)、40A 電力制限判定部、40B 表示制御部、41 プラグインチャージECU、41A 機器制御部、41B 消費電力算出部、42 バッテリECU、42A SOC算出部、43 空調ECU(判定部)、43A 機器制御部、43B 判定結果記憶部、43C 強冷房判定部、43D 強暖房判定部、43E 消費電力算出部、50 空調操作パネル、51A,51B 風量操作ボタン、52A,52B 温度設定ボタン、54 ブロアスイッチ、56 内外気切替スイッチ、60 ダクト、61 内気導入口、62 外気導入口、67A 内外気切替ドア、127 ヒータ出口温度センサ、130 ラジエータ、132 ヒータコア。