(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】車両用除塵装置
(51)【国際特許分類】
B08B 5/02 20060101AFI20240723BHJP
A47L 1/02 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B08B5/02 Z
A47L1/02
(21)【出願番号】P 2021187364
(22)【出願日】2021-11-17
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小森谷 一記
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-279953(JP,A)
【文献】特開平10-297439(JP,A)
【文献】特開2017-114154(JP,A)
【文献】特開2000-211563(JP,A)
【文献】特開平04-287750(JP,A)
【文献】特開平04-218451(JP,A)
【文献】特表2021-509097(JP,A)
【文献】登録実用新案第3141336(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 5/02
A47L 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気温が-60度を下回る低温環境下で走行する車両の
窓ガラスを昇温可能
な加熱装置と、
前記窓ガラスの温度を取得する取得部と、
前記
窓ガラスに吹き付ける気体を降温可能
な冷却装置と、
前記窓ガラスに前記気体を吹き付けて除塵する除塵部と、
前記取得部で取得した前記
窓ガラスの温度に基づいて、
前記加熱装置による前記
窓ガラスの昇温
と前記冷却装置による前記気体の降温
とを行い、前記除塵部による前記気体の吹き付けを制御する制御部と、
を備えた車両用除塵装置。
【請求項2】
前記除塵部は、二酸化炭素を吹き付け可能に構成されており、
前記制御部は、前記取得部で取得した前記
窓ガラスの温度が二酸化炭素の凝固点以下のときには、前記加熱装置により前記窓ガラスを二酸化炭素の凝固点を超える温度まで昇温させてから前記除塵部による
二酸化炭素の吹き付けを
実施する請求項1に記載の車両用除塵装置。
【請求項3】
前記除塵部は、二酸化炭素、窒素、水素の何れかを選択して吹き付け可能に構成されており、
前記制御部は、
前記取得部で取得した前記窓ガラスの温度が二酸化炭素の凝固点を超えているときには、前記除塵部に二酸化炭素を選択させ、
前記取得部で取得した前記
窓ガラスの温度が二酸化炭素の凝固点以下のときには
、前記除塵部に
二酸化炭素の凝固点よりも凝固点の低い窒素又は水素を選択させる請求項1に記載の車両用除塵装置。
【請求項4】
前記車両は、地球以外の地表で使用される車両である請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用除塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用除塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアガンの内部の圧縮空気をイオナイザから生じるイオンと共に被処理物に吹き付けることで、被処理物を除電及び除塵処理する除電除塵装置は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、被処理物が、低温環境下で走行する車両の窓ガラスの場合、その窓ガラスの表面に気体を吹き付けると、その吹き付けた気体の温度と窓ガラスの表面の温度との差が大きいときには、その窓ガラスが割れるおそれがある。つまり、吹き付けた気体によって、除塵すべき被処理物がダメージを受けるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、低温環境下で走行する車両の被処理物に気体を吹き付けて除塵する際、その被処理物が気体との温度差によってダメージを受けるのを抑制できる車両用除塵装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る第1の態様の車両用除塵装置は、低温環境下で走行する車両の昇温可能に構成された被処理物の温度を取得する取得部と、前記被処理物に吹き付ける気体を降温可能に構成されるとともに前記被処理物に前記気体を吹き付けて除塵する除塵部と、前記取得部で取得した前記被処理物の温度に基づいて、前記被処理物の昇温及び前記気体の降温の少なくとも一方を行い、前記除塵部による前記気体の吹き付けを制御する制御部と、を備えている。
【0007】
第1の態様の発明によれば、除塵部による気体の吹き付けを制御する制御部が、取得部で取得した被処理物の温度に基づいて、被処理物の昇温及び気体の降温の少なくとも一方を行う。そのため、被処理物と気体との温度差が小さくされる。したがって、低温環境下で走行する車両の被処理物に気体を吹き付けて除塵する際、その被処理物が気体との温度差によってダメージを受けるのが抑制される。
【0008】
また、本発明に係る第2の態様の車両用除塵装置は、第1の態様の車両用除塵装置であって、前記制御部は、前記取得部で取得した前記被処理物の温度に基づいて、前記除塵部による前記気体の吹き付けを禁止する。
【0009】
第2の態様の発明によれば、制御部が、取得部で取得した被処理物の温度に基づいて、除塵部による気体の吹き付けを禁止する。そのため、被処理物と気体との温度差が大きい状態で、その気体が被処理物に吹き付けられることがない。したがって、低温環境下で走行する車両の被処理物がダメージを受けるのが防止される。
【0010】
また、本発明に係る第3の態様の車両用除塵装置は、第1の態様の車両用除塵装置であって、前記除塵部は、二酸化炭素、窒素、水素の何れかを選択して吹き付け可能に構成されており、前記制御部は、前記取得部で取得した前記被処理物の温度が二酸化炭素の凝固点以下のときには、前記被処理物を二酸化炭素の凝固点を超える温度まで昇温させるか、或いは前記除塵部に窒素又は水素を選択させる。
【0011】
第3の態様の発明によれば、制御部が、取得部で取得した被処理物の温度が二酸化炭素の凝固点以下のときには、被処理物を二酸化炭素の凝固点を超える温度まで昇温させる。そのため、不要な二酸化炭素が有効利用される。また、制御部が、取得部で取得した被処理物の温度が二酸化炭素の凝固点以下のときには、除塵部に窒素又は水素を選択させる。したがって、被処理物の温度が二酸化炭素の凝固点以下となる低温環境下で走行する車両であっても、その被処理物に気体を吹き付けて除塵することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る第4の態様の車両用除塵装置は、第1~第3の何れか1つの態様の車両用除塵装置であって、前記車両は、地球以外の地表で使用される車両である。
【0013】
第4の態様の発明によれば、地球以外の地表で使用される車両の被処理物に対して気体を吹き付けて除塵することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、低温環境下で走行する車両の被処理物に気体を吹き付けて除塵する際、その被処理物が気体との温度差によってダメージを受けるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る車両用除塵装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係る車両用除塵装置の作用を示すフローチャートである。
【
図3】第2実施形態に係る車両用除塵装置の作用を示すフローチャートである。
【
図4】第3実施形態に係る車両用除塵装置の作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。本実施形態に係る車両用除塵装置20を備えた車両10は、低温環境下において使用される。本実施形態における低温環境下とは、地球以外の地表、例えば月の地表や火星の地表などを含む。そのため、本実施形態における車両10としては、有人与圧キャビンを備え、月面上などを走行して探索するローバー12を例に採る。
【0017】
そして、本実施形態における被処理物として、ローバー12に設けられている外部視認用の窓ガラス14を例に採る。月面上などを走行して探索するローバー12の窓ガラス14の最表面には、レゴリス等が付着し易く、乗員が窓ガラス14を通して車外を視認する際、そのレゴリス等によって視認が妨げられることがある。
【0018】
図1に示されるように、車両用除塵装置20は、ローバー12の窓ガラス14の温度を取得する取得部22と、窓ガラス14の最表面に気体を吹き付けてレゴリス等を除塵する除塵部24と、取得部22で取得した窓ガラス14の温度に基づいて、窓ガラス14の昇温及び気体の降温の少なくとも一方を行い、除塵部24による気体の吹き付けを制御する制御部26と、を備えている。
【0019】
気体としては、二酸化炭素、窒素、水素などが挙げられ、除塵部24には、少なくとも二酸化炭素、窒素、水素が貯留されている。つまり、この除塵部24は、少なくとも二酸化炭素、窒素、水素の何れかを選択して窓ガラス14の最表面に吹き付け可能に構成されている。なお、二酸化炭素は、車内から排気する必要がある不要な気体であり、乗員が吐く息によって容易に補給できるため、吹き付ける気体として好適である。また、各気体の温度も取得部22で取得されるように構成されている。
【0020】
除塵部24には、各気体を冷却可能な冷却装置(図示省略)が設けられており、制御部26の制御により、除塵部24が気体を降温可能に構成されている。但し、この除塵部24は、気体として主に二酸化炭素を選択して使用するため、気体を降温させたとしても、二酸化炭素をドライアイス化させるまで降温させることはない。すなわち、この除塵部24は、二酸化炭素の凝固点まで、その二酸化炭素を降温させるように構成されていない。
【0021】
窓ガラス14には、その表面を加熱可能な加熱装置(図示省略)が設けられており、制御部26の制御により、窓ガラス14の表面を昇温可能に構成されている。なお、加熱装置としては、任意の構成が採用可能であり、例えば窓ガラス14の表面の内側に電熱線を配置して温めるようにしてもよいし、窓ガラス14の表面の近傍にヒーターを配置し、そのヒーターで窓ガラス14の表面を温めるようにしてもよい。
【0022】
以上のような構成とされた本実施形態に係る車両用除塵装置20において、次にその作用について説明する。
【0023】
まず、第1実施形態について説明する。なお、この第1実施形態では、気体として二酸化炭素を使用する。
【0024】
図2に示されるように、取得部22により、窓ガラス14の最表面の温度Aを取得する(ステップS11)。また、取得部22により、吹き付ける(ブローする)二酸化炭素の温度Bを取得する(ステップS12)。そして、制御部26により、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満か否かが判断される(ステップS13)。
【0025】
窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満の場合には、制御部26が除塵部24に対して気体ブローのロックを解除する信号を送る(ステップS14)。そして、除塵部24は、制御部26に制御されて気体ブローを実施する(ステップS15)。すなわち、二酸化炭素を窓ガラス14の最表面に吹き付けて、その窓ガラス14の最表面を除塵する。
【0026】
一方、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満ではない場合、換言すれば、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度以上の場合には、制御部26により、加熱装置を作動させて窓ガラス14を昇温させるか、又は除塵部24の冷却装置を作動させて二酸化炭素を降温させる(ステップS16)。
【0027】
すなわち、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差を小さくする。これにより、窓ガラス14の最表面に二酸化炭素を吹き付けて除塵する際、その窓ガラス14が二酸化炭素との温度差によってダメージを受ける(熱割れする)のを抑制又は防止することができる。
【0028】
ステップS16において、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差を小さくしたら、ステップS11に戻り、取得部22により、窓ガラス14の最表面の温度Aを取得し、ステップS12において、ブローする二酸化炭素の温度Bを取得する。そして、ステップS13において、制御部26により、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満か否かが再び判断される。
【0029】
なお、ステップS16において、制御部26により、加熱装置を作動させて窓ガラス14を昇温させるとともに、除塵部24の冷却装置を作動させて二酸化炭素を降温させるようにしてもよい。すなわち、ステップS16においては、窓ガラス14の昇温及び二酸化炭素の降温のうち、少なくとも一方を行えばよい。但し、加熱装置と冷却装置の両方を作動させると、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差をより素早く小さくすることができる。
【0030】
また、図示は省略するが、ステップS13において、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満ではないと判断されたら、制御部26は、除塵部24による二酸化炭素の吹き付けを単に禁止するように(気体ブローのロックを解除する信号を送らないように)構成してもよい。この場合、窓ガラス14の最表面の温度Aと二酸化炭素の温度Bとの温度差が大きい状態で、その二酸化炭素が窓ガラス14の最表面に吹き付けられることがないため、その窓ガラス14がダメージを受けるのを防止することができる。
【0031】
次に、第2実施形態について説明する。なお、この第2実施形態でも、気体として二酸化炭素を使用する。
【0032】
図3に示されるように、取得部22により、窓ガラス14の最表面の温度Aを取得する(ステップS21)。そして、制御部26により、窓ガラス14の最表面の温度Aが、二酸化炭素の凝固点を超えているか否かが判断される(ステップS22)。窓ガラス14の最表面の温度Aが、二酸化炭素の凝固点を超えている場合には、取得部22により、吹き付ける(ブローする)二酸化炭素の温度Bを取得する(ステップS23)。
【0033】
そして、制御部26により、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満か否かが判断される(ステップS24)。窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満の場合には、制御部26が除塵部24に対して気体ブローのロックを解除する信号を送る(ステップS25)。そして、除塵部24は、制御部26に制御されて気体ブローを実施する(ステップS26)。すなわち、二酸化炭素を窓ガラス14の最表面に吹き付けて、その窓ガラス14の最表面を除塵する。
【0034】
一方、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満ではない場合、換言すれば、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度以上の場合には、制御部26により、加熱装置を作動させて窓ガラス14を昇温させるか、又は除塵部24の冷却装置を作動させて二酸化炭素を降温させる(ステップS27)。
【0035】
すなわち、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差を小さくする。これにより、第1実施形態と同様に、窓ガラス14の最表面に二酸化炭素を吹き付けて除塵する際、その窓ガラス14が二酸化炭素との温度差によってダメージを受ける(熱割れする)のを抑制又は防止することができる。
【0036】
ステップS27において、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差を小さくしたら、ステップS23に戻り、取得部22により、ブローする二酸化炭素の温度Bを取得する。そして、ステップS24において、制御部26により、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満か否かが再び判断される。
【0037】
なお、ステップS27において、制御部26により、加熱装置を作動させて窓ガラス14を昇温させるとともに、除塵部24の冷却装置を作動させて二酸化炭素を降温させるようにしてもよい。すなわち、ステップS27においては、窓ガラス14の昇温及び二酸化炭素の降温のうち、少なくとも一方を行えばよい。但し、加熱装置と冷却装置の両方を作動させると、第1実施形態と同様に、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差をより素早く小さくすることができる。
【0038】
また、窓ガラス14の最表面の温度Aが、二酸化炭素の凝固点を超えていない場合、換言すれば、窓ガラス14の最表面の温度Aが、二酸化炭素の凝固点以下の場合には、制御部26により、加熱装置を作動させ、窓ガラス14の最表面を、二酸化炭素の凝固点を超えるまで昇温させる(ステップS28)。
【0039】
そして、取得部22により、窓ガラス14の最表面の温度Cを取得する(ステップS29)。また、取得部22により、ブローする二酸化炭素の温度Bを取得する(ステップS30)。そして、制御部26により、窓ガラス14の最表面の温度Cとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満か否かが判断される(ステップS31)。
【0040】
窓ガラス14の最表面の温度Cとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満の場合には、制御部26が除塵部24に対して気体ブローのロックを解除する信号を送る(ステップS32)。そして、除塵部24は、制御部26に制御されて気体ブローを実施する(ステップS33)。すなわち、二酸化炭素を窓ガラス14の最表面に吹き付けて、その窓ガラス14の最表面を除塵する。
【0041】
一方、窓ガラス14の最表面の温度Cとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満ではない場合、換言すれば、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度以上の場合には、制御部26により、加熱装置を作動させて窓ガラス14を昇温させるか、又は除塵部24の冷却装置を作動させて二酸化炭素を降温させる(ステップS34)。
【0042】
すなわち、窓ガラス14の最表面の温度Cとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差を小さくする。これにより、窓ガラス14の最表面に二酸化炭素を吹き付けて除塵する際、その窓ガラス14が二酸化炭素との温度差によってダメージを受ける(熱割れする)のを抑制又は防止することができる。
【0043】
ステップS34において、窓ガラス14の最表面の温度Cとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差を小さくしたら、ステップS30に戻り、取得部22により、ブローする二酸化炭素の温度Bを取得する。そして、ステップS31において、制御部26により、窓ガラス14の最表面の温度Cとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満か否かが再び判断される。
【0044】
このように、第2実施形態によれば、例えば月面上などの低温環境下で使用されるローバー12に設けられている窓ガラス14のように、その最表面の温度が二酸化炭素の凝固点以下となる場合であっても、その窓ガラス14の最表面に二酸化炭素を吹き付けて除塵することが可能となる。また、不要な二酸化炭素を有効利用することができる。
【0045】
最後に、第3実施形態について説明する。なお、この第3実施形態では、最初の気体として二酸化炭素を使用する。
【0046】
図4に示されるように、取得部22により、窓ガラス14の最表面の温度Aを取得する(ステップS41)。そして、制御部26により、窓ガラス14の最表面の温度Aが、二酸化炭素の凝固点を超えているか否かが判断される(ステップS42)。窓ガラス14の最表面の温度Aが、二酸化炭素の凝固点を超えている場合には、取得部22により、吹き付ける(ブローする)二酸化炭素の温度Bを取得する(ステップS43)。
【0047】
そして、制御部26により、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満か否かが判断される(ステップS44)。窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満の場合には、制御部26が除塵部24に対して気体ブローのロックを解除する信号を送る(ステップS45)。そして、除塵部24は、制御部26に制御されて気体ブローを実施する(ステップS46)。すなわち、二酸化炭素を窓ガラス14の最表面に吹き付けて、その窓ガラス14の最表面を除塵する。
【0048】
一方、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満ではない場合、換言すれば、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度以上の場合には、制御部26により、加熱装置を作動させて窓ガラス14を昇温させるか、又は除塵部24の冷却装置を作動させて二酸化炭素を降温させる(ステップS47)。
【0049】
すなわち、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差を小さくする。これにより、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、窓ガラス14の最表面に二酸化炭素を吹き付けて除塵する際、その窓ガラス14が二酸化炭素との温度差によってダメージを受ける(熱割れする)のを抑制又は防止することができる。
【0050】
ステップS47において、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差を小さくしたら、ステップS43に戻り、取得部22により、ブローする二酸化炭素の温度Bを取得する。そして、ステップS44において、制御部26により、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満か否かが再び判断される。
【0051】
なお、ステップS47において、制御部26により、加熱装置を作動させて窓ガラス14を昇温させるとともに、除塵部24の冷却装置を作動させて二酸化炭素を降温させるようにしてもよい。すなわち、ステップS47においては、窓ガラス14の昇温及び二酸化炭素の降温のうち、少なくとも一方を行えばよい。但し、加熱装置と冷却装置の両方を作動させると、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする二酸化炭素の温度Bとの温度差をより素早く小さくすることができる。
【0052】
また、窓ガラス14の最表面の温度Aが、二酸化炭素の凝固点を超えていない場合、換言すれば、窓ガラス14の最表面の温度Aが、二酸化炭素の凝固点以下の場合には、制御部26により、除塵部24に対して、ブローする気体として、二酸化炭素ではなく、二酸化炭素よりも凝固点の低い窒素又は水素を選択させる(ステップS48)。
【0053】
そして、取得部22により、ブローする窒素又は水素の温度Dを取得する(ステップS49)。そして更に、制御部26により、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする窒素又な水素の温度Dとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満か否かが判断される(ステップS50)。
【0054】
窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする窒素又は水素の温度Dとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満の場合には、制御部26が除塵部24に対して気体ブローのロックを解除する信号を送る(ステップS51)。そして、除塵部24は、制御部26に制御されて気体ブローを実施する(ステップS52)。すなわち、窒素又は水素を窓ガラス14の最表面に吹き付けて、その窓ガラス14の最表面を除塵する。
【0055】
一方、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする窒素又は水素の温度Dとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満ではない場合、換言すれば、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする窒素又は水素の温度Dとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度以上の場合には、制御部26により、加熱装置を作動させて窓ガラス14を昇温させるか、又は除塵部24の冷却装置を作動させて窒素又は水素を降温させる(ステップS53)。
【0056】
すなわち、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする窒素又は水素の温度Dとの温度差を小さくする。これにより、窓ガラス14の最表面に窒素又は水素を吹き付けて除塵する際、その窓ガラス14が窒素又は水素との温度差によってダメージを受ける(熱割れする)のを抑制又は防止することができる。
【0057】
ステップS53において、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする窒素又は水素の温度Dとの温度差を小さくしたら、ステップS49に戻り、取得部22により、ブローする窒素又は水素の温度Dを取得する。そして、ステップS50において、制御部26により、窓ガラス14の最表面の温度Aとブローする窒素又は水素の温度Dとの温度差が、窓ガラス14の熱割れ温度未満か否かが再び判断される。
【0058】
このように、第3実施形態によれば、例えば月面上などの低温環境下で使用されるローバー12に設けられている窓ガラス14のように、その最表面の温度が二酸化炭素の凝固点以下となる場合であっても、その窓ガラス14の最表面に二酸化炭素、或いは窒素又は水素を吹き付けて除塵することが可能となる。
【0059】
以上、本実施形態に係る車両用除塵装置20について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る車両用除塵装置20は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、第1実施形態において、ブローする気体として、ローバー12内の空気を使用してもよい。
【0060】
また、被処理物としては、月面上などで使用されるローバー12に設けられている窓ガラス14に限定されるものではない。例えば、地球上における極寒地など、外気温が-60度を下回る地域を走行する車両10(ローバー12ではない一般的な車両)の窓ガラス(図示省略)等に対しても、第1実施形態に係る車両用除塵装置20を適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 車両
14 窓ガラス(被処理物)
20 車両用除塵装置
22 取得部
24 除塵部
26 制御部