(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】水分バリア積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20240723BHJP
B32B 7/02 20190101ALI20240723BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240723BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B7/02
H05B33/14 A
H05B33/04
(21)【出願番号】P 2021502256
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007396
(87)【国際公開番号】W WO2020175454
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2019031273
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】南郷 瞬也
(72)【発明者】
【氏名】奥山 真平
(72)【発明者】
【氏名】八木澤 美理
(72)【発明者】
【氏名】高山 圭将
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-039315(JP,A)
【文献】特開2017-035829(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006343(WO,A1)
【文献】特開2009-090633(JP,A)
【文献】特開平11-333966(JP,A)
【文献】特開2015-208960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H10K 50/10
H05B 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無機バリア層と複数の水分トラップ層とを有しており、デバイス内部への水分透過を防止するために使用される水分バリア積層体において、
前記複数の無機バリア層は、第1の無機バリア層、第2の無機バリア層及び第3の無機バリア層を含み、前記複数の水分トラップ層は、第1の水分トラップ層と第2の水分トラップ層とを含み、
前記第1~第3の無機バリア層と、前記第1~第2の水分トラップ層とは、デバイスに対面する側から外部側に向かって順に、第1の無機バリア層、第1の水分トラップ層、第2の無機バリア層、第2の水分トラップ層及び第3の無機バリア層となるように配置された基本交互層構造を形成しており、
前記第1~第3の無機バリア層の内の少なくとも1層の一方の側には、
該第1~第3の無機バリア層よりも水分透過率の高い水分透過性の下地プラスチック層が設けられていると共に、
前記第1の水分トラップ層と第1の無機バリア層との間隔L1a、及び第2の水分トラップ層と第2のバリア層との間隔L2aは、下記式(1)及び(2):
L1a<3μm (1)
L2a<3μm (2)
で示される条件を満足しており、第2の無機バリア層と第1の水分卜ラップ層との間隔L1bは、両者の間に
、前記第1~第3の無機バリア層よりも水分透過率の高い水分透過性有機層を介在させることにより、下記式(3):
L1b≧3μm (3)
で示される条件を満足するように設定されていることを特徴とする水分バリア積層体。
【請求項2】
前記間隔L1bが50μm以下である請求項1に記載の水分バリア積層体。
【請求項3】
前記複数の無機バリア層は、何れも40℃、90%RHで0.1g/m
2/day以下の水分透過率を有している請求項1に記載の水分バリア積層体。
【請求項4】
前記間隔調整に使用されている水分透過性有機層が、第2の無機バリア層の一方の側に存在している下地プラスチック層である請求項1に記載の水分バリア積層体。
【請求項5】
第1の水分トラップ層と第2の無機バリア層との間に接着剤層が存在している請求項1に記載の水分バリア積層体。
【請求項6】
前記複数の無機バリア層の何れか若しくは全部が、アルミニウム酸化物の蒸着層である請求項1に記載の水分バリア積層体。
【請求項7】
第3の無機バリア層の外部側には、さらに水分トラップ層を含む積層構造が形成されている請求項1に記載の水分バリア積層体。
【請求項8】
前記複数の水分トラップ層が、吸湿性の無機粒子を含む樹脂層、吸湿性のイオン性ポリマー層或いは吸湿性の非イオン性ポリマー層により形成されている請求項1に記載の水分バリア積層体。
【請求項9】
前記複数の水分トラップ層が、何れもイオン性ポリマーからなる吸湿性マトリックス中に、該マトリックスよりも到達湿度が低湿度である吸湿剤が分散された構造を有している請求項8に記載の水分バリア積層体。
【請求項10】
粘着剤によりデバイスに貼着されて使用される請求項1に記載の水分バリア積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイス内部への水分透過を防止するために使用される水分バリア積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種プラスチック基材の特性、特にガスバリア性を改善するための手段として、プラスチック基材の表面に、蒸着により、ケイ素酸化物やアルミニウム酸化物などからなる無機バリア層を形成することが知られている(特許文献1)。
【0003】
ところで、近年において開発され、実用されている各種のデバイス、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、太陽電池、タッチパネル、電子ペーパーなどの電子デバイスでは、電荷のリークを嫌うため、デバイスの内部は低水分雰囲気に保たれており、その回路基板などを形成するプラスチック基材や回路基板を封止するフィルムなどに対して高い水分バリア性が要求されている。上記で述べた無機バリア層の形成では、このような水分バリア性に対する高い要求に応えることができないため、水分バリア性を向上させる種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献2~5には、本出願人により、特定の粒状吸湿剤がイオン性ポリマーのマトリックス中に分散された水分トラップ層がプラスチック基材上の無機バリア層の上に形成されているガスバリア性積層体が提案されている。
このようなガスバリア積層体は、水分に対して著しく優れた超バリア性を示し、外部からのデバイス内部への水分侵入を有効に防止することが可能となっている。
【0005】
ところで、上記のようなガスバリア積層体は、通常、粘着剤を用いてデバイスに貼着されて使用に供されるが、デバイスに最も近い側に位置する水分トラップ層の水分バリア性能が早く消失してしまうという問題があった。即ち、この位置での水分トラップ層の水分バリア性が消失するということは、この層が吸湿水分で飽和していることを示し、そうなると、この水分トラップ層からデバイス側に水分が放出されてしまい、水分バリア性が損なわれてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-255579号公報
【文献】WO2014/123197
【文献】特開2014-168949号公報
【文献】特開2014-168950号公報
【文献】特開2017-39315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、デバイス内部への水分の透過を防止するために使用される水分バリア積層体において、デバイス側に位置する水分トラップ層の経時的消耗が有効に抑制され、水分に対する超バリア性を長期にわたって発現させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、複数の無機バリア層と複数の水分トラップ層とを有しており、デバイス内部への水分透過を防止するために使用される水分バリア積層体において、
前記複数の無機バリア層は、第1の無機バリア層、第2の無機バリア層及び第3の無機バリア層を含み、前記複数の水分トラップ層は、第1の水分トラップ層と第2の水分トラップ層とを含み、
前記第1~第3の無機バリア層と、前記第1~第2の水分トラップ層とは、デバイスに対面する側から外部側に向かって順に、第1の無機バリア層、第1の水分トラップ層、第2の無機バリア層、第2の水分トラップ層及び第3の無機バリア層となるように配置された基本交互層構造を形成しており、
前記第1~第3の無機バリア層の内の少なくとも1層の一方の側には、該第1~第3の無機バリア層よりも水分透過率の高い水分透過性の下地プラスチック層が設けられていると共に、
前記第1の水分トラップ層と第1の無機バリア層との間隔L1a、及び第2の水分トラップ層と第2のバリア層との間隔L2aは、下記式(1)及び(2):
L1a<3μm (1)
L2a<3μm (2)
で示される条件を満足しており、第2の無機バリア層と第1の水分卜ラップ層との間隔L1bは、両者の間に、前記第1~第3の無機バリア層よりも水分透過率の高い水分透過性有機層を介在させることにより、下記式(3):
L1b≧3μm (3)
で示される条件を満足するように設定されていることを特徴とする水分バリア積層体が提供される。
【0009】
本発明の水分バリア積層体においては、以下の態様が好適に採用される。
(1)前記間隔L1b(第2の無機バリア層と第1の水分トラップ層との間隔)が50μm以下であること。
(2)前記複数の無機バリア層は、何れも40℃、90%RHで0.1g/m2/day以下の水分透過率を有していること。
(3)前記間隔調整に使用されている水分透過性有機層が、第2の無機バリア層の一方の側に存在している下地プラスチック層であること。
(4)第1の水分トラップ層と第2の無機バリア層との間に接着剤層が存在していること。
(5)前記複数の無機バリア層も何れか若しくは全部が、アルミニウム酸化物の蒸着層であること。
(6)第3の無機バリア層のデバイス外部側には、さらに水分トラップ層を含む積層構造が形成されていること。
(7)前記複数の水分トラップ層が、吸湿性の無機粒子を含む樹脂層、吸湿性のイオン性ポリマー層或いは吸湿性の非イオン性ポリマー層により形成されていること。
(8)前記水分トラップ層が、イオン性ポリマーからなる吸湿性マトリックス中に、該マトリックスよりも到達湿度が低湿度である吸湿剤が分散された構造を有していること。
(9)粘着剤によりデバイスに貼着されて使用されること。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水分バリア積層体は、有機EL等のデバイスに装着され、デバイス内部への水分透過を防止するために使用されるものであり、デバイスに対面する側から外部側(デバイスとは反対側)に向かって順に、第1の無機バリア層、第1の水分トラップ層、第2の無機バリア層、第2の水分トラップ層及び第3の無機バリア層となるように、無機バリア層と水分トラップ層とが交互に位置している基本層構造を有している。
このような基本構造において、上記式(1)~(3)を満足するように、第1の無機バリア層~第3の無機バリア層までの間の領域での所定の間隔が一定の範囲に設定されている点が、本発明にとって重要な特徴である。即ち、このように間隔調整された基本構造を有していることにより、デバイス側に存在している水分トラップ層(第1の水分トラップ層)の短期でのパフォーマンスの低下が抑制され、この結果、この水分バリア積層体を長期にわたって発揮させることが可能となったのである。
【0011】
上記のような間隔調整により、デバイス側に存在している水分トラップ層(第1の水分トラップ層)の短期でのパフォーマンスの低下が抑制されることは多くの実験により現象として見出されたものであり、その理由は明確に解明されるには至っていない。しかしながら、本発明者等は次のように推定している。
即ち、水分バリア積層体は、粘着剤を用いて電子デバイスに貼着され、これにより外部からデバイス内への水分の透過が防止されるのであるが、この際に使用する粘着剤に水分が含有している場合がある。また、水分バリア積層体を貼着する際において、デバイス内の水分量はゼロではなく、少量ではあるが、この内部に水分が存在している。このような水分は、水分濃度勾配に従い、より水分濃度が小さい水分バリア積層体中に拡散・移行し、第1の水分トラップ層に吸湿されることとなる。ここで、第1の水分トラップ層中に吸湿した水分が、第1の水分トラップ層中に堰き止められた状態にあると、この吸湿水分により第1の水分トラップ層中の水分濃度が短期間で上昇してしまい、デバイス側との水分濃度勾配が少なくなってしまうこととなり、結果として、第1の水分トラップ層のパフォーマンスが低下してしまうこととなる。
一方、上述した間隔調整により、第1の水分トラップ層の外部側(デバイスとは反対側)に水分透過性の有機層を厚く形成した場合、厚みを大きくしたぶんだけ水分濃度が上昇しづらくなるため、水分は、水分透過性有機層側に移動しやすくなる。水分透過性有機層側に移動した水分は、第2の水分バリア層を透過して第2の水分バリア層中に吸湿されるため、第1の水分トラップ層中に堰き止められてしまうという状態には至らない。この結果として、第1の水分トラップ層中の水分濃度上昇が有効に抑制され、第1の水分トラップ層の短期でのパフォーマンス低下が防止され、長期にわたって、優れた水分バリア性が発揮されるものと思われる。
【0012】
このような本発明の水分バリア性積層体は、水分の侵入を嫌う各種電子デバイス、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)パネル、タッチパネルなどの各種デバイスの基板や封止層として有用であり、特に有機ELパネルに好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の水分バリア性積層体の代表的な層構造を示す図。
【
図2】本発明の水分バリア性積層体の他の層構造を示す図。
【
図3】本発明の水分バリア性積層体の他の層構造を示す図。
【
図4】本発明の水分バリア性積層体の要件を満たさない層構造を示す図。
【
図5】本発明の水分バリア性積層体の要件を満たさない層構造を示す図。
【
図6】本発明の水分バリア性積層体の要件を満たさない層構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照して本発明の基本的な層構造を説明する。全体として1で示されている本発明の水分バリア性多層構造体は、デバイスに対面する側(低湿度雰囲気側)から外部側(高湿度雰囲気側)に向かって順に、第1の無機バリア層13、第1の水分トラップ層31、第2の無機バリア層35、第2の水分トラップ層51及び第3の無機バリア層53となるように、無機バリア層と水分トラップ層とが交互に位置している基本層構造を有している。第1の無機バリア層13のデバイス側には水分透過性を有する下地プラスチック層11が位置している。
また、第1の無機バリア層13と第1の水分バリア層31との間には、水分透過性有機層21が接着材層として設けられている。
さらに、第1の水分トラップ層31と第2の無機バリア層35との間には、水分透過性有機層33が位置している。この水分透過性有機層33は、第2の無機バリア層35の下地プラスチック層(即ち、水分透過性を有する下地プラスチック層)となるものである。
さらにまた、第2の無機バリア層35と第2の水分トラップ層51との間には、水分透過性有機層41が接着材層として設けられている。
そして、第3の無機バリア層53の外側(デバイス側とは反対側)には水分透過性を有する下地プラスチック層55が設けられている。
【0015】
<無機バリア層の下地となるプラスチック層>
本発明において、無機バリア層の下地となるプラスチック層、例えば、
図1において、下地プラスチック層11、55、水分透過性有機層33或いは41は、それ自体公知の熱可塑性或いは熱硬化性の樹脂により、その形態に応じて、射出乃至共射出成形、押出乃至共押出成形、フィルム乃至シート成形、圧縮成形性、注型重合等により成形される。また、このような熱可塑性或いは熱硬化性の樹脂は、成形性やコスト等を考慮すると同時に、該下地プラスチック層の位置に応じて要求される特性を考慮して選択される。一般的には、これに限定されるものではないが、次に例示するものの中から選択される。
低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテンあるいはエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体等のポリオレフィン、環状オレフィン共重合体など。
エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のエチレン・ビニル化合物共重合体。
ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α-メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂。
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物。
ナイロン6、ナイロン6-6、ナイロン6-10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド。
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の熱可塑性ポリエステル。
ポリカーボネート、ポリフエニレンオキサイドや、その他、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂、アリル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ケトン樹脂、アミノ樹脂、或いはポリ乳酸などの生分解性樹脂等。
上記で例示した樹脂のブレンド物や、これら樹脂が適宜共重合により変性されたもの(例えば、酸変性オレフィン樹脂など)。
【0016】
本発明において、このような下地プラスチック層は、水分トラップ層より水分透過率の高い無機バリア層と比較してもさらに水分透過率の高い層であり、これにより、デバイス内の水分を第1の水分トラップ層31で捕捉することや、及び第1の水分トラップ層31で捕捉された水分を外部側(デバイスとは反対側)に放出することが可能となる。例えば、無機バリア層の下地となる下地プラスチック層の水分透過率は、40℃90%RH雰囲気において、1.0g/m2/day以上、好ましくは5g/m2/day以上、より好ましくは10g/m2/day以上である。
また、下地プラスチック層は、エチレン・ビニルアルコール共重合体の如き酸素バリア性に優れたガスバリア性樹脂などにより形成されていることも好適であり、さらには、このようなガスバリア性樹脂により形成された層を含む多層構造を有していてもよい。
【0017】
本発明においては、特別の機能が要求されない限り、入手のし易さ、コスト、成形性、或いは酸素に対して多少なりともバリア性を示し、さらには、後述する無機バリア層の下地として好適であるという観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるオレフィン樹脂を下地プラスチック層として使用することがより好適である。
【0018】
<無機バリア層>
本発明の無機バリア層は、例えば特開2015-96320号公報等により公知であり、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングなどに代表される物理蒸着や、原子層堆積法(ALD)やプラズマCVDに代表される化学蒸着などによって形成される無機質の蒸着膜、例えば酸化ケイ素膜や酸窒化ケイ素膜、酸化アルミニウム膜などの各種金属乃至金属酸化物により形成される膜であるが、特に、凹凸を有する面にも均一に成膜され、水分のみならず酸素等に対しても優れたバリア性を発揮するという点で、化学蒸着により形成される蒸着膜であることが好ましい。
また、コーティングにより形成される無機バリア層としては、ポリ塩化ビニリデンなどの水蒸気バリア性の高い樹脂や、ポリシラザンや、重縮合性のシラン化合物(例えばアルコキシシランなど)、重縮合性のアルミナ化合物(例えばアルコキシアルミニウムなど)等の無機成膜成分として含み、適宜、シリカやアルミナ等の無機微粒子が混合された有機溶媒溶液を用い、これを所定の面に塗布し、加熱して有機溶媒を揮散して成膜するものを用いることも好ましい。
【0019】
図1において、第1の無機バリア層13は、水分透過性下地プラスチック層11を下地として、蒸着により形成されている。
また、第2の無機バリア層35は、水分透過性有機層33を下地プラスチック層としての蒸着により形成されている。
また、第3の無機バリア層53は、水分透過性有機層55を下地プラスチック層としての蒸着により形成されている。
【0020】
即ち、プラズマCVDによる蒸着膜は、所定の真空度に保持されたプラズマ処理室内に無機バリア層の下地となる基材を配置し、膜形成する金属若しくは該金属を含む化合物のガス(反応ガス)及び酸化性ガス(通常酸素やNOxのガス)を、適宜、アルゴン、ヘリウム等のキャリアガスと共に、ガス供給管を用いて、金属壁でシールドされ且つ所定の真空度に減圧されているプラズマ処理室に供給し、この状態でマイクロ波電界や高周波電界などによってグロー放電を発生させ、その電気エネルギーによりプラズマを発生させ、上記化合物の分解反応物をプラスチック基材の表面に堆積させて成膜することにより得られる。
【0021】
上記の反応ガスとしては、一般に、下地の基材との界面に炭素成分を含む柔軟な領域を有し且つその上に酸化度の高いバリア性に優れた領域を有する膜を形成できるという観点から有機金属化合物、例えばトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物や、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機ケイ素化合物等のガスを用いることが好ましく、特に、水分に対するバリア性に加え、酸素に対してもバリア性の高い無機バリア層を比較的容易に効率良く形成できるという点で、有機ケイ素化合物が最も好ましい。
【0022】
このような有機ケイ素化合物の例としては、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等の有機シラン化合物、オクタメチルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン等の有機シロキサン化合物等が使用される。また、これら以外にも、アミノシラン、シラザンなどを用いることもできる。
上述した有機金属化合物は、単独でも或いは2種以上の組合せでも用いることができる。
【0023】
また、安価さや取扱い易さという観点でいうと、アルミニウム酸化物のガスを用いることが好ましい。
【0024】
また、上述した無機バリア層の厚みは、本発明の水分バリア性積層体の用途や要求されるバリア性のレベルによっても異なるが、一般的には、蒸着に際しての下地となる基材等の特性が損なわれずに、且つ40℃90%RHで10-2g/m2・day/atom以下、特に10-3g/m2・day/atom以下の水蒸気透過度が確保できる程度の厚みとするのがよく、上述した高酸化度領域が占める割合によっても異なるが、一般に、4乃至500nm、特に30乃至400nm程度の厚みを有していればよい。あるいは、上述した水蒸気透過度を確保するため、無機バリア層を有するフィルムを複数重ねても良い。
【0025】
上述のようにして形成された無機バリア層は、0.1g/m2/day以下の水分透過率を有している。また、好ましくは0.05g/m2/day以下、より好ましくは0.01g/m2/day以下の水分透過率を有している。すなわち、水分透過率が上記範囲よりも大きいと、水分が十分に遮断できず、水分バリア積層体としてのパフォーマンスが低下してしまうからである。
【0026】
また、上記無機バリア層は、2層以上のバリア層から構成されていてもよく、例えば1層あたりの水分透過率が必要性能を満たさない無機バリア層を、接着剤層などを介して2層以上に積層して1つの無機バリア層として用いることで、水分バリア積層体としての性能を確保することが出来る。
【0027】
無機バリア層と水分トラップ層との間には、密着性の向上を目的に、アンカーコート層を設けてもよい。
アンカーコート層を形成する熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの樹脂としては、溶剤性及び水性の樹脂がいずれも使用することができ、具体的には、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、シリコン系樹脂、アルコール性水酸基含有樹脂(ビニルアルコール系樹脂、エチレンビニルアルコール系樹脂等)、ビニル系変性樹脂、イソシアネート基含有樹脂、カルボジイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、エポキシ系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン系樹脂、変性シリコン系樹脂、アルキルチタネート等を単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
<水分トラップ層>
本発明の水分トラップ層は、本発明の水分バリア性多層構造体に対して厚み方向に流れる水分を遮断するものであり、このような水分遮断性を示すものであれば、特に制限されず、所定の樹脂層中にゼオライトやシリカゲル等の物理的乾燥剤や、酸化カルシウム等の化学的乾燥剤を分散させたものや、ポリビニルアルコールや水溶性ナイロン、ポリエチレンオキサイドなどの吸湿性を有する非イオン性ポリマー等、それ自体公知の層であってよいが、特に、水分に対する高いバリア性が要求される場合には、例えば、特開2015-96320号等に開示されているイオン性ポリマーをマトリックスとし、このマトリックス中にイオン性ポリマーよりも到達湿度が低い吸湿剤が分散された構造を有するものが好適である。このようなイオン性ポリマーをマトリックスとするものは、水分捕捉性が優れ、しかも水分吸収に起因する膨潤などの変形を有効に回避することができるからである。
【0029】
図7には、上記のようなイオン性ポリマーをマトリックスとした水分トラップ層の代表的な構造が示されており、
図7(a)は、イオン性基としてカチオン性基(NH
2基など)を有するカチオン性ポリマーをマトリックスする水分トラップ層が示されており、
図7(b)には、イオン性基としてアニオン性基(COONa基,COOH基など)を有しているアニオン性ポリマーをマトリックスする水分トラップ層が示されている。
【0030】
即ち、上記のイオン性ポリマーをマトリックスとする水分トラップ層では、無機バリア層を通って流入した微量の水分が、このマトリックス(イオン性ポリマー)に吸収されることとなる。マトリックス自体が高い吸湿性を示すため、水分を漏れなく捕水し、吸収するわけである。
ところで、単に水分がマトリックスに吸収されたに過ぎない場合には、温度上昇などの環境変化により、吸収された水分は容易に放出されてしまうこととなる。また、水分の侵入により、マトリックスを形成するポリマー分子の間隔を広げ、この結果、この水分トラップ層は膨潤してしまうことにもなる。
しかるに、マトリックス(イオン性ポリマー)よりも到達湿度が低い吸湿剤が分散されている場合には、マトリックス中に吸収された水分は、このマトリックスよりも吸湿性の大きい(即ち、到達湿度が低い)吸湿剤によってさらに捕捉されることとなり、吸収された水分子による膨潤が有効に抑制されるばかりか、この水分子は、水分トラップ層中に閉じ込められ、この結果、水分トラップ層からの水分の放出も有効に防止されることとなる。
【0031】
このように、イオン性ポリマー中に吸湿剤を分散させることにより水分トラップ層を形成した場合には、高い吸湿能力と共に水分の捕捉と閉じ込めとの2重の機能を有しているため、極低湿度の雰囲気下でも水分を捕捉することができ、水分が無機バリア層を透過する速度よりも十分速い速度で捕捉して更に層全体で水分を補足するために外部へ漏らすことも無く、著しく高い水分バリア性を実現することができる。
【0032】
イオン性ポリマー(カチオン性ポリマー);
本発明において、上記のようなマトリックスの形成に使用するイオン性ポリマーの内、カチオン性ポリマーは、水中で正の電荷となり得るカチオン性基、例えば、1~3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウムなどを分子中に有しているポリマーである。このようなカチオン性ポリマーは、カチオン性基が、求核作用が強く、かつ水素結合により水を補足するため、吸湿性を有するマトリックスを形成することができる。
カチオン性ポリマー中のカチオン性基量は、一般に、形成される吸湿性マトリックスの吸水率(JIS K-7209-1984)が湿度80%RH及び30℃雰囲気下において20%以上、特に30%~45%となるような量であればよい。
【0033】
また、カチオン性ポリマーとしては、アリルアミン、エチレンイミン、ビニルベンジルトリメチルアミン、[4-(4-ビニルフェニル)-メチル]-トリメチルアミン、ビニルベンジルトリエチルアミン等のアミン系単量体;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の含窒素複素環系単量体;及び、それらの塩類;に代表されるカチオン性単量体の少なくとも1種を、適宜、共重合可能な他の単量体と共に、重合乃至共重合し、さらに必要により、酸処理により部分中和させて得られるものが使用される。
尚、共重合可能な他の単量体としては、これに限定されるものではないが、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、α-ハロゲン化スチレン類、アクリロニトリル、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等を挙げることができる。
【0034】
また、上記のカチオン性単量体を使用する代わりに、カチオン性官能基を導入し得る官能基を有する単量体、例えば、スチレン、ブロモブチルスチレン、ビニルトルエン、クロロメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン等を使用し、重合後に、アミノ化、アルキル化(第4級アンモニウム塩化)などの処理を行ってカチオン性ポリマーを得ることもできる。
【0035】
本発明においては、上記のカチオン性ポリマーの中でも、特にアリルアミンが成膜性等の観点から好適である。
【0036】
本発明においては、前述したカチオン性ポリマーを用いて形成されるマトリックスには、架橋構造を導入しておくことが、吸湿能力を低下させることなく機械的強度を確保すると同時に、寸法安定性を向上させる上で好ましい。
即ち、吸湿性のマトリックス中に架橋構造が導入されていると、該マトリックスが水を吸収したとき、カチオン性ポリマーの分子が架橋によって互いに拘束されることとなり、膨潤(水分吸収)による体積変化を抑制し、機械的強度や寸法安定性の向上がもたらされる。
上記の架橋構造は、水分トラップ層を形成するためのコーティング組成物中に架橋剤を配合しておくことにより導入することができる。
【0037】
イオン性ポリマー(アニオン性ポリマー);
本発明において、吸湿性のマトリックスの形成に使用するアニオン性ポリマーは、水中で負の電荷となり得るアニオン性の官能基、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基や、これらの基が部分的に中和された酸性塩基を分子中に有しているポリマーである。このような官能基を有するアニオン性ポリマーは、上記官能基が水素結合により水を補足するため、吸湿性マトリックスを形成することができる。
アニオン性ポリマー中のアニオン性官能基量は、官能基の種類によっても異なるが、前述したカチオン性ポリマーと同様、形成される吸湿性マトリックスの吸水率(JIS K-7209-1984)が湿度80%RH及び30℃雰囲気下において20%以上、特に30%~45%となるような量であればよい。
【0038】
上記のような官能基を有するアニオン性ポリマーとしては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等のカルボン酸系単量体;α-ハロゲン化ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸系単量体;ビニルリン酸等のホスホン酸系単量体;及びこれら単量体の塩類;などに代表されるアニオン性単量体の少なくとも1種を、適宜、共重合可能な他の単量体と共に重合乃至共重合させ、さらに必要により、アルカリ処理により部分中和させて得られるものが使用される。
尚、共重合可能な他の単量体としては、これに限定されるものではないが、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、α-ハロゲン化スチレン類、アクリロニトリル、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等を挙げることができる。
【0039】
また、上記のアニオン性単量体を使用する代わりに、上記のアニオン性単量体のエステルや、アニオン性官能基を導入し得る官能基を有する単量体、例えば、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、α-ハロゲン化スチレン類等を使用し、重合後に、加水分解、スルホン化、クロルスルホン化、ホスホニウム化などの処理を行ってアニオン性ポリマーを得ることもできる。
【0040】
本発明において、好適なアニオン性ポリマーは、ポリ(メタ)アクリル酸及びその部分中和物(例えば一部がNa塩であるもの)である。
【0041】
また、本発明においては、前述したアニオン性ポリマーを用いて形成される吸湿性マトリックスにおいても、架橋構造を導入しておくことが特に好ましく、これにより、水分トラップ層の水分トラップ能力がさらに高められ、しかも、寸法安定性のさらなる向上がもたらされている。
即ち、アニオン性ポリマーの場合、カチオン性ポリマーとは異なって、水素結合による水の補足のみなので、吸湿に適した空間の網目構造(架橋構造)をマトリックス中に導入することにより、その吸湿性を大きく高めることができる。このような架橋構造は、例えば、網目構造中に脂環構造のような疎水部位を有しているものであり、これにより、親水部位の吸湿効果がより高められる。
さらに、吸湿性マトリックス中に架橋構造を導入することにより、該マトリックスが水を吸収したとき、アニオン性ポリマーの分子が架橋によって互いに拘束され、膨潤(水分吸収)による体積変化が抑制され、寸法安定性が向上する。このような寸法安定性向上効果は、前述したカチオン性ポリマーの場合と同様である。
【0042】
上記の架橋構造は、カチオン性ポリマーの場合と同様、水分トラップ層を形成するためのコーティング組成物中に架橋剤を配合しておくことにより導入される。
【0043】
吸湿剤;
上述したイオン性ポリマーをマトリックスとする水分トラップ層中に分散される吸湿剤は、上記のマトリックスを形成するイオン性ポリマー(カチオン性或いはアニオン性ポリマー)よりも到達湿度が低く、極めて高い吸湿性能を有するものでる。このようにマトリックスよりも高い吸湿性を有する吸湿剤を分散させることにより、前述したイオン性ポリマーにより形成されたマトリックスに吸収された水分が直ちに吸湿剤に捕捉され、吸収された水分のマトリックス中への閉じ込めが効果的に行われることとなり、極めて低湿度雰囲気でも水分の吸湿能力を有効に発揮することができるばかりか、水分の吸収による水分トラップ層の膨潤も有効に抑制される。
【0044】
上記のような高吸湿性の吸湿剤としては、イオン性ポリマーよりも到達湿度が低いことを条件として、例えば後述する実施例で示されているように、湿度80%RH及び温度30℃の環境条件での到達湿度が6%以下のものが好適に使用される。即ち、この吸湿剤の到達湿度がイオン性ポリマーよりも高いと、マトリックスに吸収された水分の閉じ込めが十分でなく、水分の放出等を生じ易くなるため、水分バリア性の著しい向上が望めなくなってしまう。また、到達湿度がイオン性ポリマーよりも低い場合であっても、上記条件で測定される到達湿度が上記範囲よりも高いと、例えば低湿度雰囲気での水分のトラップが不十分となり、水分バリア性を十分に発揮できないおそれがある。
【0045】
上記のような吸湿剤は、一般に湿度80%RH及び温度30℃雰囲気下において50%以上の吸水率(JIS K-7209-1984)を有しており、無機系及び有機系のものがある。
無機系の吸湿剤としては、ゼオライト、アルミナ、活性炭、モンモリロナイト等の粘土鉱物、シリカゲル、酸化カルシウム、硫酸マグネシウムなどを挙げることができる。
有機系の吸湿剤としては、アニオン系ポリマー若しくはその部分中和物の架橋物を挙げることができる。このアニオン系ポリマーとしては、カルボン酸系単量体((メタ)アクリル酸や無水マレイン酸など)、スルホン酸系単量体(ハロゲン化ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸など)、ホスホン酸系単量体(ビニルリン酸など)及びこれら単量体の塩類等に代表されるアニオン性単量体の少なくとも1種を、重合或いは他の単量体と共重合させて得られるものを挙げることができる。特に透明性が求められる用途においては、有機系の吸湿剤が有効である。例えば、架橋ポリ(メタ)アクリル酸Naの微細粒子などが代表的な有機系吸湿剤である。
【0046】
本発明においては、比表面積が大となり、高い吸湿性を示すという観点から粒径が小さな吸湿剤が好ましく(例えば、平均一次粒子径が100nm以下、特に80nm以下)、特に粒径の小さな有機系ポリマーの吸湿剤が最適である。
即ち、有機系ポリマーの吸湿剤は、イオン性ポリマーのマトリックスに対する分散性が極めて良好であり、均一に分散させることができるばかりか、これを製造するための重合法として乳化重合や懸濁重合などを採用することにより、その粒子形状を微細で且つ揃った球形状とすることができ、これをある程度以上配合することにより、極めて高い透明性を確保することが可能となる。
また、有機系の微細な吸湿剤では、前述した到達湿度が著しく低く、高い吸湿性を示すばかりか、架橋によって膨潤による体積変化も極めて少なくすることができ、従って、体積変化を抑制しながら、環境雰囲気を絶乾状態もしくは絶乾状態に近いところまで湿度を低下させる上で最適である。
このような有機系の吸湿剤の微粒子としては、例えば架橋ポリアクリル酸Na微粒子(平均粒子径約70nm)がコロイド分散液(pH=10.4)の形で東洋紡株式会社よりタフチックHU-820Eの商品名で市販されている。
【0047】
本発明において、上記のような吸湿剤の量は、その特性を十分に発揮させ、水分バリア性の著しい向上及び膨潤による寸法変化を有効に抑制させると同時に、無機バリア層が示すバリア性よりも高い水分バリア性を長期間にわたって確保するという観点から、イオン性ポリマーの種類に応じて設定される。
例えば、上述したイオン性ポリマーをマトリックスとし、このマトリックス中に吸湿剤が分散されている水分トラップ層は、特に超水分バリア性が要求されるような用途では、水蒸気透過度が10-5g/m2/day以下となるような超バリア性を発揮させる程度の厚み(例えば、1μm以上、特に2乃至20μm程度)に設定されるが、マトリックスがカチオン性ポリマーにより形成されている場合には、水分トラップ層中のイオン性ポリマー100質量部当り、50質量部以上、特に100乃至900質量部の量で存在することが好ましく、更には200乃至600質量部の量であることがより好ましい。また、マトリックスがアニオン性ポリマーにより形成されている場合には、水分トラップ層中のアニオン性ポリマー100質量部当り、50質量部以上、特に100乃至1300質量部の量で存在することが好ましく、更には150乃至1200質量部の量であることがより好ましい。
【0048】
水分トラップ層の形成;
また、上述した水分トラップ層は、マトリックスとなるイオン性ポリマーに吸湿剤及び必要により架橋剤を所定の溶媒に溶解乃至分散したコーティング組成物を使用し、このコーティング組成物を、塗布し、乾燥して溶媒を除去することにより形成されるが、このような成膜後、乾燥雰囲気中、減圧下に保持し、層中に含まれる水分を放出せしめることが必要である。水分トラップ層が水分を含む状態で多層構造体が作製された場合には、短期間で水分が飽和状態に達してしまうからである。
図1では、下地プラスチック層として設けられた水分透過性有機層33上にコーティング組成物を塗布することで第1の水分トラップ層31が形成される。
また、第3の無機バリア層53にコーティング組成物を塗布することで第2の水分トラップ層51が形成される。
【0049】
尚、上記の水分トラップ層形成用のコーティング組成物の組成は、特開2015-96320号等に記載されているとおりであり、マトリックスがカチオン性ポリマーにより形成されている場合(以下、単に「カチオン性マトリックス」と呼ぶ)と、アニオン性ポリマーにより形成されている場合(以下、単に「アニオン性マトリックス」と呼ぶ)とで多少異なる。
【0050】
カチオン性マトリックスの場合;
かかるコーティング組成物において、カチオン性ポリマーと吸湿剤とは、前述した量比で使用される。即ち、100質量部のカチオン性ポリマーに対して、前述した量で、カチオン性ポリマーと共に、吸湿剤はコーティング組成物中に配合される。
【0051】
また、カチオン性ポリマーの吸湿性マトリックスに架橋構造を導入するための架橋剤により、例えば、架橋構造にシロキサン構造または多脂環構造を導入することができ、これにより、吸湿に適した空間の網目構造を形成する。
【0052】
この場合の架橋剤としては、カチオン性基と反応し得る架橋性官能基(例えば、エポキシ基)と、加水分解と脱水縮合を経て架橋構造中にシロキサン構造を形成し得る官能基(例えば、アルコシシリル基)を有している化合物を使用することができ、特に、下記式(4):
X-SiR1
n(OR2)3-n (4)
式中、Xは、末端にエポキシ基を有する有機基であり、
R1及びR2は、それぞれ、メチル基、エチル基、もしくはイソ
プロピル基であり、
nは、0、1、もしくは2である、
で表されるシラン化合物が好適に使用される。
【0053】
このようなシラン化合物は、官能基としてエポキシ基とアルコキシシリル基とを有しており、エポキシ基がカチオン性ポリマーの官能基(例えばNH2)と付加反応する。一方アルコキシシリル基は、加水分解によりシラノール基(SiOH基)を生成し、縮合反応を経てシロキサン構造を形成して成長することにより、最終的にカチオン性ポリマー鎖間に架橋構造を形成する。これにより、カチオン性ポリマーのマトリックスには、シロキサン構造を有する架橋構造が導入されることとなる。
しかも、このコーティング組成物は、カチオン性ポリマーを含んでいるため、アルカリ性であり、この結果、カチオン性基とエポキシ基の付加反応やシラノール基間の脱水縮合も速やかに促進されることとなる。
【0054】
本発明において、上記式(4)中のエポキシ基を有する有機基Xとしては、γ-グリシドキシアルキル基が代表的であり、例えばγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが架橋剤として好適に使用される。
また、上記式(4)中のエポキシ基が、エポキシシクロヘキシル基のような脂環式エポキシ基であるものも架橋剤として好適である。例えば、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのような脂環式エポキシ基を有する化合物を架橋剤として使用した場合には、マトリックスの架橋構造中に、シロキサン構造と共に、脂環構造が導入される。このような脂環構造の導入は、吸湿に適した空間の網目構造を形成するというマトリックスの機能を更に効果的に発揮させることができる。
【0055】
さらに、架橋構造中に脂環構造を導入するために、複数のエポキシ基と脂環基とを有している化合物、例えば、下記式(5):
G-O(C=O)-A-(C=O)O-G (5)
式中、Gは、グリシジル基であり、
Aは、脂肪族環を有する2価の炭化水素基、例えばシクロアルキレン基である、
で表されるジグリシジルエステルを、架橋剤として使用することができる。このようなジグリシジルエステルの代表的なものは、下記の式(5-1)で表される。
【化1】
【0056】
即ち、式(5)のジグリシジルエステルは、アルコキシシリル基を有していないが、架橋構造中に脂環構造を導入するため、マトリックス中に吸湿に適した空間の網目構造を形成するという点で効果的である。
【0057】
このようなカチオン性マトリックスの場合においてのコーティング組成物では、上述した架橋剤は、カチオン性ポリマー100質量部当り、5乃至60質量部、特に15乃至50質量部の量で使用することが望ましく、このような架橋剤の少なくとも70質量%以上、好ましくは80質量%以上が、前述した式(4)のシラン化合物であることが望ましい。
架橋剤の使用量が多すぎると、機械強度的に脆くなりハンドリング性が損なわれたり、塗料にした際に増粘が速く有効なポットライフが確保できなくなるおそれがあり、また、少なすぎると、これに伴い、厳しい環境下(例えば高湿度下)に曝された場合の耐性(例えば機械的強度)が確保できなくなるおそれがある。
【0058】
上述した各種成分を含むコーティング組成物に使用される溶媒としては、比較的低温での加熱により揮散除去し得るものであれば特に制限されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、或いはこれら溶媒と水との混合溶媒、或いは水、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒などを使用することができるが、特にコーティング組成物中の架橋剤中のアルコキシシリル基を有するシラン化合物の加水分解を促進させるために、水或いは水を含む混合溶媒を使用することが望ましい。
【0059】
尚、上述した溶媒は、コーティング組成物がコーティングに適した粘度となるような量で使用されるが、コーティング組成物の粘度調整のため、或いは形成される吸湿性マトリックスの吸水率を適宜の範囲に調整するため、非イオン性重合体を適宜の量で配合することもできる。
このような非イオン性重合体としては、ポリビニルアルコール、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブチレン等の飽和脂肪族炭化水素系ポリマー、スチレンーブタジエン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリ塩化ビニル、或いは、これらに、各種のコモノマー(例えばビニルトルエン、ビニルキシレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン、α-ハロゲン化スチレン、α,β,β´-トリハロゲン化スチレン等のスチレン系モノマーや、エチレン、ブチレン等のモノオレフィンや、ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィンなど)を、共重合させたものなどを挙げることができる。
【0060】
アニオン性マトリックスの場合;
この場合の水分トラップ層を形成するためのコーティング組成物において、アニオン性ポリマーと吸湿剤とは、100質量部のアニオン性ポリマーに対しての吸湿剤の量が前述した範囲となるように、コーティング組成物中に配合される。
【0061】
また、このコーティング組成物においても、前述したカチオン性マトリックスの場合と同様、適宜、架橋剤が配合される。
この架橋剤としては、アニオン性ポリマーが有しているイオン性基と反応し得る架橋性官能基(例えばエポキシ基)を2個以上有している化合物を使用することができ、カチオン性マトリックス用のコーティング組成物でも挙げられた式(5):
G-O(C=O)-A-(C=O)O-G (5)
式中、Gは、グリシジル基であり、
Aは、脂肪族環を有する2価の炭化水素基、例えばシクロアルキレン基である、
で表されるジグリシジルエステルが好適に使用される。
【0062】
即ち、上記式(5)のジグリシジルエステルにおいては、エポキシ基がアニオン性基と反応し、2価の基Aによる脂環構造を含む架橋構造がマトリックス中に形成される。このような脂環構造を含む架橋構造によりされ、膨潤の抑制がもたらされる。
特に、上記のジグリシジルエステルの中でも好適なものは、先にも挙げられており、特に、吸湿に適した空間の網目構造を形成できるという観点から、先の式(5-1)で表されるジグリシジルエステルが最も好適である。
【0063】
このようなアニオン性マトリックス用のコーティング組成物において、上記の架橋剤は、アニオン性ポリマー100質量部当り、1乃至50質量部、特に10乃至40質量部の量で使用することが望ましい。架橋剤の使用量が多すぎると、機械強度的に脆くなりハンドリング性が損なわれたり、塗料にした際に増粘が速く有効なポットライフが確保できなくなるおそれがあり、また、少なすぎると、これに伴い、厳しい環境下(例えば高湿度下)に曝された場合の耐性(例えば機械的強度)が確保できなくなるおそれがある。
【0064】
上述した各種成分を含むコーティング組成物に使用される溶媒としては、比較的低温での加熱により揮散除去し得るものであれば特に制限されず、カチオンマトリックス用のコーティング組成物でも挙げられたものと同種のものを使用することができる。
【0065】
さらに、上述したアニオンマトリックス用のコーティング組成物には、pH調整のために、アルカリ(例えば水酸化ナトリウムなど)を添加することもでき、例えば、pHが8乃至12程度となるようにアルカリを添加するのがよい。
【0066】
上述した溶媒は、カチオンマトリックス用のコーティング組成物と同様、コーティング組成物がコーティングに適した粘度となるような量で使用され、且つコーティング組成物の粘度調整のため、或いは形成される吸湿性マトリックスの吸水率を適宜の範囲に調整するため、先にも例示した非イオン性重合体を適宜の量で配合することができる。
【0067】
上述したカチオン性マトリックス形成用或いはアニオン性マトリックス形成用のコーティング組成物を用いての成膜は、上述したコーティング組成物を、第1の無機バリア層13に塗布し、80~160℃程度の温度に加熱することにより行われる。加熱時間は、例えば加熱オーブン等の加熱装置の能力にも依るが、一般に、数秒から数分間である。この加熱により、溶媒が除去され、さらに、架橋剤がイオン性ポリマーと反応し、架橋構造がマトリックス中に導入された水分トラップ層を形成することができる。
【0068】
<水分透過性有機層>
本発明において、水分透過性有機層とは、無機バリア層および無機バリア層と比較して水分透過率が高い有機層のことを指す。すなわち、前述した下地プラスチック層の項でも説明したように、この有機層は、1.0g/m2/day以上の水分透過率を有しており、好ましくは5g/m2/day以上、より好ましくは10g/m2/day以上の水分透過率を有する。
【0069】
基本的に、水分透過性有機層は下地プラスチック層または接着剤層として形成されるが、これらに限定されるものではなく、原理的には、水分トラップ性(さらには水分バリア性)以外の機能を示す材料からなる機能層であればよい。例えば、水分トラップ層と無機バリア層とを隣接させないように水分トラップ層と無機バリア層との間に、水分トラップ層の吸湿に伴う膨潤による体積変動を緩和するための緩衝層、水分トラップ層の生産工程中での吸湿に伴う失活を防止する保護樹脂層、バリア層を成膜するための平滑化層などの機能を有する層であってもよく、更にバリア性や無機層との密着性などを向上させるために、無機フィラーやシラン系化合物が加えられた有機層(密着性向上層)であってもよい。
【0070】
水分透過性有機層と水分トラップ層との間には、密着性の向上を目的に、アンカーコート層を設けてもよい。アンカーコート層を形成する樹脂としては、無機バリア層と水分トラップ層との間形成するアンカーコート層として列挙した樹脂を単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0071】
下地プラスチック層の場合;
下地プラスチック層としての水分透過性有機層は、それ自体公知の熱可塑性或いは熱硬化性の樹脂により形成される。熱可塑性或いは熱硬化性の樹脂としては、水分透過性下地プラスチック層に用いる樹脂として列挙したものを用いることができる。
また、下地プラスチック層としての水分透過性有機層は、エチレン・ビニルアルコール共重合体の如き酸素バリア性に優れたガスバリア性樹脂などにより形成されていることも好適であり、さらには、このようなガスバリア性樹脂により形成された層を含む多層構造を有していてもよい。
本発明においては、入手のし易さ、コスト、成形性、或いは酸素や酸素に対して多少なりともバリア性を示し、さらには無機バリア層の下地として好適であるという観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表されるポリエステル樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるオレフィン樹脂を使用することがより好適である。
【0072】
図1において、水分透過性有機層33の外部側(デバイスとは反対側)表面には、蒸着により第2の無機バリア層31が形成されている。すなわち、水分透過性有機層33は第2の無機バリア層35の下地プラスチック樹脂層として機能している。
【0073】
接着剤層の場合;
接着剤層としての水分透過性有機層には、感圧性接着剤や、接着性の樹脂成分を有機溶剤に溶解乃至分散させた所謂ドライラミネート接着剤として知られているもの、例えば、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤などを用いることができる。本発明では、飽和吸湿率が低く、比較的高い水分バリア性を示すという観点から、ドライラミネート接着剤のウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤が好適である。
【0074】
上述のウレタン系接着剤は、ポリオールとポリイソシアネートとを樹脂成分として含んでいる。
ポリオール成分としては、これに限定されるものではないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等のジオールや、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコール等の少なくとも1種が使用される。さらに、ポリエステルポリオール、水酸基含有アクリレート(例えばペンタエリスリトールトリアクリレートなど)などもポリオール成分として使用することができる。
ポリイソシアネートとしては、やはりこれに限定されるものではないが、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、リジンイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びこれらイソシアネートの多核縮合体などの少なくとも1種を挙げることができる。
尚、上記のポリイソシアネートの末端は、ブロック化剤で封鎖されていてもよく、このようなブロック化剤としては、メタノール、エタノール、乳酸エステル等のアルコール;フェノール、サリチル酸エステル等のフェノール性水酸基含有化合物;ε-カプロラクタム、2-ピロリドン等のアミド;アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム等のオキシム;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等の活性メチレン化合物;などが代表的である。
【0075】
上述のエポキシ系接着剤は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を含むものが好ましい。このような樹脂としては、例えば、脂肪族グリシジルエーテル、ビスフェノールA型、AD型、S型又はF型のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ジアリルビスフェノールAジグリシジルエーテル、アリル化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの重縮合物、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。上記エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、アミノ基末端のポリウレタン、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン等が挙げられ、これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0076】
上記感圧性接着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、エポキシ基含有アクリル共重合体、フェノール系樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、イソブチレン系樹脂、及びエポキシ樹脂硬化剤からなる半硬化状態のエポキシ熱硬化系樹脂から選ばれる少なくとも一種からなるものが挙げられる。
【0077】
図1では、第1の水分トラップ層31に接着剤を塗布し、乾燥した後、第1の無機バリア層13に圧着することにより、水分透過性有機層21が形成される。すなわち、水分透過性有機層21は接着剤層として機能している。
また、第2の水分トラップ層51に接着剤を塗布し、乾燥した後、第2の無機バリア層35に圧着することにより、水分透過性有機層41が形成される。すなわち、水分透過性有機層41は接着剤層として機能している。
【0078】
<他の層構造>
本発明においては、上記の基本層構造が確保されている限り、デバイス側および外部側(デバイスとは反対側)の面に、他の層が積層されて、さらなる多層構造が形成されていてもよく、これにより、水分バリア性をより向上させることができる。例えば、外部側の面に、さらに水分トラップ層を含む積層構造が形成され、第1の水分トラップ層から第2の水分トラップ層に移行したデバイス内部からの吸湿水分を、さらに外部側へ移行させることで、第1の水分トラップ層の効果をより長期間保持出来るようになるし、あるいはデバイス側に補助水分トラップ層を設けることで、フィルムの側面から透過する水分を吸湿し、デバイスの失活を抑制することが可能となる。
【0079】
<水分バリア積層体の形成>
例えば、
図1に示した水分バリア積層体1は以下のようにして形成することができる。
【0080】
まず、下地プラスチック層11の一方の面に第1の無機バリア層13を形成してフィルム101を得る。
次いで、下地プラスチック層としての水分透過性有機層33の一方の面に第2の無機バリア層35を形成し、もう一方の面には水分トラップ層31を形成してフィルム301を得る。
続いて、下地プラスチック層としての水分透過性有機層55の一方の面に第3の無機バリア層53を形成し、さらに形成した無機バリア層上に水分トラップ層51を形成することで、フィルム501を得る。
【0081】
フィルム101の無機バリア層13側とフィルム301の水分トラップ層31側を、接着剤層としての水分透過性有機層21で接着する。
最後に、フィルム301の無機バリア層35側とフィルム501の水分トラップ層51側を、接着剤層としての水分透過性有機層41で接着することで、水分バリア積層体1を得る。
【0082】
<層間の間隔>
前記第1の水分トラップ層と第1の無機バリア層との間隔L1a、及び第2の水分トラップ層と第2のバリア層との間隔L2aは、下記式(1)及び(2):
L1a<3μm (1)
L2a<3μm (2)
で示される条件を満足しており、第2の無機バリア層と第1の水分トラップ層との間隔L1bは、水分透過性有機層を介在させることにより、下記式(3):
L1b≧3μm (3)
で示される条件を満足するように設定される。
【0083】
図1では、接着材層として形成された水分透過性有機層21の厚みがL1aに対応する。
また、接着材層として形成された水分透過性有機層41の厚みがL2aに対応する。
さらに、下地プラスチック層として形成された水分透過性有機層33の厚みがL1bに対応する。
【0084】
無機バリア層が2層以上のバリア層から構成されている場合、上述した層間の間隔は、該水分トラップ層に対して隣接した、最も距離が近い無機バリア層との距離が上記式(1)~(3)を満たす必要がある。
【0085】
L1aおよびL2aは、好ましくは2.5μm未満、より好ましくは2μm未満である。すなわち、L1aおよびL2aが上記範囲よりも大きいと、透過水分のトラップ性能が低下してしまうからである。
【0086】
図2には、第1の水分トラップ層と第2の無機バリア層が直接接触する場合の構成を示したが、この場合、L1a=0μmである。また、
図3には、第1の水分トラップ層上に、水分透過性有機層として平滑化層、第2の無機バリア層、第2の水分トラップ層、水分透過性有機層として平滑化層、第3の無機バリア層を、この順で形成する場合の構成を示したが、この場合、L1a=0μmであり且つL
2a=0μmである。
【0087】
L1bは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。すなわち、L1bが上記範囲よりも小さいと、透過水分は、外部(デバイスとは反対側)方向へ移動しづらくなり、第1の水分トラップ層中に堰き止められ、第1の水分トラップ層とデバイス内部側との水分濃度勾配が小さくなり、デバイス内部からの水分透過が少なくなってしまい、結果として、第1の水分トラップ層のパフォーマンスが低下してしまうことになるからである。
【0088】
また、L1bは、好ましくは45μm以下、より好ましくは40μm以下である。すなわち、L1bが上記範囲よりも大きいと、透過水分をデバイス外部方向へ移動させることで第1の水分トラップ層のパフォーマンスの低下を防ぐという効果よりも、L1bを構成する層の端面からの水分流入の影響が大きくなり、短期間で水分トラップ性能が消失してしまうからである。
【0089】
L1a、L2aおよびL1bの値は、上述した水分透過性有機層等の厚みを調整することで、所望の値に調整することができる。
【0090】
<粘着剤>
一般的に、本発明の水分バリア積層体は、デバイス等に粘着剤を用いて貼り付けることが、保管、搬送時等における剥離等の不都合を確実に防止する上で好適である。
【0091】
このような粘着剤を用いる場合、デバイス等と水分透過性下地プラスチック層との間に粘着剤層が形成されるが、この粘着剤層(
図1では示されていない)は、吸湿性を阻害するものであってはならず、従って、この粘着剤層は、水分透過性下地プラスチック層よりも水分透過率が高く、例えば40℃、90%RHでの水分透過率が40g/m
2・day以上、特に60g/m
2・day以上であることが必要である。
【0092】
上記の粘着剤としては、(メタ)アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤等の公知の粘着剤を使用することができ、これらの粘着剤により上記のような水分透過率が確保されるように一定厚み以下(例えば、30μm以下)の粘着剤層を形成すればよい。
また、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、軟質ポリオレフィン(LLDPE)、メタロセンポリオレフィン系エラストマー等も粘着剤として使用することもできる。
【0093】
<用途>
このような本発明の水分バリア性多層構造体は、各種のデバイス、例えば有機EL素子、太陽電池、電子ペーパーなどの電子回路を封止するためのフィルムとして好適に使用することができ、前述した水分透過性下地プラスチック層がデバイス内部側(低湿度雰囲気側)となるように、各種デバイスに装着し、優れた水分バリア性を発揮し、水分による電荷のリーク等を有効に回避することができ、例えば、有機ELの発光素子や太陽電池の光発電素子の保護にも使用することができる。
【実施例】
【0094】
本発明の水分バリア性多層構造体の優れた性能を、以下の実験例により説明する。
【0095】
初期水蒸気透過度(g/m2/day)の測定;
水分バリア性多層構造体を、高感度水蒸気透過度測定装置(technolox社製「デルタパーム」)を用い、85℃85%RH相当の水蒸気による圧力をサンプルの両側で形成して、水蒸気透過率を測定した。
【0096】
トラップ性能の維持;
上記の85℃85%の雰囲気環境での水蒸気透過率の測定値の変化により、トラップ性能が失活するまでの時間(水蒸気透過率が初期値から一桁悪くなるまでの時間)を算出し、水分トラップ性能を評価した。この時間が短いほど、水分トラップ性能が短時間で焼失し、長いほど、長時間にわたって水分トラップ性能が発揮される。
×:トラップ性能が失活するまでの時間が50時間未満である。
〇:トラップ性能が失活するまでの時間が50時間以上200時間未満である。
◎:トラップ性能が失活するまでの時間が200時間以上である。
【0097】
封止樹脂からの水分除去効果;
ガラス板(5cm×5cm、厚さ:0.7mm)に、真空蒸着装置(日本電子株式会社製、JEE-400)を用いて、真空蒸着により300nmの厚みのCa薄膜(水腐食性金属の薄膜)を形成することで試料片を作製し、大気に暴露されないようグローブボックスへと移した。
尚、Ca薄膜は、金属カルシウムを蒸着源として使用し、所定のマスクを介しての真空蒸着により、1cm角の正方形部分を1箇所形成した。
グローブボックス内にて、上記のようにして形成された試料片上に、封止樹脂として市販のアクリル系PSA(厚さ30μm)を用いて水分バリア性積層体のデバイス側面と貼り合わせた。
このようにして作製された評価用ユニットを、85℃0%に雰囲気調整された恒温恒湿槽に保管した後、封止樹脂からの残留水分放湿によるCa薄膜の腐食状態を、レーザー顕微鏡(Carl Zeiss社製レーザスキャン顕微鏡)を用いて観察し、封止樹脂からの水分除去効果を、以下の基準で評価した。
×:50時間以内にカルシウム薄膜の腐食が見られる(水分除去効果無し)。
△:50~200時間でカルシウム薄膜の腐食が生じる
〇:200時間経過してもカルシウム薄膜の腐食が生じない。
【0098】
無機バリア層被覆ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの作製;
厚み50μmの2軸延伸PETフィルムの片面に、プラズマCVD装置を用いて、酸化ケイ素の無機バリア層を形成した。以下に、製膜条件を示す。
周波数27.12MHz、最大出力2kWの高周波出力電源、マッチングボックス、直径300mm、高さ450mmの金属型円筒形プラズマ処理室、処理室を真空にする油回転真空式ポンプを有するCVD装置を用いた。処理室内の並行平板にプラスチック基材を設置し、ヘキサメチルジシロキサンを3sccm、酸素を45sccm導入後、高周波発振器により50Wの出力で高周波を発振させ、2秒間の製膜を行い、密着層を形成した。次に、高周波発振器により200Wの出力で高周波を発振させ、50秒間の製膜を行い、酸化ケイ素の無機バリア層を形成し、無機バリア層被覆PETフィルムA1を得た。得られた上記無機バリア層被覆PETフィルムA1は、40℃90%RH雰囲気下で測定した水蒸気透過率が、2×10-2g/m2/dayであった。
【0099】
<実施例1>
イオン性ポリマーとしてポリアリルアミン(ニットーボーメディカル社製、PAA-15C、水溶液品、固形分15%)を、固形分5質量%になるように水で希釈し、ポリマー溶液を得た。一方、架橋剤として、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用い、5質量%になるように水に溶かして架橋剤溶液を調製した。次いで、ポリアリルアミン100質量部に対してγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが15質量部になるように、ポリマー溶液と架橋剤溶液とを混合し、さらに、この混合溶液に、吸湿剤として、ポリアクリル酸Naの架橋物(東洋紡製、タフチックHU-820E、水分散品、固形分13%)を、ポリアリルアミンに対して400質量部になるように加え、更に固形分が5%になるよう水で調整した上で良く撹拌し、水分トラップ層用のコーティング液Aを調製した。
【0100】
前記で得られたコーティング液Aを、バーコーターにより、上記無機バリア層被覆PETフィルムA1の、無機バリア層が成膜されていない側に塗布した。塗布後の上記フィルムをボックス型の電気オーブンにより、ピーク温度120℃、ピーク温度保持時間10秒の条件で熱処理し、厚み3μmの水分トラップ層を形成し、コーティングフィルムB1を得た。同様に、前記コーティング液Aを、上記無機バリア層被覆PETフィルムA1の、無機バリア層が成膜されている側に塗布および熱処理を行い、水分トラップ層が形成されたコーティングフィルムB2を得た。
【0101】
次いで、窒素濃度99.95%以上に調整したグローブボックス内にて、前記コーティングフィルムB1の、水分トラップ層が形成された面に、厚さ1.8μmのウレタン系接着剤を介して、前記無機バリア層被覆PETフィルムA1の無機バリア層が形成された面をドライラミネートし、ラミネートフィルムC1を得た。更に、ラミネートフィルムC1の、コーティングフィルムB1面側に、厚さ1.8μmのウレタン系接着剤を介して、前記コーティングフィルムB2の、水分トラップ層が形成された面をドライラミネートし、
図1に示した水分バリア積層体1を得た。
【0102】
<実施例2>
窒素濃度99.95%以上に調整したグローブボックス内にて、前記コーティングフィルムB2の、水分トラップ層が形成された面に、厚さ1.8μmのウレタン系接着剤を介して、前記無機バリア層被覆PETフィルムA1の無機バリア層が形成されていない面をドライラミネートし、ラミネートフィルムC2を得た。更に、ラミネートフィルムC2の、無機バリア層被覆PETフィルム面側に、厚さ1.8μmのウレタン系接着剤を介して、前記コーティングフィルムB2の、水分トラップ層が形成された面をドライラミネートし、
図2に示した水分バリア積層体2を得た。
【0103】
<実施例3>
主材樹脂(荒川化学社製、DA105)と硬化剤(荒川化学社製、CL100A)を、重量比5:2となるように配合し、2―ブタノンで固形分が35質量%になるように調整して、有機層用のコーティング液Dを調整した。
上記コーティング液Dを、前記コーティングフィルムB2の、水分トラップ層が形成された面に、バーコーターにより塗布した。塗布後の上記フィルムをボックス型の電気オーブンにより、ピーク温度150℃、ピーク温度保持時間2分の条件で熱処理し、厚み4μmの平滑化層を形成した。次いで、平滑化層の上に、A1と同様の条件で酸化ケイ素からなる第2の無機バリア層を形成した。さらに、第2の無機バリア層上に、上記と同様の条件で第2の水分トラップ層と平滑化層と第3無機バリア層をこの順で形成し、
図3に示した水分バリア積層体3を得た。
【0104】
<実施例4>
実施例1において、無機バリア層被覆PETフィルムA1の代わりに市販のPVD法により形成された蒸着PETフィルム(凸版印刷社製、GL-RD、水蒸気透過度0.15g/m2/day)を使用する以外は、実施例1と同様の方法で、水分バリア積層体4を得た。
【0105】
<実施例5>
実施例1において、水分トラップ層としてコーティング液Aをバーコーターで塗工する代わりに、吸湿材の酸化カルシウム含有LLDPEマスターバッチ(近江化学工業株式会社製、Bell―CML)と、マトリックス樹脂層のLDPE(住友化学株式会社製、スミカセン)を樹脂成分75質量部に対して吸湿機能成分(ここでは酸化カルシウム)が25質量部になるよう混合し、押出機で無機バリア層被覆PETフィルムA1上に10μmの厚みで押し出しラミネートする以外は、実施例1と同様の方法で、水分バリア積層体5を得た。
【0106】
<実施例6>
市販のPVD法により形成された蒸着PETフィルム(凸版印刷社製、GX-P-F、アルミニウム酸化物の無機バリア層)2枚を、水分バリア層と基材PET面を、厚さ1.8μmのウレタン系接着剤によってドライラミネートをし、無機バリア層フィルムE1を作成した。次いで、前記水分バリアフィルム積層体E1の基材PET面と市販のPVD法により形成された蒸着PETフィルムのPET面を、厚さ1.8μmのウレタン系接着剤によってドライラミネートをし、無機バリア層フィルムE2を作成した。
【0107】
実施例3と同様の方法で、無機バリア層フィルムE2の両面に、コーティング液Aを塗工して水分トラップ層を形成し、次いでコーティング液Dを塗工して厚さ1μmの平滑層を順次形成し、コーティングフィルムF1を作成した。
【0108】
窒素濃度99.95%以上に調整したグローブボックス内にて、前記コーティングフィルムF1の一方の面に、厚さ1.8μmのウレタン系接着剤を介して、前記無機バリア層フィルムE1の、無機バリア層が形成されている面をドライラミネートし、ラミネートフィルムG1を作成した。次いで、前記コーティングフィルムF1の一方の面に、厚さ1.8μmのウレタン系接着剤を介して、前記無機バリア層フィルムE1の、無機バリア層が形成されていない面をドライラミネートし、ラミネートフィルムG2を作成した。更に、作成したラミネートフィルムG1の、水分トラップ層および平滑層が形成された面と、ラミネートフィルムG2の、水分トラップ層および平滑層が形成されていない面同士を前述の接着剤でドライラミネートし、水分バリア積層体6を得た。
【0109】
<実施例7>
実施例6において、無機バリア層フィルムE2と水分トラップ層の間に主材樹脂(荒川化学社製、DA105)と硬化剤(三井化学、D110N)を4:1で配合したコーティング液Hを塗工して、厚さ1μmのアンカー層を設ける以外は、実施例6と同様の方法で、水分バリア積層体7を作成した。
【0110】
<実施例8>
実施例7において、前記コーティングフィルムF1の一方の面に、厚さ1.8μmのウレタン系接着剤を介して、前記無機バリア層フィルムE1の代わりに、前記蒸着PETフィルム1枚の無機バリア層が形成されていない面をドライラミネートする以外は、実施例7と同様の方法で、水分バリア積層体8を作成した。
【0111】
<比較例1>
窒素濃度99.95%以上に調整したグローブボックス内にて、前記コーティングフィルムB2の、水分トラップ層が形成された面に、厚さ1.8μmのウレタン系接着剤を介して、前記無機バリア層被覆PETフィルムA1の無機バリア層が形成された面をドライラミネートし、ラミネートフィルムC2を得た。更に、ラミネートフィルムC2の、コーティングフィルムB2面側に、厚さ1.8μmのウレタン系接着剤を介して、前記コーティングフィルムB2の、水分トラップ層が形成された面をドライラミネートし、
図4に示した水分バリア積層体8を得た。水分バリア積層体8は、
図4に示した通り、L
1b=0となる。
【0112】
<比較例2>
窒素濃度99.95%以上に調整したグローブボックス内にて、前記コーティングフィルムB1の、水分トラップ層が形成された面に、厚さ1.8μmのウレタン系接着剤を介して、前記無機バリア層被覆PETフィルムA1の無機バリア層が形成された面をドライラミネートし、水分バリア積層体9を得た。
【0113】
<比較例3>
窒素濃度99.95%以上に調整したグローブボックス内にて、前記コーティングフィルムB2の、水分トラップ層が形成された面に、厚さ1.8μmのウレタン系接着剤を介して、前記コーティングフィルムB1の、水分トラップ層が形成されていない面をドライラミネートし、ラミネートフィルムC3を得た。更に、ラミネートフィルムC3の、コーティングフィルムB2面側に、厚さ1.8μmのウレタン系接着剤を介して、前記コーティングフィルムB2の、水分トラップ層が形成された面をドライラミネートし、
図4に示した水分バリア積層体8を得た。
【0114】
<評価試験>
上記で作製された試料のラミネート積層体について、前述した方法で各種特性を測定し、その結果を、表1に示した。また、対照実験として、バリアフィルムの代わりにガラス板を用いて同様の評価を実施した。
【0115】
【符号の説明】
【0116】
1:水分バリア性多層構造体
11:下地プラスチック層
13:第1の無機バリア層
21:水分透過性有機層(接着剤層)
31:第1の水分トラップ層
33:水分透過性有機層(下地プラスチック層)
35:第2の無機バリア層
41:水分透過性有機層(接着剤層)
51:第2の水分トラップ層
53:第3の無機バリア層
55:水分透過性有機層(下地プラスチック層)