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特許7524901通信制御装置および方法、無線通信装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】通信制御装置および方法、無線通信装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/04 20090101AFI20240723BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20240723BHJP
   H04W 92/20 20090101ALI20240723BHJP
   H04W 28/16 20090101ALI20240723BHJP
【FI】
H04W28/04 110
H04W16/28 150
H04W92/20
H04W28/16
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021532754
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2020025166
(87)【国際公開番号】W WO2021010132
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2019129873
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】平田 龍一
(72)【発明者】
【氏名】相尾 浩介
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/049484(WO,A1)
【文献】Kiseon Ryu (LG Electronics),Consideration on multi-AP coordination for EHT,IEEE 802.11-18/1982r1,IEEE,2019年01月09日,[検索日 2024.03.22],インターネット:<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/18/11-18-1982-01-0eht-consideration-on-multi-ap-coordination-for-eht.pptx>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の無線通信装置および第2の無線通信装置と通信する通信部と、
前記第1の無線通信装置および前記第2の無線通信装置による無線通信端末への協調送信の送信結果の送信方法が設定された応答設定情報を、前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置に送信する制御を行う制御部と
を備え
前記制御部は、前記応答設定情報を含み、前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置が前記無線通信端末への前記協調送信を行うように制御する第1の協調送信開始信号を送信する制御を行い、前記応答設定情報に基づいて前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置から送信された、前記無線通信端末から送信された受領確認信号に関する情報を含み、前記協調送信の前記送信結果を示す送信結果応答信号を受信する制御を行い、前記送信結果応答信号に基づいて、前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置に対し、第2の協調送信開始信号を送信するか否かを判定する制御を行い、前記送信結果応答信号に基づいて、前記第2の協調送信開始信号を送信しないと判定した場合、前記協調送信の終了を示す協調送信終了信号を送信する制御を行う
通信制御装置
【請求項2】
前記送信結果応答信号に基づいて、前記第2の協調送信開始信号を送信すると判定した場合、前記制御部は、前記第2の協調送信開始信号が、前記協調送信の終了を示す協調送信終了信号を含むよう生成し、送信する制御を行う
請求項に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記送信結果応答信号に基づいて、前記第2の協調送信開始信号を送信すると判定した場合、前記協調送信の再送を行うように制御する前記第2の協調送信開始信号を送信する制御を行う
請求項に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記送信結果応答信号の送信方法を示す前記応答設定情報を送信する制御を行う
請求項に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記送信結果応答信号が前記第1の無線通信装置または前記第2の無線通信装置のバッファに保持されているデータに関するバッファ情報を含む場合、前記第2の協調送信開始信号を送信すると判定したとき、前記送信結果応答信号に基づいて、前記バッファに保持されている前記データの中から再度送信する再送データを示す情報を含む第2の協調送信開始信号を生成する制御を行う
請求項に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記送信結果応答信号を要求する送信結果要求信号を送信する制御を行い、
前記送信結果要求信号に基づいて前記第1の無線通信装置および前記第2の無線通信装置から送信された、前記送信結果応答信号を受信する制御を行う
請求項に記載の通信制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記送信結果応答信号を要求することを示す情報、前記協調送信に対する前記送信結果応答信号の送信方法を示す情報、または応答に利用する無線資源のうち、少なくとも一つを含む前記送信結果要求信号を送信する制御を行う
請求項に記載の通信制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1の無線通信装置および前記第2の無線通信装置が前記送信結果応答信号の送信に利用する無線資源を含む前記応答設定情報を送信する制御を行う
請求項記載の通信制御装置。
【請求項9】
通信制御装置が、
第1の無線通信装置および第2の無線通信装置と通信し、
前記第1の無線通信装置および前記第2の無線通信装置による無線通信端末への協調送信の送信結果の送信方法が設定された応答設定情報を含み前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置が前記無線通信端末への前記協調送信を行うように制御する第1の協調送信開始信号を前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置に送信する制御を行い、
前記応答設定情報に基づいて前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置から送信された、前記無線通信端末から送信された受領確認信号に関する情報を含み、前記協調送信の前記送信結果を示す送信結果応答信号を受信する制御を行い、
前記送信結果応答信号に基づいて、前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置に対し、第2の協調送信開始信号を送信するか否かを判定する制御を行い、
前記送信結果応答信号に基づいて、前記第2の協調送信開始信号を送信しないと判定した場合、前記協調送信の終了を示す協調送信終了信号を送信する制御を行う
通信制御方法。
【請求項10】
通信制御装置および他の無線通信装置と通信する通信部と、
前記通信制御装置が協調送信を行うように制御する協調送信開始信号を受信する制御と、前記協調送信開始信号に基づき無線通信端末へ前記他の無線通信装置と前記協調送信を行う制御と、前記協調送信に対する前記無線通信端末の受領確認信号に関する情報を含む送信結果応答信号を前記通信制御装置へ送信する制御を行う制御部と
を備え
前記制御部は、前記送信結果応答信号に基づいて前記通信制御装置から送信された、前記協調送信の終了を示す協調送信終了信号を受信する制御を行い、前記協調送信終了信号に基づいて前記協調送信の再送を行わないように制御する
無線通信装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記通信制御装置より前記送信結果応答信号の送信方法に関する応答設定情報を受信する制御を行い、前記応答設定情報に基づいて、前記送信結果応答信号を前記通信制御装置に送信する制御を行う
請求項10に記載の無線通信装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記通信制御装置より送信結果要求信号を受信する制御を行い、
前記送信結果要求信号に基づいて、前記送信結果応答信号を前記通信制御装置に送信する制御を行う
請求項10に記載の無線通信装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記無線通信端末より前記受領確認信号を受信しなかった場合、前記協調送信が失敗したことを示す前記送信結果応答信号を、前記通信制御装置へ送信する制御を行う
請求項10に記載の無線通信装置。
【請求項14】
前記制御部は、バッファに保持しているデータに関するバッファ情報を含む前記送信結果応答信号を送信する制御を行う
請求項10に記載の無線通信装置。
【請求項15】
無線通信装置が
通信制御装置および他の無線通信装置と通信し、
前記通信制御装置が協調送信を行うように制御する協調送信開始信号を受信する制御と、前記協調送信開始信号に基づき無線通信端末へ前記他の無線通信装置と前記協調送信を行う制御と、前記協調送信に対する前記無線通信端末の受領確認信号に関する情報を含む送信結果応答信号を前記通信制御装置へ送信する制御を行い、前記送信結果応答信号に基づいて前記通信制御装置から送信された、前記協調送信の終了を示す協調送信終了信号を受信する制御を行い、前記協調送信終了信号に基づいて前記協調送信の再送を行わないように制御する
無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、通信制御装置および方法、無線通信装置および方法関し、特に、再送の必要がないデータが再送されることを防ぐことができるようにした通信制御装置および方法、無線通信装置および方法関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スタジアムなどの公共施設のみならず、家庭内においてもアクセスポイント(以下、APと称する)が緻密に配置されることが増えている。このため、AP同士で協調し、システムスループットや信頼性を向上させる技術が注目を集めている。
【0003】
AP間で協調する際には、AP同士を管理するAP(Master AP)が存在する場合がある。AP間協調技術の1つに、複数のAPから1台の端末(STA)に同時送信を行うJoint Transmissionがある。
【0004】
Master APからの指示により、AP1およびAP2が協調送信を行う際、AP1とAP2とが協調してSTAに対してデータの送信を行う。そして、データを受信したSTAは、データの確認応答であるACKを送信する。なお、特許文献1には、ACKに基づいて変調符号化方式を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-119232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
STAから送信されたACKは、AP2のみで受信が完了する。AP1がACKの受信に失敗した場合、STAでデータの受信に成功し、ACKが送信されているのにもかかわらず、AP1は、データの再送を試みてしまう恐れがある。
【0007】
本技術はこのような状況に鑑みてなされたものであり、再送の必要がないデータが再送されることを防ぐことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術の第1の側面の通信制御装置は、第1の無線通信装置および第2の無線通信装置と通信する通信部と、前記第1の無線通信装置および前記第2の無線通信装置による無線通信端末への協調送信の送信結果の送信方法が設定された応答設定情報を、前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置に送信する制御を行う制御部とを備え、前記制御部は、前記応答設定情報を含み、前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置が前記無線通信端末への前記協調送信を行うように制御する第1の協調送信開始信号を送信する制御を行い、前記応答設定情報に基づいて前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置から送信された、前記無線通信端末から送信された受領確認信号に関する情報を含み、前記協調送信の前記送信結果を示す送信結果応答信号を受信する制御を行い、前記送信結果応答信号に基づいて、前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置に対し、第2の協調送信開始信号を送信するか否かを判定する制御を行い、前記送信結果応答信号に基づいて、前記第2の協調送信開始信号を送信しないと判定した場合、前記協調送信の終了を示す協調送信終了信号を送信する制御を行う
【0009】
本技術の第2の側面の無線通信装置は、通信制御装置および他の無線通信装置と通信する通信部と、前記通信制御装置が協調送信を行うように制御する協調送信開始信号を受信する制御と、前記協調送信開始信号に基づき無線通信端末へ前記他の無線通信装置と前記協調送信を行う制御と、前記協調送信に対する前記無線通信端末の受領確認信号に関する情報を含む送信結果応答信号を前記通信制御装置へ送信する制御を行う制御部とを備え、前記制御部は、前記送信結果応答信号に基づいて前記通信制御装置から送信された、前記協調送信の終了を示す協調送信終了信号を受信する制御を行い、前記協調送信終了信号に基づいて前記協調送信の再送を行わないように制御する
【0011】
本技術の第1の側面においては、第1の無線通信装置および第2の無線通信装置と通信され、前記第1の無線通信装置および前記第2の無線通信装置による無線通信端末への協調送信の送信結果の送信方法が設定された応答設定情報を含み前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置が前記無線通信端末への前記協調送信を行うように制御する第1の協調送信開始信号を前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置に送信する制御が行われ、前記応答設定情報に基づいて前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置から送信された、前記無線通信端末から送信された受領確認信号に関する情報を含み、前記協調送信の前記送信結果を示す送信結果応答信号を受信する制御が行われ、前記送信結果応答信号に基づいて、前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置に対し、第2の協調送信開始信号を送信するか否かを判定する制御が行われ、前記送信結果応答信号に基づいて、前記第2の協調送信開始信号を送信しないと判定した場合、前記協調送信の終了を示す協調送信終了信号を送信する制御が行われる。
【0012】
本技術の第2の側面においては、通信制御装置および他の無線通信装置と通信され、前記通信制御装置が協調送信を行うように制御する協調送信開始信号を受信する制御と、前記協調送信開始信号に基づき無線通信端末へ前記他の無線通信装置と前記協調送信を行う制御と、前記協調送信に対する前記無線通信端末の受領確認信号に関する情報を含む送信結果応答信号を前記通信制御装置へ送信する制御と、前記送信結果応答信号に基づいて前記通信制御装置から送信された、前記協調送信の終了を示す協調送信終了信号を受信する制御とが行われ、前記協調送信終了信号に基づいて前記協調送信の再送を行わないように制御が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本技術の通信システムの構成例を示す図である。
図2】無線通信装置の構成例を示すブロック図である。
図3】本技術の協調送信のシーケンスを示す図である。
図4】Joint Tx Trigger フレームのフォーマット例を示す図である。
図5】Joint Tx Response フレームのフォーマット例を示す図である。
図6】本技術の協調送信の他のシーケンスを示す図である。
図7】Joint Tx Response Requestフレームのフォーマット例を示す図である。
図8】Joint Tx Endフレームのフォーマット例を示す図である。
図9】Master APの協調送信処理について説明するフローチャートである。
図10】APの協調送信処理について説明するフローチャートである。
図11】第2の実施の形態の場合のJoint Tx Responseフレームのフォーマット例を示す図である。
図12】本技術の協調送信の他のシーケンスを示す図である。
図13】コンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術を実施するための形態について説明する。説明は以下の順序で行う。
0.システムおよび装置の構成例
1.第1の実施の形態(Block Ackに関する情報の送信の例)
2.第2の実施の形態(バッファ量も送信の例)
3.第3の実施の形態(STAによる送信の誘起の例)
4.第4の実施の形態(コンピュータ)
【0016】
<0.システムおよび装置の構成例>
<通信システムの構成例>
図1は、本技術の実施の形態に係る通信システムの構成例を示す図である。
【0017】
図1の通信システムは、アクセスポイント(以下、APと称する)1およびAP2と、Master APとが、有線通信または無線通信により接続されることによって構成される。また、通信システムは、AP1およびAP2と、無線通信端末であるSTAとが、無線通信により接続されることによって構成される。
【0018】
AP1およびAP2は、STAに対して、協調してデータ送信を行う無線通信装置11-1および11-2で構成される。STAは、APが管理するネットワークに属する無線通信端末12で構成される。Master APは、複数のAPの通信制御を行う通信制御装置13で構成される。無線通信装置11-1および11-2は、特に区別する必要がない場合、無線通信装置11と称する。
【0019】
なお、図1における、無線通信装置の数や位置関係については一例であり、図1の記載に限定されない。
【0020】
<無線通信装置の構成例>
図2は、無線通信装置の構成例を示すブロック図である。
【0021】
図2に示す無線通信装置11は、APとして動作する装置である。
【0022】
無線通信装置11は、制御部31、電源部32、通信部33、およびメモリ部35から構成される。通信部33は、2つ以上で構成されてもよい。制御部31および通信部33は、1つ以上のLSIとして構成されてもよい。
【0023】
通信部33は、データの送信および受信を行う。通信部33は、メモリ部50、データ処理部51、無線制御部52、変復調部53、信号処理部54、チャネル推定部55、無線インタフェース(I/F)部56-1乃至56-N、およびアンプ部57-1乃至57-Nから構成される。通信部33は、独立した構成要素であってもよく、通信部33の一部の構成要素が共通化された構成要素であってもよい。例えば、メモリ部50、データ処理部51、無線制御部52、変復調部53が共通化されていてもよい。
【0024】
無線I/F部56-1乃至56-N、アンプ部57-1乃至57-N、およびアンテナ58-1乃至58-Nは、同じ枝番を有するそれぞれを1組とし、各組が1つの構成要素となってもよい。また、アンプ部57-1乃至57-Nは、無線I/F部56-1乃至56-Nにその機能が内包されてもよい。
【0025】
なお、以下、通信部33-1乃至33-3は、区別する必要がない場合、単に通信部33と適宜称する。また、無線I/F部56-1乃至56-N、アンプ部57-1乃至57-N、およびアンテナ58-1乃至58-Nは、区別する必要がない場合、単に無線I/F部56、アンプ部57、およびアンテナ58と適宜称する。
【0026】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などにより構成される。制御部31は、ROMなどに記憶されているプログラムを実行し、電源部32および各通信部33の無線制御部52の制御を行う。
【0027】
電源部32は、バッテリー電源または固定電源で構成され、無線通信装置11の全体に対して電力を供給する。
【0028】
メモリ部50は、上位層から入力されたデータを保持し、データ処理部51へと出力する。また、メモリ部50は、データ処理部51から供給されるデータを保持し、上位層へと出力する。メモリ部50の一部は、メモリ部35として、通信部33外の無線通信装置11に配置される。
【0029】
データ処理部51は、送信時、メモリ部50から供給されるデータを用いて無線送信のためのパケットを生成する。データ処理部51は、生成したパケットに対して、メディアアクセス制御(MAC : Media Access Control)のためのヘッダの付加や誤り検出符号の付加などの処理を行い、処理後のデータを変復調部53に出力する。
【0030】
データ処理部51は、受信時、変復調部53から供給されるデータに対して、MACヘッダの解析、パケット誤りの検出、リオーダ処理などを行い、処理後のデータをメモリ部50に出力する。
【0031】
無線制御部52は、無線通信装置11の各部の間の情報の受け渡しを行い、通信部33内の各部を制御する。無線制御部52は、送信制御部61と受信制御部62とからなる。
【0032】
送信制御部61は、送信時、必要に応じて、変復調部53および信号処理部54におけるパラメータ設定、データ処理部51におけるパケットのスケジューリング、無線I/F部56、およびアンプ部57のパラメータ設定や送信電力制御を行う。受信制御部62は、受信時、必要に応じて、変復調部53および信号処理部54におけるパラメータ設定、無線I/F部56、およびアンプ部57のパラメータ設定を行う。
【0033】
また、特に、送信制御部61は、Master APから受信された協調送信の開始を示す協調送信開始信号に基づいて、他のAPとデータの協調送信を行う。協調送信開始信号には、協調送信の送信結果の送信方法が設定された応答設定情報が含まれる。
【0034】
送信制御部61は、STAから受信されたデータの受領を示すBlock Ackである受領確認信号に基づいて、協調送信の送信結果を判定する。送信制御部61は、受領確認信号に関する情報を含み、判定した送信結果を示す送信結果応答信号を生成する。送信制御部61は、協調送信開始信号に含まれる応答設定情報に基づいて、送信結果応答信号を送信するように各部を制御する。
【0035】
受信制御部62は、Master APから送信されてくる協調送信開始信号を受信するように各部を制御する。受信制御部62は、STAから送信されてくる受領確認信号を受信するように各部を制御する。受信制御部62は、Master APから送信されてくる協調送信の終了を示す協調送信終了信号を受信するように各部を制御する。
【0036】
なお、これらの無線制御部52の少なくとも一部の動作は、無線制御部52の代わりに制御部31により行われるようにしてもよい。また、制御部31および無線制御部52は、1つのブロックとして構成されてもよい。
【0037】
変復調部53は、送信時、データ処理部51から供給されるデータに対し、制御部31によって設定された符号化方式および変調方式に基づいて、符号化、インターリーブ、および変調を行い、データシンボルストリームを生成する。変復調部53は、生成したデータシンボルストリームを信号処理部54に出力する。
【0038】
変復調部53は、受信時、信号処理部54から供給されるデータシンボルストリームに対して、復調、デインターリーブ、および復号を行った結果のデータを、データ処理部51または無線制御部52に出力する。
【0039】
信号処理部54は、送信時、必要に応じて、変復調部53から供給されるデータシンボルストリームに対して、空間分離に供される信号処理を行い、信号処理の結果得られる1つ以上の送信シンボルストリームをそれぞれの無線I/F部56に出力する。
【0040】
信号処理部54は、受信時、それぞれの無線I/F部56から供給される受信シンボルストリームに対して信号処理を行い、必要に応じてストリームの空間分離を行い、空間分離の結果得られるデータシンボルストリームを変復調部53に出力する。
【0041】
チャネル推定部55は、それぞれの無線I/F部56から供給される受信シンボルストリームのうち、プリアンブル部分およびトレーニング信号部分から伝搬路の複素チャネル利得情報を算出する。複素チャネル利得情報は、無線制御部52を介して、変復調部53と信号処理部54に供給され、変復調部53における復調処理および信号処理部54における空間分離処理に用いられる。
【0042】
無線I/F部56は、送信時、信号処理部54からの送信シンボルストリームをアナログ信号に変換し、フィルタリング、搬送波周波数へのアップコンバート、および位相制御を行い、位相制御の後のアナログ信号をアンプ部57に出力する。
【0043】
無線I/F部56は、受信時、アンプ部57から供給されるアナログ信号に対して、位相制御、ダウンコンバード、逆フィルタリングを行い、デジタル信号に変換した結果の受信シンボルストリームを信号処理部54およびチャネル推定部55に出力する。
【0044】
アンプ部57は、送信時、無線I/F部56から供給されるアナログ信号を所定の電力まで増幅し、電力を増幅したアナログ信号をアンテナ58に出力する。アンプ部57は、受信時、アンテナ58から供給されるアナログ信号を所定の電力まで増幅し、電力を増幅したアナログ信号を無線I/F部56に出力する。
【0045】
アンプ部57は、送信時の機能と受信時の機能との少なくともどちらか一方の、少なくとも一部が無線I/F部56に内包されていてもよい。また、アンプ部57の少なくともどちらか一方の機能の少なくとも一部が通信部33外の構成要素となってもよい。
【0046】
なお、STAとして動作する無線通信端末12の構成も、無線通信装置11と基本的に同様の構成であるため、以降、無線通信端末12の説明に、無線通信装置11の構成が用いられる。
【0047】
この場合、送信制御部61は、データの受領確認信号を、AP1およびAP2に送信する制御を行う。受信制御部62は、AP1およびAP2から協調送信されるデータを受信するように各部を制御する。
【0048】
また、Master APとして動作する通信制御装置13の構成も、無線通信装置11と基本的に同様の構成であるため、以降、通信制御装置13の説明に、無線通信装置11の構成が用いられる。
【0049】
この場合、送信制御部61は、AP1およびAP2に、協調送信開始信号を送信する制御を行う。送信制御部61は、AP1およびAP2から受信された送信結果応答信号に基づいて、協調送信が完了したか否かを判定する。送信制御部61は、協調送信が完了した場合、協調送信終了信号をAP1およびAP2に送信する制御を行う。なお、送信制御部61は、協調送信が完了していない場合、協調送信の再送データの協調送信開始信号を送信する制御を行う。
【0050】
受信制御部62は、AP1およびAP2から送信されてくる送信結果応答信号を受信する制御を行う。
【0051】
<1.第1の実施の形態(Block Ackに関する情報の送信の例)>
まず、第1の実施の形態として、各APがMaster APに対し、Block Ackに関する情報を含む送信結果応答信号を送信する例について説明する。
【0052】
<本技術の協調送信のシーケンス例>
図3は、本技術の協調送信の一連の動作について説明するシーケンスを示す図である。
【0053】
なお、Master AP,AP1,AP2,STAは、互いに、本技術の動作に対応しているか否かを事前に確認しておいてもよい。
【0054】
時刻t1において、Master APは、Joint Tx TriggerフレームをAP1およびAP2に送信する。Joint Tx Triggerフレームは、協調送信開始信号である。本技術において、Joint Tx Triggerフレームには、ACK Scheme情報が記載されている。ACK Scheme情報は、協調送信に対する応答設定情報である。
【0055】
時刻t2において、AP1およびAP2は、Joint Tx Triggerフレームに記載された情報に基づいて、STAに対して協調してデータを送信する。このとき、AP1およびAP2が送信するデータは、図3のように同一のデータを送信してもよいし、異なるデータを送信してもよい。
【0056】
AP1およびAP2からのデータを受信したSTAは、時刻t3において、データの受領確認信号であるBlock Ackを、AP1およびAP2に送信する。
【0057】
所定の時間内にSTAからのBlock Ackを受信したAP1とAP2は、時刻t4において、Joint Tx TriggerフレームのACK Scheme情報に基づいて、送信結果応答信号であるJoint Tx ResponseフレームをMaster APに送信する。Joint Tx Response フレームは、Block Ackに関する情報を含み、Block Ackに基づいて判定された送信結果を示す。所定の時間とは、例えば、ACKtimeoutである。
【0058】
AP1およびAP2からJoint Tx Responseフレームを受信したMaster APは、Joint Tx Responseフレームに基づいて、データの再送が必要ないと判定した場合、時刻t5において、協調送信終了信号であるJoint Tx EndフレームをAP1およびAP2に送信する。Joint Tx Endフレームの送信後、図3の協調送信のシーケンスは終了となる。
【0059】
<Joint Tx Trigger フレームのフォーマット例>
図4は、Joint Tx Trigger フレームのフォーマット例を示す図である。
【0060】
図4において、Joint Tx Trigger フレームは、Signal Type、Length、Transmit Data ID、Transmit Scheme、Transmit Resource、Transmit Time、ACK Schemeの各fieldからなる。
【0061】
Signal Typeのfieldには、このフレームが協調送信の要求に関するフレーム(協調送信開始信号)であることを示す情報が含まれる。
【0062】
Lengthのfieldには、このフレームの長さに関する情報が含まれる。
【0063】
Transmit Data IDのfieldには、協調送信の要求の対象となるデータを識別する情報が含まれる。
【0064】
Transmit Schemeのfieldには、協調送信の要求の対象となるデータの送信に用いる通信方式に関する情報が含まれる。
【0065】
Transmit Resourceのfieldには、協調送信の要求の対象となるデータの送信に用いる通信リソースに関する情報が含まれる。
【0066】
Transmit Timeのfieldには、協調送信の要求の対象となるデータの送信タイミングに関する情報が含まれる。
【0067】
ACK Schemeのfieldには、ACK Scheme情報が含まれる。ACK Scheme情報は、上述したように、Master AP,AP1,AP2の間で協調送信の送信結果に関する情報の送信方法が設定された応答設定情報である。
【0068】
ACK Scheme情報は、例えば、STAからのBlock Ackを受信後、Master APに対して送信結果応答信号であるJoint Tx Responseフレームを送信するタイミングを指定する情報である。タイミングとしては、Joint Tx Responseフレームを、すぐに送信するか(Immediate Blok)、または、Joint Tx Responseフレームを要求するJoint Tx Response Requestフレームを受信してから送信するかなどが指定可能である。
【0069】
ACK Scheme情報は、また、Joint Tx Responseフレームを同時に送信するか、時分割で送信するかの情報である。
【0070】
ACK Scheme情報は、さらに、同時に送信する際に、各APが使用する通信リソース情報や時分割で送信する際の各APの送信タイミングに関する情報である。
【0071】
なお、Master APから送信されるJoint Tx Response Requestフレームを受信してから、Joint Tx Responseフレームを送信するよう指示する場合、Joint Tx Responseフレームを送信する通信リソースなどの情報は、Master APからのJoint Tx Response Requestフレームに記載される。
【0072】
<Joint Tx Responseフレームのフォーマット例>
図5は、Joint Tx Responseフレームのフォーマット例を示す図である。
【0073】
図5において、Joint Tx Responseフレームは、Signal Type、Length、BlockACK Informationの各fieldからなる。
【0074】
Signal Typeのfieldには、このフレームがSTAからのBlock Ackに関する情報を含むフレーム(送信結果応答信号)であることを示す情報が含まれる。
【0075】
Lengthのfieldには、このフレームの長さに関する情報が含まれる。
【0076】
BlockACK Informationのfieldには、協調送信したデータのBlock Ackに関する情報が含まれる。STAからのBlock Ackを受信できなかった場合、Block Ackが受信できなかったことを示す情報が記載される。
【0077】
ここで、図3のシーケンスでは、AP1とAP2は、Block Ackを受信後、Master APに対してJoint Tx Responseフレームをすぐに送信する。図3のシーケンスは、図4のJoint Triggerに記載されたACK Scheme情報に、STAからのBlock Ackを受信後、AP1とAP2で同時に異なる通信リソースを用いてJoint Tx Responseフレームをすぐに送信するように指示する情報が記載されている場合が示されたものである。
【0078】
<本技術の協調送信の他のシーケンス例>
図6は、本技術の協調送信の他のシーケンスを示す図である。
【0079】
図6においては、図4のJoint Triggerに記載されたACK Scheme情報にSTAからのBlock Ackを受信後、Master APからのJoint Tx Responseを要求するフレームを受信してから送信するように指示する情報が記載されている場合のシーケンスが示されている。
【0080】
時刻t11において、Master APは、Joint Tx TriggerフレームをAP1およびAP2に送信する。
【0081】
時刻t12において、AP1およびAP2は、Joint Tx Triggerフレームに記載された情報に基づいて、STAに対して協調してデータを送信する。
【0082】
AP1およびAP2からのデータを受信したSTAは、時刻t13において、Block Ackを、AP1およびAP2に送信する。
【0083】
時刻t14において、Master APは、Joint Tx Response RequestフレームをAP1およびAP2に送信する。Joint Tx Response Requestフレームは、Master APが、Block Ackに関する情報を含むJoint Tx Responseフレームを要求するフレームである。
【0084】
Joint Tx Response Requestフレームを受信したAP1とAP2は、時刻t15において、Joint Tx Triggerフレームに記載されたACK Scheme情報に基づいて、Joint Tx ResponseフレームをMaster APに送信する。
【0085】
AP1およびAP2からJoint Tx Responseフレームを受信したMaster APは、Joint Tx Responseフレームに基づいて、データの再送が必要ないと判定した場合、時刻t16において、Joint Tx EndフレームをAP1およびAP2に送信する。Joint Tx Endフレームの送信後、図6の協調送信のシーケンスは終了となる。
【0086】
AP1およびAP2のいずれからもJoint Tx Responseを受信できなかった場合、Master APは、Joint Tx Response Requestを送信し、AP1とAP2にJoint Tx Responseの再送を要求してもよい。その際、前回のJoint Tx Response送信時とは異なる送信方法、異なる通信リソースを指定してもよい。
【0087】
<Joint Tx Response Requestフレームのフォーマット例>
図7は、Joint Tx Response Requestフレームのフォーマット例を示す図である。
【0088】
図7において、Joint Tx Response Requestフレームは、Signal Type、Length、Request Data ID、Transmit Scheme、Transmit Resource、Transmit Timeの各fieldからなる。
【0089】
Signal Typeのfieldには、このフレームがSTAからのJoint Tx Responseフレームの送信を要求するフレーム(送信結果要求信号)であることを示す情報が含まれる。
【0090】
Lengthのfieldには、このフレームの長さに関する情報が含まれる。
【0091】
Request Data IDのfieldには、送信要求の対象となるAckを識別する情報が含まれる。
【0092】
Transmit Schemeのfieldには、送信要求の対象となるResponseの送信に用いる通信方式に関する情報が含まれる。
【0093】
Transmit Resourceのfieldには、送信要求の対象となるResponseの送信に用いる通信リソースに関する情報が含まれる。
【0094】
Transmit Timeのfieldには、送信要求の対象となるResponseの送信のタイミングに関する情報が含まれる。
【0095】
<Joint Tx Endフレームのフォーマット例>
図8は、Joint Tx Endフレームのフォーマット例を示す図である。
【0096】
図8において、Joint Tx Endフレームは、Signal Type、Length、Joint Tx Response Informationの各fieldからなる。
【0097】
Signal Typeのfieldには、このフレームが協調送信を終了するフレーム(協調送信終了信号)であることを示す情報が含まれる。
【0098】
Lengthのfieldには、このフレームの長さに関する情報が含まれる。
【0099】
Joint Tx Response Informationのfieldには、Master APが判定した協調送信の送信結果に関する情報が記載される。AP1,AP2から受信したJoint Tx Responseフレームによりすべてのデータが協調送信により送信成功していると判定された場合、Joint Tx Response Informationを含めず、Signal Type、LengthのみのJoint Tx Endフレームが送信されてもよい。
【0100】
Joint Tx Endフレームを送信することにより、従来で述べたように、AP1がSTAからのBlock Ackの受信に失敗し、AP2のみがSTAからのBlock Ackを受信した場合でもAP1に協調送信の送信結果が通知される。したがって、AP1が、再送が必要だと判定し、データを再送してしまうことを防ぐことができる。また、再送のために、AP1のバッファに残されているデータも削除することができる。
【0101】
AP1およびAP2からJoint Tx Responseフレームを受信したMaster APが、そのBlock Ackに関する情報によりデータの再送が必要だと判定した場合、再送用のJoint Tx Triggerフレームが送信される。その際、Joint Tx End フレームの情報に加え、Joint Tx Triggerフレームの情報を記載したJoint Tx End + Triggerフレームを送信してもよい。なお、すべてのデータを再送する場合、最初に送付したJoint Tx Triggerフレームと再送用のJoint Tx Triggerフレームとは同じであってもよい。
【0102】
一方、再送が必要ではないと判定された場合、Joint Tx Triggerフレームを送信せずに、Joint Tx Endのみが送信される。
【0103】
<Master APの動作例>
図9は、Master APの協調送信処理について説明するフローチャートである。
【0104】
ステップS11において、送信制御部61は、Joint Tx Triggerフレームを送信するように各部を制御する。
【0105】
ステップS12において、送信制御部61は、Joint Tx TriggerのACK Scheme情報において、Immediate Block Ackを指定しているか否かを判定する。Immediate Block Ackを指定していないと、ステップS12において判定された場合、処理は、ステップS13に進む。
【0106】
ステップS13において、送信制御部61は、Joint Tx Response Requestフレームを送信するように各部を制御する。
【0107】
ステップS12において、Immediate Block Ackを指定していると判定された場合、ステップS13をスキップし、処理は、ステップS14に進む。
【0108】
Joint Tx Response Requestフレームを受信したAPは、Joint Tx Responseフレームを送信してくる(後述する図10のステップS55)。
【0109】
ステップS14において、受信制御部62は、Joint Tx Responseフレームを受信したか否かを判定する。Joint Tx Responseフレームを受信していないと、ステップS14において判定された場合、ステップS13に戻り、それ以降の処理が繰り返される。
【0110】
ステップS14において、Joint Tx Responseフレームを受信したと判定された場合、処理は、ステップS15に進む。
【0111】
ステップS15において、送信制御部61は、再送が必要であるか否かを判定する。再送が必要であると、ステップS15において判定された場合、処理は、ステップS16に進む。
【0112】
ステップS16において、送信制御部61は、Joint Tx EndとJoint Tx Triggerとからなるフレームとを送信する。この場合、Joint Tx Triggerは、再送用の協調送信を開始するTriggerである。その後、ステップS12に戻り、それ以降の処理が繰り返される。
【0113】
ステップS15において、送信制御部61は、再送が必要ではないと判定された場合、ステップS17に進む。
【0114】
ステップS17において、送信制御部61は、Joint Tx Endフレームを送信する。Joint Tx Endフレームの送信後、図9の協調送信処理は終了となる。
【0115】
<APの動作例>
図10は、APの協調送信処理について説明するフローチャートである。
【0116】
Master APは、Joint Tx Triggerフレームを送ってくる(図9のステップS11)。ステップS51において、受信制御部62は、Joint Tx Triggerフレームを受信するように各部を制御する。
【0117】
ステップS52において、送信制御部61は、Joint Tx Triggerに基づいて、他のAPと協調して、データを送信するように各部を制御する。
【0118】
ステップS53において、受信制御部62は、Joint Tx TriggerのACK Scheme情報で、Immediate Block Ackが指定されているか否かを判定する。Immediate Block Ackが指定されていないと、ステップS53において判定された場合、処理は、ステップS54に進む。
【0119】
Immediate Block Ackが指定されていない場合、Master APがJoint Tx Response Requestフレームを送信してくる(図9のステップS13)。
【0120】
ステップS54において、受信制御部62は、Master APにより送信されたJoint Tx Response Requestフレームを受信するように各部を制御する。Joint Tx Response Requestフレームの受信後、処理は、ステップS55に進む。
【0121】
また、ステップS53において、Immediate Block Ackが指定されていると判定された場合、ステップS54をスキップし、処理は、ステップS55に進む。
【0122】
ステップS55において、送信制御部61は、Joint Tx Responseフレームを送信するように各部を制御する。
【0123】
その後、Master APは、Joint Tx Responseに基づいて、Joint Tx End フレーム(図9のステップS17)またはJoint Tx EndとTrigger(図9のステップS16)とからなるフレームを送信してくる。
【0124】
ステップS56において、受信制御部62は、Master APから受信したフレームの種類が、Joint Tx Endフレームであるか否かを判定する。Joint Tx Endフレームではないと、ステップS56において判定された場合、再送データがあるので、ステップS52に戻り、それ以降の処理が繰り返される。
【0125】
ステップS56において、Joint Tx Endフレームであると判定された場合、図10のAPの協調送信処理は終了となる。
【0126】
以上のように、第1の実施の形態においては、Master APの制御により複数のAPが協調してデータ送信を行う際、あるAPのみSTAからのACKを受信できなかった場合など、再送の必要のないデータが再送されることを防ぐことができる。
【0127】
<2.第2の実施の形態(バッファ量も送信の例)>
次に、第2の実施の形態として、各APがMaster APに対し、Block Ackに関する情報に加えて、自身のバッファの情報を含む送信結果応答信号を送信する例について説明する。
【0128】
APは、Master APの指示により、図3図6のようにSTAに対して協調してデータ送信を行い、STAからBlock Ackを受信し、Master APにJoint Tx Responseフレームを送信する。第2の実施の形態においては、Master APにJoint Tx Responseフレームを送信する際に、APは、自身のバッファについての情報も記載して送信する。
【0129】
<Joint Tx Responseフレームのフォーマット例>
図11は、第2の実施の形態の場合のJoint Tx Responseフレームのフォーマット例を示す図である。
【0130】
図11において、Joint Tx Response フレームは、Signal Type、Length、BlockAck Information、およびBuffer Informationの各fieldからなる。なお、図5のフォーマット例と同じ部分については、説明を省略する。
【0131】
Buffer Informationのfieldには、APのバッファについての情報が含まれる。バッファについての情報は、例えば、バッファに保持されているデータを示すバッファ情報である。バッファについての情報は、具体的には、BlockAck Information内の情報に対応するデータが自身のバッファ内にまだ存在しているか、すでに破棄されているかの情報である。
【0132】
図11に示されるJoint Tx Responseフレームを受信したMaster APは、AP1,AP2のBlockAck Informationに記載された情報からデータの再送が必要だと判定する。しかしながら、次に、Master APは、Buffer Informationから、再送が必要なデータが、例えば、AP1ではすでに破棄されていると判定した場合、AP1に対して再送は要求せず、破棄されていないAP2に対してのみ再送を要求するために、AP2に対して、再送データ用のJoint Tx Triggerを生成する。
【0133】
また、再送が必要ではないが、いずれかのAPのバッファにデータが残っている場合、Master APは、次のように対応するようにしてもよい。例えば、Master APは、図8のJoint Tx EndフレームのJoint Tx Response Informationにて該当するデータの情報のみを記載して、各APのバッファから、データを破棄させることができる。
【0134】
以上の第2の実施の形態においては、各APで、再送上限に達するなどしてパケットを破棄していた場合などに、Master APが各APに対して再送できないデータの再送を指示することを防ぐことができる。
【0135】
<3.第3の実施の形態(STAによる送信の誘起の例)>
次に、第3の実施の形態として、STAが各APにMaster APに対する送信結果応答信号の送信を誘起する例について説明する。
【0136】
<本技術の協調送信のシーケンス例>
図12は、本技術の協調送信の他のシーケンスを示す図である。
【0137】
時刻t21において、Master APは、図3の例と同様に、Joint Tx TriggerフレームをAP1およびAP2に送信する。このとき、ACK Scheme情報では、Ackの送信方法については記載しなくてもよく、記載する場合は、STAによって指定される旨を記載する。
【0138】
時刻t22において、AP1およびAP2は、Joint Tx Triggerフレームに記載された情報に基づいて、STAに対して協調してデータを送信する。
【0139】
AP1およびAP2からのデータを受信したSTAは、時刻t23において、データの受領確認の応答信号であるBlock Ackに加えて、Joint Tx Triggerをアグリゲート(連結)して送信する。これにより、各APに対して、送信結果応答信号であるJoint Tx Responseフレームの送信が誘起される。このとき、ACK Scheme情報にはAckを送信しない旨(No Ack)が記載される。
【0140】
AP1とAP2は、時刻t24において、STAから送信されたJoint Tx Triggerフレームに記載されたACK Scheme情報に基づいて、Joint Tx ResponseフレームをMaster APに送信する。
【0141】
AP1およびAP2からJoint Tx Responseフレームを受信したMaster APは、Joint Tx Responseフレームに基づいて、データの再送が必要ないと判定した場合、時刻t25において、協調送信の終了を示すJoint Tx EndフレームをAP1およびAP2に送信する。Joint Tx Endフレームの送信後、図12の協調送信のシーケンスは終了となる。
【0142】
なお、上述した時刻t23において、Block AckとJoint Tx Triggerは、どちらを先にアグリゲートして送信してもよい。
【0143】
Joint Tx TriggerよりもBlock Ackを先に送信することで、AP1,AP2が送信すべきJoint Tx Responseの内容を直ちに判定することができる。一方、Block AckよりもJoint Tx Triggerを先に送信することで、周囲の通信端末がAP1,AP2からJoint Tx Responseが送信されることを直ちに判定することができる。
【0144】
以上の第3の実施の形態においては、Block AckともにJoint Tx Triggerが送られるので、各APにおけるBlock Ackの受信状況を、Master APに即座に通知することができるので、再送する必要のないデータを再送することを防ぐことができる。
【0145】
以上のように、本技術においては、Master APが、AP1およびA2によるSTAへの協調送信の送信結果の送信方法が設定された応答設定情報を、AP1とAP2に送信する制御を行うようにしたので、再送する必要のないデータを再送することを防ぐことができる。
【0146】
<4.第4の実施の形態(コンピュータ)>
<コンピュータの構成例>
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0147】
図13は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【0148】
CPU(Central Processing Unit)301、ROM(Read Only Memory)302、RAM(Random Access Memory)303は、バス304により相互に接続されている。
【0149】
バス304には、さらに、入出力インタフェース305が接続されている。入出力インタフェース305には、キーボード、マウスなどよりなる入力部306、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部307が接続される。また、入出力インタフェース305には、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記憶部308、ネットワークインタフェースなどよりなる通信部309、リムーバブルメディア311を駆動するドライブ310が接続される。
【0150】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU301が、例えば、記憶部308に記憶されているプログラムを入出力インタフェース305及びバス304を介してRAM303にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0151】
CPU301が実行するプログラムは、例えばリムーバブルメディア311に記録して、あるいは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供され、記憶部308にインストールされる。
【0152】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0153】
なお、本明細書において、システムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味し、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。したがって、別個の筐体に収納され、ネットワークを介して接続されている複数の装置、及び、1つの筐体の中に複数のモジュールが収納されている1つの装置は、いずれも、システムである。
【0154】
また、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0155】
本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0156】
例えば、本技術は、1つの機能を、ネットワークを介して複数の装置で分担、共同して処理するクラウドコンピューティングの構成をとることができる。
【0157】
また、上述のフローチャートで説明した各ステップは、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0158】
さらに、1つのステップに複数の処理が含まれる場合には、その1つのステップに含まれる複数の処理は、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0159】
<構成の組み合わせ例>
本技術は、以下のような構成をとることもできる。
(1)
第1の無線通信装置および第2の無線通信装置と通信する通信部と、
前記第1の無線通信装置および前記第2の無線通信装置による無線通信端末への協調送信の送信結果の送信方法が設定された応答設定情報を、前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置に送信する制御を行う制御部と
を備える通信制御装置。
(2)
前記制御部は、前記応答設定情報を含み、前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置が前記無線通信端末への前記協調送信を行うように制御する第1の協調送信開始信号を送信する制御を行う
前記(1)に記載の通信制御装置。
(3)
前記制御部は、前記応答設定情報に基づいて前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置から送信された、前記無線通信端末から送信された受領確認信号に関する情報を含み、前記協調送信の前記送信結果を示す送信結果応答信号を受信する制御を行う
前記(1)および(2)に記載の通信制御装置。
(4)
前記制御部は、前記送信結果応答信号に基づいて、前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置に対し、第2の協調送信開始信号を送信するか否かを判定する制御を行う
前記(3)に記載の通信制御装置。
(5)
前記制御部は、前記送信結果応答信号に基づいて、前記第2の協調送信開始信号を送信しないと判定した場合、前記協調送信の終了を示す協調送信終了信号を送信する制御を行う
前記(4)に記載の通信制御装置。
(6)
前記送信結果応答信号に基づいて、前記第2の協調送信開始信号を送信すると判定した場合、前記制御部は、前記第2の協調送信開始信号が、前記協調送信の終了を示す協調送信終了信号を含むよう生成し、送信する制御を行う
前記(4)に記載の通信制御装置。
(7)
前記制御部は、前記送信結果応答信号に基づいて、前記第2の協調送信開始信号を送信すると判定した場合、前記協調送信の再送を行うように制御する前記第2の協調送信開始信号を送信する制御を行う
前記(4)に記載の通信制御装置。
(8)
前記制御部は、前記送信結果応答信号の送信方法を示す前記応答設定情報を送信する制御を行う
(3)乃至(7)のいずれかに記載の通信制御装置。
(9)
前記制御部は、前記送信結果応答信号が前記第1の無線通信装置または前記第2の無線通信装置のバッファに保持されているデータに関するバッファ情報を含む場合、前記送信結果応答信号に基づいて、前記バッファに保持されている前記データの中から再度送信する再送データを示す情報を含む第2の協調送信開始信号を生成する制御を行う
(8)に記載の通信制御装置。
(10)
前記制御部は、前記送信結果応答信号を要求する送信結果要求信号を送信する制御を行い、
前記送信結果要求信号に基づいて前記第1の無線通信装置および前記第2の無線通信装置から送信された、前記送信結果応答信号を受信する制御を行う
前記(3)に記載の通信制御装置。
(11)
前記制御部は、前記送信結果応答信号を要求することを示す情報、前記協調送信に対する前記送信結果応答信号の送信方法を示す情報、または応答に利用する無線資源のうち、少なくとも一つを含む前記送信結果要求信号を送信する制御を行う
前記(10)に記載の通信制御装置。
(12)
前記制御部は、前記第1の無線通信装置および前記第2の無線通信装置が前記送信結果応答信号の送信に利用する無線資源を含む前記応答設定情報を送信する制御を行う
前記(3)乃至(11)のいずれかに記載の通信制御装置。
(13)
通信制御装置が、
第1の無線通信装置および第2の無線通信装置と通信し、
前記第1の無線通信装置および前記第2の無線通信装置による無線通信端末への協調送信の送信結果の送信方法が設定された応答設定情報を、前記第1の無線通信装置と前記第2の無線通信装置に送信する制御を行う
通信制御方法。
(14)
通信制御装置および他の無線通信装置と通信する通信部と、
前記通信制御装置が協調送信を行うように制御する協調送信開始信号を受信する制御と、前記協調送信開始信号に基づき無線通信端末へ前記他の無線通信装置と前記協調送信を行う制御と、前記協調送信に対する前記無線通信端末の受領確認信号に関する情報を含む送信結果応答信号を前記通信制御装置へ送信する制御を行う制御部と
を備える無線通信装置。
(15)
前記制御部は、前記通信制御装置より前記送信結果応答信号の送信方法に関する応答設定情報を受信する制御を行い、前記応答設定情報に基づいて、前記送信結果応答信号を前記通信制御装置に送信する制御を行う
前記(14)に記載の無線通信装置。
(16)
前記制御部は、前記通信制御装置より送信結果要求信号を受信する制御を行い、
前記送信結果要求信号に基づいて、前記送信結果応答信号を前記通信制御装置に送信する制御を行う
前記(14)または(15)に記載の無線通信装置。
(17)
前記制御部は、前記無線通信端末より前記受領確認信号を受信しなかった場合、前記協調送信が失敗したことを示す前記送信結果応答信号を、前記通信制御装置へ送信する制御を行う
前記(14)乃至(16)のいずれかに記載の無線通信装置。
(18)
前記制御部は、バッファに保持しているデータに関するバッファ情報を含む前記送信結果応答信号を送信する制御を行う
前記(14)乃至(17)のいずれかに記載の無線通信装置。
(19)
無線通信装置が
通信制御装置および他の無線通信装置と通信し、
前記通信制御装置が協調送信を行うように制御する協調送信開始信号を受信する制御と、前記協調送信開始信号に基づき無線通信端末へ前記他の無線通信装置と前記協調送信を行う制御と、前記協調送信に対する前記無線通信端末の受領確認信号に関する情報を含む送信結果応答信号を前記通信制御装置へ送信する制御を行う
無線通信方法。
(20)
第1の無線通信装置および第2の無線通信装置と通信する通信部と、
前記第1の無線通信装置および前記第2の無線通信装置から協調送信されるデータに対し、受領結果を判定する制御と、前記受領結果を示す受領確認信号とともに、前記受領確認信号に関する情報を含む送信結果応答信号を通信制御装置へと送信させるための制御情報を、前記第1の無線通信装置および前記第2の無線通信装置に送信する制御を行う制御部と
を備える無線通信端末。
【符号の説明】
【0160】
11 無線通信装置, 12 無線通信端末,13 無線制御装置, 31 制御部, 32 電源部, 33 通信部,35 メモリ部, 50 メモリ部, 51 データ処理部, 52 無線制御部, 53 変復調部, 54 信号処理部, 55 チャネル推定部, 56-1乃至56-N 無線I/F部, 57-1乃至57-N アンプ部,58-1乃至58-N アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13