(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】運転支援装置、方法、プログラム、及び車両
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240723BHJP
B60W 30/08 20120101ALI20240723BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20240723BHJP
B60W 40/09 20120101ALI20240723BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/08
B60W40/04
B60W40/09
(21)【出願番号】P 2022019732
(22)【出願日】2022-02-10
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グエン ヴァン クイ フン
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祥司
(72)【発明者】
【氏名】服部 彰
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-171439(JP,A)
【文献】特開2012-234291(JP,A)
【文献】特開2020-040475(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0156653(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
B60W 30/08
B60W 40/04
B60W 40/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転支援装置であって、
前記車両のドライバーが前記車両の進行方向に存在する物標に接近して減速を行う際の車両前後方向の接近感指標値を演算する演算部と、
前記演算部で演算された前記接近感指標値に基づいて、前記ドライバーに適用する運転支援方法を決定する決定部と、
前記決定部で決定された前記運転支援方法を実行する実行部と、を備え
、
前記演算部は、前記車両と前記物標との前後方向の距離、前記前後方向の距離に関する前記ドライバーの感覚、前記車両の速度、前記車両と前記物標との相対速度、前記車両と前記物標との相対加減速度、前記速度に関する前記ドライバーの感覚、及び前記相対加減速度に関する前記ドライバーの感覚に基づいて、前記ドライバーの前記接近感指標値を演算し、
前記ドライバーの感覚に、前記車両の実際の走行において学習される値が用いられる、運転支援装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記ドライバーの前記接近感指標値PREを、前記車両と前記物標との前後方向の距離D、前記前後方向の距離に関する前記ドライバーの感覚n、前記車両の速度Vs、前記車両と前記物標との相対速度Vr、前記車両と前記物標との相対加減速度Ar、前記速度に関する前記ドライバーの感覚α、及び前記相対加減速度に関する前記ドライバーの感覚βに基づいて、下記の第1式に従って設定する、請求項
1に記載の運転支援装置。
【数1】
【請求項3】
車両の運転支援装置であって、
前記車両のドライバーが前記車両の進行方向に存在する物標に接近して減速を行う際の車両前後方向の接近感指標値を演算する演算部と、
前記演算部で演算された前記接近感指標値に基づいて、前記ドライバーに適用する運転支援方法を決定する決定部と、
前記決定部で決定された前記運転支援方法を実行する実行部と、を備え、
前記決定部は、前記接近感指標値が所定の閾値以下である場合、前記車両の安全に関わる制御を他の制御よりも優先して行う運転支援方法を決定する
、運転支援装置。
【請求項4】
車両の運転支援装置であって、
前記車両のドライバーが前記車両の進行方向に存在する物標に接近して減速を行う際の車両前後方向の接近感指標値を演算する演算部と、
前記演算部で演算された前記接近感指標値に基づいて、前記ドライバーに適用する運転支援方法を決定する決定部と、
前記決定部で決定された前記運転支援方法を実行する実行部と、を備え、
前記決定部は、前記接近感指標値が所定の閾値を超える場合、前記車両の安全に関わる制御を他の制御よりも優先して行わない運転支援方法を決定する
、運転支援装置。
【請求項5】
車両の運転支援装置のコンピューターが実行する方法であって、
前記車両のドライバーが前記車両の進行方向に存在する物標に接近して減速を行う際の車両前後方向の接近感指標値を演算するステップと、
前記接近感指標値に基づいて、前記ドライバーに適用する運転支援方法を決定するステップと、
前記運転支援方法を実行するステップと、を含
み、
前記演算するステップでは、前記車両と前記物標との前後方向の距離、前記前後方向の距離に関する前記ドライバーの感覚、前記車両の速度、前記車両と前記物標との相対速度、前記車両と前記物標との相対加減速度、前記速度に関する前記ドライバーの感覚、及び前記相対加減速度に関する前記ドライバーの感覚に基づいて、前記ドライバーの前記接近感指標値を演算し、
前記ドライバーの感覚に、前記車両の実際の走行において学習される値が用いられる、方法。
【請求項6】
車両の運転支援装置のコンピューターに実行させるプログラムであって、
前記車両のドライバーが前記車両の進行方向に存在する物標に接近して減速を行う際の車両前後方向の接近感指標値を演算するステップと、
前記接近感指標値に基づいて、前記ドライバーに適用する運転支援方法を決定するステップと、
前記運転支援方法を実行するステップと、を含
み、
前記演算するステップでは、前記車両と前記物標との前後方向の距離、前記前後方向の距離に関する前記ドライバーの感覚、前記車両の速度、前記車両と前記物標との相対速度、前記車両と前記物標との相対加減速度、前記速度に関する前記ドライバーの感覚、及び前記相対加減速度に関する前記ドライバーの感覚に基づいて、前記ドライバーの前記接近感指標値を演算し、
前記ドライバーの感覚に、前記車両の実際の走行において学習される値が用いられる、プログラム。
【請求項7】
請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の運転支援装置を搭載した、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載され、車両と物標との衝突を回避するための運転支援を行う運転支援装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車両のドライバーによる運転操作の傾向に基づいた側方距離と余裕間隔とに応じて、車両の前方に存在する物標と車両との衝突を回避するための支援を行うタイミングを決定する運転支援装置が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両のドライバーが、車両の前方を走行する他の車両などの物標と衝突することを回避するための運転支援技術においては、ドライバーの運転特性に応じてドライバーにとって適切な内容となる支援を行うことが求められる。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、車両を運転するドライバーの運転特性に応じて適切な内容の運転支援を行うことができる運転支援装置などを提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、車両の運転支援装置であって、車両のドライバーが車両の進行方向に存在する物標に接近して減速を行う際の車両前後方向の接近感指標値を演算する演算部と、演算部で演算された接近感指標値に基づいて、ドライバーに適用する運転支援方法を決定する決定部と、決定部で決定された運転支援方法を実行する実行部と、を備える、運転支援装置である。
【発明の効果】
【0007】
上記本開示の運転支援装置などによれば、車両を運転するドライバーの運転特性に応じて適切な内容の運転支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る運転支援装置を含む車両用システムの概略構成図
【
図2】運転支援装置が実行するデータ収集学習処理のフローチャート
【
図3】先行車両と自車両とにおける距離及び速度の関係の一例を示した図
【
図4】運転支援装置が実行する運転支援処理のフローチャート
【
図5】接近感指標値(PRE値)に基づいた運転支援内容の一例
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の運転支援装置は、支援制御の対象となる車両(以下、他の車両との区別が必要な場合には「自車両」という)の進行方向に他の車両(以下「先行車両」という)が存在する場面において、自車両のドライバーについてこれまでに学習した速度感覚及び距離感覚に基づいて、操舵支援や減速支援を実施する。これにより、車両を運転するドライバーの運転特性に適切でありかつ安全を優先させた運転支援を提供することができる。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る運転支援装置20を含む車両用システム1の概略構成を示す図である。
図1に例示した車両用システム1は、外界センサ11と、速度センサ12と、加速度センサ13と、舵角センサ14と、運転支援装置20と、HMI制御部31と、動力源制御部32と、ステアリング制御部33と、ブレーキ制御部34と、を備えている。この車両用システム1は、自動車などの車両に搭載され得る。
【0011】
外界センサ11は、車両の外界に関する情報を検出/取得するためのセンサである。具体的には、外界センサ11は、車両前部に設置され、主に車両周辺の前方に存在する先行車両や二輪車などの物標を検出し、検出した物標の情報(種類、速度、距離など)を取得する。この外界センサ11には、例えば、レーザー、ミリ波、マイクロ波、又は超音波を利用したレーダーセンサや、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を利用したカメラセンサなど、を用いることができる。外界センサ11で検出/取得された車両の外界に関する情報(物標の情報など)は、運転支援装置20に出力される。
【0012】
速度センサ12は、車両の速度を検出/取得するためのセンサである。この速度センサ12には、例えば、車両の各車輪に設置された車輪の回転速度(又は回転量)を検出するための車輪速センサを用いることができる。速度センサ12で検出/取得された車両の速度は、車両に関する情報として運転支援装置20に出力される。
【0013】
加速度センサ13は、車両に加わる加速度Gの大きさを検出/取得するためのセンサである。この加速度センサ13には、車両の所定の場所に設置され、例えば車両の前後方向、車幅方向、及び上下方向の加速度を検出する3軸加速度計を利用することができる。加速度センサ13で検出/取得された加速度の情報は、車両に関する情報として運転支援装置20に出力される。
【0014】
舵角センサ14は、車両のドライバーの操舵操作に応じたステアリングの操舵角を検出/取得するためのセンサである。この舵角センサ14は、例えば、車両のステアリング制御部33に設置されている。舵角センサ14で検出/取得されたステアリングの操舵角の情報は、車両に関する情報として運転支援装置20に出力される。
【0015】
HMI(Human Machine Interface)制御部31は、運転支援装置20から出力される指示に従って、車両のドライバーに対する運転支援の作動状態などの情報提示を制御することが可能な手段である。情報提示には、例えば、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、ナビゲーションシステムのモニター、メーターパネル、及びスピーカーなどの各種のデバイス(図示せず)が用いられる。
【0016】
動力源制御部32は、運転支援装置20から出力される指示に従って、例えば内燃エンジンや走行モーターなどの車両の動力源となるアクチュエーター(図示せず)を制御して、これらの動力源でそれぞれ発生させる駆動力や制動力を制御することが可能な手段である。
【0017】
ステアリング制御部33は、運転支援装置20から出力される指示に従って、例えば電動パワーステアリング機構(図示せず)によって車両のステアリング操舵を補助する力を制御することが可能な手段である。
【0018】
ブレーキ制御部34は、運転支援装置20から出力される指示に従って、例えば電動ブレーキ機構(図示せず)によって車両のブレーキ装置を介して車輪に発生させる制動力を制御することが可能な手段である。
【0019】
運転支援装置20は、外界センサ11、速度センサ12、加速度センサ13、及び舵角センサ14などから得られる車両に関する情報や車両の外界に関する情報(物標の情報など)などに基づいて、HMI制御部31、動力源制御部32、ステアリング制御部33、及びブレーキ制御部34に対して制御指示を行い、車両を運転するドライバーに対して好適な運転支援を実施する。
【0020】
この運転支援装置20は、典型的にはプロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェイスなどを含んだ電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)の一部又は全部として構成され得る。本実施形態の運転支援装置20は、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが読み出して実行することによって、以下に説明する収集部21、演算部22、決定部23、及び実行部24の各機能を実現する。
【0021】
収集部21は、外界センサ11、速度センサ12、加速度センサ13、及び舵角センサ14などから、運転支援に必要な車両に関する情報及び車両の外界に関する情報(物標の情報など)を含んだ走行データを収集する。この走行データの詳細については、後述する。演算部22は、車両を運転するドライバーの運転操作内容(運転特性、運転感覚)を学習し、学習の結果を反映させた車両前後方向の接近感指標(PRE:Perceptual Risk Estimate)を演算する。この接近感指標(PRE)とは、自車両が先行車両に接近して先行車両との接触を避けるためにドライバーが減速を行う際の運転操作の特性を数値化したものである。この接近感指標(PRE)の詳細については、後述する。決定部23は、演算部22によって演算された接近感指標(PRE)に基づいて、車両を運転するドライバーに適切な運転支援の内容(運転支援方法)を決定する。決定した運転支援の内容は、ドライバーの感覚に適した内容となる。この運転支援内容の決定方法の詳細については、後述する。実行部24は、決定部23によって決定された運転支援の内容に従って、車両を運転するドライバーの運転を支援する。
【0022】
[制御]
次に、
図2乃至
図5をさらに参照して、本実施形態に係る運転支援装置20が実行する処理を説明する。運転支援装置20が実行する処理として、データ収集学習処理と運転支援処理とがある。
【0023】
(1)データ収集学習処理
図2は、運転支援装置20の収集部21及び演算部22が実行するデータ収集学習処理の手順を説明するフローチャートである。この
図2に例示するデータ収集学習処理は、例えば、自車両の進行方向において先行車両などの物標が検出されることによって実行される。
【0024】
(ステップS201)
運転支援装置20の収集部21は、自車両が先行車両に接近してドライバーが減速する行為を開始した時(先行車両接近時)における車両走行データを収集する。この減速する行為とは、自車両のドライバーが先行車両との車間距離を短くすることを止める行為であり、ブレーキペダルを踏む行為、アクセルペダルから足を離す行為、ギア段を下げてエンジンブレーキを効かす行為などの行為が含まれる。収集する車両走行データには、自車両の速度Vs、自車両から見た先行車両の相対速度Vr、自車両から見た先行車両の相対加減速度Ar、及び自車両と先行車両との前後方向の距離Dが、少なくとも含まれる。
図3は、道路を走行する自車両と、自車両と同じ方向に移動する先行車両(物標)との間における、距離及び速度の関係の一例を示した図である。車両走行データは、一例として、車両が減速を開始した瞬間値のデータであってもよいし、車両が減速を開始してから所定期間の平均値としてもよい。先行車両接近時の車両走行データが収集されると、ステップS202に処理が進む。
【0025】
(ステップS202)
運転支援装置20の演算部22は、収集部21が収集した先行車両接近時の車両走行データを用いて、自車両を運転するドライバーの運転操作内容(運転特性、運転感覚)を学習する。本実施形態の演算部22は、ドライバーの速度感覚α、ドライバーの加減速度感覚β、及び前後方向距離の予測に対するドライバー感覚nを、それぞれ学習する。このドライバーの速度感覚αは、自車両の速度に対してドライバーが抱く感覚と現実とのずれを表現したパラメータといえる。ドライバーの加減速度感覚βは、自車両及び先行車両の相対加減速度に関してドライバーが抱く感覚と現実とのずれを表現したパラメータといえる。前後方向距離の予測に対するドライバー感覚nは、自車両と先行車両との前後方向の距離に関してドライバーの推定と現実とのずれを表現したパラメータといえる。
【0026】
このドライバーの速度感覚α、β、及びnの各パラメータは、車間距離と衝突余裕時間(TTC:Time To Collision)との相間関係や、車間距離と相対速度との相間関係や、車間距離及び速度とブレーキ開始のタイミングとの相間関係などに基づいて、自車両を運転するドライバーの個人のパラメータとしてそれぞれ求められる。これらの相間関係は、例えば、テストドライバーなどの実験走行によって測定されたり、シミュレーションを行って推定されたり、することによって得ることができる。
【0027】
演算部22は、上記ステップS201において収集した先行車両接近時の車両走行データについて求めた新たなドライバーの速度感覚α、β、及びnの各値を、学習した値として更新する。ドライバーの速度感覚α、β、及びnの各値が学習されると、ステップS203に処理が進む。
【0028】
(ステップS203)
運転支援装置20の演算部22は、上記ステップS202において学習して更新されたドライバーの速度感覚αの値と、ドライバーの加減速度感覚βの値と、前後方向距離の予測に対するドライバー感覚nの値とを用いて、下記の第1式に従って接近感指標値(PRE値)を演算する。接近感指標値(PRE値)が演算されると、ステップS204に処理が進む。
【数1】
… [第1式]
【0029】
(ステップS204)
運転支援装置20の演算部22は、上記ステップS203において新たに演算した接近感指標値(PRE値)を、今回車両の減速行為を行ったドライバーの情報と紐付けて、運転支援装置20が有する所定のメモリなどに記憶する。なお、車両のドライバーが誰であるかについては、例えば、ドライバーが所持している電子キーの固有IDによる判定や、調整されたドライビング(シート)ポジションによる判定や、ドライバーカメラによる画像解析による判定など、周知の判定手法を用いることで個人を特定することが可能である。接近感指標値(PRE値)が、個人の特定が可能であるドライバー情報と紐付けて記憶されると、本データ収集学習処理が終了する。
【0030】
(2)運転支援処理
図4は、運転支援装置20の決定部23及び実行部24が実行する運転支援処理の手順を説明するフローチャートである。この
図4に例示する運転支援処理は、例えば、自車両の進行方向において先行車両などの物標が検出されることによって実行される。
【0031】
(ステップS401)
運転支援装置20の決定部23は、所定のメモリなどから、ドライバーの情報と紐付けて記憶されている接近感指標値(PRE値)を取得する。車両を運転するドライバー個人の特定については、上述した通りである。なお、車両のイグニッションオン(IG-ON)からイグニッションオフ(IG-OFF)までの1トリップ中にドライバーが代わることがないような場面では、上述したデータ収集学習処理のステップS203で接近感指標値(PRE値)が演算されるごとに、次に行われる車両の減速行為においてこの新たに演算された接近感指標値(PRE値)が取得されることとなる。車両を運転するドライバーに紐付けられた接近感指標値(PRE値)が取得されると、ステップS402に処理が進む。
【0032】
(ステップS402)
運転支援装置20の決定部23は、上記ステップS401において取得した接近感指標値(PRE値)の高低を判断する。一例として、決定部23は、接近感指標値(PRE値)が予め定めた閾値Mを超えるか否かによって、接近感指標値(PRE値)の高低を判断することができる。この閾値Mは、数多くのドライバーから得られた運転データの統計結果などに基づいて適切に設定することができる。
【0033】
接近感指標値(PRE値)が閾値M以下である場合は(ステップS402、はい)、安全支援に対するドライバーの受容性の度合が高いと判定して、ステップS403に処理が進む。一方、接近感指標値(PRE値)が閾値Mを超える場合は(ステップS402、いいえ)、安全支援に対するドライバーの受容性の度合が高くはないと判定して、ステップS404に処理が進む。
【0034】
(ステップS403)
運転支援装置20の決定部23は、車両を運転するドライバーに適用する運転支援として、接近感指標値(PRE値)が閾値M以下(PRE≦M)場合における運転支援を決定する。つまり、この場合には、安全支援に対する受容性の度合が「高い」ドライバーに対する運転支援を決定する。そして、運転支援装置20の実行部24は、決定部23が決定した運転支援を、車両を運転するドライバーに対して実施する。安全支援への受容性の度合が「高い」場合におけるドライバーに対する運転支援の内容を、
図5の左欄に例示する。
【0035】
本実施形態では、安全支援への受容性の度合が「高い」場合、車両を安全側に導くための制御(すなわち、車両の安全に関わる制御)を行う支援が、他の制御を行う支援よりも優先して実施される。より具体的には、例えば、標準(デフォルト)の設定や安全支援への受容性の度合が「その他」の場合に比べて、早いタイミングから制御支援を開始したり、支援する量を大きく(効果を強く)して制御したりする。
【0036】
また、安全支援への受容性の度合が「高い」場合、安全運転を誘導するためのHMI(すなわち、車両の安全に関わる制御)による支援が、他のHMIによる支援よりも優先して行われる。この「高い」場合の典型的なHMIによる支援としては、例えば、HMI制御部31を用いてメーターパネルやヘッドアップディスプレイ(HUD)などを介した表示通知をONに制御し、スピーカーなどを介した音声通知をONに制御し、及びステアリング制御部33を用いてステアリングを振動させることによるハプティク通知を強く制御することなどによって、実現される。
【0037】
また、上述したHMIによる支援以外にも、この安全支援への受容性の度合が「高い」場合には、安全に関する様々な支援を車両のドライバーに対して積極的に提案するように制御してもよい。
【0038】
安全支援への受容性の度合が「高い」場合におけるドライバーに対する運転支援が実施されると、本運転支援処理が終了する。
【0039】
(ステップS404)
運転支援装置20の決定部23は、車両を運転するドライバーに適用する運転支援として、接近感指標値(PRE値)が閾値Mを超える(PRE>M)場合における運転支援を決定する。つまり、この場合には、安全支援に対する受容性の度合が高くはない「その他」のドライバーに対する運転支援を決定する。そして、運転支援装置20の実行部24は、決定部23が決定した運転支援を、車両を運転するドライバーに対して実施する。安全支援への受容性の度合が「その他」の場合におけるドライバーに対する運転支援の内容を、
図5の右欄に例示する。
【0040】
本実施形態では、安全支援への受容性の度合が「その他」の場合、車両を安全側に導くための制御(すなわち、車両の安全に関わる制御)を行う支援が、他の制御を行う支援よりも優先して実施されない。より具体的には、例えば、標準(デフォルト)の設定や安全支援への受容性の度合が「高い」場合に比べて、遅いタイミングから制御支援を開始したり、支援する量を小さく(効果を緩く)して制御したりする。また、安全支援への受容性の度合が「その他」の場合には、車両を安全側に導くための制御支援を実施するか否かを、車両を運転するドライバーが任意に選択できるようにすることが可能である。
【0041】
また、安全支援への受容性の度合が「その他」の場合、安全運転を誘導するためのHMI(すなわち、車両の安全に関わる制御)による支援が、他のHMIによる支援よりも優先して行われない。より典型的には、安全運転を誘導するためのHMIによる支援の利用は、車両を運転するドライバーが任意で選択できるようする。この「その他」の場合の典型的なHMIによる支援としては、例えば、HMI制御部31を用いてメーターパネルやヘッドアップディスプレイ(HUD)などを介した表示通知をONに制御し、スピーカーなどを介した音声通知をOFFに制御し、及びステアリング制御部33を用いてステアリングを振動させることによるハプティク通知を弱く制御することなどによって、実現される。
【0042】
安全支援への受容性の度合が「その他」の場合におけるドライバーに対する運転支援が実施されると、本運転支援処理が終了する。
【0043】
上述したデータ収集学習処理(ステップS201~S204)及び運転支援処理(ステップS401~S404)によって、車両を運転するドライバーの運転特性に応じた好適かつ安全を優先させた内容による運転支援の実施を実現することができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、接近感指標値(PRE値)に基づいた運転支援内容を、安全支援への受容性の度合が「高い」場合と「その他」の場合との2通りに区分した例を説明した。しかしながら、この区分例以外にも、例えばドライバー感覚の学習などによって得られるドライバーの運転タイプの違いなどに基づいて、運転支援内容を3通り以上に複数区分してもよい。
【0045】
<作用・効果>
以上のように、本開示の一実施形態に係る運転支援装置によれば、自車両の進行方向に先行車両などの物標が存在する場面において、自車両がその先行車両に接近してドライバーが減速する行為を行ったときの自車両と先行車両との前後方向の距離、自車両の速度、及び自車両から見た先行車両の相対速度、自車両から見た先行車両の相対加減速度を収集する。そして、この収集したデータを用いて、ドライバーの速度感覚α、ドライバーの加減速度感覚β、及び前後方向距離の予測に対するドライバー感覚nの各パラメータを、学習する。そして、この学習して得られた各パラメータに基づいて、実際の距離及び速度に対してドライバーが抱く距離及び速度の感覚を推定し、車両を運転するドライバー固有の接近感指標値(PRE値)を演算する。
【0046】
このように演算した接近感指標値(PRE値)を用いてドライバーの運転操作を支援することによって、車両を運転するドライバーの運転特性(運転感覚)に応じた好適かつ安全を優先させた運転支援を提供することができる。よって、従来のような一律の運転支援に対してドライバーが不安や煩わしさを感じ、ドライバーによる運転支援機能の受容性が低下してしまうといったことを抑制できる。
【0047】
以上、本開示の一実施形態を説明したが、本開示は、運転支援装置、プロセッサとメモリとを備えた運転支援装置が実行する方法、この方法を実行するための制御プログラム、制御プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的記憶媒体、及び運転支援装置を搭載した車両として捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示の運転支援装置などは、車両などに利用可能であり、車両を運転するドライバーの運転特性に応じた好適な運転支援を提供したい場合などに有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 車両用システム
11 外界センサ
12 速度センサ
13 加速度センサ
14 舵角センサ
20 運転支援装置
21 収集部
22 演算部
23 決定部
24 実行部
31 HMI制御部
32 動力源制御部
33 ステアリング制御部
34 ブレーキ制御部