(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】車載センサ洗浄システム、方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B60S 1/62 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
B60S1/62 100
B60S1/62 120B
(21)【出願番号】P 2022032985
(22)【出願日】2022-03-03
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆佑
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-128183(JP,A)
【文献】特表平02-502619(JP,A)
【文献】特表2009-511361(JP,A)
【文献】特開平04-193652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0107040(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016118405(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載センサ洗浄システムであって、
前記車両に搭載された車載センサの洗浄を自動又は手動で行う洗浄部と、
前記車載センサの洗浄を前記洗浄部に自動で行わせる自動洗浄機能のオン/オフを設定する設定部と、
前記設定部によって前記自動洗浄機能がオフに設定されている場合、前記車載センサの過去の洗浄に関する情報に基づいて、前記自動洗浄機能の設定切り替えに関する通知を行う通知部と、を備える、車載センサ洗浄システム。
【請求項2】
前記過去の洗浄に関する情報は、手動で行われた前記車載センサの過去の洗浄回数である、請求項1に記載の車載センサ洗浄システム。
【請求項3】
前記車両のドライバーを識別する識別部をさらに備え、
前記通知部は、前記識別部が識別した前記ドライバーが手動で行った前記過去の洗浄回数に基づいて、前記自動洗浄機能の設定切り替えに関する通知を前記ドライバーに対して行う、請求項2に記載の車載センサ洗浄システム。
【請求項4】
前記過去の洗浄回数は、所定の期間内で行われた洗浄の回数又は所定の距離を走行する間に行われた洗浄の回数である、請求項2又は3に記載の車載センサ洗浄システム。
【請求項5】
前記通知部は、前記過去の洗浄回数が第1閾値以上である場合、前記自動洗浄機能の設定切り替えに関する通知を前記車両のドライバーに対して行う、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の車載センサ洗浄システム。
【請求項6】
前記過去の洗浄に関する情報は、所定の走行地域において自動で行われた前記車載センサの過去の洗浄回数である、請求項1に記載の車載センサ洗浄システム。
【請求項7】
他車両による前記過去の洗浄に関する情報を取得する取得部をさらに備え、
前記通知部は、前記取得部が取得した前記他車両によって前記所定の走行地域において自動で行われた前記過去の洗浄回数に基づいて、前記自動洗浄機能の設定切り替えに関する通知を行う、請求項6に記載の車載センサ洗浄システム。
【請求項8】
前記過去の洗浄回数は、所定の期間内で行われた洗浄の回数である、請求項6又は7に記載の車載センサ洗浄システム。
【請求項9】
前記通知部は、前記過去の洗浄回数が第2閾値以上である場合、前記自動洗浄機能の設定切り替えに関する通知を前記車両のドライバーに対して行う、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の車載センサ洗浄システム。
【請求項10】
前記通知部は、前記設定部によって前記自動洗浄機能の設定がオンからオフに切り替えられてから第1時間が経過するまでは、前記自動洗浄機能の設定切り替えに関する通知を行わない、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の車載センサ洗浄システム。
【請求項11】
前記自動洗浄機能の設定切り替えに関する通知は、前記車両のドライバーに前記自動洗浄機能の設定をオフからオンに切り替えることを提案する通知である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の車載センサ洗浄システム。
【請求項12】
前記通知部は、音声によって前記自動洗浄機能の設定切り替えに関する通知を行う、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の車載センサ洗浄システム。
【請求項13】
前記自動洗浄機能のオフからオンへの切り替えの指示を前記車両のドライバーから受け付ける受付部をさらに備える、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の車載センサ洗浄システム。
【請求項14】
前記設定部は、前記自動洗浄機能のオフからオンへの切り替えの指示を前記受付部が前記車両のドライバーから受け付けた場合、前記自動洗浄機能をオンに設定する、請求項13に記載の車載センサ洗浄システム。
【請求項15】
車両に搭載される車載センサの洗浄を自動又は手動で行う洗浄部を備えた洗浄システムのコンピューターが実行する方法であって、
前記車載センサの洗浄を前記洗浄部に自動で行わせる自動洗浄機能のオン/オフの設定状態を判断するステップと、
前記自動洗浄機能がオフに設定されている場合、前記車載センサの過去の洗浄に関する情報に基づいて、前記自動洗浄機能の設定切り替えに関する通知を行うステップと、を含む、方法。
【請求項16】
車両に搭載される車載センサの洗浄を自動又は手動で行う洗浄部を備えた洗浄システムのコンピューターに実行させるプログラムであって、
前記車載センサの洗浄を前記洗浄部に自動で行わせる自動洗浄機能のオン/オフの設定状態を判断するステップと、
前記自動洗浄機能がオフに設定されている場合、前記車載センサの過去の洗浄に関する情報に基づいて、前記自動洗浄機能の設定切り替えに関する通知を行うステップと、を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載されるセンサやカメラなど(以下、併せて「車載センサ」という)を洗浄する車載センサ洗浄システムなどに関する。
【背景技術】
【0002】
運転支援(ADAS)や自動運転(AD)などの車両走行制御を実施する場合は、制御に用いる情報などを取得する車載センサによる検知/検出の性能を高い精度で維持することが肝要となる。
【0003】
特許文献1に、車載センサの検知部を洗浄液によって自動的に洗浄する機能を備えた車載センサ洗浄装置が開示されている。この車載センサ洗浄装置では、検知部の汚れなどの自動洗浄条件が成立した場合に検知部を洗浄することによって、車載センサの高い検知精度を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車載センサの自動洗浄機能をオン/オフに設定できるなど、車載センサ洗浄システムの動作をカスタマイズ可能な車両が存在している。このような車両において、車両の所有者及びドライバーや乗員などの利用者など(以下、併せて「車両ユーザー」という)が車載センサ洗浄システムの動作をカスタマイズできることを認識していない場合には、自動洗浄機能がオフに設定されているとその状態から車両ユーザーの自発的な操作によって自動洗浄機能がオン設定に切り替えられることが期待できない。このため、車載センサの汚れなどによって車載センサによる検知/検出の性能を高い精度で維持することができないおそれがある。
【0006】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、車載センサの自動洗浄機能がオフに設定されている場合に自動洗浄機能の設定切り替えに関する通知を行う、車載センサ洗浄システムなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、車両に搭載される車載センサ洗浄システムであって、車両に搭載された車載センサの洗浄を自動又は手動で行う洗浄部と、車載センサの洗浄を洗浄部に自動で行わせる自動洗浄機能のオン/オフを設定する設定部と、設定部によって自動洗浄機能がオフに設定されている場合、車載センサの過去の洗浄に関する情報に基づいて、自動洗浄機能の設定切り替えに関する通知を行う通知部と、を備える、車載センサ洗浄システムである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の車載センサ洗浄システムなどによれば、車載センサの自動洗浄機能がオフに設定されている場合には、自動洗浄機能の設定切り替えに関する通知を行うことによって、車両ユーザーに自動洗浄機能の有用性などを提案して、機能のオン設定への切り替えを促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る車載センサ洗浄システムの概略構成図
【
図3A】自動洗浄機能設定制御の処理フローチャート
【
図3B】自動洗浄機能設定制御の処理フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の車両に搭載された車載センサ洗浄システムは、車載センサの自動洗浄機能がオフに設定されている場合、車載センサの過去の洗浄に関する情報に基づいて洗浄の実施が望ましいと判断されると、自動洗浄機能の設定切り替えに関する通知をドライバーに対して行う。これにより、車両ユーザーに自動洗浄機能のオン設定への切り替えを促すことができる。
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る車載センサ洗浄システム100の概略を示す構成図である。
図1に例示した車載センサ洗浄システム100は、制御装置110と、通信装置120と、車載センサ130と、ドライバーモニタカメラ140と、HMI装置150と、を備えている。この車載センサ洗浄システム100は、車両に搭載され、車両の外部に構成されるデータサーバー200と、通信可能に接続される。
【0012】
通信装置120は、車載センサ洗浄システム100をデータサーバー200に接続するための通信インターフェイスである。この通信装置120は、制御装置110の制御に基づいて、車載センサ洗浄システム100とデータサーバー200との通信を実現する。本実施形態の通信装置120は、制御装置110から出力される車載センサ130について今実施している洗浄に関する情報(実施情報)を、データサーバー200に送信(アップロード)する。また、通信装置120は、車載センサ130について過去に実施した洗浄に関する情報(過去情報)の送信を、データサーバー200に対して要求する。そして、通信装置120は、要求に応答してデータサーバー200から送信されてくる過去情報を受信(ダウンロード)する。この通信装置120とデータサーバー200との間で通信される実施情報及び過去情報については、後述する。
【0013】
車載センサ130は、例えば、車両前部のウインドシールドガラスなどに設置される車両の前方を撮像するカメラ又は前方に存在する物標を検知するレーダーセンサや、車両後部のトランクリッドやテールゲートなどに設置される車両の後方を撮像するカメラなど、である。
【0014】
この車載センサ130の近傍には、制御装置110からの指示に基づいて車載センサ130の洗浄を実行する洗浄装置(図示せず)が設けられる。また、車載センサ130の近傍には、車載センサ130の汚れを検知して制御装置110に伝える検知装置(図示せず)が設けられてもよい。この洗浄装置や検知装置は、車載センサ130と一体的に構成されてもよいし、別個に構成されてもよい。
【0015】
ドライバーモニタカメラ140は、例えば車両前部のウインドシールドガラスなどに設置され、車両の運転席に着座する乗員であるドライバーを撮像するカメラである。ドライバーモニタカメラ140によって撮像されたドライバーを含む画像は、制御装置110に出力される。
【0016】
HMI(Human Machine Interface)装置150は、様々な車両に関する情報の提示が可能な手段である。HMI装置150には、例えば、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、ナビゲーションシステムのモニター、メーターパネル、及びスピーカーなどの各種のデバイス(図示せず)が用いられる。このHMI装置150は、制御装置110から出力される通知や要求などに基づいて、様々な情報を車両ユーザーに対して提示することができ、また車両ユーザーによる指示や操作などがあった場合に、指示や操作などに応じた情報を制御装置110に対して出力することができる。なお、HMI装置150には、音声ガイダンス機能や音声認識機能が備わっていてもよい。
【0017】
データサーバー200は、複数の車両に関する様々な情報を収集し、収集した情報を活用した車両の管理及び制御を行うためのサーバーであり、例えばクラウド上に構成されるクラウドサーバーとすることができる。このデータサーバー200は、車載センサ洗浄システム100の通信装置120と通信可能に、直接的又は所定のネットワークなどを介して間接的に接続される。
【0018】
制御装置110は、自動又は手動による車載センサ130の洗浄行為を制御することを行う。また、制御装置110は、車両ユーザーに対する自動洗浄機能の設定切り替えに関する通知や、車両ユーザーからの自動洗浄機能の設定切り替えに関する許可(承認)の受け付けを、HMI装置150を介して実施する。
【0019】
この制御装置110は、洗浄機能設定部111と、洗浄制御部112と、ドライバー識別部113と、地域情報取得部114と、通知制御部115と、受付部116と、を備える。
【0020】
洗浄機能設定部111は、自動で車載センサ130の洗浄を実施する自動洗浄機能のオン/オフ設定を少なくとも含む、カスタマイズ可能な車載センサ洗浄システム100の動作を設定制御するための構成である。カスタマイズ可能な車載センサ洗浄システム100の他の動作としては、HMI装置150の表示画面に手動用の洗浄実施ボタンを表示させる設定や、HMI装置150のスピーカーから洗浄タイミングを通知する設定など、を例示できる。
【0021】
洗浄制御部112は、洗浄機能設定部111による設定内容に基づいて、自動又は手動による車載センサ130の洗浄行為を制御するための構成である。この洗浄制御部112は、例えばアクチュエータである洗浄装置(図示せず)に対して洗浄を指示することによって、車載センサ130の洗浄を実施する。また、洗浄制御部112は、洗浄を制御したときの情報として、車両ユーザーの操作に従って手動で行われる洗浄か、システムによって自動で行われる洗浄か、を判断する。この自動洗浄/手動洗浄の情報は、通信装置120を介してデータサーバー200に提供される。
【0022】
ドライバー識別部113は、車両を運転するドライバーを識別するための構成である。具体的には、ドライバー識別部113は、ドライバーモニタカメラ140からドライバーを含む画像を取得し、この取得した画像を解析することなどによってドライバーを識別(特定)する。なお、ドライバーの識別(特定)に用いられる情報は、例えば図示しない記憶部などに予め記憶されている。この識別されたドライバーの情報は、通信装置120を介してデータサーバー200に提供される。
【0023】
地域情報取得部114は、車両が走行している地域に関する情報を取得するための構成である。具体的には、地域情報取得部114は、例えば車両が走行している地域に関する情報として、走行位置の情報(緯度経度、市町村の区分、地図データのメッシュなど)及び走行日時の情報(日付、時刻、曜日など)、さらには走行環境の情報(天候、通過速度など)などを取得する。これらの情報は、車両に搭載されるGPS機能、カーナビゲーション機能、及び時計機能などによって取得可能である。この取得した走行地域に関する情報は、通信装置120を介してデータサーバー200に提供される。
【0024】
通知制御部115は、車載センサ130の洗浄が行われた際、洗浄制御部112が判断した自動洗浄/手動洗浄の情報、ドライバー識別部113が識別したドライバーの情報、及び地域情報取得部114が取得した走行地域に関する情報を車載センサ130について今実施している洗浄に関する実施情報として、通信装置120を介してデータサーバー200に提供させる。また、通知制御部115は、例えばイグニッションがオン(IG-ON)されたことを契機として、車載センサ130について過去に実施した洗浄に関する過去情報をデータサーバー200から取得する。そして、通知制御部115は、洗浄機能設定部111によって自動洗浄機能がオフに設定されている場合、この取得した過去情報を判断して、自動洗浄機能の設定切り替えに関する通知をHMI装置150に対して行う。この過去情報の判断については、後述する。
【0025】
受付部116は、HMI装置150に対して入力された車両ユーザーによる指示や操作などを、HMI装置150から受け付ける。本実施形態では、受付部116は、少なくとも自動洗浄機能のオフからオンへの設定切り替えの許可(承認)を、HMI装置150から受け付けることができる。受付部116が受け付けた許可(承認)の内容は、洗浄機能設定部111に伝えられる。
【0026】
なお、上述した制御装置110の一部又は全部は、典型的にはマイコンなどのプロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェイスなどを含んだECU(Electronic Control Unit)によって構成され得る。この制御装置110を構成するECU(走行制御ECUなど)は、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが読み出して実行することによって、上述した洗浄機能設定部111、洗浄制御部112、ドライバー識別部113、地域情報取得部114、通知制御部115、及び受付部116が行う一部又は全部の機能を実現することができる。
【0027】
[制御]
次に、
図2、
図3A、及び
図3Bをさらに参照して、本実施形態に係る車載センサ洗浄システム100によって実行される制御を説明する。車載センサ洗浄システム100が実行する制御としては、洗浄実施情報収集制御と自動洗浄機能設定制御とがある。
【0028】
(1)洗浄実施情報収集制御
図2は、車載センサ洗浄システム100が実行する洗浄実施情報収集制御の処理フローチャートである。この洗浄実施情報収集制御は、実際に実施された車載センサ130の洗浄に関する情報を収集して、その情報をデータサーバー200にアップロードする制御である。この
図2に示す洗浄実施情報収集制御の処理は、例えば制御装置110の洗浄制御部112によって車載センサ130の洗浄制御がなされると開始される。
【0029】
(ステップS201)
制御装置110の洗浄制御部112は、車載センサ130の洗浄制御が、システムの制御に基づいた自動洗浄なのか、車両ユーザーの操作に基づいた手動洗浄なのか、を判断する。洗浄制御部112によって自動洗浄及び手動洗浄のいずれかが判断されると、ステップS202に処理が進む。
【0030】
(ステップS202)
制御装置110のドライバー識別部113は、ドライバーモニタカメラ140から取得する画像に基づいて、車載センサ130の洗浄制御が行われたときに車両の運転席に着座しているドライバーを識別する。これにより、車両を運転するドライバー個人が特定される。ドライバー識別部113によってドライバーが識別されると、ステップS203に処理が進む。
【0031】
(ステップS203)
制御装置110の地域情報取得部114は、車載センサ130の洗浄制御が行われたときに車両が走行している地域に関する情報を取得する。取得する走行地域に関する情報としては、車両の走行位置(○○町)、走行日時(△月□日××時)、及び走行環境(雨天)などを例示できる。地域情報取得部114によって走行地域に関する情報が取得されると、ステップS204に処理が進む。
【0032】
(ステップS204)
制御装置110の通知制御部115は、自動洗浄/手動洗浄の情報(ステップS201)、識別ドライバーの情報(ステップS202)、及び走行地域に関する情報(ステップS203)を、車載センサ130について今実施している洗浄に関する実施情報として、通信装置120を介してデータサーバー200に送信して提供する。通知制御部115によって各情報がデータサーバー200に提供されると、本洗浄実施情報収集制御が終了する。
【0033】
このように車載センサ洗浄システム100から提供された様々な情報は、データサーバー200によって収集され蓄積及び管理されて、情報を提供した自車両のみならず、他車両においても活用される。
【0034】
(2)自動洗浄機能設定制御
図3A及び
図3Bは、車載センサ洗浄システム100が実行する自動洗浄機能設定制御の処理フローチャートである。
図3Aの処理と
図3Bの処理とは、結合子X及びYで結ばれる。この自動洗浄機能設定制御は、自動洗浄機能がオフに設定されている場合に、所定の条件に従って、自動洗浄機能をオンに設定することを車両ユーザーに提案する制御である。この
図3A及び
図3Bに示す自動洗浄機能設定制御の処理は、例えば車両のイグニッションスイッチがオンにされる(IG-ON)と開始される。
【0035】
(ステップS301)
制御装置110の洗浄機能設定部111は、自動で車載センサ130の洗浄を実施する自動洗浄機能の設定状態を判断する。この判断は、車載センサ130が長期間に亘って洗浄が行われず、汚れたままの状態で放置されるおそれがないか否かを判断するために行われる。
【0036】
洗浄機能設定部111が、自動洗浄機能がオフに設定されていると判断した場合は(ステップS301、オフ)、ステップS302に処理が進む。一方、洗浄機能設定部111が、自動洗浄機能がオンに設定されていると判断した場合は(ステップS301、オン)、本自動洗浄機能設定制御が終了する。
【0037】
(ステップS302)
制御装置110は、車両の運転席に着座しているドライバー及び車両が走行している地域を特定する。ドライバーは、制御装置110のドライバー識別部113がドライバーモニタカメラ140から取得する画像に基づいて識別した情報によって特定可能である。車両の走行地域は、制御装置110の地域情報取得部114がGPS機能などから取得した情報によって特定可能である。制御装置110によってドライバー及び車両の走行地域が特定されると、ステップS303に処理が進む。
【0038】
(ステップS303)
制御装置110の通知制御部115は、特定されたドライバー及び車両の走行地域に関して、車載センサ130について過去に実施した洗浄に関する情報(過去情報)を、通信装置120を介してデータサーバー200から取得する。通知制御部115によって過去の洗浄に関する過去情報がデータサーバー200から取得されると、ステップS304に処理が進む。
【0039】
(ステップS304)
制御装置110の洗浄機能設定部111は、上記ステップS302で特定されたドライバー(特定ドライバー)が過去に手動で実施した車載センサ130の洗浄行為の回数が、第1閾値以上であるか否かを判断する。この判断は、車載センサ130の汚れを推測するために行われる。よって、例えば、判断のパラメータを時間とする場合には、現時刻から所定の時間を遡った期間を「過去」とすることができ、判断のパラメータを距離とする場合には、現在の走行距離(ODD値)から所定の距離を遡った距離を「過去」とすることができる。また、第1閾値は、車載センサ130の汚れが洗浄を必要とする程度(洗浄の実施が望ましい)か否かを基準として、この「過去」の長さ(所定の時間、所定の距離)に応じて任意に設定が可能である。
【0040】
洗浄機能設定部111が、特定ドライバーの手動による過去の洗浄回数が第1閾値以上であると判断した場合は(ステップS304、はい)、ステップS306に処理が進む。一方、洗浄機能設定部111が、特定ドライバーの手動による過去の洗浄回数が第1閾値未満であると判断した場合は(ステップS304、いいえ)、ステップS305に処理が進む。
【0041】
(ステップS305)
制御装置110の洗浄機能設定部111は、上記ステップS302で特定された車両の走行地域(特定走行地域)において過去にシステムが自動で実施した車載センサ130の洗浄行為の回数が、第2閾値以上であるか否かを判断する。この判断は、車載センサ130の汚れを推測するために行われる。よって、例えば、判断のパラメータを時間とする場合には、現時刻から所定の時間を遡った期間、又は降雪がある冬季や梅雨の時期などの特別な期間を「過去」とすることができる。また、第2閾値は、車載センサ130の汚れが洗浄を必要とする程度(洗浄の実施が望ましい)か否かを基準として、この「過去」の長さ(所定の時間、冬季、雨期)に応じて任意に設定が可能である。また、洗浄行為の回数は、特定走行地域における自車両のみを対象にしてもよいし、特定走行地域における自車両及び他車両を含めた複数の車両を対象にしてもよい。また、複数の車両を対象にする場合には、複数の回数の平均値、最大値、又は最小値などを洗浄行為の回数とすることができる。
【0042】
洗浄機能設定部111が、特定走行地域においてシステムの自動による過去の洗浄回数が第2閾値以上であると判断した場合は(ステップS305、はい)、ステップS306に処理が進む。一方、洗浄機能設定部111が、特定走行地域においてシステムの自動による過去の洗浄回数が第2閾値未満であると判断した場合は(ステップS305、いいえ)、本自動洗浄機能設定制御が終了する。
【0043】
(ステップS306)
制御装置110の洗浄機能設定部111は、自動洗浄機能がオフに設定されてから第1時間が経過したか否かを判断する。この判断は、車載センサ130がどれだけ洗浄されていないのかを推測するために行われる。よって、この第1時間は、車載センサ130が洗浄を必要とする(洗浄が望ましいとする)程度に汚れている可能性があるか否かに基づいて、任意に設定することができる。
【0044】
洗浄機能設定部111が、自動洗浄機能がオフに設定されてから第1時間が経過したと判断した場合は(ステップS306、はい)、ステップS307に処理が進む。一方、洗浄機能設定部111が、自動洗浄機能がオフに設定されてから第1時間がまだ経過していないと判断した場合は(ステップS306、いいえ)、本自動洗浄機能設定制御が終了する。
【0045】
(ステップS307)
制御装置110の通知制御部115は、車両に搭載された車載センサ130の自動洗浄機能について、及びその自動洗浄機能の設定がオフ状態であることについて、HMI装置150を介して車両ユーザーに対する説明を実施する。この説明は、自動洗浄機能が車両に搭載されていることを知らなかったり、自動洗浄機能の設定がカスタマイズ可能であることを知らなかったりする車両ユーザーに、そのことをまず周知させる目的で実施される。説明は、テキスト表示のみで行われてもよいし、音声出力のみで行われてもよい、テキスト表示と音声出力との両方で行われてもよい。通知制御部115によって車載センサ130の自動洗浄機能及びその設定について説明が実施されると、ステップS308に処理が進む。
【0046】
(ステップS308)
制御装置110の通知制御部115は、車載センサ130の自動洗浄機能の設定をオンにすることを、HMI装置150を介して車両ユーザーに提案する。このステップS308では、上記ステップS307の説明によって自動洗浄機能及びその設定について車両ユーザーが把握したものと解釈し、さらに一歩進んで設定変更を促すことを目的として行われる。通知制御部115によって自動洗浄機能の設定をオンにすることが提案されると、ステップS309に処理が進む。
【0047】
(ステップS309)
制御装置110の受付部116は、HMI装置150を介して、自動洗浄機能のオフからオンへの設定切り替えの許可(承諾)があったか否か、つまり特定ドライバーを含む車両ユーザーから車載センサ130の自動洗浄機能をオンに設定する明示的な指示があったか否か、を判断する。なお、この判断は、上記ステップS308において自動洗浄機能のオンが提案されてから所定の時間の経過を待った後で行ってもよい。
【0048】
受付部116が、自動洗浄機能をオンに設定する指示があったと判断した場合は(ステップS309、はい)、ステップS310に処理が進む。一方、受付部116が、自動洗浄機能をオンに設定する指示がなかったと判断した場合は(ステップS309、いいえ)、本自動洗浄機能設定制御が終了する。
【0049】
(ステップS310)
制御装置110の洗浄機能設定部111は、車載センサ130の自動洗浄機能をオンに設定する。これにより、車載センサ130が汚れていた場合には、図示しない検知装置において汚れが検知されることによって、直ちに車載センサ130を洗浄することができる。洗浄機能設定部111によって自動洗浄機能がオンに設定されると、本自動洗浄機能設定制御が終了する。
【0050】
なお、上記自動洗浄機能設定制御のフローチャートでは、特定ドライバーの手動による過去の洗浄回数(ステップS304)と、特定走行地域においてシステムの自動による過去の洗浄回数(ステップS305)との両方を判断したが、いずれか一方だけを判断しても構わない。
【0051】
また、上記自動洗浄機能設定制御のフローチャートでは、特定ドライバーの手動による過去の洗浄回数(ステップS304)の条件、特定走行地域においてシステムの自動による過去の洗浄回数(ステップS305)の条件、自動洗浄機能がオフに設定されてからの経過時間(ステップS306)の条件、及び自動洗浄機能をオンに設定する指示あり(ステップS309)の条件のいずれかが満足されない場合には、本自動洗浄機能設定制御を終了させた。しかし、これらの条件が満たされない場合、ステップS301の処理に戻り、車両のイグニッションがオフ(IG-OFF)となるまでの間、繰り返して自動洗浄機能設定制御を行うようにしてもよい。
【0052】
<作用・効果>
以上説明したように、本開示の一実施形態に係る車載センサ洗浄システム100によれば、車両に搭載された車載センサ130の洗浄をシステムが自動で行う自動洗浄機能がオフに設定されている場合、車載センサ130の過去の洗浄(ドライバーによる手動洗浄の回数や走行地域における自動洗浄の回数)に関する情報に基づいて、車載センサ130の汚れが洗浄の実施が望ましい状態であると推測されれば、自動洗浄機能の設定切り替えに関する通知をドライバーなどの車両ユーザーに対して行う。
【0053】
この通知により、例えば車両ユーザーが車載センサ洗浄システム100の動作をカスタマイズできることを認識していない場合に自動洗浄機能がオフに設定されていたとしても、車両ユーザーに自動洗浄機能の有用性などを提案して、機能のオン設定への切り替えを促すことができる。よって、車載センサ130による検知/検出の性能を高い精度で維持できることが期待できる。
【0054】
以上、本開示の一実施形態を説明したが、本開示は、車載センサ洗浄システム、プロセッサとメモリとを備えた車載センサ洗浄システムが実行する方法、この方法を実行するための制御プログラム、制御プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的記憶媒体、及び車載センサ洗浄システムを搭載した車両として捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示の車載センサ洗浄システムは、車載センサの自動洗浄装置を搭載した車両などに利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
100 車載センサ洗浄システム
110 制御装置
120 通信装置
130 車載センサ
140 ドライバーモニタカメラ
150 HMI装置
200 データサーバー
111 洗浄機能設定部
112 洗浄制御部
113 ドライバー識別部
114 地域情報取得部
115 通知制御部
116 受付部