(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1335 20060101AFI20240723BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240723BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G02F1/1335 510
G02B5/30
G02F1/13363
(21)【出願番号】P 2022082552
(22)【出願日】2022-05-19
(62)【分割の表示】P 2021558783の分割
【原出願日】2021-06-29
【審査請求日】2024-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2020117094
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 尭永
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 靖
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-8026(JP,A)
【文献】特開2019-45633(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0174313(US,A1)
【文献】特開2017-9733(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170211(WO,A1)
【文献】特開2011-107198(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0132961(KR,A)
【文献】国際公開第2013/137058(WO,A1)
【文献】特開2014-157285(JP,A)
【文献】特開2014-153559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1335
G02B 5/30
G02F 1/13363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックライト光源、光源側偏光板、液晶セル、及び視認側偏光板をこの順に備える液晶表示装置において、
光源側偏光板及び視認側偏光板はそれぞれ少なくとも1枚の偏光子保護フィルム及び偏光子を有し、
視認側偏光板の偏光子保護フィルムであって偏光子の液晶セルとは反対側の面に位置する偏光子保護フィルムを偏光子保護フィルム1、光源側偏光板の偏光子保護フィルムであって偏光子の液晶セルとは反対側の面に位置する偏光子保護フィルムを偏光子保護フィルム4とした場合、
偏光子保護フィルム4の面内レタデーションが5000~10000nmであり、
偏光子保護フィルム4の厚みが50~95μmであり、
偏光子保護フィルム1の厚み/偏光子保護フィルム4の厚みの比率が0.5~0.97であり、
光源側偏光板の偏光子の吸収軸と偏光子保護フィルム4の遅相軸とがなす角度が90度であり、
但し、上記90度は±10度のズレが許容されるものである液晶表示装置。
【請求項2】
偏光子保護フィルム1の厚みが40~80μmである請求項
1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
偏光子保護フィルム1の厚み/偏光子保護フィルム4の厚みの比率が0.5~0.95である請求項1
又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
偏光子保護フィルム1の厚み/偏光子保護フィルム4の厚みの比率が0.95を超え、0.97以下である請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、代表的には、液晶パネルの反り、虹斑による視認性の低下を抑制しながらもより薄型化が可能な液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置はより大型化、薄型化が求められている。それに伴い液晶表示装置においても、使用中に液晶セルが視認側から見ると長辺方向に凹状に反り隅部が光漏れを起こすといった問題が表面化してきている。また、液晶表示装置に用いられる偏光板では、高レタデーションの偏光子保護フィルムが提案され、普及してきているが、ポリエステルを代表とする高レタデーションの偏光子保護フィルムは虹斑の発生を抑制するために高いレタデーションを確保する必要があり、フィルムの厚みを下げるのには制約があった。特に、虹斑は正面から斜め方向に傾くほど見えやすくなるが、レタデーションが低くなると、虹斑が目立たない角度が急激に狭くなっていた。
【0003】
また、液晶パネルの反りを低減する方法として、光源側偏光板の偏光子保護フィルムの幅方向(TD)の収縮力を調整する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
一方、液晶表示装置は一般的に、液晶セルの両側に偏光板を貼り合わせた構造となっているが、商品として流通している液晶表示装置では、光源側偏光板と視認側偏光板では視認側偏光板の視認側偏光子保護フィルムに反射防止層や防眩層などを設ける以外は、厚みや光学特性など同じ偏光板が用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点に対し、虹斑の発生を防ぎながらより薄型の液晶表示装置を提供することを一つの課題とする。
本発明者らは、液晶パネルの反りが視認側偏光板の偏光子の収縮の影響が大きく、偏光子保護フィルムの厚みを下げると、偏光子保護フィルムが偏光子の収縮に対抗する力も弱くなり、液晶パネルが反りやすくなることを見出した。本発明は、液晶パネルの反りを防ぎながらより薄型の液晶表示装置を提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を包含する。
項1.バックライト光源、光源側偏光板、液晶セル、及び視認側偏光板をこの順に備える液晶表示装置において、光源側偏光板及び視認側偏光板はそれぞれ少なくとも1枚の偏光子保護フィルム及び偏光子を有し、視認側偏光板の偏光子保護フィルムであって偏光子の液晶セルとは反対側に位置する偏光子保護フィルムを偏光子保護フィルム1、光源側偏光板の偏光子保護フィルムであって偏光子の液晶セルとは反対側に位置する偏光子保護フィルムを偏光子保護フィルム4とした場合、偏光子保護フィルム4の面内レタデーションが5000~10000nmであり、偏光子保護フィルム1の面内レタデーション/偏光子保護フィルム4の面内レタデーションの比率が0.55~0.97である液晶表示装置。
【0008】
項2.偏光子保護フィルム1の面内レタデーションが4500~9500nmである項1に記載の液晶表示装置。
【0009】
項3.偏光子保護フィルム1の面内レタデーション/偏光子保護フィルム4の面内レタデーションの比率が0.55~0.95である項1又は2に記載の液晶表示装置。
【0010】
項4.偏光子保護フィルム4の厚みが50~95μmであり、偏光子保護フィルム1の厚み/偏光子保護フィルム4の厚みの比率が0.5~0.97である項1~3のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0011】
項5.偏光子保護フィルム1の厚みが40~80μmである項1~4のいずれかに記載の液晶表示装置。
【0012】
項6.偏光子保護フィルム1の厚み/偏光子保護フィルム4の厚みの比率が0.5~0.95である項1~5のいずれかに記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0013】
上記構成により、例えば、虹斑の発生を防ぎながらより薄型の液晶表示装置を提供すること、液晶パネルの反りを防ぎながらより薄型の液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明者らは、液晶パネルの虹斑及び反りに関してそれらの発生及び抑制方法を鋭意検討したところ、以下のことを明らかにし、薄型化を実現しながらも、虹斑及び反りを抑制する方法を見出し、さらに検討を重ねて本発明に至った。
・高レタデーションの偏光子保護フィルムを用いた偏光板の場合、この偏光板を視認側に用いた場合に比べて光源側に用いた場合の方が虹斑は見えやすいこと。
・光源側偏光板の偏光子保護フィルムと視認側偏光板の偏光子保護フィルムを同じレタデーションにした場合、視認側偏光板の偏光子保護フィルムのレタデーションに過剰分があること。
・視認側偏光板の偏光子保護フィルムのレタデーションの過剰分をなくすことでより表示装置の薄型化が可能となること。
・液晶パネルの反りを抑制するためには、光源側偏光板の液晶セルとは反対側の偏光子保護フィルムの強度が重要であること。
【0015】
本発明の液晶表示装置は、バックライト光源、光源側偏光板、液晶セル、及び視認側偏光板をこの順に備える。本明細書において、液晶パネルとは、液晶化合物を2枚の基板間に封入した液晶セル、並びに液晶セルの光源側及び視認側のそれぞれに配置(又は貼り合わせ)された偏光板を有するものをいう。従って、本発明の液晶表示装置は、バックライト光源及び液晶パネルを有する。偏光板は偏光子及び少なくとも1枚の偏光子保護フィルムを有し、偏光子保護フィルムは、偏光子の液晶セルとは反対側に配置(又は貼り合わせ)されている。さらに、偏光子の液晶セル側には別のフィルム又は層(偏光子保護フィルム、位相差フィルム、硬化樹脂層等)が設けられていてもよく、偏光子が直接液晶セルに貼り合わされていてもよい。
【0016】
なお、本明細書において、液晶パネルを単にパネル、液晶セルを単にセルと称することがある。また、視認側偏光板の液晶セルとは反対側の偏光子保護フィルムを偏光子保護フィルム1、視認側偏光板の液晶セル側の偏光子保護フィルム又は位相差フィルムを偏光子保護フィルム2、光源側偏光板の液晶セル側の偏光子保護フィルム又は位相差フィルムを偏光子保護フィルム3、光源側偏光板の液晶セルとは反対側の偏光子保護フィルムを偏光子保護フィルム4と称することがある。
【0017】
以下、偏光子保護フィルム1及び偏光子保護フィルム4の特性を説明する。特に断りのない限り、偏光子保護フィルム1、偏光子保護フィルム4と称する場合は、後述する機能層などが設けられていない基材フィルムを意味する。なお、基材フィルムは、後述する易接着層を含んでいてもよい。
【0018】
偏光子保護フィルム4の面内レタデーション(以下、Re又はレタデーションと記することがある)の下限は好ましくは5000nmであり、より好ましくは5500nmであり、さらに好ましくは6000nmである。上記以上にすることで虹斑が目立たない角度を広く確保することができる。
偏光子保護フィルム4のReの上限は好ましくは10000nmであり、より好ましくは9500nmであり、さらに好ましくは9000nmであり、特に好ましくは8700nmである。上記以下にすることで余剰な厚みを減らし、表示装置の薄型化がし易くなる。
Reは、フィルムの面内レタデーションであり、フィルム平面方向から見た時の直交する二軸の屈折率nxとnyの差にフィルムの厚みdを掛けて得られる。なお、前記屈折率は、アッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T、測定波長589nm)によって求めることができる。
【0019】
偏光子保護フィルム1のReの下限は好ましくは4500nmであり、より好ましくは5000nmであり、さらに好ましくは5500nmである。上記以上にすることで虹斑が目立たない角度を広く確保することができる。
偏光子保護フィルム1のReの上限は好ましくは9500nmであり、より好ましくは9000nmであり、さらに好ましくは8500nmであり、特に好ましくは8000nmであり、最も好ましくは7500nmである。上記以下にすることで余剰な厚みを減らし、表示装置の薄型化がし易くなる。
【0020】
偏光子保護フィルム1の面内レタデーション/偏光子保護フィルム4の面内レタデーションの比率(単にRe比という場合がある)の下限は好ましくは0.55であり、より好ましくは0.6であり、さらに好ましくは0.65であり、特に好ましくは0.7である。
Re比の上限は好ましくは0.97であり、より好ましくは0.96であり、さらに好ましくは0.95である。これに加え、特に好ましい上限は、0.9、0.85、又は0.8である。上記以下にすることで余剰な厚みを減らし、表示装置の薄型化がし易くなる。
【0021】
なお、偏光子保護フィルム1及び4が類似した光学特性を有しながらも本発明の効果を求めるため、Re比は0.95超、0.97以下であることも好ましい形態である。
【0022】
Re比の範囲は、偏光子保護フィルム1よりも偏光子保護フィルム4に高レタデーションのフィルムを用いた場合の方が虹斑が目立ちやすく、同じレタデーションのフィルムであっても、光源側偏光板の偏光子保護フィルム4に用いた場合の方が虹斑が目立たない範囲が狭いという知見に基づく。すなわち、虹斑が目立たない範囲にするのであれば、視認側偏光板の偏光子保護フィルム1の方はレタデーションが低くてもよい。言い換えれば、偏光子保護フィルム1と偏光子保護フィルム4で同じレタデーションのフィルムであった場合、虹斑は偏光子保護フィルム4の影響が強く、偏光子保護フィルム1には余剰のレタデーションが生じ得る。なお、ここで言う虹斑が目立たないとは、虹斑が観察されないことも含む。
【0023】
また、テレビなどを代表とする液晶表示装置、特にVAタイプやIPSタイプの液晶表示装置では、偏光サングラスをかけて見た場合のブラックアウトを防止するため、視認側偏光板の偏光子の吸収軸方向が水平方向となっていることが多い。さらに、一般的な偏光子はフィルム製膜の流れ方向(MD)方向に延伸されてMD方向が吸収軸になるが、高レタデーションフィルムはテンターでTD方向に延伸される場合が多いため、TD方向が主配向軸になっている場合が多く、その結果、偏光板では偏光子の吸収軸方向と高レタデーションの偏光子保護フィルムの主配向軸方向は直交している場合が多い。従って、偏光子保護フィルム1の主配向軸は液晶表示装置の垂直方向であり、偏光子保護フィルム4の主配向軸は液晶表示装置の水平方向である場合が多い。さらに、上記の一般的な液晶表示装置では、長辺方向を水平方向とする場合が多い。
【0024】
一方、高レタデーションフィルムにより生じる虹斑は、フィルムの法線方向から、フィルムの主配向軸方向又は直交方向に傾けて観察した場合には生じにくく、フィルムの主配向軸方向から直交方向に20~50度程度ずれた方向、すなわちやや主配向軸方向よりに傾けて観察した場合の方が虹斑が生じやすい。一般的に、液晶表示画面を見る場合には、垂直方向(上下)に角度をもって見る場合より、水平方向(左右)に角度を持ってみる場合が多い。このことから、薄型化のためには、光源側偏光板の偏光子保護フィルム4で生じる虹斑の低減を優先する方が好ましい。
【0025】
光源側偏光板の偏光子保護フィルム4の方が虹斑が強く出る理由は、光源と偏光子保護フィルム4との間には輝度向上のために反射型偏光板が用いられる場合が多く、偏光子保護フィルム4には直線偏光が入射されること、さらに偏光子保護フィルム4の表面界面の反射により偏光成分が生じ、レタデーションを有する偏光子保護フィルム4をこの偏光成分が通過する時に乱れこの乱れが光源側偏光板の偏光子で明確にされること、視認側偏光板の偏光子保護フィルム1の表面には反射防止層や防眩層が設けられることが多く、虹斑がより抑制されやすいこと、などが考えられるが、本発明は理由の如何により限定されるものではない。
【0026】
偏光子保護フィルム4の厚み方向レタデーション(Rth)の下限は好ましくは5200nmであり、より好ましくは5500nmであり、さらに好ましくは5700nmであり、さらにより好ましくは6000nmであり、特に好ましくは6200nmである。偏光子保護フィルム4のRthの上限は好ましくは12000nmであり、より好ましくは11000nmであり、さらに好ましくは10000nmであり、特に好ましくは9500nmである。
【0027】
偏光子保護フィルム1のRthの下限は好ましくは4700nmであり、より好ましくは5000nmであり、さらに好ましくは5200nmであり、さらにより好ましくは5500nmであり、特に好ましくは5700nmである。偏光子保護フィルム1のRthの上限は好ましくは10000nmであり、より好ましくは9500nmであり、さらに好ましくは9000nmであり、さらにより好ましくは8500nmであり、特に好ましくは8000nmである。
【0028】
厚み方向レタデーションとは、フィルム厚み方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz(=|nx-nz|)、△Nyz(=|ny-nz|)にそれぞれフィルム厚みdを掛けて得られるレタデーションの平均値である。
【0029】
偏光子保護フィルム1及び4はそれぞれ独立してRe/Rthの下限が好ましくは0.8であり、より好ましくは0.85であり、さらに好ましくは0.9である。偏光子保護フィルム1及び4はそれぞれ独立してRe/Rthの上限が好ましくは1.2であり、より好ましくは1.1であり、さらに好ましくは1.05であり、特に好ましくは1である。Re/Rthが大きいほど、虹斑が目立たない角度の範囲が広くなる。完全な1軸性(1軸対称)フィルムではRe/Rthは2となるが数値が2から遠ざかるにつれて、配向方向と直交する方向の機械的強度が向上し、フィルムが破断し難くなり生産性が向上する傾向がある。
【0030】
偏光子保護フィルム1及び4はそれぞれ独立してNZ係数の下限が好ましくは1.4であり、より好ましくは1.45であり、さらに好ましくは1.47である。上記以上にすることで安定して生産しやすくなる。偏光子保護フィルム1及び4はそれぞれ独立してNZ係数の上限が好ましくは1.7であり、より好ましくは1.68であり、さらに好ましくは1.66である。
NZ係数が小さいほど虹斑が目立たない角度の範囲が広くなる。完全な一軸性(一軸対称)フィルムではNZ係数は1.0となるが、数値が1.0から遠ざかるにつれて、配向方向と直交する方向の機械的強度が向上し、フィルムが破断し難くなり生産性が向上する傾向がある。
NZ係数は、NZ=|nx-nz|/|nx-ny|であり、フィルムのnx、ny、nzを、式に代入して求める。
【0031】
上述した、Re、Rth、Re/Rth、及びNZ係数の適正な範囲、特に視野の広さに関係するRe、Rth、及びNZ係数の下限並びにRe/Rthの上限は、液晶表示装置の用途により適正な範囲を選ぶことができる。例えば、テレビやデジタルサイネージ用途では広い視野角が好ましいが、例えば、カーナビゲーション、ミラーレス自動車等のバックやサイドのモニター、パーソナルコンピューターのモニター、ATMの画面、スマートフォンなどでは視野角が狭くても大きな問題は起きない場合がある。従って、本発明の効果は、必ずしもすべてにおいて広い視野角が好ましいというものではなく、その用途にとって必要な視野角を確保しながらより薄型が可能になるというものである。
【0032】
偏光子保護フィルム4(光源側偏光板の液晶セルとは反対側の偏光子保護フィルム)の厚みの下限は好ましくは50μmであり、より好ましくは55μmであり、さらに好ましくは60μmである。上記以上にすることで液晶パネルの反りを抑制し易くなる、また、虹斑の発生を抑制するためのレタデーションを確保し易くなる。
偏光子保護フィルム4の厚みの上限は好ましくは95μmであり、より好ましくは90μmであり、さらに好ましくは85μmである。上記以下にすることで表示装置の薄型化がし易くなる。
【0033】
偏光子保護フィルム1(視認側偏光板の液晶セルとは反対側の偏光子保護フィルム)の厚みの下限は好ましくは40μmであり、より好ましくは45μmであり、さらに好ましくは50μmである。上記以上にすることで液晶パネルの反りを抑制し易くなる、また、虹斑の発生を抑制するためのレタデーションを確保し易くなる。
偏光子保護フィルム1の厚みの上限は好ましくは80μmであり、より好ましくは75μmであり、さらに好ましくは70μmであり、特に好ましくは65μmである。上記以下にすることで表示装置の薄型化がし易くなる。
【0034】
偏光子保護フィルム1の厚み/偏光子保護フィルム4の厚みの比率(単に厚み比という場合がある)の下限は好ましくは0.5であり、より好ましくは0.6であり、さらに好ましくは0.65であり、特に好ましくは0.7である。厚み比の上限は好ましくは0.97であり、より好ましくは0.96であり、さらに好ましくは0.95である。これに加え、特に好ましい上限は、0.9、0.85、又は0.8である。上記以下にすることで余剰な厚みを減らし、表示装置の薄型化がし易くなる。
【0035】
なお、偏光子保護フィルム1及び4が類似した光学特性を有しながらも本発明の効果を求めるために、厚み比は0.95超、0.97以下であることも好ましい形態である。
【0036】
厚み比の範囲は、液晶パネルの反りが視認側偏光板の偏光子の収縮(画面の長辺方向;通常MD方向)の影響が大きく、この反りを抑制するためには、セルを挟んで反対側に位置する光源側偏光板の偏光子保護フィルム4の強度が重要であるとの知見に基づく。視認側偏光板の偏光子の収縮に対抗するためには、例えば、視認側偏光板の偏光子保護フィルム1が偏光子のMD方向に収縮することに対抗する強度と、光源側偏光板の偏光子保護フィルム4がTD方向に伸びることに対抗する強度が必要であるが、一般的な高レタデーションの偏光子保護フィルムの場合はテンターでTD方向に延伸されていることが多く、薄型化のためには、TD方向の強度が強いために偏光子保護フィルム1よりも偏光子保護フィルム4を厚くすることが液晶パネルの反りを抑制するためには有利であり得る。言い換えると、偏光子保護フィルム1と偏光子保護フィルム4を同じ厚みにすることは、偏光子保護フィルム1に余剰の厚みがあり、より薄型化するには不利であり得る。
【0037】
偏光子保護フィルム1と偏光子保護フィルム4の合計のフィルム厚みの下限は好ましくは90μmであり、より好ましくは95μmであり、さらに好ましくは100μmである。上記以上にすることで液晶パネルの反りを抑制し易くなり、Reを確保し虹斑の発生を抑制し易くなる。
偏光子保護フィルム1と偏光子保護フィルム4の合計のフィルム厚みの上限は好ましくは155μmであり、より好ましくは150μmであり、さらに好ましくは145μmである。上記以下にすることで表示装置の薄型化がし易くなる。
【0038】
なお、液晶パネルの反りは、偏光子の収縮力、液晶表示装置の大きさなどで変わってくる。従って、本発明の効果は、必ずしもすべてにおいて偏光子保護フィルムの厚みが特定値以下になることが好ましいというものではなく、偏光板の偏光子の収縮力や大きさにとって必要な厚みを確保しながらより薄型が可能になるというものである。
【0039】
また、実施例においては、偏光子保護フィルムの厚み、レタデーションは基材フィルムの状態で測定しているが、偏光板として加工後であれば、偏光板を切り出して断面を光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察して厚みを測定してもよい。レタデーションを求めるための屈折率の測定は、偏光子保護フィルムを剥離し、表面に接着層や機能層がある場合にはこれらを研磨するか、削り取った後の基材フィルムの屈折率を測定してもよい。
さらに、これらの値は、長辺方向、短辺方向ともに両端から約5cmの位置から均等にそれぞれ5点、計5×5=25点で測定した平均値とすることが出来る。
【0040】
偏光子保護フィルム1及び4に用いられる樹脂は、配向により複屈折を生じるものであれば特に限定はされないが、レタデーションを大きくできる点で、それぞれ独立して、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレンなどが好ましく、特にポリエステルが好ましい。好ましいポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリテトラメチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられ、中でもPET、PENが好ましい。
【0041】
PETの場合、フィルムを構成する樹脂の極限粘度(IV)は0.5~1.5dL/gであることが好ましい。極限粘度(IV)の下限はより好ましくは0.55dL/gであり、さらに好ましくは0.58L/gであり、特に好ましくは0.6dL/gである。極限粘度(IV)の上限はより好ましくは1.2dL/gであり、さらに好ましくは1dL/gである。0.5dL/g以上であると、耐衝撃性など機械的強度に優れ、フィルムの製造が容易である。1.5dL/g以下であると、フィルムの製造が容易である。極限粘度(IV)はフェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(=3/2;質量比)の混合溶媒に溶解し、温度30℃にて測定される。
【0042】
偏光子保護フィルム1及び4は、それぞれ独立して、波長380nmの光線透過率が20%以下であることが望ましい。前記光線透過率は15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、5%以下が特に好ましい。前記光線透過率が20%以下であれば、偏光層中のヨウ素や二色性色素の紫外線による変質を抑制することができる。なお、波長380nmの光線透過率は、フィルムの平面に対して垂直方向に測定したものであり、分光光度計(例えば、日立U-3500型)を用いて測定することができる。
【0043】
偏光子保護フィルム1及び4に含まれる基材フィルムの波長380nmの光線透過率を20%以下にすることは、基材フィルム中に紫外線吸収剤を添加すること、紫外線吸収剤を含有した塗布液を基材フィルム表面に塗布すること、紫外線吸収剤の種類、濃度、及び基材フィルムの厚みを適宜調節すること等によって達成できる。紫外線吸収剤は公知の物質である。紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤が挙げられるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。
【0044】
有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系、及びそれらの組み合わせ等が挙げられるが上記の光線透過率を得られる限り特に限定されない。
【0045】
また、基材フィルムには滑り性向上のため、平均粒径0.05~2μmの粒子を添加することも好ましい。粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレー、リン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等の無機粒子や、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系等の有機ポリマー系粒子等が挙げられる。
これら粒子は基材フィルム全体に添加してもよいが、スキン-コアの共押出多層構造にし、スキン層のみに添加してもよい。
【0046】
偏光子保護フィルム1及び4は一般的なフィルムの製造方法に従って得ることができる。偏光子保護フィルム1及び4がPETフィルム等のポリエステルフィルムの場合を例にして説明する。以下、製造方法の説明において、偏光子保護フィルム1及び4をポリエステルフィルムと称する場合がある。例えば、ポリエステルフィルムの製造方法としては、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度において、縦方向及び/又は横方向に延伸し、熱処理を施す方法が挙げられる。
【0047】
ポリエステルフィルムは一軸延伸であっても、二軸延伸であってもよいが、二軸性が強くなると必要なレタデーションを確保するために厚みが必要になるため、一軸延伸が好ましい。
【0048】
ポリエステフィルムの主配向軸は、フィルムの走行方向(長手方向、MD方向)であっても、長手方向と直交する方向(幅方向、TD方向)であってもよい。MD延伸の場合はロール延伸が好ましく、TD延伸の場合はテンター延伸が好ましい。
【0049】
延伸ではポリエステルフィルムを予熱し、好ましくは80~130℃、より好ましくは90~120℃で延伸する。延伸倍率は3~7倍が好ましく、より好ましくは3.5~6.5倍、さらに好ましくは3.8倍から6.2倍である。
また、より一軸性を高めるため、延伸時に延伸方向と直交する方向に収縮させることも好ましい。テンターでのTD延伸の場合、収縮は例えばテンタークリップ間隔を狭くすることにより行うことができる。収縮処理は、1~20%が好ましく、より好ましくは2~15%である。
【0050】
二軸延伸を行う場合は、上記を主延伸とし、主延伸の前に主延伸とは直交する方向に1.1~2倍、好ましくは1.2~1.8倍の延伸を行うことが好ましい。
【0051】
延伸に続き熱固定を行うことが好ましい。熱固定温度は150~250℃が好ましく、より好ましくは170~230℃である。熱固定において、主延伸方向又はこれと直交する方向に緩和処理を行うことも好ましい。緩和処理は、0.5~10%が好ましく、より好ましくは1~5%である。
【0052】
熱固定後のポリエステルフィルムは冷却後ロール状に巻き取られる。冷却過程の途中で、主延伸方向に追加微延伸を行うことも、液晶パネルの反りを低減させる上で好ましい。追加微延伸は、ポリエステルフィルム温度が80~150℃の間で行うことが好ましく、倍率は1~5%が好ましく、1.5~3%がより好ましい。
【0053】
偏光子保護フィルム1及び4にはコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理などの接着性を向上させる処理を行ってもよい。
【0054】
偏光子保護フィルム1及び4には偏光子(又は偏光膜)自体との密着性、或いは偏光子(又は偏光膜)の接着剤層又は配向層との密着性を向上させるため、易接着層(易接着層P1)が設けられていてもよい。
易接着層に用いられる樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂などが用いられ、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、アクリル樹脂が好ましい。易接着層に用いられる樹脂は架橋されていることが好ましい。架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ樹脂、オキサゾリン化合物等が挙げられる。また、ポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂を添加することも偏光子との密着性を向上させるために有用な手段である。
【0055】
易接着層はこれら樹脂と必要により架橋剤、粒子等を添加した水系塗料として偏光子保護フィルム1及び4に塗布及び乾燥して設けることができる。粒子としては上述の基材フィルムに添加されるものが例示される。
易接着層は、延伸済みのフィルムにオフラインで設けてもよいが、製膜工程中にインラインで設けることが好ましい。インラインで設ける場合は、縦延伸前及び横延伸前のいずれであってもよいが、横延伸前(特に横延伸直前)に塗工され、テンターによる予熱、加熱、熱処理工程で乾燥、架橋されることが好ましい。なお、ロールによる縦延伸前(特に縦延伸直前)でインラインコートする場合には塗工後、縦型乾燥機で乾燥させた後に延伸ロールに導くことが好ましい。
易接着層の塗工量(乾燥後の塗工量)は0.01~1.0g/m2が好ましく、さらには0.03~0.5g/m2が好ましい。
【0056】
偏光子保護フィルム1及び4の偏光子(又は偏光膜)が積層される面とは反対側には、それぞれ独立して、ハードコート層、反射防止層、低反射層、防眩層、帯電防止層などの機能層が設けられていることも好ましい形態である。特に、偏光子保護フィルム1は液晶表示装置の視認側最表面(視認側表面近傍)になる場合も多く、反射防止層、低反射層、及び防眩層のいずれかが設けられていることが好ましい。反射防止層、低反射層、及び防眩層などを総称して反射低減層という。反射低減層は、液晶表示画面に外光が映り込んで見にくくなることを防ぐだけでなく、界面の反射を抑制して虹斑を低減させたり、目立ち難くさせたりする作用もある。また、機能層が設けられた偏光子保護フィルム1及び4において、機能層が設けられる前の状態のフィルムを基材フィルムという。なお、基材フィルムは上記易接着層を含んでいる場合もある。
【0057】
反射低減層側から測定した偏光子保護フィルムの反射率の上限は好ましくは5%であり、より好ましくは4%であり、さらに好ましくは3%であり、特に好ましくは2%であり、最も好ましくは1.5%である。上記以下であると虹斑及び色再現性に影響を及ぼさない。
上記反射率の下限は特に限定されるものではないが、現実的な面から好ましくは0.01%であり、さらに好ましくは0.1%である。
【0058】
(低反射層)
低反射層は、基材フィルムの表面に低屈折率層を設けることで空気との屈折率差を小さくして、反射率を低減させる機能を有する層である。
【0059】
(反射防止層)
反射防止層は、低屈折率層の厚みをコントロールして、低屈折率層の上側界面(例えば、低屈折率層-空気の界面)と低屈折率層の下側界面(例えば、基材フィルム-低屈折率層の界面)との反射光を干渉させて反射を制御する層である。この場合、低屈折率層の厚みは、可視光の波長(400~700mn)/(低屈折率層の屈折率×4)程度となることが好ましい。
反射防止層と基材フィルムとの間には高屈折率層を設けることも好ましい形態であり、低屈折率層や高屈折率層を2層以上設け、多重干渉により反射防止効果をさらに高めてもよい。
【0060】
反射防止層の場合、反射率の上限は好ましくは2%であり、より好ましくは1.5%であり、さらに好ましくは1.2%であり、特に好ましくは1%である。
【0061】
(低屈折率層)
低屈折率層の屈折率は、1.45以下が好ましく、1.42以下がより好ましい。また、低屈折率層の屈折率は、1.2以上が好ましく、1.25以上がより好ましい。
なお、低屈折率層の屈折率は、波長589nmの条件で測定される値である。
【0062】
低屈折率層の厚みは限定されないが、通常、30nm~1μm程度の範囲内から適宜設定すればよい。また、低屈折率層表面の反射と、低屈折率層とその内側の層(基材フィルム、ハードコート層等)との界面反射とを相殺させて、より反射率を低くする目的であれば、低屈折率層の厚みは70~120nmが好ましく、75~110nmがより好ましい。
【0063】
低屈折率層としては、好ましくは(1)バインダ樹脂及び低屈折率粒子を含有する樹脂組成物からなる層、(2)低屈折率樹脂であるフッ素系樹脂からなる層、(3)シリカ又はフッ化マグネシウムを含有するフッ素系樹脂組成物からなる層、(4)シリカ、フッ化マグネシウム等の低屈折率物質の薄膜等が挙げられる。
【0064】
(1)の樹脂組成物に含有されるバインダ樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリルなど特に制限なく用いることができる。中でもアクリルが好ましく、光照射により光重合性化合物を重合(架橋)させて得られたものであることが好ましい。
【0065】
光重合性化合物としては、光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、光重合性ポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して用いることができる。光重合性化合物としては、光重合性モノマーと、光重合性オリゴマー又は光重合性ポリマーとの組み合わせが好ましい。これらの光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、光重合性ポリマーは多官能のものが好ましい。
【0066】
多官能モノマーとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)等が挙げられる。なお、塗工粘度や硬度の調整のため、単官能モノマーを併用してもよい。
【0067】
多官能オリゴマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
多官能ポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル-ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0069】
(1)の樹脂組成物には、上記成分の他に重合開始剤、架橋剤の触媒、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、界面活性剤などが含まれていてもよい。
【0070】
(1)の樹脂組成物に含まれる低屈折率粒子としては、シリカ粒子(例えば、中空シリカ粒子)、フッ化マグネシウム粒子等が挙げられ、中でも、中空シリカ粒子が好ましい。このような中空シリカ粒子は、例えば、特開2005-099778号公報の実施例に記載の製造方法により作製できる。
【0071】
低屈折率粒子の一次粒子の平均粒子径は、5~200nmが好ましく、5~100nmがより好ましく、10~80nmがさらに好ましい。
【0072】
低屈折率粒子は、シランカップリング剤で表面処理されたものがより好ましく、中でも(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面処理されたものが好ましい。
【0073】
低屈折率層における低屈折率粒子の含有量は、バインダ樹脂100質量部に対して10~250質量部が好ましく、50~200質量部がより好ましく、100~180質量部がさらに好ましい。
【0074】
(2)のフッ素系樹脂としては、少なくとも分子中にフッ素原子を含む重合性化合物又はその重合体を用いることができる。重合性化合物としては特に限定されないが、例えば、光重合性官能基、熱硬化極性基等の硬化反応性基を有するものが好ましい。また、これら複数の硬化反応性基を同時に併せ持つ化合物でもよい。この重合性化合物に対し、重合体は、上記の硬化反応性基等を有しないものである。
【0075】
光重合性官能基を有する化合物としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーを広く用いることができる。
【0076】
低屈折率層には耐指紋性を向上させる目的で、公知のポリシロキサン系又はフッ素系の防汚剤を適宜添加することも好ましい。
【0077】
低屈折率層の表面は、防眩性を出すために凹凸面であってもよいが、平滑面であることも好ましい。
低屈折率層の表面が平滑面である場合、低屈折率層の表面の算術平均粗さRa(JIS B0601:1994)は、好ましくは20nm以下であり、より好ましくは15nm以下であり、さらに好ましくは10nm以下であり、特に好ましくは8nm以下であり、通常、1nm以上である。また、低屈折率層の表面の十点平均粗さRz(JIS B0601:1994)は、好ましくは160nm以下であり、より好ましくは155nm以下であり、通常、50nm以上である。
【0078】
高屈折率層の屈折率は1.55以上が好ましく、1.56以上がより好ましい。また、高屈折率層の屈折率は1.85以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.75以下がさらに好ましく、1.7以下がさらにより好ましい。
なお、高屈折率層の屈折率は、波長589nmの条件で測定される値である。
【0079】
高屈折率層の厚みは、30~200nmであることが好ましく、50~180nmであることがより好ましい。高屈折率層は複数の層であってもよいが、2層以下が好ましく、単層がより好ましい。複数の層の場合は、複数の層の厚みの合計が、上記範囲内であることが好ましい。
【0080】
高屈折率層を2層とする場合は、低屈折率層側の高屈折率層の屈折率をより高くすることが好ましく、具体的には、低屈折率層側の高屈折率層の屈折率は1.6~1.85であることが好ましく、他方の高屈折率層の屈折率は1.55~1.7であることが好ましい。
【0081】
高屈折率層は高屈折率粒子及び樹脂を含む樹脂組成物からなることが好ましい。
中でも、高屈折率粒子としては、五酸化アンチモン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、酸化セリウム粒子、スズドープ酸化インジウム粒子、アンチモンドープ酸化スズ粒子、酸化イットリウム粒子、及び酸化ジルコニウム粒子等が好ましい。これらの中でも酸化チタン粒子及び酸化ジルコニウム粒子が好適である。
【0082】
高屈折率粒子は2種以上を併用してもよい。特に、第1の高屈折率粒子とそれより表面電荷量が少ない第2の高屈折率粒子とを添加することも凝集を防ぐためには好ましい。また、高屈折率粒子は表面処理されていることも分散性の面から好ましい。
【0083】
高屈折率粒子の一次粒子の好ましい平均粒子径は、低屈折率粒子と同様である。
【0084】
高屈折率粒子の含有量は、樹脂100質量部に対して、30~400質量部であることが好ましく、50~200質量部であることがより好ましく、80~150質量部であることがさらに好ましい。
【0085】
高屈折率層に用いられる樹脂としては、フッ素系樹脂を除いて低屈折率層で挙げた樹脂と同じである。
【0086】
高屈折率層の上に設けられる低屈折率層を平坦にするためには、高屈折率層の表面も平坦であることが好ましい。
【0087】
高屈折率層及び低屈折率層は、例えば、上記の光重合性化合物を含む塗料を、基材フィルムに塗布し、乾燥させた後、塗膜状の塗料に紫外線等の光を照射して、光重合性化合物を重合(架橋)させることにより形成することができる。
【0088】
高屈折率層及び低屈折率層を形成させるための塗料には、必要に応じて、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、溶剤、重合開始剤を添加してもよい。さらに、分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
【0089】
(防眩層)
防眩層は表面に凹凸を設けて乱反射させることで、外光が表面で反射する場合の光源の形の映り込みを防止したり、眩しさを低減したりさせる層である。
【0090】
防眩層の表面の凹凸の算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは0.25μm以下であり、より好ましくは0.2μm以下であり、さらに好ましくは0.15μm以下であり、さらにより好ましくは0.12μm以下であり、通常、0.02μm以上である。
【0091】
防眩層の表面の凹凸の十点平均粗さ(Rzjis)は、好ましくは0.15μm以上であり、より好ましくは0.2μm以上であり、さらに好ましくは0.25μm以上であり、さらにより好ましくは0.3μm以上である。また、Rzjisは、好ましくは2μm以下であり、より好ましくは1.5μm以下であり、さらに好ましくは1.2μm以下であり、さらにより好ましくは1μm以下であり、特に好ましくは0.8μm以下である。
【0092】
Ra及びRzjisは、JIS B0601-1994又はJIS B0601-2001に準拠して、接触型粗さ計を用いて測定される粗さ曲線から算出される。
【0093】
基材フィルムに防眩層を設ける方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
・粒子(フィラー)等を含む防眩層用塗料を塗工する
・防眩層用樹脂を凹凸構造を有する金型に接触させた状態で硬化させる
・防眩層用樹脂を凹凸構造を有する金型に塗布し、基材フィルムに転写する
・乾燥、製膜時にスピノーダル分解が生じる塗料を塗工する
【0094】
防眩層の厚みの下限は、好ましくは0.1μmであり、より好ましくは0.5μmである。防眩層の厚みの上限は、好ましくは100μmであり、より好ましくは50μmであり、さらに好ましくは20μmである。
【0095】
防眩層の屈折率は、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.3以上であり、さらに好ましくは1.4以上である。また、防眩層の屈折率は、好ましくは1.8以下であり、より好ましくは1.7以下である。
防眩層自体の屈折率を低くして低反射効果を求める場合、防眩層の屈折率は、1.2~1.45が好ましく、1.25~1.4がより好ましい。
防眩層の上に後述の低屈折率層を設ける場合、防眩層の屈折率は、1.5~1.8が好ましく、1.55~1.7がより好ましい。
なお、防眩層の屈折率は、波長589nmの条件で測定される値である。
【0096】
低屈折率層に凹凸を設けて防眩性低反射層としてもよく、防眩層の凹凸上に低屈折率層を設けて反射防止機能を持たせ、防眩性反射防止層としてもよい。
【0097】
(ハードコート層)
上記の反射低減層の下層としてハードコート層を設けることも好ましい形態である。
ハードコート層は鉛筆硬度でH以上が好ましく、2H以上がより好ましい。ハードコート層は、例えば、熱硬化性樹脂又は放射線硬化性樹脂の硬化物を含む樹脂組成物からなり、ハードコート層形成用塗料を塗布、硬化させて設けることができる。
【0098】
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、これらの組合せ等が挙げられる。熱硬化性樹脂のハードコート層形成用塗料には、これら熱硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤、触媒、上記の高屈折率層及び低屈折率層を形成させるための塗料に含まれる添加物等が加えられていてもよい。
【0099】
放射線硬化性樹脂は、放射線硬化性官能基を有する化合物であることが好ましく、放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。このうち、電離放射線硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する、多官能性(メタ)アクリレート系化合物が更に好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマーであってもオリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0100】
これらの具体例としては、上記のバインダ樹脂として挙げたものが用いられる。
ハードコートとしての硬度を達成するためには、放射線硬化性官能基を有する化合物中、2官能以上のモノマーが50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。さらには、放射線硬化性官能基を有する化合物中、3官能以上のモノマーが50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
上記放射線硬化性官能基を有する化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。放射線硬化性樹脂のハードコート層形成用塗料には、必要に応じて触媒、上記の高屈折率層及び低屈折率層を形成させるための塗料に含まれる添加物等が加えられる。
【0101】
ハードコート層の厚みは、0.1~100μmの範囲が好ましく、0.5~50μmの範囲がより好ましく、0.8~20μmの範囲がさらに好ましい。
【0102】
ハードコート層の屈折率は、1.45以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。また、ハードコート層の屈折率は、1.7以下が好ましく、1.6以下がより好ましい。
なお、ハードコート層の屈折率は、波長589nmの条件で測定される値である。
【0103】
ハードコート層の屈折率を調整するためには、樹脂の屈折率を調整する方法、粒子を添加する場合は粒子の屈折率を調整する方法が挙げられる。
粒子としては、防眩層の粒子として例示したものが挙げられる。
なお、本発明において、ハードコート層も含めて、反射低減層と称する場合がある。
【0104】
機能層を設ける場合、機能層と基材フィルムとの間に易接着層(易接着層P2)を設けてもよい。易接着層P2は上述の易接着層P1で挙げた樹脂、架橋剤などが好適に用いられる。また、易接着層P1と易接着層P2は同じ組成であっても異なった組成であってもよい。
易接着層P2もまたインラインで設けることが好ましい。易接着層P1と易接着層P2は順次塗工、乾燥させてもよいが、両面同時塗工することも好ましい形態である。
【0105】
偏光板に用いる偏光子としては、例えば、一軸延伸したポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素又は有機系の二色性色素を吸着させたもの、液晶化合物と有機系の二色性色素を配向させたもの又は液晶性の二色性色素とからなる液晶性の偏光子、ワイヤーグリッド方式のものなどを特に制限なく用いることができる。
【0106】
一軸延伸したポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素又は有機系の二色性色素を吸着させたフィルム状の偏光子とロール状に巻き取られた基材フィルムとを、PVA系、紫外線硬化型などの接着剤、又は粘着剤を用いて貼り合わせ、ロール状に巻き取ることができる。このタイプの偏光子の厚みとしては、5~50μmが好ましく、さらには10~30μmが好ましく、特には12~25μmが好ましい。接着剤又は粘着剤の厚みは、1~10μmが好ましく、さらに好ましくは2~5μmである。
【0107】
また、PETフィルム又はポリプロピレンフィルムなどの未延伸の離型フィルム(基材)にPVAを塗工し、離型フィルムと共に一軸延伸してヨウ素又は有機系の二色性色素を吸着させた偏光子も好ましく用いられる。この偏光子の場合は、離型フィルムに積層された偏光子の偏光子面(離型フィルムが積層されていない面)と基材フィルムとを接着剤又は粘着剤で貼り合わせ、その後偏光子を作製する時に用いた離型フィルムを剥離することで、基材フィルムと偏光子を貼り合わせることができる。この場合も、ロール状で貼り合わせ、巻き取りを行うことが好ましい。このタイプの偏光子の厚みとしては、1~10μmが好ましく、さらには2~8μmが好ましく、特には3~6μmが好ましい。接着剤又は粘着剤の厚みは、1~10μmが好ましく、さらに好ましくは2~5μmである。
【0108】
液晶性の偏光子の場合は、基材フィルムに液晶化合物と有機系の二色性色素とからなる偏光子を配向させたものを積層するか、又は基材フィルムに液晶性の二色性色素を含有するコート液を塗工した後、乾燥させ、光又は熱硬化させて偏光子を積層することにより、偏光板とすることができる。液晶性の偏光子を配向させる方法としては、塗工対象物の表面をラビング処理する方法、偏光の紫外線を照射して液晶性の偏光子を配向させながら硬化させる方法等が挙げられる。基材フィルムの表面を直接ラビング処理して、コート液を塗工してもよく、基材フィルムに直接コート液を塗工してこれに偏光紫外線を照射してもよい。また、液晶性の偏光子を設ける前に、基材フィルムに配向層を設ける(すなわち、基材フィルムに配向層を介して液晶性の偏光子を積層する)ことも好ましい方法である。配向層を設ける方法としては、
・ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリイミド及びその誘導体、アクリル樹脂、ポリシロキサン誘導体などを塗工し、その表面をラビング処理して配向層(ラビング配向層)とする方法、
・シンナモイル基及びカルコン基等の光反応性基を有するポリマー又はモノマーと溶剤とを含む塗工液を塗布し、偏光紫外線を照射することによって配向硬化させ配向層(光配向層)とする方法
等が挙げられる。
【0109】
離型フィルムに上記の方法に準じて液晶性の偏光子を設け、液晶性の偏光子面と基材フィルムとを接着剤又は粘着剤で貼り合わせ、その後離型フィルムを剥離することで、基材フィルムと偏光子とを貼り合わせることもできる。
【0110】
液晶性の偏光子の厚みとしては、0.1~7μmが好ましく、さらには0.3~5μmが好ましく、特には0.5~3μmが好ましい。接着剤又は粘着剤の厚みは、1~10μmが好ましく、さらに好ましくは2~5μmである。
【0111】
偏光子の吸収軸と偏光子保護フィルム1又は4の遅相軸とがなす角度は特に限定するものではないが平行又は直交であることが好ましい。「平行又は直交」とは0度又は90度から好ましくは±10度、さらに好ましくは±7度、特に好ましくは±5度までのズレが許容される。平行又は直交にすることで、ロール状のまま貼り合わせて巻き取ることが容易にできる。特に、一軸延伸したポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素又は有機系の二色性色素を吸着させた偏光子の場合は、MD方向に延伸されている場合が一般的であり、偏光子保護フィルム1及び4はTD方向に延伸されている場合が多い。従って、両者をロール状で貼り合わせる場合は、偏光子の吸収軸と偏光子保護フィルムの遅相軸は直交となる場合が多い。
【0112】
偏光子の液晶セル側の面は接着剤又は粘着剤で直接液晶セルに貼り合わされていてもよく、偏光子の液晶セル側の面に硬化層が設けられていてもよく、偏光子保護フィルム2又は3が設けられていてもよい。硬化層としては前述のハードコート層が挙げられる。
【0113】
偏光子保護フィルム2及び3は、それぞれ独立して、セルロース系(TAC)フィルム、アクリルフィルム、ポリ環状オレフィン(COP)フィルムなどであってもよい。偏光子保護フィルム2及び3の少なくとも一方は、レタデーションがほぼゼロのものであってもよく、表示画面を斜め方向から見た場合の色調の変化を制御するための位相差フィルム(光学補償フィルム)であってもよい。
【0114】
光学補償フィルムで必要な位相差を出すためには、フィルムを延伸するか、フィルム上に液晶化合物等の位相差層を塗工する、別途、離型フィルム上に液晶化合物等の位相差層を設け、これを転写する等の方法が挙げられる。位相差層を形成するための液晶化合物は棒状液晶化合物、ディスコティク液晶化合物など、要求される位相差特性に合わせて用いられる。液晶化合物は配向状態を固定させるため、二重結合などの光硬化性の反応基を有していることが好ましい。液晶化合物を配向させて、位相差を持たせるためには位相差層の下層として配向層を設け、配向層をラビング処理するか、偏光紫外線を照射することにより、配向層の上に塗工する液晶化合物が特定方向に配向するような配向制御性を付与することができる。
【0115】
光学補償フィルムの位相差は、使用する液晶セルのタイプ、どの程度の視野角を確保するかなどで適宜設定できる。
【0116】
位相差層は位相差層用組成物塗料を塗工して設けることができる。位相差層用組成物塗料は、溶剤、重合開始剤、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤、重合性非液晶化合物、架橋剤等を含んでもよい。これらは、配向層や液晶偏光子の部分で説明した物を用いることができる。
【0117】
位相差層用組成物塗料を離型フィルムの離型面又は配向層(配向制御層)上に塗工後、乾燥、加熱、硬化することにより、位相差層を設けることができる。
【0118】
これらの条件も配向層や液晶偏光子の部分で説明した条件が好ましい条件として用いられる。
【0119】
偏光子と偏光子保護フィルムを貼り合わせる場合、接着剤又は粘着剤が用いられる。接着剤は、ポリビニルアルコール系などの水系の接着剤や光硬化性の接着剤が好ましく用いられる。粘着剤はアクリル系の粘着剤が好ましく用いられる。
【0120】
液晶セルは、回路が形成されたガラス等の薄い基板の間に液晶化合物が封入されたものであることが好ましい。基板がガラスの場合、薄型化の観点から厚みは0.7mm以下が好ましく、より好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.4mm以下である。
【0121】
液晶セルの方式は特に限定されるものではないが、VA方式やIPS方式では視認側の偏光板の吸収軸は液晶セルの長辺方向と平行又は直交となるように設けられており、本発明を適応するのに好ましい方式である。
【0122】
液晶セルの視認側及び光源側にそれぞれ偏光板を貼り合わせることにより、液晶パネルを形成することができる。貼り合わせはアクリル系の粘着剤で貼り合わされることが好ましい。
【0123】
液晶表示装置のバックライト光源としては、RGBの3色発光LED、青色発光LEDと黄色蛍光体の組合せ、青色発光LEDと緑色蛍光体・赤色蛍光体の組合せ、紫外線発光LEDと青色蛍光体・緑色蛍光体・赤色蛍光体の組合せ、有機EL発光体など制限無く用いることができる。特に、青色LED光源を用いて量子ドット粒子により緑や赤に波長変換する一般にQD光源と称される光源、赤色蛍光体としてK2SiF6:Mn4+などのフッ化物蛍光体を用いる一般にKSF光源と称される光源が、色再現域も広く好ましく用いられる光源である。
【0124】
バックライト光源は、必要に応じて、反射板、導光板、拡散板、レンズシート、プリズムシートを積層した光源ユニットとして液晶表示装置に用いることが好ましい。また、光源ユニットの視認側には、輝度向上フィルムといわれる反射型の偏光板が設置されていてもよい。
【実施例】
【0125】
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0126】
実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
(1)ポリエステルフィルムの屈折率
分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA-6004型分子配向計)を用いて、フィルムの遅相軸方向を求め、遅相軸方向が長辺と平行になるように、4cm×2cmの長方形を切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、直交する二軸の屈折率(遅相軸方向の屈折率:ny、進相軸(遅相軸方向と直交する方向の屈折率):nx)、及び厚み方向の屈折率(nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T、測定波長589nm)によって求めた。
【0127】
(2)面内レタデーション(Re)
面内レタデーションとは、フィルム上の直交する二軸の屈折率の異方性(△Nxy=|nx-ny|)とフィルム厚みd(nm)との積(△Nxy×d)で定義されるパラメーターであり、光学的等方性、異方性を示す尺度である。二軸の屈折率の異方性(△Nxy)を、上記(1)の方法により求め、前記二軸の屈折率差の絶対値(|nx-ny|)を屈折率の異方性(△Nxy)として算出した。フィルムの厚みd(nm)は電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定し、単位をnmに換算した。屈折率の異方性(△Nxy)とフィルムの厚みd(nm)の積(△Nxy×d)より、レタデーション(Re)を求めた。
【0128】
(3)厚み方向レタデーション(Rth)
厚み方向レタデーションとは、フィルム厚み方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz(=|nx-nz|)、及び△Nyz(=|ny-nz|)にそれぞれフィルム厚みdを掛けて得られるレタデーションの平均を示すパラメーターである。レタデーションの測定と同様の方法でnx、ny、nzとフィルム厚みd(nm)を求め、(△Nxz×d)と(△Nyz×d)との平均値を算出して厚み方向レタデーション(Rth)を求めた。
【0129】
(4)NZ係数
レタデーションの測定と同様の方法でnx、ny、nzを求め、nx、ny、nzを、|ny-nz|/|ny-nx|で表される式に代入して、Nz係数を求めた。
【0130】
屈折率の測定及び厚みの測定はフィルム製膜後、偏光子と貼り合わせるためにスリットした各偏光子保護フィルムに対して、TD方向両端部から約5cm内側の2点とその間を等間隔に3点、さらにMD方向に約20cmずつ空けて5箇所で同様に行い、合計25点(5×5=25)の平均とした。なお、表の表記は小数点1以下第1位を四捨五入した値である。
【0131】
(5)パネルの反り
厚さ0.5mm、43インチ相当のガラス板の両面に、実施例も比較例も同様に、偏光板をクロスニコルになるように貼り合わせ、模擬セルとした。貼り合わせは光学用の基材レスの粘着剤シートを用いた。
作製した模擬セルを70℃、5%RHに設定したギアオーブン内にて、240時間の熱処理を行い、その後、室温25℃、50%RHに設定された環境で30分間冷却した後に、凸側を下にして水平面に置き、4隅の高さをメジャーで計測し、最大値を反り量とした。反り量を以下のようにして評価した。なお、模擬セルは、4隅を角柱で下支えし、角柱の上にパネルが水平になるように静置させた状態(すなわち、4隅以外は模擬セルが浮いた状態)で上記の熱処理及び冷却処理を行った。
〇:0mm以上2mm未満
△:2mm以上4mm未満
×:4mm以上
【0132】
(6)虹斑の許容角
市販のテレビ(東芝社製のREGZA 43J10X)から、バックライトユニット及び液晶パネルを取り出し、液晶パネルの偏光板を剥離した。偏光板を剥離した液晶パネル面に作成した偏光子保護フィルムA~Kを用いた偏光板を、偏光子保護フィルムA~Kが偏光子を挟んで液晶セルとは反対側になるように、また、偏光子の吸収軸方向は元の偏光板と同じ向きになるように配置した後、バックライトユニットを取り付け、評価用ディスプレイとした。液晶セルと偏光板の間はイオン交換水で満たし反射が起こりにくいようにした。評価用ディスプレイを机上に水平に置いて全面白色に表示し、法線方向から決めた方位角方向に移動しながらディスプレイ中央部の虹斑の状態を観察した。虹斑が見え始めたと感じた位置のディスプレイの中央と観察者の両眼の中央部とを結んだ直線と、ディスプレイの法線方向との角度(極角)を測定した。5人の観察者で同じことを行い、平均値を虹斑の許容角とした。
(6-1)光源側の虹斑の許容角(度)
光源側偏光板のみを交換し、方位角は光源側偏光板に用いた偏光子の透過軸方向(偏光子保護フィルムの主配向軸方向)と30度となる方向で行った。
(6-2)視認側の虹斑の許容角(度)
視認側偏光板のみを交換し、方位角は視認側偏光板に用いた偏光子の透過軸方向(偏光子保護フィルムの主配向軸方向)と30度となる方向で行った。
(6-3)両側の偏光板を交換したディスプレイの虹斑の許容角(度)
両側の偏光板を交換し、方位角は視認側偏光板に用いた偏光子の透過軸方向(偏光子保護フィルムの主配向軸方向)と30度、45度、又は60度とし最も許容角が狭い方位角での許容角を採用した。
【0133】
ポリエステルA(PET(A))
固有粘度0.62dl/gのポリエチレンテレフタレート
ポリエステルB(PET(B))
紫外線吸収剤(2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジノン-4-オン)10質量部及びPET(A)90質量部の溶融混合物。
【0134】
(接着性改質塗布液の調製)
常法によりエステル交換反応及び重縮合反応を行って、ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%、イソフタル酸46モル%、及び5-スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%、グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%及びネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。次いで、水51.4質量部、イソプロピルアルコール38質量部、n-ブチルセルソルブ5質量部、ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後、加熱撹拌し、77℃に達したら、上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5質量部を加え、樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後、樹脂水分散液を常温まで冷却して、固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。さらに、凝集体シリカ粒子(富士シリシア(株)社製、サイリシア310)3質量部を水50質量部に分散させた後、上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46質量部にサイリシア310の水分散液0.54質量部を加えて、撹拌しながら水20質量部を加えて、接着性改質塗布液を得た。
【0135】
(偏光子)
ヨウ素水溶液中で連続して染色した厚さ80μmのロール状のポリビニルアルコールフィルムを搬送方向に5倍延伸し、乾燥して長尺の偏光子を得た。
【0136】
(偏光子保護フィルムA)
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給し、また、PET(A)を常法により乾燥して押出機1(外層I層及び外層III用)にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
【0137】
次いで、この未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m2になるように、上記接着性改質塗布液を塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。
【0138】
この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、100℃のテンターに導き、幅方向に4倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度190℃の熱固定ゾーンで10秒間処理し、さらに幅方向に2%の緩和処理を行い、フィルム厚み80μmの一軸延伸PETフィルムを得た。
【0139】
(偏光子保護フィルムB)
厚みを変えた以外は偏光子保護フィルムAと同様にして偏光子保護フィルムBを得た。
【0140】
(偏光子保護フィルムC)
延伸倍率を5倍、テンターの温度を120℃、フィルムの厚みを変えた以外は偏光子保護フィルムAと同様にして偏光子保護フィルムCを得た。
【0141】
(偏光子保護フィルムD、E、F)
延伸倍率を5倍、テンターの温度を110℃とし、フィルムの厚みをそれぞれ変えた以外は偏光子保護フィルムAと同様にして偏光子保護フィルムD、E、及びFを得た。
【0142】
(偏光子保護フィルムG、H、I、J)
延伸倍率を5.6倍、テンターの温度を110℃とし、フィルムの厚みをそれぞれ変えた以外は偏光子保護フィルムAと同様にして偏光子保護フィルムG、H、I、及びJを得た。
【0143】
各偏光子保護フィルムの特性を表1に示す。
【0144】
【0145】
(偏光板の作製)
偏光子の片面に上記で作製した偏光子保護フィルムを、反対面にトリアセチルセルロールフィルム(厚さ40μm)をロールツーロールで貼り合わせた。貼り合わせには、紫外線硬化型の接着剤を用いた。液晶パネルと貼り合わせる前に偏光板を必要な大きさにカットした。
【0146】
実施例1~9、比較例1~3
表2の組合せの通り、パネルを作製して虹斑の許容角を測定した。また、同様の組合せでパネルの反りを観察した。結果を表2に示す。
【0147】
【0148】
実施例1~9はいずれもパネルの反りは許容範囲であり、虹斑の許容角は光源側、視認側に単独で用いた場合と同等の許容角であり、より薄型化が達成できている。
一方、比較例1では光源側、視認側とも同じ偏光子保護フィルムの偏光板を使用しており、光源側偏光板での虹斑の許容角が54度であるが視認側偏光板での虹斑の許容角が59度であり、視認側の偏光子保護フィルムの厚みが余剰となり、さらに薄型化が可能であるにもかかわらず薄型化がされていないことが分かる。
比較例2では光源側偏光板の偏光子保護フィルムの厚みやレタデーションに余剰があることが分かる。
比較例3では、光源側偏光板の偏光子保護フィルムを薄くしすぎたため、視認側偏光板の偏光子の収縮に対抗しきれず、パネルの反りが目立つ結果となった。また、視認側偏光板の偏光子保護フィルムの厚みにも余剰が生じている。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明によれば、例えば、虹斑の発生や液晶パネルの反りを防ぎながら、より薄型の液晶表示装置を提供することができる。