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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】物品搬送車
(51)【国際特許分類】
   B60B 17/00 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
B60B17/00 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022085584
(22)【出願日】2022-05-25
(65)【公開番号】P2023173375
(43)【公開日】2023-12-07
【審査請求日】2024-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】董 浙广
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0064184(US,A1)
【文献】特開2004-276622(JP,A)
【文献】特開平8-91003(JP,A)
【文献】特開2018-135199(JP,A)
【文献】中国実用新案第205468292(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 17/00 - 17/02
B60B 33/00
B65G 1/00 - 1/133
B65G 1/14 - 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行状に配置された第1レール及び第2レールに沿って走行して物品を搬送する物品搬送車であって、
上下方向に沿う上下方向視で前記第1レール及び前記第2レールの延在方向に直交する方向を幅方向として、
前記物品を保持する物品保持部が連結された車体と、
前記幅方向に沿う第1回転軸心回りに回転可能な状態で前記車体に支持され、前記第1レールの走行面である第1走行面上を転動する第1車輪と、
前記幅方向に沿う第2回転軸心回りに回転可能な状態で前記車体に支持され、前記第2レールの走行面である第2走行面上を転動する第2車輪と、
を備え、
前記第1車輪における前記第1走行面に接する外周面を第1外周面とし、前記第2車輪における前記第2走行面に接する外周面を第2外周面として、
前記第1車輪は、前記第1外周面を形成する部分である第1車輪本体部が合成樹脂製であり、
前記第2車輪は、前記第2外周面を形成する部分である第2車輪本体部が合成樹脂製であり、
前記第1外周面には、前記第1車輪の周方向に延在する複数本の第1凹溝が形成され、
前記第2外周面には、前記第2車輪の周方向に延在する複数本の第2凹溝が形成され、
前記幅方向における前記第2車輪に対して前記第1車輪が配置された側を幅方向第1側とし、その反対側を幅方向第2側とし、
前記第1車輪本体部における前記幅方向第1側を向く側面を第1側面とし、前記第1車輪本体部における前記幅方向第2側を向く側面を第2側面とし、
前記第2車輪本体部における前記幅方向第1側を向く側面を第3側面とし、前記第2車輪本体部における前記幅方向第2側を向く側面を第4側面として、
最も前記幅方向第1側の前記第1凹溝と前記第1側面との前記幅方向の間隔は、最も前記幅方向第2側の前記第1凹溝と前記第2側面との前記幅方向の間隔よりも大きく、
最も前記幅方向第2側の前記第2凹溝と前記第4側面との前記幅方向の間隔は、最も前記幅方向第1側の前記第2凹溝と前記第3側面との前記幅方向の間隔よりも大きい、物品搬送車。
【請求項2】
前記第1走行面及び前記第2走行面は平面であり、
前記第1外周面は、中心軸が前記第1走行面に平行に配置された円筒状に形成されており、
前記第2外周面は、中心軸が前記第2走行面に平行に配置された円筒状に形成されている、
請求項1に記載の物品搬送車。
【請求項3】
前記第1回転軸心に直交する方向、及び、前記第2回転軸心に直交する方向をそれぞれ径方向として、
前記第1外周面と前記第1側面との接続部分が、前記幅方向第1側へ向かうに従って前記径方向の内側へ向かう曲面状に形成され、
前記第1外周面と前記第2側面との接続部分が、前記幅方向第2側へ向かうに従って前記径方向の内側へ向かう曲面状に形成され、
前記第2外周面と前記第3側面との接続部分が、前記幅方向第1側へ向かうに従って前記径方向の内側へ向かう曲面状に形成され、
前記第2外周面と前記第4側面との接続部分が、前記幅方向第2側へ向かうに従って前記径方向の内側へ向かう曲面状に形成されている、
請求項2に記載の物品搬送車。
【請求項4】
前記第1外周面と前記第1側面との接続部分の曲率半径は、前記第1外周面と前記第2側面との接続部分の曲率半径よりも大きく、
前記第2外周面と前記第4側面との接続部分の曲率半径は、前記第2外周面と前記第3側面との接続部分の曲率半径よりも大きい、
請求項3に記載の物品搬送車。
【請求項5】
前記第1回転軸心に直交する方向、及び、前記第2回転軸心に直交する方向をそれぞれ径方向として、
前記第1凹溝の溝底面における前記径方向に沿う断面の形状が、円弧状に形成され、
前記第2凹溝の溝底面における前記径方向に沿う断面の形状が、円弧状に形成されている、
請求項1に記載の物品搬送車。
【請求項6】
前記第1凹溝は、前記幅方向に並んで3本以上配置され、
前記第1外周面における、前記幅方向に隣り合う一対の前記第1凹溝に挟まれた平坦部の前記幅方向の寸法のうちの最も小さい幅を第1幅として、
前記第1外周面における、最も前記幅方向第2側の前記第1凹溝よりも前記幅方向第2側の平坦部の前記幅方向の寸法は、前記第1幅以上であって前記第1幅の2倍未満であり、
前記第1外周面における、最も前記幅方向第1側の前記第1凹溝よりも前記幅方向第1側の平坦部の前記幅方向の寸法は、前記第1幅の2倍以上であり、
前記第2凹溝は、前記幅方向に並んで3本以上配置され、
前記第2外周面における、前記幅方向に隣り合う一対の前記第2凹溝に挟まれた平坦部の前記幅方向の寸法のうちの最も小さい幅を第2幅として、
前記第2外周面における、最も前記幅方向第1側の前記第2凹溝よりも前記幅方向第1側の平坦部の前記幅方向の寸法は、前記第2幅以上であって前記第2幅の2倍未満であり、
前記第2外周面における、最も前記幅方向第2側の前記第2凹溝よりも前記幅方向第2側の平坦部の前記幅方向の寸法は、前記第2幅の2倍以上である、
請求項1に記載の物品搬送車。
【請求項7】
前記第1車輪として、第1前輪と第1後輪とを備え、
前記第2車輪として、第2前輪と第2後輪とを備え、
前記第1前輪及び前記第2前輪に伝達されるトルクと、前記第1後輪及び前記第2後輪に伝達されるトルクとが異なり、
前記第1前輪と前記第1後輪とのうち、伝達されるトルクが大きい方の前記第1凹溝の本数が、伝達されるトルクが小さい方の前記第1凹溝の本数よりも少なく、
前記第2前輪と前記第2後輪とのうち、伝達されるトルクが大きい方の前記第2凹溝の本数が、伝達されるトルクが小さい方の前記第2凹溝の本数よりも少ない、
請求項1から6のいずれか一項に記載の物品搬送車。
【請求項8】
前記第1車輪の交換時期の基準となる前記第1車輪の半径の減少量を第1半径減少量として、
複数本の前記第1凹溝の一部に、前記第1半径減少量と同じ深さの溝部である第1目印溝部が設けられ、
前記第2車輪の交換時期の基準となる前記第2車輪の半径の減少量を第2半径減少量として、
複数本の前記第2凹溝の一部に、前記第2半径減少量と同じ深さの溝部である第2目印溝部が設けられている、
請求項1から6のいずれか一項に記載の物品搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールに沿って走行する物品搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品搬送車の一例が、特開2018-115066号公報(特許文献1)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-115066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の物品搬送車では、送風ユニットを備えることによって、レール上の塵埃を発生から長い時間をおくことなくレール上から除去している。しかし、レール上の塵埃は、物品や物品収容設備の清浄さを損なう場合があり、発生が少ないことが望ましい。レール上の塵埃には、レールと物品搬送車の車輪とが接触することによって発生する車輪の摩耗粉が含まれる。
【0005】
そこで、車輪の摩耗を低減することができる物品搬送車の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、車輪の外周面に周方向の凹溝を設けると、車輪の摩耗を低減可能であることを見出した。本発明は斯かる知見に基づいて為されたものである。
【0007】
上記に鑑みた、物品搬送車の特徴構成は、
互いに平行状に配置された第1レール及び第2レールに沿って走行して物品を搬送する物品搬送車であって、
上下方向に沿う上下方向視で前記第1レール及び前記第2レールの延在方向に直交する方向を幅方向として、
前記物品を保持する物品保持部が連結された車体と、
前記幅方向に沿う第1回転軸心回りに回転可能な状態で前記車体に支持され、前記第1レールの走行面である第1走行面上を転動する第1車輪と、
前記幅方向に沿う第2回転軸心回りに回転可能な状態で前記車体に支持され、前記第2レールの走行面である第2走行面上を転動する第2車輪と、
を備え、
前記第1車輪における前記第1走行面に接する外周面を第1外周面とし、前記第2車輪における前記第2走行面に接する外周面を第2外周面として、
前記第1車輪は、前記第1外周面を形成する部分である第1車輪本体部が合成樹脂製であり、
前記第2車輪は、前記第2外周面を形成する部分である第2車輪本体部が合成樹脂製であり、
前記第1外周面には、前記第1車輪の周方向に延在する複数本の第1凹溝が形成され、
前記第2外周面には、前記第2車輪の周方向に延在する複数本の第2凹溝が形成され、
前記幅方向における前記第2車輪に対して前記第1車輪が配置された側を幅方向第1側とし、その反対側を幅方向第2側とし、
前記第1車輪本体部における前記幅方向第1側を向く側面を第1側面とし、前記第1車輪本体部における前記幅方向第2側を向く側面を第2側面とし、
前記第2車輪本体部における前記幅方向第1側を向く側面を第3側面とし、前記第2車輪本体部における前記幅方向第2側を向く側面を第4側面として、
最も前記幅方向第1側の前記第1凹溝と前記第1側面との前記幅方向の間隔は、最も前記幅方向第2側の前記第1凹溝と前記第2側面との前記幅方向の間隔よりも大きく、
最も前記幅方向第2側の前記第2凹溝と前記第4側面との前記幅方向の間隔は、最も前記幅方向第1側の前記第2凹溝と前記第3側面との前記幅方向の間隔よりも大きい点にある。
【0008】
本構成によれば、車輪の外周面に周方向に延在する複数本の凹溝を形成しているので、物品搬送車の重量を支持するために必要な車輪幅を確保しつつ、車輪の摩耗を低減することができる。車輪の摩耗が低減する理由としては、仮説ではあるが、車輪の外周面に凹溝が形成されることで、レールの走行面に対する外周面の真実接触面積が小さくなり、車輪の摺動方向のせん断力が減少するためと考えられる。また、本構成によれば、曲線経路を走行中にレールの走行面との接触荷重が大きくなり易い、外周面の幅方向外側部分に凹溝が形成されない領域を設けることができる。これにより、曲線経路を走行中にレールの走行面との接触荷重が大きくなり易い領域の剛性を確保し易い。従って、曲線経路の走行中における車輪の外周面の変形を小さく抑えることができ、車輪の摩耗を更に低減することができる。
【0009】
物品搬送車の更なる特徴と利点は、図面を参照して説明する実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】物品搬送車の背面図。
図2図1の第1レール及び第1車輪を拡大して示す背面図。
図3図1の第1車輪を拡大して示す背面図。
図4図1の第1車輪の断面図であって、第1凹溝が3本である場合の図。
図5図1の第1車輪の断面図であって、第1凹溝が6本である場合の図。
図6図1の第2車輪を拡大して示す背面図。
図7図1の第2車輪の断面図であって、第2凹溝が3本である場合の図。
図8図1の第2車輪の断面図であって、第2凹溝が6本である場合の図。
図9図1の物品搬送車が分岐経路を走行する状態を示す図。
図10図1の物品搬送車が合流経路を走行する状態を示す図。
図11図1の物品搬送車の摩耗評価試験の結果を示す図。
図12図1の第1車輪の背面図であって曲線経路を走行した状態を示す図。
図13】第1凹溝の形状が異なる第1車輪の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、物品搬送車10の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、物品搬送車10を備える物品搬送設備11を示している。物品搬送設備11は、互いに平行状に配置された第1レール12A及び第2レール12Bを有する走行レール12を備えている。また、物品搬送設備11は、互いに平行状に配置された第1レール12A及び第2レール12Bに沿って走行して物品Mを搬送する物品搬送車10を備えている。本実施形態では、物品搬送車10は、半導体基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)を物品Mとして搬送する。また、図1に背面図として示されている物品搬送車10は、無人の天井搬送車である。以下の説明においては、上下方向Zに沿う上下方向視で第1レール12A及び第2レール12Bの延在方向Lに直交する方向を幅方向Wと称して説明する。本実施形態では、上下方向Zは鉛直方向に沿う方向である。
【0012】
本実施形態では、第1レール12A及び第2レール12Bは、吊り下げ部材15によって天井16に吊り下げ支持されている。また、第1レール12A及び第2レール12Bは、幅方向Wの断面において逆U字状に形成された支持部材17を介して幅方向Wに一定間隔で互いに平行に配置されている。第1レール12Aの走行面を第1走行面F1とし、第2レール12Bの走行面を第2走行面F2とする。本実施形態では、第1走行面F1及び第2走行面F2は平面である。なお、第1レール12Aと第2レール12Bとは、互い接続されていても良く、第1レール12Aと第2レール12Bとが一体的に形成されていても良い。また、第1レール12Aと第2レール12Bとが別体であっても良い。
【0013】
物品搬送車10は、物品Mを保持する物品保持部20と、物品保持部20が連結された車体30と、を備えている。本実施形態では、物品保持部20は、第1レール12A及び第2レール12Bの下方に位置して車体30に吊り下げ支持されている。また、物品保持部20は、物品Mを第1レール12A及び第2レール12Bの下方において昇降可能な昇降装置21を備えている。
【0014】
物品搬送車10は、第1車輪41と第2車輪42とを備えている。第1車輪41は、幅方向Wに沿う第1回転軸心X1回りに回転可能な状態で車体30に支持され、第1レール12Aの走行面である第1走行面F1上を転動する。第2車輪42は、幅方向Wに沿う第2回転軸心X2回りに回転可能な状態で車体30に支持され、第2レール12Bの走行面である第2走行面F2上を転動する。ここで、第1回転軸心X1に直交する方向、及び、第2回転軸心X2に直交する方向をそれぞれ径方向Rとする。また、幅方向Wにおける第2車輪42に対して第1車輪41が配置された側を幅方向第1側W1とし、その反対側を幅方向第2側W2とする。なお、本実施形態では、第1回転軸心X1と第2回転軸心X2とは同軸であるが、同軸でなくとも良い。
【0015】
本実施形態では、車体30は、第1車輪41及び第2車輪42を回転する走行部32を有している。走行部32には、上下方向Zに沿う軸心周りに自由回転する左右一対の案内輪33が備えられている。案内輪33の軸心は、案内輪支持プレート34に支持されている。左右一対の案内輪33は、それぞれ第1レール12A及び第2レール12Bの幅方向W内側の側面に当接するように、走行部32に設けられている。物品搬送車10は、案内輪33が第1レール12A及び第2レール12Bに接触して案内されることによって走行部32が走行経路に沿った姿勢を維持しながら走行経路に沿って走行する。本実施形態では、走行部32と物品保持部20とは、連結軸22により上下方向Zに沿う縦軸心周りに相対回転可能に連結されている。
【0016】
図2は第1レール12A及び第1車輪41を拡大して示す図である。図3は、第1車輪41を拡大して示す背面図である。図4は、第1回転軸心X1を含む面における第1車輪41の断面図である。第1車輪41における第1走行面F1に接する外周面を第1外周面51とする。第1外周面51には、第1車輪41の周方向C1(図2を参照)に延在する第1凹溝53が形成されている。本実施形態では、第1車輪41は、第1外周面51を形成する部分である第1車輪本体部43が合成樹脂製である。第1車輪本体部43を構成する合成樹脂としては、弾性を有することが望ましく、例えば、ウレタン、合成ゴム等が用いられる。本実施形態では、第1車輪本体部43の径方向Rの内側に金属製の第1車輪リム部45が設けられ、第1車輪本体部43の幅方向第1側W1には、金属製の第1車輪ボス部47が設けられている。好適には、第1凹溝53は複数本配置される。更に好適には、第1凹溝53は幅方向Wに並んで3本以上配置される。図3及び図4は、第1凹溝53が3本の例であり、図5は第1凹溝53が6本の例である。
【0017】
図6は、第2車輪42を拡大して示す背面図である。図7は、第2回転軸心X2を含む面における第2車輪42の断面図である。第2車輪42における第2走行面F2に接する外周面を第2外周面52とする。第2外周面52には、第2車輪42の周方向C2(図1を参照)に延在する第2凹溝54が形成されている。本実施形態では、第2車輪42は、第2外周面52を形成する部分である第2車輪本体部44が合成樹脂製である。第2車輪本体部44を構成する合成樹脂としては、弾性を有することが望ましく、例えば、ウレタン、合成ゴム等が用いられる。本実施形態では、第2車輪本体部44の径方向Rの内側に金属製の第2車輪リム部46が設けられ、第2車輪本体部44の幅方向第2側W2には、金属製の第2車輪ボス部48が設けられている。好適には、第2凹溝54は複数本配置される。更に好適には、第2凹溝54は幅方向Wに並んで3本以上配置される。図6及び図7は、第2凹溝54が3本の例であり、図8は第2凹溝54が6本の例である。
【0018】
図4及び図5に戻り、第1車輪本体部43における幅方向第1側W1を向く側面を第1側面43Aとし、第1車輪本体部43における幅方向第2側W2を向く側面を第2側面43Bとする。本実施形態では、最も幅方向第1側W1の第1凹溝53と第1側面43Aとの幅方向Wの間隔D11は、最も幅方向第2側W2の第1凹溝53と第2側面43Bとの幅方向Wの間隔D12よりも大きい。このようにすれば、例えば、曲線経路の走行中に物品搬送車10に作用する遠心力を第1車輪本体部43の第1外周面51の幅方向第1側W1の領域で支える場合において、当該領域の剛性を確保し易い。すなわち、曲線経路の走行中に第1車輪本体部43における幅方向第2側W2の領域よりも幅方向第1側W1の領域の接触荷重が大きくなる場合に、当該領域の剛性を確保し易い。
【0019】
図示の例では、第1凹溝53は周方向C1に直線状に設けられた凹溝であるが、三角波状、曲線波状等であっても良い。また、図示の例では、第1凹溝53は、第1車輪41の周方向C1に連続する凹溝であるが、第1車輪41の周方向C1に断続的に設けられた凹溝であっても良い。また、本実施形態では、第1凹溝53の溝底面における径方向Rに沿う断面(言い換えれば、周方向C1に直交する断面、第1回転軸心X1を含む断面)の形状が、円弧状に形成されている。
【0020】
図7及び図8に戻り、第2車輪本体部44における幅方向第1側W1を向く側面を第3側面44Cとし、第2車輪本体部44における幅方向第2側W2を向く側面を第4側面44Dとする。本実施形態では、最も幅方向第2側W2の第2凹溝54と第4側面44Dとの幅方向Wの間隔D22は、最も幅方向第1側W1の第2凹溝54と第3側面44Cとの幅方向Wの間隔D21よりも大きい。このようにすれば、例えば、曲線経路の走行中に物品搬送車10に作用する遠心力を第2車輪本体部44の第2外周面52の幅方向第2側W2の領域で支える場合において、当該領域の剛性を確保し易い。すなわち、曲線経路の走行中に第2車輪本体部44における幅方向第1側W1の領域よりも幅方向第2側W2の領域の接触荷重が大きくなる場合に、当該領域の剛性を確保し易い。
【0021】
図示の例では、第2凹溝54は周方向C2に直線状に設けられた凹溝であるが、三角波状、曲線波状等であっても良い。また、図示の例では、第2凹溝54は、第2車輪42の周方向C2に連続する凹溝であるが、第2車輪42の周方向C2に断続的に設けられた凹溝であっても良い。本実施形態では、第2凹溝54の溝底面における径方向Rに沿う断面(言い換えれば、周方向C2に直交する断面、第2回転軸心X2を含む断面)の形状が、円弧状に形成されている。
【0022】
図4及び図5に戻り、第1外周面51における、幅方向Wに隣り合う一対の第1凹溝53に挟まれた平坦部の幅方向Wの寸法のうちの最も小さい幅を第1幅P1とする。本実施形態では、第1外周面51における、最も幅方向第2側W2の第1凹溝53よりも幅方向第2側W2の平坦部の幅方向Wの寸法P12は、第1幅P1以上であって第1幅P1の2倍未満である。また、本実施形態では、第1外周面51における、最も幅方向第1側W1の第1凹溝53よりも幅方向第1側W1の平坦部の幅方向Wの寸法P11は、第1幅P1の2倍以上である。
【0023】
図7及び図8に戻り、第2外周面52における、幅方向Wに隣り合う一対の第2凹溝54に挟まれた平坦部の幅方向Wの寸法のうちの最も小さい幅を第2幅P2とする。本実施形態では、第2外周面52における、最も幅方向第1側W1の第2凹溝54よりも幅方向第1側W1の平坦部の幅方向Wの寸法P21は、第2幅P2以上であって第2幅P2の2倍未満である。また、本実施形態では、第2外周面52における、最も幅方向第2側W2の第2凹溝54よりも幅方向第2側W2の平坦部の幅方向Wの寸法P22は、第2幅P2の2倍以上である。
【0024】
本実施形態では、第1外周面51は、中心軸(第1回転軸心X1と同軸)が第1走行面F1に平行に配置された円筒状に形成されている。また、本実施形態では、第1外周面51と第1側面43Aとの接続部分が、幅方向第1側W1へ向かうに従って径方向Rの内側へ向かう曲面状に形成され、第1外周面51と第2側面43Bとの接続部分が、幅方向第2側W2へ向かうに従って径方向Rの内側へ向かう曲面状に形成されている。図4及び図5に示す例では、第1外周面51と第1側面43Aとの接続部分の曲率半径Raは、第1外周面51と第2側面43Bとの接続部分の曲率半径Rbよりも大きい。接続部分が、互いに曲率半径の異なる複数の部分を有する場合には、例えば、これら複数の部分の曲率半径の平均(例えば、各部分の長さを重みとした平均)を、当該接続部分の曲率半径とし、或いは、これら複数の部分のうちの最も曲率半径が大きい部分の曲率半径を、当該接続部分の曲率半径とすることができる。また、図3に示す例では、第1車輪41の交換時期の基準となる第1車輪41の半径の減少量を第1半径減少量として、複数本の第1凹溝53の一部に、第1半径減少量と同じ深さの溝部である第1目印溝部55が設けられている。第1目印溝部55の深さは、複数本の第1凹溝53における第1目印溝部55が設けられていない部分の深さよりも浅くなっている。図示の例では、第1目印溝部55は、1本の第1凹溝53のうちの一部に設けられているが、複数本の第1凹溝53のうちの1本の第1凹溝53の全周に設けられていてもよい。
【0025】
本実施形態では、第2外周面52は、中心軸(第2回転軸心X2と同軸)が第2走行面F2に平行に配置された円筒状に形成されている。また、本実施形態では、第2外周面52と第3側面44Cとの接続部分が、幅方向第1側W1へ向かうに従って径方向Rの内側へ向かう曲面状に形成され、第2外周面52と第4側面44Dとの接続部分が、幅方向第2側W2へ向かうに従って径方向Rの内側へ向かう曲面状に形成されている。図7及び図8に示す例では、第2外周面52と第4側面44Dとの接続部分の曲率半径Rdは、第2外周面52と第3側面44Cとの接続部分の曲率半径Rcよりも大きい。また、図6に示す例では、第2車輪42の交換時期の基準となる第2車輪42の半径の減少量を第2半径減少量として、複数本の第2凹溝54の一部に、第2半径減少量と同じ深さの溝部である第2目印溝部56が設けられている。第2目印溝部56の深さは、複数本の第2凹溝54における第2目印溝部56が設けられていない部分の深さよりも浅くなっている。図示の例では、第2目印溝部56は、1本の第2凹溝54のうちの一部に設けられているが、複数本の第2凹溝54のうちの1本の第2凹溝54の全周に設けられていてもよい。
【0026】
図9は、物品搬送車10が物品搬送設備11の分岐経路を走行しているときの平面図を示している。図10は、物品搬送車10が物品搬送設備11の合流経路を走行しているときの平面図を示している。本実施形態では、物品搬送設備11は、直線状に設定された直線部分と曲線状に設定された曲線部分とを有する走行経路を備えている。この走行経路は、分岐用の分岐経路と合流用の合流経路とを備えている。分岐経路及び合流経路には、物品搬送車10を分岐或いは合流させるための案内レール14が設けられている。図1に示すように、本実施形態では、案内レール14は、分岐経路及び合流経路において支持部材17に連結されて支持されている。図示の例では、案内レール14は、第1レール12A及び第2レール12Bよりも上方に、平面視で第1レール12A及び第2レール12Bの中間に位置するように設置されている。
【0027】
図1に示すように、本実施形態では、走行部32は、第1車輪41及び第2車輪42よりも上方側箇所に、上下軸心(車体30の上下方向に沿う軸心)周りで回転する案内補助輪37を備えている。案内補助輪37は、案内レール14の側面に当接する。また、走行部32には、案内補助輪37を幅方向Wに移動する案内駆動部38を備えている。走行部32は、案内補助輪37を幅方向Wに移動させることによって、案内補助輪37の位置を右案内位置と左案内位置とに移動させる。右案内位置は、図1に示すように、案内補助輪37が走行方向に向かって(図1では紙面に向かって)走行部32の幅方向Wの中央より右側に位置して、案内レール14に対して右側から当接する位置である。左案内位置は、案内補助輪37が走行部32の幅方向Wの中央より左側に位置して、案内レール14に対して左側から当接する位置である。
【0028】
図9及び図10に示すように、本実施形態では、物品搬送車10は、第1走行部32Fと、第1走行部32Fよりも車体後方側に配置された第2走行部32Rとの、2つの走行部32を備えている。第1走行部32Fは、第1車輪41として第1前輪41Fを備え、第2車輪42として第2前輪42Fを備えている。第2走行部32Rは、第1車輪41として第1後輪41Rを備え、第2車輪42として第2後輪42Rを備えている。このように、物品搬送車10は、第1車輪41として、第1前輪41Fと第1後輪41Rとを備え、第2車輪42として、第2前輪42Fと第2後輪42Rとを備えている。
【0029】
図11は、物品搬送車10を実際に走行させた摩耗評価試験の結果を示している。この摩耗評価試験に用いた第1車輪本体部43及び第2車輪本体部44の材質はウレタンである。また、図11には第1後輪41Rの摩耗評価試験結果を代表として示している。縦軸は摩耗量として第1後輪41Rの走行前後の重量の減少量(g)を示し、横軸は物品搬送車10の走行距離(km)を示す。図11における三角印は、第1車輪41を図4に示す3溝の形状とし第2車輪42を図7に示す3溝の形状とした時の試験結果である。丸印は、第1車輪41及び第2車輪42を溝が無い形状とした場合の試験結果である。図11に示す摩耗評価試験の結果から、凹溝を3本形成することにより、車輪の摩耗が低減されるという結果が得られた。
【0030】
図13は、周方向C1に延在する6本の凹溝が形成された第1車輪41を示す図であって、図4に対応する図である。図13に示す第1車輪41は、幅方向Wの中央に対し対称の形状となっている。すなわち、間隔D11と間隔D12とは同じ長さであり、曲率半径Raと曲率半径Rbとは同じ大きさとなっている。また、6本の凹溝の形状は互いに同じ形状である。図11における四角印は、第1車輪41及び第2車輪42を図13に示す6溝の形状とした場合の試験結果である。図11に示す摩耗評価試験の結果から、凹溝を6本形成することにより、車輪の摩耗が低減されるという結果が得られた。車輪の摩耗が低減する理由としては、仮説ではあるが、車輪の外周面に凹溝が形成されることで、走行レールの走行面に対する車輪の外周面の真実接触面積が小さくなり、車輪の摺動方向のせん断力が減少するためと考えられる。
【0031】
本実施形態では、走行経路の分岐部(図9参照)、及び走行経路の合流部(図10参照)を走行する場合に、物品搬送車10は、第1車輪41及び第2車輪42の一方が走行レール12の走行面上を転動し、第1車輪41及び第2車輪42の他方が走行レール12から離間した片輪走行状態となる。ここで、第1車輪41が第1走行面F1上を転動し、第2車輪42が第2レール12Bから離間した片輪走行状態を、第1片輪走行状態とし、第2車輪42が第2走行面F2上を転動し、第1車輪41が第1レール12Aから離間した片輪走行状態を、第2片輪走行状態とする。第1片輪走行状態では、第1車輪41と、案内レール14に対して幅方向第1側W1から当接する案内補助輪37とによって、物品搬送車10の姿勢が維持され、第2片輪走行状態では、第2車輪42と、案内レール14に対して幅方向第2側W2から当接する案内補助輪37とによって、物品搬送車10の姿勢が維持される。例えば、図9及び図10に示すように、物品搬送車10が左折する場合には、物品搬送車10は第1片輪走行状態となり、外周側の車輪である第2車輪42が第2レール12Bにて支持されない状態が生じる。本実施形態では、第1片輪走行状態における物品搬送車10の姿勢が、第2車輪42が第1車輪41よりも上方に配置される傾斜姿勢となり、第2片輪走行状態における物品搬送車10の姿勢が、第1車輪41が第2車輪42よりも上方に配置される傾斜姿勢となるように、案内レール14が設けられている。そのため、図9及び図10に示す例では、物品搬送車10を曲線経路の内周側に傾倒させて第2車輪42を持ち上げることができ、これにより、第2レール12Bと第2車輪42との離間及び再接触による衝撃を低減できる。図12は、図3に対応する図であって、左折時における第1車輪41の状態を示す図である。左折時に物品搬送車10を曲線経路の内周側に傾倒させると、図12に示すように第1車輪41が第1レール12Aに対し外周側に傾斜して接触し、外周側が変形する。反対に、右折時に物品搬送車10を曲線経路の内周側に傾倒させると、第2車輪42が第2レール12Bに対し外周側に傾斜して接触する。よって、本実施形態では、曲線経路の内周側となる場合がある第1車輪41の幅方向第1側W1及び第2車輪42の幅方向第2側W2が、第1車輪41の幅方向第2側W2及び第2車輪42の幅方向第1側W1よりも曲線経路を走行中にレールの走行面との接触荷重が大きくなり易く変形し易い領域となっている。従って、上述のように、図4及び図5に示す間隔D11が間隔D12よりも大きく、図7及び図8に示す間隔D22が間隔D21よりも大きくすると効果的に摩耗を低減できる。
【0032】
本実施形態では、案内レール14を幅方向Wの中央より曲線経路の内周側に配置して、案内補助輪37が内周側に押されることで、第1片輪走行状態や第2片輪走行状態において物品搬送車10の全体を傾斜させている。これに限らず、物品搬送車10の一部を傾斜させることにより、或いは、第1車輪41又は第2車輪42を上下方向Zに移動させることにより、第1片輪走行状態や第2片輪走行状態を実現可能に物品搬送車10が構成されていても良い。物品搬送車10の傾斜の制御は、例えば、後述の制御部70(図1参照)により行われる。
【0033】
図1に戻り、本実施形態では、物品搬送車10は、走行部32を制御する制御部70を有している。図9及び図10に示す例では、制御部70は、第1走行部32Fと第2走行部32Rとを制御する。また、制御部70は、第1前輪41F及び第2前輪42Fに伝達されるトルクと、第1後輪41R及び第2後輪42Rに伝達されるトルクとを異ならせることが可能である。例えば、制御部70は、第1走行部32Fによる第1前輪41F及び第2前輪42Fの駆動トルクがゼロとなるような制御(トルクフリー制御)を行うことにより、第2走行部32Rの走行に第1走行部32Fを従動させることができる。
【0034】
本実施形態では、第1前輪41Fと第1後輪41Rとのうち、伝達されるトルクが大きい方の第1凹溝53の本数が、伝達されるトルクが小さい方の第1凹溝53の本数よりも少ない。また、本実施形態では、第2前輪42Fと第2後輪42Rとのうち、伝達されるトルクが大きい方の第2凹溝54の本数が、伝達されるトルクが小さい方の第2凹溝54の本数よりも少ない。これにより、伝達されるトルクが大きい方の車輪の溝本数を少なくし、その車輪の外周面の剛性を高めることができる。従って、伝達されるトルクによる車輪の外周面の変形を小さく抑えることができ、車輪の摩耗を更に低減することができる。例えば、第2走行部32Rの走行に第1走行部32Fを従動させる場合は、第1前輪41F及び第2前輪42Fに伝達されるトルクより第1後輪41R及び第2後輪42Rに伝達されるトルクが大きくなる。このような場合は、第1後輪41Rの第1凹溝53及び第2後輪42Rの第2凹溝54の本数が第1前輪41Fの第1凹溝53及び第2前輪42Fの第2凹溝54の本数より少なくすると好適である。例えば、伝達されるトルクが大きい方の車輪の凹溝を(図4及び図7に示すような)3本とし、伝達されるトルクが少ない方の車輪の凹溝を(図5及び図8に示すような)6本としても良い。また、例えば、伝達されるトルクが大きい方の車輪の凹溝を0本又は1本とし、伝達されるトルクが小さい方の車輪の凹溝を2本以上としても良い。伝達されるトルクが大きい方の車輪における凹溝の形状は、幅方向Wにおいて非対称の形状である図4図5図7図8に示す形状であることが望ましい。また、伝達されるトルクが小さい方の車輪における凹溝の形状は、幅方向Wにおいて非対称の形状である図4図5図7図8に示す形状であることが望ましいが、幅方向Wにおいて対称の形状である図13に示す形状であっても良い。
【0035】
〔その他の実施形態〕
次に、物品搬送車10のその他の実施形態について説明する。
【0036】
(1)上記の実施形態では、物品搬送車10が天井搬送車として構成されている例について説明した。しかし、そのような例に限定されることなく、物品搬送車10が、例えば、床面に配置された第1レール12A及び第2レール12Bに沿って走行する無人搬送車であっても良い。また、物品搬送車10は、第1レール12A及び第2レール12Bに沿って走行し分岐及び合流を自律的な走行により行うものであっても良い。
【0037】
(2)上記の実施形態では、第1走行面F1及び第2走行面F2が平面であり、第1外周面51及び第2外周面52が円筒状である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1走行面F1及び第2走行面F2が曲面であっても良い。また、第1外周面51及び第2外周面52が円錐状であっても良い。
【0038】
(3)上記の実施形態では、第1外周面51と第1側面43Aとの接続部分等が、曲面状に形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1外周面51と第1側面43Aとの接続部分及び第2外周面52と第4側面44Dとの接続部分がC面取り形状であっても良い。
【0039】
(4)上記の実施形態では、曲率半径Raが曲率半径Rbよりも大きく、曲率半径Rdが曲率半径Rcよりも大きい構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、曲率半径Raと曲率半径Rbと曲率半径Rcと曲率半径Rdとが全て同じ大きさであっても良い。
【0040】
(5)上記の実施形態では、第1凹溝53及び第2凹溝54の溝底面における径方向Rに沿う断面の形状が、円弧状である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1凹溝53及び第2凹溝54の溝底面における径方向Rに沿う断面の形状が三角形や台形の形状であっても良い。
【0041】
(6)上記の実施形態では、寸法P12が第1幅P1以上であって第1幅P1の2倍未満であり、寸法P11が第1幅P1の2倍以上である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、寸法P12及び寸法P11が第1幅P1未満であっても良い。また、上記の実施形態では、寸法P21が第2幅P2以上であって第2幅P2の2倍未満であり、寸法P22が第2幅P2の2倍以上である構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、寸法P21及び寸法P22が第2幅P2未満であっても良い。
【0042】
(7)上記の実施形態では、複数本の第1凹溝53の一部に第1目印溝部55が設けられ、複数本の第2凹溝54の一部に第2目印溝部56が設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1目印溝部55及び第2目印溝部56が無くても良い。
【0043】
(8)上記の実施形態では、制御部70が物品搬送車10に設けられている例について説明した。しかし、そのような例に限定されることなく、制御部70が物品搬送車10とは独立の図示しない外部制御装置に設けられてもよい。また、制御部70が互いに通信可能に分離された複数のハードウェアを備える場合、一部のハードウェアが物品搬送車10に設けられ、残りのハードウェアが外部制御装置に設けられてもよい。
【0044】
(9)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0045】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した物品搬送車について説明する。
【0046】
本開示に係る物品搬送車は、
互いに平行状に配置された第1レール及び第2レールに沿って走行して物品を搬送する物品搬送車であって、
上下方向に沿う上下方向視で前記第1レール及び前記第2レールの延在方向に直交する方向を幅方向として、
前記物品を保持する物品保持部が連結された車体と、
前記幅方向に沿う第1回転軸心回りに回転可能な状態で前記車体に支持され、前記第1レールの走行面である第1走行面上を転動する第1車輪と、
前記幅方向に沿う第2回転軸心回りに回転可能な状態で前記車体に支持され、前記第2レールの走行面である第2走行面上を転動する第2車輪と、
を備え、
前記第1車輪における前記第1走行面に接する外周面を第1外周面とし、前記第2車輪における前記第2走行面に接する外周面を第2外周面として、
前記第1車輪は、前記第1外周面を形成する部分である第1車輪本体部が合成樹脂製であり、
前記第2車輪は、前記第2外周面を形成する部分である第2車輪本体部が合成樹脂製であり、
前記第1外周面には、前記第1車輪の周方向に延在する複数本の第1凹溝が形成され、
前記第2外周面には、前記第2車輪の周方向に延在する複数本の第2凹溝が形成され、
前記幅方向における前記第2車輪に対して前記第1車輪が配置された側を幅方向第1側とし、その反対側を幅方向第2側とし、
前記第1車輪本体部における前記幅方向第1側を向く側面を第1側面とし、前記第1車輪本体部における前記幅方向第2側を向く側面を第2側面とし、
前記第2車輪本体部における前記幅方向第1側を向く側面を第3側面とし、前記第2車輪本体部における前記幅方向第2側を向く側面を第4側面として、
最も前記幅方向第1側の前記第1凹溝と前記第1側面との前記幅方向の間隔は、最も前記幅方向第2側の前記第1凹溝と前記第2側面との前記幅方向の間隔よりも大きく、
最も前記幅方向第2側の前記第2凹溝と前記第4側面との前記幅方向の間隔は、最も前記幅方向第1側の前記第2凹溝と前記第3側面との前記幅方向の間隔よりも大きい。
【0047】
本構成によれば、車輪の外周面に周方向に延在する複数本の凹溝を形成しているので、物品搬送車の重量を支持するために必要な車輪幅を確保しつつ、車輪の摩耗を低減することができる。車輪の摩耗が低減する理由としては、仮説ではあるが、車輪の外周面に凹溝が形成されることで、レールの走行面に対する外周面の真実接触面積が小さくなり、車輪の摺動方向のせん断力が減少するためと考えられる。また、本構成によれば、曲線経路を走行中にレールの走行面との接触荷重が大きくなり易い、外周面の幅方向外側部分に凹溝が形成されない領域を設けることができる。これにより、曲線経路を走行中にレールの走行面との接触荷重が大きくなり易い領域の剛性を確保し易い。従って、曲線経路の走行中における車輪の外周面の変形を小さく抑えることができ、車輪の摩耗を更に低減することができる。
【0048】
また、前記物品搬送車において、
前記第1走行面及び前記第2走行面は平面であり、
前記第1外周面は、中心軸が前記第1走行面に平行に配置された円筒状に形成されており、
前記第2外周面は、中心軸が前記第2走行面に平行に配置された円筒状に形成されていると好適である。
【0049】
本構成によれば、直進走行中には、凹溝が形成されている部分を除く第1外周面及び第2外周面の全体に均等に荷重が作用し易い。従って、車輪の耐久性を高め易い。
【0050】
また、前記物品搬送車において、
前記第1回転軸心に直交する方向、及び、前記第2回転軸心に直交する方向をそれぞれ径方向として、
前記第1外周面と前記第1側面との接続部分が、前記幅方向第1側へ向かうに従って前記径方向の内側へ向かう曲面状に形成され、
前記第1外周面と前記第2側面との接続部分が、前記幅方向第2側へ向かうに従って前記径方向の内側へ向かう曲面状に形成され、
前記第2外周面と前記第3側面との接続部分が、前記幅方向第1側へ向かうに従って前記径方向の内側へ向かう曲面状に形成され、
前記第2外周面と前記第4側面との接続部分が、前記幅方向第2側へ向かうに従って前記径方向の内側へ向かう曲面状に形成されていると好適である。
【0051】
本構成によれば、曲線経路を走行中に車輪本体部の幅方向の外側部分に大きな接触荷重が作用した場合に、車輪本体部の変形を小さく抑え易い。従って、車輪の摩耗を更に低減することができる。
【0052】
また、前記物品搬送車において、
前記第1外周面と前記第1側面との接続部分の曲率半径は、前記第1外周面と前記第2側面との接続部分の曲率半径よりも大きく、
前記第2外周面と前記第4側面との接続部分の曲率半径は、前記第2外周面と前記第3側面との接続部分の曲率半径よりも大きいと好適である。
【0053】
本構成によれば、曲線経路を走行中に車輪本体部の幅方向の外側部分に大きな接触荷重が作用した場合に、車輪本体部における幅方向外側の接続部分の変形を小さく抑え易い。従って、車輪の摩耗を更に低減することができる。
【0054】
また、前記物品搬送車において、
前記第1回転軸心に直交する方向、及び、前記第2回転軸心に直交する方向をそれぞれ径方向として、
前記第1凹溝の溝底面における前記径方向に沿う断面の形状が、円弧状に形成され、
前記第2凹溝の溝底面における前記径方向に沿う断面の形状が、円弧状に形成されていると好適である。
【0055】
本構成によれば、車輪本体部に溝底面から割れ等の破損が生じる可能性を低減できる。
【0056】
また、前記物品搬送車において、
前記第1凹溝は、前記幅方向に並んで3本以上配置され、
前記第1外周面における、前記幅方向に隣り合う一対の前記第1凹溝に挟まれた平坦部の前記幅方向の寸法のうちの最も小さい幅を第1幅として、
前記第1外周面における、最も前記幅方向第2側の前記第1凹溝よりも前記幅方向第2側の平坦部の前記幅方向の寸法は、前記第1幅以上であって前記第1幅の2倍未満であり、
前記第1外周面における、最も前記幅方向第1側の前記第1凹溝よりも前記幅方向第1側の平坦部の前記幅方向の寸法は、前記第1幅の2倍以上であり、
前記第2凹溝は、前記幅方向に並んで3本以上配置され、
前記第2外周面における、前記幅方向に隣り合う一対の前記第2凹溝に挟まれた平坦部の前記幅方向の寸法のうちの最も小さい幅を第2幅として、
前記第2外周面における、最も前記幅方向第1側の前記第2凹溝よりも前記幅方向第1側の平坦部の前記幅方向の寸法は、前記第2幅以上であって前記第2幅の2倍未満であり、
前記第2外周面における、最も前記幅方向第2側の前記第2凹溝よりも前記幅方向第2側の平坦部の前記幅方向の寸法は、前記第2幅の2倍以上であると好適である。
【0057】
本構成によれば、レールの走行面に対する車輪の外周面の接触面積を小さく抑えつつ、曲線経路を走行中にレールの走行面との接触荷重が大きくなり易い、外周面の幅方向外側部分に凹溝が形成されない領域を設け易い。従って、曲線経路の走行中における車輪の外周面の変形を小さく抑え易く、車輪の摩耗を更に低減することができる。
【0058】
また、前記物品搬送車において、
前記第1車輪として、第1前輪と第1後輪とを備え、
前記第2車輪として、第2前輪と第2後輪とを備え、
前記第1前輪及び前記第2前輪に伝達されるトルクと、前記第1後輪及び前記第2後輪に伝達されるトルクとが異なり、
前記第1前輪と前記第1後輪とのうち、伝達されるトルクが大きい方の前記第1凹溝の本数が、伝達されるトルクが小さい方の前記第1凹溝の本数よりも少なく、
前記第2前輪と前記第2後輪とのうち、伝達されるトルクが大きい方の前記第2凹溝の本数が、伝達されるトルクが小さい方の前記第2凹溝の本数よりも少ないと好適である。
【0059】
本構成によれば、伝達されるトルクが大きい方の車輪の溝本数を少なくし、外周面の剛性を高めることができる。従って、伝達されるトルクによる車輪の外周面の変形を小さく抑えることができ、車輪の摩耗を更に低減することができる。
【0060】
また、前記物品搬送車において、
前記第1車輪の交換時期の基準となる前記第1車輪の半径の減少量を第1半径減少量として、
複数本の前記第1凹溝の一部に、前記第1半径減少量と同じ深さの溝部である第1目印溝部が設けられ、
前記第2車輪の交換時期の基準となる前記第2車輪の半径の減少量を第2半径減少量として、
複数本の前記第2凹溝の一部に、前記第2半径減少量と同じ深さの溝部である第2目印溝部が設けられていると好適である。
【0061】
本構成によれば、車輪の交換時期を目印溝部の溝がなくなったことにより判定することができる。従って、車輪の交換時期を目視により容易に判定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示に係る技術は、物品搬送車に利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
10 :物品搬送車
12A :第1レール
12B :第2レール
20 :物品保持部
30 :車体
41 :第1車輪
41F :第1前輪
41R :第1後輪
42 :第2車輪
42F :第2前輪
42R :第2後輪
43 :第1車輪本体部
43A :第1側面
43B :第2側面
44 :第2車輪本体部
44C :第3側面
44D :第4側面
51 :第1外周面
52 :第2外周面
53 :第1凹溝
54 :第2凹溝
55 :第1目印溝部
56 :第2目印溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13