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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】電池および電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/178 20210101AFI20240723BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20240723BHJP
   H01M 50/557 20210101ALI20240723BHJP
【FI】
H01M50/178
H01M50/105
H01M50/557
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022113887
(22)【出願日】2022-07-15
(65)【公開番号】P2024011676
(43)【公開日】2024-01-25
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】永田 佑佳
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/142702(WO,A1)
【文献】特開2021-190281(JP,A)
【文献】特開2019-102334(JP,A)
【文献】特開2020-004515(JP,A)
【文献】特開2006-164784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/105
H01M 50/178
H01M 50/557
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、
前記電極体の側面部に配置された集電端子と、
前記電極体を覆うラミネートフィルムと、
を備える電池であって、
前記電極体は、前記集電端子に接続された集電タブを有し、
前記電池を前記集電端子側から側面視した場合に、前記集電端子の外縁は、前記電極体の外縁より内側に位置し、
前記ラミネートフィルムは、前記集電端子の前記外縁を構成する面、および、前記電極体の前記外縁を構成する面を覆うように配置され、
前記集電端子の角部に、前記ラミネートフィルムの内面同士が融着した融着部が配置され、
前記融着部は、第1面と、前記第1面に対向し、かつ、前記第1面より外側に位置する第2面と、前記第1面および前記第2面を結ぶ曲面と、を有し、
前記第1面の法線方向、および、前記第2面の法線方向は、それぞれ、前記電池の厚さ方向に平行であり、
前記融着部は、前記集電端子側の前記ラミネートフィルムの端部位置から、前記電極体側に向かって延在し、
前記ラミネートフィルムは、前記融着部の前記電極体側の端部に隣接する位置に、前記第1面から連続的に形成された傾斜面を有し、
前記傾斜面の法線方向は、前記電池の厚さ方向に対して、交差している、電池。
【請求項2】
前記傾斜面の平面視形状は、三角形状である、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記電池を前記集電端子側から側面視した場合に、前記集電端子の形状は、四角形である、請求項1または請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記集電端子の4つの前記角部に、それぞれ、前記融着部が配置されている、請求項3に記載の電池。
【請求項5】
前記電池を前記集電端子側から側面視した場合に、前記電極体における前記外縁の長さLに対する、前記集電端子における前記外縁の長さLの割合(L/L)が、0.7以上、1未満である、請求項1または請求項2に記載の電池。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の電池の製造方法であって、
前記電極体および前記集電端子を有する構造体を準備する準備工程と、
前記構造体における前記電極体の前記外縁を構成する面を、前記ラミネートフィルムで覆う第1被覆工程と、
前記構造体における前記集電端子の前記外縁を構成する面を、前記ラミネートフィルムで覆う第2被覆工程と、を有し、
前記第2被覆工程において、前記集電端子の前記外縁を構成する面と面接触可能な治具を用いて、前記融着部を形成し、
前記ラミネートフィルムとして、前記傾斜面を形成するための折り曲げ加工部を有するラミネートフィルムを用いる、電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池および電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池は、通常、正極集電体、正極活物質層、電解質層、負極活物質層および負極集電体を有する電極体を備える。電極体は、例えば、外装材に囲まれた内部空間に封止される。特許文献1には、電極組立体と、電極組立体の外部を囲む外装材と、上記外装材を密封する第1および第2カバーとを含み、第1電極端子および第2電極端子が、それぞれ第1カバーおよび第2カバーを介して外部に引き出されたリチウムポリマー二次電池が開示されている。また、特許文献1には、外装材として、ラミネートフィルムが記載されている。特許文献2には、1枚のフィルムからなる外装体を用いた電池であって、集電タブリードが延設される端面と直交する辺の角部に、上記フィルムを複数枚重ねて設けられるリブ構造を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-108623号公報
【文献】特開2021-190281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
後述する図3に示すように、集電端子の寸法を、電極体の寸法より小さくする場合がある。このような寸法関係にある集電端子を、ラミネートフィルムで封止すると、例えばラミネートフィルムにシワが生じ、電池の密封性が低下する場合がある。このような問題を解決するため、発明者等は、集電端子上に、ラミネートフィルムの内面同士が融着した融着部を設けることを着想した。融着部を設けることで、密封性の低下を抑制できる。
【0005】
一方、電極体は、通常、集電端子に接続するための集電タブを有する。集電タブは、剛性が低いため、集電端子に負荷が加わると、ラミネートフィルム(特に、集電タブの近傍に位置するラミネートフィルム)に変形が生じやすくなる。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、集電端子に負荷が加わった場合であっても、ラミネートフィルムに変形が生じることを抑制可能な電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]
電極体と、上記電極体の側面部に配置された集電端子と、上記電極体を覆うラミネートフィルムと、を備える電池であって、上記電極体は、上記集電端子に接続された集電タブを有し、上記電池を上記集電端子側から側面視した場合に、上記集電端子の外縁は、上記電極体の外縁より内側に位置し、上記ラミネートフィルムは、上記集電端子の上記外縁を構成する面、および、上記電極体の上記外縁を構成する面を覆うように配置され、上記集電端子の角部に、上記ラミネートフィルムの内面同士が融着した融着部が配置され、上記融着部は、第1面と、上記第1面に対向し、かつ、上記第1面より外側に位置する第2面と、上記第1面および上記第2面を結ぶ曲面と、を有し、上記第1面の法線方向、および、上記第2面の法線方向は、それぞれ、上記電池の厚さ方向に平行であり、上記融着部は、上記集電端子側の上記ラミネートフィルムの端部位置から、上記電極体側に向かって延在し、上記ラミネートフィルムは、上記融着部の上記電極体側の端部に隣接する位置に、上記第1面から連続的に形成された傾斜面を有し、上記傾斜面の法線方向は、上記電池の厚さ方向に対して、交差している、電池。
【0008】
[2]
上記傾斜面の平面視形状は、三角形状である、[1]または[2]に記載の電池。
【0009】
[3]
上記電池を上記集電端子側から側面視した場合に、上記集電端子の形状は、四角形である、[1]または[2]に記載の電池。
【0010】
[4]
上記集電端子の4つの上記角部に、それぞれ、上記融着部が配置されている、[3]に記載の電池。
【0011】
[5]
上記電池を上記集電端子側から側面視した場合に、上記電極体における上記外縁の長さLに対する、上記集電端子における上記外縁の長さLの割合(L/L)が、0.7以上、1未満である、[1]から[4]までのいずれかに記載の電池。
【0012】
[6]
[1]から[5]までのいずれかに記載の電池の製造方法であって、上記電極体および上記集電端子を有する構造体を準備する準備工程と、上記構造体における上記電極体の上記外縁を構成する面を、上記ラミネートフィルムで覆う第1被覆工程と、上記構造体における上記集電端子の上記外縁を構成する面を、上記ラミネートフィルムで覆う第2被覆工程と、を有し、上記第2被覆工程において、上記集電端子の上記外縁を構成する面と面接触可能な治具を用いて、上記融着部を形成し、上記ラミネートフィルムとして、上記傾斜面を形成するための折り曲げ加工部を有するラミネートフィルムを用いる、電池の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本開示における電池は、集電端子に負荷が加わった場合であっても、ラミネートフィルムに変形が生じることを抑制可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示における電極体および集電端子を例示する概略斜視図である。
図2】本開示における電極体、集電端子およびラミネートフィルムを例示する概略斜視図である。
図3】本開示における電極体、集電端子およびラミネートフィルムを例示する概略側面図および概略断面図である。
図4】本開示における電池の一部を例示する概略側面図である。
図5】本開示における電池の一部を例示する概略側面図である。
図6】本開示における電池の一部を例示する概略平面図である。
図7】本開示における電池の一部を例示する概略斜視図である。
図8】本開示における電池の一部を例示する概略斜視図である。
図9】本開示における傾斜面の法線方向を説明する説明図である。
図10】本開示における第2被覆工程を例示する概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示における実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0016】
A.電池
図1は、本開示における電極体および集電端子を例示する概略斜視図である。図1(a)に示す電極体10は、頂面部11と、頂面部11に対向する底面部12と、頂面部11および底面部12を連結する、4つの側面部(第1側面部13、第2側面部14、第3側面部15および第4側面部16)と、を有する。また、図1(b)において、電極体10における第1側面部13に、第1集電端子20Aが配置され、電極体10における第3側面部15に、第2集電端子20Bが配置されている。例えば、第1集電端子20Aは正極集電端子であり、第2集電端子20Bは負極集電端子である。
【0017】
図2は、本開示における電極体、集電端子およびラミネートフィルムを例示する概略斜視図である。図2(a)に示すように、ラミネートフィルム30は、例えば1枚のフィルムである。また、図2(a)、(b)に示すように、ラミネートフィルム30は、電極体10における底面部12、第2側面部14、頂面部11および第4側面部16の全体を覆うように折り畳まれる。一方、図2(b)において、第1集電端子20Aの少なくとも一部、および、第2集電端子20Bの少なくとも一部は、折り畳まれたラミネートフィルム30の内側に位置している。
【0018】
図3(a)は、本開示における電極体および集電端子を例示する概略側面図であり、図3(b)は、図3(a)のA-A断面図である。図3(a)、(b)に示すように、電極体10および集電端子20を、集電端子20側から観察した場合に、集電端子20の外縁Eは、電極体10の外縁Eより内側に位置する。すなわち、集電端子20の寸法は、電極体10の寸法より小さい。また、図3(b)に示すように、電極体10は、側面部SS10に集電タブTを有する。集電タブTは、集電端子20の対向面(電極体10の側面部SS10に対向する面)で接合されている。
【0019】
図3(c)は、本開示における電極体、集電端子およびラミネートフィルムを例示する概略側面図であり、図3(d)は、図3(c)のA-A断面図である。図3(c)、(d)に示すように、電極体10、集電端子20およびラミネートフィルム30を、集電端子20側から観察した場合に、ラミネートフィルム30と、集電端子20との間に、空間Sが生じる。そのため、集電端子20をラミネートフィルム30で封止すると、ラミネートフィルム30の余剰部位に起因して、ラミネートフィルム30にシワが生じ、電池の密封性が低下する場合がある。これに対して、本開示における電池は、図4(a)、(b)に示すように、集電端子20の角部に、ラミネートフィルム30の内面(集電端子20側の面)同士が融着した融着部Xが配置されている。融着部Xを設けることで、ラミネートフィルムのシワによる密封性の低下を抑制できる。
【0020】
図5に示すように、融着部Xは、第1面Sと、第2面Sと、第1面Sおよび第2面Sを結ぶ曲面Sと、を有する。第2面Sは、第1面Sに対向し、かつ、電池の厚さ方向Dにおいて、第1面Sより外側に位置する。また、第1面Sの法線方向および第2面Sの法線方向は、電池の厚さ方向Dに平行である。
【0021】
図6および図7に示すように、電池100を厚さ方向から平面視した場合に、集電端子20側のラミネートフィルム30の端部位置をαとする。融着部Xは、端部位置αから、電極体10側に向かって延在している。また、図8に示すように、ラミネートフィルム30は、融着部Xの電極体10側の端部(端部位置αとは逆側の端部)に隣接する位置に、第1面Sから連続的に形成された傾斜面Zを有する。傾斜面Zの法線方向は、電池の厚さ方向Dに対して、交差している。
【0022】
本開示によれば、集電端子上に融着部が配置されていることから、密封性の低下を抑制した電池となる。上述した図3に示すように、集電端子の寸法を、電極体の寸法より小さくする場合がある。このような寸法関係を採用することで、例えば複数の電池を積層した場合に、隣り合う集電端子が接触することを防止できる。隣り合う集電端子の接触を防止することで、電池の破損が生じにくくなる。また、このような寸法関係にある集電端子を、ラミネートフィルムで封止すると、例えばラミネートフィルムにシワが生じ、電池の密封性が低下する場合がある。本開示においては、ラミネートフィルムの内面同士が融着した融着部Xを、集電端子上に配置することで、集電端子の寸法を、電極体の寸法より小さくした場合であっても、密封性の低下を抑制した電池となる。一方、上述したように、電極体は、通常、集電端子に接続するための集電タブを有する。集電タブは、剛性が低いため、集電端子に負荷が加わると、集電タブの近傍に位置するラミネートフィルムに変形が生じやすくなる。これに対して、本開示によれば、ラミネートフィルムに、所定の傾斜面を設けることで、集電端子に負荷が加わった場合であっても、集電タブの近傍に位置するラミネートフィルムに変形が生じることを抑制した電池となる。
【0023】
1.電池の構成
本開示における電池は、電極体と、集電端子と、ラミネートフィルムと、を少なくとも備える。
【0024】
(1)電極体
本開示における電極体は、電池の発電要素として機能する。電極体の形状は特に限定されないが、例えば、図1(a)に示すように、頂面部11と、頂面部11に対向する底面部12と、頂面部11および底面部12を連結する、4つの側面部(第1側面部13、第2側面部14、第3側面部15および第4側面部16)と、を有する。頂面部11および底面部12は、いずれも電極体の主面に該当し、主面の法線方向を、厚さ方向と定義することができる。また、第1側面部13および第3側面部15は対向するように配置されている。同様に、第2側面部14および第4側面部16は対向するように配置されている。
【0025】
頂面部の形状は、特に限定されないが、例えば、正方形、長方形、菱形、台形、平行四辺形等の四角形が挙げられる。図1(a)における頂面部11の形状は、長方形である。また、頂面部の形状は、四角形以外の多角形であってもよく、円形等の曲線を有する形状であってもよい。また、底面部の形状については、頂面部の形状と同様である。側面部の形状は、特に限定されないが、例えば、正方形、長方形、菱形、台形、平行四辺形等の四角形が挙げられる。
【0026】
(2)集電端子
本開示における集電端子は、電極体の側面部に配置される。本開示における電池は、1つの電極体に対して、2つの集電端子を備えていることが好ましい。例えば図1(b)に示すように、電極体10に対して、一対の集電端子20(第1集電端子20Aおよび第2集電端子20B)が、対向するように配置されていてもよい。また、図1(b)では、一対の集電端子20が、電極体10の長手方向において、対向するように配置されていている。
【0027】
電池を集電端子側から側面視した場合に、集電端子の形状は、特に限定されないが、例えば、正方形、長方形、菱形、台形、平行四辺形等の四角形が挙げられる。図3(a)における集電端子20の形状は、長方形である。この長方形では、厚さ方向Dに平行な方向に沿って短辺が延在し、厚さ方向Dに垂直な方向に沿って長辺が延在している。
【0028】
電池を集電端子側から側面視した場合に、集電端子の外縁は、電極体の外縁より内側に位置する。例えば、図3(a)に示すように、集電端子20の外縁Eは、電極体10の外縁Eより内側に位置する。換言すると、集電端子20の外縁Eは、全周にわたって、電極体10の外縁Eに包含されている。
【0029】
例えば図3(a)において、電極体10における外縁Eの長さ(全周長さ)をLとし、集電端子20の外縁Eの長さ(全周長さ)をLとする。Lに対するLの割合(L/L)は、例えば、0.7以上、1未満であり、0.8以上、0.95以下であってもよい。また、例えば図3(a)において、厚さ方向Dにおける外縁Eの長さをLとし、厚さ方向Dにおける外縁Eの長さをLとする。Lに対するLの割合(L/L)は、例えば、0.5以上、1未満であり、0.8以上、0.95以下であってもよい。また、例えば図3(a)において、厚さ方向Dに直交する方向における外縁Eの長さをLとし、厚さ方向Dに直交する方向における外縁Eの長さをLとする。Lに対するLの割合(L/L)は、例えば、0.5以上、1未満であり、0.8以上、0.95以下であってもよい。また、例えば図3(a)において、外縁Eと外縁Eとの隙間の長さをδとする。δは、0mmより大きく、0.3mm以上であってもよく、0.5mm以上であってよい。一方、δは、例えば、1.5mm以下である。
【0030】
(3)ラミネートフィルム
本開示におけるラミネートフィルムは、電極体を覆い、集電端子とともに電極体を封止する。図2に示すように、電極体10および集電端子20を、集電端子20側から観察した場合に、ラミネートフィルム30は、集電端子20の上記外縁を構成する面、および、電極体10の上記外縁を構成する面を覆うように配置される。また、図4(a)に示すように、集電端子20の角部に、ラミネートフィルム30の内面同士が融着した融着部Xが配置される。融着部Xにおける融着面は空隙を有しないことが好ましい。ラミネートフィルムは、融着部Xを一つ有していてもよく、2以上有していてもよい。また、厚さ方向において対向する、集電端子の2つの角部に、それぞれ、融着部Xが配置されていてもよい。また、図4(a)において、ラミネートフィルム30の端部同士が融着した端部密着部Yが配置されている。端部密着部Yは集電端子の形状に合わせて、折り曲げ加工がされていてもよい。余剰な空間を低減できるからである。また、図4(b)に示すように、集電端子20の形状は、四角形であり、かつ、その全ての角部に、それぞれ、融着部Xが配置されていてもよい。図4(b)において、端部密着部Yは、2つの角部を結ぶ辺に配置されている。
【0031】
図5に示すように、融着部Xは、第1面Sと、第2面Sと、第1面Sおよび第2面Sを結ぶ曲面Sと、を有する。第2面Sは、第1面Sに対向し、かつ、電池の厚さ方向Dにおいて、第1面Sより外側に位置する。また、第1面Sの法線方向および第2面Sの法線方向は、電池の厚さ方向Dに平行である。「平行」とは、両者のなす角度が20°以下であることをいう。
【0032】
図5においては、電池100を集電端子20側から側面視した場合に、融着部Xが集電端子20の外縁Eを構成する角部に配置されている。具体的には、集電端子20の外縁Eを構成する角部が、融着部Xにおける融着面の端部tと一致している。また、図5に示すように、融着部Xにおける融着面の幅をwとする。幅wは、例えば0.1mm以上であり、0.3mm以上であってもよく、0.6mm以上であってもよい。一方、幅wは、例えば1.2mm以下である。
【0033】
図6および図7に示すように、電池100を厚さ方向から平面視した場合に、集電端子20側のラミネートフィルム30の端部位置をαとし、集電端子20および電極体10の境界に相当するラミネートフィルム30の位置をβとする。図6および図7における融着部Xは、端部位置αから位置βまで、連続的に配置されている。また、電極体30から集電端子20が延在する方向(軸方向)をDとした場合、融着部Xは、Dに沿って配置されていることが好ましい。また、融着部Xは、Dにおける端部位置αから位置βまでの少なくとも一部の領域に、配置されていてもよい。Dにおける融着部Xの長さは、例えば1mm以上であり、3mm以上であってもよく、5mm以上であってもよい。
【0034】
図8に示すように、ラミネートフィルム30は、融着部Xの電極体10側の端部(端部位置αとは逆側の端部)に隣接する位置に、第1面Sから連続的に形成された傾斜面Zを有する。傾斜面Zの法線方向は、電池の厚さ方向Dに対して、交差している。「交差」とは、両者のなす角度が20°より大きいことをいう。傾斜面Zは、平面であってもよく、曲面であってもよい。また、傾斜面Zの法線方向とは、傾斜面Zの重心における法線方向をいう。また、図8に示すように、電極体30から集電端子20が延在する方向(軸方向)をDとし、電池の厚さ方向Dに該当する方向をDとし、DおよびDに直交する方向をDとする。図9は、図8における傾斜面Zの法線方向を説明する説明図である。図9(a)に示すように、傾斜面ZをDから見た場合に、法線方向Dは、集電端子の外側(-D側)を指していることが好ましい。また、図9(b)に示すように、傾斜面ZをDから見た場合に、法線方向Dは、集電端子側(+D側)を指していることが好ましい。また、図9(a)、(b)に示すように、法線方向Dの高さ成分(D成分)は、電池の内側を指していることが好ましい。なお、特に図示しないが、図8における傾斜面Zの場合、-D側が電池の内側に該当し、+D側が電池の外側に該当する。また、傾斜面の平面視形状は、三角形状であることが好ましい。三角形状とは、厳密な三角形のみならず、三角形状を構成する各辺の少なくとも一つが曲線状であるものも含まれる。
【0035】
2.電池の部材
本開示における電池は、電極体、集電端子およびラミネートフィルムを備える。
【0036】
(1)電極体
本開示における電極体は、通常、正極集電体、正極活物質層、電解質層、負極活物質層および負極集電体を、厚さ方向において、この順に有する。
【0037】
正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する。正極活物質層は、導電材、電解質およびバインダーの少なくとも一つをさらに含有していてもよい。正極活物質としては、例えば、酸化物活物質が挙げられる。酸化物活物質としては、例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等の岩塩層状型活物質、LiMn等のスピネル型活物質、LiFePO等のオリビン型活物質が挙げられる。また、正極活物質として硫黄(S)を用いてもよい。正極活物質の形状は、例えば粒子状である。
【0038】
導電材としては、例えば、炭素材料が挙げられる。電解質は、固体電解質であってもよく、液体電解質であってもよい。固体電解質は、ゲル電解質等の有機固体電解質であってもよく、酸化物固体電解質、硫化物固体電解質等の無機固体電解質であってもよい。また、液体電解質(電解液)は、例えば、LiPF等の支持塩と、カーボネート系溶媒等の溶媒とを含有する。また、バインダーとしては、例えば、ゴム系バインダー、フッ化物系バインダーが挙げられる。
【0039】
負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する。負極活物質層は、導電材、電解質およびバインダーの少なくとも一つをさらに含有していてもよい。負極活物質としては、例えば、Li、Si等の金属活物質、グラファイト等のカーボン活物質、LiTi12等の酸化物活物質が挙げられる。負極活物質の形状は、例えば、粒子状、箔状である。導電材、電解質およびバインダーについては、上述した内容と同様である。
【0040】
電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に配置され、少なくとも電解質を含有する。電解質は、固体電解質であってもよく、液体電解質であってもよい。電解質については、上述した内容と同様である。電解質層は、セパレータを有していてもよい。
【0041】
正極集電体は、正極活物質層の集電を行う。正極集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、SUS、ニッケル等の金属が挙げられる。正極集電体の形状としては、例えば箔状、メッシュ状が挙げられる。正極集電体は、正極集電端子と接続するための正極タブを有していてもよい。
【0042】
負極集電体は、負極活物質層の集電を行う。負極集電体の材料としては、例えば、銅、SUS、ニッケル等の金属が挙げられる。負極集電体の形状としては、例えば箔状、メッシュ状が挙げられる。負極集電体は、負極集電端子と接続するための負極タブを有していてもよい。
【0043】
(2)集電端子
本開示における集電端子は、電極体の側面部に配置される。集電端子とは、少なくとも一部に集電部を有する端子をいう。集電部は、例えば、電極体におけるタブと電気的に接続されている。集電端子は、全体が集電部であってもよく、一部が集電部であってもよい。集電端子の材料としては、例えば、アルミニウム、SUS等の金属が挙げられる。
【0044】
(3)ラミネートフィルム
本開示におけるラミネートフィルムは、熱融着層および金属層がラミネートされた構造を少なくとも有する。また、ラミネートフィルムは、熱融着層、金属層および樹脂層を、厚さ方向に沿って、この順に有していてもよい。熱融着層の材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂が挙げられる。金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼が挙げられる。樹脂層の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロンが挙げられる。熱融着層の厚さは、例えば40μm以上100μm以下である。金属層の厚さは、例えば30μm以上60μm以下である。樹脂層の厚さは、例えば20μm以上60μm以下である。ラミネートフィルムの厚さは、例えば80μm以上、250μm以下である。
【0045】
(4)電池
本開示における電池は、典型的にはリチウムイオン二次電池である。電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。また、本開示においては、上述した電池を、厚さ方向に、複数積層した電池モジュールを提供することもできる。
【0046】
B.電池の製造方法
本開示における電池の製造方法は、上述した電池の製造方法であって、上記電極体および上記集電端子を有する構造体を準備する準備工程と、上記構造体における上記電極体の上記外縁を構成する面を、上記ラミネートフィルムで覆う第1被覆工程と、上記構造体における上記集電端子の上記外縁を構成する面を、上記ラミネートフィルムで覆う第2被覆工程と、を有し、上記第2被覆工程において、上記集電端子の上記外縁を構成する面と面接触可能な治具を用いて、上記融着部を形成し、上記ラミネートフィルムとして、上記傾斜面を形成するための折り曲げ加工部を有するラミネートフィルムを用いる。
【0047】
本開示によれば、融着部を形成することで、密封性の低下を抑制した電池が得られる。さらに、折り曲げ加工部を有するラミネートフィルムを用いることで、傾斜面の形成が容易となる。
【0048】
1.準備工程
本開示における準備工程は、上記電極体および上記集電端子を有する構造体を準備する工程である。電極体および集電端子については、上記「A.電池」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0049】
2.第1被覆工程
本開示における第1被覆工程は、上記構造体における上記電極体の上記外縁を、上記ラミネートフィルムで覆う工程である。例えば図2(a)、(b)に示すように、第1被覆工程においては、電極体10の上記外縁を構成する面(例えば、底面部12、第2側面部14、頂面部11および第4側面部16)を、ラミネートフィルム30で覆う。この際、電極体10およびラミネートフィルム30を溶着してもよく、溶着しなくてもよい。また、図2(b)に示すように、ラミネートフィルム30の端部同士が重複した端部重複部Zを加熱する。これにより、ラミネートフィルム30の端部同士が融着した端部密着部Yが形成される。ラミネートフィルムには、電極体の形状に合わせて、予め折り曲げ加工がされていてもよい。
【0050】
また、第1被覆工程においては、通常、図3(c)、(d)に示すように、ラミネートフィルム30と、集電端子20との間に、空間Sが生じる。この空間Sは、後述する第2被覆工程において消失し、代わりに融着部が形成される。
【0051】
3.第2被覆工程
本開示における第2被覆工程は、上記集電端子の上記外縁を構成する面を、上記ラミネートフィルムで覆う工程である。また、第2被覆工程において、融着部を形成する。また、ラミネートフィルムとして、傾斜面を形成するための折り曲げ加工部を有するラミネートフィルムを用いる。
【0052】
第2被覆工程では、集電端子と、ラミネートフィルムとを、集電端子の外縁を構成する面と面接触可能な治具を用いて溶着させる。図10は、本開示における第2被覆工程を例示する概略側面図である。図10(a)に示すように、上述した第1被覆工程により、ラミネートフィルム30と、集電端子20との間に、空間Sが形成されている。また、上述した第1被覆工程により、端部密着部Yが形成されている。次に、図10(b)に示すように、ラミネートフィルム30および集電端子20に対して、治具41、治具42および治具43および治具44を押し込む。治具41~44は、加熱されていることが好ましい。厚さ方向Dにおいて、治具42および治具44の長さ(図面上下方向の長さ)は、集電端子20の長さ(図面上下方向の長さ)よりも短い。そのため、治具41および治具42の間に空隙が生じ、その空隙に、ラミネートフィルム30の余剰部位が集まる。これにより、図10(c)に示すように、融着部Xが形成される。また、本開示においては、ラミネートフィルム30として、傾斜面を形成するための折り曲げ加工部を有するものを用いることで、傾斜面が安定的に形成される。
【0053】
4.電池
上述した工程により得られる電池については、上記「A.電池」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0054】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0055】
10…電極体
11…頂面部
12…底面部
13…第1側面部
14…第2側面部
15…第3側面部
16…第4側面部
20…集電端子
30…ラミネートフィルム
100…電池
図1
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図10