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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ラケット
(51)【国際特許分類】
   A63B 49/028 20150101AFI20240723BHJP
   A63B 49/022 20150101ALI20240723BHJP
   A63B 102/02 20150101ALN20240723BHJP
   A63B 102/04 20150101ALN20240723BHJP
   A63B 102/06 20150101ALN20240723BHJP
【FI】
A63B49/028
A63B49/022
A63B102:02
A63B102:04
A63B102:06
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022182333
(22)【出願日】2022-11-15
(62)【分割の表示】P 2019050966の分割
【原出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2023009181
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三村 耕平
(72)【発明者】
【氏名】山本 陽介
【審査官】遠藤 孝徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-217192(JP,A)
【文献】特表2006-519050(JP,A)
【文献】特表2000-505711(JP,A)
【文献】米国特許第5993337(US,A)
【文献】特許第4778216(JP,B2)
【文献】特許第4490343(JP,B2)
【文献】特許第4911772(JP,B2)
【文献】登録実用新案第3114950(JP,U)
【文献】特開平8-206256(JP,A)
【文献】実開昭63-20867(JP,U)
【文献】特開2005-177244(JP,A)
【文献】特許第5174342(JP,B2)
【文献】特開平11-9723(JP,A)
【文献】米国特許第4732384(US,A)
【文献】米国特許第6071203(US,A)
【文献】特許第2534963(JP,B2)
【文献】特開2011-41800(JP,A)
【文献】特許第7180475(JP,B2)
【文献】特許第7180474(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 49/00 - 51/16
A63B 102/02
A63B 102/04
A63B 102/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム、このフレームに装着されかつ複数の筒部を有するグロメット、及びフェースを形成するストリングを備えており、
それぞれの筒部が、上記ストリングが通されるための貫通孔を有しており、
これらの筒部が、上記フェースに平行な方向に上記ストリングの移動を許容する平行移動用筒部と、上記フェースに垂直な方向に上記ストリングの移動を許容する垂直移動用筒部とを含んでおり、
上記平行移動用筒部の上記貫通孔が、ベース側開口、側壁及び先端側開口を有しており、
上記平行移動用筒部において、上記ベース側開口から上記先端側開口に至るまで、上記側壁が有する、ラケットの幅方向内側の壁面に、上記ストリングが、当接しており、
中心線に対して、ラケットの幅方向の一方側の平行移動用筒部及び垂直移動用筒部の配置が、中心線に対して、ラケットの幅方向の他方側の平行移動用筒部及び垂直移動用筒部の配置と対称であり、
上記平行移動用筒部に縦ストリングが通されており、上記垂直移動用筒部に他の縦ストリングが通されている、ラケット。
【請求項2】
それぞれの平行移動用筒部が、少なくとも1つの垂直移動用筒部と隣接する請求項1に記載のラケット。
【請求項3】
それぞれの垂直移動用筒部が、少なくとも1つの平行移動用筒部と隣接する請求項1又は2に記載のラケット。
【請求項4】
上記平行移動用筒部が、上記フェースに平行な方向における内寸が上記フェースに垂直な方向における内寸よりも大きい貫通孔を有する請求項1から3のいずれかに記載のラケット。
【請求項5】
上記平行移動用筒部の貫通孔の断面形状が楕円又は長円である請求項4に記載のラケット。
【請求項6】
上記平行移動用筒部の貫通孔における、フェースに平行な方向における内寸L1の、フェースに垂直な方向における内寸L2に対する比(L1/L2)が、1.3以上である請求項4又は5に記載のラケット。
【請求項7】
上記平行移動用筒部が、上記ベース側開口から上記先端側開口に至るまで合同な断面形状を有する貫通孔を有する請求項1から6のいずれかに記載のラケット。
【請求項8】
上記平行移動用筒部の貫通孔における、フェースに平行な方向における内寸L1の、ストリングの直径Dに対する比(L1/D)が、1.5以上である請求項1から7のいずれかに記載のラケット。
【請求項9】
上記垂直移動用筒部が、フェースに垂直な方向における内寸がフェースに平行な方向における内寸よりも大きい先端側開口を含む貫通孔を有する請求項1から8のいずれかに記載のラケット。
【請求項10】
上記垂直移動用筒部の先端側開口の断面形状が長円である請求項9に記載のラケット。
【請求項11】
上記垂直移動用筒部の先端側開口における、フェースに垂直な方向における内寸L4の、フェースに平行な方向における内寸L3に対する比(L4/L3)が、1.3以上である請求項9又は10に記載のラケット。
【請求項12】
上記垂直移動用筒部の先端側開口における、フェースに垂直な方向における内寸L4の、ストリングの直径Dに対する比(L4/D)が、1.5以上である請求項9から11のいずれかに記載のラケット。
【請求項13】
上記平行移動用筒部及び垂直移動用筒部が、上記フレームのトップの近傍に配置されている請求項1から12のいずれかに記載のラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テニス等に使用されるラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
テニスラケットは、フレームとストリングとを有している。古くは、フレームに形成された孔に直接にストリングが通されていた。近年のテニスラケットでは、グロメットを介して孔にストリングが通されている。グロメットの形状に関する提案が、特開平5-345052公報に開示されている。このグロメットは、テニスラケットの打球感に寄与しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-345052公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テニスラケットの高性能化に伴い、近年のテニスでは、ドライブショットが多用されている。ドライブショットでは、テニスボールにオーバースピンが付与される。プレーヤーは、スピンがかかりやすいテニスラケットを望んでいる。
【0005】
本発明の目的は、スピン性能に優れたラケットの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るラケットは、
(1)フレーム、
(2)このフレームに装着されかつ複数の筒部を有するグロメット、
及び
(3)フェースを形成するストリング
を有する。それぞれの筒部は、ストリングが通されるための貫通孔を有する。これらの筒部は、主としてフェースに平行な方向にストリングの移動を許容する平行移動用筒部と、主としてフェースに垂直な方向にストリングの移動を許容する垂直移動用筒部とを含む。
【0007】
好ましくは、それぞれの平行移動用筒部は、少なくとも1つの垂直移動用筒部と隣接する。好ましくは、それぞれの垂直移動用筒部は、少なくとも1つの平行移動用筒部と隣接する。
【0008】
好ましくは、平行移動用筒部は、フェースに平行な方向における内寸がフェースに垂直な方向における内寸よりも大きい貫通孔を有する。好ましくは、平行移動用筒部の貫通孔の断面形状は、楕円又は長円である。好ましくは、平行移動用筒部の貫通孔における、フェースに平行な方向における内寸L1の、フェースに垂直な方向における内寸L2に対する比(L1/L2)は、1.3以上である。好ましくは、平行移動用筒部の貫通孔における、フェースに平行な方向における内寸L1の、ストリングの直径Dに対する比(L1/D)は、1.5以上である。
【0009】
平行移動用筒部の貫通孔は、ベース側開口、側壁及び先端側開口を有しうる。好ましくは、この平行移動用筒部において、ベース側開口から先端側開口に至るまで、ストリングが、側壁に当接する。好ましくは、平行移動用筒部において、側壁が有する幅方向内側の
壁面に、ストリングが当接する。
【0010】
好ましくは、平行移動用筒部は、ベース側開口から先端側開口に至るまで合同な断面形状を有する貫通孔を有する。
【0011】
好ましくは、平行移動用筒部に縦ストリングが通されて、垂直移動用筒部に他の縦ストリングが通される。
【0012】
好ましくは、平行移動用筒部及び垂直移動用筒部は、フレームのトップの近傍に配置される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るラケットでは、ボールとのインパクト時に、平行移動用筒部に通されたストリングが、フェースと平行な方向に大きく変形する。このストリングは、その後に復元する。この変形と復元とにより、ボールに高速のスピンがかかる。
【0014】
本発明に係るラケットでは、ボールとのインパクト時に、垂直移動用筒部に通されたストリングが、フェースと垂直な方向に大きく変形する。一方、平行移動用筒部に通されたストリングの、フェースと垂直な方向への変形は、小さい。従って、平行移動用筒部に通されたストリングからボールに、大きな圧力がかかる。この圧力により、ボールに高速のスピンがかかる。
【0015】
本発明に係るラケットは、スピン性能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るラケットが示された正面図である。
図2図2は、図1のラケットの一部が示された拡大図である。
図3図3は、図1のラケットの一部が示された分解図である。
図4図4は、図3のテニスラケットのグロメットの一部が示された拡大図である。
図5図5(a)は図4のグロメットの一部が示された正面図であり、図5(b)は図5(a)のB-B線に沿った断面図であり、図5(c)は図5(a)のC-C線に沿った断面図である。
図6図6(a)は図4のグロメットの一部が示された正面図であり、図6(b)は図5(a)のB-B線に沿った断面図であり、図6(c)は図5(a)のC-C線に沿った断面図である。
図7図7(a)は図5のグロメットがストリングと共に示された正面図であり、図7(b)は図7(a)のB-B線に沿った断面図である。
図8図8(a)は図6のグロメットがストリングと共に示された正面図であり、図8(b)は図8(a)のB-B線に沿った断面図である。
図9図9は、図1のラケットのトップ近傍が示された拡大図である。
図10図10は、図1のラケットがテニスボールと共に示された正面図である。
図11図11は、図9のトップ近傍が示された正面図である。
図12図12は、図1のラケットの第一筒部が示された断面図である。
図13図13は、図5の平行移動用筒部がストリングと共に示された底面図である。
図14図14は、図6の垂直移動用筒部がストリングと共に示された底面図である。
図15図15は、本発明の他の実施形態に係るテニスラケットの平行移動用筒部がストリングと共に示された底面図である。
図16図16は、本発明のさらに他の実施形態に係るテニスラケットの平行移動用筒部がストリングと共に示された底面図である。
図17図17(a)は本発明のさらに他の実施形態に係るテニスラケットの平行移動用筒部が示された正面図であり、図17(b)は図17(a)のB-B線に沿った断面図であり、図17(c)は図17(a)のC-C線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0018】
(第一実施形態)
図1-3に、テニスラケット2が示されている。このテニスラケット2は、フレーム4、グリップ6、グロメット8及びストリング10を有している。このテニスラケット2は、硬式テニスに使用されうる。図1及び2において、矢印Xはテニスラケット2の幅方向を表し、矢印Yはテニスラケット2の軸方向を表す。
【0019】
フレーム4は、ヘッド12、2つのスロート14及びシャフト16を有している。ヘッド12は、フェース17(後に詳説)の輪郭を形成している。ヘッド12の正面形状は、略楕円である。楕円の長径方向は、テニスラケット2の軸方向Yと一致している。楕円の短径方向は、テニスラケット2の幅方向Xと一致している。それぞれのスロート14の一端は、ヘッド12と連続している。このスロート14は、他端の近傍で他のスロート14と合流している。スロート14は、ヘッド12から延びてシャフト16に至っている。シャフト16は、2つのスロート14が合流する箇所から延びている。シャフト16は、スロート14と連続的にかつ一体的に形成されている。ヘッド12のうち2つのスロート14に挟まれた部分は、ヨーク18である。
【0020】
このフレーム4は、パイプからなる。換言すれば、このフレーム4は中空である。このパイプの材質は、繊維強化樹脂である。この繊維強化樹脂のマトリクス樹脂は、熱硬化樹脂である。典型的な熱硬化樹脂は、エポキシ樹脂である。繊維強化樹脂の典型的な繊維は、カーボン繊維である。この繊維は、長繊維である。
【0021】
グリップ6は、シャフト16に巻かれたテープによって形成されている。グリップ6は、テニスラケット2がスイングされたときの、プレーヤーの手とテニスラケット2とのスリップを抑制する。
【0022】
図3に示されるように、このテニスラケット2は、第一グロメット8a、2つの第二グロメット8b及び第三グロメット8cを有している。それぞれのグロメット8は、ベース20と複数の筒部100とを有している。それぞれの筒部100は、ベース20と一体的に形成されている。このグロメット8の典型的な材質は、フレーム4よりも軟質な合成樹脂である。
【0023】
図3において矢印A1で示されるように、第一グロメット8aは、ヘッド12のトップの近傍に装着される。この装着により、第一グロメット8aのそれぞれの筒部100が、ヘッド12に設けられた孔(図示されず)を貫通する。図3において矢印A2で示されるように、それぞれの第二グロメット8bは、ヘッド12のサイドに装着される。この装着により、第二グロメット8bのそれぞれの筒部100が、ヘッド12に設けられた孔(図示されず)を貫通する。図3において矢印A3で示されるように、第三グロメット8cは、ヨーク18に装着される。この装着により、第三グロメット8cのそれぞれの筒部100が、ヘッド12に設けられた孔(図示されず)を貫通する。
【0024】
ストリング10は、ヘッド12に張られる。ストリング10は、幅方向X及び軸方向Yに沿って張られる。ストリング10のうち幅方向Xに沿って延在する部分は、横ストリング10aと称される。ストリング10のうち軸方向Yに沿って延在する部分は、縦ストリング10bと称される。複数の横ストリング10a及び複数の縦ストリング10bにより、フェース17(図1参照)が形成される。フェース17は、概してX-Y平面に沿っている。
【0025】
図4は、図3のテニスラケット2のグロメット8の一部が示された拡大図である。前述の通り、グロメット8は、ベース20と複数の筒部100とを有している。これら筒部100には、平行移動用筒部100a及び垂直移動用筒部100bが含まれる。これら筒部100には、平行移動用筒部100a及び垂直移動用筒部100b以外の筒部100も含まれうる。
【0026】
図5(a)は図4のグロメット8の一部が示された正面図であり、図5(b)は図5(a)のB-B線に沿った断面図であり、図5(c)は図5(a)のC-C線に沿った断面図である。図5には、平行移動用筒部100aが示されている。平行移動用筒部100aは、貫通孔24aを有している。貫通孔24aは、ベース側開口26a、側壁28a及び先端側開口30aを有している。貫通孔24aの断面形状は、長円である。貫通孔24aは、ベース側開口26aから先端側開口30aに至るまで、合同な断面形状を有する。この貫通孔24aでは、フェース17に平行な方向(図5(a)の左右方向)における内寸は、フェース17に垂直な方向(図5(a)の上下方向)における内寸よりも大きい。
【0027】
図6(a)は図4のグロメット8の一部が示された正面図であり、図6(b)は図6(a)のB-B線に沿った断面図であり、図6(c)は図6(a)のC-C線に沿った断面図である。図6には、垂直移動用筒部100bが示されている。垂直移動用筒部100bは、貫通孔24bを有している。貫通孔24bは、ベース側開口26b、側壁28b及び先端側開口30bを有している。この貫通孔24bでは、フェース17に平行な方向(図6(a)の左右方向)における内寸は、ベース側開口26bから先端側開口30bに至るまで、一定である。フェース17に垂直な方向(図6(a)の上下方向)における内寸は、ベース側開口26bから先端側開口30bに向かい、徐々に大きくなる。ベース側開口26bの形状は、概ね円である。先端側開口30bの形状は、長円である。この先端側開口30bでは、フェース17に垂直な方向における内寸は、フェース17に平行な方向における内寸よりも大きい。
【0028】
図7(a)は図5のグロメット8がストリング10と共に示された正面図であり、図7(b)は図7(a)のB-B線に沿った断面図である。ストリング10は、貫通孔24aを通されている。ストリング10は、ベース側開口26aから先端側開口30aに至るまで、側壁28aに当接している。ストリング10は、側壁28aの左側壁面に当接している。ベース側開口26aの左右方向内寸が、先端側開口30aの左右方向内寸と同じなので、ストリング10が、ベース側開口26aから先端側開口30aに至るまで側壁28aに当接しうる。図7(a)から明らかなように、貫通孔24の左右方向内寸は、ストリング10の直径に比べて十分大きい。従ってストリング10は、平行移動用筒部100aの中で、右方向に移動しうる。ストリング10は、平行移動用筒部100aの中で、上下方向にはほとんど移動できない。換言すれば、平行移動用筒部100aは、主としてフェース17に平行な方向に、ストリング10の移動を許容する。
【0029】
図8(a)は図6のグロメット8がストリング10と共に示された正面図であり、図8(b)は図8(a)のB-B線に沿った断面図である。ストリング10は、貫通孔24bを通されている。ストリング10は、貫通孔24bの軸とほぼ一致して、延在している。図8(a)から明らかなように、先端側開口30bの上下方向内寸は、ストリング10の
直径に比べて十分大きい。従ってストリング10は、垂直移動用筒部100bの中で、上下方向に移動しうる。ストリング10は、垂直移動用筒部100bの中で、左右方向にはほとんど移動できない。換言すれば、垂直移動用筒部100bは、主としてフェース17に垂直な方向に、ストリング10の移動を許容する。
【0030】
図2において符号CLで示されているのは、中心線である。テニスラケット2は、中心線CLに対して対称な形状を有する。図2に示されるように、テニスラケット2は、第一筒部101、第二筒部102、第三筒部103、第四筒部104、第五筒部105、第六筒部106、第七筒部107、第八筒部108、第九筒部109、第十筒部110、第十一筒部111、第十二筒部112、第十三筒部113、第十四筒部114、第十五筒部115、第十六筒部116、第十七筒部117、第十八筒部118、第十九筒部119、第二十筒部120、第二十一筒部121、第二十二筒部122、第二十三筒部123、第二十四筒部124、第二十五筒部125、第二十六筒部126、第二十七筒部127、第二十八筒部128、第二十九筒部129、第三十筒部130、第三十一筒部131、第三十二筒部132、第三十三筒部133、第三十四筒部134及び第三十五筒部135を有している。図2には、35個の筒部100が示されている。前述の通り、テニスラケット2が中心線CLに対して対称な形状を有するので、このテニスラケット2における筒部100の数は、70である。
【0031】
図2に示されるように、第一筒部101、第二筒部102、第三筒部103、第四筒部104、第五筒部105、第六筒部106、第七筒部107、第九筒部109、第二十七筒部127、第二十九筒部129、第三十筒部130、第三十一筒部131、第三十二筒部132、第三十三筒部133、第三十四筒部134及び第三十五筒部135には、縦ストリング10bが通されている。第八筒部108、第十筒部110、第十一筒部111、第十二筒部112、第十三筒部113、第十四筒部114、第十五筒部115、第十六筒部116、第十七筒部117、第十八筒部118、第十九筒部119、第二十筒部120、第二十一筒部121、第二十二筒部122、第二十三筒部123、第二十四筒部124、第二十五筒部125、第二十六筒部126及び第二十八筒部128には、横ストリング10aが通されている。
【0032】
図9は、図1のテニスラケット2のトップ近傍が示された拡大図である。図9では、フレーム4及び横ストリング10aの図示が省略されている。図9には、ベース20、第一筒部101、第二筒部102、第三筒部103、第四筒部104及び第五筒部105が示されている。本実施形態では、第一筒部101、第三筒部103及び第五筒部105は、垂直移動用筒部100bである。それぞれの垂直移動用筒部100bでは、先端側開口30bの形状は、縦長の長円である(図6参照)。第二筒部102及び第四筒部104は、平行移動用筒部100aである。それぞれの平行移動用筒部100aでは、先端側開口30aの形状は、横長の長円である(図5参照)。このテニスラケット2では、複数の平行移動用筒部100aと複数の垂直移動用筒部100bとが、交互に配置されている。それぞれの平行移動用筒部100aは、少なくとも1つの垂直移動用筒部100bと隣接している。それぞれの垂直移動用筒部100bは、少なくとも1つの平行移動用筒部100aと隣接している。
【0033】
図9に示されるように、第二筒部102において縦ストリング10bは、貫通孔24aの側壁28aの、左側(幅方向内側)の壁面に当接している。第四筒部104において縦ストリング10bは、貫通孔24aの側壁28aの、左側(幅方向内側)の壁面に当接している。
【0034】
図10には、テニスラケット2と共にテニスボール32が示されている。図10には、テニスラケット2とテニスボール32とのインパクトの瞬間が、示されている。図10
は、テニスボール32は、中心線CLよりも下方(地面Gの側)にて、フェース17と衝突している。この状態でプレーヤーは、テニスラケット2を、前方へ、そして上方へとスイングする。このスイングは、ドライブスイングである。
【0035】
このスイングにより、第二筒部102を通された縦ストリング10bに、幅方向外向きの力がかかる。第二筒部102の貫通孔24aの幅方向内寸は、十分に大きい。従って、この縦ストリング10bは、第二筒部102に邪魔されることなく変形し、幅方向外向きに移動する。図11には、移動後の縦ストリング10bが示されている。この縦ストリング10bは、その後に復元する。第四筒部104を通された縦ストリング10bも、同様に、変形し復元する。これらの縦ストリング10bの変形と復元とにより、テニスラケット2とテニスボール32との大きな接触時間が達成される。このテニスボール32は、大きなスピン速度を伴って、打ち出される。
【0036】
図12は、図1のラケットの第一筒部101が示された断面図である。図12において矢印Zは、テニスラケット2の厚み方向を表す。前述の通り、第一筒部101では、先端側開口30bの形状は、縦長の長円である。従って、テニスボール32からの圧力を受けて、第一筒部101を通された縦ストリング10bは、Z方向へと変形する。この変形を、第一筒部101は阻害しない。従って縦ストリング10bは、Z方向に十分に変形しうる。図12には、変形後の縦ストリング10bが示されている。この後に縦ストリング10bは、復元する。第三筒部103を通された縦ストリング10b及び第五筒部105を通された縦ストリング10bも、同様に、Z方向に十分に変形しうる。
【0037】
平行移動用筒部100a(第二筒部102又は第四筒部104)では、前述の通り、先端側開口30bの形状は、横長の長円である。従ってこの平行移動用筒部100aは、縦ストリング10bのZ方向への移動を阻害する。平行移動用筒部100aを通された縦ストリング10bは、Z方向には、十分には変形しない。
【0038】
テニスラケット2とテニスボール32とのインパクトのとき、平行移動用筒部100aを通された縦ストリング10bのZ方向への変形量は小さく、垂直移動用筒部100bを通された縦ストリング10bのZ方向への変形量は大きい。換言すれば、インパクトにより、垂直移動用筒部100bを通された縦ストリング10bのみが、大幅に後退する。平行移動用筒部100aを通された縦ストリング10bは、大幅には後退しない。平行移動用筒部100aを通された縦ストリング10bは、インパクト時に、テニスボール32に十分にくい込む。このくい込みにより、テニスボール32に大きな速度のスピンがかかる。
【0039】
図9において矢印W2で示されているのは、トップの近傍ゾーンの幅である。このトップの近傍ゾーンに、平行移動用筒部100a及び垂直移動用筒部100bが配置されることが好ましい。この幅W2は、テニスラケット2の半幅W1(図1参照)の15%以上60%以下が好ましく、20%以上50%以下が特に好ましい。
【0040】
設計者が意図する性能をテニスラケット2に付与する目的で、幅方向外側の壁面にストリング10が当接するように、筒部100が形成されてもよい。
【0041】
このテニスラケット2は、トップ近傍に、平行移動用筒部100a及び垂直移動用筒部100bを有している。テニスラケット2が、ヨーク18に、平行移動用筒部100a及び垂直移動用筒部100bを有してもよい。テニスラケット2が、サイドに、平行移動用筒部100a及び垂直移動用筒部100bを有してもよい。
【0042】
このテニスラケット2では、前述の通り、第二筒部102及び第四筒部104が、平行
移動用筒部100aである。このテニスラケット2は、中心線CLに対して対称な形状を有するので、2個の第二筒部102及び2個の第四筒部104を有する。従って、平行移動用筒部100aの総数N1は、4個である。総数N1は、2個以上16個以下が好ましく、4個以上12個以下が好ましい。
【0043】
このテニスラケット2では、前述の通り、第一筒部101、第三筒部103及び第五筒部105が、垂直移動用筒部100bである。このテニスラケット2は、中心線CLに対して対称な形状を有するので、2個の第一筒部101、2個の第三筒部103及び2個の第五筒部105を有する。従って、垂直移動用筒部100bの総数N2は、6個である。総数N2は、2個以上16個以下が好ましく、4個以上12個以下が好ましい。
【0044】
図13は、図5の平行移動用筒部100aがストリング10と共に示された底面図である。図13には、平行移動用筒部100aの先端が示されている。図13における紙面垂直方向は、平行移動用筒部100aの軸の方向である。平行移動用筒部100aは、先端側開口30aを有している。前述の通り、先端側開口30aの形状は、長円である。
【0045】
図13において矢印L1で示されているのは、先端側開口30aの、フェース17に平行な方向における内寸である。内寸L1は、長円の長径でもある。図13において矢印L2で示されているのは、先端側開口30aの、フェース17に垂直な方向における内寸である。内寸L2は、長円の短径でもある。ストリング10がフェース17に平行な方向に容易に変形し、かつフェース17に垂直な方向に変形しにくいとの観点から、比(L1/L2)は1.3以上が好ましく、1.5以上が特に好ましい。比(L1/L2)は、4.0以下が好ましい。
【0046】
図13において矢印Dで示されているのは、ストリング10の直径である。ストリング10がフェース17に平行な方向に容易に変形するとの観点から、比(L1/D)は1.5以上が好ましく、1.8以上が特に好ましい。比(L1/D)は、4.5以下が好ましい。
【0047】
図14は、図6の垂直移動用筒部100bがストリング10と共に示された底面図である。図14には、垂直移動用筒部100bの先端が示されている。図14における紙面垂直方向は、垂直移動用筒部100bの軸の方向である。垂直移動用筒部100bは、先端側開口30bを有している。前述の通り、先端側開口30bの形状は、長円である。
【0048】
図14において矢印L3で示されているのは、先端側開口30bの、フェース17に平行な方向における内寸である。内寸L3は、長円の短径でもある。図14において矢印L4で示されているのは、先端側開口30bの、フェース17に垂直な方向における内寸である。内寸L4は、長円の長径でもある。ストリング10がフェース17に垂直な方向に容易に変形するとの観点から、比(L4/L3)は1.3以上が好ましく、1.5以上が特に好ましい。比(L4/L3)は、4.0以下が好ましい。
【0049】
図14において矢印Dで示されているのは、ストリング10の直径である。ストリング10がフェース17に垂直な方向に容易に変形するとの観点から、比(L4/D)は1.5以上が好ましく、1.8以上が特に好ましい。比(L4/D)は、4.5以下が好ましい。
【0050】
(第二実施形態)
図15は、本発明の他の実施形態に係るテニスラケットの平行移動用筒部34がストリング10と共に示された底面図である。このテニスラケットの、平行移動用筒部34以外の構造は、図1-14に示されたテニスラケット2のそれと同じである。
【0051】
平行移動用筒部34は、貫通孔を有している。この貫通孔は、ベース側開口、側壁及び先端側開口36を有している。貫通孔の断面形状は、ベース側開口から先端側開口36に至るまで、一定である。図15に示される通り、先端側開口36の形状は、楕円である。図15において矢印L1で示されているのは、先端側開口36の、フェースに平行な方向における内寸である。内寸L1は、楕円の長径でもある。図15において矢印L2で示されているのは、先端側開口36の、フェースに垂直な方向における内寸である。内寸L2は、楕円の短径でもある。ストリング10がフェースに平行な方向に容易に変形し、かつフェースに垂直な方向に変形しにくいとの観点から、比(L1/L2)は1.3以上が好ましく、1.5以上が特に好ましい。比(L1/L2)は、4.0以下が好ましい。
【0052】
図15において矢印Dで示されているのは、ストリング10の直径である。ストリング10がフェースに平行な方向に容易に変形するとの観点から、比(L1/D)は1.5以上が好ましく、1.8以上が特に好ましい。比(L1/D)は、4.5以下が好ましい。
【0053】
(第三実施形態)
図16は、本発明のさらに他の実施形態に係るテニスラケットの平行移動用筒部38がストリング10と共に示された底面図である。このテニスラケットの、平行移動用筒部38以外の構造は、図1-14に示されたテニスラケット2のそれと同じである。
【0054】
平行移動用筒部38は、貫通孔を有している。この貫通孔は、ベース側開口、側壁及び先端側開口40を有している。貫通孔の断面形状は、ベース側開口から先端側開口40に至るまで、一定である。図16に示される通り、先端側開口40の形状は、長円である。この長円の長軸は、フェースに平行な方向に対して傾斜している。図16において矢印L1で示されているのは、先端側開口40の、フェースに平行な方向における内寸である。図16において矢印L2で示されているのは、先端側開口40の、フェースに垂直な方向における内寸である。ストリング10がフェースに平行な方向に容易に変形し、かつフェースに垂直な方向に変形しにくいとの観点から、比(L1/L2)は1.3以上が好ましく、1.5以上が特に好ましい。比(L1/L2)は、4.0以下が好ましい。
【0055】
図16において矢印Dで示されているのは、ストリング10の直径である。ストリング10がフェースに平行な方向に容易に変形するとの観点から、比(L1/D)は1.5以上が好ましく、1.8以上が特に好ましい。比(L1/D)は、4.5以下が好ましい。
【0056】
(第四実施形態)
図17(a)は本発明のさらに他の実施形態に係るテニスラケットの平行移動用筒部42が示された正面図であり、図17(b)は図17(a)のB-B線に沿った断面図であり、図17(c)は図17(a)のC-C線に沿った断面図である。このテニスラケットの、平行移動用筒部42以外の構造は、図1-14に示されたテニスラケット2のそれと同じである。
【0057】
平行移動用筒部42は、貫通孔44を有している。貫通孔44は、ベース側開口46、側壁48及び先端側開口50を有している。ベース側開口46の形状は、円である。先端側開口50の形状は、長円である。貫通孔44の、フェースに平行な方向における内寸は、ベース側開口46から先端側開口50に向かって徐々に広がっている。このテニスラケットでは、平行移動用筒部42に通された縦ストリングが、フェースに平行な方向に容易に変形しうる。
【0058】
(さらに他の実施形態)
平行移動用筒部には、主としてフェースに平行な方向にストリングの移動を許容する、
種々の形状の貫通孔が採用されうる。それぞれの貫通孔において、先端側開口の、フェースに平行な方向における内寸L1とフェースに垂直な方向における内寸L2との比(L1/L2)は、1.3以上が好ましく、1.5以上が特に好ましい。比(L1/L2)は、4.0以下が好ましい。
【0059】
垂直移動用筒部には、主としてフェースに垂直な方向にストリングの移動を許容する、種々の形状の貫通孔が採用されうる。それぞれの貫通孔において、先端側開口の、フェースに垂直な方向における内寸L4とフェースに平行な方向における内寸L3との比(L4/L3)は、1.3以上が好ましく、1.5以上が特に好ましい。比(L4/L3)は、4.0以下が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るラケットは、ソフトテニス、スカッシュ、バドミントン等の種々の競技において用いられうる。
【符号の説明】
【0061】
2・・・テニスラケット
4・・・フレーム
6・・・グリップ
8・・・グロメット
8a・・・第一グロメット
8b・・・第二グロメット
8c・・・第三グロメット
10・・・ストリング
10a・・・横ストリング
10b・・・縦ストリング
12・・・ヘッド
20・・・ベース
24a、24b、44・・・貫通孔
26a、26b、46・・・ベース側開口
28a、28b、48・・・側壁
30a、30b、50・・・先端側開口
34、38、42・・・筒部
100、101-135、100a、100b・・・筒部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
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図17