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特許7524939システム、プログラムの更新確認方法および更新確認プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】システム、プログラムの更新確認方法および更新確認プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/658 20180101AFI20240723BHJP
【FI】
G06F8/658
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022192625
(22)【出願日】2022-12-01
(62)【分割の表示】P 2022003285の分割
【原出願日】2018-02-16
(65)【公開番号】P2023014289
(43)【公開日】2023-01-26
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 優樹
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 靖之
【審査官】松平 英
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-198307(JP,A)
【文献】特許第6184575(JP,B1)
【文献】特許第5989193(JP,B1)
【文献】特開2006-243780(JP,A)
【文献】特開平07-084767(JP,A)
【文献】特開2004-234202(JP,A)
【文献】特開2006-298261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 9/00-11/06
16/00-21/13
21/34-99/00
G06F 8/00-8/38
8/60-8/77
9/44-9/445
9/451
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載可能なシステムであって、
前記車両において実行されるプログラムを記憶する第1の記憶領域と、
前記車両の外部の装置から無線通信により取得される更新データに基づいて、前記プログラムの更新版である更新プログラムを記憶する第2の記憶領域と、
前記車両において実行されるプログラムを前記第1の記憶領域に記憶された前記プログラムから前記第2の記憶領域に記憶された前記更新プログラムに切り替える更新処理を行う更新部と、
前記更新部が前記更新処理を行った後に、前記車両において実行されるプログラムに係る識別情報に少なくとも基づいて、前記車両において実行されるプログラムの更新に成功したかを確認する実行部と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記において実行されるプログラムは、前記車両の自動運転制御に利用されるプログラムであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記車両が起動した際に、前記実行部は前記識別情報を取得することを特徴とする請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記更新データは、前記車両において実行されるプログラムと当該プログラムの更新版との差分データであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記識別情報は、前記車両において実行されるプログラムのバージョン情報であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記実行部は、前記実行部による確認結果を、前記車両において実行されるプログラムを実行する他の実行部に通知することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のシステムを備える車両。
【請求項8】
プロセッサ及びメモリを有する制御装置が実行するプログラムの更新確認方法であって、
車両において実行されるプログラムを第1の記憶領域に記憶させるステップと、
前記車両の外部の装置から無線通信により取得される更新データに基づいて、前記プログラムの更新版である更新プログラムを第2の記憶領域に記憶させるステップと、
前記車両において実行されるプログラムを前記第1の記憶領域に記憶された前記プログラムから前記第2の記憶領域に記憶された前記更新プログラムに切り替える更新処理を行うステップと、
前記更新処理を行った後に、前記車両において実行されるプログラムに係る識別情報に少なくとも基づいて、前記車両において実行されるプログラムの更新に成功したかを確認するステップと、
を含むことを特徴とする更新確認方法。
【請求項9】
プロセッサ及びメモリを有する制御装置が実行するプログラムの更新確認プログラムであって、前記制御装置に、
車両において実行されるプログラムを第1の記憶領域に記憶させるステップと、
前記車両の外部の装置から無線通信により取得される更新データに基づいて、前記プロ
グラムの更新版である更新プログラムを第2の記憶領域に記憶させるステップと、
前記車両において実行されるプログラムを前記第1の記憶領域に記憶された前記プログラムから前記第2の記憶領域に記憶された前記更新プログラムに切り替える更新処理を行うステップと、
前記更新処理を行った後に、前記車両において実行されるプログラムに係る識別情報に少なくとも基づいて、前記車両において実行されるプログラムの更新に成功したかを確認するステップと、
を実行させることを特徴とする更新確認プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載されるシステムおよびそのプログラムの更新確認方法およびプログラムの更新確認プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれる、記憶部および制御部(プ
ロセッサ)を備えた複数の制御装置が搭載されており、それぞれの制御部は、記憶部に格納されたプログラムを実行して、各種の車両制御のための処理を行う。
【0003】
このようなプログラムは、機能の改良や追加のため更新されることがある。特許文献1は、プログラム更新用データをネットワーク経由で携帯端末装置にダウンロードして、携帯端末装置から車両にデータを提供してプログラムを書き換えることで更新を行うシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-60407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ECUの高度化、複雑化により、複数のプロセッサを備え、それぞれが異なるプログラムを実行するECUが存在する。このようなECUでは、記憶部へ更新プログラムを書き込む際や実行対象のプログラムを更新前のものから更新後のものに切り替える際の各種処理の実行タイミングにプログラムごとにずれが生じるおそれがある。このようなずれが生じるとECUの起動時に実行対象のプログラムの一部が更新後のプログラムに変更されず、各プログラムの更新前のバージョンと更新後のバージョンとが想定外の組合せで混在する状態が発生しうる。このような状態ではECUが意図しない動作をするおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、プログラムの更新の際、実行対象のプログラムが更新前のプログラムから更新後のプログラムに変更されたことを確認できるシステム、プログラムの更新確認方法および更新確認プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一局面は、車両に搭載可能なシステムであって、車両において実行されるプログラムを記憶する第1の記憶領域と、車両の外部の装置から無線通信により取得される更新データに基づいて、プログラムの更新版である更新プログラムを記憶する第2の記憶領域と、車両において実行されるプログラムを第1の記憶領域に記憶されたプログラムから第2の記憶領域に記憶された更新プログラムに切り替える更新処理を行う更新部と、更新部が更新処理を行った後に、車両において実行されるプログラムに係る識別情報に少なくとも基づいて、車両において実行されるプログラムの更新に成功したかを確認する実行部と、を備える。
【0008】
本発明の他の一局面は、プロセッサ及びメモリを有する制御装置が実行するプログラムの更新確認方法であって、車両において実行されるプログラムを第1の記憶領域に記憶させるステップと、車両の外部の装置から無線通信により取得される更新データに基づいて、プログラムの更新版である更新プログラムを第2の記憶領域に記憶させるステップと、車両において実行されるプログラムを第1の記憶領域に記憶されたプログラムから第2の記憶領域に記憶された更新プログラムに切り替える更新処理を行うステップと、更新処理を行った後に、車両において実行されるプログラムに係る識別情報に少なくとも基づいて、車両において実行されるプログラムの更新に成功したかを確認するステップと、を含む。
【0009】
本発明の他の一局面は、プロセッサ及びメモリを有する制御装置が実行するプログラムの更新確認プログラムであって、制御装置に、車両において実行されるプログラムを第1の記憶領域に記憶させるステップと、車両の外部の装置から無線通信により取得される更新データに基づいて、プログラムの更新版である更新プログラムを第2の記憶領域に記憶させるステップと、車両において実行されるプログラムを第1の記憶領域に記憶されたプログラムから第2の記憶領域に記憶された更新プログラムに切り替える更新処理を行うステップと、更新処理を行った後に、車両において実行されるプログラムに係る識別情報に少なくとも基づいて、車両において実行されるプログラムの更新に成功したかを確認するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プログラムが正しく変更されたことを確認できるシステム、プログラム確認方法および更新確認プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図
図2】本発明の一実施形態に係る車両制御装置の実行部および記憶部の模式図
図3】本発明の一実施形態に係る車両制御装置の処理を示すシーケンス図
図4】本発明の一実施形態に係る車両制御装置の実行部および記憶部の模式図
図5】本発明の一実施形態に係る車両制御装置の処理を示すシーケンス図
図6】本発明の一実施形態に係る車両制御装置の実行部および記憶部の模式図
図7】本発明の変形例に係る車両制御装置の実行部および記憶部の模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
(概要)
本発明に係る車両制御装置は、複数の実行部がそれぞれのプログラムを実行する。プログラムが更新された場合、各実行部は、互いに他の実行部から実行対象のプログラムの識別子を取得して確認することで、更新されたプログラムに変更されているかを確認することができる。
【0013】
(実施形態)
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
<構成>
図1に、本実施形態における車両制御装置100の機能ブロック図を示す。車両制御装置100は一例として、車両の自動運転制御を行う自動運転ECUであり、各種センサからの入力に基づいて、ステアリング、エンジン、ブレーキ等を制御して車両の運転を行う。車両制御装置100は、プロセッサである第1実行部11、第2実行部21と、例えばFlashROMのような不揮発性のメモリである第1記憶部12、第2記憶部22とを含む。第1記憶部12は第1制御プログラム記憶領域13と第1更新プログラム記憶領域14とを有する。第1実行部11はプロセッサであり、第1制御プログラム記憶領域13に記憶されている現在の実行対象のプログラムである第1制御プログラムを実行する。また、第2実行部21はプロセッサであり、現在の実行対象のプログラムである第2制御プログラム記憶領域23に記憶されている第2制御プログラムを実行する。また、車両制御装置100は、揮発性のRAMを含んでもよい。これらのプログラムの実行出力により、上述の自動運転制御が行われる。
【0015】
更新部91は、車両に搭載されたOTA受信機等が車外のサーバー等からネットワークを介して受信した更新データを取得する。更新部91は、更新データを取得すると、これに基づいて、第1制御プログラムの更新版である第1更新プログラムおよび第2制御プログラムの更新版である第2更新プログラムの一方または両方を生成することができる。更新部91は第1更新プログラムを第1記憶部12の第1更新プログラム記憶領域14に記憶させ、第2更新プログラムを第2記憶部22の第2更新プログラム記憶領域24に記憶させる。なお、更新部91の機能は、第1実行部11および第2実行部21がそれぞれ実行してもよい。
【0016】
図2に、第1更新プログラムが第1記憶部12に記憶されておらず、第2更新プログラ
ムが第2記憶部22に記憶されていない場合の、車両制御装置100の各実行部および各記憶部を模式的に示す。第1制御プログラムは識別子を含んでおり、図示する例では「122」である。これは、第1制御プログラムのバージョンを示す。同様に、第2制御プログラムは識別子を含んでおり、図示する例では「122」である。これは、第2制御プログラムのバージョンを示す。したがって図示する状態では、第1制御プログラムと第2制御プログラムとは同時に実行されるべきバージョンの組となっている。
【0017】
<処理1>
以下に、本実施形態に係るプログラム更新処理の一例を説明する。まず、第1制御プログラムと第2制御プログラムがともに更新される場合について説明する。図3は、処理を説明するシーケンスである。本シーケンスは例えばイグニッションスイッチがオンになったときに開始される。
【0018】
(ステップS101):第1実行部11が第1制御プログラムを読み出して実行する。第1実行部11は、実行対象のプログラムとして第1制御プログラム記憶領域13から第1制御プログラムを読み出すことを、例えば、第1記憶部12に記憶された、プログラムの読み出し先を指定するアドレス等を含む第1読み出し先情報に基づいて判定することができる。第1読み出し先情報は、例えば、更新部91が第1記憶部12に書き込む情報であり、第1実行部11にプログラムの読み出し先を指定する情報やこの情報が変更されたことを表すフラグ等を含む。
【0019】
(ステップS102):第2実行部21が第2制御プログラムを読み出して実行する。第2実行部21は、実行対象のプログラムとして第2制御プログラム記憶領域23から第2制御プログラムを読み出すことを、例えば、第2記憶部22に記憶された、第2読み出し先情報に基づいて判定することができる。第2読み出し先情報は、例えば、更新部91が第2記憶部12に書き込む情報であり、第2実行部21にプログラムの読み出し先を指定する情報やこの情報が変更されたことを表すフラグ等を含む。
【0020】
(ステップS103):更新部91が更新データに基づいて第1更新プログラムおよび第2更新プログラムを生成する。更新データの形式はとくに限定されないが、例えば更新前のプログラムからの更新された部分を含む差分データやその圧縮データであってもよいし、更新プログラムの全体であってもよい。更新部91は、第1記憶部12の第1更新プログラム記憶領域14に第1更新プログラムを記憶させ、第2記憶部22の第2更新プログラム記憶領域24に第2更新プログラムを記憶させる。
【0021】
以上のステップS101、S102、S103の処理が実行され、イグニッションスイッチがオフとなると、以下の処理が行われる。
(ステップS104):更新部91は、第1記憶部12に記憶されている第1読み出し先情報が含む読み出し先アドレスが第1更新プログラム記憶領域14を指定するように変更し、かつ変更があったことを示すフラグを立てることにより、第1実行部11が次回実行対象のプログラムを読み出す際に、第1更新プログラム記憶領域14から第1更新プログラムを読み出すように指定する。また、更新部91は、第2記憶部22に記憶されている第2読み出し先情報の、読み出し先アドレスが第2更新プログラム記憶領域24を指定するように変更し、かつ変更があったことを示すフラグを立てることにより、第2実行部21が次回実行対象のプログラムを読み出す際に、第2更新プログラム記憶領域24から第2更新プログラムを読み出すように指定する。
【0022】
以上のステップS104の処理が実行され、次にイグニッションスイッチがオンとなると、以下の処理が行われる。図4に、第1更新プログラムが第1記憶部12に記憶されていて、第2更新プログラムが第2記憶部22に記憶されている場合の、車両制御装置10
0の各実行部および各記憶部を模式的に示す。第1更新プログラムは識別子を含んでおり、図示する例では「123」である。これは、第1更新プログラムのバージョンを示す。同様に、第2更新プログラムは識別子を含んでおり、図示する例では「123」である。これは、第2更新プログラムのバージョンを示す。したがって図示する状態では、第1更新プログラムと第2更新プログラムとは同じバージョンの組となっている。
【0023】
(ステップS105):第1実行部11は、例えば、第1記憶部12に記憶されている第1読み出し先情報を参照し、実行対象のプログラムが第1制御プログラム記憶領域13に記憶された第1制御プログラムから、第1更新プログラム記憶領域14に格納されている第1更新プログラムに変更されたことを検知する。
【0024】
(ステップS106):第2実行部21は、例えば、第2記憶部22に記憶されている第2読み出し先情報を参照し、実行対象のプログラムが第2制御プログラム記憶領域23に記憶された第2制御プログラムから、第2更新プログラム記憶領域24に格納されている第2更新プログラムに変更されたことを検知する。
【0025】
(ステップS107):第1実行部11は、第1更新プログラムから識別子を読み出し、第2実行部21に通知する。また、第2実行部21は第2更新プログラムから識別子を読み出し第1実行部11に通知する。このようにして第1実行部11および第2実行部21は互いの実行対象プログラムの識別子を取得することができる。
【0026】
(ステップS108):第1実行部11は、通知された第2更新プログラムの識別子に基づいて、第2実行部21の実行対象のプログラムが正しく第2更新プログラムに変更されたか確認する。例えば、第1実行部11は、通知された第2更新プログラムの識別子と読み出した第1更新プログラムの識別子とを比較し、これらが同一のバージョンを表していることにより、第2実行部21の実行対象のプログラムが正しく第2更新プログラムに変更されたことを確認する。また、第1実行部11は、第2制御プログラムの識別子を第1記憶部12に記憶させておき、通知された第2更新プログラムの識別子が、第2制御プログラムの識別子の次のバージョンを表していることにより、第2実行部21の実行対象のプログラムが正しく第2更新プログラムに変更されたことを確認してもよい。バージョンの順序は予め定めた規則にしたがっていることにより確認してもよく、第2更新プログラムに前のバージョンを表す識別子も含ませておき、第2制御プログラムの識別子と一致することを確認してもよい。
【0027】
(ステップS109):第2実行部21は、通知された第1更新プログラムの識別子に基づいて、第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたか確認する。例えば、第2実行部21は、通知された第1更新プログラムの識別子と読み出した第2更新プログラムの識別子とを比較し、これらが同一のバージョンを表していることにより、第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたことを確認する。また、第2実行部21は、第1制御プログラムの識別子を第2記憶部22に記憶させておき、通知された第1更新プログラムの識別子が、第1制御プログラムの識別子の次のバージョンを表していることにより、第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたことを確認してもよい。バージョンの順序は予め定めた規則にしたがっていることにより確認してもよく、第1更新プログラムに前のバージョンを表す識別子も含ませておき、第1制御プログラムの識別子と一致することを確認してもよい。
【0028】
(ステップS110):第1実行部11は、ステップS108の確認結果を第2実行部21に通知する。また、第2実行部21はステップS109の確認結果を第1実行部11に通知する。
【0029】
(ステップS111):ステップS108、S109により第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたこと、および、第2実行部21の実行対象のプログラムが正しく第2更新プログラムに変更されたことが確認できた場合、第1実行部11は第1更新プログラム記憶領域14から第1更新プログラムを読み出して実行する。
【0030】
(ステップS112):ステップS108、S109により第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたこと、および、第2実行部21の実行対象のプログラムが正しく第2更新プログラムに変更されたことが確認できた場合、第2実行部21は第2更新プログラム記憶領域24から第2更新プログラムを読み出して実行する。なお、更新部91は、第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたこと、および、第2実行部21の実行対象のプログラムが正しく第2更新プログラムに変更されたことが確認できた場合、ステップS111およびステップS112で、その通知を第1実行部11、第2実行部21から受け取り、第1制御プログラム記憶領域13および第2制御プログラム記憶領域23を、それぞれ次に更新データを受信したときの第1更新プログラムおよび第2更新プログラム記憶用の領域としてもよい。
【0031】
(ステップS113):ステップS108、S109により第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたこと、および、第2実行部21の実行対象のプログラムが正しく第2更新プログラムに変更されたことのいずれかまたは両方が確認できない場合、第1実行部11は、第1制御プログラム記憶領域13から、第1制御プログラムを読み出して実行する。また、第1実行部11は、第1記憶部12に記憶された第1読み出し先情報の読み出し先アドレスが第1制御プログラム記憶領域13を指定するようにし、フラグを下げる。
【0032】
(ステップS114):ステップS108、S109により第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたこと、および、第2実行部21の実行対象のプログラムが正しく第2更新プログラムに変更されたことのいずれかまたは両方が確認できない場合、第2実行部21は、第2制御プログラム記憶領域23から、第2制御プログラムを読み出して実行する。また、第2実行部21は、第2記憶部22に記憶された第2読み出し先情報の読み出し先アドレスが第2制御プログラム記憶領域14を指定するようにし、フラグを下げる。なお、ステップS113、S114で第1制御プログラムおよび第2制御プログラムを実行する前に、これらのプログラムの識別子を参照して、実行対象が正しく第1制御プログラムおよび第2制御プログラムであることを確認することが好ましい。また、このように第1制御プログラムおよび第2制御プログラムを実行できるようにするため、更新部91は、少なくとも第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたこと、および、第2実行部21の実行対象のプログラムが正しく第2更新プログラムに変更されたことが確認できるまで、第1制御プログラムおよび第2制御プログラムを削除せず保存しておくことが好ましい。また、更新部91は、第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたこと、および、第2実行部21の実行対象のプログラムが正しく第2更新プログラムに変更されたことのうち、いずれかまたは両方が確認できない場合、ステップS113、S114で、その通知を第1実行部11、第2実行部21から受け取り、異常発生をユーザー等に知らせるための信号を出力してもよい。
【0033】
以上により、第1制御プログラムと第2制御プログラムがともに更新される場合のシーケンスは終了する。
【0034】
<処理2>
次に第1制御プログラムおよび第2制御プログラムの一方のみが更新される場合の処理を説明する。以下では一例として、第1制御プログラムが更新され、第2制御プログラムが更新されない場合について説明する。図5は、処理を説明するシーケンスである。本シーケンスは例えばイグニッションスイッチがオンになったときに開始される。
【0035】
(ステップS201):上述のステップS101と同様、第1実行部11が第1制御プログラムを読み出して実行する。第1実行部11は、実行対象のプログラムとして第1制御プログラム記憶領域13から第1制御プログラムを読み出すことを、例えば、第1記憶部12に記憶された第1読み出し先情報に基づいて判定することができる。
【0036】
(ステップS202):上述のステップS102と同様、第2実行部21が第2制御プログラムを読み出して実行する。第2実行部21は、実行対象のプログラムとして第2制御プログラム記憶領域23から第2制御プログラムを読み出すことを、例えば、第2記憶部22に記憶された第2読み出し先情報に基づいて判定することができる。
【0037】
(ステップS203):更新部91が更新データに基づいて第1更新プログラムを生成する。更新部91は、第1記憶部12の第1更新プログラム記憶領域14に第1更新プログラムを記憶させる。
【0038】
以上のステップS201、S202、S203の処理が実行され、イグニッションスイッチがオフとなると、以下の処理が行われる。
(ステップS204):更新部91は、第1記憶部12に記憶されている第1読み出し先情報の読み出し先アドレスが第1更新プログラム記憶領域14を指定するように変更し、かつ変更があったことを示すフラグを立てることにより、第1実行部11が次回実行対象のプログラムを読み出す際に、第1更新プログラム記憶領域14から第1更新プログラムを読み出すようにする。
【0039】
以上のステップS204の処理が実行され、次にイグニッションスイッチがオンとなると、以下の処理が行われる。図6に、第1更新プログラムが第1記憶部12に記憶されていて、第2更新プログラムが第2記憶部22に記憶されていない場合の、車両制御装置100の各実行部および各記憶部を模式的に示す。第1更新プログラムは識別子を含んでおり、図示する例では「123」である。これは、第1更新プログラムのバージョンを示す。
【0040】
(ステップS205):第1実行部11は、例えば、第1記憶部12に記憶されている第1読み出し先情報を参照し、実行対象のプログラムが第1制御プログラム記憶領域13に記憶された第1制御プログラムから、第1更新プログラム記憶領域14に格納されている第1更新プログラムに変更されたことを検知する。また、第1実行部11は、第2実行部21の実行対象のプログラムが変更されていないことを検知する。これは、例えば、第1実行部11が第2記憶部22に記憶されている第2読み出し先情報を参照することによって可能である。第1実行部11が第2記憶部22を参照できない場合は、更新部91が、第1記憶部12にも第2読み出し先情報を記憶させておけばよい。
【0041】
(ステップS206):第2実行部21は、例えば、第2記憶部22に記憶されている第2読み出し先情報を参照し、読み出し先のアドレスやフラグに基づいて、実行対象のプログラムが第2制御プログラム記憶領域23に記憶された第2制御プログラムであることを検知する。また、第2実行部21は、第1実行部11の実行対象のプログラムが変更されたことを検知する。これは、第2実行部21が第1記憶部12に記憶されている第1読み出し先情報を参照することによって可能である。第2実行部21が第1記憶部12を参
照できない場合は、更新部91が、第2記憶部22にも第1読み出し先情報を記憶させておけばよい。
【0042】
(ステップS207):第1実行部11は、第1更新プログラムから識別子を読み出し、第2実行部21に通知する。また、第2実行部21は第2制御プログラムから識別子を読み出し第1実行部11に通知する。このようにして第1実行部11および第2実行部21は互いの実行対象プログラムの識別子を取得することができる。
【0043】
(ステップS208):第1実行部11は、通知された第2制御プログラムの識別子に基づいて、第2実行部21の実行対象のプログラムが第2制御プログラムのまま変更されていないことを確認する。
【0044】
(ステップS209):第2実行部21は、通知された第1更新プログラムの識別子に基づいて、第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたか確認する。例えば、第2実行部21は、第1制御プログラムの識別子を第2記憶部22に記憶させておき、通知された第1更新プログラムの識別子が、第1制御プログラムの識別子の次のバージョンを表していることにより、第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたことを確認する。バージョンの順序は予め定めた規則にしたがっていることにより確認してもよく、第1更新プログラムに前のバージョンを表す識別子も含ませておき、第1制御プログラムの識別子と一致することを確認してもよい。また、第2実行部は、第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたことを確認できた場合は、通知された第1更新プログラムの識別子を第2記憶部22に記憶させれば、次回の処理における第1制御プログラムの識別子として利用することができる。
【0045】
(ステップS210):第1実行部11は、ステップS208の確認結果を第2実行部21に通知する。また、第2実行部21はステップS209の確認結果を第1実行部11に通知する。
【0046】
(ステップS211):ステップS208、S209により第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたこと、および、第2実行部21の実行対象のプログラムが第2制御プログラムから変更されていないことが確認できた場合、第1実行部11は第1更新プログラム記憶領域14から第1更新プログラムを読み出して実行する。
【0047】
(ステップS212):ステップS208、S209により第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたこと、および、第2実行部21の実行対象のプログラムが第2制御プログラムから変更されていないことが確認できた場合、第2実行部21は第2制御プログラム記憶領域23から第2制御プログラムを読み出して実行する。なお、更新部91は、第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたこと、および、第2実行部21の実行対象のプログラムが第1プログラムから変更されていないことが確認できた場合、ステップS211およびステップS212で、その通知を第1実行部11、第2実行部21から受け取り、第1制御プログラム記憶領域13を、次に第1更新データを受信したときの第1更新プログラム記憶用の領域としてもよい。
【0048】
(ステップS213):ステップS208、S209により第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたこと、および、第2実行部21の実行対象のプログラムが第2更新プログラムから変更されていないことのいずれかまたは両方が確認できない場合、第1実行部11は、第1制御プログラム記憶領域13から、第
1制御プログラムを読み出して実行する。また、第1実行部11は、第1記憶部12に記憶された第1読み出し先情報の読み出し先アドレスが第1制御プログラム記憶領域13を指定するようにし、フラグを下げる。
【0049】
(ステップS214):ステップS208、S209により第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたこと、および、第2実行部21の実行対象のプログラムが第2制御プログラムから更新されていないことのいずれかまたは両方が確認できない場合、第2実行部21は、第2制御プログラム記憶領域23から、第2制御プログラムを読み出して実行する。なお、ステップS213、S214で第1制御プログラムおよび第2制御プログラムを実行する前に、これらのプログラムの識別子を参照して、実行対象が正しく第1制御プログラムおよび第2制御プログラムであることを確認することが好ましい。また、このように第1制御プログラムを実行できるようにするため、更新部91は、少なくとも第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたこと、および、第2実行部21の実行対象のプログラムが正しく第2更新プログラムから変更されていないことが確認できるまで、第1制御プログラムを削除しないことが好ましい。また、更新部91は、第1実行部11の実行対象のプログラムが正しく第1更新プログラムに変更されたこと、および、第2実行部21の実行対象のプログラムが第2制御プログラムから変更されていないことのうち、いずれかまたは両方が確認できない場合、ステップS213、S214で、その通知を第1実行部11、第2実行部21から受け取り、異常発生をユーザー等に知らせるための信号を出力してもよい。
【0050】
以上により、第1制御プログラムが更新され第2制御プログラムが更新されない場合のシーケンスは終了する。また、第2制御プログラムが更新され第1制御プログラムが更新されない場合の処理は、上述の説明において「第1」と「第2」とを互いに読み替えればよい。
【0051】
(変形例)
以上の実施形態では、実行部が2つの場合について説明したが、本発明は、実行部が3つ以上の場合にも適用できる。図7に、車両制御装置100が、実行部と記憶部とを4組備える場合の各実行部および記憶部を模式的に示す。第1~第4記憶部12、22、32、42は第1~第4実行部11、21、31、41が実行する各制御プログラムを記憶する第1~第4制御プログラム記憶用域13、23、33、34および各更新プログラムを記憶する第1~第4更新プログラム記憶領域14、24、34、44を有する。この場合、プログラムに更新があった場合、上述の実施形態と同様の方法で、第1実行部11が他の実行部、すなわち第2、第3、第4実行部12、13、14の実行対象の識別子の確認を行い、第2実行部21が、第1実行部11の実行対象のプログラムの識別子の確認を行い、それぞれの確認結果を共有することで、すべての実行部について、実行対象のプログラムの確認を行うことができる。なお、各実行部が他のいずれかの実行部から実行対象のプログラムの確認を受けることができれば、実行部とその確認対象となる他の実行部の組み合わせは限定されない。
【0052】
以上の実施形態、変形例において、各プロセッサが、他のプロセッサが実行するプログラムが更新されたとき、当該他のプロセッサから実行対象のプログラムの識別子を取得し、実行対象のプログラムが実際に更新されたことを確認できれば、各ステップの処理の内容および順序は、適宜変更、省略等してもよい。
【0053】
<効果>
以上の実施形態、変形例に係る更新処理においては、各実行部は、プログラムを実行する前に、互いの実行対象のプログラムのバージョンを確認する。そのため、それまでの段
階の、例えば更新部による、記憶部へ更新プログラムを書き込む処理や実行対象のプログラムを更新前のものから更新後のものに切り替える処理の実行タイミングにずれが生じて、各プログラムの更新前のバージョンと更新後のバージョンとが想定外の組合せで混在する状態が発生している場合はこれを検知することができる。この場合、すべてのプログラムを更新前のバージョンに戻して実行したり、ユーザーに通知して対応を促したりすることで、意図しない動作が実行されるのを抑制することができる。
【0054】
なお、本発明は、車両制御装置として捉えるだけでなく、車両制御装置のプロセッサが実行するプログラムの確認方法、およびプログラム確認用プログラムとして捉えることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、自動運転装置等の車載機器を備えた車両等に有用である。
【符号の説明】
【0056】
11 第1実行部
12 第1記憶部
13 第1制御プログラム記憶領域
14 第1更新プログラム記憶領域
21 第2実行部
22 第2記憶部
23 第2制御プログラム記憶領域
24 第2更新プログラム記憶領域
31 第3実行部
32 第3記憶部
33 第3制御プログラム記憶領域
34 第3更新プログラム記憶領域
41 第4実行部
42 第4記憶部
43 第4制御プログラム記憶領域
44 第4更新プログラム記憶領域
91 更新部
100 車両制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7