(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】バッテリ管理装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240723BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240723BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/00 P
H02J7/00 302C
H02J7/02 J
(21)【出願番号】P 2023012168
(22)【出願日】2023-01-30
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 拓也
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-079066(JP,A)
【文献】特開2008-061362(JP,A)
【文献】特開2009-216403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、並列に接続された複数のバッテリパックの管理を行うバッテリ管理装置であって、
前記複数のバッテリパックのそれぞれから、充電量および電圧を示すバッテリパック情報を取得する取得部と、
前記バッテリパック情報に基づいて、前記複数のバッテリパックから充電対象バッテリパックまたは放電対象バッテリパックを選択する選択部と、
充電モードのときには前記充電対象バッテリパックに充電させ、放電モードのときには前記放電対象バッテリパックから放電させ
、前記充電モードから前記放電モードへ切り替わったとき、前記充電対象バッテリパックがそのまま前記放電対象バッテリパックとして用いられるように制御する制御部と、を有し、
前記充電モードの場合、
前記選択部は、
前記複数のバッテリパックのうち、最も少ない充電量のバッテリパックの電圧を基準として所定値以内の電圧のバッテリパックを第1充電対象バッテリパックに決定し、前記所定値より大きい電圧のバッテリパックを第2充電対象バッテリパックに決定し、
前記制御部は、
まず前記第1充電対象バッテリパックの充電を開始させ、その後、前記第1充電対象バッテリパックそれぞれの充電量が前記第2充電対象バッテリパックの充電量に到達したら、前記第1充電対象バッテリパックの充電とともに前記第2充電対象バッテリパックの充電を実行させる、
バッテリ管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリ管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車において、複数のバッテリパックが並列に接続され、各バッテリパックに搭載されたBMS(Battery Management System)が上位コントローラとCAN(Controller Area Network)通信を行うシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記システムにおいて、バッテリパックの充電を行う充電モードと、バッテリパックから放電を行う放電モードとに応じて、使用されるバッテリパックの組み合わせが選択されることが知られている。
【0004】
また、上記システムにおいて、利用可能なバッテリパックの総充電量(総残量と言ってもよい)は、画像表示等によりユーザ(例えば、自動車の乗員)に通知されることが知られている。以下の説明で、利用可能なバッテリパックの総充電量を単に「総充電量」という場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記システムでは、充電モードから放電モードへ切り替わった際に、ユーザに通知される総充電量が不自然に変化し、ユーザに違和感を与える懸念が生じてしまう、という問題がある。
【0007】
本開示の一態様の目的は、ユーザに違和感を与える懸念を解消することができるバッテリ管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るバッテリ管理装置は、車両に搭載され、並列に接続された複数のバッテリパックの管理を行うバッテリ管理装置であって、前記複数のバッテリパックのそれぞれから、充電量および電圧を示すバッテリパック情報を取得する取得部と、前記バッテリパック情報に基づいて、前記複数のバッテリパックから充電対象バッテリパックまたは放電対象バッテリパックを選択する選択部と、充電モードのときには前記充電対象バッテリパックに充電させ、放電モードのときには前記放電対象バッテリパックから放電させ、前記充電モードから前記放電モードへ切り替わったとき、前記充電対象バッテリパックがそのまま前記放電対象バッテリパックとして用いられるように制御する制御部と、を有し、前記充電モードの場合、前記選択部は、前記複数のバッテリパックのうち、最も少ない充電量のバッテリパックの電圧を基準として所定値以内の電圧のバッテリパックを第1充電対象バッテリパックに決定し、前記所定値より大きい電圧のバッテリパックを第2充電対象バッテリパックに決定し、前記制御部は、まず前記第1充電対象バッテリパックの充電を開始させ、その後、前記第1充電対象バッテリパックそれぞれの充電量が前記第2充電対象バッテリパックの充電量に到達したら、前記第1充電対象バッテリパックの充電とともに前記第2充電対象バッテリパックの充電を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ユーザに違和感を与える懸念を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態に係るバッテリパックシステムの構成を示す模式図
【
図2】本開示の実施の形態に係るMBMSの構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
<基本構成>
まず、バッテリパックシステム1の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、バッテリパックシステム1の構成例を示す模式図である。
【0013】
図1に示すバッテリパックシステム1は、車両(例えば、電気自動車)に搭載される。
【0014】
バッテリパックシステム1は、1つのMBMS(Master Battery Management System)10、複数のバッテリパック20、1つのVCU(Vehicle Control Unit)30を有する。
【0015】
複数のバッテリパック20は、並列に接続されている。各バッテリパック20には、PBMS(Pack Battery Management System)21が含まれる。なお、図示は省略するが、各バッテリパック20には、充放電可能な二次電池、高電圧リレー(例えば、正極側リレー、負極側リレー)、抵抗器、電圧計、電流計等も含まれる。
【0016】
VCU30は、自動車の全般的な制御を行うコンピュータである。VCU30は、MBMS10の上位のコンピュータ(コントローラ)に相当する。
【0017】
MBMS10は、主に、各バッテリパック20の管理を行うコンピュータである。なお、MBMS10は、「バッテリ管理装置」の一例に相当する。
【0018】
PBMS21は、主に、バッテリパック20の状態を監視したり、高電圧リレーの駆動を制御したりするコンピュータである。バッテリパック20の状態としては、例えば、バッテリパック20内の電流、電圧、温度や、劣化度、充電量(SOC:State Of Charge)等が挙げられる。
【0019】
MBMS10と、VCU30、PBMS21のそれぞれとは、CAN(Controller Area Network)による通信を行う。
【0020】
以上、バッテリパックシステム1の構成について説明した。
【0021】
次に、MBMS10の構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、MBMS10の構成例を示すブロック図である。
【0022】
図示は省略するが、MBMS10は、ハードウェアとして、例えば、CPU(Central Processing Unit)、コンピュータプログラムを格納したROM(Read Only Memory)、作業用メモリであるRAM(Random Access Memory)等を有する。以下に説明する機能は、CPUがROMから読み出したコンピュータプログラムをRAMにて実行することにより実現される。
【0023】
図2に示すように、MBMS10は、取得部110、選択部120、および制御部130を有する。なお、VCU30が、制御部130の制御の一部もしくは全部を実行するものであってもよい。
【0024】
取得部110は、複数のバッテリパック20(具体的には、PBMS21)のそれぞれから、バッテリパック情報を取得する。
【0025】
バッテリパック情報は、上述したバッテリパック20の状態を示す情報である。本動作例1~3では、バッテリパック情報は、少なくとも充電量および電圧を示す情報であるとする。また、バッテリパック情報には、バッテリパック20を識別可能な情報(例えば、ID)が含まれる。このバッテリパック情報は、後述する選択部120により用いられる。
【0026】
また、取得部110は、VCU30から、モード情報を取得する。モード情報には、充電モードおよび放電モードが含まれる。
【0027】
後述する選択部120および制御部130は、取得部110がモード情報を取得することで、モード情報を認識することが可能となる。
【0028】
充電モードは、図示しない外部電源から所定のバッテリパック20(後述する充電対象バッテリパック)へ電力を供給することで、バッテリパック20の充電を行うモードである。充電モードは、外部電源と所定のバッテリパック20とが電気的に接続された場合に実行される。
【0029】
放電モードは、所定のバッテリパック20(後述する放電対象バッテリパック)から図示しない負荷(例えば、走行用モータ等)へ電力を供給することで、バッテリパック20の放電を行うモードである。放電モードは、例えばユーザによりキーオンされた場合に実行される。
【0030】
選択部120は、バッテリパック情報に基づいて、複数のバッテリパック20の中から充電対象バッテリパックまたは放電対象バッテリパックを選択する。
【0031】
充電対象バッテリパックとは、充電モードのときに、充電が行われるバッテリパック20である。放電対象バッテリパックとは、放電モードのときに、放電が行われるバッテリパック20である。
【0032】
充電対象バッテリパックの選択方法について具体的に説明する。
【0033】
まず、選択部120は、バッテリパック情報に基づいて、複数のバッテリパック20のうち、最も少ない充電量のバッテリパック20(以下、最少充電量バッテリパックという)を特定する。次に、選択部120は、バッテリパック情報に基づいて、最少充電量バッテリパック20の電圧を基準として所定値以内の電圧であるバッテリパック20(以下、所定値以内バッテリパックという)を特定する。そして、選択部120は、最少充電量バッテリパックと所定値以内バッテリパックとを、第1充電対象バッテリパックに決定する。また、選択部120は、第1充電対象バッテリパックとして選択しなかったバッテリパック20(例えば、所定値より大きい電圧のバッテリパック20)を、第2充電対象バッテリパックに決定する。
【0034】
より具体的に説明する。例えば、複数のバッテリパック20がバッテリパックA~Eの5つであり、所定値が10Vであるとする。ここで、例えば、バッテリパックAの充電量が最も少なく、バッテリパックBの充電量が最も多く、バッテリパックC~Eの電圧がバッテリパックAの電圧から10V以内の電圧である場合、バッテリパックA、C~Eが第1充電対象バッテリパックに決定され、バッテリパックBが第2充電対象バッテリパックに決定される。なお、これらの充電方法の例については後述する。
【0035】
放電対象バッテリパックの選択方法について具体的に説明する。
【0036】
まず、選択部120は、電圧差が所定値以内のバッテリパック20の組み合わせを特定する。次に、選択部120は、特定した組み合わせのうち、利用可能なバッテリパック20の総充電量が最も大きい組み合わせを選択する。そして、選択部120は、選択した組み合わせに含まれるバッテリパック20を、放電対象バッテリパックに決定する。
【0037】
より具体的に説明する。例えば、複数のバッテリパック20がバッテリパックA~Eの5つであり、所定値が10Vであるとする。ここで、例えば、電圧差が10V以内の組み合わせとして、バッテリパックC~Eから成り、利用可能なバッテリパック20の総充電量TA1(kWh)である第1の組み合わせと、バッテリパックA~Dから成り、総充電量がTA2(kWh)である第2の組み合わせとが特定された場合(TA2>TA1)、総充電量が大きい方の第2の組み合わせが選択され、それに含まれるバッテリパックA~Dが放電対象バッテリパックに決定される。
【0038】
なお、放電対象バッテリパックとして選択されなかったバッテリパック20を「放電非対象バッテリパック」という。
【0039】
また、選択部120は、上述した放電対象バッテリパックの選択の際に、バッテリパック情報に基づいてバッテリパック20の利用可能なバッテリパック20の総充電量(および、それに基づく走行可能距離等)を算出するが、算出された値は、例えば、車室内の表示部に表示される。
【0040】
制御部130は、充電モードのときには、複数のバッテリパック20のうち充電量が最も少ないバッテリパック20(上述するバッテリパックA)を含み、当該バッテリパック20から電位差が所定値以内であるバッテリパック20を充電対象バッテリパックに割り当てる。、制御部130は、放電モードのときには、複数のバッテリパック20のうち電位差が所定値以内のバッテリパック20の組み合わせのうち、利用可能な総充電量が最も大きな組み合わせに含まれるバッテリパック20を放電対象バッテリパックに割り当てる。具体的には、制御部130は、各PBMS21に対して、割り当て情報を送信する。各PBMS21は、制御部130から受け取った割り当て情報に基づいて、割り当てられたバッテリパック20の充電または放電(例えば、リレーのオン/オフ)を実行する。
【0041】
充電対象バッテリパックの充電方法について具体的に説明する。なお、以下の説明では、制御部130がバッテリパック20を充電する制御を実行する場合を示すが、制御部130が実行する制御の一部もしくは全部は、VCU30が実行してもよい。
【0042】
まず、制御部130は、第1充電対象バッテリパックの充電を開始させる。その後、第1充電対象バッテリパックの充電量が第2充電対象バッテリパックの充電量に到達したら、制御部130は、第1充電対象バッテリパックの充電とともに第2充電対象バッテリパックの充電も開始させる。そして、制御部130は、第1充電対象バッテリパックおよび第2充電対象バッテリパックの全部の充電量が満充電状態になるまで充電を実行させる。
【0043】
より具体的に説明する。上述したように、例えば、バッテリパックA、C~Eが第1充電対象バッテリパックに決定され、バッテリパックBが第2充電対象バッテリパックに決定されたとする。この場合、まず、バッテリパックA、C~Eの充電が開始される。そして、バッテリパックA、C~Eそれぞれの充電量がバッテリパックBの充電量に到達したら、バッテリパックA~Eの充電が開始される。この充電は、バッテリパックA~Eそれぞれの充電量が満充電状態になるまで実行される。
【0044】
以上、MBMS10の構成について説明した。
【0045】
上述したMBMS10の動作は、基本的な動作である。以下では、MBMS10の特徴的な動作について、説明する。
【0046】
<動作例1>
上述したとおり、複数の複数のバッテリパック20のうち充電量が最も少ないバッテリパック20(上述するバッテリパックA)を含み、当該バッテリパック20から電位差が所定値以内であるバッテリパック20が充電対象バッテリパックとして決定される。これに対して、複数のバッテリパック20のうち電位差が所定値以内のバッテリパック20の組み合わせのうち、利用可能なバッテリパック20の総充電量が最も大きな組み合わせに含まれるバッテリパック20が放電対象バッテリパックとして決定される。したがって、例えば、充電モードから放電モードへ切り替わった際、使用されるバッテリパックの組み合わせの変更によって利用可能なバッテリパック20の総充電量が変わることがあり、その結果、ユーザに通知される総充電量が不自然に変化し、ユーザに違和感を与える懸念が生じてしまう、という問題がある。
【0047】
そこで、例えば、制御部130は、充電モードから放電モードへ切り替わったとき、充電モードのときに選択された充電対象バッテリパックの組み合わせがそのまま放電対象バッテリパックの組み合わせとして用いられるように制御してもよい。
【0048】
よって、動作例1では、充電モードから放電モードへ切り替わったときに、使用されるバッテリパックの組み合わせの変更によって総充電量が変わることを抑制できるので、ユーザに通知される総充電量(および、それに基づく走行可能距離等)の不自然な変化を抑制でき、ユーザに違和感を与える懸念を解消することができる。
【0049】
<動作例2>
例えば、キーオン時のみに充電対象バッテリパックを選択する仕様を採用している場合では、放電モードから充電モードへ切り替わった際、選択可能な充電対象バッテリパックがあったとしても、そのバッテリパックを追加することができず、効率良く充電できない、という問題がある。
【0050】
そこで、放電モードから充電モードへ切り替わった際に、放電対象バッテリパックと放電非対象バッテリパックとの電圧差が所定値より大きく、かつ、放電対象バッテリパックの電圧が放電非対象バッテリパックの電圧よりも大きかった場合には、選択部120は、放電対象バッテリパックのみを充電対象バッテリパックとして選択し、制御部130は、選択された充電対象バッテリパックを満充電状態になるまで充電させるようにしてもよい。
【0051】
より具体的に説明する。ここでは、複数のバッテリパック20がバッテリパックA~Eの5つであり、バッテリパックA~Dが放電対象バッテリパックであり、バッテリパックEが放電非対象バッテリパックである場合を例に挙げる。ここで、放電モードから充電モードへ切り替わった時に、バッテリパックA~Dの電圧とバッテリパックEとの電圧差が所定値より大きく、バッテリパックA~Dの電圧がバッテリパックEの電圧よりも大きい場合、バッテリパックEを除いたバッテリパックA~Dが充電対象バッテリパックとして選択される。そして、バッテリパックA~Dのそれぞれは満充電状態になるまで充電される。
【0052】
一方、放電モードから充電モードへ切り替わった際に、放電対象バッテリパックと放電非対象バッテリパックとの電圧差が所定値以内であり、かつ、放電対象バッテリパックの電圧が放電非対象バッテリパックの電圧よりも小さかった場合には、選択部120は、放電対象バッテリパックおよび放電非対象バッテリパックの両方を充電対象バッテリパックに選択し、制御部130は、選択された充電対象バッテリパックを満充電状態になるまで充電させるようにしてもよい。
【0053】
より具体的に説明する。ここでは、複数のバッテリパック20がバッテリパックA~Eの5つであり、バッテリパックA~Dが放電対象バッテリパックであり、バッテリパックEが放電非対象バッテリパックである場合を例に挙げる。ここで、放電モードから充電モードへ切り替わった時に、バッテリパックA~Dの電圧とバッテリパックEとの電圧差が所定値以内であり、バッテリパックA~Dの電圧がバッテリパックEの電圧よりも小さい場合、バッテリパックA~Eが充電対象バッテリパックとして選択される。例えば、バッテリパックA~Dが第1充電対象バッテリパックに決定され、バッテリパックEが第2充電対象バッテリパックに決定される。そして、上述した「充電対象バッテリパックの充電方法」が行われることで、最終的に、バッテリパックA~Eのそれぞれは満充電状態になるまで充電される。
【0054】
よって、動作例2では、放電モードから充電モードへ切り替わった際に、効率良く充電を行うことができる。
【0055】
<動作例3>
例えば、複数のバッテリパックの全部が放電対象バッテリパックとして選択されていない状態(換言すれば、複数のバッテリパック20のうちの一部が放電非対象バッテリパックである状態)において、放電(例えば、自動車の走行)が開始され、放電の途中で放電非対象バッテリパックを放電対象バッテリパックへ追加すると、ユーザに通知されている総充電量や走行可能距離等の値が不自然に変化し、ユーザに違和感を与える懸念が生じてしまう。
【0056】
そこで、まず、制御部130は、放電モードで動作を開始するときに設定した放電非対象バッテリパックを、放電モードで動作中に放電対象バッテリパックに変更しない。すなわち、制御部130は、放電モードで動作を開始するときに設定した放電対象バッテリパックから放電を行った結果、放電非対象バッテリパックと放電対象バッテリパックとの電圧差が所定値以内になったとしても、当該放電非対象バッテリパックを放電対象バッテリパックに追加しない。これにより、放電の途中で放電非対象バッテリパックが放電対象バッテリパックへ追加されることにより、ユーザに通知されている総充電量や走行可能距離等の値に不自然に変化が発生することを抑制することが可能となる。
【0057】
なお、放電モードでの動作中であって、車両がキーオフ動作により動作を停止した後で、キーオン動作がされて車両の動作が再開される場合は、放電モードで動作中であっても、当該放電非対象バッテリパックを放電対象バッテリパックに追加することを許容してもよい。これは、放電モードでの動作中であっても、一旦車両動作の停止を挟む場合には、車両の停止の前後で放電対象バッテリパックが変化してユーザに通知される総充電量や走行可能距離等の値に変化があったとしても、ユーザが違和感を覚えづらいためである。また、総充電量や走行可能距離を増加させることができるメリットがある。
【0058】
一方で、制御部130は、充電モードで動作を開始するときに設定した放電非充電バッテリパックを、充電モードで動作中に充電対象バッテリパックに変更することを許容する。具体的には、充電モードで充電対象バッテリパックへの充電を実行した結果、充電非対象バッテリパックと充電対象バッテリパックとの電圧差が所定値以内になった場合に、当該充電非対象バッテリパックを放電対象バッテリパックに追加する。
【0059】
制御部130は、充電モードから放電モードへ切り替わった際に複数のバッテリパック20の全部が放電対象バッテリパックとして選択されなかった場合には、放電モード中において、バッテリパック情報に基づいて、放電非対象バッテリパックを放電対象バッテリパックに追加したと仮定した場合の総充電量を推定してもよい。次に、制御部130は、推定した総充電量が現在の総充電量よりも大きい場合に、放電非対象バッテリパックの放電対象バッテリパックへの追加を禁止してもよい。
【0060】
よって、動作例3では、ユーザに通知される総充電量(および、それに基づく走行可能距離等)の不自然な変化を抑制でき、ユーザに違和感を与える懸念を解消することができる。
【0061】
なお、本開示は、上記実施の形態の説明に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。例えば、MBMS10において、動作例1~3で説明した動作を全て実現可能に構成した上で、いずれかの動作が選択的に採用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示のバッテリ管理装置は、複数のバッテリパックを使用する場合に有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 バッテリパックシステム
10 MBMS
20 バッテリパック
21 PBMS
30 VCU
110 取得部
120 選択部
130 制御部
【要約】
【課題】ユーザに違和感を与える懸念を解消することができるバッテリ管理装置を提供すること。
【解決手段】車両に搭載され、並列に接続された複数のバッテリパックの管理を行うバッテリ管理装置であって、複数のバッテリパックのそれぞれから、充電量および電圧を示すバッテリパック情報を取得する取得部と、バッテリパック情報に基づいて、複数のバッテリパックから充電対象バッテリパックまたは放電対象バッテリパックを選択する選択部と、充電モードのときには充電対象バッテリパックに充電させ、放電モードのときには放電対象バッテリパックから放電させる制御部と、を有し、制御部は、充電モードから放電モードへ切り替わったとき、充電対象バッテリパックがそのまま放電対象バッテリパックとして用いられるように制御する。
【選択図】
図2