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特許7525011リフレクトアレイ、電磁波反射システムおよびリフレクトアレイの設置方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】リフレクトアレイ、電磁波反射システムおよびリフレクトアレイの設置方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/14 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
H01Q15/14 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023114298
(22)【出願日】2023-07-12
【審査請求日】2023-10-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 尚美
(72)【発明者】
【氏名】西村 大輝
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-509687(JP,A)
【文献】特開2021-048465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を反射させるリフレクトアレイであって、
前記リフレクトアレイは、位相を制御する反射制御領域を有し、
前記反射制御領域は、長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、下記の式(1)を満たし、
前記入射角度|θi|は45°以上70°以下の範囲であり、かつ前記入射角度θiと前記反射角度θrは下記の式(2)の関係を満たし、入射許容角度範囲Δθiが5.5°より大きく16°以下の範囲である、リフレクトアレイ。
【数1】
【数2】
【請求項2】
前記リフレクトアレイは誘電体層の片面に素子があり、誘電体層の素子とは反対側の面にグランド層を有している請求項1に記載のリフレクトアレイ。
【請求項3】
前記素子がクロスパッチである請求項2に記載のリフレクトアレイ。
【請求項4】
前記リフレクトアレイは3GHz~60GHzの電磁波を反射させる請求項1から3のいずれか一つに記載のリフレクトアレイ。
【請求項5】
発信器から一次放射された電磁波が前記リフレクトアレイに入射し、前記リフレクトアレイから二次放射された電磁波を受信器が受信する電磁波反射システムであって、前記リフレクトアレイが請求項1から3のいずれか一つに記載のリフレクトアレイである、電磁波反射システム。
【請求項6】
電磁波を反射させるリフレクトアレイの設置方法であって、
前記リフレクトアレイは、位相を制御する反射制御領域を有し、
前記反射制御領域は、長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、下記の式(1)を満たし、
前記入射角度θiは45°以上70°以下の範囲であり、かつ前記入射角度θiと前記反射角度θrは下記の式(2)の関係を満たすように、前記リフレクトアレイを支持体に固定する、リフレクトアレイの設置方法。
【数3】
【数4】
【請求項7】
請求項6に記載の前記リフレクトアレイは、請求項1または2に記載のリフレクトアレイである、リフレクトアレイの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフレクトアレイ、電磁波反射システムおよびリフレクトアレイの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
社会におけるデジタル化の進展により、無線通信におけるデータ通信速度が飛躍的に向上し、それに伴う電磁波の高周波化が進んでいる。しかし、電磁波は周波数が高くなるにつれて直進性が高くなるため、建物の影等に電磁波が回り込まず、通信ができない領域である不感地帯が生じやすい。
これらの理由から、広範囲における5G・6G通信を実現するためには、基地局数を増やす必要がある。しかし、基地局を増やすためには多額のコストを要するため、基地局の数を早急に増やすのは難しい状況にある。近年これらの課題を解決すべく、電磁波の方向を制御する技術が注目を集めている。
【0003】
このような技術のなかで、電磁波の反射角度を自在に制御するメタマテリアル反射板またはメタサーフェス反射板の開発が盛んに行われている。
メタマテリアル反射板には、電気的制御により入射する電磁波と反射する電磁波の方向を制御するアクティブ反射板と(例えば、特許文献1)、電気的制御機構がなく、設計段階で入射する電磁波と反射する電磁波の方向を決めて、それに基づいて素子の寸法や材料物性の設計を行うパッシブ反射板がある(例えば、特許文献2)。
【0004】
特許文献1では、メタマテリアル構造体とメタマテリアル構造体に接続された可変コンデンサによって構成され、メタマテリアル構造体の固定容量と可変コンデンサによる可変容量によって位相が制御される。可変コンデンサの動作は位相制御信号(バイアス電圧)により制御される。これにより、電磁波源から放射された電磁波を任意の方向に反射/散乱させることが可能である。
【0005】
また、特許文献2では、誘電体基板の底面に設けられ、全ての向きの偏波に対しメタサーフェス反射板を透過させない金属グラウンド層、および、アーム長の異なる2種以上の十字型の金属共振器を有する複数のスーパーセルを備えたメタサーフェス反射板が紹介されている。このメタサーフェス反射板は金属共振器の構造によって位相を制御することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6438857号
【文献】特開2021-48465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アクティブ反射板は、入射する電磁波と反射する電磁波の角度を電圧などの変更により制御できるため、発信器と受信器の角度によって適宜角度の調整ができ、実用上の自由度が高い。しかし、位相を制御するための位相制御信号が必要であるため、高価になるという課題がある。
また、パッシブ反射板は、電気的制御機構が無いため安価に作製可能である。しかし、入射する電磁波と反射する電磁波の角度が決まっているため、実用上の自由度が小さいという課題がある。
そこで、本発明では、安価に作製できるパッシブ反射板であり、広い範囲の角度から入射した電磁波を所定の角度に反射させることが出来るリフレクトアレイ、電磁波反射システムおよびリフレクトアレイの設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明のリフレクトアレイは、 電磁波を反射させるリフレクトアレイであって、前記リフレクトアレイは、位相を制御する反射制御領域を有し、前記反射制御領域は、長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、式(1)(後述)を満たし、前記入射角度|θi|は45°以上70°以下の範囲であり、かつ前記入射角度θiと前記反射角度θrは式(2)(後述)の関係を満たし、入射許容角度範囲Δθiが5.5°より大きく16°以下の範囲である、リフレクトアレイであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、広い角度範囲から入射した電磁波を所定の角度に反射させることが出来るリフレクトアレイを提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の発明を実施するための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1a図1aは、リフレクトアレイ全体の構成を示す図である。
図1b図1bは、反射制御領域部分を拡大して示した図である。
図2図2は、xy平面上にリフレクトアレイが配置した場合の入射角度と反射角度を表す図である。
図3図3は、リフレクトアレイ6の層構成の一例を示す図である。
図4図4は、非対称反射を発生させる方向に応じた、単位セルの配置の一例を示す図である。
図5図5は、非対称反射を発生させる方向に応じた、単位セルの配置の一例を示す図である。
図6図6は、素子パターンの構成を示す図である。
図7図7は、エッチング後の素子パターンの形状の一例を示す図である。
図8図8は、リフレクトアレイを用いた電磁波反射システムの一例を示す図である。
図9図9は、支持体に設置したリフレクトアレイの一例を示す図である。
図10図10は、実施例1において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、θix=-45゜、θrx=0゜のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
図11図11は、比較例1において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、θix=0゜、θrx=-45゜のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
図12図12は、実施例1と比較例1それぞれの入射角度を変化させた時における特定の反射角度θrxで受信できる電力変化量の比較結果を示す図である。
図13図13は、実施例2において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、θix=-50゜、θrx=0゜のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
図14図14は、比較例2において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、θix=0゜、θix=-50゜のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である
図15図15は、実施例2と比較例2それぞれの入射角度を変化させた時における特定の反射角度θrxで受信できる電力変化量の比較結果を示す図である。
図16図16は、実施例3において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、θix=-60゜、θrx=0゜のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
図17図17は、比較例3において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、θix=0゜、θrx=-60゜のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
図18図18は、実施例3と比較例3それぞれの入射角度を変化させた時における特定の反射角度θrxで受信できる電力変化量の比較結果を示す図である。
図19図19は、実施例4において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、θix=-70゜、θrx=0゜のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
図20図20は、比較例4において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、θix=0゜、θrx=-70゜のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
図21図21は、実施例4と比較例4それぞれの入射角度を変化させた時における特定の反射角度θrxで受信できる電力変化量の比較結果を示す図である。
図22図22は、実施例1-4の入射角度と入射許容角度範囲の関係及び比較例1-4と入射許容角度範囲の関係を示す図である。
図23図23は、実施例5において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、θix=-70゜、θrx=0゜のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
図24図24は、比較例5において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、θix=0゜、θrx=-70゜のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
図25図25は、実施例5と比較例5それぞれの入射角度を変化させた時における特定の反射角度θrxで受信できる電力変化量の比較結果を示す図である。
図26図26は、実施例6において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、θix=-45゜、θrx=0゜のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
図27図27は、比較例6において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、θix=0゜、θrx=-45゜のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
図28図28は、実施例6と比較例6それぞれの入射角度を変化させた時における特定の反射角度θrxで受信できる電力変化量の比較結果を示す図である。
図29図29は、実施例7において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、θix=-70゜、θrx=0゜のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
図30図30は、比較例7において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、θix=0゜、θrx=-70゜のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
図31図31は、実施例7と比較例7それぞれの入射角度を変化させた時における特定の反射角度θrxで受信できる電力変化量の比較結果を示す図である。
図32図32は、実施例8において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、θix=70゜、θrx=-30゜のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
図33図33は、比較例8において得られたリフレクトアレイの解析結果であり、θix=-30゜、θrx=70゜のリフレクトアレイの反射パターンを示す図である。
図34図34は、実施例8と比較例8それぞれの入射角度を変化させた時における特定の反射角度θrxで受信できる電力変化量の比較結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本開示は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0012】
(用語の説明)
図1は、リフレクトアレイの構成を示す図である。図1aはリフレクトアレイ全体の構成を示す図であり、図1bは反射制御領域部分を拡大して示した図である。図を参照して本開示のリフレクトアレイの構成に関する用語を説明する。
本開示において、「リフレクトアレイ(電磁波反射板)」とは、位相を制御する反射制御領域を1つ以上有する電磁波を反射させる部材であり、外部からの動力により位相制御を行わない反射板である。入射角度と反射角度が異なる非対称反射をさせるものや、複数の方向に電磁波を散乱させるものや、特定の箇所に電磁波を集めるものを含む。以下の説明において、xyz座標系を適用し、xy平面上にリフレクトアレイが配置されるとする。
外部からの動力による位相制御とは、外部電源が存在し、電圧等を制御することにより位相を制御できるアクティブ反射板のことである。
【0013】
また、「反射制御領域」とは、リフレクトアレイを構成する領域の一部を指す。反射制御領域は、その領域に入射した電磁波を所定の方向へ反射させることができる最小の領域である。そして、リフレクトアレイは、反射制御領域を1つ以上組み合わせて構成される。反射制御領域という場合、電磁波が入射領域に平行な方向にある2次元の領域に加えて、領域に垂直な方向に形成される層構造をも含むものとする。1つの反射制御領域内において、複数の単位セルが並んでいる反射制御領域の辺のサイズ(長辺)をL、1つの単位セルのみが並んでいる反射制御領域の辺のサイズ(短辺)をMと定義する。
【0014】
また、「単位セル」とは、反射制御領域を区分した領域を指す。単位セルには1つの素子パターン(素子)が含まれる。単位セルは、1つの反射制御領域内に2つ以上存在する。
【0015】
また、素子長については、x軸方向の素子長はlxと表記され、y軸方向の素子長はlyと表記される。また、素子幅については、x軸方向の素子幅はwx、y軸方向の素子幅はwyと表記される。
【0016】
図2は、xy平面上にリフレクトアレイが配置した場合の入射角度と反射角度を表す図である。図2を参照して本開示における角度の定義に関する用語を説明する。
また、x軸方向の角度θxは、+z軸方向から+x軸方向に向かう方向に広がる場合を正の角度(0°から180°)によって表し、+z軸方向から-x軸方向に向かう方向に広がる場合を負の角度(0°から-180°)によって表す。同様に、y軸方向の角度θyは、+z軸方向から+y軸方向に向かう方向に広がる場合を正の角度(0°から180°)によって表し、+z軸方向から-y軸方向に向かう方向に広がる場合を負の角度(0°から-180°)によって表す。
【0017】
本開示において、「入射角度」とは、反射制御領域に入射する電磁波の入射角度θi、「反射角度」とは、反射制御領域から反射する電磁波の反射角度θrである。反射制御領域から反射する電磁波の波長をλとした時に反射制御領域は下記の式(1)を満たすように設計される。
【数1】
特に設計した時の入射角度と反射角度を特定して示す場合には、設計の入射角度及び反射角度及び反射制御領域の関係を示す「式(1)を満たす」入射角度または反射角度と表現をする。
「入射ずれ角度」とは、式(1)を満たす入射角度を基準(=0°)として、そこからの入射角度のずれが生じた時のずれの角度を示す。「入射ずれ角度」における角度表現は式(1)を満たす入射角度を基準(=0°)として、+z軸方向に向かう方向を正の角度(0°から-180°)、-z軸方向に向かう方向を負の角度(0°から-180°)として表す。
また、「入射許容角度範囲」Δθiとは、反射制御領域が式(1)を満たす入射角度から入射した電磁波を式(1)を満たす反射角度に反射させる電磁波の反射強度を基準(=0dB)として、反射制御領域が入射ずれ角度から入射した電磁波を反射角度に反射させる電磁波の反射強度が、-3dB以内である入射ずれ角度の角度幅を表す。本開示における「入射許容角度範囲」は反射制御領域を8個用意して、1辺の長さが8Lとなるように並べたリフレクトアレイの性能と定義する。しかし、本請求の範囲のリフレクトアレイが「反射制御領域を8個用意して、1辺の長さが8Lとなるように並べたリフレクトアレイ」に限定されるものではない。
【0018】
本開示において、「電磁波反射システム」とは、発信器、リフレクトアレイ、受信器の3つで構成されている。「発信器」とは、電磁波を発するものまたは電磁波を発するものからきた電磁波を反射させるものを指す。具体的には、無線基地局、移動局、中継器、移動体、通信端末、反射板などがある。
また、「受信器」とは、電磁波を受信するものであり、具体的には、無線基地局、移動局、中継器、移動体、通信端末、反射板などがある。
本開示において、「一次放射」とは、電磁波反射システムにおける発信器から放射される電磁波である。また、「二次放射」とは、電磁波反射システムにおけるリフレクトアレイから放射される電磁波であって、発信器から一次放射された電磁波がリフレクトアレイに入射したことにより生じた電磁波の放射のことを指す。
【0019】
[第1実施形態]
(リフレクトアレイの構成)
図1図3を参照して、リフレクトアレイの構成および素子パターンの構成を説明する。図3は、リフレクトアレイ6の層構成の一例を示す図である。図3のリフレクトアレイ6は、複数の素子パターンを平面に周期的に配置し、反射波の方向を所望の値にすることができる。リフレクトアレイ6は、素子パターン(素子)1、誘電体層2、グランド層(地板)3を少なくとも含む。以下の説明において、xyz座標系を適用し、xy平面上にリフレクトアレイ6が配置される。
【0020】
図1bのリフレクトアレイ6は、x軸に沿って電磁波の所定の非対称反射を生じさせるものである。リフレクトアレイ6は少なくとも1つ以上の反射制御領域5を持っている。反射制御領域5には、単位セル4、4、4、…4(以下、単位セルを特定せずに言う場合には「単位セル4」ともいう。nは2以上の正の整数。)が含まれる。単位セル4は、反射制御領域5をx軸方向に沿って等間隔に分割した部分である。nは、x軸方向において反射制御領域を単位セルに分割する場合の分割数である。単位セル4は正方形であり、単位セル4のサイズ(長さ)をsとし、反射制御領域5のx軸方向のサイズ(長辺)をLx、y軸方向のサイズ(短辺)をMyとする場合、s=Lx/n=Myである。
また、リフレクトアレイ6のサイズは反射制御領域5のサイズと個数により決定される。例えばx軸方向に非対称反射させるリフレクトアレイであって、x軸方向に反射制御領域5が8個、y軸方向に6個並ぶ場合、リフレクトアレイ6のx軸方向のサイズは8Lx、y軸方向のサイズは6Myとなる。リフレクトアレイ6は、非対称反射させる方向に並ぶ反射制御領域の個数によって反射パターンが変化する。つまり図1bにおいては、x軸方向に並ぶ反射制御領域の個数によって反射パターンが変わるが、y軸方向に並ぶ反射制御領域の個数は反射パターンに影響しない。x軸方向に並ぶ反射制御領域の個数が多くなるほど、リフレクトアレイの反射パターンは細くなる。y軸方向に並ぶ反射制御領域の個数は反射強度に影響を与え、y軸方向に並ぶ反射制御領域の個数が多くなるほど、反射強度が大きくなる。
なお、図1において、反射制御領域5はx軸方向に並んだn個の単位セル4によって構成され、リフレクトアレイ6には複数の反射制御領域5が含まれる構成が示されているが、本開示はこのような構成に限定されない。反射制御領域はy軸に並ぶ単位セルによって構成されてもよいし、x軸およびy軸に並ぶ単位セルを含む構成であってもよい。反射制御領域の構成については後述する。
【0021】
(素子パターンの構成)
単位セル4の+z軸方向を向く面には、素子パターンが形成されている。分割数nを用いて、単位セル4、単位セル4、…単位セル4と表す。単位セル4には素子パターン1が形成される。単位セル4には素子パターン1が形成される。単位セル4には素子パターン1が形成される。単位セル4には素子パターン1が形成される。
【0022】
図1の反射制御領域内において、各素子パターンは、ほかの素子パターンとはわずかずつ異なる形状を有している。ここで、素子パターン1から素子パターン1に示された素子パターンの形状を、クロスパッチということがある。クロスパッチとは、xy平面において、2つの方形パッチが直交した形状を指す。素子パターン1は、x軸方向のサイズである素子長lx1とy軸方向のサイズである素子幅wy1を有する方形パッチと、y軸方向のサイズである素子長ly1とx軸方向のサイズである素子幅wx1を有する方形パッチが、重心の位置を共通として直交した形状を有する。同様に、素子パターン1は、素子長lxnと素子幅wynを有する方形パッチと、素子長lynと素子幅wxnを有する方形パッチが、重心の位置を共通として直交した形状を有する。
【0023】
(各構成の説明、設計方法)
(層の構成)
図3を参照して、リフレクトアレイ6の層構成を説明する。リフレクトアレイ6は、少なくとも素子パターン1、誘電体層2、グランド層3が+z軸方向から-z軸方向に向かう向きに積層された構成を有している。以下の説明において、素子パターン1、誘電体層2、グランド層3の3層からなる構成を「基本構成」という。実用上、リフレクトアレイ6は基本構成の素子パターン1側あるいはグランド層3側、もしくは両方に各種機能性を有する層(以下、「機能層」ともいう)を単数あるいは複数積層させることが好ましい。以下の説明において、素子パターン1と誘電体層2とグランド層3以外のリフレクトアレイに含まれる層について、層の種類を特定せずに示す場合、「機能層」ということがある。
【0024】
必要に応じて、素子パターン1と誘電体層2の間、またはグランド層3と誘電体層2の間に、それぞれの密着力を向上させるための層が形成されていてもよい。また、密着力を向上させる用途の他の用途に用いられる層が形成されていてもよい。なお、リフレクトアレイ6の製造過程において生じた中間生成物が層状に形成され、リフレクトアレイ6に残る場合もある。
【0025】
機能層としては例えば、リフレクトアレイ6が設置される場所の景観に配慮した意匠を施した意匠層や、リフレクトアレイ6を壁や天井等の支持体に容易に設置できるようにするための設置層や、基本構成を保護するための保護層や、各層を積層させるための接着層が挙げられる。
【0026】
(反射制御領域)
リフレクトアレイ6は少なくとも1つの反射制御領域を含む。反射制御領域の配置の仕方によって、リフレクトアレイの性質を変更することが可能である。例えば、ある波長の電磁波がある入射角度で入射した場合に、反射方向が共通である反射制御領域を周期的に配置することにより、リフレクトアレイに、単一方向への反射を行う特性を付与することが可能である。また、ある波長の電磁波がある入射角度で入射した場合に、反射方向がそれぞれ異なる反射制御領域を含むリフレクトアレイを構成することにより、複数の方向へ電磁波を散乱させる特性を付与することも可能である。また、反射制御領域ごとに反射方向を所定の角度ずつずらす構成とすることによって、特定の箇所へ電磁波を集める特性を付与することも可能である。設計時に、リフレクトアレイに適用が予定される周波数を、以下「動作周波数」とする。
【0027】
反射制御領域のx軸方向のサイズLxは、動作周波数の波長をλ、反射制御領域に入射する電磁波の入射角度のx軸成分をθix、反射制御領域から反射する電磁波の反射角度のx軸成分をθrxとし、θix≠-θrxの場合、例えば式(3)によって決定される。
【数2】
【0028】
また、反射制御領域のy軸方向のサイズLyは、反射制御領域に入射する電磁波の入射角度のy軸成分をθiy、反射制御領域から反射する電磁波の反射角度のy軸成分をθryとし、θiy≠-θryの場合、例えば式(4)によって決定される。
【数3】
【0029】
特に式(3)と式(4)のxy軸成分の区別をしない場合には、上述した式(1)のように表す。
【数4】
【0030】
(単位セルと反射位相の関係)
図4図5を参照して、単位セルと反射位相の関係を説明する。図4図5は、非対称反射を発生させる方向に応じた、単位セルの配置の一例を示す図である。反射制御領域5は少なくとも2つの単位セルを有する。ここで、図4(a)はリフレクトアレイ6fに入射する電磁波(入射波)の方向およびリフレクトアレイ6fから反射する電磁波(反射波)の方向を示す。別の言い方をすると、太い実線で描かれた矢印が波面の進行方向を示しており、リフレクトアレイ6に向かう矢印が入射波の波面の進行方向を示し、リフレクトアレイ6fから離れる方向の矢印が反射波の波面の進行方向を示す。また、図4(b)はリフレクトアレイ6fをz軸方向から見た平面図を示す。図5における(a)および(b)も、図4における(a)および(b)の関係と同様である。
【0031】
単位セルは、入射した電磁波を所定の位相差で反射させる作用を有する。反射制御領域内において、それぞれの単位セルが異なる反射位相を示すことから、反射制御領域から発生する反射波の波面である反射波面が入射角度と反射角度が等しくなる場合の反射角度から傾き、入射角度と反射角度が等しくなる対称反射とは異なる反射である非対称反射が実現する。
【0032】
リフレクトアレイ6fにx軸方向に沿ってのみ非対称反射を行わせようとする場合(図4(a)に示されるようにθix≠-θrx)には、反射制御領域5a内のx軸方向に沿って異なる反射位相を示す単位セルが配置される(図4(b))。反射制御領域5aは、分割数n=3とし、x軸方向に配置された3つの単位セルを有している。反射制御領域5aのx軸方向のサイズ(長辺)Lxは式(3)によって決定され、単位セルのx軸方向のサイズはLx/3である。反射角度のy軸成分は対称反射であるため、反射制御領域の短辺のサイズMyは任意の値をとり得る。しかし、設計のしやすさから、便宜的にLxおよび分割数mからサイズが決定された正方形の単位セルを用いることとし、MyはLx/3と等しくされる。
【0033】
同様に、リフレクトアレイ6gにy軸方向に沿ってのみ非対称反射を行わせようとする場合(図5(a)に示されるようにθiy≠-θry)には、反射制御領域5b内のy軸方向に沿って異なる反射位相を示す単位セルを配置する(図5(b))。ここで、m(mは2以上の正の整数)は、y軸方向において反射制御領域を単位セルに分割する場合の分割数とする。反射制御領域5bは、分割数m=3とし、y軸方向に配置された3つの単位セルを有している。反射制御領域5bのy軸方向のサイズLyは式(4)によって決定され、単位セルのy軸方向のサイズはLy/3である。反射角度のx軸成分は対称反射であるため、反射制御領域の短辺のサイズMxは任意の値をとり得る。しかし、設計のしやすさから、便宜的にLyおよび分割数mからサイズが決定された正方形の単位セルを用いることとし、MxはLy/3と等しくされる。
【0034】
(反射制御領域内の反射位相の分布、表面インピーダンスの分布)
反射制御領域内における反射位相の分布は、例えば式(5)に従うように決定される。ここで、動作周波数の波長をλ(m)、反射制御領域に入射する電磁波の入射角度のx軸成分をθix、y軸成分をθiy、反射制御領域から反射する電磁波の反射角度のx軸成分をθrx、y軸成分をθry、反射制御領域内のx軸と平行な任意の座標x1、x2における反射位相をそれぞれφx1、φx2とし、座標x1、x2の距離をdx、Φx1、Φx2の反射位相差をΔΦxとする。また、y軸と平行な任意の座標y1、y2における反射位相をそれぞれφy1、φy2とする。反射制御領域にx軸方向に沿って非対称反射を行わせようとする場合、式(5)を満たしていることが好ましく、反射制御領域にy軸方向に沿って非対称反射を行わせようとする場合、式(6)を満たしていることが好ましい。
【数5】
【数6】
【0035】
また、反射位相ではなく、表面インピーダンスの分布を反射制御領域内に適用することもできる。その場合、表面インピーダンスの分布は例えば式(7)、および式(8)により表される。ここで、Zsxは反射制御領域のx軸方向と平行な表面インピーダンス分布、Zsyは反射制御領域のy軸方向と平行な表面インピーダンス分布、ηは入射波のインピーダンスとする。また、反射制御領域に入射する電磁波の入射角度のx軸成分をθix、y軸成分をθiy、反射制御領域から反射する電磁波の反射角度のx軸成分をθrx、y軸成分をθryとする。
なお、x1およびx2は反射制御領域内の相対座標としてのx座標を示し、反射制御領域における任意の座標において基準x=0をとり得る。同様に、y1およびy2は反射制御領域内の相対座標としてのy座標を示し、反射制御領域における任意の座標において基準y=0をとり得る。
また、kは反射波の波数である。jは虚数単位を示す。反射制御領域にx軸方向に沿って非対称反射を行わせようとする場合、式(7)を満たしていることが好ましく、反射制御領域にy軸方向に沿って非対称反射を行わせようとする場合、式(8)を満たしていることが好ましい。
【数7】
【数8】
【0036】
その他の表面インピーダンスの分布としては、例えば式(9)、および式(10)により表される。反射制御領域がx軸方向に沿ってのみ非対称反射を行わせようとする場合、式(9)を満たしていることが好ましく、反射制御領域がy軸方向に沿ってのみ非対称反射を行わせようとする場合、式(10)を満たしていることが好ましい。
【数9】
【数10】
【0037】
なお、上述の式(5)から式(10)は、反射位相の分布および表面インピーダンスの分布を設計する場合に用いられる設計式の一例を示すものである。本開示はこれら式(5)から式(10)を用いる場合に限定されるものではなく、他の設計式を適宜選択することが可能である。
【0038】
(リフレクトアレイの設計方法)
リフレクトアレイの設計方法について説明する。ここで一例として説明するのは、同一の反射制御領域がx軸方向に複数並べられたリフレクトアレイの設計方法である。同一の反射制御領域がy軸方向に複数並べられたリフレクトアレイやx軸方向およびy軸方向のいずれの方向にも非対称反射を行わせようとするリフレクトアレイについても同様の方法で設計可能である。
【0039】
(設計方法1)
設計方法1では、素子長と素子パターン間のギャップを固定して、素子幅を変化させることで素子パターンの位相を制御する設計方法である。この方法では、後述する設計方法2、3と比較して素子幅の変化に伴う位相の変化がなだらかであるため、製造工程の中で素子形状に変化が生じても製品の性能を確保しやすいメリットがある。
(ステップ1)まず、狙いとする反射特性(動作周波数、入射角度および反射角度)を設定する。
(ステップ2)続いて、式(3)を用いて、反射制御領域のサイズLxを決定する。
(ステップ3)続いて、反射制御領域のサイズLxをn分割する。単位セルのサイズが決定する。
(ステップ4)続いて、単位セルに収まる範囲で、素子パターンの素子長lxを決定する。素子パターンは単位セル内に偏りなく均等に配置されるため、結果として、素子パターンの間のギャップgxも決定される。
(ステップ5)続いて、素子幅wxを設計パラメータとして単位セルの反射位相を解析する。素子パターンの素子幅wxを設計パラメータとして反射位相を導出し、単位セルにおける素子幅と反射位相の間の関係を示す解析結果を取得する。
(ステップ6)続いて、狙いとする反射制御領域の反射特性を実現するための理想的な反射位相またはインピーダンスを式(5)から式(10)を用いて算出し、上記解析結果に基づいて所望の反射位相またはインピーダンスを実現する素子幅wxを選択する。
(ステップ7)続いて、反射制御領域を少なくとも1つ含むよう、リフレクトアレイを形成する。リフレクトアレイについて反射特性を解析する。
(ステップ8)なお、ステップ7の解析結果を踏まえ、目的の反射角度のRCSがさらに高まるように、また、目的角度以外のRCSが小さくなるよう、最適化手法を用いて素子幅wxをさらに微調整することも可能である。
【0040】
(設計方法2)
設計方法2では、素子幅を固定して、素子長を変化させることで素子パターンの位相を制御する設計方法である。
(ステップ1)まず、狙いとする反射特性(動作周波数、入射角度および反射角度)を設定する。
(ステップ2)続いて、式(3)を用いて、反射制御領域のサイズLxを決定する。
(ステップ3)続いて、反射制御領域のサイズLxをn分割する。単位セルのサイズが決定する。
(ステップ4)続いて、単位セルに収まる範囲で、素子パターンの素子幅wxを決定する。
(ステップ5)続いて、素子長lxを設計パラメータとして単位セルの反射位相を解析する。素子パターンの素子長lxを設計パラメータとして反射位相を導出し、単位セルにおける素子長と反射位相の間の関係を示す解析結果を取得する。
(ステップ6)続いて、狙いとする反射制御領域の反射特性を実現するための理想的な反射位相またはインピーダンスを式(5)から式(10)を用いて算出し、上記解析結果に基づいて所望の反射位相またはインピーダンスを実現する素子長lxを選択する。
(ステップ7)続いて、反射制御領域を少なくとも1つ含むよう、リフレクトアレイを形成する。リフレクトアレイについて反射特性を解析する。
(ステップ8)なお、ステップ7の解析結果を踏まえ、目的の反射角度のRCSがさらに高まるように、また、目的角度以外のRCSが小さくなるよう、最適化手法を用いて素子長lxをさらに微調整することも可能である。
【0041】
(設計方法3)
設計方法3では、素子幅と素子長の両方を変化させることで素子パターンの位相を制御する設計方法である。この設計方法は、設計方法1、2で行うと十分な反射位相変化幅が十分に確保できない時に有効である。
(ステップ1)まず、狙いとする反射特性(動作周波数、入射角度および反射角度)を設定する。
(ステップ2)続いて、式(3)を用いて、反射制御領域のサイズLxを決定する。
(ステップ3)続いて、反射制御領域のサイズLxをn分割する。単位セルのサイズが決定する。
(ステップ4)続いて、素子幅wxと素子長lxを設計パラメータとして単位セルの反射位相を解析する。素子パターンの素子幅wxと素子長lxを設計パラメータとして反射位相を導出し、単位セルにおける素子幅wxと素子長lxと反射位相の間の関係を示す解析結果を取得する。
(ステップ5)続いて、狙いとする反射制御領域の反射特性を実現するための理想的な反射位相またはインピーダンスを式(5)から式(10)を用いて算出し、上記解析結果に基づいて所望の反射位相またはインピーダンスを実現する素子幅wxと素子長lxを選択する。
(ステップ6)続いて、反射制御領域を少なくとも1つ含むよう、リフレクトアレイを形成する。リフレクトアレイについて反射特性を解析する。
(ステップ7)なお、ステップ7の解析結果を踏まえ、目的の反射角度のRCSがさらに高まるように、また、目的角度以外のRCSが小さくなるよう、最適化手法を用いて素子幅wxと素子長lxをさらに微調整することも可能である。
【0042】
(素子パターン)
図1図6図7を参照して、素子パターンの詳細を説明する。ここでは、クロスパッチ形状に関する詳細な説明を行うが、素子パターン形状はこれに限定されない。例えば、円形形状や、長方形形状、正方形形状であってもよい。
一般的にリフレクトアレイは、素子パターンによる共振を利用して反射特性を変化させる。ここで、線状または長方形の素子パターン(方形パッチ)は、その長軸に沿った方向の偏波を主に共振させるため、これらを直交させた形状の素子パターンを用いた場合、TE、TM両偏波に対応できることが知られている。
【0043】
本開示のリフレクトアレイにおいて、反射制御領域の分割数n、mを増加させるにつれて各単位セルのサイズおよび素子パターンのサイズは小さくなる。共振は、周波数に対して一定の素子パターンのサイズが満たされた場合にのみ生じるため、n、mを一定以上増加させた場合、動作周波数における非対称反射の実現が困難になる。一方、n、mを増加させるほど、より微小な領域ごとに反射特性を制御できるため、リフレクトアレイの反射特性は理論的な特性に近づく。
【0044】
本開示のリフレクトアレイにおける素子パターンは、xy平面において、2つの方形パッチが直交した形状のクロスパッチをその形状に含む。ここで、図1bに示されるように、クロスパッチを構成するx軸方向に長辺を有する方形パッチは長辺のサイズである素子長lxと短辺のサイズである素子幅wyを有し、y軸方向に長辺を有する方形パッチは長辺のサイズである素子長lyおよび短辺のサイズである素子幅wxを有する。したがって、単位セル4nにおける素子パターンは、素子長としてlxn、lynを有し、素子幅としてwxn、wynを有する、と表示することが可能である。
【0045】
図6は、素子パターンの構成を示す図である。単位セルには素子パターンが1つ配置される。単位セル4の素子パターンを構成するクロスパッチは、2つの方形パッチが交差する位置が単位セルの重心と同じであっても良いし(図6(a)の単位セル4a)、異なっていても良い(図6(b)の単位セル4b、図6(c)の単位セル4c)。これらのクロスパッチの変形は適宜選択することが可能であり、設計の柔軟性や拡張性を高めることができる。
【0046】
本開示では、素子幅wx、wyを設計パラメータとして取り扱うこととし、反射制御領域に含まれる各素子パターンは互いに異なる素子幅を有するように設計する。素子幅wxは、最大で素子長lxと等しい値をとるまでの範囲内で変化し、素子幅wyは、最大で素子長lyと等しい値をとるまでの範囲内で変化させることができる。同一素子パターン内の素子幅wxと素子幅wyは、等しい値であっても異なる値であってもよい。異なる値とする場合、TE、TM偏波に対する特性をそれぞれ個別に制御することができる。
【0047】
これまで説明してきた反射制御領域において、x軸方向の素子長lxは素子パターン毎に等しく、また、y軸方向の素子長lyは素子パターン毎に等しいものであった。ここで、lxとlyは等しいものあっても異なっていてもよい。lxとlyが異なる場合には、TE、TM偏波に対する特性を、素子パターンそれぞれ個別に付与することができる。
【0048】
素子パターンは、表面抵抗値が100Ω/□以下であることが好ましい。素子パターンに用いる材料としては、無機酸化物材料、金属材料や導電性を有する有機材料など、導電性を有する材料が用いられる。例えば、無機酸化物材料および金属材料としては、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム・酸化亜鉛(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、Ag-Cu、Cu-AuおよびNiなどが用いられる。また、これらの材料のうちの少なくとも1つを含むナノ粒子、またはナノワイヤーを用いてもよい。導電性を有する有機材料としては、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが挙げられる。特に材料コスト、導電性、製膜性の観点から、CuやAlが好ましい。また、ITOやポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)との混合物(PEDOT/PSS)などを用いることにより、透明性を有するリフレクトアレイを作製することもできる。素子パターンの厚みは、例えば、10nm以上18μm以下である。柔軟性、成膜性、安定性、シート抵抗値および低コストの観点から、蒸着法により成膜されたものを素子パターンとして用いることが好ましい。
【0049】
素子パターンの材料は、後述するグランド層と同一のものを用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。なお、例えば、グランド層または素子パターンの少なくとも一方の層がCuもしくはAlによって形成されることとすることも可能である。Cuは導電性に優れるため、導体損失を低減することができる。Alは密度が小さく軽量であり、またコストが低いため、軽量かつ安価なリフレクトアレイを形成できる。また、少なくとも一方の層の厚みは1μm以下とすることができる。1μm以下とすることによって可撓性が向上し、リフレクトアレイの曲面等への設置がしやすくなり、また軽量化を実現することが可能となる。
【0050】
上記材料を用いる形態としては連続膜、メッシュ状、パンチング形状が挙げられる。
【0051】
ここで、メッシュとは、導体の平面に網目状の透孔(開口)が空いた状態をいう。導体がメッシュ状に形成される場合、メッシュの目は方形であってもよく、菱形であってもよい。メッシュの目を方形に形成する場合、メッシュの目は正方形であることが好ましい。メッシュの目が正方形であれば、意匠性が良い。また、自己組織化法によるランダム形状でもよい。ランダム形状にすることでモアレを防ぐことができる。金属をメッシュ状に加工する場合、金属板のパンチング加工、金属板のエッチング等の方法を採用することが可能である。
【0052】
素子パターンがメッシュ状である場合や、透明導電材料を使用した場合、リフレクトアレイが可視光透過性を示し、設置後の景観を保つことを可能にする。
【0053】
素子パターンがメッシュ状である場合、メッシュの線幅は、5μm以上30μm以下が好ましく、6μm以上15μm以下がより好ましい。メッシュの線間隔は、50μm以上500μm以下が好ましく、100μm以上300μm以下がより好ましい。また、メッシュの線間隔は、動作周波数における波長をλとしたとき、0.5×λ以下であることが好ましく、0.1×λ以下であることがより好ましく、0.01×λ以下であることがさらに好ましい。メッシュの線間隔が0.5×λ以下であれば性能を担保することができる。また、メッシュの線間隔は、0.001×λ以上であってもよい。
【0054】
素子パターンがメッシュ状である場合や、透明導電材料を使用した場合、リフレクトアレイが可視光透過性を示し、設置後の景観を保つことを可能にする。
【0055】
素子パターンの形態が薄膜の場合、リフレクトアレイの可撓性を向上させることが可能であり、それにより曲面での使用やロールtoロールでの生産プロセスを実施することが可能となる
【0056】
素子パターンの形態が薄膜を用いて形成する場合、その厚みは式(11)から算出される表皮深さの2倍よりも大きいことが好ましい。ただし、dは表皮深さ、ωは角周波数、μは材料の透磁率、σは材料の導電率である。式(11)から算出される表皮深さの2倍よりも薄い場合には導体に入射した電磁波の一部が透過し、反射効率が悪くなる。
また、より好ましくは式(11)から算出される表皮深さの2倍よりも大きく、かつそれに近しい厚みであることが好ましい。式(11)から算出される表皮深さの2倍より十分に大きい厚みをもつ素子パターンは、表皮効果により導体の表面部分に電流が集中し、中心部分はほとんど電流が流れていない状態になる。そのため、式(11)の表皮深さの2倍より大きい厚みを持っていても電力伝送特性は大きく変わらない。式(11)から算出される表皮深さの2倍に近い値であるほど、十分な電力伝送特性を備えることができ、かつ材料費を抑えて作製できる。
【数11】
【0057】
また、電磁波の反射効率を高めるため、素子パターンによる損失を低減させることが挙げられる。そのため、素子パターンの表面粗さは小さいほうが好ましい。高い周波数では、表皮効果の影響で導体の表面部分に電流が集中し、導体表面の電流密度が高くなっている。そのため、表面粗さの影響を受けやすく、表面粗さが大きいと導体損失が大きくなる。特に、表皮深さより大きい表面粗さを持つ場合に、導体損失は著しく大きくなる。したがって、導体損失を抑えるために表面粗さは小さい方が好ましい。
【0058】
(誘電体層)
誘電体層には、単体の樹脂の他に、紙やガラス繊維や炭素繊維などに樹脂を含侵させた複合材料の使用が挙げられる。
【0059】
誘電体層の比誘電率は、1以上20以下の範囲にあることが好ましく、1以上10以下の範囲にあることがより好ましく、2以上4以下の範囲にあることがさらに好ましい。比誘電率が上記範囲内であると、リフレクトアレイ1において所望の反射位相特性を得やすい傾向にある。また、誘電正接は0.00005以上0.01以下の範囲にあることが好ましく、0.00005以上0.001以下の範囲にあることが好ましい。上記範囲内であると、誘電損失の少ないリフレクトアレイ1を作製できる。
【0060】
単体の樹脂には例えば、ポリエチレン(εr=2.2~2.4)、ポリプロピレン(εr=2.0~2.6)、ポリスチレン(εr=2.4~2.6)、ポリ塩化ビニル(εr=2.8~8.0)、AS樹脂(εr=2.6~3.1)、ABS樹脂(εr=2.4~4.1)、ポリエチレンテレフタレート(εr=2.9~3.0)、アクリル樹脂(εr=2.7~4.5)、ウレタン樹脂(εr=4.0~7.1)、エポキシ樹脂(εr=2.5~6.0)、ナイロン(εr=3.0~5.0)、ポリイミド(εr=2.4~2.7)、フッ素樹脂(εr=2.0~2.6)、ポリカーボネート(εr=2.9~8.9)、ポリフェニレンエーテル(εr=2.8~8.2)、ポリフェニレンサルファイド(εr=3.2~4.6)、ポリフッ化ビニリデン(εr=6.4~10.0)、ポリエチレンナフタレート(εr=2.9)、フェノール樹脂(εr=3.0~12.0)、シクロオレフィンポリマー(εr=2.3~2.5)等が挙げられる。ここで、εrは比誘電率を示す。とりわけ、安価で汎用性に優れている点から、ポリエチレンテレフタレ一卜(PET)を用いることが好ましい。また、誘電体層は、単層あるいは複層とすることもできる。また、誘電体層は、上記材料を発泡化した発泡体を使用してもよい。また、発泡体としては、柔軟性の高い発泡体が好ましく用いられる。
【0061】
複合材料には例えば、紙/フェノール樹脂、紙/エポキシ樹脂、ガラス/エポキシ樹脂、ガラス/フッ素樹脂の複合材料等が挙げられる。
【0062】
誘電率調整の観点から、樹脂成分同士、あるいは誘電性化合物と樹脂成分とを含有する混合物の使用が挙げられる。混合物における比誘電率は誘電性化合物の選択およびその含有量に応じて調整可能である。
【0063】
混合物の比誘電率は例えば、Maxwell-Garnett則を用いて予測可能である。比誘電率εaの誘電体Aと、比誘電率εbの誘電体Bの混合物において、Aの体積分率がδaである場合、混合物の比誘電率εmは式(12)の関係式によって示される。
【数12】
【0064】
誘電性化合物としては、例えばチタン酸バリウム(εr=250~20000)、酸化チタン(εr=83~183)、ジルコン酸チタン酸鉛、タンタル酸ビスマス酸ストロンチウム、ビスマスフェライト等が挙げられる。
【0065】
透明性を有する誘電体を使用した場合、リフレクトアレイが可視光透過性を示し、設置後の景観を保つことを可能にする。
【0066】
誘電体層の厚みは、設計周波数により適宜選択される。設計周波数を28GHzとした場合、40μm以上250μm以下であることが好ましく、50μm以上200μm以下であることがより好ましい。薄すぎると反射位相の確保が困難となり、リフレクトアレイ1の設計が難しくなる。一方で、厚すぎても、反射位相の確保が困難となる、可撓性がなくなる、リフレクトアレイの総厚が厚くなるなどの傾向があり、省スペース化が難しくなる。このため、誘電体層の厚みは、250μm以下が好ましい。設計周波数を60GHzとした場合、誘電体層の厚みは10μm以上250μm以下であることが好ましい。設計周波数が100GHz以上になる場合、誘電体層の厚みを数μm以上100μm以下程度にすると、リフレクトアレイを設計しやすい。
【0067】
誘電体層は、例えば、ダイコーティングやコンマコーティング、グラビアコーティングなどのウェットコーティング、Tダイ法やインフレーション法などの溶融押出法、カレンダー製膜法、溶液流延法、熱プレス法などを用いて形成することができる。また、複数の樹脂を多層に押し出してフィルムを製膜する共押出法を用いてもよい。
【0068】
(グランド層)
グランド層は、リフレクトアレイに到達する電磁波を反射させるために設けられる。グランド層の材料として、無機酸化物材料、金属材料や導電性を有する有機材料など、導電性を有する材料が用いられる。
【0069】
例えば、無機酸化物材料および金属材料としては、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム・酸化亜鉛(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、Ag、Al、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、In、Ag-Cu、Cu-AuおよびNiなどが用いられる。また、これらの材料のうちの少なくとも1つを含むナノ粒子、またはナノワイヤーを用いてもよい。導電性を有する有機材料としては、ポリチオフェン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、カーボンナノチューブ、グラフェン等が挙げられる。特に材料コスト、導電性、製膜性の観点から、CuやAlが好ましい。また、電磁波を反射させるためにはグランド層の表面抵抗値が100Ω/□以下であることが望ましく、この条件を満たすことができればITOやポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)との混合物(PEDOT/PSS)などを用いることによって、透明性を有するリフレクトアレイを作製することもできる。
【0070】
上記材料を用いる形態としては連続膜、メッシュ状、パンチング形状、周期性構造が挙げられる。
【0071】
ここで、メッシュとは、導体の平面に網目状の透孔(開口)が空いた状態をいう。導体がメッシュ状に形成される場合、メッシュの目は方形であってもよく、菱形であってもよい。メッシュの目を方形に形成する場合、メッシュの目は正方形であることが好ましい。メッシュの目が正方形であれば、意匠性が良い。また、自己組織化法によるランダム形状でもよい。ランダム形状にすることでモアレを防ぐことができる。金属をメッシュ状に加工する場合、金属板のパンチング加工、金属板のエッチング等の方法を採用することが可能である。
【0072】
グランド層がメッシュ状である場合や、透明導電材料を使用した場合、リフレクトアレイが可視光透過性を示し、設置後の景観を保つことを可能にする。
【0073】
グランド層がメッシュ状である場合、メッシュの線幅は、5μm以上30μm以下が好ましく、6μm以上15μm以下がより好ましい。メッシュの線間隔は、50μm以上500μm以下が好ましく、100μm以上300μm以下がより好ましい。また、メッシュの線間隔は、動作周波数における波長をλとしたとき、0.5×λ以下であることが好ましく、0.1×λ以下であることがより好ましく、0.01×λ以下であることがさらに好ましい。メッシュの線間隔が0.5×λ以下であれば性能を担保することができる。また、メッシュの線間隔は、0.001×λ以上であってもよい。
【0074】
グランド層の形成方法として、金属材料を用いる場合であれば、スパッタ法や蒸着法などのドライコーティング、金属材料をインキ化することによりグラビアコーティング、ダイコーティングなどのウェットコーティング、めっき処理などの表面処理、等から選択することが可能である。または、グランド層として、金属板を圧延したものを用いてもよい。無機酸化物材料を用いる場合であれば、グランド層11の形成方法として、ドライコーティングを選択することができる。有機材料を用いる場合であれば、グランド層11の形成方法として、ウェットコーティングを選択することができる。また、塗装やスプレー法で形成してもよい。
【0075】
グランド層の形態がめっき処理や蒸着法等で形成された薄膜の場合、リフレクトアレイの可撓性を向上させることが可能であり、それにより曲面での使用やロールtoロールでの生産プロセスを実施することが可能となる。
【0076】
グランド層の形態が薄膜の場合、その厚みは素子パターンと同様に式(11)から算出される表皮深さよりも大きいことが好ましい。
【0077】
また、電磁波の反射効率を高めるため、グランド層による損失を低減させることが挙げられる。そのため、グランド層の表面粗さは小さいほうが好ましい。
【0078】
グランド層の形態が周期性構造である場合、特定の周波数を選択的に反射または透過させる機能が発現し得る。例えば、パッチ状の導電パターンが周期的に配置された構造をグランド層として使用した場合、特定の周波数のみを反射させることが可能となるため、動作周波数以外の周波数を透過させる機能を付与することができる。また、導電材料が存在しない箇所をホールとして周期的に設けた構造を使用した場合、動作周波数を非対称反射させつつ、特定の周波数のみを透過させるリフレクトアレイを設計することが可能である。
【0079】
(製造方法)
リフレクトアレイの基本構成の主な製造方法としては、プリント基板等に用いられる銅張積層板または、誘電体層の片面もしくは両面に蒸着法やスパッタ法のドライコーティング、めっき処理やウェットコーティング等により金属膜を形成した誘電体層に対し、切削またはエッチング等を施すことにより素子パターンを形成する。
具体的には、銅張積層板は、例えば、エポキシ等の樹脂をガラスクロス等の基材に含侵させた絶縁体に銅箔を張り合わせたものである。銅張積層板は板状の形状を有しており、板状の形状の絶縁体の両面に銅箔が張り合わされている。一方の面の銅箔を素子パターン1とし、他方の面の銅箔はグランド層3に適用する。絶縁体は誘電体層2に該当する。
誘電体の両面に金属膜を形成する場合、一方の金属膜から素子パターン1を形成し、他方の金属膜はグランド層3に適用する。誘電体は、誘電体層2となる。
【0080】
図7は、エッチング後の素子パターンの形状の一例を示す図である。図7(a)は素子パターン1の平面図を示し、図7(b)から図7(d)は素子パターン1の断面図を示す。図7(a)に示されるように、素子パターン1は、素子長lxと素子幅wyを有する方形パッチと、素子長lyと素子幅wxを有する方形パッチが直交して形成される。エッチング法には、ドライエッチングやウェットエッチングのいずれの方式を用いてよい。エッチング法を用いた場合、素子パターン1にコーナーラウンディング(図7(a))や、ピンホールが生じることがある。また、素子パターン1の断面視において順テーパー(図7(b))や逆テーパー(図7(c))、ラウンディング(図7(d))が形成されることが想定される。図7中において素子パターン1の厚みをtとする。エッチング法を用いた場合、素子パターンの断面形状は、-z軸方向に裾が広がるような形状である順テーパー形状であることが好ましい。順テーパー形状であることにより、素子パターンの表面積が大きくなり、後述する機能層の積層時に機能層との密着力を大きくすることが可能となる。
【0081】
なお、一般的に切削の場合、素子パターンの寸法誤差は±100μm程度であり、エッチングの場合、素子パターンの寸法誤差は±50μm程度である。
【0082】
その他の製造方法としては、誘電体層上に素子パターンやグランド層を直接形成する方法があげられる。凸版印刷、平版印刷、凹版印刷、孔版印刷、転写印刷などを用いて印刷する方法や、誘電体層にマスキングテープやマスキング剤等で素子パターン部分以外をマスキング処理し、素子パターンをドライコーティングやめっき処理、塗装やスプレー法を用いることで、形成することもできる。
【0083】
基本構成への他層(保護層、接着層、意匠層、設置層等の機能層)の積層では、貼り合わせや印刷・コーティング、押出成型が挙げられ、貼り合わせには例えば、ドライラミネートやウェットラミネート、熱ラミネート、押出ラミネートを用いることが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0084】
(入射角度と反射角度の関係)
入射角度とは、反射制御領域に入射する電磁波の入射角度θi、反射角度とは、反射制御領域から反射する電磁波の反射角度θrである。反射制御領域から反射する電磁波の波長をλとした時に反射制御領域は下記の式(1)を満たすように設計される。
【数13】
リフレクトアレイにおける入射角度は、-70°以上-45°以下または+45°以上+70°以下であることが好ましい。|θi|が大きいほど、リフレクトアレイは入射許容角度範囲が広くなり、この角度範囲から入射した電磁波を反射角度方向に反射させることができる。
【0085】
リフレクトアレイにおける反射角度は、式(2)を満たす必要がある。
【数14】
この範囲においてリフレクトアレイは広い範囲の角度から入射した電磁波を反射角度方向に反射させることができる。より好ましくは、反射角度θrが-30°以上+30°以下であることが好ましく、さらに好ましくは-20°以上+20°以下であることが好ましい。反射角度が0°に近いほど広い範囲の角度から入射した電磁波を反射角度方向に反射させることができ、広い入射許容角度範囲を確保できる。
【0086】
(入射許容角度範囲)
入射ずれ角度は、式(1)を満たす入射角度を基準(=0°)として、そこからの入射角度のずれが生じた時の入射角度を示す。入射ずれ角度における角度表現は式(1)を満たす入射角度を基準(=0°)として、+z軸方向に向かう方向を正の角度(0°から-180°)、-z軸方向に向かう方向を負の角度(0°から-180°)として表す。
また、入射許容角度範囲は、反射制御領域が式(1)を満たす入射角度から入射した電磁波を式(1)を満たす反射角度に反射させる電磁波の反射強度を基準(=0dB)として、反射制御領域が入射ずれ角度から入射した電磁波を反射角度に反射させる電磁波の反射強度が、-3dB以内である入射ずれ角度の角度幅を表す。-3dBは電力が基準に対して半分になることを示している。-3dBの基準は、アンテナの業界では指向性を示す基準として用いられ、その範囲では十分に通信可能とされている。
リフレクトアレイは、入射角度の絶対値|θi|が大きくなるほど入射許容角度範囲を大きくすることができる。また、入射角度の絶対値|θi|が大きい範囲では、入射ずれ角度が正の値であるほうが入射許容角度範囲は大きくなり、より広い入射許容角度範囲を確保することができる。これは、発信器からリフレクトアレイを見たリフレクトアレイの見かけ上の面積が小さくなるため、リフレクトアレイに当たるエネルギー量が少なく、それに伴う反射電力が小さくなると考えられる。
入射許容角度範囲Δθiは、5.5°より大きく16°以下であることが好ましい。5.5°よりも小さい入射許容角度範囲の場合には、発信器から放射される電磁波の方向を正確に把握する必要がある。また、発信器にビームフォーミングを有するアンテナを使用する場合にも、ビームフォーミングの角度精度を高くするためにはより多くのアンテナ素子を配置する必要があり、発信器の大面積化及び高コスト化につながる。また、16°以上の入射許容角度範囲だと、発信器以外からの電波源を反射させてしまい、それが位相を乱す原因になることがある。
【0087】
(電磁波反射システム)
図8を参照して、電磁波反射システムおよびリフレクトアレイの設置方法の例を説明する。図8は、リフレクトアレイを用いた電磁波反射システムの一例を示す図である。説明のしやすさから、図8を例に説明しているが、電磁波反射システムの使用環境はこれに限定されない。
図8の例に示すように、発信器から放射される電磁波は、遮蔽物500があった場合に、遮蔽物などにより遮断され、直接受信器まで電磁波を届けることが出来ない。高い周波数であるほど電磁波は直進性が高いため、遮蔽物の裏側に回り込んで電磁波を届けることが難しくなる。ここで、リフレクトアレイを用いることで、発信器から一次放射された電磁波がリフレクトアレイに当たり、リフレクトアレイから二次放射された電磁波が受信器に当たることにより、発信器から受信器まで電磁波を届けることが出来る。
一般的に、パッシブ反射板を用いる場合において、電磁波反射システムを構築する際は、事前に使用環境を確認して、パッシブ反射板の設置場所と入射角度と反射角度を計算し、それをもとにパッシブ反射板の設計を行う。この場合、事前の確認が正確でなければ、最大効果を発揮することができない。また、パッシブ反射板の設置の際に、正確な角度調整が必要である。
ここで、本開示のリフレクトアレイを用いることで、式(2)を満たす入射角度と反射角度の範囲内において、入射ずれ角度が発生してもリフレクトアレイに入射する電磁波を反射角度方向に反射させることができ、入射許容角度範囲を広く取ることができるので、電磁波反射システムの構築が容易になる。
【0088】
(リフレクトアレイの設置方法)
リフレクトアレイの設置場所は、設置スペースを取らない点から、リフレクトアレイは壁等に沿って設置されることが好ましい。具体的には、図8において、壁200と壁201への設置が想定される。壁200に設置されるリフレクトアレイを6、壁201に設置されるリフレクトアレイを62とする。リフレクトアレイ6は、式(2)を満たす設置方法であり、リフレクトアレイ62は、式(2)を満たさない設置方法である。リフレクトアレイ62の設置方法は、発信器とリフレクトアレイ62の位置関係を決定するために高い精度が必要になり、設置位置にずれが生じた場合、受信器が受信できる電力は大幅に変わってしまう。壁200にリフレクトアレイ6を設置することにより、入射許容角度範囲が広くなり、この角度範囲から入射する電磁波を安定した反射強度で受信器の方向へ反射することができる。実用上を考慮すると、例えば、施工時におけるリフレクトアレイの設置位置精度が緩和され、施工が容易になる。また、発信器にビームフォーミングを有するアンテナを使用する場合、ビームフォーミングの精度も緩和することができる効果が期待できる。
【0089】
(支持体)
リフレクトアレイは支持体に設置される。図9は支持体に設置したリフレクトアレイの一例を示す図である。支持体としては、既存の看板や壁、天井、窓ガラス等を用いても構わないし、新規にパネルやポールを設置しても構わない。設置スペースを取らない点から、図9(a)のように、既存の看板や壁、天井、窓ガラス等に張り付けて使用することが好ましい。さらに、空間との調和をとるために意匠層を設けたり、素子やグランド層をメッシュにすることで透明性を付与することもできる。また、図9(b)のように、新規にパネルやポールを設置する場合には、リフレクトアレイの角度を上下あるいは左右方向に調節することができる機構を有することが好ましく、さらに、リフレクトアレイの位置を上下左右に動かす機構を有することがより好ましい。支持体にリフレクトアレイを設置し、リフレクトアレイ装置として用いられる。
【0090】
(設置層)
設置層はリフレクトアレイを支持体と固定するための層である。例えば、接着層や粘着層、支持体が金属製の場合マグネットの使用が挙げられる。
【0091】
(意匠層)
意匠層は、リフレクトアレイの表面に意匠性を付与するための層である。例えば、壁紙等の建装材に使用する場合では、空間との調和をとるためにさらに意匠層を設けても良い。また、ホワイトボードとして用いる場合には、機能性フィルムを意匠層として使用しても良い。後述の保護層の機能を意匠層に付与しても構わないとする。
【0092】
(保護層)
保護層には、素子パターンやグランド層の酸化劣化や物理的な傷や剥がれを防ぐため、ガスバリア性や水蒸気バリア性、耐水性、耐摩耗性、耐擦傷性を有するフィルムまたはシートの使用が挙げられる。
【0093】
リフレクトアレイの屋内での使用を想定した場合、抗菌性、抗ウイルス性、耐汚染性等を有する保護層の使用が好ましい。また、リフレクトアレイの屋外での使用を想定した場合、耐候性が求められるため、UVA(紫外線吸収剤)やHALS(光安定剤)を含む層を使用しても良い。
【0094】
[評価結果(実施例・比較例)]
実施例1-4、比較例1-4については表1、また、実施例5-10、比較例5-10については、表2に結果をまとめた。ここで使用する比較例は、本開示のリフレクトアレイが特定の入射角度において広い入射許容角度範囲を持つことを示すために、同じリフレクトアレイで式(2)を満たす場合と満たさない場合を比較している。
表1、表2の設置容易性は、リフレクトアレイの設置誤差がどの程度許容されるかを示す指標である。発信器とリフレクトアレイの距離が5mあるときに、リフレクトアレイを45cm動かしても受信電力の低下が-3dB以内である場合を〇、-3dBより大きく受信電力が低下する場合を×とする。リフレクトアレイを動かす方向は、x軸方向に非対称反射させる反射板である場合、x軸に沿って平行移動させることとする。
受信安定性は、発信器を動かした時における式(1)を満たす反射角度における受信電力の安定性を示す指標である。発信器を入射ずれ角度が変化するように動かし、反射角度における受信電力が-3dBとなるときの角度幅(すなわち入射許容角度範囲)が5.5°以下の場合を受信電力が安定しない状態として×と判断し、5.5°より大きく16°以下の場合を受信電力が安定する状態として〇と判断する。
【表1】
【表2】
【0095】
(実施例1)
素子パターン1およびグランド層3に厚み0.018mmの銅を、誘電体層2に厚み0.764mmのガラス/フッ素樹脂の複合材料を用いた基本構成のリフレクトアレイ6を構成した。ただし、銅の導電率は5.8×10^7siemens/mとし、誘電体層2の比誘電率の実部は2.6、tanδは0.0025とした。
【0096】
動作周波数を28GHzとし、狙いの反射特性(目的とする反射特性)をθix=-45°、θrx=0°、θiy=θry=0°に設定し、式(3)を使用して反射制御領域5のx軸方向のサイズLxを15.142mmに決定した。
【0097】
反射制御領域5の分割数を3とし、単位セルのx軸方向およびy軸方向のサイズは3.785mmとした。素子パターンの形状は、xy平面において、2つの方形パッチが直交したクロスパッチとした。ここで、反射制御領域5内の各素子パターンにおいては素子長及び素子幅が異なり、同じ素子パターン内においてはx軸方向とy軸方向の素子長と素子幅が同じとし、具体的には素子長はlx1=ly1、lx2=ly2、lx3=ly3とし、素子幅はwx1=wy1、wx2=wy2、wx3=wy3とした。
なお、表1および表2、以降の説明における図および文章において、反射制御領域5内に含まれる単位セルを、単位セル1、単位セル2、…単位セルp(pは1以上分割数n以下の整数)と表し、単位セルpにおいて、x軸方向の素子長をlxp、y軸方向の素子長をlyp、x軸方向の素子幅をwxp、y軸方向の素子幅をwypとする。ただし、lxpとlypが等しい場合には添え字x、yを省略し、wxpとwypが等しい場合には添え字x、yを省略し、単位セルを特定しない場合には添え字pを省略することがある。
【0098】
素子幅wと素子長lそれぞれに対する単位セルの反射位相を、Ansys製の有限要素法解析ソフトウェア(HFSS)を用いて解析した。素子幅wまたは素子長lが1.400mmの場合において素子幅wまたは素子長lが変化するにつれて反射位相が変化することを確認した。
【0099】
次に、前記で得られた単位セルの反射位相の解析結果を踏まえ、式(9)のインピーダンス分布に従うよう各単位セルにおける素子長lを決定した。素子長lはそれぞれlx1=ly1=3.800mm、lx2=ly2=3.000mm、lx3=ly3=1.400mm、素子幅はそれぞれwx1=wy1=1.400mm、wx2=wy2=1.400mm、wx3=wy3=1.100mmとした。
【0100】
リフレクトアレイ6は、反射制御領域をx軸方向およびy軸方向に8個×6個で配置しxy平面におけるサイズは121.12mm×90.840mmとした。y軸と平行の偏波をθix=-45゜、θrx=0゜でリフレクトアレイ6に照射した際の反射特性について、HFSSを用いて解析した。
【0101】
入射許容角度範囲を把握するために、-65°≦θix≦-25°の範囲で2°間隔ずつ変化させた場合についても同様に解析を行った。
【0102】
図10は、実施例1において得られたリフレクトアレイ6の解析結果である。ただし、図10の横軸は反射角度θrx、縦軸はRCS(レーダー反射断面積)とした。RCSは実質的に反射波の強度に対応する値である。実施例1のリフレクトアレイ6では、θix=-45゜で入射した電磁波が所望のθrx=0゜方向に反射し、そのRCSは-0.02dBsmであった。
【0103】
(比較例1)
入射角度θixと反射角度θrx以外実施例1に記載のリフレクトアレイと同様であるリフレクトアレイを用意した。入射角度θixと反射角度θrxはそれぞれθix=0°、θrx=-45°とした。リフレクトアレイ6の反射特性をHFSSを使用して解析した。
【0104】
入射許容角度範囲を把握するために、-20°≦θix≦20°の範囲で2°間隔ずつ変化させた場合についても同様に解析を行った。
【0105】
図11は、比較例1において得られたリフレクトアレイ6の解析結果である。実施例1のリフレクトアレイ6では、θix=0゜で入射した電磁波が所望のθrx=-45゜方向に反射し、そのRCSは-0.28dBsmであった。
【0106】
図12は、実施例1と比較例1それぞれの入射角度を変化させた時における特定の反射角度θrxで受信できる電力変化量の比較結果である。図12の横軸は入射ずれ角度、縦軸は入射ずれ角度=0°であるときのRCSを0dBとした時のRCSの変化量とした。
具体的には、実施例1において、入射ずれ角度=0°の時はθix=-45°であり、-65°≦θix≦-25°変化させた時の角度を図12の横軸に-20°≦入射ずれ角度≦20°で示している。縦軸はθrx=0°におけるRCS(-0.02dBsm)を0dBとして、入射ずれ角度=0°と比較してどの程度RCSが変化しているかを示す。これは、反射角度地点での受信電力がどの程度変化したかを示していることと同義である。また、比較例1において、入射ずれ角度=0°の時はθix=0°であり、-20°≦θix≦20°変化させた時の角度を図12の横軸に-20°≦入射ずれ角度≦20°で示している。縦軸はθrx=-45°におけるRCS(-0.28dBsm)を0dBとして、入射ずれ角度=0°と比較してどの程度RCSが変化しているかを示す。また、-3dBの点線は入射許容角度範囲の規定を示す線である。
【0107】
図12の結果から、入射許容角度範囲は実施例1が6.2°、比較例1が4.2°であった。設置容易性を確認した結果、実施例1ではリフレクトアレイが45cm動いても式(1)を満たす受信角度の方向では受信電力の変化が-3dB以内だったのに対し、比較例1では-3dBより大きく変化した。また、受信安定性を確認した結果、実施例1では入射許容角度範囲が5.5°より大きい範囲で受信電力が安定しているのに対し、比較例1では入射許容角度範囲が5.5°以下の範囲で受信電力が安定しなかった。
【0108】
(実施例2)
素子パターン1およびグランド層3に厚み0.018mmの銅を、誘電体層2に厚み0.764mmのガラス/フッ素樹脂の複合材料を用いた基本構成のリフレクトアレイ6を構成した。ただし、銅の導電率は5.8×10^7siemens/mとし、誘電体層2の比誘電率の実部は2.6、tanδは0.0025とした。
【0109】
動作周波数を28GHzとし、狙いの反射特性(目的とする反射特性)をθix=-50°、θrx=0°、θiy=θry=0°に設定し、式(3)を使用して反射制御領域5のx軸方向のサイズLxを13.977mmに決定した。
【0110】
反射制御領域5の分割数を3とし、単位セルのx軸方向およびy軸方向のサイズは4.659mmとした。素子パターンの形状は、xy平面において、2つの方形パッチが直交したクロスパッチとした。ここで、反射制御領域5内の各素子パターンにおいては素子長及び素子幅が異なり、同じ素子パターン内においてはx軸方向とy軸方向の素子長と素子幅が同じとし、具体的には素子長はlx1=ly1、lx2=ly2、lx3=ly3とし、素子幅はwx1=wy1、wx2=wy2、wx3=wy3とした。
【0111】
素子幅wと素子長lそれぞれに対する単位セルの反射位相を、Ansys製の有限要素法解析ソフトウェア(HFSS)を用いて解析した。素子幅wまたは素子長lが変化するにつれて反射位相が変化することを確認した。
【0112】
次に、前記で得られた単位セルの反射位相の解析結果を踏まえ、、式(9)のインピーダンス分布に従うよう各単位セルにおける素子長lを決定した。素子長lはそれぞれlx1=ly1=3.790mm、lx2=ly2=2.775mm、lx3=ly3=2.065mm、素子幅はそれぞれwx1=wy1=2.303mm、wx2=wy2=2.217mm、wx3=wy3=2.024mmとした。
【0113】
リフレクトアレイ6は、反射制御領域をx軸方向およびy軸方向に8個×6個で配置しxy平面におけるサイズは111.816mm×27.954mmとした。y軸と平行の偏波をθix=-50゜、θrx=0゜でリフレクトアレイ6に照射した際の反射特性について、HFSSを用いて解析した。
【0114】
入射許容角度範囲を把握するために、-70°≦θix≦-30°の範囲で2°間隔ずつ変化させた場合についても同様に解析を行った。
【0115】
図13は、実施例2において得られたリフレクトアレイ6の解析結果である。ただし、図13の横軸は反射角度θrx、縦軸はRCSとした。実施例2のリフレクトアレイ6では、θix=-50゜で入射した電磁波が所望のθrx=0゜方向に反射し、そのRCSは-1.82dBsmであった。
【0116】
(比較例2)
入射角度θixと反射角度θrx以外実施例2に記載のリフレクトアレイと同様であるリフレクトアレイを用意した。入射角度θixと反射角度θrxはそれぞれθix=0°、θrx=-50°とした。リフレクトアレイ6の反射特性をHFSSを使用して解析した。
【0117】
入射許容角度範囲を把握するために、-20°≦θix≦20°の範囲で2°間隔ずつ変化させた場合についても同様に解析を行った。
【0118】
図14は、比較例2において得られたリフレクトアレイ6の解析結果である。実施例2のリフレクトアレイ6では、θix=0゜で入射した電磁波が所望のθrx=-50゜方向に反射し、そのRCSは-1.89dBsmであった。
【0119】
図15は、実施例2と比較例2それぞれの入射角度を変化させた時における特定の反射角度θrxで受信できる電力変化量の比較結果である。
【0120】
図15の結果から、入射許容角度範囲は実施例2が7.4°、比較例2が4.5°であった。設置容易性を確認した結果、実施例2ではリフレクトアレイが45cm動いても式(1)を満たす受信角度の方向では受信電力の変化が-3dB以内だったのに対し、比較例2では-3dBより大きく変化した。また、受信安定性を確認した結果、実施例2では入射許容角度範囲が5.5°より大きい範囲で受信電力が安定しているのに対し、比較例2では入射許容角度範囲が5.5°以下の範囲で受信電力が安定しなかった。
【0121】
(実施例3)
素子パターン1およびグランド層3に厚み0.018mmの銅を、誘電体層2に厚み0.764mmのガラス/フッ素樹脂の複合材料を用いた基本構成のリフレクトアレイ6を構成した。ただし、銅の導電率は5.8×10^7siemens/mとし、誘電体層2の比誘電率の実部は2.6、tanδは0.0025とした。
【0122】
動作周波数を28GHzとし、狙いの反射特性(目的とする反射特性)をθix=-60°、θrx=0°、θiy=θry=0°に設定し、式(3)を使用して反射制御領域5のx軸方向のサイズLxを12.363mmに決定した。
【0123】
反射制御領域5の分割数を3とし、単位セルのx軸方向およびy軸方向のサイズは4.121mmとした。素子パターンの形状は、xy平面において、2つの方形パッチが直交したクロスパッチとした。ここで、反射制御領域5内の各素子パターンにおいては素子長及び素子幅が異なり、同じ素子パターン内においてはx軸方向とy軸方向の素子長と素子幅が同じとし、具体的には素子長はlx1=ly1、lx2=ly2、lx3=ly3とし、素子幅はwx1=wy1、wx2=wy2、wx3=wy3とした。
【0124】
素子幅wと素子長lそれぞれに対する単位セルの反射位相を、Ansys製の有限要素法解析ソフトウェア(HFSS)を用いて解析した。素子幅wまたは素子長lが変化するにつれて反射位相が変化することを確認した。
【0125】
次に、前記で得られた単位セルの反射位相の解析結果を踏まえ、、式(9)のインピーダンス分布に従うよう各単位セルにおける素子長lを決定した。素子長lはそれぞれlx1=ly1=2.051mm、lx2=ly2=3.614mm、lx3=ly3=2.815mm、素子幅はそれぞれwx1=wy1=1.427mm、wx2=wy2=1.521mm、wx3=wy3=1.699mmとした。
【0126】
リフレクトアレイ6は、反射制御領域をx軸方向およびy軸方向に8個×6個で配置しxy平面におけるサイズは98.904mm×24.726mmとした。y軸と平行の偏波をθix=-60゜、θrx=0゜でリフレクトアレイ6に照射した際の反射特性について、HFSSを用いて解析した。
【0127】
入射許容角度範囲を把握するために、-80°≦θix≦-40°の範囲で2°間隔ずつ変化させた場合についても同様に解析を行った。
【0128】
図16は、実施例3において得られたリフレクトアレイ6の解析結果である。ただし、図16の横軸は反射角度θrx、縦軸はRCSとした。実施例3のリフレクトアレイ6では、θix=-60゜で入射した電磁波が所望のθrx=0゜方向に反射し、そのRCSは-6.14dBsmであった。
【0129】
(比較例3)
入射角度θixと反射角度θrx以外実施例3に記載のリフレクトアレイと同様であるリフレクトアレイを用意した。入射角度θixと反射角度θrxはそれぞれθix=0°、θrx=-60°とした。リフレクトアレイ6の反射特性をHFSSを使用して解析した。
【0130】
入射許容角度範囲を把握するために、-20°≦θix≦20°の範囲で2°間隔ずつ変化させた場合についても同様に解析を行った。
【0131】
図16は、比較例3において得られたリフレクトアレイ6の解析結果である。実施例3のリフレクトアレイ6では、θix=0゜で入射した電磁波が所望のθrx=-60゜方向に反射し、そのRCSは-6.22dBsmであった。
【0132】
図17は、実施例3と比較例3それぞれの入射角度を変化させた時における特定の反射角度θrxで受信できる電力変化量の比較結果である。
【0133】
図18の結果から、入射許容角度範囲は実施例3が10.8°、比較例3が5.1°であった。設置容易性を確認した結果、実施例3ではリフレクトアレイが45cm動いても式(1)を満たす受信角度の方向では受信電力の変化が-3dB以内だったのに対し、比較例3では-3dBより大きく変化した。また、受信安定性を確認した結果、実施例3では入射許容角度範囲が5.5°より大きい範囲で受信電力が安定しているのに対し、比較例3では入射許容角度範囲が5.5°以下の範囲で受信電力が安定しなかった。
【0134】
(実施例4)
素子パターン1およびグランド層3に厚み0.018mmの銅を、誘電体層2に厚み0.764mmのガラス/フッ素樹脂の複合材料を用いた基本構成のリフレクトアレイ6を構成した。ただし、銅の導電率は5.8×10^7siemens/mとし、誘電体層2の比誘電率の実部は2.6、tanδは0.0025とした。
【0135】
動作周波数を28GHzとし、狙いの反射特性(目的とする反射特性)をθix=-70°、θrx=0°、θiy=θry=0°に設定し、式(3)を使用して反射制御領域5のx軸方向のサイズLxを11.394mmに決定した。
【0136】
反射制御領域5の分割数を3とし、単位セルのx軸方向およびy軸方向のサイズは3.798mmとした。素子パターンの形状は、xy平面において、2つの方形パッチが直交したクロスパッチとした。ここで、反射制御領域5内の各素子パターンにおいては素子長及び素子幅が異なり、同じ素子パターン内においてはx軸方向とy軸方向の素子長と素子幅が同じとし、具体的には素子長はlx1=ly1、lx2=ly2、lx3=ly3とし、素子幅はwx1=wy1、wx2=wy2、wx3=wy3とした。
【0137】
素子幅wと素子長lそれぞれに対する単位セルの反射位相を、Ansys製の有限要素法解析ソフトウェア(HFSS)を用いて解析した。素子幅wまたは素子長lが変化するにつれて反射位相が変化することを確認した。
【0138】
次に、前記で得られた単位セルの反射位相の解析結果を踏まえ、、式(9)のインピーダンス分布に従うよう各単位セルにおける素子長lを決定した。素子長lはそれぞれlx1=ly1=2.353mm、lx2=ly2=3.308mm、lx3=ly3=2.786mm、素子幅はそれぞれwx1=wy1=1.500mm、wx2=wy2=1.500mm、wx3=wy3=1.500mmとした。
【0139】
リフレクトアレイ6は、反射制御領域をx軸方向およびy軸方向に8個×6個で配置しxy平面におけるサイズは91.152mm×22.788mmとした。y軸と平行の偏波をθix=-70゜、θrx=0゜でリフレクトアレイ6に照射した際の反射特性について、HFSSを用いて解析した。
【0140】
入射許容角度範囲を把握するために、-90°≦θix≦-50°の範囲で2°間隔ずつ変化させた場合についても同様に解析を行った。
【0141】
図19は、実施例4において得られたリフレクトアレイ6の解析結果である。ただし、図19の横軸は反射角度θrx、縦軸はRCSとした。実施例4のリフレクトアレイ6では、θix=-70゜で入射した電磁波が所望のθrx=0゜方向に反射し、そのRCSは-15.56dBsmであった。
【0142】
(比較例4)
入射角度θixと反射角度θrx以外実施例4に記載のリフレクトアレイと同様であるリフレクトアレイを用意した。入射角度θixと反射角度θrxはそれぞれθix=0°、θrx=-70°とした。リフレクトアレイ6の反射特性をHFSSを使用して解析した。
【0143】
入射許容角度範囲を把握するために、-20°≦θix≦20°の範囲で2°間隔ずつ変化させた場合についても同様に解析を行った。
【0144】
図20は、比較例4において得られたリフレクトアレイ6の解析結果である。実施例4のリフレクトアレイ6では、θix=0゜で入射した電磁波が所望のθrx=-70゜方向に反射し、そのRCSは-15.56dBsmであった。
【0145】
図21は、実施例4と比較例4それぞれの入射角度を変化させた時における特定の反射角度θrxで受信できる電力変化量の比較結果である。
【0146】
図21の結果から、入射許容角度範囲は実施例4が15.3°、比較例4が5.5°であった。設置容易性を確認した結果、実施例4ではリフレクトアレイが45cm動いても式(1)を満たす受信角度の方向では受信電力の変化が-3dB以内だったのに対し、比較例4では-3dBより大きく変化した。また、受信安定性を確認した結果、実施例4では入射許容角度範囲が5.5°より大きい範囲で受信電力が安定しているのに対し、比較例4では入射許容角度範囲が5.5°以下の範囲で受信電力が安定しなかった。
【0147】
実施例1-4、比較例1-4の結果から、式(2)を満たす範囲において、大きな入射許容角度範囲になることが分かった。図22に実施例の場合、式(1)を満たす入射角度の絶対値と入射許容角度範囲の関係図、比較例の場合、式(1)を満たす反射角度の絶対値と入射許容角度範囲の関係図を示す。図22の結果から、本実施例において、入射許容角度範囲は|θi|が大きくなるにつれて入射許容角度範囲が大きくなることが分かった。
【0148】
実施例5-7及び比較例5-7を用いて、周波数による依存性を確認する。
(実施例5)
素子パターン1およびグランド層3に厚み0.018mmの銅を、誘電体層2に厚み1.564mmのガラス/エポキシ樹脂の複合材料を用いた基本構成のリフレクトアレイ6を構成した。ただし、銅の導電率は5.8×10^7siemens/mとし、誘電体層2の比誘電率の実部は4.5、tanδは0.014とした。
【0149】
動作周波数を4.85GHzとし、狙いの反射特性(目的とする反射特性)をθix=-70°、θrx=0°、θiy=θry=0°に設定し、式(3)を使用して反射制御領域5のx軸方向のサイズLxを65.780mmに決定した。
【0150】
反射制御領域5の分割数を4とし、単位セルのx軸方向およびy軸方向のサイズは16.445mmとした。素子パターンの形状は、xy平面において、2つの方形パッチが直交したクロスパッチとした。ここで、反射制御領域5内の各素子パターンにおいては素子長及び素子幅が異なり、同じ素子パターン内においてはx軸方向とy軸方向の素子長と素子幅が同じとし、具体的には素子長はlx1=ly1、lx2=ly2、lx3=ly3、lx4=ly4とし、素子幅はwx1=wy1、wx2=wy2、wx3=wy3、wx4=wy4とした。
【0151】
素子幅wと素子長lそれぞれに対する単位セルの反射位相を、Ansys製の有限要素法解析ソフトウェア(HFSS)を用いて解析した。素子幅wまたは素子長lが変化するにつれて反射位相が変化することを確認した。
【0152】
次に、前記で得られた単位セルの反射位相の解析結果を踏まえ、、式(9)のインピーダンス分布に従うよう各単位セルにおける素子長lを決定した。素子長lはそれぞれlx1=ly1=14.000mm、lx2=ly2=14.000mm、lx3=ly3=14.000mm、lx4=ly4=14.000mm素子幅はそれぞれwx1=wy1=8.303mm、wx2=wy2=5.887mm、wx3=wy3=11.538mm、wx4=wy4=9.400mmとした。
【0153】
リフレクトアレイ6は、反射制御領域をx軸方向およびy軸方向に8個×6個で配置しxy平面におけるサイズは206.240mm×38.670mmとした。y軸と平行の偏波をθix=-70゜、θrx=0゜でリフレクトアレイ6に照射した際の反射特性について、HFSSを用いて解析した。
【0154】
入射許容角度範囲を把握するために、-90°≦θix≦-50°の範囲で2°間隔ずつ変化させた場合についても同様に解析を行った。
【0155】
図23は、実施例5において得られたリフレクトアレイ6の解析結果である。ただし、図23の横軸は反射角度θrx、縦軸はRCSとした。実施例5のリフレクトアレイ6では、θix=-70゜で入射した電磁波が所望のθrx=0゜方向に反射し、そのRCSは2.13dBsmであった。
【0156】
(比較例5)
入射角度θixと反射角度θrx以外実施例5に記載のリフレクトアレイと同様であるリフレクトアレイを用意した。入射角度θixと反射角度θrxはそれぞれθix=0°、θrx=-70°とした。リフレクトアレイ6の反射特性をHFSSを使用して解析した。
【0157】
入射許容角度範囲を把握するために、-20°≦θix≦20°の範囲で2°間隔ずつ変化させた場合についても同様に解析を行った。
【0158】
図24は、比較例5において得られたリフレクトアレイ6の解析結果である。実施例5のリフレクトアレイ6では、θix=0゜で入射した電磁波が所望のθrx=-70゜方向に反射し、そのRCSは2.07dBsmであった。
【0159】
図25は、実施例5と比較例5それぞれの入射角度を変化させた時における特定の反射角度θrxで受信できる電力変化量の比較結果である。
【0160】
図25の結果から、入射許容角度範囲は実施例5が15.4°、比較例5が5.5°であった。設置容易性を確認した結果、実施例5ではリフレクトアレイが45cm動いても式(1)を満たす受信角度の方向では受信電力の変化が-3dB以内だったのに対し、比較例5では-3dBより大きく変化した。また、受信安定性を確認した結果、実施例5では入射許容角度範囲が5.5°より大きい範囲で受信電力が安定しているのに対し、比較例5では入射許容角度範囲が5.5°以下の範囲で受信電力が安定しなかった。
【0161】
(実施例6)
素子パターン1およびグランド層3に厚み0.018mmの銅を、誘電体層2に厚み0.200mmのフッ素樹脂の材料を用いた基本構成のリフレクトアレイ6を構成した。ただし、銅の導電率は5.8×10^7siemens/mとし、誘電体層2の比誘電率の実部は2.06、tanδは0.0007とした。
【0162】
動作周波数を60GHzとし、狙いの反射特性(目的とする反射特性)をθix=-45°、θrx=0°、θiy=θry=0°に設定し、式(3)を使用して反射制御領域5のx軸方向のサイズLxを7.065mmに決定した。
【0163】
反射制御領域5の分割数を3とし、単位セルのx軸方向およびy軸方向のサイズは2.355mmとした。素子パターンの形状は、xy平面において、2つの方形パッチが直交したクロスパッチとした。ここで、反射制御領域5内の各素子パターンにおいては素子長及び素子幅が異なり、同じ素子パターン内においてはx軸方向とy軸方向の素子長と素子幅が同じとし、具体的には素子長はlx1=ly1、lx2=ly2、lx3=ly3とし、素子幅はwx1=wy1、wx2=wy2、wx3=wy3とした。
【0164】
素子幅wと素子長lそれぞれに対する単位セルの反射位相を、Ansys製の有限要素法解析ソフトウェア(HFSS)を用いて解析した。素子幅wまたは素子長lが変化するにつれて反射位相が変化することを確認した。
【0165】
次に、前記で得られた単位セルの反射位相の解析結果を踏まえ、、式(9)のインピーダンス分布に従うよう各単位セルにおける素子長lを決定した。素子長lはそれぞれlx1=ly1=1.700mm、lx2=ly2=1.700mm、lx3=ly3=1.700mm、lx4=ly4=14.000mm素子幅はそれぞれwx1=wy1=1.362mm、wx2=wy2=1.741mm、wx3=wy3=1.538mmとした。
【0166】
リフレクトアレイ6は、反射制御領域をx軸方向およびy軸方向に8個×6個で配置しxy平面におけるサイズは62.184mm×15.546mmとした。y軸と平行の偏波をθix=-45゜、θrx=0゜でリフレクトアレイ6に照射した際の反射特性について、HFSSを用いて解析した。
【0167】
入射許容角度範囲を把握するために、-65°≦θix≦-25°の範囲で2°間隔ずつ変化させた場合についても同様に解析を行った。
【0168】
図26は、実施例6において得られたリフレクトアレイ6の解析結果である。ただし、図26の横軸は反射角度θrx、縦軸はRCSとした。実施例6のリフレクトアレイ6では、θix=-45゜で入射した電磁波が所望のθrx=0゜方向に反射し、そのRCSは-6.86dBsmであった。
【0169】
(比較例6)
入射角度θixと反射角度θrx以外実施例6に記載のリフレクトアレイと同様であるリフレクトアレイを用意した。入射角度θixと反射角度θrxはそれぞれθix=0°、θrx=-45°とした。リフレクトアレイ6の反射特性をHFSSを使用して解析した。
【0170】
入射許容角度範囲を把握するために、-20°≦θix≦20°の範囲で2°間隔ずつ変化させた場合についても同様に解析を行った。
【0171】
図27は、比較例6において得られたリフレクトアレイ6の解析結果である。比較例6のリフレクトアレイ6では、θix=0゜で入射した電磁波が所望のθrx=-45゜方向に反射し、そのRCSは-6.94dBsmであった。
【0172】
図28は、実施例6と比較例6それぞれの入射角度を変化させた時における特定の反射角度θrxで受信できる電力変化量の比較結果である。
【0173】
図28の結果から、入射許容角度範囲は実施例6が6.1°、比較例6が4.2°であった。設置容易性を確認した結果、実施例6ではリフレクトアレイが45cm動いても式(1)を満たす受信角度の方向では受信電力の変化が-3dB以内だったのに対し、比較例6では-3dBより大きく変化した。また、受信安定性を確認した結果、実施例6では入射許容角度範囲が5.5°より大きい範囲で受信電力が安定しているのに対し、比較例6では入射許容角度範囲が5.5°以下の範囲で受信電力が安定しなかった。
【0174】
(実施例7)
素子パターン1およびグランド層3に厚み0.018mmの銅を、誘電体層2に厚み0.200mmのフッ素樹脂の材料を用いた基本構成のリフレクトアレイ6を構成した。ただし、銅の導電率は5.8×10^7siemens/mとし、誘電体層2の比誘電率の実部は2.06、tanδは0.0007とした。
【0175】
動作周波数を60GHzとし、狙いの反射特性(目的とする反射特性)をθix=-70°、θrx=0°、θiy=θry=0°に設定し、式(3)を使用して反射制御領域5のx軸方向のサイズLxを5.316mmに決定した。
【0176】
反射制御領域5の分割数を3とし、単位セルのx軸方向およびy軸方向のサイズは1.772mmとした。素子パターンの形状は、xy平面において、2つの方形パッチが直交したクロスパッチとした。ここで、反射制御領域5内の各素子パターンにおいては素子長及び素子幅が異なり、同じ素子パターン内においてはx軸方向とy軸方向の素子長と素子幅が同じとし、具体的には素子長はlx1=ly1、lx2=ly2、lx3=ly3とし、素子幅はwx1=wy1、wx2=wy2、wx3=wy3とした。
【0177】
素子幅wと素子長lそれぞれに対する単位セルの反射位相を、Ansys製の有限要素法解析ソフトウェア(HFSS)を用いて解析した。素子幅wまたは素子長lが変化するにつれて反射位相が変化することを確認した。
【0178】
次に、前記で得られた単位セルの反射位相の解析結果を踏まえ、、式(9)のインピーダンス分布に従うよう各単位セルにおける素子長lを決定した。素子長lはそれぞれlx1=ly1=1.310mm、lx2=ly2=1.570mm、lx3=ly3=1.459mm、素子幅はそれぞれwx1=wy1=1.100mm、wx2=wy2=1.100mm、wx3=wy3=1.100mmとした。
【0179】
リフレクトアレイ6は、反射制御領域をx軸方向およびy軸方向に8個×6個で配置しxy平面におけるサイズは42.528mm×10.632mmとした。y軸と平行の偏波をθix=-70゜、θrx=0゜でリフレクトアレイ6に照射した際の反射特性について、HFSSを用いて解析した。
【0180】
入射許容角度範囲を把握するために、-90°≦θix≦-50°の範囲で2°間隔ずつ変化させた場合についても同様に解析を行った。
【0181】
図29は、実施例7において得られたリフレクトアレイ6の解析結果である。ただし、図29の横軸は反射角度θrx、縦軸はRCSとした。実施例7のリフレクトアレイ6では、θix=-70゜で入射した電磁波が所望のθrx=0゜方向に反射し、そのRCSは-8.84dBsmであった。
【0182】
(比較例7)
入射角度θixと反射角度θrx以外実施例7に記載のリフレクトアレイと同様であるリフレクトアレイを用意した。入射角度θixと反射角度θrxはそれぞれθix=0°、θrx=-70°とした。リフレクトアレイ6の反射特性をHFSSを使用して解析した。
【0183】
入射許容角度範囲を把握するために、-20°≦θix≦20°の範囲で2°間隔ずつ変化させた場合についても同様に解析を行った。
【0184】
図30は、比較例7において得られたリフレクトアレイ6の解析結果である。比較例7のリフレクトアレイ6では、θix=0゜で入射した電磁波が所望のθrx=-70゜方向に反射し、そのRCSは-8.89dBsmであった。
【0185】
図31は、実施例7と比較例7それぞれの入射角度を変化させた時における特定の反射角度θrxで受信できる電力変化量の比較結果である。
【0186】
図31の結果から、入射許容角度範囲は実施例7が15.1°、比較例7が5.4°であった。設置容易性を確認した結果、実施例7ではリフレクトアレイが45cm動いても式(1)を満たす受信角度の方向では受信電力の変化が-3dB以内だったのに対し、比較例7では-3dBより大きく変化した。また、受信安定性を確認した結果、実施例7では入射許容角度範囲が5.5°より大きい範囲で受信電力が安定しているのに対し、比較例7では入射許容角度範囲が5.5°以下の範囲で受信電力が安定しなかった。
【0187】
実施例1(比較例1)と実施例6(比較例6)、及び実施例4(比較例4)と実施例5(比較例5)、実施例7(比較例7)との比較から、周波数によって入射許容角度範囲に大きな違いは無いことが分かった。
【0188】
実施例8と比較例8を用いて、反射角度による影響を確認する。
(実施例8)
素子パターン1およびグランド層3に厚み0.018mmの銅を、誘電体層2に厚み0.764mmのガラス/フッ素樹脂の複合材料を用いた基本構成のリフレクトアレイ6を構成した。ただし、銅の導電率は5.8×10^7siemens/mとし、誘電体層2の比誘電率の実部は2.6、tanδは0.0025とした。
【0189】
動作周波数を28GHzとし、狙いの反射特性(目的とする反射特性)をθix=70°、θrx=―30°、θiy=θry=0°に設定し、式(3)を使用して反射制御領域5のx軸方向のサイズLxを24.348mmに決定した。
【0190】
反射制御領域5の分割数を6とし、単位セルのx軸方向およびy軸方向のサイズは4.058mmとした。素子パターンの形状は、xy平面において、2つの方形パッチが直交したクロスパッチとした。ここで、反射制御領域5内の各素子パターンにおいては素子長及び素子幅が異なり、同じ素子パターン内においてはx軸方向とy軸方向の素子長と素子幅が同じとし、具体的には素子長はlx1=ly1、lx2=ly2、lx3=ly3、lx4=ly4、lx5=ly5、lx6=ly6とし、素子幅はwx1=wy1、wx2=wy2、wx3=wy3、wx4=wy4、wx5=wy5、wx6=wy6とした。
【0191】
素子幅wと素子長lそれぞれに対する単位セルの反射位相を、Ansys製の有限要素法解析ソフトウェア(HFSS)を用いて解析した。素子幅wまたは素子長lが変化するにつれて反射位相が変化することを確認した。
【0192】
次に、前記で得られた単位セルの反射位相の解析結果を踏まえ、、式(9)のインピーダンス分布に従うよう各単位セルにおける素子長lを決定した。素子長lはそれぞれlx1=ly1=2.897mm、lx2=ly2=3.079mm、lx3=ly3=3.621mm、lx4=ly4=1.885mm、lx5=ly5=2.530mm、lx6=ly6=2.743mm、素子幅はそれぞれwx1=wy1=1.500mm、wx2=wy2=1.500mm、wx3=wy3=1.500mm、wx1=wy1=1.500mm、wx2=wy2=1.500mm、wx3=wy3=1.500mmとした。
【0193】
リフレクトアレイ6は、反射制御領域をx軸方向およびy軸方向に8個×6個で配置しxy平面におけるサイズは194.784mm×146.008mmとした。y軸と平行の偏波をθix=70゜、θrx=-30゜でリフレクトアレイ6に照射した際の反射特性について、HFSSを用いて解析した。
【0194】
入射許容角度範囲を把握するために、50°≦θix≦90°の範囲で2°間隔ずつ変化させた場合についても同様に解析を行った。
【0195】
図32は、実施例8において得られたリフレクトアレイ6の解析結果である。ただし、図32の横軸は反射角度θrx、縦軸はRCSとした。実施例8のリフレクトアレイ6では、θix=70゜で入射した電磁波が所望のθrx=-30゜方向に反射し、そのRCSは-1.19dBsmであった。
【0196】
(比較例8)
入射角度θixと反射角度θrx以外実施例8に記載のリフレクトアレイと同様であるリフレクトアレイを用意した。入射角度θixと反射角度θrxはそれぞれθix=-30°、θrx=70°とした。リフレクトアレイ6の反射特性をHFSSを使用して解析した。
【0197】
入射許容角度範囲を把握するために、-20°≦θix≦20°の範囲で2°間隔ずつ変化させた場合についても同様に解析を行った。
【0198】
図33は、比較例8において得られたリフレクトアレイ6の解析結果である。比較例8のリフレクトアレイ6では、θix=-30゜で入射した電磁波が所望のθrx=70゜方向に反射し、そのRCSはー1.86dBsmであった。
【0199】
図34は、実施例8と比較例8それぞれの入射角度を変化させた時における特定の反射角度θrxで受信できる電力変化量の比較結果である。
【0200】
図34の結果から、入射許容角度範囲は実施例8が8.3°、比較例8が2.5°であった。設置容易性を確認した結果、実施例8ではリフレクトアレイが45cm動いても式(1)を満たす受信角度の方向では受信電力の変化が-3dB以内だったのに対し、比較例8では-3dBより大きく変化した。また、受信安定性を確認した結果、実施例8では入射許容角度範囲が5.5°より大きい範囲で受信電力が安定しているのに対し、比較例8では入射許容角度範囲が5.5°以下の範囲で受信電力が安定しなかった。
【0201】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。本発明の内容となり得る態様を以下に述べる、ただしこれに限られるものではない。
(態様1)
電磁波を反射させるリフレクトアレイであって、前記リフレクトアレイは、位相を制御する反射制御領域を有し、前記反射制御領域は、長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、下記の式(1)を満たし、
前記入射角度|θi|は45°以上70°以下の範囲であり、かつ前記入射角度θiと前記反射角度θrは下記の式(2)の関係を満たし、入射許容角度範囲Δθi が5.5°より大きく16°以下の範囲である、リフレクトアレイ。
【数15】
【数16】
(態様2)
前記リフレクトアレイは誘電体層の片面に素子があり、誘電体層の素子とは反対側の面にグランド層を有している態様1に記載のリフレクトアレイ。
(態様3)
前記素子がクロスパッチ構造である態様2に記載のリフレクトアレイ。
(態様4)
前記リフレクトアレイは3GHz~60GHzの電磁波を反射させる態様1から3のいずれか一つに記載のリフレクトアレイ。
(態様5)
発信器から一次放射された電磁波が前記リフレクトアレイに当たり、前記リフレクトアレイから二次放射された電磁波を受信器に届ける電磁波反射システムであって、前記リフレクトアレイが態様1~4のいずれか一つに記載のリフレクトアレイである、電磁波反射システム。
(態様6)
電磁波を反射させるリフレクトアレイの設置方法であって、
前記リフレクトアレイは、位相を制御する反射制御領域を有し、
前記反射制御領域は、長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、下記の式(1)を満たし、
前記入射角度θiは45°以上70°以下の範囲であり、かつ前記入射角度θiと前記反射角度θrは下記の式(2)の関係を満たすように、前記リフレクトアレイを支持体に固定する、前記リフレクトアレイの設置方法。
【数17】
【数18】
(態様7)
態様6に記載の前記リフレクトアレイは、態様1から4のいずれか一つに記載のリフレクトアレイである、リフレクトアレイの設置方法。
【符号の説明】
【0202】
1、1―1、1d―1d、1e―1e、1a―1c、1 ―1 、1
―1 素子パターン、
2 誘電体層、
3 グランド層、
4、4-4、4a―4c、4 -4 、4 -4 単位セル、
5 反射制御領域、
6、6―6 リフレクトアレイ、
200、201 壁、
300 発信器、
400 受信器、
500 遮蔽物、
501 ビル(遮蔽物)、
600 支持体
601 支持体位置調整治具
【要約】      (修正有)
【課題】広い角度範囲から入射する電磁波を特定の反射角度に反射させることのできるリフレクトアレイ、電磁波反射システムおよびリフレクトアレイの設置方法を提供する。
【解決手段】電磁波を反射させるリフレクトアレイ61、62であって、リフレクトアレイは、位相を制御する反射制御領域を有し、反射制御領域は長辺の長さをL、反射する電磁波の波長をλ、入射角度をθi、反射角度をθrとした時に、下式(1)を満たし、入射角度|θi|は45°以上70°以下の範囲であり、かつ、入射角度θiと反射角度θrは下式(2)の関係を満たし、入射許容角度範囲Δθiが5.5°より大きく16°以下の範囲である、リフレクトアレイである。


【選択図】図8
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34