(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】流体殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20240723BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20240723BHJP
【FI】
A61L2/10
C02F1/32
(21)【出願番号】P 2023164650
(22)【出願日】2023-09-27
(62)【分割の表示】P 2020127300の分割
【原出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099597
【氏名又は名称】角田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】青 孝次
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩史
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-034020(JP,A)
【文献】特開2019-154885(JP,A)
【文献】特開2018-161247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/10
C02F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌対象である流体を流すための流路、前記流体を前記流路に流入させるための流入口、及び前記流体を前記流路から流出させるための流出口を有する流路管と、
前記流路内に紫外光を照射する紫外光照射モジュールと、
を備え、
前記流路管が、筒状の第1の部分と、前記第1の部分の一方の端部に連結された第2の部分とを有し、
前記第1の部分が、前記紫外光照射モジュールから発せられる紫外光を反射するフッ素樹脂からなり、
前記第2の部分が、前記紫外光照射モジュールを取り付けるための取り付け部と、前記流入口又は前記流出口とを有し、
前記流路の内壁となる前記第2の部分の内面に沿って、前記紫外光照射モジュールから発せられる紫外光を反射するフッ素樹脂からなる反射材が設けられ、
前記反射材が、前記流体が通過する孔を有する、
流体殺菌装置。
【請求項2】
殺菌対象である流体を流すための流路、前記流体を前記流路に流入させるための流入口、及び前記流体を前記流路から流出させるための流出口を有する流路管と、
前記流路内に紫外光を照射する紫外光照射モジュールと、
を備え、
前記流路管が、筒状の第1の部分と、前記第1の部分の一方の端部に連結された第2の部分とを有し、
前記第1の部分が、前記紫外光照射モジュールから発せられる紫外光を反射するフッ素樹脂からなり、
前記第2の部分が、前記紫外光照射モジュールを取り付けるための取り付け部と、前記流入口又は前記流出口とを有し、
前記流路の内壁となる前記第2の部分の内面に沿って、前記紫外光照射モジュールから発せられる紫外光を反射するフッ素樹脂からなる反射材が設けられ、
前記反射材が、前記第2の部分内の前記紫外光照射モジュールと前記第1の部分の間の円柱形の領域に設置された、
流体殺菌装置。
【請求項3】
前記孔の面積が、前記流入口及び前記流出口の面積よりも大きい、
請求項1に記載の流体殺菌装置。
【請求項4】
前記第2の部分が前記流出口を有し、
前記第1の部分の前記第2の部分側の端部の反対側の端部が、その中心から離れた位置に前記流体が通過する孔を有する、前記流入口から流入した前記流体を拡散させる平板状の拡散板により覆われ、
前記拡散板が、前記紫外光照射モジュールから発せられる紫外光を反射するフッ素樹脂からなる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外光を照射することにより水等の流体を殺菌する流体殺菌装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の流体殺菌装置は、殺菌対象の流体が軸方向に流れる流路と、流体が流入する流入口と、流体が流出する流出口とを有する筐体を備えており、筐体の軸方向の一端部に流入口が設けられ、筐体の他端部に紫外光を発する光源モジュール装置が取り付けられている。
【0003】
また、光源モジュール装置の発する紫外光の波長は240~380nmであり、内面に紫外光が照射される筐体の材料としてステンレスが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような流体殺菌装置においては、内面に紫外光が照射される筐体の材料には、フッ素樹脂などの紫外光に対する耐性や反射率に優れる材料を用いることが求められる。
【0006】
しかしながら、フッ素樹脂は高価な材料である。特に、殺菌効果の高いUV-Cと呼ばれる波長域(280nm未満)の紫外光に対する反射率に優れるフッ素樹脂であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は、溶融粘度が非常に高いために通常の溶融加工ができず、目的の形状に加工するためには、PTFEパウダーを圧縮、焼成することにより製造されるブロックから切削する必要があり、材料費や加工費が非常に高い。
【0007】
このため、特許文献1に記載されているような流体殺菌装置において、筐体の材料を単純にフッ素樹脂に置き換えると、筐体の紫外光の反射率が高くなるために殺菌効率が高くなるものの、製造コストが非常に高くなってしまう。
【0008】
本発明の目的は、紫外光を照射することにより水等の流体を殺菌する流体殺菌装置であって、内部に流体が流れる流路管の材料にフッ素樹脂が用いられつつも、製造コストが抑えられた流体殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記の流体殺菌装置を提供する。
【0010】
[1]殺菌対象である流体を流すための流路、前記流体を前記流路に流入させるための流入口、及び前記流体を前記流路から流出させるための流出口を有する流路管と、前記流路内に紫外光を照射する紫外光照射モジュールと、を備え、前記流路管が、筒状の第1の部分と、前記第1の部分の一方の端部に連結された第2の部分とを有し、前記第1の部分が、前記紫外光照射モジュールから発せられる紫外光を反射するフッ素樹脂からなり、前記第2の部分が、前記紫外光照射モジュールを取り付けるための取り付け部と、前記流入口又は前記流出口とを有し、前記流路の内壁となる前記第2の部分の内面に沿って、前記紫外光照射モジュールから発せられる紫外光を反射するフッ素樹脂からなる反射材が設けられ、前記反射材が、前記流体が通過する孔を有する、流体殺菌装置。
[2]殺菌対象である流体を流すための流路、前記流体を前記流路に流入させるための流入口、及び前記流体を前記流路から流出させるための流出口を有する流路管と、前記流路内に紫外光を照射する紫外光照射モジュールと、を備え、前記流路管が、筒状の第1の部分と、前記第1の部分の一方の端部に連結された第2の部分とを有し、前記第1の部分が、前記紫外光照射モジュールから発せられる紫外光を反射するフッ素樹脂からなり、前記第2の部分が、前記紫外光照射モジュールを取り付けるための取り付け部と、前記流入口又は前記流出口とを有し、前記流路の内壁となる前記第2の部分の内面に沿って、前記紫外光照射モジュールから発せられる紫外光を反射するフッ素樹脂からなる反射材が設けられ、前記反射材が、前記第2の部分内の前記紫外光照射モジュールと前記第1の部分の間の円柱形の領域に設置された、流体殺菌装置。
[3]前記孔の面積が、前記流入口及び前記流出口の面積よりも大きい、上記[1]に記載の流体殺菌装置。
[4]前記第2の部分が前記流出口を有し、前記第1の部分の前記第2の部分側の端部の反対側の端部が、その中心から離れた位置に前記流体が通過する孔を有する、前記流入口から流入した前記流体を拡散させる平板状の拡散板により覆われ、前記拡散板が、前記紫外光照射モジュールから発せられる紫外光を反射するフッ素樹脂からなる、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の流体殺菌装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紫外光を照射することにより水等の流体を殺菌する流体殺菌装置であって、内部に流体が流れる流路管の材料にフッ素樹脂が用いられつつも、製造コストが抑えられた流体殺菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る流体殺菌装置の斜視図である。
【
図2】
図2(a)、(b)は、それぞれ流体殺菌装置の長手方向から見た側面図、長手方向に直交する方向から見た側面図である。
【
図3】
図3は、
図2(a)に示される切断線A-Aに沿って切断された流体殺菌装置の断面図である。
【
図4】
図4(a)は、長方形のシートからなる反射材の平面図であり、
図4(b)は、環状に丸めた状態の長方形のシートからなる反射材の斜視図である。
【
図5】
図5(a)、(b)は、拡散板の一例の平面図及び断面図である。
【
図6】
図6(a)、(b)は、拡散板の他の一例の平面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施の形態〕
(流体殺菌装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る流体殺菌装置1の斜視図である。
図2(a)、(b)は、それぞれ流体殺菌装置1の長手方向から見た側面図、長手方向に直交する方向から見た側面図である。
図3は、
図2(a)に示される切断線A-Aに沿って切断された流体殺菌装置1の断面図である。
【0014】
流体殺菌装置1は、流体(主に水などの液体)の殺菌及び菌の繁殖の抑制を行うための装置であり、殺菌対象である流体を流すための流路101、流体を流路101に流入させるための流入口102、流体を流路101から流出させるための流出口103を有する流路管10と、流路101内に紫外光を照射する紫外光照射モジュール14とを備える。
【0015】
流路管10は、筒状の第1の部分11と、第1の部分11の一方の端部に連結された、流出口103を有する第2の部分12と、第1の部分12の他方の端部に連結された、流入口102を有する第3の部分13とを有する。ここで、第1の部分11、第2の部分12、及び第3の部分13の内面、主に第1の部分11及び第2の部分12の内面が流路101の内壁を構成する。
【0016】
第1の部分11は、紫外光照射モジュール14から発せられる紫外光を反射するフッ素樹脂からなる。このため、流路101の内壁を構成する第1の部分11の内面で、紫外光照射モジュール14から発せられる光を効率的に反射することができる。ここで、第1の部分11の材料として用いられるフッ素樹脂は、PTFE、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)、PVF(ポリフッ化ビニル)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)などの紫外光に対する耐性及び反射率の高いフッ素樹脂であり、通常、白色である。
【0017】
特に、UV-C波長域(280nm未満)の紫外光(以下、UVC光と呼ぶ)に対する反射率に優れるPTFEを第1の部分11の材料として用いることにより、UVC光を発する紫外光照射モジュール14を用いて効果的に殺菌を行うことができる。
【0018】
第1の部分11の形状は、筒状というシンプルな形状であるため、市販されている汎用のフッ素樹脂パイプなどをほぼそのまま用いることができる。また、パイプなどの汎用品の加工工程をより低減するため、第1の部分11の形状は、その内面及び外面に凹凸のない筒状であることが好ましい。
【0019】
第2の部分12は、紫外光照射モジュール14を取り付けるための取り付け部121と、流出口103を有する。また、流路101の内壁となる第2の部分12の内面に沿って、紫外光照射モジュール14から発せられる紫外光を反射するフッ素樹脂からなるシート状の反射材17が設けられている。
【0020】
第2の部分12は、第1の部分11と連結するための開口部123を有し、開口部123の内側に第1の部分11の一端を嵌め込むことにより、第1の部分11と第2の部分12が連結される。ここで、第1の部分11と第2の部分12の界面からの流体の漏れ出しを防ぐため、第1の部分11と第2の部分12の重なり部分にOリング201などのシール部材を用いることが好ましい。
【0021】
紫外光照射モジュール14は、例えば、後述する紫外光照射モジュール14のヒートシンク146及びカバー147を第2の部分12の取り付け部121にネジ148を用いてネジ止めすることにより、第2の部分12に取り付けられる。紫外光照射モジュール14から発せられた光は、取り付け部121に含まれる開口部122を通過して、流路101内の流体に照射される。なお、開口部122は紫外光照射モジュール14によって塞がれており、開口部122から水が漏れ出すことはない。
【0022】
図1~3に示される例では、第2の部分12の流出口103側の開口部124に流出管16が接続されている。流出管16は、開口部124の内側に嵌め込まれて固定され、流出管16の開口部124と反対側の開口部が流出口103として機能する。この場合、第2の部分12と流出管16の界面からの流体の漏れ出しを効果的に防ぐため、流出管16の開口部124に嵌め込まれる部分の周囲にシールテープなどを巻くことが好ましい。
【0023】
反射材17は、例えば、第2の部分12の内面に沿ってフッ素樹脂からなるシートを設置したり、第2の部分12の内面にフッ素樹脂からなる塗料を塗布したりすることにより設けられる。反射材17と第1の部分11の隙間からの紫外光の漏れ出しを防ぐため、反射材17は第1の部分11の端部に隙間なく接していることが好ましい。なお、反射材17は第2の部分12の内面に密着していてもよく、第2の部分12の内面との間に隙間があってもよい。
【0024】
反射材17が、フッ素樹脂からなるシートである場合は、流体が通過する孔171を有する。孔171は、1つであってもいいし、複数の孔の集合体であってもよい。流路管10内での流体の流速の低下や流路管10内の圧力の上昇を抑えるため、孔171の面積(複数の孔の集合体である場合はそれらの合計面積)が、流入口102及び流出口103の面積よりも大きいことが好ましい。
【0025】
反射材17の材料であるフッ素樹脂には、第1の部分11の材料と同様の、紫外光照射モジュール14から発せられる光を反射するフッ素樹脂を用いることができる。特に、PTFEを反射材17の材料として用いることにより、UVC光を発する紫外光照射モジュール14を用いて効果的に殺菌を行うことができる。
【0026】
また、反射材17が第2の部分12への向かう紫外光の多くを遮るため、第2の部分12の紫外光暴露による劣化を抑えることができる。このため、第2の部分12が紫外光への耐性を有する必要がなく、第2の部分12の材料の選択の幅が広がる。例えば、第2の部分12の材料としてポリカーボネートを用いることができる。
【0027】
紫外光照射モジュール14から発せられた光を流路101内に効率的に照射させるためには、第2の部分12の紫外光照射モジュール14から発せられた光を取り込む開口部122と、第1の部分11と連結するための開口部123が対向していることが好ましく、この場合、第2の部分12内の反射材17を設置する領域は円柱形になる。このため、長方形のフッ素樹脂からなるシートを第2の部分12の内面に沿って環状に丸めて設置し、反射材17として用いることができる。
【0028】
また、この場合、反射材17と第2の部分12が、第2の部分12に対する反射材17の位置ずれを防ぐ位置ずれ防止構造を有することが好ましい。例えば、反射材17が位置ずれ防止用のノッチ(切り欠き)172を有することが好ましい。このノッチ172を第2の部分12の内面に設けられたリブ(突起)125に嵌め込むことにより、第2の部分12に対する反射材17の位置ずれを防ぐことができる。なお、第2の部分12のリブ125は反射材17に覆われていないため、紫外光が当たり難い紫外光照射モジュール14側に設けられることが好ましい。
【0029】
図4(a)は、長方形のシートからなる反射材17の平面図であり、
図4(b)は、環状に丸めた状態の長方形のシートからなる反射材17の斜視図である。
図4(a)、(b)に示される例では、孔171は4つの孔の集合体からなる。
【0030】
なお、紫外光照射モジュール14から発せられる光には、通常、紫外光の他に可視光も含まれている。このため、第2の部分12の材料に、可視光を透過する材料、例えば、透明なポリカーボネートを用いることにより、反射材17の孔171から漏れて、第2の部分12を透過した可視光を視認して、紫外光照射モジュール14の動作を確認することができる。
【0031】
第3の部分13は、第1の部分11の第3の部分13側の端部を覆うような形状を有し、流入口102を有する。
【0032】
第3の部分13は、第1の部分11と連結するための開口部131を有し、開口部131の内側に第1の部分11の一端を嵌め込むことにより、第1の部分11と第3の部分13が連結される。ここで、第1の部分11と第3の部分13の界面からの流体の漏れ出しを防ぐため、第1の部分11と第3の部分13の重なり部分にOリング202などのシール部材を用いることが好ましい。
【0033】
図1~3に示される例では、第3の部分13の流入口102側の開口部132に流入管15が接続されている。流入管15は、開口部132の内側に嵌め込まれて固定され、流入管15の開口部132と反対側の開口部が流入口102として機能する。この場合、第3の部分13と流入管15の界面からの流体の漏れ出しを効果的に防ぐため、流入管15の開口部132に嵌め込まれる部分の周囲にシールテープなどを巻くことが好ましい。
【0034】
なお、流路管10における流入口102と流出口103の機能は逆であってもよい。すなわち、第2の部分12の流出口103から流路101に流体を流入させ、第3の部分13の流入口102から流体を流出させてもよい。
【0035】
流入口102から流路101に流体を流入させ、流出口103から流体を流出させる場合、すなわち流入口102を流入口として機能させ、流出口103を流出口として機能させる場合には、第1の部分11の第3の部分13側の端部(第2の部分12側の端部の反対側の端部)、すなわち第1の部分11の流体の流入口が、平板状の拡散板18により覆われていることが好ましい。
【0036】
図5(a)、(b)は、拡散板18の一例の平面図及び断面図である。
図5(b)に示される拡散板18の断面は、
図5(a)に示される切断線B-Bで切断したときの断面である。
【0037】
拡散板18は、その中心から離れた位置に流体が通過する孔181を有し、流入口102から流入した流体を拡散させる。孔181は、拡散板18の中心には設けられておらず、拡散板18の外周部の近く、又は外周部に接する位置に設けられているため、孔181を通過した流体は、第1の部分11の内壁近くに流れ込む。
【0038】
一般に、流路を流れる流体の流速は流路の内壁に近いほど摩擦抵抗により小さくなり、流路の中心における流速との差が大きくなるところ、拡散板18を用いて流体を第1の部分11の内壁近くに流入させることにより、第1の部分11の内壁近くの流速を相対的に大きくし、第1の部分11の中心近傍と内壁近傍の流速差を小さくすることができる。これによって、流路101内の流体の滞留時間が平均化されるため、流体の流路の違いによる紫外光の照射時間のばらつきが小さくなり、効率的に殺菌を行うことができる。
【0039】
第1の部分11の内壁近くになるべく均等に流体を流し込むため、複数の孔181が拡散板18の円周方向に沿って等間隔で配置されていることが好ましい。また、流路管10内での流体の流速の低下や流路管10内の圧力の上昇を抑えるため、孔181の面積(複数の孔181が設けられている場合はそれらの合計面積)が、流入口102及び流出口103の面積よりも大きいことが好ましい。
【0040】
殺菌効率を高めるため、拡散板18は、第1の部分11の材料と同様の、紫外光照射モジュール14から発せられる光を反射するフッ素樹脂からなることが好ましい。特に、PTFEを拡散板18の材料として用いることにより、UVC光を発する紫外光照射モジュール14を用いて効果的に殺菌を行うことができる。
【0041】
また、拡散板18を用いる場合、拡散板18が第3の部分13へ向かう紫外光の多くを遮るため、第3の部分13の紫外光暴露による劣化を抑えることができる。このため、第3の部分13が紫外光への耐性を有する必要がなく、第3の部分13の材料の選択の幅が広がる。この場合、例えば、第3の部分13の材料としてポリカーボネートを用いることができる。
【0042】
拡散板18の流体殺菌装置1への固定方法は特に限定されない。例えば、
図3に示されるように、拡散板18を第1の部分11と第3の部分13の間に挟んで固定することができる。ここで、
図5(a)の点線の外側の部分が、第1の部分11と第3の部分13に挟まれる部分である。
【0043】
図6(a)、(b)は、拡散板18の他の一例の平面図及び断面図である。
図6(b)に示される拡散板18の断面は、
図6(a)に示される切断線C-Cで切断したときの断面である。
【0044】
図6(a)、(b)に示されるように、拡散板18の孔181は、第3の部分13側から第1の部分11側に近づくにしたがって外周側に広がるような傾きを有していてもよい。
【0045】
なお、平板状の拡散板18の代わりに立体的形状を有する拡散部材を用いてもよいが、平板状の方が構造的にシンプルであるため、高価なフッ素樹脂、特にブロックからの切削が必要なPTFEを材料に用いる場合の製造コストを抑えることができる。
【0046】
ケース19は、第1の部分11の長さ方向に平行な板状部分191と、第3の部分13に被せられる板状部分192を有し、板状部分192により第3の部分13を第1の部分11の方へ押し付けた状態でケース19を第2の部分12に固定することにより、第1の部分11、第2の部分12、第3の部分13を固定することができる。すなわち、ケース19を用いて、第1の部分11、第2の部分12、第3の部分13の3つの部品を固定することができる。
【0047】
図1~
図3に示される例では、ケース19は第2の部分12のケース19側の面に沿った板状部分193を有し、板状部分193を第2の部分12にネジ194を用いてネジ止めすることにより、ケース19を第2の部分12に固定する。ケース19は、例えば、ステンレスからなる。
【0048】
紫外光照射モジュール14は、上述のように、第2の部分12に取り付けられて、流路101を流れる流体に紫外光を照射する。紫外光照射モジュール14の発する紫外光は、例えば、UV-Aと呼ばれる波長域(400~315nm)の紫外光、UV-Bと呼ばれる波長域(315~280nm)の紫外光や、上述のUVC光であり、このうち最も殺菌効果の高いUVC光であることが好ましい。
【0049】
紫外光照射モジュール14の構成は特に限定されないが、
図1~
図3に示される例では、紫外光を発する発光素子141と、発光素子141が実装された配線基板142と、配線基板142の配線に接続された、外部から発光素子141に電力などを供給するためのケーブル143と、発光素子141を囲むリフレクター144と、リフレクター144上に発光素子141の上方を覆うように設置された防水シート145と、配線基板142の裏側に設置されたヒートシンク146と、これらの各部品を覆って固定するカバー147とを備える。発光素子141が実装される領域は密閉されて防水性が確保されており、発光素子141から発せられた光は防水シート145を透過して取り出される。
【0050】
発光素子141は、例えば、紫外光を発するLEDチップ(Light Emitting Diode)やLDチップ(Laser Diode)と、配光を調節するためのレンズを備える。
【0051】
第2の部分12の取り付け部121と紫外光照射モジュール14のカバー147の間にはOリング203などのシール部材が用いられ、第2の部分12と紫外光照射モジュール14の界面からの流体の漏れ出しを防いでいる。
【0052】
(実施の形態の効果)
上記実施の形態に係る流体殺菌装置1によれば、流路管10の第1の部分11として汎用のフッ素樹脂からなるパイプなどを用いることができ、また、第2の部分12にはフッ素樹脂からなる反射材17を用いることにより、流路101の内壁の紫外光の反射率を大きくして優れた殺菌効率を確保しながらも、製造コストを抑えることができる。特に、フッ素樹脂としてPTFEを用いる場合には、PTFEブロックからの切削加工を必要としないため、製造コストを低減する効果がより大きくなる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0054】
また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0055】
1 流体殺菌装置
10 流路管
101 流路
102 流入口
103 流出口
11 第1の部分
12 第2の部分
121 取り付け部
13 第3の部分
14 紫外光照射モジュール
15 流入管
16 流出管
17 反射材
171 孔
18 拡散板
181 孔
19 ケース