(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B62D 33/06 20060101AFI20240723BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B62D33/06 D
B62D25/08 K
(21)【出願番号】P 2023197998
(22)【出願日】2023-11-22
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 遼
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-153620(JP,U)
【文献】特開2021-054151(JP,A)
【文献】特開2023-110701(JP,A)
【文献】特開2017-144884(JP,A)
【文献】特開2013-018470(JP,A)
【文献】米国特許第06276748(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 33/06
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の車幅方向両側に位置している一対のサイドパネルを有するキャブと、
前記車室の天井を形成しているルーフと、
前記車室の背面の中央側に前記車室の下端側から上端側に亘って形成された開口部と、
前記サイドパネルに設けられ、シートベルトを支持している支持部と、
を備え、
前記キャブは、前記車室の背面側に位置し前記サイドパネルと連結しているリアパネルを有し、
前記リアパネルは、前記ルーフの上板部まで延出して
おり、
前記リアパネルは、前記一対のサイドパネルのうちの左サイドパネルと連結している第1リアパネルと、右サイドパネルと連結している第2リアパネルとであり、
前記第1リアパネルと前記第2リアパネルは、前記開口部の両側に位置しており、
前記ルーフは、前記上板部の前記車幅方向の両端縁から下方へ延びている一対の側板部を更に有し、
前記第1リアパネルは、前記側板部の一方に連結しており、前記第2リアパネルは、前記側板部の他方に連結している、
車両。
【請求項2】
前記リアパネルの上端は、前記上板部に連結している、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第1リアパネル及び前記第2リアパネルの前記車幅方向の長さは、前記開口部の前記車幅方向の長さより小さい、
請求項
1に記載の車両。
【請求項4】
前記キャブは、前記車室の下方を区画するフロアパネルを更に有し、
前記リアパネルは、前記フロアパネルに連結されている、
請求項1に記載の車両。
【請求項5】
前記リアパネルの上下方向の下端部から上端部に亘って、前記車幅方向で折れ曲がった補強部が形成されている、
請求項1に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブを有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1のハイルーフの車両では、乗員が車室と荷室の間で行き来できるように、車室の後方に開口部が設けられている。上記の開口部を形成するために、車室の後方を区画するキャブのリアパネルとルーフの後板部とを連結した構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、キャブのサイドパネルの上端部には、乗員を拘束するシートベルトを支持する支持部が設けられており、例えば車両が他の車両と衝突する際に、シートベルトを介して支持部に大きな荷重が作用する。そして、支持部に大きな荷重が作用すると、当該荷重によってサイドパネルが変形するおそれがある。
サイドパネルに連結されたリアパネルで、上記の荷重を支えることを検討しうるが、特許文献1の車両においてはリアパネルに大きな開口部が形成されているため、リアパネル等が荷重を適切に支えることが困難である。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、サイドパネルの支持部に作用する荷重を適切に支えられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様においては、車室の車幅方向両側に位置している一対のサイドパネルを有するキャブと、前記車室の天井を形成しているルーフと、前記車室の背面の中央側に前記車室の下端側から上端側に亘って形成された開口部と、前記サイドパネルに設けられ、シートベルトを支持している支持部と、を備え、前記キャブは、前記車室の背面側に位置し前記サイドパネルと連結しているリアパネルを有し、前記リアパネルは、前記ルーフの上板部まで延出している、車両を提供する。
【0007】
また、前記リアパネルの上端は、前記上板部に連結していることとしてもよい。
また、前記リアパネルは、前記一対のサイドパネルのうちの左サイドパネルと連結している第1リアパネルと、右サイドパネルと連結している第2リアパネルとであり、前記第1リアパネルと前記第2リアパネルは、前記開口部の両側に位置していることとしてもよい。
【0008】
また、前記第1リアパネル及び前記第2リアパネルの前記車幅方向の長さは、前記開口部の前記車幅方向の長さより小さいこととしてもよい。
【0009】
また、前記ルーフは、前記上板部の前記車幅方向の両端縁から下方へ延びている一対の側板部を更に有し、前記第1リアパネルは、前記側板部の一方に連結しており、前記第2リアパネルは、前記側板部の他方に連結していることとしてもよい。
【0010】
また、前記キャブは、前記車室の下方を区画するフロアパネルを更に有し、前記リアパネルは、前記フロアパネルに連結されていることとしてもよい。
【0011】
また、前記リアパネルの上下方向の下端部から上端部に亘って、前記車幅方向で折れ曲がった補強部が形成されていることとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サイドパネルの支持部に作用する荷重を適切に支えられるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】車両1の内部構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<車両の構成>
図1は、車両1の内部構成を説明するための模式図である。
車両1は、ここではフレーム構造のトラックである。車両1は、
図1に示すように、キャブ20と、荷台30と、連結部40とを有する。車両1は、乗員が連結部40を介してキャブ20と荷台30の間でウォークスルー可能な車両である。
【0015】
キャブ20及び荷台30は、車両1の車体フレームにマウントされている。車体フレームは、車両1の前後方向に延びている一対のサイドフレームと、サイドフレームの間に設けられたクロスメンバとを含む。車体フレームの前部には、車両1を走行させる駆動源が取り付けられている。
【0016】
キャブ20は、複数のパネルが接合した略箱状体を成している。キャブ20の内部には、運転手等の乗員が座る車室21が形成されている。キャブ20の上方のルーフ22(
図2参照)は、車室の天井を形成しており、ここではハイルーフとなっている。キャブ20は、駆動源の上方に位置している。キャブ20の背面23側には、乗員がウォークスルーできるようにキャブ開口部24が形成されている。キャブ開口部24は、車室の背面の中央側に車室21の下端側から上端側に亘って形成されている(
図3参照)。なお、キャブ20の詳細構成については、後述する。
【0017】
荷台30は、キャブ20の後方に位置する。荷台30は、箱型に形成されており、内部には荷物が収容される空間が形成されている。荷台30の前面32(キャブ20の背面23に対向する対向面)には、乗員がウォークスルーできるように荷台開口部34が形成されている。
【0018】
連結部40は、キャブ20と荷台30を連結している。連結部40には、乗員等がキャブ20と荷台30の間をウォークスルーできる通路42が形成されている。通路42は、キャブ開口部24と荷台開口部34の間の通路である。なお、連結部40には、通路42を覆うと共にキャブ20と荷台30に連結している幌部材が設けられている。
【0019】
<キャブの構成>
図2~
図4を参照しながら、キャブ20の詳細構成について説明する。
図2は、キャブ20を正面側から見た斜視図である。
図3は、キャブ20を背面側から見た斜視図である。
図4は、キャブ20の背面を示す模式図である。
【0020】
キャブ20は、
図2に示すように、一対のサイドパネル50、52と、フロントパネル54と、フロアパネル56と、ルーフパネル60と、一対のリアパネル70、72を有する。各パネルは、例えば鋼鈑等の高強度材料から成り、プレス成形によって成形されている。また、パネル同士は、例えば溶接によって接合されている。
【0021】
一対のサイドパネル50、52は、キャブ20の車幅方向(
図1のY方向)の両側にそれぞれ設けられ、車室21の左右の側面を形成している。すなわち、サイドパネル50が左サイドパネルであり、サイドパネル52が右サイドパネルである。一対のサイドパネル50、52は、ルーフパネル60に接合されている。一対のサイドパネル50、52には、乗員を拘束するシートベルト80を支持する支持部82が設けられている。
【0022】
シートベルト80は、
図2に示すように帯状に形成されており、車室21に座っている乗員の肩部から腰部にかけて斜めに掛け渡される。シートベルト80の長手方向の一端側はリトラクターに連結されており、シートベルト80の長手方向の他端側はタングを介してバックルと連結可能である。
【0023】
支持部82は、
図2に示すように、サイドパネル50、52の上端部に設けられている。支持部82は、ここでは乗員の肩部の近傍に位置するように設けられたショルダーアンカーである。支持部82は、リトラクターから引き出されたシートベルトをバックルへ向けて折り返して方向転換する。
【0024】
ところで、例えば車両1が他の車両と衝突する際に、乗員が前のめりになることに起因してシートベルト80を介して支持部82に大きな荷重が作用する。そして、支持部82に大きな荷重が作用すると、当該荷重によってサイドパネル50、52が変形するおそれがある。例えば、車両1が他車両と衝突する際に、運転席側のサイドパネル52に設けられた支持部82に荷重が作用すると、当該荷重によってサイドパネル52が倒れるように変形する。これに対して、本実施形態では、詳細は後述するが、当該荷重を支えることができるリアパネル70、72の構成となっている。
【0025】
フロントパネル54は、車室21の前面を形成している。フロントパネル54は、一対のサイドパネル50、52に接合されている。
【0026】
フロアパネル56は、車室21の下方を区画するパネルであり、車室21の床面を形成している。フロアパネル56は、一対のサイドパネル50、52、フロントパネル54及びリアパネル70に接合されている。車両において、フロアパネル56の下方には駆動源が設けられている。
【0027】
ルーフパネル60は、キャブ20のルーフ22を形成している。ルーフパネル60は、天井を高くして車室を広くするハイルーフとなっている。
ルーフパネル60は、
図2に示すように、上板部62と、側板部64、65を有する。
【0028】
上板部62は、ルーフ22の天面及び前面を形成している。上板部62の下端側は、フロントパネル54と接合されている。上板部62の上端側は、リアパネル70、72に接合されている。
【0029】
側板部64、65は、ルーフ22の左右の側面を形成している。側板部64、65は、上板部62に接合されている。側板部64、65は、上板部62の車幅方向の両端縁から下方へ延びている。また、側板部64は、サイドパネル50に接合されており、側板部65は、サイドパネル52に接合されている。
【0030】
一対のリアパネル70、72は、車室21の背面側に位置している。リアパネル70、72は、ルーフパネル60、
図3に示すように、一対のサイドパネル50、52及びフロアパネル56に連結している。具体的には、リアパネル70、72は、溶接にてルーフパネル60、サイドパネル50、52及びフロアパネル56に接合されている。
【0031】
リアパネル70、72は、ルーフ22の上板部62まで延出している。具体的には、リアパネル70、72の上端は、上板部62に連結している。このため、リアパネル70、72は、キャブ20のリアパネルとしての機能と、ルーフ22の後板部としての機能とを有する。別言すれば、キャブ20のリアパネルとルーフ22の後板部が一体となっている。
【0032】
リアパネル70は、左サイドパネルであるサイドパネル50と連結している第1リアパネルであり、リアパネル72は、右サイドパネルであるサイドパネル52と連結している第2リアパネルである。具体的には、
図3に示すように、リアパネル70の下半分はサイドパネル50に接合されており、リアパネル72の下半分はサイドパネル52に接合されている。
【0033】
リアパネル70、72は、
図3に示すように、キャブ開口部24の両側に位置している。すなわち、リアパネル70は、キャブ開口部24から見て左側に位置し、リアパネル72は、キャブ開口部24から見て右側に位置している。
【0034】
リアパネル70、72の車幅方向の長さは、キャブ開口部24の車幅方向の長さより小さい。具体的には、リアパネル70、72の車幅方向の長さは、キャブ開口部24の車幅方向の長さの1/2より小さい。これにより広い面積のキャブ開口部24を形成できるので、乗員はキャブ開口部24をウォークスルーしやすくなる。
【0035】
リアパネル70は、ルーフパネル60の側板部64に連結しており、リアパネル72は、側板部65に連結している。具体的には、リアパネル70の上半分において短手方向の端部が、側板部64に接合されており、リアパネル72の上半分において短手方向の端部が、側板部65に接合されている。
【0036】
上述したようにリアパネル70、72によって、キャブ20のリア側のパネルとルーフ22の後板部を一体化することになり、シートベルト80の支持部82に作用する荷重を、リアパネル70、72を含むキャブ20の他のパネルに伝達しやすくなる。また、リア側のパネルとルーフ22の後板部とを分けた場合よりも、リアパネル70、72の剛性を高めることができるので、シートベルト80の支持部82に作用する荷重をリアパネル70、72が支えやすくなる。この結果、支持部82に作用する荷重によってサイドパネル50、52が倒れるように変形することを抑制できる。
【0037】
キャブ20のリア側のパネルとルーフ22の後板部とを分けた場合には、パネルと後板部の連結部を補強部材で補強する必要があり、またパネルと後板部の連結部にシール部材を設ける水の侵入等を防止する必要がある。これに対して、本実施形態のリアパネル70、72のように一体化した場合には、補強部材及びシール部材を設ける必要がなくなり、部品点数を削減できる。
【0038】
本実施形態では、キャブ20の中央に大きなキャブ開口部24が設けるため、リアパネル70、72を設置するスペースが減るが、リアパネル70、72をルーフ22まで延ばしていることで、リアパネル70、72の剛性を高めやすくなる。このため、キャブ開口部24が設けられるキャブ20において、効果が有効に奏される。
【0039】
リアパネル70、72には、上下方向の下端部から上端部に亘って、補強部85が形成されている。補強部85は、
図4において破線の領域Rで囲んだ部分に形成されている。
図5は、
図4のA-A断面図であり、補強部85の構成を説明するための模式図である。補強部85は、
図5に示すように、車幅方向において折れ曲がった構成となっている。補強部85は、例えば、板金であるリアパネル70、72に対してビード加工を行うことで形成される。このような形状の補強部85が上下方向の下端部から上端部に亘って設けられていることで、リアパネル70、72の剛性がより高まる。この結果、支持部82に作用する荷重によってサイドパネル50、52が変形することをより抑制できる。
【0040】
<本実施形態における効果>
上述した本実施形態の車両1は、車室21の天井を形成しているルーフ22と、車室21の背面の中央側に車室21の下端側から上端側に亘って形成されたキャブ開口部24を有する。また、キャブ20は、車室21の背面側に位置しサイドパネル50、52と連結しているリアパネル70、72を有する。そして、リアパネル70、72は、ルーフ22の上板部62まで延出している。
これにより、キャブ20のリア側のパネルとルーフ22の後板部を一体化することになり、シートベルト80の支持部82に作用する荷重を、リアパネル70、72を介してキャブ20のフレームに伝達しやすくなる。また、リア側のパネルとルーフ22の後板部とを分けた場合よりも、リアパネル70、72の剛性を高めることができるので、シートベルト80の支持部82に作用する荷重をリアパネル70、72が支えやすくなる。この結果、支持部82に作用する荷重によってサイドパネル50、52が倒れるように変形することを抑制できる。
【0041】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0042】
1 車両
20 キャブ
21 車室
22 ルーフ
24 キャブ開口部
50、52 サイドパネル
56 フロアパネル
62 上板部
64、65 側板部
70、72 リアパネル
75 補強部
80 シートベルト
82 支持部
【要約】
【課題】サイドパネルの支持部に作用する荷重を適切に支えられるようにする。
【解決手段】車両1は、車室21の背面の中央側に車室21の下端側から上端側に亘って形成されたキャブ開口部24と、サイドパネル50、52に設けられシートベルトを支持している支持部を備える。キャブ20は、車室21の背面側に位置しサイドパネル50、52と連結しているリアパネル70、72を有する。リアパネル70、72は、ルーフ22の上板部62まで延出している、
【選択図】
図3