(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】経路案内装置、経路案内方法、及び、経路案内プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/36 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
G01C21/36
(21)【出願番号】P 2023515895
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(86)【国際出願番号】 JP2021015885
(87)【国際公開番号】W WO2022224311
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺口 剛仁
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-027441(JP,A)
【文献】特開2020-051925(JP,A)
【文献】特開2008-037167(JP,A)
【文献】特開2006-284195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に、経路を案内する経路案内情報として、経路に関して前記自車両を先導し、または、前記自車両がとるべき進路を示す画像を表示させる経路案内装置であって、
前記自車両と、前記自車両とは異なる車両である他車両と、について走行経路の計画を表す走行計画をそれぞれ取得する走行計画取得部と、
前記自車両の前記走行計画と前記他車両の前記走行計画とを比較する走行計画比較部と、
少なくとも前記自車両の前記走行計画と前記他車両の前記走行計画とが一致しないときに、前記自車両に前記経路案内情報を表示させ、かつ、前記自車両の前記走行計画と前記他車両の前記走行計画とが一致するときに、前記経路案内情報の一部または全部の表示を抑制させる経路案内表示制御部と、
を備える経路案内装置。
【請求項2】
請求項1に記載の経路案内装置であって、
前記経路案内表示制御部は、少なくとも前記自車両の前記走行計画と前記他車両の前記走行計画とが一致しないときに、前記自車両の運転者の視野に、前記経路案内情報を表す仮想画像を表示させる、
経路案内装置。
【請求項3】
請求項2に記載の経路案内装置であって、
前記仮想画像は、前記自車両を先導する車両を表す仮想先導車両の画像である、
経路案内装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の経路案内装置であって、
前記走行計画取得部は、前記自車両が前記他車両を撮影した画像を用いることにより、前記他車両の位置情報、ステアリングランプ、及び、ブレーキランプの少なくとも1つに基づいて、前記他車両の前記走行計画を取得する、
経路案内装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の経路案内装置であって、
前記経路案内表示制御部は、前記経路案内情報として、前記走行計画が一致する前記他車両を、前記自車両を先導する先導車両として特定する先導車両特定情報を表示させる、
経路案内装置。
【請求項6】
請求項5に記載の経路案内装置であって、
前記経路案内表示制御部は、前記先導車両を追従させるための指示を表示させる、
経路案内装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の経路案内装置であって、
前記走行計画比較部は、前記自車両の前記走行計画と、前記他車両の前記走行計画と、の一致度を算出し、
前記走行計画が前記自車両と一致する前記他車両が複数あり、かつ、前記経路案内情報の一部または全部の表示を抑制するときに、前記経路案内表示制御部は、前記走行計画の前記一致度が最も高い前記他車両を前記先導車両とする、
経路案内装置。
【請求項8】
請求項3に記載の経路案内装置であって、
前記仮想画像を表示する表示スペースを検出し、前記表示スペースが不足するときに、前記表示スペースを確保するための運転指示を前記自車両に報知させる表示スペース確保部を備える、
経路案内装置。
【請求項9】
自車両に、経路を案内する経路案内情報として、経路に関して前記自車両を先導し、または、前記自車両がとるべき進路を示す画像を表示させる経路案内装置が実行する経路案内方法であって、
前記経路案内装置が、
前記自車両と、前記自車両とは異なる車両である他車両と、について走行経路の計画を表す走行計画をそれぞれ取得し、
前記自車両の前記走行計画と前記他車両の前記走行計画とを比較し、
少なくとも前記自車両の前記走行計画と前記他車両の前記走行計画とが一致しないときに、前記自車両に前記経路案内情報を表示させ、かつ、
前記自車両の前記走行計画と前記他車両の前記走行計画とが一致するときに、前記経路案内情報の一部または全部の表示を抑制させる、
経路案内方法。
【請求項10】
自車両に、経路を案内する経路案内情報として、経路に関して前記自車両を先導し、または、前記自車両がとるべき進路を示す画像を表示させる経路案内装置としてコンピュータを動作させる経路案内プログラムであって、
前記経路案内プログラムは、
前記自車両と、前記自車両とは異なる車両である他車両と、について走行経路の計画を表す走行計画をそれぞれ取得させ、
前記自車両の前記走行計画と前記他車両の前記走行計画とを比較させ、
少なくとも前記自車両の前記走行計画と前記他車両の前記走行計画とが一致しないときに、前記自車両に前記経路案内情報を表示させ、かつ、
前記自車両の前記走行計画と前記他車両の前記走行計画とが一致するときに、前記経路案内情報の一部または全部の表示を抑制させる、
経路案内プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に経路案内を表示させる経路案内装置、経路案内方法、及び、経路案内プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
JP2019-184356Aには、プロジェクタを用いて、ゴーストカーと称する仮想車両の虚像を現実の風景に重畳表示することによって、経路を案内する運転支援装置が記載されている。
【発明の概要】
【0003】
上記のような経路案内の表示を継続的に行うには、無視できないエネルギーが必要である。したがって、経路案内の必要性に関わらず、上記のような経路案内の表示を継続し続けると、車両等においてエネルギーが無駄に消費されてしまう場合がある。
【0004】
そこで、本発明は、必要性に応じて適切に経路案内の表示を抑制することにより、車両等における無駄なエネルギー消費を抑える経路案内装置、経路案内方法、及び、経路案内プログラムを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、経路案内システムの概略構成を示す説明図である。
【
図2】
図2は、経路案内を受ける車両の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、経路案内装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、経路案内システムの作用を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、経路案内システムで実行される処理のシーケンスチャートである。
【
図6】
図6は、走行計画が一致する他車両がないときの経路案内情報の表示例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、走行計画が一致する他車両があるときの経路案内情報の表示例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の経路案内装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態の作用を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、第3実施形態の作用を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第4実施形態の作用を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第5実施形態の経路案内装置の構成を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、第5実施形態の作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0007】
[第1実施形態]
図1は、経路案内システム100の概略構成を示す説明図である。
図1に示すように、経路案内システム100は、経路案内システム100によって経路の案内を受ける車両(以下、自車両10という)と、自車両10に、経路を案内するための情報(以下、経路案内情報79(
図5参照)という)を表示させる経路案内装置11と、を備える。
【0008】
自車両10は、通信ネットワーク12を介して経路案内装置11と接続する。自車両10は、経路案内システム100で実行される経路案内に必要な各種情報を経路案内装置11に送信する。経路案内に必要な各種情報は、自動的に、または、経路案内装置11の求めに応じて送信される。また、自車両10は、経路案内装置11から経路案内情報79を受信する。受信した経路案内情報79は、自車両10が画像等によって表示し、及び/または、音もしくは音声等を発報することにより、自車両10の運転者13に報知される。自車両10が報知された経路案内情報79は、経路の選択や変更等について、運転者13による自車両10の運転操作を支援する。したがって、運転者13は、報知された経路案内情報79にしたがって自車両10を運転することにより、計画した経路に沿って容易に移動することができる。
【0009】
なお、自車両10が経路案内情報79を報知する形態は任意に設定可能であるが、本実施形態においては、自車両10は、経路案内情報79の一部または全部を、画像等を表示することによって報知する。特に、本実施形態においては、経路案内情報79は、原則として、運転者13の視野83(
図6参照)に、経路に関して自車両10を先導する仮想的な車両(以下、仮想先導車両84(
図6参照)という)を表示することよって報知される。但し、仮想先導車両84の代わりに、自車両10がとるべき進路を示す矢印等の画像を表示させる形態で、経路案内情報79が報知してもよい。また、仮想先導車両84等の画像の代わりに、音もしくは音声を再生させる形態で、経路案内情報79が報知されてもよい。もちろん、経路案内情報79を報知するために、複数種類の画像が表示されてもよく、併せて音声等が再生されてもよい。
【0010】
自車両10は、自身が走行する道路14を走行する他の車両、または、隣接する車線を走行する他の車両等、自車両10の周辺を走行する他の車両(以下、他車両15という)と、直接的または間接的に通信可能である場合がある。すなわち、自車両10は、自車両10とは異なる車両である他車両15といわゆる車車間通信をすることができる。このため、他車両15が自車両10との通信に必要な機器を搭載しているときには、自車両10は、他車両15との通信により、経路案内システム100が行う経路案内に必要な情報及び/またはその他の情報を送受信することができる。例えば、他車両15が対応しているときには、自車両10は、他車両15が走行を予定する経路に係る情報を、他車両15から取得することができる。なお、自車両10の周辺とは、自車両10と直接的もしくは間接的に通信し、または、その他の方法により検出等し得る距離範囲をいう。また、以下では、他車両15が走行を予定する経路に係る情報、すなわち他車両15の走行経路の計画を表す走行計画を、他車両走行計画(図示しない)という。
【0011】
また、自車両10は、自身が走行する道路14等に設けられたロードサイドインフラストラクチャ16と通信可能である。すなわち、自車両10はいわゆる車路間通信が可能でる。このため、自車両10は、必要に応じてロードサイドインフラストラクチャ16と通信することにより、経路案内システム100が行う経路案内に必要な情報及び/またはその他の情報を取得することができる。ロードサイドインフラストラクチャ16は、例えば、自身の位置や交通上の名称等の情報を、自車両10に提供する。ロードサイドインフラストラクチャ16が複数あるときには相互に通信する場合がある。また、ロードサイドインフラストラクチャ16は、他車両15等との通信を中継する通信機として動作する場合がある。
【0012】
この他、自車両10は、歩行者等が所持するスマートフォン等のデバイスと通信することができる。したがって、自車両10は、V2X(Vehicle-to-everything)通信が可能であり、自車両10の周辺にある通信可能なあらゆる物から、経路案内システム100が行う経路案内に必要な情報及び/またはその他の情報を取得することができる。
【0013】
経路案内装置11は、自車両10から取得する情報を用いて、経路案内情報79を作成し、これを自車両10に提供する。本実施形態においては、経路案内装置11は、遠隔地17すなわち自車両10の外に設けられている。また、経路案内装置11は、オペレータ18の操作に応じて経路案内情報79を作成する。すなわち、本実施形態の経路案内システム100においては、自車両10の運転者13は、実質的に、遠隔地17にいるオペレータ18から、リアルタイムに、柔軟かつ適切な経路の案内を受けることができる。本実施形態においては、オペレータ18は、仮想先導車両84を運転することによって、自車両10の経路案内をする。仮想先導車両84の運転とは、自車両10に表示させる仮想先導車両84の自車両10に対する位置、大きさ、及び、向き等を調整する操作を行うことをいう。
【0014】
なお、経路案内装置11は、自車両10に搭載されてもよい。この場合、経路案内装置11は、オペレータ18の操作に依らず、自車両10から取得し得る信号及び情報等を用いた演算(例えばシミュレーション)等によって機械的に経路案内情報79を作成する。
【0015】
[自車両の構成]
図2は、経路案内を受ける車両(自車両10)の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、自車両10は、自車両10及び自車両10の内外の情報を取得するための機器として、位置センサ21、測距センサ22、撮影装置23、及び、収音装置24を備える。
【0016】
位置センサ21は、自車両10の位置を検出する。位置センサ21は、例えば、GPS(Global Positioning System)センサ等である。以下、位置センサ21が検出した自車両10の位置に係るデータを、位置情報76(
図5参照)という。
【0017】
測距センサ22は、自車両10の周辺にある物または人等の位置及び距離を計測する。測距センサ22は、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)スキャナ、ミリ波レーダ、または、超音波センサ等である。自車両10は、測距センサ22を、前方、後方、及び、側方等の任意箇所に1または複数設けられる。本実施形態においては、測距センサ22は、少なくとも他車両15の位置及び距離を検出する。以下、測距センサ22が出力するデータを、測距情報77(
図5参照)という。
【0018】
撮影装置23は、自車両10の車外及び/または車内を撮影する1または複数のカメラによって構成される。本実施形態においては、撮影装置23は、少なくとも、自車両10の車外かつ前方を撮影する前方カメラと、自車両10の車内を撮影する車内カメラと、を含む。前方カメラの撮影範囲は、少なくとも自車両10の走行状態における運転者13の視野の一部または全部を含む。車内カメラの撮影範囲は、例えば運転者13の視線の推移を検出できる程度に、運転者13を含む。以下、前方カメラが撮影した画像及び前方カメラが撮影した画像からなる映像を前方画像72(
図5参照)といい、車内カメラが撮影した画像及び車内カメラが撮影した画像からなる映像を運転者画像73(
図5参照)という。
【0019】
収音装置24は、自車両10の車外及び/または車内の音または音声を収音する1または複数のマイクによって構成される。本実施形態においては、収音装置24は、少なくとも、自車両10の車外で発生した音または音声を収音する車外マイクと、自車両10の運転者13及び/または同乗者(以下、運転者13等という)の音声を収音する車内マイクと、を含む。車外マイクは、例えば、他車両15その他の車両等が発する走行音や警報音、道路14やその他の設備が発する音もしくは音声、または、自車両10の周囲にいる人が発する音声等を収音する。以下、車外マイクが収音した音または音声のデータを、車外音声74(
図5参照)という。車内マイクは、例えば、運転者13等が発する音声、並びに、その他の車内音を収音する。運転者13等は、自車両10及び/または経路案内装置11の動作を指示するための指令を音声で入力する場合がある。したがって、車内マイクは、指令として機能しない通常の会話または独り言に加え、音声指令を収音する場合がある。本実施形態においては、車内マイクは、少なくとも運転者13が発する音声を収音する。以下、車内マイクが収音した音及び/または音声のデータを、車内音声75(
図5参照)という。
【0020】
上記の他、自車両10は、運転者13に対するインタフェースとして、情報入力装置25、情報出力装置26、及び、運転操作装置27を備える。
【0021】
情報入力装置25は、運転者13等の操作の用に供され、自車両10及び/または経路案内装置11に対して各種の情報を入力するために用いられるユーザインタフェースである。情報入力装置25は、例えば、タッチパネルや機械的な操作ボタン等によって構成され、インストルメントパネルまたはステアリングホイール等に設けられる。また、運転者13等が所有するスマートフォンその他のデバイスのうち、自車両10と直接的または間接的に通信可能なデバイス(以下、ユーザデバイスという)が情報入力装置25を構成する場合がある。本実施形態においては、情報入力装置25は、少なくとも、自車両10が走行を予定する経路に係る情報を設定し、または変更するために用いられる。以下、自車両10が走行を予定する経路に係る情報、すなわち自車両10の走行経路の計画を表す走行計画を、自車両走行計画71(
図5参照)という。また、情報入力装置25は、経路案内システム100を起動するために用いられる。
【0022】
情報出力装置26は、画像(静止画の他、動画を含む)や音声等によって、運転者13等に対して経路案内その他の情報を報知するために用いられるユーザインタフェースである。情報出力装置26は、例えば、ディスプレイ28及びスピーカ29を含む。ディスプレイ28は、画像によって経路案内等の情報の一部または全部を報知する。ディスプレイ28は、例えば、インストルメントパネルやステアリングホイール等に設けられ、ユーザデバイスがディスプレイ28を構成する場合がある。また、情報入力装置25がタッチパネル等で構成されるときには、情報入力装置25と情報出力装置26は実質的に一体的に構成される。特に、本実施形態においては、ディスプレイ28は、HUD(ヘッドアップディスプレイ)である。HUDは、フロントガラス等を介して間接的に、または、運転者13の瞳に直接的に、画像を投影することにより、運転者13の視野83に、現実の風景等に重畳して経路案内等の情報を表す画像を虚像で表示する。本実施形態の経路案内システム100が経路案内情報79として表示させる仮想先導車両84は、HUDであるディスプレイ28が表示する虚像である。なお、ディスプレイ28は、HUDのように、いわゆるAR(拡張現実)を実現するAR表示装置によって構成される他、VR(仮想現実)を実現するVR表示装置、または、MR(複合現実)を実現するMR表示装置によって構成されてもよい。スピーカ29は、音または音声によって経路案内等の情報の一部または全部を報知する。
【0023】
運転操作装置27は、自車両10の運転操作に用いられる基本的なユーザインタフェースであり、例えば、ステアリングホイール、アクセルペダル、及び、ブレーキペダル等である。
【0024】
また、自車両10は、通信装置31、車両コントローラ32、及び、記憶装置33を備える。
【0025】
通信装置31は、車両コントローラ32による制御の下で、通信ネットワーク12を介して経路案内装置11、他車両15、及び、ロードサイドインフラストラクチャ16等と接続し、経路案内等に係る各種情報を送受信する装置間インタフェースである。例えば、自車両10は、通信装置31を用いて経路案内装置11と通信することにより、経路案内装置11の求めに応じて、前方画像72、運転者画像73、車外音声74、車内音声75、位置情報76、及び、測距情報77を適宜送信する。また、自車両10は、通信装置31を用いて、経路案内装置11から経路案内情報79を受信する。自車両10は、通信装置31を用いて、他車両15または他車両15が接続するサーバ等にアクセスすることにより、他車両走行計画等を取得する場合がある。この他、自車両10は、通信装置31を用いて、ロードサイドインフラストラクチャ16等に接続することにより、地図データ36を取得し、または、更新する場合がある。
【0026】
車両コントローラ32は、自車両10の各部を統括的に制御する制御装置である。車両コントローラ32は、1または複数のコンピュータによって構成され、例えば、中央演算装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)等を備える。また、車両コントローラ32は、経路探索に係る各種の制御を必要に応じて実行するようにプログラムされている。
【0027】
本実施形態においては、車両コントローラ32は、少なくとも経路案内に係る制御を実行する経路案内制御部35として機能する。経路案内に係る制御とは、例えば、経路設定受付処理、及び、経路案内開始処理、経路案内情報報知処理等である。経路設定受付処理は、情報入力装置25によって自車両走行計画71の設定を受け付ける処理である。経路案内開始処理は、経路案内システム100による経路案内を開始させる処理である。経路案内情報報知処理は、情報出力装置26によって経路案内情報79を運転者13等に報知する処理である。
【0028】
記憶装置33は、1または複数のストレージデバイスまたはメモリによって構成される。すなわち、記憶装置33は、例えば、RAM、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、または、これらの組み合わせである。記憶装置33は、自車両10の制御に用いるデータ及びプログラム等を一時的または永続的に記憶する。本実施形態においては、記憶装置33は、地図データ36及び車両制御プログラム37等を記憶する。地図データ36は、車両コントローラ32が自車両10の制御のために使用する他、経路案内装置11からの求めに応じて、経路案内装置11に提供される場合がある。車両コントローラ32は、車両制御プログラム37にしたがって動作することにより、経路案内制御部35等として機能する。
【0029】
[経路案内装置の構成]
図3は、経路案内装置11の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、経路案内装置11は、通信装置41、入出力装置42、記憶装置43、及び、経路案内コントローラ44を備える。
【0030】
通信装置41は、経路案内コントローラ44による制御の下で、通信ネットワーク12を介して自車両10と接続し、経路案内に係る各種情報を送受信する装置間インタフェースである。例えば、経路案内装置11は、通信装置41によって自車両10と接続し、経路案内開始処理によって自車両10から送信される経路案内の開始指示を受ける。これにより、自車両10に対する経路案内が開始される。また、経路案内装置11は、通信装置41によって、経路案内情報79を自車両10に送信する。
【0031】
入出力装置42は、オペレータ18に対するインタフェースであり、情報出力装置46と操作装置47とを備える。
【0032】
情報出力装置46は、経路案内装置11の出力インタフェースであり、例えば、画像等を表示するディスプレイ、及び、音や音声を再生するスピーカ等によって構成される。情報出力装置46は、前方画像72、運転者画像73、及び/または、これらを用いて生成した画像をディスプレイに表示する。前方画像72を用いて生成した画像とは、例えば、前方画像72の一部を拡大及び変形等の加工をする画像処理を施すことによって生成される画像である。本実施形態においては、前方画像72を用いて仮想先導車両84を視点とする画像(以下、先導車両視点画像という)が生成され、情報出力装置46はこれを表示する。また、情報出力装置46は、車外音声74、車内音声75、または、これらを用いて生成した音声等をスピーカによって再生する。これらにより、オペレータ18は、自車両10の前方に現実にあるかのように自然に仮想先導車両84を運転して、後続する自車両10を先導することができる。
【0033】
操作装置47は、経路案内装置11の入力インタフェースであり、オペレータ18によって操作される。本実施形態においては、オペレータ18は、操作装置47を用いて仮想先導車両84を運転する。このため、操作装置47は、例えば、ステアリングホイール、アクセルペダル、及び、ブレーキペダル等を模した装置、または、方向キーやボタン等で構成される家庭用ゲーム機の操作盤である。
【0034】
記憶装置43は、1または複数のストレージデバイスまたはメモリによって構成される。すなわち、記憶装置43は、例えば、RAM、ROM、HDD、SSD、または、これらの組み合わせである。記憶装置43は、経路案内コントローラ44の制御及び経路案内に用いるデータ及びプログラム等を一時的または永続的に記憶する。本実施形態においては、記憶装置43は、経路案内プログラム48及び案内用データ49を記憶する。経路案内コントローラ44は、経路案内プログラム48にしたがって動作し、各種機能を実現することにより、自車両10に対して経路案内をする。案内用データ49は、経路案内情報79として自車両10に報知させる画像または音声等である。本実施形態においては、案内用データ49は、仮想先導車両84等の画像データ、及び、所定のメッセージを含む音声データ等である。本実施形態においては、画像データのうち、仮想先導車両84の画像のように、虚像の表示によって運転者13の視野83に仮想的に表示する画像データを、仮想画像という。また、案内用データ49は、車種や形状等が異なる複数種類の仮想先導車両84の画像データを含む。案内用データ49は、例えば、ウェブを通じて適宜取得または更新可能である。
【0035】
経路案内コントローラ44は、経路案内装置11の各部を統括的に制御することにより、自車両10に対してリアルタイムに経路案内情報79を提供する制御装置である。経路案内コントローラ44は、1または複数のコンピュータによって構成され、例えば、中央演算装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)等を備える。また、経路案内コントローラ44は、経路探索に係る各種の制御を必要に応じて実行するようにプログラムされている。
【0036】
本実施形態においては、経路案内コントローラ44は、自車両10に対する経路案内を実現するために、情報取得部51、入出力制御部52、経路案内情報作成部53、他車両検出部54、走行計画比較部55、及び、経路案内表示制御部56として機能する。
【0037】
情報取得部51は、経路案内のために、自車両10から経路案内に必要な各種の情報を取得する。より具体的には、情報取得部51は、画像取得部61、音声取得部62、位置情報取得部63、測距情報取得部64、走行計画取得部65を備える。
【0038】
画像取得部61は、必要に応じて、自車両10から前方画像72及び運転者画像73を適宜取得する。音声取得部62は、必要に応じて、自車両10から車外音声74及び車内音声75を適宜取得する。位置情報取得部63は、必要に応じて、自車両10から位置情報76を適宜取得する。測距情報取得部64は、必要に応じて、自車両10から測距情報77を適宜取得する。
【0039】
走行計画取得部65は、走行計画取得部65は、自車両10と他車両15とについて走行計画をそれぞれ取得する。すなわち、走行計画取得部65は、自車両10の走行計画である自車両走行計画71と、他車両15の走行計画である他車両走行計画を取得する。自車両走行計画71は、自車両10において予め設定されたものが取得される。
【0040】
自車両10等との通信によって他車両15において設定された他車両走行計画を取得できるときには、走行計画取得部65はその方法によって他車両走行計画を取得する。一方、自車両10等との通信によって他車両15において設定された他車両走行計画を取得できないときには、走行計画取得部65は他車両走行計画を推定することにより、これを取得する。すなわち、走行計画取得部65は、必要に応じて、例えば前方画像72及び/または測距情報77等を用いて、他車両走行計画を推定する他車両走行計画推定処理を実行する。例えば、測距情報77に基づく他車両15の位置情報の推移、前方画像72に写る他車両15のステアリングランプ(方向指示灯)の点灯もしくは点滅、前方画像72に写る他車両15のブレーキランプの点灯等のシグナルによれば、他車両15の走行経路に変更が生じること、及び、変更後の走行経路の方向等が判別可能である。したがって、本実施形態においては、走行計画取得部65は、他車両15の位置情報、他車両15のステアリングランプ、他車両15のブレーキランプ、のうち少なくとも1つに基づいて、他車両15の走行計画を推定する。
【0041】
入出力制御部52は、情報出力装置46への出力、及び、操作装置47からの入力を制御する。例えば、入出力制御部52は、前方画像72に画像処理を施すことによって先導車両視点画像を生成し、これを情報出力装置46に表示させる。入出力制御部52は、車外音声74等を情報出力装置46で再生させる。また、入出力制御部52は、操作装置47による入力操作を受け付け、その入力操作の内容に基づいて自車両10に表示させるべき経路案内情報79の内容を更新する。本実施形態においては、入出力制御部52は、操作装置47から、仮想先導車両84の運転操作に係る入力信号(以下、運転操作信号78(
図5参照)という)入力を受けて、自車両10に表示させるべき仮想先導車両84の位置、大きさ、及び、向き等を随時更新する。
【0042】
経路案内情報作成部53は、操作装置47による入力操作に基づいて、経路案内情報79を作成する。本実施形態においては、経路案内情報作成部53は、仮想先導車両84の運転操作信号78に基づいて、自車両10に表示させるべき仮想先導車両84の位置、大きさ、及び、向き等を表す経路案内情報79を逐次作成する。
【0043】
なお、経路案内情報作成部53は、案内用データ49が含む複数の仮想先導車両84の画像データから、適宜適切な仮想先導車両84の画像データを選択して、選択した仮想先導車両84の画像データを含む経路案内情報79を作成する。
【0044】
他車両検出部54は、前方画像72及び/または測距情報77に基づいて、自車両10の周囲にある他車両15を検出する。本実施形態においては、他車両検出部54が検出する他車両15は、自車両10の先導車両となり得る車両である。したがって、他車両検出部54は、少なくとも自車両10の前方を走行する他車両15を検出する。なお、走行計画取得部65は、他車両検出部54によって検出された自車両10の先導車両となり得る他車両15について、他車両走行計画を取得する。
【0045】
走行計画比較部55は、自車両10の走行計画である自車両走行計画71と、他車両15の走行計画である他車両走行計画と、を比較する。この走行計画の比較は、自車両走行計画71と他車両走行計画の一致度を算出することにより行われる。比較の時点(地点)から、自車両走行計画71が表す自車両10の走行経路と、他車両走行計画が表す他車両15の走行経路と、の重複区間が長いほど、値が大きい一致度が算出される。なお、自車両走行計画71と他車両走行計画の比較において、自車両走行計画71と他車両走行計画が「一致する」とは、予め定める閾値以上に一致度が大きいことをいう。したがって、自車両走行計画71と他車両走行計画が「一致しない」とは、これらの間の一致度がこの閾値よりも小さいことをいう。
【0046】
経路案内表示制御部56は、自車両走行計画71と他車両走行計画の比較結果に応じて、自車両10における経路案内情報79の表示態様を制御する。経路案内表示制御部56は、自車両10に送信する経路案内情報79に表示形態を指定する信号を包含させ、または、付帯させることにより、自車両10における経路案内情報79の表示態様を制御する。
【0047】
より具体的には、経路案内表示制御部56は、少なくとも自車両10の走行計画である自車両走行計画71と他車両15の走行計画である他車両走行計画とが一致しないときに、自車両10に経路案内情報79を表示させる。例えば、自車両10の前方に、自車両10と走行計画が一致する他車両15がない場合、経路に関して自車両10を先導し得る現実の車両がない。このため、経路案内表示制御部56は、経路案内情報79のうち、表示によって報知される内容について例えば表示態様を何ら制限せずに、経路案内情報79を自車両10に表示させる。これにより、経路案内装置11は自車両10に経路案内を提供する。
【0048】
一方、経路案内表示制御部56は、自車両10の走行計画である自車両走行計画71と他車両15の走行計画である他車両走行計画とが一致するときに、経路案内情報79の一部または全部の表示を抑制させる。例えば、自車両10の前方に、自車両10と走行計画が一定程度以上一致する他車両15がある場合、この他車両15は、経路に関して自車両10を先導し得る現実の車両となり得る。すなわち、自車両10は、単にこの他車両15に追従すれば、経路案内情報79を敢えて表示するまでもなく、自車両走行計画71に沿って走行可能である。このため、経路案内表示制御部56は、経路案内情報79のうち、表示によって報知される内容について、その表示を低減し、簡略化し、または、禁止することにより、経路案内情報79の表示を抑制する。これにより、自車両10が、経路案内情報79を表示させ続けることによって消費されるエネルギーが低減される。
【0049】
経路案内情報79の表示について「低減」とは、一部の内容を非表示化すること、または、一部または全部の内容の表示濃度または表示輝度等を削減することをいう。例えば、仮想先導車両84を通常時よりも薄く表示させる変更は、経路案内情報79の低減である。
【0050】
経路案内情報79の表示について「簡略化」とは、一部または全部の具体的な表示内容を変更して、表示量を削減することをいう。例えば、仮想先導車両84を中抜きにし、その外形部分だけを表示させる変更は、経路案内情報79に係る表示の簡略化である。また、仮想先導車両84を非表示化し、その代わりに、他車両15を特定する情報を表示させる変更は、経路案内情報79の簡略化である。先導車両となる他車両15を特定する情報は、自車両10を先導する先導車両としてその他車両15を特定する情報(以下、先導車両特定情報という)である。先導車両特定情報は、先導車両となる他車両15を追従させるための指示として機能する。なお、経路案内情報79の表示は、低減され、かつ、簡略化されてもよい。
【0051】
経路案内情報79の表示について「禁止」とは、表示によって報知される内容の全部を非表示化することをいう。例えば、経路案内情報79の表示が禁止されると、仮想先導車両84その他の経路案内情報79の表示はなくなり、音声のみで経路が案内される。
【0052】
本実施形態においては、経路案内表示制御部56は、走行計画が一致する他車両15がないときには、自車両10に仮想先導車両84を表示させる。一方、走行計画が一致した先導車両たり得る他車両15があるときには、その他車両15の位置等を表示し、仮想先導車両84の表示を停止する。すなわち、本実施形態においては、経路案内情報79の表示を簡略化することにより、経路案内情報79を表示させ続けることによって消費されるエネルギーが低減される。
【0053】
以下、経路案内表示制御部56が自車両走行計画71と他車両走行計画とが一致しないときに自車両10に経路案内情報79を表示させる表示モードを「標準表示モード」という。また、自車両走行計画71と他車両走行計画が一致し、経路案内情報79の一部または全部の表示を抑制させた形態で、経路案内表示制御部56が自車両10に経路案内情報79を表示させる表示モードを「抑制表示モード」という。すなわち、経路案内表示制御部56は、自車両走行計画71と他車両走行計画に応じて、自車両10に経路案内情報79を表示させる形態を、標準表示モードと抑制表示モードとで切り替える。
【0054】
[経路案内システムの作用]
図4は、経路案内システム100の作用を示すフローチャートである。
図4に示すように、経路案内システム100は、ステップS101において、例えば自車両10の運転者13が情報入力装置25を用いて、経路案内の開始するための操作を行うことにより、起動される。また、経路案内システム100による経路案内を開始するときには、運転者13によって自車両走行計画71が設定される。
【0055】
経路案内システム100が起動され、自車両走行計画71が設定されると、ステップS102において、自車両10が経路案内に必要な各種情報を収集し、遠隔地17にある経路案内装置11に送信する。これにより、ステップS103においては、経路案内装置11は、先導車両視点画像を生成及び表示し、車外音声74等を再生する。これにより、オペレータ18に対して仮想先導車両84の運転に必要な情報が提供される。これに応じて、オペレータ18が仮想先導車両84を運転することにより、ステップS104においては、経路案内装置11が、仮想先導車両84の運転操作信号78の入力を受ける。そして、この運転操作信号78に応じて、自車両10に表示等させる経路案内情報79が作成される。
【0056】
一方、経路案内装置11は、ステップS105において、自車両走行計画71と他車両走行計画の比較によって、先導車両になり得る他車両15があるか否かを検出する。その結果、ステップS106において先導車両となり得る他車両15があると判定されたときには、ステップS107において、経路案内装置11は、自車両10に経路案内情報79を表示させる表示形態を抑制表示モードとする。一方、ステップS106において先導車両となり得る他車両15がないと判定されたときには、ステップS108において、経路案内装置11は、自車両10に経路案内情報79を表示させる表示形態を標準表示モードとする。
【0057】
その後、ステップS109において、自車両10は経路案内情報79を報知する。このとき、経路案内情報79のうち、ディスプレイ28に表示すべき内容は、経路案内装置11によって指定された表示モードで表示される。すなわち、他車両15が自車両10の先導車両となり得るときには、経路案内情報79の表示は低減され、簡略化され、または、禁止される。その結果、経路案内情報79の表示に係るエネルギー消費が低減される。一方、他車両15がないとき、または、他車両15が自車両10の先導車両となり得ないときには、経路案内情報79が抑制されることなく表示され、相対的に詳細に経路が案内される。
【0058】
図5は、経路案内システム100で実行される処理のシーケンスチャートである。
図5に示すように、より具体的には、経路案内システム100が起動されるステップS101は、自車両10が行うステップS201の経路案内開始処理及びステップS202の経路設定受付処理を含む。経路案内開始処理によって経路案内の開始要求が経路案内装置11に通知される。これにより、経路案内装置11は経路案内に係る処理を開始する。また、経路設定受付処理によって、自車両走行計画71が設定され、かつ、経路案内装置11に送信される。
【0059】
また、ステップS102の経路案内に必要な各種情報の収集は、ステップS203の撮影処理、ステップS204の収音処理、ステップS205の位置情報取得処理、ステップS206の測距情報取得処理、及び、ステップS207の情報取得処理を含む。ステップS203の撮影処理では、自車両10が撮影装置23を用いて、前方画像72及び運転者画像73を取得する。ステップS204の収音処理では、自車両10が収音装置24を用いて、車外音声74及び車内音声75を取得する。ステップS205の位置情報取得処理では、自車両10が位置センサ21を用いて、位置情報76を取得する。ステップS206の測距情報取得処理では、自車両10が測距センサ22を用いて測距情報77を取得する。そして、ステップS207の情報取得処理によって、経路案内装置11が、自車両10によって収集されたこれらの各種情報を適宜取得する。特に、ステップS207において、経路案内装置11は、走行計画取得部65によって自車両走行計画71を取得する。また、自車両10が他車両走行計画を得ているときには、ステップS207において、経路案内装置11が走行計画取得部65によってその他車両走行計画を取得する。本実施形態においては、他車両走行計画は自車両10によって取得されていないものとする。
【0060】
ステップS103の仮想先導車両84の運転に必要な情報の提供には、ステップS208の画像処理、ステップS209の音声処理、及び、ステップS210の出力処理が含まれる。ステップS208の画像処理においては、経路案内装置11は、入出力制御部52で例えば前方画像72の一部または全部を変形等することによって、先導車両視点画像を生成する。ステップS209の音声処理においては、経路案内装置11は、入出力制御部52で例えば車外音声74の音量等が調節され、またノイズが低減される。低減処理等を調節する。ステップS209の音声処理は必要に応じて実行され、省略される場合がある。ステップS210の出力処理においては、経路案内装置11は、入出力制御部52によって、先導車両視点画像や車外音声74を情報出力装置46に出力する。これにより、オペレータ18は仮想先導車両84をその視点で運転できるようになる。
【0061】
ステップS104の仮想先導車両の運転は、経路案内装置11が運転操作信号78の入力を受け付けるステップと、ステップS211の更新処理と、を含む。オペレータ18によって仮想先導車両84が運転されると、自車両10に対する仮想先導車両84の位置等が変化する必要がある。このため、ステップS211の更新処理では、経路案内装置11は、入出力制御部52によって、運転操作信号78に基づき、自車両10に表示させるべき仮想先導車両84の位置、大きさ、及び、向き等を適宜更新する。
【0062】
ステップS105の他車両15の検出は、ステップS212の他車両検出処理と、ステップS213の他車両走行計画推定処理と、を含む。ステップS212の他車両検出処理においては、経路案内装置11が、他車両検出部54によって、他車両15の存在を検出する。そして、ステップS213の他車両走行計画推定処理では、経路案内装置11が、走行計画取得部65によって、検出された他車両15について他車両走行計画を推定する。なお、ステップS213の他車両走行計画推定処理は、自車両10が走行計画を取得している他車両15については省略される。
【0063】
ステップS106の判定は、具体的には、経路案内装置11が走行計画比較部55によって実行するステップS214の走行計画比較処理である。ステップS214の走行計画比較処理では、自車両走行計画71と、取得または推定された他車両走行計画と、の一致度が算出され、所定の閾値と比較される。そして、算出された一致度が所定の閾値以上であるときに、自車両走行計画71とその他車両走行計画が一致すると判定される。また、自車両10と走行計画が一致する他車両15は、自車両10の先導車両となり得る。したがって、検出された他車両15のうち、自車両走行計画71と他車両走行計画の一致度が所定の閾値以上である他車両15が、自車両10の先導車両となり得る他車両15であると判定される。
【0064】
ステップS107及びステップS108の表示モードの切り替えは、ステップS215の表示モード切替処理によって実現される。ステップS215の表示モード切替処理においては、経路案内装置11が、経路案内表示制御部56によって、自車両10に経路案内情報79を表示させる形態を、標準表示モードと抑制表示モードとで切り替える。
【0065】
ステップS109の経路案内情報79の報知は、ステップS216の経路案内情報作成処理と、ステップS217の報知処理と、を含む。ステップS216の経路案内情報作成処理においては、経路案内装置11が、経路案内情報作成部53によって経路案内情報79を作成し、かつ、これに表示形態を指定する信号を包含または付帯させて、自車両10に送信する。ステップS217の報知処理においては、自車両10が、受信した経路案内情報79を情報出力装置26によって運転者13に報知する。このとき、経路案内情報79のうち、ディスプレイ28に表示する内容については、指定された表示形態でその表示が行われる。
【0066】
図6は、走行計画が一致する他車両15がないときの経路案内情報79の表示例を示す説明図である。
図6に示すように、自車両10の前方に他車両15があるとする。そして、自車両10は、矢印81で示すように例えば次の交差点を直進する予定である。一方、この他車両15は、矢印82で示すようにその交差点を右折する見込みである。したがって、自車両走行計画71とこの他車両15の他車両走行計画は一致しない。このため、経路案内装置11は経路案内情報79の表示態様を標準表示モードとする。その結果、自車両10は、運転者13の視野83に、オペレータ18によって操作される仮想先導車両84を表示する。これにより、自車両10は、仮想先導車両84に追従して、次の交差点を直進するように案内される。
【0067】
図7は、走行計画が一致する他車両15があるときの経路案内情報79の表示例を示す説明図である。
図7に示すように、自車両10の前方に他車両15があるとする。そして、自車両10は、矢印81で示すように次の交差点を直進する予定である。さらに、この他車両15は、矢印85で示す通り、自車両10と同様に、次の交差点を直進する見込みである。したがって、自車両走行計画71とこの他車両15の他車両走行計画は、少なくとも次の交差点における進路が一致し、この他車両15が自車両10の先導車両となり得る。このため、経路案内装置11は経路案内情報79の表示態様を抑制表示モードとする。その結果、自車両10は、運転者13の視野83に、仮想先導車両84を表示させず、その代わりに、他車両15が先導車両となり得ることを、例えば枠線86によって簡易的に表示する。すなわち、枠線86は先導車両特定情報であり、先導車両となる他車両15を追従させるための指示として機能する。これにより、自車両10は、他車両15を追従して、次の交差点を直進するように案内される。その上で、自車両10では、経路案内情報79の表示に係るエネルギーが低減される。
【0068】
以上のように、第1実施形態に係る経路案内装置11は、自車両10に、経路を案内する経路案内情報79を表示させる。そして、この経路案内装置11は、走行計画取得部65と、走行計画比較部55と、経路案内表示制御部56と、を備える。走行計画取得部65は、自車両10と、自車両10とは異なる車両である他車両15と、について走行経路の計画を表す走行計画(自車両走行計画71及び他車両走行計画)をそれぞれ取得する。走行計画比較部55は、自車両10の走行計画である自車両走行計画71と他車両15の走行計画である他車両走行計画とを比較する。経路案内表示制御部56は、少なくとも自車両10の走行計画である自車両走行計画71と他車両15の走行計画である他車両走行計画とが一致しないときに、自車両10に経路案内情報79を表示させる。その上で、経路案内表示制御部56は、自車両10の走行計画である自車両走行計画71と他車両15の走行計画である他車両走行計画とが一致するときに、経路案内情報79の一部または全部の表示を抑制させる。
【0069】
この構成によれば、経路案内装置11は、自車両10の先導車両となり得る他車両15があるか否かを見極める。そして、先導車両となり得る他車両15があり、経路案内情報79の表示が必ずしも必要でないと判断できるときには、経路案内情報79の表示が抑制される。したがって、経路案内装置11は、自車両10に対して適切な経路案内を提供しつつ、かつ、自車両10の具体的な状況に応じて、経路案内情報79の表示を適宜抑制させることで経路案内情報79の表示に係るエネルギーの消費を抑えることができる。
【0070】
第1実施形態に係る経路案内装置11においては、経路案内表示制御部56は、少なくとも自車両10の走行計画である自車両走行計画71と他車両15の走行計画である他車両走行計画とが一致しないときに、自車両10の運転者13の視野83に、経路案内情報79を表す仮想画像(仮想先導車両84)を表示させる。このように、仮想画像を表示する場合、特に経路案内情報79の表示に係るエネルギーが大きくなりやすい。このため、経路案内装置11によって経路案内情報79の表示を適宜抑制させることで、経路案内情報79の表示に係るエネルギーの消費が特に良く低減される。
【0071】
また、継続的に仮想画像を表示する場合、運転者13によっては疲労しやすくなることがある。このため、経路案内装置11は、経路案内情報79の表示を適宜抑制させることで、運転者13の肉体的負荷を低減するという副次的効果を奏する。
【0072】
第1実施形態に係る経路案内装置11においては、仮想画像は、特に自車両10を先導する車両を表す仮想先導車両84の画像である。仮想画像の中でも特に仮想先導車両84の表示によれば、運転者13は、視線の移動を最小限にして経路案内を受けることができる利点がある。但し、仮想先導車両84による経路案内情報79の表示は、経路案内情報79の表示のために特にエネルギーを消費しやすい。このため、経路案内装置11が経路案内情報79の表示を適宜抑制させることで、経路案内情報79の表示に係るエネルギーの消費が特に良く低減される。
【0073】
第1実施形態に係る経路案内装置11においては、走行計画取得部65は、自車両10が他車両15を撮影した画像である前方画像72を用いることにより、他車両15の位置情報、ステアリングランプ、及び、ブレーキランプの少なくとも1つに基づいて、他車両15の走行計画である他車両走行計画を取得する。すなわち、経路案内装置11は、自車両10が他車両15を撮影した画像を用いて推定することにより、他車両走行計画を取得する。
【0074】
このように、自車両10が他車両15を撮影した画像を用いて他車両走行計画を取得すれば、自車両10及び/または他車両15が、経路案内に必要な情報を取得及び授受するための特別な装置を有していない場合でも、他車両走行計画を取得できる。したがって、自車両10及び/または他車両15が特別な装置を有していない場合でも、経路案内装置11は、他車両15を先導車両として使用させ、経路案内情報79の表示を抑制できる。その結果、経路案内装置11は、自車両10及び/または他車両15が特別な装置を有していない場合でも、経路案内情報79の表示に係るエネルギーの消費を低減できる。
【0075】
第1実施形態に係る経路案内装置11においては、経路案内表示制御部56は、経路案内情報79として、走行計画が一致する他車両15を、自車両10を先導する先導車両として特定する先導車両特定情報として枠線86等を表示させる。これにより、標準表示モードで表示される仮想先導車両84の表示が抑制された場合でも、先導車両となる他車両15が明示され、経路案内が継続され得る。
【0076】
そして、第1実施形態に係る経路案内装置11においては、経路案内表示制御部56は、先導車両を追従させるための指示として枠線86等を表示させる。すなわち、経路案内装置11は、経路案内情報79である仮想先導車両84の表示を抑制するときに、単に注目すべき他車両15を表示させるだけでなく、その他車両15を追従すべきことが理解し得る形態で、先導車両特定情報を明確に表示する。これにより、経路案内情報79である仮想先導車両84の表示を抑制した場合でも、経路案内が、確実に、かつ運転者13に分かりやすく継続され得る。
【0077】
なお、第1実施形態に係る経路案内装置11においては、走行計画取得部65は、他車両走行計画を推定することにより取得している。しかし、自車両10が車車間通信等により、他車両15から直接的に、または間接的に、他車両走行計画を取得できるときには、走行計画取得部65は通信等によりこれを取得する。また、経路案内装置11が、他車両15が利用するサーバ等にアクセスして情報を取得できるときには、走行計画取得部65はそのサーバ等から他車両走行計画を取得する。こうして、推定に依らず、他車両15から直接的または間接的に他車両走行計画を取得する場合、他車両走行計画は、走行経路を明確に示すものの他、目的地を示す情報等、他車両15の現在位置との関係によって実質的に走行計画を決定し得る程度の情報であってもよい。
【0078】
このように、走行計画取得部65が、他車両15から直接的または間接的に他車両走行計画を取得する場合、経路案内装置11は、長区間あるいは長時間にわたる正確な他車両走行計画を得ることができる。また、取得した他車両走行計画が走行経路を明確に示すものであるときには、その他車両走行計画は、正確かつ長区間あるいは長時間にわたり特に正確である。その結果、経路案内装置11は、場当たり的に経路案内情報79の表示を抑制させるのではなく、計画的に経路案内情報79の表示を抑制させることができる。したがって、経路案内装置11は、計画的かつ効率的に、経路案内情報79の表示に係るエネルギーの消費を抑えることができる。
【0079】
さらに、走行計画取得部65が他車両15から直接的または間接的に他車両走行計画を取得する場合において、その他車両走行計画が他車両15によって選択された走行経路を示すものであるときには、走行計画比較部55は特に確実な他車両走行計画を得る。このため、経路案内装置11は、より長区間または長時間にわたって、確実に、経路案内情報79の表示に係るエネルギーの消費を抑えることができる。
【0080】
[第2実施形態]
第1実施形態においては、経路案内装置11は、経路案内情報79の表示を抑制させるときに、枠線86等の先導車両特定情報を表示させることにより、先導車両となる他車両15を運転者13に認識させる。しかし、運転者13は人であるから、先導車両特定情報の表示を見落とし、または、その内容を誤認し、他車両15を先導車両であると正しく認識しないことがある。したがって、経路案内情報79の表示を抑制させる場合、経路案内装置11は、少なくとも運転者13が特定の他車両15を先導車両であると確実に認識できるような支援をすることが望ましい。このため、本第2実施形態においては、経路案内情報79の表示を抑制させるときに、先導車両となる他車両15を、より確実に認識できるように運転者13の認識を支援する例を説明する。
【0081】
図8は、第2実施形態の経路案内装置201の構成を示すブロック図である。
図8に示すように、経路案内装置201では、経路案内コントローラ44が認識判定部202として機能する。それ以外の構成は、第1実施形態の経路案内装置11と同様である。
【0082】
認識判定部202は、少なくとも、経路案内情報79が抑制表示モードで表示されるときに、先導車両となる他車両15を運転者13が認識しているか否かを判定する。認識判定部202は、当該判断を、例えば、視線検出処理及び認識判定処理によって行う。視線検出処理は、運転者画像73を用いて、運転者13の視線を検出する処理である。認識判定処理は、例えば、検出された運転者13の視線が、所定の時間以上、先導車両となる他車両15の範囲内にあるか否かを判定することによって、運転者13が他車両15を認識しているか否かを判別する処理である。認識判定処理において閾値となる所定の時間は、例えば、実験等に基づいて、予め定められる。また、先導車両となる他車両15の範囲は、例えば、前方画像72から、先導車両となるべき他車両15を抽出することによって定められる。すなわち、前方画像72において、運転者13の視線が、先導車両となるべき他車両15の範囲に所定の時間以上あるときに、認識判定部202は運転者13が先導車両となる他車両15を認識していると判定する。
【0083】
運転者13が先導車両となる他車両15を認識していると認識判定部202が判定したときには、経路案内表示制御部56は、第1実施形態と同様に、経路案内情報79の表示態様を制御する。すなわち、運転者13が先導車両となる他車両15を認識しているときには、第2実施形態の経路案内装置201の作用は、第1実施形態の経路案内装置11の作用と同様である。
【0084】
一方、運転者13が先導車両となる他車両15を認識していないと認識判定部202が判定したときには、経路案内表示制御部56は、第1実施形態と同様に、経路案内情報79の表示態様を制御しつつ、かつ、走行計画が一致した先導車両となる他車両15を自車両10に強調させる。他車両15の強調とは、例えば、先導車両特定情報を変調し、変更し、または、音声等の発報を併用することにより、運転者13の注意が他車両15に向けられやすくすることをいう。より具体的には、枠線86を点滅させる、枠線86の色を変更する、及び/または、枠線86で示された他車両15を追従するように指示するメッセージを再生する等の方法によって、先導車両となる他車両15が強調される。本実施形態においては、特に、表示を変調または変更させることで、先導車両となる他車両15が強調される。
【0085】
図9は、第2実施形態の作用を示すフローチャートである。
図9のステップS301に示すように、ここでは経路案内装置201が経路案内情報79を抑制表示モードで自車両10に表示させるとする。このとき、ステップS302では、認識判定部202が視線検出処理を実行する。これにより、運転者画像73から運転者13の視線が検出される。次いで、ステップS303では、認識判定部202が認識判定処理を実行する。これにより、検出された運転者13の視線と、前方画像72と、に基づいて、運転者13が他車両15を先導車両として認識しているか否かが判定される。
【0086】
そして、ステップS304において、運転者13が先導車両となる他車両15を先導車両として認識しているときには、第1実施形態と同様に、仮想先導車両84は非表示化され、かつ、枠線86によって先導車両となる他車両15が示される。一方、ステップS304において、運転者13が先導車両となる他車両15を先導車両として認識していないときにも、仮想先導車両84は非表示化され、先導車両となる他車両15は枠線86で示される。その上で、例えば、枠線86の色が変更され、または、点滅させる等の方法によって、先導車両となる他車両15が強調される先導車両強調処理が実行される。すなわち、経路案内情報79が抑制表示モードで表示され、かつ、運転者13が先導車両となる他車両15を認識していないときには、先導車両となる他車両15を先導車両として認識させるように、抑制表示モードを維持しつつ、先導車両となる他車両15が追加的に強調される。
【0087】
以上のように、第2実施形態に係る経路案内装置201は、運転者13が、走行計画が一致する他車両15を先導車両として認識しているか否かを判定する。そして、運転者13が、走行計画が一致する他車両15を先導車両として認識していないと判定したときには、その他車両15が先導車両であることを強調表示する。これにより、仮想先導車両84を非表示化しても、経路案内が、より確実に、適切に継続され得る。
【0088】
上記第2実施形態に係る制御は、走行計画が一致した先導車両となる他車両15が自車両10とは異なる車線を走行しているときに、特に有効である。これは、先導車両となる他車両15が自車両10とは異なる車線を走行してると、運転者13がその他車両15を先導車両と認識し難い場合があるからである。また、上記第2実施形態に係る制御は、走行計画が一致した先導車両となる他車両15と、自車両10と、の間に、その他の車両(走行計画が一致しない車両)の割り込みがあったときにも、特に有効である。これは、先導車両となる他車両15と自車両10の間に、走行計画が一致しない車両の割り込みがあると、運転者13が先導車両である他車両15を見失いやすいからである。
【0089】
なお、上記第2実施形態においては、経路案内装置201は、運転者画像73を用いた視線検出処理の結果に基づいて、認識判定処理を行っているが、認識判定処理の具体的態様はこれに限らない。例えば、経路案内装置201は、車内音声75に基づいて、認識判定処理を行うことができる。この場合、経路案内装置201は、例えば、経路案内情報79の表示等により、運転者13に対して先導車両となる他車両15を認識しているか否かを問いかける。そして、運転者13の発話による特定のキーワードまたはコマンド等の入力によって、運転者13が先導車両となる他車両15を認識している旨の返答があったときに、経路案内装置201は運転者13が先導車両となる他車両15を認識していると判定することができる。このように、運転者13の発話によって、運転者13が先導車両となる他車両15を認識しているか否かを判定すると、経路案内装置201は、運転者13の簡便な操作によって、確実な認識判定処理を行うことができる。
【0090】
[第3実施形態]
上記各実施形態及び変形例等は、先導車両となり得る他車両15が複数あるときにも好適である。本第3実施形態においては、複数の他車両15が検出されたとする。この場合、走行計画比較部55は、自車両10の走行計画である自車両走行計画71と、他車両15の走行計画である他車両走行計画と、の一致度を、自車両10の周辺において検出された複数の他車両15についてそれぞれ算出する。経路案内表示制御部56は、複数の他車両15について算出された一致度に基づいて一致度比較処理を実行することにより、自車両10の先導車両とすべき1台の他車両15を決定する。具体的には、経路案内表示制御部56は、走行計画が自車両10と一致する他車両15が複数あり、かつ、経路案内情報79の一部または全部の表示を抑制するときに、各々の他車両15について算出された一致度を比較する。そして、経路案内表示制御部56は、走行計画の一致度が最も高い1台の他車両15を、自車両10の先導車両とする。
【0091】
走行計画の一致度は、自車両走行計画71と他車両走行計画の重複区間あるいは重複時間が長い程、値が大きくなるパラメータであるから、走行計画の一致度が高い程、その他車両15は長区間あるいは長時間にわたって一貫して自車両10の先導車両となり得る。そして、複数の他車両15が先導車両となり得る程度にその走行計画が自車両10と一定程度一致するときには、これら複数の他車両15の中から先導車両とする他車両15を任意に選択し得る。このため、経路案内表示制御部56は、これら複数の他車両15のうち最も長区間あるいは長時間にわたって継続的に先導車両となり得る1台の他車両15を先導車両に選定する。
【0092】
図10は、第3実施形態の作用を示すフローチャートである。
図10に示すように、ステップS401において、走行計画比較部55は、他車両検出処理(
図5,ステップS212参照)で検出された他車両15の全部について、自車両走行計画と他車両走行計画の比較を行う走行計画比較処理(
図5,ステップS214参照)を実行する。すなわち、自車両10の周辺に複数の他車両15が検出されたときには、走行計画比較部55は、それら複数の他車両15についてそれぞれ自車両10との走行計画の一致度を算出する。
【0093】
ステップS402において自車両10と走行計画が一定程度一致し、先導車両となり得る他車両15が複数あるときには、走行計画比較部55は、ステップS403において、さらにそれらの一致度を比較する一致度比較処理を実行する。そして、ステップS404では、経路案内表示制御部56が、一致度が最も高いと判定された1台の他車両15を、自車両10の先導車両として選択する先導車両選択処理を行う。これにより、先導車両となり得る他車両15が複数あるときでも、経路案内情報79により、最も長区間あるいは長時間にわたって継続的に先導車両となり得る1台の他車両15が先導車両として表示される。
【0094】
なお、ステップS402において、先導車両になり得る他車両15が1台のみであるときには、ステップS403の一致度比較処理、及び、ステップS404の先導車両選択処理は省略される。その結果、第1実施形態等と同様に、経路案内情報79によって、その1台の他車両15が先導車両として表示される。
【0095】
以上のように、第3実施形態に係る経路案内装置においては、走行計画比較部55は、自車両10の走行計画である自車両走行計画71と、他車両15の走行計画である他車両走行計画と、の一致度を算出する。そして、走行計画が自車両10と一致する他車両15が複数あり、かつ、経路案内情報79の一部または全部の表示を抑制するときに、経路案内表示制御部56は、走行計画の一致度が最も高い他車両15を先導車両とする。これにより、第3実施形態に係る経路案内装置は、長区間あるいは長時間にわたって、同一の他車両15を自車両10の先導車両として表示させ得る。その結果、運転者13にとっては、先導車両が切り替わる煩わしさが低減する。
【0096】
[第4実施形態]
経路案内情報79の表示を抑制させていた状態(抑制表示モード)から、経路案内情報79の表示を抑制させない状態(標準表示モード)に移行するときには、次のように経路案内情報79の表示態様を制御することが好ましい。本第4実施形態においては、抑制表示モードから標準表示モードに移行するときには、仮想先導車両84を表示させるものとする。
【0097】
図11は、第4実施形態の作用を示すフローチャートである。
図11に示すように、ステップS501において、仮想先導車両84を表示させる必要が生じたものとする。例えば、先導車両となっていた他車両15が、間もなく自車両10の走行経路から外れる見込みである等の事情が生じたときには、仮想先導車両84を表示させる必要が生じる。
【0098】
このとき、経路案内情報作成部53が、経路案内情報79の作成のために、ステップS502の他車両画像抽出処理、ステップS503の類似度算出処理、ステップS504の仮想先導車両画像選択処理を実行する。ステップS502の他車両画像抽出処理は、経路案内情報作成部53が、前方画像72を用いて、先導車両である他車両15の画像を抽出する処理である。ステップS503の類似度算出処理は、経路案内情報作成部53が、先導車両であった他車両15と、案内用データ49が含む複数の仮想先導車両84の画像と、の類似度を算出する処理である。ステップS504の仮想先導車両画像選択処理は、経路案内情報作成部53が、算出した類似度に応じて、案内用データ49から、仮想先導車両84として表示させるべき画像を選択する処理である。例えば、経路案内情報作成部53は、複数の仮想先導車両84のうち、外観において、先導車両であった他車両15と最も類似度が高い仮想先導車両84を用いて、経路案内情報79を作成する。すなわち、先導車両であった他車両15が、SUV(Sport Utility Vehicle)タイプの車両であった場合、外観において、例えば形状及び/または色等が一致または類似する仮想先導車両84を、経路案内のために自車両10に表示させる。
【0099】
以上のように、第4実施形態に係る経路案内装置は、経路案内情報79として仮想先導車両84を表示させるときに、仮想先導車両84の外観を、直前まで先導車両となっていた他車両15の外観に、可能な限り近似させる。これにより、先導車両が実際の車両(他車両15)から仮想先導車両84に滑らかに切り替わる経路案内が、自車両10に提供される。
【0100】
なお、上記第4実施形態に係る経路案内装置は、仮想先導車両84を表示させる事情が実際に生じる以前に、仮想先導車両84を、先導車両となっていた他車両15に重畳して表示させることが好ましい。例えば、2つ先の交差点で、先導車両である他車両15が自車両10とは別の方向へ進む場合、経路案内装置は、次の交差点(1つ先の交差点)から、仮想先導車両84を、先導車両である他車両15に重畳表示させることが好ましい。すなわち、経路案内装置は、先導車両である他車両15が、別の経路に進むと推定される地点または時刻よりも、所定距離前または所定時間前から、仮想先導車両84を表示させることが好ましい。このように、仮想先導車両84を先導車両である他車両15に事前に重畳表示させる場合、先導車両が実際の車両(他車両15)から仮想先導車両84に滑らかに切り替わる経路案内が、自車両10に提供される。
【0101】
[第5実施形態]
上記第4実施形態の変形例おいては、仮想先導車両84の表示が開始されるときに、仮想先導車両84は、先導車両である他車両15に重畳表示されるが、これとは別の形態で仮想先導車両84の表示が開始されてもよい。本第5実施形態においては、仮想先導車両84の表示が開始されるときに、仮想先導車両84等の仮想画像を表示するためのスペースが確保される。
【0102】
図12は、第5実施形態の経路案内装置501の構成を示すブロック図である。
図12に示すように、経路案内装置501は、経路案内コントローラ44が、さらに表示スペース確保部502として機能する。それ以外の構成は、上記各実施形態のいずれかの経路案内装置と同様である。
【0103】
表示スペース確保部502は、少なくとも抑制表示モードが解除され、かつ、仮想先導車両84等の仮想画像の表示が開始されるときに、その仮想画像を表示するための表示スペースを検出する。そして、表示スペース確保部502は、仮想画像を表示するための表示スペースが不足するときに、表示スペースを確保するための運転操作に係る指示(以下、運転指示という)を自車両10に報知させる。
【0104】
図13は、第5実施形態の作用を示すフローチャートである。
図13に示すように、ここでは、経路案内装置501が、ステップS601において抑制表示モードを解除させ、かつ、ステップS602において仮想画像として仮想先導車両84の表示を開始させるとする。この場合、表示スペース確保部502は、ステップS603において、例えば、前方画像72及び仮想先導車両84の大きさ等を用いて表示スペース判定処理を実行する。表示スペース判定処理は、先導車両である他車両15またはその他の自車両10の直前にある車両と、自車両10と、の間に、仮想先導車両84がこれら他車両15等に重畳せずに表示可能な表示スペースがあるか否かを判定する処理である。
【0105】
ステップS604において、仮想先導車両84の表示スペースがあると判定されたときには、ステップS605においてその表示スペースに仮想先導車両84が表示されるように、経路案内情報報知処理が実行される。一方、ステップS604において、仮想先導車両84の表示スペースがないと判定されたとき、または、仮想先導車両84の大きさ等を考慮して表示スペースに不足があると判定されたときには、表示スペース確保部502によって、ステップS606の追加案内情報作成処理、及び、ステップS607の追加案内情報報知処理が実行される。
【0106】
ステップS606の追加案内情報作成処理は、表示スペース確保部502が、仮想先導車両84の表示スペースが不足等を解消するために、運転者13に対して報知すべき運転指示を、経路案内のために追加する追加案内情報として作成する処理である。例えば、追加案内情報作成処理においては、表示スペースの不足等の状況に応じて、「車間距離を広げてください」等の表示用メッセージもしくは音声によるメッセージまたはその他の形態の指示が作成される。
【0107】
ステップS607の追加案内情報報知処理は、表示スペース確保部502が追加案内情報作成処理によって作成されたメッセージ等を自車両10に送信し、これを表示させる処理である。
【0108】
以上のように、第5実施形態に係る経路案内装置501は、表示スペース確保部502を備える。この表示スペース確保部502は、仮想画像である仮想先導車両84等を表示する表示スペースを検出し、その表示スペースが不足するときに、表示スペースを確保するための運転指示を自車両10に報知させる。このように、仮想先導車両84等の仮想画像を表示させるときに、運転指示を与え、その表示スペースが確保されるようにすることで、先導車両が実際の車両(他車両15)から仮想先導車両84等の仮想画像に切り替わるときでも、確実な経路案内が継続され得る。
【0109】
なお、上記各実施形態及び変形例等においては、自車両10と走行計画が一致し、先導車両となり得る他車両15があるときに、経路案内情報79の表示を抑制することによって、経路案内情報79の表示に係るエネルギーの消費を低減する。しかし、これに限らず、経路案内情報79の表示抑制に加えて、経路案内のために行う各種処理の一部または全部について、その処理間隔を延長し、または、一時的に停止してもよい。このように、経路案内情報79の表示抑制に加えて、経路案内のために行う演算等の各種処理の処理間隔を延長し、または、一時的に停止すると、経路案内装置及び/または自車両10の演算等に係る負荷が低減する。このため、経路案内情報79の表示に係るエネルギーが低減されるだけでなく、さらに、経路案内のための行う各種処理の処理負荷、すなわち演算等のために消費するエネルギーも併せて低減される。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記各実施形態及び変形例で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。例えば、上記各実施形態及び変形例等は、その一部または全部を組み合わせて実施できる。また、上記各実施形態及び変形例等で示した各種処理は、各種処理をコンピュータに実行させるためのプログラムに基づいて実行される。このため、上記各実施形態及び変形例は、これらの処理を実行する機能を実現する方法、プログラム、及び、そのプログラムを記憶する記憶媒体の実施形態としても把握される。この他、経路案内装置11等の機能等を追加または変更等するアップデート処理により、上記各実施形態及び変形例等に係る処理を実現するプログラムを更新することができる。