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特許7525062蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整装置、負荷電流配分調整方法、及び負荷電流配分調整プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整装置、負荷電流配分調整方法、及び負荷電流配分調整プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20240723BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240723BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240723BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240723BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240723BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J7/00 302C
H02J7/34 B
H02J9/06 120
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023521794
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2022018335
(87)【国際公開番号】W WO2023203699
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 海青
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-082954(JP,A)
【文献】特開2008-160960(JP,A)
【文献】特開2014-036472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/46
H02J 3/38
H02J 3/32
H02J 7/00
H02J 7/34
H02J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立並列運転をしている複数の蓄電池用の電力変換装置の出力電流の平均電流と、前記電力変換装置の自号機の前記出力電流とに基づいて、前記電力変換装置の前記自号機の横流電流を算出する横流電流算出部と、
前記横流電流算出部によって算出された前記横流電流と、前記電力変換装置の前記自号機の出力電圧とに基づいて、電圧指令値の第一補正量を算出する第一補正量算出部と、
前記複数の蓄電池用の電力変換装置におけるそれぞれの直流電圧の平均電圧と、前記電力変換装置の前記自号機の前記直流電圧とに基づいて、前記電力変換装置の前記自号機の重みゲインを算出するゲイン算出部と、
前記第一補正量算出部によって算出された前記第一補正量と、前記ゲイン算出部によって算出された前記重みゲインとに基づいて、前記電圧指令値の第二補正量を算出する第二補正量算出部と、
所定の前記電圧指令値と、前記第二補正量算出部によって算出された前記第二補正量とに基づいて、前記電力変換装置の前記自号機の前記出力電流を制御する出力電流制御部と、
を備えることを特徴とする蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整装置において、
前記ゲイン算出部によって算出された前記重みゲインが、所定の不感帯領域にあるか否かを判定する不感帯領域判定部をさらに備え、
前記第二補正量算出部は、前記不感帯領域判定部により、前記重みゲインが前記不感帯領域にあると判定されたときは、前記第一補正量を前記第二補正量として算出し、前記不感帯領域判定部により、前記重みゲインが前記不感帯領域に無いと判定されたときは、前記第一補正量と、前記重みゲインとに基づいて前記第二補正量を算出する
ことを特徴とする蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整装置。
【請求項3】
請求項1に記載の蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整装置において、
前記ゲイン算出部によって算出された前記重みゲインの変化量が、所定の変化量を超えたときは、前記重みゲインの変化量を前記所定の変化量以内に制限する変化量リミッタをさらに備え、
前記第二補正量算出部は、前記変化量リミッタにより前記重みゲインの前記変化量が前記所定の変化量以内に制限されたときは、前記第一補正量と、前記所定の変化量以内に制限された後の前記重みゲインとに基づいて前記第二補正量を算出する
ことを特徴とする蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整装置。
【請求項4】
請求項1に記載の蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整装置において、
前記第二補正量算出部によって算出された前記第二補正量が、所定の上限値又は所定の下限値を超えたときは、前記第二補正量が前記所定の上限値又は前記所定の下限値以内に制限された補正量を第三補正量として出力し、前記第二補正量算出部によって算出された前記第二補正量が、前記所定の上限値又は前記所定の下限値を超えていないときは、前記第二補正量を前記第三補正量として出力する上下限リミッタをさらに備え、
前記出力電流制御部は、所定の前記電圧指令値と、前記上下限リミッタから出力された前記第三補正量とに基づいて、前記電力変換装置の前記自号機の前記出力電流を制御する
ことを特徴とする蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整装置。
【請求項5】
請求項4に記載の蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整装置において、
前記上下限リミッタにおける前記所定の上限値は、前記出力電流制御部によって制御された前記自号機の前記出力電流に基づく前記自号機の出力電力が、前記自号機の定格電力以下となる値である
ことを特徴とする蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整装置。
【請求項6】
自立並列運転をしている複数の蓄電池用の電力変換装置の出力電流の平均電流と、前記電力変換装置の自号機の前記出力電流とに基づいて、前記電力変換装置の前記自号機の横流電流を算出する横流電流算出ステップと、
前記横流電流算出ステップによって算出された前記横流電流と、前記電力変換装置の前記自号機の出力電圧とに基づいて、電圧指令値の第一補正量を算出する第一補正量算出ステップと、
前記複数の蓄電池用の電力変換装置におけるそれぞれの直流電圧の平均電圧と、前記電力変換装置の前記自号機の前記直流電圧とに基づいて、前記電力変換装置の前記自号機の重みゲインを算出するゲイン算出ステップと、
前記第一補正量算出ステップによって算出された前記第一補正量と、前記ゲイン算出ステップによって算出された前記重みゲインとに基づいて、前記電圧指令値の第二補正量を算出する第二補正量算出ステップと、
所定の前記電圧指令値と、前記第二補正量算出ステップによって算出された前記第二補正量とに基づいて、前記電力変換装置の前記自号機の前記出力電流を制御する出力電流制御ステップと、
を備えることを特徴とする蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整方法。
【請求項7】
請求項6に記載の蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整方法の処理をコンピュータに実行させる
ことを特徴とする蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整装置、負荷電流配分調整方法、及び負荷電流配分調整プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、系統側が停電したときなどの場合、複数台の蓄電池(ESS:Energy Storage System)用の電力変換装置(PCS:Power Conditioning Subsystem)が自立並列運転することがある。複数台の蓄電池用の電力変換装置(以下、「ESS-PCS」、又は単に「PCS」という。)が自立並列運転したときは、当該複数台のESS-PCSのみで負荷に給電が行われる。しかし、複数台のESS-PCSが自立並列運転するためには、各PCSは同期されていなければならない。このため、自立並列運転している各PCSでは、互いに並列通信が行われ、各PCSは、自号機の号機番号・運転状態・出力電流・位相情報等を互いに送受信している。このとき、複数台のESS-PCSは、所定の原則に従って、マスタとスレーブとに分かれて制御されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特許第4498290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数台のESS-PCSがマスタとスレーブとに分かれて制御されている場合、マスタのPCSは、固定電圧指令・固定周波数制御が行われ、自走する。一方、スレーブのPCSは、固定電圧指令で制御されるが、位相はマスタの位相情報が使用され、かつ、PCS間の横流(ΔI→ΔP、ΔQ)が検出され、横流抑制制御により、スレーブの電圧指令値に補正ΔVが掛けられる(ΔP制御→ΔV)。また、位相にも補正Δθが掛けられる(ΔQ制御→Δθ)。
【0005】
ところが、従来の補正では、電圧指令値に補正が掛けられる際、電池のSOC(State of Charge)(充電率又は充電状態)については考慮されていなかった。また、従来のESS-PCSは、電圧と周波数とのみで制御され、自立並列運転時は、定電圧定電流出力であったため、各PCSの出力電流はコントロールすることができず、一般に、各PCSは、同等の出力となっていた。
【0006】
自立並列運転中の各PCSが同等の出力である場合、蓄電池のSOCにより、SOCが低い蓄電池が先に放電し切ってしまい、当該蓄電池を有するPCSが先に停止してしまう。この場合、負荷へ給電するPCSの自立並列運転台数が減ってしまうため、負荷容量を削減する必要があった。
【0007】
例えば、定格500kWのPCSが3台自立並列運転している場合において、負荷が1200kWである場合について検討する。この場合、通常であれば、各PCSの出力は、1200kW/3=400kWとなり、PCSの定格以下になっているので、問題はない。
【0008】
しかし、もし3台中1台のPCSが放電し切って停止してしまった場合、PCSの自立並列運転台数は2台となる。この場合、各PCSの負荷分担は、1200kW/2=600kWとなるため、PCSの定格以上となってしまい、負荷容量の削減が必要であった。
【0009】
また、対応するPCSの自立並列運転台数が減った場合、負荷の変動量に対する余裕も減るため、残りのPCSが過負荷で止まるリスクもあった。
【0010】
例えば、定格500kWのPCSが3台自立並列運転している場合において、負荷が600kWである場合について検討する。この場合、通常であれば、PCS3台の最大負荷は500kW×3=1500kWであるため、1台平均300kWの出力増加をすることで、負荷変動分である1500kW-600kW=900kWをPCS3台で分担することが可能である。すなわち、負荷変動量の余裕が900kWあるため、合計900kW以下の負荷が増加しても問題はない。
【0011】
しかし、もし3台中1台のPCSが放電し切って停止してしまった場合、PCSの自立並列運転台数は2台となる。この場合、2台のPCSの最大負荷は500kW×2=1000kWであるため、現在の600kWの負荷に対し、最大400kWの出力増加しか対応することができない。仮にこれ以上負荷が増加した場合は、PCSの定格以上となってしまうため、PCSが過負荷停止となるリスクがある。すなわち、負荷変動量の余裕が400kWしかないため、合計400kW以上の負荷が増加したときに、PCSが過負荷停止となるリスクがあった。
【0012】
そこで、本件開示は、複数の蓄電池用のPCSの自立並列運転時において、電池電圧状態に基づいて各PCSの出力電流配分を調整することにより、PCSの自立並列運転台数を維持させるとともに、負荷変動に対する余裕を維持させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様に係る蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整装置は、自立並列運転をしている複数の蓄電池用の電力変換装置の出力電流の平均電流と、電力変換装置の自号機の出力電流とに基づいて、電力変換装置の自号機の横流電流を算出する横流電流算出部と、横流電流算出部によって算出された横流電流と、電力変換装置の自号機の出力電圧とに基づいて、電圧指令値の第一補正量を算出する第一補正量算出部と、複数の蓄電池用の電力変換装置におけるそれぞれの直流電圧の平均電圧と、電力変換装置の自号機の直流電圧とに基づいて、電力変換装置の自号機の重みゲインを算出するゲイン算出部と、第一補正量算出部によって算出された第一補正量と、ゲイン算出部によって算出された重みゲインとに基づいて、電圧指令値の第二補正量を算出する第二補正量算出部と、所定の電圧指令値と、第二補正量算出部によって算出された第二補正量とに基づいて、電力変換装置の自号機の出力電流を制御する出力電流制御部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
なお、一態様に係る蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整装置において、ゲイン算出部によって算出された重みゲインが、所定の不感帯領域にあるか否かを判定する不感帯領域判定部をさらに備え、第二補正量算出部は、不感帯領域判定部により、重みゲインが不感帯領域にあると判定されたときは、第一補正量を第二補正量として算出し、不感帯領域判定部により、重みゲインが不感帯領域に無いと判定されたときは、第一補正量と、重みゲインとに基づいて第二補正量を算出してもよい。
【0015】
また、一態様に係る蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整装置において、ゲイン算出部によって算出された重みゲインの変化量が、所定の変化量を超えたときは、重みゲインの変化量を所定の変化量以内に制限する変化量リミッタをさらに備え、第二補正量算出部は、変化量リミッタにより重みゲインの変化量が所定の変化量以内に制限されたときは、第一補正量と、所定の変化量以内に制限された後の重みゲインとに基づいて第二補正量を算出してもよい。
【0016】
また、一態様に係る蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整装置において、第二補正量算出部によって算出された第二補正量が、所定の上限値又は所定の下限値を超えたときは、第二補正量が所定の上限値又は所定の下限値以内に制限された補正量を第三補正量として出力し、第二補正量算出部によって算出された第二補正量が、所定の上限値又は所定の下限値を超えていないときは、第二補正量を第三補正量として出力する上下限リミッタをさらに備え、出力電流制御部は、所定の電圧指令値と、上下限リミッタから出力された第三補正量とに基づいて、電力変換装置の自号機の出力電流を制御してもよい。
【0017】
また、一態様に係る蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整装置において、上下限リミッタにおける所定の上限値は、出力電流制御部によって制御された自号機の出力電流に基づく自号機の出力電力が、自号機の定格電力以下となる値であってもよい。
【0018】
一態様に係る蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整方法は、自立並列運転をしている複数の蓄電池用の電力変換装置の出力電流の平均電流と、電力変換装置の自号機の出力電流とに基づいて、電力変換装置の自号機の横流電流を算出する横流電流算出ステップと、横流電流算出ステップによって算出された横流電流と、電力変換装置の自号機の出力電圧とに基づいて、電圧指令値の第一補正量を算出する第一補正量算出ステップと、複数の蓄電池用の電力変換装置におけるそれぞれの直流電圧の平均電圧と、電力変換装置の自号機の直流電圧とに基づいて、電力変換装置の自号機の重みゲインを算出するゲイン算出ステップと、第一補正量算出ステップによって算出された第一補正量と、ゲイン算出ステップによって算出された重みゲインとに基づいて、電圧指令値の第二補正量を算出する第二補正量算出ステップと、所定の電圧指令値と、第二補正量算出ステップによって算出された第二補正量とに基づいて、電力変換装置の自号機の出力電流を制御する出力電流制御ステップと、を備えることを特徴とする。
【0019】
一態様に係る蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整プログラムは、上記の蓄電池用の電力変換装置の負荷電流配分調整方法の処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本件開示によれば、複数の蓄電池用のPCSの自立並列運転時において、電池電圧状態に基づいて各PCSの出力電流配分を調整することにより、PCSの自立並列運転台数を維持させるとともに、負荷変動に対する余裕を維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態に係る制御装置(負荷電流配分調整装置)を有する電力変換装置を複数台備える電力変換システムの構成例を示す図である。
図2図1に示した蓄電池用の電力変換装置における制御装置(負荷電流配分調整装置)の構成例を示す図である。
図3図2に示した制御装置(負荷電流配分調整装置)における横流抑制制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
図4図2に示した制御装置(負荷電流配分調整装置)における負荷電流配分調整部の処理の一例を示すフローチャートである。
図5図2に示した制御装置(負荷電流配分調整装置)における出力電流制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
図6図1図5に示した実施形態における制御装置(負荷電流配分調整装置)が有する処理回路のハードウェア構成例を示す概念図である。
図7】比較例に係る制御装置140の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本件開示の負荷電流配分調整装置、負荷電流配分調整方法、及び負荷電流配分調整プログラムについて、図面を用いて説明する。
【0023】
<一実施形態の構成>
図1は、一実施形態に係る制御装置(負荷電流配分調整装置)40を有する電力変換装置20を複数台備える電力変換システム1の構成例を示す図である。
【0024】
図1に示すとおり、電力変換システム1は、電力系統11と、第一開閉器12と、第二開閉器13と、第一変圧器14と、第三開閉器15と、第二変圧器16と、自立負荷17と、複数の電力変換装置(PCS)20とを有する。第一開閉器12と第二開閉器13との間は、接続点18を介して電路が分岐している。電力系統11は、第一開閉器12と、接続点18と、第三開閉器15と、第二変圧器16とを介して自立負荷17に接続される。また、複数のPCS20は、第一変圧器14と、第二開閉器13と、接続点18と、第三開閉器15と、第二変圧器16とを介して自立負荷17に接続される。
【0025】
電力系統11は、第一開閉器12と接続される。電力系統11は、例えば、電力会社から、工場、ビル、一般家庭等に送電される交流電力の電力系統であり、日本では、50Hzと60Hzの2種類の周波数で運用されている。
【0026】
第一開閉器12は、一端が電力系統11と接続され、他端が接続点18を介して第二開閉器13及び第三開閉器15と接続されている。第一開閉器12は、例えば、不図示の制御回路や上位装置からの投入指示又は開放指示に従って、電力系統11からの電流を開閉する。第一開閉器12は、正常時には投入されているが、例えば、電力系統11の停電時には開放される。
【0027】
第二開閉器13は、一端が接続点18を介して第一開閉器12及び第三開閉器15と接続され、他端が第一変圧器14と接続されている。第二開閉器13は、例えば、不図示の制御回路や上位装置からの投入指示又は開放指示に従って、PCS20に流入する電流及びPCS20から流出する電流を開閉する。第二開閉器13は、例えば、PCS20における後述の蓄電池21が充放電するときに投入され、蓄電池21が充放電しないときは開放される。
【0028】
第一変圧器14は、一端が第二開閉器13と接続され、他端が接続点19を介してPCS20と接続される。第一変圧器14は、交流電力の電圧の高さを、電磁誘導を利用して変換する電力機器・電子部品であり、例えば、PCS20の出力電圧を所定の電圧に変換する。
【0029】
第三開閉器15は、一端が接続点18を介して第一開閉器12及び第二開閉器13と接続され、他端が第二変圧器16と接続される。第三開閉器15は、例えば、不図示の保護継電器との連携や、不図示の制御回路や上位装置からの投入指示又は開放指示に従って、電力系統11又はPCS20から自立負荷17に流れる電流を開閉する。第三開閉器15は、正常時には投入されているが、例えば、事故時などには不図示の保護継電器と連携して開放され、事故電流を遮断することで事故波及を防止し、自立負荷17の設備や電気機器等を保護する。
【0030】
第二変圧器16は、一端が第三開閉器15と接続され、他端が自立負荷17と接続される。第二変圧器16は、第一変圧器14と同様の電力機器等であり、例えば、電力系統11又はPCS20からの出力電圧を所定の電圧に変換する。
【0031】
電力変換装置(PCS)20は、接続点19を介して複数台並列接続されており、一端が接続点19を介して第一変圧器14と接続され、他端がそれぞれ後述の蓄電池21と接続される。図1に示すとおり、本明細書では、一例として、1号機から4号機までの4台のPCS20が並列接続されている場合について説明する。なお、PCS20の並列接続台数は、4台には限られず、自立並列運転可能な台数であれば何台でもよく、自立負荷17の大きさ等に応じて変動してもよい。
【0032】
ここで、本明細書において、4台のPCS20の構成はそれぞれ同一であるため、以下、4台のPCS20を区別する必要がないときは、PCS20として説明するが、4台のPCS20を区別する必要があるときは、枝番号を付して説明する。例えば、PCS1号機は、PCS20-1と枝番を付して説明し、PCS2号機は、PCS20-2と枝番号を付して説明する。また、本明細書において、4台のPCS20の構成はそれぞれ同一であるため、図面において、PCS2号機(PCS20-2)~PCS4号機(PCS20-4)の構成要素は、一部図示が省略されている。なお、以下、4台のPCS20の構成要素を区別する必要があるときは、各構成要素に枝番号を付して説明することがある。
【0033】
PCS20は、蓄電池21と、インバータ22と、リアクトル23と、コンデンサ24と、開閉器25と、直流電圧検出器26と、出力電流検出器27と、出力電圧検出器28と、制御装置40とを有する。なお、4台の各PCS20-1~20-4は、LAN(Local Area Network)ケーブル30を介して互いに接続され、互いに並列通信を行っている。4台の各PCS20-1~20-4は、LANケーブル30を介した並列通信によって、例えば、自号機の号機番号・運転状態・出力電流・位相情報・故障情報等を互いに送受信している。
【0034】
4台のPCS20は、例えば、電力系統11が停電した場合、不図示の上位装置やオペレータからの指示等に従い、公知の所定の制御に従ってマスタとスレーブとに分かれて自立並列運転する。この場合、PCS20は、蓄電池21から供給される直流電力を直流端から取得し、インバータ22を介して交流電力に変換して交流端から出力し、PCS20のみで自立負荷17に電力を供給する。
【0035】
蓄電池(ESS)21は、インバータ22の直流端と接続される。蓄電池21は、充電を行うことにより繰り返し使用することが出来る電池(化学電池)であり、例えば、制御装置40又は不図示の上位装置からの指示に従い、充電又は放電する。
【0036】
インバータ22は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の複数のスイッチング素子で構築され、直流端が蓄電池21と接続され、交流端がリアクトル23と接続される。インバータ22は、不図示のPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御回路によって生成される、スイッチング素子のゲート駆動信号であるパルス幅変調信号(PWM信号)によって制御される。インバータ22は、蓄電池21から供給される直流電力を直流端から取得し、PWM制御回路の制御に従い、取得した直流電力を交流電力に変換して交流端から出力する。
【0037】
リアクトル23は、インバータ22の交流端に設けられる平滑要素であり、例えば、コンデンサ24とともにインバータ22が発生させたリプル(高調波)を低減するフィルタ回路を構成する。
【0038】
コンデンサ24は、インバータ22の交流端に設けられる平滑要素であり、例えば、リアクトル23とともにインバータ22が発生させたリプル(高調波)を低減するフィルタ回路を構成する。
【0039】
開閉器25は、リアクトル23と、PCS20の交流端との間に設けられ、例えば、不図示の保護継電器との連携や、制御装置40又は不図示の上位装置からの投入指示又は開放指示に従って、PCS20から出力される交流電流を開閉する。開閉器25は、正常時には投入されているが、例えば、事故時などには不図示の保護継電器と連携して開放され、事故電流を遮断することで電力系統11や自立負荷17への事故波及を防止する。
【0040】
直流電圧検出器26は、例えば、蓄電池21とインバータ22との間に配置され、PCS20の直流電圧を検出する。直流電圧検出器26は、例えば、公知の直流電圧計又は直流電圧センサ等であり、直流電圧検出器26によって計測された直流電圧Viは、制御装置40によって取得される。なお、以下、本明細書において、記号iは、各PCS20の号機番号を示す。このため、例えば、PCS20-1(PCS1号機)の直流電圧Viは、V1と示され、PCS20-2(PCS2号機)の直流電圧Viは、V2と示される。
【0041】
出力電流検出器27は、例えば、リアクトル23と開閉器25との間に配置され、PCS20の出力電流ILiを検出する。出力電流検出器27は、例えば、公知の交流電流計又は交流電流センサ等であり、出力電流検出器27によって計測された出力電流ILiは、制御装置40によって取得される。なお、記号iは、上述のとおり、各PCS20の号機番号を示す。
【0042】
出力電圧検出器28は、例えば、リアクトル23と開閉器25との間に配置され、PCS20の出力電圧Vfbkを検出する。出力電圧検出器28は、例えば、公知の交流電圧計又は交流電圧センサ等であり、出力電圧検出器28によって計測された出力電圧Vfbkは、制御装置40によって取得される。
【0043】
LANケーブル30は、各PCS20-1~20-4を接続し、各PCS20-1~20-4は、LANケーブル30を介して互いに並列通信を行っている。各PCS20-1~20-4は、LANケーブル30を介した並列通信によって、例えば、自号機の号機番号・運転状態・出力電流・位相情報・故障情報等を互いに送受信している。なお、LANケーブル30は、各PCS20-1~20-4が互いに並列通信ための手段の一例であり、各PCS20-1~20-4が互いに並列通信が出来れば、有線又は無線の他の手段やケーブル等であってもよい。
【0044】
制御装置40は、例えば、PCS20の内部又は外部に設けられ、図中配線等は省略されているが、インバータ22を始めとするPCS20の各要素と、有線又は無線によって電気的に接続されている。なお、制御装置40は、不図示のインバータ制御回路の機能として実現されていてもよい。
【0045】
制御装置40は、例えば、プログラムを実行することにより動作するCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の後述のプロセッサ91(図6参照)を有する。制御装置40は、後述のメモリ92(図6参照)を有し、例えば、メモリ92に記憶された所定のプログラムを実行することによりプロセッサ91を動作させてPCS20の動作を統括的に制御する。
【0046】
図2は、図1に示した蓄電池用の電力変換装置20における制御装置(負荷電流配分調整装置)40の構成例を示す図である。
【0047】
制御装置40は、後述のメモリ92(図6参照)に記憶された所定のプログラムを実行することにより後述のプロセッサ91(図6参照)を動作させて負荷電流配分調整装置として機能する。すなわち、本実施形態の制御装置40は、「負荷電流配分調整装置」の一例である。制御装置40は、負荷電流配分調整装置として機能することで、各PCS20の各蓄電池21のSOCに応じて各インバータ22を制御すること等により、各PCS20の各出力電流ILiを統括的に制御する。
【0048】
制御装置(負荷電流配分調整装置)40は、例えば、後述のメモリ92(図6参照)に記憶された所定のプログラムを実行することにより、横流抑制制御部50と、負荷電流配分調整部60と、出力電流制御部70として機能する。なお、上記の各機能は、制御装置(負荷電流配分調整装置)40が有する演算処理装置が実行する負荷電流配分調整プログラムにより実現されてもよい。また、これらの各機能は、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0049】
横流抑制制御部50は、第一並列通信受信部51と、横流電流算出部52と、ΔP算出部53と、ΔP制御部54との機能を有する。なお、ΔP算出部53と、ΔP制御部54とは、「第一補正量算出部」の一例である。
【0050】
第一並列通信受信部51は、並列通信を行っているLANケーブル30を介して、各PCS20の各出力電流検出器27によって検出された各PCS20の各出力電流IL1~ILn(図1参照)を受信する。なお、以下、本明細書において、記号nは、自立並列運転中のPCS20の台数を示す。例えば、4台のPCS20が自立並列運転している場合、nは4である。第一並列通信受信部51は、受信した各PCS20の各出力電流IL1~ILnを横流電流算出部52に出力する。
【0051】
横流電流算出部52は、第一並列通信受信部51から取得した各PCS20の各出力電流IL1~ILnの平均電流Iavgと、PCS20の自号機の出力電流ILiとに基づいて、自号機の横流電流ΔIiを算出する。
【0052】
平均電流Iavgは、(1)式に基づいて算出される。なお、記号nは、上述のとおり、自立並列運転中のPCS20の台数を示す。例えば、4台のPCS20が自立並列運転している場合、nは4である。すなわち、n台の出力電流IL1~ILnの全てを加算したものをnで除算すると平均電流Iavgが算出される。
【0053】
Iavg=ΣILj/n(j=1~n)・・・(1)
【0054】
次に、PCS20の自号機の横流電流ΔIiは、(2)式に基づいて算出される。なお、記号iは、上述のとおり、各PCS20の号機番号を示す。例えば、自号機がPCS20-2(PCS2号機)である場合、iは2である。すなわち、平均電流Iavgから自号機の出力電流ILiを減算すれば、自号機の横流電流ΔIiが算出される。
【0055】
ΔIi=ILi-Iavg・・・(2)
【0056】
横流電流算出部52は、算出された自号機の横流電流ΔIiをΔP算出部53に出力する。
【0057】
ΔP算出部53は、横流電流算出部52から取得した自号機の横流電流ΔIiと、自号機の出力電圧検出器28によって検出された自号機の出力電圧Vfbk(図1参照)とに基づいて、自号機の有効電力ΔPを算出する。
【0058】
PCS20の自号機の有効電力ΔPは、(3)式に基づいて算出される。なお、記号iは、上述のとおり、各PCS20の号機番号を示す。すなわち、自号機の横流電流ΔIiと自号機の出力電圧Vfbkとを乗算することで、自号機の有効電力ΔPが算出される。
【0059】
ΔP=ΔIi×Vfbk・・・(3)
【0060】
ΔP算出部53は、算出された自号機の有効電力ΔPをΔP制御部54に出力する。
【0061】
ΔP制御部54は、PI(Proportional-Integral:比例・積分)制御部54aと、リミッタ54bとを有する。PI制御部54aは、ΔP算出部53から取得した自号機の有効電力ΔPにPI制御をかけて制御量を求め、リミッタ54bに出力する。リミッタ54bは、PI制御部54aから取得した制御量に所定の制限をかけて、電圧指令値V*の補正量ΔViを算出する。
【0062】
なお、電圧指令値V*は、定格電圧(固定値)であり、記号iは、上述のとおり、各PCS20の号機番号を示す。なお、電圧指令値V*の補正量ΔViは、「第一補正量」の一例である。ΔP制御部54は、算出された補正量ΔViを後述の補正量算出部65に出力する。なお、上述した横流抑制制御部50による補正量ΔViの算出方法は、「ΔP制御」の一例である。
【0063】
負荷電流配分調整部60は、第二並列通信受信部61と、ゲイン算出部62と、不感帯領域判定部63と、変化量リミッタ64と、補正量算出部65と、上下限リミッタ66との機能を有する。なお、補正量算出部65は、「第二補正量算出部」の一例である。
【0064】
第二並列通信受信部61は、並列通信を行っているLANケーブル30を介して、各PCS20の各直流電圧検出器26によって検出された各PCS20の各直流電圧V1~Vn(図1参照)を受信する。なお、記号nは、上述のとおり、自立並列運転中のPCS20の台数を示す。第二並列通信受信部61は、受信した各PCS20の各直流電圧V1~Vnをゲイン算出部62に出力する。
【0065】
ゲイン算出部62は、第二並列通信受信部61から取得した各PCSの各直流電圧V1~Vnの平均電圧Vavgと、PCS20の自号機の直流電圧Viとに基づいて、自号機の重みゲインKiを算出する。
【0066】
平均電圧Vavgは、(4)式に基づいて算出される。なお、記号nは、上述のとおり、自立並列運転中のPCS20の台数を示す。すなわち、n台の直流電圧V1~Vnの全てを加算したものをnで除算すると平均電圧Vavgが算出される。
【0067】
Vavg=ΣVj/n(j=1~n)・・・(4)
【0068】
次に、自号機の重みゲインKiは、(5)式に基づいて算出される。なお、記号iは、上述のとおり、各PCS20の号機番号を示す。すなわち、自号機の直流電圧Viを平均電圧Vavgで除算すれば、自号機の重みゲインKiが算出される。
【0069】
Ki=Vi/Vavg・・・(5)
【0070】
なお、自号機の直流電圧Viと、平均電圧Vavgとが同一の値の場合、重みゲインKiの値は1となる。すなわち、重みゲインKiの初期値は1である。ゲイン算出部62は、算出された自号機の重みゲインKiを不感帯領域判定部63に出力する。
【0071】
不感帯領域判定部63は、ゲイン算出部62から取得した重みゲインKiが、所定の不感帯領域にあるか否かを判定する。これにより、重みゲインKiが初期値の1に近い値のときは(小さい値のときは)、電圧指令値V*の補正量ΔViを調整しないようにすることができる。なお、不感帯領域にあるか否かの閾値は、例えば、PCS20が有する直流電圧検出器26の精度を勘案して設定されてもよい。これにより、直流電圧検出器26の検出誤差により重みゲインKiの値がふらつくことを防止することができる。なお、上述のとおり、重みゲインKiの初期値は1である。
【0072】
不感帯領域判定部63は、例えば、ゲイン算出部62によって算出された重みゲインKiの値が、所定の閾値よりも初期値の1に近い値のときは、不感帯領域にあると判定する。この場合、不感帯領域判定部63は、重みゲインKiの値として、初期値の1を変化量リミッタ64に出力する。
【0073】
一方、不感帯領域判定部63は、例えば、ゲイン算出部62によって算出された重みゲインKiの値が、所定の閾値よりも初期値の1から離れた値のときは、不感帯領域にはないと判定する。この場合、不感帯領域判定部63は、重みゲインKiの値として、ゲイン算出部62によって算出された重みゲインKiを変化量リミッタ64に出力する。
【0074】
変化量リミッタ64は、不感帯領域判定部63から取得した重みゲインKiの変化量が、所定の変化量を超えたときは、重みゲインKiの変化量を所定の変化量以内に制限する。直流電圧Viは、換言すれば蓄電池21(図1参照)の電池電圧であるため、電池電圧が高い場合、すなわち蓄電池21のSOCの状態によって、直流電圧Viは、急激に変化することがある。この場合、ゲイン算出部62によって算出される重みゲインKiも急激に変化することがあるが、変化量リミッタ64が存在することによって、重みゲインKiを緩やかに変化させることができる。また、重みゲインKiを緩やかに変化させることによって、PCS20の出力を緩やかに変化させることもできる。
【0075】
変化量リミッタ64は、重みゲインKiの変化量を所定の変化量以内に制限したときは、制限された重みゲインKi’を補正量算出部65に出力する。一方、変化量リミッタ64は、重みゲインKiの変化量を制限しないときは、不感帯領域判定部63から取得した重みゲインKiをそのまま重みゲインKi’として補正量算出部65に出力する。
【0076】
補正量算出部65は、ΔP制御部54から取得した補正量ΔViと、変化量リミッタ64から取得した重みゲインKi’とに基づいて、電圧指令値V*の自号機の補正量ΔVi’を算出する。
【0077】
電圧指令値V*の自号機の補正量ΔVi’は、(6)式に基づいて算出される。なお、記号iは、上述のとおり、各PCS20の号機番号を示す。すなわち、ΔP制御によって算出された電圧指令値V*の自号機の補正量ΔViに自号機の重みゲインKi’を乗算することで電圧指令値V*の自号機の補正量ΔVi’が算出される。
【0078】
ΔVi’=ΔVi×Ki’・・・(6)
【0079】
なお、電圧指令値V*の補正量ΔVi’は、「第二補正量」の一例である。補正量算出部65は、算出された電圧指令値V*の自号機の補正量ΔVi’を上下限リミッタ66に出力する。
【0080】
上下限リミッタ66は、補正量算出部65から取得した補正量ΔVi’が所定の上限値又は所定の下限値を超えたときは、補正量ΔVi’が所定の上限値又は所定の下限値以内に制限する。
【0081】
上下限リミッタ66は、補正量ΔVi’を所定の上限値又は所定の下限値以内に制限したときは、制限された補正量ΔVi”を後述の第一電圧指令値補正部71に出力する。一方、上下限リミッタ66は、補正量ΔVi’を所定の上限値又は所定の下限値以内に制限しないときは、補正量算出部65から取得した補正量ΔVi’をそのまま補正量ΔVi”として第一電圧指令値補正部71に出力する。
【0082】
すなわち、補正量ΔVi’が大きすぎると、電圧指令値V*と補正量ΔVi’とに基づく出力電力PがPCS20の定格電力を超える恐れがある。このため、上下限リミッタ66の上限値は可変とし、上下限リミッタ66は、補正量ΔVi’の上限値を制限することで、電圧指令値V*と補正量ΔVi”とに基づいて制御された出力電力PがPCS20の定格電力への到達を上限としてホールドする。このため、上下限リミッタ66を設けることで、電圧指令値V*と補正量ΔVi”とに基づいて制御された出力電力PがPCS20の定格電力を超えないようにすることができる。なお、電圧指令値V*の補正量ΔVi”は、「第三補正量」の一例である。
【0083】
出力電流制御部70は、第一電圧指令値補正部71と、第二電圧指令値補正部72と、PI制御部73と、リミッタ74と、二相三相変換部75との機能を有する。
【0084】
第一電圧指令値補正部71は、例えば、上位装置から取得した定格電圧(固定値)である電圧指令値V*と、上下限リミッタ66から取得した電圧指令値V*の自号機の補正量ΔVi”(第三補正量)とに基づいて、電圧指令値V*’を算出する。なお、第一電圧指令値補正部71は、加算器(減算器)であり、電圧指令値V*と、補正量ΔVi”とを加減算することで、電圧指令値V*’を算出する。第一電圧指令値補正部71は、算出された電圧指令値V*’を第二電圧指令値補正部72に出力する。
【0085】
第二電圧指令値補正部72は、第一電圧指令値補正部71から取得した電圧指令値V*’と、自号機の出力電圧検出器28によって検出された自号機の出力電圧Vfbk(図1参照)とに基づいて、電圧指令値V*”を算出する。なお、第二電圧指令値補正部72は、加算器(減算器)であり、電圧指令値V*’と、出力電圧Vfbkとを加減算することで、電圧指令値V*”を算出する。第二電圧指令値補正部72は、算出された電圧指令値V*”をPI制御部73に出力する。
【0086】
PI制御部73は、第二電圧指令値補正部72から取得した電圧指令値V*”にPI制御をかけて制御量を求める。PI制御部73は、求められた制御量をリミッタ74に出力する。
【0087】
リミッタ74は、PI制御部73から取得した制御量に所定の制限をかけて、電流指令値I*を求める。リミッタ74は、求められた電流指令値I*を二相三相変換部75に出力する。
【0088】
二相三相変換部75は、リミッタ74から取得した電流指令値I*と、位相θとに基づいて二相三相変換(dq/UVW変換)を行い、電流指令値I*UVWを算出する。なお、上述のとおり、本実施形態の複数台のPCS20は、マスタとスレーブとに分かれて自立並列運転している。このため、マスタのPCS20は、固定電圧指令・固定周波数制御が行われているため、位相θは、自号機の位相θが使用され、自走している。一方、スレーブのPCS20は、固定電圧指令で制御されるが、位相θは、並列通信を行っているLANケーブル30を介して取得したマスタの位相θの情報が使用される。そして、スレーブのPCS20は、マスタのPCS20に同期するため、取得したマスタの位相θに補正Δθがかけられている。
【0089】
二相三相変換部75は、算出された電流指令値I*UVWを不図示のPWM制御回路に出力する。PWM制御回路は、電流指令値I*UVWに基づいて、インバータ22(図1参照)のスイッチング素子のゲート駆動信号であるパルス幅変調信号(PWM信号)を生成し、インバータ22に出力する。インバータ22は、蓄電池21から供給される直流電力を直流端から取得し、PWM制御回路の制御に従い、取得した直流電力を交流電力に変換して交流端から出力する。
【0090】
<一実施形態の動作>
図3は、図2に示した制御装置(負荷電流配分調整装置)40における横流抑制制御部50の処理の一例を示すフローチャートである。図3のフローチャートは、例えば、系統側が停電したときなどの場合において、複数台のESS-PCS20が自立並列運転を開始したときに開始される。複数台のPCS20が自立並列運転を開始する場合、まずマスタのPCS20が起動して自走し、その後スレーブのPCS20が起動してマスタに同期して運転を開始する。
【0091】
ステップS1において、横流抑制制御部50の第一並列通信受信部51は、並列通信を行っているLANケーブル30を介して、各PCS20の各出力電流IL1~ILn(図1参照)を受信する。
【0092】
ステップS2において、横流抑制制御部50の横流電流算出部52は、各PCS20の各出力電流IL1~ILnの平均電流Iavgと、PCS20の自号機の出力電流ILiとに基づいて、自号機の横流電流ΔIiを算出する。
【0093】
ステップS3において、横流抑制制御部50のΔP算出部53は、自号機の横流電流ΔIiと、自号機の出力電圧Vfbk(図1参照)とに基づいて、自号機の有効電力ΔPを算出する。
【0094】
ステップS4において、横流抑制制御部50のΔP制御部54は、電圧指令値V*の自号機の補正量ΔViを算出する。
【0095】
図4は、図2に示した制御装置(負荷電流配分調整装置)40における負荷電流配分調整部60の処理の一例を示すフローチャートである。図4は、図3に示したフローチャートのAの続きを示す。
【0096】
ステップS11において、負荷電流配分調整部60の第二並列通信受信部61は、並列通信を行っているLANケーブル30を介して、各PCS20の各直流電圧V1~Vn(図1参照)を受信する。
【0097】
ステップS12において、負荷電流配分調整部60のゲイン算出部62は、各PCSの各直流電圧V1~Vnの平均電圧Vavgと、PCS20の自号機の直流電圧Viとに基づいて、自号機の重みゲインKiを算出する。
【0098】
ステップS13において、負荷電流配分調整部60の不感帯領域判定部63は、自号機の重みゲインKiが、所定の不感帯領域にあるか否かを判定する。不感帯領域判定部63は、重みゲインKiが、所定の不感帯領域にあると判定したときは(Yes側)、ステップS14に処理を移行させる。一方、不感帯領域判定部63は、重みゲインKiが、所定の不感帯領域に無いと判定したときは(No側)、ステップS15に処理を移行させる。
【0099】
ステップS14において、不感帯領域判定部63は、重みゲインKiの値として、初期値の1を変化量リミッタ64に出力する。
【0100】
ステップS15において、不感帯領域判定部63は、重みゲインKiの値として、ゲイン算出部62によって算出された重みゲインKiを変化量リミッタ64に出力する。
【0101】
ステップS16において、負荷電流配分調整部60の変化量リミッタ64は、重みゲインKiの変化量が、所定の変化量を超えたか否かを判定する。変化量リミッタ64は、重みゲインKiの変化量が、所定の変化量を超えたと判定したときは(Yes側)、ステップS17に処理を移行させる。一方、変化量リミッタ64は、重みゲインKiの変化量が、所定の変化量を超えていないと判定したときは(No側)、ステップS18に処理を移行させる。
【0102】
ステップS17において、変化量リミッタ64は、重みゲインKi’の値として、所定の変化量以内に制限された値を補正量算出部65に出力する。
【0103】
ステップS18において、変化量リミッタ64は、重みゲインKi’の値として、不感帯領域判定部63から取得した重みゲインKiをそのまま補正量算出部65に出力する。
【0104】
ステップS19において、負荷電流配分調整部60の補正量算出部65は、ΔP制御部54から取得した補正量ΔViと、変化量リミッタ64から取得した重みゲインKi’とに基づいて、電圧指令値V*の自号機の補正量ΔVi’を算出する。
【0105】
ステップS20において、負荷電流配分調整部60の上下限リミッタ66は、補正量ΔVi’が所定の上限値又は所定の下限値を超えたか否かを判定する。上下限リミッタ66は、補正量ΔVi’が所定の上限値又は所定の下限値を超えたと判定したときは(Yes側)、ステップS21に処理を移行させる。一方、上下限リミッタ66は、補正量ΔVi’が所定の上限値又は所定の下限値を超えていないと判定したときは(No側)、ステップS22に処理を移行させる。
【0106】
ステップS21において、上下限リミッタ66は、補正量ΔVi”として、所定の上限値又は所定の下限値以内に制限された値を第一電圧指令値補正部71に出力する。
【0107】
ステップS22において、上下限リミッタ66は、補正量ΔVi”として、補正量算出部65によって算出された補正量ΔVi’をそのまま第一電圧指令値補正部71に出力する。
【0108】
図5は、図2に示した制御装置(負荷電流配分調整装置)40における出力電流制御部70の処理の一例を示すフローチャートである。図5は、図4に示したフローチャートのBの続きを示す。
【0109】
ステップS31において、出力電流制御部70の第一電圧指令値補正部71は、電圧指令値V*と、自号機の電圧指令値V*の補正量ΔVi”とに基づいて、電圧指令値V*’を算出する。
【0110】
ステップS32において、出力電流制御部70の第二電圧指令値補正部72は、電圧指令値V*’と、自号機の出力電圧Vfbk(図1参照)とに基づいて、電圧指令値V*”を算出する。
【0111】
ステップS33において、出力電流制御部70のPI制御部73は、電圧指令値V*”にPI制御をかけて制御量を求める。
【0112】
ステップS34において、出力電流制御部70のリミッタ74は、取得した制御量に所定の制限をかけて、電流指令値I*を求める。
【0113】
ステップS35において、出力電流制御部70の二相三相変換部75は、電流指令値I*と、位相θとに基づいて二相三相変換(dq/UVW変換)を行い、電流指令値I*UVWを算出する。
【0114】
ステップS35において、不図示のPWM制御回路は、電流指令値I*UVWに基づいて、インバータ22(図1参照)のスイッチング素子のゲート駆動信号であるパルス幅変調信号(PWM信号)を生成し、インバータ22に出力する。
【0115】
ステップS36において、制御装置40は、例えば、不図示の上位装置、制御回路、オペレータ等から、PCS20の自立並列運転の終了指示を受け付けたか否かを判定する。制御装置40は、PCS20の自立並列運転の終了指示を受け付けたと判定したときは(Yes側)、図3図5のフローチャートを終了させる。一方、制御装置40は、PCS20の自立並列運転の終了指示を受け付けていないと判定したときは(No側)、ステップS1に処理を移行させ、ステップS1以降の処理を繰り返す。
【0116】
<ハードウェア構成例>
図6は、図1図5に示した実施形態における制御装置(負荷電流配分調整装置)40が有する処理回路90のハードウェア構成例を示す概念図である。上述した各機能は処理回路90により実現される。一態様として、処理回路90は、少なくとも1つのプロセッサ91と少なくとも1つのメモリ92とを備える。他の態様として、処理回路90は、少なくとも1つの専用のハードウェア93を備える。
【0117】
処理回路90がプロセッサ91とメモリ92とを備える場合、各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、メモリ92に格納される。プロセッサ91は、メモリ92に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。
【0118】
処理回路90が専用のハードウェア93を備える場合、処理回路90は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、又はこれらを組み合わせたものである。各機能は処理回路90で実現される。
【0119】
制御装置40が有する各機能は、それぞれ一部又は全部がハードウェアによって構成されてもよく、プロセッサが実行するプログラムとして構成されてもよい。すなわち、制御装置40は、コンピュータとプログラムとによっても実現可能であり、プログラムは、記憶媒体に記憶されることも、ネットワークを通して提供されることも可能である。
【0120】
<一実施形態の作用効果>
以上、図1図6に示す実施形態によれば、各PCS20の横流抑制制御部50は、それぞれ自号機の横流電流ΔIiを算出し、横流電流ΔIiに基づいて自号機の補正量ΔViを求める(S1~S4)。これにより、各PCS20は、電圧指令値V*を自号機の補正量ΔViで制御することができる(ΔP制御)。その結果、複数台のPCS20が自立並列運転する場合において、電力変換システム1(各PCS20)は、横流を抑制することができる。
【0121】
また、図1図6に示す実施形態によれば、各PCS20の負荷電流配分調整部60は、それぞれ自号機の直流電圧Vi(電池電圧)に基づいて重みゲインKi’を算出し、重みゲインKi’に基づいて補正量ΔVi’を算出する(S11~S19)。これにより、複数のPCS20が自立並列運転する場合において、電力変換システム1(各PCS20)は、各PCS20における各蓄電池21のSOCに基づいて各PCS20の出力電流配分を調整することができる。その結果、電力変換システム1(各PCS20)は、複数のPCS20の自立並列運転台数を維持させることができるとともに、自立負荷17の負荷変動に対する余裕を維持させることができる。
【0122】
また、図1図6に示す実施形態によれば、各PCS20の負荷電流配分調整部60は、不感帯領域判定部63により、ゲイン算出部62により算出された重みゲインKiが、不感帯領域にあるか否かを判定する(S13~S15)。これにより、重みゲインKiが初期値の1に近い値のときは、電圧指令値V*の補正量ΔViを調整しないようにすることができる。その結果、直流電圧検出器26の検出誤差により重みゲインKiの値がふらつくことを防止することができる。
【0123】
また、図1図6に示す実施形態によれば、各PCS20の負荷電流配分調整部60は、変化量リミッタ64により、重みゲインKiの変化量が、所定の変化量を超えたときは、重みゲインKiの変化量を所定の変化量以内に制限する(S16~S18)。これにより、重みゲインKiを緩やかに変化させることができ、その結果、PCS20が定格を超えないようにすることもできる。
【0124】
また、図1図6に示す実施形態によれば、各PCS20の負荷電流配分調整部60は、上下限リミッタ66により、補正量ΔVi’の上限値又は下限値以内に制限された補正量ΔVi”を求める(S20~S22)。これにより、補正量ΔVi’の上限値が制限されるため、電圧指令値V*と補正量ΔVi”とに基づいて制御された出力電力PがPCS20の定格電力への到達を上限としてホールドされる。その結果、上下限リミッタ66を設けることで、電圧指令値V*と補正量ΔVi”とに基づいて制御された出力電力PがPCS20の定格電力を超えないようにすることができる。
【0125】
<比較例>
図7は、比較例に係る制御装置140の構成例を示す図である。なお、図7に示す比較例において、図1図6に示す実施形態と同一又は同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略又は簡略化する。なお、図7に示すとおり、比較例に係る制御装置140は、図1図6に示す実施形態における制御装置40とは異なり、負荷電流配分調整部60を備えていないが、その他の構成は、図1図6に示す実施形態における制御装置40と同様である。なお、図示は省略するが、以下の説明において、比較例に係る制御装置140を備える電力変換装置(PCS)をPCS120と称し、PCS120を複数台備える電力変換システムを電力変換システム100と称する。
【0126】
ここで、例えば、複数台のPCS120が自立並列運転する場合において、全てのPCS120が固定電圧指令で制御される場合、各PCS120間には横流が発生する可能性がある。すなわち、各PCS120から出力される電流が、自立負荷17に流れず、接続点19を介して各PCS120間に流れることがある。
【0127】
しかし、図7に示す比較例では、制御装置140は、横流抑制制御部50を有しているため、それぞれ自号機の横流電流ΔIiを算出し、横流電流ΔIiに基づいて自号機の補正量ΔViを求めることができる。これにより、各PCS120は、電圧指令値V*を自号機の補正量ΔViで制御することができる(ΔP制御)。その結果、複数台のPCS120が自立並列運転する場合において、電力変換システム100(各PCS120)は、横流を抑制することができる。
【0128】
ところが、図7に示す比較例では、PCS120が自立並列運転する場合、横流については考慮されるが、各蓄電池21のSOCについては考慮されておらず、各PCS120からの出力は、定電圧定周波数出力となってしまう。このため、図7に示す比較例では、各PCS120は、出力電流をコントロールすることができず、それぞれ同等の出力となってしまう。自立並列運転中の各PCS120が同等の出力である場合、各蓄電池21の各SOCにより、SOCが低い蓄電池21が先に放電し切ってしまい、当該SOCが低い蓄電池21を有するPCS120が先に停止してしまう。この場合、図7に示す比較例では、自立負荷17へ給電するPCS120の自立並列運転台数が減ってしまうため、自立負荷17の負荷容量を削減する必要がある。また、図7に示す比較例では、対応するPCS120の自立並列運転台数が減った場合、自立負荷17における負荷の変動量に対する余裕も減るため、残りのPCS120が過負荷で止まるリスクがある。
【0129】
一方、図1図6に示す実施形態では、制御装置40は、負荷電流配分調整部60を有するため、それぞれ自号機の直流電圧Vi(電池電圧)に基づいて重みゲインKi’が算出され、重みゲインKi’に基づいて補正量ΔVi’が算出される。これにより、図1図6に示す実施形態では、複数のPCS20が自立並列運転する場合において、各蓄電池21の各SOCを考慮することができ、各蓄電池21の各SOCに基づいて各PCS20の出力電流配分を調整することができる。その結果、図1図6に示す実施形態では、電力変換システム1(各PCS20)は、複数のPCS20の自立並列運転台数を維持させることができるとともに、自立負荷17の負荷変動に対する余裕を維持させることができる。
【0130】
<実施形態の補足事項>
以上、図1図6に示す実施形態によれば、制御装置40の負荷電流配分調整部60は、不感帯領域判定部63を有する。しかし、不感帯領域判定部63の構成(機能)は、省略されてもよい。この場合、ゲイン算出部62によって算出された重みゲインKiは、ゲイン算出部62によって、変化量リミッタ64又は補正量算出部65に直接出力される。
【0131】
また、図1図6に示す実施形態によれば、制御装置40の負荷電流配分調整部60は、変化量リミッタ64を有する。しかし、変化量リミッタ64の構成(機能)は、省略されてもよい。この場合、ゲイン算出部62によって算出された重みゲインKi、又は不感帯領域判定部63によって制限された重みゲインKiは、ゲイン算出部62又は不感帯領域判定部63によって、補正量算出部65に直接出力される。
【0132】
また、図1図6に示す実施形態によれば、制御装置40の負荷電流配分調整部60は、上下限リミッタ66を有する。しかし、上下限リミッタ66の構成(機能)は、省略されてもよい。この場合、補正量算出部65によって算出された補正量ΔVi’は、補正量算出部65によって、第一電圧指令値補正部71に直接出力される。
【0133】
また、図1図6に示す実施形態によれば、直流電圧(=電池電圧)に基づいて重みゲインKiが算出されている。図1図6において、直流電圧を使用する仮条件は、各PCS20の蓄電池21が同じ(例えば、同タイプ、同容量、同電圧範囲等)であることである。蓄電池21は、電圧レベルが同じであれば、SOC(充電状態)も同じはずであり、一般に、PCS20が複数台並列接続される場合、同じタイプの蓄電池21やPCS20が購入され、並列接続されるはずだからである。
【0134】
一方、図1図6に示す実施形態によれば、例えば、蓄電池21の電池種別や容量が違う場合、直流電圧(=電池電圧)に基づいて蓄電池21の充電状態が同じか否かを判断することが出来ない。このため、この場合、図1図6に示す実施形態による方法では、重みゲインKiを算出することが出来ないため、直接各蓄電池21のSOC情報から重みゲインKiを算出してもよい。
【0135】
この場合、重みゲインKiは、(7)式及び(8)式に基づいて算出される。なお、各蓄電池21のSOC情報は、PCS20内では検出する手段が無いため、各蓄電池21から取得する必要がある。なお、SOCavgは、各蓄電池21のSOCの平均を示す。
【0136】
SOCavg=ΣSOCj/N(j=1~N)・・・(7)
【0137】
Ki=SOCi/SOCavg・・・(8)
【0138】
また、図1図6に示す実施形態によれば、本件開示の一態様として、自立並列運転されるPCS20が有する制御装置(負荷電流配分調整装置)40を例に説明したが、これには限られない。本件開示は、自立並列運転されるPCS20の制御装置(負荷電流配分調整装置)40の各部における処理ステップが行われる負荷電流配分調整方法としても実現可能である。
【0139】
また、本件開示は、自立並列運転されるPCS20の制御装置(負荷電流配分調整装置)40の各部における処理ステップをコンピュータに実行させる負荷電流配分調整プログラムとしても実現可能である。
【0140】
また、本件開示は、当該負荷電流配分調整プログラムが記憶された記憶媒体(非一時的なコンピュータ可読媒体)としても実現可能である。負荷電流配分調整プログラムは、例えば、CD(Compact Disc)あるいはDVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等のリムーバブルディスク等に記憶して頒布することができる。なお、負荷電流配分調整プログラムは、制御装置40が有する不図示のネットワークインタフェース等を介してネットワーク上にアップロードされてもよく、ネットワークからダウンロードされ、メモリ92等に格納されてもよい。
【0141】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0142】
1…電力変換システム;11…電力系統;12…第一開閉器;13…第二開閉器;14…第一変圧器;15…第三開閉器;16…第二変圧器;17…自立負荷;18…接続点;20,20-1~20-4…電力変換装置(PCS,ESS-PCS);21…蓄電池(ESS);22…インバータ;23…リアクトル;24…コンデンサ;25…開閉器;26…直流電圧検出器;27…出力電流検出器;28…出力電圧検出器;30…LANケーブル;40…制御装置(負荷電流配分調整装置);50…横流抑制制御部;51…第一並列通信受信部;52…横流電流算出部;53…ΔP算出部;54…ΔP制御部;54a…PI制御部;54b…リミッタ;60…負荷電流配分調整部;61…第二並列通信受信部;62…ゲイン算出部;63…不感帯領域判定部;64…変化量リミッタ;65…補正量算出部;66…上下限リミッタ;70…出力電流制御部;71…第一電圧指令値補正部;72…第二電圧指令値補正部;73…PI制御部;74…リミッタ;75…二相三相変換部;91…プロセッサ;92…メモリ;93…ハードウェア;100…電力変換システム;120…電力変換装置(PCS);140…制御装置;i…号機番号;I*…電流指令値;Iavg…平均電流;IL1~ILn…出力電流;ILi…出力電流;Ki,Ki’…重みゲイン;n…台数;P…出力電力;V*,V*’V*”…電圧指令値;V1~Vn…直流電圧;Vavg…平均電圧;Vfbk…出力電圧;Vi…直流電圧;ΔIi…横流電流;ΔP…有効電力;ΔV…補正;ΔVi,ΔVi’,ΔVi”…補正量;Δθ…補正;θ…位相
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7