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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】車両の制御方法及び車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/00 20060101AFI20240723BHJP
   F02B 37/16 20060101ALI20240723BHJP
   F02B 37/18 20060101ALI20240723BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20240723BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F02D29/00 C
F02D29/00 F
F02B37/16 B
F02B37/18 A
F02D43/00 301B
F02D43/00 301R
F02D41/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023531130
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2021024271
(87)【国際公開番号】W WO2023275910
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 慧
(72)【発明者】
【氏名】福家 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】森川 雅司
(72)【発明者】
【氏名】大道 和宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 康平
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-15633(JP,A)
【文献】特開2015-94288(JP,A)
【文献】特開2017-8898(JP,A)
【文献】特開平5-256157(JP,A)
【文献】実開昭63-143728(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0047607(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00 - 45/00
F02B 37/00 - 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、上記内燃機関の出力を変速する変速機と、上記内燃機関の吸気を過給する過給機と、上記過給機のコンプレッサを迂回するように上記内燃機関の吸気通路に接続されたリサーキュレーション通路と、上記リサーキュレーション通路に配置されたリサーキュレーション弁と、上記内燃機関の排気通路に配置された上記過給機のタービンと、上記タービンを迂回するように上記排気通路に接続されたバイパス通路と、上記バイパス通路に配置されたウエストゲート弁と、を有する車両の制御方法において、
上記変速機をシフトアップする際には、上記リサーキュレーション弁及び上記ウエストゲート弁を開弁するとともに、点火時期をリタードし、上記変速機のシフトアップが完了した際には、点火時期のリタードの終了と上記リサーキュレーション弁の閉弁とを異なるタイミングで実施し、
上記リサーキュレーション弁を閉弁するタイミングは、上記内燃機関の機関回転数、または、上記変速機のギヤ比に応じて決定する車両の制御方法。
【請求項2】
点火時期のリタードを終了した後に上記リサーキュレーション弁の閉弁を行う請求項1に記載の車両の制御方法。
【請求項3】
点火時期のリタードを終了してから上記リサーキュレーション弁を閉弁するするまでの時間は、上記内燃機関のシフトアップ時の機関回転数が高いほど長くなる請求項2に記載の車両の制御方法。
【請求項4】
点火時期のリタードを終了してから上記リサーキュレーション弁を閉弁するするまでの時間は、上記変速機のシフトアップ後のギヤ比が大きいほど長くなる請求項2または3に記載の車両の制御方法。
【請求項5】
上記リサーキュレーション弁を閉弁するタイミングは、点火時期のリタード終了に起因する上記内燃機関のトルク変動が極小値をとるタイミングである請求項1~4のいずれかに記載の車両の制御方法。
【請求項6】
上記内燃機関の運転状態が非過給領域である請求項1~5のいずれかに記載の車両の制御方法。
【請求項7】
内燃機関と、
上記内燃機関の出力を変速する変速機と、
上記内燃機関の吸気を過給する過給機と、
上記過給機のコンプレッサを迂回するように上記内燃機関の吸気通路に接続されたリサーキュレーション通路と、
上記リサーキュレーション通路に配置されたリサーキュレーション弁と、
上記内燃機関の排気通路に配置された上記過給機のタービンと、
上記タービンを迂回するように上記排気通路に接続されたバイパス通路と、
上記バイパス通路に配置されたウエストゲート弁と、を有する車両の制御方法において、
上記変速機をシフトアップする際には、上記リサーキュレーション弁及び上記ウエストゲート弁を開弁するとともに、点火時期をリタードし、上記変速機のシフトアップが完了した際には、点火時期のリタードの終了と上記リサーキュレーション弁の閉弁とを異なるタイミングで実施する制御部と、を有し、
上記制御部は、上記リサーキュレーション弁を閉弁するタイミングを上記内燃機関の機関回転数、または上記変速機のギヤ比に応じて決定する車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御方法及び車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両走行中のシフトアップの際に、内燃機関の点火時期を遅角側に制御するとともに、この制御時に所定のエアバイパス条件が成立するとエアバイパス弁を開弁する技術が開示されている。エアバイパス弁は、過給機のコンプレッサを迂回するように吸気通路に接続されたエアバイパス路に設けられている。
【0003】
この特許文献1は、点火時期を遅角側に制御することに排気ガスの熱エネルギーが上昇して過給機のタービン仕事が上昇した際に、エアバイパス弁を開弁することで過給圧を低下させること可能となっている。
【0004】
しかしながら、この特許文献1においては、点火時期を遅角側にする制御の終了時に、点火時期のリタードを終了するタイミングと、エアバイパス弁を閉弁するタイミングとが重なると、想定以上のトルクが発生して、車両の加速度が増大し、運転性能に悪影響を及ぼす虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-172417号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明の車両は、変速機をシフトアップする際には、リサーキュレーション弁を開弁するとともに、点火時期をリタードし、上記変速機のシフトアップが完了した際には、点火時期のリタードの終了と上記リサーキュレーション弁の閉弁とを異なるタイミングで実施する。
【0007】
本発明の車両は、変速機のシフトアップ終了時のトルクリカバー量が想定よりも増えてしまうことを抑制することができ、変速後の車両の加速度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明が適用される車両に搭載される内燃機関のシステム構成の一例を模式的に示した説明図。
図2】内燃機関の過給領域と非過給領域を模式的に示した説明図。
図3】トルクダウン制御を実施した際のタイミングチャート。
図4】車両の制御の内容を模式的に示した説明図。
図5】車両における制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明が適用される車両に搭載される内燃機関1のシステム構成の一例を模式的に示した説明図である。内燃機関1は、ピストン(図示せず)の往復直線運動をクランクシャフト(図示せず)の回転運動に変換して動力として取り出すいわゆるレシプロ式の内燃機関である。
【0011】
内燃機関1は、吸気通路2と排気通路3とを有している。吸気通路2は、吸気弁(図示せず)を介して燃焼室4に接続されている。排気通路3は、排気弁(図示せず)を介して燃焼室4に接続されている。
【0012】
内燃機関1は、燃焼室4内に燃料(ガソリン)を直接噴射する燃料噴射装置(図示せず)を有している。燃料噴射装置から噴射された燃料は、燃焼室4内で点火プラグ5により点火される。なお、燃料噴射装置は、内燃機関1の吸気ポートに燃料を噴射するものであってもよい。
【0013】
吸気通路2には、吸気中の異物を捕集するエアクリーナ6と、吸入空気量を検出するエアフローメータ7と、後述するコントロールユニット31からの制御信号によって開度が制御される電動のスロットル弁8と、が設けられている。
【0014】
エアフローメータ7は、スロットル弁8の上流側に配置されている。エアクリーナ6は、エアフローメータ7の上流側に配置されている。
【0015】
排気通路3には、三元触媒等の排気触媒装置9が設けられている。
【0016】
また、この内燃機関1は、吸気を過給する過給機(ターボ過給機)11を有している。過給機11は、吸気通路2に設けられたコンプレッサ12と、排気通路3に設けられたタービンとしての排気タービン13と、を有している。過給機11は、コンプレッサ12と排気タービン13を同軸上に備えている。コンプレッサ12は、スロットル弁8の上流側で、かつエアフローメータ7よりも下流側に配置されている。排気タービン13は、排気触媒装置9よりも上流側に配置されている。
【0017】
吸気通路2には、コンプレッサ12を迂回してコンプレッサ12の上流側と下流側を接続するリサーキュレーション通路15が接続されている。リサーキュレーション通路15は、その一端がコンプレッサ12の上流側で吸気通路2に接続され、その他端がコンプレッサ12の下流側で吸気通路2に接続されている。
【0018】
このリサーキュレーション通路15には、コンプレッサ12の下流側からコンプレッサ12の上流側へ過給圧を解放可能な電動のリサーキュレーション弁16が配置されている。リサーキュレーション弁16の開閉動作は、コントロールユニット31によって制御される。リサーキュレーション弁16は、基本的には、車両が減速するシーンでは開弁され、車両が加速するシーンでは閉弁する。
【0019】
また、吸気通路2には、スロットル弁8の上流側に、コンプレッサ12により圧縮(加圧)された吸気を冷却して充填効率を良くするインタクーラ17が設けられている。インタクーラ17は、リサーキュレーション通路15の他端よりも下流側に位置している。
【0020】
排気通路3には、排気タービン13を迂回して排気タービン13の上流側と下流側を接続するバイパス通路としての排気バイパス通路18が接続されている。排気バイパス通路18の下流側端は、排気触媒装置9よりも上流側の位置で排気通路3に接続されている。排気バイパス通路18には、排気バイパス通路18内の排気流量を制御する電動のウエストゲート弁19が配置されている。ウエストゲート弁19は、排気タービン13に導かれる排気ガスの一部を排気タービン13の下流側にバイパスさせることが可能であり、内燃機関1の過給圧を制御可能なものである。ウエストゲート弁19の開閉動作は、コントロールユニット31によって制御される。
【0021】
また、内燃機関1は、排気通路3から排気の一部をEGRガスとして吸気通路2へ導入(還流)する排気還流(EGR)が実施可能なものであって、排気通路3から分岐して吸気通路2に接続されたEGR通路20を有している。EGR通路20は、その一端が排気触媒装置9の下流側となる位置で排気通路3に接続され、その他端がエアフローメータ7の下流側となりコンプレッサ12の上流側となる位置で吸気通路2に接続されている。このEGR通路20には、EGR通路20内のEGRガスの流量を制御する電動のEGR弁21と、EGRガスを冷却可能なEGRクーラ22と、が設けられている。EGR弁21の開閉動作は、コントロールユニット31によって制御される。
【0022】
内燃機関1は、有段の自動の変速機23と組み合わされて車両に搭載されている。内燃機関1は、変速機23及び図示せぬ終減速装置を介して車両の駆動輪を駆動している。変速機23は、手動変速機であってもよい。
【0023】
コントロールユニット31は、制御部に相当するものであって、CPU、ROM、RAM及び入出力インターフェースを備えた周知のデジタルコンピュータである。
【0024】
コントロールユニット31には、上述したエアフローメータ7の検出信号のほか、車両の車速を検出する車速センサ32、内燃機関1のクランクシャフトのクランク角を検出するクランク角センサ33、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセル開度センサ34、過給圧を検出する過給圧センサ35と、大気圧を検出する大気圧センサ36、排気触媒装置9の上流側における排気空燃比を検出する空燃比センサとしてのA/Fセンサ37等の各種センサ類の検出信号が入力されている。
【0025】
クランク角センサ33は、内燃機関1の機関回転数を検出可能なものである。アクセル開度センサ34は、アクセルペダルの操作量であるアクセル開度のほか、アクセルペダルの操作速度であるアクセル変化速度を検出可能なものである。過給圧センサ35は、例えば過給圧としてスロットル弁8よりも下流側の吸気通路2内の圧力(吸気圧)を検出する。A/Fセンサ37は、例えば、排気空燃比に応じたほぼリニアな出力特性を有するいわゆる広域型空燃比センサである。
【0026】
また、コントロールユニット31は、変速機23の変速比制御等を行う変速機コントローラ41と車内ネットワーク42を介して接続されている。コントロールユニット31と変速機コントローラ41とは、両者間で必要な情報(信号)の授受を行っている。現在の変速段の情報は、変速機コントローラ41からコントロールユニット31へ出力されている。変速機23への変速指令は、コントロールユニット31から変速機コントローラ41へ出力されている。
【0027】
コントロールユニット31は、各種センサ類の検出信号に基づいて、燃料噴射装置から噴射される燃料の噴射量や噴射時期、点火プラグ5の点火時期、吸入空気量等を最適に制御するとともに、内燃機関1の空燃比を制御している。
【0028】
コントロールユニット31は、アクセル開度センサ34の検出値を用いて、内燃機関1の要求負荷(内燃機関1の負荷)を算出可能となっている。
【0029】
図2は、内燃機関1の過給領域と非過給領域を模式的に示した説明図である。内燃機関1は、高トルク領域が過給を行う過給領域であり、低トルク領域が過給を行わない非過給領域である。過給領域では、内燃機関1の過給圧が目標値となるようにウエストゲート弁19の開度がフィードバックされる。非過給領域では、ウエストゲート弁19が開弁(全開)状態となる。
【0030】
図2中に矢印で示すように非過給領域内でシフトアップして車両が加速するような場合、内燃機関1は、トルクダウンするために点火時期をリタードする。このトルクダウンは、シフトアップ前後の回転数を合わせるためである。このとき、内燃機関1は、点火時期のリタードにより排気ガスのエネルギーが上昇して自然過給が発生する可能性がある。
【0031】
そこで、内燃機関1の運転状態が非過給機領域内のときに行われる変速機23のシフトアップ時には、車両が加速するシーンではあるが、リサーキュレーション弁16を開弁する。そして、車両は、内燃機関1の運転状態が非過給機領域内のときに行われる変速機23のシフトアップが終了(完了)すると、内燃機関1の点火時期のリタードの終了とリサーキュレーション弁16の閉弁とを異なるタイミングで実施する。
【0032】
つまり、車両は、変速機23をシフトアップして加速する際には、リサーキュレーション弁16を開弁するとともに、内燃機関1に発生するトルクが減少するように点火時期をリタードする。そして、車両は、変速機23のシフトアップが完了した際には、点火時期のリタードの終了とリサーキュレーション弁16の閉弁とを異なるタイミングで(タイミングをずらして)実施する。換言すると、制御部としてのコントロールユニット31は、変速機23をシフトアップする際には、リサーキュレーション弁16を開弁するとともに、内燃機関1に発生するトルクが減少するように点火時期をリタードし、変速機23のシフトアップが完了した際には、点火時期のリタードの終了とリサーキュレーション弁16の閉弁とを異なるタイミングで実施する。
【0033】
図3は、トルクダウン制御を実施した際のタイミングチャートであり、トルクダウン制御の要件(点火時期のリタード要件)の有無、車両の加速度、内燃機関1のトルク、リサーキュレーション弁16の開度及びウエストゲート弁19の開度を対比して示している。ここで、トルクダウン制御の要件(点火時期のリタード要件)の有無とは、トルクダウン制御の実行要求の有無である。
【0034】
時刻T1は、変速機23のシフトアップが開始され、リサーキュレーション弁16を開弁し、内燃機関1の点火時期のリタードを開始するタイミングである。時刻T2は、変速機23のシフトアップが終了(完了)し、内燃機関1の点火時期のリタードを終了するタイミングである。時刻T3は、リサーキュレーション弁16を閉弁するタイミングである。
【0035】
点火時期のリタードが終了する時刻T2のタイミングでリサーキュレーション弁16を閉弁する場合には、点火時期のリタード終了によるトルク増とリサーキュレーション弁16の閉弁によるトルク増とが重なることになる。そのため、車両の加速度は、図3中に破線で示すように、内燃機関1の運転状態が非過給機領域内のときに行われる変速機23のシフトアップ終了時に、変速機23のシフトアップ前よりも一時的に大きくなる。
【0036】
また、内燃機関1のトルクは、図3中に破線で示すように、変速機23のシフトアップ前の状態に戻る際に大きく変動する。つまり、内燃機関1の点火時期のリタードが終了するタイミングとリサーキュレーション弁16を閉弁するタイミングが同時の場合、内燃機関1のトルクは、図3中に破線で示すように、時刻T2以降、変動を繰り返しながら目標値に収束する。
【0037】
図3中に破線で示すトルクの変化について詳述する。時刻t1、t2、t3は、内燃機関1のトルクが目標トルクを通過する(横切る)タイミングである。
【0038】
時刻T2~時刻t1の期間は、点火時期の変化率制限のため内燃機関1のトルクは徐々に上昇する。時刻T2~時刻t1の期間は、内燃機関1のトルクは、目標トルクよりも少ないので、空気量や燃料量を目標よりも増やしている。
【0039】
時刻t1~時刻t2の期間は、内燃機関1の点火時期が本来の点火時期に戻っているが、時刻T2~時刻t1の間に増やした空気量の影響により、内燃機関1のトルクが目標トルクよりも高くなる。時刻t1~時刻t2の期間は、内燃機関1のトルクを下げるために、空気量を目標よりも減らしている。
【0040】
時刻t2~時刻t3の期間は、時刻t1~時刻t2の期間に減らした空気量の影響により、内燃機関1のトルクが目標トルクよりも低くなる。時刻t2~時刻t3の期間は、内燃機関1のトルクを上げるために、空気量を目標よりも増やしている。
【0041】
時刻t3以降は、空気量を目標よりも減らすことと、空気量を目標よりも増やすことと、を交互に実施することで内燃機関1のトルクを目標値に収束させている。
【0042】
車両は、変速機23のシフトアップ後の加速度が変速機23のシフトアップ前の加速度よりも大きくなるほど運転性能が悪化する虞がある。これは、変速機23のシフトアップ後の加速度が変速機23のシフトアップ前の加速度よりも大きくなるほどより大きな押し出され感を乗員に与えるためである。
【0043】
そこで、上述した実施例の車両は、内燃機関1の点火時期のリタードが終了する時刻T2とは異なる時刻T3のタイミングでリサーキュレーション弁16を閉弁する。詳述すると、車両は、変速機23のシフトアップが終了する時刻T2のタイミングで内燃機関1の点火時期のリタードを終了し、点火時期のリタードを終了してから所定時間が経過した時刻T3のタイミングでリサーキュレーション弁16を閉弁する。
【0044】
これにより、車両の加速度は、図3中に実線で示すように、内燃機関1の運転状態が非過給機領域内のときに行われる変速機23のシフトアップ終了時に、変速機23のシフトアップ前よりも一時的に大きくなることが抑制される。
【0045】
つまり、上述した実施例の車両は、内燃機関1の点火時期のリタードを終了するタイミングと、リサーキュレーション弁16を閉じるタイミングと、が重ならないため、変速機23のシフトアップ終了時のトルクリカバー量が想定よりも増えてしまうことを抑制することができ、変速後の車両の加速度を低減することができる。
【0046】
また、内燃機関1のトルクは、図3中に実線で示すように、内燃機関1の運転状態が非過給機領域内のときに行われる変速機23のシフトアップ終了時に、変速機23のシフトアップ前の状態に戻る際の内燃機関1のトルクの変動が抑制される。
【0047】
点火時期のリタード終了に伴う内燃機関1のトルク変動の周期は、内燃機関1の機関回転数や変速機23のギヤ比と相関がある。従って、内燃機関1の点火時期のリタードを終了してからリサーキュレーション弁16を閉弁するまでの時間(ディレイ時間)は、内燃機関1の機関回転数や変速機23のギヤ比(例えばシフトアップ後のギヤ比)に応じて設定(決定)されている。すなわち、リサーキュレーション弁16を閉弁するタイミングは、内燃機関1の機関回転数や変速機23のギヤ比(例えばシフトアップ後のギヤ比)に応じて設定(決定)されている。
【0048】
換言すれば、リサーキュレーション弁16を閉弁するタイミングは、内燃機関1の点火時期のリタード終了に起因する内燃機関1のトルク変動が最初に極小値をとるタイミングに設定されている。なお、リサーキュレーション弁16を閉弁するタイミングは、内燃機関1のトルク変動が最初に極小値をとるタイミングではなく、内燃機関1のトルク変動が目標トルクよりも低くなる時期に設定しても構わない。
【0049】
内燃機関1の点火時期のリタードを終了してからリサーキュレーション弁16を閉弁するまでの時間(ディレイ時間)は、内燃機関1の機関回転数(シフトアップ時の機関回転数)が高いほど長くなる。
【0050】
内燃機関1の点火時期のリタードを終了してからリサーキュレーション弁16を閉弁するまでの時間は、変速機23のギヤ比(例えばシフトアップ後のギヤ比)が大きいほど長くなる。
【0051】
このようにリサーキュレーション弁16を閉弁するタイミングを決定することによって、車両は、点火時期のリタード終了に伴う内燃機関1のトルク変動を抑制することができる。
【0052】
なお、ウエストゲート弁19は、リサーキュレーション弁16との干渉を避けるため、リサーキュレーション弁16が開弁している間は全開状態に制御される。
【0053】
図4は、車両の制御の内容を模式的に示した説明図である。ステップS1では、トルクダウン制御の要件(点火時期のリタード要件)の有無及び変速機23のギヤ情報(例えば変速比)から内燃機関1のトルク要求を算出する。トルク要求は、例えば目標トルクであり目標過給圧である。ステップS2では、トルクダウン制御の要件(点火時期のリタード要件)の有無、変速機23のギヤ情報(例えば変速比)、目標過給圧、大気圧、過給圧センサ35の検出信号(実過給圧)、内燃機関1の機関回転数及び内燃機関1のトルクに応じてリサーキュレーション弁16の開弁を許可する。ステップS3では、目標過給圧、大気圧、過給圧センサ35の検出信号(実過給圧)、リサーキュレーション弁16の開弁状況及びウエストゲート弁19の実開度に応じた過給圧制御を実施するためにウエストゲート弁19の目標開度を算出する。ウエストゲート弁19の実開度は、例えば、センサ等を用いて検出可能である。ステップS4では、ステップS3で算出されたウエストゲート弁19の目標開度となるようにウエストゲート弁19を制御する。
【0054】
図5は、上述した実施例の車両における制御の流れを示すフローチャートである。
【0055】
ステップS11においては、シフトアップがされたか否かを判定する。ステップS11においてシフトアップがされたと判定された場合は、ステップS12へ進む。ステップS11においてシフトアップがされていないと判定された場合は、今回のルーチンを終了する。
【0056】
ステップS12では、非過給領域内で車両が加速する場合であるか否かを判定する。ステップS12において非過給領域内で車両が加速する場合であると判定された場合は、ステップS13へ進む。ステップS12において非過給領域内で車両が加速する場合ではないと判定された場合は、今回のルーチンを終了する。
【0057】
ステップS13では、吸入空気量が少ないか否かを判定する。具体的には、吸入空気量が所定値以上、または吸入空気量の変化量が所定値以上の場合には、吸入空気量が多いと判定し、ステップS14へ進む。吸入空気量が所定値未満、または吸入空気量の変化量が所定値未満の場合には、吸入空気量が少ないと判定し、今回のルーチンを終了する。
【0058】
ステップS14では、内燃機関1の点火時期のリタードを開始する。点火時期リタードのリタード量は、例えば、変速機23のクラッチの入力軸回転速度と出力軸回転速度との速度差に応じて設定される。なお、基準となる点火時期はMBTでもよく、ノック限界となる最進角の点火時期でもよい。ステップS15では、リサーキュレーション弁16を開弁する。ステップS16では、ウエストゲート弁19を開弁する。
【0059】
ステップS17では、更なる加速意図があるか否かを判定する。すなわち、アクセルペダルの変化速度が増加したか、あるいは内燃機関1が非過給領域から過給領域に移ったかを判定する。ステップS17において更なる加速意図があると判定された場合は、ステップS18へ進む。ステップS18では、リサーキュレーション弁16を閉弁する。その後、変速機23のシフトアップが完了すると、内燃機関1の点火時期のリタードを終了する。
【0060】
ステップS17において更なる加速意図がないと判定された場合は、ステップS19へ進む。ステップS19では、変速23のシフトアップが完了したら、内燃機関1の点火時期のリタードを終了する。ステップS20では、内燃機関1の点火時期のリタードを終了してからリサーキュレーション弁16を閉弁するまでの時間(ディレイ時間)を算出する。ディレイ時間は、内燃機関1の機関回転数や変速機23のギヤ比(シフトアップ後のギヤ比)に応じて設定される。ステップS21では、内燃機関1の点火時期のリタードを終了してから上記ディレイ時間が経過したか否かを判定する。ステップS22では、リサーキュレーション弁16を閉弁する。
【0061】
以上、本発明の具体的な実施例を説明してきたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。上述した実施例は、車両の制御方法及び車両の制御装置に関するものである。
図1
図2
図3
図4
図5