(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】生化学用前処理装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
G01N35/10 G
(21)【出願番号】P 2023538276
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016603
(87)【国際公開番号】W WO2023007866
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021123314
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 弘貴
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-207850(JP,A)
【文献】特開平6-3364(JP,A)
【文献】特開平11-304819(JP,A)
【文献】特開2010-181278(JP,A)
【文献】特開2015ー175707(JP,A)
【文献】国際公開第2015/178291(WO,A1)
【文献】特開2022-70138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する容器を複数保持する容器保持部と、チップを複数保持する第1チップ保持部と、使用された後の前記チップである使用済チップを複数保持する第2チップ保持部と、前記チップの脱着が可能なチップ脱着部と、前記チップ脱着部を変位可能に支持する支持機構とを備え、前記チップ脱着部に装着された前記チップを介して液体を吸引及び吐出する分注動作が少なくとも1回以上実施される分注処理を実行する生化学用前処理装置の制御方法であって、
前記チップ脱着部を変位させることで、当該チップ脱着部に前記チップを装着させるチップ装着ステップと、
前記チップ脱着部の変位に伴う当該チップ脱着部への負荷を検出する負荷検出ステップと、
前記分注処理において最初に使用される前記チップが前記チップ装着ステップで前記チップ脱着部に装着されたとき、当該分注処理を実行する前に、当該チップの先端部が前記第2チップ保持部に向かうように、当該チップ脱着部を変位させ、当該チップと当該第2チップ保持部に保持されている前記使用済チップとの衝突に起因する負荷が前記負荷検出ステップで検出されると、前記使用済チップの未廃棄を検出する未廃棄検出ステップとを含む、生化学用前処理装置の制御方法。
【請求項2】
液体を収容する容器を複数保持する容器保持部と、チップを複数保持する第1チップ保持部と、使用された後の前記チップである使用済チップを複数保持する第2チップ保持部と、前記チップの脱着が可能なチップ脱着部と、前記チップ脱着部を変位可能に支持する支持機構とを備え、前記チップ脱着部に装着された前記チップを介して液体を吸引及び吐出する分注動作が少なくとも1回以上実施される分注処理を実行する生化学用前処理装置であって、
前記チップ脱着部を変位させることで、当該チップ脱着部に前記チップを装着させるチップ装着処理部と、
前記チップ脱着部の変位に伴う当該チップ脱着部への負荷を検出する負荷検出処理部と、
前記分注処理において最初に使用される前記チップが前記チップ装着処理部により前記チップ脱着部に装着されたとき、当該分注処理を実行する前に、当該チップの先端部が前記第2チップ保持部に向かうように、当該チップ脱着部を変位させ、当該チップと当該第2チップ保持部に保持されている前記使用済チップとの衝突に起因する負荷が前記負荷検出処理部で検出されると、前記使用済チップの未廃棄を検出する未廃棄検出処理部とを備える、生化学用前処理装置。
【請求項3】
前記未廃棄検出処理部により、前記使用済チップの未廃棄が検出されたとき、前記チップ脱着部を変位させることで、当該チップ脱着部に装着されている前記チップを前記第2チップ保持部に保持させ、前記分注処理の実行を取り消す取消処理部をさらに備える、請求項2に記載の生化学用前処理装置。
【請求項4】
前記分注処理の実行に伴い使用される前記チップに関し、前記第2チップ保持部に備えられた複数の収容部への収容順序が予め定められており、
前記取消処理部は、前記未廃棄検出処理部により、前記使用済チップの未廃棄が検出されると、前記収容順序に基づいて、前記複数の収容部のうちの前記使用済チップが収容されていない可能性が最も高い収容部に前記チップ脱着部に装着されている前記チップを収容する、請求項3に記載の生化学用前処理装置。
【請求項5】
前記未廃棄検出処理部により、前記使用済チップの未廃棄が検出されたとき、その旨を報知する報知処理部をさらに備える、請求項2に記載の生化学用前処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学用前処理装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1で開示されるような遺伝子解析装置では、ノズルの先端に分注チップを装着した状態で液体の分注が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記遺伝子解析装置では、少なくとも生体由来の液体試料を分注するため、液体の分注毎に分注チップを交換し、液体試料においてコンタミネーションが生じることを防止する。
【0005】
このような装置では、液体の分注に使用されたチップは、筐体内で一時的に保持される。しかしながら、既に使用された分注チップの保持数には、限界がある。
【0006】
したがって、前回の一連の分注で使用された分注チップが筐体内から廃棄されていない状態で、次の一連の分注が行われると、今回の一連の分注で使用された分注チップが前回の一連の分注で使用された分注チップと接触する虞がある。このような場合、分注チップが適切に交換されないまま分注が続けられることにより、装置が故障する虞がある。さらに、装置の故障が生じた場合には、液体試料等が無駄になる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、分注処理を実行する際に使用済チップの未廃棄を予め検出することができる生化学用前処理装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、液体を収容する容器を複数保持する容器保持部と、チップを複数保持する第1チップ保持部と、使用された後の前記チップである使用済チップを複数保持する第2チップ保持部と、前記チップの脱着が可能なチップ脱着部と、前記チップ脱着部を変位可能に支持する支持機構とを備え、前記チップ脱着部に装着された前記チップを介して液体を吸引及び吐出する分注動作が少なくとも1回以上実施される分注処理を実行する生化学用前処理装置の制御方法であって、チップ装着ステップと、負荷検出ステップと、未廃棄検出ステップとを備える。前記チップ装着ステップでは、前記チップ脱着部を変位させることで、当該チップ脱着部に前記チップを装着させる。前記負荷検出ステップでは、前記チップ脱着部の変位に伴う当該チップ脱着部への負荷を検出する。前記未廃棄検出ステップでは、前記分注処理において最初に使用される前記チップが前記チップ装着ステップで前記チップ脱着部に装着されたとき、当該分注処理を実行する前に、当該チップの先端部が前記第2チップ保持部に向かうように、当該チップ脱着部を変位させ、当該チップと当該第2チップ保持部に保持されている前記使用済チップとの衝突に起因する負荷が前記負荷検出ステップで検出されると、前記使用済チップの未廃棄を検出する。
【0009】
本発明の第2の態様は、液体を収容する容器を複数保持する容器保持部と、チップを複数保持する第1チップ保持部と、使用された後の前記チップである使用済チップを複数保持する第2チップ保持部と、前記チップの脱着が可能なチップ脱着部と、前記チップ脱着部を変位可能に支持する支持機構とを備え、前記チップ脱着部に装着された前記チップを介して液体を吸引及び吐出する分注動作が少なくとも1回以上実施される分注処理を実行する生化学用前処理装置であって、チップ装着処理部と、負荷検出処理部と、未廃棄検出処理部とを備える。前記チップ装着処理部は、前記チップ脱着部を変位させることで、当該チップ脱着部に前記チップを装着させる。前記負荷検出処理部は、前記チップ脱着部の変位に伴う当該チップ脱着部への負荷を検出する。前記未廃棄検出処理部は、前記分注処理において最初に使用される前記チップが前記チップ装着処理部により前記チップ脱着部に装着されたとき、当該分注処理を実行する前に、当該チップの先端部が前記第2チップ保持部に向かうように、当該チップ脱着部を変位させ、当該チップと当該第2チップ保持部に保持されている前記使用済チップとの衝突に起因する負荷が前記負荷検出処理部で検出されると、前記使用済チップの未廃棄を検出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分注処理を実行する際に使用済チップの未廃棄を予め検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の前処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態の前処理装置の構成の一例の一部を示す分解斜視図である。
【
図3】本実施形態のテーブルの構成の一例を示す平面図である。
【
図4】本実施形態の第2チップ保持部の構成の一例を示す平面図である。
【
図5】本実施形態の第2チップ保持部及びカバー部材の構成の一例の一部を示す斜視図である。
【
図6】本実施形態の前処理装置の内部構成を示す概略断面図である。
【
図7】本実施形態の前処理装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】本実施形態のチップ収容処理を説明するための概略断面図である。
【
図9】本実施形態の未廃棄検出処理を説明するための概略断面図である。
【
図10】本実施形態のRAMのメモリマップの一例を示す図である。
【
図11】本実施形態の前処理装置の電気的構成を具体的に示すブロック図である。
【
図12】本実施形態のCPUの全体処理の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.前処理装置の周辺構成
図1は、本実施形態の前処理システム10の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、前処理システム10は、前処理装置12及びユーザ端末14を含む。
【0013】
前処理装置12は、生化学的な検査や分析を行うために必要とされる液体に対して予め処理を施すための生化学用前処理装置である。具体的には、チップ40(
図3参照)を介して液体の吸引及び吐出が可能な装置である。
【0014】
ユーザ端末14は、少なくともCPU、外部と通信を行うための通信部及び不揮発性メモリ等を備える装置であって、デスクトップPC、ノート(ラップトップ)PC又はタブレットPC等である。
【0015】
前処理装置12及びユーザ端末14は、ネットワーク16を介して接続される。ここでのネットワーク16としては、LAN(Local Area Network)やインターネットなどがある。また、前処理装置12及びユーザ端末14は、直接接続されてもよい。
【0016】
2.前処理装置の全体構成
図2は、本実施形態の前処理装置12の構成の一例の一部を示す分解斜視図である。前処理装置12は、本体20及びテーブル21を備える。本体20は、中空状の筐体により構成されている。また、テーブル21は、容器保持部22及び第1チップ保持部24を備える。テーブル21では、容器保持部22及び第1チップ保持部24が一体となるように構成されている。
【0017】
さらにまた、前処理装置12は、第2チップ保持部26を備える。
図2では、第2チップ保持部26は、テーブル21から分離された状態で図示されているが、この第2チップ保持部26は、テーブル21の空間28に収容された状態で使用される。
【0018】
図2では、テーブル21は、本体20から分離された状態で図示されているが、このテーブル21は、本体20の空間30内に内蔵されている。さらに、空間30を区画する壁には、開口部32が設けられている。
【0019】
第2チップ保持部26については、開口部32を介して、テーブル21から取り外すこと及びテーブル21に取り付けることができる。また、上述したように、テーブル21は、本体20に内蔵されるため、第2チップ保持部26については、本体20から取り外すこと及び本体20に取り付けることができるともいえる。
【0020】
図3は、本実施形態のテーブル21の構成の一例を示す平面図である。
図3に示すように、容器保持部22は、液体を収容する容器を複数保持する。また、容器保持部22は、試料容器保持部22a、試薬容器保持部22b及び反応容器保持部22cを含む。
【0021】
試料容器保持部22aは、液体試料を収容する試料容器34を複数保持する。液体試料は、生体から採取される試料であり、唾液又は血液等を例示することができる。試薬容器保持部22bは、液体試薬を収容する試薬容器36を複数保持する。反応容器保持部22cは、液体試料及び液体試薬が混合されている混合液を収容する反応容器38を複数保持する。第1チップ保持部24は、チップ40を複数保持する。
【0022】
また、テーブル21には、カバー部材42が設けられる。このカバー部材42は、薄い板状の部材であって、テーブル21内の空間28を覆う。つまり、第2チップ保持部26がテーブル21に取り付けられている場合、カバー部材42は、その第2チップ保持部26を覆う。
【0023】
カバー部材42は、貫通孔42aを有する。また、カバー部材42には、貫通孔42aを通過しようとするチップ40を引っ掛けるための引っ掛け部42bが複数形成されている。引っ掛け部42bのY方向の幅は、後述するチップ脱着部48bの下端部の外径よりも大きく、チップ40の上端部の外径よりも小さい。なお、引っ掛け部42bについては、チップ脱着部48b(
図6参照)の変位を妨げないように形成されている。
【0024】
図4は、本実施形態の第2チップ保持部26の構成の一例を示す平面図である。第2チップ保持部26は、チップ40を複数保持することができる。また、第2チップ保持部26は、既に使用されたチップ40である使用済チップ40aを複数保持することができる。複数の試料容器34内の液体試料に対する一連の前処理が終了した後、第2チップ保持部26に保持された使用済チップ40aは、第2チップ保持部26を本体20から取り外すことにより廃棄できる。使用済チップ40aが廃棄された後の空の第2チップ保持部26は、本体20に再度取り付けられ、次回の前処理時に使用される。
【0025】
図4に示す例では、第2チップ保持部26には、チップ40を摺接可能に保持するための溝44が設けられ、その溝44の両端部でチップ40が保持されている。
【0026】
図5は、本実施形態の第2チップ保持部26及びカバー部材42の構成の一例の一部を示す斜視図である。本実施形態では、第2チップ保持部26がテーブル21に取り付けられている場合、
図5に示すように、溝44は、Z方向(垂直方向)において、貫通孔42a及び引っ掛け部42bと重なる。本実施形態では、溝44の引っ掛け部42bと重なる部分は、チップ40を保持しつつ収容するための収容部46とされる。
【0027】
図3~
図5に示す貫通孔42a、引っ掛け部42b及び溝44は、あくまで一例であって、収容部46が構成されるのであれば、形状及び数は適宜変更されてもよい。
図4に示す例では、溝44の両端部が収容部46とされるが、たとえば、溝44の数を増やし、各溝44の一方の端部だけが収容部46とされるように構成されてもよい。
【0028】
図6は、本実施形態の前処理装置12の内部構成を示す概略断面図である。
図6に示すように、前処理装置12は、電気的に制御可能な分注機構48を備える。分注機構48は、液体を吸引及び吐出する機構であって、シリンジ48a、チップ脱着部48b及びプランジャ48cを備える。シリンジ48aは、円筒状の部材であって、プランジャ48cが摺動可能に挿入されている。
【0029】
チップ脱着部48bは、シリンジ48aよりも小径の円筒状の部材であって、チップ40の脱着が可能とされる。チップ脱着部48bとしては、たとえば、シリンジ48aの内部に連通する細長い円筒状のノズルが用いられる。チップ40は、下端に向かって徐々に先細りする細長い円筒状に形成されており、その上端部にチップ脱着部48bの下端部が圧入されることにより、チップ脱着部48bにチップ40が取り付けられる。
【0030】
また、図示は省略するが、分注機構48は、モータ等のアクチュエータ、プランジャ48cと連結される連結部材及びアクチュエータの駆動力をZ方向の動きとしてその連結部材に伝達する伝達機構等を備える。
【0031】
分注機構48によれば、プランジャ48cのストローク量に応じた量の液体を吸引及び吐出することができる。なお、上述した分注機構48は、あくまで一例であって、チップ脱着部48bを備え、液体を吸引及び吐出することができるのであれば、分注機構48の構成は特に限定されない。
【0032】
また、
図6に示すように、前処理装置12は、電気的に制御可能な支持機構50を備える。支持機構50は、分注機構48を変位可能に支持する機構であって、モータ等のアクチュエータ、分注機構48を構成するコンポーネントを支持する支持部材50a及びアクチュエータの駆動力をZ方向の動きとして支持部材50aに伝達する伝達機構等を備える。
【0033】
支持機構50によれば、分注機構48を支持しつつ、Z方向に変位させることができる。つまり、支持機構50によれば、チップ脱着部48bを支持しつつ、Z方向に変位させることができる。なお、上述した支持機構50は、あくまで一例であって、チップ脱着部48b等を支持しつつ、Z方向に変位させることができるのであれば、支持機構50の構成は特に限定されない。また、支持機構50は、分注機構48を水平方向(XY方向)にも変位可能とするように構成されてもよい。
【0034】
さらに、
図6に示すように、前処理装置12は、電気的に制御可能な保持機構52を備える。保持機構52は、テーブル21を変位可能に保持する機構であって、モータ等のアクチュエータ、テーブル21を保持する保持部材等を備える。また、保持機構52は、アクチュエータの駆動力をX方向及びY方向の動きとして保持部材に伝達する伝達機構を備える。
【0035】
保持機構52によれば、テーブル21を保持しつつ、水平方向に変位させることができる。なお、上述した保持機構52は、あくまで一例であって、テーブル21を保持しつつ、水平方向に変位させることができるのであれば、テーブル21の構成は特に限定されない。また、保持機構52は、テーブル21をZ方向にも変位可能とするように構成されてもよい。
【0036】
また、
図6に示すように、前処理装置12は、負荷吸収機構54を備える。負荷吸収機構54は、チップ脱着部48bの変位を許容することで、そのチップ脱着部48bへの負荷を吸収する機構である。なお、チップ脱着部48bにかかる負荷は、具体的に、チップ脱着部48bからシリンジ48aに向かう方向の力である。
【0037】
負荷吸収機構54は、付勢部材54a、固定部材54b及び変位部材54cを備える。付勢部材54aは、たとえば、圧縮コイルばねであって、固定部材54b及び変位部材54cの間に設けられる。また、付勢部材54aの一端は、固定部材54bに取り付けられ、他端は、変位部材54cに取り付けられる。
図6に示す例では、付勢部材54aは、固定部材54b及び変位部材54cの間において、シリンジ48aの外周を覆うように設けられる。
【0038】
固定部材54bは、支持部材50aに対して位置が固定される部材である。また、付勢部材54aの一端は、固定部材54bに取り付けられていることから、付勢部材54aの一端の位置は固定される。
図6に示す例では、固定部材54bは、シリンジ48aの外径よりも大きい径の貫通孔を有し、その貫通孔をシリンジ48aが貫通している。
【0039】
変位部材54cは、シリンジ48aの外周に設けられる部材である。また、付勢部材54aの他端は、変位部材54cに取り付けられていることから、付勢部材54aの他端の位置は、チップ脱着部48bからシリンジ48aに伝達される負荷に伴って変位する。
【0040】
負荷吸収機構54によれば、チップ脱着部48bへの負荷が生じると、チップ脱着部48bとともに変位部材54cが変位しつつ、付勢部材54aが圧縮される。すなわち、負荷吸収機構54によれば、チップ脱着部48bへの負荷が吸収される。一方で、チップ脱着部48bへの負荷が消失すると、付勢部材54aが圧縮される前の状態に戻るため、変位部材54c及びチップ脱着部48bが、チップ脱着部48bへの負荷が生じる前の位置まで変位する。
【0041】
なお、上述した負荷吸収機構54は、あくまで一例であって、チップ脱着部48bの変位を許容することで、そのチップ脱着部48bへの負荷を吸収することができるのであれば、負荷吸収機構54の構成は特に限定されない。たとえば、付勢部材54aは、圧縮コイルばねに限らず、他の弾性体により構成されていてもよい。
【0042】
また、前処理装置12は、負荷検出部56を備える。負荷検出部56は、チップ脱着部48bの変位に基づいて、そのチップ脱着部48bへの負荷を検出する。負荷検出部56は、変位部材56a及び負荷検出センサ56bを備える。
【0043】
変位部材56aは、変位部材54cと同様に、シリンジ48aの外周に設けられる部材であって、チップ脱着部48bからシリンジ48aに伝達される負荷に起因して変位する。負荷検出センサ56bは、物体の変位を検出するセンサであって、たとえば、フォトセンサ又は近接センサ等が用いられる。ただし、負荷検出センサ56bとしては、チップ脱着部48bへの負荷を検出することができれば、他の光学的センサ、機械的センサ又は電気的センサなどの各種センサを用いることができる。
【0044】
変位部材56aは、チップ脱着部48bへの負荷に応じて変位し、負荷検出センサ56bは、変位部材56aの変位を検出する。したがって、負荷検出部56によれば、チップ脱着部48bへの負荷を検出することができる。
【0045】
図6に示す例では、負荷検出センサ56bとして、フォトセンサを用いており、フォトセンサの発光部56c及び受光部56dが対向して配置される。チップ脱着部48bに負荷がかかると、発光部56cから受光部56dに向かって発せられる光が、変位部材56aによって遮断される。したがって、チップ脱着部48bへの負荷を検出することができる。
【0046】
3.前処理装置の電気的構成
図7は、本実施形態の前処理装置12の電気的構成の一例を示すブロック図である。
図7に示すように、前処理装置12は、分注機構48、支持機構50、保持機構52及び負荷検出センサ56b等以外に、制御部100、動作制御回路110、通信部112及び報知部114を備える。
【0047】
また、制御部100、負荷検出センサ56b、動作制御回路110、通信部112及び報知部114の各々は、バス等の配線108を介して、互いに電気的に接続される。また、動作制御回路110は、分注機構48、支持機構50、保持機構52に電気的に接続される。
【0048】
制御部100は、前処理装置12の全体的な制御を担う。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)102を備える。また、制御部100は、CPU102が直接的にアクセス可能なRAM(Random Access Memory)104および記憶部106を備える。
【0049】
CPU102は、前処理装置12の各コンポーネントを制御する。RAM104は、CPU102のワーク領域およびバッファ領域として用いられる。記憶部106は、不揮発性メモリであり、たとえば、記憶部106としてHDD(Hard Disc Drive)またはSSD(Solid State Drive)等が用いられる。
【0050】
記憶部106には、前処理装置12の各コンポーネントを制御するための制御プログラムおよび制御プログラムの実行に必要とされるデータ(実行用データ)等が記憶される。なお、記憶部106がRAM104を含むように構成されてもよい。
【0051】
動作制御回路110は、分注機構48、支持機構50及び保持機構52等を駆動させるための電圧を生成し、これらに電圧を適宜に印加する。
【0052】
通信部112は、外部と通信するための手段である。本実施形態では、通信部112は、ネットワーク16を介して、ユーザ端末14と通信可能に接続される。
【0053】
報知部114は、ユーザに対する報知を行うための手段である。報知部114としては、視覚的に報知するための、発光部材及びディスプレイ等を用いることができる。また、報知部114としては、聴覚的に報知するためのスピーカなども用いることができる。
【0054】
4.分注処理の概要
このような前処理装置12では、予め設定されたタイミングで分注処理を実行することができる。分注処理では、チップ脱着部48bに装着されたチップ40を介して液体を吸引及び吐出する分注動作が少なくとも1回以上実施される。また、本実施形態では、分注処理と並行してチップ装着処理及びチップ収容処理が実行される。
【0055】
チップ装着処理では、第1チップ保持部24で保持されているチップ40がチップ脱着部48bに装着される。チップ収容処理では、チップ脱着部48bに装着されているチップ40が収容部46に収容される。なお、これらの処理では、テーブル21の位置(XY方向の位置)及びチップ脱着部48bの位置(Z方向の位置)は、適宜に変位する。
【0056】
図8は、本実施形態のチップ収容処理を説明するための概略断面図である。チップ収容処理では、初めに、チップ脱着部48bが下方に変位することにより、
図8(a)に示すようにチップ40が第2チップ保持部26の溝44に挿入される。また、チップ40が溝44に挿入されると、テーブル21の位置がXY方向に変位し、
図8(b)に示すようにチップ40が収容部46内に配置される。
【0057】
次に、チップ脱着部48bがテーブル21から離間する。すると、引っ掛け部42bがチップ40の上端面に引っ掛かることによって、チップ脱着部48bからチップ40が取り外され、そのチップ40は、
図8(c)に示すように収容部46に収容される。
【0058】
本実施形態では、たとえば、分注処理の実行指示を受けると、チップ装着処理によりチップ脱着部48bにチップ40が装着される。チップ脱着部48bにチップ40が装着されると、分注動作が実施される。分注動作としては、試料容器34内の液体試料を吸引して反応容器38内に吐出する動作、試薬容器36内の液体試薬を吸引して別の試薬容器36内に吐出することにより液体試薬を混合する動作、混合された液体試薬を試薬容器36内から吸引して反応容器38内に吐出する動作などが挙げられる。分注動作が実施されると、チップ収容処理により、分注動作において使用されたチップ40は、収容部46に収容される。すなわち、収容部46には、使用済チップ40aが収容される。
【0059】
分注処理において分注動作が複数回行われる場合は、分注動作毎に、チップ40の装着及びチップ40の収容部46への収容が行われる。
【0060】
ただし、たとえば、分注動作を複数回行う場合であって、液体試料におけるコンタミネーションが生じないのであれば、前回の分注動作において使用したチップ40を継続して使用しても良い。たとえば、複数種類の液体試薬同士を混合する場合等は、チップ40を継続して使用しても良い。
【0061】
なお、分注処理において使用されるチップ40の複数の収容部46への収容順序(チップ収容順序)は予め定められる。予め設定される収容順序は、一定の順序であってもよいし、ユーザが任意に設定可能であってもよい。
【0062】
5.未廃棄検出処理の概要
本実施形態では、分注処理において最初に使用されるチップ40がチップ脱着部48bに装着されると、分注処理を実行する前に、未廃棄検出処理を実行し、未廃棄の使用済チップ40aの有無を検出する。
【0063】
未廃棄検出処理では、具体的に、負荷検出部56によるチップ脱着部48bへの負荷の検出に基づいて、使用済チップ40aの未廃棄を検出する。
図9は、本実施形態の未廃棄検出処理を説明するための概略断面図である。なお、
図9に示す例では、第2チップ保持部26は、未廃棄の使用済チップ40aを保持している。
図9に示す例では、使用済チップ40aは、破線で表される。
図9に示す例では、チップ40として、フィルタ付きのものを用いている。フィルタ付きのチップ40では、メッシュ状のフィルタがチップ40内の途中部に設けられており、フィルタの上方から下方への異物の混入を防止することができる。
【0064】
未廃棄検出処理では、チップ脱着部48bに装着されているチップ40が第2チップ保持部26、具体的には、収容部46に向かうように、チップ脱着部48bを変位させる。チップ脱着部48bの変位とは、第2チップ保持部26に対するチップ脱着部48bの相対的な変位を意味しており、チップ脱着部48b自体の変位だけでなく、チップ脱着部48bに対する第2チップ保持部26の変位も含まれる。本実施形態では、第2チップ保持部26をXY方向に変位させることにより、収容部46の上方にチップ脱着部48bを位置合わせした後、チップ脱着部48bを下方に変位させることにより、チップ40の先端部を収容部46に向かわせるようになっている。
【0065】
チップ40の太さは、上方に向かって徐々に太くなっているため、第2チップ保持部26に使用済チップ40aがない状態で、収容部46の上方からチップ脱着部48bを下方に変位させていくと、途中でチップ40が引っ掛け部42bに引っ掛かる。チップ40が引っ掛け部42bに引っ掛かるまでチップ脱着部48bを変位させてしまうと、使用済チップ40aの有無に関わらず、チップ脱着部48bへの負荷が検出されてしまう。すなわち、使用済チップ40aの有無の判断が不可能となる。
【0066】
このことを踏まえて、本実施形態では、所定条件を満たす形状及び種類のチップ40を用いる。収容部46の上方から下方に変位させたチップ40が引っ掛け部42bに引っ掛かったと仮定し、引っ掛け部42bからチップ40の先端までの距離をAとする。また、収容部46に収容されている使用済チップ40aの衝突要素から、引っ掛け部42bまでを距離をBとする。この場合、距離Aが距離Bよりも長いと、上記所定条件は満たされる。
【0067】
衝突要素は、たとえば、チップ40に設けられるフィルタが挙げられる。チップ40の形状及び種類によっては、たとえば、チップ40を形成する段差、テーパ面の一部等も衝突要素となりえる。
【0068】
上記所定条件を満たすチップ40によれば、収容部46内に未廃棄の使用済チップ40aが収容された状態で未廃棄検出処理が行われた場合に、チップ脱着部48bに装着されているチップ40が、引っ掛け部42bに引っ掛かるよりも先に、収容部46に収容されている使用済チップ40aと衝突する。
【0069】
また、本実施形態の未廃棄検出処理では、チップ脱着部48bを収容部46の上方から下方に向かって所定位置まで変位させる。ここでの所定位置は、チップ脱着部48bに装着されているチップ40が引っ掛け部42bと接触することなく、使用済チップ40aと衝突可能とされる位置である。
【0070】
使用済チップ40aが収容部46に収容されている場合、チップ脱着部48bが上記所定位置まで変位することで、チップ脱着部48bに装着されているチップ40とその使用済チップ40aとの衝突に起因する負荷がチップ脱着部48bにかかる。この場合、チップ脱着部48bへの負荷が負荷検出部56により検出される。
【0071】
一方で、使用済チップ40aが収容部46に収容されていない場合、チップ脱着部48bを上記所定位置まで変位させても、チップ40は使用済チップ40a及び引っ掛け部42bのいずれにも接触しないため、チップ脱着部48bへの負荷が検出されない。
【0072】
したがって、未廃棄検出処理では、チップ脱着部48bへの負荷が検出されたことに応じて、使用済チップの未廃棄を検出することができる。
【0073】
なお、未廃棄検出処理では、各収容部46に対して予め設定された順序で使用済チップ40aの有無を判断していく。未廃棄検出処理は、使用済チップ40aの未廃棄が検出された段階で終了する。すなわち、各収容部46の少なくとも1つに使用済チップ40aが残っていれば、未廃棄が検出されて未廃棄検出処理は終了する。また、未廃棄検出処理は、全ての収容部46において、使用済チップ40aが検出されない場合にも終了する。
【0074】
本実施形態では、使用済チップ40aの未廃棄が検出されると、チップ収容処理によって、チップ脱着部48bに装着されているチップ40は、収容部46に収容される。
【0075】
具体的に、チップ40は、チップ収容順序に基づいて、使用済チップ40aが収容されていない可能性が最も高い収容部46、すなわち、チップ収容順序の最後に対応する収容部46に収容される。仮に、チップ収容順序の最後に対応する収容部46に使用済チップ40aが収容されている場合であっても、引っ掛け部42bのX方向の長さが十分に確保されているため、当該収容部46に対してチップ収容処理を行うことにより、使用済チップ40aの横に並べて、チップ脱着部48bに装着されているチップ40を収容することができる。
【0076】
また、使用済チップ40aの未廃棄が検出されたことに応じて、チップ脱着部48bに装着されているチップ40が収容部46に収容されると、分注処理の実行は取り消される。なお、使用済チップ40aの未廃棄が検出されない場合、チップ脱着部48bに装着されているチップ40は収容部46に収容されず、そのまま分注処理が実行される。
【0077】
さらに、本実施形態では、使用済チップ40aの未廃棄が検出されると、その旨が報知部114により報知される。また、使用済チップ40aの未廃棄が検出された旨の報知は、ユーザ端末14でも行われる。ただし、使用済チップ40aの未廃棄が検出された旨の報知は、報知部114又はユーザ端末14のいずれか一方のみで行われてもよい。
【0078】
なお、負荷検出部56によるチップ脱着部48bへの負荷の検出は、未廃棄検出処理だけでなく、他の処理においても行われる。たとえば、チップ脱着部48bを変位させて第2チップ保持部26の一部に接触するか否かを負荷検出部56で検出することにより、第2チップ保持部26がテーブル21の空間28内に収容されているか否かを検出してもよい。このように、他の処理にも使用される負荷検出部56により未廃棄検出処理を行えば、センサを別途設ける必要がない。
【0079】
6.メモリマップ
図10は、本実施形態のRAM104のメモリマップ200の一例を示す図である。
図10に示すようにRAM104は、プログラム領域201およびデータ領域202を含む。
【0080】
プログラム領域201は、記憶部106から予め読み出された制御プログラムが記憶される。
図10に示す例では、制御プログラムは、動作プログラム201a、負荷検出プログラム201e、未廃棄検出プログラム201f、取消プログラム201g、通信プログラム201h及び報知プログラム201i等を含む。
【0081】
また、動作プログラム201aは、チップ装着プログラム201b、チップ収容プログラム201c及び分注プログラム201d等を含む。
【0082】
動作プログラム201aは、前処理装置12における動作を制御するプログラムである。
【0083】
チップ装着プログラム201bは、チップ装着処理に対応するプログラムである。すなわち、チップ装着プログラム201bは、第1チップ保持部24で保持されるチップ40をチップ脱着部48bに装着するプログラムである。
【0084】
チップ収容プログラム201cは、チップ収容処理に対応するプログラムである。すなわち、チップ収容プログラム201cは、後述する収容順序データ202bを参照したうえで、チップ脱着部48bに装着されているチップ40を取り外し、そのチップ40を収容部46に収容するプログラムである。
【0085】
分注プログラム201dは、分注処理に対応するプログラムである。すなわち、分注プログラム201dは、チップ40を介して液体を吸引及び吐出する分注動作を少なくとも1回以上実施するプログラムである。
【0086】
負荷検出プログラム201eは、負荷検出センサ56bを用いて、チップ脱着部48bへの負荷を検出するプログラムである。
【0087】
未廃棄検出プログラム201fは、未廃棄検出処理に対応するプログラムである。すなわち、未廃棄検出プログラム201fは、チップ装着プログラム201bにより分注処理において最初に使用されるチップ40がチップ脱着部48bに装着されたとき、その分注処理を実行する前に、動作プログラム201aで、チップ脱着部48bに装着されているチップ40の先端部が第2チップ保持部26に向かうように、チップ脱着部48bを変位させるプログラムである。また、未廃棄検出プログラム201fは、チップ脱着部48bに装着されているチップ40と第2チップ保持部26に保持されている使用済チップ40aとの衝突に起因する負荷が負荷検出プログラム201eにより検出されると、使用済チップ40aの未廃棄を検出するプログラムである。
【0088】
取消プログラム201gは、未廃棄検出プログラム201fにより使用済チップ40aの未廃棄が検出されると、チップ収容プログラム201cで、使用済チップ40aが収容されていない可能性が最も高い収容部46にチップ脱着部48bに装着されているチップ40を収容し、分注処理の実行を取り消すプログラムである。
【0089】
通信プログラム201hは、通信部112を制御し、ユーザ端末14と通信するためのプログラムである。
【0090】
報知プログラム201iは、使用済チップ40aの未廃棄が検出されたき、その旨を報知部114やユーザ端末14で報知するプログラムである。
【0091】
なお、図示は省略するが、プログラム領域201には、動作プログラム201a等以外の制御プログラムも記憶される。
【0092】
データ領域202には、予め記憶部106から読み出された実行用データが記憶される。
図10に示す例では、データ領域202に、制御用データ202a、収容順序データ202b及び報知用データ202c等が記憶される。
【0093】
制御用データ202aは、前処理装置12における動作を制御するのに必要な各種データである。収容順序データ202bは、チップ収容順序に対応するデータである。
【0094】
報知用データ202cは、使用済チップ40aの未廃棄を報知するのに必要なデータである。また、報知用データ202cは、報知の方式に対応したデータである。たとえば、報知用データ202cは、音声データ、メッセージデータ、発光パターンを示すデータ等である。
【0095】
また、データ領域202には、他の実行用データが記憶されたり、負荷検出センサ56bから出力される信号に対応するデータが一時的に記憶されたりしてもよい。さらに、データ領域202には、制御プログラムの実行に必要なタイマ(カウンタ)およびレジスタが設けられてもよい。
【0096】
7.具体的な分注装置の電気的構成
図11は、本実施形態の前処理装置12の電気的構成を具体的に示すブロック図である。CPU102を含む制御部100において、CPU102が動作プログラム201aを実行することで、制御部100は、前処理装置12における動作を制御する動作処理部300として機能する。
【0097】
具体的に、CPU102がチップ装着プログラム201bを実行することで、制御部100は、チップ装着処理部302として機能する。チップ装着処理部302は、支持機構50及び保持機構52等を制御し、第1チップ保持部24で保持されるチップ40をチップ脱着部48bに装着する。
【0098】
また、CPU102がチップ収容プログラム201cを実行することで、制御部100は、チップ収容処理部304として機能する。チップ収容処理部304は、チップ脱着部48bに装着されているチップ40を取り外し、収容部46に収容する。
【0099】
さらに、CPU102が分注プログラム201dを実行することで、制御部100は、分注処理部306として機能する。分注処理部306は、チップ40を介して液体を吸引及び吐出する分注動作を少なくとも1回以上実施する。
【0100】
また、CPU102が負荷検出プログラム201eを実行することで、制御部100は、負荷検出処理部308として機能する。負荷検出処理部308は、負荷検出センサ56bを用いて、チップ脱着部48bへの負荷を検出する。
【0101】
さらに、CPU102が未廃棄検出プログラム201fを実行することで、制御部100は、未廃棄検出処理部310として機能する。未廃棄検出処理部310は、分注処理において最初に使用されるチップ40がチップ装着処理部302によりチップ脱着部48bに装着されたとき、その分注処理を実施する前に、動作処理部300で、チップ脱着部48bに装着されているチップ40の先端部が第2チップ保持部26に向かうように、チップ脱着部48bを変位させる。また、未廃棄検出処理部310は、チップ脱着部48bに装着されているチップ40と第2チップ保持部26に保持されている使用済チップ40aとの衝突に起因する負荷が負荷検出処理部308で検出されると、使用済チップ40aの未廃棄を検出する。
【0102】
さらにまた、CPU102が取消プログラム201gを実行することで、制御部100は、取消処理部312として機能する。取消処理部312は、未廃棄検出処理部310により使用済チップ40aの未廃棄が検出されると、チップ収容処理部304で、使用済チップ40aが収容されていない可能性が最も高い収容部46にチップ脱着部48bに装着されているチップ40を収容し、分注処理の実行を取り消す。
【0103】
また、CPU102が報知プログラム201iを実行することで、制御部100は、報知処理部314として機能する。報知処理部314は、使用済チップ40aの未廃棄が検出されたき、その旨を報知する。
【0104】
さらに、CPU102が通信プログラム201hを実行することで、制御部100は、通信処理部316として機能する。通信処理部316は、通信部112を用いて、ユーザ端末14と通信する。
【0105】
8.フロー
図12は、本実施形態のCPU102の全体処理の一例を示すフロー図である。全体処理は、たとえば、前処理装置12が、ユーザ端末14から分注処理の実行を指示するコマンドを受信すると、開始される。
【0106】
まず、ステップS1のチップ装着ステップにより、第1チップ保持部24で保持されているチップ40をチップ脱着部48bに装着する。
【0107】
その後、ステップS2の未廃棄検出ステップにより、収容部46で使用済チップ40aの未廃棄を検出したかどうかを判断する。この未廃棄検出ステップには、チップ脱着部48bの変位に伴う当該チップ脱着部48bへの負荷を検出する負荷検出ステップが含まれる。ステップS2で“No”であれば、つまり、使用済チップ40aの未廃棄が検出されていないのであれば、ステップS6に進む。
【0108】
一方、ステップS2で“Yes”であれば、つまり、使用済チップ40aの未廃棄が検出されたのであれば、ステップS3に進む。
【0109】
ステップS3では、チップ脱着部48bに装着されているチップ40を収容部46に収容する。その後、ステップS4で、分注処理の実行を取り消し、ステップS5で、使用済チップ40aの未廃棄を報知する。ステップS3及びS4は取消ステップであり、ステップS5は報知ステップである。このように分注処理の実行が取り消された場合には、全体処理は終了する。
【0110】
ステップS6では、全ての収容部46で使用済チップ40aの有無を確認したかどうかを判断する。ステップS6で“No”であれば、つまり、全ての収容部46で使用済チップ40aの有無の確認を終えていないのであれば、ステップS2に戻る。
【0111】
一方、ステップS6で“Yes”であれば、つまり、全ての収容部46で使用済チップ40aの有無の確認を終えているのであれば、全体処理は終了する。
【0112】
9.変形例
以上の実施形態では、試料容器保持部22a、試薬容器保持部22b、反応容器保持部22c、第1チップ保持部24及び第2チップ保持部26を備え、チップ40を介して液体試薬の吸引及び吐出、液体試料の吸引及び吐出が可能とされる装置を例に挙げて説明した。
【0113】
しかし、前処理装置12は、試薬容器保持部22b及び反応容器保持部22cを備えていない構成であってもよい。この場合、前処理装置12は、試料容器保持部22a、第1チップ保持部24及び第2チップ保持部26を備え、チップ40を介して液体試料の吸引及び吐出を行うことにより、複数の試料容器34から混合容器(プール容器)に液体試料を分注して混合できるように構成されてもよい。
【0114】
なお、上述の実施形態等で挙げた具体的な構成等は一例であり、実際の製品に応じて適宜変更することが可能である。また、上述の実施形等で示したフロー図の各ステップは、同じ結果が得られるのであれば、処理される順番は適宜変更することが可能である。
【0115】
10.態様
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0116】
(第1項)一態様に係る生化学用前処理装置の制御方法は、
液体を収容する容器を複数保持する容器保持部と、チップを複数保持する第1チップ保持部と、使用された後の前記チップである使用済チップを複数保持する第2チップ保持部と、前記チップの脱着が可能なチップ脱着部と、前記チップ脱着部を変位可能に支持する支持機構とを備え、前記チップ脱着部に装着された前記チップを介して液体を吸引及び吐出する分注動作が少なくとも1回以上実施される分注処理を実行する生化学用前処理装置の制御方法であって、
前記チップ脱着部を変位させることで、当該チップ脱着部に前記チップを装着させるチップ装着ステップと、
前記チップ脱着部の変位に伴う当該チップ脱着部への負荷を検出する負荷検出ステップと、
前記分注処理において最初に使用される前記チップが前記チップ装着ステップで前記チップ脱着部に装着されたとき、当該分注処理を実行する前に、当該チップの先端部が前記第2チップ保持部に向かうように、当該チップ脱着部を変位させ、当該チップと当該第2チップ保持部に保持されている前記使用済チップとの衝突に起因する負荷が前記負荷検出ステップで検出されると、前記使用済チップの未廃棄を検出する未廃棄検出ステップとを含んでもよい。
【0117】
第1項に記載の生化学用前処理装置の制御方法によれば、使用済チップが廃棄されることなく第2チップ保持部に保持されている場合には、その使用済チップにチップ脱着部に装着されたチップが衝突することにより、分注処理を実行する前に使用済チップの未廃棄が検出される。すなわち、分注処理を実行する際に使用済チップの未廃棄を予め検出することができる。これにより、装置の故障を防止できるとともに、液体試料等が無駄になることを防止できる。
【0118】
(第2項)一態様に係る生化学用前処理装置は、
液体を収容する容器を複数保持する容器保持部と、チップを複数保持する第1チップ保持部と、使用された後の前記チップである使用済チップを複数保持する第2チップ保持部と、前記チップの脱着が可能なチップ脱着部と、前記チップ脱着部を変位可能に支持する支持機構とを備え、前記チップ脱着部に装着された前記チップを介して液体を吸引及び吐出する分注動作が少なくとも1回以上実施される分注処理を実行する生化学用前処理装置であって、
前記チップ脱着部を変位させることで、当該チップ脱着部に前記チップを装着させるチップ装着処理部と、
前記チップ脱着部の変位に伴う当該チップ脱着部への負荷を検出する負荷検出処理部と、
前記分注処理において最初に使用される前記チップが前記チップ装着処理部により前記チップ脱着部に装着されたとき、当該分注処理を実行する前に、当該チップの先端部が前記第2チップ保持部に向かうように、当該チップ脱着部を変位させ、当該チップと当該第2チップ保持部に保持されている前記使用済チップとの衝突に起因する負荷が前記負荷検出処理部で検出されると、前記使用済チップの未廃棄を検出する未廃棄検出処理部とを備えてもよい。
【0119】
第2項に記載の生化学用前処理装置によれば、使用済チップが廃棄されることなく第2チップ保持部に保持されている場合には、その使用済チップにチップ脱着部に装着されたチップが衝突することにより、分注処理を実行する前に使用済チップの未廃棄が検出される。すなわち、分注処理を実行する際に使用済チップの未廃棄を予め検出することができる。これにより、装置の故障を防止できるとともに、液体試料等が無駄になることを防止できる。
【0120】
(第3項)第2項に記載の生化学用前処理装置において、
前記未廃棄検出処理部により、前記使用済チップの未廃棄が検出されたとき、前記チップ脱着部を変位させることで、当該チップ脱着部に装着されている前記チップを前記第2チップ保持部に保持させ、前記分注処理の実行を取り消す取消処理部をさらに備えてもよい。
【0121】
第3項に記載の生化学用前処理装置によれば、使用済チップの未廃棄が検出されたときには、分注処理の実行が取り消されるため、使用済チップが廃棄されていない状態で分注処理が実行されるのを確実に防止することができる。また、使用済チップの未廃棄を検出するために使用したチップが、チップ脱着部から取り外されて第2チップ保持部に保持されるため、当該チップが再利用されることによりコンタミネーション等が生じるのを防止することができる。
【0122】
(第4項)第3項に記載の生化学用前処理装置において、
前記分注処理の実行に伴い使用される前記チップに関し、前記第2チップ保持部に備えられた複数の収容部への収容順序が予め定められており、
前記取消処理部は、前記未廃棄検出処理部により、前記使用済チップの未廃棄が検出されると、前記収容順序に基づいて、前記複数の収容部のちの前記使用済チップが収容されていない可能性が最も高い収容部に前記チップ脱着部に装着されている前記チップを収容してもよい。
【0123】
第4項に記載の生化学用前処理装置によれば、使用済チップの未廃棄を検出するために使用したチップが、チップ脱着部から取り外されて第2チップ保持部に収容されるときに、当該チップを使用済チップが収容されていない収容部に保持できる可能性が高い。したがって、使用済チップの未廃棄を検出するために使用したチップを、より良好にチップ脱着部から取り外して収容部に収容することができる。
【0124】
(第5項)第2項から第4項のいずれか一項に記載の生化学用前処理装置において、
前記未廃棄検出処理部により、前記使用済チップの未廃棄が検出されたとき、その旨を報知する報知処理部をさらに備えてもよい。
【0125】
第5項に記載の生化学用前処理装置によれば、使用済チップが廃棄されていない旨を報知することにより、使用済チップの廃棄をユーザに促すことができる。
【符号の説明】
【0126】
12 前処理装置
22 容器保持部
24 第1チップ保持部
26 第2チップ保持部
40 チップ
40a 使用済チップ
44 収容部
48b チップ脱着部
50 支持機構
302 チップ装着処理部
308 負荷検出処理部
310 未廃棄検出処理部
312 取消処理部
314 報知処理部