(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】前処理装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
G01N35/10 B
(21)【出願番号】P 2023539646
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016632
(87)【国際公開番号】W WO2023013177
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021127981
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】藤次 陽平
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 弘貴
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-330618(JP,A)
【文献】特開2007-107915(JP,A)
【文献】特開2020-56802(JP,A)
【文献】特開平11-304819(JP,A)
【文献】特開2012-181136(JP,A)
【文献】国際公開第2016/35139(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理に使用される液体を収容するための容器を複数保持する容器保持部と、
前記容器保持部に保持されている前記容器内の液体を吸引及び吐出することにより分注動作を行う分注機構と、
前記容器保持部を保持し、当該容器保持部を変位させることにより前記分注機構に対する位置合わせを行う保持機構と、
前記保持機構により前記容器保持部を変位させているときに、当該容器保持部に保持されている前記容器に対して衝突可能な接触部と、
前記容器に対する前記接触部の衝突に伴う当該接触部への負荷を検出する負荷検出処理部と、
前記負荷検出処理部により前記接触部への負荷が検出されたとき、又は、検出されなかったときに、その旨を報知する報知処理部とを備える、前処理装置。
【請求項2】
前記容器保持部は、前記容器を所定の高さ以下に複数保持するものであり、
前記接触部は、前記容器保持部に保持されている複数の前記容器のうち少なくとも1つの容器が、前記所定の高さよりも高い位置に浮き上がっているときに、前記少なくとも1つの容器に対して衝突する、請求項1に記載の前処理装置。
【請求項3】
前記接触部は、回転軸を中心に回転可能であり、前記少なくとも1つの容器に対する衝突に伴い回転するように構成され、
前記負荷検出処理部は、前記接触部の回転を検出する、請求項2に記載の前処理装置。
【請求項4】
前記保持機構は、前記容器保持部に対する容器の設置が可能な設置可能領域と、前記容器保持部に保持されている前記容器内の液体に対する分注動作が可能な分注可能領域との間で、前記容器保持部を前後方向に変位可能であり、
前記接触部は、前記分注機構の下方における前記分注可能領域の上方の空間の少なくとも一部を前後方向に塞ぐように、前後方向に対して交差する方向に延びている、請求項2に記載の前処理装置。
【請求項5】
第1回転軸を中心に前記接触部を回転可能に支持するとともに、前記第1回転軸とは異なる第2回転軸を中心に回転可能な支持部と、
前記第2回転軸を中心に前記支持部を回転させることにより、退避位置と検出位置との間で前記支持部を変位させる駆動機構とをさらに備え、
前記支持部が前記退避位置にある状態で前記保持機構により前記容器保持部を変位させたときには、当該容器保持部に保持されている前記容器に前記接触部が衝突せず、前記支持部が前記検出位置にある状態で前記保持機構により前記容器保持部を変位させたときには、当該容器保持部に保持されている前記容器に前記接触部が衝突し、当該接触部が前記第1回転軸を中心に回転する、請求項1に記載の前処理装置。
【請求項6】
前記分注機構は、前記接触部の上方に配置されている、請求項5に記載の前処理装置。
【請求項7】
前記容器保持部における前記容器の複数の設置位置のうち、任意の設置位置の選択を受け付ける選択受付処理部をさらに備え、
前記接触部は、前記選択受付処理部により選択が受け付けられた設置位置に保持されている前記容器に対して衝突可能な状態となる、請求項1に記載の前処理装置。
【請求項8】
前記容器保持部には、液体試料を収容する試料容器を複数保持する試料容器保持部と、複数の前記試料容器内から前記分注機構により分注される液体試料を混合するための混合容器を複数保持する混合容器保持部とが含まれ、
前記接触部は、前記試料容器又は前記混合容器に対して衝突可能である、請求項1に記載の前処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1で開示されるような遺伝子解析装置では、先端に分注チップが装着されたノズルを移動させることにより、液体の分注が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにノズルを移動させて分注を行うような構成では、当該ノズルを含む分注機構を上下方向(Z方向)だけでなく水平方向(XY方向)にも移動させることとなる。この場合、分注機構に対して電気的に接続されている配線を長くして、分注機構の移動に配線が追従できるように構成する必要があるなど、装置の構成が複雑になる場合がある。
【0005】
そこで、分注機構はZ方向のみに移動し、分注される液体が収容されている容器をXY方向に移動させるような構成が考えられる。しかしながら、前処理装置のように、前処理に使用される液体を収容するための容器が出し入れされる装置の場合には、複数の容器を保持する容器保持部をXY方向に移動させるときに、容器が適切に保持されていない状態のまま、容器保持部を移動させて分注動作が行われてしまう可能性がある。この場合、装置の故障の原因となったり、容器内の液体が装置内に飛散してコンタミネーションの原因となったりするおそれがある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、容器保持部に複数の容器が適切に保持された状態で分注動作を行うことができる前処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、容器保持部と、分注機構と、保持機構と、接触部と、負荷検出処理部と、報知処理部とを備える、前処理装置である。前記容器保持部は、前処理に使用される液体を収容するための容器を複数保持する。前記分注機構は、前記容器保持部に保持されている前記容器内の液体を吸引及び吐出することにより分注動作を行う。前記保持機構は、前記容器保持部を保持し、当該容器保持部を変位させることにより前記分注機構に対する位置合わせを行う。前記接触部は、前記保持機構により前記容器保持部を変位させているときに、当該容器保持部に保持されている前記容器に対して衝突可能である。前記負荷検出処理部は、前記容器に対する前記接触部の衝突に伴う当該接触部への負荷を検出する。前記報知処理部は、前記負荷検出処理部により前記接触部への負荷が検出されたとき、又は、検出されなかったときに、その旨を報知する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容器保持部に複数の容器が適切に保持された状態で分注動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の前処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態の前処理装置の構成の一例の一部を示す分解斜視図である。
【
図3】本実施形態のテーブルの構成の一例を示す概略平面図である。
【
図4】本実施形態の前処理装置の内部構成を示す概略断面図である。
【
図5A】容器検知処理の第1実施形態について説明するための概略平面図である。
【
図5B】容器検知処理の第1実施形態について説明するための概略平面図である。
【
図5C】容器検知処理の第1実施形態について説明するための概略平面図である。
【
図6】容器検知処理の第1実施形態について説明するための概略正面図である。
【
図7A】容器検知処理の第2実施形態について説明するための概略側面図である。
【
図7B】容器検知処理の第2実施形態について説明するための概略側面図である。
【
図7C】容器検知処理の第2実施形態について説明するための概略側面図である。
【
図8】本実施形態の前処理装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
【
図9】本実施形態のRAMのメモリマップの一例を示す図である。
【
図10】本実施形態の前処理装置の電気的構成を具体的に示すブロック図である。
【
図11】本実施形態のCPUの全体処理の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.前処理装置の周辺構成
図1は、本実施形態の前処理システム10の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、前処理システム10は、前処理装置12及びユーザ端末14を含む。
【0011】
前処理装置12は、液体を吸引及び吐出して分注動作を行うことにより、当該液体に対して予め処理を施すための装置である。本実施形態では、分注動作を少なくとも1回以上実施することにより、一連の分注処理が実行される。前処理に使用される液体としては、液体試料又は液体試薬等を例示することができる。本実施形態における前処理装置12は、チップ40(
図3参照)を介して液体の吸引及び吐出が可能である。
【0012】
ユーザ端末14は、少なくともCPU、外部と通信を行うための通信部及び不揮発性メモリ等を備える装置であって、デスクトップPC、ノート(ラップトップ)PC又はタブレットPC等である。
【0013】
前処理装置12及びユーザ端末14は、ネットワーク16を介して接続される。ここでのネットワーク16としては、LAN(Local Area Network)やインターネットなどがある。また、前処理装置12及びユーザ端末14は、直接接続されてもよい。
【0014】
2.前処理装置の全体構成
図2は、本実施形態の前処理装置12の構成の一例の一部を示す分解斜視図である。前処理装置12は、本体20及びテーブル21を備える。本体20は、中空状の筐体により構成されている。また、テーブル21は、容器保持部22及び第1チップ保持部24を備える。テーブル21では、容器保持部22及び第1チップ保持部24が一体となるように構成されている。
【0015】
さらにまた、前処理装置12は、第2チップ保持部26を備える。
図2では、第2チップ保持部26は、テーブル21から分離された状態で図示されているが、この第2チップ保持部26は、テーブル21の空間28に収容された状態で使用される。
【0016】
図2では、テーブル21は、本体20から分離された状態で図示されているが、このテーブル21は、本体20の空間30内に内蔵されている。さらに、空間30を区画する壁には、開口部32が設けられている。
【0017】
第2チップ保持部26については、開口部32を介して、テーブル21から取り外すこと及びテーブル21に取り付けることができる。また、上述したように、テーブル21は、本体20に内蔵されるため、第2チップ保持部26については、本体20から取り外すこと及び本体20に取り付けることができるともいえる。
【0018】
図3は、本実施形態のテーブル21の構成の一例を示す概略平面図である。
図4は、本実施形態の前処理装置12の内部構成を示す概略断面図である。
図3及び
図4に示すように、容器保持部22は、前処理に使用される液体を収容する容器を複数保持する。また、容器保持部22は、試料容器保持部22a及び混合容器保持部22bを含む。
【0019】
試料容器保持部22aは、液体試料を収容する試料容器34を複数保持する。液体試料は、たとえば生体から採取される検体試料であり、唾液又は血液等を例示することができる。混合容器保持部22bは、複数の試料容器34内から分注される液体試料を混合するための混合容器36を複数保持する。第1チップ保持部24は、チップ40を複数保持する。分注動作の際には、第1チップ保持部24に保持されているチップ40が、チップ脱着部48bに装着される。
【0020】
また、テーブル21には、カバー部材42が設けられる。このカバー部材42は、薄い板状の部材であって、テーブル21内の空間28を覆う。つまり、第2チップ保持部26がテーブル21に取り付けられている場合、カバー部材42は、その第2チップ保持部26を覆う。
【0021】
カバー部材42は、貫通孔42aを有する。また、カバー部材42には、貫通孔42aを通過しようとするチップ40を引っ掛けるための引っ掛け部42bが複数形成されている。引っ掛け部42bのY方向の幅は、チップ脱着部48bの下端部の外径よりも大きく、チップ40の上端部の外径よりも小さい。
【0022】
分注動作に使用された後のチップ(使用済チップ)40は、その上端面を引っ掛け部42bに引っ掛けるようにチップ脱着部48bを変位させることにより、チップ脱着部48bから取り外して第2チップ保持部26に保持することができる。チップ40は、分注動作の度に第1チップ保持部24からチップ脱着部48bに新たに装着され、使用後に第2チップ保持部26に保持される。第2チップ保持部26には、使用済のチップ40を複数保持することができる。
【0023】
本実施形態では、試料容器保持部22aにおいて、X方向に4列、Y方向に5行の計20個の試料容器34を保持することができる。各試料容器34内には、異なる生体から採取された試料が収容される。また、第1チップ保持部24には、試料容器34と同数(X方向に4列、Y方向に5行の計20個)のチップ40を保持することができる。混合容器保持部22bには、X方向に並べて4個の混合容器36を保持することができる。ただし、試料容器34の数、混合容器36の数及びチップ40の数は、上記のような数に限られるものではない。
【0024】
各混合容器36は、X方向の同じ列にそれぞれ並ぶ5個の試料容器34及び5個のチップ40に対応付けられている。各混合容器36には、同じ列に並ぶ各チップ40を用いて、同じ列に並ぶ各試料容器34内の液体試料が分注される。これにより、各混合容器36内で、同じ列に並ぶ複数の試料容器34内の液体試料を混合することができる。
【0025】
具体的には、X方向における1列目の混合容器36内に各試料容器34内の液体試料を混合する際には、まず、第1チップ保持部24における1列目の1行目に保持されているチップ40がチップ脱着部48bに装着される。そして、試料容器保持部22aにおける1列目の1行目に保持されている試料容器34内の液体試料がチップ40内に吸引された後、混合容器保持部22bにおける1列目に保持されている混合容器36内にチップ40内の液体試料が吐出される。液体試料の吐出後は、使用されたチップ40が第2チップ保持部26において取り外されて保持される。
【0026】
次に、第1チップ保持部24における1列目の2行目に保持されているチップ40がチップ脱着部48bに装着される。そして、試料容器保持部22aにおける1列目の2行目に保持されている試料容器34内の液体試料がチップ40内に吸引された後、混合容器保持部22bにおける1列目に保持されている混合容器36内にチップ40内の液体試料が吐出される。これにより、混合容器36内に既に収容されている液体試料に、チップ40内から吐出された液体試料を混合することができる。液体試料の吐出後は、使用されたチップ40が第2チップ保持部26において取り外されて保持される。
【0027】
その後も同様に、第1チップ保持部24における1列目の各行に保持されているチップ40がチップ脱着部48bに装着されて、試料容器保持部22aにおける1列目の各行に保持されている試料容器34内の液体試料がチップ40内に順次吸引された後、混合容器保持部22bにおける1列目に保持されている混合容器36内に吐出される。このような動作が繰り返されることにより、混合容器保持部22bにおける1列目の混合容器36内に、試料容器保持部22aにおける1列目の各行に保持されている試料容器34内の液体試料が集約されて混合される。他の列(2列目~4列目)についても、同様に分注動作を行うことにより、各列において、複数の試料容器34内から分注される液体試料を混合容器36内で混合することができる。
【0028】
このような分注の方法は、プール検査法と呼ばれる検査において用いられる。プール検査法では、混合容器36内に混合された液体試料に対してPCR検査を行うことにより、その結果が陰性の場合には、混合された各試料容器34内の液体試料がいずれも陰性であることを一度に確認することができる。したがって、検査の効率を向上することができるとともに、検査にかかるコストを低減することができる。
【0029】
なお、本実施形態では、混合容器保持部22bに保持されている複数の混合容器36は、混合容器用ラック(図示せず)を用いて一体的に保持されている。これにより、混合容器用ラックを混合容器保持部22bから取り外せば、複数の混合容器36を一度にPCR検査装置に持ち込むことができるような構成となっている。同様に、試料容器保持部22aに保持されている複数の試料容器34についても、試料容器用ラック(図示せず)を用いて、列ごとに一体的に複数の試料容器34を出し入れできるとともに、全ての試料容器34を一度に出し入れすることもできるようになっている。
【0030】
図4に示すように、前処理装置12は、電気的に制御可能な分注機構48を備える。分注機構48は、液体を吸引及び吐出する機構であって、シリンジ48a、チップ脱着部48b及びプランジャ48cを備える。シリンジ48aは、円筒状の部材であって、プランジャ48cが摺動可能に挿入されている。
【0031】
チップ脱着部48bは、シリンジ48aよりも小径の円筒状の部材であって、チップ40の脱着が可能とされる。チップ脱着部48bとしては、たとえば、シリンジ48aの内部に連通する細長い円筒状のノズルが用いられる。チップ40は、下端に向かって徐々に先細りする細長い円筒状に形成されており、その上端部にチップ脱着部48bの下端部が圧入されることにより、チップ脱着部48bにチップ40が取り付けられる。
【0032】
また、図示は省略するが、分注機構48は、モータ等のアクチュエータ、プランジャ48cと連結される連結部材及びアクチュエータの駆動力をZ方向の動きとしてその連結部材に伝達する伝達機構等を備える。
【0033】
分注機構48によれば、プランジャ48cのストローク量に応じた量の液体を吸引及び吐出することができる。分注機構48を用いて、容器保持部22に保持されている容器(試料容器34)内の液体を吸引及び吐出することにより、分注動作を行うことができる。なお、上述した分注機構48は、あくまで一例であって、チップ脱着部48bを備え、液体を吸引及び吐出することができるのであれば、分注機構48の構成は特に限定されない。
【0034】
また、
図4に示すように、前処理装置12は、電気的に制御可能な支持機構50を備える。支持機構50は、分注機構48を変位可能に支持する機構であって、モータ等のアクチュエータ、分注機構48を構成するコンポーネントを支持する支持部材50a及びアクチュエータの駆動力をZ方向の動きとして支持部材50aに伝達する伝達機構等を備える。
【0035】
支持機構50によれば、分注機構48を支持しつつ、Z方向に変位させることができる。つまり、支持機構50によれば、チップ脱着部48bを支持しつつ、Z方向に変位させることができる。なお、上述した支持機構50は、あくまで一例であって、チップ脱着部48b等を支持しつつ、Z方向に変位させることができるのであれば、支持機構50の構成は特に限定されない。また、支持機構50は、分注機構48を水平方向(XY方向)にも変位可能とするように構成されてもよい。
【0036】
さらに、
図4に示すように、前処理装置12は、電気的に制御可能な保持機構52を備える。保持機構52は、テーブル21を変位可能に保持する機構であって、モータ等のアクチュエータ、テーブル21を保持する保持部材等を備える。また、保持機構52は、アクチュエータの駆動力をX方向及びY方向の動きとして保持部材に伝達する伝達機構を備える。
【0037】
保持機構52によれば、テーブル21を保持しつつ、水平方向に変位させることができる。すなわち、保持機構52によれば、容器保持部22を保持し、当該容器保持部22を水平方向に変位させることにより分注機構48に対する位置合わせを行うことができる。これにより、第1チップ保持部24に保持されているチップ40をチップ脱着部48bの下方に位置合わせしたり、試料容器保持部22aに保持されている試料容器34又は混合容器保持部22bに保持されている混合容器36をチップ脱着部48bに装着されているチップ40の下方に位置合わせしたりすることができる。
【0038】
なお、上述した保持機構52は、あくまで一例であって、テーブル21を保持しつつ、水平方向に変位させることができるのであれば、テーブル21の構成は特に限定されない。また、保持機構52は、テーブル21をZ方向にも変位可能とするように構成されてもよい。
【0039】
3.容器検知処理の第1実施形態
図5A~
図5Cは、容器検知処理の第1実施形態について説明するための概略平面図である。また、
図6は、容器検知処理の第1実施形態について説明するための概略正面図である。本実施形態では、保持機構52により容器保持部22を変位させているときに、容器保持部22に保持されている容器に対して衝突可能な第1接触部60が設けられている。この第1接触部60は、容器保持部22に保持されている容器が上方に浮き上がっているときに、その容器を検知するためのものである。
【0040】
容器保持部22には、複数の容器が所定の高さ以下に保持される。具体的には、
図6に示すように、試料容器保持部22aに保持される複数の試料容器34の上端面の高さはH1であり、混合容器保持部22bに保持される複数の混合容器36の上端面の高さもH1である。したがって、複数の試料容器34及び複数の混合容器36がいずれも正常に設置されていれば、高さH1よりも上方に容器34,36が突出することはない。
【0041】
しかしながら、たとえば容器34,36の外周面にシールが貼り付けられている場合などのように、容器34,36の外周面に凸部が形成されている場合には、その凸部が容器保持部22との接触部分に引っ掛かり、容器34,36が高さH1よりも上方まで浮き上がった状態で保持される場合がある。
図6の例では、一部の容器34,36の上端面の高さが、H1よりも高いH2の高さまで突出した例が示されている。
【0042】
このように、一部の容器34,36が上方に浮き上がっている場合、分注動作の際に、容器34,36とチップ40の高さに誤差が生じる。すなわち、試料容器34内の液体試料をチップ40内に吸引する際には、試料容器34内の液体試料の液面に対するチップ40の先端の高さに誤差が生じる。また、チップ40内に吸引した液体試料を混合容器36内に吐出する際には、混合容器36内に吐出される液体試料の液面に対するチップ40の先端の高さに誤差が生じる。その結果、分注動作を精度よく行うことができない可能性がある。また、浮き上がった容器34,36が装置内部の構造物と衝突するなどして、構造物の破損、装置内の汚染、液体試料の消失等が生じる可能性もある。
【0043】
そこで、本実施形態では、容器保持部22に保持されている容器34,36が所定の高さH0よりも高い位置に浮き上がっているときに、その容器34,36が第1接触部60に衝突することで、浮き上がっている容器34,36を検知できるようになっている。高さH0は、高さH1よりも高く、高さH2よりも低い。高さH0よりも高い位置に浮き上がっている容器34,36が検知されたときには、その旨を報知するための報知処理が行われる。
【0044】
第1接触部60は、Z方向(垂直方向)に延びる板状の部材であり、Z方向に延びる回転軸62を中心として水平方向に回転可能となっている。また、
図6に示すように、第1接触部60の下端縁の高さは、高さH0と一致しており、容器保持部22に保持されている複数の容器34,36のうち少なくとも1つの容器34,36が、高さH0よりも高い位置に浮き上がっているときに、その容器34,36に対して衝突するようになっている。たとえば、
図6に示すように、第1接触部60の下端縁の高さよりも高いH2の高さまで容器34,36が浮き上がっている場合には、その容器34,36に対して第1接触部60が接触する。
【0045】
容器保持部22に対して容器34,36を設置する際には、
図5Aに示すように、容器保持部22は設置可能領域A1に位置している。設置可能領域A1は、Y方向において第1接触部60よりも手前側(分注機構48側とは反対側)に位置している。この設置可能領域A1では、容器保持部22の上方に障害物がないため、容器保持部22に対する容器34,36の設置が可能である。また、設置可能領域A1においては、容器保持部22に保持されている容器34,36の中に、高さH0よりも高い位置まで浮き上がっている容器34,36がある場合であっても、その容器34,36は第1接触部60に接触しない。
【0046】
容器保持部22は、保持機構52の変位に伴い、
図5Aに示す設置可能領域A1よりも後側(分注機構48側)に変位可能である。分注動作を行う際などには、容器保持部22が設置可能領域A1よりも後側の分注可能領域A2に変位され、いずれかの容器34,36がチップ脱着部48bの下方に位置する状態となる。その状態で、チップ脱着部48bが下方に変位されることにより、チップ脱着部48bに装着されているチップ40が容器34,36内に挿入され、吸引又は吐出の動作が行われることとなる。なお、
図5Bでは、容器保持部22が分注可能領域A2にある状態の一例が示されている。
【0047】
分注可能領域A2は、容器保持部22に保持されている容器34,36内の液体に対する分注動作が可能な領域である。このように、保持機構52は、設置可能領域A1と分注可能領域A2との間で、容器保持部22を前後方向に変位可能である。分注可能領域A2に容器保持部22があるときには、容器保持部22に保持されている複数の容器34,36の少なくとも一部が、第1接触部60よりも後側にある。
【0048】
したがって、第1接触部60は、分注機構48の下方における分注可能領域A2の上方の空間A3(
図6参照)の少なくとも一部を前後方向(Y方向)に塞ぐように、前後方向に対して交差する方向に延びているともいえる。このように、第1接触部60は、空間A3の少なくとも一部を前後方向に塞いでいるため、前方で作業するユーザに対して、第1接触部60よりも後方の空間を見えにくくする目隠しとしての機能を有する。
【0049】
本実施形態では、分注動作を行う前に保持機構52を変位させ、容器保持部22を設置可能領域A1から後方に変位させる。このとき、
図5Cにハッチングで示すように、高さH0よりも高い位置まで浮き上がっている容器34,36は、前方から後方に向かって第1接触部60に衝突し、その衝突に伴い第1接触部60が回転軸62を中心に回転する。
【0050】
第1接触部60における回転軸62側とは反対側の端部には、当該端部の変位(回転)を検出する第1センサ64が設けられている。第1センサ64は、物体の変位を検出するセンサであって、たとえば、フォトセンサ又は近接センサ等が用いられる。ただし、第1センサ64としては、第1接触部60の変位を検出することができれば、他の光学的センサ、機械的センサ又は電気的センサなどの各種センサを用いることができる。
【0051】
また、第1接触部60における回転軸62側とは反対側の端部には、付勢部材66からの付勢力が作用している。これにより、第1接触部60は、
図5Cの状態から
図5Aの状態に戻る方向に付勢されている。付勢部材66としては、引張ばねを例示することができるが、これに限らず、他の弾性体等が用いられてもよい。
【0052】
本実施形態では、容器保持部22に保持されている全ての容器34,36の上方を第1接触部60が通過するように、
図5Aの状態から後方に向かって保持機構52が変位される。このとき、第1センサ64で第1接触部60の変位を検出することにより、容器34,36に対する第1接触部60の衝突に伴う第1接触部60への負荷を検出することができる。すなわち、高さH0よりも高い位置まで浮き上がっている容器34,36がある場合には、その容器34,36に対する第1接触部60の衝突に伴う第1接触部60への負荷が第1センサ64で検出される。これにより、容器保持部22に保持されている複数の容器34,36のうち少なくとも1つが、高さH0よりも高い位置まで浮き上がっていることを検知できる。
【0053】
4.容器検知処理の第2実施形態
図7A~
図7Cは、容器検知処理の第2実施形態について説明するための概略側面図である。本実施形態では、保持機構52により容器保持部22を変位させているときに、容器保持部22に保持されている容器に対して衝突可能な第2接触部70が設けられている。この第2接触部70は、混合容器保持部22bに混合容器36が保持されているか否かを検知するためのものである。
【0054】
第2接触部70は、支持部72により、第1回転軸74を中心に回転可能に支持されている。支持部72は、センサ台78により、第1回転軸74とは異なる第2回転軸76を中心に回転可能に支持されている。すなわち、第2接触部70は、第1回転軸74及び第2回転軸76の2軸で回転可能な構成となっている。本実施形態では、第1回転軸74及び第2回転軸76が平行に延びているが、これに限られるものではない。
【0055】
第2接触部70は、第1回転軸74だけでなく、付勢部材80を介して支持部72に連結されている。付勢部材80は、第2接触部70が第1回転軸74を中心に
図7Aにおける反時計回りに回転する方向に向かって、第2接触部70を付勢している。付勢部材80としては、引張ばねを例示することができるが、これに限らず、他の弾性体等が用いられてもよい。
【0056】
付勢部材80により付勢される第2接触部70は、支持部72に設けられたストッパ82により回転が規制される。すなわち、
図7Aに示すように、付勢部材80の付勢力により、第1回転軸74を中心に
図7Aにおける反時計回りに回転しようとする第2接触部70が、ストッパ82に接触している。これにより、第2接触部70は、付勢部材80の付勢力が作用する状態のまま、
図7Aの状態で維持される。
【0057】
図7Aに示すように、分注機構48は、第2接触部70の上方に配置されている。具体的には、支持機構50の支持部材50aが、第2接触部70の上方に固定されており、この支持部材50aにより分注機構48が支持されている。なお、
図7B及び
図7Cでは、分注機構48及び支持機構50を省略して示している。
【0058】
支持部72は、駆動機構84からの駆動力により、第2回転軸76を中心に回転する。駆動機構84は、センサ台78に設けられており、モータ等の駆動源(図示せず)を備えている。この駆動機構84の駆動により、
図7Aに示す退避位置と、
図7Bに示す検出位置との間で、支持部72を回転させることができる。
【0059】
センサ台78には、第2接触部70の回転を検出する第2センサ86が設けられている。第2センサ86は、物体の変位を検出するセンサであって、たとえば、フォトセンサ又は近接センサ等が用いられる。ただし、第2センサ86としては、第2接触部70の回転を検出することができれば、他の光学的センサ、機械的センサ又は電気的センサなどの各種センサを用いることができる。
【0060】
図7Aに示す退避位置に支持部72が位置している状態では、混合容器保持部22bに保持されている混合容器36の上端面の高さH1よりも上方に第2接触部70が位置している。したがって、この状態で、保持機構52により容器保持部22をXY方向に変位させた場合であっても、混合容器保持部22bに保持されている混合容器36に第2接触部70は衝突しない。
【0061】
一方、
図7Bに示す検出位置に支持部72が位置している状態では、混合容器保持部22bに保持されている混合容器36の上端面の高さH1よりも下方に第2接触部70の少なくとも一部が位置している。具体的には、混合容器36の上端部に対してY方向の後側に、第2接触部70の一部が位置している。したがって、この状態で、保持機構52により容器保持部22をY方向の後側に向かって変位させた場合には、混合容器保持部22bに保持されている混合容器36に第2接触部70が衝突する。
【0062】
図7Aに示す退避位置から、
図7Bに示す検出位置に支持部72を回転させた場合には、第2接触部70の一部71が第2センサ86に接近し、当該第2センサ86により検出された状態となる。本実施形態では、検出位置において第2センサ86により検出されている第2接触部70の一部71が、第2接触部70の回転に伴って検出されなくなるか否かに基づいて、第2接触部70の回転を検出することができる。
【0063】
図7Bに示す検出位置に支持部72が位置している状態で、保持機構52により容器保持部22をY方向の後側に向かって変位させた場合には、
図7Cに示すように、混合容器保持部22bに保持されている混合容器36に第2接触部70が衝突し、第2接触部70が第1回転軸74を中心に回転する。このとき、第2接触部70は、付勢部材80の付勢力に抗して、
図7Cにおける時計回りに回転する。
【0064】
これにより、検出位置において第2センサ86により検出されていた第2接触部70の一部71が、第2接触部70の回転に伴って検出されなくなるため、第2接触部70の回転を検出することができる。このようにして、第2センサ86で第2接触部70の回転を検出することにより、混合容器36に対する第2接触部70の衝突に伴う第2接触部70への負荷を検出することができる。第2接触部70への負荷が検出されなかったとき、すなわち混合容器保持部22bに保持されているべき混合容器36を検出しなかったときには、その旨を報知するための報知処理が行われる。
【0065】
混合容器保持部22bには複数の混合容器36を設置可能であるため、各混合容器36の設置の有無を検出するためには、第2接触部70をX方向に変位させることにより各混合容器36の設置位置に対して位置合わせを行い、各設置位置で上記のような処理を行う必要がある。混合容器保持部22bの各設置位置のいずれに設置された混合容器36を使用するかは、後述する入力部116を用いてユーザが設置位置を選択することにより、事前に入力可能である。
【0066】
5.前処理装置の電気的構成
図8は、本実施形態の前処理装置12の電気的構成の一例を示すブロック図である。
図8に示すように、前処理装置12は、分注機構48、支持機構50、保持機構52、駆動機構84、第1センサ64及び第2センサ86等以外に、制御部100、動作制御回路110、通信部112、報知部114及び入力部116を備える。
【0067】
また、制御部100、第1センサ64、第2センサ86、動作制御回路110、通信部112、報知部114及び入力部116の各々は、バス等の配線108を介して、互いに電気的に接続される。また、動作制御回路110には、分注機構48、支持機構50、保持機構52、駆動機構84に電気的に接続される。
【0068】
制御部100は、前処理装置12の全体的な制御を担う。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)102を備える。また、制御部100は、CPU102が直接的にアクセス可能なRAM(Random Access Memory)104および記憶部106を備える。
【0069】
CPU102は、前処理装置12の各コンポーネントを制御する。RAM104は、CPU102のワーク領域およびバッファ領域として用いられる。記憶部106は、不揮発性メモリであり、たとえば、記憶部106としてHDD(Hard Disc Drive)またはSSD(Solid State Drive)等が用いられる。
【0070】
記憶部106には、前処理装置12の各コンポーネントを制御するための制御プログラムおよび制御プログラムの実行に必要とされるデータ(実行用データ)等が記憶される。なお、記憶部106がRAM104を含むように構成されてもよい。
【0071】
動作制御回路110は、分注機構48、支持機構50、保持機構52及び駆動機構84等を駆動させるための電圧を生成し、これらに電圧を適宜に印加する。
【0072】
通信部112は、外部と通信するための手段である。本実施形態では、通信部112は、ネットワーク16を介して、ユーザ端末14と通信可能に接続される。
【0073】
報知部114は、ユーザに対する報知を行うための手段である。報知部114としては、視覚的に報知するための、発光部材及びディスプレイ等を用いることができる。また、報知部114としては、聴覚的に報知するためのスピーカなども用いることができる。
【0074】
入力部116は、ユーザが入力操作を行うための手段である。入力部116としては、キーボート、マウス又はタッチパネル等を用いることができる。
【0075】
6.メモリマップ
図9は、本実施形態のRAM104のメモリマップ200の一例を示す図である。
図9に示すようにRAM104は、プログラム領域201およびデータ領域202を含む。
【0076】
プログラム領域201は、記憶部106から予め読み出された制御プログラムが記憶される。
図9に示す例では、制御プログラムは、動作プログラム201a、第1負荷検出プログラム201e、第2負荷検出プログラム201f、選択受付プログラム201g、通信プログラム201h及び報知プログラム201i等を含む。
【0077】
また、動作プログラム201aは、第1容器検知プログラム201b、第2容器検知プログラム201c及び分注プログラム201d等を含む。
【0078】
動作プログラム201aは、前処理装置12における動作を制御するプログラムである。
【0079】
第1容器検知プログラム201bは、
図5A~
図5C及び
図6を用いて説明した容器検知処理(第1実施形態)に対応するプログラムである。すなわち、第1容器検知プログラム201bは、浮き上がった状態で保持されている容器34,36を検知するために、容器保持部22に保持されている全ての容器34,36の上方を第1接触部60が通過するように、保持機構52を水平方向に変位させるプログラムである。
【0080】
第2容器検知プログラム201cは、
図7A~
図7Cを用いて説明した容器検知処理(第2実施形態)に対応するプログラムである。すなわち、第2容器検知プログラム201cは、混合容器保持部22bに混合容器36が保持されているか否かを検知するために、駆動機構84を駆動させて支持部72を退避位置から検出位置に変位させた後、保持機構52を水平方向に変位させるプログラムである。
【0081】
分注プログラム201dは、分注処理に対応するプログラムである。すなわち、分注プログラム201dは、試料容器34内の液体試料を吸引及び吐出する分注動作を少なくとも1回以上実施するプログラムである。
【0082】
第1負荷検出プログラム201eは、
図5A~
図5C及び
図6を用いて説明した容器検知処理(第1実施形態)において、第1センサ64からの検出信号に基づき、容器34,36に対する第1接触部60の衝突に伴う第1接触部60への負荷を検出するプログラムである。
【0083】
第2負荷検出プログラム201fは、
図7A~
図7Cを用いて説明した容器検知処理(第2実施形態)において、第2センサ86からの検出信号に基づき、混合容器36に対する第2接触部70の衝突に伴う第2接触部70への負荷を検出するプログラムである。
【0084】
選択受付プログラム201gは、混合容器保持部22bにおける混合容器36の複数の設置位置のうち、任意の設置位置が入力部116の操作により選択された場合に、その選択を受け付けるプログラムである。
【0085】
通信プログラム201hは、通信部112を制御し、ユーザ端末14と通信するためのプログラムである。
【0086】
報知プログラム201iは、報知処理に対応するプログラムである。すなわち、報知プログラム201iは、
図5A~
図5C及び
図6を用いて説明した容器検知処理(第1実施形態)において第1接触部60への負荷を検出したとき、又は、
図7A~
図7Cを用いて説明した容器検知処理(第2実施形態)において第2接触部70への負荷を検出しなかったときに、その旨を報知するプログラムである。
【0087】
なお、図示は省略するが、プログラム領域201には、動作プログラム201a等以外の制御プログラムも記憶される。
【0088】
データ領域202には、予め記憶部106から読み出された実行用データが記憶される。
図9に示す例では、データ領域202に、制御用データ202a、設置位置データ202b及び報知用データ202c等が記憶される。
【0089】
制御用データ202aは、前処理装置12における動作を制御するのに必要な各種データである。設置位置データ202bは、混合容器保持部22bの各設置位置のうち、使用する混合容器36が保持される設置位置としてユーザが予め入力部116により入力(選択)した設置位置に対応するデータである。
【0090】
報知用データ202cは、報知処理を行うのに必要なデータである。また、報知用データ202cは、報知の方式に対応したデータである。たとえば、報知用データ202cは、音声データ、メッセージデータ、発光パターンを示すデータ等である。
【0091】
また、データ領域202には、他の実行用データが記憶されたり、第1センサ64又は第2センサ86から出力される信号に対応するデータが一時的に記憶されたりしてもよい。さらに、データ領域202には、制御プログラムの実行に必要なタイマ(カウンタ)およびレジスタが設けられてもよい。
【0092】
7.具体的な前処理装置の電気的構成
図10は、本実施形態の前処理装置12の電気的構成を具体的に示すブロック図である。CPU102を含む制御部100において、CPU102が動作プログラム201aを実行することで、制御部100は、前処理装置12における動作を制御する動作処理部300として機能する。動作処理部300は、RAM104に記憶されている制御用データ202aを用いて処理を行う。
【0093】
具体的に、CPU102が第1容器検知プログラム201bを実行することで、制御部100は、第1容器検知処理部302として機能する。第1容器検知処理部302は、保持機構52等を制御し、容器保持部22を水平方向に変位させることにより、
図5A~
図5C及び
図6を用いて説明した容器検知処理(第1実施形態)を行う。
【0094】
また、CPU102が第2容器検知プログラム201cを実行することで、制御部100は、第2容器検知処理部304として機能する。第2容器検知処理部304は、保持機構52及び駆動機構84等を制御し、支持部72を回転させて退避位置から検出位置に変位させるとともに、容器保持部22を水平方向に変位させることにより、
図7A~
図7Cを用いて説明した容器検知処理(第2実施形態)を行う。
【0095】
さらに、CPU102が分注プログラム201dを実行することで、制御部100は、分注処理部306として機能する。分注処理部306は、チップ40を介して液体を吸引及び吐出する分注動作を少なくとも1回以上実施する。
【0096】
また、CPU102が第1負荷検出プログラム201eを実行することで、制御部100は、第1負荷検出処理部308として機能する。第1負荷検出処理部308は、第1センサ64からの検出信号に基づいて、第1容器検知処理部302による容器検知処理(第1実施形態)の実行中に、容器34,36に対する第1接触部60の衝突に伴う第1接触部60への負荷を検出する。
【0097】
さらに、CPU102が第2負荷検出プログラム201fを実行することで、制御部100は、第2負荷検出処理部310として機能する。第2負荷検出処理部310は、第2センサ86からの検出信号に基づいて、第2容器検知処理部304による容器検知処理(第2実施形態)の実行中に、混合容器36に対する第2接触部70の衝突に伴う第2接触部70への負荷を検出する。
【0098】
さらにまた、CPU102が選択受付プログラム201gを実行することで、制御部100は、選択受付処理部312として機能する。選択受付処理部312は、入力部116からの入力信号に基づいて、容器保持部22における容器の複数の設置位置のうち、任意の設置位置の選択を受け付ける。
【0099】
本実施形態において、選択受付処理部312は、混合容器保持部22bにおける混合容器36の複数の設置位置のうち、任意の設置位置の選択を受け付ける。選択受付処理部312により受け付けられた設置位置のデータは、RAM104に記憶される。上述の第2容器検知処理部304は、RAM104に記憶された設置位置データに基づいて、その設置位置に保持されている混合容器36に対して衝突可能な位置に、第2接触部70を配置させる。
【0100】
また、CPU102が報知プログラム201iを実行することで、制御部100は、報知処理部314として機能する。報知処理部314は、RAM104に記憶されている報知用データ202cを用いて処理を行うことにより、第1負荷検出処理部308により第1接触部60への負荷が検出されたとき、又は、第2負荷検出処理部310により第2接触部70への負荷が検出されなかったときに、その旨を報知する。
【0101】
さらに、CPU102が通信プログラム201hを実行することで、制御部100は、通信処理部316として機能する。通信処理部316は、通信部112を用いて、ユーザ端末14と通信する。
【0102】
8.フロー
図11は、本実施形態のCPU102の全体処理の一例を示すフロー図である。全体処理は、たとえば、前処理装置12が、ユーザ端末14から分注処理の実行を指示するコマンドを受信すると、開始される。
【0103】
本実施形態では、分注処理が実行される前に、第1容器検知処理部302による容器検知処理(第1実施形態)及び第2容器検知処理部304による容器検知処理(第2実施形態)が、この順序で実行される。ただし、これらの容器検知処理の実行順序は、逆でもよい。
【0104】
まず、ステップS1~S2の第1容器検知処理部302による容器検知処理(第1実施形態)が実行される。具体的には、保持機構52が変位されることにより、容器保持部22が
図5Aに示す設置可能領域A1から後方に変位される(ステップS1)。これにより、容器保持部22に保持されている全ての容器34,36の上方を第1接触部60が通過する。
【0105】
図6に示すように高さH0よりも高い位置まで浮き上がっている容器34,36が1つでもあれば、その容器34,36に対する第1接触部60の衝突に伴う第1接触部60への負荷が第1センサ64で検出される(ステップS2でYES)。この場合、第1接触部60への負荷が検出された旨が、報知部114によりユーザに報知され(ステップS10)、分注処理は行われずに、そのまま処理が終了する。
【0106】
一方、高さH0よりも高い位置まで浮き上がっている容器34,36が1つもなく、第1接触部60への負荷が第1センサ64で検出されなければ(ステップS2でNO)、保持機構52が変位されることにより、混合容器36が設置されている設置位置として予め選択されている設置位置に向かって第2接触部70が相対的に変位する(ステップS3)。このとき、第2接触部70は、
図7Aに示すような退避位置にあり、保持機構52が変位されているときに第2接触部70が容器34,36に接触することはない。
【0107】
その後、駆動機構84の駆動で支持部72が回転されることにより、
図7Bに示す検出位置まで第2接触部70が回転されると(ステップS4)、第2接触部70が、選択された設置位置に設置されている混合容器36の上端部に対してY方向に対向した状態となる。この状態で保持機構52が変位されることにより、容器保持部22が
図7Bに示す位置から所定量だけ後方に変位された後、再び前方に変位されて
図7Bの状態に戻る(ステップS5)。
【0108】
このとき、選択された設置位置に混合容器36が設置されていれば、
図7Cに示すように第2接触部70が回転し、混合容器36に対する第2接触部70の衝突に伴う第2接触部70への負荷が第2センサ86で検出される(ステップS6でYES)。このステップS5~S6の処理は、選択されている全ての設置位置に対して行われる。すなわち、混合容器保持部22bの各設置位置のうち、使用する混合容器36が保持される設置位置としてユーザが予め入力部116により入力(選択)した設置位置が複数ある場合には、それらの複数の設置位置に対して、ステップS5~S6の処理が順次行われる。
【0109】
そのため、選択された全ての設置位置での容器検知が終了していなければ(ステップS7でNO)、
図7Bの検出位置のまま容器保持部22がX方向に変位されることにより、次の設置位置に設置されている混合容器36の上端部に対して第2接触部70がY方向に対向した状態となる(ステップS8)。その後、ステップS5~S6の処理が行われることにより、この設置位置に混合容器36が設置されているか否かが検知される。
【0110】
このようにして、使用する混合容器36が保持される設置位置としてユーザが予め入力部116により入力(選択)した設置位置の全てにおいて、混合容器36が設置されていることが検出された場合には(ステップS7でYES)、分注処理が実行される(ステップS9)。
【0111】
一方、いずれかの設置位置において、第2接触部70への負荷が第2センサ86で検出されず、混合容器36が設置されていないことが検出された場合には(ステップS6でNO)、第2接触部70への負荷が検出されなかった旨が、報知部114によりユーザに報知され(ステップS10)、分注処理は行われずに、そのまま処理が終了する。
【0112】
9.変形例
以上の実施形態では、第1容器検知処理部302による容器検知処理(第1実施形態)及び第2容器検知処理部304による容器検知処理(第2実施形態)の両方が実行されるような構成について説明した。しかし、このような構成に限らず、いずれか一方の容器検知処理のみが実行されるような構成であってもよい。
【0113】
10.態様
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0114】
(第1項)一態様に係る前処理装置は、
前処理に使用される液体を収容するための容器を複数保持する容器保持部と、
前記容器保持部に保持されている前記容器内の液体を吸引及び吐出することにより分注動作を行う分注機構と、
前記容器保持部を保持し、当該容器保持部を変位させることにより前記分注機構に対する位置合わせを行う保持機構と、
前記保持機構により前記容器保持部を変位させているときに、当該容器保持部に保持されている前記容器に対して衝突可能な接触部と、
前記容器に対する前記接触部の衝突に伴う当該接触部への負荷を検出する負荷検出処理部と、
前記負荷検出処理部により前記接触部への負荷が検出されたとき、又は、検出されなかったときに、その旨を報知する報知処理部とを備えていてもよい。
【0115】
第1項に記載の前処理装置によれば、容器に対する接触部の衝突に伴う当該接触部への負荷を検出することにより、容器保持部に容器が適切に保持されているか否かを確認することができる。したがって、接触部への負荷が検出されたとき、又は、検出されなかったときに、その旨を報知することにより、容器を適切に保持するようユーザに促すことができるため、容器保持部に複数の容器が適切に保持された状態で分注動作を行うことができる。
【0116】
(第2項)第1項に記載の前処理装置において、
前記容器保持部は、前記容器を所定の高さ以下に複数保持するものであり、
前記接触部は、前記容器保持部に保持されている複数の前記容器のうち少なくとも1つの容器が、前記所定の高さよりも高い位置に浮き上がっているときに、前記少なくとも1つの容器に対して衝突してもよい。
【0117】
第2項に記載の前処理装置によれば、容器保持部に保持されている複数の容器のうち少なくとも1つの容器が、所定の高さよりも高い位置に浮き上がっているときに、その旨を報知し、容器を適切に保持するようユーザに促すことができる。
【0118】
(第3項)第2項に記載の前処理装置において、
前記接触部は、回転軸を中心に回転可能であり、前記少なくとも1つの容器に対する衝突に伴い回転するように構成され、
前記負荷検出処理部は、前記接触部の回転を検出してもよい。
【0119】
第3項に記載の前処理装置によれば、容器に対する衝突により回転軸を中心に回転可能な接触部を用いた簡単な構成により、所定の高さよりも高い位置に浮き上がっている容器の有無を確認することができる。
【0120】
(第4項)第2項又は第3項に記載の前処理装置において、
前記保持機構は、前記容器保持部に対する容器の設置が可能な設置可能領域と、前記容器保持部に保持されている前記容器内の液体に対する分注動作が可能な分注可能領域との間で、前記容器保持部を前後方向に変位可能であり、
前記接触部は、前記分注機構の下方における前記分注可能領域の上方の空間の少なくとも一部を前後方向に塞ぐように、前後方向に対して交差する方向に延びていてもよい。
【0121】
第4項に記載の前処理装置によれば、分注機構の下方における分注可能領域の上方の空間の少なくとも一部を前後方向に塞ぐ接触部が、前方で作業するユーザに対して、接触部よりも後方の空間を見えにくくする目隠しとして機能するため、美感を向上することができる。また、接触部が障壁として機能することにより、たとえばチップなどの消耗品が、接触部よりも後側に落下することを防止できる。
【0122】
(第5項)第1項に記載の前処理装置において、
第1回転軸を中心に前記接触部を回転可能に支持するとともに、前記第1回転軸とは異なる第2回転軸を中心に回転可能な支持部と、
前記第2回転軸を中心に前記支持部を回転させることにより、退避位置と検出位置との間で前記支持部を変位させる駆動機構とをさらに備え、
前記支持部が前記退避位置にある状態で前記保持機構により前記容器保持部を変位させたときには、当該容器保持部に保持されている前記容器に前記接触部が衝突せず、前記支持部が前記検出位置にある状態で前記保持機構により前記容器保持部を変位させたときには、当該容器保持部に保持されている前記容器に前記接触部が衝突し、当該接触部が前記第1回転軸を中心に回転してもよい。
【0123】
第5項に記載の前処理装置によれば、支持部が検出位置にある状態で容器保持部を変位させたときに、容器保持部に容器が保持されていれば、当該容器に対する接触部の衝突に伴う当該接触部への負荷が検出され、容器保持部に容器が保持されていなければ、接触部への負荷が検出されない。したがって、接触部への負荷が検出されなかった場合に、その旨を報知し、容器を適切に保持させるようユーザに促すことができる。
【0124】
(第6項)第5項に記載の前処理装置において、
前記分注機構は、前記接触部の上方に配置されていてもよい。
【0125】
第6項に記載の前処理装置によれば、第1回転軸及び第2回転軸を中心に回転する機構を用いることにより、接触部の上方に配置された分注機構に接触部が衝突することを防止し、接触部と分注機構を近づけて配置することができるため、省スペース化を実現できる。
【0126】
(第7項)第1項~第6項のいずれか一項に記載の前処理装置において、
前記容器保持部における前記容器の複数の設置位置のうち、任意の設置位置の選択を受け付ける選択受付処理部をさらに備え、
前記接触部は、前記選択受付処理部により選択が受け付けられた設置位置に保持されている前記容器に対して衝突可能な状態となってもよい。
【0127】
第7項に記載の前処理装置によれば、予め選択された設置位置に容器が保持されているか否かを確認することができるため、容器が保持されていない設置位置を確実に特定できる。
【0128】
(第8項)第1項~第7項のいずれか一項に記載の前処理装置において、
前記容器保持部には、液体試料を収容する試料容器を複数保持する試料容器保持部と、複数の前記試料容器内から前記分注機構により分注される液体試料を混合するための混合容器を複数保持する混合容器保持部とが含まれ、
前記接触部は、前記試料容器又は前記混合容器に対して衝突可能であってもよい。
【0129】
第8項に記載の前処理装置によれば、複数の試料容器内から分注される液体試料を混合容器内に混合する構成において、試料容器又は混合容器を適切に保持させるようユーザに促すことができる。
【符号の説明】
【0130】
12 前処理装置
22 容器保持部
22a 試料容器保持部
22b 混合容器保持部
34 試料容器
36 混合容器
48 分注機構
50 支持機構
52 保持機構
60 第1接触部
62 回転軸
64 第1センサ
70 第2接触部
72 支持部
74 第1回転軸
76 第2回転軸
84 駆動機構
86 第2センサ
308 第1負荷検出処理部
310 第2負荷検出処理部
312 選択受付処理部
314 報知処理部
A1 設置可能領域
A2 分注可能領域
A3 空間