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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】物体保持構造
(51)【国際特許分類】
   F16C 35/063 20060101AFI20240723BHJP
   F16C 35/067 20060101ALI20240723BHJP
   F16C 23/06 20060101ALI20240723BHJP
   F16B 39/02 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F16C35/063
F16C35/067
F16C23/06
F16B39/02 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023557629
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2022031044
(87)【国際公開番号】W WO2023079813
(87)【国際公開日】2023-05-11
【審査請求日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2021180148
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】米田 大悟
(72)【発明者】
【氏名】師岡 義孝
(72)【発明者】
【氏名】國▲崎▼ 勇磨
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】実開昭47-33331(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0120279(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0097174(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1400713(EP,A2)
【文献】中国特許出願公開第111878512(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 35/00
-39/06
F16C 43/00
-43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体保持構造であって、
軸方向に延伸すると共に、端面、軸方向から見て前記端面の径方向外方に位置する第1挟持面、及び、前記端面上に周方向に間隔を置いて配置され、径方向内方に延びる爪部を有する複数のフック部を含む内側部材と、
前記内側部材の径方向外方に位置し且つ前記内側部材に対して前記軸方向に移動可能に設けられると共に、端面、及び、物体を介して前記第1挟持面に対向する第2挟持面を含む外側部材と、
前記内側部材の前記端面及び前記外側部材の前記端面のそれぞれに接触可能に設けられるキープレートと、
各前記フック部の前記爪部と前記キープレートの間に保持される止め輪と、
を備え、
前記キープレートは、
前記外側部材の前記端面に面する第1リングと、
前記軸方向から見て前記複数のフック部の径方向内方に設けられる第2リングと、
前記周方向における前記複数のフック部の間に位置し、前記第1リングと前記第2リングを連結する複数の内側タブとを含む
物体保持構造。
【請求項2】
物体保持構造であって、
軸方向に延伸すると共に、端面、及び、軸方向から見て前記端面の径方向内方に位置する第1挟持面を含む外側部材と、
前記外側部材の径方向内方に位置し且つ前記外側部材に対して前記軸方向に移動可能に設けられると共に、端面、物体を介して前記第1挟持面に対向する第2挟持面、及び、前記端面上に周方向に間隔を置いて配置され、径方向内方に延びる爪部を有する複数のフック部を含む内側部材と、
前記内側部材の前記端面及び前記外側部材の前記端面のそれぞれに接触可能に設けられるキープレートと、
各前記フック部の前記爪部と前記キープレートの間に保持される止め輪と、
を備え、
前記キープレートは、
前記外側部材の前記端面に面する第1リングと、
前記軸方向から見て前記複数のフック部の径方向内方に設けられる第2リングと、
前記周方向における前記複数のフック部の間に位置し、前記第1リングと前記第2リングを連結する複数の内側タブとを含む
物体保持構造。
【請求項3】
前記第2リングは、径方向内方の内側縁部に設けられた傾斜部を含み、
前記傾斜部は周方向に延伸する環状に形成され、その中心に近づくに連れて、前記第1リングを含む仮想平面との距離が大きくなるように、前記仮想平面に対して止め輪が位置する側に傾斜している
請求項1又は2に記載の物体保持構造。
【請求項4】
前記傾斜部は、前記第2リング全体に形成されている
請求項3に記載の物体保持構造。
【請求項5】
前記第2リングは、径方向内方の内側縁部に設けられたタン部を含み、
前記タン部は周方向に延伸する環状に形成され、前記第1リングを含む仮想平面から離れるように、前記仮想平面に対して止め輪が位置する側に前記内側縁部から突出している
請求項1又は2に記載の物体保持構造。
【請求項6】
各前記内側タブは、周方向における両側の縁部から、前記第1リングを含む仮想平面に対して前記止め輪が位置する側と反対側に向けて斜めに伸びる一対の鍔部を含む
請求項1又は2に記載の物体保持構造。
【請求項7】
前記キープレートは、一枚の金属板によって形成されている
請求項1又は2に記載の物体保持構造。
【請求項8】
前記外側部材は、当該外側部材の前記端面において前記キープレートの第1リングよりも径方向外方に位置する複数の突部を含み、
前記キープレートは、前記第1リングの径方向外方に配置された複数の外側タブを含み、
前記複数の突部は前記周方向に間隔を置いて配置され、
各前記外側タブは、径方向外方に向けて前記第1リングから少なくとも前記複数の突部の間の位置まで延伸する
請求項1又は2に記載の物体保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベアリング等の物体を保持する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、航空機のジェットエンジン内に適用されたベアリングの保持構造を開示している。ベアリングの内輪はシャフトと一体に回転する延長部の外周面に設置され、スパナナットによる前方への押圧によって保持されている。一方、ベアリングの外輪はベアリングハウジングの内周面に設置される。
【0003】
外輪の前方にはリテーナが設けられる。リテーナはベアリングハウジングに螺合する。この螺合によって、リテーナが後方に移動し、外輪を後方に押圧する。リテーナはフック部を有している。リテーナは、フック部がベアリングハウジングに掛けられた状態で、ボルトによりベアリングハウジングに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2009/0034896号明細書
【文献】米国特許出願公開第2021/0048065号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0283456号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されているように、リテーナは、フック部とボルトの併用によってベアリングハウジング等の外側部品に固定されていることが一般的である。しかしながら、リテーナにフック部を設けるためには、外側部材の直径を部分的に大きくする必要がある。また、周辺部品の影響でリテーナや外側部材のサイズを大きくできない場合はこの機構を採用することができない。特許文献2及び3が開示するベアリングの保持構造では、このようなサイズの増加を避けることができる。しかしながら、その代わりに部品数が増加するため、重量の増加と組付の煩雑化が懸念される。また内側部品に穴加工を施すことにより強度の低下が考えられるため、運転時の遠心力により過大な荷重が掛かるシャフト等の回転体に対しては適用が不向きである。
【0006】
本開示は上述の事情を鑑みて成されたものであり、部品数及び重量の過剰な増加を抑えつつ、誤組付けを防止することが可能な物体保持構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様に係る物体保持構造は、軸方向に延伸すると共に、端面、軸方向から見て前記端面の径方向外方に位置する第1挟持面、及び、前記端面上に周方向に間隔を置いて配置され、径方向内方に延びる爪部を有する複数のフック部を含む内側部材と、前記内側部材の径方向外方に位置し且つ前記内側部材に対して前記軸方向に移動可能に設けられると共に、端面、及び、物体を介して前記第1挟持面に対向する第2挟持面を含む外側部材と、前記内側部材の前記端面及び前記外側部材の前記端面のそれぞれに接触可能に設けられるキープレートと、各前記フック部の前記爪部と前記キープレートの間に保持される止め輪とを備え、前記キープレートは、前記外側部材の前記端面に面する第1リングと、前記軸方向から見て前記複数のフック部の径方向内方に設けられる第2リングと、前記周方向における前記複数のフック部の間に位置し、前記第1リングと前記第2リングを連結する複数の内側タブとを含む。
【0008】
本開示の第2の態様に係る物体保持構造は、軸方向に延伸すると共に、端面、及び、軸方向から見て前記端面の径方向内方に位置する第1挟持面を含む外側部材と、前記外側部材の径方向内方に位置し且つ前記外側部材に対して前記軸方向に移動可能に設けられると共に、端面、物体を介して前記第1挟持面に対向する第2挟持面、及び、前記端面上に周方向に間隔を置いて配置され、径方向内方に延びる爪部を有する複数のフック部を含む内側部材と、前記内側部材の前記端面及び前記外側部材の前記端面のそれぞれに接触可能に設けられるキープレートと、各前記フック部の前記爪部と前記キープレートの間に保持される止め輪とを備え、前記キープレートは、前記外側部材の前記端面に面する第1リングと、前記軸方向から見て前記複数のフック部の径方向内方に設けられる第2リングと、前記周方向における前記複数のフック部の間に位置し、前記第1リングと前記第2リングを連結する複数の内側タブとを含む。
【0009】
前記第2リングは、径方向内方の内側縁部に設けられた傾斜部を含んでもよい。前記傾斜部は周方向に延伸する環状に形成され、その中心に近づくに連れて、前記第1リングを含む仮想平面との距離が大きくなるように、前記仮想平面に対して前記止め輪が位置する側に傾斜してもよい。前記傾斜部は、前記第2リング全体に形成されてもよい。
【0010】
前記第2リングは、径方向内方の内側縁部に設けられたタン部を含んでもよい。前記タン部は周方向に延伸する環状に形成され、前記第1リングを含む仮想平面から離れるように、前記仮想平面前記止め輪が位置する側に前記内側縁部から突出してもよい。
【0011】
各前記内側タブは、周方向における両側から前記外側部材の前記端面に向けて斜めに伸びる一対の鍔部を含んでもよい。前記キープレートは、一枚の金属板によって形成されてもよい。各前記内側タブは、周方向における両側の縁部から、前記第1リングを含む仮想平面に対して前記止め輪が位置する側と反対側に向けて斜めに伸びる一対の鍔部を含んでもよい。
【0012】
前記外側部材は、当該外側部材の前記端面において前記キープレートの第1リングよりも径方向外方に位置する複数の突部を含んでもよい。前記キープレートは、前記第1リングの径方向外方に配置された複数の外側タブを含んでもよい。前記複数の突部は前記周方向に間隔を置いて配置されてもよい。各前記外側タブは、径方向外方に向けて前記第1リングから少なくとも前記複数の突部の間の位置まで延伸してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、部品点数及び重量の過剰な増加を抑えつつ、誤組付けを防止することが可能な物体保持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係る物体保持構造の一例を示す分解斜視図である。
図2図2は、本開示の第1実施形態に係る内側部材の一例としてのシャフトを示す斜視図である。
図3図3は、本開示の第1実施形態に係るロックナットの一例を示す斜視図である。
図4図4は、本開示の第1実施形態に係るキープレートの一例を示す斜視図である。
図5図5は、本開示の第1実施形態に係る止め輪の一例を示す斜視図である。
図6図6は、本開示の第1実施形態に係る物体保持構造の組付けを説明するための断面図であり、(a)は組付け前の状態を示す図、(b)は組付け後の状態を示す図である。
図7図7は、本開示の第1実施形態に係る、組付け後の物体保持構造の正面図である。
図8図8は、図7に示す物体保持構造の部分断面図であり、(a)は図7中のA-A断面図、(b)は、図7中のB-B断面図である。
図9図9は、径方向から見たフック部内の止め輪とキープレートの位置関係を示す図であり、(a)は止め輪が適切に組付けられた状態を示す図、(b)は止め輪が不適切に組付けられた状態を示す図である。
図10図10は、本開示の第2実施形態に係る物体保持構造の組付けを説明するための断面図であり、(a)は組付け前の状態を示す図、(b)は組付け後の状態を示す図である。
図11図11は、第2実施形態に係る物体保持構造の変形例を示す断面図であり、(a)は組付け前の状態を示す図、(b)は組付け後の状態を示す図である。
図12図12は、本開示の実施形態に係るキープレートの幾つかの変形例を示す図であり、(a)は軸方向に沿った第1変形例の断面図、(b)は軸方向に沿った第2変形例の断面図、(c)は第3変形例の一部を示す正面図、(d)は周方向に沿った第3変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の幾つかの実施形態に係る物体保持構造10Aについて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。物体保持構造10Aは、環状の物体又は円盤状の物体の軸方向の移動を規制することによって当該物体を保持するものである。例えば下記の通り、物体保持構造10Aはシャフトの端部に設けられ、当該シャフトを回転可能に支持するベアリング60を保持するために使用される。以下、説明の便宜上、物体保持構造10A全体の基準軸としてZ軸を定義し、その延伸方向を軸方向ADと称する。更に、Z軸を基準として周方向CDと径方向RDを定義する。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る物体保持構造10Aについて説明する。
図1は、本実施形態に係る物体保持構造10Aの一例を示す分解斜視図である。説明の便宜上、図1において左斜め前側を「前」、右斜め奥側を「後」と定義する。なお、図1に示すスペーサSは、仕様に応じて適宜省略可能である。
【0017】
本実施形態に係る物体保持構造10Aは、保持対象の物体の一例として、ベアリング60の内輪61を保持する。図1に示すように、物体保持構造10Aは、内側部材としてのシャフト20と、外側部材としてのロックナット30と、キープレート40と、止め輪50とを備える。
【0018】
図2は、本実施形態に係る内側部材の一例としてのシャフト20を示す斜視図である。シャフト20は、Z軸を中心として軸方向ADに延伸する中空の棒状部材(即ち管状部材)であり、タービン等の回転駆動装置によって回転する。シャフト20は、前方に面する端面21と、環状突部22A(ストッパ)とを有する。環状突部22Aは、シャフト20の外周面24から径方向外方に突出し、Z軸を中心として環状に形成されている。
【0019】
環状突部22Aは、前方に面する(即ち、保持される物体に面する)第1挟持面23を含む。第1挟持面23は、軸方向ADから見て端面21の径方向外方に位置する。なお、環状突部22Aを設ける代わりに、シャフト20の外周面24の直径(外径)がシャフト20の前方の端部20aで小さくなるようシャフト20の外周面24に段差を設け、この段差によって第1挟持面23を形成してもよい。何れの場合も、ベアリング60の内輪61は、端面21側からシャフト20に装着された後、第1挟持面23への当接によってZ軸に沿った後方への更なる移動が規制される。
【0020】
シャフト20にベアリング60が取り付けられた状態で、シャフト20の端部20aにはロックナット30が螺合する。ロックナット30は、シャフト20の径方向外方に位置し、それ自体の回転によって、シャフト20に対して軸方向ADに移動可能に設けられる。
【0021】
図2に示すように、シャフト20は、複数のフック部25を含む。複数のフック部25は、端面21上において周方向CDに間隔を置いて配置されている。各フック部25は、その先端が径方向内方に曲がった形状を有する。具体的には、各フック部25は、端面21から前方に突出する脚部25aと、脚部25aから径方向内方に延びる爪部25bを有する(図8参照)。
【0022】
軸方向ADにおける脚部25aの長さは、軸方向ADに沿った爪部25bの内面25cと端面21との間隔が、止め輪50とキープレート40の内側タブ43を重ねたときの厚さ以上となる値を有する(図8参照)。このような長さが脚部25aに設定されるため、止め輪50とキープレート40をシャフト20に容易に取り付けることができる。また、両者に対する爪部25bの過剰な押圧を避け、変形の発生を防ぐこともできる。
【0023】
径方向RDに沿った爪部25bの長さは、フック部25の内側に止め輪50を収容することができ、且つ、キープレート40の取付時に、爪部25bがキープレート40の第2リング42と干渉しない値を有する。従って、軸方向ADから見て、爪部25bの先端25dは、第2リング42の外側縁部42bよりも径方向外方に位置する(図7参照)。
【0024】
図3は、本実施形態に係るロックナット30の一例を示す斜視図である。ロックナット30は、Z軸を中心とする環状の断面を有し且つ軸方向ADに延伸する環状部材である。ロックナット30は、軸方向ADにおけるロックナット30とシャフト20の間にベアリング60の内輪61が保持されるよう、軸方向ADに所定の長さだけ延伸している。ロックナット30は、前方に面する端面31と、後方に面する(即ち、保持される物体に面する)第2挟持面33とを含む。軸方向ADから見て、端面31と第2挟持面33は互いに重なっている。また、第2挟持面33は、ベアリング60の内輪61等を介して第1挟持面23に対向する。
【0025】
ロックナット30には、シャフト20が挿入され螺合する装着穴32が設けられている。装着穴32はZ軸を中心軸として形成され、第2挟持面33から端面31まで延伸する。即ち、装着穴32は、端面31と第2挟持面33の間を貫通している。
【0026】
ロックナット30が後方に移動すると、第2挟持面33が内輪61(スペーサSが設けられている場合はスペーサS)に当接する。これにより、内輪61は前方及び後方への移動が規制され、保持される。なお、スペーサS等の構造体は、第1挟持面23と内輪61の間に位置してもよく、第2挟持面33と内輪61の間に位置していてもよい。
【0027】
ロックナット30は、複数の突部34を含んでもよい。複数の突部34は、端面21においてキープレート40の第1リング41よりも径方向外方に位置する。また、複数の突部34は、端面31から前方に突出し、Z軸上の点を中心とする同一円上に周方向CDに間隔を置いて配置される。この周方向の間隔は、キープレート40に設けられた外側タブ44の周方向CDの幅よりも長い。
【0028】
図4は、本実施形態に係るキープレート40の一例を示す斜視図である。キープレート40は、シャフト20の端面21及びロックナット30の端面31と接触可能に設けられる(図6参照)。キープレート40は、第1リング41と、第2リング42と、複数の内側タブ43とを含んでいる。第1リング41、第2リング42及び複数の内側タブ43は、何れも同じ厚さをもち、同一平面上に配置されている。従って、キープレート40は、例えば、一枚の金属板によって形成されてもよい。この場合、各構成要素間の溶接等の接合工程が不要になり、容易な製造が可能となる。
【0029】
第1リング41は、ロックナット30の端面31に面する。第2リング42は、軸方向ADから見て複数のフック部25の径方向内方に設けられる。複数の内側タブ43は、周方向CDにおける複数のフック部25の間に位置し、第1リング41と第2リング42を連結する。キープレート40の全体的な形状の維持に影響を与えない限り、内側タブ43の個数は任意である。
【0030】
キープレート40は、第1リング41の径方向外方に配置された複数の外側タブ44を含んでもよい。各外側タブ44は、キープレート40の外縁から複数の突部34のうちの互いに隣接する2つの間に位置まで延伸している。なお、外側タブ44の個数は任意である。
【0031】
図5は、本実施形態に係る止め輪50の一例を示す斜視図である。止め輪50は、各フック部25の爪部25bとキープレート40の間に保持される。従って、止め輪50の外径及び内径は、軸方向ADから見て止め輪50が爪部25bと重なる値に設定される。止め輪50は、重量削減や、組付け時の径方向RDの変形を許容する観点から、細長い金属の棒線等によって形成される。なお、止め輪50は所謂Oリングとして周方向CDに連続していてもよく、所謂Cリングとして周方向CDの途中で途切れていてもよい。
【0032】
次に、物体保持構造10Aの組付けについて説明する。
図6は、物体保持構造10Aの組付けを説明するための断面図であり、(a)は組付け前の状態を示す図、(b)は組付け後の状態を示す図である。図7は、組付け後の物体保持構造10Aの正面図である。図8(a)は、図7中のA-A断面図、図8(b)は、図7中のB-B断面図である。
【0033】
まず、ベアリング60の内輪61をシャフト20に装着し、第1挟持面23に当接するまで後方に移動させる。次に、ロックナット30をシャフト20に装着し、シャフト20に螺合させる。ロックナット30を回転させると、ロックナット30は後方に移動する。ロックナット30の回転は、ロックナット30の第2挟持面33がベアリング60の内輪61に当接するまで行う。
【0034】
次に、キープレート40がシャフト20の端面21とロックナット30の端面31のそれぞれに対向するように姿勢を調整する。また、キープレート40の各内側タブ43が、複数のフック部25のうちの互いに隣接する2つの間に位置するように、複数のフック部25の配置に対してキープレート40の位相を合わせる。その後、キープレート40を各端面に接触するまで接近させる。
【0035】
なお、ロックナット30の端面21に複数の突部34が設けられ、且つ、キープレート40に外側タブ44が設けられている場合、上述の位相調整の際に、隣接する2つの突部34の間に外側タブ44が位置するように、ロックナット30を若干回転させてもよい。
【0036】
次に、各フック部25の内側に納まるように止め輪50を装着し、組付けを終了する。このとき、図7に示すように、各フック部25は、キープレート40の第1リング41と第2リング42の間を介して、キープレート40を貫通する。また、キープレート40の各内側タブ43は、複数のフック部25のうちの互いに隣接する2つの間に位置する。これにより、複数のフック部25の配置に対してキープレート40が位置決めされ、キープレート40の周方向CDの回転が規制される。
【0037】
また、図8に示すように、周方向CDから見て、止め輪50はフック部25の爪部25bとキープレート40の間に位置し、フック部25に保持される。その結果、キープレート40の脱落が防止される。
【0038】
図9は、径方向RDから見たフック部25内の止め輪50とキープレート40の位置関係を示す図であり、(a)は止め輪50が適切に組付けられた状態を示す図、(b)は止め輪50が不適切に組付けられた状態を示す図である。
【0039】
シャフト20の回転又は振動などの外乱により、ロックナット30が緩んで前方に移動した場合、ロックナット30はキープレート40に接触する。この接触によるキープレート40からの反力によって、ロックナット30が緩む方向への当該ロックナット30の回転が抑制され、ベアリング60の内輪61の不測の移動も規制される。即ち、シャフト20の端部20aにおいて、ベアリング60が安定に保持される。
【0040】
なお、ロックナット30の端面31に複数の突部34が設けられ、且つ、キープレート40に外側タブ44を設けられている場合、ロックナット30が緩む方向に回転しようとすると、当該ロックナット30の突部34が外側タブ44に当接する。キープレート40の周方向CDの回転は、シャフト20のフック部25がキープレート40を貫通することによって規制されているため、外側タブ44に接触したロックナット30も、回転が規制される。従って、突部34と外側タブ44の導入により、ロックナット30の回転をより強固に規制することができる。
【0041】
上述したロックナット30の回転の規制は、キープレート40が適切に取り付けられていることを前提にしている。つまり、キープレート40がシャフト20の端面21に対向している状態で、止め輪50がフック部25とキープレート40の間に位置していることが肝要である。
【0042】
しかしながら、止め輪50は、重量削減や径方向の変形を許容する観点から、細長い金属の棒線等によって形成されている。そのため、止め輪50の取付の際、止め輪50の一部が、キープレート40の径方向内方の空間を介して、キープレート40とシャフト20の端面21の間に潜り込んでしまう可能性がある(図9(b)参照)。この場合、止め輪50によるキープレート40の押さえ付けが部分的に弱められ、振動等によってロックナット30が緩みやすくなる懸念がある。
【0043】
そこで本実施形態に係るキープレート40は、軸方向ADから見て複数のフック部25の径方向内方に設けられる第2リング42を有する。また、第2リング42は周方向に連続的に延伸している。つまり、第2リング42の内径は、止め輪50の外径よりも十分に小さい。従って、止め輪50の取付の際、その一部が第2リング42に囲まれた領域に進入しても、第2リング42が直ちに止め輪50に接触し、更なる進入は規制される。また、キープレート40と止め輪50は最終的に略平行に配置されるため、止め輪50の一部が、一時的に第2リング42に囲まれた領域に進入しても、第2リング42との接触により、止め輪50はキープレート40と平行な姿勢を取るようにガイドされる。従って、図9(b)に示すような、止め輪50の一部が、キープレート40とシャフト20の端面21の間に潜り込む状態の発生を防止できる。即ち、止め輪50の誤装着を防止でき、ロックナット30の緩みを抑制しつつ、保持対象の物体としてのベアリング60の内輪61を安定に保持することができる。
【0044】
上述の通り、フック部25とシャフト20は、同一の母材から一体物として形成されている。また、複数の突部34がロックナット30に設けられる場合にも、各突部34とロックナット30は同一の母材から一体物として形成されている。従って、部品点数及び重量の過剰な増加を抑えることができる。また、物体保持構造10Aの占有空間の過剰な拡大を抑えることもできる。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る物体保持構造10Bについて説明する。
図10は、本開示の第2実施形態に係る物体保持構造10Bの組付けを説明するための断面図であり、(a)は組付け前の状態を示す図、(b)は組付け後の状態を示す図である。本実施形態に係る物体保持構造10Bは、保持対象の物体の一例として、ベアリング60の外輪62を保持する。図11は、第2実施形態に係る物体保持構造10Bの変形例を示す断面図であり、(a)は組付け前の状態を示す図、(b)は組付け後の状態を示す図である。
【0046】
図10(a)に示すように、物体保持構造10Bは、外側部材としてのシャフト20と、内側部材としてのロックナット30と、キープレート40と、止め輪50とを備える。シャフト20は、Z軸を中心軸として延伸する棒状部材(管状部材)であり、少なくともシャフト20の端部20aに装着穴26が形成されている。装着穴26には、保持対象の物体であるベアリング60の外輪62が装着され、ロックナット30が螺合する。
【0047】
シャフト20は、端面21と、軸方向ADから見て端面21の径方向内方に位置する第1挟持面23を含む環状突部22B(ストッパ)とを有する。環状突部22Bは、装着穴26を形成するシャフト20の内周面27から径方向内方に突出し、Z軸を中心として環状に形成されている。なお、環状突部22Bを設ける代わりに、シャフト20の内周面27の直径(内径)が、シャフト20の前方の端部20aで大きくなるように段差を設け、この段差によって第1挟持面23を形成してもよい。何れの場合も、ベアリング60の外輪62は、端面21側からシャフト20に装着された後、第1挟持面23への当接によってZ軸に沿った後方への更なる移動が規制される。
【0048】
シャフト20にベアリング60が取り付けられた状態で、ロックナット30がシャフト20の装着穴26に螺合する。ロックナット30は、シャフト20の径方向内方に位置し、シャフト20に対して軸方向ADに移動可能に設けられる。
【0049】
第1実施形態と同様に、ロックナット30は、端面31、及び、ベアリング60の外輪62を介して第1挟持面23に対向する第2挟持面33を含む。更に、ロックナット30は、端面31上に周方向CDに間隔を置いて配置され、径方向内方に延びる爪部35bを有する複数のフック部35を含む。ロックナット30が後方に移動すると、第2挟持面33が外輪62に当接する。これにより、外輪62は前方及び後方への移動が規制され、保持される。なお、第1挟持面23と内輪61の間にスペーサ等の構造体が挟まれていてもよい。同様に、第2挟持面33と内輪61の間にスペーサ等の構造体が挟まれていてもよい。
【0050】
第2実施形態でも、キープレート40と止め輪50が設置される。第2実施形態に係るキープレート40と止め輪50の各構成は、第1実施形態のキープレート40と止め輪50の各構成と同一である。
【0051】
キープレート40は、ロックナット30の端面31に設けられた複数のフック部35によって位置決めされる。各フック部35はロックナット30と一体に形成されている。なお、各フック部35の構成は、第1実施形態に係るフック部25の構成と同一である。従って、止め輪50は、爪部25bと同様の形状を有するフック部35の爪部35b(図10参照)とキープレート40の間に保持される。
【0052】
第2実施形態では、シャフト20の端面21に、第1実施形態の突部34と同様の機能を有する複数の突部28が設けられ、キープレート40に、径方向外方に突出する外側タブ44が設けられる。複数の突部28はシャフト20と一体に形成され、シャフト20の端面21上で間隔を置いて配置されている。一方、外側タブ44は、キープレート40の外縁から複数の突部28のうちの互いに隣接する2つの間に位置まで延伸している。これにより、突部28と外側タブ44による作用及び効果は第1実施形態と同様である。即ち、ロックナット30の回転を規制することができる。
【0053】
なお、図11(a)に示すように、複数の突部28を設ける代わりに、シャフト20の端面21に複数の凹部29を設け、これら凹部29に挿入されるように外側タブ44を第1リング41から凹部29に向けて突出させてもよい。この場合の外側タブ44は、複数の凹部29は周方向CDに沿って所定の間隔を置いて配置され、所定の深さで軸方向ADに延伸する。複数の凹部29は溝として端面21に囲まれていてもよく、端面21の径方向外方の縁部上又は径方向内方の縁部上に段差部(切り欠き)として設けられてもよい。一方、外側タブ44は、例えば、第1リング41を含む平面に対する曲げ加工によって形成される。また、外側タブ44は、凹部29に挿入可能な断面形状を有する。従って、図11(b)に示すように、キープレート40をロックナット30に取り付ける際、外側タブ44が凹部29に挿入され、これによりロックナット30の回転を規制することができる。
【0054】
第1実施形態と同様に、本実施形態に係るキープレート40も、軸方向ADから見て複数のフック部35の径方向内方に設けられる第2リング42を有する。従って、上述の通り、止め輪50の取付の際、その一部が第2リング42に囲まれた領域に進入しても、第2リング42が直ちに止め輪50に接触し、更なる進入は規制される。よって、止め輪50の誤装着を防止でき、ロックナット30の緩みを抑制しつつ、保持対象の物体としてのベアリング60の内輪61を安定に保持することができる。
【0055】
また、フック部35とロックナット30は、同一の母材から一体物として形成されている。また、複数の突部28がシャフト20に設けられる場合にも、各突部28とシャフト20は、同一の母材から一体物として形成されている。従って、部品点数及び重量の過剰な増加を抑えることができる。また、物体保持構造10Bの占有空間の過剰な拡大を抑えることもできる。
【0056】
(変形例)
上述したキープレートの幾つかの変形例について説明する。
図12は、各実施形態に係るキープレート40の幾つかの変形例を示す図であり、(a)は軸方向に沿った第1変形例の断面図、(b)は軸方向に沿った第2変形例の断面図、(c)は第3変形例の一部を示す正面図、(d)は周方向に沿った第3変形例の断面図である。
【0057】
図12(a)に示すように、キープレート40の第2リング42は、径方向内方の内側縁部42aに設けられた傾斜部(傾斜面)45を含んでもよい。傾斜部45は周方向CDに延伸する環状に形成され、その中心に近づくに連れて、第1リング41を含む仮想平面VPとの距離が大きくなるように、軸方向ADにおいて仮想平面VPに対して(仮想平面VPを基準として)止め輪50が位置する側に傾斜している。即ち、傾斜部45は、Z軸を母線とし且つ頂点が仮想平面VPよりも前方に位置する円錐体を仮定したときの、側面(錐面)の一部である。また、図12(a)の破線で示すように、傾斜部45は第2リング42全体に形成されていてもよい。換言すれば、傾斜部45が第2リング42全体を構成してもよい。何れの場合も、止め輪50の取付時に傾斜部45が止め輪50に接触することによって、止め輪50をフック部35の内側にガイドさせることができる。従って、止め輪50の取付時の作業性を向上させることができる。
【0058】
図12(b)に示すように、第2リング42は、径方向内方の内側縁部42aに設けられたタン部46を含んでもよい。タン部46は周方向に延伸する環状に形成され、第1リング41を含む仮想平面VPから離れるように、軸方向ADにおいて仮想平面VPに対して(仮想平面VPを基準として)止め輪50が位置する側に内側縁部42aから突出する。この第2変形例でも、第1変形例と同じく、止め輪50をフック部35の内側にガイドさせることで、止め輪50の取付時の作業性を向上させることができる。
【0059】
図12(c)に示すように、各内側タブ43は、周方向CDにおける両側の縁部43a、43aから、第1リング41を含む仮想平面VPに対して止め輪50が位置する側と反対側に向けて斜めに伸びる一対の鍔部43b、43bを含んでもよい。止め輪50として上述のCリングが使用される場合、Cリングの端部を鍔部43bに当接させることによって、Cリングの一部が、キープレート40よりも後方に位置することを防止し、図9(b)に示す誤装着の状態に類似する状態を回避することができる。
【0060】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
図1
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図12