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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】設備監視システム、及び設備監視方法
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20240723BHJP
   G01V 8/16 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G01H9/00 E
G01V8/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024504538
(86)(22)【出願日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2023039301
【審査請求日】2024-01-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平原 尚也
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特許第7235115(JP,B2)
【文献】特表2022-507455(JP,A)
【文献】国際公開第2022/004626(WO,A1)
【文献】特開2023-078151(JP,A)
【文献】国際公開第2022/045117(WO,A1)
【文献】特表2023-538196(JP,A)
【文献】特開2023-39986(JP,A)
【文献】特開2023-50257(JP,A)
【文献】国際公開第2021/059477(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
G01V 1/00-99/00
G08B19/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光解析ユニットと情報処理装置を含んで構成され、
送電線に沿って付設される光ファイバに沿って設定された測定点における前記光ファイバの周波数毎の振動強度の時間変化をDAS(Distributed Acoustic Sensing)により取得し、
前記送電線の隣接する複数の径間の夫々の前記測定点において、同じ時間帯に同じ周波数において予め設定された閾値以上の振動強度が観測されている場合に、前記複数の径間を近傍に物体が存在する径間である物体接近径間として抽出し、
抽出した前記物体接近径間を示す情報を生成する、
設備監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の設備監視システムであって、
前記物体接近径間の前記測定点の前記周波数毎の振動強度の時間変化に送電設備に接触したことに起因する態様を含むか否かに基づき、前記物体が送電設備に接触したか否かを判定する、
設備監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載の設備監視システムであって、
前記物体接近径間の前記測定点の前記周波数毎の振動強度から把握される固有振動数と、予め記憶している通常時における前記物体接近径間の前記測定点の前記周波数毎の振動強度から把握される固有振動数とを対照することにより、前記送電設備に異常が生じているか否かを判定し、判定した結果を示す情報を生成する、
設備監視システム。
【請求項4】
請求項1に記載の設備監視システムであって、
前記物体が送電設備に接触したか否かの判定結果をユーザインタフェースを介して出力する、
設備監視システム。
【請求項5】
請求項3に記載の設備監視システムであって、
前記物体接近径間の送電設備に異常が生じていると判定した場合に、その旨を示す情報をユーザインタフェースを介して出力する、
設備監視システム。
【請求項6】
光解析ユニットと情報処理装置を含んで構成され、
送電線に沿って付設される光ファイバに沿って設定された測定点における前記光ファイバの周波数毎の振動強度の時間変化をDAS(Distributed Acoustic Sensing)により取得し、
前記周波数毎の振動強度の時間変化に前記測定点の近傍に存在する物体から発せられる音波に起因する態様を含む前記測定点を有する径間を物体接近径間として抽出し、
径間毎の送電設備に異常が生じた場合に行うべき対応を示す情報を記憶し、
前記物体接近径間の前記測定点の前記周波数毎の振動強度から把握される固有振動数と、予め記憶している通常時における前記物体接近径間の前記測定点の前記周波数毎の振動強度から把握される固有振動数とを対照することにより、送電設備に異常が生じているか否かを判定し、
異常が生じていると判定した前記送電設備について行うべき対応を示す情報をユーザインタフェースを介して出力する、
設備監視システム。
【請求項7】
光解析ユニットと情報処理装置を含んで構成され、
送電線に沿って付設される光ファイバに沿って設定された測定点における前記光ファイバの周波数毎の振動強度の時間変化をDAS(Distributed Acoustic Sensing)により取得し、
前記測定点における前記周波数毎の振動強度の時間変化を示すグラフについて画像認識処理を行うことにより抽出される特徴量を説明変数とし、前記測定点を含む径間が前記グラフが前記測定点の近傍に存在する物体から発せられる音波に起因する態様を含む径間である物体接近径間か否かを示す情報を目的変数として学習したモデルを記憶し、
前記測定点における前記グラフから抽出される特徴量を前記モデルに入力することにより、前記測定点を含む径間が前記物体接近径間であるか否かを判定し、
前記物体接近径間であると判定した場合に当該径間を示す情報を生成する、
設備監視システム。
【請求項8】
光解析ユニットと情報処理装置を含んで構成され、
送電線に沿って付設される光ファイバに沿って設定された測定点における前記光ファイバの周波数毎の振動強度の時間変化をDAS(Distributed Acoustic Sensing)により取得し、
前記測定点における前記周波数毎の振動強度の時間変化を示すグラフについて画像認識処理を行うことにより抽出される特徴量を説明変数とし、物体の送電設備への接触有無を示す情報を目的変数として学習したモデルを記憶し、
前記測定点における前記グラフから抽出される特徴量を前記モデルに入力することにより、物体の送電設備への接触有無を判定し、
前記判定の結果を示す情報を生成する、
設備監視システム。
【請求項9】
光解析ユニットと情報処理装置とを含んで構成される設備監視システムにおいて、
前記情報処理装置が、
送電線に沿って付設される光ファイバに沿って設定された測定点における前記光ファイバの周波数毎の振動強度の時間変化をDAS(Distributed Acoustic Sensing)により取得するステップ、
前記送電線の隣接する複数の径間の夫々の前記測定点において、同じ時間帯に同じ周波数において予め設定された閾値以上の振動強度が観測されている場合に、前記複数の径間近傍に物体が存在する径間である物体接近径間として抽出するステップ、及び、
抽出した前記物体接近径間を示す情報を生成するステップ
を実行する、設備監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備監視システム、及び設備監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、OPGW(OPtical fiber composite overhead Ground Wire)(光ファイバ複合架空地線)から後方レイリー散乱光を取得し、取得した後方レイリー散乱光に基づき光ファイバ複合架空地線の固有振動数を含む周波数領域についての振動情報を生成し、生成した振動情報に基づき送電設備の異常を検出する異常検出装置について記載されている。
【0003】
特許文献2には、撮影手段から移動物体までの架空送電線の線路方向の距離を2次元の位置データと各撮影手段の離間距離及び焦点距離に基づき求め、得られた距離における移動物体の位置での架空送電線と略直角をなす面で危険領域を設定し、この危険領域内に移動物体が入るときに警報を発生することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2023-50257号公報
【文献】特開平3-89103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
送電線、送電鉄塔、変電設備等の送変電設備においては、設備の保全のためにドローンや巡視ヘリコプター等の機材を用いて巡視や点検等の作業が随時行われる。また、送電設備の周辺では、送電設備とは無関係のものを含め、重機等を用いた作業が行われることがある。こうした作業に際しては、安全確保のために、送電設備の管理者と作業実施者との間で作業に用いられる機材(ドローン、巡視ヘリコプター、重機等)や、作業時における送電設備からの離隔距離等について、通常は事前に確認や取り決めが行われる。
【0006】
しかし、何らかの事情により管理者に事前に情報が通知されることなく送電設備の近傍で機材を用いた作業が行われることがある。その場合、機材が接触する等して送電設備が損傷しても、事象が発覚しないか、もしくは管理者側への通報が遅れてしまい、対応が間に合わずに停電等の事故に至る可能性がある。
【0007】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、送電設備への機材等の物体の接近や接触を監視し、停電等の事故の発生を未然に防ぐことが可能な、設備監視システム、及び設備監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段の一つは、光解析ユニットと情報処理装置を含んで構成され、送電線に沿って付設される光ファイバに沿って設定された測定点における前記光ファイバの周波数毎の振動強度の時間変化をDAS(Distributed Acoustic Sensing)により取得し、前記送電線の隣接する複数の径間の夫々の前記測定点において、同じ時間帯に同じ周波数において予め設定された閾値以上の振動強度が観測されている場合に、前記複数の径間を近傍に物体が存在する径間である物体接近径間として抽出し、抽出した前記物体接近径間を示す情報を生成する。


【0009】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、送電設備への機材等の物体の接近や接触を監視し、停電等の事故の発生を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】設備監視システムの概略的な構成を示す図である。
図2】DASにより振動状態を測定する仕組みを説明する図である。
図3A】送電線に沿って飛行する巡視ヘリコプターの軌跡を示す図である。
図3B】光ファイバの周波数毎の振動強度の時間変化の一例である。
図4A】設備監視装置の主な構成を示す図である。
図4B】設備監視装置が備える主な機能を示す図である。
図5】設備監視処理を説明するフローチャートである。
図6】物体接近情報提示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその一実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。以下の説明において、符号の前に付した「S」の文字は処理ステップの意味である。
【0013】
図1に本発明の一実施形態として説明する設備監視システム1の概略的な構成を示している。設備監視システム1は、変電所6等に設けられる設備監視装置100と、作業予定管理装置300と、を含む。
【0014】
設備監視装置100は、情報処理装置(コンピュータ)を用いて構成される。設備監視装置100は、図示しない通信ネットワークを介して作業予定管理装置300と通信可能に接続している。通信ネットワークは、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット(internet)、PLC(Power Line Communication)、公衆通信網、専用線等である。
【0015】
設備監視装置100は、送電線3に架設されているOPGW4(OPtical fiber composite overhead Ground Wire)(光ファイバ複合架空地線)の光ファイバ4aを振動検知センサとして用い、光ファイバ4aに沿って設定された複数の測定位置(以下、「測定点」と称する。)の夫々における光ファイバ4aの伸縮に基づく振動状態(振動強度、振動周波数)を測定する技術(分布型多点振動測定法(以下、「DAS」(Distributed Acoustic Sensing)と称する。)により、各測定点の振動状態を取得する。DASでは、例えば、C-OTDR(Coherent detection Optical Time Domain Reflectometer)の原理により各測定点の振動状態を取得する。
【0016】
図2は、設備監視装置100がDASにより各測定点の振動状態を測定する仕組みを説明する図である。同図に示すように、設備監視装置100は、光ファイバ4aの端面から光パルス(レーザーパルス。以下、「入射光」とも称する。)を入射し、各測定点における、光パルスの後方散乱光の位相差の変化速度(≒伸縮周波数)を測定する。尚、上記の位相差は、後方散乱光どうしの干渉による強度変化から推定する。そして、設備監視装置100は、測定した上記変化速度に基づき、各測定点における光ファイバ4aの縦波と横波の振動周波数(例えば、最大10kHzの範囲の振動周波数)を求める。また、設備監視装置100は、振動周波数毎の位相差に基づき、各測定点における振動強度(スペクトル強度、振動振幅)を求める。尚、設備監視装置100は、入射光を上記端面に入射した時点から戻り光を受光した時点までの経過時間に基づき、各測定点の位置(上記端面からの距離)を求める。
【0017】
上記の測定点は、例えば、光ファイバに沿って送電鉄塔2の径間よりも短い所定間隔d(m)毎に設定される(0(m)、d(m)、・・・・、N(m)、N+d(m)、N+2d(m))。例えば、図1に示すように、所定間隔dを5(m)とし、送電線3の最長70(km)の範囲に測定点を設定した場合、光ファイバに沿って14000程度の測定点が設定される。
【0018】
各測定点の振動状態には、送電設備(送電鉄塔2、送電線3、変電所6等)の近傍に存在する物体から発せられる音波に起因する振動状態が含まれる。設備監視装置100は、各測定点の振動状態に基づき、送電設備の近傍に存在する物体に関する情報を取得する。
【0019】
図1に戻り、作業予定管理装置300は、送電設備の周辺で行われる作業の予定に関する情報(以下、「作業予定311」と称する。)をデータベースに管理する。管理の対象となる作業は、例えば、送電設備の巡視や点検、送電設備の交換や増設作業、送電設備の周辺で行われる各種作業(送電設備とは関係のない作業を含む)である。作業予定管理装置300は、設備監視装置100に作業予定311の内容を提供する。作業予定311は、例えば、送電設備の管理者によってデータベースに登録され管理される。
【0020】
続いて、送電設備の近傍に存在する物体(ドローン、巡視ヘリコプター、重機等)から発せられる音波と、設備監視装置100がDASにより取得する各測定点の振動状態の周波数毎の時間変化との関係について説明する。
【0021】
図3Aは、巡視点検作業のために送電線3に沿って飛行した巡視ヘリコプターの飛行軌跡の一例である。同図には、巡視ヘリコプターが、送電鉄塔2の識別子(以下、「鉄塔ID」と称する。)が「58」~「68」の送電鉄塔2に沿って飛行した際の飛行経路(飛行軌跡)が地図上に示されている。
【0022】
図3Bは、巡視ヘリコプターが図3Aに示す経路で飛行した際に設備監視装置100がDASにより取得した、各測定点の振動状態の周波数毎の時間変化を示すグラフである。3つのグラフは夫々、識別子(以下、「径間ID」と称する。)が「61_62」、「62_63」、「63_64」の各径間について夫々の所定の測定点について測定された、光ファイバ4aの周波数毎の振動強度の時間変化である。各グラフにおいて、時間は紙面の上から下に流れる。また、同図における色の濃淡は、周波数毎の振動強度(任意単位(Arbitrary Unit))を表す(色が薄い程、振動強度が大きい)。
【0023】
同図に示すように、各グラフには、24Hz(基本波)、48Hz(2倍波)、及び72Hz(3倍波)の各周波数付近において、巡視ヘリコプターから発せられる音波(ブレードスラップ音、エンジン音等)に起因する強い振動強度が観測されている。また、各グラフにおける上記の強い振動強度は、巡視ヘリコプターが送電線3に沿って移動していくことによる時間差をもって観測されている。
【0024】
ここでDASにより取得される、各測定点の周波数毎の振動強度の時間変化には、各測定点の近傍に存在する機材等の物体から発せられる音波に起因する態様(パターン)が現れる。そこで、観測した各測定点の周波数毎の振動強度の時間変化における上記の態様に基づき、近傍に物体が存在する径間(以下、「物体接近径間」と称する。)を特定することができる。
【0025】
また、DASにより取得される、各測定点の周波数毎の振動強度の時間変化には、物体が各測定点の近傍の送電設備に接触したことに起因する態様が現れる。そこで、観測した各測定点の周波数毎の振動強度の時間変化における上記の態様に基づき、送電設備への物体の接触有無を判定することができる。
【0026】
設備監視装置100は、以上のような観点から、各径間の測定点において取得した振動状態の周波数毎の時間変化に基づき、送電設備の近傍に存在する物体に関する情報を取得し、取得した情報を送電設備の管理者に提供する。
【0027】
図4Aは、設備監視装置100の主な構成を示す図である。同図に示すように、設備監視装置100は、プロセッサ101、主記憶装置102(メモリ)、補助記憶装置103(外部記憶装置)、入力装置104、出力装置105、通信装置106、及び光解析ユニット107を備える。これらはバス(bus)や通信ケーブル等を介して通信可能に接続されている。尚、設備監視装置100は、その全部又は一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。
【0028】
プロセッサ101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成されている。
【0029】
主記憶装置102は、プロセッサ101がプログラムを実行する際に利用する記憶装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0030】
補助記憶装置103は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)等で構成することができる。補助記憶装置103には、記録媒体の読取装置や通信装置106を介して、非一時的な記録媒体や非一時的な記憶装置を備えた他の情報処理装置からプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置103に格納(記憶)されているプログラムやデータは主記憶装置102に随時読み込まれる。
【0031】
入力装置104は、外部からの情報の入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、音声入力装置等である。
【0032】
出力装置105は、処理経過や処理結果等の各種情報を外部に出力するインタフェースである。出力装置105は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(液晶モニタ、LCD(Liquid Crystal Display)等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、例えば、情報処理装置10が通信装置106を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0033】
入力装置104と出力装置105は、ユーザとの間での対話処理(情報の受け付け、情報の提供等)を実現するユーザインタフェースを構成する。
【0034】
通信装置106は、通信ネットワーク(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット、公衆通信網、専用線等)を介して他の装置との間の通信を実現する装置である。通信装置106は、通信媒体を介して他の装置との間の通信を実現する、有線方式又は無線方式の通信インタフェースであり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール(USB:Universal Serial Bus)等である。
【0035】
光解析ユニット107は、DASにより測定点の振動状態を測定する装置であり、C-OTDRによる振動測定機器や信号処理回路を含む。光解析ユニット107は、光ファイバ4aの端面に入力する光パルス(レーザー光)を生成するCW(連続波)レーザー光源、光パルス発生器、光増幅器、光学機器(光検波器、光干渉器)、信号処理回路(位相計算回路等)等を含む。尚、光解析ユニット107と光ファイバ4aとの接続は、例えば、変電所内に設けられているOPGWの芯線の接続口(ソケット)に光解析ユニット107のレーザー光源の出射部を光学的に接続することにより行われる。そのため、接続に際して停電等の電力系統への影響を生じさせることはない。
【0036】
設備監視装置100には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0037】
設備監視装置100が備える各種の機能は、プロセッサ101が、主記憶装置102に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、もしくは、設備監視装置100を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)自体によって実現される。設備監視装置100は、各種の情報(データ)を、例えば、データベースのテーブルやファイルシステムが管理するファイルとして記憶する。
【0038】
図4Bは、設備監視装置100の主な機能を説明するブロック図である。同図に示すように、設備監視装置100は、記憶部110、振動状態測定部120、物体接近径間特定部125、作業予定有無判定部130、確認指示生成部132、接触有無判定部135、設備異常有無判定部140、対応情報生成部145、及び物体接近情報提示部150の各機能を備える。
【0039】
上記機能のうち、記憶部110は、測定点毎振動状態111、物体接近径間112、作業予定113、確認指示114、接触有無判定結果115、設備異常有無判定結果116、対応情報117、及び送電設備情報118を記憶する。
【0040】
振動状態測定部120は、DASにより各径間の各測定点の振動状態(振動強度、振動周波数)の時間変化(時系列データ)を測定し、測定した結果を測定点毎振動状態111として管理する。測定点毎振動状態111は、例えば、図3Bの各グラフに示されている情報を含む。
【0041】
物体接近径間特定部125は、測定点毎振動状態111に管理されている各測定点の上記期間における周波数毎の振動強度の時間変化に基づき物体接近径間を特定する。例えば、物体接近径間特定部125は、隣接する複数の径間の夫々の測定点において、同じ時間帯に同じ周波数において予め設定された閾値以上の振動強度が観測されている場合に、これらの径間を物体接近径間として特定する。物体接近径間特定部125は、特定した物体接近径間の径間IDを物体接近径間112として管理する。
【0042】
作業予定有無判定部130は、物体接近径間の上記閾値以上の振動強度が観測されている期間における作業予定311を作業予定管理装置300から取得し、物体接近径間において上記期間に実施することが予定されていた作業が存在するか否か(作業についての事前情報を取得済であるか否か)を判定する。
【0043】
確認指示生成部132は、作業予定有無判定部130が物体接近径間において上記期間に実施することが予定されていた作業が存在しない(事前情報を取得済できていない)と判定した場合に、現場の作業者への確認が必要である旨の情報を含む確認指示を生成し、生成した確認指示を物体接近径間の径間IDに対応づけて確認指示114として管理する。
【0044】
接触有無判定部135は、物体接近径間の測定点の上記期間における周波数毎の振動強度の時間変化に基づき、物体が送電設備に接触したか否かを判定し、判定した結果を径間IDに対応づけて接触有無判定結果115として管理する。例えば、接触有無判定部135は、物体接近径間に隣接する径間の測定点において、同じ時刻に予め設定された閾値以上の振動強度が複数観測されている場合に、物体が送電設備に接触したと判定する。
【0045】
設備異常有無判定部140は、接触有無判定部135が物体が物体接近径間の送電設備に接触したと判定した場合に、更に当該送電設備に異常(素線切れ、部分変形等)が生じているか否かを判定し、判定した結果を設備異常有無判定結果116に管理する。例えば、設備異常有無判定部140は、物体が接触した後における物体接近径間の測定点の周波数毎の振動強度から把握される光ファイバ4aの固有振動数と、予め記憶しておいた通常時(物体が接触する前の時点)における物体接近径間の周波数毎の振動強度から把握される光ファイバ4aの固有振動数を対照することにより、物体接近径間の送電設備に異常が生じているか否かを判定する。例えば、設備異常有無判定部140は、通常時の固有振動数とは異なる固有振動数が所定数以上観測されている場合に、物体接近径間の送電設備に異常が生じていると判定する。
【0046】
対応情報生成部145は、物体が接触した物体接近径間を示す情報や当該物体接近径間(当該物体接近径間の送電設備)に対して管理者がとるべき対応を示す情報(以下、「対応情報」と称する。)を生成し、生成した対応情報を対応情報117として管理する。対応情報生成部145は、径間IDに対応づけて対応情報を送電設備情報118に管理しており、物体接近径間の径間IDを送電設備情報118と対照することにより対応情報を生成する。尚、送電設備情報118は、対応情報の他、鉄塔IDや径間IDに対応づけられた送電設備の情報(送電鉄塔2の位置、送電鉄塔2やその周辺に設けられている送電設備に関する情報等)を含み、対応情報生成部145は、これらの情報を必要に応じて対応情報に付加する。
【0047】
物体接近情報提示部150は、確認指示114の内容や対応情報117の内容を管理者に提示する。物体接近情報提示部150は、例えば、物体接近径間112の内容、作業予定113の内容、確認指示114の内容、接触有無判定結果115の内容、対応情報117の内容等を記載した画面(後述する物体接近情報提示画面600)を生成して管理者に提示する。
【0048】
図5は、設備監視装置100が行う処理(以下、「設備監視処理S500」と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともに設備監視処理S500について説明する。尚、以下の説明の前提として、作業予定管理装置300には、予め各径間で行われる予定の作業が登録済であるものとする。また、設備監視装置100の振動状態測定部120は、DASによりリアルタイムに各径間の各測定点の振動状態(振動強度、振動周波数)の時間変化を測定し、各測定点の最新の振動状態を測定点毎振動状態111として管理しているものとする。
【0049】
同図に示すように、物体接近径間特定部125は、測定点毎振動状態111をリアルタイムに監視している(S511~S512:No)。物体接近径間特定部125は、物体存在径間を特定すると(S512:Yes)、特定した物体存在径間を物体接近径間112として管理する(S513)。
【0050】
続いて、作業予定有無判定部130が、物体接近径間の上記期間における作業予定を作業予定管理装置300から取得し、物体接近径間において上記期間に予定されていた作業が存在するか否か(事前情報を取得済であるか否か)を判定する(S514)。上記期間に予定されていた作業が存在しない場合(S514:No)、処理はS515に進む。上記期間に予定されていた作業が存在する場合(S514:Yes)、処理はS519に進む。
【0051】
S515では、確認指示生成部132が、現場の確認が必要であることを示す情報を生成し確認指示114として管理する。
【0052】
続いて、接触有無判定部135が、物体接近径間の測定点の上記期間における周波数毎の振動強度の時間変化の態様に基づき、物体が送電設備に接触したか否かを判定し、判定した結果を接触有無判定結果115として管理する(S516)。接触有無判定部135が物体が送電設備に接触したと判定した場合(S516:Yes)、処理はS517に進む。接触有無判定部135が物体が送電設備に接触していないと判定した場合(S516:No)、処理はS519に戻る。
【0053】
S517では、設備異常有無判定部140が、物体接近径間の送電設備に異常が生じているか否かを判定する。設備異常有無判定部140が、物体接近径間の送電設備に異常が生じていると判定した場合(S517:Yes)、判定結果を設備異常有無判定結果116として管理し、S518の処理に進む。一方、設備異常有無判定部140が、物体接近径間の送電設備に異常が生じていないと判定した場合(S517:No)、処理はS519に進む。
【0054】
S518では、対応情報生成部145が、異常が生じていると判定した物体接近径間について対応情報を生成し、生成した対応情報を対応情報117として管理する。
【0055】
S519では、物体接近情報提示部150が、物体の接近に関する情報を提示する画面(以下、「物体接近情報提示画面600」と称する。)を生成し、生成した物体接近情報提示画面600を管理者に提示する。
【0056】
図6に、物体接近情報提示画面600の一例を示す。
【0057】
同図に示すように、例示する物体接近情報提示画面600は、観測日時の表示欄611、物体接近径間の表示欄612、作業予定及び確認指示の表示欄613、接触有無の表示欄614、及び対応情報の表示欄615を有する。
【0058】
観測日時の表示欄611には、物体接近径間特定部125が物体接近径間を特定した日時が表示される。
【0059】
物体接近径間の表示欄612には、物体接近径間特定部125が特定した物体接近径間の径間ID(物体接近径間112の内容)が表示される。
【0060】
作業予定及び確認指示の表示欄613には、作業予定有無判定部130が取得した、物体接近径間の上記期間における作業予定311の内容や、確認指示生成部132が生成した確認指示114の内容が表示される。
【0061】
接触有無の表示欄614の表示欄には、接触有無判定部135が判定した結果(接触有無判定結果115の内容)が表示される。
【0062】
対応情報の表示欄615には、対応情報117の内容が表示される。
【0063】
管理者は、物体接近情報提示画面600を参照することで、物体接近径間に関する情報(径間ID、作業予定の有無、物体の送電設備への接触有無等)や対応の要否、行うべき対応等を迅速に確認することができ、効率よく迅速に必要な対応をとることができる。
【0064】
以上に説明したように、本実施形態の設備監視システム1によれば、DASを用いて取得される情報に基づき、送電設備に接近する物体に関する情報を遠隔において迅速に取得し、送電設備の管理者に提供することができる。このため、管理者は、提供される情報に基づき、送電設備に物体が接近した事や、物体が送電設備に与えた影響等を迅速に把握することができ、送電設備への物体の接近や接触を効率よく監視して停電等の事故の発生を未然に防ぐことができる。
【0065】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0066】
例えば、物体接近情報提示部150が、ユーザから径間(径間ID)の指定を受け付け、受け付けた径間に対応する、物体接近径間112、作業予定113、確認指示114、接触有無判定結果115、設備異常有無判定結果116、及び対応情報117のうちの少なくともいずれかの内容を提示するようにしてもよい。
【0067】
また、例えば、物体接近径間特定部125による物体接近径間の抽出や接触有無判定部135による物体の送電設備への接触有無の判定を、例えば、図3Bに示すグラフ(画像)について画像認識処理を行うことにより抽出される特徴量を説明変数として入力すると、物体接近径間や物体の送電設備への接触有無の判定結果を目的変数として出力するように学習した機械学習モデルを用いて行うようにしてもよい。
【0068】
また、例えば、物体が存在している地点の周囲環境の情報を取得し、周囲環境の情報を考慮して物体の種類を特定するようにしてもよい。例えば、物体が存在している地点の周囲環境が宅地であれば、物体は重機である可能性が高いと推定することができる。
【0069】
また、測定点の周波数毎の振動強度の時間変化には、物体の種類毎に特有の態様が現れる。そこで、観測した各測定点の周波数毎の振動強度の時間変化に基づき、各測定点の近傍に存在する物体の種類を特定し、特定した物体の種類を提示するようにしてもよい。
【0070】
また、各径間の夫々の測定点の周波数毎の振動強度の時間変化について、上記の強い振動強度が観測されている時間を比較することで、各測定点と物体との間の動的な情報(両者の相対速度等)を取得し、取得した情報を提示するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 設備監視システム
2 送電鉄塔
3 送電線
4 OPGW
4a 光ファイバ
100 設備監視装置
107 光解析ユニット
110 記憶部
111 測定点毎振動状態
112 物体接近径間
113 作業予定
114 確認指示
115 接触有無判定結果
116 設備異常有無判定結果
117 対応情報
118 送電設備情報
120 振動状態測定部
125 物体接近径間特定部
130 作業予定有無判定部
132 確認指示生成部
135 接触有無判定部
140 設備異常有無判定部
145 対応情報生成部
150 物体接近情報提示部
S500 設備監視処理
600 物体接近情報提示画面
【要約】
送電設備への機材等の物体の接近や接触を効率よく監視し、停電等の事故の発生を未然に防ぐ。設備監視システムは、送電線に沿って付設される光ファイバに沿って設定された測定点における光ファイバの周波数毎の振動強度の時間変化をDAS(Distributed Acoustic Sensing)により取得し、周波数毎の振動強度の時間変化に測定点の近傍に存在する物体から発せられる音波に起因する態様を含む測定点を有する径間を物体接近径間として抽出し、抽出した物体接近径間を示す情報を生成する。また、設備監視システムは、物体接近径間の測定点の周波数毎の振動強度の時間変化に送電設備に接触したことに起因する態様を含むか否かに基づき、物体が送電設備に接触したか否かを判定する。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6