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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20240723BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20240723BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L23/26
C08K7/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024515414
(86)(22)【出願日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2023043060
【審査請求日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2022205730
(32)【優先日】2022-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】児玉 斉
(72)【発明者】
【氏名】小郷 正勝
(72)【発明者】
【氏名】堀池 勇馬
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-129244(JP,A)
【文献】特開2022-019884(JP,A)
【文献】特開2014-111761(JP,A)
【文献】特開2018-095706(JP,A)
【文献】特開2020-200431(JP,A)
【文献】国際公開第2021/187616(WO,A1)
【文献】特開2023-066532(JP,A)
【文献】特開2020-164661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、及び集束剤が塗布されているガラス繊維(C)を配合してなるポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド樹脂組成物100質量部において、脂肪族ポリアミド樹脂(A)を50.00~90.00質量部、酸変性ポリオレフィン(B)を2.00~15.00質量部、及び集束剤が塗布されているガラス繊維(C)を6.00~14.00質量部配合してなり、
135℃のデカリン溶媒中で測定される、前記酸変性ポリオレフィン(B)の極限粘度[η]が10~40dl/gであり、
前記ガラス繊維の平均繊維径が10.0μm以下であり、
前記集束剤が、ポリウレタン樹脂と、酸性基を有する共重合体とを含む、
ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、高級脂肪酸アミド(D1)及び高級脂肪酸塩(D2)からなる群から選択される少なくとも1種の高級脂肪酸化合物(D)を、ポリアミド樹脂組成物100質量部において、0.05~0.50質量部配合してなる請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂肪族ポリアミド樹脂(A)が、アミノカルボン酸又はラクタム由来の構成単位を有する請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記脂肪族ポリアミド樹脂(A)の数平均分子量が、10,000~35,000である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物の成形品。
【請求項6】
摺動性が求められる用途に用いられる請求項5の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、エンジニアリングプラスチックとして優れた特性を有し、自動車、機械、電気・電子など各種の工業分野において広く使用されている。中でも、ポリアミド樹脂が剛性、強靭性に優れる点から、ギア、カム、プーリー、軸受、ベアリングリテーナー、ドアチェッカー、タイミングチェーンガイド用品など、摩擦条件下において用いられる摺動部品に使用されている。
【0003】
このような摺動部品の摺動性、特に耐摩耗性を向上するために、ポリオレフィン成分を含有させたポリアミド樹脂の開発がなされている。
特許文献1及び3では、ポリオレフィン成分として超高分子量のものを使用したポリアミド樹脂組成物は摺動性に優れることが記載されている。特許文献1及び2では、ポリオレフィン成分は酸変性されたものが使用されている。
そして、特許文献4には、共重合化合物とアミノシランとポリウレタン樹脂とを含有するガラス繊維集束剤で処理されたガラス繊維、及びポリアミド樹脂を複合化させた、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-199789号公報
【文献】特開2018-119018号公報
【文献】特開平10-60269号公報
【文献】特開2014-231452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
摺動部品には、繰り返しの使用によって摺動部品自体が摩耗しないことが求められることに加え、接触対象を劣化させないことも求められる。
特許文献1~3のポリアミド樹脂組成物については、摺動性は確認されているものの、上記要求を満たす組成物とするためにさらなる改良が求められた。
特許文献4のポリアミド樹脂では、機械的強度が確認されているに過ぎなかった。
【0006】
本発明は、機械特性、摺動性及び耐摩耗性に優れたポリアミド樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば以下の[1]~[6]である。
[1]脂肪族ポリアミド樹脂(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、及び集束剤が塗布されているガラス繊維(C)を配合してなるポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド樹脂組成物100質量部において、脂肪族ポリアミド樹脂(A)を50.00~90.00質量部、酸変性ポリオレフィン(B)を2.00~15.00質量部、及び集束剤が塗布されているガラス繊維(C)を6.00~14.00質量部配合してなり、
135℃のデカリン溶媒中で測定される、前記酸変性ポリオレフィン(B)の極限粘度[η]が10~40dl/gであり、
前記ガラス繊維の平均繊維径が10.0μm以下であり、
前記集束剤が、ポリウレタン樹脂と、酸性基を有する共重合体とを含む、
ポリアミド樹脂組成物。
[2]さらに、高級脂肪酸アミド(D1)及び高級脂肪酸塩(D2)からなる群から選択される少なくとも1種の高級脂肪酸化合物(D)を、ポリアミド樹脂組成物100質量部において、0.05~0.50質量部配合してなる[1]のポリアミド樹脂組成物。
[3]前記脂肪族ポリアミド樹脂(A)が、アミノカルボン酸又はラクタム由来の構成単位を有する[1]又は[2]のポリアミド樹脂組成物。
[4]前記脂肪族ポリアミド樹脂(A)の数平均分子量が、10,000~35,000である、[1]~[3]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
[5][1]~[4]のいずれかのポリアミド樹脂組成物の成形品。
[6]摺動性が求められる用途に用いられる[5]の成形品。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、機械特性、摺動性及び耐摩耗性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、及び集束剤が塗布されているガラス繊維(C)を配合してなるポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド樹脂組成物100質量部において、脂肪族ポリアミド樹脂(A)を50.00~90.00質量部、酸変性ポリオレフィン(B)を2.00~15.00質量部、及び集束剤が塗布されているガラス繊維(C)を6.00~14.00質量部配合してなり、
135℃のデカリン溶媒中で測定される、前記酸変性ポリオレフィン(B)の極限粘度[η]が10~40dl/gであり、
前記ガラス繊維の平均繊維径が10.0μm未満であり、
前記集束剤が、ポリウレタン樹脂と、酸性基を有する共重合体とを含む、
ポリアミド樹脂組成物に関する。
【0010】
<脂肪族ポリアミド樹脂(A)>
ポリアミド樹脂組成物には、脂肪族ポリアミド樹脂(A)が配合される。
脂肪族ポリアミド樹脂(A)としては、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0011】
(A-1)脂肪族ホモポリアミド樹脂
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、1種であるポリアミド樹脂を意味する。ここで、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分としては、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との組み合わせ、ラクタム又はアミノカルボン酸が挙げられる。脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との組み合わせとは、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合体からなるモノマー成分である。
脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸の組み合わせである場合は、1種の脂肪族ジアミンと1種の脂肪族ジカルボン酸の組合せで1種のモノマー成分とみなすものとする。
【0012】
脂肪族ジアミンの炭素原子数は、2~20であることが好ましく、4~12であることが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の炭素原子数は、2~20であることが好ましく、6~12であることが特に好ましい。ラクタムの炭素原子数は、4~12であることが好ましい。アミノカルボン酸の炭素原子数は、4~12であることが好ましい。
【0013】
ラクタムとしては、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン、ラウリルラクタム等が挙げられる。
これらの中でも重合生産の観点から、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム及びラウリルラクタムからなる群から選択される1種が好ましい。
また、アミノカルボン酸としては6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸が挙げられる。
これらの中でも重合生産の観点から、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、及び12-アミノドデカン酸からなる群から選択される1種が好ましい。
【0014】
脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂環式以外の脂肪族ジアミン;1,3-/1,4-シクロヘキシルジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、1,3-/1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサン、5-アミノ-2,2,4-トリメチル-1-シクロペンタンメチルアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチレンアミン等の脂環式ジアミン等が挙げられる。
これらの中でも重合生産性の観点から、脂環式以外の脂肪族ジアミンが好ましく、ヘキサメチレンジアミンがより好ましい。
【0015】
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等の脂環式以外の脂肪族ジカルボン酸;1,3-/1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン-4,4’-ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。
これらの中でも脂環式以外の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、アジピン酸、セバシン酸及びドデカンジオン酸からなる群から選択される1種がより好ましく、アジピン酸又はドデカンジオン酸が更に好ましい。
【0016】
脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の組合せとして、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の組合せ、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の組合せ、ヘキサメチレンジアミンとドデカンジオン酸の組合せ等が挙げられ、これらの組合せの等モル塩が好ましく用いられる。
【0017】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)として具体的には、ポリブチロラクタム(ポリアミド4)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリテトラメチレンアゼラミド(ポリアミド49)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリバレロラクタム (ポリアミド5)、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリエナントラクタム(ポリアミド7)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリラウリルラクタム(ポリアミド12)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリペンタメチレンアゼラミド(ポリアミド59)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリペンタメチレンドデカミド(ポリアミド512)、ポリペンタメチレントリデカミド(ポリアミド513)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンオキサミド(ポリアミド122)等が挙げられる。
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)は1種単独で用いても、2種以上を組合せた混合物として用いてもよい。
【0018】
中でも脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)は、重合生産性の観点から、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610及びポリアミド612からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610及びポリアミド612ら選択される少なくとも1種がより好ましく、ポリアミド6が更に好ましい。
【0019】
(A-2)脂肪族共重合ポリアミド樹脂
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が2種以上であり、かつ、芳香環を有さない脂肪族ポリアミド樹脂である。よって、脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)としては、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との組合せ、ラクタム及びアミノカルボン酸からなる群から選択されるモノマーの2種以上の共重合体である脂肪族共重合ポリアミド樹脂が挙げられる。ここで、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との組み合わせとは、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合体からなるモノマー成分である。脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の組み合わせは、1種類のジアミンと1種類のジカルボン酸の組合せで1種類のモノマー成分とみなす。
【0020】
脂肪族ジアミンとしては、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の原料として例示したものと同様のものが挙げられる。ジアミンは1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの中でも重合生産性の観点から、脂環式以外の脂肪族ジアミンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、直鎖状脂肪族ジアミンからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、ヘキサメチレンジアミンが更に好ましい。
【0021】
脂肪族ジカルボン酸としては、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の原料として例示したものと同様のものが挙げられる。ジカルボン酸は1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの中でも脂環式以外の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、アジピン酸、セバシン酸及びドデカンジオン酸からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、アジピン酸及びドデカンジオン酸からなる群から選択される少なくとも1種が更に好ましい。
【0022】
ラクタムとしては、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の原料として例示したものと同様のものが挙げられる。ラクタムは1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも重合生産の観点から、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム及びラウリルラクタムからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0023】
また、アミノカルボン酸としては、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の原料として例示したものと同様のものが挙げられる。アミノカルボン酸は1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの中でも重合生産の観点から、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、及び12-アミノドデカン酸からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0024】
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)として具体的には、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ポリアミド6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアゼライン酸共重合体(ポリアミド6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノドデカン酸共重合体(ポリアミド6/612)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/66/612)、ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/カプロラクタム共重合体(ポリアミド66/6)等の脂肪族共重合ポリアミドが挙げられる。脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)は1種単独で用いても、2種以上を組合せた混合物として用いてもよい。
【0025】
これらの中でも、成形品の吸水率を抑制し、機械的強度を保つ観点から、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12及びポリアミド6/66/12からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ポリアミド6/66及びポリアミド6/66/12からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、ポリアミド6/66が特に好ましい。
【0026】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、生産性の観点から、アミノカルボン酸又はラクタム由来の構成単位を有することが好ましく、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)であることが好ましく、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11及びポリアミド12からなる群から選択される1種以上であることがより好ましく、ポリアミド6、ポリアミド46及び/又はポリアミド66であることが特に好ましい。
【0027】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)の数平均分子量は、摺動性の観点から、数平均分子量が10,000~35,000であることが好ましく、10,000~32,000がより好ましく、11,000~30,000がさらに好ましい。数平均分子量は、相対粘度から算出した値である。相対粘度は、JIS K6920-2に準拠し、ポリアミド1gを96%濃硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定した値である。
【0028】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度は、フェノールとメタノールの混合溶媒に溶解させ中和滴定で求められる末端アミノ基濃度として、30μmol/g以上の範囲が好ましく、30μmol/g以上50μmol/g以下の範囲がより好ましい。上記範囲であれば、成形加工性や機械物性を十分に得ることができる。
【0029】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)が、末端アミノ基濃度の異なる2種以上のポリアミド樹脂(例えば、少なくとも1種の脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)と少なくとも1種の脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2))を含む場合、脂肪族ポリアミド樹脂(A)における末端アミノ基濃度は、上記中和摘定で測定されるのが好ましいが、それぞれのポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度とその混合比が判明している場合、それぞれの末端アミノ基濃度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、脂肪族ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基濃度としてもよい。本発明においては、中和摘定で測定された値を採用する。
脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、1種の成分又は2種以上の組合せの成分であってもよい。
【0030】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)の配合量は、ポリアミド樹脂組成物100質量部において、50.00~90.00質量部、好ましくは65.00~87.00質量部、より好ましくは75.00~85.00質量部である。脂肪族ポリアミド樹脂(A)の配合量が上記範囲にあると、機械物性や成形加工性が良好である。
【0031】
<酸変性ポリオレフィン(B)>
ポリアミド樹脂組成物には、酸変性ポリオレフィン(B)が配合される。
酸変性ポリオレフィン(B)は、酸変性基を含有する化合物で変性されたポリオレフィンである。酸変性ポリオレフィン(B)は、酸変性基を含有する化合物での変性に加え、更に、酸変性基以外の変性基を含有する化合物で変性されていてもよい。
ポリオレフィンは、酸変性基を含有する化合物で変性されることにより、脂肪族ポリアミド樹脂(A)との親和性が向上する。
【0032】
ポリオレフィンは、オレフィンの単独重合体又は共重合体である。オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
【0033】
また共重合体は、非共役ジエン等のポリエンを共重合したものであってもよい。非共役ジエンとしては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペンル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,5-ノルボルナジエン等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
ポリオレフィンは、エチレンの単独重合体、及び、エチレンとエチレン以外のα-オレフィンとの共重合体であることが好ましい。ポリオレフィンの市販品としては、超高分子量ポリオレフィンとして販売されているものが挙げられる。
【0034】
ポリオレフィンの酸変性基として、カルボキシル基、カルボキシル金属塩、酸無水物基、スルホン酸基等が挙げられる。酸変性基は、カルボキシル基、酸無水物基であることが好ましい。また、酸変性基以外の変性基としては、アミノ基、水酸基、シラノール基、アルコキシ基、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、オキサゾリン基等が挙げられる。
【0035】
酸変性ポリオレフィン(B)は、ポリオレフィン及び酸変性基を含有する化合物を溶融混練し、ポリオレフィンをグラフト変性して酸変性基を導入することにより得ることができる。また、酸変性ポリオレフィン(B)は、押出機や二軸混練機等を用いて、無溶媒で、ポリオレフィンと酸変性基を含有する化合物とを反応させて製造することにより得ることもできる。
【0036】
酸変性基を含有する化合物としては、不飽和カルボン酸又はその誘導体、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、ビニル基含有有機ケイ素化合物等の化合物が挙げられる。不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、カルボキシル基を1以上有する不飽和化合物、カルボキシル基を有する化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボキシル基を1以上有する不飽和化合物等が挙げられる。不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基等が挙げられる。酸変性基を含有する化合物は、反応性の観点から、不飽和カルボン酸又はその誘導体であることが好ましい。
【0037】
不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸等の不飽和ジカルボン酸が挙げられる。また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、前記不飽和カルボン酸の酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等が挙げられ、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等が好ましい。不飽和カルボン酸又はその誘導体は、反応性の観点から、無水マレイン酸及び/又はアクリル酸であることがより好ましく、無水マレイン酸であることが特に好ましい。
酸変性基を含有する化合物は、1種の成分又は2種以上の成分であってもよい。
【0038】
酸変性基以外の変性基を含有する化合物は、前記した酸変性基以外の変性基を含有する化合物から適宜選択できる。
【0039】
ポリオレフィンを酸変性する際の、前記酸変性基を含有する化合物及び任意の酸変性基以外の変性基を含有する化合物の添加量は、所望とするポリオレフィンの変性量に応じて適宜設定できる。
【0040】
酸変性ポリオレフィン(B)を、ポリオレフィン及び酸変性基を含有する化合物を溶融混練し、ポリオレフィンをグラフト変性して酸変性基を導入することにより得る場合、ポリオレフィンのグラフト変性は、例えば、ポリオレフィンを有機溶媒に溶解し、次いで酸変性基を含有する化合物及びラジカル開始剤などを溶液に加えて、反応させることにより行うことができる。反応温度は、70℃~200℃であることが好ましく、80℃~190℃であることが特に好ましい。また、反応時間は、0.5時間~15時間であることが好ましく、1~10時間であることが特に好ましい。
【0041】
酸変性ポリオレフィン(B)を、押出機や二軸混練機などを用いて、無溶媒で、ポリオレフィンと酸変性基を含有する化合物とを反応させて得る場合、反応温度は、ポリオレフィンの融点以上で行われることが好ましく、160℃~330℃であることが特に好ましい。また、前記反応は、0.5分間~10分間溶融混練することにより行なわれることが好ましい。
【0042】
酸変性ポリオレフィン(B)は、135℃のデカリン溶媒中で測定される極限粘度[η]は10~40dl/gであり、15~35dl/gであることが好ましく、20~30dl/gであることがより好ましい。極限粘度[η]が10以上である場合、ポリアミド樹脂組成物の動摩擦係数が低くなり、摺動性がより向上する傾向がある。酸変性ポリオレフィン(B)の極限粘度[η]は、重合条件により調節することができる。
【0043】
酸変性ポリオレフィン(B)は、上記した以外に、特開2018-199789号公報、特開2006-28231号公報に記載された成分が挙げられる。
酸変性ポリオレフィン(B)は、1種の成分又は2種以上の組合せの成分であってもよい。
【0044】
酸変性ポリオレフィン(B)の配合量は、ポリアミド樹脂組成物100質量部において、2.00~15.00質量部であり、好ましくは2.00~13.00質量部、より好ましくは4.00~11.00質量部である。酸変性ポリオレフィン(B)の配合量が上記範囲にあると、摺動性と機械強度が良好である。
【0045】
<ポリウレタン樹脂と酸性基を有する共重合体とを含む集束剤が塗布されたガラス繊維(C)>
ポリアミド樹脂組成物には、ポリウレタン樹脂と、酸性基を有する共重合体とを含む集束剤が塗布されたガラス繊維(C)が配合される。ポリウレタン樹脂と酸性基を有する共重合体とを含む集束剤が塗布されたガラス繊維(C)(以下、「集束剤が塗布されたガラス繊維(C)」ともいう。)は、ポリアミド樹脂組成物に、優れた摺動性及び機械特性を付与する成分である。
【0046】
[ガラス繊維]
ガラス繊維を構成するガラスとしては、Aガラス、ARガラス、Cガラス、Dガラス、Eガラス、Hガラス、Sガラス、Tガラス、Mガラス、NEガラス等の組成からなるものが挙げられる。
【0047】
繊維とは、アスペクト比(長径/短径の比)が10以上である形状を言う。
ガラス繊維は、他の成分との溶融混練する際に折れが生じることがある。そのため、ガラス繊維は、配合時に本明細書の「繊維」の定義に当てはまる限り、溶融混練で折れた結果、ポリアミド組成物中では本明細書の「繊維」の定義に当てはまらなくなったものも含む。
【0048】
ガラス繊維の形状は特に限定されず、フラットファイバー、チョップドストランド、等が挙げられる。ガラス繊維の断面の形状は特に限定されず、真円形、まゆ形、長円形、長方形又はこれらの類似形が挙げられる。
【0049】
ガラス繊維の平均繊維径は10.0μm以下であり、5.0μm~10.0μmであることが好ましく、5.0μm~8.0μmであることがより好ましい。ガラス繊維の平均繊維径が上記範囲にあると、摺動性に優れるとともに、摩耗量が抑制される。ガラス繊維の平均繊維径は、光学顕微鏡により測定した値であり、市販品を使用する場合はカタログ値であってもよい。集束剤が塗布されたガラス繊維(C)の平均繊維径も同じ範囲であることが好ましい。
【0050】
ガラス繊維の断面が長方形又はその類似形である場合、断面の一辺の長さは、0.5μm~50μmであることが好ましく、1~40μmであることが特に好ましい。ガラス繊維の数平均繊維長は、250μm~400μmであることが好ましく、300μm~360μmであることが特に好ましい。ガラス繊維の重量平均繊維長は、350μm~550mであることが好ましく、380μm~500μmであることが特に好ましい。ガラス繊維の数平均繊維長及び重量平均繊維長は、透過顕微鏡を用いて撮影した画像から画像解析ソフトを用いて求めることができる。ガラス繊維の平均繊維径で数平均繊維長を除して得られるアスペクト比は、剛性、機械的強度、流動性の観点から、10以上であることが好ましく、15~100であることが特に好ましい。
【0051】
[ポリウレタン樹脂]
ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とをウレタン反応させることにより得られる樹脂である。
【0052】
≪ポリオール成分≫
ポリオール成分としては、ポリエステルポリオール(縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール)、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0053】
縮合系ポリエステルポリオールとしては、ジカルボン酸又はその低級アルキルエステルと、脂肪族ジオールとを反応させたもの等が挙げられる。ここで、ジカルボン酸又はその低級アルキルエステルとしては、アジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、ピメリン酸、セバシン酸、フタル酸等が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカメチレングリコール等の側鎖を有しない脂肪族ジオール、及び、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール等の側鎖を有する脂肪族ジオール等が挙げられる。
【0054】
ラクトン系ポリエステルポリオールとしては、β-プロピオラクトン、ピバロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、メチル-ε-カプロラクトン、ジメチル-ε-カプロラクトン、トリメチル-ε-カプロラクトン等のラクトン化合物を、短鎖のポリオール等のヒドロキシ化合物と共に反応させたものなどが挙げられる。
【0055】
ポリカーボネートポリオールとしては、短鎖のポリオール等のヒドロキシ化合物と、ジアリルカーボネート、ジアルキルカーボネート又はエチレンカーボネートからエステル交換反応によって得られたものが使用される。例えば、ポリ-1,6-ヘキサメチレンカーボネート、ポリ-2,2’-ビス(4-ヒドロキシヘキシル)プロパンカーボネートなどが工業的に生産されており入手しやすい。ポリカーボネートポリオールを得る別の方法としては、いわゆるホスゲン法(又は溶剤法)によることができる。
【0056】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリンベースポリアルキレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0057】
≪ポリイソシアネート成分≫
ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0058】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
【0059】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0060】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-3,5-フェニレンジイソシアネート、1-エチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-イソプロピル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-4,6-フェニレンジイソシアネート、1,4-ジメチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1-メチル-3,5-ジエチルベンゼンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ジエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、1-メチル-ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-2,7-ジイソシアネート、1,1-ジナフチル-2,2’-ジイソシアネート、ビフェニル-2,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0061】
ポリイソシアネートは、1分子当たりイソシアナト基を2個有するジイソシアネートであることが好ましい。
【0062】
ウレタン化反応に際しては、多価アルコール、多価アミン等の鎖延長剤を使用することもできる。
【0063】
[酸性基を有する共重合体]
酸性基を有する共重合体としては、酸性基を有するモノマーの共重合体、又は、酸性基を有するモノマーと、酸性基を有さないモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0064】
酸性基を有するモノマーとしては、不飽和カルボン酸、カルボン酸無水物等が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸等が挙げられる。カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水クロレンディック酸、無水シトラコン酸等の無水ジカルボン酸等が挙げられる。カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水クロレンディック酸等の無水ジカルボン酸等が挙げられる。カルボン酸無水物は、共重合時における立体障害が少なく、化合物の極性が小さいため、無水マレイン酸であることが好ましい。また、酸性基を有するモノマーは、酸性基と同等の機能を有する官能基を有するモノマーでも良く、そのような官能基としては、前記不飽和カルボン酸の酸ハライド、アミド、イミド及びエステル等が挙げられ、酸性基と同等の機能を有する官能基を有するモノマーとしては、塩化マレニル、マレイミド、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等が挙げられる。これらは1種単独でも、2種以上の組み合わせでもよい。
【0065】
酸性基を有さないモノマーとしては、スチレン、エチレン、アセチレン等が挙げられる。
【0066】
酸性基を有する共重合体としては、不飽和ジカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物、アクリル酸メチル並びにメタクリル酸メチルが共重合した共重合化合物であることが好ましい。
【0067】
不飽和ジカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物の共重合割合は、共重合体を製造する際の反応性、機械的特性の観点から、20~60質量%であることが好ましく、25~55質量%であることが特に好ましい。アクリル酸メチルの共重合割合は、共重合体を製造する際の反応性、機械的特性の観点から、20~75質量%であることが好ましく、30~65質量%であることが特に好ましい。また、メタクリル酸メチルの共重合割合は、共重合体を製造する際の反応性、機械的特性の観点から、5~20質量%であることが好ましく、7~17質量%であることが特に好ましい。酸性基を有さないモノマーの共重合割合は、10質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0068】
共重合化合物の重量平均分子量は、共重合体を製造する際の反応性、機械的特性の観点から、10,000~60,000であることが好ましく、20,000~50,000であることが特に好ましい。共重合化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量である。
【0069】
[集束剤のその他の成分]
集束剤は、ポリウレタン樹脂及び酸性基を有する共重合体以外に更なる成分を含んでいてもよい。更なる成分としては、カップリング剤、潤滑剤、ノニオン性界面活性剤、帯電防止剤、水、有機溶媒等が挙げられる。潤滑剤としては、脂肪酸アミド、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤としては、合成アルコール系、天然アルコール系、脂肪酸エステル系等が挙げられる。水及び有機溶媒は、潤滑剤、ノニオン性界面活性剤、帯電防止剤等を溶解させる成分である。有機溶媒としては、エタノール等が挙げられる。
【0070】
集束剤における各成分の含有量は、得られるガラス繊維の特性に応じて、適宜設定できる。
【0071】
〔塗布〕
ガラス繊維は、ポリウレタン樹脂と酸性基を有する共重合体とを含む集束剤が塗布されている。「塗布」とは、ガラス繊維の少なくとも一部の表面に集束剤が付着していることをいう。ガラス繊維は、前記集束剤が塗布されることにより、表面処理される。また、ガラス繊維は、前記集束剤が塗布されることにより、2本以上のガラス繊維を1本にまとめるようにする集束処理が行われていてもよい。また、集束処理は、溶融ガラスを複数のノズルから引き出すことによって形成された複数のガラス繊維モノフィラメントに、前記集束剤を塗布した後、束ねられて1本のガラス繊維ストランドとし、その後ケーキとして巻き取ることにより行うこともできる。
【0072】
前記集束剤が塗布されたガラス繊維(C)は、更なる成分で表面処理されていてもよい。このような成分としては、集束剤に含まれる更なる成分が挙げられる。
【0073】
ポリウレタン樹脂と酸性基を有する共重合体とを含む集束剤が塗布されたガラス繊維(C)は、上記した以外に、特開2014-231452号公報に記載された成分が挙げられる。
ポリウレタン樹脂と酸性基を有する共重合体とを含む集束剤が塗布されたガラス繊維(C)は、1種の成分又は2種以上の組合せの成分であってもよい。
【0074】
集束剤が塗布されたガラス繊維(C)の配合量は、6.00~14.00質量部である。ガラス繊維(C)の配合量が前記範囲外である場合、機械的特性が劣る傾向がある。また、ガラス繊維(C)の配合量が14.00質量部超である場合、摺動部品及び摺動部品の接触する対象の摩耗量が増加する。集束剤が塗布されたガラス繊維(C)の配合量は、成型加工性や機械的強度の観点から、7.00~13.00質量部であることが好ましく、8.00~12.00質量部であることが特に好ましい。
【0075】
<高級脂肪酸化合物(D)>
ポリアミド樹脂組成物には、高級脂肪酸アミド(D1)及び高級脂肪酸塩(D2)からなる群から選択される少なくとも1種の高級脂肪酸化合物(D)が配合されることが好ましい。高級脂肪酸化合物(D)の中でも、高級脂肪酸アミドが好ましい。また、摩耗量を抑制する観点から、高級脂肪酸アミド及び高級脂肪酸塩を組み合わせて用いることが好ましい。
【0076】
高級脂肪酸としては、炭素数12以上の脂肪酸が挙げられ、具体的にはラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、エルカ酸、パルミチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、アラギジン酸、リシノール酸、ベヘン酸などが挙げられる。
高級脂肪酸塩(D2)としては、高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。金属としては、第1族元素(アルカリ金属)、第2族元素(アルカリ土類金属)、第12族元素、第13族元素が挙げられる。具体的には、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸アルミニウム、ベヘン酸リチウム、ベヘン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0077】
高級脂肪酸アミド(D1)としては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、リシノール酸アミド、12-ヒドロキシステアリン酸アミドなどの脂肪族モノ高級脂肪酸アミド、N-ラウリルラウリン酸アミド、N-パルミチルパルミチン酸アミド、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-オレイルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、N-ステアリル-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、N-オレイル-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド、12-ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミドなどのN-置換脂肪族モノカルボン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、へキサメチレンビスステアリン酸アミド、へキサメチレンビスベヘン酸アミド、へキサメチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミドなどの脂肪族ビスカルボン酸アミドや、N,N’-ジシクロヘキサンカルボニル-1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンジカルボアミド、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジアミノシクロヘキサン、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸テトラシクロヘキシルアミド、N,N’-ビス(3-ヒドロキシプロピル)-1,4-クバンジカルボアミド、N,N’-(1,4-シクロヘキサンジイル)ビス(アセトアミド)、トリス(メチルシクロヘキシル)プロパントリカルボキサミドなどの脂環式カルボン酸アミドや、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジベンジルアミド、トリメシン酸トリス(t-ブチルアミド)、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、トリメシン酸トリ(2-メチルシクロヘキシルアミド)、トリメシン酸トリ(4-シクロヘキシルアミド)、2,6-ナフタレン酸ジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、N,N’-ジベンジルシクロヘキサン-1,4-ジカルボアミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’-ジステアリルテレフタル酸アミド、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミドなどの芳香族カルボン酸アミドが挙げられる。これらの中でも、脂肪族モノカルボン酸アミド、N-置換脂肪族モノカルボン酸アミド及び脂肪族ビスカルボン酸アミドからなる群から選ばれる脂肪族カルボン酸アミドが好ましく、脂肪族ビスカルボン酸アミドがより好ましい。
高級脂肪酸化合物(D)は、1種の成分又は2種以上の組合せの成分であってもよい。
【0078】
高級脂肪酸化合物(D)の配合量は、ポリアミド樹脂組成物100質量部において、好ましくは0.05~0.50質量部であり、より好ましくは0.10~0.50質量部、さらに好ましくは0.15~0.45質量部である。高級脂肪酸化合物(D)の配合量が上記範囲にあると、成形体からブリードアウトすることなく、離型性を向上させるとともに、結晶化に良好に寄与する。
【0079】
<(A)~(D)以外の成分>
ポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)~(D)以外の成分を配合することが出来る。
(A)~(D)以外の成分としては、(A)成分及び(B)成分以外の樹脂、及び、機能性付与剤が挙げられる。
【0080】
(A)成分及び(B)成分以外の樹脂としては、半芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、低密度、中密度、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどの未変性のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマーなどのポリエステル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂などのビニル芳香族系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール、ポリビニルアルコール、ロジン系樹脂等が挙げられる。
【0081】
機能性付与剤は、ポリアミド樹脂組成物に通常配合される各種添加剤が挙げられる。機能性付与剤の具体例としては、可塑剤、耐熱剤、発泡剤、耐候剤、結晶核剤、酸化防止剤、結晶化促進剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、分散剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0082】
ここで、機能性付与剤が耐熱剤である場合、耐熱剤としては、有機系、無機系の耐熱剤をその目的に応じて使用でき、これらは、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
有機系耐熱剤としては、フェノール系化合物、リン系化合物、イオウ系化合物、窒素系化合物等を挙げることができる。これらは、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
フェノール系化合物としてはヒンダードフェノール系有機化合物が好ましく挙げられる。本明細書において、ヒンダードフェノールとは、フェノールの水酸基のオルト位に置換基を有する化合物をいう。
リン系化合物としてはヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物、ヒンダードフェノールの次亜リン酸エステル化合物が好ましく挙げられる。
【0083】
耐熱剤は、無機化合物と含窒素化合物との組み合わせ又は無機化合物であることが好ましい。
無機化合物としては、ハロゲン化金属及びハロゲン化金属以外の無機化合物が挙げられる。
【0084】
ハロゲン化金属は、ハロゲンと金属との化合物である。ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。金属としては、第1族元素(アルカリ金属)、第2族元素(アルカリ土類金属)、第3族元素~第12族元素(例えば、遷移金属)等が挙げられる。ハロゲン化金属における金属は、第1族元素(アルカリ金属)、第11族元素(銅族)の金属であることが好ましい。金属が第1族元素(アルカリ金属)である場合のハロゲン化金属としては、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム又は塩化ナトリウム等が挙げられる。また、金属が第11族元素(銅族)である場合のハロゲン化金属としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅等が挙げられる。ハロゲン化金属は、ヨウ化カリウム及び/又はヨウ化第一銅であることが特に好ましい。
【0085】
ハロゲン化金属以外の無機化合物としては、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、リン酸金属塩、亜リン酸金属塩、炭酸金属塩、ケイ酸金属塩、チタン酸金属塩、ホウ酸金属塩、硫酸金属塩、硝酸金属塩等が挙げられる。ハロゲン化金属以外の無機化合物の具体例としては、タルク、マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、クレー、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、水酸化アルミニウム、ドロマイト、カオリン、シリカ、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、水酸化マグネシウム、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、白土、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維及び硼素繊維等が挙げられる。
【0086】
含窒素化合物としては、メラミン、ベングアナミン、ジメチロール尿素及びシアヌール酸等が挙げられる。
【0087】
耐熱剤が配合される場合、耐熱剤の配合量は、ポリアミド樹脂組成物100質量部において、好ましくは0.01~2.00質量部、より好ましくは0.05~1.00質量部、より好ましくは0.10~0.50質量部である。
【0088】
上記した以外の機能性付与剤としては、例えば、特開2002-370551号公報に記載された成分が挙げられる。
(A)~(D)以外の成分は、それぞれ、1種の成分又は2種以上の組合せの成分であってもよい。
【0089】
<ポリアミド樹脂組成物の製造方法>
ポリアミド樹脂組成物の製造方法として、各成分を混練できる方法であれば特に制限はなく、例えば、二軸混練機、二軸押出機、単軸押出機、多軸押出機等によって製造する方法を挙げることができる。例えば、2軸押出機を使用して、全ての原材料を配合後、溶融混練する方法、一部の原材料を配合後、溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後、溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。
【0090】
ポリアミド樹脂組成物において、脂肪族ポリアミド樹脂(A)と酸変性ポリオレフィン(B)とはその一部が反応していてもよい。反応の態様としては、脂肪族ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基と酸変性ポリオレフィン(B)の酸変性基とが反応する態様が挙げられる。そのため、ポリアミド樹脂組成物を製造する際の各成分の配合量と、製造後のポリアミド樹脂組成物中の各成分の含有量は、一致しないことがある。
【0091】
[ポリアミド樹脂組成物等の用途]
ポリアミド樹脂組成物は、特に制限されず、射出成形、押出成形、ブロー成形、回転成形、真空成形、圧空成形などの公知の方法を利用する成形品の製造に用いることができる。また、ポリアミド樹脂組成物を含む成形品は、摺動性が求められる部品に用いることができる。摺動性が求められる部品としては、例えば、ギア、カム、プーリー、軸受、ベアリングリテーナー、ドアチェック、タイミングチェーンガイド、ケーブル・ホース支持・案内装置用品などの動的用途を目的とするものが挙げられる。他の同様の機能を要求される部材に用いても差し支えはない。
【実施例
【0092】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0093】
<<測定方法及び評価>>
[機械的特性]
(1)引張応力、引張破壊ひずみ
ISO294-1に基づきタイプA型試験片を作製し、ISO527-1,2に基づき23℃、50%RH雰囲気下引張試験を実施した。
【0094】
(2)曲げ強さ、及び曲げ弾性率
ISO294-1に基づきタイプB型試験片を作製し、ISO178(A法)に基づき23℃、50%RH雰囲気下曲げ試験を実施した。
【0095】
(3)シャルピー衝撃強さ
ISO294-1に基づきタイプB型試験片を作製し、後加工にてISO 179/1eAに基づきVノッチ加工した。ハンマー容量1J、23℃、50%RH雰囲気下シャルピー衝撃試験を実施した。
【0096】
なお、引張応力が110~130MPaであり、引張破壊ひずみが3.0~5.0%であり、曲げ強さが160~200MPaであり、曲げ弾性率が4,500~5,000MPaであり、かつシャルピー衝撃強さが4.0KJ/m以上である場合は、「機械的特性」に優れると判断した。
【0097】
[硬さ]
(1)ロックウェル硬度(Mスケール)
ISO 6508-1に準じて、株式会社明石製作所製の電動デジタルロックウェル硬度計型式ARD-Pを使用して、23℃、50%RHで測定した。
なお、ロックウェル硬度が、80~92である場合は、「硬さ」が摺動部品の材料として適当な硬度であると判断した。
【0098】
[摺動性]
ポリアミド樹脂組成物と炭素鋼との摺動性を以下の通り測定した。
(1)限界PV値
住友重機械工業社製 SE100D-C160S射出成形機を用いて、実施例及び比較例のポリアミド樹脂組成物の60mm×40mm×3mmの試験片を作製した。JISK7218A法に準拠し、鈴木式摩擦摩耗試験機(オリエンテック社製、EFM-III-EN)で、材質がJIS規格G4051に記載のS45Cの炭素鋼である外径25.6mm、内径20mm、高さ15mmのリングを用いて、リングオンディスク方式で、試験速度(周速度)を500mm/sとし、試験荷重を試験開始時に25kgf(245N)を掛け、5分毎に荷重を25kgf(245N)上昇させていく条件で、作成した試験片の限界PV値を測定した。試験片が溶融した荷重の直前の荷重と試験速度(周速度)500mm/sより下記式(I)より限界PV試験値を求めた。
式(I)
限界PV値=試験片が溶融した直前の試験片にかけた圧力×試験速度(周速度)
【0099】
(2)動摩擦係数
住友重機械工業社製 SE100D-C160S射出成形機を用いて、実施例及び比較例のポリアミド樹脂組成物の60mm×40mm×3mmの試験片を作製した。JISK7218A法に準拠し、鈴木式摩擦摩耗試験機(オリエンテック社製、EFM-III-EN)で、材質がJIS規格G4051に記載のS45Cの炭素鋼である外径25.6mm、内径20mm、高さ15mmのリングを用いて、リングオンディスク方式で、試験速度(周速度)を500mm/sとし、試験荷重を試験開始時に25kgf(245N)を掛け、5分毎に荷重を25kgf(245N)上昇させていく条件で、作製した試験片の限界PV値となる直前の摩擦抵抗力の測定を行った。動摩擦係数は、以下の式(II)から算出される値である。
式(II)
動摩擦係数=(限界PV値となる直前の摩擦抵抗力)/(試験片にかけた垂直荷重)
【0100】
なお、限界PV値が400MPa・cm /sec以上、かつ動摩擦係数(ポリアミド対炭素鋼)が0.10以下である場合は、「摺動性」に優れるとした。
【0101】
[摩耗量]
(1)ポリアミド摩耗量
摺動部品の摩耗量を確認するために、ポリアミド樹脂組成物の炭素鋼に対する摩耗量について、以下の測定を行なった。
住友重機械工業社製 SE100D-C160S射出成形機を用いて、実施例及び比較例のポリアミド樹脂組成物の60mm×40mm×3mmの試験片を作製した。JISK7218A法に準拠し、鈴木式摩擦摩耗試験機(オリエンテック社製、EFM-III-EN)で、材質がJIS規格G4051に記載のS45Cの炭素鋼である外径25.6mm、内径20mm、高さ15mmのリングを用いて、リングオンディスク方式で試験速度(周速度)を300mm/sとし、摺動面面圧を4.4MPa、摺動距離3.24kmとなる条件で、試験片のポリアミド摺動面摩耗深さの測定を行った。摩耗量は、以下の式(III)から算出される値である。
式(III)
ポリアミド摩耗量=(摺動面積×ポリアミド樹脂組成物の試験片の摩耗深さ)/(摺動面圧×摺動距離)
【0102】
(2)ポリアセタール摩耗量
摺動部品が接触する対象の摩耗量を確認するために、摺動部品が接触する対象としてポリアセタール樹脂を用いて、ポリアセタール樹脂のポリアミド樹脂組成物に対する摩耗量について、以下の測定を行なった。
住友重機械工業社製 SE100D-C160S射出成形機を用いて、実施例及び比較例のポリアミド樹脂組成物の60mm×40mm×3mmの試験片を作製した。同様にポリアセタール樹脂は、外径25.6mm、内径20mm、高さ15mmのリング試験片を作成した。JISK7218A法に準拠し、鈴木式摩擦摩耗試験機(オリエンテック社製、EFM-III-EN)で、前記ポリアミド樹脂組成物の試験片と前記ポリアセタール樹脂のリング試験片を用いて、リングオンディスク方式で試験速度(周速度)を100mm/sとし、摺動面面圧を1.25MPa、摺動距離1.08kmとなる条件で、ポリアセタール樹脂の試験片の摺動面摩耗深さの測定を行った。ポリアセタール摩耗量は、下記式(IV)から算出される値である。
式(IV)
ポリアセタール摩耗量=(摺動面積×ポリアセタール樹脂の試験片の摩耗深さ)/(摺動面圧×摺動距離)
【0103】
(3)動摩擦係数
ポリアミド樹脂組成物とポリアセタール樹脂との動摩擦係数を以下の通り測定した。
住友重機械工業社製 SE100D-C160S射出成形機を用いて、実施例及び比較例のポリアミド樹脂組成物の60mm×40mm×3mmの試験片を作製した。同様にポリアセタール樹脂は、外径25.6mm、内径20mm、高さ15mmのリング試験片を作成した。JISK7218A法に準拠し、鈴木式摩擦摩耗試験機(オリエンテック社製、EFM-III-EN)で、前記ポリアミド樹脂組成物の試験片と前記ポリアセタール樹脂のリング試験片を用いて、リングオンディスク方式で試験速度(周速度)を100mm/sとし、摺動面面圧を1.25MPa、摺動距離1.08km、摺動面試験荷重25kgの条件にて、摩擦抵抗力の測定を行った。動摩擦係数は以下の式(V)から算出される値である。
動摩擦係数=(摩擦抵抗力)/(摺動面試験荷重) (V)
【0104】
なお、ポリアミド摩耗量が5.0mm/MPa・km 以下であり、ポリアセタール摩耗量が1.7mm/MPa・km 以下であり、かつ動摩擦係数(ポリアミド対ポリアセタール)が0.018以下である場合、「摩耗量」が少ないと判断した。
【0105】
[総合評価]
「機械的特性」に優れる、「摺動性」に優れる、かつ「摩耗量」が少ないと判断された例を〇(合格)、1つでも満たさない例を×(不合格)とした。
【0106】
実施例及び比較例で使用した成分は、以下の通りである。
ポリアミド6:UBE株式会社製、数平均分子量15,000、末端アミノ基濃度40μmol/g
LY1040:無水マレイン酸変性超高分子量ポリエチレン、製品名「リュブマー(登録商標)LY1040」、三井化学株式会社製、極限粘度[η]=25dl/g
ガラス繊維(1):丸チョップ NEG T-211DE Φ6.5ミクロン(日本電気硝子株式会社製。平均繊維径6.5μm、ポリウレタン樹脂と酸性基を有する共重合体とを含む集束剤が塗布)
ガラス繊維(2):丸チョップ NEG T-211H Φ10.5ミクロン(日本電気硝子株式会社製。平均繊維径10.5μm、ポリウレタン樹脂と酸性基を有する共重合体とを含む集束剤が塗布)
ガラス繊維(3):丸チョップ 456S Φ6.5ミクロン(日東紡績株式会社製。平均繊維径6.5μm、ポリウレタン樹脂を含む集束剤が塗布)
エチレンビスステアリン酸アミド:製品名「ライトアマイドWH-255」、共栄社化学株式会社製
ステアリン酸カルシウム:日油株式会社 カルシウムステアレートU
ステアリン酸マグネシウム:日油株式会社 マグネシウムステアレート
カーボンブラック:Cabot corporation VALCAN P
CuI/KI: ヨウ化第一銅/ヨウ化カリウム=1/6(混合物)
分散剤:ノニオン活性剤、製品名「バル-7220」、丸菱工業社株式会社製
測定に用いたポリアセタール樹脂:製品名「ジュラコンM90-40」、ポリプラスチック社製
ポリアミド6の数平均分子量は、相対粘度により求めた値である。相対粘度は、JIS K6920-2に準拠し、ポリアミド1gを96%濃硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定した値である。
ポリアミド6の末端アミノ基濃度は、フェノールとメタノールの混合溶媒に溶解させ中和滴定により求めた値である。
酸変性ポリオレフィンの極限粘度[η]は、135℃のデカリン溶媒中で測定された値である。
ガラス繊維の平均繊維径は、カタログ値である。
【0107】
[実施例1~4、比較例1~4]
表1に記載した各成分をコペリオン社製ZSK32Mc二軸混練機で溶融混練し、目的とするポリアミド樹脂組成物ペレットを作製した。評価方法に特に記載がない場合は、得られたペレットをシリンダー温度290℃、金型温度80℃で射出成形し、各種試験片を製造し、各種物性を評価した。
【0108】
【表1】
【0109】
表1の結果から明らかなとおり、実施例のポリアミド樹脂組成物は、機械的特性及び摺動性に優れ、摩耗量が少ない。
集束されたガラス繊維(C)の量が、本願発明の範囲よりも少ない比較例1では、機械的特性が劣っていた。
ガラス繊維の平均繊維径が、本願発明の範囲よりも長い比較例2では、摺動性が劣るとともに、摺動部品の摩耗量が多かった。
ガラス繊維の集束剤が、酸性基を有する共重合体を含まない比較例3では、機械的特性が劣るとともに、摺動部品の摩耗量が多かった。
集束されたガラス繊維(C)の量が、本願発明の範囲よりも多い比較例4では、機械的特性及び摺動性が劣るとともに、硬さが大きく、摺動部品及び摺動部品の接触対象のいずれも摩耗量が多かった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形品として、摺動性が求められる部品に好適に用いられる。
【要約】
本発明は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)、酸変性ポリオレフィン(B)、及び集束剤が塗布されているガラス繊維(C)を配合してなるポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド樹脂組成物100質量部において、脂肪族ポリアミド樹脂(A)を50.00~90.00質量部、酸変性ポリオレフィン(B)を2.00~15.00質量部、及び集束剤が塗布されているガラス繊維(C)を6.00~14.00質量部配合してなり、135℃のデカリン溶媒中で測定される、酸変性ポリオレフィン(B)の極限粘度[η]が10~40dl/gであり、ガラス繊維(C)の平均繊維径が10.0μm以下であり、集束剤が、ポリウレタン樹脂と、酸性基を有する共重合体とを含むポリアミド樹脂組成物に関する。