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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】前原始線条及び中内胚葉細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20240723BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20240723BHJP
   C07K 14/475 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/0735
C07K14/475
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022113855
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2020068885の分割
【原出願日】2005-07-08
(65)【公開番号】P2022142795
(43)【公開日】2022-09-30
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】60/586,566
(32)【優先日】2004-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】60/587,942
(32)【優先日】2004-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】11/021,618
(32)【優先日】2004-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】60/693,364
(32)【優先日】2005-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503431792
【氏名又は名称】ヴィアサイト,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】ダムール,ケヴィン アレン
(72)【発明者】
【氏名】アグルニック,アラン ディー
(72)【発明者】
【氏名】エリアゼル,スーザン
(72)【発明者】
【氏名】クルーン,エバート
(72)【発明者】
【氏名】ベートゲ,エマニュエル イー
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/050249(WO,A2)
【文献】Development,2004年04月,Vol.131,p.1651-1662
【文献】Gene Develop.,1999年,Vol.13,p.1834-1846
【文献】Proceedings of the National Academy of Sciences of USA,2000, Vol.97, No.21, pp.11307-11312
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト胚性幹細胞を中内胚葉細胞に分化する方法であって、
(a)ヒト胚性幹細胞を含む細胞培養物を、0.1%未満の血清を含む培地又は無血清培地と接触させること、
(b)少なくとも100ng/mlのアクチビンAを前記ヒト胚性幹細胞に提供すること、及び
(c)前記ヒト胚性幹細胞の、中内胚葉細胞への分化を、12~24時間、起こさせることを包含する、
前記方法。
【請求項2】
前記細胞培養物中の細胞で、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前に、FZD10、FGF5、Nanog及びOCT4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がアップレギュレートされるか、又はGBX2、ZFP42及びSOX2から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がダウンレギュレートされる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アクチビンAが、前原始線条細胞への前記胚性幹細胞の少なくとも一部の分化を促進するのに十分な量で培地中に存在し、前記前原始線条細胞が中内胚葉細胞に分化し得る多分化能細胞である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記アクチビンAが、中内胚葉細胞への前記胚性幹細胞の少なくとも一部の分化を促進するのに十分な量で培地中に存在し、前記中内胚葉細胞が胚体内胚葉細胞に分化し得る多分化能細胞である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
前記ヒト胚性幹細胞に100ng/mlのアクチビンAを提供する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒト胚性幹細胞を含む細胞培養物を0.1%未満の血清を含む培地と接触させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒト胚性幹細胞を含む細胞培養物を、無血清培地と接触させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒト胚性幹細胞の、中内胚葉細胞への分化を、24時間、起こさせる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、医学及び細胞生物学の分野に関する。特に本発明は、前原始線条及び/又は中内胚葉細胞を含む組成物、並びにこのような細胞の産生、単離及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[背景]
ヒト多能性幹細胞、例えば胚性幹(ES)細胞及び胚性生殖(EG)細胞は、1994年に線維芽細胞フィーダーを含有しない培養物中(Bongso et al., 1994)、そして線維芽細胞フィーダーを含有する(Hogan,1997)培養物中で最初に単離された。後に、Thomson、Reubinoff及びShamblottは、有糸分裂不活性化マウスフィーダー層を用いたヒトES及びEG細胞の連続培養を確立した(Reubinoff et al., 2000;Shamblott et al.,1998; Thomson et al., 1998)。
【0003】
ヒトES及びEG細胞(hESC)は、ヒト発達の早期段階を研究するための、並びにいくつかの疾患状態、例えば真性糖尿病及びパーキンソン病における療法的介入のための独特の機会を提供する。例えばhESC由来のインスリン生産β細胞の使用は、糖尿病の治療のためにドナー膵臓からの細胞を利用する一般的細胞療法手順を上回る膨大な改善を提供する。しかしながら現在、hESCからインスリン生産β細胞を生成する方法は分かっていない。したがって、ドナー膵臓からの島細胞を利用する真性糖尿病のための一般的細胞療法処置は、移植に必要とされる高品質の島細胞の不足により制限される。単一I型糖尿病患者のための細胞療法は、約8×108個の膵臓島細胞の移植を要する(Shapiro et al., 2000;Shapiro et al., 2001a;Shapiro et al., 2001b)。したがって、少なくとも2つの健常ドナー器官が、首尾よいの移植のための十分な島細胞を得るために必要とされる。ヒト胚性幹細胞は、ヒト細胞療法のための相当量の高品質分化細胞を発達させるための出発物質の供給源を提供する。
【0004】
hESCを細胞療法用途に独特に適合させる2つの特性は、多能性、並びに長期間培養中にこれらの細胞を保持する能力である。多能性は、3つの一次胚葉(内胚葉、中胚葉、外胚葉)すべての誘導体に分化し、次に胚体外組織(例えば胎盤)及び生殖細胞のほかに、成熟生物体のすべての体細胞型を形成するhESCの能力により決定される。多能性はhESCに並外れた有用性を付与するが、しかしこの特性は、これらの細胞及びそれらの誘導体の研究及び操作のための独特の好機もあたえる。hESC培養物を分化するに際して生じ得る非常に種々の細胞型のために、膨大な数の細胞型が極めて低い効率で産生される。さらに、任意の所定の細胞型の産生を評価する場合の結果は、適切なマーカーの測定に応じて決定的に決まる。効率的な指示分化は、hESCの療法的用途のために大きな重要性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、hESCの効率的な指示分化を達成することに加えて、hESCからの分化の初期段階で細胞を同定するか及び/又は分離するために用いられ得るマーカーを同定することが有益である。さらに細胞療法に有用な細胞型へのhESC由来のこれらの初期前駆体細胞の分化を促進する因子を同定することが有益である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、ヒト細胞を含む細胞培養物に関する。このような細胞培養物では、
ヒト細胞の少なくとも約5%が前原始線条細胞であり、この場合、前原始線条細胞は、中内胚葉細胞に分化し得る多分化能細胞である。他の実施形態では、培養中のヒト細胞の少なくとも約10%~少なくとも約90%が前原始線条細胞である。本明細書中に記載される或る特定のいくつかの実施形態では、ヒトフィーダー細胞も細胞培養物中に存在する。このような実施形態では、フィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約5%~少なくとも約75%が前原始線条細胞である。いくつかの実施形態では、前原始線条細胞は、マーカー、例えばFGF8及び/又は核局在化β-カテニンを発現する。或る特定のいくつかの実施形態では、これらのマーカーの一方又は両方の発現は、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1の発現より大きい。本明細書中に記載されるさらに他の実施形態では、細胞培養物は、臓側内胚葉細胞、壁側内胚葉細胞、原始内胚葉細胞、胚体内胚葉細胞、外胚葉細胞及び/又は中胚葉細胞を実質的に含有しない。
【0007】
本明細書中に記載される或る特定のいくつかの実施形態に関しては、前原始線条細胞培養物は、多能性ヒト細胞、例えばヒト胚性幹細胞(hESC)を含む。このような実施形態では、少なくとも約2から少なくとも約10個までの前原始線条細胞が細胞培養物中のほぼ1つ毎のhESCに関して存在する。いくつかの実施形態では、hESCは、桑実胚、胚の内部細胞塊(ICM)又は胚の生殖隆起に由来する。いくつかの実施形態では、ヒト前原始線条細胞を含有する細胞培養物は、約2%(v/v)未満から約0.2%(v/v)未満までの血清を含む培地を含む。好ましい実施形態では、このような細胞培養物は、血清又は血清代替物を欠く培地を含む。他の実施形態では、ヒト前原始線条細胞を含有する細胞培養物はTGFβスーパーファミリーのノーダル/アクチビンサブグループの成長因子を含む。好ましい実施形態では、成長因子はアクチビンAである。
【0008】
本明細書中に記載されるさらなる実施形態は、中胚葉又は胚体内胚葉細胞に分化し得る多分化能細胞である中内胚葉細胞を含む細胞培養物に関する。このような実施形態では、細胞培養物は、少なくとも約5%が中内胚葉細胞であるヒト細胞を含む。他の実施形態では、培養中のヒト細胞の少なくとも約10%~少なくとも約90%は中内胚葉細胞である。本明細書中に記載される或る特定のいくつかの実施形態では、ヒトフィーダー細胞も、細胞培養物中に存在する。このような実施形態では、フィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約5%~少なくとも約75%は中内胚葉細胞である。いくつかの実施形態では、中内胚葉細胞は、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1のようなマーカーを発現する。或る特定のいくつかの実施形態では、1つ又は複数のこれらのマーカーの発現は、OCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1の発現より大きい。本明細書中に記載されるさらに他の実施形態では、細胞培養物は、臓側内胚葉細胞、壁側内胚葉細胞、原始内胚葉細胞、胚体内胚葉細胞、外胚葉細胞及び/又は中胚葉細胞を実質的に含有しない。
【0009】
本明細書中に記載される或る特定のいくつかの実施形態に関しては、中内胚葉細胞培養物は、多能性ヒト細胞、例えばヒト胚性幹細胞(hESC)を含む。このような実施形態では、少なくとも約2~少なくとも約10個の中内胚葉細胞が、細胞培養物中のほぼ1つ毎のhESCに関して存在する。いくつかの実施形態では、hESCは、桑実胚、胚の内部細胞塊(ICM)又は胚の生殖隆起に由来する。いくつかの実施形態では、ヒト中内胚葉細胞を含有する細胞培養物は、約2%(v/v)未満から約0.2%(v/v)未満までの血清を含む培地を含む。好ましい実施形態では、このような細胞培養物は、血清又は血清代替物を欠く培地を含む。他の実施形態では、ヒト中内胚葉細胞を含有する細胞培養物はTGFβスーパーファミリーのノーダル/アクチビンサブグループの成長因子を含む。好ましい実施形態では、成長因子はアクチビンAである。
【0010】
本明細書中に記載されるさらなる実施形態は、細胞の少なくとも約90%がヒト前原始線
条細胞である細胞を含む細胞集団に関する。これらの実施形態では、前原始線条細胞は、中内胚葉細胞に分化し得る多分化能細胞である。他の実施形態では、集団中のヒト細胞の少なくとも約95%~少なくとも約98%は前原始線条細胞である。いくつかの実施形態では、前原始線条細胞は、FGF8及び/又は核局在化β-カテニンのようなマーカーを発現する。或る特定のいくつかの実施形態では、これらのマーカーの一方又は両方の発現は、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1の発現より大きい。本明細書中に記載されるさらに他の実施形態では、細胞集団は、臓側内胚葉細胞、壁側内胚葉細胞、原始内胚葉細胞、胚体内胚葉細胞、外胚葉細胞及び/又は中胚葉細胞を実質的に含有しない。
【0011】
本明細書中に記載されるさらに他の実施形態は、細胞の少なくとも約90%がヒト中内胚葉細胞である細胞を含む細胞集団に関する。これらの実施形態では、中内胚葉細胞は、中胚葉細胞及び/又は胚体内胚葉細胞に分化し得る多分化能細胞である。他の実施形態では、集団中のヒト細胞の少なくとも約95%~少なくとも約98%は中内胚葉細胞である。いくつかの実施形態では、中内胚葉細胞は、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1のようなマーカーを発現する。或る特定のいくつかの実施形態では、これらのマーカーの一方又は両方の発現は、OCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1の発現より大きい。本明細書中に記載されるさらに他の実施形態では、細胞集団は、臓側内胚葉細胞、壁側内胚葉細胞、原始内胚葉細胞、胚体内胚葉細胞、外胚葉細胞及び/又は中胚葉細胞を実質的に含有しない。
【0012】
本明細書中に記載されるさらなる実施形態は、前原始線条細胞を産生する方法に関する。このような方法では、多能性ヒト細胞、例えばhESCを含む細胞集団が得られる。細胞集団内の多能性ヒト細胞は、約2%未満の血清及びTGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子を含む培地中で分化され、この場合、成長因子は、多分化能でありそして中内胚葉細胞に分化し得る前原始線条細胞への上記多能性細胞の少なくとも一部の分化を促進するのに十分な量で培地中に存在する。いくつかの実施形態は、前原始線条細胞を十分な時間生成させる工程をさらに包含し、この場合、前原始線条細胞を生成させるための上記の十分な時間が上記細胞集団中の前原始線条細胞の存在を検出することにより決定された。いくつかの実施形態では、十分な時間は少なくとも約6時間である。他の実施形態では、細胞集団中の前原始線条細胞の存在の検出は、細胞集団の細胞中での、FGF8及び核局在化β-カテニンから成る群から選択される少なくとも1つのマーカー、並びにブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及びSOX1から成る群から選択される少なくとも1つのマーカーの発現を検出することを包含し、この場合、上記前原始線条細胞中での、FGF8及び核局在化β-カテニンから成る群から選択されるマーカーの発現がブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及びSOX1から成る群から選択されるマーカーの発現より大きい。このような実施形態では、マーカー検出は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)、免疫細胞化学又は他の匹敵する方法によるものであり得る。
【0013】
本明細書中に記載される或る特定の方法に関しては、培養中のヒト細胞の少なくとも約5%~少なくとも約90%が前原始線条細胞に分化する。本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態では、培地中に存在する成長因子は、TGFβスーパーファミリーのノーダル/アクチビンサブグループの一成長因子である。好ましい実施形態では、成長因子はアクチビンAである。他の好ましい実施形態では、成長因子は、少なくとも約10ng/ml~少なくとも約1000ng/mlの範囲の濃度で培地中に存在する。或る特定のいくつかの実施形態では、成長因子は、約6時間、12時間又は18時間後に除かれる。さらなる実施形態では、培地は、約1%(v/v)未満~約0.2%(v/v)未満の血清を含む。他の実施形態では、培地は低血清RPMIである。さらに他の実施形態では、細胞集団は、血清又は血清代替物の非存在下で分化される。
【0014】
本明細書中に記載される他の方法は、中内胚葉細胞を産生する方法である。このような方法では、多能性ヒト細胞、例えばhESCを含む細胞集団が得られる。細胞集団内の多能性ヒト細胞は、約2%未満の血清及びTGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子を含む培地中で分化され、この場合、成長因子は、多分化能でありそして中胚葉細胞及び/又は胚体内胚葉細胞に分化し得る中内胚葉細胞への上記多能性細胞の少なくとも一部の分化を促進するのに十分な量で培地中に存在する。いくつかの実施形態は、中内胚葉細胞を十分な時間生成させるさらなる工程を包含し、この場合、中内胚葉細胞を生成させるための上記の十分な時間が上記細胞集団中の中内胚葉細胞の存在を検出することにより決定された。いくつかの実施形態では、十分な時間は少なくとも約24時間である。他の実施形態では、細胞集団中の中内胚葉細胞の存在の検出は、細胞集団の細胞中での、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1から成る群から選択される少なくとも1つのマーカー、並びにOCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1から成る群から選択される少なくとも1つのマーカーの発現を検出することを包含し、この場合、上記中内胚葉細胞での、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1から成る群から選択されるマーカーの発現がOCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1から成る群から選択されるマーカーの発現より大きい。このような実施形態では、マーカー検出は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)、免疫細胞化学又は他の匹敵する方法によるものであり得る。
【0015】
本明細書中に記載される或る特定の方法に関しては、培養中のヒト細胞の少なくとも約5%~少なくとも約90%が中内胚葉細胞に分化する。本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態では、培地中に存在する成長因子は、TGFβスーパーファミリーのノーダル/アクチビンサブグループの一成長因子である。好ましい実施形態では、成長因子はアクチビンAである。他の好ましい実施形態では、成長因子は、少なくとも約10ng/ml~少なくとも約1000ng/mlの範囲の濃度で培地中に存在する。或る特定のいくつかの実施形態では、成長因子は、約24時間、36時間又は48時間後に除かれる。さらなる実施形態では、培地は、約1%(v/v)未満~約0.2%(v/v)未満の血清を含む。他の実施形態では、培地は低血清RPMIである。さらに他の実施形態では、細胞集団は、血清又は血清代替物の非存在下で分化される。
【0016】
本明細書中に記載されるさらに他の実施形態は、前原始線条細胞に富んだ細胞集団を産生する方法に関する。このような方法は、(a)多能性細胞集団の少なくとも1つの細胞がFGF8プロモーターの制御下でグリーン蛍光タンパク質(GFP)をコードする核酸配列又はその生物学的活性断片のコピーを含む多能性細胞、例えばhESCの集団を生成する工程、(b)中内胚葉細胞に分化し得る多分化能細胞である前原始線条細胞を産生するように多能性細胞を分化させる工程、及び(c)前原始線条細胞をGFPを発現しない細胞から分離する工程を包含する。いくつかの実施形態では、細胞集団は、少なくとも約95%~少なくとも約98%の前原始線条細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される方法の分化させる工程は、TGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子、例えばアクチビンAを多能性細胞集団に提供することを包含する。アクチビンAの好ましい濃度は、少なくとも約50ng/ml~少なくとも約500ng/mlの範囲である。さらなる実施形態では、細胞集団は、約1%(v/v)未満~約0.1%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される。他の実施形態では、培地は低血清RPMIである。さらに他の実施形態では、細胞集団は、血清又は血清代替物の非存在下で分化される。
【0017】
本明細書中に記載される他の実施形態は、中内胚葉細胞に富んだ細胞集団を産生する方法に関する。このような方法は、(a)多能性細胞集団の少なくとも1つの細胞がブラキュリ、FGF4又はSNAI1プロモーターの制御下でグリーン蛍光タンパク質(GFP)
をコードする核酸配列又はその生物学的活性断片のコピーを含む多能性細胞、例えばhESCの集団を生成する工程、(b)中胚葉細胞及び/又は胚体内胚葉細胞に分化し得る多分化能細胞である中内胚葉細胞を産生するように多能性細胞を分化させる工程、及び(c)中内胚葉細胞をGFPを発現しない細胞から分離する工程を包含する。いくつかの実施形態では、細胞集団は、少なくとも約95%~少なくとも約98%の中内胚葉細胞を含む。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される方法の分化させる工程は、TGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子、例えばアクチビンAを多能性細胞集団に提供することを包含する。アクチビンAの好ましい濃度は、少なくとも約50ng/ml~少なくとも約500ng/mlの範囲である。さらなる実施形態では、細胞集団は、約1%(v/v)未満~約0.1%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される。他の実施形態では、培地は低血清RPMIである。さらに他の実施形態では、細胞集団は、血清又は血清代替物の非存在下で分化される。
【0018】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態は、ヒト細胞を含む細胞集団における前原始線条細胞の分化を促進し得る分化因子を同定するスクリーニング方法である。このような方法は、(a)ヒト前原始線条細胞を含む細胞集団を得る工程、(b)細胞集団に候補分化因子を提供する工程、(c)第1の時点での細胞集団におけるマーカーの発現を測定する工程、第2の時点での細胞集団における同一マーカーの発現を測定する工程、及び(d)第2の時点での細胞集団におけるマーカーの発現が第1の時点での細胞集団におけるマーカーの発現と比較して増大又は減少されているかを判定する工程、であって、第2の時点は第1の時点の後であり、第2の時点は候補分化因子を集団に提供した後であるり、細胞集団におけるマーカーの発現の増大又は減少は候補分化因子が前原始線条細胞の分化を促進し得ることを示す、工程を包含する。或る特定のいくつかの実施形態では、第1の時点は、候補分化因子を提供する前であるか又はそれとほぼ同一時点である。他の実施形態では、第1の時点は、候補分化因子の提供の後である。本明細書中に記載されるスクリーニング方法のいくつかの実施形態では、ヒト前原始線条細胞は、候補分化因子に応答して、中内胚葉細胞、中胚葉細胞及び/又は胚体内胚葉細胞のような細胞に分化する。いくつかの実施形態では、中内胚葉細胞は、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1のようなマーカーの発現により示される。他の実施形態では、中胚葉は、FOXF1、FLK1、BMP4、MOX1及びSDF1のようなマーカーの発現により示される。さらに他の実施形態では、胚体内胚葉細胞は、CXCR4及び/又はSOX17のようなマーカーの発現により示される。
【0019】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法に関しては、或る特定のいくつかの実施形態は、候補分化因子、例えばTGFβスーパーファミリーからの少なくとも1つの成長因子、例えばアクチビンAの提供に関する。他の実施形態では、候補分化因子は、小分子又はポリペプチドである。さらに他の実施形態では、候補分化因子は、TGFβスーパーファミリーの因子でない。さらに他の実施形態では、候補分化因子は、前原始線条細胞の分化を引き起こすことが知られていない因子である。
【0020】
本明細書中に記載される他の実施形態は、ヒト細胞を含む細胞集団における中内胚葉細胞の分化を促進し得る分化因子を同定するスクリーニング方法である。このような方法は、(a)ヒト中内胚葉細胞を含む細胞集団を得る工程、(b)細胞集団に候補分化因子を提供する工程、(c)第1の時点での細胞集団におけるマーカーの発現を測定する工程、第2の時点での細胞集団における同一マーカーの発現を測定する工程、及び(d)第2の時点での細胞集団におけるマーカーの発現が第1の時点での細胞集団におけるマーカーの発現と比較して増大又は減少されているかを判定する工程、であって、第2の時点は第1の時点の後であり、第2の時点は候補分化因子を細胞集団に提供した後であり、細胞集団におけるマーカーの発現の増大又は減少は候補分化因子が中内胚葉細胞の分化を促進し得ることを示す、工程を包含する。或る特定のいくつかの実施形態では、第1の時点は、候補
分化因子を提供する前であるか又はそれとほぼ同一時点である。その他の実施形態では、第1の時点は、候補分化因子の提供の後である。本明細書中に記載されるスクリーニング方法のいくつかの実施形態では、ヒト中内胚葉細胞は、候補分化因子に応答して、中胚葉細胞及び/又は胚体内胚葉細胞のような細胞に分化する。いくつかの実施形態では、中胚葉細胞は、FOXF1、FLK1、BMP4、MOX1及びSDF1のようなマーカーの発現により示される。他の実施形態では、胚体内胚葉細胞は、CXCR4及び/又はSOX17のようなマーカーの発現により示される。
【0021】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法に関しては、或る特定のいくつかの実施形態は、候補分化因子、例えばTGFβスーパーファミリーからの少なくとも1つの成長因子、例えばアクチビンAの提供に関する。他の実施形態では、候補分化因子は、小分子又はポリペプチドである。さらに他の実施形態では、候補分化因子は、TGFβスーパーファミリーの因子でない。さらに他の実施形態では、候補分化因子は、中内胚葉細胞の分化を引き起こすことが知られていない因子である。
【0022】
さらなる実施形態は、ヒト胚性幹細胞(hESC)中のin vitroでのFGF8遺伝子産物の発現を増大する方法に関する。当該方法は、約2%(v/v)未満の血清を含む培地中でhESCを得ること、及び、hESCを、FGF8遺伝子産物の発現を増大するのに十分な量で分化因子と接触させることを包含する。いくつかの実施形態では、分化因子は、TGFβスーパーファミリーからの少なくとも1つの成長因子、例えばアクチビンAである。いくつかの実施形態では、培地は、血清代替物を含まない。
【0023】
さらに他の実施形態は、ヒト胚性幹細胞(hESC)中のin vitroでのブラキュリ、FGF4及びSNAI1から成る群から選択される遺伝子産物の発現を増大する方法に関する。当該方法は、約2%(v/v)未満の血清を含む培地中でhESCを得ること、及びhESCをブラキュリ、FGF4及びSNAI1から成る群から選択される遺伝子産物の発現を増大するのに十分な量で分化因子と接触させることを包含する。いくつかの実施形態では、分化因子は、TGFβスーパーファミリーからの少なくとも1つの成長因子、例えばアクチビンAである。いくつかの実施形態では、培地は血清代替物を含まない。
【0024】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態は、ヒト胚性幹細胞(hESC)と約2%(v/v)未満の血清を含む培地とを含む細胞培養物に関するが、この場合、FGF8mRNAの発現がベースラインFGF8 mRNA発現と比較して、参照時点から約6時間までに実質的にアップレギュレートされるようにhESCが参照時点で分化し始める。いくつかの実施形態では、β-カテニンポリペプチドの発現は、参照時点から約17時間までに細胞核に局在されるようになり始める。他の実施形態では、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1mRNAの発現は、参照時点から約24時間までに実質的にアップレギュレートされる。さらに他の実施形態では、E-カドヘリン mRNAの発現は、参照時点から約12時間までにダウンレギュレートされ始める。さらにいくつかの実施形態では、SOX17mRNAの発現は、参照時点から約48時間までに実質的にアップレギュレートされ、及び/又はFOXA2 mRNAの発現が参照時点から約96時間までに実質的にアップレギュレートされる。本明細書中に記載される細胞培養物の或る特定のいくつかの実施形態では、培地は、約1%(v/v)未満から約0.2%(v/v)未満までの血清を含む。他の実施形態では、培地は約0%(v/v)の血清を含む。さらに他の実施形態では、培地は血清代替物を含まない。
【0025】
本明細書中に記載されるさらなる実施形態は、ヒト胚性幹細胞と、TGFβスーパーファミリーの分化因子と、約2%(v/v)未満の血清を含む培地とを含む細胞培養物であって、第1の組のマーカー遺伝子が、第2の組及び/又は第3の組のマーカー遺伝子のアッ
プレギュレート又は発現ピークの前に、又はアップレギュレート又は発現ピークとほぼ同時に、アップレギュレートされるか又はダウンレギュレートされる細胞培地に関する。いくつかの実施形態では、培地は血清又は血清代替物を含まない。
【0026】
さらに他の実施形態は、ヒト胚性幹細胞を約2%未満の血清を含む培地と接触させ、TGFβスーパーファミリーの分化因子をhESCに提供し、そしてhESCの分化を起こさせることによる細胞培養物における細胞を分化する方法に関する。いくつかの実施形態では、このような方法は、第2の組及び/又は第3の組のマーカー遺伝子のアップレギュレート又は発現ピークの前、又はアップレギュレート又は発現ピークとほぼ同時にアップレギュレートされるか又はダウンレギュレートされる第1の組のマーカー遺伝子を有する細胞を産生する。いくつかの実施形態では、培地は血清又は血清代替物を含まない。
【0027】
或る特定の権限において、「~を含む」という用語の任意の一般的に許容される定義は存在し得ない。本明細書中で用いる場合、「~を含む」という用語は、任意の付加的要素の包含を可能にする「限定しない」文言を表わすように意図される。これに留意して、以下の数字を付した項目を参照しながら、本発明のさらなる実施形態を記載する。
【0028】
1. ヒト細胞を含む細胞培養物であって、当該ヒト細胞の少なくとも約5%が前原始線条細胞であり、当該前原始線条細胞が中内胚葉細胞に分化し得る多分化能細胞である前記細胞培養物。
【0029】
2. 上記ヒト細胞の少なくとも約10%が前原始線条細胞である、項目1記載の細胞培養物。
【0030】
3. 上記ヒト細胞の少なくとも約20%が前原始線条細胞である、項目1記載の細胞培養物。
【0031】
4. 上記ヒト細胞の少なくとも約30%が前原始線条細胞である、項目1記載の細胞培養物。
【0032】
5. 上記ヒト細胞の少なくとも約40%が前原始線条細胞である、項目1記載の細胞培養物。
【0033】
6. 上記ヒト細胞の少なくとも約50%が前原始線条細胞である、項目1記載の細胞培養物。
【0034】
7. 上記ヒト細胞の少なくとも約60%が前原始線条細胞である、項目1記載の細胞培養物。
【0035】
8. 上記ヒト細胞の少なくとも約70%が前原始線条細胞である、項目1記載の細胞培養物。
【0036】
9. 上記ヒト細胞の少なくとも約80%が前原始線条細胞である、項目1記載の細胞培養物。
【0037】
10. 上記ヒト細胞の少なくとも約90%が前原始線条細胞である、項目1記載の細胞培養物。
【0038】
11. ヒトフィーダー細胞が上記培養物中に存在し、そして当該ヒトフィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約5%が前原始線条細胞である、項目1記載の細胞培養物。
【0039】
12. ヒトフィーダー細胞が上記培養物中に存在し、そして当該ヒトフィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約25%が前原始線条細胞である、項目1記載の細胞培養物。
【0040】
13. ヒトフィーダー細胞が上記培養物中に存在し、そして当該ヒトフィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約50%が前原始線条細胞である、項目1記載の細胞培養物。
【0041】
14. ヒトフィーダー細胞が上記培養物中に存在し、そして当該ヒトフィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約75%が前原始線条細胞である、項目1記載の細胞培養物。
【0042】
15. 上記原始線条細胞がFGF8及び核局在化β-カテニンから成る群から選択されるマーカーを発現する、項目1記載の細胞培養物。
【0043】
16. 上記前原始線条細胞中での、FGF8及び核局在化β-カテニンから成る群から選択されるマーカーの発現がブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及びSOX1から成る群から選択されるマーカーの発現より大きい、項目15記載の細胞培養物。
【0044】
17. 上記前原始線条細胞がブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及びSOX1から成る群から選択されるマーカーを実質的に発現しない、項目15記載の細胞培養物。
【0045】
18. 上記前原始線条細胞がFGF8及び核局在化β-カテニンを発現する、項目1記載の細胞培養物。
【0046】
19. 上記前原始線条細胞中での、FGF8及び核局在化β-カテニンの発現がブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及びSOX1の発現より大きい、項目18記載の細胞培養物。
【0047】
20. 上記前原始線条細胞がブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及びSOX1を実質的に発現しない、項目18記載の細胞培養物。
【0048】
21. 上記細胞培養物が臓側内胚葉細胞、壁側内胚葉細胞、原始内胚葉細胞、胚体内胚葉細胞、外胚葉細胞、中胚葉細胞から成る群から選択される細胞を実質的に含有しない、項目1記載の細胞培養物。
【0049】
22. ヒト胚性幹細胞(hESC)をさらに含む、項目1記載の細胞培養物。
【0050】
23. 少なくとも約2つの前原始線条細胞が上記細胞培養物中のほぼ1つ毎のhESCに関して存在する、項目22記載の細胞培養物。
【0051】
24. 少なくとも約10個の前原始線条細胞が上記細胞培養物中のほぼ1つ毎のhESCに関して存在する、項目22記載の細胞培養物。
【0052】
25. 上記hESCが桑実胚、胚の内部細胞塊(ICM)、及び胚の生殖隆起から成る群から選択される組織に由来する、項目22記載の細胞培養物。
【0053】
26. 約2%(v/v)未満の血清を含む培地をさらに含む、項目1記載の細胞培養物。
【0054】
27. 約1%(v/v)未満の血清を含む培地をさらに含む、項目1記載の細胞培養物。
【0055】
28. 約0.5%(v/v)未満の血清を含む培地をさらに含む、項目1記載の細胞培養物。
【0056】
29. 約0.2%(v/v)未満の血清を含む培地をさらに含む、項目1記載の細胞培養物。
【0057】
30. 血清を欠くか又は血清代替物を欠く培地をさらに含む、項目1記載の細胞培養物。
【0058】
31. TGFβスーパーファミリーのノーダル/アクチビンサブグループの成長因子をさらに含む、項目1記載の細胞培養物。
【0059】
32. TGFβスーパーファミリーのノーダル/アクチビンサブグループの上記成長因子がアクチビンAを含む、項目31記載の細胞培養物。
【0060】
33. ヒト細胞の少なくとも約5%が中内胚葉細胞であり、当該中内胚葉細胞が中胚葉細胞又は胚体内胚葉細胞に分化し得る多分化能細胞である上記ヒト細胞を含む細胞培養物。
【0061】
34. 上記ヒト細胞の少なくとも約10%が中内胚葉細胞である、項目33記載の細胞培養物。
【0062】
35. 上記ヒト細胞の少なくとも約20%が中内胚葉細胞である、項目33記載の細胞培養物。
【0063】
36. 上記ヒト細胞の少なくとも約30%が中内胚葉細胞である、項目33記載の細胞培養物。
【0064】
37. 上記ヒト細胞の少なくとも約40%が前原始線条細胞である、項目33記載の細胞培養物。
【0065】
38. 上記ヒト細胞の少なくとも約50%が中内胚葉細胞である、項目33記載の細胞培養物。
【0066】
39. 上記ヒト細胞の少なくとも約60%が中内胚葉細胞である、項目33記載の細胞培養物。
【0067】
40. 上記ヒト細胞の少なくとも約70%が中内胚葉細胞である、項目33記載の細胞培養物。
【0068】
41. 上記ヒト細胞の少なくとも約80%が中内胚葉細胞である、項目33記載の細胞培養物。
【0069】
42. 上記ヒト細胞の少なくとも約90%が中内胚葉細胞である、項目33記載の細胞培養物。
【0070】
43. ヒトフィーダー細胞が上記培養物中に存在し、そして当該ヒトフィーダー細胞以
外のヒト細胞の少なくとも約5%が中内胚葉細胞である、項目33記載の細胞培養物。
【0071】
44. ヒトフィーダー細胞が上記培養物中に存在し、そして当該ヒトフィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約25%が中内胚葉細胞である、項目33記載の細胞培養物。
【0072】
45. ヒトフィーダー細胞が上記培養物中に存在し、そして当該ヒトフィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約50%が中内胚葉細胞である、項目33記載の細胞培養物。
【0073】
46. ヒトフィーダー細胞が上記培養物中に存在し、そして当該ヒトフィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約75%が中内胚葉細胞である、項目33記載の細胞培養物。
【0074】
47. 上記中内胚葉細胞がブラキュリ、FGF4及びSNAI1から成る群から選択されるマーカーを発現する、項目33記載の細胞培養物。
【0075】
48. 上記中内胚葉細胞中での、ブラキュリ、FGF4及びSNAI1から成る群から選択されるマーカーの発現がOCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及びSOX1から成る群から選択されるマーカーの発現より大きい、項目47記載の細胞培養物。
【0076】
49. 上記中内胚葉細胞がOCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及びSOX1から成る群から選択されるマーカーを実質的に発現しない、項目47記載の細胞培養物。
【0077】
50. 上記中内胚葉細胞がブラキュリ、FGF4及びSNAI1を発現する、項目33記載の細胞培養物。
【0078】
51. 上記中内胚葉細胞中での、ブラキュリ、FGF4及びSNAI1の発現がOCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及びSOX1の発現より大きい、項目51記載の細胞培養物。
【0079】
52. 上記中内胚葉細胞がOCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及びSOX1を実質的に発現しない、項目51記載の細胞培養物。
【0080】
53. 上記細胞培養物が臓側内胚葉細胞、壁側内胚葉細胞、原始内胚葉細胞、胚体内胚葉細胞、外胚葉細胞、中胚葉細胞から成る群から選択される細胞を実質的に含有しない、項目33記載の細胞培養物。
【0081】
54. ヒト胚性幹細胞(hESC)をさらに含む、項目33記載の細胞培養物。
【0082】
55. 少なくとも約2つの中内胚葉細胞が上記細胞培養物中のほぼ1つ毎のhESCに関して存在する、項目54記載の細胞培養物。
【0083】
56. 少なくとも約10個の中内胚葉細胞が上記細胞培養物中のほぼ1つ毎のhESCに関して存在する、項目54記載の細胞培養物。
【0084】
57. 上記hESCが桑実胚、胚の内部細胞塊(ICM)、及び胚の生殖隆起から成る群から選択される組織に由来する、項目54記載の細胞培養物。
【0085】
58. 約2%(v/v)未満の血清を含む培地をさらに含む、項目33記載の細胞培養物。
【0086】
59. 約1%(v/v)未満の血清を含む培地をさらに含む、項目33記載の細胞培養物。
【0087】
60. 約0.5%(v/v)未満の血清を含む培地をさらに含む、項目33記載の細胞培養物。
【0088】
61. 約0.2%(v/v)未満の血清を含む培地をさらに含む、項目33記載の細胞培養物。
【0089】
62. 血清を欠くか又は血清代替物を欠く培地をさらに含む、項目33記載の細胞培養物。
【0090】
63. TGFβスーパーファミリーのノーダル/アクチビンサブグループの成長因子をさらに含む、項目33記載の細胞培養物。
【0091】
64. TGFβスーパーファミリーのノーダル/アクチビンサブグループの上記成長因子がアクチビンAを含む、項目63記載の細胞培養物。
【0092】
65. 細胞の少なくとも約90%がヒト前原始線条細胞であり、上記前原始線条細胞が中内胚葉細胞に分化し得る多分化能細胞である上記細胞を含む細胞集団。
【0093】
66. 上記細胞の少なくとも約95%がヒト前原始線条細胞である、項目65記載の細胞集団。
【0094】
67. 上記細胞の少なくとも約98%がヒト前原始線条細胞である、項目65記載の細胞集団。
【0095】
68. 上記ヒト前原始線条細胞がFGF8及び核局在化β-カテニンから成る群から選択されるマーカーを発現する、項目65記載の細胞集団。
【0096】
69. 上記ヒト前原始線条細胞中での、FGF8及び核局在化β-カテニンから成る群から選択されるマーカーの発現がブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及びSOX1から成る群から選択されるマーカーの発現より大きい、項目68記載の細胞集団。
【0097】
70. 上記ヒト前原始線条細胞がブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及びSOX1から成る群から選択されるマーカーを実質的に発現しない、項目68記載の細胞集団。
【0098】
71. 上記ヒト原始線条細胞がFGF8及び核局在化β-カテニンを発現する、項目65記載の細胞集団。
【0099】
72. 上記ヒト前原始線条細胞中での、FGF8及びβ-カテニンの発現がブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及びSOX1の発現より大きい、項目71記載の細胞集団。
【0100】
73. 上記ヒト前原始線条細胞がブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及びSOX1を実質的に発現しない、項目71記載の細胞集団。
【0101】
74. 細胞の少なくとも約90%がヒト中内胚葉細胞であり、上記中内胚葉細胞が中胚葉細胞又は胚体内胚葉細胞に分化し得る多分化能細胞である上記細胞を含む細胞集団。
【0102】
75. 上記細胞の少なくとも約95%がヒト中内胚葉細胞である、項目74記載の細胞集団。
【0103】
76. 上記細胞の少なくとも約98%がヒト中内胚葉細胞である、項目74記載の細胞集団。
【0104】
77. 上記ヒト中内胚葉細胞がブラキュリ、FGF4及びSNAI1から成る群から選択されるマーカーを発現する、項目74記載の細胞集団。
【0105】
78. 上記ヒト中内胚葉細胞中での、ブラキュリ、FGF4及びSNAI1から成る群から選択されるマーカーの発現がOCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及びSOX1から成る群から選択されるマーカーの発現より大きい、項目77記載の細胞集団。
【0106】
79. 上記ヒト中内胚葉細胞がOCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及びSOX1から成る群から選択されるマーカーを実質的に発現しない、項目77記載の細胞集団。
【0107】
80. 上記ヒト中内胚葉細胞がブラキュリ、FGF4及びSNAI1を発現する、項目74記載の細胞集団。
【0108】
81. 上記ヒト中内胚葉細胞中での、ブラキュリ、FGF4及びSNAI1の発現がOCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及びSOX1の発現より大きい、項目77記載の細胞集団。
【0109】
82. 上記ヒト中内胚葉細胞がOCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及びSOX1を実質的に発現しない、項目77記載の細胞集団。
【0110】
83. 前原始線条細胞を産生する方法であって、多能性ヒト細胞を含む細胞集団を得る工程、及び、約2%未満の血清及びTGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子を含む培地中で上記多能性ヒト細胞を分化させる工程を包含し、上記成長因子が前原始線条細胞への上記多能性ヒト細胞の少なくとも一部の分化を促進するのに十分な量で上記培地中に存在し、上記前原始線条細胞が中内胚葉細胞に分化し得る多分化能細胞である上記方法。
【0111】
84. 前原始線条細胞を十分な時間生成させる工程をさらに包含し、前原始線条細胞を生成させるための上記十分な時間が上記細胞集団中の前原始線条細胞の存在を検出することにより決定された項目83記載の方法。
【0112】
85. 上記十分な時間が少なくとも約6時間である、項目84記載の方法。
【0113】
86. 上記細胞集団中の前原始線条細胞の存在の検出が上記細胞集団の細胞中での、FGF8及び核局在化β-カテニンから成る群から選択される少なくとも1つのマーカー、並びにブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及びSOX1から成る群から選択される少なくとも1つのマーカーの発現を検出することを包含し、上記前原始線条細胞中での、FGF8及び核局在化β-カテニンから成る群から選択されるマーカーの発現がブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、S
OX7及びSOX1から成る群から選択されるマーカーの発現より大きい、項目84記載の方法。
【0114】
87. 上記マーカーの少なくとも1つの発現が定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)により測定される、項目86記載の方法。
【0115】
88. 上記マーカーの少なくとも1つの発現が免疫細胞化学により測定される、項目86記載の方法。
【0116】
89. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約5%が前原始線条細胞に分化する、項目83記載の方法。
【0117】
90. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約10%が前原始線条細胞に分化する、項目83記載の方法。
【0118】
91. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約20%が前原始線条細胞に分化する、項目83記載の方法。
【0119】
92. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約30%が前原始線条細胞に分化する、項目83記載の方法。
【0120】
93. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約40%が前原始線条細胞に分化する、項目83記載の方法。
【0121】
94. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約50%が前原始線条細胞に分化する、項目83記載の方法。
【0122】
95. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約60%が前原始線条細胞に分化する、項目83記載の方法。
【0123】
96. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約70%が前原始線条細胞に分化する、項目83記載の方法。
【0124】
97. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約80%が前原始線条細胞に分化する、項目83記載の方法。
【0125】
98. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約90%が前原始線条細胞に分化する、項目83記載の方法。
【0126】
99. 上記少なくとも1つの成長因子がTGFβスーパーファミリーのノーダル/アクチビンサブグループに属する、項目83記載の方法。
【0127】
100. TGFβスーパーファミリーのノーダル/アクチビンサブグループの上記少なくとも1つの成長因子がアクチビンAを含む、項目99記載の方法。
【0128】
101. 上記少なくとも1つの成長因子が少なくとも約10ng/mlの濃度で提供される、項目83記載の方法。
【0129】
102. 上記少なくとも1つの成長因子が少なくとも約100ng/mlの濃度で提供される、項目83記載の方法。
【0130】
103. 上記少なくとも1つの成長因子が少なくとも約500ng/mlの濃度で提供される、項目83記載の方法。
【0131】
104. 上記少なくとも1つの成長因子が少なくとも約1000ng/mlの濃度で提供される、項目83記載の方法。
【0132】
105. 上記少なくとも1つの成長因子が約6時間後に除かれる、項目83記載の方法。
【0133】
106. 上記少なくとも1つの成長因子が約12時間後に除かれる、項目83記載の方法。
【0134】
107. 上記少なくとも1つの成長因子が約18時間後に除かれる、項目83記載の方法。
【0135】
108. 上記細胞集団が約1%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される、項目83記載の方法。
【0136】
109. 上記細胞集団が約0.5%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される、項目83記載の方法。
【0137】
110. 上記細胞集団が約0.2%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される、項目83記載の方法。
【0138】
111. 上記細胞集団が約0.1%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される、項目83記載の方法。
【0139】
112. 上記細胞集団が血清の非存在下又は血清代替物の非存在下で分化される、項目83記載の方法。
【0140】
113. 上記細胞集団が上記少なくとも1つの成長因子を添加後約1日目に約0%(v/v)の血清、上記少なくとも1つの成長因子を添加後約2日目に約0.2%(v/v)以下の血清、そして上記少なくとも1つの成長因子を添加後約3日目に約2%(v/v)以下の血清を含む培地中で分化される、項目83記載の方法。
【0141】
114. 上記細胞集団が低血清RPMI培地中で分化される、項目83記載の方法。
【0142】
115. 上記多能性ヒト細胞がヒト胚性幹細胞(hESC)を含む、項目83記載の方法。
【0143】
116. 上記ヒト胚性幹細胞が桑実胚、胚の内部細胞塊(ICM)、及び胚の生殖隆起から成る群から選択される組織に由来する、項目115記載の方法。
【0144】
117. 項目83記載の方法により産生される前原始線条細胞。
【0145】
118. 中内胚葉細胞を産生する方法であって、多能性ヒト細胞を含む細胞集団を得る工程、及び、約2%未満の血清及びTGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子を含む培地中で上記多能性ヒト細胞を分化させる工程を包含し、上記成長因子が中内胚葉細胞への上記多能性ヒト細胞の少なくとも一部の分化を促進するのに十分な量で上記
培地中に存在し、上記中内胚葉細胞が中内胚葉細胞に分化し得る多分化能細胞である上記方法。
【0146】
119. 中内胚葉細胞を十分な時間生成させる工程をさらに包含し、中内胚葉細胞を生成させるための上記十分な時間が上記細胞集団中の中内胚葉細胞の存在を検出することにより決定された項目118記載の方法。
【0147】
120. 上記十分な時間が少なくとも約24時間である、項目119記載の方法。
【0148】
121. 上記細胞集団中の中内胚葉細胞の存在の検出が、上記細胞集団の細胞中での、ブラキュリ、FGF4及びSNAI1から成る群から選択される少なくとも1つのマーカー、並びにOCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及びSOX1から成る群から選択される少なくとも1つのマーカーの発現を検出することを包含し、上記中内胚葉細胞中での、ブラキュリ、FGF4及びSNAI1から成る群から選択されるマーカーの発現がOCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及びSOX1から成る群から選択されるマーカーの発現より大きい、項目118記載の方法。
【0149】
122. 上記マーカーの少なくとも1つの発現が定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)により測定される、項目121記載の方法。
【0150】
123. 上記マーカーの少なくとも1つの発現が免疫細胞化学により測定される、項目121記載の方法。
【0151】
124. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約5%が中内胚葉細胞に分化する、項目118記載の方法。
【0152】
125. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約10%が中内胚葉細胞に分化する、項目118記載の方法。
【0153】
126. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約20%が中内胚葉細胞に分化する、項目118記載の方法。
【0154】
127. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約30%が中内胚葉細胞に分化する、項目118記載の方法。
【0155】
128. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約40%が中内胚葉細胞に分化する、項目118記載の方法。
【0156】
129. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約50%が中内胚葉細胞に分化する、項目118記載の方法。
【0157】
130. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約60%が中内胚葉細胞に分化する、項目118記載の方法。
【0158】
131. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約70%が中内胚葉細胞に分化する、項目118記載の方法。
【0159】
132. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約80%が中内胚葉細胞に分化する、項目118記載の方法。
【0160】
133. 上記多能性ヒト細胞の少なくとも約90%が中内胚葉細胞に分化する、項目118記載の方法。
【0161】
134. 上記少なくとも1つの成長因子がTGFβスーパーファミリーのノーダル/アクチビンサブグループに属する、項目118記載の方法。
【0162】
135. TGFβスーパーファミリーのノーダル/アクチビンサブグループの上記少なくとも1つの成長因子がアクチビンAを含む、項目134記載の方法。
【0163】
136. 上記少なくとも1つの成長因子が少なくとも約10ng/mlの濃度で提供される、項目118記載の方法。
【0164】
137. 上記少なくとも1つの成長因子が少なくとも約100ng/mlの濃度で提供される、項目118記載の方法。
【0165】
138. 上記少なくとも1つの成長因子が少なくとも約500ng/mlの濃度で提供される、項目118記載の方法。
【0166】
139. 上記少なくとも1つの成長因子が少なくとも約1000ng/mlの濃度で提供される、項目118記載の方法。
【0167】
140. 上記少なくとも1つの成長因子が約24時間後に除かれる、項目118記載の方法。
【0168】
141. 上記少なくとも1つの成長因子が約36時間後に除かれる、項目118記載の方法。
【0169】
142. 上記少なくとも1つの成長因子が約48時間後に除かれる、項目118記載の方法。
【0170】
143. 上記細胞集団が約1%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される、項目118記載の方法。
【0171】
144. 上記細胞集団が約0.5%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される、項目118記載の方法。
【0172】
145. 上記細胞集団が約0.2%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される、項目118記載の方法。
【0173】
146. 上記細胞集団が約0.1%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される、項目118記載の方法。
【0174】
147. 上記細胞集団が血清の非存在下又は血清代替物の非存在下で分化される、項目118記載の方法。
【0175】
148. 上記細胞集団が上記少なくとも1つの成長因子を添加後約1日目に約0%(v/v)の血清、上記少なくとも1つの成長因子を添加後約2日目に約0.2%(v/v)以下の血清、そして上記少なくとも1つの成長因子を添加後約3日目に約2%(v/v)以下の血清を含む培地中で分化される、項目118記載の方法。
【0176】
149. 上記細胞集団が低血清RPMI培地中で分化される、項目118記載の方法。
【0177】
150. 上記多能性ヒト細胞がヒト胚性幹細胞(hESC)を含む、項目118記載の方法。
【0178】
151. 上記ヒト胚性幹細胞が桑実胚、胚の内部細胞塊(ICM)、及び胚の生殖腺隆起から成る群から選択される組織に由来する、項目150記載の方法。
【0179】
152. 項目118記載の方法により産生される中内胚葉細胞。
【0180】
153. 前原始線条細胞に富んだ細胞集団を産生する方法であって、
多能性細胞の集団を得る工程、
前原始線条細胞を産生するように上記多能性細胞を分化させる工程及び、
上記前原始線条細胞をGFPを発現しない細胞から分離する工程を包含し、前記多能性細胞の集団の少なくとも1つの細胞がFGF8プロモーターの制御下の核酸の少なくとも1つのコピーを含み、当該核酸がグリーン蛍光タンパク質(GFP)をコードする配列又はその生物学的活性断片を含み、前記前原始線条細胞が中内胚葉細胞に分化し得る多分化能細胞である、上記方法。
【0181】
154. 上記富化細胞集団が少なくとも約95%の前原始線条細胞を含む、項目153の方法。
【0182】
155. 上記富化細胞集団が少なくとも約98%の前原始線条細胞を含む、項目153の方法。
【0183】
156. 上記分化させる工程が前原始線条細胞への上記多能性細胞の分化を促進するのに十分な量でTGFβスーパーファミリーからの少なくとも1つの成長因子を上記多能性細胞集団に提供することを包含する、項目153記載の方法。
【0184】
157. TGFβスーパーファミリーの上記少なくとも1つの成長因子がアクチビンAである、項目156記載の方法。
【0185】
158. 上記アクチビンAが少なくとも約50ng/mlの濃度で提供される、項目157記載の方法。
【0186】
159. 上記アクチビンAが少なくとも約100ng/mlの濃度で提供される、項目157記載の方法。
【0187】
160. 上記アクチビンAが少なくとも約500ng/mlの濃度で提供される、項目157記載の方法。
【0188】
161. 上記細胞集団が約1%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される、項目153記載の方法。
【0189】
162. 上記細胞集団が約0.5%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される、項目153記載の方法。
【0190】
163. 上記細胞集団が約0.2%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される、項目153記載の方法。
【0191】
164. 上記細胞集団が約0.1%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される、項目153記載の方法。
【0192】
165. 上記細胞集団が血清の非存在下又は血清代替物の非存在下で分化される、項目153記載の方法。
【0193】
166. 上記細胞集団が上記少なくとも1つの成長因子を添加後約1日目に約0%(v/v)の血清、上記少なくとも1つの成長因子を添加後約2日目に約0.2%(v/v)以下の血清、そして上記少なくとも1つの成長因子を添加後約3日目に約2%(v/v)以下の血清を含む培地中で分化される、項目153記載の方法。
【0194】
167. 上記細胞集団が低血清RPMI培地中で分化される、項目153記載の方法。
【0195】
168. 項目153記載の方法により産生される前原始線条細胞の富化集団。
【0196】
169. 中内胚葉細胞に富んだ細胞集団を産生する方法であって、
多能性細胞の集団を得る工程、
中内胚葉細胞を産生するように上記多能性細胞を分化させる工程及び、
上記中内胚葉細胞をGFPを発現しない細胞から分離する工程を包含し、前記多能性細胞の集団の少なくとも1つの細胞がブラキュリプロモーター、FGF4プロモーター及びSNAI1プロモーターから成る群から選択されるプロモーターの制御下の核酸の少なくとも1つのコピーを含み、当該核酸がグリーン蛍光タンパク質(GFP)をコードする配列又はその生物学的活性断片を含み、前記中内胚葉細胞が中胚葉細胞又は胚体内胚葉細胞に分化し得る多分化能細胞である、上記方法。
【0197】
170. 上記富化細胞集団が少なくとも約95%の中内胚葉細胞を含む、項目169記載の方法。
【0198】
171. 上記富化細胞集団が少なくとも約98%の中内胚葉細胞を含む、項目169記載の方法。
【0199】
172. 上記分化させる工程が中内胚葉細胞への上記多能性細胞の分化を促進するのに十分な量でTGFβスーパーファミリーからの少なくとも1つの成長因子を上記多能性細胞集団に提供することを包含する、項目169記載の方法。
【0200】
173. TGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子がアクチビンAである、項目172記載の方法。
【0201】
174. 上記アクチビンAが少なくとも約50ng/mlの濃度で提供される、項目173記載の方法。
【0202】
175. 上記アクチビンAが少なくとも約100ng/mlの濃度で提供される、項目173記載の方法。
【0203】
176. 上記アクチビンAが少なくとも約500ng/mlの濃度で提供される、項目173記載の方法。
【0204】
177. 上記細胞集団が約1%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される、項目169記載の方法。
【0205】
178. 上記細胞集団が約0.5%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される、項目169記載の方法。
【0206】
179. 上記細胞集団が約0.2%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される、項目169記載の方法。
【0207】
180. 上記細胞集団が約0.1%(v/v)未満の血清を含む培地中で分化される、項目169記載の方法。
【0208】
181. 上記細胞集団が血清の非存在下又は血清代替物の非存在下で分化される、項目169記載の方法。
【0209】
182. 上記細胞集団が上記少なくとも1つの成長因子を添加後約1日目に約0%(v/v)の血清、上記少なくとも1つの成長因子を添加後約2日目に約0.2%(v/v)以下の血清、そして上記少なくとも1つの成長因子を添加後約3日目に約2%(v/v)以下の血清を含む培地中で分化される、項目169記載の方法。
【0210】
183. 上記細胞集団が低血清RPMI培地中で分化される、項目169記載の方法。
【0211】
184. 項目169記載の方法により産生される中内胚葉細胞の富化集団。
【0212】
185. ヒト細胞を含む細胞集団における前原始線条細胞の分化を促進し得る分化因子を同定する方法であって、
ヒト前原始線条細胞を含む細胞集団を得る工程、
前記細胞集団に候補分化因子を提供する工程、
第1の時点での上記細胞集団におけるマーカーの発現を測定する工程、
第2の時点での上記細胞集団における同一マーカーの発現を測定する工程、及び
前記第2の時点での上記細胞集団におけるマーカーの発現が上記第1の時点での上記細胞集団におけるマーカーの発現と比較して増大又は減少されているかを判定する工程を含み、前記第2の時点は上記第1の時点の後であり、当該第2の時点は上記候補分化因子を上記集団に提供した後であり、上記細胞集団における上記マーカーの発現の増大又は減少は上記候補分化因子が上記前原始線条細胞の分化を促進し得ることを示す、上記方法。
【0213】
186. 上記ヒト前原始線条細胞が上記細胞集団中のヒト細胞の少なくとも約10%を含む、項目185記載の方法。
【0214】
187. ヒトフィーダー細胞が上記細胞集団中に存在し、そして当該ヒトフィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約10%が前原始線条細胞である、項目185記載の方法。
【0215】
188. 上記ヒト前原始線条細胞が上記細胞集団中のヒト細胞の少なくとも約50%を含む、項目185記載の方法。
【0216】
189. 上記ヒトフィーダー細胞が上記細胞集団中に存在し、そして上記フィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約50%が前原始線条細胞である、項目185記載の方法。
【0217】
190. 上記ヒト前原始線条細胞が上記候補分化因子に応答して中内胚葉、中胚葉及び胚体内胚葉から成る群から選択される細胞に分化する、項目185記載の方法。
【0218】
191. 上記ヒト前原始線条細胞が上記候補分化因子に応答して中内胚葉細胞に分化する、項目185記載の方法。
【0219】
192. 上記マーカーがブラキュリ、FGF4及びSNAI1から成る群から選択される、項目191記載の方法。
【0220】
193. 上記ヒト前原始線条細胞が上記候補分化因子に応答して中胚葉細胞に分化する、項目185記載の方法。
【0221】
194. 上記マーカーがFOXF1、FLK1、BMP4、MOX1及びSDF1から成る群から選択される、項目193記載の方法。
【0222】
195. 上記ヒト前原始線条細胞が上記候補分化因子に応答して胚体内胚葉細胞に分化する、項目185記載の方法。
【0223】
196. 上記マーカーがCXCR4及びSOX17から成る群から選択される、項目195記載の方法。
【0224】
197. 上記第1の時点が上記細胞集団への上記候補分化因子の提供の前である、項目185記載の方法。
【0225】
198. 上記第1の時点が上記細胞集団への上記候補分化因子の提供とほぼ同時である、項目185記載の方法。
【0226】
199. 上記第1の時点が上記細胞集団への上記候補分化因子の提供の後である、項目185記載の方法。
【0227】
200. 上記マーカーの発現が増大される、項目185記載の方法。
【0228】
201. 上記マーカーの発現が減少される、項目185記載の方法。
【0229】
202. 上記マーカーの発現が定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)により測定される、項目185記載の方法。
【0230】
203. 上記マーカーの発現が免疫細胞化学により測定される、項目185記載の方法。
【0231】
204. 上記候補分化因子がTGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子を含む、項目185記載の方法。
【0232】
205. TGFβスーパーファミリーの上記少なくとも1つの成長因子がアクチビンAである、項目204記載の方法。
【0233】
206. 上記候補分化因子が小分子を含む、項目185記載の方法。
【0234】
207. 上記候補分化因子がポリペプチドを含む、項目185記載の方法。
【0235】
208. 上記候補分化因子がTGFβスーパーファミリーの成長因子でない、項目185記載の方法。
【0236】
209. 上記候補分化因子が約0.1ng/ml~約10mg/mlの濃度で上記細胞集団に提供される、項目185記載の方法。
【0237】
210. 上記候補分化因子が約1ng/ml~約1mg/mlの濃度で上記細胞集団に提供される、項目185記載の方法。
【0238】
211. 上記候補分化因子が約10ng/ml~約100μg/mlの濃度で上記細胞集団に提供される、項目185記載の方法。
【0239】
212. 上記候補分化因子が約100ng/ml~約10μg/mlの濃度で上記細胞集団に提供される、項目185記載の方法。
【0240】
213. 上記候補分化因子が約1μg/mlの濃度で上記細胞集団に提供される、項目185記載の方法。
【0241】
214. ヒト細胞を含む細胞集団における中内胚葉細胞の分化を促進し得る分化因子を同定する方法であって、
ヒト中内胚葉細胞を含む細胞集団を得る工程、
前記細胞集団に候補分化因子を提供する工程、
第1の時点での上記細胞集団におけるマーカーの発現を測定する工程、
第2の時点での上記細胞集団における同一マーカーの発現を測定する工程、及び、
前記第2の時点での上記細胞集団におけるマーカーの発現が上記第1の時点での上記細胞集団におけるマーカーの発現と比較して増大又は減少されているかを判定する工程を含み、上記第2の時点は上記第1の時点の後であり、上記第2の時点は上記候補分化因子を上記集団に提供した後であり、上記細胞集団における上記マーカーの発現の増大又は減少は上記候補分化因子が上記中内胚葉細胞の分化を促進し得ることを示す、上記方法。
【0242】
215. 上記ヒト中内胚葉細胞が上記細胞集団中のヒト細胞の少なくとも約10%を含む、項目214記載の方法。
【0243】
216. ヒトフィーダー細胞が上記細胞集団中に存在し、そして当該フィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約10%が中内胚葉細胞である、項目214記載の方法。
【0244】
217. 上記ヒト中内胚葉細胞が上記細胞集団中のヒト細胞の少なくとも約50%を含む、項目214記載の方法。
【0245】
218. 上記ヒトフィーダー細胞が上記細胞集団中に存在し、そして上記フィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約50%が中内胚葉細胞である、項目214記載の方法。
【0246】
219. 上記ヒト中内胚葉細胞が上記候補分化因子に応答して中胚葉及び胚体内胚葉から成る群から選択される細胞に分化する、項目214記載の方法。
【0247】
220. 上記ヒト中内胚葉細胞が上記候補分化因子に応答して中胚葉細胞に分化する、項目214記載の方法。
【0248】
221. 上記マーカーがFOXF1、FLK1、BMP4、MOX1及びSDF1から成る群から選択される、項目220記載の方法。
【0249】
222. 上記ヒト中内胚葉細胞が上記候補分化因子に応答して胚体内胚葉細胞に分化する、項目214記載の方法。
【0250】
223. 上記マーカーがCXCR4及びSOX17から成る群から選択される、項目222記載の方法。
【0251】
224. 上記第1の時点が上記細胞集団への上記候補分化因子の提供の前である、項目214記載の方法。
【0252】
225. 上記第1の時点が上記細胞集団への上記候補分化因子の提供とほぼ同時である、項目214記載の方法。
【0253】
226. 上記第1の時点が上記細胞集団への上記候補分化因子の提供の後である、項目214記載の方法。
【0254】
227. 上記マーカーの発現が増大される、項目214記載の方法。
【0255】
228. 上記マーカーの発現が減少される、項目214記載の方法。
【0256】
229. 上記マーカーの発現が定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)により測定される、項目214記載の方法。
【0257】
230. 上記マーカーの発現が免疫細胞化学により測定される、項目214記載の方法。
【0258】
231. 上記候補分化因子がTGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子を含む、項目214記載の方法。
【0259】
232. TGFβスーパーファミリーの上記少なくとも1つの成長因子がアクチビンAである、項目231記載の方法。
【0260】
233. 上記候補分化因子が小分子を含む、項目214記載の方法。
【0261】
234. 上記候補分化因子がポリペプチドを含む、項目214記載の方法。
【0262】
235. 上記候補分化因子がTGFβスーパーファミリーの成長因子でない、項目214記載の方法。
【0263】
236. 上記候補分化因子が約0.1ng/ml~約10mg/mlの濃度で上記細胞集団に提供される、項目214記載の方法。
【0264】
237. 上記候補分化因子が約1ng/ml~約1mg/mlの濃度で上記細胞集団に提供される、項目214記載の方法。
【0265】
238. 上記候補分化因子が約10ng/ml~約100μg/mlの濃度で上記細胞集団に提供される、項目214記載の方法。
【0266】
239. 上記候補分化因子が約100ng/ml~約10μg/mlの濃度で上記細胞集団に提供される、項目214記載の方法。
【0267】
240. 上記候補分化因子が約1μg/mlの濃度で上記細胞集団に提供される、項目214記載の方法。
【0268】
241. in vitroで、ヒト胚性幹細胞(hESC)中のFGF8遺伝子産物の発現を増大する方法であって、約2%(v/v)未満の血清を含む培地中で上記hESCを生成する工程、及び、上記hESCを、FGF8遺伝子産物の発現を増大するのに十分な量で分化因子と接触させる工程を包含する前記方法。
【0269】
242. 上記分化因子がTGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子を含む、項目241記載の方法。
【0270】
243. 上記分化因子がアクチビンAを含む、項目242記載の方法。
【0271】
244. 上記培地が血清を欠くか又は血清代替物を欠く、項目241記載の方法。
【0272】
245. in vitroで、ヒト胚性幹細胞(hESC)又は前原始線条細胞中のブラキュリ、FGF4及びSNAI1から成る群から選択される遺伝子産物の発現を増大する方法であって、約2%(v/v)未満の血清を含む培地中で上記hESC又は前原始線条細胞を得る工程、及び、上記hESC又は上記前原始線条細胞を、ブラキュリ、FGF4及びSNAI1から成る群から選択される遺伝子産物の発現を増大するのに十分な量で分化因子と接触させる工程を包含する、前記方法。
【0273】
246. 上記分化因子がTGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子を含む、項目245記載の方法。
【0274】
247. 上記分化因子がアクチビンAを含む、項目246記載の方法。
【0275】
248. 上記培地が血清を欠くか又は血清代替物を欠く、項目245記載の方法。
【0276】
249. ヒト胚性幹細胞(hESC)と約2%(v/v)未満の血清を含む培地とを含む細胞培養物であって、前記hESCにおいてFGF8mRNAの発現がベースラインFGF8 mRNA発現と比較して、参照時点から約6時間までに実質的にアップレギュレートされるような上記参照時点で上記hESCが分化し始める、前記細胞培養物。
【0277】
250. FGF8 mRNAの発現が上記参照時点から約24時間後にダウンレギュレートされる、項目249記載の細胞培養物。
【0278】
251. FGF8 mRNAの発現ピークが上記参照時点から約6時間~約24時間の時間で到達する、項目250記載の細胞培養物。
【0279】
252. β-カテニンポリペプチドが上記参照時点から約17時間までに細胞核に局在化されるようになり始める、項目249記載の細胞培養物。
【0280】
253. ブラキュリ mRNAの発現が上記参照時点から約24時間までに実質的にアップレギュレートされる、項目249記載の細胞培養物。
【0281】
254. ブラキュリ mRNAの発現が上記参照時点から約48時間までに実質的にダウンレギュレートされる、項目253記載の細胞培養物。
【0282】
255. ブラキュリ mRNAの発現ピークが上記参照時点から約12時間~約48時間の時間で到達する、項目254記載の細胞培養物。
【0283】
256. ブラキュリ mRNAが上記参照時点から約72時間までに実質的に発現されない、項目255記載の細胞培養物。
【0284】
257. FGF4 mRNAの発現が上記参照時点から約24時間までに実質的にアップレギュレートされる、項目249記載の細胞培養物。
【0285】
258. FGF4 mRNAの発現が上記参照時点から約48時間までに実質的にダウンレギュレートされる、項目257記載の細胞培養物。
【0286】
259. FGF4 mRNAの発現ピークが上記参照時点から約12時間~約48時間の時間で到達する、項目258記載の細胞培養物。
【0287】
260. FGF4 mRNAが上記参照時点から約72時間までに実質的に発現されない、項目259記載の細胞培養物。
【0288】
261. ブラキュリ及びFGF4 mRNAの発現が上記参照時点から約24時間までに実質的にアップレギュレートされる、項目249記載の細胞培養物。
【0289】
262. ブラキュリ及びFGF4 mRNAの発現が上記参照時点から約48時間までに実質的にダウンレギュレートされる、項目261記載の細胞培養物。
【0290】
263. ブラキュリ及びFGF4 mRNAの発現ピークが上記参照時点から約12時間~約48時間の時間で到達する、項目262記載の細胞培養物。
【0291】
264. ブラキュリ及びFGF4 mRNAが上記参照時点から約72時間までに実質的に発現されない、項目263記載の細胞培養物。
【0292】
265. SNAI1 mRNAの発現が上記参照時点から約24時間までに実質的にアップレギュレートされる、項目249記載の細胞培養物。
【0293】
266. SNAI1 mRNAの発現が上記参照時点から約48時間までに実質的にダウンレギュレートされる、項目265記載の細胞培養物。
【0294】
267. SNAI1 mRNAの発現ピークが上記参照時点から約12時間~約48時間の時間で到達する、項目266記載の細胞培養物。
【0295】
268. E-カドヘリン mRNAの発現が上記参照時点から約12時間までにダウンレギュレートし始める、項目249記載の細胞培養物。
【0296】
269. E-カドヘリン mRNAの発現が上記参照時点から約48時間までに実質的にダウンレギュレートされる、項目249記載の細胞培養物。
【0297】
270. SOX17 mRNAの発現が上記参照時点から約48時間までに実質的にアップレギュレートされる、項目249記載の細胞培養物。
【0298】
271. FOXA2 mRNAの発現が上記参照時点から約96時間までに実質的にアップレギュレートされる、項目249記載の細胞培養物。
【0299】
272. 上記培地が約1%(v/v)未満の血清を含む、項目249記載の細胞培養物。
【0300】
273. 上記培地が約0.2%(v/v)未満の血清を含む、項目249記載の細胞培養物。
【0301】
274. 上記培地が約0%(v/v)の血清を含む、項目249記載の細胞培養物。
【0302】
275. 上記培地が血清を欠くか又は血清代替物を欠く、項目249記載の細胞培養物。
【0303】
276. TGFβスーパーファミリーの分化因子をさらに含む、項目249記載の細胞培養物。
【0304】
277. 上記分化因子がアクチビンAを含む、項目276記載の細胞培養物。
【0305】
278. 上記アクチビンAが約100ng/mlの濃度で存在する、項目277記載の細胞培養物。
【0306】
279. ヒト胚性幹細胞(hESC)と、TGFβスーパーファミリーの分化因子と、約2%(v/v)未満の血清を含む培地とを含む細胞培養物。
【0307】
280. 上記細胞培養物の細胞中で、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前にアップレギュレートされる、項目279記載の細胞培養物。
【0308】
281. 上記細胞培養物の細胞中で、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現ピークの前にアップレギュレートされる、項目280記載の細胞培養物。
【0309】
282. 上記細胞培養物の細胞中で、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現ピークの前又は当該発現ピークとほぼ同時にダウンレギュレートされる、項目281記載の細胞培養物。
【0310】
283. 上記細胞培養物の細胞中で、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がSOX17、FOXA2、CXCR4及びMIXL1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前にアップレギュレートされる、項目279記載の細胞培養物。
【0311】
284. 上記細胞培養物の細胞中で、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がSOX17、FOXA2、CXCR4及びMIXL1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現の
アップレギュレートの前又は当該アップレギュレートとほぼ同時にアップレギュレートされる、項目283記載の細胞培養物。
【0312】
285. 上記細胞培養物の細胞中で、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現ピークがSOX17、FOXA2、CXCR4及びMIXL1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前又は当該アップレギュレートとほぼ同時に到達される、項目284記載の細胞培養物。
【0313】
286. 上記細胞培養物の細胞中で、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前にアップレギュレートされる、項目283記載の細胞培養物。
【0314】
287. 上記培地が約1%(v/v)未満の血清を含む、項目279記載の細胞培養物。
【0315】
288. 上記培地が約0.2%(v/v)未満の血清を含む、項目279記載の細胞培養物。
【0316】
289. 上記培地が約0%(v/v)の血清を含む、項目279記載の細胞培養物。
【0317】
290. 上記培地が血清を欠くか又は血清代替物を欠く、項目279記載の細胞培養物。
【0318】
291. TGFβスーパーファミリーの上記分化因子がアクチビンAを含む、項目279記載の細胞培養物。
【0319】
292. 上記アクチビンAが約100ng/mlの濃度で上記培地中に存在する、項目291記載の細胞培養物。
【0320】
293. 細胞培養物中の細胞を分化する方法であって、(a)ヒト胚性幹細胞(hESC)を含む細胞培養物を約2%未満の血清を含む培地と接触させること、(b)TGFβスーパーファミリーの分化因子を上記hESCに提供すること、及び(c)上記hESCの分化を起こさせることを包含する上記方法。
【0321】
294. 上記細胞培養物の細胞中で、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前にアップレギュレートされる、項目283記載の方法。
【0322】
295. 上記細胞培養物の細胞中で、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現ピークの前にアップレギュレートされる、項目294記載の方法。
【0323】
296. 上記細胞培養物の細胞中で、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現ピークの前又はほぼ同時にダウンレギュレートされる、項目295記載の方法。
【0324】
297. 上記細胞培養物の細胞中で、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がSOX17、FOXA2、CXCR4及びMIXL1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前にアップレギュレートされる、項目293記載の方法。
【0325】
298. 上記細胞培養物の細胞中で、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がSOX17、FOXA2、CXCR4及びMIXL1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前又はほぼ同時にアップレギュレートされる、項目297記載の方法。
【0326】
299. 上記細胞培養物の細胞中で、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現ピークがSOX17、FOXA2、CXCR4及びMIXL1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前又はほぼ同時に到達される、項目298記載の方法。
【0327】
300. 上記細胞培養物の細胞中で、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前にアップレギュレートされる、項目297記載の方法。
【0328】
301. 上記培地が約1%(v/v)未満の血清を含む、項目293記載の方法。
【0329】
302. 上記培地が約0.2%(v/v)未満の血清を含む、項目293記載の方法。
【0330】
303. 上記培地が約0%(v/v)の血清を含む、項目293記載の方法。
【0331】
304. 上記培地が血清を欠くか又は血清代替物を欠く、項目293記載の方法。
【0332】
305. TGFβスーパーファミリーの上記分化因子がアクチビンAを含む、項目293記載の方法。
【0333】
306. 上記アクチビンAが約100ng/mlの濃度で上記培地中に存在する、項目305記載の方法。
【0334】
307. ヒト胚性幹細胞(hESC)と約2%(v/v)未満の血清を含む培地とを含む細胞培養物であって、FZD10、FGF5及びOCT4から成る群から選択されるmRNAの発現が上記hESC中のFZD10、FGF5及びOCT4から成る群から選択
される対応するmRNAのベースライン発現と比較して、参照時点から約2時間までに実質的にアップレギュレートされるように上記hESCが上記参照時点で分化し始める細胞培養物。
【0335】
308. 上記培地が約1%(v/v)未満の血清を含む、項目307記載の細胞培養物。
【0336】
309. 上記培地が約0.2%(v/v)未満の血清を含む、項目307記載の細胞培養物。
【0337】
310. 上記培地が約0%(v/v)の血清を含む、項目307記載の細胞培養物。
【0338】
311. 上記培地が血清を欠くか又は血清代替物を欠く、項目307記載の細胞培養物。
【0339】
312. TGFβスーパーファミリーの分化因子をさらに含む、項目307記載の細胞培養物。
【0340】
313. 上記分化因子がアクチビンAを含む、項目312記載の細胞培養物。
【0341】
314. 上記アクチビンAが約100ng/mlの濃度で存在する、項目313記載の細胞培養物。
【0342】
315. ヒト胚性幹細胞(hESC)と約2%(v/v)未満の血清を含む培地とを含む細胞培養物であって、GBX2、ZFP42及びSOX2から成る群から選択されるmRNAの発現が上記hESC中のGBX2、ZFP42及びSOX2から成る群から選択される対応するmRNAのベースライン発現と比較して、参照時点から約2時間までに実質的にダウンレギュレートされるように上記hESCが上記参照時点で分化し始める上記細胞培養物。
【0343】
316. 上記培地が約1%(v/v)未満の血清を含む、項目315記載の細胞培養物。
【0344】
317. 上記培地が約0.2%(v/v)未満の血清を含む、項目315記載の細胞培養物。
【0345】
318. 上記培地が約0%(v/v)の血清を含む、項目315記載の細胞培養物。
【0346】
319. 上記培地が血清を欠くか又は血清代替物を欠く、項目315記載の細胞培養物。
【0347】
320. TGFβスーパーファミリーの分化因子をさらに含む、項目315記載の細胞培養物。
【0348】
321. 上記分化因子がアクチビンAを含む、項目320記載の細胞培養物。
【0349】
322. 上記アクチビンAが約100ng/mlの濃度で存在する、項目321記載の細胞培養物。
【0350】
323. ヒト胚性幹細胞(hESC)と、TGFβスーパーファミリーの分化因子と、
約2%(v/v)未満の血清を含む培地とを含む細胞培養物であって、当該細胞培養物の細胞中で、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前に、FZD10、FGF5、Nanog及びOCT4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がアップレギュレートされるか、又はGBX2、ZFP42及びSOX2から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がダウンレギュレートされる前記細胞培養物。
【0351】
324. ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前に、FZD10、FGF5、Nanog及びOCT4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がアップレギュレートされるか、又はGBX2、ZFP42及びSOX2から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がダウンレギュレートされる、項目323記載の細胞培養物。
【0352】
325. 上記培地が約1%(v/v)未満の血清を含む、項目323記載の細胞培養物。
【0353】
326. 上記培地が約0.2%(v/v)未満の血清を含む、項目323記載の細胞培養物。
【0354】
327. 上記培地が約0%(v/v)の血清を含む、項目323記載の細胞培養物。
【0355】
328. 上記培地が血清を欠くか又は血清代替物を欠く、項目323記載の細胞培養物。
【0356】
329. TGFβスーパーファミリーの分化因子をさらに含む、項目323記載の細胞培養物。
【0357】
330. 上記分化因子がアクチビンAを含む、項目329記載の細胞培養物。
【0358】
331. 上記アクチビンAが約100ng/mlの濃度で存在する、項目330記載の細胞培養物。
【0359】
332. 細胞培養物中の細胞を分化する方法であって、(a)ヒト胚性幹細胞(hESC)を含む細胞培養物を約2%未満の血清を含む培地と接触させること、(b)TGFβスーパーファミリーの分化因子を上記hESCに提供すること、及び(c)上記hESCの分化を起こさせることを包含する方法であって、上記細胞培養物の細胞中で、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前に、FZD10、FGF5、Nanog及びOCT4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がアップレギュレートされるか、又はGBX2、ZFP42及びSOX2から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がダウンレギュレートされる前記方法。
【0360】
333. ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前に、FZD10、FGF5、Nanog及びOCT4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がアップレギュレートされるか、又はGBX2、ZFP42及びSOX2から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現がダウンレギュレートされる、項目332に記載の方法。
【0361】
334. 上記培地が約1%(v/v)未満の血清を含む、項目332記載の方法。
【0362】
335. 上記培地が約0.2%(v/v)未満の血清を含む、項目332記載の方法。
【0363】
336. 上記培地が約0%(v/v)の血清を含む、項目332記載の方法。
【0364】
337. 上記培地が血清を欠くか又は血清代替物を欠く、項目332記載の方法。
【0365】
338. TGFβスーパーファミリーの分化因子をさらに含む、項目332記載の方法。
【0366】
339. 上記分化因子がアクチビンAを含む、項目338記載の方法。
【0367】
340. 上記アクチビンAが約100ng/mlの濃度で存在する、項目339記載の方法。
【0368】
上記の方法及び組成物は、in vitroで培養される細胞に関する、と理解される。しかしながら上記のin vitro分化細胞組成物は、invivo用途に用いられ得る。
【0369】
本発明のさらなる実施形態は、2003年12月23日に出願された胚体内胚葉細胞(DEFINITIVEENDODERM)という表題の米国特許仮出願第60/532,004号;2004年4月27日に出願された内胚葉を発現するPDX1(PDX1 EXPRESSING ENDODERM)という表題の米国特許仮出願第60/566,293号;2004年7月9日に出願された胚体内胚葉細胞の単離のためのケモカイン細胞表面受容体(CHEMOKINE CELL SURFACE RECEPTOR FOR THE ISOLATION OF DEFINITIVEENDODERM)という表題の米国特許仮出願第60/586,566号;2004年7月14日に出願された胚体内胚葉細胞の単離のためのケモカイン細胞表面受容体(CHEMOKINE CELL SURFACE RECEPTOR FOR THE ISOLATION OF DEFINITIVEENDODERM)という表題の米国特許仮出願第60/587,942号;2004年12月23日に出願された胚体内胚葉(DEFINITIVE ENDODERM)という表題の米国特許出願第11/021,618号;2005年4月26日に出願された内胚葉を発現するPDX1(PDX1 EXPRESSING ENDODERM)という表題の米国特許出願第11/115,868号;2005年6月23日に出願された胚体内胚葉を分化するための因子を同定する方法(METHODS FOR IDENTIFYING FACTORS FOR DIFFERENTIATING DEFINITIVEENDODERM)という表題の米国特許出願第11/165,305号;及び2005年6月23日に出願された前原始線条細胞及び中内胚葉細胞(PREPRIMITIVE STREAK CELLS AND MESENDODERM CELLS)という表題の米国特許仮出願第60/693,364号(これらの開示内容は参照により本明細書中に完全に援用される)にも見出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0370】
図1図1は、アクチビンの存在下での、BMP4及びSU5402の組合せの存在下での、並びに任意の分化因子の非存在下での、胚性幹細胞(ESC)の分化を示す略図である。各細胞型の同定及び/又は検出のためのいくつかの有用なマーカー遺伝子も列挙されている。
図2-1】図2-1は、胚体内胚葉細胞を同定するために用いられ得るマーカー遺伝子の発現パターンを示す棒グラフである。上記系列マーカー遺伝子SOX17、SOX7、SOX17/SOX7、TM、ZIC1及びMOX1の発現分析を、それぞれパネルA~Fに示す。パネルA~Fの各々に関して、カラム標識hESCは、精製ヒト胚性幹細胞からの遺伝子発現を示す;2NFは、2%FBSで処理し、アクチビンを添加しない細胞を示す;0.1A100は、0.1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示す;1A100は、1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示す;そして2A100は、2%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示す。
図2-2】図2-2は、胚体内胚葉細胞を同定するために用いられ得るマーカー遺伝子の発現パターンを示す棒グラフである。胚体内胚葉マーカーFGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1の発現分析も、それぞれパネルG~Lに示す。パネルG~Lの各々に関して、カラム標識hESCは、精製ヒト胚性幹細胞からの遺伝子発現を示す;2NFは、2%FBSで処理し、アクチビンを添加しない細胞を示す;0.1A100は、0.1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示す;1A100は、1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示す;そして2A100は、2%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示す。
図2-3】図2-3は、胚体内胚葉細胞を同定するために用いられ得るマーカー遺伝子の発現パターンを示す棒グラフである。パネルMは、CXCR4の発現分析を示す。パネルMに関して、カラム標識hESCは、精製ヒト胚性幹細胞からの遺伝子発現を示す;2NFは、2%FBSで処理し、アクチビンを添加しない細胞を示す;0.1A100は、0.1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示す;1A100は、1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示す;そして2A100は、2%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示す。
図3-1】図3-1は、(A)前原始線条細胞、(B~D)原始線条(内胚葉系中胚葉)細胞、(E~F)中内胚葉細胞及び胚体内胚葉細胞中で発現される或る特定のマーカー遺伝子の発現パターンを示す棒グラフである。細胞培養物への100ng/mlのアクチビンA(「A」で示す)又は100ng/mlのBMP4及び2.5μMのSU5402の組合せ(「B/SU」として示す)の添加後0、6、12、24、48,72及び96時間目の分化経過中に、Q-PCRにより、マーカー発現を測定した。1日目(最初の24時間)に0%(v/v)FBSを、2日目(24~48時間)に0.2%(v/v)FBSを、そして3日目及び4日目(48~96時間)に2%(v/v)FBSを含有するRPMI培地中で、全細胞を増殖させた。各マーカー遺伝子の正式名称を表1に提示する。
図3-2】図3-2は、(G)胚体内胚葉細胞、並びに(H~L)栄養外胚葉及び原始線条細胞中で発現される或る特定のマーカー遺伝子の発現パターンを示す棒グラフである。細胞培養物への100ng/mlのアクチビンA(「A」で示す)又は100ng/mlのBMP4及び2.5μMのSU5402の組合せ(「B/SU」として示す)の添加後0、6、12、24、48,72及び96時間目の分化経過中に、Q-PCRにより、マーカー発現を測定した。1日目(最初の24時間)に0%(v/v)FBSを、2日目(24~48時間)に0.2%(v/v)FBSを、そして3日目及び4日目(48~96時間)に2%(v/v)FBSを含有するRPMI培地中で、全細胞を増殖させた。各マーカー遺伝子の正式名称を表1に提示する。
図4図4A図4Cは、100ng/mlアクチビンA及び0.1%(v/v)FBSの存在下でのhESC(「ESC」で示す)からの分化の最初の48時間中の、(A)中内胚葉のためのブラキュリマーカー(BRACH)、(B)hESCのためのB-カドヘリンマーカー、並びに(C)中内胚葉のためのSNAI1マーカーのmRNA発現パターンを示す棒グラフである。
図5図5A及び図5Bは、100ng/mlアクチビンA及び0.1%(v/v)FBSの存在下でのhESC(「ES」で示す)からの分化の最初の48時間中の、それぞれ中内胚葉のためのブラキュリマーカー(BRACH)、並びに胚体内胚葉のための性決定領域Y-ボックス17(SOX17)マーカーのmRNA発現パターンを示す棒グラフである。
図6図6A図6Dは、100ng/mlアクチビンA及び0.1%(v/v)FBSの存在下でのhESCからの分化後48時間の細胞を示す顕微鏡写真である。パネルAは、DAPIで染色した細胞の一視野を示す。パネルB~Dは、ブラキュリ(B)、SOX17(C)、又はブラキュリ及びSOX17の両方(D)に対する一次抗体を用いて染色した細胞の同一視野を示す。
図7図7は、100ng/mlアクチビンAの存在下(A100)又はその非存在下(NF)での低血清条件下での胚性幹細胞(ESC)の分化を示す略図である。PSは原始線条細胞(中内胚葉細胞)を示す;DEは胚体内胚葉細胞を示す;そしてMは中胚葉細胞を示す。
図8図8A図8Fは、100ng/mlアクチビンAの連続存在下(A100)での4日間のインキュベーション後の、あるいはアクチビンAが第一日後に取り除かれる場合(NF)の4日間のインキュベーション後の、細胞培養物中の中胚葉マーカー遺伝子(A)BRACH、(B)FOXF1、(C)FLK1、(D)BMP4、(E)MOX1及び(F)SDF1の発現を示す棒グラフである。Q-PCRにより、マーカー発現を測定した。
図9図9A図9Cは、100ng/mlアクチビンAの連続存在下(A100)での4日間のインキュベーション後の、あるいはアクチビンAが第一日後に取り除かれる場合(NF)の4日間のインキュベーション後の、細胞培養物中の胚体内胚葉マーカー遺伝子(A)GSC、(B)SOX17、及び(C)FOXA2の発現を示す棒グラフである。Q-PCRにより、マーカー発現を測定した。
図10-1】図10-1は、胚体内胚葉細胞の同定及び/又は検出に有用な或る特定のマーカー遺伝子の発現パターンを示す棒グラフである。0.5%、2%又は10%の濃度のウシ胎仔血清(FBS)及び100ng/mlのアクチビンAを含有するか(A100)又はアクチビンAを含有しない(NF)5日齢細胞培養物から、Q-PCRにより、マーカー発現を測定した。
図10-2】図10-2は、胚体内胚葉細胞の同定及び/又は検出に有用な或る特定のマーカー遺伝子の発現パターンを示す棒グラフである。0.5%、2%又は10%の濃度のウシ胎仔血清(FBS)及び100ng/mlのアクチビンAを含有するか(A100)又はアクチビンAを含有しない(NF)5日齢細胞培養物から、Q-PCRにより、マーカー発現を測定した。
図11図11A及び図11Bは、4日間100ng/mlアクチビンAの存在下で分化させた細胞培養物中の胚体内胚葉細胞マーカー(A)SOX17及び(B)FOXA2のmRNA発現パターンを示す棒グラフである。アクチビンAの添加後0、6、24、30、48及び96時間目の分化の経過中のQ-PCRにより、マーカー発現を測定した。
図12図12A図12Dは、免疫無防備状態マウスの腎被膜下に移植された胚体内胚葉細胞のin vivo分化を示す。パネルA- 腸管様構造を示すヘマトキシリン-エオシン染色;B - 肝細胞特異的抗原に対する抗体免疫反応性(肝臓);C - ビリンに対する抗体免疫反応性(腸);並びにD- CDX2に対する抗体免疫反応性(腸)。
【発明を実施するための形態】
【0371】
[詳細な説明]
原腸形成と呼ばれる初期ヒト発達におけるきわめて重大な段階は、受精後2~3週間で起こる。原腸形成は、3つの一次胚葉が最初に特定化され、そして器官形成されるのがこの時期であるため、非常に有意である(Lu et al., 2001;Schoenwolf and Smith, 2000)。外胚葉は、身体の外被及び全神経系の終局的形成に関与するが、一方、心臓、血液、骨、骨格筋及びその他の結合組織は中胚葉に由来する。胚体内胚葉は、食道、胃並びに小腸及び大腸を含む全腸管、並びに腸管に由来する器官、例えば肺、肝臓、胸腺、上皮小体及び甲状腺、胆嚢及び膵臓の形成に関与する胚葉として定義される(Grapin-Botton and Melton, 2000;Kimelman andGriffin, 2000;Tremblay et al., 2000;Wells and Melton, 1999;Wells and Melton,2000)。非常に重要な区別は、胚体内胚葉と原始内胚葉と呼ば
れる細胞の完全に別個の系統との間でなされるべきである。原始内胚葉は主として、胚体外組織、主に胎盤卵黄嚢の壁側及び臓側内胚葉部分、並びにライヘルト膜の細胞外マトリックス物質である。
【0372】
原腸形成中、胚体内胚葉形成のプロセスは、中内胚葉細胞(中胚葉又は内胚葉を形成するための細胞構成成分)が原始線条と呼ばれる構造を介して移動する細胞移動事象で開始する。中内胚葉細胞は原始線条を介して入る場合、それらは上皮-間充織転換(EMT)を受けて、中胚葉又は胚体内胚葉になる。胚体内胚葉は、線条の前部分を通して、そして結節(線条の最前領域での特殊化構造)を通して移動する細胞に由来する。移動が起こると、胚体内胚葉はまず最前腸管に存在し、そして腸管の後端の形成に伴って完結する。
【0373】
原始線条前駆体細胞(前原始線条細胞)及び原始線条細胞(中内胚葉細胞)はともに、中胚葉及び胚体内胚葉細胞を生じる初期前駆体である。実際、前原始線条細胞及び中内胚葉細胞は、多分化能から、中胚葉系統及び胚体内胚葉系統から作られる最終分化細胞、組織及び/又は器官への発達プロセスにおける最初期前駆体であり得る。今日まで、ヒト前原始線条細胞中に富化された細胞集団も、ヒト中内胚葉細胞中に富化された細胞集団も得られていない。さらに、このような細胞集団の細胞はこれまで、invitroで特徴づけされていない。
【0374】
上記を考慮して、本明細書中に記載される本発明のいくつかの実施形態は、ヒト前原始線条細胞を含む細胞培養物及び/又は富化細胞集団、並びにヒト中内胚葉細胞を含む細胞培養物及び/又は富化細胞集団に関する。このような実施形態では、前原始線条細胞及び中内胚葉細胞は、中胚葉細胞及び/又は胚体内胚葉細胞に、並びにこれらの系統に由来する細胞、組織及び/又は器官にさらに分化し得る。
【0375】
本発明のその他の実施形態は、ヒト前原始線条細胞を含む細胞培養物及び/又は富化細胞集団を産生する方法、並びにヒト中内胚葉細胞を含む細胞培養物及び/又は富化細胞集団を産生する方法に関する。
【0376】
本明細書中に記載されるさらに他の実施形態は、前原始線条細胞又は中内胚葉細胞を含む細胞集団中の細胞を分化するのに有用である1つ又は複数の分化因子を同定するスクリーニング方法に関する。このような因子は、中胚葉細胞及び/又は胚体内胚葉細胞、並びにこれらの細胞系統のいずれかに由来する細胞、組織及び/又は器官へのこれらの細胞型の分化を促進するのに有用である。
【0377】
本発明の或る特定のいくつかの他の態様は、或る特定のいくつかの初期細胞マーカーの発現を増大する方法に関する。さらなる態様は、分化の経過中に或る特定のいくつかのマーカーを発現する細胞を含む細胞組成物に関する。
【0378】
定義
本出願全体を通して用いられるような或る特定のいくつかの用語及び語句は、以下のように提示される意味を有する:
【0379】
本明細書中で用いる場合、「胚性」とは、単一接合子で開始し、発達配偶子細胞以外の多能性又は全能性細胞をもはや含まない多細胞構造で終わる生物体の一連の発達段階を指す。配偶子融合により得られる胚に加えて、「胚性」という用語は、体細胞核移植により得られる胚を指す。
【0380】
本明細書中で用いる場合、「多分化能」又は「多分化能細胞」は、限られた数の他の特定細胞型を生じ得る細胞型を指す。
【0381】
本明細書中で用いる場合、「発現」とは、材料又は物質の産生、並びに材料又は物質の産生のレベル又は量を指す。したがって特定マーカーの発現の測定は、発現されるマーカーの相対量又は絶対量の検出、あるいは単にマーカーの存在又は非存在の検出を指す。
【0382】
本明細書中で用いる場合、「マーカー」とは、観察され得るか又は検出され得る任意の分子を指す。例えばマーカーとしては、核酸、例えば特定遺伝子の転写体、遺伝子のポリペプチド産物、非遺伝子産物ポリペプチド、糖タンパク質、炭水化物、糖脂質、脂質、リポタンパク質又は小分子(例えば10,000amu未満の分子量を有する分子)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0383】
細胞培養物及び/又は細胞集団に関連して用いられる場合、「部分」という用語は、単細胞から細胞培養物又は細胞集団の全体までの範囲である任意の非ゼロの量の細胞培養物又は細胞集団を意味する。
【0384】
細胞培養物中又は細胞集団中の細胞に関して、「~を実質的に含有しない」という語句は、細胞培養物又は細胞集団を含有しない特殊化細胞型が、細胞培養物又は細胞集団中に存在する細胞の総数の約5%未満の量で存在する、ということを意味する。
【0385】
細胞培地に関して、本明細書中で用いる場合、「低血清RPMI」は低血清含有培地を指し、この場合、血清濃度は限定時間中に漸次増大される。例えば一実施形態では、低血清RPMIは、細胞成長の第1日目に約0.2%の濃度のウシ胎仔血清(FBS)、細胞成長の第2日目に約0.5%のFBS、そして細胞成長の第3~第5日目に約2%のFBSを含む。別の実施形態では、低血清RPMIは、1日目に約0%、2日目に約0.2%、そして3日目及びその後に約2%の濃度を含む。
【0386】
本明細書中で用いる場合、「血清代替物」とは、IGF又はインスリンを含む血清代替物を指す。
【0387】
胚体内胚葉細胞へのhESCの分化における初期事象のモデル
図1は、in vitroでのヒト胚性幹細胞(hESC)の初期移行を要約するモデルを示す。原腸形成を厳密に発達反復するプロセスを通してのhESCの分化は、低血清補充の状況での高用量アクチビンAの適用により編成され得る。FGF8の発現及びβ-カテニンの核局在化(原始線条形成前の近位の原外胚葉原に起こる事象である)は、約24時間前に明らかである(前原始線条細胞)。原始線条発現遺伝子(ブラキュリ及びFGF4)の高レベルの発現は、約24時間で起こる。高用量のアクチビンA中に保持される場合、原始線条細胞(中内胚葉細胞)は胚体内胚葉に効率的に転換される。逆に、アクチビンの非存在下では、これらの中内胚葉前駆体は中胚葉になる。BMP4及びSU5402によるhESCの処理は、原始内胚葉及び栄養外胚葉に関連した遺伝子発現を誘導する。
【0388】
前原始線条細胞及び中内胚葉細胞及びそれに関連したプロセス
本明細書中に記載される実施形態は、多能性細胞、例えば幹細胞を前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞に分化させることによる培養物中での前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞の産生のための新規の限定プロセスに関する。上記のように、前原始線条細胞は、中内胚葉細胞に、並びにそれに由来する細胞、組織及び/又は器官に分化し得る。中内胚葉細胞は、中胚葉細胞及び/又は胚体内胚葉細胞、並びにこれらの系統のいずれかに由来する細胞、組織及び/又は器官に分化し得る。いくつかの実施形態では、前原始線条細胞は、内胚葉系中胚葉中間体を介して、中胚葉又は胚体内胚葉系統のいずれかの最終分化細胞に転換される。以下でさらに詳細に記載されるように、このようなプロセスは、種々のヒト内胚葉及び中胚葉由来組織の効率的産生のための基礎を提供し得る。例えばこのよう
なプロセスは、ヒト内胚葉由来組織、例えば膵臓、肝臓、肺、胃、腸、甲状腺、胸腺、咽頭、胆嚢及び膀胱の効率的産生のための基礎を提供し得る。重要なことに、前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞の産生が、機能性インスリン産生β細胞への幹細胞の分化における初期段階である。別の例として、前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞分化は、ヒト中胚葉由来組織、例えば血球細胞、心臓血管性組織、骨格組織、並びにその他の構造及び結合組織の効率的産生のための基礎を提供し得る。有用量の上記細胞又は組織型のいずれかを得るために、分化細胞の最終形に到達する前に起こる分化工程の各々に関して高効率性分化が望ましい。前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞への幹細胞の分化は中胚葉及び胚体内胚葉細胞系統の機能的最終分化細胞の産生に向かう極初期段階を表わすため(図1に示すように)、この工程での高効率性分化が特に望ましい。
【0389】
前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞への多能性細胞の効率的分化の望ましさに鑑みて、本明細書中に記載される分化プロセスのいくつかの態様は、前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞への多能性細胞の約5~90%の転換を生じるinvitro方法論に関する。典型的には、このような方法は、限定性及び一時的特定化様式での培養及び成長因子条件の適用を包含する。前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞に関する細胞集団のさらなる富化は、分化蛍光マーカー発現に基づいて細胞を類別することにより、集団中の他の細胞からの前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞の単離及び/又は精製により達成され得る。したがって、本明細書中に記載されるいくつかの実施形態は、前原始線条細胞、並びにこのような細胞を産生し、単離し、及び/又は精製するための方法に関する。他の実施形態は、中内胚葉細胞、並びにこのような細胞を産生し、単離し、及び/又は精製するための方法に関する。
【0390】
細胞培養物又は細胞集団中の前原始線条細胞の量を測定するためには、培養物中又は集団中の他の細胞からこの細胞型を区別する方法が望ましい。したがって、本明細書中に記載される或る特定のいくつかの実施形態は、その存在、非存在及び/又は相対発現レベルが前原始線条細胞に特異的である細胞マーカー、並びにこのようなマーカーの発現を検出し、測定するための方法に関する。
【0391】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、マーカーの存在、非存在及び/又は発現レベルは、定量的PCR(Q-PCR)により測定される。例えば或る特定の遺伝子マーカー、例えばOCT4、ECAD、FGF8、β-カテニン、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、CXCR4、GSC、MIXL1、FOXA2、SOX7、FOXF1、FLK1、BML4、MOX1、SDF1、並びに本明細書中に記載される他のマーカーにより産生される転写体の量が、定量的Q-PCRにより測定される。他の実施形態では、免疫組織化学を用いて、上記遺伝子により発現されるタンパク質を検出する。さらに他の実施形態では、免疫組織化学/免疫細胞化学を用いて、或る特定のポリペプチドマーカーの細胞区画局在化、例えばβ-カテニンの核局在化を検出する。さらに他の実施形態では、Q-PCR及び免疫組織化学的技法が、このようなマーカーの量又は相対的割合を同定すると共に測定するために用いられる。
【0392】
1つ又は複数の適切なマーカーの発現を測定するための方法、例えば上記の方法を用いることにより、前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞を同定し、並びに細胞培養物又は細胞集団中の前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞の割合を測定することができる。例えば本発明のいくつかの実施形態では、産生される前原始線条細胞又は細胞集団は、FGF8マーカー及び/又は核局在化β-カテニンを、非前原始線条細胞型又は細胞集団より約2オーダー大きいレベルで発現する。他の実施形態では、産生される前原始線条細胞又は細胞集団は、FGF8マーカー及び/又は核局在化β-カテニンを、非前原始線条細胞型又は細胞集団より2オーダー以上大きいレベルで発現する。本発明の他の実施形態では、産生される中内胚葉細胞又は細胞集団は、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1マ
ーカーを、非中内胚葉細胞型又は細胞集団より約2オーダー大きいレベルで発現する。他の実施形態では、産生される中内胚葉細胞又は細胞集団は、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1マーカーを、非中内胚葉細胞型又は細胞集団より2オーダー以上大きいレベルで発現する。
【0393】
本明細書中に記載される実施形態は、前原始線条及び/又は中内胚葉組成物にも関する。例えばいくつかの実施形態は前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞を含む細胞培養物に関するが、一方、他の実施形態は、前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞中に富化された細胞集団に関する。いくつかの好ましい実施形態は、細胞培養物中の細胞の少なくとも約5~90%が前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞である前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞を含む細胞培養物に関する。特に好ましい実施形態は、細胞培養物中のヒト細胞の少なくとも約5~90%が前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞であるヒト細胞を含む細胞培養物に関する。分化手法の効率は、或る特定のパラメーター、例えば細胞成長条件、成長因子濃度及び培養工程の時機(これらに限定されない)を修正することにより調整され得るため、本明細書中に記載される分化手法は、前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞への多能性細胞の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約95%より多い転換を生じ得る。他の好ましい実施形態では、実質的に純粋な前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞集団への多能性細胞集団、例えば幹細胞集団の転換が意図される。
【0394】
本明細書中に記載される組成物及び方法は、いくつかの有用な特徴を有する。例えば前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞を含む細胞培養物及び細胞集団、並びにこのような細胞培養物及び細胞集団を産生する方法は、ヒト発達の初期をモデリングするのに有用である。さらに、本明細書中に記載される組成物及び方法は、疾患状態、例えば糖尿病における治療的介入にも役立ち得る。例えば前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞は限定数のみの組織のための供給源として役立つため、それらは純粋組織又は細胞型の発達に用いられ得る。
【0395】
多能性細胞からの前原始線条細胞の産生
前原始線条細胞を産生するためのいくつかのプロセスにおいて、出発材料として用いられる多能性細胞は、幹細胞である。或る特定のプロセスでは、前原始線条細胞培養物、及び前原始線条細胞を含む富化細胞集団は、胚性幹細胞から産生される。前原始線条細胞を得るための好ましい方法は、前原始線条細胞産生のための出発材料としてヒト胚性幹細胞を利用する。このような多能性細胞は、桑実胚、胚の内部細胞塊、又は胚生殖隆起から得られるものから生じる細胞であり得る。ヒト胚性幹細胞は、当該技術分野で既知である方法を用いて、実質的分化を伴わない多能性状態で培養物中に保持され得る。このような方法は、例えば米国特許第5,453,357号、同第5,670,372号、同第5,690,926号、同第5,843,780号、同第6,200,806号及び同第6,251,671号に記載されている(これらの開示内容は参照により本明細書中に完全に援用される)。
【0396】
前原始線条細胞を産生するためのいくつかのプロセスにおいて、hESCは、フィーダー層上に保持される。このようなプロセスでは、hESCを多能性状態に保持させる任意のフィーダー層が用いられ得る。ヒト胚性幹細胞を培養するために一般的に用いられる1つのフィーダー層は、マウス線維芽細胞の層である。さらに近年、ヒト線維芽細胞フィーダー層が、hESCの培養に用いるために開発された(米国特許出願第2002/0072117号(この開示内容は各々、参照により本明細書中に完全に援用される)参照)。前原始線条細胞を産生するための代替的プロセスは、フィーダー層の使用を伴わずに多能性hESCの保持を可能にする。フィーダーを使用しない条件下での多能性hESCの保持方法は、米国特許出願第2003/0175956号(この開示内容は参照により本明細書中に完全に援用される)に記載されている。
【0397】
本明細書中で用いられるヒト胚性幹細胞は、血清を含有するか又は含有しない培養物中に保持され得る。いくつかの胚性幹細胞保持手法では、血清代替物が用いられる。他の場合には、無血清培養技法、例えば米国特許出願第2003/0190748号(この開示内容は参照により本明細書中に完全に援用される)に記載される技法が用いられる。
【0398】
幹細胞は、前原始線条細胞に分化されることが所望されるまで、ルーチン継代により多能性状態で培養物中に保持される。いくつかのプロセスでは、前原始線条細胞への分化は、前原始線条細胞への分化を促進するのに十分な量で、分化因子、例えばTGFβスーパーファミリーの成長因子を幹細胞培養物に提供することにより達成される。前原始線条細胞の産生に有用であるTGFβスーパーファミリーの成長因子は、ノーダル/アクチビンサブグループから選択される。いくつかの好ましい分化プロセスでは、成長因子は、ノーダル、アクチビンA及びアクチビンBから成る群から選択される。或る特定の分化プロセスでは、成長因子アクチビンAが用いられる。
【0399】
前原始線条細胞への多能性幹細胞の分化のためのプロセスのいくつかに関しては、前原始線条細胞への幹細胞の少なくとも一部の分化を促すのに十分な濃度で成長因子が培養物中に存在するように、上記成長因子が細胞に提供される。いくつかのプロセスでは、上記成長因子は、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約500ng/ml、少なくとも約1000ng/ml、少なくとも約2000ng/ml、少なくとも約3000ng/ml、少なくとも約4000ng/ml、少なくとも約5000ng/ml又は約5000ng/mlより高い濃度で細胞培養物中に存在する。
【0400】
前原始線条細胞への多能性幹細胞の分化のための或る特定のプロセスでは、上記の成長因子は、それらの添加後、細胞培養物から除去される。例えば成長因子は、約1時間以内、約2時間以内、約3時間以内、約4時間以内、約5時間以内、約6時間以内、約7時間以内、約8時間以内、約9時間以内、約10時間以内、約11時間以内、約12時間以内、約13時間以内、約14時間以内、約15時間以内、約16時間以内、約17時間以内、約18時間以内、約19時間以内、約20時間以内、約21時間以内、約22時間以内、約23時間以内、約24時間以内、約24時間より長い時間以内に除去され得る。
【0401】
前原始線条細胞の培養物は、低血清又は無血清を含有する培地中で増殖され得る。或る特定の培養条件下では、血清濃度は約0%(v/v)~約10%(v/v)の範囲であり得る。例えばいくつかの分化プロセスでは、培地の血清濃度は、約0.05%(v/v)未満、約0.1%(v/v)未満、約0.2%(v/v)未満、約0.3%(v/v)未満、約0.4%(v/v)未満、約0.5%(v/v)未満、約0.6%(v/v)未満、約0.7%(v/v)未満、約0.8%(v/v)未満、約0.9%(v/v)未満、約1%(v/v)未満、約2%(v/v)未満、約3%(v/v)未満、約4%(v/v)未満、約5%(v/v)未満、約6%(v/v)未満、約7%(v/v)未満、約8%(v/v)未満、約9%(v/v)未満又は約10%(v/v)未満であり得る。いくつかのプロセスでは、前原始線条細胞は、血清を用いずに、又は血清代替物を用いずに増殖される。さらに他のプロセスでは、前原始線条細胞はB27の存在下で増殖される。このようなプロセスでは、B27サプリメントの濃度は、約0.1%(v/v)~約20%(v/v)の範囲であり得る。
【0402】
前原始線条細胞への多能性細胞の分化のモニタリング
前原始線条細胞へのhESC培養の進行は、前原始線条細胞に特徴的なマーカーの一過性発現を測定することによりモニタリングされ得る。いくつかのプロセスでは、或る特定のマーカーの発現は、マーカーの存在又は非存在を検出することにより決定される。あるいは或る特定のマーカーの発現は、分化因子の添加後の1つ又は複数の時点でマーカーが細胞培養物又は細胞集団の細胞中に存在するレベルを測定することにより決定され得る。このようなプロセスでは、マーカー発現の測定は、定性的又は定量的であり得る。マーカー遺伝子により産生されるマーカーの発現を定量する一方法は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)の使用による。Q-PCRを実施する方法は、当該技術分野で既知である。当該技術分野で既知である他の方法は、マーカー遺伝子発現を定量するためにも用いられ得る。例えばマーカー遺伝子産物の発現は、当該マーカー遺伝子産物に特異的な抗体を用いることにより検出され得る。或る特定のプロセスでは、前原始線条細胞に特徴的なマーカー遺伝子の発現並びにhESC及び他の細胞型に特徴的なマーカー遺伝子の有意な発現の欠如が決定される。さらに他のプロセスでは、分化因子の添加後の1つ又は複数の時点での前原始線条細胞に特徴的なマーカー遺伝子の発現の時機及び量が測定される。
【0403】
以下の実施例でさらに記載されるように、前原始線条細胞のマーカーは、FGF8及びβ-カテニンである。このようなものとして、本明細書中に記載されるプロセスにより産生される前原始線条細胞はFGF8及びβ-カテニンマーカー遺伝子を発現し、それによりFGF8及びβ-カテニンマーカー遺伝子産物を産生する。いくつかの実施形態では、FGF8mRNAは、前原始線条細胞中で実質的に発現されるが、しかしhESC中では発現されない。ほぼピークレベルへのFGF8 mRNAの実質的なアップレギュレートは、hESCを適切な分化因子、例えばアクチビンAと接触させた後6時間までに分化中hESC培養物中で観察され得る。この時点で、他の細胞型、例えば中内胚葉細胞、原始内胚葉、胚体内胚葉細胞、中胚葉及び外胚葉を示すマーカーの発現(表1参照)は、依然として比較的低い。いくつかの実施形態では、中内胚葉細胞、原始内胚葉、胚体内胚葉細胞、中胚葉及び外胚葉を示すマーカーは、hESCを分化因子と接触させた後、6時間までに実質的に発現されない。FGF8mRNA発現は、hESCを分化因子と接触させた後、少なくとも約24時間高レベルで保持されるが、しかしその後、減少し始める。さらに、hESCを適切な分化因子、例えばアクチビンAと接触させた後約17時間までに、β-カテニンポリペプチドの核局在化(核局在化β-カテニンの発現)が、免疫細胞化学により観察される。hESC中では、β-カテニンポリペプチドは細胞周辺に存在するが、しかし核中には存在しない。
【0404】
FGF8及び核局在化β-カテニン発現は、分化条件に応じて、前原始線条細胞における一連の異なるレベルにわたって誘導される、と理解される。このようなものとして、本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、前原始線条細胞又は細胞集団中でのFGF8マーカー及び/又は核局在化β-カテニンマーカーの発現は、hESCからの分化の最初のおよそ6~18時間の間、非前原始線条細胞又は細胞集団中でのこれらのマーカーの発現の少なくとも約2倍~少なくとも約10,000倍である。他の実施形態では、前原始線条細胞又は細胞集団中でのFGF8マーカー及び/又は核局在化β-カテニンマーカーの発現は、hESCからの分化の最初のおよそ6~18時間の間、非前原始線条細胞又は細胞集団中でのFGF8マーカー及び/又は核局在化β-カテニンマーカーの発現より少なくとも約4倍高い、少なくとも約6倍高い、少なくとも約8倍高い、少なくとも約10倍高い、少なくとも約15倍高い、少なくとも約20倍高い、少なくとも約40倍高い、少なくとも約80倍高い、少なくとも約100倍高い、少なくとも約150倍高い、少なくとも約200倍高い、少なくとも約500倍高い、少なくとも約750倍高い、少なくとも約1000倍高い、少なくとも約2500倍高い、少なくとも約5000倍高い、少なくとも約7500倍高いか又は少なくとも約10,000倍高い。いくつかの実施形態では、前原始線条細胞又は細胞集団中でのFGF8マーカー及び/又は核局在化β-カテニンマーカーの発現は、hESCからの分化の最初のおよそ6~18時間の間、非前原始線条細胞又は細胞集団中でのFGF8マーカー及び/又は核局在化β-カテニンマーカーの発現より非常に高い。
【0405】
さらに、前原始線条細胞中でのFGF8マーカーの発現レベルと、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1マーカーの発現レベルとの間に一連の差が存在する、と理解される。同様に、前原始線条細胞中での核局在化β-カテニンマーカーの発現レベルと、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1マーカーの発現レベルとの間に一連の差が存在する。このようなものとして、本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、FGF8マーカー及び/又は核局在化β-カテニンマーカーの発現は、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1マーカーの発現レベルより少なくとも約2倍~少なくとも約10,000倍高い。他の実施形態では、FGF8マーカー及び/又は核局在化β-カテニンマーカーの発現は、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1マーカーの発現レベルより少なくとも約4倍高い、少なくとも約6倍高い、少なくとも約8倍高い、少なくとも約10倍高い、少なくとも約15倍高い、少なくとも約20倍高い、少なくとも約40倍高い、少なくとも約80倍高い、少なくとも約100倍高い、少なくとも約150倍高い、少なくとも約200倍高い、少なくとも約500倍高い、少なくとも約750倍高い、少なくとも約1000倍高い、少なくとも約2500倍高い、少なくとも約5000倍高い、少なくとも約7500倍高いか又は少なくとも約10,000倍高い。いくつかの実施形態では、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1マーカーは、前原始線条細胞中で有意に発現されない。
【0406】
前原始線条細胞の富化、単離及び/又は精製
本明細書中に記載されるプロセスのさらなる態様に関しては、前原始線条細胞は富化され、単離され、且つ/又は精製され得る。いくつかの実施形態では、このような細胞を細胞培養物から単離することにより、前原始線条細胞に関して富化された細胞集団が産生される。
【0407】
本明細書中に記載されるプロセスのいくつかの実施形態では、前原始線条細胞は蛍光標識され、次に蛍光標示式細胞分取器(FACS)を用いることにより非標識細胞から単離される。このような実施形態では、グリーン蛍光タンパク質(GFP)をコードする核酸、又は発現可能蛍光マーカー遺伝子をコードする別の核酸を用いて、前原始線条細胞を標識する。例えばいくつかの実施形態では、GFPをコードする核酸又はその生物学的活性断片の少なくとも1つのコピーは、GFP遺伝子産物又はその生物学的活性断片の発現がFGF8プロモーターの制御下にあるように、FGF8プロモーターの下流で、多能性細胞、好ましくはヒト胚性幹細胞中に導入される。いくつかの実施形態では、FGF8をコードする核酸の全コード領域は、GFPをコードする核酸又はその生物学的活性断片により置き換えられる。他の実施形態では、GFPをコードする核酸又はその生物学的活性断片は、フレーム内で、FGF8をコードする核酸の少なくとも一部分と融合され、それにより融合タンパク質を生成する。このような実施形態では、融合タンパク質は、GFPと類似の蛍光活性を保持する。
【0408】
蛍光標識される細胞、例えば上記の多能性細胞は、上記のように前原始線条細胞に分化される。前原始線条細胞は蛍光マーカー遺伝子を発現するが、非前原始線条細胞は発現しないため、これら2つの細胞型が分離され得る。いくつかの実施形態では、蛍光標識前原始線条細胞及び非標識非前原始線条細胞の混合物を含む細胞懸濁液は、FACSを用いて選別される。前原始線条細胞は、非前原始線条細胞と別個に収集され、それによりこのような細胞型の単離を生じる。所望により、単離細胞組成物はさらに、前原始線条細胞に特異
的である同一の又は異なるマーカーを用いて、さらに数回選別することによりさらに精製され得る。
【0409】
直前で記載された手法に加え、前原始線条細胞は、細胞単離のための他の技法によっても単離され得る。さらに前原始線条細胞は、前原始線条細胞の選択的生存又は選択的拡大を促す増殖条件で連続継代培養する方法によっても、富化されるか又は単離され得る。
【0410】
上記の富化、単離及び精製手法は、分化の任意の段階で、このような培養物とともに用いられ得る、と理解される。
【0411】
本明細書中に記載される方法を用いて、前原始線条細胞及び/又は組織の富化、単離及び/又は精製集団が、約1時間~約24時間の間分化を受けたhESC培養物又は細胞集団からinvitroで産生され得る。いくつかの実施形態では、細胞は無作為分化を受ける。しかしながら好ましい実施形態では、細胞は主として前原始線条細胞に分化するように指示される。いくつかの好ましい富化、単離及び/又は精製方法は、ヒト胚性幹細胞からの前原始線条細胞のinvitro産生に関する。
【0412】
本明細書中に記載される方法を用いて、細胞集団又は細胞培養物は、未処理又は未富化細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約2倍~約1000倍、前原始線条細胞内容物を富化され得る。いくつかの実施形態では、前原始線条細胞は、未処理又は未富化細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約5倍~約500倍、富化され得る。他の実施形態では、前原始線条細胞は、未処理又は未富化細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約10倍~約200倍、富化され得る。さらに他の実施形態では、前原始線条細胞は、未処理又は未富化細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約20倍~約100倍、富化され得る。さらに他の実施形態では、前原始線条細胞は、未処理又は未富化細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約40倍~約80倍、富化され得る。或る特定のいくつかの実施形態では、前原始線条細胞は、未処理又は未富化細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約2倍~約20倍、富化され得る。
【0413】
前原始線条細胞を含む組成物
上記の方法により産生される細胞組成物としては、前原始線条細胞を含む細胞培養物、並びに前原始線条細胞を富化された細胞集団が挙げられる。例えば、培養物中の細胞の少なくとも約5~90%が前原始線条細胞である前原始線条細胞を含む細胞培養物が産生され得る。分化プロセスの効率は、或る特定のパラメーター、例えば細胞成長条件、成長因子濃度及び培養工程の時機(これらに限定されない)を修正することにより調整され得るため、本明細書中に記載される分化手法は、前原始線条細胞への多能性細胞の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約95%より多い転換を生じ得る。前原始線条細胞の単離が用いられるプロセスでは、実質的に純粋な前原始線条細胞集団が回収され得る。
【0414】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態は、多能性細胞、例えば幹細胞と、前原始線条細胞の両方を含む細胞集団及び細胞培養物のような組成物に関する。例えば本明細書中に記載される方法を用いて、hESC及び前原始線条細胞の混合物を含む組成物が産生され得る。いくつかの実施形態では、約95個の多能性細胞につき少なくとも約5個の前原始線条細胞を含む組成物が産生される。他の実施形態では、約5個毎の多能性細胞に関して少なくとも約95個の前原始線条細胞を含む組成物が産生される。さらに、他の割合の前原始線条細胞対多能性細胞を含む組成物が意図される。例えば約1,000,000個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の前原始線条細胞、約100,000個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の前原始線条細胞、約10,000個毎の多能性細胞
に関して少なくとも約1個の前原始線条細胞、約1000個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の前原始線条細胞、約500個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の前原始線条細胞、約100個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の前原始線条細胞、約10個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の前原始線条細胞、約5個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の前原始線条細胞、約2個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の前原始線条細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約2個の前原始線条細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約5個の前原始線条細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約10個の前原始線条細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約20個の前原始線条細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約50個の前原始線条細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約100個の前原始線条細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1000個の前原始線条細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約10,000個の前原始線条細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約100,000個の前原始線条細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1,000,000個の前原始線条細胞を含む組成物が意図される。いくつかの実施形態では、多能性細胞はヒト多能性幹細胞である。或る特定のいくつかの実施形態では、幹細胞は、桑実胚、胚の内部細胞塊、又は胚の生殖隆起に由来する。或る特定の他の実施形態では、多能性細胞は、胚期が終わって発達した多細胞構造の生殖腺又は胚組織に由来する。
【0415】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態は、少なくとも約5%の前原始線条細胞~少なくとも約99%の前原始線条細胞から成る細胞培養物又は細胞集団に関する。いくつかの実施形態では、細胞培養物又は細胞集団は、哺乳類細胞を含む。好ましい実施形態では、細胞培養物又は細胞集団はヒト細胞を含む。例えば或る特定の特定の実施形態は、ヒト細胞の少なくとも約5%~少なくとも約99%が前原始線条細胞であるヒト細胞から成る細胞培養物に関する。他の実施形態は、ヒト細胞の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は99%より多くが前原始線条細胞であるヒト細胞から成る細胞培養物に関する。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記のパーセンテージは、細胞培養物又は細胞集団中のヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0416】
本明細書中に記載されるさらなる実施形態は、ヒト細胞、例えばヒト前原始線条細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関するが、この場合、FGF8マーカー及び/又は核局在化βカテニンマーカーの発現は、少なくとも約5%のヒト細胞では、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1マーカーの発現より多い。他の実施形態では、FGF8マーカー及び/又は核局在化βカテニンマーカーの発現は、少なくとも約10%のヒト細胞では、少なくとも約15%のヒト細胞では、少なくとも約20%のヒト細胞では、少なくとも約25%のヒト細胞では、少なくとも約30%のヒト細胞では、少なくとも約35%のヒト細胞では、少なくとも約40%のヒト細胞では、少なくとも約45%のヒト細胞では、少なくとも約50%のヒト細胞では、少なくとも約55%のヒト細胞では、少なくとも約60%のヒト細胞では、少なくとも約65%のヒト細胞では、少なくとも約70%のヒト細胞では、少なくとも約75%のヒト細胞では、少なくとも約80%のヒト細胞では、少なくとも約85%のヒト細胞では、少なくとも約90%のヒト細胞では、少なくとも約95%のヒト細胞では、少なくとも約98%のヒト細胞では、少なくとも約99%のヒト細胞では、又は99%より多くのヒト細胞では、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1マーカーの発現より多い。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記のパーセンテージは、細胞培養物又は細胞集団中のヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0417】
本明細書中に記載されるさらなる実施形態は、ヒトhESC及びヒト前原始線条細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関するが、この場合、FGF8mRNAの発現の実質的なアップレギュレートは、培養中のhESCを適切な分化因子、例えばアクチビンAと接触させた後、約1時間までに、約2時間までに、約3時間までに、約4時間までに、約5時間までに、約6時間までに、約7時間までに、約8時間までに、約9時間までに、約10時間までに、約11時間までに、約12時間までに、約13時間までに、約14時間までに、約15時間までに、約16時間までに、約17時間までに、約18時間までに、約19時間までに、約20時間までに、約21時間までに、約22時間までに、約23時間までに、約24時間までに、又は24時間より長い時間までに、細胞培養物又は細胞集団の細胞中で起こる。このような実施形態では、FGF8mRNAの発現の実質的なアップレギュレートは、ヒト細胞の少なくとも約5%で、ヒト細胞の少なくとも約10%で、ヒト細胞の少なくとも約15%で、ヒト細胞の少なくとも約20%で、ヒト細胞の少なくとも約25%で、ヒト細胞の少なくとも約30%で、ヒト細胞の少なくとも約35%で、ヒト細胞の少なくとも約40%で、ヒト細胞の少なくとも約45%で、ヒト細胞の少なくとも約50%で、ヒト細胞の少なくとも約55%で、ヒト細胞の少なくとも約60%で、ヒト細胞の少なくとも約65%で、ヒト細胞の少なくとも約70%で、ヒト細胞の少なくとも約75%で、ヒト細胞の少なくとも約80%で、ヒト細胞の少なくとも約85%で、ヒト細胞の少なくとも約90%で、ヒト細胞の少なくとも約95%で、ヒト細胞の少なくとも約98%で、ヒト細胞の少なくとも約99%で、又はヒト細胞の99%より多くで起こる。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記のパーセンテージは、細胞培養物又は細胞集団中のヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0418】
本明細書中に記載されるさらなる実施形態は、ヒトhESC及びヒト前原始線条細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関するが、この場合、β-カテニンポリペプチドの実質的核局在化(核局在化β-カテニンマーカーの発現)は、培養中のhESCを適切な分化因子、例えばアクチビンAと接触させた後、約1時間までに、約2時間までに、約3時間までに、約4時間までに、約5時間までに、約6時間までに、約7時間までに、約8時間までに、約9時間までに、約10時間までに、約11時間までに、約12時間までに、約13時間までに、約14時間までに、約15時間までに、約16時間までに、約17時間までに、約18時間までに、約19時間までに、約20時間までに、約21時間までに、約22時間までに、約23時間までに、約24時間までに、又は24時間より長い時間までに、細胞培養物又は細胞集団の細胞中で起こる。このような実施形態では、核局在化β-カテニンの発現は、ヒト細胞の少なくとも約5%で、ヒト細胞の少なくとも約10%で、ヒト細胞の少なくとも約15%で、ヒト細胞の少なくとも約20%で、ヒト細胞の少なくとも約25%で、ヒト細胞の少なくとも約30%で、ヒト細胞の少なくとも約35%で、ヒト細胞の少なくとも約40%で、ヒト細胞の少なくとも約45%で、ヒト細胞の少なくとも約50%で、ヒト細胞の少なくとも約55%で、ヒト細胞の少なくとも約60%で、ヒト細胞の少なくとも約65%で、ヒト細胞の少なくとも約70%で、ヒト細胞の少なくとも約75%で、ヒト細胞の少なくとも約80%で、ヒト細胞の少なくとも約85%で、ヒト細胞の少なくとも約90%で、ヒト細胞の少なくとも約95%で、ヒト細胞の少なくとも約98%で、ヒト細胞の少なくとも約99%で、又はヒト細胞の99%より多くで起こる。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記のパーセンテージは、細胞培養物又は細胞集団中のヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0419】
本明細書中に記載される方法を用いて、他の細胞型を実質的に含有しない前原始線条細胞
を含む組成物が産生され得る。本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、本明細書中に記載される方法により産生される前原始線条細胞集団又は細胞培養物は、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、SOX17、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1マーカー遺伝子を有意に発現する細胞を実質的に含有しない。
【0420】
一実施形態では、マーカー遺伝子の発現に基づいた前原始線条細胞の説明は、FGF8高、核局在化β-カテニン高、ブラキュリ低、FGF4低、SNAI1低、SOX17低、FOXA2低、SOX7低及びSOX1低である。
【0421】
多能性細胞からの中内胚葉細胞の産生
中内胚葉細胞を産生するためのいくつかのプロセスにおいて、出発材料として用いられる多能性細胞は、幹細胞である。或る特定のプロセスでは、中内胚葉細胞培養物並びに中内胚葉細胞を含む富化細胞集団は、胚性幹細胞から産生される。中内胚葉細胞を得るための好ましい方法は、中内胚葉細胞産生のための出発材料としてヒト胚性幹細胞を利用する。このような多能性細胞は、桑実胚、胚の内部細胞塊、又は胚生殖隆起から得られるものから生じる細胞であり得る。ヒト胚性幹細胞は、当該技術分野で既知である方法を用いて、実質的分化を伴わない多能性状態で培養物中に保持され得る。このような方法は、例えば米国特許第5,453,357号、第5,670,372号、第5,690,926号、第5,843,780号、第6,200,806号及び第6,251,671号に記載されている(これらの開示内容は参照により本明細書中に完全に援用される)。
【0422】
中内胚葉細胞を産生するためのいくつかのプロセスにおいて、hESCは、フィーダー層上に保持される。このようなプロセスでは、hESCを多能性状態に保持させる任意のフィーダー層が用いられ得る。ヒト胚性幹細胞を培養するために一般的に用いられる1つのフィーダー層は、マウス線維芽細胞の層である。さらに近年、ヒト線維芽細胞フィーダー層が、hESCの培養に用いるために開発された(米国特許出願第2002/0072117号(この開示内容は参照により本明細書中に完全に援用される)参照)。中内胚葉細胞を産生するための代替的プロセスは、フィーダー層の使用を伴わずに多能性hESCの保持を可能にする。フィーダーを使用しない条件下での多能性hESCの保持方法は、米国特許出願第2003/0175956号(この開示内容は参照により本明細書中に完全に援用される)に記載されている。
【0423】
本明細書中で用いられるヒト胚性幹細胞は、血清を含有するか又は含有しない培養物中に保持され得る。いくつかの胚性幹細胞保持手法では、血清代替物が用いられる。他の場合には、無血清培養技法、例えば米国特許出願第2003/0190748号(この開示内容は参照により本明細書中に完全に援用される)に記載される技法が用いられる。
【0424】
幹細胞は、中内胚葉細胞に分化されることが所望されるまで、ルーチン継代により多能性状態で培養物中に保持される。いくつかのプロセスでは、中内胚葉細胞への分化は、中内胚葉細胞への分化を促進するのに十分な量で、分化因子、例えばTGFβスーパーファミリーの成長因子を幹細胞培養物に提供することにより達成される。中内胚葉細胞の産生に有用であるTGFβスーパーファミリーの成長因子は、ノーダル/アクチビンサブグループから選択される。いくつかの好ましい分化プロセスでは、成長因子は、ノーダル、アクチビンA及びアクチビンBから成る群から選択される。或る特定の分化プロセスでは、成長因子アクチビンAが用いられる。
【0425】
中内胚葉細胞への多能性幹細胞の分化のためのプロセスのいくつかに関しては、中内胚葉細胞への幹細胞の少なくとも一部の分化を促すのに十分な濃度で成長因子が培養物中に存在するよう、上記成長因子が細胞に提供される。いくつかのプロセスでは、上記成長因子は、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約25ng/
ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約500ng/ml、少なくとも約1000ng/ml、少なくとも約2000ng/ml、少なくとも約3000ng/ml、少なくとも約4000ng/ml、少なくとも約5000ng/ml又は約5000ng/mlより高い濃度で細胞培養物中に存在する。
【0426】
中内胚葉細胞への多能性幹細胞の分化のための或る特定のプロセスでは、上記の成長因子は、それらの添加後、細胞培養物から除去される。例えば成長因子は、約18時間以内、約19時間以内、約20時間以内、約21時間以内、約22時間以内、約23時間以内、約24時間以内、約25時間以内、約26時間以内、約27時間以内、約28時間以内、約29時間以内、約30時間以内、約31時間以内、約32時間以内、約33時間以内、約34時間以内、約35時間以内、約36時間以内、約37時間以内、約38時間以内、約39時間以内、約40時間以内、約41時間以内、約42時間以内、約43時間以内、約44時間以内、約45時間以内、約46時間以内、約47時間以内、約48時間以内、又は約48時間より長い時間以内に除去され得る。
【0427】
中内胚葉細胞の培養は、低血清を含有するか又は血清を含有しない培地中で増殖され得る。或る特定の培養条件下では、血清濃度は約0%(v/v)~約10%(v/v)の範囲であり得る。例えばいくつかの分化プロセスでは、培地の血清濃度は、約0.05%(v/v)未満、約0.1%(v/v)未満、約0.2%(v/v)未満、約0.3%(v/v)未満、約0.4%(v/v)未満、約0.5%(v/v)未満、約0.6%(v/v)未満、約0.7%(v/v)未満、約0.8%(v/v)未満、約0.9%(v/v)未満、約1%(v/v)未満、約2%(v/v)未満、約3%(v/v)未満、約4%(v/v)未満、約5%(v/v)未満、約6%(v/v)未満、約7%(v/v)未満、約8%(v/v)未満、約9%(v/v)未満又は約10%(v/v)未満であり得る。いくつかのプロセスでは、中内胚葉細胞は、血清を用いずに、又は血清代替物を用いずに増殖される。さらに他のプロセスでは、中内胚葉細胞はB27の存在下で増殖される。このようなプロセスでは、B27サプリメントの濃度は、約0.1%(v/v)~約20%(v/v)の範囲であり得る。
【0428】
中内胚葉細胞への多能性細胞の分化のモニタリング
中内胚葉細胞へのhESC培養の進行は、中内胚葉細胞に特徴的なマーカーの一過性発現を決定することによりモニタリングされ得る。いくつかのプロセスでは、或る特定のマーカーの発現は、マーカーの存在又は非存在を検出することにより決定される。あるいは或る特定のマーカーの発現は、分化因子の添加後の1つ又は複数の時点でマーカーが細胞培養物又は細胞集団の細胞中に存在するレベルを測定することにより決定され得る。このようなプロセスでは、マーカー発現の測定は、定性的又は定量的であり得る。マーカー遺伝子により産生されるマーカーの発現を定量する一方法は、Q-PCRの使用による。当該技術分野で既知である他の方法は、マーカー遺伝子発現を定量するためにも用いられ得る。例えばマーカー遺伝子産物の発現は、当該マーカー遺伝子産物に特異的な抗体を用いることにより検出され得る。或る特定のプロセスでは、中内胚葉細胞に特徴的なマーカー遺伝子の発現並びにhESC及び他の細胞型に特徴的なマーカー遺伝子の有意の発現の欠如が決定される。さらに他のプロセスでは、分化因子の添加後の1つ又は複数の時点での中内胚葉細胞に特徴的なマーカー遺伝子の発現の時機及び量の双方が測定される。
【0429】
以下の実施例でさらに記載されるように、中内胚葉細胞のマーカーは、ブラキュリ、FGF4及びSNAI1である。このようなものとして、本明細書中に記載されるプロセスにより産生される中内胚葉細胞は、ブラキュリ、FGF4及びSNAI1マーカー遺伝子を発現し、それによりブラキュリ、FGF4及びSNAI1マーカー遺伝子産物を産生する
。いくつかの実施形態では、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1mRNAは中内胚葉細胞中で実質的に発現されるが、しかしhESC中では発現されない。ほぼピークレベルへのブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1 mRNAの実質的なアップレギュレートは、hESCを適切な分化因子、例えばアクチビンAと接触させた後24時間までに分化中hESC培養物中で観察され得る。この時点で、他の細胞型、例えば原始内胚葉、胚体内胚葉細胞、中胚葉及び外胚葉を示す或る特定のマーカーの発現(表1参照)は、依然として比較的低い。いくつかの実施形態では、原始内胚葉、胚体内胚葉細胞、中胚葉及び外胚葉を示す或る特定のマーカーは、hESCを分化因子と接触させた後、24時間までに実質的に発現されない。いくつかの実施形態では、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1mRNA発現は、hESCを分化因子と接触させた後、約24時間後に減少し始める。いくつかの実施形態では、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1 mRNA発現は、hESCを分化因子と接触させた後、約30時間後、約36時間後、約42時間後、約48時間後又は約48時間より長い時間の後に減少し始める。
【0430】
ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1発現は、分化条件によって、中内胚葉細胞における一連の異なるレベルにわたって誘導される、と理解される。このようなものとして、本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、中内胚葉細胞又は細胞集団中でのブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1マーカーの発現は、hESCからの分化の約24時間、非中内胚葉細胞又は細胞集団中でのこれらのマーカーの発現より少なくとも約2倍~少なくとも約10,000倍高い。他の実施形態では、中内胚葉細胞又は細胞集団中でのブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1マーカーの発現は、hESCからの分化の約24時間後、非中内胚葉細胞又は細胞集団中でのブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1マーカーの発現より少なくとも約4倍高い、少なくとも約6倍高い、少なくとも約8倍高い、少なくとも約10倍高い、少なくとも約15倍高い、少なくとも約20倍高い、少なくとも約40倍高い、少なくとも約80倍高い、少なくとも約100倍高い、少なくとも約150倍高い、少なくとも約200倍高い、少なくとも約500倍高い、少なくとも約750倍高い、少なくとも約1000倍高い、少なくとも約2500倍高い、少なくとも約5000倍高い、少なくとも約7500倍高いか又は少なくとも約10,000倍高い。いくつかの実施形態では、中内胚葉細胞又は細胞集団中でのブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1マーカーの発現は、hESCからの分化の約24時間後、非中内胚葉細胞又は細胞集団中でのブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1マーカーの発現より非常に高い。
【0431】
さらに、中内胚葉細胞中でのブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1マーカーの発現レベルと、OCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1マーカーの発現レベルとの間に一連の差が存在する、と理解される。このようなものとして、本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1マーカーの発現は、OCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1マーカーの発現レベルより少なくとも約2倍~少なくとも約10,000倍高い。他の実施形態では、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1マーカーの発現は、OCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1マーカーの発現レベルより少なくとも約4倍高い、少なくとも約6倍高い、少なくとも約8倍高い、少なくとも約10倍高い、少なくとも約15倍高い、少なくとも約20倍高い、少なくとも約40倍高い、少なくとも約80倍高い、少なくとも約100倍高い、少なくとも約150倍高い、少なくとも約200倍高い、少なくとも約500倍高い、少なくとも約750倍高い、少なくとも約1000倍高い、少なくとも約2500倍高い、少なくとも約5000倍高い、少なくとも約7500倍高いか又は少なくとも約10,000倍高い。いくつかの実施形態では、OCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1マーカーは、中内胚葉細胞中で有意に発現されない。
【0432】
中内胚葉細胞の富化、単離及び/又は精製
本明細書中に記載されるプロセスのさらなる態様に関しては、中内胚葉細胞は富化され、単離され且つ/又は精製され得る。いくつかの実施形態では、このような細胞を細胞培養物から単離することにより、中内胚葉細胞に関して富化された細胞集団が産生される。
【0433】
本明細書中に記載されるプロセスのいくつかの実施形態では、中内胚葉細胞は蛍光標識され、次にFACSを用いることにより非標識細胞から単離される。このような実施形態では、グリーン蛍光タンパク質(GFP)をコードする核酸、又は発現可能蛍光マーカー遺伝子をコードする別の核酸を用いて、中内胚葉細胞を標識する。例えばいくつかの実施形態では、GFPをコードする核酸又はその生物学的活性断片の少なくとも1つのコピーは、GFP遺伝子産物又はその生物学的活性断片の発現がブラキュリ、FGF4又はSNAI1プロモーターの制御下にあるよう、ブラキュリ、FGF4又はSNAI1プロモーターの下流で、多能性細胞、好ましくはヒト胚性幹細胞中に導入される。いくつかの実施形態では、ブラキュリ、FGF4又はSNAI1をコードする核酸の全コード領域は、GFPをコードする核酸又はその生物学的活性断片により置き換えられる。他の実施形態では、GFPをコードする核酸又はその生物学的活性断片は、フレーム内で、ブラキュリ、FGF4又はSNAI1をコードする核酸の少なくとも一部分と融合され、それにより融合タンパク質を生成する。このような実施形態では、融合タンパク質は、GFPと類似の蛍光活性を保持する。
【0434】
蛍光標識される細胞、例えば上記の多能性細胞は、上記のように中内胚葉細胞に分化される。中内胚葉細胞は蛍光マーカー遺伝子を発現する一方、非中内胚葉細胞は発現しないため、これら2つの細胞型が分離され得る。いくつかの実施形態では、蛍光標識中内胚葉細胞及び非標識非中内胚葉細胞の混合物を含む細胞懸濁液は、FACSを用いて選別される。中内胚葉細胞は、非中内胚葉細胞と別個に収集され、それによりこのような細胞型の単離を生じる。所望により、単離細胞組成物はさらに、中内胚葉細胞に特異的である同一の又は異なるマーカーを用いて、さらに数回選別することにより精製され得る。
【0435】
直前で記載された手法のほかに、中内胚葉細胞は、細胞単離のための他の技法によっても単離され得る。さらに中内胚葉細胞は、中内胚葉細胞の選択的生存又は選択的拡大を促す増殖条件で連続継代培養する方法によっても、富化されるか又は単離され得る。
【0436】
上記の富化、単離及び精製手法は、分化の任意の段階で、このような培養物とともに用いられ得る、と理解される。
【0437】
本明細書中に記載される方法を用いて、中内胚葉細胞及び/又は組織の富化、単離及び/又は精製集団が、約18時間~約48時間の間分化を受けたhESC培養物又は細胞集団からinvitroで産生され得る。いくつかの実施形態では、細胞は無作為分化を受ける。しかしながら好ましい実施形態では、細胞は主として中内胚葉細胞に分化するよう指図される。いくつかの好ましい富化、単離及び/又は精製方法は、ヒト胚性幹細胞からの中内胚葉細胞のinvitro産生に関する。
【0438】
本明細書中に記載される方法を用いて、細胞集団又は細胞培養物は、未処理又は未富化細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約2倍~約1000倍、中内胚葉細胞内容物を富化され得る。いくつかの実施形態では、中内胚葉細胞は、未処理又は未富化細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約5倍~約500倍、富化され得る。他の実施形態では、中内胚葉細胞は、未処理又は未富化細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約10倍~約200倍、富化され得る。さらに他の実施形態では、中内胚葉細胞は、未処理又は未富化細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約20倍~約100倍、富化され得る。さらに他の実施形態では、中内胚葉細胞は、未処理又は未富化細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約40倍~約80倍、富化され得る。或る特定のいくつかの実施形態では、中内胚葉細胞は、未処理又は未富化細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約2倍~約20倍、富化され得る。
【0439】
中内胚葉細胞を含む組成物
上記の方法により産生される細胞組成物としては、中内胚葉細胞を含む細胞培養物、並びに中内胚葉細胞を富化された細胞集団が挙げられる。例えば、培養中の細胞の少なくとも約5~90%が中内胚葉細胞である中内胚葉細胞を含む細胞培養物が産生され得る。分化プロセスの効率は、或る特定のパラメーター、例えば細胞成長条件、成長因子濃度及び培養工程の時機(これらに限定されない)を修正することにより調整され得るため、本明細書中に記載される分化手法は、中内胚葉細胞への多能性細胞の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約95%より多い転換を生じ得る。中内胚葉細胞の単離が用いられるプロセスでは、実質的に純粋な中内胚葉細胞集団が回収され得る。
【0440】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態は、多能性細胞、例えば幹細胞と、中内胚葉細胞の両方を含む細胞集団及び細胞培養物のような組成物に関する。例えば本明細書中に記載される方法を用いて、hESC及び中内胚葉細胞の混合物を含む組成物が産生され得る。いくつかの実施形態では、約95個の多能性細胞につき少なくとも約5個の中内胚葉細胞を含む組成物が産生される。他の実施形態では、約5個毎の多能性細胞につき少なくとも約95個の中内胚葉細胞を含む組成物が産生される。さらに、他の割合の中内胚葉細胞対多能性細胞を含む組成物が意図される。例えば約1,000,000個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の中内胚葉細胞、約100,000個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の中内胚葉細胞、約10,000個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の中内胚葉細胞、約1000個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の中内胚葉細胞、約500個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の中内胚葉細胞、約100個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の中内胚葉細胞、約10個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の中内胚葉細胞、約5個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の中内胚葉細胞、約2個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1個の中内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約2個の中内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約5個の中内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約10個の中内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約20個の中内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約50個の中内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約100個の中内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1000個の中内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約10,000個の中内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約100,000個の中内胚葉細胞、約1個毎の多能性細胞に関して少なくとも約1,000,000個の中内胚葉細胞を含む組成物が意図される。いくつかの実施形態では、多能性細胞はヒト多能性幹細胞である。或る特定のいくつかの実施形態では、幹細胞は、桑実胚、胚の内部細胞塊、又は胚の生殖隆起に由来する。或る特定の他の実施形態では、多能性細胞は、胚期が終わって発達した多細胞構造の生殖腺又は胚組織に由来する。
【0441】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態は、少なくとも約5%の中内胚葉細胞~少なくとも約99%の中内胚葉細胞から成る細胞培養物又は細胞集団に関する。いくつかの実施形態では、細胞培養物又は細胞集団は、哺乳類細胞を含む。好ましい実施形態では、細胞培養物又は細胞集団はヒト細胞を含む。例えば或る特定の特定の実施形態は、ヒト細胞の少なくとも約5%~少なくとも約99%が中内胚葉細胞であるヒト細胞から成る細胞培養物に関する。他の実施形態は、ヒト細胞の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少
なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は99%より多くが中内胚葉細胞であるヒト細胞から成る細胞培養物に関する。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記のパーセンテージは、細胞培養物又は細胞集団中のヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0442】
本明細書中に記載されるさらなる実施形態は、ヒト細胞、例えばヒト中内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関するが、この場合、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1マーカーの発現は、少なくとも約5%のヒト細胞では、OCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1マーカーの発現より多い。他の実施形態では、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1マーカーの発現は、少なくとも約10%のヒト細胞では、少なくとも約15%のヒト細胞では、少なくとも約20%のヒト細胞では、少なくとも約25%のヒト細胞では、少なくとも約30%のヒト細胞では、少なくとも約35%のヒト細胞では、少なくとも約40%のヒト細胞では、少なくとも約45%のヒト細胞では、少なくとも約50%のヒト細胞では、少なくとも約55%のヒト細胞では、少なくとも約60%のヒト細胞では、少なくとも約65%のヒト細胞では、少なくとも約70%のヒト細胞では、少なくとも約75%のヒト細胞では、少なくとも約80%のヒト細胞では、少なくとも約85%のヒト細胞では、少なくとも約90%のヒト細胞では、少なくとも約95%のヒト細胞では、少なくとも約98%のヒト細胞では、少なくとも約99%のヒト細胞では、又は99%より多くのヒト細胞では、OCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1マーカーの発現より多い。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記のパーセンテージは、細胞培養物又は細胞集団中のヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0443】
本明細書中に記載されるさらなる実施形態は、ヒトhESC及びヒト中内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関するが、この場合、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1mRNAの発現の実質的なアップレギュレートは、培養中のhESCを適切な分化因子、例えばアクチビンAと接触させた後、約18時間までに、約19時間までに、約20時間までに、約21時間までに、約22時間までに、約23時間までに、約24時間までに、約25時間までに、約26時間までに、約27時間までに、約28時間までに、約29時間までに、約30時間までに、約31時間までに、約32時間までに、約33時間までに、約34時間までに、約35時間までに、約36時間までに、約37時間までに、約38時間までに、約39時間までに、約40時間までに、約41時間までに、約42時間までに、約43時間までに、約44時間までに、約45時間までに、約46時間までに、約47時間までに、約48時間までに、又は48時間より長い時間までに、細胞培養物又は細胞集団の細胞中で起こる。このような実施形態では、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1mRNAの発現の実質的なアップレギュレートは、ヒト細胞の少なくとも約5%で、ヒト細胞の少なくとも約10%で、ヒト細胞の少なくとも約15%で、ヒト細胞の少なくとも約20%で、ヒト細胞の少なくとも約25%で、ヒト細胞の少なくとも約30%で、ヒト細胞の少なくとも約35%で、ヒト細胞の少なくとも約40%で、ヒト細胞の少なくとも約45%で、ヒト細胞の少なくとも約50%で、ヒト細胞の少なくとも約55%で、ヒト細胞の少なくとも約60%で、ヒト細胞の少なくとも約65%で、ヒト細胞の少なくとも約70%で、ヒト細胞の少なくとも約75%で、ヒト細胞の少なくとも約80%で、ヒト細胞の少なくとも約85%で、ヒト細胞の少なくとも約90%で、ヒト細胞の少なくとも約95%で、ヒト細胞の少なくとも約98%で、ヒト細胞の少なくとも約99%で、又はヒト細胞の99%より多くで起こる。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記のパーセンテージは、細胞培養物又は細胞集団中のヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0444】
本明細書中に記載される方法を用いて、他の細胞型を実質的に含有しない中内胚葉細胞を含む組成物が産生され得る。本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、本明細書中に記載される方法により産生される中内胚葉細胞集団又は細胞培養物は、OCT4、SOX17、CXCR4、FOXA2、SOX7及び/又はSOX1マーカー遺伝子を有意に発現する細胞を実質的に含有しない。
【0445】
一実施形態では、マーカー遺伝子の発現に基づいた中内胚葉細胞の説明は、ブラキュリ高、FGF4高、SNAI1高、SOX17低、CXCR4低、FOXA2低、SOX7低及びSOX1低である。
【0446】
胚体内胚葉細胞の産生
胚体内胚葉を含む細胞培養物及び富化細胞集団を産生するよう多能性細胞を分化させるためのプロセスは、以下で簡単に、そして2004年12月23日に出願された胚体内胚葉(DEFINITIVE ENDODERM)という表題の米国特許第11/021,618号(この開示内容は参照により本明細書中に完全に援用される)で詳細に記載される。これらのプロセスのうちのいくつかでは、出発材料として用いられる多能性細胞は幹細胞である。或る特定のプロセスでは、胚体内胚葉細胞培養物及び胚体内胚葉細胞を含む富化細胞集団は、胚性幹細胞から産生される。胚体内胚葉細胞を得るための好ましい方法は、胚体内胚葉産生のための出発物質としてヒト胚性幹細胞を利用する。このような多能性細胞は、桑実胚、胚の内部細胞塊、又は胚生殖隆起から得られるものから生じる細胞であり得る。ヒト胚性幹細胞は、当該技術分野で既知である方法を用いて、実質的分化を伴わない多能性状態で培養物中に保持され得る。このような方法は、例えば米国特許第5,453,357号、第5,670,372号、第5,690,926号、第5,843,780号、第6,200,806号及び第6,251,671号に記載されている(これらの開示内容は参照により本明細書中に完全に援用される)。
【0447】
胚体内胚葉細胞を産生するためのいくつかのプロセスにおいて、hESCは、フィーダー層上に保持される。このようなプロセスでは、hESCを多能性状態に保持させる任意のフィーダー層が用いられ得る。ヒト胚性幹細胞を培養するために一般的に用いられる1つのフィーダー層は、マウス線維芽細胞の層である。さらに近年、ヒト線維芽細胞フィーダー層が、hESCの培養に用いるために開発された(米国特許出願第2002/0072117号(この開示内容は参照により本明細書中に完全に援用される)参照)。胚体内胚葉を産生するための代替的プロセスは、フィーダー層の使用を伴わずに多能性hESCの保持を可能にする。フィーダーを使用しない条件下での多能性hESCの保持方法は、米国特許出願第2003/0175956号(この開示内容は参照により本明細書中に完全に援用される)に記載されている。
【0448】
本明細書中で用いられるヒト胚性幹細胞は、血清を含有するか又は含有しない培養物中に保持され得る。いくつかの胚性幹細胞保持手法では、血清代替物が用いられる。他の場合には、無血清培養技法、例えば米国特許出願第2003/0190748号(この開示内容は参照により本明細書中に完全に援用される)に記載される技法が用いられる。
【0449】
幹細胞は、胚体内胚葉に分化されることが所望されるまで、ルーチン継代により多能性状態で培養物中に保持される。いくつかのプロセスでは、胚体内胚葉への分化は、胚体内胚葉への分化を促進するのに十分な量で、TGFβスーパーファミリーの成長因子を幹細胞培養物に提供することにより達成される。胚体内胚葉の産生に有用であるTGFβスーパーファミリーの成長因子は、ノーダル/アクチビンサブグループから選択される。いくつかの好ましい分化プロセスでは、成長因子は、ノーダル、アクチビンA及びアクチビンBから成る群から選択される。或る特定の分化プロセスでは、上記の成長因子のいずれかの組合せが用いられる。
【0450】
胚体内胚葉細胞への多能性幹細胞の分化のためのプロセスのいくつかに関しては、胚体内胚葉細胞への幹細胞の少なくとも一部の分化を促すのに十分な濃度で成長因子が培養物中に存在するよう、上記成長因子が細胞に提供される。いくつかのプロセスでは、上記成長因子は、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約500ng/ml、少なくとも約1000ng/ml、少なくとも約2000ng/ml、少なくとも約3000ng/ml、少なくとも約4000ng/ml、少なくとも約5000ng/ml又は約5000ng/mlより高い濃度で細胞培養物中に存在する。
【0451】
胚体内胚葉細胞への多能性幹細胞の分化のための或る特定のプロセスでは、上記の成長因子は、それらの添加後、細胞培養物から除去される。例えば成長因子は、それらの添加後約1日以内、約2日以内、約3日以内、約4日以内、約5日以内、約6日以内、約7日以内、約8日以内、約9日以内、又は約10日以内に除去され得る。好ましいプロセスでは、成長因子は、それらの添加の4日後に除去される。
【0452】
胚体内胚葉細胞の培養物は、低血清を含有する又は血清を含有しない培地中で増殖され得る。或る特定の培養条件下では、血清濃度は約0.05%v/v~約20%v/vの範囲であり得る。例えばいくつかの分化プロセスでは、培地の血清濃度は、約0.05%(v/v)未満、約0.1%(v/v)未満、約0.2%(v/v)未満、約0.3%(v/v)未満、約0.4%(v/v)未満、約0.5%(v/v)未満、約0.6%(v/v)未満、約0.7%(v/v)未満、約0.8%(v/v)未満、約0.9%(v/v)未満、約1%(v/v)未満、約2%(v/v)未満、約3%(v/v)未満、約4%(v/v)未満、約5%(v/v)未満、約6%(v/v)未満、約7%(v/v)未満、約8%(v/v)未満、約9%(v/v)未満、約10%(v/v)未満、約15%(v/v)未満又は約20%(v/v)未満であり得る。いくつかのプロセスでは、胚体内胚葉細胞は、血清を用いずに、又は血清代替物を用いずに増殖される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉は、血清代替物を用いて増殖される。さらに他のプロセスでは、胚体内胚葉細胞はB27の存在下で増殖される。このようなプロセスでは、B27サプリメントの濃度は、約0.1%v/v~約20%v/vの範囲であり得る。
【0453】
胚体内胚葉細胞への多能性細胞の分化のモニタリング
胚体内胚葉細胞へのhESC培養の進行は、胚体内胚葉細胞に特徴的なマーカーの発現を決定することによりモニタリングされ得る。いくつかのプロセスでは、或る特定のマーカーの発現は、マーカーの存在又は非存在を検出することにより決定される。あるいは或る特定のマーカーの発現は、マーカーが細胞培養物又は細胞集団の細胞中に存在するレベルを測定することにより決定され得る。このようなプロセスでは、マーカー発現の測定は、定性的又は定量的であり得る。マーカー遺伝子により産生されるマーカーの発現を定量する一方法は、Q-PCRの使用による。当該技術分野で既知である他の方法は、マーカー遺伝子発現を定量するためにも用いられ得る。例えばマーカー遺伝子産物の発現は、当該マーカー遺伝子産物に特異的な抗体を用いることにより検出され得る。或る特定のプロセスでは、胚体内胚葉細胞に特徴的なマーカー遺伝子の発現並びにhESC及び他の細胞型に特徴的なマーカー遺伝子の有意の発現の欠如が決定される。
【0454】
以下の実施例でさらに記載されるように、胚体内胚葉の信頼できるマーカーはSOX17遺伝子である。このようなものとして、本明細書中に記載されるプロセスにより産生され
る胚体内胚葉細胞はSOX17マーカー遺伝子を発現し、それによりSOX17遺伝子産物を産生する。胚体内胚葉の他のマーカーは、MIXL1、GATA4、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1である。胚体内胚葉細胞はSOX17マーカー遺伝子を、原始及び臓側内胚葉に特徴的であるSOX7マーカー遺伝子より高いレベルで発現するため、いくつかのプロセスでは、SOX17及びSOX7の両方の発現がモニタリングされる。他のプロセスでは、hESCに特徴的であるSOX17マーカー遺伝子及びOCT4マーカー遺伝子の両方の発現がモニタリングされる。さらに、胚体内胚葉細胞はSOX17マーカー遺伝子を、AFP、SPARC又はトロンボモジュリン(TM)マーカー遺伝子より高いレベルで発現するため、これらの遺伝子の発現もモニタリングされる。
【0455】
胚体内胚葉の別のマーカーは、CXCR4遺伝子である。CXCR4遺伝子は、そのリガンドが化学誘導物質SDF-1である細胞表面ケモカイン受容体をコードする。成体におけるCXCR4受容体保有細胞の主な役割は、骨髄への造血細胞の移動、リンパ球輸送、並びに種々のB細胞及びマクロファージ血球系統の分化であると考えられる[Kim, C., and Broxmeyer, H.J. Leukocyte Biol. 65, 6-15 (1999)]。CXCR4受容体は、T細胞中へのHIV-1の進入のための補助受容体としても機能する[Feng, Y., et al. Science, 272, 872-877 (1996)]。[McGrath, K.E. et al. Dev. Biology 213, 442-456 (1999)]により実行された一連の広範な研究において、ケモカイン受容体CXCR4及びその独特のリガンドSDF-1の発現[Kim, C., and Broxmyer, H.,J. Leukocyte Biol.65, 6-15 (1999)]は、マウスの初期発達及び成体生涯中で概説された。発達におけるCXCR4/SDF1相互作用は、どちらかの遺伝子がトランスジェニックマウスにおいて破壊された場合には[Nagasawa et al. Nature, 382, 635-638 (1996)];Ma, Q., et al Immunity, 10, 463-471 (1999)]後期胚致死性を生じる、ということが実証された場合、明らかになった。RNアーゼ保護及びinsituハイブリダイゼーション技法の組み合わせを用いて、CXCR4は、初期原腸形成胚(E7.5)中に検出される最も豊富なケモカイン受容体メッセンジャーRNAである、ということをMcGrath等は実証した。原腸形成胚では、CXCR4/SDF-1シグナル伝達は、原始線条胚葉細胞の移動誘導に主に関与すると思われ、そしてこの時期に存在する胚体内胚葉、中胚葉及び胚体外中胚葉上で発現される。E7.2~7.8マウス胚では、CXCR4及びα-フェトタンパク質は互いに排他的であり、これは、臓側内胚葉での発現の欠如を示す[(McGrath, K.E. et al. Dev. Biology 213, 442-456 (1999)]。
【0456】
多能性細胞を分化させることにより産生される胚体内胚葉細胞はCXCR4マーカー遺伝子を発現するため、CXCR4の発現は、胚体内胚葉細胞の産生を追跡するためにモニタリングされ得る。さらに、本明細書中に記載される方法により産生される胚体内胚葉細胞は、胚体内胚葉の他のマーカー、例えばSOX17、MIXL1、GATA4、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1(これらに限定されない)を発現する。胚体内胚葉細胞はCXCR4マーカー遺伝子をSOX7マーカー遺伝子より高いレベルで発現するため、CXCR4及びSOX7の両方の発現がモニタリングされ得る。他のプロセスでは、CXCR4マーカー遺伝子及びOCT4マーカー遺伝子の両方の発現がモニタリングされる。さらに、胚体内胚葉細胞はCXCR4マーカー遺伝子を、AFP、SPARC又はトロンボモジュリン(TM)マーカー遺伝子より高いレベルで発現するため、これらの遺伝子の発現もモニタリングされ得る。
【0457】
内胚葉細胞中のCXCR4の発現はSOX17の発現を妨げない、と理解される。このようなものとして、本明細書中に記載されるプロセスにより産生される胚体内胚葉細胞は、SOX17及びCXCR4を実質的に発現するが、AFP、TM、SPARC又はPDX1を実質的に発現しない。
【0458】
胚体内胚葉細胞の富化、単離及び/又は精製
上記のプロセスのいずれかにより産生される胚体内胚葉細胞は、このような細胞に特異的であるアフィニティー・タグを用いることにより、富化され、単離され且つ/又は精製され得る。胚体内胚葉細胞に特異的なアフィニティー・タグの例は、抗体、リガンド、あるいは胚体内胚葉細胞の細胞表面に存在するが、しかし本明細書中に記載される方法により産生される細胞培養物中に見出される他の細胞型上には実質的に存在しないポリペプチド等のマーカー分子に特異的なその他の結合剤である。いくつかのプロセスでは、CXCR4と結合する抗体は、胚体内胚葉細胞の富化、単離又は精製のためのアフィニティー・タグとして用いられる。他のプロセスでは、ケモカインSDF-1又はSDF-1を基礎にしたその他の分子もアフィニティー・タグとして用いられ得る。このような分子としては、SDF-1断片、SDF-1融合体、又はSDF-1模倣体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0459】
抗体を製造する方法並びに細胞単離のためにそれらを使用する方法は当該技術分野で既知であり、そしてこのような方法は、本明細書中に記載される抗体及び胚体内胚葉細胞とともに用いるために意図され得る。一プロセスでは、CXCR4と結合する抗体は、磁気ビーズに取り付けられ、次に、細胞内及び基質接着を低減するよう酵素処理された細胞培養物中で胚体内胚葉細胞と結合させられる。細胞/抗体/ビーズ複合体は次に、ビーズ結合胚体内胚葉細胞を非結合細胞と分離するために用いられる可動性磁場にさらされる。一旦胚体内胚葉細胞が培養中の他の細胞と物理的に分離されると、抗体結合が破壊され、細胞は適切な組織培地中に再プレート化される。
【0460】
富化、単離又は精製胚体内胚葉細胞培養物又は集団を得るためのさらなる方法も用いられ得る。例えばいくつかの実施形態では、CXCR4抗体は、細胞内及び基質接着を低減するよう処理された胚体内胚葉含有細胞培養物とともにインキュベートされる。次に細胞は洗浄され、遠心分離されて、再懸濁される。次に細胞懸濁液は、一次抗体と結合し得る二次抗体、例えばFITC接合抗体とともにインキュベートされる。細胞は次に、洗浄され、遠心分離され、そして緩衝液中に再懸濁される。次に細胞懸濁液は、蛍光標示式細胞分取器(FACS)を用いて分析され、選別される。CXCR4陽性細胞は、CXCR4陰性細胞と別個に収集され、それによりこのような細胞型の単離を生じる。所望により、単離細胞組成物は、代替的アフィニティーベースの方法を用いることにより、あるいは胚体内胚葉に特異的である同一の又は異なるマーカーを用いてさらに数回選別することにより、さらに精製され得る。
【0461】
さらに他のプロセスでは、CXCR4と結合するリガンド又は他の分子を用いて、胚体内胚葉細胞は富化され、単離され、且つ/又は精製される。いくつかのプロセスでは、分子はSDF-1あるいはその断片、融合体又は模倣体である。
【0462】
好ましいプロセスでは、幹細胞培養物が胚体内胚葉系統に向けて分化するよう誘導された後、胚体内胚葉細胞は、他の非胚体内胚葉細胞から富化され、単離され、且つ/又は精製される。上記の富化、単離及び精製手法は、分化の任意の段階で、このような培養物とともに用いられ得る、と理解される。
【0463】
直前で記載された手法のほかに、胚体内胚葉細胞は、細胞単離のための他の技法によっても単離され得る。さらに胚体内胚葉細胞は、胚体内胚葉細胞の選択的生存又は選択的拡大を促す増殖条件で連続継代培養する方法によっても、富化されるか又は単離され得る。
【0464】
本明細書中に記載される方法を用いて、胚体内胚葉細胞及び/又は組織の富化、単離及び/又は精製集団が、少なくとも何らかの分化を受けた多能性細胞培養物又は細胞集団、例えば幹細胞培養物又は集団からinvitroで産生され得る。いくつかの方法では、細
胞は無作為分化を受ける。しかしながら好ましい方法では、細胞は主として胚体内胚葉に分化するよう指図される。いくつかの好ましい富化、単離及び/又は精製方法は、ヒト胚性幹細胞からの胚体内胚葉のinvitro産生に関する。本明細書中に記載される方法を用いて、細胞集団又は細胞培養物は、非処理細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約2倍~約1000倍、胚体内胚葉細胞内容物を富化され得る。
【0465】
胚体内胚葉細胞を含む組成物
上記の方法により産生される細胞組成物としては、胚体内胚葉を含む細胞培養物、並びに胚体内胚葉を富化された細胞集団が挙げられる。例えば、細胞培養物又は細胞集団中の細胞の少なくとも約50~99%が胚体内胚葉細胞である胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物が産生され得る。分化プロセスの効率は、或る特定のパラメーター、例えば細胞成長条件、成長因子濃度及び培養工程の時機(これらに限定されない)を修正することにより調整され得るため、本明細書中に記載される分化手法は、胚体内胚葉への多能性細胞の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、約99%又は約99%より多い転換を生じ得る。胚体内胚葉細胞の単離が用いられるプロセスでは、例えばCXCR4受容体と結合する親和性試薬を用いることにより、実質的に純粋な胚体内胚葉細胞集団が回収され得る。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記のパーセンテージは、細胞培養物又は細胞集団中のヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0466】
前原始線条及び/又は中内胚葉の分化を促進し得る因子の同定
本明細書中に記載される或る特定のスクリーニング方法は、前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞の分化を促進し得る少なくとも1つの分化因子を同定する方法に関する。これらの方法のいくつかの実施形態では、前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞、例えばヒト前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞を含む細胞集団が得られる。次に細胞集団は、候補分化因子を提供される。候補分化因子の提供の前であるか又はほぼ同時である第1の時点で、マーカーの発現が測定される。あるいはマーカーの発現は、候補分化因子の提供後に測定され得る。第1の時点の後であり、候補分化因子を細胞集団に提供する工程の後である第2の時点で、同一マーカーの発現が再び測定される。候補分化因子が胚体内胚葉細胞の分化を促進し得るか否かは、第1の時点でのマーカーの発現を、第2の時点でのマーカーの発現と比較することにより決定される。第2の時点でのマーカーの発現が、第1の時点でのマーカーの発現と比較して増大されるか又は減少される場合には、候補分化因子が胚体内胚葉細胞の分化を促進し得る。
【0467】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法のいくつかの実施形態は、ヒト前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞を含む細胞集団又は細胞培養物を利用する。例えば細胞集団は、ヒト前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞の実質的に純粋な集団であり得る。あるいは細胞集団は、ヒト前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞の富化集団であって、この場合、細胞集団中のヒト細胞の少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は少なくとも約99%以上が、ヒト前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞である。本明細書中に記載される他の実施形態では、細胞集団は、ヒト細胞の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、又は少なくとも85%以上がヒト前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞であるヒト細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞集団は、非ヒト細胞、例えば非ヒトフィーダー細胞を含む。他の実施形態では、細胞集団は、ヒトフィーダー細胞を含む。このような実施形態では、上記フィーダー細胞以外のヒト細胞の少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約95%以上がヒト前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞である。
【0468】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法の実施形態では、細胞集団は、候補(試験)分化因子と接触されるか、そうでなければそれを提供される。候補分化因子は、ヒト前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞の分化を促進する能力を有し得る任意の分子を含み得る。本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、候補分化因子は、1つ又は複数の型の細胞に関する分化因子であることが知られている分子を含む。代替的な実施形態では、候補分化因子は、細胞分化を促進することが知られていない分子を含む。好ましい実施形態では、候補分化因子は、ヒト前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞の分化を促進することが知られていない分子を含む。
【0469】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法のいくつかの実施形態では、候補分化因子は、小分子を含む。好ましい実施形態では、小分子は、約10,000amu以下の分子量を有する分子である。いくつかの実施形態では、小分子はレチノイド、例えばレチノイン酸である。
【0470】
本明細書中に記載される他の実施形態では、候補分化因子はポリペプチドを含む。ポリペプチドは、任意のポリペプチド、例えば糖タンパク質、リポタンパク質、細胞外マトリックスタンパク質、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモン、インターロイキン又は成長因子であり得る(これらに限定されない)。好ましいポリペプチドとしては、成長因子が挙げられる。いくつかの好ましい実施形態では、候補分化因子は、FGF10、FGF4、FGF2及びWnt3Bから成る群から選択される1つ又は複数の成長因子を含む。
【0471】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法のいくつかの実施形態では、候補分化因子は、アンフィレグリン、Bリンパ球刺激剤、IL-16、サイモポイエチン、TRAIL/アポ-2、プレB細胞コロニー強化因子、内皮分化関連因子1(EDF1)、内皮単球活性化ポリペプチドII、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、ナチュラルキラー細胞強化因子(NKEFA)、骨形態形成タンパク質2、骨形態形成タンパク質8(骨形成タンパク質2)、骨形態形成タンパク質6、骨形態形成タンパク質7、結合組織成長因子(CTGF)、CGI-149タンパク質(神経内分泌分化因子)、サイトカインA3(マクロファージ炎症タンパク質1-α)、グリア芽細胞腫(Gliablastoma)細胞分化関連タンパク質(GBDR1)、肝細胞腫由来成長因子、ニューロメジンU-25前駆体、血管内皮増殖因子(VEGF)、血管内皮増殖因子B(VEGF-B)、T細胞特異的RANTES前駆体、胸腺樹状細胞由来因子1、トランスフェリン、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-9(IL-9)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-11(IL-11)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-13(IL-13)、顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、エリスロポイエチン、トロンボポイエチン、ビタミンD3、表皮成長因子(EGF)、脳由来神経栄養因子、白血病抑制因子、甲状腺ホルモン、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、aFGF、FGF-4、FGF-6、ケラチノサイト成長因子(KGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、血小板由来成長因子-BB、β神経成長因子、アクチビンA、形質転換増殖因子β1(TGF-β1)、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因子-β、バースト促進活性(BPA)、赤血球系促進活性(EPA)、PGE2、インスリン成長因子-1(IGF-1)、IGF-II、ニュートロフィン成長因子(NGF)、ニュートロフィン-3、ニュートロフィン4/5、毛様体神経栄養因子、グリア由来ネキシン、デキサメタソン、β-メルカプトエタノール、レチノイン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、5-アザシチジン、アンフォテリシンB、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、イソブチルキサンチン、インドメタシン、β-グリセロホスフェート、ニコチンアミド、DMSO、チアゾリジンジオン、TWS119、オキシトシン、バソプレッシン、メラニン細胞刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、リポトロピン、ヒト甲状腺刺激ホルモン、成長ホルモン、プロラクチン、黄体形成ホルモン、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、濾胞刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、性腺刺激ホルモン放出因子、プロラクチン放出因子、プロラクチン放出抑制因子、成長ホルモン放出因子、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモン放出因子、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、上皮小体ホルモン、グルカゴン様ペプチド1、グルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド、ガストリン、セクレチン、コレシストキニン、モチリン、血管作動性小腸ペプチド、サブスタンスP、膵臓ポリペプチド、ペプチドチロシンチロシン、神経ペプチドチロシン、インスリン、グルカゴン、胎盤ラクトゲン、レラキシン、アンギオテンシンII、カルシトリオール、心房性ナトリウム利尿ペプチド及びメラトニン、チロキシン、トリヨードチロニン、カルシトニン、エストラジオール、エストロン、プロゲステロン、テストステロン、コルチゾール、コルチコステロン、アルドステロン、エピネフリン、ノルエピネフェリン、アンドロスチエン(androstiene)、カルシトリオール、コラーゲン、デキサメタソン、β-メルカプトエタノール、レチノイン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、5-アザシチジン、アンフォテリシンB、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、イソブチルキサンチン、インドメタシン、β-グリセロホスフェート、ニコチンアミド、DMSO、チアゾリジンジオン及びTWS119から成る群から選択される1つ又は複数の成長因子を含む。
【0472】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法のいくつかの実施形態では、候補分化因子は、1つ又は複数の濃度で、細胞集団に提供される。いくつかの実施形態では、候補分化因子は、細胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度が約0.1ng/ml~約10mg/mlの範囲であるよう、細胞集団に提供される。いくつかの実施形態では、細胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度は、約1ng/ml~約1mg/mlの範囲である。他の実施形態では、細胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度は、約10ng/ml~約100μg/mlの範囲である。さらに他の実施形態では、細胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度は、約100ng/ml~約10μg/mlの範囲である。好ましい実施形態では、細胞周囲の培地中の候補分化因子の濃度は、約5ng/ml、約25ng/ml、約50ng/ml、約75ng/ml、約100ng/ml、約125ng/ml、約150ng/ml、約175ng/ml、約200ng/ml、約225ng/ml、約250ng/ml、約275ng/ml、約300ng/ml、約325ng/ml、約350ng/ml、約375ng/ml、約400ng/ml、約425ng/ml、約450ng/ml、約475ng/ml、約500ng/ml、約525ng/ml、約550ng/ml、約575ng/ml、約600ng/ml、約625ng/ml、約650ng/ml、約675ng/ml、約700ng/ml、約725ng/ml、約750ng/ml、約775ng/ml、約800ng/ml、約825ng/ml、約850ng/ml、約875ng/ml、約900ng/ml、約925ng/ml、約950ng/ml、約975ng/ml、約1μg/ml、約2μg/ml、約3μg/ml、約4μg/ml、約5μg/ml、約6μg/ml、約7μg/ml、約8μg/ml、約9μg/ml、約10μg/ml、約11μg/ml、約12μg/ml、約13μg/ml、約14μg/ml、約15μg/ml、約16μg/ml、約17μg/ml、約18μg/ml、約19μg/ml、約20μg/ml、約25μg/ml、約50μg/ml、約75μg/ml、約100μg/ml、約125μg/ml、約150μg/ml、約175μg/ml、約200μg/ml、約250μg/ml、約300μg/ml、約350μg/ml、約400μg/ml、約450μg/ml、約500μg/ml、約550μg/ml、約600μg/ml、約650μg/ml、約700μg/ml、約750μg/ml、約800μg/ml、約850μg/ml、約900μg/ml、約950μg/ml、約1000μg/mlであるか、又は約1000μg/mlより高い。
【0473】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法の或る特定のいくつかの実施形態では、細胞集団は、前腸分化因子以外の任意の分子を含む候補分化因子を提供される。例えばいくつかの実施形態では、細胞集団は、レチノイド、成長因子のTGFβスーパーファミリーの一成員、FGF10又はFGF4以外の任意の分子を含む候補分化因子を提供される。いくつかの実施形態では、細胞集団は、レチノイン酸以外の任意の分子を含む候補分化因子を提供される。
【0474】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載されるスクリーニング方法の工程は、第1の時点及び第2の時点での少なくとも1つのマーカーの発現を測定することを包含する。これらの実施形態のいくつかでは、第1の時点は、候補分化因子を細胞集団に提供する前、又はそれとほぼ同時期であり得る。あるいはいくつかの実施形態では、第1の時点は、候補分化因子を細胞集団に提供した後である。いくつかの実施形態では、複数のマーカーの発現は、第1の時点で測定される。
【0475】
第1の時点での少なくとも1つのマーカーの発現を測定することのほかに、本明細書中に記載されるスクリーニング方法のいくつかの実施形態は、第1の時点の後であり且つ候補分化因子を細胞集団に提供した後である第2の時点での少なくとも1つのマーカーの発現を測定することを意図する。このような実施形態では、同一マーカーの発現が、第1及び第2の時点の両方で測定される。いくつかの実施形態では、複数のマーカーの発現が、第1及び第2の時点の両方で測定される。そのような実施形態では、同一の複数のマーカーの発現が、第1及び第2の時点の両方で測定される。いくつかの実施形態では、その各々が第1の時点の後であり、且つその各々が候補分化因子を細胞集団に提供した後である複数の時点で、マーカー発現が測定される。或る特定のいくつかの実施形態では、マーカー発現はQ-PCRにより測定される。他の実施形態では、マーカー発現は免疫細胞化学により測定される。
【0476】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法の或る特定のいくつかの実施形態では、その発現が第1及び第2の時点で測定されるマーカーは、腸管由来である組織及び/又は器官を作り上げる細胞の前駆体である細胞へのヒト前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞の分化に関連するマーカーである。いくつかの実施形態では、腸管に由来する組織及び/又は器官は、最終分化細胞を含む。いくつかの実施形態では、マーカーは、膵臓細胞又は膵臓前駆体細胞を示す。好ましい実施形態では、マーカーは、膵臓-十二指腸ホメオボックス因子-1(PDX1)である。他の実施形態では、マーカーはホメオボックスA13(HOXA13)又はホメオボックスC6(HOXC6)である。さらに、他の実施形態では、マーカーは肝細胞又は肝臓前駆体細胞を示す。或る特定の好ましい実施形態では、マーカーは、アルブミン、肝細胞特異的抗原(HSA)又はプロスペロ(prospero)関連ホメオボックス1(PROX1)である。他の実施形態では、マーカーは、肺又は肺前駆体細胞を示す。いくつかの好ましい実施形態では、マーカーは、甲状腺転写因子1(TITF1)である。さらに他の実施形態では、マーカーは、腸又は腸前駆体細胞を示す。さらなる好ましい実施形態では、マーカーは、ビリン又は尾型ホメオボックス転写因子2(CDX2)である。さらに他の実施形態では、マーカーは、胃又は胃前駆体細胞を示す。さらなる好ましい実施形態では、マーカーは、VCAM1、VWF又はCXCR4である。他の実施形態では、マーカーは甲状腺又は甲状腺前駆体細胞を示す。そのような実施形態では、マーカーはTITF1である。さらなる他の実施形態では、マーカーは、胸腺又は胸腺前駆体細胞を示す。
【0477】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法のいくつかの実施形態では、候補分化因子を細胞集団に提供することと、第2の時点でのマーカー発現を測定することとの間に十分な時間を経過させる。候補分化因子を細胞集団に提供することと第2の時点でのマーカーの発現を測定することとの間の十分な時間は、約1時間という短い時間から、約10日間という長い時間までであり得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのマーカーの発現は、候補分化因子を細胞集団に提供した後の複数の時点で測定される。いくつかの実施形態では、十分な時間は、少なくとも約1時間、少なくとも約6時間、少なくとも約12時間、少なくとも約18時間、少なくとも約24時間、少なくとも約30時間、少なくとも約36時間、少なくとも約42時間、少なくとも約48時間、少なくとも約54時間、少なくとも約60時間、少なくとも約66時間、少なくとも約72時間、少なくとも約78時間、少なくとも約84時間、少なくとも約90時間、少なくとも約96時間、少なくとも約102時間、少なくとも約108時間、少なくとも約114時間、少なくとも約120時間、少なくとも約126時間、少なくとも約132時間、少なくとも約138時間、少なくとも約144時間、少なくとも約150時間、少なくとも約156時間、少なくとも約162時間、少なくとも約168時間、少なくとも約174時間、少なくとも約180時間、少なくとも約186時間、少なくとも約192時間、少なくとも約198時間、少なくとも約204時間、少なくとも約210時間、少なくとも約216時間、少なくとも約222時間、少なくとも約228時間、少なくとも約234時間又は少なくとも約240時間である。
【0478】
本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態では、第2の時点でのマーカーの発現が、第1の時点でのこのマーカーの発現と比較して、増大したか又は減少したかがさらに測定される。少なくとも1つのマーカーの発現の増大又は減少は、候補分化因子が胚体内胚葉細胞の分化を促進し得る、ということを示す。同様に、複数のマーカーの発現が測定される場合、第2の時点での複数のマーカーの発現が、第1の時点でのこの複数のマーカーの発現と比較して、増大したか又は減少したかがさらに測定される。マーカー発現の増大又は減少は、第1及び第2の時点での細胞集団中のマーカーの量、レベル又は活性を測定するか又は評価することにより決定され得る。このような決定は、他のマーカー、例えばハウスキーピング遺伝子発現と相対的であるか、あるいは絶対的であり得る。マーカー発現が第1の時点と比較して第2の時点で増大される或る特定のいくつかの実施形態では、増大の量は、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍であるか、又は少なくとも約100倍より多い。いくつかの実施形態では、増大の量は、2倍未満である。マーカー発現が第1の時点と比較して第2の時点で減少される実施形態では、減少の量は、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍であるか、又は少なくとも約100倍より多い。いくつかの実施形態では、減少の量は、2倍未満である。
【0479】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法のいくつかの実施形態では、候補分化因子を細胞集団に提供後、ヒト前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞は、1つ又は複数の細胞型の胚体内胚葉系統に分化する。いくつかの実施形態では、候補分化因子を細胞集団に提
供後、ヒト前原始線条細胞及び/又は胚体内胚葉細胞は、腸管に由来する細胞に分化する。このような細胞としては、膵臓、肝臓、肺、胃、腸、甲状腺、胸腺、咽頭、胆嚢及び膀胱の細胞、並びにこのような細胞の前駆体が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、これらの細胞は、より高度な構造、例えば組織及び/又は器官にさらに発達し得る。
【0480】
本明細書中に記載されるスクリーニング方法の他の実施形態では、候補分化因子を細胞集団に提供後、ヒト前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞は1つ又は複数の細胞型の中内胚葉系統に分化する。いくつかの実施形態では、候補分化因子を細胞集団に提供後、ヒト前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞は、例えば血球、心臓血管性系、骨格組織並びにその他の構造及び結合組織の細胞、そして上記細胞型の各々の前駆体(これらに限定されない)を含む細胞に分化する。さらに、これらの細胞は、より高度な構造、例えば組織及び/又は器官にさらに発達し得る。
【0481】
FGF8遺伝子産物の発現を増大する方法
本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態は、in vitroでのヒト胚性幹細胞中でのFGF8遺伝子産物の発現を増大する方法に関する。このような方法は、約2%(v/v)未満の血清を含む培地中で上記hESCを生成する工程を包含する。例えば培地は、約0%(v/v)、約0.05%(v/v)、約0.1%(v/v)、約0.2%(v/v)、約0.3%(v/v)、約0.4%(v/v)、約0.5%(v/v)、約0.6%(v/v)、約0.1%(v/v)、約0.2%(v/v)、約0.3%(v/v)、約0.4%(v/v)、約0.5%(v/v)、約0.6%(v/v)、約0.7%(v/v)、約0.8%(v/v)、約0.9%(v/v)、約1%(v/v)、約1.1%(v/v)、約1.2%(v/v)、約1.3%(v/v)、約1.4%(v/v)、約1.5%(v/v)、約1.6%(v/v)、約1.7%(v/v)、約1.8%(v/v)又は約1.9%(v/v)の濃度で血清を含み得る。いくつかの実施形態では、培地は、血清代替物を含まない。hESCは、FGF8遺伝子産物の発現を増大するのに十分な量の分化因子と接触される。いくつかの実施形態では、分化因子は、TGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子である。好ましい実施形態では、TGFβスーパーファミリーの成長因子は、アクチビンAである。hESCを接触するために用いられる分化因子の濃度は、約1ng/ml~約1mg/mlの範囲である。例えばhESCは、1ng/ml、約5ng/ml、約25ng/ml、約50ng/ml、約75ng/ml、約100ng/ml、約125ng/ml、約150ng/ml、約175ng/ml、約200ng/ml、約225ng/ml、約250ng/ml、約275ng/ml、約300ng/ml、約325ng/ml、約350ng/ml、約375ng/ml、約400ng/ml、約425ng/ml、約450ng/ml、約475ng/ml、約500ng/ml、約525ng/ml、約550ng/ml、約575ng/ml、約600ng/ml、約625ng/ml、約650ng/ml、約675ng/ml、約700ng/ml、約725ng/ml、約750ng/ml、約775ng/ml、約800ng/ml、約825ng/ml、約850ng/ml、約875ng/ml、約900ng/ml、約925ng/ml、約950ng/ml、約975ng/ml、約1μg/ml、約2μg/ml、約3μg/ml、約4μg/ml、約5μg/ml、約6μg/ml、約7μg/ml、約8μg/ml、約9μg/ml、約10μg/ml、約11μg/ml、約12μg/ml、約13μg/ml、約14μg/ml、約15μg/ml、約16μg/ml、約17μg/ml、約18μg/ml、約19μg/ml、約20μg/ml、約25μg/ml、約50μg/ml、約75μg/ml、約100μg/ml、約125μg/ml、約150μg/ml、約175μg/ml、約200μg/ml、約250μg/ml、約300μg/ml、約350μg/ml、約400μg/ml、約450μg/ml、約500μg/ml、約550μg/ml、約600μg/ml、約650μg/ml、約700μg/ml、約750μg/ml、約800μg/ml、約850μg/ml、約900μg/ml、約950μg/ml、約1000μg/ml又は約1000μg/ml以上の濃度の分化因子と接触され得る。
【0482】
ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1遺伝子産物の発現の増大方法
本明細書中に記載される方法の他の実施形態は、in vitroでのヒト胚性幹細胞中でのブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1遺伝子産物の発現を増大する方法に関する。このような方法は、約2%(v/v)未満の血清を含む培地中で上記hESCを生成する工程を包含する。例えば培地は、約0%(v/v)、約0.05%(v/v)、約0.1%(v/v)、約0.2%(v/v)、約0.3%(v/v)、約0.4%(v/v)、約0.5%(v/v)、約0.6%(v/v)、約0.1%(v/v)、約0.2%(v/v)、約0.3%(v/v)、約0.4%(v/v)、約0.5%(v/v)、約0.6%(v/v)、約0.7%(v/v)、約0.8%(v/v)、約0.9%(v/v)、約1%(v/v)、約1.1%(v/v)、約1.2%(v/v)、約1.3%(v/v)、約1.4%(v/v)、約1.5%(v/v)、約1.6%(v/v)、約1.7%(v/v)、約1.8%(v/v)又は約1.9%(v/v)の濃度で血清を含み得る。いくつかの実施形態では、培地は、血清代替物を含まない。hESCは、ブラキュリ、FGF4及び/又はSNAI1遺伝子産物の発現を増大するのに十分な量の分化因子と接触される。いくつかの実施形態では、分化因子は、TGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子である。好ましい実施形態では、TGFβスーパーファミリーの成長因子は、アクチビンAである。hESCを接触するために用いられる分化因子の濃度は、約1ng/ml~約1mg/mlの範囲である。例えばhESCは、1ng/ml、約5ng/ml、約25ng/ml、約50ng/ml、約75ng/ml、約100ng/ml、約125ng/ml、約150ng/ml、約175ng/ml、約200ng/ml、約225ng/ml、約250ng/ml、約275ng/ml、約300ng/ml、約325ng/ml、約350ng/ml、約375ng/ml、約400ng/ml、約425ng/ml、約450ng/ml、約475ng/ml、約500ng/ml、約525ng/ml、約550ng/ml、約575ng/ml、約600ng/ml、約625ng/ml、約650ng/ml、約675ng/ml、約700ng/ml、約725ng/ml、約750ng/ml、約775ng/ml、約800ng/ml、約825ng/ml、約850ng/ml、約875ng/ml、約900ng/ml、約925ng/ml、約950ng/ml、約975ng/ml、約1μg/ml、約2μg/ml、約3μg/ml、約4μg/ml、約5μg/ml、約6μg/ml、約7μg/ml、約8μg/ml、約9μg/ml、約10μg/ml、約11μg/ml、約12μg/ml、約13μg/ml、約14μg/ml、約15μg/ml、約16μg/ml、約17μg/ml、約18μg/ml、約19μg/ml、約20μg/ml、約25μg/ml、約50μg/ml、約75μg/ml、約100μg/ml、約125μg/ml、約150μg/ml、約175μg/ml、約200μg/ml、約250μg/ml、約300μg/ml、約350μg/ml、約400μg/ml、約450μg/ml、約500μg/ml、約550μg/ml、約600μg/ml、約650μg/ml、約700μg/ml、約750μg/ml、約800μg/ml、約850μg/ml、約900μg/ml、約950μg/ml、約1000μg/ml又は約1000μg/ml以上の濃度の分化因子と接触され得る。
【0483】
細胞培養物中の遺伝子産物の一過性発現
本発明のさらなる実施形態は、或る特定の一過性パターンの遺伝子発現を有する細胞培養物に関する。いくつかの実施形態では、細胞培養物は、ヒト胚性幹細胞(hESC)及び約2%(v/v)未満の血清を含有する培地を含む。例えば培地は、約0%(v/v)、約0.05%(v/v)、約0.1%(v/v)、約0.2%(v/v)、約0.3%(v/v)、約0.4%(v/v)、約0.5%(v/v)、約0.6%(v/v)、約0.1%(v/v)、約0.2%(v/v)、約0.3%(v/v)、約0.4%(v/v)、約0.5%(v/v)、約0.6%(v/v)、約0.7%(v/v)、約0.8%(v/v)、約0.9%(v/v)、約1%(v/v)、約1.1%(v/v)、約1.2%(v/v)、約1.3%(v/v)、約1.4%(v/v)、約1.5%(v/v)、約1.6%(v/v)、約1.7%(v/v)、約1.8%(v/v)又は約1.9%(v/v)の濃度で血清を含み得る。いくつかの実施形態では、培地は血清代替物を含まない。いくつかの実施形態では、培地は低血清RPMIである。
【0484】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態では、培地中のhESCは参照時点で分化し始める。参照時点は、分化因子が細胞に提供される時点である。いくつかの実施形態では、分化因子は、TGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子である。好ましい実施形態では、TGFβスーパーファミリーの成長因子は、アクチビンAである。hESCに提供される分化因子の濃度は、約1ng/ml~約1mg/mlの範囲である。例えばhESCは、1ng/ml、約5ng/ml、約25ng/ml、約50ng/ml、約75ng/ml、約100ng/ml、約125ng/ml、約150ng/ml、約175ng/ml、約200ng/ml、約225ng/ml、約250ng/ml、約275ng/ml、約300ng/ml、約325ng/ml、約350ng/ml、約375ng/ml、約400ng/ml、約425ng/ml、約450ng/ml、約475ng/ml、約500ng/ml、約525ng/ml、約550ng/ml、約575ng/ml、約600ng/ml、約625ng/ml、約650ng/ml、約675ng/ml、約700ng/ml、約725ng/ml、約750ng/ml、約775ng/ml、約800ng/ml、約825ng/ml、約850ng/ml、約875ng/ml、約900ng/ml、約925ng/ml、約950ng/ml、約975ng/ml、約1μg/ml、約2μg/ml、約3μg/ml、約4μg/ml、約5μg/ml、約6μg/ml、約7μg/ml、約8μg/ml、約9μg/ml、約10μg/ml、約11μg/ml、約12μg/ml、約13μg/ml、約14μg/ml、約15μg/ml、約16μg/ml、約17μg/ml、約18μg/ml、約19μg/ml、約20μg/ml、約25μg/ml、約50μg/ml、約75μg/ml、約100μg/ml、約125μg/ml、約150μg/ml、約175μg/ml、約200μg/ml、約250μg/ml、約300μg/ml、約350μg/ml、約400μg/ml、約450μg/ml、約500μg/ml、約550μg/ml、約600μg/ml、約650μg/ml、約700μg/ml、約750μg/ml、約800μg/ml、約850μg/ml、約900μg/ml、約950μg/ml、約1000μg/ml又は約1000μg/ml以上の濃度の分化因子と接触され得る。
【0485】
分化因子をhESCに提供後、FGF8 mRNAの発現は、hESC中でのベースラインFGF8 mRNA発現と比較して、実質的にアップレギュレートされる。hESC中でのベースラインFGF8発現は、その未分化状態で保持されるhESC細胞培養物中に存在するFGF8遺伝子産物、例えばmRNAの発現である。いくつかの実施形態では、FGF8mRNA発現は、参照時点から約6時間までに実質的にアップレギュレートされる。本明細書中に記載されるさらなる実施形態では、FGF8 mRNAの発現は、参照時点から約24時間後にダウンレギュレートされる。他の実施形態では、FGF8mRNAの発現ピークは、参照時点から約6時間~約24時間の間の時点で到達される。他の実施形態では、FGF8の発現ピークは、参照時点から約6時間未満の時点で到達され得る。
【0486】
本明細書中に記載される他の実施形態は、β-カテニンポリペプチドの核局在化増大を示す細胞培養物に関する。このような実施形態では、β-カテニンポリペプチドは、参照時点から約17時間までに細胞核に局在されるようになり始める。いくつかの実施形態では、β-カテニンポリペプチドは、参照時点から約17時間未満までに細胞核に局在されるようになり始める。さらに他の実施形態では、β-カテニンポリペプチドは、参照時点から約17時間までに細胞核に優勢的に局在されるようになる。
【0487】
本明細書中に記載される細胞培養物のさらに他の実施形態は、ブラキュリmRNAの発現増大を有する細胞培養物に関する。このような細胞培養物では、ブラキュリmRNA発現は、参照時点から約24時間までに実質的にアップレギュレートされる。いくつかの実施形態では、ブラキュリmRNA発現は、参照時点から約24時間前に実質的にアップレギュレートされる。いくつかの実施形態では、ブラキュリmRNAの発現は、参照時点から約48時間までに実質的にダウンレギュレートされる。或る特定のいくつかの実施形態では、ブラキュリmRNAの発現ピークは、参照時点から約12時間~約48時間の時点で到達される。好ましい実施形態では、ブラキュリmRNAは参照時点から約72時間までに実質的に発現されない。他の好ましい実施形態では、ブラキュリmRNAは参照時点から約24時間までに実質的にアップレギュレートされ、そして参照時点から約72時間までに実質的に発現されない。
【0488】
本明細書中に記載される細胞培養物のさらなる実施形態は、FGF4 mRNAの発現増大を有する細胞培養物に関する。このような細胞培養物ではFGF4mRNA発現は参照時点から約24時間までに実質的にアップレギュレートされる。いくつかの実施形態では、FGF4 mRNA発現は、参照時点から約24時間前に実質的にアップレギュレートされる。いくつかの実施形態では、FGF4mRNAの発現は、参照時点から約48時間までに実質的にダウンレギュレートされる。或る特定のいくつかの実施形態では、FGF4 mRNAの発現ピークは、参照時点から約12時間~約48時間の時点で到達される。好ましい実施形態では、FGF4mRNAは参照時点から約72時間までに実質的に発現されない。他の好ましい実施形態では、FGF4 mRNAは参照時点から約24時間までに実質的にアップレギュレートされ、そして参照時点から約72時間までに実質的に発現されない。
【0489】
本明細書中に記載される細胞培養物の好ましい実施形態は、ブラキュリ及びFGF4 mRNAの発現増大を有する細胞培養物に関する。このような細胞培養物では、ブラキュリ及びFGF4mRNA発現は、参照時点から約24時間までに実質的にアップレギュレートされる。いくつかの実施形態では、ブラキュリ及びFGF4 mRNA発現は、参照時点から約24時間前に実質的にアップレギュレートされる。いくつかの実施形態では、ブラキュリ及びFGF4mRNAの発現は、参照時点から約48時間までに実質的にダウンレギュレートされる。或る特定のいくつかの実施形態では、ブラキュリ及びFGF4mRNAのピーク発現は、参照時点から約12時間~約48時間の時点で到達される。好ましい実施形態では、ブラキュリ及びFGF4mRNAは参照時点から約72時間までに実質的に発現されない。他の好ましい実施形態では、ブラキュリ及びFGF4 mRNAは参照時点から約24時間までに実質的にアップレギュレートされ、そして参照時点から約72時間までに実質的に発現されない。
【0490】
本明細書中に記載される細胞培養物のさらなる実施形態は、SNAI1 mRNAの発現増大を有する細胞培養物に関する。このような細胞培養物では、SNAI1mRNA発現は参照時点から約24時間までに実質的にアップレギュレートされる。いくつかの実施形態では、SNAI1 mRNA発現は、参照時点から約24時間前に実質的にアップレギュレートされる。いくつかの実施形態では、SNAI1mRNAの発現は、参照時点から約48時間までに実質的にダウンレギュレートされる。或る特定のいくつかの実施形態では、SNAI1 mRNAの発現ピークは、参照時点から約12時間~約48時間の時点で到達される。
【0491】
本明細書中に記載される細胞培養物の実施形態は、E-カドヘリン(ECAD)遺伝子産
物の特定の一過性発現を有する細胞培養物にも関する。このような実施形態では、E-カドヘリンmRNAの発現は、参照時点から約12時間までにダウンレギュレートされ始める。他の実施形態では、E-カドヘリンmRNAの発現は、参照時点から約12時間未満までにダウンレギュレートされ得る。好ましい実施形態では、E-カドヘリンmRNAの発現は、参照時点から約48時間までに実質的にダウンレギュレートされる。
【0492】
本明細書中に記載されるさらなる実施形態は、SOX17及び/又はFOXA2マーカーを発現する細胞培養物に関する。いくつかの実施形態では、SOX17mRNAの発現は、参照時点から約48時間までに実質的にアップレギュレートされる。他の実施形態では、FOXA2 mRNAの発現は参照時点から約96時間までに実質的にアップレギュレートされる。
【0493】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態は、遺伝子発現の或る特定の特定化パターンを有する細胞を含む細胞培養物に関する。このような実施形態では、細胞培養物は、hESC、分化因子、例えばTGFβスーパーファミリーの分化因子、及び約2%(v/v)未満の血清を含有する培地を含む。代替的な実施形態では、培地は2%(v/v)より多い血清を含む。いくつかの実施形態では、培地は血清代替物を欠く。
【0494】
いくつかの実施形態では、細胞培養物が分化因子を提供される時点で、細胞培養物はすべての又はほとんどすべてのhESCを含む。分化の経過中、hESCの少なくとも一部分は、或る特定のマーカー遺伝子の産物(mRNA及び/又はポリペプチド)の発現により示されるように、他の細胞型に分化する。
【0495】
本明細書中に記載される細胞培養物のいくつかの実施形態では、第1の組のマーカー遺伝子の発現は、第2及び/又は第3の組のマーカー遺伝子のアップレギュレート前にアップレギュレートされる。いくつかの実施形態では、マーカー遺伝子の各組は、1つ又は複数のマーカー遺伝子を含み得る。遺伝子発現のアップレギュレートは、わずかなものから大幅なものまで様々であり得る。例えばマーカー遺伝子の発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも約10%アップレギュレートされ得る。他の実施形態では、マーカー遺伝子の発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約90%より多くアップレギュレートされ得る。さらに他の実施形態では、マーカー遺伝子発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、又は少なくとも約100倍より多くアップレギュレートされ得る。
【0496】
本明細書中に記載される細胞培養物の他の実施形態では、第1の組のマーカー遺伝子の発現は、第2及び/又は第3の組のマーカー遺伝子のアップレギュレート前に、ダウンレギュレートされる。このような実施形態では、各組のマーカー遺伝子は、1つ又は複数のマーカー遺伝子を含み得る。遺伝子発現のアップレギュレートに関する場合と同様に、ダウンレギュレートはわずかなものから大幅なものまで様々であり得る。例えばマーカー遺伝子の発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも約10%ダウンレギュレートされ得る。他の実施形態では、マーカー遺伝子の発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約90%より多くダウンレギュレートされ得る。さらに他の実施形態では、マーカー遺伝子発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、又は少なくとも約100倍より多くダウンレギュレートされ得る。
【0497】
本明細書中に記載される細胞培養物のさらに他の実施形態では、第1の組のマーカー遺伝子の発現は、第2の組及び/又は第3の組のマーカー遺伝子のピーク発現の前又はそれとほぼ同時にアップレギュレートされる。このような実施形態では、各組のマーカー遺伝子は、1つ又は複数のマーカー遺伝子を含み得る。他の実施形態では、第1の組のマーカー遺伝子の発現は、第2の組及び/又は第3の組のマーカー遺伝子の発現ピークの前又はそれとほぼ同時にダウンレギュレートされる。上記のように、このような実施形態では、各組のマーカー遺伝子は、1つ又は複数のマーカー遺伝子を含み得る。さらに、上記の実施形態では、遺伝子発現のアップレギュレート及びダウンレギュレートはともに、わずかなものから大幅なものまで様々であり得る。例えばマーカー遺伝子の発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも約10%アップレギュレートされるか又はダウンレギュレートされ得る。他の実施形態では、マーカー遺伝子の発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約90%より多くアップレギュレートされるか又はダウンレギュレートされ得る。さらに他の実施形態では、マーカー遺伝子発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、又は少なくとも約100倍より多くアップレギュレートされるか又はダウンレギュレートされ得る。
【0498】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、細胞培養物の少なくともいくつかの細胞中では、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現は、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレート前に、アップレギュレートされる。他の実施形態では、細胞培養物の少なくともいくつかの細胞中では、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現は、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現ピークの前に、アップレギュレートされる。さらに他の実施形態では、細胞培養物の少なくともいくつかの細胞中では、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現は、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現ピークの前又はそれとほぼ同時に、ダウンレギュレートされる。さらなる実施形態では、細胞培養物の少なくともいくつかの細胞中では、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現は、SOX17、FOXA2、CXCR4及びMIXL1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレート前に、アップレギュレートされる。さらに他の実施形態では、細胞培養物の少なくともいくつかの細胞中では、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現は、SOX17、FOXA2、CXCR4及びMIXL1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前又はそれとほぼ同時に、アップレギュレートされる。さらに他の実施形態では、細胞培養物の少なくともいくつかの細胞中では、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現ピークは、SOX17、FOXA2、CXCR4及びMIXL1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前又はそれとほぼ同時に、到達される。さらなる実施形態では、細胞培養物の少なくともいくつかの細胞中では、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現は、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレート前に、アップレギュレートされる。
【0499】
上記の1つ又は複数の一過性遺伝子発現パターンを有する細胞培養物のいくつかは、約2%(v/v)未満の血清を含有する培地を含む。いくつかの実施形態では、培地は血清を含有しない。他の実施形態では、培地は血清代替物を欠く。本明細書中に記載される細胞培養物中に用いられる培地のうちのいくつかは、約1.9%(v/v)未満、約1.8%(v/v)未満、約1.7%(v/v)未満、約1.6%(v/v)未満、約1.5%(v/v)未満、約1.4%(v/v)未満、約1.3%(v/v)未満、約1.2%(v/v)未満、約1.1%(v/v)未満、約1%(v/v)未満、約0.9%(v/v)未満、約0.8%(v/v)未満、約0.7%(v/v)未満、約0.6%(v/v)未満、約0.5%(v/v)未満、約0.4%(v/v)未満、約0.3%(v/v)未満、約0.2%(v/v)未満、約0.1%(v/v)未満又は約0.05%(v/v)未満の濃度で血清を含む。
【0500】
上記の1つ又は複数の一過性遺伝子発現パターンを有する細胞培養物のいくつかは、TGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの分化因子を含む。いくつかの実施形態では、成長因子は、ノーダル、アクチビンA及び/又はアクチビンBである。好ましい実施形態では、分化因子はアクチビンAである。さらに好ましい実施形態では、アクチビンAは、約100ng/mlの濃度で倍地中に存在する。
【0501】
しかしながら、TGFβスーパーファミリーの分化因子は、約1ng/ml~約1mg/mlの範囲の濃度で細胞培養物に供給され得る、と理解される。いくつかの実施形態では、TGFβスーパーファミリーの分化因子は、約5ng/ml、約25ng/ml、約50ng/ml、約75ng/ml、約100ng/ml、約125ng/ml、約150ng/ml、約175ng/ml、約200ng/ml、約225ng/ml、約250ng/ml、約275ng/ml、約300ng/ml、約325ng/ml、約350ng/ml、約375ng/ml、約400ng/ml、約425ng/ml、約450ng/ml、約475ng/ml、約500ng/ml、約525ng/ml、約550ng/ml、約575ng/ml、約600ng/ml、約625ng/ml、約650ng/ml、約675ng/ml、約700ng/ml、約725ng/ml、約750ng/ml、約775ng/ml、約800ng/ml、約825ng/ml、約850ng/ml、約875ng/ml、約900ng/ml、約925ng/ml、約950ng/ml、約975ng/ml、約1μg/ml、約2μg/ml、約3μg/ml、約4μg/ml、約5μg/ml、約6μg/ml、約7μg/ml、約8μg/ml、約9μg/ml、約10μg/ml、約11μg/ml、約12μg/ml、約13μg/ml、約14μg/ml、約15μg/ml、約16μg/ml、約17μg/ml、約18μg/ml、約19μg/ml、約20μg/ml、約25μg/ml、約50μg/ml、約75μg/ml、約100μg/ml、約125μg/ml、約150μg/ml、約175μg/ml、約200μg/ml、約250μg/ml、約300μg/ml、約350μg/ml、約400μg/ml、約450μg/ml、約500μg/ml、約550μg/ml、約600μg/ml、約650μg/ml、約700μg/ml、約750μg/ml、約800μg/ml、約850μg/ml、約900μg/ml、約950μg/ml、約1000μg/ml、又は約1000μg/mlより高い濃度で細胞培養物に供給される。
【0502】
或る特定の一過性マーカー遺伝子発現パターンを有する細胞を産生するためのhESCを分化する方法も、本明細書中で意図される。例えばいくつかの実施形態は、hESCを約2%未満の血清を含有する培地と接触させ、TGFβスーパーファミリーの分化因子をhESCに提供し、次にhESCの分化を起こさせることによるヒト胚性幹細胞(hESC)を分化する方法に関する。
【0503】
上記のhESC分化方法のいくつかの実施形態では、第1の組のマーカー遺伝子の発現は、第2及び/又は第3の組のマーカー遺伝子のアップレギュレート前にアップレギュレートされる。いくつかの実施形態では、マーカー遺伝子の各組は、1つ又は複数のマーカー遺伝子を含み得る。遺伝子発現のアップレギュレートは、わずかなものから大幅なものまで様々であり得る。例えばマーカー遺伝子の発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも約10%アップレギュレートされ得る。他の実施形態では、マーカー遺伝子の発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約90%より多くアップレギュレートされ得る。さらに他の実施形態では、マーカー遺伝子発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、又は少なくとも約100倍より多くアップレギュレートされ得る。
【0504】
本明細書中に記載されるhESCを分化する方法の他の実施形態では、第1の組のマーカー遺伝子の発現は、第2及び/又は第3の組のマーカー遺伝子のアップレギュレート前に、ダウンレギュレートされる。このような実施形態では、各組のマーカー遺伝子は、1つ又は複数のマーカー遺伝子を含み得る。遺伝子発現のアップレギュレートに関する場合と同様に、ダウンレギュレートはわずかなものから大幅なものまで様々であり得る。例えばマーカー遺伝子の発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも約10%ダウンレギュレートされ得る。他の実施形態では、マーカー遺伝子の発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約90%より多くダウンレギュレートされ得る。さらに他の実施形態では、マーカー遺伝子発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、又は少なくとも約100倍より多くダウンレギュレートされ得る。
【0505】
本明細書中に記載されるhESC分化方法のさらに他の実施形態では、第1の組のマーカー遺伝子の発現は、第2の組及び/又は第3の組のマーカー遺伝子のピーク発現の前又はそれとほぼ同時にアップレギュレートされる。このような実施形態では、各組のマーカー遺伝子は、1つ又は複数のマーカー遺伝子を含み得る。他の実施形態では、第1の組のマーカー遺伝子の発現は、第2の組及び/又は第3の組のマーカー遺伝子の発現ピークの前又はそれとほぼ同時にダウンレギュレートされる。上記のように、このような実施形態では、各組のマーカー遺伝子は、1つ又は複数のマーカー遺伝子を含み得る。さらに、上記の実施形態では、遺伝子発現のアップレギュレート及びダウンレギュレートはともに、わずかなものから大幅なものまで様々であり得る。例えばマーカー遺伝子の発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも約10%アップレギュレートされるか又はダウンレギュレートされ得る。他の実施形態では、マーカー遺伝子の発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約90%より多くアップレギュレートされるか又はダウンレギュレートされ得る。さらに他の実施形態では、マーカー遺伝子発現は、未分化hESC中の同一マーカー遺伝子の発現と比較して、少なくとも2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、又は少なくとも約100倍より多くアップレギュレートされるか又はダウンレギュレートされ得る。
【0506】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、細胞培養物の少なくともいくつかの細胞中では、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現は、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレート前に、アップレギュレートされる。他の実施形態では、細胞培養物の少なくともいくつかの細胞中では、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現は、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現ピークの前に、アップレギュレートされる。さらに他の実施形態では、細胞培養物の少なくともいくつかの細胞中では、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現は、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現ピークの前又はそれとほぼ同時に、ダウンレギュレートされる。さらなる実施形態では、細胞培養物の少なくともいくつかの細胞中では、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現は、SOX17、FOXA2、CXCR4及びMIXL1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレート前に、アップレギュレートされる。さらに他の実施形態では、細胞培養物の少なくともいくつかの細胞中では、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現は、SOX17、FOXA2、CXCR4及びMIXL1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前又はそれとほぼ同時に、アップレギュレートされる。さらに他の実施形態では、細胞培養物の少なくともいくつかの細胞中では、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子のピーク発現は、SOX17、FOXA2、CXCR4及びMIXL1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレートの前又はそれとほぼ同時に、到達される。さらなる実施形態では、細胞培養物の少なくともいくつかの細胞中では、FGF8、ノーダル、HEG、HEY1、GATA2、BIK及びID1から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現は、ブラキュリ、FGF4、SNAI1、Wnt3、MIXL1、DKK4、NETO1、T、DACT1、FLJ22662、SLIT2、GAD1及びGRM4から成る群から選択されるマーカー遺伝子の発現のアップレギュレート前に、アップレギュレートされる。
【0507】
本明細書中に記載される分化方法のいくつかの実施形態では、細胞培養物の細胞が、約2%(v/v)未満の血清を含有する培地と接触されるか、又は他の方法でこれを与えられる。いくつかの実施形態では、培地は血清を含有しない。他の実施形態では、培地は血清代替物を欠く。本明細書中に記載される方法で用いられる培地のうちのいくつかは、約1.9%(v/v)未満、約1.8%(v/v)未満、約1.7%(v/v)未満、約1.6%(v/v)未満、約1.5%(v/v)未満、約1.4%(v/v)未満、約1.3%(v/v)未満、約1.2%(v/v)未満、約1.1%(v/v)未満、約1%(v/v)未満、約0.9%(v/v)未満、約0.8%(v/v)未満、約0.7%(v/v)未満、約0.6%(v/v)未満、約0.5%(v/v)未満、約0.4%(v/v)未満、約0.3%(v/v)未満、約0.2%(v/v)未満、約0.1%(v/v)未満又は約0.05%(v/v)未満の濃度で血清を含む。
【0508】
上記の一過性遺伝子発現パターンを生成するためのhESC分化方法のいくつかは、hESC等の培養中の細胞に、TGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの分化因子を与えることを含む。いくつかの実施形態では、成長因子は、ノーダル、アクチビンA及び/又はアクチビンBである。好ましい実施形態では、分化因子はアクチビンAである。さらに好ましい実施形態では、アクチビンAは、約100ng/mlの濃度で倍地中に存在する。
【0509】
しかしながら、TGFβスーパーファミリーの分化因子は、約1ng/ml~約1mg/mlの範囲の濃度で細胞培養物に供給され得る、と理解される。いくつかの実施形態では、TGFβスーパーファミリーの分化因子は、約5ng/ml、約25ng/ml、約50ng/ml、約75ng/ml、約100ng/ml、約125ng/ml、約150ng/ml、約175ng/ml、約200ng/ml、約225ng/ml、約250ng/ml、約275ng/ml、約300ng/ml、約325ng/ml、約350ng/ml、約375ng/ml、約400ng/ml、約425ng/ml、約450ng/ml、約475ng/ml、約500ng/ml、約525ng/ml、約550ng/ml、約575ng/ml、約600ng/ml、約625ng/ml、約650ng/ml、約675ng/ml、約700ng/ml、約725ng/ml、約750ng/ml、約775ng/ml、約800ng/ml、約825ng/ml、約850ng/ml、約875ng/ml、約900ng/ml、約925ng/ml、約950ng/ml、約975ng/ml、約1μg/ml、約2μg/ml、約3μg/ml、約4μg/ml、約5μg/ml、約6μg/ml、約7μg/ml、約8μg/ml、約9μg/ml、約10μg/ml、約11μg/ml、約12μg/ml、約13μg/ml、約14μg/ml、約15μg/ml、約16μg/ml、約17μg/ml、約18μg/ml、約19μg/ml、約20μg/ml、約25μg/ml、約50μg/ml、約75μg/ml、約100μg/ml、約125μg/ml、約150μg/ml、約175μg/ml、約200μg/ml、約250μg/ml、約300μg/ml、約350μg/ml、約400μg/ml、約450μg/ml、約500μg/ml、約550μg/ml、約600μg/ml、約650μg/ml、約700μg/ml、約750μg/ml、約800μg/ml、約850μg/ml、約900μg/ml、約950μg/ml、約1000μg/ml、又は約1000μg/mlより高い濃度で細胞培養物に供給される。
【0510】
本発明を一般的に記載してきたが、例証の目的のためにのみ本明細書中に提供され、限定的であるよう意図されない或る特定の特定の実施例を参照することによりさらなる理解が得られる。
【実施例
【0511】
以下の実施例の多くは、多能性ヒト細胞の使用を記載する。多能性ヒト細胞を産生する方法は、当該技術分野で既知であり、多数の科学出版物、例えば米国特許第5,453,357号、第5,670,372号、第5,690,926号、第6,090,622号、第6,200,806号及び第6,251,671号、並びに米国特許出願公開第2004/0229350号に記載されている(これらの開示内容は全体が参照により本明細書中に完全に援用される)。
【0512】
[実施例1]
ヒトES細胞
初期発達についてのわれわれの研究のために、多能性であり、そして正常核型を保持しながら培養中に外見上無限に分裂し得るヒト胚性幹細胞を用いた。単離のために免疫学的又は機械的方法を用いて、5日齢胚内部細胞塊からES細胞を得た。特にヒト胚性幹細胞株hESCyt-25を、患者によるインフォームドコンセント後に、invitro受精サイクルからの過剰凍結胚から得た。解凍時に、ES培地(DMEM、20%FBS、非必須アミノ酸、β-メルカプトエタノール、ITSサプリメント)中のマウス胚線維芽細胞(MEF)上に孵化胚盤胞をプレート化した。胚が培養皿に接着し、そして約2週間後、未分化hESCの領域を、MEFとともに新たな皿に移した。機械的に切断し、ディスパーゼで手短に消化し、その後、細胞クラスターを機械的に取り出して、洗浄し、再プレート化することにより移動を成し遂げた。誘導以来、hESCyt-25を、100回にわたって逐次継代した。胚体内胚葉の産生のための出発物質として、hESCyt-25ヒト胚性幹細胞株を用いた。
【0513】
幹細胞又は他の多能性細胞は本明細書中に記載される分化手法のための出発物質としても用いられ得る、と当業者により理解される。例えば当該技術分野で既知の方法により単離され得る胚性生殖隆起から得られる細胞は、多能性細胞出発物質として用いられ得る。
【0514】
[実施例2]
hESCyt-25特徴づけ
ヒト胚性幹細胞株hESCyt-25は、培養中に18ヶ月にわたって、正常形態学、核型、増殖及び自己再生特性を保持した。この細胞株は、OCT4、SSEA-4及びTRA-1-60抗原(これらはすべて、未分化hESCに特有である)に対する強免疫反応性を示し、そしてアルカリ性ホスファターゼ活性、並びに他の確立されたhESC株と同一の形態学を示す。さらにヒト幹細胞株hESCyt-25は、懸濁液中で培養される場合、胚様体(EB)も容易に形成する。その多能性の実証として、hESCyT-25は、3つの主要胚葉を表わす種々の細胞型に分化する。ZIC1に関するQ-PCR、並びにネスチン及びより成熟したニューロンマーカーに関する免疫細胞化学(ICC)により、外胚葉産生を実証した。β-IIIチューブリンに関する免疫細胞化学染色を、初期ニューロンに特徴的な伸長細胞のクラスター中で観察した。予め、レチノイン酸で懸濁液中のEBを処理して、臓側内胚葉(VE)、胚体外系統への多能性幹細胞の分化を誘導した。処理細胞は、高レベルのα-フェトタンパク質(AFP)及びSOX7(VEの2つのマーカー)を54時間の処理により発現した。単層中で分化された細胞は、免疫細胞化学染色により実証されるように、散在性パッチ中でAFPを発現した。以下で記載するように、hESCyT-25細胞株は、AFP発現の非存在下でのSOX17に関する実時間定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q-PCR)及び免疫細胞化学により立証されるように、胚体内胚葉も形成し得た。中胚葉への分化を実証するために、分化中のEBを、いくつかの時点でのブラキュリ遺伝子発現に関して分析した。ブラキュリ発現は、実験経過中に漸進的に増大した。上記に鑑みて、三胚葉を表わす細胞を形成する能力により示されるように、hESCyT-25株は多能性である。
【0515】
[実施例3]
胚体内胚葉細胞
2004年12月23日に出願された胚体内胚葉(DEFINITIVE ENDODERM)という表題の同時係属中の共有米国特許第11/021,618号は、ヒト胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物及び富化細胞集団を記載する。そこには、分化因子の存在下での分化によるhESCからの胚体内胚葉を産生する方法、並びに混合細胞培養物及び/又は細胞集団からこれらの胚体内胚葉細胞を富化、単離及び/又は精製するための方法も記載されている。さらにそこには、胚体内胚葉細胞の同定及び/又は検出のために有用であるマーカー、並びにこのような細胞の精製に有用なマーカーが記載されている。2004年12月23日に出願された胚体内胚葉(DEFINITIVE ENDODERM)という表題の米国特許出願第11/021,618号の開示内容は、全体が参照により本明細書中に完全に援用される。
【0516】
本実施例は、上記の同時係属中特許出願から再生される胚体内胚葉細胞の検出及び/又は同定のための有用なマーカーを記載する。
【0517】
以下の実験において、精製された胚体内胚葉及びヒト胚性幹細胞集団からRNAを単離した。次に、各精製された集団からのRNAの遺伝子チップ分析により、遺伝子発現を分析した。胚体内胚葉に関するマーカーとして、胚体内胚葉中で発現されるが胚性幹細胞中では発現されない遺伝子のポテンシャルをさらに検査するために、Q-PCRも実施した。
【0518】
20%ノックアウト血清代替物、4ng/mlの組換えヒト塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、0.1mMの2-メルカプトエタノール、L-グルタミン、非必須アミノ酸及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM/F12培地中に、ヒト胚性幹細胞(hESC)を保持した。100ng/mlの組換えヒトアクチビンA、ウシ胎仔血清(FBS)及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI倍地中で5日間培養することにより、hESCを胚体内胚葉に分化させた。FBSの濃度を以下のように日毎に変更した:0.1%(1日目)、0.2%(2日目)、2%(3~5日目)。
【0519】
遺伝子発現分析のためのhESC及び胚体内胚葉の精製された集団を得るために、蛍光標示式細胞分取器(FACS)により細胞を単離した。SSEA4抗原(R&D Systems、カタログ番号FAB1435P)を用いてhESCに関して、そしてCXCR4(R&D Systems、カタログ番号FAB170P)を用いて、胚体内胚葉に関して、免疫精製を達成した。細胞を、トリプシン/EDTA(Invitrogen、 カタログ番号25300-054)を用いて解離し、2%ヒト血清を含有するリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄し、氷上で10分間、100%ヒト血清中に再懸濁して、非特異的結合を遮断した。800μlのヒト血清中の5×106細胞に200μlのフィコエリスリン接合抗体を添加することにより、氷上で30分間、染色を実行した。細胞をPBS緩衝液8mlで2回洗浄し、同一緩衝液1ml中に再懸濁した。FACSバンテージ(BD Biosciences)を用いて、The Scripps ResearchInstituteの中心設備により、FACS単離を実行した。細胞をRLT溶解緩衝液中に直接収集し、メーカーの使用説明書(Qiagen)に従ってRNeasyによりRNAを単離した。
【0520】
Affymetrixプラットホーム及びU133プラス2.0高密度オリゴヌクレオチドアレイを用いて、発現プロファイルデータの生成のために、精製されたRNAを反復実験で発現分析(Durham, NC)に付した。提示されるデータは、2つの集団、hESC及び胚体内胚葉間で差動的に発現される遺伝子を同定する群比較である。hESCにおいて見出されるものを上回る発現レベルで強い上方変化を示した遺伝子を、胚体内胚葉に非常に特有の新規の候補マーカーとして選択した。上記のようにQ-PCRにより選択遺伝子を検定して、遺伝子チップ上に見出される遺伝子発現変化を立証し、そしてhESC分化の時間経過中のこれらの遺伝子の発現パターンも調査した。
【0521】
図2A図2Mは、或る特定のマーカーに関する遺伝子発現結果を示す。100ng/mlアクチビンAの添加後1、3及び5日目に分析された細胞培養物、5日間分化手法の終了時に精製されたCXCR4発現胚体内胚葉細胞(CXDE)に関する、そして精製hESCにおける結果を示す。図2C及び図2G図2Mの比較は、6つのマーカー遺伝子FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1が、互いにほとんど同一であり、そしてCXCR4の発現パターン並びにSOX17/SOX7の比とも同一である発現パターンを示した、ということを実証する。上記のように、SOX17は、胚体内胚葉並びにSOX7発現胚体外内胚葉の両方で発現された。SOX7は胚体内胚葉中で発現されなかったため、SOX17/SOX7の比は、全体としての集団中で見られるSOX17発現に対する胚体内胚葉の寄与の信頼できる概算を提供する。パネルG-L及びMとパネルCとの類似性は、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1が胚体内胚葉のマーカーであること、そしてそれらが胚体外内胚葉細胞中で有意に発現されない、ということを示す。
【0522】
本明細書中に記載されるQ-PCR結果はICCによりさらに確証され得る、と理解される。
【0523】
[実施例4]
胚体内胚葉前駆体細胞における遺伝子発現の時系列
胚体内胚葉への分化中に起こる遺伝子発現のダイナミクスを査定するために、2つの異なる4日間分化プロトコール中の種々の時点での分化中の細胞培養物において、多数の遺伝子の発現をモニタリングした。
【0524】
具体的には、最初の24時間はFBSの非存在下で、2回目の24時間には0.2%(v/v)FBS中で、そして3及び4日目には2%(v/v)FBS中で、hESCを培養して、胚体内胚葉への分化を誘導するために100ng/mlのアクチビンAに連続曝露するか、又は栄養外胚葉(TE)及び原始内胚葉(PrE)の混合細胞集団への分化を誘導するために100ng/mlのBMP4及び2.5μMのFGFR1阻害剤、SU5402に連続曝露した。分化手法中の種々の時点で遺伝子発現を測定することにより、このような培養物における遺伝子発現のダイナミクスを測定した。特に、分化因子の添加の時点、並びにこれらの因子の添加後6時間、12時間、24時間、48時間、72時間及び96時間で、Q-PCRにより遺伝子発現を測定した。いくつかの異なるマーカー遺伝子に関するこの時間経過中の遺伝子発現プロファイルを、図3A図3Lに示す。
【0525】
図3Aは、FGF8の発現が、アクチビンAでの処理後6時間以内にほぼその最大レベルに増大したことを示す。FGF8発現は約24時間高いままであり、次にその後、減少し
始めた。BMP4/SU5402による処理は、FGF8発現のレベルの非常に少ない変化を引き起こした(図3A)。これらの結果は、アクチビンAがFGF8発現細胞へのhESCの迅速な移行を媒介する、ということを実証する。FGF8発現は原外胚葉における後方パターン形成の第一指標の1つであるので、分化中のhESCにおけるFGF8の急速なアップレギュレートは、これらの初期段階の細胞がhESC細胞型から分化して、「前線条」(前原始線条)細胞集団を形成した、ということを示す。
【0526】
図3B図3Fに示したように、或る特定の原始線条(中内胚葉)マーカー、例えばブラキュリ、FGF4、SNAI1、MIXL1及びGSCの誘導は、アクチビンAによる処理後約6時間で開始した。しかしながらFGF8誘導と対比して、これらのマーカーの発現は増大し続け、そしてアクチビンAの添加後約24時間で、又はいくつかの場合には48時間で最大レベルに達した。原始線条マーカーのいずれかの発現増大は、BMP4/SU5402処理培養物ではほとんど又は全く認められなかった(図3B図3F)。さらに、胚体内胚葉細胞中では発現されないブラキュリ及びFGF4の発現レベルは、アクチビンA処理後48~72時間までに、hESCレベルに又はそれより低いレベルに、非常に急速にダウンレギュレートされた(図3B図3C)。逆に、SNAI1、MIXL1及びGSCは48~96時間で有意に発現され続けた(図3D図3F)。
【0527】
アクチビンAによる処理後約72時間で、SOX17は強いアップレギュレートを示し、これは原始線条(中内胚葉)中間体から胚体内胚葉細胞最終形への移行と一致する(図3G)。SOX17発現のこのようなアップレギュレートは、BMP4/SU5402処理細胞培養物では生じなかった(図3G)。
【0528】
アクチビンA処理in vitro細胞培養物に関して直前に記載した遺伝子発現のこの時系列は、初期脊椎動物原腸形成で起こる事象を模倣し、したがってhESCがこの分化プロセス中に類似の中間体を介して移行中である、ということを示唆する。
【0529】
胚体内胚葉をもたらす上記の事象順序に加えて、図3H図3Lは、約24~48時間で、栄養外胚葉及び原始内胚葉マーカー、例えばHCG、DAB2、SOX7、CHRD及びE-カドヘリン(ECAD)の強固なアップレギュレートがBMP4/SU5402で処理した細胞中で開始した、ということを示す。これらのマーカーのアップレギュレートは、72~96時間継続した。逆に、HCG、DAB2、SOX7、CHRD又はE-カドヘリンのアップレギュレートは、100ng/mlアクチビンAに曝露された細胞培養物中では生じなかった(図3H図3L)。これらの結果は、hESCが適切な条件下で栄養外胚葉及び原始内胚葉に分化する能力を有する、ということを示すが、しかしながらこれらの系統への分化はアクチビン処理培養物中では有意程度には起きなかった。
【0530】
[実施例5]
ヒト胚性幹細胞上皮-間充織転換
脊椎動物原腸形成中、原始線条での上皮-間充織転換(EMT)を受けている原外胚葉細胞は、細胞表面でのE-カドヘリンタンパク質の発現パターンを変える。FGF及びTGFβシグナル伝達の複合作用は、E-カドヘリンの直接転写抑制因子であるジンクフィンガー転写因子SNAI1を誘導するのに役立つ。本実施例は、原腸形成中にinvivoで起こるEMTにおけるのとまさに同様に、in vitroでアクチビン曝露hESC培養物の初期分化段階中に、E-カドヘリンの転写が抑制される、ということを示す。
【0531】
0.1%(v/v)FBSを含有するRMPI培地中で、100ng/mlアクチビンAの存在下で2日間、ヒト胚性幹細胞培養物を分化させた。Q-PCR及び/又は免疫細胞化学を用いて、或る特定のマーカー遺伝子の発現を測定した。図4A図4Cは、それぞれブラキュリ、E-カドヘリン及びSNAI1mRNAのQ-PCR測定発現を示す。免
疫細胞化学を用いて、ブラキュリ、E-カドヘリン及び活性化(非リン酸化)B-カテニンの発現を測定した。
【0532】
上記のように、培養中のアクチビン曝露前原始線条細胞は、アクチビン曝露の約24時間後に原始線条(中内胚葉)細胞に分化した(実施例4及び図7)。図4A図4Cの比較は、ブラキュリ及びSNAI1mRNAレベルがともに、約24時間でピークに達した、ということを示す。発現における同様のピークは、FGF4 mRNAに関して観察された(図3C)。この時間中のブラキュリ発現に関連して、E-カドヘリンmRNAの発現は減少しつつあり、そしてアクチビンA処理の開始後48時間までに3分の1以下に減少し続けた(図4B)。アクチビン曝露後12時間までに、E-カドヘリンmRNAレベルが分化中細胞培養物におけるそれらの最初のレベルから約33%低下した場合、コロニーの周辺のブラキュリ陽性細胞中のE-カドヘリンの特徴的頂端細胞表面免疫局在化(粘着性接合部に関与すると思われる)の同時消失が認められた。24時間後、ブラキュリ発現細胞の数が増大すると、ブラキュリ陽性細胞中の接合部関連E-カドヘリンの損失はより強くなった。さらに、細胞の形態は、12時間及び24時間の両方でのDAPI及びブラキュリ染色核の形態における差により立証されるように、低均一に見えたが、このことは、EMTの出現をさらに支持する。
【0533】
上記の遺伝子発現に加えて、胚体内胚葉に分化したhESCとして、β-カテニンの細胞内局在化を決定した。非リン酸化(Ser7及びThr41)形態のβ-カテニンのみを認識する抗体を用いて、このタンパク質は未分化hESC中の細胞質表面でのみ局在化される、ということを見出した。アクチビン処理後17時間までに、核及び膜結合β-カテニンの両方を、ブラキュリ陰性及びブラキュリ発現細胞の両方で検出した。さらに、ウエスタンブロット分析は、分化中であるがしかし未分化の細胞の可溶性膜排除タンパク質分画中のβ-カテニンの存在を確証した。これらの結果は、β-カテニンの核局在化がブラキュリタンパク質発現より前に起こるという仮説と一致する。さらに、総合すれば、アクチビン曝露細胞培養物中では、原始線条様状態が発達すると、古典的EMTが生じるが、この場合、活性化β-カテニンはブラキュリタンパク質の発現の前に核に場所を移し、そして細胞間の上皮境界での粘着性接合部の分解と同時に起こる、ということを上記のデータは示唆する。
【0534】
[実施例6]
胚体内胚葉への中内胚葉の分化
本実施例は、胚体内胚葉に分化する中内胚葉前駆体細胞の応答能を実証する。
【0535】
0.1%(v/v)FSBの血清濃度を有するRPMI培地中で、100ng/mlアクチビンAの存在下で2日間、ヒト胚性幹細胞培養物をインキュベートした。図5Aに示したように、ブラキュリmRNA発現は、約24時間でピークに達した。これと同時に、SOX17遺伝子の発現が増大し始めた(図5B)。約48時間までに、ブラキュリmRNA発現はベースラインレベルに戻り(図5A)、そしてSOX17がベースラインを約18倍上回って発現された(図5B)。7より多くの個々の実験で立証されたこれらの結果は、ブラキュリ発現中内胚葉細胞が、アクチビン処理後約36~48時間でSOX17発現胚体内胚葉への転換を開始する、という仮説と一致する。
【0536】
上記の仮説の妥当性を実証するために、ブラキュリ及びSOX17マーカーの免疫細胞化学ベースの分析を実施した。ブラキュリタンパク質発現に関する時間経過は、12時間でほとんどの大型コロニーの周辺部で開始し、そして36~48時間までにコロニーの内部に急速に広がった免疫反応性細胞の出現を示す。これらの後の時間に、培養物中の細胞の大多数がブラキュリタンパク質に関して陽性であった。このようなものとして、ブラキュリタンパク質発現パターンは、図5Aに示したブラキュリmRNA発現のピークに関連し
て12~24時間までに遅延された。分化の48時間後、SOX17mRNA及びタンパク質発現が急速に増大しつつあり、そしてブラキュリ発現が急速に減少しつつあった場合、SOX17陽性細胞のほとんどがブラキュリを同時発現した(図6A図6D)。これらのデータは、100ng/mlのアクチビン及び低血清の存在下で、大多数のSOX17陽性細胞がブラキュリ陽性中内胚葉細胞に由来した、ということを明らかに実証する。さらに、これらの知見は、ヒト発達における中内胚葉中間体の存在を高度に示唆する。さらに、ブラキュリ発現は発達中の任意の時点で原始内胚葉系統の細胞中で起きないため、これらの知見は最終的に、アクチビン産生内胚葉の決定的性質を立証する。
【0537】
[実施例7]
中内胚葉細胞からの中胚葉及び胚体内胚葉の形成
上記の実施例に加えて、本明細書中に記載される中内胚葉中間体が中胚葉又は胚体内胚葉細胞への分化を受け得る、ということを実証するために実験を実行した。
【0538】
図7は、この実施例に用いた実験計画及び培養条件を示す。具体的には、2つの並行hESCをRPMI培地中で4日間培養した。実施例4の場合と同様に、第1日目は0%(v/v)FBS、第2日目には0.2%(v/v)FBS、そして第3及び4日目には2%(v/v)FBSを含有するよう、この培地の血清濃度を調整した。並行培養物の各々において、最初の24時間、100ng/mlの濃度で、アクチビンAを培地中に供給した。この時間の終了時に、アクチビンAを並行培養物の一方から除去し(NF)、そして他方の培養物中では保持した(A100)。
【0539】
図8A図8Fは、高アクチビン及び低FBS条件下で、中胚葉マーカーであるブラキュリ、MOX1、FOXF1、FLK1、BMP4及びSDF1に関する発現の欠如が認められたことを示す。これらの結果は、ブラキュリ/FGF4/MIXL1発現中内胚葉細胞が、高アクチビンA条件下で、中胚葉にというよりむしろ胚体内胚葉の産生に向けてパターン化された、ということを実証する。これは、全4日間の期間中にアクチビンで処理された培養物中の胚体内胚葉マーカー、GSC、SOX17及びFOXA2の強い発現によっても実証された(図9A図9C)。逆に、より低いノーダル/アクチビンシグナル伝達をシミュレートする24時間でのアクチビンAの除去は、胚体内胚葉遺伝子発現の劇的な損失(図9A図9C)を、中胚葉特質の劇的な獲得(図8A図8F)と同時に生じた。
【0540】
[実施例8]
0.5%血清を含有する培地中での胚体内胚葉産生
胚体内胚葉細胞の産生に及ぼす血清低減の作用をさらに実証するために、hESCを、種々の血清濃度を含有する培地中で胚体内胚葉細胞に分化させた。
【0541】
10%(v/v)FBS、2%(v/v)FBS又は0.5%(v/v)FBSの存在下で、100ng/mlアクチビンAを含有するRPMI培地中で5日間、ヒト胚性幹細胞を培養した。アクチビンAを含有しない対照細胞培養物も、3つの試験血清レベルの各々で確立した。これらの培養物の各々に関して、Q-PCRにより、いくつかのマーカー遺伝子の発現を測定した(図10A図10I)。さらに、これらの培養物中の細胞により産生されるSOX17タンパク質の量を、本明細書中に上記したSOX17に対する抗体を用いて免疫細胞化学により測定した。
【0542】
図10A図10Iは、FBSの種々の濃度での或る特定の胚体内胚葉マーカー遺伝子の発現を示す。特に図10A図10Dは、アクチビンAで処理した細胞培養物中の血清濃度の低減は、胚体内胚葉陽性マーカー、SOX17、GSC、MIXL1及びFOXA2に対応するmRNAの産生の実質的増大を生じた、ということを示す。mRNA発現がア
クチビンAに応答して減少されるマーカー(非胚体内胚葉細胞型のマーカー、例えばブラキュリ、MOX1、SOX7、SOX1及びZIC1)の場合、血清濃度の低減はこれらのマーカーに対応するmRNAの産生の実質的低減を生じた(図10E図10I)。
【0543】
SOX17に対する抗体を用いて、免疫細胞化学により、血清濃度の各々で胚体内胚葉細胞に転換されるhESCの相対的割合を測定した。0.5%FBS中の100ng/mlアクチビンA中での分化の5日後、SOX17陽性細胞の割合は80%より大きく(>3の別個の実験)、並びにそれぞれVE/PE及び栄養外胚葉(TE)のマーカーであるα-フェトタンパク質(AFP)又はトロンボモジュリン(THBD)の検出可能な免疫反応性は認められなかった。SOX17mRNA発現の増大とこれらの条件全体のSOX17免疫反応性細胞の数の増大との間の相関は、相対的遺伝子発現測定値が集団内のSOX17陽性細胞数の合理的測定値でもある、ということを示す。
【0544】
[実施例9]
SOX17発現のアップレギュレートはFOXA2発現のアップレギュレートに先行する本実施例は、胚体内胚葉へのhESCのアクチビン媒介性分化において、SOX17mRNA発現はFOXA2 mRNA発現の前にアップレギュレートされる、ということを実証する。
【0545】
実施例4に上記したように、アクチビンA及び低血清の存在下で4日間、RPMI培地中でヒト胚性幹細胞を培養した。SOX17及びFOXA2mRNAの発現を、Q-PCRにより測定した。
【0546】
図11Aに示したように、SOX17 mRNA発現は、アクチビン添加後約48時間に開始して実質的に増加した。FOXA2 mRNAに関する発現の同様の実質的増大は、アクチビンA添加後約96時間まで観察されなかった。これらの結果は、胚体内胚葉の産生と一致したが、中軸中胚葉とは一致しなかった(図9A図9Cも参照)。しかしながらこれらの結果は、FOXA2発現がSOX17の発現に先行する場合の、アクチビンとともにインキュベートされたマウス胚様体中でのSOX17及びFOXA2の一過性発現と対照を成す。このようなものとして、マウス胚様体系は、胚体内胚葉というよりむしろ中軸中胚葉の産生に関して最適化される、と思われる。
【0547】
[実施例10]
8つの異なるhESC株中での胚体内胚葉の産生
本実施例は、本明細書中に記載される方法を用いて、8つの独立して得られたhESC株から胚体内胚葉細胞が産生され得る、ということを示す。
【0548】
低血清RPMI培地中で100ng/mlのアクチビンAの存在下で5日間、8つの異なるhESC株(CyT25、CyT-DM3、BG01、BG02、BG03、H7、H9及びHUES7)を別々に培養した。具体的には、RPMI培地は、1日目に0%(v/v)FBS、2日目に0.2%(v/v)FBS、そして3~5日目に2%(v/v)FBSを含有した。
【0549】
8つの細胞株は各々、SOX17/CXCR4陽性胚体内胚葉細胞に分化した。
【0550】
[実施例11]
マウス腎臓被膜下のヒト胚体内胚葉細胞の移植
本明細書中に記載される方法を用いて産生されたヒト胚体内胚葉細胞が、腸管由来細胞を産生するよう分化因子に応答し得ることを実証するために、このようなヒト胚体内胚葉細胞をinvivo分化プロトコールに付した。
【0551】
ヒト胚体内胚葉細胞を、上記実施例に記載されたように産生した。このような細胞を収穫し、標準手法を用いて免疫無防備状態マウスの腎臓被膜下に移植した。3週間後、マウスを屠殺し、移植組織を取り出して、切片にして、組織学的解析及び免疫細胞化学的解析に付した。
【0552】
図12A図12Dは、移植後3週間目に、ヒト胚体内胚葉細胞は腸管由来の細胞及び細胞構造物に分化した、ということを示す。特に図12Aは、腸管様構造物に分化した移植ヒト胚体内胚葉組織のヘマトキシリン及びエオシン染色切片を示す。図12Bは、肝細胞特異的抗原(HSA)に対する抗体で免疫染色した移植ヒト胚体内胚葉切片を示す。この結果は、ヒト胚体内胚葉細胞が肝臓又は肝臓前駆体細胞に分化し得る、ということを示す。図12C及び図12Dはそれぞれ、ビリンに対する抗体及び尾型ホメオボックス転写因子2(CDX2)に対する抗体で免疫染色した移植ヒト胚体内胚葉切片を示す。これらの結果は、ヒト胚体内胚葉細胞が腸細胞又は腸細胞前駆体に分化し得る、ということを示す。
【0553】
[実施例12]
FGF8プロモーター-EGFP及びブラキュリプロモーター-EGFPトランスジェニックヒト胚性幹細胞株の生成
細胞単離のためにFGF8及びブラキュリマーカーを使用するために、発現可能レポーター遺伝子と融合されたFGF8又はブラキュリ遺伝子プロモーターを有するhESCを構築する。特に本実施例は、FGF8調節領域の制御下のレポーター遺伝子を含むレポーターカセットを含むベクターの構築を記載する。さらに、ブラキュリ調節領域の制御下のレポーター遺伝子を含むレポーターカセットを含むベクターの構築が記載される。本実施例は、1つ又は複数のこれらのベクターでトランスフェクトされた細胞、例えばヒト胚性幹細胞、並びにそのゲノム中に組み込まれたこれらのレポーターカセットのこの一方又は両方を有する細胞の調製も記載する。
【0554】
ぞれぞれFGF8遺伝子又はブラキュリ遺伝子の調節領域(プロモーター)の制御下にGFPレポーター遺伝子を置くことにより、レポーター遺伝子で遺伝子標識されたFGF8発現前原始線条細胞株及びブラキュリ発現中内胚葉細胞株を構築する。まず、ベクターpEGFP-N1(Clonetech)のCMVプロモーターをヒトFGF8又はブラキュリ制御領域で置き換えることにより、EGFP発現がヒトFGF8又はブラキュリ遺伝子プロモーターにより駆動されるプラスミド構築物を生成する。これらの制御領域はFGF8又はブラキュリ遺伝子の特性化調節素子を含有し、そしてそれらはトランスジェニックマウスにおけるこれらの遺伝子の正常発現パターンを付与するのに十分である。その結果生じるベクターでは、EFGPの発現はFGF8プロモーター又はブラキュリプロモーターにより駆動される。いくつかの実験では、このベクターはhESC中にトランスフェクトされ得る。
【0555】
FGF8プロモーター/EGFPカセット又はブラキュリプロモーター/EGFPカセットを上記ベクターから切り出して、次に、ホスホグリセレートキナーゼ-1プロモーターの制御下でネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子を含有する選択ベクター中にサブクローニングする。flpリコンビナーゼ認識部位を選択カセットに隣接させて、カセットを除去させる。この選択ベクターを線状化し、次に、標準リポフェクション方法を用いてhESC中に導入する。G418における選択の10~14日後に、未分化トランスジェニックhESCクローンを単離し、展開する。
【0556】
FGF4又はSNAI1プロモーターの制御下のGFP又はEGFPレポーター遺伝子を含有するベクターも構築され得る、と理解される。さらに、上記の構築物のいずれかにお
いてGFP又はEGFP以外のレポーター遺伝子を用い得るが、但しレポーターはFACSにより細胞分離を可能にする、と理解される。
【0557】
[実施例13]
前原始線条細胞に富んだ細胞集団の産生
以下の実施例は、FGF8プロモーター/EGFPカセットを含むhESCが前原始線条細胞に分化し、次にその後、蛍光標示式細胞分取器(FACS)により単離し得る、ということを実証する。
【0558】
100ng/mlのアクチビンAを含有し、血清を含有しない増殖培地中で約6、12及び18時間、FGF8プロモーター/EGFPトランスジェニックhESCを分化させる。次に分化細胞をトリプシン消化により収穫し、ベクトン・ディッキンソンFACSDivaで直接的にRNA溶解緩衝液又はPBS中に選別する。単一生細胞の試料をEGFPに対するゲーティングを伴わずに採取し、そして単一生細胞をEGFP陽性及びGFP陰性集団中に選び出す。別個の実験では、蛍光強度(高及び低)によって、EGFP陽性分画を2つの等サイズの集団に分離する。
【0559】
選別後、Q-PCR及び免疫細胞化学の両方により、細胞集団を分析する。Q-PCR分析のために、QiagenのRNeasyカラムを用いてRNAを調製し、次にcDNAに転化する。Q-PCRを上記と同様に実行する。免疫細胞化学分析のために、細胞をPBS中に選別し、4%パラホルムアルデヒド中で10分間固定して、Cytospin遠心分離機を用いてスライドガラスに接着する。一次抗体はβ-カテニンに対するものである。FITC(緑色)又はローダミン(赤色)に接合された適切な二次抗体を用いて、一次抗体の結合を検出する。
【0560】
選別細胞をさらにQ-PCR分析に付す。分化細胞は、EGFP蛍光と内因性FGF8遺伝子発現との相関を示す。非蛍光細胞と比較して、EGFP陽性細胞は、FGF8発現レベルの2倍より大きい増大を示す。高及び低EGFP強度細胞の分離は、EGFP発現レベルがFGF8発現レベルと相関する、ということを示す。FGF8マーカー分析のほかに、選別細胞を、核局在化β-カテニン(核β-カテニン)の免疫細胞化学分析に付す。このマーカーの核局在化は、EGFP陽性分画をに富んでいる。逆に、β-カテニンの核局在化は、EGFP陰性分画でほとんど観察されない。
【0561】
これらの結果が示された場合、選別前に分化細胞培養物中に存在する細胞の少なくとも約5%はFGF8/核β-カテニン陽性細胞である。選別細胞集団中の細胞の少なくとも約90%は、FGF8/核β-カテニン陽性前原始線条細胞である。
【0562】
[実施例14]
中内胚葉細胞に富んだ細胞集団の産生
以下の実施例は、ブラキュリプロモーター/EGFPカセットを含むhESCが原始線条(中内胚葉)細胞に分化し、次にその後、蛍光標示式細胞分取器(FACS)により単離し得る、ということを実証する。
【0563】
100ng/mlのアクチビンAを含有し、血清を含有しない増殖培地又は100ng/mlのアクチビンA及び0.1%(v/v)FBSを含有する増殖培地中で約24時間、ブラキュリプロモーター/EGFPトランスジェニックhESCを分化させる。次に分化細胞をトリプシン消化により収穫し、ベクトン・ディッキンソンFACSDivaで直接的にRNA溶解緩衝液又はPBS中に選別する。単一生細胞の試料をEGFPに対するゲーティングを伴わずに採取し、そして単一生細胞をEGFP陽性及びGFP陰性集団中に選び出す。別個の実験では、蛍光強度(高及び低)によって、EGFP陽性分画を2つの等サイズの集団に分離する。
【0564】
選別後、Q-PCR及び免疫細胞化学の両方により、細胞集団を分析する。Q-PCR分析のために、QiagenのRNeasyカラムを用いてRNAを調製し、次にcDNAに転化する。Q-PCRを上記と同様に実行する。免疫細胞化学分析のために、細胞をPBS中に選別し、4%パラホルムアルデヒド中で10分間固定して、Cytospin遠心分離機を用いてスライドガラスに接着する。一次抗体はFGF4及びSNAI1に対するものである。FITC(緑色)又はローダミン(赤色)に接合された適切な二次抗体を用いて、一次抗体の結合を検出する。
【0565】
選別細胞をさらにQ-PCR分析に付す。分化細胞は、EGFP蛍光と内因性ブラキュリ遺伝子発現との相関を示す。非蛍光細胞と比較して、EGFP陽性細胞は、ブラキュリ発現レベルの2倍より大きい増大を示す。高及び低EGFP強度細胞の分離は、EGFP発現レベルがブラキュリ発現レベルと相関する、ということを示す。ブラキュリマーカー分析に加えて、選別細胞を、FGF4及びSNAI1の免疫細胞化学分析に付す。これらのマーカーはそれぞれ、EGFP陽性分画に富んでいる。逆に、FGF4及び/又はSNAI1は、EGFP陰性分画でほとんど観察されない。
【0566】
これらの結果が示された場合、選別前に分化細胞培養物中に存在する細胞の少なくとも約5%はブラキュリ/FGF4/SNAI1陽性細胞である。選別細胞集団中の細胞の少なくとも約90%は、ブラキュリ/FGF4/SNAI1陽性中内胚葉細胞である。
【0567】
EGFP/ブラキュリ構築物を含むベクターの代替物として、FGF4又はSNAI1プロモーターの制御下のGFP又はEGFPレポーター遺伝子を含むベクターが、本実施例に記載された中内胚葉富化方法に用いられ得る、と理解される。
【0568】
[実施例15]
ヒト前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞のin vitroでの分化を促進し得る分化因子の同定
本明細書中に記載される分化因子スクリーニング方法を例示するために、種々の時点で或る特定のマーカー遺伝子産物の正規化発現レベルを測定しながら、本明細書中に記載される方法を用いて産生されるヒト前原始線条細胞及び中内胚葉細胞の集団に、別々にいくつかの候補分化因子を提供する。
【0569】
ヒト前原始線条細胞及び中内胚葉細胞培養物を、上記実施例に記載したように産生する。要するに、血清を含有しないRPMA培地中で100ng/mlのアクチビンAの存在下で、12時間(前原始線条)又は24時間(中内胚葉)、hESC細胞を増殖させた。前原始線条細胞及び中内胚葉細胞の形成後、細胞集団を0.2%FBSを含有するRPMI中で個々のプレート中に保持し、以下の:20ng/mlでのWnt3B、5ng/mlでのFGF2又は100ng/mlでのFGF2のうちの1つで処理する。アルブミン、PROX1及びTITE1に関するマーカー遺伝子産物の発現を、Q-PCRを用いて定量する。
【0570】
上記の分子を用いた前原始線条細胞及び中内胚葉細胞のインキュベーションは、前原始線条細胞及び中内胚葉細胞を胚体内胚葉系統由来の細胞に分化させると予測される。
【0571】
[実施例16]
初期胚細胞型におけるマーカー発現の要約
本実施例は、hESCの初期分化中に得られる細胞型の同定及び/又は検出に有用なマーカー遺伝子の発現を要約する表を提供する。下記の表1において、各マーカーに関する正
式名及び略号を最初の2つの縦列に提示する。次の縦列の各々は、遺伝子が特定組織型中で発現されるか否かを記載する。細胞型に関する以下の略号を用いる:ICM/ESCはhESCを指す;PSは原始線条(中内胚葉)細胞を指す;Ectoは外胚葉細胞を指す;Mesoは中胚葉細胞を指す;DEは胚体内胚葉細胞を指す;PrEは原始内胚葉を指す;VEは臓側内胚葉を指す;そしてPEは壁側内胚葉を指す。
【0572】
【表1】
【0573】
[実施例17]
前原始線条細胞及び中内胚葉細胞を同定及び/又は検出するために有用な付加的マーカー本実施例は、前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞を同定及び/又は検出するのに有用な付加的マーカーを記載する。本実施例中に記載される前原始線条マーカーは、前原始線条細胞に関する上記のマーカーのいずれかの代わりに又はそのほかに用いられ得る、と理解される。本実施例中に記載される中内胚葉マーカーは、中内胚葉細胞に関する上記のマーカーのいずれかの代わりに又はそのほかに用いられ得る、とも理解される。
【0574】
前原始線条、中内胚葉への、そしてその後の内胚葉及び中胚葉へのhESC分化のプロセスを調べるために、分化の最初の24時間後に、FGF受容体阻害剤、SU5402の添加をした場合と添加しない場合とで、低血清(≦2%(v/v)FBS)及び高アクチビンA(100ng/ml)下で、短時間増分でのhESC培養物の分化の全体的発現プロファイリングを実行した。24時間目のアクチビンAへのSU5402の添加は、胚体内胚葉に特有の遺伝子の発現の劇的な減少を生じ、そして中胚葉マーカーの発現を大いに増大する。
【0575】
細胞分化を媒介するために、100ng/mlのアクチビンAの存在下で、低血清RPMI倍地中で、4日間、hESCを増殖させた。血清補充は、分化の最初の24時間は0%(v/v)、2回目の24時間は0.2%(v/v)、そして3及び4日目は2%(v/v)であった。分化の最初の24時間後、アクチビンAのほかにSU5402を5μMで適用することにより、一組の培養物で中胚葉を誘導した。他の組の培養物はアクチビンA単独中に存続し、したがって高効率で胚体内胚葉を産生した。0、2、6、24、30、48及び96時間の時点で、反復実験で試料を採取した。48及び96時間点は胚体内胚葉(アクチビンA単独)又は中胚葉(アクチビンAにSU5402を伴う)であった。全RNAを抽出し、Affymetrix高密度オリゴヌクレオチドアレイ(U133プラス2.0)を用いて、全体的発現プロファイリングのためにExpression Analysis(Durham, NC)へ提出した。
【0576】
階層的クラスター分析、並びに種々の時点での対合試料の群間の比較分析を用いて、hESC分化の時間経過中の遺伝子発現パターンを試験した。最初の6時間の間の発現における強い増大と、その後の時点での発現における保持又は減少とにより特性化される発現パターンを示す遺伝子を、その後の前原始線条細胞へのhESCの分化に関与する遺伝子として同定した。24~30時間時点で発現のピークを示した遺伝子を、中内胚葉分化に関与する遺伝子として同定した。
【0577】
下記の表2は、hESCをアクチビンAと接触後、6時間までに非常に高レベルで発現されたマーカー遺伝子を記載する。これらの遺伝子は、前原始線条細胞を示す。以下の表3は、hESCをアクチビンAと接触後、約24~約30時間までにピークレベルで発現されたマーカー遺伝子を記載する。これらの遺伝子は、中内胚葉細胞を示す。これらの表の各々において、最初の縦列はプローブセット識別番号を列挙し、そして2番目の縦列はユニジーン識別番号を提示する。ユニジーンデータベースは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)ウエブサイトを介して公的に利用可能である。したがって、これらの表中に記載されたマーカー遺伝子のいずれかに関するヌクレオチド及びアミノ酸配列は、NCBIウエブサイトでの適切なユニジーン識別番号に関する照会により得ることができる。ユニジーンデータベースは、その開示内容が参照により本明細書中に完全に援用される。各表の縦列3は、マーカーの各々に関する一般的に既知の遺伝子記号を提示する。各表の残りの部分は、0、2、6、24、30、48及び96時間時点での遺伝子発現の相対的レベルを提示する。これらの表中で用いる場合、「DE」は胚体内胚葉を指し、そして「M」は中胚葉を指す。
【0578】
【表2】
【0579】
【表3】
【0580】
[実施例18]
前原始線条段階(原始外胚葉細胞)前に胚性幹細胞分化を同定及び/又は検出するために有用なマーカー
本実施例は、前原始線条段階前に幹細胞分化を同定及び/又は検出するのに有用であるマーカーを記載する。このような細胞型は、ここでは、原始外胚葉細胞と呼ぶ。本実施例中に記載される原始外胚葉細胞マーカーは、原始外胚葉細胞組成物と関連付けられ、そして前原始線条細胞及び/又は中内胚葉細胞を産生し、スクリーニングするためにすでに記載した方法で用いられ得る、と理解される。
【0581】
原始外胚葉へのhESC分化のプロセスを調べるために、実施例17に記載したように、分化中のhESC培養物の全体的発現プロファイリングを実行した。
【0582】
下記の表4は、hESCをアクチビンAと接触後、6時間より前に増大又は減少高レベルで発現されたマーカー遺伝子を記載する。これらの遺伝子は、原始外胚葉細胞を示す。上記の表2及び表3に関して示したのと同様に、表4では、最初の縦列はプローブ組識別番号を列挙し、そして2番目の縦列はユニジーン識別番号を提示する。ユニジーンデータベースは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)ウエブサイトを介して公的に利用可能である。したがって、この表中に記載されたマーカー遺伝子のいずれかに関するヌクレオチド及びアミノ酸配列は、NCBIウエブサイトでの適切なユニジーン識別番号に関する照会により得ることができる。ユニジーンデータベースは、その開示内容が参照により本明細書中に完全に援用される。表4の縦列3は、マーカーの各々に関する一般的に既知の遺伝子記号を提示する。残りの縦列は、0、2、6、24、30、48及び96時間時点での遺伝子発現の相対的レベルを提示する。この表中で用いる場合、「DE」は胚体内胚葉を指し、そして「M」は中胚葉を指す。
【0583】
表4は、FZD10、FGF5及びOCT4 mRNAの発現が、hESCを100ng/mlのアクチビンAと接触させた後2時間までに実質的にアップレギュレートされる、ということを示す。逆に、GBX2、ZFP42及びSOX2mRNAの発現は、アクチビンA処理後2時間までに実質的にダウンレギュレートされる。Nanog mRNAの発現は、アクチビンA処理後6時間より前の時点で実質的にアップレギュレートされると予測される。
【0584】
【表4】
【0585】
本明細書中に記載される方法、組成物及び装置は、目下、好ましい実施形態を代表するものであり、例示であって、本発明の範囲を限定するものではない。その変更及びその他の使用で当業者に思い付かれるものは本発明の精神に包含され、そして開示の範囲により限定される。したがって本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、本明細書に開示される発明に種々の置換及び修正がなされ得るということは、当業者には明らかである。
【0586】
特許請求の範囲及び本開示全体を通して用いられる場合、「本質的に~から成る」という語句は、当該語句の後ろに列挙される任意の要素を含むことを意味し、列挙した要素に関する開示において特定される活性又は作用を妨害しないか又は関与しない他の要素に限定される。したがって「本質的に~から成る」という語句は、列挙した要素が必要とされるか又は必須であるが、しかし他の要素は任意であり、それらが列挙した要素の活性又は作用に影響を及ぼすか否かによって、存在することもあり、しないこともあり得る、ということを示す。
【0587】
[参考文献]
多数の文献及び特許参考文献を、本特許出願中で引用してきた。本特許出願中で引用される各々のそしてすべての参考文献は、その開示内容が参照により本明細書中に完全に援用される。
【0588】
いくつかの参考文献に関しては、全引用が文書の本文中に存在する。他の参考文献に関しては、文書の本文中における引用は著者及び年で示しているが、全引用を以下に示す:
【表5-1】

【表5-2】

【表5-3】

【表5-4】

【表5-5】

【表5-6】

【表5-7】

【表5-8】

【表5-9】


図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11
図12