IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 西本 一也の特許一覧 ▶ 株式会社インタートレードの特許一覧 ▶ 株式会社デジタルアセットマーケッツの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ST取引処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/04 20120101AFI20240723BHJP
【FI】
G06Q40/04
【請求項の数】 72
(21)【出願番号】P 2023138422
(22)【出願日】2023-08-28
【審査請求日】2023-11-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313004816
【氏名又は名称】西本 一也
(73)【特許権者】
【識別番号】500566567
【氏名又は名称】株式会社インタートレード
(73)【特許権者】
【識別番号】519249262
【氏名又は名称】株式会社デジタルアセットマーケッツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】弁理士法人篠原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100065824
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100104983
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 雅之
(74)【代理人】
【識別番号】100166394
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 和弘
(72)【発明者】
【氏名】西本 一也
【審査官】中野 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-044810(JP,A)
【文献】特開2022-027925(JP,A)
【文献】特開2023-074453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックチェーン等の分散台帳技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデータを用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトもしくはサーバアプリケーションを備えて構築された、コモディティ資産を担保としての取り扱いになる資産原資としてトークン化した、証券特性を有する社債型のSTの取引処理システムであって、
第1の取引サイド、すなわちコモディティを扱う総合商社よりなるSTの発行体であって、ST発行後のセカンダリー取引段階においてヘッジの買い側となるヘッジ提供者をなすST発行体や、ST発行後のセカンダリー取引段階において流動性を供給するリクイデティプロバイダーやマーケットメイカー等のホールセール処理側と第2の取引サイド、すなわち発行されたSTを顧客と取引する証券会社等のリテール処理側との間に介在し、流動性調整者の自己のSTのポジション取りにより、第2の取引サイドと第1の取引サイドとにおける取引、すなわち注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等単位のギャップを吸収して、第1の取引サイド、第2の取引サイド双方のST取引の流動性を調整する機能を有する流動性調整手段を有し、
前記流動性調整手段は、
STの発行体から一度に大量に発行されるSTを流動性調整者に一括で購入して引き受けさせる機能を有するST引受手段と、
流動性調整者に引き受けさせたSTを流動性調整者の自己のポジションとしてストックする機能を有するSTポジションストック手段と、
STの発行体に対しSTの引受のための購入資金を流動性調整者に借り入れさせる機能を有するST引受資金借入手段と、
STの発行体に対し購入したSTを担保として流動性調整者に提供させる機能を有するST担保提供手段と、
STの発行体との間でSTの購入資金分のコモディティ現物の売りヘッジ契約を流動性調整者に締結させる機能を有するヘッジ締結手段と、
ST発行後のセカンダリー取引段階において、前記STポジションストック手段を介してストックしているSTについての、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引、すなわち注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等の内容に応じた取引を行う機能を有するストックST取引手段と、
を有し、
前記ストックST取引手段は、
第2の取引サイドからの注文と第1の取引サイドからの注文又はヘッジ解消・追加のIOI、すなわちヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示の夫々に対し流動性調整者の自己相対を介して対当処理を行う機能を有する自己相対対当処理手段と、
第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ解消のIOI、すなわちヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの買い注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ解消指示の電文を返す機能を有する第1の約定通知手段と、
第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ解消のIOI、すなわちヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示に対する、流動性調整者からのヘッジ解消指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ解消指示分の買い注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約のうちのヘッジ解消指示分を削減させる機能を有するヘッジ解消手段と、
第2の取引サイドから現金類を受け取り第1の取引サイドへ渡すとともに、担保として提供していたSTのうち当該約定分のSTを第1の取引サイドから受け取り第2の取引サイドへ渡す機能を有する第1の清算処理仲介手段と、
ストックしていたSTのポジションのうち当該約定分のSTのポジション量を削減する機能を有するストックSTポジション量削減手段と、
を有することを特徴とするST取引処理システム。
【請求項2】
前記ストックST取引手段は、
第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI、すなわちヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ追加指示の電文を返す機能を有する第2の約定通知手段と、
第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ追加のIOI、すなわちヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示に対する、流動性調整者からのヘッジ追加指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ追加指示分の売り注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約に対しヘッジ追加指示分を追加する機能を有するヘッジ追加手段と、
第1の取引サイドから現金類を受け取り第2の取引サイドへ渡すとともに、当該約定分のSTを第2の取引サイドから受け取り第1の取引サイドへ渡す機能を有する第2の清算処理仲介手段と、
ストックしていたSTのポジションに対し当該約定分のSTのポジション量を増加する機能を有するストックSTポジション量増加手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のST取引処理システム。
【請求項3】
前記ストックST取引手段は、
第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から市場価格として受け取る売りと買いの気配をなすIOI、すなわち相対取引方式による取引意思表示情報に基づく流動性調整者レートを算出する機能を有するレート算出手段と、
前記レート算出手段が算出した流動性調整者レートを第2の取引サイドに提供する機能を有するレート提供手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載のST取引処理システム。
【請求項4】
前記ストックST取引手段は、
外部から市場価格として受け取る売りと買いの気配をなすIOI、すなわち相対取引方式による取引意思表示情報、もしくは当該IOI情報に類似する情報、もしくは当該IOI情報と当該IOI情報に類似する情報とを合成した情報に基づく参考レートを算出する機能を有する参考レート算出手段と、
前記参考レート算出手段が算出した参考レートに基づく注文をみなし注文として、対当条件を充足する第2の取引サイドの注文をIOI、すなわち相対取引方式による取引意思表示方式で非公開に探索する機能を有する対当注文探索手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載のST取引処理システム。
【請求項5】
前記第1の清算処理仲介手段は、第2の取引サイドより対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に当該金額の現金類を渡して、担保として提供していたうち、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第2の取引サイドに渡す、RTGS的な清算処理を行う機能を有することを特徴とする請求項1に記載のST取引処理システム。
【請求項6】
前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体より対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行う機能を有することを特徴とする請求項2に記載のST取引処理システム。
【請求項7】
前記第2の清算処理仲介手段は、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行ったときに、STを消却する機能をさらに有することを特徴とする請求項6に記載のST取引処理システム。
【請求項8】
前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から現金類を借り受けて第2の取引サイドに当該金額の現金類を支払うと同時に、第2の取引サイドから該当約定分のSTを受け取り、受け取ったSTを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に担保として渡す機能をさらに有することを特徴とする請求項6に記載のST取引処理システム。
【請求項9】
前記第1の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りの現金類とSTとの夫々を一括でDVP処理する又はRTGS的に処理する機能をさらに有することを特徴とする請求項5に記載のST取引処理システム。
【請求項10】
前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りの現金類とSTとの夫々を一括でDVP処理する又はRTGS的に処理する機能をさらに有することを特徴とする請求項6に記載のST取引処理システム。
【請求項11】
前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドのSTの買い過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて少なくなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、追加でストックの基本量からの不足分のSTの新規発行・引受契約を締結し、STのポジションのストックの残量を調整する機能を有する第1のストック残量調整手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のST取引処理システム。
【請求項12】
前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドのSTの売り過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて多くなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、ストックの基本量からの過剰分のSTのポジションを消却、すなわち発行済のSTのポジションのストックの残量を削減する契約を締結する機能を有する第2のストック残量調整手段をさらに有することを特徴とする請求項2に記載のST取引処理システム。
【請求項13】
前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドからのSTの売り注文に対し、当該STの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI、すなわちヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足する当該STを購入してそのまま保有し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、STのポジションのストックの残量の調整のための処理を指示しないように制御する機能を有する第3のストック残量調整手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のST取引処理システム。
【請求項14】
STの管理母体として、権利管理簿と、STの保有アドレスもしくはウォレットとを有し、
発行体から、現金類を借り入れ、借り入れた現金類で引受対象となるSTを購入し、購入したSTを担保として発行体に提供するSTの引受者が、権利管理簿にSTの保有者として記録されるとともに、発行体が担保として受け取るSTは発行体側のアドレスもしくはウォレットに存在し、
STの保有アドレスもしくはウォレットと権利管理簿とがリンクし、権利管理簿に記録されているデジタル資産としてのSTの量をベースとしてトークンとしてのSTを生成できるとともに、権利管理簿に記録されるデジタル資産としてのSTの保有者と、実際にトークンとしてのSTをアドレスもしくはウォレットに保有する保有者とを異ならせて処理できるST管理構造部を備えることを特徴とする請求項1に記載のST取引処理システム。
【請求項15】
前記流動性調整手段は、担保ST管理用スマートコントラクトをさらに有し、
前記担保ST管理用スマートコントラクトは、STの引受者である流動性調整者がSTの発行体に対し担保として提供したSTを、権利管理簿上での保有者の名義を変更することなく保管する機能を有することを特徴とする請求項14に記載のSTの取引処理システム。
【請求項16】
前記流動性調整手段は、STの発行体からの流動性調整者の引受において発行体が貸し付けた購入代金の担保としてストックしているSTを、レンディングでの貸付用トークンとして用いることができる機能を有する担保STレンディング手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のST取引処理システム。
【請求項17】
前記担保STレンディング手段は、レンディング管理用スマートコントラクトを有し、
前記レンディング管理用スマートコントラクトは、
借り手より提供されるべき所定の担保対象物を設定する機能と、
設定した所定の担保対象物が借り手より提供されたときに、担保としてストックしているSTを前記担保対象物と引き換えに貸付用トークンとして貸し出す機能と、
レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する機能と、
を有することを特徴とする請求項16に記載のSTの取引処理システム。
【請求項18】
前記担保STレンディング手段は、権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段をさらに有し、
前記権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段は、レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更を、1日又は1週間単位等、定期的に行う機能を有する
ことを特徴とする請求項17に記載のST取引処理システム。
【請求項19】
前記担保STレンディング手段は、STのレンディングを、クリアリング、すなわち借入期間が翌日や数日のレポ取引的な超短期的な取引、空売り、すなわち借入期間が長期間の場合を想定した取引の用途として提供できる機能を有することを特徴とする請求項16に記載のST取引処理システム。
【請求項20】
前記自己相対対当処理手段は、通常は第2の取引サイドに対し、STの売り・買いの注文を受け付け、PTS方式等での流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行い、第2の取引サイド間では注文が流動性調整者の自己相対を介した対当処理によって対当しない場合、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体を当該注文の間接的な取引相手として流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行う機能を有することを特徴とする請求項1に記載のST取引処理システム。
【請求項21】
前記自己相対対当処理手段は、当該注文の取引相手とした第1の取引サイドにおける、特定の接続先の取引業者、すなわち流動性を供給するリクイデティプロバイダーやマーケットメイカー等に対しては、STの売り・買いの注文概念として受け付けさせ、他の特定の接続先の取引業者、すなわちヘッジ提供者をなすST発行体に対しては、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示として受け付けさせるようにする機能をさらに有することを特徴とする請求項20に記載のST取引処理システム。
【請求項22】
前記ストックST取引手段は、前記自己相対対当処理手段によるSTの売り・買いの注文と、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示とを、多様に組み合わせた設定を受け付ける機能を有するST売・買及びヘッジ締結・解消の組み合わせ設定受付手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のST取引処理システム。
【請求項23】
前記自己相対対当処理手段は、第1の取引サイドにおける所定の取引業者、すなわちヘッジ提供者をなすST発行体については、第2の取引サイドからの買い注文に対し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からの売りヘッジの解消の意思表示を対当させることができる機能をさらに有することを特徴とする請求項20に記載のST取引処理システム。
【請求項24】
前記自己相対対当処理手段は、第2の取引サイドからの現物のSTの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者、すなわちヘッジ提供者をなすST発行体の売りヘッジの締結の意思表示を対当させることができる機能をさらに有することを特徴とする請求項20に記載のST取引処理システム。
【請求項25】
前記自己相対対当処理手段は、第2の取引サイドからの現物のトークンの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者、すなわち流動性を供給するリクイデティプロバイダーやマーケットメイカー等の単純な買い注文を対当させることができる機能をさらに有することを特徴とする請求項20に記載のST取引処理システム。
【請求項26】
前記ストックST取引手段は、第1の取引サイドの所定の取引業者において、売り側と買い側が共に売り・買いの注文である場合、売り側と買い側が共にヘッジ設定・解消の意思表示である場合、もしくは売り側がヘッジ解消の意思表示と買い側が買いの注文との組み合わせである場合等、取引業者の接続単位、すなわちヘッジ提供者をなすST発行体、流動性を供給するリクイデティプロバイダーやマーケットメイカー等の取引業者種別、売り側と買い側の発注における注文型、ヘッジ型の意思表示等の注文形態の設定を受け付ける機能を有する第1の取引サイド接続単位、注文形態設定受付手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のST取引処理システム。
【請求項27】
担保となるSTの担保状態を示す担保パラメータと、
前記担保パラメータへの、STの売却、レンディング・再担保の処理不能の状態や、レンディング・再担保の処理可能の状態等、複数種類の担保状態の設定を選択可能に受け付ける機能を有する担保状態設定手段と、
担保パラメータに設定された担保状態に基づき、担保となっているSTに対する売却、レンディング・再担保等の処理を制御する機能を有する担保ST処理制御手段と、
貸付者との間で担保設定時に締結した貸付契約の満了時において、債務不履行となった場合に、前記担保状態設定手段を介して担保パラメータに設定されている担保状態の設定内容を手動により又は自動的に解除する機能を有する担保パラメータ設定内容変更手段又は担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクトと、
をさらに有し、
前記担保ST処理制御手段は、前記担保パラメータ設定内容変更手段又は前記担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクトにより担保パラメータの設定内容が解除されたときに、担保として提供されているSTの売却及び権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する機能をさらに有する
ことを特徴とする請求項14に記載のST取引処理システム。
【請求項28】
前記コモディティ資産を資産原資としてトークン化した社債型のSTは、STの発行体より定期的に発行され、発行の都度、償還期限や金利に相当する内容が全て同一となる証券特性を有し、セカンダリー取引段階においては、トークンとしてのSTの取引が、回号の異なるSTを1つの銘柄に集約して行われるストラクチャード社債型セキュリティトークンであって、
前記ST管理構造部は、
権利管理簿に、当該STが発行される都度、当該STの保有者の証券特性を有するデジタル権利情報の一部として回号を付加して記録する機能を有する回号付加権利情報記録手段と、
権利管理簿上において、回号が付加された当該STの権利情報を回号単位に管理する機能を有する回号付加権利情報管理手段と、
トークンとしての当該STのアドレスもしくはウォレット処理の対象において、回号の異なる全ての当該STを同一銘柄のトークンとして管理する機能を有する回号集約トークン管理手段と、
を有することを特徴とする請求項14に記載のSTの取引処理システム。
【請求項29】
前記ST管理構造部は、セカンダリー取引段階での、流動性調整者や第2の取引サイドにおける、回号の異なる全ての当該STについての帳票や口座の資産管理、注文・約定系の情報の管理について、回号単位に処理することなく、同一銘柄として処理する機能を有する銘柄単位管理手段をさらに有することを特徴とする請求項28に記載のSTの取引処理システム。
【請求項30】
前記ST管理構造部は、トークンとしての当該STについての注文約定後の権利管理簿上での名義変更を、日付変更時に前日までのトークンとしての当該STについての全ての取引分を集計した後に一括で行う機能を有する名義変更手段をさらに有することを特徴とする請求項28に記載のSTの取引処理システム。
【請求項31】
前記ST管理構造部は、
権利管理簿に記録されている証券特性を有するデジタル権利情報における当該STの売り方データを、個人の識別情報である原簿ID単位で昇順にソートする機能を有する売り方データソート手段と、
前記売り方データソート手段がソートした当該STの売り方データにおいて、当該識別情報である原簿IDで特定される当該STの保有者の保有する当該STの証券特性を有するデジタル権利情報における回号が複数種類である場合、保有データ数の少ない回号の当該STの売り方データを優先して売却対象となり、当該識別情報である原簿IDで特定される当該STの保有者の保有する、異なる回号同士の当該STの売り方データの保有データ数が同数である場合、回号番号の小さい当該STの売り方データを優先して売却対象となるように並べ替え、並べ替えた売り方データを当該STの売却優先情報として一時的にストックする機能を有する売却優先情報並べ替え及びストック手段と、
権利管理簿上の取引当日の当該STの買い方データを、個人の識別情報である原簿ID単位で昇順にソートする機能を有する買い方データソート手段と、
前記買い方データソート手段がソートした当該STの買い方データを、前記売却優先情報並べ替え及びストック手段を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく機能を有する買い方データ割当手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項28に記載のSTの取引処理システム。
【請求項32】
前記買い方データ割当手段は、割り当て可能な当該STの買い方データの回号が複数種類存在する場合、回号番号の小さい当該STの買い方データを優先して、前記売却優先情報並べ替え及びストック手段を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく機能をさらに有することを特徴とする請求項31に記載のSTの取引処理システム。
【請求項33】
トークンの取引者が権利管理簿の閲覧操作を行う場合、取引の当事者として取引に関与する回号のみの当該STの取引データを回号単位に出力表示するように制御する機能を有する閲覧表示制御手段をさらに有することを特徴とする請求項28に記載のSTの取引処理システム。
【請求項34】
前記閲覧表示制御手段は、権利管理簿の閲覧操作を行う取引者に対し、該当する銘柄のSTの取引データのうち、各回号の上位10名の識別情報である原簿ID及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報である原簿IDのみの取引データを出力表示するように制御する機能をさらに有することを特徴とする請求項33に記載のSTの取引処理システム。
【請求項35】
前記閲覧表示制御手段は、前記出力表示対象に該当する取引データにおける前記各回号の上位10名の識別情報である原簿ID及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報である原簿IDのみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する住所の出力表示を市区のみに制限する機能をさらに有することを特徴とする請求項34に記載のSTの取引処理システム。
【請求項36】
前記閲覧表示制御手段は、前記出力表示対象に該当する取引データにおける前記各回号の上位10名の識別情報である原簿ID及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報である原簿IDのみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する氏名の出力表示を苗字のみに制限する機能をさらに有することを特徴とする請求項34に記載のSTの取引処理システム。
【請求項37】
ブロックチェーン等の分散台帳技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデータを用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトもしくはサーバアプリケーションを備えて構築された、コモディティ資産を担保としての取り扱いになる資産原資としてトークン化した、証券特性を有する社債型のSTの取引処理システムであって、
第1の取引サイド、すなわちコモディティを扱う総合商社よりなるSTの発行体であって、ST発行後のセカンダリー取引段階においてヘッジの買い側となるヘッジ提供者をなすST発行体や、ヘッジ提供者をなすST発行体からのSTを引き受ける主幹事証券会社、ST発行後のセカンダリー取引段階において流動性を供給するリクイデティプロバイダーやマーケットメイカー等のホールセール処理側と第2の取引サイド、すなわち発行されたSTを顧客と取引する証券会社等のリテール処理側との間に介在し、流動性調整者の自己のSTのポジション取りにより、第2の取引サイドと第1の取引サイドとにおける取引、すなわち注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等単位のギャップを吸収して、第1の取引サイド、第2の取引サイド双方のST取引の流動性を調整する機能を有する流動性調整手段を有し、
前記流動性調整手段は、
STの発行体から一度に大量に発行されるSTを主幹事証券会社に一括で購入して引き受けさせる機能を有するST引受手段と、
主幹事証券会社に引き受けさせたSTを流動性調整者の自己のポジションとしてストックする機能を有するSTポジションストック手段と、
STの発行体に対しSTの引受のための購入資金を主幹事証券会社に借り入れさせる機能を有するST引受資金借入手段と、
STの発行体に対し購入したSTを担保として主幹事証券会社に提供させる機能を有するST担保提供手段と、
STの発行体との間でSTの購入資金分のコモディティ現物の売りヘッジ契約を主幹事証券会社に締結させる機能を有するヘッジ締結手段と、
ST発行後のセカンダリー取引段階において、前記STポジションストック手段を介してストックしているSTについての、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引、すなわち注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等の内容に応じた取引を行う機能を有するストックST取引手段と、
を有し、
前記ストックST取引手段は、
第2の取引サイドからの注文と第1の取引サイドからの注文又はヘッジ解消・追加のIOI、すなわちヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示の夫々に対し流動性調整者の自己相対を介して対当処理を行う機能を有する自己相対対当処理手段と、
第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ解消のIOI、すなわちヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの買い注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ解消指示の電文を返す機能を有する第1の約定通知手段と、
第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ解消のIOI、すなわちヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示に対する、流動性調整者からのヘッジ解消指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ解消指示分の買い注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約のうちのヘッジ解消指示分を削減させる機能を有するヘッジ解消手段と、
第2の取引サイドから現金類を受け取り第1の取引サイドへ渡すとともに、担保として提供していたSTのうち当該約定分のSTを第1の取引サイドから受け取り第2の取引サイドへ渡す第1の清算処理仲介手段と、
ストックしていたSTのポジションのうち当該約定分のSTのポジション量を削減するストックSTポジション量削減手段と、
を有することを特徴とするST取引処理システム。
【請求項38】
前記ストックST取引手段は、
第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI、すなわちヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には主幹事証券会社による該当量のヘッジ追加指示の電文を返す機能を有する第2の約定通知手段と、
第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が主幹事証券会社へのヘッジ追加のIOI、すなわちヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示に対する、主幹事証券会社からのヘッジ追加指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ追加指示分の売り注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約に対しヘッジ追加指示分を追加する機能を有するヘッジ追加手段と、
第1の取引サイドから現金類を受け取り第2の取引サイドへ渡すとともに、当該約定分のSTを第2の取引サイドから受け取り第1の取引サイドへ渡す機能を有する第2の清算処理仲介手段と、
ストックしていたSTのポジションに対し当該約定分のSTのポジション量を増加する機能を有するストックSTポジション量増加手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項37に記載のST取引処理システム。
【請求項39】
前記ストックST取引手段は、
第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から市場価格として受け取る売りと買いの気配をなすIOI、すなわち相対取引方式による取引意思表示情報に基づく流動性調整者レートを算出する機能を有するレート算出手段と、
前記レート算出提供手段が算出した流動性調整者レートを第2の取引サイドに提供する機能を有するレート提供手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項37又は38に記載のST取引処理システム。
【請求項40】
前記ストックST取引手段は、
外部から市場価格として受け取る売りと買いの気配をなすIOI、すなわち相対取引方式による取引意思表示情報、もしくは当該IOI情報に類似する情報、もしくは当該IOI情報と当該IOI情報に類似する情報とを合成した情報に基づく参考レートを算出する機能を有する参考レート算出手段と、
前記参考レート算出手段が算出した参考レートに基づく注文をみなし注文として、対当条件を充足する第2の取引サイドの注文をIOI、すなわち相対取引方式による取引意思表示方式で非公開に探索する機能を有する対当注文探索手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項37又は38に記載のST取引処理システム。
【請求項41】
前記第1の清算処理仲介手段は、第2の取引サイドより対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に当該金額の現金類を渡して、担保として提供していたうち、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第2の取引サイドに渡す、RTGS的な清算処理を行う機能を有することを特徴とする請求項37に記載のST取引処理システム。
【請求項42】
前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体より対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行う機能を有することを特徴とする請求項38に記載のST取引処理システム。
【請求項43】
前記第2の清算処理仲介手段は、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行ったときに、STを消却する機能をさらに有することを特徴とする請求項42に記載のST取引処理システム。
【請求項44】
前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から現金類を借り受けて第2の取引サイドに当該金額の現金類を支払うと同時に、第2の取引サイドから該当約定分のSTを受け取り、受け取ったSTを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に担保として渡す機能をさらに有することを特徴とする請求項42に記載のST取引処理システム。
【請求項45】
前記第1の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りの現金類とSTとの夫々を一括でDVP処理する又はRTGS的に処理する機能をさらに有することを特徴とする請求項41に記載のST取引処理システム。
【請求項46】
前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りの現金類とSTとの夫々を一括でDVP処理する又はRTGS的に処理する機能をさらに有することを特徴とする請求項42に記載のST取引処理システム。
【請求項47】
前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドのSTの買い過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて少なくなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、追加でストックの基本量からの不足分のSTの新規発行・引受契約を主幹事証券会社との間で締結させ、STのポジションのストックの残量を調整する機能を有する第1のストック残量調整手段をさらに有することを特徴とする請求項46に記載のST取引処理システム。
【請求項48】
前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドのSTの売り過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて多くなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、ストックの基本量からの過剰分のSTのポジションを消却、すなわち発行済のSTのポジションのストックの残量を削減する契約を締結する機能を有する第2のストック残量調整手段をさらに有することを特徴とする請求項47に記載のST取引処理システム。
【請求項49】
前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドからのSTの売り注文に対し、当該STの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI、すなわちヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足する当該STを購入してそのまま保有し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、STのポジションのストックの残量の調整のための処理を指示しないように制御する機能を有する第3のストック残量調整手段をさらに有することを特徴とする請求項46に記載のST取引処理システム。
【請求項50】
STの管理母体として、権利管理簿と、STの保有アドレスもしくはウォレットとを有し、
発行体から、現金類を借り入れ、借り入れた現金類で引受対象となるSTを購入し、購入したSTを担保として発行体に提供するSTの引受者が、権利管理簿にSTの保有者として記録されるとともに、発行体が担保として受け取るSTは発行体側のアドレスもしくはウォレットに存在し、
STの保有アドレスもしくはウォレットと権利管理簿とがリンクし、権利管理簿に記録されているデジタル資産としてのSTの量をベースとしてトークンとしてのSTを生成できるとともに、権利管理簿に記録されるデジタル資産としてのSTの保有者と、実際にトークンとしてのSTをアドレスもしくはウォレットに保有する保有者とを異ならせて処理できるST管理構造部を備えることを特徴とする請求項41に記載のST取引処理システム。
【請求項51】
前記流動性調整手段は、担保ST管理用スマートコントラクトをさらに有し、
前記担保ST管理用スマートコントラクトは、STの引受者である流動性調整者がSTの発行体に対し担保として提供したSTを、権利管理簿上での保有者の名義を変更することなく保管する機能を有することを特徴とする請求項50に記載のSTの取引処理システム。
【請求項52】
前記流動性調整手段は、STの発行体からの主幹事証券会社の引受において発行体が貸し付けた購入代金の担保としてストックしているSTを、レンディングでの貸付用トークンとして用いることができる機能を有する担保STレンディング手段をさらに有することを特徴とする請求項41に記載のST取引処理システム。
【請求項53】
前記担保STレンディング手段は、レンディング管理用スマートコントラクトを有し、
前記レンディング管理用スマートコントラクトは、
借り手より提供されるべき所定の担保対象物を設定する機能と、
設定した所定の担保対象物が借り手より提供されたときに、担保としてストックしているSTを前記担保対象物と引き換えに貸付用トークンとして貸し出す機能と、
レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する機能と、
を有することを特徴とする請求項52に記載のSTの取引処理システム。
【請求項54】
前記担保STレンディング手段は、権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段をさらに有し、
前記権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段は、レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更を、1日又は1週間単位等、定期的に行う機能を有する
ことを特徴とする請求項53に記載のST取引処理システム。
【請求項55】
前記担保STレンディング手段は、STのレンディングを、クリアリング、すなわち借入期間が翌日や数日のレポ取引的な超短期的な取引、空売り、すなわち借入期間が長期間の場合を想定した取引の用途として提供できる機能を有することを特徴とする請求項54に記載のST取引処理システム。
【請求項56】
前記自己相対対当処理手段は、通常は第2の取引サイドに対し、STの売り・買いの注文を受け付け、PTS方式等での流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行い、第2の取引サイド間では注文が流動性調整者の自己相対を介した対当処理によって対当しない場合、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体を当該注文の間接的な取引相手として流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行う機能を有することを特徴とする請求項37に記載のST取引処理システム。
【請求項57】
前記自己相対対当処理手段は、当該注文の取引相手とした第1の取引サイドにおける、特定の接続先の取引業者、すなわち流動性を供給するリクイデティプロバイダーやマーケットメイカー等に対しては、STの売り・買いの注文概念として受け付けさせ、他の特定の接続先の取引業者、すなわちヘッジ提供者をなすST発行体に対しては、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示として受け付けさせるようにする機能をさらに有することを特徴とする請求項56に記載のST取引処理システム。
【請求項58】
前記ストックST取引手段は、前記自己相対対当処理手段によるSTの売り・買いの注文と、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示とを、多様に組み合わせた設定を受け付ける機能を有するST売・買及びヘッジ締結・解消の組み合わせ設定受付手段をさらに有することを特徴とする請求項37に記載のST取引処理システム。
【請求項59】
前記自己相対対当処理手段は、第1の取引サイドにおける所定の取引業者、すなわちヘッジ提供者をなすST発行体については、第2の取引サイドからの買い注文に対し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からの売りヘッジの解消の意思表示を対当させることができる機能をさらに有することを特徴とする請求項56に記載のST取引処理システム。
【請求項60】
前記自己相対対当処理手段は、第2の取引サイドからの現物のSTの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者、すなわちヘッジ提供者をなすST発行体の売りヘッジの締結の意思表示を対当させることができる機能をさらに有することを特徴とする請求項56に記載のST取引処理システム。
【請求項61】
前記自己相対対当処理手段は、第2の取引サイドからの現物のトークンの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者、すなわち流動性を供給するリクイデティプロバイダーやマーケットメイカー等の単純な買い注文を対当させることができる機能をさらに有することを特徴とする請求項56に記載のST取引処理システム。
【請求項62】
前記ストックST取引手段は、第1の取引サイドの所定の取引業者において、売り側と買い側が共に売り・買いの注文である場合、売り側と買い側が共にヘッジ設定・解消の意思表示である場合、もしくは売り側がヘッジ解消の意思表示と買い側が買いの注文との組み合わせである場合等、取引業者の接続単位、すなわちヘッジ提供者をなすST発行体、流動性を供給するリクイデティプロバイダーやマーケットメイカー等の取引業者種別、売り側と買い側の発注における注文型、ヘッジ型の意思表示等の注文形態の設定を受け付ける機能を有する第1の取引サイド接続単位、注文形態設定受付手段をさらに有することを特徴とする請求項37に記載のST取引処理システム。
【請求項63】
担保となるSTの担保状態を示す担保パラメータと、
前記担保パラメータへの、STの売却、レンディング・再担保の処理不能の状態や、レンディング・再担保の処理可能の状態等、複数種類の担保状態の設定を選択可能に受け付ける機能を有する担保状態設定手段と、
担保パラメータに設定された担保状態に基づき、担保となっているSTに対する売却、レンディング・再担保等の処理を制御する機能を有する担保ST処理制御手段と、
貸付者との間で担保設定時に締結した貸付契約の満了時において、債務不履行となった場合に、前記担保状態設定手段を介して担保パラメータに設定されている担保状態の設定内容を手動により又は自動的に解除する機能を有する担保パラメータ設定内容変更手段又は担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクトと、
をさらに有し、
前記担保ST処理制御手段は、前記担保パラメータ設定内容変更手段又は前記担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクトにより担保パラメータの設定内容が解除されたときに、担保として提供されているSTの売却及び権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する機能をさらに有する
ことを特徴とする請求項50に記載のST取引処理システム。
【請求項64】
前記コモディティ資産を資産原資としてトークン化した社債型のSTは、STの発行体より定期的に発行され、発行の都度、償還期限や金利に相当する内容が全て同一となる証券特性を有し、セカンダリー取引段階においては、トークンとしてのSTの取引が、回号の異なるSTを1つの銘柄に集約して行われるストラクチャード社債型セキュリティトークンであって、
前記ST管理構造部は、
権利管理簿に、当該STが発行される都度、当該STの保有者の証券特性を有するデジタル権利情報の一部として回号を付加して記録する機能を有する回号付加権利情報記録手段と、
権利管理簿上において、回号が付加された当該STの権利情報を回号単位に管理する機能を有する回号付加権利情報管理手段と、
トークンとしての当該STのアドレスもしくはウォレット処理の対象において、回号の異なる全ての当該STを同一銘柄のトークンとして管理する機能を有する回号集約トークン管理手段と、
を有することを特徴とする請求項50に記載のSTの取引処理システム。
【請求項65】
前記ST管理構造部は、セカンダリー取引段階での、流動性調整者や第2の取引サイドにおける、回号の異なる全ての当該STについての帳票や口座の資産管理、注文・約定系の情報の管理について、回号単位に処理することなく、同一銘柄として処理する機能を有する銘柄単位管理手段をさらに有することを特徴とする請求項64に記載のSTの取引処理システム。
【請求項66】
前記ST管理構造部は、トークンとしての当該STについての注文約定後の権利管理簿上での名義変更を、日付変更時に前日までのトークンとしての当該STについての全ての取引分を集計した後に一括で行う機能を有する名義変更手段をさらに有することを特徴とする請求項64に記載のSTの取引処理システム。
【請求項67】
前記ST管理構造部は、
権利管理簿に記録されている証券特性を有するデジタル権利情報における当該STの売り方データを、個人の識別情報である原簿ID単位で昇順にソートする機能を有する売り方データソート手段と、
前記売り方データソート手段がソートした当該STの売り方データにおいて、当該識別情報である原簿IDで特定される当該STの保有者の保有する当該STの証券特性を有するデジタル権利情報における回号が複数種類である場合、保有データ数の少ない回号の当該STの売り方データを優先して売却対象となり、当該識別情報である原簿IDで特定される当該STの保有者の保有する、異なる回号同士の当該STの売り方データの保有データ数が同数である場合、回号番号の小さい当該STの売り方データを優先して売却対象となるように並べ替え、並べ替えた売り方データを当該STの売却優先情報として一時的にストックする機能を有する売却優先情報並べ替え及びストック手段と、
権利管理簿上の取引当日の当該STの買い方データを、個人の識別情報である原簿ID単位で昇順にソートする機能を有する買い方データソート手段と、
前記買い方データソート手段がソートした当該STの買い方データを、前記売却優先情報並べ替え及びストック手段を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく機能を有する買い方データ割当手段と、
をさらに有することを特徴とする請求項64に記載のSTの取引処理システム。
【請求項68】
前記買い方データ割当手段は、割り当て可能な当該STの買い方データの回号が複数種類存在する場合、回号番号の小さい当該STの買い方データを優先して、前記売却優先情報並べ替え及びストック手段を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく機能をさらに有することを特徴とする請求項67に記載のSTの取引処理システム。
【請求項69】
トークンの取引者が権利管理簿の閲覧操作を行う場合、取引の当事者として取引に関与する回号のみの当該STの取引データを回号単位に出力表示するように制御する機能を有する閲覧表示制御手段をさらに有することを特徴とする請求項64に記載のSTの取引処理システム。
【請求項70】
前記閲覧表示制御手段は、権利管理簿の閲覧操作を行う取引者に対し、該当する銘柄のSTの取引データのうち、各回号の上位10名の識別情報である原簿ID及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報である原簿IDのみの取引データを出力表示するように制御する機能をさらに有することを特徴とする請求項69に記載のSTの取引処理システム。
【請求項71】
前記閲覧表示制御手段は、前記出力表示対象に該当する取引データにおける前記各回号の上位10名の識別情報である原簿ID及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報である原簿IDのみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する住所の出力表示を市区のみに制限する機能をさらに有することを特徴とする請求項70に記載のSTの取引処理システム。
【請求項72】
前記閲覧表示制御手段は、前記出力表示対象に該当する取引データにおける前記各回号の上位10名の識別情報である原簿ID及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報である原簿IDのみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する氏名の出力表示を苗字のみに制限する機能をさらに有することを特徴とする請求項70に記載のSTの取引処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コモディティ資産(貴金属(ゴールド等)、CO排出権、エネルギー(原油や電力等))を担保としてトークン化した、証券特性を有する社債型のST(ストラクチャード社債型セキュリティトークン)等の取引処理システムに関する。
なお、本願明細書における「システム」とは、コンピュータや他の電子機器、ソフトウェア、通信ネットワーク、データなどの要素を組み合わせて構成された、ソフトウェアによる情報処理を、ハードウェア資源を用いて具体的に実現するコンピュータシステムを意味する。
【背景技術】
【0002】
発行体により発行される証券を、証券会社が引き受け(一括購入し)て販売する場合は、証券を引き受けた証券会社が販売のリスク(販売できなかった場合の損失発生)を負うことになる。
このため、発行体により発行される証券については、証券会社による引受での販売ではない、単純な募集方式での販売も存在するが、単純募集方式にて販売する場合は、証券の発行体が販売のリスク(販売できなかった場合の損失発生)を負うことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本来、このような証券の発行に伴い発行側、引受側に生じ得る販売のリスクは、一度に大量の証券を発行することに起因すると考えられる。
そこで、本件発明者は、当該リスクを抑えるための方策として、発行体により一度に大量に発行されるコモディティを資産原資とした証券特性を有するST(ストラクチャード社債型セキュリティトークン)等の販売を引受側で小刻みに行うことを考えた。
【0004】
ところで、コモディティを資産原資としたSTの発行方法としては、コモディティを「信託」した「ETF(Exchange Traded Funds)」タイプの発行方法がある。
しかし、信託型のSTの発行方法は、信託コストがかかり、コモディティの所有量に対して、年間で信託コストに相当する分がSTの保有量から削減されてしまう等のデメリットが発生する等、STの保有によるリスクが内在し、証券特性としては好ましくない。
【0005】
信託しないでSTを発行する方法としては、コモディティを扱う総合商社が「社債」扱いとしてSTを発行すること等が考えられる。
しかし、社債の場合は、発行量を決めて即時に販売することが前提条件となり、発行量が固定される。このため、ゴールドをトークン化した社債トークンの価格が市場価格には連動せず、流動性の確保が難しくなることが懸念される。
【0006】
そこで、本件発明者は、社債トークンの発行体(コモデティを扱う総合商社)により一度に発行される社債トークンを、社債トークンの販売側(社債トークンを販売する証券会社等)が小刻みに販売していくことで、見かけ上は社債トークンの発行量を可変となるようにし、社債トークンの販売価格を市場価格に連動させて流動性の調整を行うことができるようにすることを考え、検討、考察を重ねた。
【0007】
ただし、そのようにする場合は、一度に発行される社債トークンを、社債トークンの引受側(証券会社等)の自己が一括で引き受けるため、その引受リスク(社債トークンの保有期間内において引き受けた社債トークンの市場価格の下落変動リスク)が発生すると考えられる。
【0008】
社債トークンの市場価格の下落変動リスクを回避するためには、社債トークンの引受側(証券会社等)は、社債トークンの引受量と同等量のコモディティの売りヘッジ契約をOTC(Over The Center:店頭取引、相対取引)で社債トークンの発行体である総合商社と締結する必要があると考えられる。
ヘッジ契約を締結後、社債トークンの販売側(社債トークンを販売する証券会社等)は、社債トークンの発行体である総合商社から一括で引き受けた社債トークンを定期的に販売することになるが、社債トークンを売却したときに、売却相当量の売りヘッジ分のコモディティを解消(売りヘッジ分のコモディティの買い戻し)する必要がある。
しかし、これらの処理を行うのは非常に面倒である。
【0009】
また、第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)からの注文と第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社よりなるSTの発行体であって、ST発行後のセカンダリー取引段階においてヘッジの買い側となるヘッジ提供者をなすST発行体や、ST発行後のセカンダリー取引段階において流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)からの注文とを約定処理する場合、次の点が流動性を確保するための障害になると考えられる。
・社債トークンの一般顧客への販売を主とした第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)からの注文は、基本的にリテール注文を顧客から受けているため、小口注文が殆どであり、最低取引単位が小さいのに対し、流動性の供給を行う第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社よりなるSTの発行体であって、ST発行後のセカンダリー取引段階においてヘッジの買い側となるヘッジ提供者をなすST発行体や、ST発行後のセカンダリー取引段階において流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)からの注文は、ホールセール注文であって、大口注文が殆どであり、最低取引単位が大きい(小口注文における最低取引単位の100~10000倍など)点。
【0010】
また、第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社等)からの注文が社債トークンの「発行」に関係し、発行された社債トークンを第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)に販売する場合、第1の取引サイドである社債トークンの発行体による社債トークンの発行単位での金融監督庁への発行申請と、発行体により発行された社債トークンを引き受ける引受者による引受報告を行う必要がある。しかし、これを随時行うことは大変である。
このため、社債トークンの発行単位を大きくとり、発行側より発行された社債トークンを、引受側が小刻みに販売することが望ましいと考えられる。
しかし、上述したとおり、一度に大量の証券を発行することには、発行側、引受側にリスクが伴う。
【0011】
本発明は、上記従来の課題を鑑みてなされたものであり、第1の取引サイドから一度の大量に発行されるST発行に伴う発行側、引受側のリスクを極力無くしながら、第1の取引サイドから発行される大口のSTの流動性を向上させ、取引単位にギャップのある第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引を効率的且つ迅速に処理可能なST取引処理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第1の形態によるST取引処理システムは、ブロックチェーン等の分散台帳技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデータを用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトもしくはサーバアプリケーションを備えて構築された、コモディティ資産(貴金属(ゴールド等)、CO排出権、エネルギー(原油や電力等))を資産原資(担保としての取り扱いになるもの)としてトークン化した、証券特性を有する社債型のST(ストラクチャード社債型セキュリティトークン等)の取引処理システムであって、第1の取引サイド(コモディティを扱う総合商社よりなるSTの発行体であって、ST発行後のセカンダリー取引段階においてヘッジの買い側となるヘッジ提供者をなすST発行体や、ST発行後のセカンダリー取引段階において流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等のホールセール処理側)と第2の取引サイド(発行されたSTを顧客と取引する証券会社等のリテール処理側)との間に介在し、流動性調整者の自己のSTのポジション取りにより、第2の取引サイドと第1の取引サイドとにおける取引(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)単位のギャップを吸収して、第1の取引サイド、第2の取引サイド双方のST取引の流動性を調整する機能を有する流動性調整手段を有し、前記流動性調整手段は、STの発行体から一度に大量に発行されるSTを流動性調整者に一括で購入して引き受けさせる機能を有するST引受手段と、流動性調整者に引き受けさせたSTを流動性調整者の自己のポジションとしてストックする機能を有するSTポジションストック手段と、STの発行体に対しSTの引受のための購入資金を流動性調整者に借り入れさせる機能を有するST引受資金借入手段と、STの発行体に対し購入したSTを担保として流動性調整者に提供させる機能を有するST担保提供手段と、STの発行体との間でSTの購入資金分のコモディティ現物の売りヘッジ契約を流動性調整者に締結させる機能を有するヘッジ締結手段と、ST発行後のセカンダリー取引段階において、前記STポジションストック手段を介してストックしているSTについての、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)に応じた取引を行う機能を有するストックST取引手段と、を有し、前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドからの注文と第1の取引サイドからの注文又はヘッジ解消・追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)の夫々に対し流動性調整者の自己相対を介して対当処理を行う機能を有する自己相対対当処理手段と、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの買い注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ解消指示の電文を返す機能を有する第1の約定通知手段と、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)に対する、流動性調整者からのヘッジ解消指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ解消指示分の買い注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約のうちのヘッジ解消指示分を削減させる機能を有するヘッジ解消手段と、第2の取引サイドから現金類を受け取り第1の取引サイドへ渡すとともに、担保として提供していたSTのうち当該約定分のSTを第1の取引サイドから受け取り第2の取引サイドへ渡す機能を有する第1の清算処理仲介手段と、ストックしていたSTのポジションのうち当該約定分のSTのポジション量を削減する機能を有するストックSTポジション量削減手段と、を有することを特徴とする。
なお、本願明細書における「スマートコントラクト」とは、ブロックチェーン上などで稼働するプログラム類であって、ブロックチェーンにおけるトランザクションのデータ処理を、ブロックチェーンの外部から取り込まれた情報をトリガーとして自動的に執行するプログラムを意味し、ノードという分散された環境で、並列的に処理できるものである。
【0013】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記ストックST取引手段は、 第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ追加指示の電文を返す機能を有する第2の約定通知手段と、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)に対する、流動性調整者からのヘッジ追加指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ追加指示分の売り注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約に対しヘッジ追加指示分を追加する機能を有するヘッジ追加手段と、第1の取引サイドから現金類を受け取り第2の取引サイドへ渡すとともに、当該約定分のSTを第2の取引サイドから受け取り第1の取引サイドへ渡す機能を有する第2の清算処理仲介手段と、ストックしていたSTのポジションに対し当該約定分のSTのポジション量を増加する機能を有するストックSTポジション量増加手段と、をさらに有するのが好ましい。
【0014】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記ストックST取引手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から市場価格として受け取る売りと買いの気配をなすIOI(相対取引方式による取引意思表示)情報に基づく流動性調整者レートを算出する機能を有するレート算出手段と、前記レート算出手段が算出した流動性調整者レートを第2の取引サイドに提供する機能を有するレート提供手段と、をさらに有するのが好ましい。
【0015】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記ストックST取引手段は、外部から市場価格として受け取る売りと買いの気配をなすIOI(相対取引方式による取引意思表示)情報、もしくは当該IOI情報に類似する情報、もしくは当該IOI情報と当該IOI情報に類似する情報とを合成した情報に基づく参考レートを算出する機能を有する参考レート算出手段と、前記参考レート算出手段が算出した参考レートに基づく注文をみなし注文として、対当条件を充足する第2の取引サイドの注文をIOI(相対取引方式による取引意思表示)方式で非公開に探索する機能を有する対当注文探索手段と、をさらに有するのが好ましい。
【0016】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記第1の清算処理仲介手段は、第2の取引サイドより対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に当該金額の現金類を渡して、担保として提供していたうち、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第2の取引サイドに渡す、RTGS的な清算処理を行う機能を有するのが好ましい。
【0017】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体より対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行う機能を有するのが好ましい。
【0018】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記第2の清算処理仲介手段は、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行ったときに、STを消却する機能をさらに有するのが好ましい。
【0019】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から現金類を借り受けて第2の取引サイドに当該金額の現金類を支払うと同時に、第2の取引サイドから該当約定分のSTを受け取り、受け取ったSTを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に担保として渡す機能をさらに有するのが好ましい。
【0020】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記第1の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りの現金類とSTとの夫々を一括でDVP処理する又はRTGS的に処理する機能をさらに有するのが好ましい。
【0021】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りの現金類とSTとの夫々を一括でDVP処理する又はRTGS的に処理する機能をさらに有するのが好ましい。
【0022】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドのSTの買い過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて少なくなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、追加でストックの基本量からの不足分のSTの新規発行・引受契約を締結し、STのポジションのストックの残量を調整する機能を有する第1のストック残量調整手段をさらに有するのが好ましい。
【0023】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドのSTの売り過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて多くなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、ストックの基本量からの過剰分のSTのポジションを消却(発行済のSTのポジションのストックの残量を削減)する契約を締結する機能を有する第2のストック残量調整手段をさらに有するのが好ましい。
【0024】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドからのSTの売り注文に対し、当該STの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足する当該STを購入してそのまま保有し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、STのポジションのストックの残量の調整のための処理を指示しないように制御する機能を有する第3のストック残量調整手段をさらに有するのが好ましい。
【0025】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、STの管理母体として、権利管理簿と、STの保有アドレス(ウォレット)とを有し、発行体から、現金類を借り入れ、借り入れた現金類で引受対象となるSTを購入し、購入したSTを担保として発行体に提供するSTの引受者が、権利管理簿にSTの保有者として記録されるとともに、発行体が担保として受け取るSTは発行体側のアドレス(ウォレット)に存在し、STの保有アドレス(ウォレット)と権利管理簿とがリンクし、権利管理簿に記録されているデジタル資産としてのSTの量をベースとしてトークンとしてのSTを生成できるとともに、権利管理簿に記録されるデジタル資産としてのSTの保有者と、実際にトークンとしてのSTをアドレス(ウォレット)に保有する保有者とを異ならせて処理できるST管理構造部を備えるのが好ましい。
【0026】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記流動性調整手段は、担保ST管理用スマートコントラクトをさらに有し、前記担保ST管理用スマートコントラクトは、STの引受者である流動性調整者がSTの発行体に対し担保として提供したSTを、権利管理簿上での保有者の名義を変更することなく保管する機能を有するのが好ましい。
【0027】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記流動性調整手段は、STの発行体からの流動性調整者の引受において発行体が貸し付けた購入代金の担保としてストックしているSTを、レンディングでの貸付用トークンとして用いることができる機能を有する担保STレンディング手段をさらに有するのが好ましい。
【0028】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記担保STレンディング手段は、レンディング管理用スマートコントラクトを有し、前記レンディング管理用スマートコントラクトは、借り手より提供されるべき所定の担保対象物を設定する機能と、設定した所定の担保対象物が借り手より提供されたときに、担保としてストックしているSTを前記担保対象物と引き換えに貸付用トークンとして貸し出す機能と、レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する機能と、を有するのが好ましい。
【0029】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記担保STレンディング手段は、権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段をさらに有し、前記権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段は、レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更を、1日又は1週間単位等、定期的に行う機能を有するのが好ましい。
【0030】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記担保STレンディング手段は、STのレンディングを、クリアリング(借入期間が翌日や数日のレポ取引的な超短期的な取引)、空売り(借入期間が長期間の場合を想定した取引)の用途として提供できる機能を有するのが好ましい。
【0031】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記自己相対対当処理手段は、通常は第2の取引サイドに対し、STの売り・買いの注文を受け付け、PTS方式等での流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行い、第2の取引サイド間では注文が流動性調整者の自己相対を介した対当処理によって対当しない場合、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体を当該注文の間接的な取引相手として流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行う機能を有するのが好ましい。
【0032】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記自己相対対当処理手段は、当該注文の取引相手とした第1の取引サイドにおける、特定の接続先の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)に対しては、STの売り・買いの注文概念として受け付けさせ、他の特定の接続先の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)に対しては、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示として受け付けさせるようにする機能をさらに有するのが好ましい。
【0033】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記ストックST取引手段は、前記自己相対対当処理手段によるSTの売り・買いの注文と、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示とを、多様に組み合わせた設定を受け付ける機能を有するST売・買及びヘッジ締結・解消の組み合わせ設定受付手段をさらに有するのが好ましい。
【0034】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記自己相対対当処理手段は、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)については、第2の取引サイドからの買い注文に対し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からの売りヘッジの解消の意思表示を対当させることができる機能をさらに有するのが好ましい。
【0035】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記自己相対対当処理手段は、第2の取引サイドからの現物のSTの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)の売りヘッジの締結の意思表示を対当させることができる機能をさらに有するのが好ましい。
【0036】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記自己相対対当処理手段は、第2の取引サイドからの現物のトークンの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)の単純な買い注文を対当させることができる機能をさらに有するのが好ましい。
【0037】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記ストックST取引手段は、第1の取引サイドの所定の取引業者において、売り側と買い側が共に売り・買いの注文である場合、売り側と買い側が共にヘッジ設定・解消の意思表示である場合、もしくは売り側がヘッジ解消の意思表示と買い側が買いの注文との組み合わせである場合等、取引業者の接続単位(ヘッジ提供者をなすST発行体、流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等の取引業者種別)、売り側と買い側の発注における注文型、ヘッジ型の意思表示等の注文形態の設定を受け付ける機能を有する第1の取引サイド接続単位、注文形態設定受付手段をさらに有するのが好ましい。
【0038】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、担保となるSTの担保状態を示す担保パラメータと、前記担保パラメータへの、STの売却、レンディング・再担保の処理不能の状態や、レンディング・再担保の処理可能の状態等、複数種類の担保状態の設定を選択可能に受け付ける機能を有する担保状態設定手段と、担保パラメータに設定された担保状態に基づき、担保となっているSTに対する売却、レンディング・再担保等の処理を制御する機能を有する担保ST処理制御手段と、貸付者との間で担保設定時に締結した貸付契約の満了時において、債務不履行となった場合に、前記担保状態設定手段を介して担保パラメータに設定されている担保状態の設定内容を手動により又は自動的に解除する機能を有する担保パラメータ設定内容変更手段又は担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクトと、をさらに有し、前記担保ST処理制御手段は、前記担保パラメータ設定内容変更手段又は前記担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクトにより担保パラメータの設定内容が解除されたときに、担保として提供されているSTの売却及び権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する機能をさらに有するのが好ましい。
【0039】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記コモディティ資産を資産原資としてトークン化した社債型のSTは、STの発行体より定期的に発行され、発行の都度、償還期限や金利に相当する内容が全て同一となる証券特性を有し、セカンダリー取引段階においては、トークンとしてのSTの取引が、回号の異なるSTを1つの銘柄に集約して行われるストラクチャード社債型セキュリティトークンであって、前記ST管理構造部は、権利管理簿に、当該STが発行される都度、当該STの保有者の証券特性を有するデジタル権利情報の一部として回号を付加して記録する機能を有する回号付加権利情報記録手段と、権利管理簿上において、回号が付加された当該STの権利情報を回号単位に管理する機能を有する回号付加権利情報管理手段と、トークンとしての当該STのアドレス(ウォレット処理の対象)において、回号の異なる全ての当該STを同一銘柄のトークンとして管理する機能を有する回号集約トークン管理手段と、を有するのが好ましい。
【0040】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記ST管理構造部は、セカンダリー取引段階での、流動性調整者や第2の取引サイドにおける、回号の異なる全ての当該STについての帳票や口座の資産管理、注文・約定系の情報の管理について、回号単位に処理することなく、同一銘柄として処理する機能を有する銘柄単位管理手段をさらに有するのが好ましい。
【0041】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記ST管理構造部は、トークンとしての当該STについての注文約定後の権利管理簿上での名義変更を、日付変更時に前日までのトークンとしての当該STについての全ての取引分を集計した後に一括で行う機能を有する名義変更手段をさらに有するのが好ましい。
【0042】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記ST管理構造部は、権利管理簿に記録されている証券特性を有するデジタル権利情報における当該STの売り方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートする機能を有する売り方データソート手段と、前記売り方データソート手段がソートした当該STの売り方データにおいて、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する当該STの証券特性を有するデジタル権利情報における回号が複数種類である場合、保有データ数の少ない回号の当該STの売り方データを優先して売却対象となり、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する、異なる回号同士の当該STの売り方データの保有データ数が同数である場合、回号番号の小さい当該STの売り方データを優先して売却対象となるように並べ替え、並べ替えた売り方データを当該STの売却優先情報として一時的にストックする機能を有する売却優先情報並べ替え及びストック手段と、権利管理簿上の取引当日の当該STの買い方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートする機能を有する買い方データソート手段と、前記買い方データソート手段がソートした当該STの買い方データを、前記売却優先情報並べ替え及びストック手段を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく機能を有する買い方データ割当手段と、をさらに有するのが好ましい。
【0043】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記買い方データ割当手段は、割り当て可能な当該STの買い方データの回号が複数種類存在する場合、回号番号の小さい当該STの買い方データを優先して、前記売却優先情報並べ替え及びストック手段を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく機能をさらに有するのが好ましい。
【0044】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、トークンの取引者が権利管理簿の閲覧操作を行う場合、取引の当事者として取引に関与する回号のみの当該STの取引データを回号単位に出力表示するように制御する機能を有する閲覧表示制御手段をさらに有するのが好ましい。
【0045】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記閲覧表示制御手段は、権利管理簿の閲覧操作を行う取引者に対し、該当する銘柄のSTの取引データのうち、各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データを出力表示するように制御する機能をさらに有するのが好ましい。
【0046】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記閲覧表示制御手段は、前記出力表示対象に該当する取引データにおける前記各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する住所の出力表示を市区のみに制限する機能をさらに有するのが好ましい。
【0047】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、前記閲覧表示制御手段は、前記出力表示対象に該当する取引データにおける前記各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する氏名の出力表示を苗字のみに制限する機能をさらに有するのが好ましい。
【0048】
また、本発明の第2の形態によるST取引処理システムは、ブロックチェーン等の分散台帳技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデータを用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトもしくはサーバアプリケーションを備えて構築された、コモディティ資産(貴金属(ゴールド等)、CO排出権、エネルギー(原油や電力等))を資産原資(担としての取り扱いになるもの)としてトークン化した、証券特性を有する社債型のST(ストラクチャード社債型セキュリティトークン等)の取引処理システムであって、第1の取引サイド(コモディティを扱う総合商社よりなるSTの発行体であって、ST発行後のセカンダリー取引段階においてヘッジの買い側となるヘッジ提供者をなすST発行体や、ヘッジ提供者をなすST発行体からのSTを引き受ける主幹事証券会社、ST発行後のセカンダリー取引段階において流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等のホールセール処理側)と第2の取引サイド(発行されたSTを顧客と取引する証券会社等のリテール処理側)との間に介在し、流動性調整者の自己のSTのポジション取りにより、第2の取引サイドと第1の取引サイドとにおける取引(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)単位のギャップを吸収して、第1の取引サイド、第2の取引サイド双方のST取引の流動性を調整する機能を有する流動性調整手段を有し、前記流動性調整手段は、STの発行体から一度に大量に発行されるSTを主幹事証券会社に一括で購入して引き受けさせる機能を有するST引受手段と、主幹事証券会社に引き受けさせたSTを流動性調整者の自己のポジションとしてストックする機能を有するSTポジションストック手段と、STの発行体に対しSTの引受のための購入資金を主幹事証券会社に借り入れさせる機能を有するST引受資金借入手段と、STの発行体に対し購入したSTを担保として主幹事証券会社に提供させる機能を有するST担保提供手段と、STの発行体との間でSTの購入資金分のコモディティ現物の売りヘッジ契約を主幹事証券会社に締結させる機能を有するヘッジ締結手段と、ST発行後のセカンダリー取引段階において、前記STポジションストック手段を介してストックしているSTについての、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)に応じた取引を行う機能を有するストックST取引手段と、を有し、前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドからの注文と第1の取引サイドからの注文又はヘッジ解消・追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)の夫々に対し流動性調整者の自己相対を介して対当処理を行う機能を有する自己相対対当処理手段と、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの買い注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ解消指示の電文を返す機能を有する第1の約定通知手段と、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)に対する、流動性調整者からのヘッジ解消指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ解消指示分の買い注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約のうちのヘッジ解消指示分を削減させる機能を有するヘッジ解消手段と、第2の取引サイドから現金類を受け取り第1の取引サイドへ渡すとともに、担保として提供していたSTのうち当該約定分のSTを第1の取引サイドから受け取り第2の取引サイドへ渡す第1の清算処理仲介手段と、ストックしていたSTのポジションのうち当該約定分のSTのポジション量を削減するストックSTポジション量削減手段と、を有することを特徴とする。
【0049】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記ストックST取引手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には主幹事証券会社による該当量のヘッジ追加指示の電文を返す機能を有する第2の約定通知手段と、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が主幹事証券会社へのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)に対する、主幹事証券会社からのヘッジ追加指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ追加指示分の売り注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約に対しヘッジ追加指示分を追加する機能を有するヘッジ追加手段と、第1の取引サイドから現金類を受け取り第2の取引サイドへ渡すとともに、当該約定分のSTを第2の取引サイドから受け取り第1の取引サイドへ渡す機能を有する第2の清算処理仲介手段と、ストックしていたSTのポジションに対し当該約定分のSTのポジション量を増加する機能を有するストックSTポジション量増加手段と、をさらに有するのが好ましい。
【0050】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記ストックST取引手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から市場価格として受け取る売りと買いの気配をなすIOI(相対取引方式による取引意思表示)情報に基づく流動性調整者レートを算出する機能を有するレート算出手段と、前記レート算出提供手段が算出した流動性調整者レートを第2の取引サイドに提供する機能を有するレート提供手段と、をさらに有するのが好ましい。
【0051】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記ストックST取引手段は、外部から市場価格として受け取る売りと買いの気配をなすIOI(相対取引方式による取引意思表示)情報、もしくは当該IOI情報に類似する情報、もしくは当該IOI情報と当該IOI情報に類似する情報とを合成した情報に基づく参考レートを算出する機能を有する参考レート算出手段と、前記参考レート算出手段が算出した参考レートに基づく注文をみなし注文として、対当条件を充足する第2の取引サイドの注文をIOI(相対取引方式による取引意思表示)方式で非公開に探索する機能を有する対当注文探索手段と、をさらに有するのが好ましい。
【0052】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記第1の清算処理仲介手段は、第2の取引サイドより対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に当該金額の現金類を渡して、担保として提供していたうち、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第2の取引サイドに渡す、RTGS的な清算処理を行う機能を有するのが好ましい。
【0053】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体より対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行う機能を有するのが好ましい。
【0054】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記第2の清算処理仲介手段は、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行ったときに、STを消却する機能をさらに有するのが好ましい。
【0055】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から現金類を借り受けて第2の取引サイドに当該金額の現金類を支払うと同時に、第2の取引サイドから該当約定分のSTを受け取り、受け取ったSTを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に担保として渡す機能をさらに有するのが好ましい。
【0056】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記第1の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りの現金類とSTとの夫々を一括でDVP処理する又はRTGS的に処理する機能をさらに有するのが好ましい。
【0057】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りの現金類とSTとの夫々を一括でDVP処理する又はRTGS的に処理する機能をさらに有するのが好ましい。
【0058】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドのSTの買い過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて少なくなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、追加でストックの基本量からの不足分のSTの新規発行・引受契約を主幹事証券会社との間で締結させ、STのポジションのストックの残量を調整する機能を有する第1のストック残量調整手段をさらに有するのが好ましい。
【0059】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドのSTの売り過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて多くなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、ストックの基本量からの過剰分のSTのポジションを消却(発行済のSTのポジションのストックの残量を削減)する契約を締結する機能を有する第2のストック残量調整手段をさらに有するのが好ましい。
【0060】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドからのSTの売り注文に対し、当該STの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足する当該STを購入してそのまま保有し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、STのポジションのストックの残量の調整のための処理を指示しないように制御する機能を有する第3のストック残量調整手段をさらに有するのが好ましい。
【0061】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、STの管理母体として、権利管理簿と、STの保有アドレス(ウォレット)とを有し、発行体から、現金類を借り入れ、借り入れた現金類で引受対象となるSTを購入し、購入したSTを担保として発行体に提供するSTの引受者が、権利管理簿にSTの保有者として記録されるとともに、発行体が担保として受け取るSTは発行体側のアドレス(ウォレット)に存在し、STの保有アドレス(ウォレット)と権利管理簿とがリンクし、権利管理簿に記録されているデジタル資産としてのSTの量をベースとしてトークンとしてのSTを生成できるとともに、権利管理簿に記録されるデジタル資産としてのSTの保有者と、実際にトークンとしてのSTをアドレス(ウォレット)に保有する保有者とを異ならせて処理できるST管理構造部を備えるのが好ましい。
【0062】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記流動性調整手段は、担保ST管理用スマートコントラクトをさらに有し、前記担保ST管理用スマートコントラクトは、STの引受者である流動性調整者がSTの発行体に対し担保として提供したSTを、権利管理簿上での保有者の名義を変更することなく保管する機能を有するのが好ましい。
【0063】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記流動性調整手段は、STの発行体からの主幹事証券会社の引受において発行体が貸し付けた購入代金の担保としてストックしているSTを、レンディングでの貸付用トークンとして用いることができる機能を有する担保STレンディング手段をさらに有するのが好ましい。
【0064】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記担保STレンディング手段は、レンディング管理用スマートコントラクトを有し、前記レンディング管理用スマートコントラクトは、借り手より提供されるべき所定の担保対象物を設定する機能と、設定した所定の担保対象物が借り手より提供されたときに、担保としてストックしているSTを前記担保対象物と引き換えに貸付用トークンとして貸し出す機能と、レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する機能と、を有するのが好ましい。
【0065】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記担保STレンディング手段は、権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段をさらに有し、前記権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段は、レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更を、1日又は1週間単位等、定期的に行う機能を有するのが好ましい。
【0066】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記担保STレンディング手段は、STのレンディングを、クリアリング(借入期間が翌日や数日のレポ取引的な超短期的な取引)、空売り(借入期間が長期間の場合を想定した取引)の用途として提供できる機能を有するのが好ましい。
【0067】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記自己相対対当処理手段は、通常は第2の取引サイドに対し、STの売り・買いの注文を受け付け、PTS方式等での流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行い、第2の取引サイド間では注文が流動性調整者の自己相対を介した対当処理によって対当しない場合、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体を当該注文の間接的な取引相手として流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行う機能を有するのが好ましい。
【0068】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記自己相対対当処理手段は、当該注文の取引相手とした第1の取引サイドにおける、特定の接続先の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)に対しては、STの売り・買いの注文概念として受け付けさせ、他の特定の接続先の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)に対しては、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示として受け付けさせるようにする機能をさらに有するのが好ましい。
【0069】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記ストックST取引手段は、前記自己相対対当処理手段によるSTの売り・買いの注文と、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示とを、多様に組み合わせた設定を受け付ける機能を有するST売・買及びヘッジ締結・解消の組み合わせ設定受付手段をさらに有するのが好ましい。
【0070】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記自己相対対当処理手段は、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)については、第2の取引サイドからの買い注文に対し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からの売りヘッジの解消の意思表示を対当させることができる機能をさらに有するのが好ましい。
【0071】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記自己相対対当処理手段は、第2の取引サイドからの現物のSTの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)の売りヘッジの締結の意思表示を対当させることができる機能をさらに有するのが好ましい。
【0072】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記自己相対対当処理手段は、第2の取引サイドからの現物のトークンの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)の単純な買い注文を対当させることができる機能をさらに有するのが好ましい。
【0073】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記ストックST取引手段は、第1の取引サイドの所定の取引業者において、売り側と買い側が共に売り・買いの注文である場合、売り側と買い側が共にヘッジ設定・解消の意思表示である場合、もしくは売り側がヘッジ解消の意思表示と買い側が買いの注文との組み合わせである場合等、取引業者の接続単位(ヘッジ提供者をなすST発行体、流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等の取引業者種別)、売り側と買い側の発注における注文型、ヘッジ型の意思表示等の注文形態の設定を受け付ける機能を有する第1の取引サイド接続単位、注文形態設定受付手段をさらに有するのが好ましい。
【0074】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、担保となるSTの担保状態を示す担保パラメータと、前記担保パラメータへの、STの売却、レンディング・再担保の処理不能の状態や、レンディング・再担保の処理可能の状態等、複数種類の担保状態の設定を選択可能に受け付ける機能を有する担保状態設定手段と、担保パラメータに設定された担保状態に基づき、担保となっているSTに対する売却、レンディング・再担保等の処理を制御する機能を有する担保ST処理制御手段と、貸付者との間で担保設定時に締結した貸付契約の満了時において、債務不履行となった場合に、前記担保状態設定手段を介して担保パラメータに設定されている担保状態の設定内容を手動により又は自動的に解除する機能を有する担保パラメータ設定内容変更手段又は担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクトと、をさらに有し、前記担保ST処理制御手段は、前記担保パラメータ設定内容変更手段又は前記担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクトにより担保パラメータの設定内容が解除されたときに、担保として提供されているSTの売却及び権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する機能をさらに有するのが好ましい。
【0075】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記コモディティ資産を資産原資としてトークン化した社債型のSTは、STの発行体より定期的に発行され、発行の都度、償還期限や金利に相当する内容が全て同一となる証券特性を有し、セカンダリー取引段階においては、トークンとしてのSTの取引が、回号の異なるSTを1つの銘柄に集約して行われるストラクチャード社債型セキュリティトークンであって、前記ST管理構造部は、権利管理簿に、当該STが発行される都度、当該STの保有者の証券特性を有するデジタル権利情報の一部として回号を付加して記録する機能を有する回号付加権利情報記録手段と、権利管理簿上において、回号が付加された当該STの権利情報を回号単位に管理する機能を有する回号付加権利情報管理手段と、トークンとしての当該STのアドレス(ウォレット処理の対象)において、回号の異なる全ての当該STを同一銘柄のトークンとして管理する機能を有する回号集約トークン管理手段と、を有するのが好ましい。
【0076】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記ST管理構造部は、セカンダリー取引段階での、流動性調整者や第2の取引サイドにおける、回号の異なる全ての当該STについての帳票や口座の資産管理、注文・約定系の情報の管理について、回号単位に処理することなく、同一銘柄として処理する機能を有する銘柄単位管理手段をさらに有するのが好ましい。
【0077】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記ST管理構造部は、トークンとしての当該STについての注文約定後の権利管理簿上での名義変更を、日付変更時に前日までのトークンとしての当該STについての全ての取引分を集計した後に一括で行う機能を有する名義変更手段をさらに有するのが好ましい。
【0078】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記ST管理構造部は、権利管理簿に記録されている証券特性を有するデジタル権利情報における当該STの売り方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートする機能を有する売り方データソート手段と、前記売り方データソート手段がソートした当該STの売り方データにおいて、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する当該STの証券特性を有するデジタル権利情報における回号が複数種類である場合、保有データ数の少ない回号の当該STの売り方データを優先して売却対象となり、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する、異なる回号同士の当該STの売り方データの保有データ数が同数である場合、回号番号の小さい当該STの売り方データを優先して売却対象となるように並べ替え、並べ替えた売り方データを当該STの売却優先情報として一時的にストックする機能を有する売却優先情報並べ替え及びストック手段と、権利管理簿上の取引当日の当該STの買い方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートする機能を有する買い方データソート手段と、前記買い方データソート手段がソートした当該STの買い方データを、前記売却優先情報並べ替え及びストック手段を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく機能を有する買い方データ割当手段と、をさらに有するのが好ましい。
【0079】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記買い方データ割当手段は、割り当て可能な当該STの買い方データの回号が複数種類存在する場合、回号番号の小さい当該STの買い方データを優先して、前記売却優先情報並べ替え及びストック手段を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく機能をさらに有するのが好ましい。
【0080】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、トークンの取引者が権利管理簿の閲覧操作を行う場合、取引の当事者として取引に関与する回号のみの当該STの取引データを回号単位に出力表示するように制御する機能を有する閲覧表示制御手段をさらに有するのが好ましい。
【0081】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記閲覧表示制御手段は、権利管理簿の閲覧操作を行う取引者に対し、該当する銘柄のSTの取引データのうち、各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データを出力表示するように制御する機能をさらに有するのが好ましい。
【0082】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記閲覧表示制御手段は、前記出力表示対象に該当する取引データにおける前記各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する住所の出力表示を市区のみに制限する機能をさらに有するのが好ましい。
【0083】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、前記閲覧表示制御手段は、前記出力表示対象に該当する取引データにおける前記各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する氏名の出力表示を苗字のみに制限する機能をさらに有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0084】
本発明によれば、第1の取引サイドから一度の大量に発行されるST発行に伴う発行側、引受側のリスクを極力無くしながら、第1の取引サイドから発行される大口のSTの流動性を向上させ、取引単位にギャップのある第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引を効率的且つ迅速に処理可能なST取引処理システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1】本発明の第1実施形態に係るST取引処理システムの構成を示す説明図で、(a)は全体構成を概略的に示す図、(b)は(a)の構成による流動性調整機能の概念図である。
図2図1のST取引処理システムにおける流動性調整手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図3図1のST取引処理システムにおける流動性調整手段の構成要素を概略的に示す説明図である。
図4図3の流動性調整手段におけるST引受手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図5図3の流動性調整手段におけるSTポジションストック手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図6図3の流動性調整手段におけるST引受資金借入手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図7図3の流動性調整手段におけるST担保提供手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図8図3の流動性調整手段におけるヘッジ締結手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図9図3の流動性調整手段におけるストックST取引手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図10図3の流動性調整手段におけるストックST取引手段の構成要素を概略的に示す説明図である。
図11図10のストックST取引手段における自己相対対当処理手段に備わる機能の一部の概要を示す説明図である。
図12図10のストックST取引手段における自己相対対当処理手段に備わる機能の他部の概要を示す説明図である。
図13図10のストックST取引手段における第1の約定通知手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図14図10のストックST取引手段におけるヘッジ解消手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図15図10のストックST取引手段における第1の清算処理仲介手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図16図10のストックST取引手段におけるストックSTポジション量削減手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図17図10のストックST取引手段における第2の約定通知手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図18図10のストックST取引手段におけるヘッジ追加手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図19図10のストックST取引手段における第2の清算処理仲介手段に備わる機能の一部の概要を示す説明図である。
図20図10のストックST取引手段における第2の清算処理仲介手段に備わる機能の他部の概要を示す説明図である。
図21図10のストックST取引手段におけるストックSTポジション量増加手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図22図10のストックST取引手段におけるレート算出手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図23図10のストックST取引手段におけるレート提供手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図24図10のストックST取引手段における参考レート産出手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図25図10のストックST取引手段における対当注文探索手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図26図10のストックST取引手段における第1のストック残量調整手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図27図10のストックST取引手段における第2のストック残量調整手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図28図10のストックST取引手段における第3のストック残量調整手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図29図10のストックST取引手段におけるST売・買及びヘッジ締結・解消の組み合わせ設定受付手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図30図10のストックST取引手段における第1の取引サイド接続単位、注文形態設定受付手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図31図3の流動性調整手段における担保ST管理用スマートコントラクトに備わる機能の概要を示す説明図である。
図32図3の流動性調整手段における担保STレンディング手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図33図3の流動性調整手段における担保STレンディング手段の構成要素を概略的に示す説明図である。
図34図32の担保STレンディング手段におけるレンディング管理用スマートコントラクトに備わる機能の概要を示す説明図である。
図35図32の担保STレンディング手段における権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図36図1のST取引処理システムにおけるST管理構造部に備わる機能の概要を示す説明図である。
図37図1のST取引処理システムにおけるST管理構造部の構成要素を概略的に示す説明図である。
図38図37のST管理構造部における回号付加権利情報記録手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図39図37のST管理構造部における回号付加権利情報管理手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図40図37のST管理構造部における回号集約トークン管理手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図41図37のST管理構造部における銘柄単位管理手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図42図37のST管理構造部における名義変更手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図43図37のST管理構造部における売り方データソート手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図44図37のST管理構造部における売却優先情報並べ替え及びストック手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図45図37のST管理構造部における買い方データソート手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図46図37のST管理構造部における買い方データ割当手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図47図1のST取引処理システムにおける担保状態設定手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図48図1のST取引処理システムにおける担保ST処理制御手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図49図1のST取引処理システムにおける担保パラメータ設定内容変更手段(又は担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクト)に備わる機能の概要を示す説明図である。
図50図1のST取引処理システムにおける閲覧表示制御手段に備わる機能の一部の概要を示す説明図である。
図51図1のST取引処理システムにおける閲覧表示制御手段に備わる機能の他部の概要を示す説明図である。
図52】第1実施形態のST取引処理システムを用いた、発行体からのSTの引受時の処理の流れを示す説明図である。
図53】第1実施形態のST取引処理システムを用いた、発行体から引き受けたSTの売買取引時の処理の流れを示す説明図である。
図54】第1実施形態のST取引処理システムを用いた、STの約定時の処理の流れの一部を示す説明図である。
図55】第1実施形態のST取引処理システムを用いた、STの約定時の処理の流れの他部を示す説明図である。
図56】第1実施形態のST取引処理システムを用いた、STのストック量の調整処理の流れを示す説明図である。
図57】第1実施形態のST取引処理システムを用いた、STのレンディングを活用した処理の流れを示す説明図である。
図58】第1実施形態のST取引処理システムを用いた、STの流動性調整のための設定受付処理の流れを示す説明図である。
図59】第1実施形態のST取引処理システムを用いた、担保パラメータの設定状態に基づく処理の流れを示す説明図である。
図60】第1実施形態のST取引処理システム1を用いた、STの取引に伴う回号付きSTの管理に関する処理の流れを示す説明図である。
図61】第1実施形態のST取引処理システム1を用いた、STの取引における対当処理時の権利管理簿上に記録されている回号付きSTの割り当てに関する処理の流れを示す説明図である。
図62】第1実施形態のST取引処理システム1を用いた、STの取引における対当処理時の権利管理簿上に記録されている回号付きSTの割り当て処理の具体例を権利管理簿に記録されるデータを用いて示す説明図である。
図63】第1実施形態のST取引処理システム1を用いた、権利管理簿の閲覧操作を行う取引者に対する権利管理簿上に記録されている回号付きSTの閲覧表示処理を概念的に示す説明図である。
図64】本発明の第2実施形態に係るST取引処理システムの構成を示す説明図で、(a)は全体構成を概略的に示す図、(b)は(a)の構成による流動性調整機能の概念図である。
図65図64のST取引処理システムにおける流動性調整手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図66図64のST取引処理システムにおける流動性調整手段の構成要素を概略的に示す説明図である。
図67図66の流動性調整手段におけるST引受手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図68図66の流動性調整手段におけるSTポジションストック手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図69図66の流動性調整手段におけるST引受資金借入手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図70図66の流動性調整手段におけるST担保提供手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図71図66の流動性調整手段におけるヘッジ締結手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図72図66の流動性調整手段におけるストックST取引手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図73図66の流動性調整手段におけるストックST取引手段の構成要素を概略的に示す説明図である。
図74図73のストックST取引手段における第2の約定通知手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図75図73のストックST取引手段におけるヘッジ追加手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図76図73のストックST取引手段における第1のストック残量調整手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図77図66の流動性調整手段における担保STレンディング手段に備わる機能の概要を示す説明図である。
図78図66の流動性調整手段における担保STレンディング手段の構成要素を概略的に示す説明図である。
図79】第2実施形態のST取引処理システムを用いた、発行体からのSTの引受時の処理の流れを示す説明図である。
図80】第2実施形態のST取引処理システムを用いた、発行体から引き受けたSTの売買取引時の処理の流れを示す説明図である。
図81】第2実施形態のST取引処理システムを用いた、STの約定時の処理の流れの一部を示す説明図である。
図82】第2実施形態のST取引処理システムを用いた、STの約定時の処理の流れの他部を示す説明図である。
図83】第2実施形態のST取引処理システムを用いた、STのストック量の調整処理の流れを示す説明図である。
図84】第2実施形態のST取引処理システムを用いた、STのレンディングを活用した処理の流れを示す説明図である。
図85】本発明のST取引処理システムにおける特徴的な機能を通常のクロッシング処理と対比して示す説明図で、(a)は通常のクロッシング処理の概念図、(b)は本発明のST取引処理における流動性調整機能の概念図である。
図86】第1実施形態のST取引処理システムを用いた流動性調整機能を介在させた処理の一例を概略的に示す説明図である。
図87】第2実施形態のST取引処理システムを用いた流動性調整機能を介在させた処理の一例を概略的に示す説明図である。
図88】第1実施形態のST取引処理システムを用いた流動性調整機能を介在させた処理におけるSTの管理形態の一例を示す説明図である。
図89】第1実施形態のST取引処理システムを用いた流動性調整機能を介在させた処理におけるSTの管理形態におけるSTの償却形態を示す説明図で、(a)は随時償却の例示す図、(b)は一括償却の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
実施形態の説明に先立ち、本発明を導出するに至った経緯、及び本発明の作用効果について説明する。
【0087】
証券の発行に伴い生じ得る、引受側、発行側のリスク
発行体により発行される証券を、証券会社が引き受け(一括購入し)て販売する場合は、証券を引き受けた証券会社が販売のリスク(販売できなかった場合の損失発生)を負うことになる。
このため、発行体により発行される証券については、証券会社による引受での販売ではない、単純な募集方式での販売も存在するが、単純募集方式にて販売する場合は、証券の発行体が販売のリスク(販売できなかった場合の損失発生)を負うことになる。
【0088】
証券の発行に伴い生じ得る販売のリスクの抑制策の検討、考察
本来、このような証券の発行に伴い発行側、引受側に生じ得る販売のリスクは、一度に大量の証券を発行することに起因すると考えられる。
そこで、本件発明者は、当該リスクを抑えるための方策として、発行体により一度に大量に発行される証券の販売を引受側で小刻みに行うことを考えた。
【0089】
そして、本件発明者は、この一度に大量に発行される証券の販売を小刻みに行うことは、特にコモディティを資産原資とした証券を発行する場合に有効であると考えた。
なお、本件では、特に自動処理により、一度に大量に発行される証券の販売を小刻みに行うことを考え、発行、販売等における処理対象は、デジタル化した権利等、もしくはコイン類(以下、「トークン」と表現)とする。
【0090】
コモディティを資産原資(実質的には担保的な取り扱いになるもの)とした証券の発行方法
ところで、コモディティを資産原資とした証券の発行方法としては、次の2種類の方法が考えられる。
【0091】
なお、本件において発行対象となる証券は、コモディティ資産をトークン化し、コモディティ市場の価格と連動させることを目的とした証券特性を有するST(ストラクチャード社債型セキュリティトークン)等を前提とする。
この場合、コモディティを資産原資として、どのようにSTを生成するかが面倒であり、一度に大量にSTを発行した場合に、その販売リスクが大きい。
また、この場合のコモディティは、コモディティ全般を意味するが、その中でも貴金属(ゴールド等)、CO排出権、エネルギー(原油や電力等)が主要なものと考えられる。
本件発明者は、コモディティを資産原資としたSTの発行方法について、コモディティの例としてゴールドを用いて考えた。
【0092】
(タイプ1)コモディティを信託してSTを発行する方法
第1のSTの発行方法として、ゴールドを「信託」した「ETF(Exchange Traded Funds)」タイプの発行方法がある。
しかし、信託型のSTの発行方法は、信託コストがかかり、ゴールドの所有量に対して、年間で信託コストに相当する分がSTの保有量から削減されてしまうなどのデメリットが発生する。
このように、信託型のSTの発行方法は、STの保有によるリスクが内在し、証券特性としては好ましくない。
【0093】
(タイプ2)社債としてSTを発行する方法
そこで、本件発明者は、信託コストを抑えるために、第2のSTの発行方法として、ゴールドを信託しないでSTを発行する方法を考えた。
この場合、コモディティを扱う総合商社が「社債」扱いとしてSTを発行すること等が考えられる。
しかし、社債の場合は、発行量を決めて即時に販売することが前提条件となり、発行量が固定される。このため、ゴールドをトークン化した社債トークンの価格が市場価格には連動せず、流動性の確保が難しくなることが懸念される。
【0094】
発行量が固定されて一度に大量発行される社債トークンを販売するための方策についての検討、考察
そこで、本件発明者は、社債トークンの発行体(コモデティを扱う総合商社)により一度に発行される社債トークンを、社債トークンの販売側(社債トークンを販売する証券会社)が小刻みに販売していくことで、見かけ上は社債トークンの発行量を可変となるようにし、社債トークンの販売価格を市場価格に連動させて流動性の調整を行うことができるようにすることを考え、検討、考察を重ねた。
【0095】
ただし、そのようにする場合は、一度に発行される社債トークンを、社債トークンの引受側(証券会社)の自己が一括で引き受けるため、その引受リスク(社債トークンの保有期間内において引き受けた社債トークンの市場価格の下落変動リスク)が発生すると考えられる。
【0096】
社債トークンの引受側で引き受ける社債トークンの市場価格の下落変動リスクの回避策及びその回避策に内在する課題についての検討、考察
社債トークンの市場価格の下落変動リスクを回避するためには、社債トークンの引受側(証券会社)は、社債トークンの引受量と同等量のゴールドの売りヘッジ契約をOTCで社債トークンの発行体である総合商社と締結する必要があると考えられる。
ヘッジ契約を締結後、社債トークンの販売側(社債トークンを販売する証券会社)は、社債トークンの発行体である総合商社から一括で引き受けた社債トークンを定期的に販売することになるが、社債トークンを売却したときに、売却相当量のゴールドの売りヘッジ分を解消(売りヘッジ分のゴールドの買い戻し)する必要がある。
しかし、これらの処理を行うのは非常に面倒である。
【0097】
社債トークンの引受側で引き受ける社債トークンの市場価格変動リスクの回避策を効率的に行うための方策についての検討、考察
しかるに、本件発明者は、これらの処理を効率化するための方策について、検討、考察を行い、流動性調整機能を備えた取引システムを考えた。
通常の注文における取引としては、顧客の売りと買いの注文を、注文板に入れて、売りと買いが対当する条件になる場合に約定させるPTS(Proprietary Trading System:私設取引システム)方式=トレーディング型の取引がある。
まず、本件発明者は、PTS方式の取引において、社債トークンを販売する証券会社からの委託注文(取次)間に流動性調整者の自己を介在させることを考えた。
社債トークンの取引においては、社債トークンの一般顧客への販売を主とした「第2の取引サイド」(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)での取引と、流動性の供給を行う「第1の取引サイド」(社債トークンを発行する総合商社よりなるSTの発行体であって、ST発行後のセカンダリー取引段階においてヘッジの買い側となるヘッジ提供者をなすST発行体や、ST発行後のセカンダリー取引段階において流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)での取引が考えられる。
次に、本件発明者は、社債トークンの販売側(社債トークンを顧客へ販売する証券会社等)からの委託注文(取次)を受ける流動性調整者の自己を、第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)と、第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社よりなるSTの発行体であって、ST発行後のセカンダリー取引段階においてヘッジの買い側となるヘッジ提供者をなすST発行体等)の間に介在させ、自己によるポジション取りを介して双方の流動性を調整できるようにすることを考えた。
【0098】
流動性調整者が第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)から受ける注文の種類
社債トークンの一般顧客への販売を主とした第2の取引サイドに繋がる金融機関(証券会社等)から、流動性調整者が受ける注文としては、次の注文が考えられる。
・証券会社の自己が、その証券会社での顧客の注文の相手となって相対取引として約定させ、証券会社の自己が流動性調整者にリスク量をカバーする場合の注文。
・証券会社自体が、その証券会社での顧客の注文を流動性調整者に取次(委託)する場合の注文。
【0099】
流動性調整者が第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)から注文を受けた場合の処理についての検討、考察
本件発明者は、流動性調整者が第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)から注文を受けた場合の処理について、次のように考えた。
流動性調整者の自己は、これらの接続する証券会社の各注文を相対で受けて自動処理を行うようにする。
そして、流動性調整者はこれらの証券会社の自己や委託の注文に対して、相手となり約定させる。
また、各証券会社に対しては、流動性調整者の自己から、取引における売りと買いの各レート(気配)を各証券会社単位に設定して提供することができるようにする。
【0100】
各証券会社は、流動性調整者が提供する当該レートに対してストリーミング的に即時約定させるか、リーブオーダー的に流動性調整者に注文を一時的に管理させるようにする。
証券会社間同士の売り買い注文が条件的に対当する場合、形式的に流動性調整者の自己が相対となって2注文を処理することができ、その対当処理については、売りと買いの間にスプレッドを設定し、スプレッドを加算した対当条件を充足した場合に約定させることができるようにする。
【0101】
第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社)と第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社)との間の流動性調整の取引処理についての検討、考察
また、本件発明者は、第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)と第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社よりなるSTの発行体であって、ST発行後のセカンダリー取引段階においてヘッジの買い側となるヘッジ提供者をなすST発行体や、ST発行後のセカンダリー取引段階において流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)との間の流動性調整者の取引処理について、次のように考えた。
本件発明者が、これまでに検討、考察してきたデジタル資産の取引システムにおける取引機能は、普通のトレーディングでは、トークンの一般顧客への販売を主とした第2の取引サイドを対象とした機能が殆どであった。
しかるに、本件発明者は、更なる検討、考察を重ね、第1の取引サイドを対象とした機能を、トークンの一般顧客への販売を主とした第2の取引サイドを対象とした機能にリンクさせることを考えた。
【0102】
本件発明者が検討、考察する取引システムでは、第1の取引サイドは、社債トークンを発行する事業体や、社債トークンの運用体などと接続する部分であり、その接続先の相手となるのは流動性調整者の自己となるようにする。
第1の取引サイドは複数の企業で構成することが可能であるが、第1の取引サイドの企業間で直截的には対当させないようにすることを考えた。但し、第1の取引サイドの企業との相対(スプレッドを設定し、スプレッドを加算した対当条件を充足すること)を介して、第1の取引サイドの企業間での流動性調整者の自己相対をベースに対当処理を実行できるようにすることを考えた。
【0103】
流動性調整者による第1の取引サイド、第2の取引サイドの注文についての約定処理
そして、本件発明者は、第1の取引サイドで相対となる流動性調整者の自己と、第2の取引サイドで相対となる流動性調整者の自己と、が内部で対当条件に合致(スプレッドを設定し、スプレッドを加算した対当条件を充足)する場合、約定させるようにすることを考えた。
【0104】
第2の取引サイドからの注文と、第1の取引サイドからの注文とにおける取引単位の相違
ところで、第2の取引サイドからの注文と第1の取引サイドからの注文とを流動性調整者の自己相対を介して約定処理する場合、次のような取引単位の相違が流動性を確保するための障害になると考えられる。
即ち、社債トークンの一般顧客への販売を主とした第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)からの注文は、基本的にリテール注文を顧客から受けているため、小口注文が殆どであり、最低取引単位が小さいのに対し、流動性の供給を行う第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社等)からの注文は、ホールセール注文であって、大口注文が殆どであり、最低取引単位が大きい(小口注文における最低取引単位の100~10000倍など)。
【0105】
第1の取引サイドと第2の取引サイドとの間に介在する流動性調整者の自己のポジション取りによる流動性の調整についての検討、考察
しかるに、本件発明者は、第2の取引サイドの注文単位と第1の取引サイドの注文単位とのギャップを流動性調整者の自己が受け持ち、自己のポジション取りにより両者の流動性を調整することを考えた。
そして、本件発明者は、第1の取引サイドと第2の取引サイドとの間に介在する流動性調整者の自己のポジション取りについては、次の2種類のタイプを考えた。
・第2の取引サイドにおける注文の合計数量が第1の取引サイドにおける社債トークンの発行数量に合致する場合に約定させるタイプ。
・ある程度のスプレッド設定を大きくし、第1の取引サイドにおける社債トークンの発行数量と第2の取引サイドにおける注文の合計数量との間に数量差があっても、流動性調整者の自己がその数量差をポジションとして保有し、リテール側(第2の取引サイド:社債トークンを顧客と取引する証券会社等)との流動性を調整するタイプ。
【0106】
第1の取引サイドによる社債トークンの発行、引受者による発行された社債トークンの引受における内在する課題
取引システムにおける流動性調整者としての処理機能が、常に第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社等)からの注文が社債トークンの「発行」に関係し、発行された社債トークンを第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)に販売するための機能であるとした場合、第1の取引サイドである社債トークンの発行体による社債トークンの発行単位での金融監督庁への発行申請と、発行体により発行された社債トークンを引き受ける引受者による引受報告を行う必要がある。しかし、これを随時行うことは大変である。
このため、社債トークンの発行単位を大きくとり、発行側より発行された社債トークンを、引受側が小刻みに販売することが望ましいと考えられる。
しかし、上述したとおり、一度に大量の証券を発行することには、発行側、引受側にリスクが伴う。
【0107】
流動性調整者による社債トークンの引受に伴うリスクをなくすための方策についての検討、考察
そこで、本件発明者は、社債トークンの発行額に対し、流動性調整者の自己は、社債トークンを引き受けて、当該量のポジションを持つが、引き受けた社債トークンのポジションと同量(のコモディティ現物)をヘッジ(売り)するOTC契約を、第1の取引サイドである社債トークンの発行側(社債トークンを発行する総合商社)と締結することで、流動性調整者のポジションデルタ=リスク量がゼロとなるようにすることを考えた。
【0108】
流動性調整者は第1の取引サイドから引き受けた社債トークンを第2の取引サイドへ販売する際、市場価格をベースとした流動性調整者レートを算出し提供するようにする。この流動性調整者レートは社債トークンの発行体等の第1の取引サイドから市場価格として受け取る気配的なIOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報での基準レートに基づくものとする。
このIOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報には売りと買いの気配がある。流動性調整者はこの売りと買いの気配をみなし注文として、対当条件を充足する第2の取引サイドの注文を探すようにする。
【0109】
この第1の取引サイドからのみなし注文と第2の取引サイドからの注文とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドには該当量のヘッジ解消(売りヘッジのうちの注文約定分の買戻し)の意思表示の電文を返すようにする。
【0110】
第1の取引サイドが、売りヘッジのうちの注文約定分の買戻しの電文を受け取ると、当該売りヘッジのうちの注文約定分の買戻し分を買い注文として、外部の流動性供給者に発注して約定を受け取ると同時に、流動性調整者から受けていた売りヘッジのうちの注文約定分を削減するようにする。
【0111】
流動性調整者による社債トークンの引受に伴うリスクをなくすための方策の具体例
本件発明者が考察、検討した、流動性調整者による社債トークンの引受に伴うリスクをなくすための方策についての実務的な具体例を次に示す。
例えば、流動性調整者が、第1の取引サイドである(ゴールド社債STを発行する)総合商社より、ゴールド社債STを、100億円分を購入したとする。
実際には100億円分の購入資金調達が難しいと考えられることから、流動性調整者は、与信の範囲内として、100億円分の現金類を第1の取引サイドである総合商社より借り入れ、購入したゴールド社債ST全てを担保として第1の取引サイドである総合商社に差し出すようにする。
同時に、流動性調整者は、第1の取引サイドである総合商社との間で100億円分のゴールドの売りヘッジのOTC契約を締結するようにする。
【0112】
第1の取引サイドである総合商社は、貸付額(100億円)と同等の担保(100億円分のゴールド社債ST)を流動性調整者から受け取っているのでリスクは生じ無い。
そして、ゴールド社債STの発行に際し、流動性調整者からの100億円分のゴールドの(売り)ヘッジを受けることから、同量(100億円分)のゴールドの買いの契約を持つことで、同量(100億円分)のゴールド社債STを発行できることになる。
【0113】
流動性調整者は、第1の取引サイドである総合商社から購入した100億円分のゴールド社債STを定期的に第2の取引サイド(ゴールド社債STを顧客と取引する証券会社等)に売り出していく。総合商社からのIOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報は、そのまま市場価格の売り買い情報と同一である。流動性調整者は、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報での基準レートに第2の取引サイドの各証券会社の信用度に応じたスプレッドを加算し、各証券会社単位にそれぞれ流動性調整者レートを生成し提供する。
流動性調整者レートに対し、顧客が証券会社(の自己)経由などで注文を流動性調整者に発注する。そして、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)による非公開の探索処理において、流動性調整者レートと顧客注文とにおける対当条件が合致したとき、流動性調整者は、第2の取引サイドの接続先の顧客(注文主)に流動性調整者の相対取引として約定させる。同時に、流動性調整者は、IOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報を提供する第1の取引サイドである総合商社に、IOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)情報でのヘッジ償却注文(売りヘッジ分のゴールドの買戻し指示)を発注する。
【0114】
第1の取引サイドである総合商社は、そのヘッジ分を解消するための買戻しを、他の接続するLP(リクイデティプロバイダー)にカバーし、該当の第2の取引サイドの注文に対する第1の取引サイドである総合商社のヘッジ分を解消する。
それとともに、第2の取引サイドより対価となる現金類が流動性調整者に渡されて清算となるとき、第1の取引サイドである総合商社に当該金額の現金類を渡して、担保としていたうち、該当約定分のゴールド社債STを流動性調整者が受け取ると同時に、ゴールド社債STを購入側の第2の取引サイドに渡す、RTGS的な清算処理を行うことができるようにする。
【0115】
この清算処理に用いる現金類はトークンであることが望ましく、当該クリアリング機能はスマートコントラクトを介してRTGS的に即時処理することが望ましい。
なお、スマートコントラクトを介して当該RTGS的な即時処理ができない場合は、1日一回、取引における現金類と社債トークン(本例では、ゴールド社債ST)とを各々ネットで計算し、その残りを、一括でDVP処理する(この場合は、銀行の口座間振替APIを使って現金の受け渡しを行う等)こともできるようにする。
このように、当該流動性調整処理においては、約定時に、当該ヘッジ量の削減と、担保としていたうち、該当約定分の社債トークン(本例では、ゴールド社債ST)の削減を自動的に行うようにする。
【0116】
また、本件発明者は、当該流動性調整処理の概念としては、第1の取引サイドは、社債トークンの発行に対して、流動性調整者からのヘッジを受け、売りと買いに関し、流動性調整者とは逆のポジションを取ることから、外部市場へのゴールド現物と先物等のヘッジ無の組み合わせとすることを考えた。
【0117】
なお、当該流動性調整処理の拡張概念として、第1の取引サイドが、実際にゴールド現物を購入し、総合商社が流動性調整者からのヘッジを受けずに購入したゴールド現物を先物で外部市場(海外の商品取引所など)に売りヘッジすることで、第1の取引サイドのポジションデルタをニュートラルにする方策も考えられる。
【0118】
いずれの方策でも対処できるが、前者のほうが処理は効率的である。後者の場合、第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)の注文とともに、外部市場に対して行った先物のヘッジを解消するロジックを稼働させることになるが、非効率な処理となる。
なお、上述の流動性調整処理は第2の取引サイドの顧客の社債トークンの買い注文に対する処理であるが、売り注文を処理する場合は上述の場合と逆となる。
【0119】
流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストック量の調整についての検討、考察
また、本件発明者は、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションの基本ストック量を100億円分としたときにおいて、第2の取引サイドの社債トークンの買い過剰で、例えば、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストックの残量が少なくなる、例えば、ストックの残量が5億円程度になったとき、流動性調整者は、第1の取引サイドに対し、追加で50億円分の社債トークンの新規発行・引受契約を締結し、社債トークンのポジションのストックの残量の減少に対処できるようにすることを考えた。
また、本件発明者は、上述とは逆に、第2の取引サイドの社債トークンの売り過剰で、例えば、社債トークンのポジションのストックの残量が多くなりすぎる、例えば、流動性調整者の保有するストックの残量が140億円程度になったとき、流動性調整者は、第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社)に対し、50億円分の社債トークンのポジションを償却する契約を行うようにすることを考えた。
【0120】
また、本件発明者は、上述以外の処理を行う場合として、第2の取引サイドの社債トークンの売り注文に対し、流動性調整者の自己が対当条件を充足する当該社債トークンを購入してそのまま保有し、第1の取引サイドに対し、何も処理を指示しないようにすることも選択できるようにすることも考えた。
その場合は、単純に流動性調整者の自己の保有するポジションが加算されていくだけであり、この場合に該当量のヘッジを行うか否かについては、流動性調整者が保有する社債トークンのポジション量に応じて対処する(保有する社債トークンのポジション量が想定されるリスク量の範囲を超えるときにヘッジする)ようにすることを考えた。
【0121】
STのデジタル管理についての検討、考察(権利管理簿と社債トークンとのリンク)
また、本件発明者は、さらに、上述の処理を行う場合における、STのデジタル管理を次のように行うことを考えた。
デジタル資産の場合、基本的にデジタルデータ自体に権利があり、そのデジタルデータの変更により権利が移転する。
つまり、デジタルデータにおける物々交換の単純な概念である。
【0122】
しかし、ST(ストラクチャード社債型セキュリティトークン)等は、証券的な特性としての第三者対抗要件の管理が面倒である。
発行体(プライマリー取引段階)側からみると、デジタルデータの権利管理簿がSTの管理母体であり、流動性調整(セカンダリー取引段階)側からみると、トークンの保有アドレス自体がSTの管理母体であることから、STでは2種類の管理母体による管理となっており、それらがリンクしている。
【0123】
しかるに、流動性調整者が発行体(社債トークンとしてのSTを発行する総合商社)から、現金類を借り入れ、借り入れた現金類で引受対象となるSTを購入し、購入したSTを担保として発行体に差し出す場合、権利管理簿には流動性調整者がSTの保有者として記録される一方、ST自体は発行体が担保として受け取るので、発行体のアドレス(ウォレット)に存在することになる。
このように、担保としてのSTについては、2種類の管理母体があり、それらはリンクしているが、保有者を異ならせて管理を行うことができるようにすることを考えた。
【0124】
詳しくは、社債トークンと権利管理簿とがリンクし、権利管理簿に記録されているSTの量をベースとして子トークンが生成でき、権利管理簿上のSTの保有者の名義は流動性調整者であるが、実際には社債トークンとしてのSTは異なる保有者のアドレスに存在して処理できる管理構造を備えるようにする。
そして、その管理構造を用いて、流動性調整者が発行体に対し、社債トークンの購入資金を返済したとき、発行体から流動性調整者に対し、担保として差し出されていたSTのうち、返済額相当分のSTが引き渡される処理が実現できるようにすることを考えた。
【0125】
担保として差し入れられたSTのレンディング処理についての検討、考察
また、本件発明者は、当該流動性調整処理機能において、担保として差し入れられたSTのレンディング処理について、検討・考察した。
【0126】
トークンのレンディング
現金類の借り入れを所望する側の(取引)者は、現金類の貸付者にトークンを担保として差し入れる。
現金類の貸付者は、担保として差し入れられたトークンを、レンディングする(貸付に用いる)ことができる。即ち、現金類の貸付者のアドレスに当該トークンが入っているので、現金類の貸付者(担保として受け付けている側の(取引)者)は、担保の差し入れを受けて貸し付けた現金類の返済期日までは自由に当該トークンを用いた使用、収益等の処理をすることができる。
【0127】
現金類のレンディング
また、トークンを借り入れて、売ることを所望する側の(取引)者は、トークンの貸付者に現金類を担保として差し入れる。トークンの貸付者は、担保として差し入れられた現金類を貸付に用いることができる。
【0128】
発行体が担保としてストックしているSTのレンディング
そこで、本件発明者は、上述の流動性調整者による社債トークンとしてのSTの発行体からの引受において、発行体が貸し付けた購入代金の担保としてストックしているSTは、基本的にレンディングでの貸付用トークンとして用いることができるようにすることを考えた。
【0129】
発行体が担保としてストックしているSTのレンディングによる効果の検討、考察
第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社等)のホールセール取引はDVPが主体でT+2などの清算であるのに対し、第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)のリテール取引はRTGSが主体であり即時決済となる。このため、第1の取引サイドと第2の取引サイドとでは、決済期日にギャップがある。
しかるに、発行体が担保としてストックしているSTをレンディングに用いるようにすることによって、決済期日のギャップを解消することができると考えられる。
【0130】
また、本件発明者は、発行体が担保としてストックしているSTのレンディングを、クリアリングの用途だけではなく、空売り(証券における信用取引)の用途として提供できるようにすることで、STの売り環境を提供でき、流動性を上げることができると考えた。
【0131】
従って、発行体が担保としてストックしているSTのレンディングにより、発行体(プライマリー取引段階)側の効率的な販売処理を行うと同時に、(セカンダリー取引段階)側の流動性を上げることができ、双方の処理を効率化することができると考えられる。
【0132】
本件発明者が検討、考察した上述の方策は、証券における一括引受の場合における方策である。
一括で引受を行う理由は、発行体により発行される証券を引受者(ここでは仲介者)が引き受ける都度、当局に対し、発行体による有価証券届出書の提出と、引受者(ここでは仲介者)による有価証券引受書の提出を行わなければならず、これらの書類作成と承認手続きが非常に面倒であるからである。
このため、現在の日本法を鑑みると、発行される証券については一括で引受を行うことが望ましいと考えられる。
【0133】
ただし、STの消却については、将来的には当局への該当の報告書類の提出が不要となることも考えられる。本件発明者は、そのようになった場合には、消却側については都度消却、つまり、既存の注文方式を取るようにすることを考えた。
通常のセカンダリー取引段階側における注文処理では、トレーディングと言われるPTS方式が主であり、顧客(委託)の注文同士を突き合わせて対当条件が合致する場合に約定させる。
これに対し、本件発明者が、検討・考察するセカンダリー取引段階側における注文処理では、基本概念として、第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)と第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社等)とに分けて、その間に流動性調整者としての自己が介在し、流動性調整者としての自己がポジションを保有し、保有ポジションを調整することで流動性の相互供給を行うようにする。
【0134】
複数形態の注文の組み合わせよる流動性の調整についての検討、考察
また、本件発明者は、流動性調整者としての自己が第2の取引サイド間や、第1の取引サイド間の流動性の調整も行うようにすることを考えるとともに、第2の取引サイドや第1の取引サイド内において、単純注文ではない、別の注文方式を「複数の形態」で組み合わせて流動性の調整を行うこともできるようにすることを考えた。
【0135】
例えば、普通の社債トークンの売り・買い注文の他に、その社債トークンに対するヘッジ契約の設定・解消を行う注文を組み合わせ、双方の間で流動性の調整を行うことができるようにすることを考えた。
【0136】
具体例
以下に、具体的な例を挙げて説明する。
流動性調整者は、通常は第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)に対し、社債トークンの売り・買いの注文を受け付けるが、第2の取引サイド間では注文が対当しない場合、第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社等)が当該注文の取引相手となるようにする。
【0137】
流動性調整者により当該注文の取引相手とされた第1の取引サイドにおける、特定の接続先の取引業者は、社債トークンの売り・買いの注文として受け付けるようにし、他の特定の接続先の取引業者は、ヘッジ契約の設定・解消の意思表示をトランザクション的(つまり注文的)に電文で受け取るようにする。
このトークンの売買とヘッジ契約の設定・解消を、多様に組み合わせて設定することができるようにする。
売りヘッジとは、1単位のトークン(に対応するコモディティ現物)の売り契約をOTCで締結することであり、この場合のヘッジとは、トークン(に対応するコモディティ現物)の売買契約を締結している状態を意味する。
【0138】
第1の取引サイドにおける所定の取引業者については、第2の取引サイドからの買い注文に対し、第1の取引サイドからの売りヘッジの解消意思(売りヘッジとペアになっている買いポジションの渡し)を対当させることができるようにする。
清算時に、第1の取引サイドが現金類を受け取って社債トークンを第2の取引サイドに渡すことになるので、注文の形態は異なるが、帳尻があうことになる。
【0139】
逆に、第2の取引サイドからの現物のトークン(売り注文)が、第1の取引サイドにおける所定の取引業者の売りヘッジを設定する意思(つまり買いポジションを持つ)と対当する場合、双方を約定させるようにする。
なお、第2の取引サイドの現物のトークン(売り注文)に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者が、単純に買い注文として発注することもできるようにする。
清算時に、第2の取引サイドが現金類を受け取って現物のトークンを第1の取引サイドに渡すことになるので、注文の形態は異なるが、帳尻があうことになる。
【0140】
第1の取引サイドの所定の取引業者においては、売り側と買い側が共に注文形式である場合、売り側と買い側が共にヘッジ設定・解消の意思表示である場合、もしくは売り側がヘッジ解消の意思表示(実質売り側)と買い側が注文形式の組み合わせである場合など、多様な設定ができるようにする。
つまり、取引業者などの接続単位、売りと買いが、注文型なのかヘッジ型なのかを設定することができるようにする。
【0141】
上記については証券的な観点で例をあげたが、本件発明者は、当方式では暗号資産の取引を含め、全てのデジタル権利の取引において応用することができるようにすることを考えた。
つまり、現物の取引と、デリバティブの取引を、当流動性調整機能の中で組み合わせて、清算時に帳尻を合わせるようにすることができるようにすることを考えた。
【0142】
なお、上記の証券取引の特殊概念の延長として、引受後の売り出しについて、補足説明する。
本件発明者が検討、考察する、流動性調整者が引受を行った社債トークンを第2の取引サイドへ販売する場合は売り出しではない。
発行体により発行される証券を証券会社が一括購入して一括販売することを目的とした引受の場合には、固定された売り出し価格があるが、本件発明者が検討、考察する、流動性調整者による引受の場合は、発行体から引き受けた玉を小刻みに売却するため、プライマリー取引段階での売り出し価格ではなく、セカンダリー取引段階的な市場価格で売らなければならない。
つまり、発行体から発行されるトークンの引受に際し、引受者は自己で引き受けるが、その引受口座は引受専用の口座(自己第一勘定口座)が基本であり、セカンダリー取引段階において自己の計算で売買などを行う場合の口座(自己第二勘定口座)とは異なる。
ただし、本件発明者が検討、考察する、流動性調整者が引受を行う場合、発行体から引き受けた玉を小刻みに売却するため、実際には自己第一勘定口座で引き受けたものを自己第二勘定口座で移して処理することになる。
【0143】
ところで、流動性調整者が発行体により発行される大量の社債トークンを一括で引き受けることにより、流動性調整者が主幹事であると解釈される可能性がある。主幹事であると解釈された場合、流動性調整者は主幹事の引受リスクに該当する相応の財務状況などを強化しなければならなくなることが考えられる。
そのような虞を回避するために、主幹事を流動性調整者ではない別の証券会社にして、上述のヘッジと引受をその主幹事の証券会社が発行体に対して行うようにするとともに、流動性調整者は主幹事の証券会社を第1の取引サイドにおけるLP(リクイデティプロバイダー)の一部として処理することが現実的であると考えられる。
【0144】
つまり、流動性調整者の自己で行っていた処理を、主幹事の証券会社の自己に置き換え、流動性調整者の自己が行う第1の取引サイドの所定の取引業者に対する処理として、主幹事の証券会社のポジション管理機能をリンクさせて、自動的にポジション償却を行うようにすることを考えた。
【0145】
なお、発行体への担保設定や、レンディングでの担保設定等の場合、上述したように、権利管理簿上で記録されているデジタル権利の保有者と実際のトークンの保有者は異なる。
そこで、本件発明者は、権利管理簿上でのデジタル権利の保有者は変更することなく、トークンのみ担保として差し出す場合、トークンには管理フラグがつくようにすることを考えた。
つまり、権利管理簿上での記載者は仮の保有者として記録され、担保パラメータがオンになるようにする。
【0146】
担保パラメータは、例えば、次のような数種類の状態が設定できるようにすることを考えた。
(1)売却やレンディング・再担保の処理はできない。
(2)レンディング・再担保には利用可能。
なお、レンディング先では一時的な売却は可能である。
【0147】
担保設定する場合は、現金類を借りる等に関するNFT契約(スマートコントラクトで管理)を締結する必要があるが、契約満了日時に債務不履行となった場合(現金類が返済できなかった場合等)は、上記 (1)(2)のパラメータ設定がスマートコントラクトの自動処理や、手動による運用などではずれ、それにより権利管理簿上での保有者を変更(つまり売却)することが可能になるようにすることを考えた。
【0148】
本件発明者はこのような考察、検討を重ねた結果、第1の取引サイドから一度の大量に発行されるST発行に伴う発行側、引受側のリスクを極力無くしながら、第1の取引サイドから発行される大口のSTの流動性を向上させ、取引単位にギャップのある第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引を効率的且つ迅速に処理可能な本発明のST取引処理システムを導出するに至った。
【0149】
本発明の第1の形態のST取引処理システムは、ブロックチェーン等の分散台帳技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデータを用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトもしくはサーバアプリケーションを備えて構築された、コモディティ資産(貴金属(ゴールド等)、CO排出権、エネルギー(原油や電力等))を資産原資(実質的には担保的な取り扱いになるもの)としてトークン化した、証券特性を有する社債型のST(ストラクチャード社債型セキュリティトークン)等の取引処理システムであって、第1の取引サイド(コモディティを扱う総合商社よりなるSTの発行体であって、ST発行後のセカンダリー取引段階においてヘッジの買い側となるヘッジ提供者をなすST発行体や、ST発行後のセカンダリー取引段階において流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等のホールセール処理側)と第2の取引サイド(発行されたSTを顧客と取引する証券会社等のリテール処理側)との間に介在し、流動性調整者の自己のSTのポジション取りにより、第2の取引サイドと第1の取引サイドとにおける取引(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)単位のギャップを吸収して、第1の取引サイド、第2の取引サイド双方のST取引の流動性を調整する機能を有する流動性調整手段を有し、前記流動性調整手段は、STの発行体から一度に大量に発行されるSTを流動性調整者に一括で購入して引き受けさせる機能を有するST引受手段と、流動性調整者に引き受けさせたSTを流動性調整者の自己のポジションとしてストックする機能を有するSTポジションストック手段と、STの発行体に対しSTの引受のための購入資金を流動性調整者に借り入れさせる機能を有するST引受資金借入手段と、STの発行体に対し購入したSTを担保として流動性調整者に提供させる機能を有するST担保提供手段と、STの発行体との間でSTの購入資金分のコモディティ現物の売りヘッジ契約を流動性調整者に締結させる機能を有するヘッジ締結手段と、ST発行後のセカンダリー取引段階において、前記STポジションストック手段を介してストックしているSTについての、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)に応じた取引を行う機能を有するストックST取引手段と、を有し、前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドからの注文と第1の取引サイドからの注文又はヘッジ解消・追加のIOI(相対取引方式的な取引意思表示)の夫々に対し流動性調整者の自己相対を介して対当処理を行う機能を有する自己相対対当処理手段と、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの買い注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ解消指示の電文を返す機能を有する第1の約定通知手段と、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、流動性調整者からのヘッジ解消指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ解消指示分の買い注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約のうちのヘッジ解消指示分を削減させる機能を有するヘッジ解消手段と、第2の取引サイドから現金類を受け取り第1の取引サイドへ渡すとともに、担保として提供していたSTのうち当該約定分のSTを第1の取引サイドから受け取り第2の取引サイドへ渡す機能を有する第1の清算処理仲介手段と、ストックしていたSTのポジションのうち当該約定分のSTのポジション量を削減する機能を有するストックSTポジション量削減手段と、を有する。
【0150】
本発明の第1の形態のST取引処理システムのように、「第1の取引サイド(コモディティを扱う総合商社よりなるSTの発行体であって、ST発行後のセカンダリー取引段階においてヘッジの買い側となるヘッジ提供者をなすST発行体や、ST発行後のセカンダリー取引段階において流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等のホールセール処理側)と第2の取引サイド(発行されたSTを顧客と取引する証券会社等のリテール処理側)との間に介在し、流動性調整者の自己のSTのポジション取りにより、第2の取引サイドと第1の取引サイドとにおける取引(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)単位のギャップを吸収して、第1の取引サイド、第2の取引サイド双方のST取引の流動性を調整する機能を有する流動性調整手段」を有した構成とすれば、社債トークンの発行体(コモデティを扱う総合商社)により一度に発行される社債トークンを、社債トークンの販売側(社債トークンを販売する証券会社)が小刻みに販売していくことで、見かけ上は社債トークンの発行量を可変となるようにし、社債トークンの販売価格を市場価格に連動させて流動性の調整を行うことが可能になり、取引単位にギャップのある第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引を円滑に行うことが可能になる。
【0151】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムのように、流動性調整手段が、「STの発行体から一度に大量に発行されるSTを流動性調整者に一括で購入して引き受けさせる機能を有するST引受手段」を有した構成とすれば、発行体により発行される証券を引受者(ここでは仲介者)が引き受ける都度、当局に対して必要となる、発行体による有価証券届出書の提出と、引受者(ここでは仲介者)による有価証券引受書の提出のための書類作成と承認手続きの煩雑さを大幅に軽減することが可能になる。
【0152】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムのように、流動性調整手段が、「STの発行体に対しSTの引受のための購入資金を流動性調整者に借り入れさせる機能を有するST引受資金借入手段」を有した構成とすれば、流動性調整者のST引き受けのための資金調達の負担を軽減することが可能になる。
【0153】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムのように、流動性調整手段が、「STの発行体に対し購入したSTを担保として流動性調整者に提供させる機能を有するST担保提供手段」を有した構成とすれば、第1の取引サイドである総合商社は、貸付額と同等の担保(社債ST)を流動性調整者から受け取るのでリスクを低減することが可能になる。
【0154】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムのように、流動性調整手段が、「STの発行体との間でSTの購入資金分のコモディティ現物の売りヘッジ契約を流動性調整者に締結させる機能を有するヘッジ締結手段」を有した構成とすれば、社債トークンの引受側(流動性調整者)は、社債トークンの引受量と同等量のコモディティ現物の売りヘッジ契約をOTCで社債トークンの発行体である総合商社と締結することで、社債トークンの市場価格の下落変動リスクを回避することが可能になる。また、社債トークンの発行額に対し、流動性調整者の自己は、社債トークンを引き受けて、当該量のポジションを持つが、引き受けた社債トークンのポジションと同量(のコモディティ現物)をヘッジ(売り)するOTC契約を、第1の取引サイドである社債トークンの発行側(社債トークンを発行する総合商社)と締結することで、流動性調整者のポジションデルタ=リスク量がゼロとなるようにすることが可能になる。また、STの発行体は、社債STの発行に際し、流動性調整者からのコモディティ現物の(売り)ヘッジを受けることから、同量のコモディティ現物の買いの契約を持つことで、同量の社債STを発行することが可能になる。
【0155】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムのように、流動性調整手段が、「ST発行後のセカンダリー取引段階においての、前記STポジションストック手段を介してストックしているSTについて、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)に応じた取引を行う機能を有するストックST取引手段」を有した構成とすれば、ストックしているSTを用いて、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)に応じて流動性の調整を行いながら、取引単位にギャップのある第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引を円滑に行うことが可能となる。
【0156】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムのように、ストックST取引手段が、「第2の取引サイドからの注文と第1の取引サイドからの注文又はヘッジ解消・追加のIOI(相対取引方式的な取引意思表示)の夫々に対し流動性調整者の自己相対を介して対当処理を行う機能を有する自己相対対当処理手段」を有した構成とすれば、第2の取引サイド(社債トークンを顧客へ販売する証券会社等)と第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社等)とに分けて、その間に流動性調整者としての自己が介在し、流動性調整者としての自己がポジションを保有し、保有ポジションを調整することで流動性の相互供給を行うようにすることが可能になる。
【0157】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムのように、ストックST取引手段が、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの買い注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ解消指示の電文を返す機能を有する第1の約定通知手段」を有した構成とすれば、流動性調整者の自己売買で分断しながら、第1の取引サイドのST発行体からのヘッジ解消の意思表示と第2の取引サイドの買い注文とを対当処理することが可能となる。
【0158】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムのように、ストックST取引手段が、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、流動性調整者からのヘッジ解消指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ解消指示分の買い注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約のうちのヘッジ解消指示分を削減させる機能を有するヘッジ解消手段」を有した構成とすれば、ヘッジ解消処理を円滑に行うことが可能となる。
【0159】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムのように、ストックST取引手段が、「第2の取引サイドから現金類を受け取り第1の取引サイドへ渡すとともに、担保として提供していたSTのうち当該約定分のSTを第1の取引サイドから受け取り第2の取引サイドへ渡す機能を有する第1の清算処理仲介手段」を有した構成とすれば、第1の取引サイドと第2の取引サイドとの間での約定後の清算処理を円滑に行うことが可能となる。
【0160】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムのように、ストックST取引手段が、「ストックしていたSTのポジションのうち当該約定分のSTのポジション量を削減する機能を有するストックSTポジション量削減手段」を有した構成とすれば、約定時に、当該ヘッジ量の削減と、担保としていたうち、該当約定分の社債トークンの削減を自動的に行うようにすることで、煩雑な処理を迅速かつ効率化することが可能になる。
【0161】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ストックST取引手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ追加指示の電文を返す機能を有する第2の約定通知手段と、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、流動性調整者からのヘッジ追加指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ追加指示分の売り注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約に対しヘッジ追加指示分を追加する機能を有するヘッジ追加手段と、第1の取引サイドから現金類を受け取り第2の取引サイドへ渡すとともに、当該約定分のSTを第2の取引サイドから受け取り第1の取引サイドへ渡す機能を有する第2の清算処理仲介手段と、ストックしていたSTのポジションに対し当該約定分のSTのポジション量を増加する機能を有するストックSTポジション量増加手段と、をさらに有する。
このように構成すれば、約定時に、当該ヘッジ量の追加と、担保としていたうち、該当約定分の社債トークンの増加を自動的に行うようにすることで、煩雑な処理を迅速かつ効率化することが可能になる。
【0162】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ストックST取引手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から市場価格として受け取る気配的な売りと買いのIOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報に基づく流動性調整者レートを算出する機能を有するレート算出手段と、前記レート算出手段が算出した流動性調整者レートを第2の取引サイドに提供する機能を有するレート提供手段と、をさらに有する。
このように構成すれば、第2の取引サイドの証券会社(のシステム)によるレートの作成や1:多での配信の必要性が無くなり、その分、第2の取引サイドの証券会社(のシステム)における、小口のST類の取引を行うために用いるシステムの負荷を低減することが可能になる。
【0163】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ストックST取引手段は、外部から市場価格として受け取る気配的な売りと買いのIOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報、もしくは当該IOI情報に類似する情報、もしくは当該IOI情報と当該IOI情報に類似する情報とを合成した情報に基づく参考レートを算出する機能を有する参考レート算出手段と、前記参考レート算出手段が算出した参考レートに基づく注文をみなし注文として、対当条件を充足する第2の取引サイドの注文をIOI(相対取引方式的な取引意思表示)方式で非公開に探索する機能を有する対当注文探索手段と、をさらに有する。
このように構成すれば、PTS方式を用いることなく第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引について、自己相対を介して対当処理することが可能となる。
【0164】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記第1の清算処理仲介手段は、第2の取引サイドより対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に当該金額の現金類を渡して、担保として提供していたうち、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第2の取引サイドに渡す、RTGS的な清算処理を行う機能を有する。
このように構成すれば、第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引における清算処理を、スマートコントラクトを介して迅速且つ効率的に行うことが可能になる。
【0165】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体より対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行う機能を有する。
このように構成すれば、第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引における清算処理を、スマートコントラクトを介して迅速且つ効率的に行うことが可能になる。
【0166】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記第2の清算処理仲介手段は、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行ったときに、STを消却する機能をさらに有する。
このように構成すれば、ストックしているSTを減らすことが可能となる。
【0167】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から現金類を借り受けて第2の取引サイドに当該金額の現金類を支払うと同時に、第2の取引サイドから該当約定分のSTを受け取り、受け取ったSTを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に担保として渡す機能をさらに有する。
このように構成すれば、ストックしているSTが減ることなく、発行体に対して売りヘッジを積み上げることになり、STの消却後に再度STを発行する手間が省かれるため、STの発行の都度に回号が増えることによる管理の煩雑さを抑えることが可能となる。
【0168】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記第1の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りの現金類とSTとの夫々を一括でDVP処理する又はRTGS処理する機能をさらに有する。
このように構成すれば、スマートコントラクトを介して即時処理ができない場合において、多様な清算処理を行うことが可能になる。
【0169】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りの現金類とSTとの夫々を一括でDVP処理する又はRTGS処理する機能をさらに有する。
このように構成すれば、スマートコントラクトを介して即時処理ができない場合において、多様な清算処理を行うことが可能になる。
【0170】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドのSTの買い過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて少なくなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、追加でストックの基本量からの不足分のSTの新規発行・引受契約を締結し、STのポジションのストックの残量を調整する機能を有する第1のストック残量調整手段をさらに有する。
このように構成すれば、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストックの残量の減少に対処して、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストック量を、想定されるリスク量の範囲内で流動性調整を行うのに好適な量に調整することが可能になる。
【0171】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドのSTの売り過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて多くなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、ストックの基本量からの過剰分のSTのポジションを消却(発行済のSTのポジションのストックの残量を削減)する契約を締結する機能を有する第2のストック残量調整手段をさらに有する。
このように構成すれば、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストックの残量の増加に対処して、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストック量を、想定されるリスク量の範囲内で流動性調整を行うのに好適な量に調整することが可能になる。
【0172】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドからのSTの売り注文に対し、当該STの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足する当該STを購入してそのまま保有し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、STのポジションのストックの残量の調整のための処理を指示しないように制御する機能を有する第3のストック残量調整手段をさらに有する。
このように構成すれば、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストック量を、想定されるリスク量の範囲内で流動性調整を行うのに好適な量の範囲に維持することが可能になる。
【0173】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、STの管理母体として、権利管理簿と、STの保有アドレス(ウォレット)とを有し、発行体から、現金類を借り入れ、借り入れた現金類で引受対象となるSTを購入し、購入したSTを担保として発行体に提供するSTの引受者が、権利管理簿にSTの保有者として記録されるとともに、発行体が担保として受け取るSTは発行体側のアドレス(ウォレット)に存在し、STの保有アドレス(ウォレット)と権利管理簿とがリンクし、権利管理簿に記録されているデジタル資産としてのSTの量をベースとしてトークンとしてのSTを生成できるとともに、権利管理簿に記録されるデジタル資産としてのSTの保有者と、実際にトークンとしてのSTをアドレス(ウォレット)に保有する保有者とを異ならせて処理できるST管理構造部を備える。
このように構成すれば、第三者対抗要件の管理が2種類の管理母体による管理という証券的な特性を有しながら、デジタル資産としての大量のSTをトークンとして小刻みに取引する際のデジタルデータの物々交換を円滑に行うことが可能になる。
【0174】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記流動性調整手段は、担保ST管理用スマートコントラクトをさらに有し、前記担保ST管理用スマートコントラクトは、STの引受者である流動性調整者がSTの発行体に対し担保として提供したSTを、権利管理簿上での保有者の名義を変更することなく保管する機能を有する。
このように構成すれば、レンディングでの売買を想定しない実担保として保持するタイプのSTを好適に管理することが可能となる。
【0175】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記流動性調整手段は、STの発行体からの流動性調整者の引受において発行体が貸し付けた購入代金の担保としてストックしているSTを、レンディングでの貸付用トークンとして用いることができる機能を有する担保STレンディング手段をさらに有する。
第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社等)のホールセール取引はDVPが主体でT+2などの清算であるのに対し、第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)のリテール取引はRTGSが主体であり即時決済となる。このため、第1の取引サイドと第2の取引サイドとでは、決済期日にギャップがある。
しかるに、本発明の第1の形態のST取引処理システムのように構成すれば、発行体が担保としてストックしているSTをレンディングに用いるようにすることによって、決済期日のギャップを解消することが可能になる。また、発行体(プライマリー取引段階)側の効率的な販売処理を行うと同時に、(セカンダリー取引段階)側の流動性を上げることが可能になり、双方の処理を効率化することが可能になる。
【0176】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記担保STレンディング手段は、レンディング管理用スマートコントラクトを有し、前記レンディング管理用スマートコントラクトは、借り手より提供されるべき所定の担保対象物を設定する機能と、設定した所定の担保対象物が借り手より提供されたときに、担保としてストックしているSTを前記担保対象物と引き換えに貸付用トークンとして貸し出す機能と、レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する機能と、を有する。
このように構成すれば、借り手はレンディングにより借り受けたSTを自由に売買することが可能となる。
【0177】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記担保STレンディング手段は、権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段をさらに有し、前記権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段は、レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更を、1日又は1週間単位等、定期的に行う機能を有する。
このように構成すれば、取引が行われる都度の権利管理簿上の名義変更の処理の煩雑さを回避することが可能となる。
【0178】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記担保STレンディング手段は、STのレンディングを、クリアリング(借入期間が翌日や数日程度のレポ取引的な超短期的な取引)、空売り(借入期間が長期間の場合を想定した取引)の用途として提供できる機能を有する。
このように構成すれば、発行体が担保としてストックしているSTのレンディングを、クリアリングの用途だけではなく、空売り(証券における信用取引)の用途として提供できるようにすることで、STの売り環境を提供でき、流動性を上げることが可能になる。
【0179】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記自己相対対当処理手段は、通常は第2の取引サイドに対し、STの売り・買いの注文を受け付け、PTS方式等での流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行い、第2の取引サイド間では注文が流動性調整者の自己相対を介した対当処理によって対当しない場合、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体を当該注文の間接的な取引相手として流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行う機能を有する。
このように構成すれば、第2の取引サイド間での取引の流動性を確保しながら、第2の取引サイドと第1の取引サイドとの流動性を調整することが可能になる。
【0180】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記自己相対対当処理手段は、当該注文の取引相手とした第1の取引サイドにおける、特定の接続先の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)に対しては、STの売り・買いの注文概念として受け付けさせ、他の特定の接続先の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)に対しては、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示として受け付けさせるようにする機能をさらに有する。
このように構成すれば、トークンの売買とヘッジの設定解消とを多様に組み合わせた取引を行うことが可能になる。
【0181】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ストックST取引手段は、前記自己相対対当処理手段によるSTの売り・買いの注文と、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示とを、多様に組み合わせた設定を受け付ける機能を有するST売・買及びヘッジ締結・解消の組み合わせ設定受付手段をさらに有する。
このように構成すれば、トークンの売買とヘッジの設定解消とを多様に組み合わせた取引の設定を行うことが可能になる。
【0182】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記自己相対対当処理手段は、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)については、第2の取引サイドからの買い注文に対し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からの売りヘッジの解消の意思表示を対当させることができる機能をさらに有する。
このように構成すれば、第2の取引サイドにおけるトークンの買いと第1の取引サイドにおけるヘッジの解消とを組み合わせた取引を行うことが可能になる。
【0183】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記自己相対対当処理手段は、第2の取引サイドからの現物のSTの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)の売りヘッジの締結の意思表示を対当させることができる機能をさらに有する。
このように構成すれば、第2の取引サイドにおけるトークンの売りと第1の取引サイドにおけるヘッジの締結とを組み合わせた取引を行うことが可能になる。
【0184】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記自己相対対当処理手段は、第2の取引サイドからの現物のトークンの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)の単純な買い注文を対当させることができる機能をさらに有する。
このように構成すれば、第2の取引サイドにおけるトークンの売りと第1の取引サイドにおける買い注文とを組み合わせた取引を行うことが可能になる。
【0185】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ストックST取引手段は、第1の取引サイドの所定の取引業者において、売り側と買い側が共に売り・買いの注文である場合、売り側と買い側が共にヘッジ設定・解消の意思表示である場合、もしくは売り側がヘッジ解消(実質売り側)の意思表示と買い側が買いの注文との組み合わせである場合等、取引業者などの接続単位(ヘッジ提供者をなすST発行体、流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等の取引業者種別)、売り側と買い側の発注における注文型、ヘッジ型の意思表示等の注文形態の設定を受け付ける機能を有する第1の取引サイド接続単位、注文形態設定受付手段をさらに有する。
このように構成すれば、第1の取引サイドは、売り側、買い側のいずれになる場合においても、多様な注文形態での設定を行うことが可能になる。
【0186】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、担保となるSTの担保状態を示す担保パラメータと、前記担保パラメータへの、STの売却、レンディング・再担保の処理不能の状態や、レンディング・再担保の処理可能の状態等、複数種類の担保状態の設定を選択可能に受け付ける機能を有する担保状態設定手段と、担保パラメータに設定された担保状態に基づき、担保となっているSTに対する売却、レンディング・再担保等の処理を制御する機能を有する担保ST処理制御手段と、貸付者との間で担保設定時に締結した貸付契約の満了時において、債務不履行となった場合に、前記担保状態設定手段を介して担保パラメータに設定されている担保状態の設定内容を手動により又は自動的に解除する機能を有する担保パラメータ設定内容変更手段又は担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクトと、をさらに有し、前記担保ST処理制御手段は、前記担保パラメータ設定内容変更手段又は前記担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクトにより担保パラメータの設定内容が解除されたときに、担保として提供されているSTの売却及び権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する機能をさらに有する。
このように構成すれば、契約期間中の担保となっているSTに対する売却、レンディング・再担保等の処理を制御することが可能になるとともに、契約の満了時に、債務不履行となった場合に、権利管理簿上でのSTの保有者を変更することが可能になる。
【0187】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記コモディティ資産を資産原資としてトークン化した社債型のSTは、STの発行体より定期的に発行され、発行の都度、償還期限や金利に相当する内容が全て同一となる証券特性を有し、セカンダリー取引段階においては、トークンとしてのSTの取引が、回号の異なるSTを1つの銘柄に集約して行われるストラクチャード社債型セキュリティトークンであって、前記ST管理構造部は、権利管理簿に、当該STが発行される都度、当該STの保有者の証券的なデジタル的権利情報の一部として回号を付加して記録する機能を有する回号付加権利情報記録手段と、権利管理簿上において、回号が付加された当該STの権利情報を回号単位に管理する機能を有する回号付加権利情報管理手段と、トークンとしての当該STのアドレス(ウォレット処理の対象)において、回号の異なる全ての当該STを同一銘柄のトークンとして管理する機能を有する回号集約トークン管理手段と、を有する。
コモディティータイプのストラクチャード社債には、発行が定期的に行われるものの、償還期限や金利に相当する内容が、都度の発行において同一となるものが多数存在する。
そのため、権利管理簿においては、社債を発行の都度、回号の管理を行う必要が生じる。一方、セカンダリー取引段階の取引においては、各回号におけるものについての償還期限や金利に相当する内容等の特性が全て同一であるため、回号単位ではなく1つの銘柄に集約して取引を行うことが望まれる。
しかるに、このように構成すれば、権利管理簿は回号単位で管理する一方、セカンダリー取引段階おけるトークンは各回号を同一のものとして管理でき、セカンダリー取引段階での回号単位で取引を行う場合における、流動性が分散されて非効率となる問題や、回号が多くなることによる管理の面倒さを解消することが可能となる。
【0188】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ST管理構造部は、セカンダリー取引段階での、流動性調整者や第2の取引サイドにおける、回号の異なる全ての当該STについての帳票や口座の資産管理、注文・約定系の情報の管理について、回号単位に処理することなく、同一銘柄として処理する機能を有する銘柄単位管理手段をさらに有する。
このように構成すれば、回号が多くなることによる管理の面倒さを解消することが可能となる。
【0189】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ST管理構造部は、トークンとしての当該STについての注文約定後の権利管理簿上での名義変更を、日付変更時に前日までのトークンとしての当該STについての全ての取引分を集計した後に一括で行う機能を有する名義変更手段をさらに有する。
このように構成すれば、名義変更処理の煩雑さを解消することが可能となる。
【0190】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ST管理構造部は、権利管理簿に記録されている証券的なデジタル的権利情報における当該STの売り方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートする機能を有する売り方データソート手段と、前記売り方データソート手段がソートした当該STの売り方データにおいて、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する当該STの証券的なデジタル的権利情報における回号が複数種類である場合、保有データ数の少ない回号の当該STの売り方データを優先して売却対象となり、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する、異なる回号同士の当該STの売り方データの保有データ数が同数である場合、回号番号の小さい当該STの売り方データを優先して売却対象となるように並べ替え、並べ替えた売り方データを当該STの売却優先情報として一時的にストックする機能を有する売却優先情報並べ替え及びストック手段と、権利管理簿上の取引当日の当該STの買い方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートする機能を有する買い方データソート手段と、前記買い方データソート手段がソートした当該STの買い方データを、前記売却優先情報並べ替え及びストック手段を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく機能を有する買い方データ割当手段と、をさらに有する。
このように構成すれば、回号の異なるSTを効率よく売り方の売り対象として特定するとともに、効率よく買い方に割り当てることが可能となる。
【0191】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記買い方データ割当手段は、割り当て可能な当該STの買い方データの回号が複数種類存在する場合、回号番号の小さい当該STの買い方データを優先して、前記売却優先情報並べ替え及びストック手段を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく機能をさらに有する。
このように構成すれば、回号の異なるSTを効率よく買い方に割り当てることが可能となる。
【0192】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、トークンの取引者が権利管理簿の閲覧操作を行う場合、取引の当事者として取引に関与する回号のみの当該STの取引データを回号単位に出力表示するように制御する機能を有する閲覧表示制御手段をさらに有する。
トークンの購入者により閲覧権が悪用された場合、権利管理簿に記載の多数の個人情報が取得されて外部に流出してしまうことが懸念される。
このように構成すれば、閲覧権の悪用により取得される個人情報を少なく抑えることが可能となる。
【0193】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記閲覧表示制御手段は、権利管理簿の閲覧操作を行う取引者に対し、該当する銘柄のSTの取引データのうち、各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データを出力表示するように制御する機能をさらに有する。
このように構成すれば、閲覧権が悪用されることによる個人情報の取得をより少なく抑えることが可能となる。
【0194】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記閲覧表示制御手段は、前記出力表示対象に該当する取引データにおける前記各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する住所の出力表示を市区のみに制限する機能をさらに有する。
このように構成すれば、閲覧権が悪用されて個人情報が取得された場合であっても、閲覧権の悪用者による当該個人の具体的な住所の特定を阻止することが可能となる。
【0195】
また、本発明の第1の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記閲覧表示制御手段は、前記出力表示対象に該当する取引データにおける前記各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する氏名の出力表示を苗字のみに制限する機能をさらに有する。
このように構成すれば、閲覧権が悪用されて個人情報が取得された場合であっても、閲覧権の悪用者による当該個人の具体的な氏名の特定を阻止することが可能となる。
【0196】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムは、ブロックチェーン等の分散台帳技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデータを用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトもしくはサーバアプリケーションを備えて構築された、コモディティ資産(貴金属(ゴールド等)、CO排出権、エネルギー(原油や電力等))を資産原資(実質的には担保的な取り扱いになるもの)としてトークン化した、証券特性を有する社債型のST(ストラクチャード社債型セキュリティトークン)等の取引処理システムであって、第1の取引サイド(コモディティを扱う総合商社よりなるSTの発行体であって、ST発行後のセカンダリー取引段階においてヘッジの買い側となるヘッジ提供者をなすST発行体や、ヘッジ提供者をなすST発行体からのSTを引き受ける主幹事証券会社、ST発行後のセカンダリー取引段階において流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等のホールセール処理側)と第2の取引サイド(発行されたSTを顧客と取引する証券会社等のリテール処理側)との間に介在し、流動性調整者の自己のSTのポジション取りにより、第2の取引サイドと第1の取引サイドとにおける取引(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)単位のギャップを吸収して、第1の取引サイド、第2の取引サイド双方のST取引の流動性を調整する機能を有する流動性調整手段を有し、前記流動性調整手段は、STの発行体から一度に大量に発行されるSTを主幹事証券会社に一括で購入して引き受けさせる機能を有するST引受手段と、主幹事証券会社に引き受けさせたSTを流動性調整者の自己のポジションとしてストックする機能を有するSTポジションストック手段と、STの発行体に対しSTの引受のための購入資金を主幹事証券会社に借り入れさせる機能を有するST引受資金借入手段と、STの発行体に対し購入したSTを担保として主幹事証券会社に提供させる機能を有するST担保提供手段と、STの発行体との間でSTの購入資金分のコモディティ現物の売りヘッジ契約を主幹事証券会社に締結させる機能を有するヘッジ締結手段と、ST発行後のセカンダリー取引段階において、前記STポジションストック手段を介してストックしているSTについての、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)に応じた取引を行う機能を有するストックST取引手段と、を有し、前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドからの注文と第1の取引サイドからの注文又はヘッジ解消・追加のIOI(相対取引方式的な取引意思表示)の夫々に対し流動性調整者の自己相対を介して対当処理を行う機能を有する自己相対対当処理手段と、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの買い注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ解消指示の電文を返す機能を有する第1の約定通知手段と、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、流動性調整者からのヘッジ解消指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ解消指示分の買い注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約のうちのヘッジ解消指示分を削減させる機能を有するヘッジ解消手段と、第2の取引サイドから現金類を受け取り第1の取引サイドへ渡すとともに、担保として提供していたSTのうち当該約定分のSTを第1の取引サイドから受け取り第2の取引サイドへ渡す第1の清算処理仲介手段と、ストックしていたSTのポジションのうち当該約定分のSTのポジション量を削減するストックSTポジション量削減手段と、を有する。
【0197】
流動性調整者が発行体により発行される大量の社債トークンを一括で引き受けることにより、流動性調整者が主幹事であると解釈される可能性がある。主幹事であると解釈された場合、流動性調整者は主幹事の引受リスクに該当する相応の財務状況などを強化しなければならなくなることが考えられる。
本発明の第2の形態のST取引処理システムのように、主幹事を流動性調整者ではない別の証券会社にして、上述のヘッジと引受をその主幹事の証券会社が発行体に対して行うようにするとともに、流動性調整者は主幹事の証券会社を第1の取引サイドにおけるLP(リクイデティプロバイダー)の一部として処理することで、そのような虞を回避することが可能となる。
【0198】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムのように、「第1の取引サイド(コモディティを扱う総合商社よりなるSTの発行体であって、ST発行後のセカンダリー取引段階においてヘッジの買い側となるヘッジ提供者をなすST発行体や、ヘッジ提供者をなすST発行体からのSTを引き受ける主幹事証券会社、ST発行後のセカンダリー取引段階において流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)と第2の取引サイド(発行されるSTを顧客と取引する証券会社)との間に介在し、流動性調整者の自己のSTのポジション取りにより、第2の取引サイドと第1の取引サイドとにおける取引(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)単位のギャップを吸収して、第1の取引サイド、第2の取引サイド双方のST取引の流動性を調整する機能を有する流動性調整手段」を有した構成とすれば、社債トークンの発行体(コモデティを扱う総合商社)により一度に発行される社債トークンを、社債トークンの販売側(社債トークンを販売する証券会社)が小刻みに販売していくことで、見かけ上は社債トークンの発行量を可変となるようにし、社債トークンの販売価格を市場価格に連動させて流動性の調整を行うことが可能になり、取引単位にギャップのある第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引を円滑に行うことが可能になる。
【0199】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムのように、流動性調整手段が、「STの発行体から一度に大量に発行されるSTを主幹事証券会社に一括で購入して引き受けさせる機能を有するST引受手段」を有した構成とすれば、発行体により発行される証券を引受者(ここでは主幹事証券会社)が引き受ける都度、当局に対して必要となる、発行体による有価証券届出書の提出と、引受者(ここでは主幹事証券会社)による有価証券引受書の提出のための書類作成と承認手続きの煩雑さを大幅に軽減することが可能となる。
【0200】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムのように、流動性調整手段が、「STの発行体に対しSTの引受のための購入資金を主幹事証券会社に借り入れさせる機能を有するST引受資金借入手段」を有した構成とすれば、主幹事証券会社のST引き受けのための資金調達の負担を軽減することが可能となる。
【0201】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムのように、流動性調整手段が、「STの発行体に対し購入したSTを担保として主幹事証券会社に提供させる機能を有するST担保提供手段」を有した構成とすれば、第1の取引サイドである総合商社は、貸付額と同等の担保(社債ST)を主幹事証券会社から受け取るのでリスクを低減することが可能となる。
【0202】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムのように、流動性調整手段が、「STの発行体との間でSTの購入資金分のコモディティ現物の売りヘッジ契約を主幹事証券会社に締結させる機能を有するヘッジ締結手段」を有した構成とすれば、社債トークンの引受側(主幹事証券会社)は、社債トークンの引受量と同等量のコモディティ現物の売りヘッジ契約をOTCで社債トークンの発行体である総合商社と締結することで、社債トークンの市場価格の下落変動リスクを回避することが可能になる。また、社債トークンの発行額に対し、流動性調整者の自己は、社債トークンを引き受けた主幹事証券会社の当該量のポジションを持つが、引き受けた社債トークンのポジションと同量(のコモディティ現物)をヘッジ(売り)するOTC契約を、主幹事証券会社に第1の取引サイドである社債トークンの発行側(社債トークンを発行する総合商社)と締結させることで、流動性調整者のポジションデルタ=リスク量がゼロとなるようにすることが可能になる。また、第1の取引サイドであるSTの発行体は、社債STの発行に際し、主幹事証券会社からのコモディティ現物の(売り)ヘッジを受けることから、同量のコモディティ現物の買いの契約を持つことで、同量の社債STを発行することが可能になる。
【0203】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムのように、流動性調整手段が、「ST発行後のセカンダリー取引段階において、前記STポジションストック手段を介してストックしているSTについての、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)に応じた取引を行う機能を有するストックST取引手段」を有した構成とすれば、ストックしているSTを用いて、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)に応じて流動性の調整を行いながら、取引単位にギャップのある第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引を円滑に行うことが可能となる。
【0204】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムのように、ストックST取引手段が、「第2の取引サイドからの注文と第1の取引サイドからの注文又はヘッジ解消・追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)の夫々に対し流動性調整者の自己相対を介して対当処理を行う機能を有する自己相対対当処理手段」を有した構成とすれば、第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)と第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社等)及び総合商社等から引き受けた主幹事証券会社とに分けて、その間に流動性調整者としての自己が介在し、流動性調整者としての自己がポジションを保有し、保有ポジションを調整することで流動性の相互供給を行うようにすることが可能となる。
【0205】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムのように、ストックST取引手段が、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの買い注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ解消指示の電文を返す機能を有する第1の約定通知手段」を有した構成とすれば、流動性調整者の自己売買で分断しながら、第1の取引サイドのST発行体からのヘッジ解消の意思表示と第2の取引サイドの買い注文とを対当処理することが可能となる。
【0206】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムのように、ストックST取引手段が、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、流動性調整者からのヘッジ解消指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ解消指示分の買い注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約のうちのヘッジ解消指示分を削減させる機能を有するヘッジ解消手段」を有した構成とすれば、ヘッジ解消処理を円滑に行うことが可能となる。
【0207】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムのように、ストックST取引手段が、「第2の取引サイドから現金類を受け取り第1の取引サイドへ渡すとともに、担保として提供していたSTのうち当該約定分のSTを第1の取引サイドから受け取り第2の取引サイドへ渡す第1の清算処理仲介手段」を有した構成とすれば、第1の取引サイドと第2の取引サイドとの間での約定後の清算処理を円滑に行うことが可能となる。
【0208】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムのように、ストックST取引手段が、「ストックしていたSTのポジションのうち当該約定分のSTのポジション量を削減するストックSTポジション量削減手段」を有した構成とすれば、約定時に、当該ヘッジ量の削減と、担保としていたうち、該当約定分の社債トークンの削減を自動的に行うようにすることで、煩雑な処理を迅速かつ効率化することが可能になる。
【0209】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ストックST取引手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には主幹事証券会社による該当量のヘッジ追加指示の電文を返す機能を有する第2の約定通知手段と、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が主幹事証券会社へのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、主幹事証券会社からのヘッジ追加指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ追加指示分の売り注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約に対しヘッジ追加指示分を追加する機能を有するヘッジ追加手段と、第1の取引サイドから現金類を受け取り第2の取引サイドへ渡すとともに、当該約定分のSTを第2の取引サイドから受け取り第1の取引サイドへ渡す機能を有する第2の清算処理仲介手段と、ストックしていたSTのポジションに対し当該約定分のSTのポジション量を増加する機能を有するストックSTポジション量増加手段と、をさらに有する。
このように構成すれば、約定時に、当該ヘッジ量の追加と、担保としていたうち、該当約定分の社債トークンの増加を自動的に行うようにすることで、煩雑な処理を迅速かつ効率化することが可能になる。
【0210】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ストックST取引手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から市場価格として受け取る気配的な売りと買いのIOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報に基づく流動性調整者レートを算出する機能を有するレート算出手段と、前記レート算出提供手段が算出した流動性調整者レートを第2の取引サイドに提供する機能を有するレート提供手段と、
をさらに有する。
このように構成すれば、第2の取引サイドの証券会社(のシステム)によるレートの作成や1:多での配信の必要性が無くなり、その分、第2の取引サイドの証券会社(のシステム)における、小口のST類の取引を行うために用いるシステムの負荷を低減することが可能になる。
【0211】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ストックST取引手段は、外部から市場価格として受け取る気配的な売りと買いのIOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報、もしくは当該IOI情報に類似する情報、もしくは当該IOI情報と当該IOI情報に類似する情報とを合成した情報に基づく参考レートを算出する機能を有する参考レート算出手段と、前記参考レート算出手段が算出した参考レートに基づく注文をみなし注文として、対当条件を充足する第2の取引サイドの注文をIOI(相対取引方式的な取引意思表示)方式で非公開に探索する機能を有する対当注文探索手段と、をさらに有する。
このように構成すれば、PTS方式を用いることなく第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引について、自己相対を介して対当処理することが可能となる。
【0212】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記第1の清算処理仲介手段は、第2の取引サイドより対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に当該金額の現金類を渡して、担保として提供していたうち、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第2の取引サイドに渡す、RTGS的な清算処理を行う機能を有する。
このように構成すれば、第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引における清算処理を、スマートコントラクトを介して迅速且つ効率的に行うことが可能になる。
【0213】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体より対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行う機能を有する。
このように構成すれば、第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引における清算処理を、スマートコントラクトを介して迅速且つ効率的に行うことが可能になる。
【0214】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記第2の清算処理仲介手段は、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行ったときに、STを消却する機能をさらに有する。
このように構成すれば、ストックしているSTを減らすことが可能となる。
【0215】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から現金類を借り受けて第2の取引サイドに当該金額の現金類を支払うと同時に、第2の取引サイドから該当約定分のSTを受け取り、受け取ったSTを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に担保として渡す機能をさらに有する。
このように構成すれば、ストックしているSTが減ることなく、発行体に対して売りヘッジを積み上げることになり、STの消却後に再度STを発行する手間が省かれるため、STの発行の都度に回号が増えることによる管理の煩雑さを抑えることが可能となる。
【0216】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記第1の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りの現金類とSTとの夫々を一括でDVP処理する又はRTGS処理する機能をさらに有する。
このように構成すれば、スマートコントラクトを介して即時処理ができない場合において、多様な清算処理を行うことが可能になる。
【0217】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記第2の清算処理仲介手段は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りの現金類とSTとの夫々を一括でDVP処理する又はRTGS処理する機能をさらに有する。
このように構成すれば、スマートコントラクトを介して即時処理ができない場合において、多様な清算処理を行うことが可能になる。
【0218】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドのSTの買い過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて少なくなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、追加でストックの基本量からの不足分のSTの新規発行・引受契約を主幹事証券会社との間で締結させ、STのポジションのストックの残量を調整する機能を有する第1のストック残量調整手段をさらに有する。
このように構成すれば、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストックの残量の減少に対処して、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストック量を、想定されるリスク量の範囲内で流動性調整を行うのに好適な量に調整することが可能になる。
【0219】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドのSTの売り過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて多くなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、ストックの基本量からの過剰分のSTのポジションを消却(発行済のSTのポジションのストックの残量を削減)する契約を締結する機能を有する第2のストック残量調整手段をさらに有する。
このように構成すれば、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストックの残量の増加に対処して、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストック量を、想定されるリスク量の範囲内で流動性調整を行うのに好適な量に調整することが可能になる。
【0220】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ストックST取引手段は、第2の取引サイドからのSTの売り注文に対し、当該STの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足する当該STを購入してそのまま保有し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、STのポジションのストックの残量の調整のための処理を指示しないように制御する機能を有する第3のストック残量調整手段をさらに有する。
このように構成すれば、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストック量を、想定されるリスク量の範囲内で流動性調整を行うのに好適な量の範囲に維持することが可能になる。
【0221】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、STの管理母体として、権利管理簿と、STの保有アドレス(ウォレット)とを有し、発行体から、現金類を借り入れ、借り入れた現金類で引受対象となるSTを購入し、購入したSTを担保として発行体に提供するSTの引受者が、権利管理簿にSTの保有者として記録されるとともに、発行体が担保として受け取るSTは発行体側のアドレス(ウォレット)に存在し、STの保有アドレス(ウォレット)と権利管理簿とがリンクし、権利管理簿に記録されているデジタル資産としてのSTの量をベースとしてトークンとしてのSTを生成できるとともに、権利管理簿に記録されるデジタル資産としてのSTの保有者と、実際にトークンとしてのSTをアドレス(ウォレット)に保有する保有者とを異ならせて処理できるST管理構造部を備える。
このように構成すれば、第三者対抗要件の管理が2種類の管理母体による管理という証券的な特性を有しながら、デジタル資産としての大量のSTをトークンとして小刻みに取引する際のデジタルデータの物々交換を円滑に行うことが可能になる。
【0222】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記流動性調整手段は、担保ST管理用スマートコントラクトをさらに有し、前記担保ST管理用スマートコントラクトは、STの引受者である流動性調整者がSTの発行体に対し担保として提供したSTを、権利管理簿上での保有者の名義を変更することなく保管する機能を有する。
このように構成すれば、レンディングでの売買を想定しない実担保として保持するタイプのSTを好適に管理することが可能となる。
【0223】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記流動性調整手段は、STの発行体からの主幹事証券会社の引受において発行体が貸し付けた購入代金の担保としてストックしているSTを、レンディングでの貸付用トークンとして用いることができる機能を有する担保STレンディング手段をさらに有する。
第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社等)のホールセール取引はDVPが主体でT+2などの清算であるのに対し、第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)のリテール取引はRTGSが主体であり即時決済となる。このため、第1の取引サイドと第2の取引サイドとでは、決済期日にギャップがある。
しかるに、本発明の第2の形態のST取引処理システムのように構成すれば、発行体が担保としてストックしているSTをレンディングに用いるようにすることによって、決済期日のギャップを解消することが可能となる。
また、発行体(プライマリー取引段階)側の効率的な販売処理を行うと同時に、(セカンダリー取引段階)側の流動性を上げることが可能となり、双方の処理を効率化することが可能となる。
【0224】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記担保STレンディング手段は、レンディング管理用スマートコントラクトを有し、前記レンディング管理用スマートコントラクトは、借り手より提供されるべき所定の担保対象物を設定する機能と、設定した所定の担保対象物が借り手より提供されたときに、担保としてストックしているSTを前記担保対象物と引き換えに貸付用トークンとして貸し出す機能と、レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する機能と、を有する。
このように構成すれば、借り手はレンディングにより借り受けたSTを自由に売買することが可能となる。
【0225】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記担保STレンディング手段は、権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段をさらに有し、前記権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段は、レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更を、1日又は1週間単位等、定期的に行う機能を有する。
このように構成すれば、取引が行われる都度の権利管理簿上の名義変更の処理の煩雑さを回避することが可能となる。
【0226】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記担保STレンディング手段は、STのレンディングを、クリアリング(借入期間が翌日や数日程度のレポ取引的な超短期的な取引)、空売り(借入期間が長期間の場合を想定した取引)の用途として提供できる機能を有する。
このように構成すれば、発行体が担保としてストックしているSTのレンディングを、クリアリングの用途だけではなく、空売り(証券における信用取引)の用途として提供できるようにすることで、STの売り環境を提供でき、流動性を上げることが可能になる。
【0227】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記自己相対対当処理手段は、通常は第2の取引サイドに対し、STの売り・買いの注文を受け付け、PTS方式等での流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行い、第2の取引サイド間では注文が流動性調整者の自己相対を介した対当処理によって対当しない場合、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体を当該注文の間接的な取引相手として流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行う機能を有する。
このように構成すれば、第2の取引サイド間での取引の流動性を確保しながら、第2の取引サイドと第1の取引サイドとの流動性を調整することが可能になる。
【0228】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記自己相対対当処理手段は、当該注文の取引相手とした第1の取引サイドにおける、特定の接続先の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)に対しては、STの売り・買いの注文概念として受け付けさせ、他の特定の接続先の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)に対しては、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示として受け付けさせるようにする機能をさらに有する。
このように構成すれば、トークンの売買とヘッジの設定解消とを多様に組み合わせた取引を行うことが可能になる。
【0229】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ストックST取引手段は、前記自己相対対当処理手段によるSTの売り・買いの注文と、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示とを、多様に組み合わせた設定を受け付ける機能を有するST売・買及びヘッジ締結・解消の組み合わせ設定受付手段をさらに有する。
このように構成すれば、トークンの売買とヘッジの設定解消とを多様に組み合わせた取引の設定を行うことが可能になる。
【0230】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記自己相対対当処理手段は、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)については、第2の取引サイドからの買い注文に対し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からの売りヘッジの解消の意思表示を対当させることができる機能をさらに有する。
このように構成すれば、第2の取引サイドにおけるトークンの買いと第1の取引サイドにおけるヘッジの解消とを組み合わせた取引を行うことが可能になる。
【0231】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記自己相対対当処理手段は、第2の取引サイドからの現物のSTの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)の売りヘッジの締結の意思表示を対当させることができる機能をさらに有する。
このように構成すれば、第2の取引サイドにおけるトークンの売りと第1の取引サイドにおけるヘッジの解消とを組み合わせた取引を行うことが可能になる。
【0232】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記自己相対対当処理手段は、第2の取引サイドからの現物のトークンの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)の単純な買い注文を対当させることができる機能をさらに有する。
このように構成すれば、第2の取引サイドにおけるトークンの売りと第1の取引サイドにおける買い注文とを組み合わせた取引を行うことが可能になる。
【0233】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ストックST取引手段は、第1の取引サイドの所定の取引業者において、売り側と買い側が共に売り・買いの注文である場合、売り側と買い側が共にヘッジ設定・解消の意思表示である場合、もしくは売り側がヘッジ解消(実質売り側)の意思表示と買い側が買いの注文との組み合わせである場合等、取引業者などの接続単位(ヘッジ提供者をなすST発行体、流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等の取引業者種別)、売り側と買い側の発注における注文型、ヘッジ型の意思表示等の注文形態の設定を受け付ける機能を有する第1の取引サイド接続単位、注文形態設定受付手段をさらに有する。
このように構成すれば、第1の取引サイドは、売り側、買い側のいずれになる場合においても、多様な注文形態での設定を行うことが可能になる。
【0234】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、担保となるSTの担保状態を示す担保パラメータと、前記担保パラメータへの、STの売却、レンディング・再担保の処理不能の状態や、レンディング・再担保の処理可能の状態等、複数種類の担保状態の設定を選択可能に受け付ける機能を有する担保状態設定手段と、担保パラメータに設定された担保状態に基づき、担保となっているSTに対する売却、レンディング・再担保等の処理を制御する機能を有する担保ST処理制御手段と、貸付者との間で担保設定時に締結した貸付契約の満了時において、債務不履行となった場合に、前記担保状態設定手段を介して担保パラメータに設定されている担保状態の設定内容を手動により又は自動的に解除する機能を有する担保パラメータ設定内容変更手段又は担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクトと、をさらに有し、前記担保ST処理制御手段は、前記担保パラメータ設定内容変更手段又は前記担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクトにより担保パラメータの設定内容が解除されたときに、担保として提供されているSTの売却及び権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する機能をさらに有する。
このように構成すれば、契約期間中の担保となっているSTに対する売却、レンディング・再担保等の処理を制御することができるとともに、契約の満了時に、債務不履行となった場合に、権利管理簿上でのSTの保有者を変更することが可能になる。
【0235】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記コモディティ資産を資産原資としてトークン化した社債型のSTは、STの発行体より定期的に発行され、発行の都度、償還期限や金利に相当する内容が全て同一となる証券特性を有し、セカンダリー取引段階においては、トークンとしてのSTの取引が、回号の異なるSTを1つの銘柄に集約して行われるストラクチャード社債型セキュリティトークンであって、 前記ST管理構造部は、権利管理簿に、当該STが発行される都度、当該STの保有者の証券的なデジタル的権利情報の一部として回号を付加して記録する機能を有する回号付加権利情報記録手段と、権利管理簿上において、回号が付加された当該STの権利情報を回号単位に管理する機能を有する回号付加権利情報管理手段と、トークンとしての当該STのアドレス(ウォレット処理の対象)において、回号の異なる全ての当該STを同一銘柄のトークンとして管理する機能を有する回号集約トークン管理手段と、を有する。
コモディティータイプのストラクチャード社債には、発行が定期的に行われるものの、償還期限や金利に相当する内容が、都度の発行において同一となるものが多数存在する。
そのため、権利管理簿においては、社債を発行の都度、回号の管理を行う必要が生じる。一方、セカンダリー取引段階の取引においては、各回号におけるものについての償還期限や金利に相当する内容等の特性が全て同一であるため、回号単位ではなく1つの銘柄に集約して取引を行うことが望まれる。
しかるに、このように構成すれば、権利管理簿は回号単位で管理する一方、セカンダリー取引段階おけるトークンは各回号を同一のものとして管理でき、セカンダリー取引段階での回号単位で取引を行う場合における、流動性が分散されて非効率となる問題や、回号が多くなることによる管理の面倒さを解消することが可能となる。
【0236】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ST管理構造部は、セカンダリー取引段階での、流動性調整者や第2の取引サイドにおける、回号の異なる全ての当該STについての帳票や口座の資産管理、注文・約定系の情報の管理について、回号単位に処理することなく、同一銘柄として処理する機能を有する銘柄単位管理手段をさらに有する。
このように構成すれば、回号が多くなることによる管理の面倒さを解消することが可能となる。
【0237】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ST管理構造部は、トークンとしての当該STについての注文約定後の権利管理簿上での名義変更を、日付変更時に前日までのトークンとしての当該STについての全ての取引分を集計した後に一括で行う機能を有する名義変更手段をさらに有する。
このように構成すれば、名義変更処理の煩雑さを解消することが可能となる。
【0238】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記ST管理構造部は、権利管理簿に記録されている証券的なデジタル的権利情報における当該STの売り方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートする機能を有する売り方データソート手段と、前記売り方データソート手段がソートした当該STの売り方データにおいて、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する当該STの証券的なデジタル的権利情報における回号が複数種類である場合、保有データ数の少ない回号の当該STの売り方データを優先して売却対象となり、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する、異なる回号同士の当該STの売り方データの保有データ数が同数である場合、回号番号の小さい当該STの売り方データを優先して売却対象となるように並べ替え、並べ替えた売り方データを当該STの売却優先情報として一時的にストックする機能を有する売却優先情報並べ替え及びストック手段と、権利管理簿上の取引当日の当該STの買い方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートする機能を有する買い方データソート手段と、前記買い方データソート手段がソートした当該STの買い方データを、前記売却優先情報並べ替え及びストック手段を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく機能を有する買い方データ割当手段と、をさらに有する。
このように構成すれば、回号の異なるSTを効率よく売り方の売り対象として特定するとともに、効率よく買い方に割り当てることが可能となる。
【0239】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記買い方データ割当手段は、割り当て可能な当該STの買い方データの回号が複数種類存在する場合、回号番号の小さい当該STの買い方データを優先して、前記売却優先情報並べ替え及びストック手段を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく機能をさらに有する。
このように構成すれば、回号の異なるSTを効率よく買い方に割り当てることが可能となる。
【0240】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、トークンの取引者が権利管理簿の閲覧操作を行う場合、取引の当事者として取引に関与する回号のみの当該STの取引データを回号単位に出力表示するように制御する機能を有する閲覧表示制御手段をさらに有する。
トークンの購入者により閲覧権が悪用された場合、権利管理簿に記載の多数の個人情報が取得されて外部に流出してしまうことが懸念される。
このように構成すれば、閲覧権の悪用により取得される個人情報を少なく抑えることが可能となる。
【0241】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記閲覧表示制御手段は、権利管理簿の閲覧操作を行う取引者に対し、該当する銘柄のSTの取引データのうち、各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データを出力表示するように制御する機能をさらに有する。
このように構成すれば、閲覧権が悪用されることによる個人情報の取得をより少なく抑えることが可能となる。
【0242】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記閲覧表示制御手段は、前記出力表示対象に該当する取引データにおける前記各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する住所の出力表示を市区のみに制限する機能をさらに有する。
このように構成すれば、閲覧権が悪用されて個人情報が取得された場合であっても、閲覧権の悪用者による当該個人の具体的な住所の特定を阻止することが可能となる。
【0243】
また、本発明の第2の形態のST取引処理システムにおいては、好ましくは、前記閲覧表示制御手段は、前記出力表示対象に該当する取引データにおける前記各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する氏名の出力表示を苗字のみに制限する機能をさらに有する。
このように構成すれば、閲覧権が悪用されて個人情報が取得された場合であっても、閲覧権の悪用者による当該個人の具体的な氏名の特定を阻止することが可能となる。
【0244】
このため、本発明によれば、第1の取引サイドから一度の大量に発行されるST発行に伴う発行側、引受側のリスクを極力無くしながら、第1の取引サイドから発行される大口のSTの流動性を向上させ、取引単位にギャップのある第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引を効率的且つ迅速に処理可能なST取引処理システムが得られる。
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行うこととする。
【0245】
第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態に係るST取引処理システムの全体構成を概略的に示す説明図である。
本実施形態のST取引処理システム1は、ブロックチェーン等の分散技術における分散型台帳と、該分散型台帳に管理されるデータを用いた所定の処理を行うためのスマートコントラクトもしくはサーバアプリケーションを備えて構築された、コモディティ資産(貴金属(ゴールド等)、CO排出権、エネルギー(原油や電力等))を資産原資(実質的には担保的な取り扱いになるもの)としてトークン化した、証券特性を有する社債型のST(ストラクチャード社債型セキュリティトークン)等の取引処理システムであって、例えば、図1に示すように、流動性調整手段2を有する。
【0246】
流動性調整手段2
流動性調整手段2は、例えば、図2に示すように、第1の取引サイド(コモディティを扱う総合商社よりなるSTの発行体であって、ST発行後のセカンダリー取引段階においてヘッジの買い側となるヘッジ提供者をなすST発行体や、ST発行後のセカンダリー取引段階において流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等のホールセール処理側)と第2の取引サイド(発行されたSTを顧客と取引する証券会社等のリテール処理側)との間に介在し、流動性調整者の自己のSTのポジション取りにより、第2の取引サイドと第1の取引サイドとにおける取引(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)単位のギャップを吸収して、第1の取引サイド、第2の取引サイド双方のST取引の流動性を調整する機能を有する。
【0247】
より詳しくは、流動性調整手段2は、例えば、図3に示すように、ST引受手段11と、STポジションストック手段12と、ST引受資金借入手段13と、ST担保提供手段14と、ヘッジ締結手段15と、ストックST取引手段16と、担保ST管理用スマートコントラクト34と、担保STレンディング手段31と、を有して構成されている。
【0248】
ST引受手段11
ST引受手段11は、例えば、図4に示すように、STの発行体から一度に大量に発行されるSTを流動性調整者に一括で購入して引き受けさせる機能を有して構成されている。
【0249】
STポジションストック手段12
STポジションストック手段12は、例えば、図5に示すように、流動性調整者に引き受けさせたSTを流動性調整者の自己のポジションとしてストックする機能を有して構成されている。
【0250】
ST引受資金借入手段13
ST引受資金借入手段13は、例えば、図6に示すように、STの発行体に対しSTの引受のための購入資金を流動性調整者に借り入れさせる機能を有して構成されている。
【0251】
ST担保提供手段14
ST担保提供手段14は、例えば、図7に示すように、STの発行体に対し購入したSTを担保として流動性調整者に提供させる機能を有して構成されている。
【0252】
ヘッジ締結手段15
ヘッジ締結手段15は、例えば、図8に示すように、STの発行体との間でSTの購入資金分のコモディティ現物の売りヘッジ契約を流動性調整者に締結させる機能を有して構成されている。
【0253】
ストックST取引手段16
ストックST取引手段16は、例えば、図9に示すように、ST発行後のセカンダリー取引段階において、STポジションストック手段12を介してストックしているSTについての、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)に応じた取引を行う機能を有して構成されている。
より詳しくは、ストックST取引手段16は、例えば、図10に示すように、自己相対対当処理手段17と、第1の約定通知手段18と、ヘッジ解消手段19と、第1の清算処理仲介手段20と、ストックSTポジション量削減手段21と、第2の約定通知手段22と、ヘッジ追加手段23と、第2の清算処理仲介手段24と、ストックSTポジション量増加手段25と、レート算出手段26と、レート提供手段35と、参考レート算出手段36と、対当注文探索手段27と、第1のストック残量調整手段28と、第2のストック残量調整手段29と、第3のストック残量調整手段30と、ST売・買及びヘッジ締結・解消の組み合わせ設定受付手段32と、第1の取引サイド接続単位、注文形態設定受付手段33と、を有して構成されている。
【0254】
自己相対対当処理手段17
自己相対対当処理手段17は、例えば、図11に示すように、第2の取引サイドからの注文と第1の取引サイドからの注文又はヘッジ解消・追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)の夫々に対し流動性調整者の自己相対を介して対当処理を行う機能を有して構成されている。
詳しくは、自己相対対当処理手段17は、通常は第2の取引サイドに対し、STの売り・買いの注文を受け付け、PTS方式等での流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行い、第2の取引サイド間では注文が流動性調整者の自己相対を介した対当処理によって対当しない場合、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体を当該注文の間接的な取引相手として流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行う機能を有して構成されている。
また、自己相対対当処理手段17は、当該注文の取引相手とした第1の取引サイドにおける、特定の接続先の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)に対しては、STの売り・買いの注文概念として受け付けさせ、他の特定の接続先の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)に対しては、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示として受け付けさせるようにする機能をさらに有して構成されている。
【0255】
また、自己相対対当処理手段17は、例えば、図12に示すように、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)については、第2の取引サイドからの買い注文に対し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からの売りヘッジの解消の意思表示を対当させることができる機能をさらに有して構成されている。
また、自己相対対当処理手段17は、第2の取引サイドからの現物のSTの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)の売りヘッジの締結の意思表示を対当させることができる機能をさらに有して構成されている。
また、自己相対対当処理手段17は、第2の取引サイドからの現物のトークンの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)の単純な買い注文を対当させることができる機能をさらに有して構成されている。
【0256】
第1の約定通知手段18
第1の約定通知手段18は、例えば、図13に示すように、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの買い注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ解消指示の電文を返す機能を有して構成されている。
【0257】
ヘッジ解消手段19
ヘッジ解消手段19は、例えば、図14に示すように、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、流動性調整者からのヘッジ解消指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ解消指示分の買い注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約のうちのヘッジ解消指示分を削減させる機能を有して構成されている。
【0258】
第1の清算処理仲介手段20
第1の清算処理仲介手段20は、例えば、図15に示すように、第2の取引サイドから現金類を受け取り第1の取引サイドへ渡すとともに、担保として提供していたSTのうち当該約定分のSTを第1の取引サイドから受け取り第2の取引サイドへ渡す機能を有して構成されている。
詳しくは、第1の清算処理仲介手段20は、第2の取引サイドより対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に当該金額の現金類を渡して、担保として提供していたうち、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第2の取引サイドに渡す、RTGS的な清算処理を行う機能を有して構成されている。
また、第1の清算処理仲介手段20は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りの現金類とSTとの夫々を一括でDVP処理する又はRTGS処理する機能をさらに有して構成されている。
【0259】
ストックSTポジション量削減手段21
ストックSTポジション量削減手段21は、例えば、図16に示すように、ストックしていたSTのポジションのうち当該約定分のSTのポジション量を削減する機能を有して構成されている。
【0260】
第2の約定通知手段22
第2の約定通知手段22は、例えば、図17に示すように、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ追加指示の電文を返す機能を有して構成されている。
【0261】
ヘッジ追加手段23
ヘッジ追加手段23は、例えば、図18に示すように、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、流動性調整者からのヘッジ追加指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ追加指示分の売り注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約に対しヘッジ追加指示分を追加する機能を有して構成されている。
【0262】
第2の清算処理仲介手段24
第2の清算処理仲介手段24は、例えば、図19に示すように、第1の取引サイドから現金類を受け取り第2の取引サイドへ渡すとともに、当該約定分のSTを第2の取引サイドから受け取り第1の取引サイドへ渡す機能を有して構成されている。
詳しくは、第2の清算処理仲介手段24は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体より対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行う機能を有して構成されている。
また、第2の清算処理仲介手段24は、例えば、図20に示すように、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行ったときに、STを消却する機能をさらに有して構成されている。
なお、後述する第3のストック残量調整手段30が機能する場合には、第2の清算処理仲介手段24は、上記のRTGS的な清算処理を行ったときにおいて、STを消却する機能は作動せず、流動性調整者の自己にそのまま保有させるように機能する構成となっている。
また、第2の清算処理仲介手段24は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から現金類を借り受けて第2の取引サイドに当該金額の現金類を支払うと同時に、第2の取引サイドから該当約定分のSTを受け取り、受け取ったSTを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に担保として渡す機能をさらに有して構成されている。
また、第2の清算処理仲介手段24は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りを一括でDVP処理する機能をさらに有して構成されている。
【0263】
ストックSTポジション量増加手段25
ストックSTポジション量増加手段25は、例えば、図21に示すように、ストックしていたSTのポジションに対し当該約定分のSTのポジション量を増加する機能を有して構成されている。
【0264】
レート算出手段26
レート算出手段26は、例えば、図22に示すように、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から市場価格として受け取る気配的な売りと買いのIOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報に基づく流動性調整者レートを算出する機能を有して構成されている。
【0265】
レート提供手段35
レート提供手段35は、例えば、図23に示すように、レート算出手段26が算出した流動性調整者レートを第2の取引サイドに提供する機能を有して構成されている。
【0266】
参考レート算出手段36
参考レート算出手段36は、例えば、図24に示すように、外部から市場価格として受け取る気配的な売りと買いのIOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報、もしくは当該IOI情報に類似する情報、もしくは当該IOI情報と当該IOI情報に類似する情報とを合成した情報に基づく参考レートを算出する機能を有して構成されている。
【0267】
対当注文探索手段27
対当注文探索手段27は、例えば、図25に示すように、参考レート算出手段36が算出した参考レートに基づく注文をみなし注文として、対当条件を充足する第2の取引サイドの注文をIOI(相対取引方式的な取引意思表示)方式で非公開に探索する機能を有して構成されている。
【0268】
第1のストック残量調整手段28
第1のストック残量調整手段28は、例えば、図26に示すように、第2の取引サイドのSTの買い過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて少なくなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、追加でストックの基本量からの不足分のSTの新規発行・引受契約を締結し、STのポジションのストックの残量を調整する機能を有して構成されている。
【0269】
第2のストック残量調整手段29
第2のストック残量調整手段29は、例えば、図27に示すように、第2の取引サイドのSTの売り過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて多くなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、ストックの基本量からの過剰分のSTのポジションを消却(発行済のSTのポジションのストックの残量を削減)する契約を締結する機能を有して構成されている。
【0270】
第3のストック残量調整手段30
第3のストック残量調整手段30は、例えば、図28に示すように、第2の取引サイドからのSTの売り注文に対し、当該STの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足する当該STを購入してそのまま保有し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、STのポジションのストックの残量の調整のための処理を指示しないように制御する機能を有して構成されている。
【0271】
ST売・買及びヘッジ締結・解消の組み合わせ設定受付手段32
ST売・買及びヘッジ締結・解消の組み合わせ設定受付手段32は、例えば、図29に示すように、自己相対対当処理手段17によるSTの売り・買いの注文と、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示とを、多様に組み合わせた設定を受け付ける機能を有して構成されている。
【0272】
第1の取引サイド接続単位、注文形態設定受付手段33
第1の取引サイド接続単位、注文形態設定受付手段33は、例えば、図30に示すように、第1の取引サイドの所定の取引業者において、売り側と買い側が共に売り・買いの注文である場合、売り側と買い側が共にヘッジ設定・解消の意思表示である場合、もしくは売り側がヘッジ解消(実質売り側)の意思表示と買い側が買いの注文との組み合わせである場合等、取引業者などの接続単位(ヘッジ提供者をなすST発行体、流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等の取引業者種別)、売り側と買い側の発注における注文型、ヘッジ型の意思表示等の注文形態の設定を受け付ける機能を有して構成されている。
【0273】
担保ST管理用スマートコントラクト34
担保ST管理用スマートコントラクト34は、例えば、図31に示すように、STの引受者である流動性調整者がSTの発行体に対し担保として提供したSTを、権利管理簿上での保有者の名義を変更することなく保管する機能を有して構成されている。
【0274】
担保STレンディング手段31
担保STレンディング手段31は、例えば、図32に示すように、STの発行体からの流動性調整者の引受において発行体が貸し付けた購入代金の担保としてストックしているSTを、レンディングでの貸付用トークンとして用いることができる機能を有して構成されている。
詳しくは、担保STレンディング手段31は、例えば、図33に示すように、レンディング管理用スマートコントラクト37と、権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段38、を有して構成されている。
そして、担保STレンディング手段31は、STのレンディングを、クリアリング、空売りの用途として提供できる機能を有して構成されている。
【0275】
レンディング管理用スマートコントラクト37
レンディング管理用スマートコントラクト37は、例えば、図34に示すように、借り手より提供されるべき所定の担保対象物を設定する機能と、設定した所定の担保対象物が借り手より提供されたときに、担保としてストックしているSTを担保対象物と引き換えに貸付用トークンとして貸し出す機能と、レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する機能と、を有して構成されている。
【0276】
権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段38
権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段38は、例えば、図35に示すように、レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更を、1日又は1週間単位等、定期的に行う機能を有して構成されている。
【0277】
ST管理構造部8
また、本実施形態のST取引処理システム1は、STの管理母体として、権利管理簿3と、STの保有アドレス(ウォレット)4とを有している。
そして、例えば、図36に示すように、発行体から、現金類を借り入れ、借り入れた現金類で引受対象となるSTを購入し、購入したSTを担保として発行体に提供するSTの引受者が、権利管理簿3にSTの保有者として記録されるとともに、発行体が担保として受け取るSTは発行体側のアドレス(ウォレット)4に存在し、STの保有アドレス(ウォレット)4と権利管理簿3とがリンクし、権利管理簿3に記録されているデジタル資産としてのSTの量をベースとしてトークンとしてのSTを生成できるとともに、権利管理簿3に記録されるデジタル資産としてのSTの保有者と、実際にトークンとしてのSTをアドレス(ウォレット)4に保有する保有者とを異ならせて処理できるST管理構造部8を備えている。
【0278】
より詳しくは、ST管理構造部8は、例えば、図37に示すように、回号付加権利情報記録手段41と、回号付加権利情報管理手段42と、回号集約トークン管理手段43と、銘柄単位管理手段44と、名義変更手段45と、売り方データソート手段46と、売却優先情報並べ替え及びストック手段47と、買い方データソート手段48と、買い方データ割当手段49と、有して構成されている。
【0279】
回号付加権利情報記録手段41
回号付加権利情報記録手段41は、例えば、図38に示すように、コモディティ資産を資産原資としてトークン化した社債型のSTが、STの発行体より定期的に発行され、発行の都度、償還期限や金利に相当する内容が全て同一となる証券特性を有し、セカンダリー取引段階においては、トークンとしてのSTの取引が、回号の異なるSTを1つの銘柄に集約して行われるストラクチャード社債型セキュリティトークンである場合において、例えば、図38に示すように、権利管理簿3に、当該STが発行される都度、当該STの保有者の証券的なデジタル的権利情報の一部として回号を付加して記録する機能を有して構成されている。
【0280】
回号付加権利情報管理手段42
回号付加権利情報管理手段42は、例えば、図39に示すように、権利管理簿3上において、回号が付加された当該STの権利情報を回号単位に管理する機能を有して構成されている。
【0281】
回号集約トークン管理手段43
回号集約トークン管理手段43は、例えば、図40に示すように、トークンとしての当該STのアドレス(ウォレット処理の対象)4において、回号の異なる全ての当該STを同一銘柄のトークンとして管理する機能を有して構成されている。
【0282】
銘柄単位管理手段44
銘柄単位管理手段44は、例えば、図41に示すように、セカンダリー取引段階での、流動性調整者や第2の取引サイドにおける、回号の異なる全ての当該STについての帳票や口座の資産管理、注文・約定系の情報の管理について、回号単位に処理することなく、同一銘柄として処理する機能を有して構成されている。
【0283】
名義変更手段45
名義変更手段45は、例えば、図42に示すように、トークンとしての当該STについての注文約定後の権利管理簿3上での名義変更を、日付変更時に前日までのトークンとしての当該STについての全ての取引分を集計した後に一括で行う機能を有して構成されている。
【0284】
売り方データソート手段46
売り方データソート手段46は、例えば、図43に示すように、権利管理簿3に記録されている証券的なデジタル的権利情報における当該STの売り方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートする機能を有して構成されている。
【0285】
売却優先情報並べ替え及びストック手段47
売却優先情報並べ替え及びストック手段47は、例えば、図44に示すように、売り方データソート手段46がソートした当該STの売り方データにおいて、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する当該STの証券的なデジタル的権利情報における回号が複数種類である場合、保有データ数の少ない回号の当該STの売り方データを優先して売却対象となり、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する、異なる回号同士の当該STの売り方データの保有データ数が同数である場合、回号番号の小さい当該STの売り方データを優先して売却対象となるように並べ替え、並べ替えた売り方データを当該STの売却優先情報として一時的にストックする機能を有して構成されている。
【0286】
買い方データソート手段48
買い方データソート手段48は、例えば、図45に示すように、権利管理簿3上の取引当日の当該STの買い方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートする機能を有して構成されている。
【0287】
買い方データ割当手段49
買い方データ割当手段49は、例えば、図46に示すように、買い方データソート手段48がソートした当該STの買い方データを、売却優先情報並べ替え及びストック手段47を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく機能を有して構成されている。
また、買い方データ割当手段49は、割り当て可能な当該STの買い方データの回号が複数種類存在する場合、回号番号の小さい当該STの買い方データを優先して、売却優先情報並べ替え及びストック手段47を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく機能をさらに有して構成されている。
【0288】
また、第1実施形態のST取引処理システム1は、担保となるSTの担保状態を示す担保パラメータ(不図示)と、担保状態設定手段5と、担保ST処理制御手段6と、担保パラメータ設定内容変更手段(又は担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクト)7と、をさらに有している。
【0289】
担保状態設定手段5は、例えば、図47に示すように、担保パラメータ(不図示)への、売却、レンディング・再担保の処理不能の状態や、レンディング・再担保の処理可能の状態等、複数種類の担保状態の設定を選択可能に受け付ける機能を有して構成されている。
【0290】
担保ST処理制御手段6は、例えば、図48に示すように、担保パラメータ(不図示)に設定された担保状態に基づき、担保となっているSTに対する売却、レンディング・再担保等の処理を制御する機能を有して構成されている。
また、担保ST処理制御手段6は、担保パラメータ設定内容変更手段(又は担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクト)7により担保パラメータ(不図示)の設定内容が解除されたときに、担保として提供されているSTの売却及び権利管理簿3上のSTの保有者の変更が可能となるように制御する機能を有して構成されている。
【0291】
担保パラメータ設定内容変更手段(又は担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクト)7は、例えば、図49に示すように、貸付者との間で担保設定時に締結した貸付契約の満了時に、債務不履行となった場合に、担保状態設定手段5を介して担保パラメータ(不図示)に設定されている担保状態の設定内容を(手動により又は自動的に)解除する機能を有して構成されている。
【0292】
さらに、本実施形態のST取引処理システム1は、閲覧表示制御手段50を有して構成されている。
【0293】
閲覧表示制御手段50
閲覧表示制御手段50は、例えば、図50に示すように、トークンの取引者が権利管理簿3の閲覧操作を行う場合、取引の当事者として取引に関与する回号のみの当該STの取引データを回号単位に出力表示するように制御する機能を有して構成されている。
また、閲覧表示制御手段50は、例えば、図51に示すように、権利管理簿3の閲覧操作を行う取引者に対し、該当する銘柄のSTの取引データのうち、各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データを出力表示するように制御する機能をさらに有して構成されている。
また、閲覧表示制御手段50は、出力表示対象に該当する取引データにおける各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する住所の出力表示を市区のみに制限する機能をさらに有して構成されている。
また、閲覧表示制御手段50は、出力表示対象に該当する取引データにおける各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する氏名の出力表示を苗字のみに制限する機能をさらに有して構成されている。
【0294】
第1実施形態のST取引処理システムを用いた処理の流れ
このように構成された第1実施形態のST取引処理システム1を用いた処理の流れを、図面を用いて説明する。
【0295】
(処理の流れ-その1)発行体からのSTの引受時の処理の流れ(図52
図52は第1実施形態のST取引処理システム1を用いた、発行体からのSTの引受時の処理の流れを示す説明図である。
ST引受資金借入手段13は、STの発行体に対しSTの引受のための購入資金を流動性調整者に借り入れさせる。
ST引受手段11は、STの発行体から一度に大量に発行されるSTを流動性調整者に一括で購入して引き受けさせる。
STポジションストック手段12は、流動性調整者に引き受けさせたSTを流動性調整者の自己のポジションとしてストックする。
ST担保提供手段14は、STの発行体に対し購入したSTを担保として流動性調整者に提供させる。
ヘッジ締結手段15は、STの発行体との間でSTの購入資金分のコモディティ現物の売りヘッジ契約を流動性調整者に締結させる。
【0296】
(処理の流れ-その2)発行体から引き受けたSTの売買取引時の処理の流れ(図53
図53は第1実施形態のST取引処理システム1を用いた、発行体から引き受けたSTの売買取引時の処理の流れを示す説明図である。
ストックST取引手段16は、ST発行後のセカンダリー取引段階において、STポジションストック手段12を介してストックしているSTについての、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)に応じた取引を行う。
より詳しくは、レート算出手段26は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から市場価格として受け取る気配的な売りと買いのIOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報に基づく流動性調整者レートを算出する。
レート提供手段35は、レート算出手段26が算出した流動性調整者レートを第2の取引サイドに提供する。これにより、流動性調整者と第2の取引サイドとの間でPTS方式での取引が行われることになる。
また、参考レート算出手段36は、外部から市場価格として受け取る気配的な売りと買いのIOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報、もしくは当該IOI情報に類似する情報、もしくは当該IOI情報と当該IOI情報に類似する情報とを合成した情報に基づく参考レートを算出する。これにより、流動性調整者と第2の取引サイドとの間でダークプールでの取引が行われることになる。
また、対当注文探索手段27は、参考レート算出手段36が算出した参考レートに基づく注文をみなし注文として、対当条件を充足する第2の取引サイドの注文をIOI(相対取引方式的な取引意思表示)方式で非公開に探索する。
自己相対対当処理手段17は、第2の取引サイドからの注文と第1の取引サイドからの注文又はヘッジ解消・追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)の夫々に対し流動性調整者の自己相対を介して対当処理を行う。
詳しくは、自己相対対当処理手段17は、通常は第2の取引サイドに対し、STの売り・買いの注文を受け付け、PTS方式等での流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行い、第2の取引サイド間では注文が流動性調整者の自己相対を介した対当処理によって対当しない場合、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体を当該注文の間接的な取引相手として流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行う。
また、自己相対対当処理手段17は、当該注文の取引相手とした第1の取引サイドにおける、特定の接続先の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)に対しては、STの売り・買いの注文概念として受け付けさせ、他の特定の接続先の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)に対しては、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示として受け付けさせる。
また、自己相対対当処理手段17は、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)については、第2の取引サイドからの買い注文に対し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からの売りヘッジの解消の意思表示を対当させることができる。
また、自己相対対当処理手段17は、第2の取引サイドからの現物のSTの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)の売りヘッジの締結の意思表示を対当させることができる。
また、自己相対対当処理手段17は、第2の取引サイドからの現物のトークンの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)の単純な買い注文を対当させることができる。
【0297】
(処理の流れ-その3)STの約定時の処理の流れ(図54図55
図54図55は第1実施形態のST取引処理システム1を用いた、STの約定時の処理の流れを示す説明図である。
第1の約定通知手段18は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの買い注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ解消指示の電文を返す。
ヘッジ解消手段19は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、流動性調整者からのヘッジ解消指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ解消指示分の買い注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約のうちのヘッジ解消指示分を削減させる。
ストックSTポジション量削減手段21は、ストックしていたSTのポジションのうち当該約定分のSTのポジション量を削減する。
第1の清算処理仲介手段20は、第2の取引サイドから現金類を受け取り第1の取引サイドへ渡すとともに、担保として提供していたSTのうち当該約定分のSTを第1の取引サイドから受け取り第2の取引サイドへ渡す。
詳しくは、第1の清算処理仲介手段20は、第2の取引サイドより対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に当該金額の現金類を渡して、担保として提供していたうち、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第2の取引サイドに渡す、RTGS的な清算処理を行う。
また、第1の清算処理仲介手段20は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては、該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りを一括でDVP処理する又はRTGS処理する。
【0298】
第2の約定通知手段22は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ追加指示の電文を返す。
ヘッジ追加手段23は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、流動性調整者からのヘッジ追加指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ追加指示分の売り注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約に対しヘッジ追加指示分を追加する。
ストックSTポジション量増加手段25は、ストックしていたSTのポジションに対し当該約定分のSTのポジション量を増加する。
第2の清算処理仲介手段24は、第1の取引サイドから現金類を受け取り第2の取引サイドへ渡すとともに、当該約定分のSTを第2の取引サイドから受け取り第1の取引サイドへ渡す。
詳しくは、第2の清算処理仲介手段24は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体より対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行う。
また、第2の清算処理仲介手段24は、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す。
また、第2の清算処理仲介手段24は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から現金類を借り受けて第2の取引サイドに当該金額の現金類を支払うと同時に、第2の取引サイドから該当約定分のSTを受け取り、受け取ったSTを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に担保として渡す。
また、第2の清算処理仲介手段24は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りを一括でDVP処理する。
【0299】
(処理の流れ-その4)STのストック量の調整処理の流れ(図56
図56は第1実施形態のST取引処理システム1を用いた、STのストック量の調整処理の流れを示す説明図である。
第1のストック残量調整手段28は、第2の取引サイドのSTの買い過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて少なくなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、追加でストックの基本量からの不足分のSTの新規発行・引受契約を締結し、STのポジションのストックの残量を調整する。
第2のストック残量調整手段29は、第2の取引サイドのSTの売り過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて多くなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、ストックの基本量からの過剰分のSTのポジションを消却(発行済のSTのポジションのストックの残量を削減)する契約を締結する。
第3のストック残量調整手段30は、第2の取引サイドからのSTの売り注文に対し、当該STの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足する当該STを購入してそのまま保有し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、STのポジションのストックの残量の調整のための処理を指示しないように制御する。
【0300】
(処理の流れ-その5)STのレンディングを活用した処理の流れ(図57
図57は第1実施形態のST取引処理システム1を用いた、STのレンディングを活用した処理の流れを示す説明図である。
担保STレンディング手段31は、STの発行体からの流動性調整者の引受において発行体が貸し付けた購入代金の担保としてストックしているSTを、レンディングでの貸付用トークンとして提供できる。詳しくは、担保STレンディング手段31は、STのレンディングを、クリアリング、空売りの用途として提供できる。
詳しくは、レンディング管理用スマートコントラクト37は、借り手より提供されるべき所定の担保対象物を設定する。また、レンディング管理用スマートコントラクト37は、設定した所定の担保対象物が借り手より提供されたときに、担保としてストックしているSTを担保対象物と引き換えに貸付用トークンとして貸し出す。また、レンディング管理用スマートコントラクト37は、レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する。
権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段38は、レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更を、1日又は1週間単位等、定期的に行う。
発行体が担保としてストックしているSTをクリアリング用途として提供できるようにすることで、第1の取引サイドと第2の取引サイドとの決済期日のギャップを解消することができる。
また、空売り(証券における信用取引)の用途として提供できるようにすることで、STの売り環境を提供でき、流動性を上げることができる。
【0301】
(処理の流れ-その6)STの流動性調整のための設定受付処理の流れ(図58
図58は第1実施形態のST取引処理システム1を用いた、STの流動性調整のための設定受付処理の流れを示す説明図である。
ST売・買及びヘッジ締結・解消の組み合わせ設定受付手段32は、自己相対対当処理手段17によるSTの売り・買いの注文と、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示とを、多様に組み合わせた設定を受け付ける。
第1の取引サイド接続単位、注文形態設定受付手段33は、第1の取引サイドの所定の取引業者において、売り側と買い側が共に売り・買いの注文である場合、売り側と買い側が共にヘッジ設定・解消の意思表示である場合、もしくは売り側がヘッジ解消(実質売り側)の意思表示と買い側が買いの注文との組み合わせである場合等、取引業者などの接続単位(ヘッジ提供者をなすST発行体、流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等の取引業者種別)、売り側と買い側の発注における注文型、ヘッジ型の意思表示等の注文形態の設定を受け付ける。
これらの設定は、注文時に随時受け付ける。
【0302】
(処理の流れ-その7)担保パラメータの設定状態に基づく処理の流れ(図59
図59は第1実施形態のST取引処理システム1を用いた、担保パラメータの設定状態に基づく処理の流れを示す説明図である。
担保状態設定手段5は、担保パラメータ(不図示)への、売却、レンディング・再担保の処理不能の状態や、レンディング・再担保の処理可能の状態等、複数種類の担保状態の設定を選択可能に受け付ける。
担保ST処理制御手段6は、担保パラメータ(不図示)に設定された担保状態に基づき、担保となっているSTに対する売却、レンディング・再担保等の処理を制御する。
また、担保ST処理制御手段6は、担保パラメータ設定内容変更手段(又は担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクト)7により担保パラメータ(不図示)の設定内容が解除されたときに、担保として提供されているSTの売却及び権利管理簿4上のSTの保有者の変更が可能となるように制御する。
担保パラメータ設定内容変更手段(又は担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクト)7は、貸付者との間で担保設定時に締結した貸付契約の満了時に、債務不履行となった場合に、担保状態設定手段5を介して担保パラメータ(不図示)に設定されている担保状態の設定内容を(手動により又は自動的に)解除する。
【0303】
(処理の流れ-その8)回号付きSTの取引に伴うST管理処理の流れ(図60
図60は第1実施形態のST取引処理システム1を用いた、STの取引に伴う回号付きSTの管理に関する処理の流れを示す説明図である。
回号付加権利情報記録手段41は、コモディティ資産を資産原資としてトークン化した社債型のSTが、STの発行体より定期的に発行され、発行の都度、償還期限や金利に相当する内容が全て同一となる証券特性を有し、セカンダリー取引段階においては、トークンとしてのSTの取引が、回号の異なるSTを1つの銘柄に集約して行われるストラクチャード社債型セキュリティトークンである場合において、権利管理簿3に、当該STが発行される都度、当該STの保有者の証券的なデジタル的権利情報の一部として回号を付加して記録する。
回号付加権利情報管理手段42は、権利管理簿3上において、回号が付加された当該STの権利情報を回号単位に管理する。
回号集約トークン管理手段43は、トークンとしての当該STのアドレス(ウォレット処理の対象)4において、回号の異なる全ての当該STを同一銘柄のトークンとして管理する。
銘柄単位管理手段44は、セカンダリー取引段階での、流動性調整者や第2の取引サイドにおける、回号の異なる全ての当該STについての帳票や口座の資産管理、注文・約定系の情報の管理について、回号単位に処理することなく、同一銘柄として処理する。
名義変更手段45は、トークンとしての当該STについての注文約定後の権利管理簿3上での名義変更を、日付変更時に前日までのトークンとしての当該STについての全ての取引分を集計した後に一括で行う。
【0304】
(処理の流れ-その9)STの取引における対当処理時の権利管理簿上に記録されている回号付きSTの割り当てに関する処理の流れ(図61
図61は第1実施形態のST取引処理システム1を用いた、STの取引における対当処理時の権利管理簿上に記録されている回号付きSTの割り当てに関する処理の流れを示す説明図である。
売り方データソート手段46は、権利管理簿3に記録されている証券的なデジタル的権利情報における当該STの売り方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートする。
売却優先情報並べ替え及びストック手段47は、売り方データソート手段46がソートした当該STの売り方データにおいて、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する当該STの証券的なデジタル的権利情報における回号が複数種類である場合、保有データ数の少ない回号の当該STの売り方データを優先して売却対象となり、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する、異なる回号同士の当該STの売り方データの保有データ数が同数である場合、回号番号の小さい当該STの売り方データを優先して売却対象となるように並べ替え、並べ替えた売り方データを当該STの売却優先情報として一時的にストックする。
買い方データソート手段48は、権利管理簿3上の取引当日の当該STの買い方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートする。
買い方データ割当手段49は、買い方データソート手段48がソートした当該STの買い方データを、売却優先情報並べ替え及びストック手段47を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく。
また、買い方データ割当手段49は、割り当て可能な当該STの買い方データの回号が複数種類存在する場合、回号番号の小さい当該STの買い方データを優先して、売却優先情報並べ替え及びストック手段47を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく。
【0305】
割り当て処理の具体例
図62は第1実施形態のST取引処理システム1を用いた、STの取引における対当処理時の権利管理簿上に記録されている回号付きSTの割り当て処理の具体例を権利管理簿に記録されるデータを用いて示す説明図である。
本例では、売り方の所定銘柄のSTの保有量に関し、取引者Aは回号1のSTを数量60、回号2のSTを数量100、取引者Bは回号1のSTを数量20、回号2のSTを数量30、取引者Bは回号1のSTを数量100、回号2のSTを数量100保有しているものとする。
また、買い方の当該銘柄のSTの保有量に関し、取引者Dは回号2のSTを数量30、取引者Eは回号1のSTを数量30、取引者Fは回号2のSTを数量10保有しているものとする。
また、取引者Aは数量50,取引者Bは数量40、取引者Cは数量100の当該銘柄のSTを売却し、取引者Dは数量50、取引者Eは数量80、取引者Fは数量60の当該銘柄のSTを購入したものとする。
売り方データソート手段46は、権利管理簿3に記録されている証券的なデジタル的権利情報における当該STの売り方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートしている。また、買い方データソート手段48は、権利管理簿3上の取引当日の当該STの買い方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートしている。
【0306】
売却優先情報並べ替え及びストック手段47は、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する当該STの証券的なデジタル的権利情報における回号が複数種類である場合、保有データ数の少ない回号の当該STの売り方データを優先して売却対象となり、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する、異なる回号同士の当該STの売り方データの保有データ数が同数である場合、回号番号の小さい当該STの売り方データを優先して売却対象となるように並べ替え、並べ替えた売り方データを当該STの売却優先情報として一時的にストックする。
本例では、回号番号は回号1、回号2の2種類が存在する。取引者Aの売却数50のSTについては、保有している回号1(保有数60)と回号2(保有数100)のうち保有数の少ない回号1のSTから優先的に売却対象となる。ここで、回号1の保有数が60であるため、取引者Aにおける数量50の売却対象の全てが回号1のSTとなる。
また、取引者Bの売却数40のSTについては、保有している回号1(保有数20)と回号2(保有数30)のうち保有数の少ない回号1のSTから優先的に売却対象となる。ここで、回号1の保有数が20であるため、取引者Bにおける数量40の売却対象は、回号1のSTが数量20、回号2のSTが数量20となる。
また、取引者Cの売却数100のSTについては、保有している回号1(保有数100)と回号2(保有数100)の保有数が同数であるため、回号番号の小さい回号1のSTから優先的に売却対象となる。ここで、回号1の保有数が100であるため、取引者Cにおける数量100の売却対象のSTの全てが回号1のSTとなる。
【0307】
システムでは、当日のSTの売却数を回号コードごとに集計する。本例では、回号1のSTが数量170(=50+20+100)、回号2のSTが数量20となる。
次に、当日の売却数を集計し、原簿IDの小さい購入者(D→E→F)から順に回号番号の小さいSTから順に割り当てていく。
即ち、買い方データ割当手段49は、買い方データソート手段48がソートした当該STの買い方データを、売却優先情報並べ替え及びストック手段47を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく。そのとき、買い方データ割当手段49は、割り当て可能な当該STの買い方データの回号が複数種類存在する場合、回号番号の小さい当該STの買い方データを優先して、売却優先情報並べ替え及びストック手段47を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく。
本例では、売り方のSTの回号番号は回号1と回号2の2種類が存在する。まず、取引者DのSTの割り当てを行う。取引者Dの購入数50のSTについては、回号1のST売却数170のSTのうちの数量50のSTを売却対象として降順に割り当てる。これにより、取引者Dの購入後のSTの保有量は、回号1が50(=0+50)、回号2が30となる。また、売り方の回号1のSTの売却残数量は120(=170-50)となる。
次に、取引者EのSTの割り当てを行う。取引者Eの購入数80のSTについては、売却残数量120の回号1のSTのうちの数量80のSTを売却対象として降順に割り当てる。これにより、取引者Eの購入後のSTの保有量は、回号1が110(=30+80)となる。また、売り方の回号1のSTの残数量は40(=120-80)となる。
次に、取引者FのSTの割り当てを行う。取引者Fの購入数60のSTについては、回号1のST売却残数量40のSTの全てのSTと、回号2のST売却残数量20のSTの全てのSTを売却対象として降順に割り当てる。これにより、取引者Fの購入後のSTの保有量は、回号1が40(=0+40)、回号2が30(=10+20)となる。また、売り方の回号1のSTの残数量は回号1が0(=40-40)、回号2が0(=20-20)となる。
【0308】
回号付きSTの閲覧表示処理
図63は第1実施形態のST取引処理システム1を用いた、権利管理簿の閲覧操作を行う取引者に対する権利管理簿上に記録されている回号付きSTの閲覧表示処理を概念的に示す説明図である。
トークンの取引者が権利管理簿の閲覧操作を行う場合、閲覧表示制御手段50は、取引の当事者として取引に関与する回号のみの当該STの取引データを回号単位に出力表示するように制御する。
なお、システムでは、閲覧権行使者が、図示しない選択画面を介して閲覧対象者を選択入力できるように構成されている。
例えば、閲覧権行使者が、閲覧対象者として「STの全保有者」を選択した場合、閲覧表示制御手段50は、指定銘柄の全保有者を対象として権利管理簿の情報を出力する。
また、例えば、閲覧権行使者が、閲覧対象者として「STの上位保有者」を選択した場合、閲覧表示制御手段50は、指定銘柄の発行数量の上位XX%(設定)を上回る保有者を対象として権利管理簿の情報を出力する。
また、例えば、閲覧権行使者が、閲覧対象者として「指定IDと関連する情報のみ」を選択した場合、閲覧表示制御手段50は、指定された権利管理簿のIDの取引者が保有する回号番号(回号コード)と同一の回号番号(回号コード)を保有する対象者のみの権利管理簿の情報を出力する。
【0309】
例えば、閲覧権行使者が、「回号コード1(回号1)」の銘柄のみを保有している場合、閲覧表示制御手段50は、全保有者を対象として「回号コード1(回号1)」の銘柄の保有情報のみを出力する。この場合、閲覧対象となる保有者が「回号コード1(回号1)」と「回号コード2(回号2)」の銘柄を保有していても回号コード1(回号1)の保有情報のみを出力する。
また、例えば、閲覧権行使者が、「回号コード1(回号1)」と「回号コード2(回号2)」の銘柄を保有している場合、閲覧表示制御手段50は、全保有者を対象として「回号コード1(回号1)」と「回号コード2(回号2)」の銘柄の保有情報のみを出力する。
【0310】
なお、閲覧表示制御手段50は、権利管理簿3の閲覧操作を行う取引者に対し、該当する銘柄のSTの取引データのうち、各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データを出力表示するように制御する。
また、閲覧表示制御手段50は、出力表示対象に該当する取引データにおける各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する住所の出力表示を市区のみに制限する。
また、閲覧表示制御手段50は、出力表示対象に該当する取引データにおける各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する氏名の出力表示を苗字のみに制限する。
【0311】
第1実施形態のST取引処理システム1の効果
第1実施形態のST取引処理システム1によれば、流動性調整手段2を有し、「第1の取引サイド(コモディティを扱う総合商社よりなるSTの発行体であって、ST発行後のセカンダリー取引段階においてヘッジの買い側となるヘッジ提供者をなすST発行体や、ST発行後のセカンダリー取引段階において流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等のホールセール処理側)と第2の取引サイド(発行されたSTを顧客と取引する証券会社等のリテール処理側)との間に介在し、流動性調整者の自己のSTのポジション取りにより、第2の取引サイドと第1の取引サイドとにおける取引(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)単位のギャップを吸収して、第1の取引サイド、第2の取引サイド双方のST取引の流動性を調整する」構成としたので、社債トークンの発行体(コモデティを扱う総合商社)により一度に発行される社債トークンを、社債トークンの販売側(社債トークンを販売する証券会社)が小刻みに販売していくことで、見かけ上は社債トークンの発行量を可変となるようにし、社債トークンの販売価格を市場価格に連動させて流動性の調整を行うことが可能になり、取引単位にギャップのある第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引を円滑に行うことができる。
【0312】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、流動性調整手段2が、ST引受手段11を有し、「STの発行体から一度に大量に発行されるSTを流動性調整者に一括で購入して引き受けさせる」構成としたので、発行体により発行される証券を引受者(ここでは仲介者)が引き受ける都度、当局に対して必要となる、発行体による有価証券届出書の提出と、引受者(ここでは仲介者)による有価証券引受書の提出のための書類作成と承認手続きの煩雑さを大幅に軽減することができる。
【0313】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、流動性調整手段2が、ST引受資金借入手段13を有し、「STの発行体に対しSTの引受のための購入資金を流動性調整者に借り入れさせる」構成としたので、流動性調整者のST引き受けのための資金調達の負担を軽減することができる。
【0314】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、流動性調整手段2が、ST担保提供手段14を有し、「STの発行体に対し購入したSTを担保として流動性調整者に提供させる」構成としたので、第1の取引サイドである総合商社は、貸付額と同等の担保(社債ST)を流動性調整者から受け取るのでリスクを低減することができる。
【0315】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、流動性調整手段2が、ヘッジ締結手段15を有し、「STの発行体との間でSTの購入資金分のコモディティ現物の売りヘッジ契約を流動性調整者に締結させる」構成としたので、社債トークンの引受側(流動性調整者)は、社債トークンの引受量と同等量のコモディティ現物の売りヘッジ契約をOTCで社債トークンの発行体である総合商社と締結することで、社債トークンの市場価格の下落変動リスクを回避することができる。また、社債トークンの発行額に対し、流動性調整者の自己は、社債トークンを引き受けて、当該量のポジションを持つが、引き受けた社債トークンのポジションと同量(のコモディティ現物)をヘッジ(売り)するOTC契約を、第1の取引サイドである社債トークンの発行側(社債トークンを発行する総合商社)と締結することで、流動性調整者のポジションデルタ=リスク量がゼロとなるようにすることができる。また、STの発行体は、社債STの発行に際し、流動性調整者からのコモディティ現物の(売り)ヘッジを受けることから、同量のコモディティ現物の買いの契約を持つことで、同量の社債STを発行することができる。
【0316】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、流動性調整手段2が、ストックST取引手段16を有し、「ST発行後のセカンダリー取引段階においての、STポジションストック手段を介してストックしているSTについて、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)に応じた取引を行う」構成としたので、ストックしているSTを用いて、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)に応じて流動性の調整を行いながら、取引単位にギャップのある第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引を円滑に行うことができる。
【0317】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、ストックST取引手段16が、自己相対対当処理手段17を有し、「第2の取引サイドからの注文と第1の取引サイドからの注文又はヘッジ解消・追加のIOI(相対取引方式的な取引意思表示)の夫々に対し流動性調整者の自己相対を介して対当処理を行う」構成としたので、第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社)と第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社)とに分けて、その間に流動性調整者としての自己が介在し、流動性調整者としての自己がポジションを保有し、保有ポジションを調整することで流動性の相互供給を行うようにすることができる。
【0318】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、ストックST取引手段16が、第1の約定通知手段18を有し、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの買い注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ解消指示の電文を返す」構成としたので、流動性調整者の自己売買で分断しながら、第1の取引サイドのST発行体からのヘッジ解消の意思表示と第2の取引サイドの買い注文とを対当処理することができる。
【0319】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、ストックST取引手段16が、ヘッジ解消手段19を有し、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、流動性調整者からのヘッジ解消指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ解消指示分の買い注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約のうちのヘッジ解消指示分を削減させる」構成としたので、ヘッジ解消処理を円滑に行うことができる。
【0320】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、ストックST取引手段16が、第1の清算処理仲介手段20を有し、「第2の取引サイドから現金類を受け取り第1の取引サイドへ渡すとともに、担保として提供していたSTのうち当該約定分のSTを第1の取引サイドから受け取り第2の取引サイドへ渡す」構成としたので、第1の取引サイドと第2の取引サイドとの間での約定後の清算処理を円滑に行うことができる。
【0321】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、ストックST取引手段16が、ストックSTポジション量削減手段21を有し、「ストックしていたSTのポジションのうち当該約定分のSTのポジション量を削減する」構成としたので、約定時に、当該ヘッジ量の削減と、担保としていたうち、該当約定分の社債トークンの削減を自動的に行うようにすることで、煩雑な処理を迅速かつ効率化することができる。
【0322】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、ストックST取引手段16が、第2の約定通知手段22と、ヘッジ追加手段23と、第2の清算処理仲介手段24と、ストックSTポジション量増加手段25と、をさらに有し、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ追加指示の電文を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、流動性調整者からのヘッジ追加指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ追加指示分の売り注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約に対しヘッジ追加指示分を追加し、第1の取引サイドから現金類を受け取り第2の取引サイドへ渡すとともに、当該約定分のSTを第2の取引サイドから受け取り第1の取引サイドへ渡し、ストックしていたSTのポジションに対し当該約定分のSTのポジション量を増加する」構成としたので、約定時に、当該ヘッジ量の追加と、担保としていたうち、該当約定分の社債トークンの増加を自動的に行うようにすることで、煩雑な処理を迅速かつ効率化することができる。
【0323】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、ストックST取引手段16が、レート算出手段26と、レート提供手段35と、をさらに有し、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から市場価格として受け取る気配的な売りと買いのIOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報に基づく流動性調整者レートを算出し、算出した流動性調整者レートを第2の取引サイドに提供する」構成としたので、第2の取引サイドの証券会社(のシステム)によるレートの作成や1:多での配信の必要性が無くなり、その分、第2の取引サイドの証券会社(のシステム)における、小口のST類の取引を行うために用いるシステムの負荷を低減することができる。
【0324】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、ストックST取引手段16が、参考レート算出手段36と、対当注文探索手段27と、をさらに有し、「外部から市場価格として受け取る気配的な売りと買いのIOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報、もしくは当該IOI情報に類似する情報、もしくは当該IOI情報と当該IOI情報に類似する情報とを合成した情報に基づく参考レートを算出し、算出した参考レートに基づく注文をみなし注文として、対当条件を充足する第2の取引サイドの注文をIOI(相対取引方式的な取引意思表示)方式で非公開に探索する」構成としたので、PTS方式を用いることなく第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引について、自己相対を介して対当処理することができる。
【0325】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、第1の清算処理仲介手段20を、「第2の取引サイドより対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に当該金額の現金類を渡して、担保として提供していたうち、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第2の取引サイドに渡す、RTGS的な清算処理を行う」構成としたので、第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引における清算処理を、スマートコントラクトを介して迅速且つ効率的に行うことができる。
【0326】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、第2の清算処理仲介手段24を、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体より対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行う」構成としたので、第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引における清算処理を、スマートコントラクトを介して迅速且つ効率的に行うことができる。
【0327】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、第2の清算処理仲介手段24を、「第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行ったときに、STを消却する」構成としたので、ストックしているSTを減らすことができる。
【0328】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、第2の清算処理仲介手段24を、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から現金類を借り受けて第2の取引サイドに当該金額の現金類を支払うと同時に、第2の取引サイドから該当約定分のSTを受け取り、受け取ったSTを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に担保として渡す」構成としたので、ストックしているSTが減ることなく、発行体に対して売りヘッジを積み上げることになり、STの消却後に再度STを発行する手間が省かれるため、STの発行の都度に回号が増えることによる管理の煩雑さを抑えることができる。
【0329】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、第1の清算処理仲介手段20を、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りを一括でDVP処理する又はRTGS処理する」構成としたので、スマートコントラクトを介して即時処理ができない場合において、清算処理を効率的に行うことができ、多様な清算処理を行うことができる。
【0330】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、第2の清算処理仲介手段24を、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りを一括でDVP処理する又はRTGS処理する」構成としたので、スマートコントラクトを介して即時処理ができない場合において、清算処理を効率的に行うことができ、多様な清算処理を行うことができる。
【0331】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、ストックST取引手段16が、第1のストック残量調整手段28をさらに有し、「第2の取引サイドのSTの買い過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて少なくなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、追加でストックの基本量からの不足分のSTの新規発行・引受契約を締結し、STのポジションのストックの残量を調整する」構成としたので、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストックの残量の減少に対処して、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストック量を、想定されるリスク量の範囲内で流動性調整を行うのに好適な量に調整することができる。
【0332】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、ストックST取引手段16が、第2のストック残量調整手段29をさらに有し、「第2の取引サイドのSTの売り過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて多くなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、ストックの基本量からの過剰分のSTのポジションを消却(発行済のSTのポジションのストックの残量を削減)する契約を締結する」構成としたので、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストックの残量の増加に対処して、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストック量を、想定されるリスク量の範囲内で流動性調整を行うのに好適な量に調整することができる。
【0333】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、ストックST取引手段16が、第3のストック残量調整手段30をさらに有し、「第2の取引サイドからのSTの売り注文に対し、当該STの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足する当該STを購入してそのまま保有し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、STのポジションのストックの残量の調整のための処理を指示しないように制御する」構成としたので、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストック量を、想定されるリスク量の範囲内で流動性調整を行うのに好適な量の範囲に維持することができる。
【0334】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、STの管理母体として、権利管理簿3と、STの保有アドレス4とを有し、発行体から、現金類を借り入れ、借り入れた現金類で引受対象となるSTを購入し、購入したSTを担保として発行体に提供するSTの引受者が、権利管理簿3にSTの保有者として記録されるとともに、発行体が担保として受け取るSTは発行体側のアドレス(ウォレット)4に存在し、STの保有アドレス(ウォレット)4と権利管理簿3とがリンクし、権利管理簿3に記録されているデジタル資産としてのSTの量をベースとしてトークンとしてのSTを生成できるとともに、権利管理簿3に記録されるデジタル資産としてのSTの保有者と、実際にトークンとしてのSTをアドレス(ウォレット)4に保有する保有者とを異ならせて処理できるST管理構造部8を備える構成としたので、第三者対抗要件の管理が2種類の管理母体による管理という証券的な特性を有しながら、デジタル資産としての大量のSTをトークンとして小刻みに取引する際のデジタルデータの物々交換を円滑に行うことができる。
【0335】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、流動性調整手段2が、担保ST管理用スマートコントラクト34をさらに有し、「STの引受者である流動性調整者がSTの発行体に対し担保として提供したSTを、権利管理簿3上での保有者の名義を変更することなく保管する」構成としたので、レンディングでの売買を想定しない実担保として保持するタイプのSTを好適に管理することができる。
【0336】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、流動性調整手段2が、担保STレンディング手段31をさらに有し、「STの発行体からの流動性調整者の引受において発行体が貸し付けた購入代金の担保としてストックしているSTを、レンディングでの貸付用トークンとして用いることができる」構成としたので、発行体が担保としてストックしているSTをレンディングに用いるようにすることによって、第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社等)のホールセール取引と第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)のリテール取引との決済期日のギャップを解消することができる。また、発行体(プライマリー)側の効率的な販売処理を行うと同時に、(セカンダリー)側の流動性を上げることが可能になり、双方の処理を効率化することができる。
【0337】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、担保STレンディング手段31が、レンディング管理用スマートコントラクト37を有し、「借り手より提供されるべき所定の担保対象物を設定する機能と、設定した所定の担保対象物が借り手より提供されたときに、担保としてストックしているSTを担保対象物と引き換えに貸付用トークンとして貸し出す」、「レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する」構成としたので、借り手はレンディングにより借り受けたSTを自由に売買することができる。
【0338】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、担保STレンディング手段31が、権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段38をさらに有し、「レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更を、1日又は1週間単位等、定期的に行う」構成としたので、取引が行われる都度の権利管理簿上の名義変更の処理の煩雑さを回避することができる。
【0339】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、担保STレンディング手段31を、「STのレンディングを、クリアリング(借入期間が翌日や数日程度のレポ取引的な超短期的な取引)、空売り(借入期間が長期間の場合を想定した取引)の用途として提供できる」構成としたので、発行体が担保としてストックしているSTのレンディングを、クリアリングの用途だけではなく、空売り(証券における信用取引)の用途として提供できるようにすることで、STの売り環境を提供でき、流動性を上げることができる。
【0340】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、自己相対対当処理手段17を、「通常は第2の取引サイドに対し、STの売り・買いの注文を受け付け、PTS方式等での流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行い、第2の取引サイド間では注文が流動性調整者の自己相対を介した対当処理によって対当しない場合、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体を当該注文の間接的な取引相手として流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行う」構成としたので、第2の取引サイド間での取引の流動性を確保しながら、第2の取引サイドと第1の取引サイドとの流動性を調整することができる。
【0341】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、自己相対対当処理手段17を、「当該注文の取引相手とした第1の取引サイドにおける、特定の接続先の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)に対しては、STの売り・買いの注文概念として受け付けさせ、他の特定の接続先の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)に対しては、ヘッジ契約の設定・解消の意思表示として受け付けさせるようにする」構成としたのでトークンの売買とヘッジの設定解消とを多様に組み合わせた取引を行うことができる。
【0342】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、ストックST取引手段16が、ST売・買及びヘッジ締結・解消の組み合わせ設定受付手段32をさらに有し、「自己相対対当処理手段17によるSTの売り・買いの注文と、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示とを、多様に組み合わせた設定を受け付ける」構成としたので、トークンの売買とヘッジの設定解消とを多様に組み合わせた取引の設定を行うことができる。
【0343】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、自己相対対当処理手段17を、「第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)については、第2の取引サイドからの買い注文に対し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からの売りヘッジの解消の意思表示を対当させることができる」構成としたので、第2の取引サイドにおけるトークンの買いと第1の取引サイドにおけるヘッジの解消とを組み合わせた取引を行うことができる。
【0344】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、自己相対対当処理手段17を、「第2の取引サイドからの現物のSTの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)の売りヘッジの締結の意思表示を対当させることができる」構成としたので、第2の取引サイドにおけるトークンの売りと第1の取引サイドにおけるヘッジの締結とを組み合わせた取引を行うことができる。
【0345】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、自己相対対当処理手段17を、「第2の取引サイドからの現物のトークンの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)の単純な買い注文を対当させることができる」構成としたので、第2の取引サイドにおけるトークンの売りと第1の取引サイドにおける買い注文とを組み合わせた取引を行うことができる。
【0346】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、ストックST取引手段16が、第1の取引サイド接続単位、注文形態設定受付手段33をさらに有し、「第1の取引サイドの所定の取引業者において、売り側と買い側が共に売り・買いの注文である場合、売り側と買い側が共にヘッジ設定・解消の意思表示である場合、もしくは売り側がヘッジ解消(実質売り側)の意思表示と買い側が買いの注文との組み合わせである場合等、取引業者などの接続単位(ヘッジ提供者をなすST発行体、流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等の取引業者種別)、売り側と買い側の発注における注文型、ヘッジ型の意思表示等の注文形態の設定を受け付ける」構成としたので、第1の取引サイドは、売り側、買い側のいずれになる場合においても、多様な注文形態での設定を行うことができる。
【0347】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、担保となるSTの担保状態を示す担保パラメータ(不図示)と、担保パラメータ(不図示)への、STの売却、レンディング・再担保の処理不能の状態や、レンディング・再担保の処理可能の状態等、複数種類の担保状態の設定を選択可能に受け付ける担保状態設定手段5と、担保パラメータ(不図示)に設定された担保状態に基づき、担保となっているSTに対する売却、レンディング・再担保等の処理を制御する担保ST処理制御手段6と、貸付者との間で担保設定時に締結した貸付契約の満了時において、債務不履行となった場合に、担保状態設定手段5を介して担保パラメータ(不図示)に設定されている担保状態の設定内容を手動により又は自動的に解除する担保パラメータ設定内容変更手段又は担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクト7と、をさらに有し、担保ST処理制御手段6を、「担保パラメータ設定内容変更手段又は担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクト7により担保パラメータ(不図示)の設定内容が解除されたときに、担保として提供されているSTの売却及び権利管理簿3上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する」構成としたので、契約期間中の担保となっているSTに対する売却、レンディング・再担保等の処理を制御することができるとともに、契約の満了時に、債務不履行となった場合に、権利管理簿上でのSTの保有者を変更することができる。
【0348】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、コモディティ資産を資産原資としてトークン化した社債型のSTは、STの発行体より定期的に発行され、発行の都度、償還期限や金利に相当する内容が全て同一となる証券特性を有し、セカンダリー取引段階においては、トークンとしてのSTの取引が、回号の異なるSTを1つの銘柄に集約して行われるストラクチャード社債型セキュリティトークンであって、ST管理構造部8が、回号付加権利情報記録手段41と、回号付加権利情報管理手段42と、回号集約トークン管理手段43と、を有し、「権利管理簿3に、当該STが発行される都度、当該STの保有者の証券的なデジタル的権利情報の一部として回号を付加して記録する」、「権利管理簿3上において、回号が付加された当該STの権利情報を回号単位に管理する」、「トークンとしての当該STのアドレス(ウォレット処理の対象)において、回号の異なる全ての当該STを同一銘柄のトークンとして管理する」構成としたので、発行が定期的に行われるものの、償還期限や金利に相当する内容が、都度の発行において同一となるストラクチャード社債のSTに対し、権利管理簿は回号単位で管理する一方、セカンダリー取引段階おけるトークンは各回号を同一のものとして管理でき、セカンダリー取引段階での回号単位で取引を行う場合における、流動性が分散されて非効率となる問題や、回号が多くなることによる管理の面倒さを解消することができる。
【0349】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、ST管理構造部8が、銘柄単位管理手段44をさらに有し、「セカンダリー取引段階での、流動性調整者や第2の取引サイドにおける、回号の異なる全ての当該STについての帳票や口座の資産管理、注文・約定系の情報の管理について、回号単位に処理することなく、同一銘柄として処理する」構成としたので、回号が多くなることによる管理の面倒さを解消することができる。
【0350】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、ST管理構造部8が、名義変更手段45をさらに有し、「トークンとしての当該STについての注文約定後の権利管理簿3上での名義変更を、日付変更時に前日までのトークンとしての当該STについての全ての取引分を集計した後に一括で行う」構成としたので、名義変更処理の煩雑さを解消することができる。
【0351】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、ST管理構造部8が、売り方データソート手段46と、売却優先情報並べ替え及びストック手段47と、買い方データソート手段48と、買い方データ割当手段49と、をさらに有し、「権利管理簿3に記録されている証券的なデジタル的権利情報における当該STの売り方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートする」、「ソートした当該STの売り方データにおいて、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する当該STの証券的なデジタル的権利情報における回号が複数種類である場合、保有データ数の少ない回号の当該STの売り方データを優先して売却対象となり、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する、異なる回号同士の当該STの売り方データの保有データ数が同数である場合、回号番号の小さい当該STの売り方データを優先して売却対象となるように並べ替え、並べ替えた売り方データを当該STの売却優先情報として一時的にストックする」、「権利管理簿3上の取引当日の当該STの買い方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートする」、「ソートした当該STの買い方データを、当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく」構成としたので、回号の異なるSTを効率よく売り方の売り対象として特定するとともに、効率よく買い方に割り当てることができる。
【0352】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、買い方データ割当手段49を、「割り当て可能な当該STの買い方データの回号が複数種類存在する場合、回号番号の小さい当該STの買い方データを優先して、売却優先情報並べ替え及びストック手段47を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく」構成としたので、回号の異なるSTを効率よく買い方に割り当てることができる。
【0353】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、閲覧表示制御手段50をさらに有し、「トークンの取引者が権利管理簿3の閲覧操作を行う場合、取引の当事者として取引に関与する回号のみの当該STの取引データを回号単位に出力表示するように制御する」構成としたので、閲覧権の悪用により取得される個人情報を少なく抑えることができる。
【0354】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、閲覧表示制御手段50を、「権利管理簿3の閲覧操作を行う取引者に対し、該当する銘柄のSTの取引データのうち、各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データを出力表示するように制御する」構成したので、閲覧権が悪用されることによる個人情報の取得をより少なく抑えることができる。
【0355】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、閲覧表示制御手段50を、「出力表示対象に該当する取引データにおける各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する住所の出力表示を市区のみに制限する」構成としたので、閲覧権が悪用されて個人情報が取得された場合であっても、閲覧権の悪用者による当該個人の具体的な住所の特定を阻止することができる。
【0356】
また、第1実施形態のST取引処理システム1によれば、閲覧表示制御手段50を、「出力表示対象に該当する取引データにおける各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する氏名の出力表示を苗字のみに制限する」構成としたので、閲覧権が悪用されて個人情報が取得された場合であっても、閲覧権の悪用者による当該個人の具体的な氏名の特定を阻止することができる。
【0357】
第2実施形態
図64は本発明の第2実施形態に係るST取引処理システムの構成を示す説明図で、(a)は全体構成を概略的に示す図、(b)は(a)の構成による流動性調整機能の概念図である。なお、第1実施形態と構成が同じ構成要素については、同じ符号を付すこととし、説明は省略する。
本実施形態のST取引処理システム1’は、例えば、図64に示すように、流動性調整手段2’を有する。
【0358】
流動性調整手段2’
流動性調整手段2’は、例えば、図65に示すように、第1の取引サイド(コモディティを扱う総合商社よりなるSTの発行体であって、ST発行後のセカンダリー取引段階においてヘッジの買い側となるヘッジ提供者をなすST発行体や、ヘッジ提供者をなすST発行体からのSTを引き受ける主幹事証券会社、ST発行後のセカンダリー取引段階において流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等のホールセール処理側)と第2の取引サイド(発行されたSTを顧客と取引する証券会社等のリテール処理側)との間に介在し、流動性調整者の自己のSTのポジション取りにより、第2の取引サイドと第1の取引サイドとにおける取引(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)単位のギャップを吸収して、第1の取引サイド、第2の取引サイド双方のST取引の流動性を調整する機能を有する。
【0359】
より詳しくは、流動性調整手段2’は、例えば、図66に示すように、ST引受手段11’と、STポジションストック手段12’と、ST引受資金借入手段13’と、ST担保提供手段14’と、ヘッジ締結手段15’と、ストックST取引手段16’と、担保ST管理用スマートコントラクト34と、担保STレンディング手段31’と、を有して構成されている。
【0360】
ST引受手段11’
ST引受手段11’は、例えば、図67に示すように、STの発行体から一度に大量に発行されるSTを主幹事証券会社に一括で購入して引き受けさせる機能を有して構成されている。
【0361】
STポジションストック手段12’
STポジションストック手段12’は、例えば、図68に示すように、主幹事証券会社に引き受けさせたSTを流動性調整者の自己のポジションとしてストックする機能を有して構成されている。
【0362】
ST引受資金借入手段13’
ST引受資金借入手段13’は、例えば、図69に示すように、STの発行体に対しSTの引受のための購入資金を主幹事証券会社に借り入れさせる機能を有して構成されている。
【0363】
ST担保提供手段14’
ST担保提供手段14’は、例えば、図70に示すように、STの発行体に対し購入したSTを担保として主幹事証券会社に提供させる機能を有して構成されている。
【0364】
ヘッジ締結手段15’
ヘッジ締結手段15’は、例えば、図71に示すように、STの発行体との間でSTの購入資金分のコモディティ現物の売りヘッジ契約を主幹事証券会社に締結させる機能を有して構成されている。
【0365】
ストックST取引手段16’
ストックST取引手段16’は、例えば、図72に示すように、ST発行後のセカンダリー取引段階において、STポジションストック手段12’を介してストックしているSTについての、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)に応じた取引を行う機能を有して構成されている。
より詳しくは、ストックST取引手段16’は、例えば、図73に示すように、自己相対対当処理手段17と、第1の約定通知手段18と、ヘッジ解消手段19と、第1の清算処理仲介手段20と、ストックSTポジション量削減手段21と、第2の約定通知手段22’と、ヘッジ追加手段23’と、第2の清算処理仲介手段24と、ストックSTポジション量増加手段25と、レート算出手段26と、レート提供手段35と、参考レート算出手段36と、対当注文探索手段27と、第1のストック残量調整手段28’と、第2のストック残量調整手段29と、第3のストック残量調整手段30と、ST売・買及びヘッジ締結・解消の組み合わせ設定受付手段32と、第1の取引サイド接続単位、注文形態設定受付手段33と、を有して構成されている。
【0366】
第2の約定通知手段22’
第2の約定通知手段22’は、例えば、図74に示すように、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には主幹事証券会社による該当量のヘッジ追加指示の電文を返す機能を有して構成されている。
【0367】
ヘッジ追加手段23’
ヘッジ追加手段23’は、例えば、図75に示すように、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が主幹事証券会社へのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、主幹事証券会社からのヘッジ追加指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ追加指示分の売り注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約に対しヘッジ追加指示分を追加する機能を有して構成されている。
【0368】
第1のストック残量調整手段28’
第1のストック残量調整手段28’は、例えば、図76に示すように、第2の取引サイドのSTの買い過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて少なくなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、追加でストックの基本量からの不足分のSTの新規発行・引受契約を主幹事証券会社との間で締結させ、STのポジションのストックの残量を調整する機能を有して構成されている。
【0369】
担保STレンディング手段31’
担保STレンディング手段31’は、例えば、図77に示すように、STの発行体からの主幹事証券会社の引受において発行体が貸し付けた購入代金の担保としてストックしているSTを、レンディングでの貸付用トークンとして用いることができる機能を有して構成されている。
詳しくは、担保STレンディング手段31’は、例えば、図78に示すように、レンディング管理用スマートコントラクト37と、権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段38、を有して構成されている。
そして、担保STレンディング手段31’は、STのレンディングを、クリアリング、空売りの用途として提供できる機能を有して構成されている。
その他の構成は、第1実施形態のST取引システム1と略同じである。
【0370】
第2実施形態のST取引処理システムを用いた処理の流れ
このように構成された第2実施形態のST取引処理システムを用いた処理の流れを、図面を用いて説明する。
【0371】
(処理の流れ-その1)発行体からのSTの引受時の処理の流れ(図79
図79は第2実施形態のST取引処理システム1’を用いた、発行体からのSTの引受時の処理の流れを示す説明図である。
ST引受資金借入手段13’は、STの発行体に対しSTの引受のための購入資金を主幹事証券会社に借り入れさせる。
ST引受手段11’は、STの発行体から一度に大量に発行されるSTを主幹事証券会社に一括で購入して引き受けさせる。
STポジションストック手段12’は、主幹事証券会社に引き受けさせたSTを流動性調整者の自己のポジションとしてストックする。
ST担保提供手段14’は、STの発行体に対し購入したSTを担保として主幹事証券会社に提供させる。
ヘッジ締結手段15’は、STの発行体との間でSTの購入資金分のコモディティ現物の売りヘッジ契約を主幹事証券会社に締結させる。
【0372】
(処理の流れ-その2)発行体から引き受けたSTの売買取引時の処理の流れ(図80
図80は第2実施形態のST取引処理システム1’を用いた、発行体から引き受けたSTの売買取引時の処理の流れを示す説明図である。
ストックST取引手段16’ は、ST発行後のセカンダリー取引段階において、STポジションストック手段12を介してストックしているSTについての、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)に応じた取引を行う。
処理の流れは、第1実施形態のST取引処理システム1におけるものと略同じである。
【0373】
即ち、レート算出手段26は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から市場価格として受け取る気配的な売りと買いのIOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報に基づく流動性調整者レートを算出する。
レート提供手段35は、レート算出手段26が算出した流動性調整者レートを第2の取引サイドに提供する。これにより、流動性調整者と第2の取引サイドとの間でPTS方式での取引が行われることになる。
また、参考レート算出手段36は、外部から市場価格として受け取る気配的な売りと買いのIOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報、もしくは当該IOI情報に類似する情報、もしくは当該IOI情報と当該IOI情報に類似する情報とを合成した情報に基づく参考レートを算出する。これにより、流動性調整者と第2の取引サイドとの間でダークプールでの取引が行われることになる。
また、対当注文探索手段27は、参考レート算出手段36が算出した参考レートに基づく注文をみなし注文として、対当条件を充足する第2の取引サイドの注文をIOI(相対取引方式的な取引意思表示)方式で非公開に探索する。
自己相対対当処理手段17は、第2の取引サイドからの注文と第1の取引サイドからの注文又はヘッジ解消・追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)の夫々に対し流動性調整者の自己相対を介して対当処理を行う。
詳しくは、自己相対対当処理手段17は、通常は第2の取引サイドに対し、STの売り・買いの注文を受け付け、PTS方式等での流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行い、第2の取引サイド間では注文が流動性調整者の自己相対を介した対当処理によって対当しない場合、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体を当該注文の間接的な取引相手として流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行う。
また、自己相対対当処理手段17は、当該注文の取引相手とした第1の取引サイドにおける、特定の接続先の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)に対しては、STの売り・買いの注文概念として受け付けさせ、他の特定の接続先の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)に対しては、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示として受け付けさせる。
また、自己相対対当処理手段17は、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)については、第2の取引サイドからの買い注文に対し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からの売りヘッジの解消の意思表示を対当させることができる。
また、自己相対対当処理手段17は、第2の取引サイドからの現物のSTの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)の売りヘッジの締結の意思表示を対当させることができる。
また、自己相対対当処理手段17は、第2の取引サイドからの現物のトークンの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)の単純な買い注文を対当させることができる。
【0374】
(処理の流れ-その3)STの約定時の処理の流れ(図81図82
図81図82は第2実施形態のST取引処理システム1’を用いた、STの約定時の処理の流れを示す説明図である。
第2の約定通知手段22’は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引からの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ追加指示の電文を返す。
ヘッジ追加手段23’は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が主幹事証券会社へのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、主幹事証券会社からのヘッジ追加指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ追加指示分の売り注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約に対しヘッジ追加指示分を追加する。
その他の処理の流れは、第1実施形態のST取引処理システム1におけるものと略同じである。
【0375】
即ち、第1の約定通知手段18は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの買い注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ解消指示の電文を返す。
ヘッジ解消手段19は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、流動性調整者からのヘッジ解消指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ解消指示分の買い注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約のうちのヘッジ解消指示分を削減させる。
ストックSTポジション量削減手段21は、ストックしていたSTのポジションのうち当該約定分のSTのポジション量を削減する。
第1の清算処理仲介手段20は、第2の取引サイドから現金類を受け取り第1の取引サイドへ渡すとともに、担保として提供していたSTのうち当該約定分のSTを第1の取引サイドから受け取り第2の取引サイドへ渡す。
詳しくは、第1の清算処理仲介手段20は、第2の取引サイドより対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に当該金額の現金類を渡して、担保として提供していたうち、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第2の取引サイドに渡す、RTGS的な清算処理を行う。
また、第1の清算処理仲介手段20は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては、該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りを一括でDVP処理する又はRTGS処理する。
【0376】
第2の約定通知手段22’は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には主幹事証券会社による該当量のヘッジ追加指示の電文を返す。
ヘッジ追加手段23’は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が主幹事証券会社へのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、主幹事証券会社からのヘッジ追加指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ追加指示分の売り注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約に対しヘッジ追加指示分を追加する。
ストックSTポジション量増加手段25は、ストックしていたSTのポジションに対し当該約定分のSTのポジション量を増加する。
第2の清算処理仲介手段24は、第1の取引サイドから現金類を受け取り第2の取引サイドへ渡すとともに、当該約定分のSTを第2の取引サイドから受け取り第1の取引サイドへ渡す。
詳しくは、第2の清算処理仲介手段24は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体より対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行う。
また、第2の清算処理仲介手段24は、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す。
また、第2の清算処理仲介手段24は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から現金類を借り受けて第2の取引サイドに当該金額の現金類を支払うと同時に、第2の取引サイドから該当約定分のSTを受け取り、受け取ったSTを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に担保として渡す。
また、第2の清算処理仲介手段24は、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りを一括でDVP処理する。
【0377】
(処理の流れ-その4)STのストック量の調整処理の流れ(図83
図83は第2実施形態のST取引処理システム1’を用いた、STのストック量の調整処理の流れを示す説明図である。
第1のストック残量調整手段28’は、第2の取引サイドのSTの買い過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて少なくなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、追加でストックの基本量からの不足分のSTの新規発行・引受契約を主幹事証券会社との間で締結させ、STのポジションのストックの残量を調整する。
その他の処理の流れは、第1実施形態のST取引処理システム1におけるものと略同じである。
【0378】
即ち、第2のストック残量調整手段29は、第2の取引サイドのSTの売り過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて多くなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、ストックの基本量からの過剰分のSTのポジションを消却(発行済のSTのポジションのストックの残量を削減)する契約を締結する。
第3のストック残量調整手段30は、第2の取引サイドからのSTの売り注文に対し、当該STの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足する当該STを購入してそのまま保有し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、STのポジションのストックの残量の調整のための処理を指示しないように制御する。
【0379】
(処理の流れ-その5)STのレンディングを活用した処理の流れ(図84
図84は第2実施形態のST取引処理システム1’を用いた、STのレンディングを活用した処理の流れを示す説明図である。
担保STレンディング手段31’は、STの発行体からの主幹事証券会社の引受において発行体が貸し付けた購入代金の担保としてストックしているSTを、レンディングでの貸付用トークンとして提供できる。詳しくは、担保STレンディング手段31は、STのレンディングを、クリアリング、空売りの用途として提供できる。
詳しくは、レンディング管理用スマートコントラクト37は、借り手より提供されるべき所定の担保対象物を設定する。また、レンディング管理用スマートコントラクト37は、設定した所定の担保対象物が借り手より提供されたときに、担保としてストックしているSTを担保対象物と引き換えに貸付用トークンとして貸し出す。また、レンディング管理用スマートコントラクト37は、レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する。
権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段38は、レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更を、1日又は1週間単位等、定期的に行う。
発行体が担保としてストックしているSTをクリアリング用途として提供できるようにすることで、第1の取引サイドと第2の取引サイドとの決済期日のギャップを解消することができる。
また、空売り(証券における信用取引)の用途として提供できるようにすることで、STの売り環境を提供でき、流動性を上げることができる。
【0380】
その他、担保パラメータの設定状態に基づく処理の流れ、回号付きSTの取引に伴うST管理処理の流れ、STの取引における対当処理時の権利管理簿上に記録されている回号付きSTの割り当てに関する処理の流れは、図59図60図61に示す第1実施形態のST取引処理システム1を用いた、処理の流れと同様である。
【0381】
第2実施形態のST取引処理システム1’の効果
流動性調整者が発行体により発行される大量の社債トークンを一括で引き受けることにより、流動性調整者が主幹事であると解釈される可能性がある。主幹事であると解釈された場合、流動性調整者は主幹事の引受リスクに該当する相応の財務状況などを強化しなければならなくなることが考えられる。
しかるに、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、主幹事を流動性調整者ではない別の証券会社にして、上述のヘッジと引受をその主幹事の証券会社が発行体に対して行うようにするとともに、流動性調整者は主幹事の証券会社を第1の取引サイドにおけるLP(リクイデティプロバイダー)の一部として処理することで、そのような虞を回避することができる。
【0382】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、流動性調整手段2’を有し「第1の取引サイド(コモディティを扱う総合商社よりなるSTの発行体であって、ST発行後のセカンダリー取引段階においてヘッジの買い側となるヘッジ提供者をなすST発行体や、ヘッジ提供者をなすST発行体からのSTを引き受ける主幹事証券会社、ST発行後のセカンダリー取引段階において流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等のホールセール処理側)と第2の取引サイド(発行されたSTを顧客と取引する証券会社等のリテール処理側)との間に介在し、流動性調整者の自己のSTのポジション取りにより、第2の取引サイドと第1の取引サイドとにおける取引(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)単位のギャップを吸収して、第1の取引サイド、第2の取引サイド双方のST取引の流動性を調整する」構成としたので、社債トークンの発行体(コモデティを扱う総合商社)により一度に発行される社債トークンを、社債トークンの販売側(社債トークンを販売する証券会社)が小刻みに販売していくことで、見かけ上は社債トークンの発行量を可変となるようにし、社債トークンの販売価格を市場価格に連動させて流動性の調整を行うことができ、取引単位にギャップのある第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引を円滑に行うことができる。
【0383】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、流動性調整手段2’が、ST引受手段11’を有し、「STの発行体から一度に大量に発行されるSTを主幹事証券会社に一括で購入して引き受けさせる」構成としたので、発行体により発行される証券を引受者(ここでは主幹事証券会社)が引き受ける都度、当局に対して必要となる、発行体による有価証券届出書の提出と、引受者(ここでは主幹事証券会社)による有価証券引受書の提出のための書類作成と承認手続きの煩雑さを大幅に軽減することができる。
【0384】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、流動性調整手段2’が、ST引受資金借入手段13’を有し、「STの発行体に対しSTの引受のための購入資金を主幹事証券会社に借り入れさせる」構成としたので、主幹事証券会社のST引き受けのための資金調達の負担を軽減することができる。
【0385】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、流動性調整手段2’が、ST担保提供手段14’ を有し、「STの発行体に対し購入したSTを担保として主幹事証券会社に提供させる」構成としたので、第1の取引サイドである総合商社は、貸付額と同等の担保(社債ST)を主幹事証券会社から受け取るのでリスクを低減することができる。
【0386】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、流動性調整手段2’が、ヘッジ締結手段15’を有し、「STの発行体との間でSTの購入資金分のコモディティ現物の売りヘッジ契約を主幹事証券会社に締結させる」構成としたので、社債トークンの引受側(主幹事証券会社)は、社債トークンの引受量と同等量のコモディティ現物の売りヘッジ契約をOTCで社債トークンの発行体である総合商社と締結することで、社債トークンの市場価格の下落変動リスクを回避することができる。また、社債トークンの発行額に対し、流動性調整者の自己は、社債トークンを引き受けた主幹事証券会社の当該量のポジションを持つが、引き受けた社債トークンのポジションと同量(のコモディティ現物)をヘッジ(売り)するOTC契約を、主幹事証券会社に第1の取引サイドである社債トークンの発行側(社債トークンを発行する総合商社)と締結させることで、流動性調整者のポジションデルタ=リスク量がゼロとなるようにすることができる。また、第1の取引サイドであるSTの発行体は、社債STの発行に際し、主幹事証券会社からのコモディティ現物の(売り)ヘッジを受けることから、同量のコモディティ現物の買いの契約を持つことで、同量の社債STを発行することができる。
【0387】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、流動性調整手段2’が、ストックST取引手段16’を有し、「ST発行後のセカンダリー取引段階において、STポジションストック手段12’を介してストックしているSTについての、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)に応じた取引を行う機能を有する」を有した構成としたので、ストックしているSTを用いて、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)に応じて流動性の調整を行いながら、取引単位にギャップのある第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引を円滑に行うことができる。
【0388】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、ストックST取引手段16’が、自己相対対当処理手段17を有し、「第2の取引サイドからの注文と第1の取引サイドからの注文又はヘッジ解消・追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)の夫々に対し流動性調整者の自己相対を介して対当処理を行う」構成としたので、第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)と第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社等)及び総合商社等から引き受けた主幹事証券会社とに分けて、その間に流動性調整者としての自己が介在し、流動性調整者としての自己がポジションを保有し、保有ポジションを調整することで流動性の相互供給を行うようにすることができる。
【0389】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、ストックST取引手段16’が、第1の約定通知手段18を有し、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの買い注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には該当量のヘッジ解消指示の電文を返す」構成としたので、流動性調整者の自己売買で分断しながら、第1の取引サイドのST発行体からのヘッジ解消の意思表示と第2の取引サイドの買い注文とを対当処理することができる。
【0390】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、ストックST取引手段16’が、ヘッジ解消手段19を有し、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が流動性調整者へのヘッジ解消のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、流動性調整者からのヘッジ解消指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ解消指示分の買い注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約のうちのヘッジ解消指示分を削減させる」構成としたので、ヘッジ解消処理を円滑に行うことができる。
【0391】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、ストックST取引手段16’が、第1の清算処理仲介手段20を有し、「第2の取引サイドから現金類を受け取り第1の取引サイドへ渡すとともに、担保として提供していたSTのうち当該約定分のSTを第1の取引サイドから受け取り第2の取引サイドへ渡す」構成としたので、第1の取引サイドと第2の取引サイドとの間での約定後の清算処理を円滑に行うことができる。
【0392】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、ストックST取引手段16’が、ストックSTポジション量削減手段21を有し、「ストックしていたSTのポジションのうち当該約定分のSTのポジション量を削減する」構成としたので、約定時に、当該ヘッジ量の削減と、担保としていたうち、該当約定分の社債トークンの削減を自動的に行うようにすることで、煩雑な処理を迅速かつ効率化することが可能になる。
【0393】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、ストックST取引手段16’が、第2の約定通知手段22’と、ヘッジ追加手段23’と、第2の清算処理仲介手段24と、ストックSTポジション量増加手段25と、をさらに有し、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体サイドからのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体には主幹事証券会社による該当量のヘッジ追加指示の電文を返し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体が主幹事証券会社へのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式的な取引意思表示)に対する、主幹事証券会社からのヘッジ追加指示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体においてヘッジ追加指示分の売り注文を外部の流動性供給者へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約に対しヘッジ追加指示分を追加し、第1の取引サイドから現金類を受け取り第2の取引サイドへ渡すとともに、当該約定分のSTを第2の取引サイドから受け取り第1の取引サイドへ渡し、ストックしていたSTのポジションに対し当該約定分のSTのポジション量を増加する」構成としたので、約定時に、当該ヘッジ量の追加と、担保としていたうち、該当約定分の社債トークンの増加を自動的に行うようにすることで、煩雑な処理を迅速かつ効率化することができる。
【0394】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、ストックST取引手段16’が、レート算出手段26と、レート提供手段35と、をさらに有し、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から市場価格として受け取る気配的な売りと買いのIOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報に基づく流動性調整者レートを算出し、算出した流動性調整者レートを第2の取引サイドに提供する」構成としたので、第2の取引サイドの証券会社(のシステム)によるレートの作成や1:多での配信の必要性が無くなり、その分、第2の取引サイドの証券会社(のシステム)における、小口のST類の取引を行うために用いるシステムの負荷を低減することができる。
【0395】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、ストックST取引手段16’が、参考レート算出手段36と、対当注文探索手段27と、をさらに有し、「外部から市場価格として受け取る気配的な売りと買いのIOI(相対取引方式的な取引意思表示)情報、もしくは当該IOI情報に類似する情報、もしくは当該IOI情報と当該IOI情報に類似する情報とを合成した情報に基づく参考レートを算出し、算出した参考レートに基づく注文をみなし注文として、対当条件を充足する第2の取引サイドの注文をIOI(相対取引方式的な取引意思表示)方式で非公開に探索する」構成としたので、PTS方式を用いることなく第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引について、自己相対を介して対当処理することができる。
【0396】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、第1の清算処理仲介手段20を、「第2の取引サイドより対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に当該金額の現金類を渡して、担保として提供していたうち、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第2の取引サイドに渡す、RTGS的な清算処理を行う」構成としたので、第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引における清算処理を、スマートコントラクトを介して迅速且つ効率的に行うことができる。
【0397】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、第2の清算処理仲介手段24を、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体より対価となる現金類が渡されて清算となるとき、第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行う」構成としたので、第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引における清算処理を、スマートコントラクトを介して迅速且つ効率的に行うことができる。
【0398】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、第2の清算処理仲介手段24を、「第2の取引サイドに当該金額の現金類を渡して、該当約定分のSTを受け取ると同時に、STを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に渡す、RTGS的な清算処理を行ったときに、STを消却する」構成としたので、ストックしているSTを減らすことができる。
【0399】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、第2の清算処理仲介手段24を、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体から現金類を借り受けて第2の取引サイドに当該金額の現金類を支払うと同時に、第2の取引サイドから該当約定分のSTを受け取り、受け取ったSTを第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に担保として渡す」構成としたので、ストックしているSTが減ることなく、発行体に対して売りヘッジを積み上げることになり、STの消却後に再度STを発行する手間が省かれるため、STの発行の都度に回号が増えることによる管理の煩雑さを抑えることができる。
【0400】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、第1の清算処理仲介手段20を、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りを一括でDVP処理する又はRTGS処理する」構成としたので、スマートコントラクトを介して即時処理ができない場合において、多様な清算処理を行うことができる。
【0401】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、第2の清算処理仲介手段24を、「第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対しては清算処理に用いる現金類とSTとの夫々を定期的にネットで計算しDVP処理を行い、証券会社等に対しては該証券会社等の選択により、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対する定期的なDVP処理の残りの現金類とSTとの夫々を一括でDVP処理する又はRTGS処理する」構成としたので、スマートコントラクトを介して即時処理ができない場合において、多様な清算処理を行うことができる。
【0402】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、ストックST取引手段16’が、第1のストック残量調整手段28’をさらに有し、「第2の取引サイドのSTの買い過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて少なくなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、追加でストックの基本量からの不足分のSTの新規発行・引受契約を主幹事証券会社との間で締結させ、STのポジションのストックの残量を調整する」構成としたので、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストックの残量の減少に対処して、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストック量を、想定されるリスク量の範囲内で流動性調整を行うのに好適な量に調整することができる。
【0403】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、ストックST取引手段16’が、第2のストック残量調整手段29をさらに有し、「第2の取引サイドのSTの売り過剰で、保有するSTのポジションのストックの残量がストックの基本量から所定量を超えて多くなったとき、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、ストックの基本量からの過剰分のSTのポジションを消却(発行済のSTのポジションのストックの残量を削減)する契約を締結する」構成としたので、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストックの残量の増加に対処して、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストック量を、想定されるリスク量の範囲内で流動性調整を行うのに好適な量に調整することができる。
【0404】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、ストックST取引手段16’が、第3のストック残量調整手段30をさらに有し、「第2の取引サイドからのSTの売り注文に対し、当該STの売り注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からのヘッジ追加のIOI(ヘッジ契約に関する意思を確認するための相対取引方式による取引意思表示)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足する当該STを購入してそのまま保有し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体に対し、STのポジションのストックの残量の調整のための処理を指示しないように制御する」構成としたので、流動性調整者の保有する社債トークンのポジションのストック量を、想定されるリスク量の範囲内で流動性調整を行うのに好適な量の範囲に維持することができる。
【0405】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、STの管理母体として、権利管理簿3と、STの保有アドレス4とを有し、発行体から、現金類を借り入れ、借り入れた現金類で引受対象となるSTを購入し、購入したSTを担保として発行体に提供するSTの引受者が、権利管理簿3にSTの保有者として記録されるとともに、発行体が担保として受け取るSTは発行体側のアドレス(ウォレット)4に存在し、STの保有アドレス4と権利管理簿3とがリンクし、権利管理簿3に記録されているデジタル資産としてのSTの量をベースとしてトークンとしてのSTを生成できるとともに、権利管理簿3に記録されるデジタル資産としてのSTの保有者と、実際にトークンとしてのSTをアドレス4に保有する保有者とを異ならせて処理できるST管理構造部8を備える構成としたので、第三者対抗要件の管理が2種類の管理母体による管理という証券的な特性を有しながら、デジタル資産としての大量のSTをトークンとして小刻みに取引する際のデジタルデータの物々交換を円滑に行うことができる。
【0406】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、流動性調整手段2’が、担保ST管理用スマートコントラクト34をさらに有し、「STの引受者である流動性調整者がSTの発行体に対し担保として提供したSTを、権利管理簿上での保有者の名義を変更することなく保管する」構成としたので、レンディングでの売買を想定しない実担保として保持するタイプのSTを好適に管理することができる。
【0407】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、流動性調整手段2’が、担保STレンディング手段31’をさらに有し、「STの発行体からの主幹事証券会社の引受において発行体が貸し付けた購入代金の担保としてストックしているSTを、レンディングでの貸付用トークンとして用いることができる」構成としたので、発行体が担保としてストックしているSTをレンディングに用いるようにすることによって、第1の取引サイド(社債トークンを発行する総合商社等)のホールセール取引と第2の取引サイド(社債トークンを顧客と取引する証券会社等)のリテール取引との決済期日のギャップを解消することができる。また、発行体(プライマリー取引段階)側の効率的な販売処理を行うと同時に、(セカンダリー取引段階)側の流動性を上げることが可能となり、双方の処理を効率化することができる。
【0408】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、担保STレンディング手段31’が、レンディング管理用スマートコントラクト37を有し、「借り手より提供されるべき所定の担保対象物を設定する」、「設定した所定の担保対象物が借り手より提供されたときに、担保としてストックしているSTを担保対象物と引き換えに貸付用トークンとして貸し出す」、「レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿3上のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する」構成としたので、借り手はレンディングにより借り受けたSTを自由に売買することができる。
【0409】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、担保STレンディング手段31’が、権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段38をさらに有し、「レンディング契約期間中における、貸付用トークンとして貸し出したSTについての取引及び取引が行われた場合の権利管理簿上のSTの保有者の名義の変更を、1日又は1週間単位等、定期的に行う」構成としたので、取引が行われる都度の権利管理簿上の名義変更の処理の煩雑さを回避することができる。
【0410】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、STレンディング手段31’を、「STのレンディングを、クリアリング(借入期間が翌日や数日程度のレポ取引的な超短期的な取引)、空売り(借入期間が長期間の場合を想定した取引)の用途として提供できる」構成としたので、発行体が担保としてストックしているSTのレンディングを、クリアリングの用途だけではなく、空売り(証券における信用取引)の用途として提供できるようにすることで、STの売り環境を提供でき、流動性を上げることができる。
【0411】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、自己相対対当処理手段17を、「通常は第2の取引サイドに対し、STの売り・買いの注文を受け付け、PTS方式等での流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行い、第2の取引サイド間では注文が流動性調整者の自己相対を介した対当処理によって対当しない場合、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体を当該注文の間接的な取引相手として流動性調整者の自己相対を介した対当処理を行う」構成としたので、第2の取引サイド間での取引の流動性を確保しながら、第2の取引サイドと第1の取引サイドとの流動性を調整することができる。
【0412】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、自己相対対当処理手段17を、「当該注文の取引相手とした第1の取引サイドにおける、特定の接続先の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)に対しては、STの売り・買いの注文概念として受け付けさせ、他の特定の接続先の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)に対しては、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示として受け付けさせるようにする」構成としたので、トークンの売買とヘッジの設定解消とを多様に組み合わせた取引を行うことができる。
【0413】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、ストックST取引手段16’が、ST売・買及びヘッジ締結・解消の組み合わせ設定受付手段32をさらに有し、「自己相対対当処理手段17によるSTの売り・買いの注文と、ヘッジ契約の締結・解消の意思表示とを、多様に組み合わせた設定を受け付ける」構成としたので、トークンの売買とヘッジの設定解消とを多様に組み合わせた取引の設定を行うことができる。
【0414】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、自己相対対当処理手段17を、「第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)については、第2の取引サイドからの買い注文に対し、第1の取引サイドのうちのヘッジ提供者をなすST発行体からの売りヘッジの解消の意思表示を対当させることができる」構成としたので、第2の取引サイドにおけるトークンの買いと第1の取引サイドにおけるヘッジの解消とを組み合わせた取引を行うことができる。
【0415】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、自己相対対当処理手段17を、「第2の取引サイドからの現物のSTの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(ヘッジ提供者をなすST発行体)の売りヘッジの締結の意思表示を対当させることができる」構成としたので、第2の取引サイドにおけるトークンの売りと第1の取引サイドにおけるヘッジの解消とを組み合わせた取引を行うことができる。
【0416】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、自己相対対当処理手段17を、「第2の取引サイドからの現物のトークンの売り注文に対し、第1の取引サイドにおける所定の取引業者(流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等)の単純な買い注文を対当させることができる」構成としたので、第2の取引サイドにおけるトークンの売りと第1の取引サイドにおける買い注文とを組み合わせた取引を行うことができる。
【0417】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、ストックST取引手段16’が、第1の取引サイド接続単位、注文形態設定受付手段33をさらに有し、「バイサイドの所定の取引業者において、売り側と買い側が共に売り・買いの注文である場合、売り側と買い側が共にヘッジ設定・解消の意思表示である場合、もしくは売り側がヘッジ解消(実質売り側)の意思表示と買い側が買いの注文との組み合わせである場合等、取引業者などの接続単位(ヘッジ提供者をなすST発行体、流動性を供給するLP(リクイデティプロバイダー)やMM(マーケットメイカー)等の取引業者種別)、売り側と買い側の発注における注文型、ヘッジ型の意思表示等の注文形態の設定を受け付ける」構成としたので、第1の取引サイドは、売り側、買い側のいずれになる場合においても、多様な注文形態での設定を行うことができる。
【0418】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、担保となるSTの担保状態を示す担保パラメータ(不図示)と、担保パラメータ(不図示)への、STの売却、レンディング・再担保の処理不能の状態や、レンディング・再担保の処理可能の状態等、複数種類の担保状態の設定を選択可能に受け付ける担保状態設定手段5と、担保パラメータ(不図示)に設定された担保状態に基づき、担保となっているSTに対する売却、レンディング・再担保等の処理を制御する担保ST処理制御手段6と、貸付者との間で担保設定時に締結した貸付契約の満了時に、債務不履行となった場合に、担保状態設定手段5を介して担保パラメータ(不図示)に設定されている担保状態の設定内容を手動により又は自動的に解除する担保パラメータ設定内容変更手段又は担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクト7と、をさらに有し、担保ST処理制御手段6を、「担保パラメータ設定内容変更手段又は担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクト7により担保パラメータ(不図示)の設定内容が解除されたときに、担保として提供されているSTの売却及び権利管理簿上3のSTの保有者の名義の変更が可能となるように制御する」構成としたので、契約期間中の担保となっているSTに対する売却、レンディング・再担保等の処理を制御することができるとともに、契約の満了時に、債務不履行となった場合に、権利管理簿上でのSTの保有者を変更することができる。
【0419】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、コモディティ資産を資産原資としてトークン化した社債型のSTは、STの発行体より定期的に発行され、発行の都度、償還期限や金利に相当する内容が全て同一となる証券特性を有し、セカンダリー取引段階においては、トークンとしてのSTの取引が、回号の異なるSTを1つの銘柄に集約して行われるストラクチャード社債型セキュリティトークンであって、ST管理構造部8が、回号付加権利情報記録手段41と、回号付加権利情報管理手段42と、回号集約トークン管理手段43と、を有し、「権利管理簿3に、当該STが発行される都度、当該STの保有者の証券的なデジタル的権利情報の一部として回号を付加して記録する」、「権利管理簿3上において、回号が付加された当該STの権利情報を回号単位に管理する」、「トークンとしての当該STのアドレス(ウォレット処理の対象)において、回号の異なる全ての当該STを同一銘柄のトークンとして管理する」構成としたので、発行が定期的に行われるものの、償還期限や金利に相当する内容が、都度の発行において同一となるストラクチャード社債のSTに対し、権利管理簿は回号単位で管理する一方、セカンダリー取引段階おけるトークンは各回号を同一のものとして管理でき、セカンダリー取引段階での回号単位で取引を行う場合における、流動性が分散されて非効率となる問題や、回号が多くなることによる管理の面倒さを解消することができる。
【0420】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、ST管理構造部8が、銘柄単位管理手段44をさらに有し、「セカンダリー取引段階での、流動性調整者や第2の取引サイドにおける、回号の異なる全ての当該STについての帳票や口座の資産管理、注文・約定系の情報の管理について、回号単位に処理することなく、同一銘柄として処理する」構成としたので、回号が多くなることによる管理の面倒さを解消することができる。
【0421】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、ST管理構造部8が、名義変更手段45をさらに有し、「トークンとしての当該STについての注文約定後の権利管理簿3上での名義変更を、日付変更時に前日までのトークンとしての当該STについての全ての取引分を集計した後に一括で行う」構成としたので、回号が多くなることによる管理の面倒さを解消することができる。
【0422】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、ST管理構造部8が、売り方データソート手段46と、売却優先情報並べ替え及びストック手段47と、買い方データソート手段48と、買い方データ割当手段49と、をさらに有し、「権利管理簿3に記録されている証券的なデジタル的権利情報における当該STの売り方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートする」、「ソートした当該STの売り方データにおいて、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する当該STの証券的なデジタル的権利情報における回号が複数種類である場合、保有データ数の少ない回号の当該STの売り方データを優先して売却対象となり、当該識別情報(原簿ID)で特定される当該STの保有者の保有する、異なる回号同士の当該STの売り方データの保有データ数が同数である場合、回号番号の小さい当該STの売り方データを優先して売却対象となるように並べ替え、並べ替えた売り方データを当該STの売却優先情報として一時的にストックする」、「権利管理簿3上の取引当日の当該STの買い方データを、個人の識別情報(原簿ID)単位で昇順にソートする」、「ソートした当該STの買い方データを、当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく」構成としたので、回号の異なるSTを効率よく売り方の売り対象として特定するとともに、効率よく買い方に割り当てることができる。
【0423】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、買い方データ割当手段49を、「割り当て可能な当該STの買い方データの回号が複数種類存在する場合、回号番号の小さい当該STの買い方データを優先して、売却優先情報並べ替え及びストック手段47を介して当該STの売却優先情報において並べ替えられている当該STの売り方データに、降順に割り当てていく」構成としたので、回号の異なるSTを効率よく買い方に割り当てることができる。
【0424】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、閲覧表示制御手段50をさらに有し、「トークンの取引者が権利管理簿3の閲覧操作を行う場合、取引の当事者として取引に関与する回号のみの当該STの取引データを回号単位に出力表示するように制御する」構成としたので、閲覧権の悪用により取得される個人情報を少なく抑えることができる。
【0425】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、閲覧表示制御手段50を、「権利管理簿3の閲覧操作を行う取引者に対し、該当する銘柄のSTの取引データのうち、各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データを出力表示するように制御する」構成したので、閲覧権が悪用されることによる個人情報の取得をより少なく抑えることができる。
【0426】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、閲覧表示制御手段50を、「出力表示対象に該当する取引データにおける各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する住所の出力表示を市区のみに制限する」構成としたので、閲覧権が悪用されて個人情報が取得された場合であっても、閲覧権の悪用者による当該個人の具体的な住所の特定を阻止することができる。
【0427】
また、第2実施形態のST取引処理システム1’によれば、閲覧表示制御手段50を、「出力表示対象に該当する取引データにおける各回号の上位10名の識別情報(原簿ID)及び閲覧操作を行う取引者自己の識別情報(原簿ID)のみの取引データにおける各識別情報に紐づく個人特定情報を構成する氏名の出力表示を苗字のみに制限する」構成としたので、閲覧権が悪用されて個人情報が取得された場合であっても、閲覧権の悪用者による当該個人の具体的な氏名の特定を阻止することができる。
【0428】
このため、上記各実施形態によれば、第1の取引サイドから一度の大量に発行されるST発行に伴う発行側、引受側のリスクを極力無くしながら、第1の取引サイドから発行される大口のSTの流動性を向上させ、取引単位にギャップのある第1の取引サイドと第2の取引サイドとの取引を効率的且つ迅速に処理可能なST取引処理システムが得られる。
【0429】
補足説明
さらに、本発明のST取引処理システムにおける特徴的な機能について補足説明する。
図85は本発明のST取引処理システムにおける特徴的な機能を通常のクロッシング処理と対比して示す説明図で、(a)は通常のクロッシング処理の概念図、(b)は本発明のST取引処理における流動性調整機能の概念図である。
通常のPTSやOTCのクロッシング処理では、例えば、図85(a)に示すように、売り買いの注文が対当した場合に約定させる。注文状況(注文板)を情報として開示し、注文を呼び込むことで流動性を確保する。
これに対し、本発明のST取引処理システムでは、例えば、図85(b)に示すように、流動性調整手段の有する流動性調整機能は、単純に機械的に注文を対当させるものではなく、第1の取引サイドの処理と、第2の取引サイドの処理と、を自己処理で分断した構成となっている。
【0430】
詳しくは、通常の第2の取引サイドの注文は基本的には一般顧客からの注文単位の小さいリテール(小口)注文である。その場合のクロッシング処理は、売りと買いの注文を注文板に入れて、売りと買いが対当条件を充足する場合に約定させるPTS方式、トレーディング方式にて行う。
また、通常の第1の取引サイドの注文は基本的には発行体や大手金融機関からの注文単位の大きいホールセール(大口)注文である。その場合、自己対当させる場合はOTC方式、第1の取引サイド同士の売り買いを対当させる場合はPTS方式を用いる。
しかるに、本発明のST取引処理システムでは、第2の取引サイド間で対当しない注文を第1の取引サイドの注文の相手とする。そして、第2の取引サイドの注文、第1の取引サイドの注文の夫々に流動性調整者の自己が介在し、双方の注文単位のギャップを自己のストックするポジションで調整して対当させる。
【0431】
第1実施形態のST取引処理システム1における流動性調整機能の処理概念
図86は第1実施形態のST取引処理システム1を用いた流動性調整機能を介在させた処理の一例を概略的に示す説明図である。
第1実施形態のST取引処理システム1では、流動性調整手段11の有する流動性調整機能は、例えば、第2の取引サイド(図86では証券会社C社と証券会社D社)において対当しない買い注文を第1の取引サイド(図86ではSTを発行する総合商社A社)の売り注文の相手とする。
その際、自己がストックしているポジションを用いながらそれぞれの注文と対当させ、約定させる(システムとしての発行体から引き受けたSTの売買取引時の処理の流れは、図53を用いて説明したとおりである)。
約定した場合の清算処理では、第1の取引サイドからの注文と相対となる流動性調整者の自己と第2の取引サイドからの買い注文と相対となる流動性調整者の自己とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドには該当量のヘッジ解消の意思表示の電文を返す。第1の取引サイドがヘッジ解消の意思表示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドにヘッジ解消の意思表示分の買い注文を外部の流動性供給者へ発注(買いカバー)して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約のうちのヘッジ解消の意思表示分を削減させる。また、流動性調整者は、ストックしていたSTのポジションのうち当該約定分のSTのポジション量を削減する。第1の取引サイドは流動性調整者より現金類を受け取り(返済)、担保として受けていたトークンを流動性調整者に返却する。流動性調整者はセルサイドより現金類を受け取り、トークンを第2の取引サイドに渡す(システムとしてのSTの約定時の処理の流れは、図54を用いて説明したとおりである)。
【0432】
また、例えば、第2の取引サイド(図86では証券会社C社と証券会社D社)において対当しない売り注文を第1の取引サイド(図86ではSTを発行する総合商社A社)の買い注文の相手とする。その際、自己がストックしているポジションを用いながらそれぞれの注文と対当させ、約定させる(システムとしての発行体から引き受けたSTの売買取引時の処理の流れは、図53を用いて説明したとおりである)。
約定した場合の清算処理では、第1の取引サイドからの注文と相対となる流動性調整者の自己と第2の取引サイドからの売り注文と相対となる流動性調整者の自己とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドには該当量のヘッジ追加の意思表示の電文を返す。第1の取引サイドがヘッジ追加の意思表示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドにヘッジ追加の意思表示分の売り注文を外部の流動性供給者へ発注(売りカバー)して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約に対しヘッジ追加の意思表示分を追加する。また、流動性調整者は、ストックしていたSTのポジションに対し当該約定分のSTのポジション量を増加する。第1の取引サイドは流動性調整者に現金類を渡し、流動性調整者よりトークンを受け取る(随時償却)。流動性調整者は第2の取引サイドよりトークンを受け取り、現金類を第2の取引サイドに渡す(システムとしてのSTの約定時の処理の流れは、図33を用いて説明したとおりである)。
【0433】
第2実施形態のST取引処理システム1’における流動性調整機能の処理概念
図87は第2実施形態のST取引処理システム1’を用いた流動性調整機能を介在させた処理の一例を概略的に示す説明図である。
第2実施形態のST取引処理システム1’においては、流動性調整手段2’は、第1の取引サイド(コモディティを扱う総合商社であるSTの発行体)からのSTを引き受ける主幹事証券会社と第2の取引サイド(発行されたSTを顧客と取引する証券会社等)との間に介在する。
発行体は主幹事証券会社に現金類を貸し付ける。主幹事証券会社は発行体の発行するSTを一括で買い付けるとともに、STのもととなるコモディティの現物についての売りヘッジ契約を発行体との間で締結する。また、主幹事証券会社は購入したSTを担保として発行体に渡す。流動性調整者は、主幹事証券会社に引き受けさせたSTを流動性調整者の自己のポジションとしてストックする(システムとしての発行体からのSTの引受時の処理の流れは図79を用いて説明したとおりである)。
【0434】
第2の取引サイドの証券会社の自己は、個人の顧客からの売買注文に対し、相対取引を行う。そして、相対取引において対当できなかった注文が、流動性調整者による処理対象の注文となる。
流動性調整者は、主幹事証券会社が引き受けたSTを売り注文として取り扱い、ST発行後のセカンダリー取引段階において、STポジションストック手段12を介してストックしているSTについての、第1の取引サイド及び第2の取引サイドの取引者が所望する取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)に応じた取引を行う。その際、自己がストックしているポジションを用いながらそれぞれの取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)と対当させ、約定させる(システムとしての発行体から引き受けたSTの売買取引時の処理の流れは、図80を用いて説明したとおりである)。
約定した場合の清算処理では、第1の取引サイドからの取引内容(注文又はヘッジ解消・追加の意思表示等)と相対となる流動性調整者の自己の売買基準と第2の取引サイドからの買い(又は売り)注文と相対となる流動性調整者の自己の売買基準とが対当条件を充足したとき、第2の取引サイドには約定を返し、第1の取引サイドには該当量のヘッジ解消の意思表示の電文を返す(又は第1の取引サイドには主幹事証券会社による該当量のヘッジ追加の意思表示の電文を返す)。第1の取引サイドがヘッジ解消(又は追加)の意思表示の電文を受け取ったときに、第1の取引サイドにヘッジ解消(又は追加)の意思表示分の買い(又は売り)注文を外部の流動性供給者へ発注(買い(又は売り)カバー)して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約のうちのヘッジ解消の意思表示分を削減させる(又は売りヘッジ契約に対しヘッジ追加の意思表示分を追加する。
また、流動性調整者は、ストックしていたSTのポジションのうち当該約定分のSTのポジション量を削減(又は増加)する。
発行したSTを売却した場合は、第1の取引サイドは流動性調整者より現金類を受け取り(返済)、担保として受けていたトークンを流動性調整者に返却する。流動性調整者は第2の取引サイドより現金類を受け取り、トークンを第2の取引サイドに渡す。一方、第1の取引サイドがSTを購入する場合は、第1の取引サイドは流動性調整者に現金類を渡し、トークンを流動性調整者から受け取る。流動性調整者はセルサイドに現金類を渡し、トークンを第2の取引サイドから受け取る(システムとしてのSTの約定時の処理の流れは、図81図82を用いて説明したとおりである)。
【0435】
STの管理形態
図88は第1実施形態のST取引処理システム1を用いた流動性調整機能を介在させた処理におけるSTの管理形態の一例を示す説明図である。
図88の例では、発行体の発行する数量10,000のST(本例ではZPG:ジパングコイン)を流動性調整者が一括で引き受け、その後に第2の取引サイドより数量100の買い注文と約定した場合におけるSTの管理形態を示している。
流動性調整者が発行体の発行する数量10,000のSTを一括で引き受けたときには、トークンの保有アドレス4においては、発行体のアドレス4に数量10,000のSTが存在している。一方、権利管理簿3には、流動性調整者が数量10,000のSTの保有者として記録される。なお、流動性調整者が引き受けた数量10,000のSTは、担保として、発行体に提供される。また、STの引受に際しては、STのもととなるコモディティの現物(本例ではGOLD)の売りヘッジ契約が締結されている。
【0436】
ここで、第2の取引サイドの証券会社(A証券)が顧客Bからの数量100のSTの買い注文の委託を受け、流動性調整者に対し数量100のSTの買い注文がある状態にあるものとする。
流動性調整者はダークプールにおいて、発行体から引き受けたSTの売り気配に基づき、流動性調整者のレートを作成、作成したレートで第2の取引サイドにおいて対当条件を充足する注文を探索する。ここでは、第2の取引サイドのA証券からの数量100の買い注文が対当するのとする。
A証券の買い注文が流動性調整者の売り注文と対当したとき、これらの注文が約定となる。このとき、トークンの保有アドレス4においては、発行体のアドレス4に数量9,900のSTが存在し、A証券のアドレス4に数量100のSTが存在する。一方、権利管理簿3には、流動性調整者が数量9,900のSTの保有者、顧客Bが数量100のSTの保有者として記録される。
また、約定により、発行体に対する数量100分の売ヘッジを解消する。また、発行体は、外部市場に数量100GOLD現物をカバー(買いカバー)する。
【0437】
図89は第1実施形態のST取引処理システムを用いた流動性調整機能を介在させた処理におけるSTの管理形態におけるSTの償却形態を示す説明図で、(a)は随時償却の例示す図、(b)は一括償却の例を示す図である。
第2の取引サイドの証券会社(A証券)を介在させた顧客からの数量100のSTの買い注文が流動性調整者の売り注文と対当し、約定したときは、図88で示した例と同様、発行体のアドレス4に数量9,900のSTが存在し、A証券のアドレス4に数量100のSTが存在する。一方、権利管理簿3には、流動性調整者が数量9,900のSTの保有者、顧客Bが数量100のSTの保有者として記録される。
また、約定により、発行体に対する数量100分の売ヘッジを解消する。また、発行体は、外部市場に数量100GOLD現物をカバー(買いカバー)する。
【0438】
その後、第2の取引サイドの証券会社(A証券)を介在させた顧客からの数量100のSTの買い注文が流動性調整者の売り注文と対当し、約定したときは、発行体のアドレス4に数量10,000のSTが存在し、A証券のアドレス4にはSTは存在しなくなる。一方、権利管理簿3には、流動性調整者が数量10,000のSTの保有者として記録され、顧客Bは数量0のSTの保有者として記録される。
また、約定により、発行体に対する数量100分の売ヘッジを追加する。また、発行体は、外部市場に数量100GOLD現物をカバー(売りカバー)する。
【0439】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明を導出する過程において本件発明者が考察、検討した内容を含めて、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0440】
なお、本発明のST取引処理システムでは、発行体より発行されたSTを引受者が購入し、購入したSTを購入資金の担保としてトークン化して発行体に提供するようにしており、トークンは担保ST管理用スマートコントラクトを介して担保として管理される構成となっているが、担保として管理されるトークン類を後払い保険のベースに適用することも可能である。
また、担保ST管理用スマートコントラクトで担保として預けているトークン類は、基本的には預けている間の使用使途に制限はないことから、担保となっているトークン類を担保STレンディング手段におけるレンディング管理用スマートコントラクトを介して貸し出すことにより、金利的な手数料を定期的に受け取ることが可能である。
【0441】
さらに、本発明のST取引処理システムにおいて権利管理簿に記録する顧客情報について補足説明する。
本発明のST取引処理システムにおける権利管理簿には、基本的に顧客口座の情報(口座番号など)を利用し、その口座番号を介して受け取った情報が顧客情報として記録される。また、権利管理簿に記載された顧客情報は閲覧操作が行われたときに、閲覧表示制御手段による出力表示の対象となる。
この顧客口座の情報は、口座番号の上位概念の情報である顧客IDにも紐づけられており、基本的には単一の顧客に紐づく固有のIDが顧客口座の情報のベースになっている。
顧客IDは顧客本人であることを証明するものである。そして、顧客IDには、KYC(Know Your Customer本人確認)など顧客確認を行うための情報が管理されている。
【0442】
ところで、実際に金融機関で口座開設を行う場合には、単純に顧客本人であることを証明する情報以外に、金融の取引情報(どのような金融サービスをどれくらい取引経験があるのか、資産の情報、その他家族構成、給与水準などなど)などを確認する必要がある。この金融固有の確認情報は、該当する金融サービスにより、項目数が異なる。
例えば、暗号資産交換業者向けの確認情報の項目数は30個程度であるが、証券取引などでは80項目程度にまで及ぶ。
しかし、これらの確認情報項目の中には共通する項目もある。そして、基本的に顧客が所定の金融機関で口座を開設する際に、該当する共通項目についての確認情報を設定し、その設定した共通項目についての確認情報を、権利管理簿の顧客ID(原簿ID)に付随するデータとして記録することができるようにする。そして、他の金融機関で口座を開設する際に、その一度記録した権利管理簿の顧客ID(原簿IDに付随する当該共通項目についての確認情報を用いることができるようにする。
また、当該共通項目以外の項目の確認情報については、各金融機関で異なる。このため、夫々の金融機関における口座開設の際に用いる確認情報として不足する項目の確認情報については、口座開設の都度、顧客が更新することで、権利管理簿の顧客ID(原簿ID)においても付随するデータとして当該確認情報を増やすことができるようにする。
当該確認情報は、各金融機関にて口座を開設する都度、同一項目の情報が検索されて使用される。そして、その使用された確認情報の項目については、使用した金融機関の情報についても自動的に権利管理簿に記録されるようにする。
【0443】
今後、各金融機関で口座は統一的に管理されることが想定される。この統一口座の概念に対し、口座開設時に必要なKYCに関連する情報、もしくは取引の違法性などを確認するAML/CFT(Anti Money Laundering/ Countering the Financing of Terrorism:マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策 )などの情報についても、権利管理簿の顧客ID(原簿ID)に記録することができるようにする。なお、確認情報はID所有者が申告するようにする。また、権利管理簿の顧客ID(原簿ID)に付随する情報として記録した確認情報の内容に修正を要する項目がある場合は、当該項目の内容を変更できるようにする。
つまり、権利管理簿において顧客IDにKYCがリンクし、口座開設基準となるKYC情報が常に最新となり、各金融機関は定期的にKYCの変更情報を確認することができるようにする。
同時に、金融機関側からは、取引の不正情報など、権利管理簿の当該顧客ID(原簿ID)に付随する情報としてAML/CFTの情報を書き込むことができるようにする一方、このAML/CFT情報は、顧客が変更することはできず、書き込んだ金融機関のみ修正することができるようにする。
このようにすれば、権利管理簿に顧客の個人情報が記録されるとともに、顧客IDとの連動も可能になり、広範囲において検査機関などが使うことができるようになる。
一方、顧客IDが一意であることから、顧客の過去に取引し、保有していた資産情報についても、権利管理簿に記録された顧客情報を介して確認することができるようになる。
【0444】
さらに、本発明のST取引システムにおける処理対象であるストラクチャード社債の概念について補足説明する。
ストラクチャード社債は、STの引受者が全額を引き受ける時のリスクを減らすための方策であるが、ストラクチャード社債には、基本概念と派生的概念とがある。
【0445】
<基本概念>
1.プライマリー処理
(1-1)ST引受者側
(1-1-1)ゴールド系の社債を引き受けるための資金が必要で、その資金として社債の発行体からゴールド地金を借りる。
(1-1-2)その借りたゴールドの地金を発行体に売って、現金を得る。
(1-1-3)売って得た代金で発行体よりゴールドST社債を買う。
(1-1-4)ゴールド地金を借りた担保として、ゴールドST社債を発行体に渡す。
(1-2)発行体側
(1-2-1)ST引受者からゴールド地金を買い、その地金でゴールドST社債を発行する。
(1-2-2)ゴールド地金を貸した担保として、ゴールドST社債を受け取る。
上記(1-1)、(1-2)における処理の循環により、ST引受者側と発行体側のリスクは相殺されており、リスクは無くなっている。
2.セカンダリー処理
(2-1)ST引受者の顧客が当該STの買い注文を入れ、ST引受者の自己が当該STを売ると、顧客より購入代金をST引受者は受け取る。
(2-2)ST引受者は購入代金を発行体に戻して、地金を買い戻す。
(2-3)ST引受者は買い戻した地金を発行体に戻す。
(2-4)発行体は担保の当該STをST引受者に戻し、ST引受者は受け取った当該STを顧客に渡す。
上記(2-1)~(2-4)を同時に行う。
【0446】
<派生概念>
1’.プライマリー処理
(1'-1)ST引受者側
(1'-1-1)ゴールド系の社債を引き受けるための資金が必要で、その資金として社債の発行体からゴールド地金を借りる。
(1'-1-2)その借りたゴールドの地金を第三者に売って、現金を得る。もしくは第三者に金地金を担保として差し入れて現金を得る。
上記(1'-1-2)において、第三者に担保として差し入れて現金を得る場合に、ゴールドを引き受けて売りとしていない(=売りヘッジを行っていない)ので、発行体に同額の売りヘッジを行う。
(1'-1-3)売った(借りた)代金で発行体よりゴールドST社債を買う。
(1'-1-4)ゴールド地金を借りた担保として、ゴールドST社債を発行体に渡す。
上記(1'-1-4)において、発行体は売りヘッジに対して、買いを行うことから、買いに対して得た金地金権利をベースにゴールドSTを発行している。
(1'-2)発行体側
(1'-2-1)ST引受者からゴールド地金を買い(もしくはヘッジ契約で買い状態をつくり)、その地金でゴールドST社債を発行する。
(1'-2-2)ゴールド地金を貸した担保として、ゴールドST社債を受け取る。
上記(1'-1)、(1'-2)における処理の循環により、ST引受者側と発行体側のリスクは相殺されており、リスクは無くなっている。
2’.セカンダリー処理
(2'-1)ST引受者の顧客が当該STの買い注文を入れ、ST引受者の自己が当該STを売ると、顧客より購入代金をST引受者は受け取る。
(2'-2)ST引受者は購入代金を第三者に戻して、地金を買い戻す。もしくは現金を返済して地金を返却してもらう。
(2'-3)ST引受者は買い戻した、もしくは返却してもらった地金を発行会社に戻す。
(2'-4)発行体は担保の当該STをST引受者に戻し、ST引受者は受け取った当該STを顧客に渡す。
上記(2'-1)~(2'-4)を同時に行う。
【0447】
補足説明したストラクチャード社債の概念から明らかなように、本発明のST取引システムにおいては、ST引受資金借入手段が有する機能における「STの引受のための購入資金を・・・借入させる」は、さらに次の処理も含むことを意図している。
・社債の発行体からゴールド地金を借り、借りたゴールドの地金を発行体に売って、現金を得る処理。
・社債の発行体からゴールド地金を借り、借りたゴールドの地金を第三者に売って、もしくは第三者に金地金を担保として差し入れて現金を得る処理。
また、第1の清算処理仲介手段が有する機能における「ST発行体に当該金額の現金類を渡して、・・・」は、さらに次の処理も含むことを意図している。
・現金類で発行体から地金を買い戻し、買い戻した地金を発行体に戻す処理。
・現金類で第三者から地金を買い戻した、もしくは返却してもらった地金を発行体に戻す処理。
【産業上の利用可能性】
【0448】
本発明のST取引処理システムは、貴金属、非鉄金属、石油・ガス・電力などのエネルギー類、コメ・砂糖などの保存可能な農作物、美術品、飲料水など、広範囲に販売されているものや、その他の経済的価値をデジタルで表現された、デジタル資産を用いて取引を扱う分野に有用である。
【符号の説明】
【0449】
1、1’ ST取引処理システム
2、2’ 流動性調整手段
3 権利管理簿
4 STの保有アドレス
5 担保状態設定手段
6 担保ST処理制御手段
7 担保パラメータ設定内容変更手段(又は担保パラメータ設定内容変更用スマートコントラクト)
8 ST管理構造部
11、11’ ST引受手段
12、12’ STポジションストック手段
13、13’ ST引受資金借入手段
14、14’ ST担保提供手段
15、15’ ヘッジ締結手段
16、16’ ストックST取引手段
17 自己相対対当処理手段
18 第1の約定通知手段
19 ヘッジ解消手段
20 第1の清算処理仲介手段
21 ストックSTポジション量削減手段
22、22’ 第2の約定通知手段
23、23’ ヘッジ追加手段
24 第2の清算処理仲介手段
25 ストックSTポジション量増加手段
26 レート算出手段
27 対当注文探索手段
28、28’ 第1のストック残量調整手段
29 第2のストック残量調整手段
30 第3のストック残量調整手段
31、31’ 担保STレンディング手段
32 ST売・買及びヘッジ締結・解消の組み合わせ設定受付手段
33 第1の取引サイド接続単位、注文形態設定受付手段
34 ストックST管理手段
35 レート提供手段
36 参考レート算出手段
37 レンディング管理用スマートコントラクト
38 権利管理簿上のST保有者名義変更処理制御手段
41 回号付加権利情報記録手段
42 回号付加権利情報管理手段
43 回号集約トークン管理手段
44 銘柄単位管理手段
45 名義変更手段
46 売り方データソート手段
47 売却優先順位並べ替え及びストック手段
48 買い方データソート手段
49 買い方データ割当手段
50 閲覧表示制御手段
【要約】
【課題】STの流動性を向上させ、第1取引サイドと第2取引サイドとの取引を効率的に処理可能なシステムの提供。
【解決手段】流動性調整手段2を有する。発行体から大量発行されるSTを流動性調整者に一括購入で引き受けさせ、自己のポジションとしてストックし、購入資金を借り入れさせ、購入STを担保として提供させ、発行体との間で購入資金分のコモディティ現物の売りヘッジ契約を締結させ、第2取引サイドと第1取引サイドの夫々注文に対し流動性調整者の自己相対を介して対当処理を行い第2取引サイドには約定を返し、第1取引サイドには該当量のヘッジ解消の意思表示を返し、買い注文を外部へ発注して約定を受けさせると同時に、売りヘッジ契約を削減させ、第2取引サイドから現金類を受け取り第1取引サイドへ、当該約定分のSTを第1取引サイドから受け取り第2取引サイドへ渡し、ポジション量を削減する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
図57
図58
図59
図60
図61
図62
図63
図64
図65
図66
図67
図68
図69
図70
図71
図72
図73
図74
図75
図76
図77
図78
図79
図80
図81
図82
図83
図84
図85
図86
図87
図88
図89